特許第6373215号(P6373215)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373215
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】沈砂分離装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/24 20060101AFI20180806BHJP
   B01D 21/30 20060101ALI20180806BHJP
   B65G 33/14 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   B01D21/24 H
   B01D21/24 B
   B01D21/30 G
   B01D21/24 K
   B65G33/14
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-68004(P2015-68004)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-187762(P2016-187762A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2017年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197022
【弁理士】
【氏名又は名称】谷水 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100102635
【弁理士】
【氏名又は名称】浅見 保男
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 茂
(72)【発明者】
【氏名】神戸 努
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特表平08−509909(JP,A)
【文献】 特開平08−071309(JP,A)
【文献】 特開平04−293504(JP,A)
【文献】 特開昭57−199713(JP,A)
【文献】 特開2014−161993(JP,A)
【文献】 特開平05−023613(JP,A)
【文献】 特開2007−061759(JP,A)
【文献】 米国特許第08691087(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00−21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈砂と水に分離する沈砂分離装置において、
底部に排出部が形成され、前記排出部から沈砂を排出する沈砂分離槽と、
前記排出部から排出された沈砂を搬送する第一の搬送部と、
前記第一の搬送部に連結され、前記第一の搬送部で搬送された沈砂を前記沈砂分離槽の水位より上に搬送する第二の搬送部と、を備え、
前記第二の搬送部の水平面に対する角度は、前記第一の搬送部の水平面に対する角度よりも大きく、
前記沈砂分離槽は旋回流の形成により沈砂と水に分離させる槽であることを特徴とする沈砂分離装置。
【請求項2】
前記第一の搬送部及び前記第二の搬送部は、スクリューコンベアであることを特徴とする請求項1に記載の沈砂分離装置。
【請求項3】
前記第一の搬送部のスクリューコンベアは、スクリュー羽根のピッチ寸法が搬送方向下流側に向かって縮小するように形成されることを特徴とする請求項2に記載の沈砂分離装置。
【請求項4】
更に、前記第一の搬送部又は前記第二の搬送部を駆動するための動力を供給する動力部と、前記動力を伝達する動力伝達部と、を備え、前記第一の搬送部及び前記第二の搬送部は、一つの動力部により駆動されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の沈砂分離装置。
【請求項5】
前記沈砂分離槽と前記第一の搬送部と前記第二の搬送部の搬送方向寸法は、前記沈砂分離槽の平面最大寸法の2倍以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の沈砂分離装置。
【請求項6】
沈砂と水に分離する沈砂分離装置において、
底部に排出部が形成され、前記排出部から沈砂を排出する沈砂分離槽と、
前記排出部から排出された沈砂を搬送する第一の搬送部と、
前記第一の搬送部に連結され、前記第一の搬送部で搬送された沈砂を前記沈砂分離槽の水位より上に搬送する第二の搬送部と、
前記第一の搬送部及び前記第二の搬送部の搬送速度を制御する制御部と、を備え、
前記第二の搬送部の水平面に対する角度は、前記第一の搬送部の水平面に対する角度よりも大きく、
前記制御部は、第一の搬送部の搬送速度が第二の搬送部の搬送速度より高くなるように制御することを特徴とする沈砂分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沈砂を含有する被処理水を、沈砂と処理水に分離する沈砂分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水処理場や浄水場等の沈砂池の底部に堆積した沈砂は、ポンプを用いて揚砂され、比重分離、遠心分離等を用いた固液分離装置により水分と分離される。固液分離装置では、分離された沈砂が固液分離槽の底部から排出され、スクリューコンベア等の搬送装置により、固液分離槽の水面より上部まで搬送される。
【0003】
例えば、特許文献1には、汚砂混合水が導入される固液分離槽と、固液分離槽の下に設置された沈降槽を備えた砂分離洗浄装置が記載されている。この装置では、分離された沈砂は沈降槽の底部の略中心から排出され、スクリューコンベアにより固液分離槽の水面の上部まで搬送される。スクリューコンベアは、沈砂分離槽の底部の略中心から沈砂分離槽の水位の上部に至るまで傾斜して設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−61759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
沈砂分離装置の底部の略中心から上方に向けて傾斜したスクリューコンベアは、上部に備えた沈砂分離槽の外周と接触しないように、緩やかな傾斜角度で設置されている。そのため、スクリューコンベアが長くなり、沈砂分離装置が長大化するという課題がある。
そこで、本発明の課題は、沈砂分離装置の搬送方向寸法を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、第一の搬送部と第二の搬送部を設けることにより、屈折した搬送部が構成され、沈砂分離装置の搬送方向寸法を短縮できることを見いだして本発明を完成した。
具体的には、以下の沈砂分離装置である。
【0007】
上記課題を解決するための本願発明の沈砂分離装置とは、沈砂と水に分離する沈砂分離装置において、底部に排出部が形成され、前記排出部から沈砂を排出する沈砂分離槽と、前記排出部から排出された沈砂を搬送する第一の搬送部と、前記第一の搬送部に連結され、前記第一の搬送部で搬送された沈砂を前記沈砂分離槽の水位より上に搬送する第二の搬送部と、を備え、前記第二の搬送部の水平面に対する角度は、前記第一の搬送部の水平面に対する角度よりも大きいことを特徴とする沈砂分離装置である。
【0008】
この沈砂分離装置によれば、第一の搬送部と第二の搬送部からなり、上方向に向かって屈折した搬送部が構成されるため、沈砂分離装置の搬送方向寸法を短縮することができる。
【0009】
また、この沈砂分離装置によれば、第一の搬送部と第二の搬送部を別々に駆動することができる。そのため、分離された沈砂量が少ない場合には、例えば、第二の搬送部を止めることにより、第一の搬送部の終端で沈砂を濃縮し、その後、第二の搬送部を駆動して、濃縮された沈砂を効率的に搬送するという運転も可能となる。このように運転することにより、効率よく沈砂が搬送されるため、搬送部の動力の省電力化を実現できるという効果もある。
【0010】
本願発明は更に、第一の搬送部及び第二の搬送部は、スクリューコンベアであるという特徴を有する。
この構成によれば、簡素な構造により搬送部を形成することができる。また、スクリューコンベアは、バケットコンベア等のようにバケットの返送用の空間がなく、搬送装置として小さい装置であるため、沈砂分離装置の搬送方向寸法を短縮するという本発明の効果が顕著に発揮される。
【0011】
本願発明は更に、第一の搬送部のスクリューコンベアは、スクリュー羽根のピッチ寸法が搬送方向下流側に向かって縮小するように形成されるという特徴を有する。
スクリューコンベアは、スクリュー羽根のピッチ寸法を小さくすることにより、搬送速度が減速する。そのため、第一の搬送部において、搬送方向下流側に向かってスクリュー羽根のピッチを縮小することにより、沈砂を濃縮することができる。
【0012】
本願発明は更に、第一の搬送部又は第二の搬送部を駆動するための動力を供給する動力部と、前記動力を伝達する動力伝達部と、を備え、第一の搬送部及び第二の搬送部は、一つの動力部により駆動されるという特徴を有する。
この構成によれば、一つの動力装置により、第一及び第二の搬送部を駆動することができるため、設備を簡素化することができる。
【0013】
本願発明は更に、第一の搬送部及び第二の搬送部の搬送速度を制御する制御部を備え、前記制御部は、第一の搬送部の搬送速度が第二の搬送部の搬送速度より高くなるように制御するという特徴を有する。
この構成によれば、第一の搬送部の終端において沈砂が溜まるため、沈砂を濃縮することができる。
【0014】
本願発明は更に、沈砂分離槽と第一の搬送部と第二の搬送部の搬送方向寸法は、沈砂分離槽の平面最大寸法の2倍以下であるという特徴を有する。
この構成によれば、コンパクトに構成された沈砂分離装置を提供することができるため、設置面積の省スペース化が実現される。
【発明の効果】
【0015】
本願発明によると、沈砂を含有する被処理水を沈砂と処理水に分離する沈砂分離装置において、沈砂分離装置の搬送方向寸法を短縮して設置面積を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施態様の沈砂分離装置の構造を示す概略説明図である。
図2】本発明の第1の実施態様の沈砂分離装置において、第一の搬送部の水平面に対する角度(α)及び第二の搬送部の水平面に対する角度(β)を示す概略説明図である。
図3】本発明の第1の実施態様の沈砂分離装置の構造を示す平面図であり、沈砂分離槽の平面最大寸法(A)及び沈砂分離槽と第一の搬送部と第二の搬送部の搬送方向寸法(B)を示す概略説明図である。
図4】本発明の第2の実施態様の沈砂分離装置の構造を示す概略説明図である。
図5】本発明の第2の実施態様の沈砂分離装置の構造を示す平面図であり、沈砂分離槽の平面最大寸法(A)及び沈砂分離槽と第一の搬送部と第二の搬送部の搬送方向寸法(B)を示す概略説明図である。
図6】本発明の第3の実施態様の沈砂分離装置の構造を示す概略説明図である。
図7】本発明の第4の実施態様の沈砂分離装置の構造を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の沈砂分離装置は、沈砂を含有する被処理水を、沈砂と処理水に固液分離するための装置である。
被処理水とは、砂等の粒子と液体が混合された粒子分散液であり、分散媒である液体より粒子の比重が高いものであればよい。具体的には、下水処理設備等の水処理施設において、沈砂池の底に沈殿した沈砂を揚水して得られる沈砂含有水等が挙げられる。
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る沈砂分離装置の実施態様を詳細に説明する。
【0019】
[第1の実施態様]
図1、2は、本発明の第1の実施態様の沈砂分離装置1aを示す概略説明図である。
図1に図示するように、本発明の第1の実施態様の沈砂分離装置1aは、被処理水WSを沈砂Sと処理水Wに固液分離するための沈砂分離槽4、沈砂分離槽4の底部から排出された沈砂Sを搬送するための第一の搬送部2a、第一の搬送部2aと連結され、第一の搬送部2aで搬送された沈砂Sを沈砂分離槽4の水位より上まで搬送する第二の搬送部3aを備えている。
【0020】
本発明の沈砂分離装置は、沈砂分離槽の底部から排出された沈砂Sを搬送するための搬送部として、第一の搬送部および第二の搬送部を備えており、屈折した搬送部を構成することができる。そのため、沈砂分離槽及び搬送部を合わせた搬送方向寸法を短縮することができる。なお、搬送方向寸法の詳細については後述する。
【0021】
次に、本発明の沈砂分離装置1aの各部について詳細に説明する。
(沈砂分離槽)
第1の実施態様の沈砂分離槽4は、円筒体の下部に逆さ截頭円錐体の底部を備えた形状であり、底部の略中心に沈砂Sを排出するための排出部6を備えている。また、沈砂分離槽4の上部には、円筒体の接線方向から被処理水WSを流入させるための流入部9が形成され、内部には、分離された処理水Wを排出するための処理水排水部5が立設されている。処理水排水部5は、上端部が垂直方向に開口した筒状部材であり、下端部は湾曲して沈砂分離槽4の外部と連通している。なお、処理水排水部5の下端部の形状は、外部と連通していればどのような形状でもよく、例えば、筒状部材の下端を直角や鈍角に屈折した形状等でもよい。
【0022】
被処理水WSは、流入部9より流入して、沈砂分離槽4内に旋回流RFを形成する。そして、旋回流RFの遠心力と重力沈降により、被処理水WSは沈砂Sと処理水Wに分離される。沈砂Sは、沈砂分離槽4の内壁に沿って沈降し、底部の排出部6より排出される。一方、処理水Wは、処理水排水部5の上端開口を越流して、沈砂分離槽4の外へ排水される。なお、排出部6より排出される沈砂Sとは、水分と完全に分離した粒子ではなく、沈砂分離槽4により濃縮された分散液あるいは泥状物である(濃縮とは、水分割合を減らすことを言う)。
【0023】
本発明の沈砂分離槽4は、底部に排出部6を備えた構成であれば、どのような固液分離手段を用いてもよい。第1の実施態様のように、遠心分離と重力沈降を利用した沈砂分離槽のほか、例えば、沈降分離を利用した沈砂分離槽等でもよい。
【0024】
遠心分離及び重力沈降を利用した沈砂分離槽では、強い遠心力を発生するために、沈砂分離槽に一定の直径が確保され、また、旋回流RFを乱さないように、沈砂分離槽の略中心に排出部6を設ける必要がある。そのため、従来の搬送部で傾斜角を高くすることは困難であった。また、沈砂分離槽の底部の逆さ截頭円錐体の高さを高くすることにより、搬送部の傾斜角を多少高めることも可能であるが、その場合には、沈砂分離槽の流入部の高さが高くなるため、被処理水WSを揚水する動力が大きくなるという課題も生じる。
このように、遠心分離及び重力沈降を利用した沈砂分離槽では、搬送部の設置面積の長大化が不可避であり、本発明の効果が顕著に発揮される。
【0025】
(第一の搬送部)
沈砂分離槽4の排出部6より排出された沈砂Sは、第一の搬送部2aに導入される。第一の搬送部2aは、内部にスクリュー7aを備えたスクリューコンベアからなり、略水平に設置されている。
スクリューコンベアは、ケーシング14の内部に設置されたスクリュー7aにより構成され、更に、スクリュー7aは、スクリュー軸15及びその周囲に螺旋状に配されたスクリュー羽根16により構成される。スクリュー軸15は、動力部であるモーター8aに連結され、回転駆動する。なお、第二の搬送部に利用されるスクリューコンベアも同様に構成される。
【0026】
ここで、第一の搬送部2aは、上部の沈砂分離槽4を接触しない範囲において、傾斜するように設置してもよい(例えば、図2の破線で示した第一の搬送部2a参照。)。傾斜方向としては、搬送方向下流側に向かって上昇する方向でも、下降する方向でもよい。上昇方向に傾斜して設置すると、第一の搬送部と第二の搬送部の総距離が短縮されるため、効率よく沈砂Sを沈砂回収口まで搬送することができる。一方、下降方向に傾斜して設置すると、沈砂Sが重力方向に流下するため搬送しやすいという効果がある。
【0027】
また、第一の搬送部における搬送手段としては、第1の実施態様のように、スクリューコンベアのほか、ベルトコンベア等のでもよい。スクリューコンベアの構成についても、第1の実施態様のスクリューの形状に限定されるものではなく、スクリュー軸のないシャフトレススクリューでもよい。
スクリューコンベアを用いると、沈砂を搬送方向に向けて強制的に搬送することができるため、押圧作用により沈砂Sを濃縮することができる。
【0028】
更には、第一の搬送部としてスクリューコンベアを用いた場合には、スクリュー羽根のピッチ寸法を、搬送方向下流側に向かって縮小することが好ましい。第一の搬送部のスクリュー羽根のピッチ寸法については、第2の実施態様で詳述する。
【0029】
(第二の搬送部)
第一の搬送部2aにより搬送された沈砂Sは、第二の搬送部3aに導入される。第二の搬送部3aは、内部にスクリュー7bを備えたスクリューコンベアからなり、略垂直に設置されている。第二の搬送部3aは、沈砂分離槽4の水位より高くなるように設置され、沈砂分離槽4と略同じ高さまで、濃縮された被処理水WSで満たされている。なお、スクリューコンベアの構成については、第一の搬送部と同様である。
【0030】
第二の搬送部3aに導入された沈砂Sは、略垂直に設置されたスクリューコンベアにより、水面より上部まで搬送され、第二の搬送部3aの上端に設けられた沈砂回収口10から排出される。
【0031】
第一の実施態様の第二の搬送部3aは、略垂直に設置されているが、所望の設置面積に応じて傾斜して設置してもよい。傾斜方向としては、第一の搬送部2aと同じ方向としても、第一の搬送部2aの搬送方向と異なる方向(図1の紙面手前又は奥方向)に傾斜してもよい。
第二の搬送部を略垂直に設置すると、設置面積を最小化することができる。また、傾斜して設置した場合には、沈砂がケーシングの傾斜方向側に集積するため、スクリューコンベアの内部で濃縮されやすいという効果がある。
【0032】
第二の搬送部における搬送手段としては、第1の実施態様のように、スクリューコンベアのほか、バケットコンベア等の搬送手段としてもよい。スクリューコンベアは、バケットコンベア等のようにバケットの返送のための空間がなく、コンパクトな装置であるため、沈砂分離装置の短縮化という本発明の効果を顕著に発揮することができる。
【0033】
更には、第二の搬送部としてスクリューコンベアを用いた場合には、スクリュー羽根のピッチ寸法を、水位より高い位置において、小さくなるように形成することが好ましい。第二の搬送部のスクリュー羽根のピッチ寸法についても、第一の搬送部と同様、第2の実施態様で詳述する。
【0034】
(第一の搬送部及び第二の搬送部の水平面に対する角度について)
本発明の沈砂分離装置では、第二の搬送部の水平面に対する角度(図2において「β」で示した角度。)は、第一の搬送部の水平面に対する角度(図2において「α」で示した角度。)より大きくなるように構成されている。この構成により、搬送部は、上方に向かって屈折した形状となり、搬送方向寸法を短縮することができる。
【0035】
ここで、各搬送部の水平面に対する角度とは、各搬送部の搬送開始点において水平面と交差し、搬送終点方向に伸びる搬送部と水平面が形成する角度である。例えば、第一の搬送部21が下方に向かって傾斜するように設置した場合には、第一の搬送部2aの水平面に対する角度αは、負の値となる。なお、第1の実施態様の沈砂分離装置1aにおいて、αは0°、βは90°である。
【0036】
(沈砂分離装置の搬送方向寸法について)
本発明の沈砂分離装置1aの搬送方向寸法について、図3を参照して説明すると、搬送方向寸法とは、沈砂分離装置1aを平面視した際の沈砂分離槽4と、第一の搬送部2a及び第二の搬送部3aを備えた搬送部を合わせた寸法である(図3の(B)参照。)。なお、図3の(B)に示すように、本発明において、モーター8a、沈砂回収口10等の搬送部の附属部品については、沈砂分離装置1aの搬送方向寸法に含まない。
ここで、搬送方向とは、第一の搬送部2aの搬送方向と定義され、例えば、第二の搬送部3aを図3の上方向又は下方向(図1の紙面手前又は奥方向)に傾斜するように設置しても、沈砂分離装置1aの搬送方向寸法は変化しない。本発明は、従来の沈砂分離装置では、搬送方向に長大化するという課題を解決するものであるため、第一の搬送部2aの搬送方向における寸法を短縮することにより発明の効果を奏するからである。
【0037】
本発明の沈砂分離装置1aの搬送方向寸法は、第一の搬送部及び第二の搬送部の水平面に対する角度や、各搬送部の長さ等を適宜調整することにより設計される。装置の短縮化という観点から、沈砂分離槽4の平面最大寸法(図3の(A)参照。)に対して、2倍以下とすることが好ましく、更に好ましくは、1.5倍以下である。
【0038】
[第2の実施態様]
図4、5は、本発明の第2の実施態様の沈砂分離装置1bを示す概略説明図である。
図4に図示するように、本発明の第2の実施態様の沈砂分離装置1bは、第一の搬送部2bとして、スクリュー羽根のピッチ寸法が搬送方向下流側に向かって縮小したスクリュー7cを備えたスクリューコンベア、第二の搬送部3bとして、スクリュー羽根のピッチ寸法が水位より上部において小さく形成されたスクリュー7dを備えたスクリューコンベアを適用したものである。
なお、スクリュー羽根のピッチ寸法とは、スクリュー羽根の1回転当たりの搬送方向の距離である(図4の(C)参照。)。
【0039】
スクリュー羽根のピッチ寸法を縮小すると、縮小した領域において沈砂の搬送速度が減少する。そのため、縮小した領域に沈砂が溜まって濃縮される。
第一の搬送部2bでは、搬送方向下流側に向かってピッチ寸法が漸次縮小するように構成されているため、第一の搬送部2bの終端部において、更に濃縮された沈砂Sを得ることができる。なお、ピッチ寸法が漸次縮小するとは、連続的に縮小する構成も、段階的に縮小する構成も含まれる。
【0040】
第二の搬送部3bでは、第二の搬送部3bの内部に満たされた被処理水WSの水面より上部において、ピッチ寸法が小さく形成されている。そのため、沈砂回収口10から排出される前に沈砂Sから水分を絞り出すことができる。なお、第一の搬送部2bと同様、ピッチ寸法は、連続的に縮小しても、段階的に縮小してもよい。
【0041】
また、第2の実施態様の沈砂分離装置1bでは、第二の搬送部3bが、沈砂分離装置1bの搬送方向寸法が沈砂分離槽4の平面最大寸法の2倍を超えない範囲において、搬送方向側に傾斜している。
傾斜式のスクリューコンベアとすることにより、沈砂Sがケーシング内の傾斜した側に集積されるため、沈砂Sを濃縮する効果を奏する。
【0042】
更に、第2の実施態様の沈砂分離装置1bでは、スクリュー7c及び7dに動力を与えるモーター8a及び8bに制御部11が設けられ、スクリュー7cの回転数をスクリュー7dの回転数より高くなるように制御している。
これにより、第二の搬送部3bにおける沈砂Sの搬送速度が、第一の搬送部2bにおける沈砂Sの搬送速度より小さくなるため、第一の搬送部2bと第二の搬送部3bの連結部に沈砂Sが溜まって濃縮されるという効果を奏する。
【0043】
なお、第一の搬送部2b及び第二の搬送部3bの搬送速度は、各搬送部2b及び3bを断続的に運転し、停止時間を調整することにより制御してもよい。すなわち、第一の搬送部2bと第二の搬送部3bを同じ搬送速度とし、第二の搬送部3bの停止時間を、第一の搬送部2bの停止時間より長くすることにより、第二の搬送部3bにおける沈砂Sの搬送速度を、第一の搬送部2bにおける沈砂Sの搬送速度より小さくすることができる。
【0044】
また、本発明の沈砂分離装置は、第一の搬送部2b及び第二の搬送部3bを断続的に運転し、第一の搬送部2bの終端部で沈砂を濃縮することにより、第一の搬送部2b及び第二の搬送部3bに用いる総消費電力を抑制する効果もある。
【0045】
[第3の実施態様]
図6は、本発明の第3の実施態様の沈砂分離装置1cを示す概略説明図である。
図6に図示するように、本発明の第3の実施態様の沈砂分離装置1cでは、第一の搬送部2aのスクリュー7aに動力を供給するモーター8cを備え、更に、モーター8cの動力を第二の搬送部3aのスクリュー7bに伝達する動力伝達部12を備えたものである。
第3の実施態様では、動力部としてモーター8cを一つだけ設置すればよいため、簡素な構造とすることができる。また、モーター等の動力機器を減らすことにより、設備コストを低減することもできる。
【0046】
動力伝達部の構成は、一つの動力部により第一の搬送部及び第二の搬送部を駆動できればどのように構成してもよい。例えば、一つの動力部と二つの動力伝達部を設け、第一の搬送部及び第二の搬送部のいずれも動力伝達部を介して駆動してもよい。
また、変速機等を設けることにより、第二の搬送部3aにおける沈砂Sの搬送速度を、第一の搬送部2aにおける沈砂Sの搬送速度より小さくするように構成してもよい。
【0047】
[第4の実施態様]
図7は、本発明の第4の実施態様の沈砂分離装置1dを示す概略説明図である。
図7に図示するように、本発明の第4の実施態様の沈砂分離装置1dは、第二の搬送部3cとして、バケットコンベアを備えた例である。
バケットコンベアは、無端チェーンと、無端チェーンに取り付けられた複数のバケット13により構成されている。バケット13は、水面より上部で沈砂Sに含まれる水分を除去できるように、底部に孔が形成されていることが好ましい。
【0048】
また、第4の実施態様の沈砂分離装置1dは、第一の搬送部2cとして、搬送方向下流側に向かって上昇するように傾斜して設置されたスクリューコンベアを備えた構成である。上方向に傾斜することにより、第一の搬送部2cと第二の搬送部3cの総距離を短縮することができる。よって、排出部6から排出された沈砂Sは、第二の搬送部3cの上部に設けられた沈砂回収口10まで効率よく搬送される。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の沈砂分離装置は、特に用途を限定することなく、被処理水として、分散媒である液体より分散粒子の比重が高い分散液であれば、どの用途にも利用してもよい。
特に、下水処理設備等の水処理施設では、大型の装置が必要であるため、設置面積を短縮化することが可能な本発明の沈砂分離装置を好適に利用することができる。より詳細には、下水処理設備等の水処理施設の沈砂池に沈殿した沈砂を揚水して得られる沈砂含有水を、沈砂と処理水に分離するために利用することが最適である。
【符号の説明】
【0050】
1a,1b,1c,1d 沈砂分離装置、2a,2b,2c 第一の搬送部、3a,3b,3c 第二の搬送部、4 沈砂分離槽、5 処理水排水部、6 排出部、7a,7b,7c,7d スクリュー、8a,8b,8c モーター、9 流入部、10 沈砂回収口、11 制御部、12 動力伝達部、13 バケット、14 ケーシング、15 スクリュー軸、16 スクリュー羽根
図1
図2
図3
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図5
図6
図7