特許第6373112号(P6373112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373112
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】自動倉庫ラックの免震構造
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/14 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
   B65G1/14 F
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-154630(P2014-154630)
(22)【出願日】2014年7月30日
(65)【公開番号】特開2016-30685(P2016-30685A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091904
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 重雄
(72)【発明者】
【氏名】青野 翔
(72)【発明者】
【氏名】日比野 浩
(72)【発明者】
【氏名】高木 正美
(72)【発明者】
【氏名】長島 一郎
【審査官】 中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3556910(JP,B2)
【文献】 特開2001−279952(JP,A)
【文献】 特開2002−227923(JP,A)
【文献】 特開2011−085249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00− 1/133
B65G 1/14− 1/20
E04H 9/00− 9/16
F16F 15/00−15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラック基礎上のX方向に走行自在に設けられたスタッカークレーンによって、上記スタッカークレーンに沿って配置されたラックに対してY方向に荷物の出し入れを行う自動倉庫ラックの免震構造であって、
上記ラック基礎と倉庫床との間に、上記倉庫床上に上記X方向またはY方向に配置された第1のガイドレールと、上記ラック基礎の下面に上記第1のガイドレールと直交する上記Y方向またはX方向に配置された第2のガイドレールと、これら第1および第2のガイドレール間に配置されて当該第1および第2のガイドレール上を転動する転がり部材を有するガイドブロックとを備えた免震装置を介装し、かつ上記X方向に作用する設定荷重以下の荷重に対しては上記ラック基礎と上記倉庫床との上記X方向の相対変位を阻止し、上記設定荷重を超える荷重に対しては上記ラック基礎と上記倉庫床との上記X方向の相対変位を許容するトリガー機構を設け
上記トリガー機構は、上記倉庫床に上記Y方向に第3のレールが配置され、この第3のレール上に板面を上記X方向に沿わせた第1の基板が走行自在に立設され、かつ上記ラック基礎に板面を上記X方向に沿わせた第2の基板が垂設されるとともに、上記第1の基板および第2の基板のいずれか一方が他方間に挟まれて両者がボルトで締め付けられてなり、上記設定荷重は、上記ボルトの締め付け力によって両者間に生じる摩擦力であることを特徴とする自動倉庫ラックの免震構造。
【請求項2】
上記ガイドブロックには、定荷重ばねの付勢力によって当該ガイドブロックを原位置に復帰させる原点復帰機構が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の自動倉庫ラックの免震構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段のラックおよびこのラックに荷物を出し入れするスタッカークレーンを備えた自動倉庫ラックの免震構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ラック基礎上に走行自在に設けられたスタッカークレーンによって、上記スタッカークレーンに沿って配置されたラックに対して荷物の出し入れを行う自動倉庫ラックは、少ない面積で多くの格納量を確保するために、塔状比の大きいものが多い。このため、地震時には、上記ラックの上部から格納物が落下するなどの被害が出易い。
【0003】
このため、地震時におけるラックの応答を低減して、上記格納物の落下を防止するために、上記ラック基礎と倉庫床との間に免震装置を介装することにより、上記ラックおよびスタッカークレーンを一体的に免震化する構造も提案されている。
【0004】
また、図9に示すように、上記免震装置における摩擦抵抗が大きくなるに連れて、ラックの応答加速度などの地震応答が大きくなることから、上記免震化構造に用いられる免震装置としては、例えば下記特許文献1に見られるように、摩擦が小さく、加速度低減効果が高い転がり支承を用いた免震機構が格納物の滑りや落下の防止に有効であると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3556910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような摩擦の小さい免震機構を用いた場合には、平常運転時においても、スタッカークレーンの走行時に生じる慣性力によって上記免震機構が作動してしまい、免震化されているラック部分と、免震化されていないコンベア部分との間における荷物の受け渡しに支障が生じる虞がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、塔状比が大きな自動倉庫ラックを効果的に免震化することができるとともに、平常におけるスタッカークレーンの走行によって免震装置が作動することを防止することができる自動倉庫ラックの免震構造を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、ラック基礎上のX方向に走行自在に設けられたスタッカークレーンによって、上記スタッカークレーンに沿って配置されたラックに対してY方向に荷物の出し入れを行う自動倉庫ラックの免震構造であって、上記ラック基礎と倉庫床との間に、上記倉庫床上に上記X方向またはY方向に配置された第1のガイドレールと、上記ラック基礎の下面に上記第1のガイドレールと直交する上記Y方向またはX方向に配置された第2のガイドレールと、これら第1および第2のガイドレール間に配置されて当該第1および第2のガイドレール上を転動する転がり部材を有するガイドブロックとを備えた免震装置を介装し、かつ上記X方向に作用する設定荷重以下の荷重に対しては上記ラック基礎と上記倉庫床との上記X方向の相対変位を阻止し、上記設定荷重を超える荷重に対しては上記ラック基礎と上記倉庫床との上記X方向の相対変位を許容するトリガー機構を設け、上記トリガー機構は、上記倉庫床に上記Y方向に第3のレールが配置され、この第3のレール上に板面を上記X方向に沿わせた第1の基板が走行自在に立設され、かつ上記ラック基礎に板面を上記X方向に沿わせた第2の基板が垂設されるとともに、上記第1の基板および第2の基板のいずれか一方が他方間に挟まれて両者がボルトで締め付けられてなり、上記設定荷重は、上記ボルトの締め付け力によって両者間に生じる摩擦力であることを特徴とするものである。
【0011】
さらに、請求項に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記ガイドブロックには、定荷重ばねの付勢力によって当該ガイドブロックを原位置に復帰させる原点復帰機構が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1〜のいずれかに記載の発明によれば、ラックとスタッカークレーンが配置されたラック基礎と倉庫床との間に、摩擦が小さく、加速度低減効果が高い転がり支承による免震装置をX−Yの2方向に設けているために、塔状比が大きな自動倉庫ラックであっても、地震時における格納物の滑りや落下を有効に防止することができる。
【0013】
加えて、上記ラック基礎と倉庫床との間に、スタッカークレーンの走行方向である上記X方向に設定荷重以下の荷重が作用した際には、上記ラック基礎と上記倉庫床との上記X方向の相対変位を阻止し、かつ上記設定荷重を超える荷重に対しては上記ラック基礎と上記倉庫床との上記X方向の相対変位を許容するトリガー機構を設けているために、平常におけるスタッカークレーンの走行によって免震装置が作動することを防止することができる。
【0014】
ここで、上記トリガー機構としては、各種の形態のものを用いることができるが、例えば請求項に記載の発明のように、ボルトによって第1および第2の基板を重ね合わせた摩擦機構を用いれば、上記ボルトの締付け力によって、容易に上記設定荷重を調整することができる。なお、このトリガー機構においても、第1の基板を第3のレール上に転がり部材によって転動可能に設けることが好ましい。
【0016】
ところで、特に上記トリガー機構として、請求項に記載の発明のような摩擦機構を用いた場合には、地震時に第1および第2の基板間の摩擦力によって、地震後にラック基礎を原点に復帰させる性能が低下する虞がある。
【0017】
この場合には、請求項に記載の発明のような原点復帰機構を設けることにより、上記摩擦力と原点復帰機構を構成する定荷重ばねの付勢力とを相殺させて、地震後にラック基礎を原位置に復帰させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施形態を示すもので、(a)は左右がY方向となる側面図、(b)は一部のラックを省略した左右がX方向となる正面図である。
図2図1のトリガー機構を示すもので、(a)は左右がY方向となる側面図、(b)は左右がX方向となる正面図である。
図3図2のトリガー機構において、(a)はY方向に荷重が作用した状態を示す模式図、(b)はX方向に荷重が作用した状態を示す模式図である。
図4図1のガイドブロックに設けられた原点復帰機構を示すもので、(a)は正面図、(b)は底面図である。
図5】原点復帰機構の他の実施形態を示すもので、(a)を平常時の底面図、(b)はX方向の一方側に移動した状態を示す底面図、(c)はX方向の他方側に移動した状態を示す底面図である。
図6図3のトリガー機構の摩擦力と図4または図5の原点復帰機構の定荷重ばねによる復元力との関係を示す図である。
図7】本発明の第2の実施形態におけるトリガー機構を示す縦断面図である。
図8】(a)は、図7のA−A線視断面図、(b)は、図7のB−B線視断面図である。
図9】自動倉庫ラックの地震応答を示すもので、(a)はラック加速度の計算結果を示すグラフ、(b)は最大荷すべり量の計算結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
図1図4は、本発明に係る自動倉庫ラックの免震構造の第1の実施形態を示すもので、図中符号1がこの自動倉庫ラックのラック基礎である。
このラック基礎1上には、スタッカークレーン2が水平方向の特定の方向(X方向)に設置されたレール2a上を走行自在に設けられるとともに、このレール2aの両側に沿って荷物を格納する多段のラック3が配置されており、これらラック3にレール2a上を走行するスタッカークレーン2からX方向と直交するY方向に荷物の出し入れを行うようになっている。
【0020】
そして、このラック基礎1と倉庫床4との間に、リニアガイド(免震装置)5、原点への復元機能を有するゴムブロック6およびオイルダンパー7からなる免震機構が介装された免震層が形成されている。ここで、リニアガイド5は、倉庫床4上にY方向に配置された第1のガイドレール8と、ラック基礎1の下面にX方向に配置された第2のガイドレール9と、これら第1および第2のガイドレール8、9間に配置されて第1および第2のガイドレール8、9上を転動する転がり部材を有するガイドブロック10とからなる汎用部材で、ラック基礎1の外周部に沿って複数個所(本実施形態においては、合計8箇所)に配置されている。
【0021】
これらリニアガイド5により、ラック基礎1は、倉庫床4上にX−Yの2方向に相対変位自在に設置されている。また、オイルダンパー7も、X−Yの2方向に対して作用するように配置されている。
【0022】
そして、この免震構造においては、ラック基礎1と倉庫床4との間に、X方向に作用する設定荷重以下の荷重に対してはラック基礎1と倉庫床4とを一体的に連結することにより互いのX方向の相対変位を阻止し、かつ上記設定荷重を超える荷重に対してはラック基礎1と倉庫床4とのX方向の相対変位を許容するトリガー機構が設けられている。
【0023】
上記トリガー機構は、摩擦機構を利用したもので、図2に示すように、倉庫床4上に、上下の傾斜面によって断面く字状の浮き上がり防止形状を有する第3のレール11がY方向に敷設されている。そして、この第3のレール11に沿って、両側部に第3のレール11の上下の傾斜面上を転動するローラーベアリング12を備えた走行板13が走行自在に設けられ、この走行板13上に、第1の基板14が一体的に立設されている。
【0024】
この第1の基板14は、その板面をX方向に沿わせて配置されるとともに、当該板面を貫通する長穴15が水平方向に穿設されている。さらに、この第1の基板14を間に挟む1対のL字状の第2の基板16が配設され、第2の基板16の天板16aがラック基礎1の下面に固定されている。
【0025】
そして、これら3枚の基板14、16は、一方の第2の基板16から長穴15を介して他方の第2の基板16に挿通されて、先端部にナット17が螺合されたボルト18によって連結されている。この際に、ボルト18の締め付け力(ボルト18に作用する張力)によって第1および第2の基板14、16間に生じる摩擦力により、上述した設定荷重が調整されている。
【0026】
具体的には、上記摩擦力が、平常時にスタッカークレーン2の走行・停止時の慣性力によってラック基礎1から倉庫床4に作用する水平方向の荷重よりも大きく、かつ地震時に倉庫床4からラック基礎1に伝達しようとする水平荷重よりも小さくなるようにボルト18の締付け力が調整されている。
【0027】
これにより、図3(a)に示すように、平常時および地震時共に、スタッカークレーン2による荷物の出し入れ方向であるY方向に水平荷重が作用した際には、走行板13のローラーベアリング12が第3のレール11上を転動することによって追従することにより、Y方向については常時免震機構が作動するようになっている。
【0028】
また、図3(b)に示すように、平常時にスタッカークレーン2の走行方向であるX方向に水平荷重が作用した際には、第1および第2の基板14、16間の摩擦力が勝る結果、倉庫床4に対するラック基礎1の相対変位が生じることがなく、地震時に上記摩擦力を上回る水平荷重が作用した際に、第1および第2の基板14、16間に滑りが生じ、倉庫床4に対するラック基礎1の相対変位が生じて、上記X方向についても、リニアガイド5、積層ゴム支承6およびオイルダンパー7からなる免震機構が作動するようになっている。
【0029】
さらに、この免震構造においては、図4に示すように、リニアガイド5のガイドブロック10には、地震動が終了した後に、このガイドブロック10を原位置に復帰させるための原点復帰機構が設けられている。この原点復帰機構は、ガイドブロック10の原位置にばねガイド20を係止するストッパ21と、基端部がリール22に巻きまわされて当該リール22から引き出された先端部がばねガイド20の各端部に固定された一対の定荷重ばね23とから構成されたものである。
【0030】
また、図5(a)は、上記原点復帰機構の他の実施形態を示すもので、この原点復帰機構においては、ガイドブロック10の原位置における走行方向の両端部に、それぞればねガイド20a、20bと、これらを係止するストッパ21a、21bが設けられ、各々のばねガイド20a、20bの両端部に、基端部がリール22a、22bに巻き回されて当該リール22a、22bから引き出された定荷重ばね23a、23bの先端部が固定されたものである。
【0031】
ここで、図5(a)〜(c)および図6に基づいて、上記原点復帰機構の作用について説明すると、地震後に図5(b)に示すようにガイドブロック10が原位置よりも右方に変位すると、定荷重ばね23bに付勢力(引張力)が発生する。そして、この付勢力によって上記トリガー機構の摩擦力が相殺されることにより、ガイドブロック10が図5(a)に示す原位置に復帰する。
【0032】
これとは逆に、地震後に図5(c)に示すようにガイドブロック10が原位置よりも左方に変位すると、定荷重ばね23aに付勢力(引張力)が発生する。そして、この付勢力によって上記トリガー機構の摩擦力が相殺されることにより、同様にガイドブロック10が図5(a)に示す原位置に復帰する。
【0033】
以上のように、上記構成からなる自動倉庫ラックの免震構造によれば、ラック3とスタッカークレーン2が配置されたラック基礎1と倉庫床4との間に、摩擦が小さく、加速度低減効果が高いリニアガイド5をX−Yの2方向に設けているために、塔状比が大きな自動倉庫ラックであっても、地震時における格納物の滑りや落下を有効に防止することができる。
【0034】
これに加えて、ラック基礎1と倉庫床4との間に、スタッカークレーン2の走行方向であるX方向に、第1および第2の基板14、16間の摩擦力以下の水平荷重が作用した際にはラック基礎1と倉庫床4とのX方向の相対変位を阻止し、かつ上記摩擦力を超える水平荷重に対してはラック基礎1と倉庫床4とのX方向の相対変位を許容してリニアガイド5を作動させるトリガー機構を設けているために、平常におけるスタッカークレーン2の走行によってリニアガイド5が作動することを防止することができる。
【0035】
さらに、リニアガイド5のガイドブロック10に、地震動が終了した後に、このガイドブロック10を原位置に復帰させるための定荷重ばね23、23a、23bを用いた原点復帰機構を設けているために、上記摩擦力と定荷重ばね23、23a、23bの付勢力とを相殺させることにより、地震後にラック基礎1を原位置に復帰させることができる。
【0036】
(第2の実施形態)
図7および図8は、本発明に係る自動倉庫ラックの免震構造の第2の実施形態を示すもので、図1図4に示したものと同一構成部分に付いては、同一符号を付してその説明を簡略化する。
【0037】
この免震構造においては、ラック基礎1と倉庫床4との間に、図2および図3に示したトリガー機構に変えて、図7および図8に示すトリガー機構が設けられている。
このトリガー機構は、ラック基礎1の下面に上側治具31が垂設されるとともに、この上側治具31に対向する倉庫床4上に下側治具32が立設され、これら上側治具31と下側治具32との間にロックピン30が設けられたものである。
【0038】
上記上側治具31は、上端部がラック基礎1の下面に取り付けられた基板31aに固定されるとともに一側面が開口した角筒状の支持部材33と、この支持部材33の下端開口を塞ぐ底板34とからなるもので、底板34の中央部に、ロックピン30が嵌合される穴部35が穿設されている。
【0039】
他方、下側治具32は、上側治具31の底板34の下方において長手方向が荷物の出し入れ方向であるY方向に配置された長方形板状の天板36と、この天板36の長手方向両側に一体化されて下端部が倉庫床4上に取り付けられた基板32aに固定された一対の脚部37とからなるもので、天板36には、上記Y方向に延在する長穴38が穿設されている。
【0040】
そして、上側治具31の穴部35にロックピン30の上端部分が嵌合されるとともに、当該ロックピン30の下部が下側治具32の長穴38に挿入されている。ここで、長穴38は、ロックピン30が緩く挿入可能な幅寸法に形成されており、これによりロックピン30は、長穴38の長手方向に向けて相対変位自在に挿入されている。
【0041】
さらに、ロックピン30の上側治具31と下側治具32との間に露出する外周面には、全周に亘って所定深さ寸法の切り欠き部30aが形成されている。ここで、切り欠き部30aにおける強度は、平常時にスタッカークレーン2の走行・停止時の慣性力によってラック基礎1から倉庫床4に作用する水平方向の荷重に抗し得る強度であって、かつ地震時に倉庫床4からラック基礎1に作用する水平荷重によって切断(せん断)される強度に設定されている。
【0042】
上記構成からなるトリガー機構を備えた自動倉庫ラックの免震構造においては、平常時および地震時共に、スタッカークレーン2による荷物の出し入れ方向であるY方向に水平荷重が作用した際には、上側治具31に嵌合されたロックピン30が下側治具32の長穴38に沿って移動することにより追従する。この結果、Y方向については、常時免震機構が作動する。
【0043】
これに対して、平常時にスタッカークレーン2の走行方向であるX方向に、走行・停止時の慣性力によって水平荷重が作用した際には、ロックピン30によって倉庫床4とラック基礎1とが一体化されているために、免震機構が作動することは無い。
【0044】
そして、地震時に、上記X方向にロックピン30の切り欠き部30aにおけるせん断強度を上回る水平荷重が作用した際には、当該ロックピン30が切り欠き部30aにおいて破断することにより、倉庫床4に対するラック基礎1の相対変位が生じて、免震機構が作動する。この結果、地震時には、X−Yの2方向に免震機構が作動する。
【0045】
したがって、上述した第2の実施形態の免震構造においても、第1の実施形態に示したものと同様に作用効果を得ることができる。また、この免震構造においては、地震時にロックピン30が切断されているために、図4に示したような地震後における原点復帰機構を省略することも可能になる。
【0046】
なお、上記第1および第2の実施形態においては、第1および第2のガイドレール8、9として、レール面が平坦なもののみを示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、鉛直方向に凹円弧を描く円弧レールを用いることもできる。この場合には、当該円弧レールによって原点への復元機能が得られるために、ゴムブロック6の併用を省くことが可能になる。
【符号の説明】
【0047】
1 ラック基礎
2 スタッカークレーン
3 ラック
4 倉庫床
5 リニアガイド(免震装置)
8 第1のガイドレール
9 第2のガイドレール
10 ガイドブロック
11 第3のレール
14 第1の基板
16第2の基板
18 ボルト
21、21a、21b ストッパ
23、23a、23b 定荷重ばね
30 ロックピン
38 長穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9