特許第6373251号(P6373251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373251
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】粘着シートを用いた電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20180806BHJP
   C09J 7/24 20180101ALI20180806BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20180806BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20180806BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   H01L21/78 M
   H01L21/78 Q
   C09J7/24
   C09J201/00
   B32B27/00 M
   B32B27/32 Z
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-501464(P2015-501464)
(86)(22)【出願日】2014年2月18日
(86)【国際出願番号】JP2014053801
(87)【国際公開番号】WO2014129469
(87)【国際公開日】20140828
【審査請求日】2016年11月21日
(31)【優先権主張番号】特願2013-32812(P2013-32812)
(32)【優先日】2013年2月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 岳史
(72)【発明者】
【氏名】津久井 友也
【審査官】 上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−126118(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/157615(WO,A1)
【文献】 特開2005−068420(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/004825(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/00−7/50
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の面に粘着剤層を備え、
前記基材フィルムがプロピレン系共重合体であり、
前記基材フィルムは、JIS K 7121に準拠するDSC法で測定した融解ピークが120℃以上140℃未満、
重量平均分子量Mwが200,000以上500,000以下、
前記重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比である分散度Mw/Mnが1.5以上3.0未満、であり、
前記基材フィルムの厚みが50μm以上250μm以下である粘着シートを用いる電子部品の製造方法であって、
前記粘着シートを半導体ウエハ又は基板とリングフレームとに貼り付ける貼付工程と、前記半導体ウエハ又は前記基板をダイシングして半導体チップ又は半導体部品にするダイシング工程と、前記半導体チップ又は前記半導体部品同士の間隔を広げるため前記粘着シートを引き伸ばすエキスパンド工程と、前記粘着シートから前記半導体チップ又は前記半導体部品をピックアップするピックアップ工程と、を含む電子部品の製造方法
【請求項2】
前記プロピレン系共重合体が、プロピレンとエチレンを重合成分として含有したものである請求項1記載の電子部品の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着シートを用いた電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の製造方法の一つに、ウエハや絶縁基板上に複数の回路パターンが形成された電子部品集合体を粘着シートに貼り付ける貼付工程と、貼り付けられたウエハや電子部品集合体を個々に切断してチップ化する切断・分離工程(ダイシング工程)と、半導体チップ又は半導体部品同士の間隔を広げるため粘着シートを引き伸ばすエキスパンド工程と、切断されたチップを粘着シートからピックアップするピックアップ工程を有する製造方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−007976号公報
【特許文献2】特開平04−196342号公報
【0004】
ワークとしては、単に半導体ウエハ又は回路基板材上に回路パターンを形成してなる電子部品集合体だけでなく、例えばエポキシ樹脂で封止された封止樹脂パッケージ、具体的にはボール・グリッド・アレイ(BGA)、チップ・サイズ・パッケージ(CSP)、スタック・メモリー・モジュール、システム・オン・モジュール等、ガラス等が用いられることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粘着シートの基材フィルムとしては、一般的にポリエチレン系の樹脂組成物が使用されているが、ダイシング工程に基材由来の切削屑が発生する場合があった。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、ダイシング工程時における切削屑の発生を防止又は低減し、高効率に信頼性の高いダイシング工程を行い、高品質な電子部品を製造できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の面に粘着剤層を備え、基材フィルムがプロピレン系共重合体で、JIS K 7121に準拠するDSC法で測定した融解ピークが120℃以上140℃未満、重量平均分子量Mwが200,000以上500,000以下、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比である分散度Mw/Mnが1.5以上3.0未満、であり、前記基材フィルムの厚みが50μm以上250μm以下である粘着シートを用いる電子部品の製造方法であって、前記粘着シートを半導体ウエハ又は基板とリングフレームとに貼り付ける貼付工程と、前記半導体ウエハ又は前記基板をダイシングして半導体チップ又は半導体部品にするダイシング工程と、前記半導体チップ又は前記半導体部品同士の間隔を広げるため前記粘着シートを引き伸ばすエキスパンド工程と、前記粘着シートから前記半導体チップ又は前記半導体部品をピックアップするピックアップ工程と、を含む電子部品の製造方法が提供される。
【0008】
上記構成からなる粘着シートをダイシング工程に供することにより、ダイシング工程時における切削屑の発生を抑制でき、高効率に信頼性の高いダイシング処理を行い、高品質な電子部品を製造できる
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記構成の粘着シートをダイシング工程に供することにより、ダイシング工程時における切削屑の発生を抑制でき、高効率に信頼性の高いダイシング工程を行い、高品質な電子部品を製造できる。これらの結果、電子部品の信頼性の向上、生産性の向上等を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る粘着シート及び粘着シートを用いた電子部品の製造方法の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
(基材フィルム)
基材フィルムとしてプロピレン系共重合体を採用した理由は、このプロピレン系共重合体を採用することにより、半導体ウエハや絶縁基板上に複数の回路パターンが形成された電子部品集合体を切断する際に発生する切り屑を抑制することができるためである。このプロピレン系共重合体としては、例えばプロピレンと他成分とのランダム共重合体、プロピレンと他成分とのブロック共重合体、プロピレンと他成分の交互共重合体がある。他成分としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン等のα−オレフィン、少なくとも2種以上のα−オレフィンからなる共重合体等が挙げられる。これらの中でもエチレンが好ましい。これにより、半導体ウエハを切断する際に発生する切り屑を特に抑制することができる。
【0012】
プロピレン系共重合体を重合する方法としては、例えば溶媒重合法、バルク重合法、気相重合法、逐次重合方法等が挙げられる。
【0013】
プロピレン系共重合体の合成において、本発明の目的を達成する限り、有機金属化合物を含有する触媒を用いることができる。例えば、プロピレンとエチレンとを含む共重合体の合成においては、チタン化合物と有機アルミニウム化合物とを含むチーグラー・ナッタ触媒、又は、置換可能なシクロペンタジエニル基の1個以上が、金属イオンに配位した錯体等のメタロセン触媒等を用いることができる。
【0014】
また、プロピレン系共重合体の合成において溶媒重合法を採用する場合、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、又はハロゲン化炭化水素等を溶媒として用いることができる。例えばプロピレンとエチレンとを含む共重合体の合成においては、溶媒重合法で用いることのできる溶媒として、例えばブタン、ペンタン、ヘキサン、及びヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン及びトルエン等の芳香族炭化水素、並びにメチレンジクロライド等のハロゲン化炭化水素を挙げることができる。
【0015】
プロピレン系共重合体の重合反応は、例えば10〜110℃、好ましくは40〜90℃の温度範囲、大気圧〜10MPaの圧力範囲で行うのが良い。重合時間は、投入する原料及び試薬等の量、重合温度、圧力等に応じて決定すれば良いが、例えば1分〜30時間の範囲内で適宜決定することができる。
【0016】
上記プロピレン系共重合体を含む樹脂組成物には、上述したプロピレン系共重合体以外に本発明の目的を損なわない範囲で結晶核剤、アニオン性、カチオン性、非イオン性または両イオン性の一般に公知である帯電防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、酸化防止剤、光安定剤、アンチブロッキング剤、界面活性剤、染料、顔料、難燃剤、充填剤、石油樹脂等の添加剤を添加しても良い。
【0017】
基材フィルムにはこれらの樹脂の混合物、及び多層フィルムも使用可能である。
【0018】
基材フィルムのJIS K 7121に準拠するDSC法で測定した融解ピークは、120℃以上140℃未満とすることが好ましい。融解ピークを120℃以上にすることで、半導体ウエハを切断する際に発生する切り屑を抑制することができ、140℃未満にすることで、ダイシング後のエキスパンド工程において粘着シートの切断を防止し、拡張性の低下を抑制するためである。粘着シートの切断を防止し、拡張性の低下を抑制することによって、エキスパンド工程を経てピックアップ工程に供することのできる半導体チップの絶対数が多くなるので、結果としてピックアップ性が向上することになる。
【0019】
プロピレン系共重合体を含む基材フィルムをJIS K 7121に準拠するDSC法で測定した融解ピークは、プロピレンと共重合させるエチレン等の化合物の含有量を多くすることによって、低温側にシフトさせることができ、逆に共重合成分の含有量を少なくすることによって高温側にシフトさせることができる。
【0020】
例えばプロピレンとエチレンとの共重合体を合成する場合、上記融解ピークを120℃以上、140℃未満にするには、プロピレンとエチレンとの配合比を94:6〜98:2(重量%比)とするのが好ましい。
【0021】
基材フィルムの重量平均分子量Mwは、200,000以上500,000以下、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比である分散度Mw/Mnが1.5以上3.0未満とすることが好ましい。重量平均分子量Mwを200,000以上にすることで、ダイシング後のエキスパンド工程において粘着シートの切断を防止し、拡張性の低下を抑制し、500,000以下にすることで、半導体ウエハを切断する際に発生する切り屑を抑制することができる。また分散度Mw/Mnを1.5以上にすることでダイシング後のエキスパンド工程において粘着シートの切断を防止し、拡張性の低下を抑制し、3.0未満にすることで、半導体ウエハを切断する際に発生する切り屑を抑制することができる。
【0022】
プロピレン系共重合体を含む基材フィルムの分散度Mw/Mnは、例えばプロピレン系共重合体の分子量分布を調整することによって制御可能である。
【0023】
プロピレン系共重合体の分子量分布は、例えば用いる触媒、重合態様、及び重合反応後の後処理等に基づいて制御することができる。重合反応時の触媒としては、狭い分布又は広い分布を与える様々な触媒を適宜に用いることができ、例えば塩化マグネシウムに塩化チタンを担持して成るチーグラー・ナッタ触媒、又は、置換可能なシクロペンタジエニル基の1個以上が、金属イオンに配位した錯体を触媒成分とするメタロセン触媒等を採用することができる。
また、広い分布を与える重合態様としては、例えばそれぞれ異なる重合条件下の複数の重合領域で順次重合反応を進める態様を挙げることができる。
更に、重合後の後処理として有機過酸化物を用いることによって、共重合体の分子を切断して分子量分布を狭くすることができる。なお、分子量500,000を超える共重合体を一旦合成しておいて、有機化酸化物で共重合体を後処理することによって、分子量を200,000〜500,000の範囲内に調整すると共に、分子量分布を特定の範囲内に調整し易い。
【0024】
基材フィルムの成型方法は特に限定されず、例えばカレンダー、Tダイ押出し、インフレーション、及びキャスティング等が挙げられる。
【0025】
基材フィルムの加工性を向上させるために、少なくとも基材フィルムの片面にシボ加工やエンボス加工を施して凹凸を形成することが好ましい。好ましい面粗度は算術平均Ra値が0.3μm以上2.0μm以下であり、0.5μm以上1.5μm以下とすることがより好ましい。面粗度が0.3μm以上であれば、基材フィルム製膜後に基材の巻き戻しが容易ある。また、面粗度が2.0μm以下であれば、視認性が損なわれないため、ダイシング時の加工精度を向上させることができる。
【0026】
基材フィルムの厚みは特に限定されないが、50μm以上250μm以下が良い。好ましくは70μm以上、150μm以下がよい。基材フィルムの厚みが50μm以上であれば、エキスパンド時に基材フィルムの切断が生じにくくなる。また、基材フィルムの厚みが250μm以下であれば、コスト性、作業性の両面からも実用的である。
【0027】
基材フィルムには、帯電を防止するために、基材フィルムの片面又は両面に帯電防止剤を塗布して帯電防止処理を施してもよい。
【0028】
帯電防止剤としては、例えば四級アミン塩単量体が好適に用いられる。四級アミン塩単量体としては、例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級塩化物、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級塩化物、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級塩化物、p−ジメチルアミノスチレン四級塩化物、及びp−ジエチルアミノスチレン四級塩化物等が挙げられ、ジメチルアミノエチルメタクリレート四級塩化物が好適に用いられる。
【0029】
ダイシング後のエキスパンド性を更に向上させるために、基材フィルムのエキスパンド装置との接触面に滑剤を塗布することができる。
【0030】
滑剤は、基材フィルムとエキスパンド装置の摩擦係数を低下させる物質であれば特に限定されず、例えばシリコーン樹脂や(変性)シリコーン油等のシリコーン化合物、フッ素樹脂、六方晶ボロンナイトライド、カーボンブラック、及び二硫化モリブデン等が挙げられる。これらの滑剤は複数の成分を混合してもよい。電子部品の製造はクリーンルームで行われるため、滑剤としてシリコーン化合物又はフッ素樹脂を用いることが好ましい。シリコーン化合物の中でも特にシリコーングラフト単量体を有する共重合体は帯電防止層との相溶性が良く、帯電防止性とエキスパンド性のバランスが図れるため、好適に用いられる。
【0031】
(粘着剤層)
粘着剤層を形成する粘着剤としては、従来のダイシング用粘着シートに採用される粘着剤、例えば、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらのエステルモノマーを重合させたポリマーの他、これらモノマーと共重合可能な不飽和単量体(例えば、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル)とを共重合させたコポリマーが用いられる。この粘着剤としては、これら粘着剤のうち、(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましい。粘着剤層には、紫外線又は放射線のいずれか又は照射によって三次元網状化しうる分子内に光重合性炭素−炭素二重結合を分子内に少なくとも2個以上有する低分子量化合物、たとえば公知のアクリレート化合物又はウレタンアクリレートオリゴマ等を用いた光硬化型感圧性粘着剤も採用できる。
【0032】
粘着剤層の厚みは特に限定されるものではないが、一般に5μm以上100μm以下程度であり、5μm以上40μm以下程度であるのが好ましい。
【0033】
基材フィルム上に粘着剤層を形成して粘着シートとする方法は特に限定されず、例えばグラビアコーター、コンマコーター、バーコーター、ナイフコーター、又はロールコーター等のコーターで基材上に粘着剤を直接塗布する方法が挙げられる。凸版印刷、凹版印刷、平版印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、又はスクリーン印刷等で基材フィルム上に粘着剤層を印刷してもよい。
【0034】
本発明に係る電子部品の製造方法の具体的な工程を順に説明する。
【0035】
(1)貼付工程
まず、貼付工程において、粘着シートを半導体ウエハ(又は基板)とリングフレームに貼り付ける。ウエハは、シリコンウエハおよびガリウムナイトライドウエハ、炭化ケイ素ウエハ、サファイアウエハなどの従来汎用のウエハであってよい。基板は樹脂でチップを封止したパッケージ基板、LEDパッケージ基板などの汎用の基板であってよい。
【0036】
(2)ダイシング工程
ダイシング工程では、シリコンウエハ等をダイシングして半導体チップ又は半導体部品にする。
【0037】
(3)エキスパンド・ピックアップ工程
エキスパンド・ピックアップ工程では、半導体チップ又は半導体部品同士の間隔を広げるため粘着シートを引き伸ばし、チップ又は部品をニードルピン等で突き上げる。その後、チップ又は部品を真空コレットまたはエアピンセット等で吸着し、粘着シートの粘着剤層から剥離してピックアップする。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
<実験材料の調製>
実施例に係る粘着シート、及び多層粘着シートは次の手順で製造した。
【0040】
【表1】
【0041】
(基材フィルム)
基材フィルムA:プロピレンとエチレンを重合成分として含有し、融解ピーク125℃、重量平均分子量Mw350,000、分散度Mw/Mn2.3。なお、重合反応に供したプロピレンとエチレンとの配合比は95.5:4.5(重量%比)であった。
基材フィルムB〜O:プロピレンとエチレンを重合成分として含有し、融解ピーク、重量平均分子量Mw、分散度Mw/Mnを表1の通り変更。なお、重合反応に供したプロピレンとエチレンとの配合比は、基材フィルムBが94:6(重量%比)、基材フィルムCが98:2(重量%比)、基材フィルムD、E、F、G、J、K、L、M、N、Oが95.5:4.5(重量%比)、基材フィルムHが90:10(重量%比)、基材フィルムIが99:1(重量%比)であった。
基材フィルムP:エチレンと酢酸ビニルを重合成分として含有し、融解ピーク92℃、重量平均分子量Mw230,000、分散度Mw/Mn3.2。なお、重合反応に供したエチレンと酢酸ビニルとの配合比は88:12(重量%比)であった。
【0042】
基材フィルムの融解ピークはJIS K 7121に準拠するDSC法で測定した。
装置名:ASD−2(SEIKO社製)。
試料:基材フィルム10mg。
測定雰囲気:窒素。
測定温度:30℃〜300℃。
昇温速度:10℃/分。
【0043】
基材フィルムの分子量は下記記載のGPC測定条件で測定した。
試料:前処理として、基材フィルムに1,2,4−トリクロロベンゼン(0.1%BHT添加)を加え、140℃で1時間振とうした。
溶液装置名:HLC−8120GPC(東ソー社製)。
カラム:TSKgel GMHHR−H(20)HT 3本を直列。
温度:40℃検出。
示差屈折率計溶離液:1,2,4−トリクロロベンゼン(0.05%BHT添加)。
注入量:300μL。
検量線:標準ポリスチレン(PS)を用いて作成し、分子量はPS換算値で表した。
【0044】
(粘着剤)
(メタ)アクリル酸エステル共重合体:ブチルアクリレート60%、メチルアクリレート35%、2−ヒドロキシエチルアクリレート5%の共重合体からなり、溶液重合により得られる市販品(綜研化学社製、製品名SKダイン1435)を用いた。
多官能イソシアネート硬化剤:2,4−トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の市販品(日本ポリウレタン社製、製品名コロネートL−45Eを用いた。
ウレタンアクリレートオリゴマ:ポリ(プロピレンオキサイド)ジオールの末端にヘキサメチレンジイソシアネート(脂肪族ジイソシアネート)の三量体を反応させてなる末端イソシアネートオリゴマに、更にジペタエリスリトールペンタアクリレートを反応させてなる末端アクリレートオリゴマであって、数平均分子量(Mn)が3,700でアクリレート官能基数15個のウレタンアクリレートオリゴマの市販品(根上工業社製、製品名UN−3320HS)を用いた。
光重合開始剤:ベンジルジメチルケタールからなる市販品(BASFジャパン社製、製品名イルガキュア651)を用いた。
【0045】
(粘着シート)
基材フィルムは、プロピレン系共重合体AをTダイ押出しにより、140μmに成膜したものである。粘着剤層は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部、多官能イソシアネート硬化剤5質量部、ウレタンアクリレートオリゴマ50質量部、光重合開始剤5質量部を配合したものである。
【0046】
粘着剤をPETセパレーターフィルム上に塗布し、乾燥後の粘着剤層の厚みが25μmとなるように塗工し、厚み140μmの基材に積層し粘着シートを得た。
【0047】
(電子部品集合体)
電子部品の製造には、ダミーのパッケージ基板(10cm×10cm×厚さ0.1mm)のシリコンウエハを用いた。
【0048】
粘着シートへの切り込み量は100μmとした。ダイシングは5mm×5mmのチップサイズで行った。ダイシング装置はDISCO社製 DAD341を用いた。ダイシングブレードは、外径54mm、刃幅300μmを用いた。
ダイシングブレード回転数 :40,000rpm。
ダイシングブレード送り速度:50mm/秒。
切削水温度:25℃。
切削水量 :1.0L/分。
【0049】
ピックアップはニードルピンで突き上げた後、真空コレットでチップを吸着し、粘着シートとの間で剥離し、チップを得た。ピックアップ装置はキャノンマシナリー社製 CAP−300IIを用いた。
ニードルピン形状:250μmR。
ニードルピン突き上げ高さ:0.5mm。
エキスパンド量:5mm。
【0050】
(粘着シートの評価方法)
ダイシングテープの切削性:パッケージ基板を前記条件にてダイシングした後に、パッケージ基板上からダイシングラインを光学顕微鏡(倍率300倍)で観察した。結果を表1に示す。
◎(優):パッケージ基板上に切削屑が付着していない。
○(良):パッケージ基板上に切削屑が殆ど付着していない。
×(不可):パッケージ基板上に付着していた。
【0051】
ピックアップ:パッケージ基板を前記条件にてダイシングした後、前記条件にてチップをピックアップできた数を評価した。結果を表1に示す。
◎(優):95%以上のチップがピックアップできた。
○(良):80%以上95%未満のチップがピックアップできた。
×(不可):80%未満のチップがピックアップできた、又はエキスパンド時にテープが破断した。