(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1および第2の長尺給電線、前記給電線の間で並列に接続されている複数の正温度係数特性を備えた発熱体、前記給電線および発熱体を包囲する絶縁性樹脂からなる絶縁被覆を少なくとも有してなる長尺PTCヒーターコードの端部を封止処理する方法であって、
封止処理をしようとする端部に前記絶縁被覆の絶縁性樹脂と主成分が同じ絶縁性樹脂からなる封止用キャップ部材を被せた後、前記端部を前記絶縁性樹脂の融点以上に加熱し、それにより前記絶縁被覆と封止用キャップ部材とを溶融一体化し、
前記端部の加熱を前記端部を熱プレス機に取り付けた金型で挟み込んで行い、
前記金型として金型端面に前記金型の材料よりも熱伝導性の低い材料からなる耐熱性のヒーターコード保持冶具を備えた金型を用いることを特徴とする長尺PTCヒーターコードの端部を封止処理する方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の長尺PTCヒーターコードでは、切断面である先端部の絶縁封止のために封止用のハウジングを用いているが、その構造上、コード本体と封止用のハウジングとの間に界面が生成されるのを避けることは困難であり、気密性の信頼性に限界が生じる。封止用のハウジング内に気密性を保持するために樹脂や接着剤を封入する場合にも、それらの充填の状態や寿命により界面が生成される恐れがあり、その界面から水分が侵入することで絶縁性低下を招く恐れがある。
【0006】
本発明は、従来の長尺PTCヒーターコードが持つ上記の不都合を解消することにあり、封止用部材とコード外皮との間に界面が生成されるのを回避することができ、それにより、端部の封止、すなわち、密閉性・気密性を一層向上できるようにした長尺PTCヒーターコードの端部を封止処理する方法と、長尺PTCヒーターコードを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による長尺PTCヒーターコードの端部を封止処理する方法は、第1および第2の長尺給電線、前記給電線の間で並列に接続されている複数の正温度係数特性を備えた発熱体、前記給電線および発熱体を包囲する絶縁性樹脂からなる絶縁被覆を少なくとも有してなる長尺PTCヒーターコードの端部を封止処理する方法であって、封止処理をしようとする端部に前記絶縁被覆の絶縁性樹脂と主成分が同じ絶縁性樹脂からなる封止用キャップ部材を被せた後、前記端部を前記絶縁性樹脂の融点以上に加熱し、それにより前記絶縁被覆と封止用キャップ部材とを溶融一体化することを特徴とする。
【0008】
上記の端部を封止処理する方法では、加熱により封止用キャップ部材の樹脂が溶融し、ヒーターコードの絶縁被覆の樹脂と融着して一体化する。そのために、封止用キャップ部材と絶縁被覆との間に継ぎ目や隙間が形成されるのを回避でき、毛細管現象などによって端部に水分が侵入するのを確実に防止することができる。それにより、端部で絶縁不良が起こるのを確実に回避することができる。
【0009】
本発明による長尺PTCヒーターコードの端部を封止処理する方法の一態様では、前記端部の加熱を前記端部を熱プレス機に取り付けた金型で挟み込んで行うことを特徴とする。熱プレス機に取り付けた一対の金型で端部を挟み込んで加熱処理することで、封止処理を容易に行うことができる。
【0010】
より好ましくは、上記金型を用いる方法において、前記金型として型内寸法が前記封止用キャップ部材を被せた状態での端部の外寸よりも小さくされた金型を用いることを特徴とする。この方法によれば、加熱成形時に型内の圧力が被処理部材に強めにかかることから、ヒーターコードの絶縁被覆および封止用キャップ部材に十分な圧力と熱が行き渡るようになり、両者間に空隙が残るのを回避でき、防水絶縁性能にバラツキが生じるのを回避できる。
【0011】
本発明による長尺PTCヒーターコードの端部を封止処理する方法の一態様では、前記封止用キャップ部材として両端が開口している封止用キャップ部材を用いることを特徴とする。封止用キャップ部材の開口部が、端部に挿入する側のみが開口している袋状の場合に、加熱成形時に、閉鎖した端部側にガス(空気)が残ってしまう恐れがある。この場合、呼吸作用が生じて水分を引き込み、絶縁不良を起こす要因となりかねない。両端が開口している封止用キャップ部材を用いることにより、これを回避することができる。特に、金型として型内寸法が前記封止用キャップ部材を被せた状態での端部の外寸よりも小さくされた金型を用いる場合には、成形時の型内圧力が高くなることから、封止した端部に空隙が生じるのを一層確実に回避することができる。
【0012】
本発明による長尺PTCヒーターコードの端部を封止処理する方法の一態様では、前記金型としてパーティング面に凹溝を成形した金型を用い、前記凹溝内の真空引きを行いながら前記溶融一体化処理を行うことを特徴とする。この態様では、真空引きを行うことにより、型内のガスをパーティング面を通して凹溝内に吸引し、該凹溝から積極的に型外に排出することが可能となる。それにより、加熱成形時に、封止用キャップ部材の閉鎖した端部側にガス(空気)が残ってしまうのを確実に回避することができ、封止性能にバラツキのない製品が得られる。
【0013】
上記のパーティング面に凹溝を成形した金型を用いる処理方法において、より好ましくは、金型としてパーティング面における前記凹溝の外側にパッキング材を配置した金型を用いることを特徴とする。この態様では、真空引き時に、外気が凹溝内に入り込むのを阻止することができるので、型内真空引きの効果を一層確実に遂行できるようになる。
【0014】
本発明による長尺PTCヒーターコードの端部を封止処理する方法の一態様では、前記金型として金型端面に前記金型の材料よりも熱伝導性の低い材料からなる耐熱性のヒーターコード保持冶具を備えた金型を用いることを特徴とする。
【0015】
金型を用いた上記の加熱成形処理において、加熱成形中のヒーターコード端部は、型内の溶融した樹脂や残留ガスの膨張により型内の圧力が上昇し、かつ金型はヒーターコードの絶縁被覆樹脂の融点以上に加熱されているために、金型の外側に押し戻される現象が生じることがある。上記耐熱性ヒーターコード保持冶具を備えた金型を用いる態様は、この現象が生じるのを防止するためのものであり、金型端面、すなわち金型のヒーターコードを咥える口金部に、金型材料より熱伝導の低い材料、例えば、金型材料より熱伝導の低い耐熱樹脂あるいはセラミックスなどによる耐熱性ヒーターコード保持部を取り付け、この耐熱性ヒーターコード保持部によってヒーターコードを押えることで、上記のヒーターコードが押し戻される現象を防止することができる。
【0016】
本発明は、さらに、第1および第2の長尺給電線、前記給電線の間で並列に接続されている複数の正温度係数特性を備えた発熱体、前記給電線および発熱体を包囲する絶縁性樹脂からなる絶縁被覆を少なくとも有してなる長尺PTCヒーターコードであって、その端部には、該端部に被せられた前記絶縁被覆の絶縁性樹脂と主成分が同じ絶縁性樹脂からなる封止用キャップ部材と前記絶縁被覆とが溶融一体化した封止処理が施されていることを特徴とする長尺PTCヒーターコードをも開示する。
【0017】
上記の長尺PTCヒーターコードの一態様では、前記絶縁被覆は2層構造を備えており、前記封止処理が施されている端部では、外側の絶縁被覆が一部除去されていることを特徴とする。
【0018】
なお、本発明において、前記正温度係数特性を備えた発熱体は、チタン酸バリウムに添加物を加えたセラミックスからなるものであってもよく、カーボンブラックのような導電体粉末を含む樹脂組成物からなるものであってもよい。後者の場合には、発熱体が柔軟性を備えているので、より可撓性、柔軟性に富んだ長尺PTCヒーターコードとなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明による長尺PTCヒーターコードの端部を封止処理する方法によれば、端部の封止用部材である封止用キャップ部材とヒーターコード外皮である絶縁被覆との間に界面が生成されるのを回避することができ、それにより、端部の封止、すなわち、密閉性・気密性を一層向上できるようにした長尺PTCヒーターコードが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明による長尺PTCヒーターコードの端部を封止処理する方法および長尺PTCヒーターコードの幾つかの実施の形態を添付の図面を参照しながら説明する。
【0022】
[長尺PTCヒーターコードの説明]
最初に、本発明による長尺PTCヒーターコードA(
図11参照)のベースとなる長尺PTCヒーターコード30の一例(
図3参照)について説明する。
図1は、長尺PTCヒーターコード30の発熱部10を説明するための斜視図であり、好ましくは銅単線のより線または編組線である第1の長尺給電線11と第2の長尺給電線12とを備え、第1の長尺給電線11と第2の長尺給電線12の間には複数の正温度係数特性を備えたチップ状の発熱体13の複数個が並列に接続されている。
【0023】
チップ状の発熱体13は、チタン酸バリウムに添加物を加えたセラミックスからなるものであってもよく、カーボンブラックのような導電体粉末を含む樹脂組成物からなるものであってもよい。後者の場合、導電体粉末としては、カーボンブラック、ニッケルなどの導電体粉末が挙げられる。カーボンブラックとしては、アセチレンブラックおよびファーネスブラックで表面積が大きいもの、例えば、バルカンXC−72(キャポット社製品)、コンチネックスN330(カポット社製品)などが挙げられる。導電体粉末の平均粒径は40〜70μmであるか、それより大きな平均粒径のものあるいはそれより小さい平均粒径のものと混合したものでもよい。樹脂組成物とは、ポリマーとして一般に使用されている高分子材料であってよく、ポリエチレン、ポリエチレン共重合体、ポリエステル、フッ素樹脂、フッ素系ゴム、アクリルゴム、ポリ塩化ビニルなどを挙げることができる。
【0024】
導電体粉末の樹脂組成物に対する添加量は、樹脂組成物100質量部に対して、15〜30質量部であることが好ましい。導電体粉末の添加量が少なすぎると抵抗値が大きくなりすぎて発熱しなくなる。逆に多くなりすぎると抵抗が低くなると同時に、抵抗値の温度依存性がなくなりPTC特性を示さなくなる。
【0025】
第1の長尺給電線11および第2の長尺給電線12とチップ状の発熱体13とは、両者を機械的および電気的に接続するめの金属端子14によってかしめられて一体化している。チップ状の発熱体13の形状に制限はないが、この例では、幅がD、長さがL、厚みがHの直方体をなしており、一例として、幅D:8mm、長さL:6mm、厚みH:1.6mmの寸法である。可撓性を向上させるために、発熱体13での幅D/長さLの値Pが1または1以上であることが望ましい。金属端子14の素材としては、銅、リン青銅、鉄、鉄ニッケル合金、金、銀、アルミニウムなどを用いることができる。また、好ましくは、発熱体13と金属端子14との間には、導電ペースト15が塗布される。
【0026】
なお、隣接するチップ状の発熱体13、13間の距離は、所要の加熱環境が得られることを条件に任意であってよいが、通常は、30〜100mm程度の範囲である。また、隣接するチップ状の発熱体13、13の距離はすべて同じであってもよく、異なった間隔で配置されていてもよい。
【0027】
図1に示す発熱部10は、一般に、図示しない巻き取りドラムにロール状に巻き取られており、巻き取りドラムから引き出して、それを従来知られた押し出し成形法を用いて、全体を絶縁性樹脂からなる第1の絶縁被覆16で覆うことにより、
図2に示すPTCヒーター線20とされる。絶縁性樹脂としては、例として、電気絶縁性および可撓性を有する軟質塩化ビニル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、架橋ポリエチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂を挙げることができる。
【0028】
図2に示すPTCヒーター線20の全長に対して、例えばスズメッキ軟銅線のような金属の編組線によるシールド21が巻き付けられ、さらにその上に、適宜の手段により(例えば、従来知られた押し出し成形法を用いて)、好ましくは前記第1の絶縁被覆16と同じあるいは主成分が同じ絶縁性樹脂による第2の絶縁被覆22で覆うことで、絶縁被覆が2層構造とされた、
図3に示す長尺PTCヒーターコード30とされる。長尺PTCヒーターコード30は、例えば30〜3000m程度の長さに製造され、図示しない巻き取りドラムなどに巻き取られて保管される。
【0029】
使用に当たって、長尺PTCヒーターコード30は敷設する現場に適合した長さに切断される。
図3に示すように、その切断面には、第1の長尺給電線11と第2の長尺給電線12の切断端面、第1の絶縁被覆16の切断端面、シールド21の切断端面、第2の絶縁被覆22の切断端面がそのまま現れている。他方の切断面側には、図示しない電気供給コードが第1の長尺給電線11と第2の長尺給電線12に接続され、接続部は適宜のカバーによって気密に封止される。本発明は、前記した切断面側である端部に密封性の高い封止処理を施すことを課題とする。
【0030】
[本発明による端部を封止処理する方法の説明]
[封止用キャップ部材]
本発明による方法では、長尺PTCヒーターコード30の端部に被せる封止用キャップ部材40を用いる。封止用キャップ部材40の2つの例が
図4と
図5に示される。
図4に示す封止用キャップ部材40aは、
図4(a)に斜視図を、
図4(b)に
図4(a)のb−b線に沿う断面図を示すように、一方端側は開放し、他方端側は閉鎖した扁平な袋状のものである。
図5に示す封止用キャップ部材40bは、
図5(a)に斜視図を、
図5(b)に
図5(a)のb−b線に沿う断面図を示すように、両方の端部が開放した、扁平な筒状のものである。
【0031】
両者とも、その横断面形状は扁平な楕円形状であり、その断面の大きさは、封止しようとする長尺PTCヒーターコード30の端部の断面の大きさとほぼ等しいか、幾分大きくされている。長さは、所望の封止が得られることを条件に実験的に設定すればよいが、通常、2〜5cmものが用いられる。厚みも、後記する加熱処理によって破損せず、かつ加熱処理のよる溶融後に十分な封止性能が得られることを実験的に確かめることで設定すればよいが、通常、0.3〜2mm程度であれば十分である。
【0032】
封止用キャップ部材40の材料には、長尺PTCヒーターコード30の前記した絶縁被覆16、22を構成する絶縁性樹脂と主成分が同じ絶縁性樹脂が用いられる。より好ましくは、軟質塩化ビニル樹脂である。なお、ここで主成分が同じとは、着色用材料などの他の成分が相互の融着性を阻害しない程度に混入していてもよいことを意味している。
【0033】
後に詳しく説明するように、
図3に示した長尺PTCヒーターコード30の端部に、
図4または
図5に示した封止用キャップ部材40を外挿状態で被せ、その後、端部全体を、用いている絶縁性樹脂の融点以上に加熱して、第2の絶縁被覆22と封止用キャップ部材40とを溶融一体化する、あるいは、第1の絶縁被覆16と第2の絶縁被覆22との双方に封止用キャップ部材40とを溶融一体化することで、本発明による方法による封止処理が端部に施された長尺PTCヒーターコードとされる。
【0034】
[端部への封止処理が施された長尺PTCヒーターコードの説明]
図6は、端部への封止処理が施された長尺PTCヒーターコードAの3つの例を示している。なお、
図6において、左図は側面図であり、右図は平面図である。
【0035】
図6(a)に示す長尺PTCヒーターコードA1は、
図3に示す端部を切断した長尺PTCヒーターコード30の切断した端面に、
図5(a)に示した封止用キャップ部材40aを被せ、両者を融着一体化したものであり、封止用キャップ部材40aは、切断端面と第2の絶縁被覆22とにおいて、融着一体化している。そして、融着一体化によって封止された領域では、封止用キャップ部材40aのほぼ厚みに相当する分だけ、外形寸法が大きくなっている。
【0036】
図6(b)に示す長尺PTCヒーターコードA2は、
図3に示す長尺PTCヒーターコード30であって切断端部から一定の距離だけ第2の絶縁被覆22を除去したものに対して、第2の絶縁被覆22が除去された距離よりも長い長さの封止用キャップ部材40aを被せて両者を融着一体化したものである。図示のように、第2の絶縁被覆22を除去した領域には第1の絶縁被覆16が露出しており、封止処理後の長尺PTCヒーターコードA2では、封止用キャップ部材40aは、切断端面と、第1の絶縁被覆16と第2の絶縁被覆22とに融着している。そして、第1の絶縁被覆16に融着している領域では、外形寸法が長尺PTCヒーターコード30の外形寸法とほぼ同じあるいはより小さな寸法となっている。
【0037】
図6(c)に示す長尺PTCヒーターコードA3は、
図3に示す長尺PTCヒーターコード30であって切断端部から一定の距離だけ第2の絶縁被覆22を除去したものに対して、第2の絶縁被覆22が除去された距離とほぼ同じ長さの封止用キャップ部材40aを被せて両者を融着一体化したものである。図示のように、第2の絶縁被覆22を除去した領域には第1の絶縁被覆16が露出しており、封止処理後の長尺PTCヒーターコードA3では、封止用キャップ部材40aは、切断端面と、第1の絶縁被覆16と、第2の絶縁被覆22の端面22aとに融着している。そして、長尺PTCヒーターコードA3では、外形寸法が、端部においても長尺PTCヒーターコード30の外形寸法とほぼ同じあるいはより小さな寸法となっている。
【0038】
[熱プレス機の説明]
次に、上記した長尺PTCヒーターコードの端部を封止処理する方法を好適に実施することのできる熱プレス機および成形用金型について説明する。
図7は、熱プレス機Bの一例を示しており、熱プレス機Bは、上熱盤B1と下熱盤B2を備え、双方の熱盤B1、B2は接近離間自在となっている。上熱盤B1と下熱盤B2には対をなす成形用金型C1、金型C2が取り付けられており、図示の例では、上熱盤B1が下降することで、両熱盤は接近して型締めがなされる。成形用金型C1、C2は熱盤B1、B2から伝熱され、型締めされた状態で金型内に配置された被成形品Eの加熱処理が進行する。所要の加熱処理が終了した後、型が開かれ、成形品が取り出される。
【0039】
[成形金型の説明−その1]
図8、
図9は、前記成形用金型C1、C2の一例を示している。金型は伝熱性の良い金属で作られるのが好ましく、より好ましくはアルミ合金製である。この例において、上金型C1と下金型C2は鏡面対称の形状であり、以下、下金型C2を例にとり、金型を詳細に説明する。なお、
図9(a)は下金型C2の平面図、
図9(b)はその側面図、
図9(c)は
図9(a)のc−c線に沿う断面図、
図9(d)は
図9(a)のd−d線に沿う断面図である。
【0040】
下金型C2は、パーティング面50のほぼ中央部に成形用凹部51を有する。成形用凹部51は、ヒーターコード30を咥える口金部52と、口金部52に連続する凹陥部53とからなる。口金部52の横断面形状はヒーターコード30の断面の下半分の外形形状とほぼ同じであり、深さはヒーターコード30の厚みの1/2が入り込む深さである。凹陥部53の長さは、
図6に示したように、ヒーターコード30の端部に封止用キャップ部材40を被せたときの長さとほぼ等しい。なお、
図8に示した金型C1、C2は、
図6(b)に示した形状の長尺PTCヒーターコードA2を熱成形するときに用いるものであり、凹陥部53は第1の凹陥部54とそれに続く第2の凹陥部55とで構成される。以下、
図9および
図10を参照しながら、より詳細に説明する。
【0041】
[長尺PTCヒーターコードを熱成形するときの前作業の手順を説明]
図10は、
図6(b)に示した形状の長尺PTCヒーターコードA2を熱成形するときの、ヒーターコード30に対する前作業の手順を説明している。最初に、
図10(a)(b)に示すように、ヒーターコード30の端部から、長さaだけ、第2の絶縁被覆22および好ましくはシールド21を除去する。それにより、ヒーターコード30の端部には、第1の絶縁被覆16が長さaだけ露出した状態となる。そして、露出した部分の幅方向の中央部両面には、
図3に示される長手方向に凹部17が顕れる。
【0042】
端部に被せる封止用キャップ部材40として、ここでは、
図5に示した両端が開放した封止用キャップ部材40bを用いている。
図10(b)に示すように、封止用キャップ部材40bの長さbは、露出している第1の絶縁被覆16の長さa、すなわち除去した第2の絶縁被覆22の長さaより長い。その封止用キャップ部材40bをヒーターコード30の端部に被せた状態の一例が
図10(c)に示される。図示のように、封止用キャップ部材40bの一方端側は、ヒーターコード30の第2の絶縁被覆22の上に距離cだけ重なっており、他方の端部側は、ヒーターコード30の端部との間に距離dだけ前方に飛び出た状態となっている。すなわち、前記距離b=距離a+距離c+距離dとされている。
【0043】
[成形金型の説明−その2]
上記の封止用キャップ部材40が被せられたヒーターコード30の端部を成形処理するための金型C2(C1)において、前記凹陥部53の長さは前記封止用キャップ部材40bの長さbとほぼ同じであり、前記第1の凹陥部54の長さは前記寸法cとほぼ同じであり、前記第2の凹陥部55の長さは距離b−距離c(=前記距離a+距離d)の長さとほぼ同じである。口金部52の長さは、熱成形時にヒーターコード30を安定的に咥えることができる長さであればよく、任意であってよい。
【0044】
第1の凹陥部54の横断面形状は、
図9(c)に示すように、その横幅W1は封止用キャップ部材40bの一部がヒーターコード30の第2の絶縁被覆22の上に重なっている箇所(すなわち、前記距離cの箇所)の横幅とほぼ等しい。断面形状は全体としては前記重なっている領域の断面形状とほぼ同じであるが、その横幅方向の中央部に突条54aが形成されている。この突条54aは、
図3に示す第2の絶縁被覆22と第1の絶縁被覆16との間に形成される空間(長手方向に凹部17)の形状とほぼ同じ形状とされている。また、第1の凹陥部54における前記突条54aの両側の底面54bは一部平坦面とされており、パーティング面50と前記平坦面とされた底面54bまでの距離は、封止用キャップ部材40bの一部がヒーターコード30の第2の絶縁被覆22の上に重なっている領域の厚さの1/2よりも少し短くされている。
【0045】
第2の凹陥部55の横断面形状は、
図9(d)に示すように、その横幅W2は、前記横幅W1よりも第2の絶縁被覆22の厚み分(第2の絶縁被覆22の厚み×2)程度、幅が狭くなっている。もし、封止用キャップ部材40bとして厚さが第2の絶縁被覆22と同じ厚さのものを用いるとした場合には、前記横幅W2はヒーターコード30の横幅とほぼ同じ横幅とされる。第2の凹陥部55の断面形状は、全体としては、第1の絶縁被覆16と封止用キャップ部材40bとが重なっている領域の断面形状とほぼ同じとされるが、ここでも、その横幅方向の中央部に突条55aが形成されている。この突条55aの形状も、
図3に示す第2の絶縁被覆22と第1の絶縁被覆16との間に形成される空間(長手方向に凹部17)の形状とほぼ同じ形状とされている。また、第2の凹陥部55における前記突条55aの両側の底面55bも一部平坦面とされており、パーティング面50と前記平坦面とされた底面55bまでの距離は、封止用キャップ部材40bの一部がヒーターコード30の第1の絶縁被覆16の上に重なっている領域の厚さの1/2よりも少し短くされている。
【0046】
なお、下金型C2の4隅には孔56が形成されており、上金型C1における型合わせしたときに前記孔56に対応する箇所には、孔56内に嵌入する脚57が形成されている。
【0047】
[加熱成形処理と成形品の説明]
加熱成形に当たっては、
図10(c)に示すように、封止用キャップ部材40bをヒーターコード30の端部に被せた状態の被成形品Eを用意する。
図7に示した熱プレス機Bの上熱盤B1に上金型C1を、下熱盤B2に下金型C1を取り付け、型を開いた状態で、型内に被成形品Eをセットする。両熱盤を加熱した状態で型締めを行うことにより、金型を通して被成形品Eは加熱され、それにより、封止用キャップ部材40、およびヒーターコード30の第1の絶縁被覆16および第2の絶縁被覆22を構成する絶縁性樹脂の溶融温度以上の温度にまで加熱される。
【0048】
その加熱により、封止用キャップ部材40を構成する樹脂と、第1の絶縁被覆16および第2の絶縁被覆22を構成する樹脂とは相互に溶融し、界面のない状態で一体化する。それにより、端部の完全な密封と封止が形成される。また、当然に、封止用キャップ部材40の解放した端部も溶融により閉鎖される。そのようにして加熱溶融処理が完了した後、型を開き、処理品を取り出す。処理後の成形品が
図11に示される。
図11に示される成形品において、40bは熱処理後の封止用キャップ部材であり、領域41は成形型における第1の凹陥部54の部分で熱処理された箇所、領域42は成形型における第2の凹陥部55の部分で熱処理された箇所を示している。
【0049】
前記したように、図示の金型は、第1の凹陥部54および第2の凹陥部55には突条54aおよび突条55aが形成されており、その突条によって押圧されることで、第2の絶縁被覆22と第1の絶縁被覆16との間に形成される空間(長手方向に凹部17)、および封止用キャップ部材40と第1の絶縁被覆16との間に形成される空間は、閉じた状態となっている。
【0050】
また、第1の凹陥部54における前記突条54aの両側の底面54bは一部平坦面とされており、パーティング面50と前記平坦面とされた底面54bまでの距離は、封止用キャップ部材40bの一部がヒーターコード30の第2の絶縁被覆22の上に重なっている領域の厚さの1/2よりも少し短くされていること、および、第2の凹陥部55における突条55aの両側の底面55bが一部平坦面とされ、パーティング面50と前記平坦面とされた底面55bまでの距離が、封止用キャップ部材40bの一部がヒーターコード30の第1の絶縁被覆16の上に重なっている領域の厚さの1/2よりも少し短くされていることで、金型として型内寸法が前記封止用キャップ部材を被せた状態での端部の外寸よりも小さくなっており、そのために、加熱成形時に型内の圧力が被処理部材に強めにかかるようになる。それにより、ヒーターコード30の絶縁被覆16、22および封止用キャップ部材40に十分な圧力と熱が行き渡るようになり、両者間に空隙が残るのを確実に回避し、防水絶縁性能にバラツキが生じるのを確実に回避している。
【0051】
[他の成形金型の説明]
図12〜
図13を用いて、成形金型の第2の形態を説明する。第2の形態の成形金型Dにおいて、成形用凹部51の形状、すなわち、ヒーターコード30を咥える口金部52と、前記口金部52に連続する凹陥部53(第1の凹陥部54とそれに続く第2の凹陥部55)の構成は、第1の形態の金型Cと同じであり、同じ符号を付すことで、それらの説明は省略する。
【0052】
成形金型Dは、上金型D1と下金型D2とで構成される。上金型D1は前記した上金型C1と同じ形状である。ただし、図示の例では、脚57に替えて、孔58が4隅に形成されている。下金型D2は、下金型C2よりも厚みが厚くされており、成形用凹部51の周囲を囲むようにして、パーティング面50には、所要深さの第1の凹溝59が形成されている。そして、前記第1の凹溝59には外部に連通する横穴61が適数、図示のものでは、
図13に示すように、左右の側壁に2個、形成されている。さらに、省略も可能であるが、第1の凹溝59の外側を囲むようにして、パーティング面50には、前記第1の凹溝59よりは浅い深さの第2の凹溝60が形成されている。また、下金型D2の4隅には、型締め時に上金型D1に形成した孔58に対向する位置に孔62が形成されている。
【0053】
成形金型Dを用いて、熱成形処理を行うに当たっては、
図10(c)に示したと同じ封止用キャップ部材40bをヒーターコード30の端部に被せた状態の被成形品Eを用意する。また、下金型D2に形成した前記横穴61に図示しない真空引き装置からの配管を接続する。さらに、第2の凹溝60内には耐熱性パッキン(不図示)を装着する。
【0054】
その状態で、上金型C1と下金型C2を用いて処理する場合と同様に、型締めと加熱を行う。なお、図示の例では、型締め時に、上金型D1に形成した孔58と、下金型D2に形成した孔62とに、適宜の留ピンを挿入して両者を固定する。型締めの後、図示しない真空引き装置を作動し、横穴61を介して第1の凹溝59の真空引きを行う。第1の凹溝59はパーティング面50を介して成形空間である凹陥部53(第1の凹陥部54とそれに続く第2の凹陥部55)につながっており、凹陥部53(第1の凹陥部54とそれに続く第2の凹陥部55)内も負圧になる。その負圧によって、ヒーターコード30とその端部に被せた封止用キャップ部材40bとの間に存在するガス(空気)は強制的に外部に引き抜かれる。それにより、両者間の密着状態を一層確実に達成することが可能となる。
【0055】
なお、第2の凹溝60内に装着する耐熱性パッキンは、真空引きにより外気が第2の凹溝60内に入り込むのを防止するためのものであり、外気の流入が生じない、あるいは生じても格別の問題がない場合には、第2の凹溝60を省略することもできる。
【0056】
[ヒーターコード保持冶具の説明]
図14は、上記した成形金型C(D)と共に好適に用いられるヒーターコード保持冶具70を示している。このヒーターコード保持冶具70は、
図15に示すように、上金型C1(D)と下金型C2(D2)の端面に、その上面71がそれぞれのパーティング面50と面一となるようにして取り付けられるものであり、上面71には、装着時に金型に形成した前記口金部52と対応する箇所に、口金部52と同形状の凹部72または図示のもののように中央部に突条73を有する凹部72が形成されている。また、ヒーターコード保持冶具70は、成形金型C(D)の材料よりも熱伝導性の低い耐熱性材料、例えば、成形金型C(D)がアルミ合金製である場合には、セラミックスやポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のような耐熱性樹脂で作られている。
【0057】
熱成形処理をするときに、金型C(D)の端面に耐熱性であるヒーターコード保持冶具70を取り付けることにより、処理しようとするヒーターコードを自由には移動しない状態で押さえ付けることができる。それにより、前記したように、一般に、金型を用いた上記のような加熱成形処理において、加熱成形中のヒーターコード30の端末部は、型内の溶融した樹脂や残留ガスの膨張により型内の圧力が上昇し、かつ金型はヒーターコード30の絶縁被覆16、22および封止用キャップ部材40bの樹脂材料の融点以上に加熱されているために、金型の外側に押し戻される現象が生じるが、この現象が生じるのを確実に阻止することが可能となる。
【実施例】
【0058】
(使用材料)
図3に示した長尺PTCヒーターコード30と同様な構成を備えたセキスイセラミックスヒーター(積水化成品工業株式会社製)(発熱体:チタン酸バリウムに添加物を加えたセラミックス)を用い、その第2の絶縁被覆22とシールド21とを端部から10mmだけ除去した(
図10において、a=10mm)。なお、第1の絶縁被膜16および第2の絶縁被覆22は塩化ビニル樹脂であり、第2の被覆22は標準厚1.0mm、平均厚0.9mm以上、最小厚0.8mm以上、外径7.5±1.0×18.5±1.5mmである。
【0059】
封止用キャップ部材40として、第1の絶縁被膜16および第2の絶縁被覆22と同じ材料(塩化ビニル樹脂)からなるものと、主材料は同じであるが黒い色素(カーボンブラックやアニリンブラックなど)をわずかに添加したものからなるものの2種類を用意した。いずれも、形状は
図5に示した形状(両端開放型)とした。また、封止用キャップ部材40の内径をヒーターコード30の第2の絶縁被覆22の外径と同じとした。封止用キャップ部材40の平均厚みは1mmであり、長さは20mm(
図10において、b=10mm)である。その封止用キャップ部材40をヒーターコード30に被せたときの、
図10における長さcと長さdを、長さc=8mm、d=2mmとした。
【0060】
(製造装置)
図7で説明した形状の熱プレス機Bを用いた。上下2枚の熱盤B1、B2に所定の温度を加えて、所定の圧力でプレスする装置である。
【0061】
(金型)
成形用金型として、
図8に示した、アルミ合金からなる金型Dを用いた。
【0062】
(製造条件)
上記の熱プレス機の熱板に、上記の金型を取り付け、熱盤設定温度を175℃(金型温度:170〜175℃)に調整した。加熱時間を3分、5分、7分で熱処理を行った。
【0063】
(評価)
融着部の密着性(融着性)の確認を引き裂き試験によって行った。試験は、封止用キャップ部材40が第1の絶縁被膜16および第2の絶縁被覆22に融着している領域から、両者が融着一体化していない領域も含めて、所要長さに試験片を切り出し、試験片の一方端では封止用キャップ部材40が融着していない第1の絶縁被膜16および第2の絶縁被覆22を試験機のチャックで把持させ、試験片の一方端では封止用キャップ部材の部分を試験機のチャックで把持させた。その状態で、引き裂き破壊が出るまで引っ張った。そして、引き裂きが生じたときの、封止用キャップ部材と絶縁被覆との界面に現れる状態を目視することで評価した。
【0064】
2種類のヒーターコード保持冶具のいずれにおいても、5分および7分の加熱を行ったものは、界面ではなく、母材、すなわち絶縁被覆の破壊が生じた。このことから、絶縁被覆とヒーターコード保持冶具との双方の樹脂が溶融一体化したことがわかった。3分加熱のものは、一部に界面剥離が生じていた。
【0065】
さらに、3分、5分、7分の熱処理を行ったものについて、電気特性(a.導通・短絡、b.絶縁抵抗、c.水中絶縁抵抗)を確認したところ、いずれも不都合は生じなかった。なお、電気特性のテストは、a.導通・短絡については、2本の給電線11と12の間の抵抗を抵抗計で測定する方法で行い、b.絶縁抵抗については、給電線11及び12と編組線シールド21の間の抵抗を500Vメガ抵抗計で測定する方法で行い、c.水中絶縁抵抗については、成形後の封止キャップ部材40aが完全に水没した状態で水と編組線シールド21の間の抵抗を500VVメガ抵抗計で測定する方法にて行った。
【0066】
そして、a.導通・短絡については、抵抗計の表示が零あるいは∞になる場合に、b.絶縁抵抗については、メガ抵抗計の表示が1MΩ未満になる場合に、c.水中絶縁抵抗については、メガ抵抗計の表示が0.3MΩ未満になるような現象が生じた場合に、不具合が生じたものとした。
【0067】
以上のことから、長尺PTCヒーターコードの端部に対して、本発明の方法による端部の封止処理を行うことにより、その加熱時間を適切に選択すれば、水の侵入に対する確実な封止処理が行えることが確認できた。