特許第6373181号(P6373181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6373181液晶シール剤及びそれを用いた液晶表示セル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373181
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】液晶シール剤及びそれを用いた液晶表示セル
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1339 20060101AFI20180806BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20180806BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20180806BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   G02F1/1339 505
   C09K3/10 B
   C09K3/10 E
   C09K3/10 L
   C09K3/10 Q
   C09K3/10 D
   C08F2/44
   C08F2/44 Z
   C08F2/50
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-249665(P2014-249665)
(22)【出願日】2014年12月10日
(65)【公開番号】特開2016-109998(P2016-109998A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌典
(72)【発明者】
【氏名】坂野 常俊
(72)【発明者】
【氏名】西原 栄一
【審査官】 磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−086291(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/090621(WO,A1)
【文献】 国際公開第02/100969(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1339
C09K 3/10
C08F 2/44
C08F 2/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)硬化性化合物、及び(B)熱硬化剤を含有する液晶滴下工法用液晶シール剤において、成分(A)中に(a−1)一分子中にエポキシ基及びアリル基をそれぞれ1つ以上有する化合物、及び(a−2)(メタ)アクリル化エポキシ化合物を含有する液晶滴下工法用液晶シール剤。
【請求項2】
更に、成分(C)メルカプト基を有する化合物を含有する請求項1に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
【請求項3】
更に、成分(D)光ラジカル重合開始剤を含有する請求項1又は2に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
【請求項4】
更に、成分(E)熱ラジカル重合開始剤を含有する請求項1乃至のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
【請求項5】
更に、成分(F)シランカップリング剤を含有する請求項1乃至のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
【請求項6】
更に、成分(G)無機フィラーを含有する請求項1乃至のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
【請求項7】
更に、成分(H)有機フィラーを含有する請求項1乃至のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
【請求項8】
更に、成分(I)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有する請求項1乃至のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
【請求項9】
2枚の基板により構成される液晶表示セルにおいて、一方の基板に形成された請求項1乃至のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせ、その後光及び/又は熱により硬化することを特徴とする液晶表示セルの製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤を硬化して得られる硬化物でシールされた液晶表示セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光及び/又は熱によって硬化する液晶シール剤であって、液晶滴下工法に使用される液晶シール剤に関する。より詳細には、接着性が高く、低液晶汚染性であり、かつ保存安定性の良い液晶滴下工法用液晶シール剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の液晶表示セルの大型化に伴い、液晶表示セルの製造法として、より量産性の高い、いわゆる液晶滴下工法が提案されていた(特許文献1、特許文献2参照)。具体的には、一方の基板に形成された液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせることにより液晶が封止される液晶表示セルの製造方法である。
【0003】
しかし、液晶滴下工法は、未硬化の状態の液晶シール剤が液晶に接触するため、その際に液晶シール剤の成分が液晶に溶解(溶出)して液晶の抵抗値を低下させ、シール近傍の表示不良を発生させるという問題点がある。
【0004】
この課題を解決する為、現在は液晶滴下工法用の液晶シール剤として光熱併用型のものが用いられ、実用化されている(特許文献3、4)。この液晶シール剤を使用した液晶滴下工法では、基板に挟まれた液晶シール剤に光を照射して一次硬化させた後、加熱して二次硬化させることを特徴とする。この方法によれば、未硬化の液晶シール剤を光によって速やかに硬化でき、液晶シール剤成分の液晶への溶解(溶出)を抑えることが可能である。さらに、光硬化のみでは光硬化時の硬化収縮等による接着強度不足という問題も発生するが、光熱併用型であれば加熱による二次硬化によって応力緩和効果が得られ、そういった問題も解消できるという利点を有する。
【0005】
しかしながら、近年では、液晶表示素子の小型化に伴い、液晶表示素子のアレイ基板のメタル配線部分やカラーフィルター基板のブラックマトリックス部分により液晶シール剤に光が当たらない遮光部が生じ、シール近傍の表示不良の問題が以前よりも深刻なものとなっている。すなわち、遮光部の存在によって上記光による一次硬化が不十分となり、液晶シール剤中に未硬化成分が多量に残存する。この状態で熱による二次硬化工程に進んだ場合、当該未硬化成分の液晶への溶解は、熱によって促進されてしまうという結果をもたらし、シール近傍の表示不良を引き起こす。
【0006】
この課題を解決する為には、硬化性化合物の反応性を改善し、液晶への溶解前に硬化を進行させる手が非常に有用である。この為、熱反応性を改良する様々な検討がなされている。上記遮光部において、光によって十分に硬化していない液晶シール剤を、低温から速やかに反応させ、液晶汚染を抑えようという試みである。例えば、特許文献5、6では、熱ラジカル開始剤を用いる方法が開示されている。また、特許文献7では、硬化促進剤として多価カルボン酸を用いる方法が開示されている。
【0007】
しかし、これら熱ラジカル開始剤や多価カルボン酸のような硬化促進剤の添加は、それ自体の液晶への溶出がある為、低液晶汚染性を充分に実現できるものとは言いえない。また、これらの成分は、反応速度を速くする効果より、逆に保存安定性を悪くするといったデメリットを内包する。
【0008】
以上述べたように、液晶滴下工法用液晶シール剤の開発は非常に精力的に行われているにもかかわらず、低液晶汚染性を実現しながら、良好な保存安定性をも併せ持つ液晶シール剤は未だ実現していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭63−179323号公報
【特許文献2】特開平10−239694号公報
【特許文献3】特許第3583326号公報
【特許文献4】特開2004−61925号公報
【特許文献5】特開2004−126211号公報
【特許文献6】特開2009−8754号公報
【特許文献7】国際公開2008/004455号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、光及び/又は熱によって硬化する液晶シール剤に関するものであり、低液晶汚染性に極めて優れる為、液晶表示素子の高精細化、高速応答化、低電圧駆動化、長寿命化を可能とし、さらには保存安定性にも優れる為、作業性が非常に良い液晶滴下工法用液晶シール剤を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、硬化化合物成分中にアリル基を有する化合物が含有する液晶シール剤が上記課題を解決するものであることを発見し、本発明に至ったものである。即ち本発明は、次の(1)〜(11)に関するものである。なお本明細書において、「(メタ)アクリル」と記載した場合には、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を意味するものとする。
【0012】
1)
(A)硬化性化合物、及び(B)熱硬化剤を含有する液晶滴下工法用液晶シール剤において、成分(A)中に(a−1)アリル基を有する化合物、及び(a−2)(メタ)アクリル化エポキシ化合物を含有する液晶滴下工法用液晶シール剤。
2)
上記成分(a−1)が一分子中にエポキシ基及びアリル基をそれぞれ1つ以上有する化合物を含有する上記1)に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
3)
更に、成分(C)メルカプト基を有する化合物を含有する上記1)又は2)に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
4)
更に、成分(D)光ラジカル重合開始剤を含有する上記1)乃至3)の何れか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
5)
更に、成分(E)熱ラジカル重合開始剤を含有する上記1)乃至4)のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
6)
更に、成分(F)シランカップリング剤を含有する上記1)乃至5)のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
7)
更に、成分(G)無機フィラーを含有する上記1)乃至6)のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
8)
更に、成分(H)有機フィラーを含有する上記1)乃至7)のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
9)
更に、成分(I)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有する上記1)乃至8)のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
10)
2枚の基板により構成される液晶表示セルにおいて、一方の基板に形成された上記1)乃至9)のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせ、その後光及び/又は熱により硬化することを特徴とする液晶表示セルの製造方法。
11)
上記1)乃至9)のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤を硬化して得られる硬化物でシールされた液晶表示セル。
【発明の効果】
【0013】
本発明の液晶シール剤は、液晶表示特性に与える影響が極めて小さい為、液晶表示素子の高精細化、高速応答化、低電圧駆動化、長寿命化を可能とし、さらに保存安定性に優れる為、液晶表示セルの製造の容易化に貢献するものである。また、接着強度等の硬化物特性に優れる為、信頼性の高い液晶表示素子の製造を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の液晶シール剤は、(A)硬化性化合物を含有し、かつその硬化性化合物は、(a)アリル基を有する化合物、及び(b)(メタ)アクリル化エポキシ化合物を含有する。
(メタ)アクリル基部分が良好な反応性に寄与している一方で熱硬化剤との経時安定性が悪く、粘度の上昇が大きくなる傾向であった。特にアミン系硬化剤に対しては(メタ)アクリル基とのマイケル付加反応が進むため作業性の低下が課題であった。そこでラジカル反応性はアクリル基ほど速くはないが、活性を示すアリル基を有する化合物を併用することで反応性を落とさず、経時安定性に優れる液晶シール剤が得られる。また、反応性がアクリル基ほど速くないことで三次元架橋されすぎない構造を持ち、応力を緩和する効果があり、接着強度の高い硬化物が得られる。
【0015】
成分(a−1)アリル基を有する化合物としては、特に限定されることはなく、例えば、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、アリルグリシジルエーテル(ネオアリルG:ダイソー株式会社製)、トリメチロールプロパンジアリルエーテル(ネオアリルT−20:ダイソー株式会社製)、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル(ネオアリルP−30:ダイソー株式会社製)、グリセリンモノアリルエーテル(ネオアリルE−10:ダイソー株式会社製)、5−アリル−1,3−ジグリシジルイソシアヌル酸(MA−DGIC:四国化成株式会社製)、1,3−ジアリル−5−グリシジルイソシアヌル酸(DA−MGIC:四国化成株式会社)、1,3−ジアリル−5−メチルイソシアヌル酸(MeDAIC:四国化成株式会社)、ジアリルビスフェノールA型ジグリシジルエーテル(RE−810NM:日本化薬株式会社製)、ジアリルビスフェノールS型ジグリシジルエーテルなどが挙げられる。この内好ましくはアリルグリシジルエーテル、5−アリル−1,3−ジグリシジルイソシアヌル酸、1,3−ジアリル−5−グリシジルイソシアヌル酸、ジアリルビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ジアリルビスフェノールS型ジグリシジルエーテルであり、更に好ましくは5−アリル−1,3−ジグリシジルイソシアヌル酸、1,3−ジアリル−5−グリシジルイソシアヌル酸、ジアリルビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ジアリルビスフェノールS型ジグリシジルエーテルである。
【0016】
成分(a−1)は、分子内にさらにエポキシ基を有する化合物であることが好ましい。すなわち、一分子中にエポキシ基及びアリル基をそれぞれ1つ以上有する化合物である。エポキシ基は主に接着強度向上に寄与するが、一方で液晶に溶出し易いという欠点を有する。成分(a−1)がエポキシ基を有する場合、アリル基の光反応によって、硬化系に取り込まれる為、上記欠点を解決することができる。この観点から、成分(a−1)としては、ジアリルビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ジアリルビスフェノールS型ジグリシジルエーテルが好ましい。
なお、本願発明は、(a−1)として分子内にアリル基及びエポキシ基を有する化合物を用い、エポキシ基のみを有するエポキシ化合物を、添加しない態様が好ましい。これはエポキシ化合物による液晶汚染を抑える為である。また、接着強度の更なる向上の為、添加する場合であっても、液晶シール剤総量中に10質量%未満とする場合が好ましく、更に好ましくは5質量%未満である。
【0017】
成分(a−1)の含有量の観点からは、上記(A)成分中、(a−1)成分を5〜50質量%含有する場合が好ましく、更に好ましくは10〜30質量%である。成分(a−1)の含有量が5質量%より少ないと本願発明の効果、保存安定性という特性が充分に得られなくなる。成分(a−1)の含有量が50質量%より多いと反応性の低下により液晶への汚染性が悪くなる場合がある。
【0018】
成分(a−2)(メタ)アクリル化合物としては、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸の周知の反応により得ることができるエポキシアクリレートが好適である。また、この場合、エポキシ基の全部を(メタ)アクリル化しても良いし、一部を(メタ)アクリル化しても良い。例えば、エポキシ化合物に所定の当量比の(メタ)アクリル酸と触媒(例えば、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン等)と、重合防止剤(例えば、メトキノン、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、フェノチアジン、ジブチルヒドロキシトルエン等)を添加して、例えば80〜110℃でエステル化反応を行うことにより得られる。原料となるエポキシ化合物としては、特に限定されるものではないが、2官能以上のエポキシ化合物が好ましく、例えばビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールFノボラック型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、脂肪族鎖状エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、ヒダントイン型エポキシ化合物、イソシアヌレート型エポキシ化合物、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ化合物、その他、二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびそれらのハロゲン化物、水素添加物などが挙げられる。これらのうち液晶汚染性の観点から、より好ましいものはビスフェノール型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物である。また、エポキシ基と(メタ)アクリロイル基との比率は限定されるものではなく、工程適合性及び液晶汚染性の観点から適切に選択される。
【0019】
成分(a−2)の含有量の観点からは、上記(A)成分中、50〜95質量%が好ましく、更に好ましくは70〜90質量%である。
【0020】
本願発明の液晶シール剤は、成分(B)熱硬化剤を含有する。熱硬化剤としては、特に限定されるものではなく、多価アミン類、多価フェノール類、ヒドラジド化合物等を挙げる事ができるが、多価ヒドラジド化合物が特に好適に用いられる。例えば、芳香族ヒドラジドであるテレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6−ピリジンジヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド等をあげることが出来る。また、脂肪族ヒドラジド化合物であれば、例えば、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、N,N’−ヘキサメチレンビスセミカルバジド、クエン酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン等のヒダントイン骨格、好ましくはバリンヒダントイン骨格(ヒダントイン環の炭素原子がイソプロピル基で置換された骨格)を有するジヒドラジド化合物、トリス(1−ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3−ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレート、ビス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート等をあげることができる。硬化反応性と潜在性のバランスから好ましくは、イソフタル酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、トリス(1−ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3−ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレートであり、特に好ましくはマロン酸ジヒドラジド、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレートである。かかる(B)熱硬化剤の含有量としては、液晶シール剤の総量中、0.5〜5質量%含有する場合が好ましく、更に好ましくは1〜3質量%であり、2種以上を混合して用いても良い。
【0021】
本発明の液晶シール剤は、ラジカル反応を促進する為に、成分(C)メルカプト基(−SH)を有する化合物を含有してもよい。メルカプト基(−SH)はラジカル種との共存により不飽和二重結合基に対してエン−チオール反応を起こし、本発明のアリル基を有する化合物とも効率的に反応することができる。メルカプト基を有する化合物としては特に限定されないが、例えばメタンジチオール、1,2−ジメルカプトエタン、1,2−ジメルカプトプロパン、2,2−ジメルカプトプロパン、1,3−ジメルカプトプロパン、1,2,3−トリメルカプトプロパン、1,4−ジメルカプトブタン、1,6−ジメルカプトヘキサン、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,5−ジメルカプト−3−オキサペンタン、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジチオール、3,4−ジメトキシブタン−1,2−ジチオール、2−メルカプトメチル−1,3−ジメルカプトプロパン、2−メルカプトメチル−1,4−ジメルカプトブタン、2−(2−メルカプトエチルチオ)−1,3−ジメルカプトプロパン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)−3−メルカプトプロパン、1,1,1−トリス(メルカプトメチル)プロパン、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ブタンジオールビス(2−メルカプトアセテート)、1,4−ブタンジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、1,1−ジメルカプトシクロヘキサン、1,4−ジメルカプトシクロヘキサン、1,3−ジメルカプトシクロヘキサン、1,2−ジメルカプトシクロヘキサン、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2−メルカプトアセテート)、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプト−2−プロパノール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、1,2−ジメルカプト−1,3−ブタンジオール、ヒドロキシメチル−トリス(メルカプトエチルチオメチル)メタン、ヒドロキシエチルチオメチルートリス(メルカプトエチルチオ)メタン、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、プロピレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、オクタンジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(4−メルカプトブチレート)、プロピレングリコールビス(4−メルカプトブチレート)、ブタンジオールビス(4−メルカプトブチレート)、オクタンジオールビス(4−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(4−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(4−メルカプトブチレート)、エチレングリコールビス(6−メルカプトバレレート)、プロピレングリコールビス(6−メルカプトバレレート)、ブタンジオールビス(6−メルカプトバレレート)、オクタンジオールビス(6−メルカプトバレレート)、トリメチロールプロパントリス(6−メルカプトバレレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(6−メルカプトバレレート)、1,6−ヘキサンジチオール、1,9−ノナンジチオール、1,10−デカンジチオール、4,4’−ビス(メルカプトメチル)フェニルスルフィド、2,4’−ビス(メルカプトメチル)フェニルスルフィド、2,4,4’−トリ(メルカプトメチル)フェニルスルフィド、2,2’,4,4’−テトラ(メルカプトメチル)フェニルスルフィド、1,3,5−トリス[2−(3−メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上混合して用いても良い。これらのポリチオール化合物のうち、好ましいものは、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、1,3,5−トリス[2−(3−メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)が好ましい。
【0022】
液晶汚染性及び室温保存安定性の観点から、2級チオール構造を持つ1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)が特に好ましい。かかるメルカプト基を有する化合物は、液晶シール剤総量中、通常0.1〜20質量%、好ましくは0.3〜10質量%であり、さらに好ましくは0.5〜10質量%である。含有量が0.1質量%より少ないと十分な硬化性が得られない。含有量が20質量%より多いと室温保存安定性が悪くなる。
【0023】
本発明の液晶シール剤は、光熱併用硬化型の液晶シール剤とする為に、成分(D)光ラジカル重合開始剤を含有しても良い。光ラジカル重合開始剤は、UVや可視光の照射によって、ラジカルを生じ、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、
例えば、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、2−エチルアンスラキノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスヒンオキサイド、カンファーキノン、9−フルオレノン、ジフェニルジスルヒド等を挙げることができる。具体的には、IRGACURERTM 651、184、2959、127、907、369、379EG、819、784、754、500、OXE01、OXE02、DAROCURERTM1173、LUCIRINRTM TPO(いずれもBASF社製)、セイクオールRTMZ、BZ、BEE、BIP、BBI(いずれも精工化学株式会社製)等を挙げることができる。
また、液晶汚染性の観点から、分子内に(メタ)アクリル基を有するものを使用する事が好ましく、例えば2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートと1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2メチル−1−プロパン−1−オンとの反応生成物が好適に用いられる。この化合物は国際公開第2006/027982号記載の方法にて製造して得ることができる。
【0024】
本発明の液晶シール剤で使用しうる成分(D)光ラジカル重合開始剤の液晶シール剤中の含有量は、本発明の液晶シール剤の総量中、通常0.5〜20質量%、好ましくは1〜15質量%である。
【0025】
本発明の液晶シール剤では成分(E)熱ラジカル重合開始剤を用いて、熱反応性を向上させることもできる。熱ラジカル重合開始剤は、加熱によりラジカルを生じ、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、有機過酸化物、アゾ化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾピナコール等が挙げられ、ベンゾピナコールが好適に用いられる。例えば、有機過酸化物としては、カヤメックRTMA、M、R、L、LH、SP-30C、パーカドックスCH−50L、BC−FF、カドックスB−40ES、パーカドックス14、トリゴノックスRTM22−70E、23−C70、121、121−50E、121−LS50E、21−LS50E、42、42LS、カヤエステルRTMP−70、TMPO−70、CND−C70、OO−50E、AN、カヤブチルRTMB、パーカドックス16、カヤカルボンRTMBIC−75、AIC−75(化薬アクゾ株式会社製)、パーメックRTMN、H、S、F、D、G、パーヘキサRTMH、HC、パTMH、C、V、22、MC、パーキュアーRTMAH、AL、HB、パーブチルRTMH、C、ND、L、パークミルRTMH、D、パーロイルRTMIB、IPP、パーオクタRTMND、(日油株式会社製)などが市販品として入手可能である。また、アゾ化合物としては、VA−044、V−070、VPE−0201、VSP−1001等(和光純薬工業株式会社製)等が市販品として入手可能である。また、更には、反応性と液晶への溶解性の観点より、下記式(1)で表される化合物が特に好適に用いられる。なお、本明細書中、上付きのRTMは登録商標を意味する。
【0026】
成分(E)として好ましいものは、分子内に酸素−酸素結合(−O−O−)又は窒素−窒素結合(−N=N−)を有さない熱ラジカル重合開始剤である。分子内に酸素−酸素結合(−O−O−)や窒素−窒素結合(−N=N−)を有する熱ラジカル重合開始剤は、ラジカル発生時に多量の酸素や窒素を発するため、液晶シール剤中に気泡を残した状態で硬化し、接着強度等の特性を低下させる虞がある。ベンゾピナコール系の熱ラジカル重合開始剤(ベンゾピナコールを化学的に修飾したものを含む)が特に好適である。具体的には、ベンゾピナコール、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ジフェノキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラ(4−メチルフェニル)エタン、1,2−ジフェノキシ−1,1,2,2−テトラ(4−メトキシフェニル)エタン、1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ビス(トリエチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ビス(t−ブチルジメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−トリメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−トリエチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−t−ブチルジメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン等、が挙げられ、好ましくは1−ヒドロキシ−2−トリメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−トリエチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−t−ブチルジメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタンであり、さらに好ましくは1−ヒドロキシ−2−トリメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタンであり、特に好ましくは1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタンである。
上記ベンゾピナコールは東京化成工業株式会社、和光純薬工業株式会社等から市販されている。また、ベンゾピナコールのヒドロキシ基をエーテル化することは、周知の方法によって容易に合成可能である。また、ベンゾピナコールのヒドロキシ基をシリルエーテル化することは、対応するベンゾピナコールと各種シリル化剤をピリジン等の塩基性触媒下で加熱させる方法により合成して得ることができる。シリル化剤としては、一般に知られているトリメチルシリル化剤であるトリメチルクロロシラン(TMCS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSTFA)やトリエチルシリル化剤としてトリエチルクロロシラン(TECS)、t−ブチルジメチルシリル化剤としてt−ブチルメチルシラン(TBMS)等が挙げられる。これらの試薬はシリコン誘導体メーカー等の市場から容易に入手することが出来る。シリル化剤の反応量としては対象化合物のヒドロキシ基1モルに対して1.0〜5.0倍モルが好ましい。さらに好ましくは1.5〜3.0倍モルである。1.0倍モルより少ないと反応効率が悪く、反応時間が長くなるため熱分解を促進してしまう。5.0倍モルより多いと回収の際に分離が悪くなったり、精製が困難になったりしてしまう。
【0027】
成分(E)は粒径を細かくし、均一に分散することが好ましい。その平均粒径は、大きすぎると狭ギャップの液晶表示セル製造時に上下ガラス基板を貼り合わせる際のギャップ形成が上手くできない等の不良要因となるため、5μm以下が好ましく、より好ましくは3μm以下である。また、際限なく細かくしても差し支えないが、通常下限は0.1μm程度である。粒径はレーザー回折・散乱式粒度分布測定器(乾式)(株式会社セイシン企業製;LMS−30)により測定できる。
【0028】
成分(E)の含有量としては、液晶シール剤の総量中、0.0001〜10質量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.0005〜5質量%であり、0.001〜3質量%が特に好ましい。
上記合成に使用される塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミンなどが挙げられる。塩基性触媒は反応時に発生する塩化水素をトラップし、反応系を塩基性下に保ったり、ヒドロキシ基の水素を引き抜き、より反応を促進させる効果がある。含有量としては対象のヒドロキシ基に対して0.5倍モル以上あればよく、溶媒として用いてもよい。
【0029】
上記合成には溶媒を用いても良く、例えばヘキサン、エーテル、トルエンなどの非極性有機溶媒は反応に関与しないため優れている。またピリジン、ジメチルホルムアルデヒド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)及びアセトニトリルなどの極性溶媒も好ましい。含有量としては溶質の重量濃度が5〜40%になる程度が好ましい。さらに好ましくは10〜30%が好ましい。5%より少ないと反応が遅く、熱による分解が促進され収率が落ちてしまう。40%より多いと副生成物が多くなり、収率が落ちてしまう。
【0030】
成分(E)熱ラジカル重合開始剤は粒径を細かくし、均一に分散することが好ましい。その平均粒径は、大きすぎると狭ギャップの液晶表示セル製造時に上下ガラス基板を貼り合わせろ時のギャップ形成が上手くできない等の不良要因となる為、5μm以下が好ましく、より好ましくは3μm以下である。また際限なく細かくしても差し支えないが、通常下限は0.1μm程度である。粒径はレーザー回折・散乱式粒度分布測定器(乾式)(株式会社セイシン企業製;LMS−30)により測定できる。
【0031】
該熱ラジカル重合開始剤の含有量としては、本発明の液晶シール剤の総量中、0.0001〜10質量%であることが好ましく、更に好ましくは0.0005〜7質量%であり、0.001〜3質量%が特に好ましい。
【0032】
本発明の液晶シール剤は、成分(F)としてシランカップリング剤を添加して、接着強度や耐湿性の向上を図ることができる。
成分(F)としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤はKBMシリーズ、KBEシリーズ等として信越化学工業株式会社等によって販売されている為、市場から容易に入手可能である。本発明の液晶シール剤において、成分(F)を使用する場合には、液晶シール剤総量中、0.05〜3質量%が好適である。
【0033】
本発明の液晶シール剤では成分(G)無機フィラーを用いて、接着強度向上や耐湿信頼性向上を図ることができる。この(G)無機フィラーとしては、溶融シリカ、結晶シリカ、シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン、アスベスト等が挙げられ、好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウムであり、更に好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、タルクである。これら無機フィラーは2種以上を混合して用いても良い。その平均粒径は、大きすぎると狭ギャップの液晶セル製造時に上下ガラス基板貼り合わせ時のギャップ形成がうまくできない等の不良要因となるため、3μm以下が適当であり、好ましくは2μm以下である。粒径はレーザー回折・散乱式粒度分布測定器(乾式)(株式会社セイシン企業製;LMS−30)により測定した。
【0034】
本発明の液晶シール剤で使用しうる無機フィラー(G)の液晶シール剤中の含有量は、本発明の液晶シール剤の総量中、通常3〜60質量%、好ましくは5〜50質量%である。無機フィラーの含有量が少な過ぎる場合、ガラス基板に対する接着強度が低下し、また耐湿信頼性も劣るために、吸湿後の接着強度の低下も大きくなる場合がある。又、無機フィラーの含有量が多過ぎる場合、フィラー含有量が多すぎるため、つぶれにくく液晶セルのギャップ形成ができなくなってしまう場合がある。
【0035】
本願発明の液晶シール剤は、成分(H)として有機フィラーを含有しても良い。上記有機フィラーとしては、例えばウレタン微粒子、アクリル微粒子、スチレン微粒子、スチレンオレフィン微粒子及びシリコーン微粒子が挙げられる。なおシリコーン微粒子としてはKMP−594、KMP−597、KMP−598(信越化学工業製)、トレフィルRTME−5500、9701、EP−2001(東レダウコーニング社製)が好ましく、ウレタン微粒子としてはJB−800T、HB−800BK(根上工業株式会社)、スチレン微粒子としてはラバロンRTMT320C、T331C、SJ4400、SJ5400、SJ6400、SJ4300C、SJ5300C、SJ6300C(三菱化学製)が好ましく、スチレンオレフィン微粒子としてはセプトンRTMSEPS2004、SEPS2063が好ましい。
これら有機フィラーは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また2種以上を用いてコアシェル構造としても良い。これらのうち、好ましくは、アクリル微粒子、シリコーン微粒子である。
上記アクリル微粒子を使用する場合、2種類のアクリルゴムからなるコアシェル構造のアクリルゴムである場合が好ましく、特に好ましくはコア層がn−ブチルアクリレートであり、シェル層がメチルメタクリレートであるものが好ましい。これはゼフィアックRTMF−351としてアイカ工業株式会社から販売されている。
また、上記シリコーン微粒子としては、オルガノポリシロキサン架橋物粉体、直鎖のジメチルポリシロキサン架橋物粉体等があげられる。また、複合シリコーンゴムとしては、上記シリコーンゴムの表面にシリコーン樹脂(例えば、ポリオルガノシルセスキオキサン樹脂)を被覆したものがあげられる。これらの微粒子のうち、特に好ましいのは、直鎖のジメチルポリシロキサン架橋粉末のシリコーンゴム又はシリコーン樹脂被覆直鎖ジメチルポリシロキサン架橋粉末の複合シリコーンゴム微粒子である。これらのものは、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また、好ましくは、ゴム粉末の形状は、添加後の粘度の増粘が少ない球状が良い。本発明の液晶シール剤において、成分(D)を使用する場合には、液晶シール剤の総量中、通常5〜50質量%、好ましくは5〜40質量%である。
【0036】
本願発明の液晶シール剤は、成分(I)としてウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有しても良い。ウレタン(メタ)アクリレート化合物は硬化物に可とう性を付与できる為、接着強度の向上に寄与する。
このウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン結合を有する(メタ)アクリル樹脂であれば、特に限定されるものではないが、ポリエーテル変性ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル変性(メタ)アクリレート、ポリカーボネート変性(メタ)アクリレートなどが挙げられる。具体的にはポリエーテル変性ウレタン(メタ)アクリレートとしてはKAYARAD UX−4101、KAYARAD UX−2301、KAYARAD UX−2201(以上日本化薬株式会社製)、ポリエステル変性(メタ)アクリレートとしてはKAYARAD UX−3301、KAYARAD UX−3204(以上日本化薬株式会社製)、ポリカーボネート変性(メタ)アクリレートとしてはKAYARAD UXT−6100(日本化薬株式会社製)等が挙げられ、KAYARAD UX−4101、KAYARAD UX−3301、KAYARAD UX−3204、KAYARAD UXT−6100が好ましく、KAYARAD UXT−6100が更に好ましい。
【0037】
本発明の液晶シール剤には、さらに必要に応じて、エポキシ化合物、(メタ)アクリル酸エステルのモノマー及び/又はオリゴマーなどを使用しても良い。そのようなエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂、その他、二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびそれらのハロゲン化物、水素添加物などが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルのモノマー、オリゴマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールと(メタ)アクリル酸の反応物、ジペンタエリスリトール・カプロラクトンと(メタ)アクリル酸の反応物等が挙げられる。
【0038】
本発明の液晶シール剤には、さらに必要に応じて、有機酸やイミダゾール等の硬化促進剤、顔料、レベリング剤、消泡剤、溶剤などの添加剤を配合することができる。
上記硬化促進剤としては、有機酸やイミダゾール等を挙げることができる。
有機酸としては、有機カルボン酸や有機リン酸等が挙げられるが、有機カルボン酸である場合が好ましい。具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、フランジカルボン酸等の芳香族カルボン酸、コハク酸、アジピン酸、ドデカン二酸、セバシン酸、チオジプロピオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリス(2−カルボキシメチル)イソシアヌレート、トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−カルボキシプロピル)イソシアヌレート、ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート等を挙げることができる。
また、イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−ウンデシルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2 ,4−ジアミノ−6(2 ’−エチル−4−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4− ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1 ’))エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
本発明の液晶シール剤において、硬化促進剤を使用する場合には、液晶シール剤の総量中、通常0.1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%である。
【0039】
上記ラジカル重合防止剤としては、光ラジカル重合開始剤や熱ラジカル重合開始剤等から発生するラジカルと反応して重合を防止する化合物であれば特に限定されるものではなく、キノン系、ピペリジン系、ヒンダードフェノール系、ニトロソ系等を用いることができる。具体的には、ナフトキノン、2−ヒドロキシナフトキノン、2−メチルナフトキノン、2−メトキシナフトキノン、2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6,−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6,−テトラメチル−4−メトキシピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6,−テトラメチル−4−フェノキシピペリジン−1−オキシル、ハイドロキノン、2−メチルハイドロキノン、2−メトキシハイドロキノン、パラベンゾキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルクレゾール、ステアリルβ−(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β―(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]、2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニルプロピオネート)メタン、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、パラメトキシフェノール、4−メトキシ−1−ナフトール、チオジフェニルアミン、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミンのアルミニウム塩、商品名アデカスタブLA−81、商品名アデカスタブLA−82(株式会社アデカ製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうちナフトキノン系、ハイドロキノン系、ニトロソ系ピペラジン系のラジカル重合防止剤が好ましく、ナフトキノン、2−ヒドロキシナフトキノン、ハイドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−P−クレゾール、ポリストップ7300P(伯東株式会社製)が更に好ましく、ポリストップ7300P(伯東株式会社製)が最も好ましい。
ラジカル重合防止剤の含有量としては本発明の液晶シール剤総量中、0.0001〜1質量%が好ましく、0.001〜0.5質量%が更に好ましく、0.01〜0.2質量%が特に好ましい。
【0040】
本発明の液晶シール剤を得る方法の一例としては、次に示す方法がある。まず、(a−1)成分及び(a−2)成分に必要に応じて他の硬化性化合物を混合し(A)成分とし、さらに必要に応じて(D)成分を加熱溶解する。次いで室温まで冷却後、(F)成分を添加し、更に必要に応じ(C)成分、(E)成分、(G)成分、並びに有機フィラー、消泡剤、及びレベリング剤、溶剤等を添加し、公知の混合装置、例えば3本ロール、サンドミル、ボールミル等により均一に混合し、金属メッシュにて濾過することにより本発明の液晶シール剤を製造することができる。
【0041】
本発明の液晶表示セルは、基板に所定の電極を形成した一対の基板を所定の間隔に対向配置し、周囲を本発明の液晶シール剤でシールし、その間隙に液晶が封入されたものである。封入される液晶の種類は特に限定されない。ここで、基板とはガラス、石英、プラスチック、シリコン等からなる少なくとも一方に光透過性がある組み合わせの基板から構成される。その製法としては、本発明の液晶シール剤に、グラスファイバー等のスペーサ(間隙制御材)を添加後、該一対の基板の一方にディスペンサー、またはスクリーン印刷装置等を用いて該液晶シール剤を塗布した後、必要に応じて、80〜120℃で仮硬化を行う。その後、該液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下し、真空中にてもう一方のガラス基板を重ね合わせ、ギャップ出しを行う。ギャップ形成後、90〜130℃で1〜2時間硬化することにより本発明の液晶表示セルを得ることができる。また光熱併用型として使用する場合は、紫外線照射機により液晶シール剤部に紫外線を照射させて光硬化させる。紫外線照射量は、好ましくは500〜6000mJ/cm、より好ましくは1000〜4000mJ/cmの照射量が好ましい。その後必要に応じて、90〜130℃で1〜2時間硬化することにより本発明の液晶表示セルを得ることができる。このようにして得られた本発明の液晶表示セルは、液晶汚染による表示不良が無く、接着性、耐湿信頼性に優れたものである。スペーサとしては、例えばグラスファイバー、シリカビーズ、ポリマービーズ等があげられる。その直径は、目的に応じ異なるが、通常2〜8μm、好ましくは4〜7μmである。その使用量は、本発明の液晶シール剤100質量%に対し通常0.1〜4質量%、好ましくは0.5〜2質量%、更に、好ましくは0.9〜1.5質量%程度である。
【0042】
本発明の液晶シール剤は、反応性が良好であり、光又は熱によって速やかに分子間の架橋がなされる為、構成成分の液晶への溶出も極めて少なく、液晶表示セルの表示不良を低減することが可能である。また、保存安定性にも優れる為、液晶表示セルの製造に適している。更に、その硬化物は接着強度、耐熱性、耐湿性等の各種硬化物特性にも優れる為、本発明の液晶シール剤を用いることにより、信頼性に優れる液晶表示セルを作成することが可能である。また、本発明の液晶シール剤を用いて作成した液晶表示セルは、電圧保持率が高く、イオン密度が低いという液晶表示セルとして必要な特性も充足される。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。尚、特別の記載のない限り、本文中「部」及び「%」とあるのは質量基準である。
[参考合成例1]
[ビスフェノールFエポキシ樹脂のエポキシアクリレートの合成]
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製、YDF−8170C、エポキシ当量160g/eq)68.9gをトルエン66.7gに溶解し、これに重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエン1500ppmを加え、60℃まで昇温した。その後、アクリル酸31.1gを加え更に80℃まで昇温し、これに反応触媒であるトリメチルアンモニウムクロライド1500ppmを添加して、98℃で約30時間攪拌した。得られた反応液を水洗し、トルエンを留去することにより、ビスフェノールFエポキシのエポキシアクリレートを得た。
【0044】
[参考合成例2]
[1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタンの合成]
市販ベンゾピナコール(東京化成製)100部(0.28モル)をジメチルホルムアルデヒド350部に溶解させた。これに塩基触媒としてピリジン32部(0.4モル)、シリル化剤としてBSTFA(信越化学工業製)150部(0.58モル)を加え70℃まで昇温し、2時間攪拌した。得られた反応液を冷却し、攪拌しながら、水200部を入れ、生成物を沈殿させると共に未反応シリル化剤を失活させた。沈殿した生成物をろ別分離した後十分に水洗した。次いで得られた生成物をアセトンに溶解し、水を加えて再結晶させ、精製した。目的の1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタンを105.6部(収率88.3%)得た。
HPLC(高速液体クロマトグラフィー)で分析した結果、純度は99.0%(面積百分率)であった。
【0045】
(液晶滴下工法用のシール剤の調製)
[実施例1〜4、比較例1〜3]
下記表1に示す割合で各硬化性化合物成分(成分(a−1)、(a−2)及びその他硬化性化合物)を混合攪拌した後、90℃に加熱した。そこへ、光ラジカル重合開始剤(成分(D))を加熱溶解させた後、室温まで冷却し、シランカップリング剤(成分(F))、無機フィラー(成分(G))、熱硬化剤(成分(B))、熱ラジカル重合開始剤(成分(E))、有機フィラー(成分(H))等を添加し、攪拌した後、3本ロールミルにて分散させ、金属メッシュ(635メッシュ)で濾過し、液晶滴下工法用シール剤実施例1〜4を調製した。また、同様にして、下記表1に示す割合で比較例1〜3を調製した。
【0046】
(保存安定性試験)
得られた液晶シール剤の25℃における粘度変化を測定した。23℃50RH%の条件下で120時間放置した後の粘度測定を行い、初期粘度に対する粘度増加率(%)を表1に示す。粘度はE型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて測定した。
【0047】
(評価用液晶セルの作成)
透明電極付き基板に配向膜液(PIA−5540−05A;チッソ株式会社製)を塗布、焼成し、ラビング処理を施した。この基板に得られた液晶シール剤を貼り合せ後の線幅が1mmとなるようにメインシールおよびダミーシールをディスペンスし、次いで液晶(JC−5015LA;チッソ株式会社製)の微小滴をシールパターンの枠内に滴下した。更にもう一枚のラビング処理済み基板に面内スペーサ(ナトコスペーサKSEB−525F;ナトコ株式会社製;貼り合せ後のギャップ幅5μm)を散布、熱固着し、貼り合せ装置を用いて真空中で先の液晶滴下済み基板と貼り合せた。大気開放してギャップ形成した後、シールパターン枠内のみマスクをしてUV照射機により3000mJ/cmの紫外線を照射後、オーブンに投入して120℃1時間熱硬化させ評価用液晶テストセルを作成した。
【0048】
作成した評価用液晶セルのシールの耐差込み性およびシール近傍の液晶配向乱れを偏光顕微鏡にて観察し、耐差込み性及びシール近傍の液晶配向について以下に示す基準に従って評価を行った。結果を表1に示す。
【0049】
(シール近傍の液晶配向の評価)
◎:液晶の配向乱れがシールから0.2mm未満である。
○:液晶の配向乱れがシールから0.2mm以上0.4mm未満である。
△:液晶の配向乱れがシールから0.4mm以上0.6mm未満である。
×:液晶の配向乱れがシールから0.6mm以上1.0mm未満である。
【0050】
(ガラス転移温度測定)
得られた液晶シール剤を二枚のフィルムに挟んだものを100μmの厚さになるようにラミネートし、3000mJ/cmのUV照射により光硬化させた後、120℃1時間熱硬化した硬化フィルムを得た。この硬化フイルムを動的粘弾性測定装置(DMS6100、セイコーインスツル株式会社製)にてtanδMAXでのガラス転移温度を測定した結果を表1に示す。
【0051】
(接着強度テスト)
得られたシール剤1gにスペーサーとして5μmのグラスファイバー0.01gを添加して混合攪拌を行う。このシール剤を10mm×25mmのガラス基板上にスクリーン印刷にて線幅が0.8mm、長さが10mmになるように一辺から5mmの部分に塗布し、そのシール剤上に10mm×20mmのガラス片を5mm一方がずれるように一辺を揃えるように貼り合わせ、クリップで両末端を挟んだ後、3000mJ/cmのUV照射により光硬化させ、120℃オーブンに1時間投入してさらに熱硬化させた。そのガラス片の5mmずれた部分をボンドテスター(SS−30WD:西進商事株式会社製)にて下から上へ剥がすようにピール接着強度を測定した。その結果を表1に示す。
【表1】
【0052】
表1の結果より、硬化性化合物のうちアクリレートのみで構成されている比較例1は非常に保存安定性に劣る結果を示した。また硬化性化合物のうちアリル基を有さないエポキシ化合物で構成されている比較例2は、反応がしっかり完結せず、当該化合物が液晶へ溶出し、液晶の配向不良を引き起こし液晶配向性が悪くなっている。さらに接着強度が低下している。また、硬化性化合物のうちエポキシアクリレートでない化合物のみで構成されている比較例3では、保存安定性は良好であるものの、反応が遅い為、当該化合物が液晶へ溶出し、液晶の配向不良を引き起こし液晶配向性が悪くなっている。これに比べ、本願発明の実施例1〜4は保存安定性と低液晶汚染性を両立した液晶シール剤である。このことから、本願発明は作業性に優れ、またこれを用いた製造された液晶表示セルの信頼性も優れたものであると言える。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の液晶シール剤は、液晶表示特性に与える影響が極めて小さい為、液晶表示素子の高精細化、高速応答化、低電圧駆動化、長寿命化を可能とし、さらに保存安定性に優れる為、液晶表示セルの製造の容易化に貢献するものである。また、接着強度等の硬化物特性に優れる為、信頼性の高い液晶表示素子の製造を実現することができる。