(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも1つのダイレクトデジタルシンセサイザは、前記フィードバック信号から前記入力方形波信号を生成するための正弦波出力および電流位相信号を生成するための信号を提供する、第2デジタルシンセサイザを備える
ことを特徴とする請求項2記載の送信器。
少なくとも1つのダイレクトデジタルシンセサイザを備え、第1期間における第1周波数成分と第2期間における第2周波数成分を有する複合出力信号を生成する信号生成モジュール、
前記複合出力信号を負荷導体に対して出力する出力ステージ、
前記出力ステージから信号を受け取り、前記信号生成モジュールから位相信号を受け取り、フィードバック信号を提供する、測定回路、
前記信号生成モジュールおよび前記測定回路と連結され、前記フィードバック信号に応じて前記信号生成モジュールを制御する、マイクロプロセッサ、
を備えることを特徴とする送信器。
前記信号生成モジュールの前記少なくとも1つのダイレクトデジタルシンセサイザは、 制御位相信号およびFSK制御信号に基づき前記複合出力信号を提供する第1ダイレクトデジタルシンセサイザ、
前記FSK制御信号と前記制御位相信号に基づき直交信号を提供する第2ダイレクトデジタルシンセサイザ、
前記制御位相信号と前記FSK制御信号に基づき同相信号を提供する第3ダイレクトデジタルシンセサイザ、
を備えることを特徴とする請求項6記載の送信器。
【背景技術】
【0003】
地下パイプおよびケーブル検出器(配線検出器とも呼ばれる)は長年存在しており、多くの特許公報その他公開文献において記載されている。配線検出システムは通常、モバイル受信器と送信器を備える。送信器は、直接電気接続または誘導接続によってターゲット導体に連結され、ターゲット導体上で電流信号を提供する。受信器は、電流信号の結果としてターゲット導体において生成される電磁場から生じる信号を検出し、処理する。これは送信器によってターゲット導体に対して提供される連続波正弦信号である。
【0004】
送信器は受信器から物理的に分離され、離隔距離は通常数メートルであり、場合によっては数キロメートルに及ぶ。送信器は電流信号をターゲット導体にカップリングする。この電気信号の周波数は、選択可能周波数セットのなかからユーザが選択することができる。ターゲット導体に対して印加される電流信号の周波数は、アクティブ検出周波数と呼ばれる。ターゲット導体は次に、電流信号に応じてアクティブ検出周波数の電磁場を生成する。
【0005】
検出手法と地下環境が異なれば、アクティブ周波数も異なる。アクティブ検出周波数の通常範囲は、数Hertz(送信器と受信器との間の離隔距離がキロメートルレベルであるターゲット導体を検出する場合)〜100kHzあるいはそれ以上である。この範囲の環境においては、受信器が検出した電磁場に対して多大な無線周波数干渉が生じ得る。したがって配線検出システムの受信器は、高度に調整されたフィルタを備え、ターゲット導体からの所望するアクティブ検出周波数における信号測定に対して外部干渉源が干渉することを除去している。これらフィルタを調整して、選択可能アクティブ検出周波数それぞれにおける電磁場から生じる信号を受信し、アクティブ検出周波数以外の周波数における電磁場から生じる信号を拒否することができる。
【0006】
配線検出システムにおいて、電磁場の検出から判定した信号強度パラメータは、得られる電流信号の量(すなわちターゲット導体における配線電流)、導体中心に対する配線検出受信器の相対位置、配線検出受信器からの導体深さ、についての基準となり、ピークインディケータまたはヌルインディケータに対する入力として用いることができる(検出器が感度を有する磁場の方向に依拠する)。全ての配線検出システムは、1以上のチャネル上で信号強度を測定する。
【0007】
金属パイプおよびケーブルが混み合った地下施設環境においては、アクティブ検出周波数の信号がターゲット導体から他の隣接する地下導体にカップリングすることが生じ得る。これら導体(配線)は、配線検出システムがトラッキングすることを意図したものではない。しかしターゲット導体からの電流が様々な手段(抵抗、誘導、または容量)を介してそれら周辺の導体にカップリングすることは、「ブリードオーバ」と呼ばれ、配線検出器の動作不良を生じさせて、配線検出システムのオペレータがターゲット導体(例えば目標とするパイプまたはケーブル)をトラッキングせずその代わりに隣接する配線を探すことになる可能性がある。
【0008】
従来の受信器においては、受信器がターゲット導体をトラッキングしているか否かを判定すること、または受信器が誤って隣接する導体をトラッキングしているか否かを判定することは、ほぼ不可能である。地下導体配置が複雑である場合において、隣接する導体におけるブリードオーバ電流から生じる電磁場からの干渉効果により、大きな非対称電磁場が生じ得る。これは電磁界歪と呼ばれる。さらに、ターゲット導体と隣接する導体を区別することを試みる従来のシステムは、通常は送信器から位相情報を送信することに依拠している。この送信器は、配線検出器の受信器がその情報を受信することが現実的でない距離に配置されている。
【0009】
したがって、誘導カップリングまたは容量カップリングの結果として生じる信号を生成する隣接導体を排除して、ターゲット導体からの信号強度パラメータを正確に判定することができる、配線検出システムに対するニーズがある。同システムは、伝送媒体としてターゲット導体(パイプやケーブル)のみを利用する、信号生成および処理手法を用いるものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面は以下の説明を読むことによってより理解できるであろう。
【0023】
以下の説明において、本発明の実施形態を記載する詳細説明を記載している。ただし当業者は、これら詳細部分の一部または全部を用いることなく本実施形態を実施できることを理解するであろう。本明細書が開示する特定の実施形態は、説明目的のものであり、本発明を限定するためのものではない。本明細書においては具体的に記載していないが、当業者はその他の要素も本発明の要旨の範囲内であることを理解するであろう。
【0024】
発明要素と実施形態を示す本明細書と添付する図面は、本発明を限定するものであると解釈すべきではない。特許請求の範囲が本発明を定義する。本明細書の要旨と範囲および特許請求範囲から逸脱することなく、様々な変更をなすことができる。本発明を不明瞭にすることを避けるため、実施例によっては、既知の構造や技術は詳細に示していない。
【0025】
図面は正確なサイズを記載したものではない。構成要素の相対サイズは説明目的のものであり、本発明の実際の実施形態における実際のサイズを反映したものではない。2以上の図面における同様の参照番号は、同一または同様の構成要素を表す。1実施形態を参照して詳細に説明する構成要素およびこれに関連する側面は、可能である限り、これらを具体的に記載していない他実施形態においても備えることができる。例えば、ある構成要素が1実施形態を参照して詳細に記載されており、第2実施形態を参照して記載されていない場合であっても、当該構成要素は第2実施形態においても備えることができる。
【0026】
本発明の実施形態は、電気回路図を用いて示されている。当業者は、これら電気回路図が物理電気回路による実装、メモリに格納されたアルゴリズムを実行するプロセッサによる実装、または電気回路とアルゴリズムを実行するプロセッサとの組み合わせによる実装を表すことを理解するであろう。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係る配線検出システム100を示す。
図1に示すように、配線検出システム100は送信器102と受信器104を備える。送信器102は、地面108に埋められた導体106と電気的にカップリングされている。導体106は例えば、導体パイプまたは配線であり、一般に長い導体構造とみなされる。送信器102は導体106に沿って電気信号を提供し、導体106はその長さ方向に沿って電磁信号を送信する。この電磁信号は、受信器104上の1以上のアンテナによって受信される。受信器104は、地面108の表面を横切って、地下の導体106の位置を検出する。信号強度により、導体106の深さと位置を判定することができる。
【0028】
配線検出システム100は、本発明の実施形態に基づき、信号選択システムを備える。信号選択は、配線検出システム100に対して追加機能を提供するためのシステム実装である。配線検出システム100は、信号選択システムを採用し、低周波数の交流磁界を用いて、様々な遠隔検出アプリケーションを実施する。
【0029】
実施形態において、信号選択システムは、送信器102内の変調機能として周波数シフトキーイング(FSK)を用いる。これにより受信器104が追加情報を復号することができる。特に受信器104は、地下導体108のリアクタンス(複素インピーダンス)によって生じるいかなる位相変化が生じたとしても、送信信号の元々の位相を復号することができる。
【0030】
先の信号選択(米国特許第6411073号で開示し、米国特許第7057383号で発展し、これら全体が参照により本願に組み込まれるもの)は、例えば周波数シフトキーイング変調などの周波数変調を用い、受信器が元の送信器位相を復号するメカニズムを提供する。導体108のリアクタンスによって生じる「信号歪」または「電流ブリードオフ」をリアルタイム測定できるようにすることにより、さらなる発展がなされた。
【0031】
本発明に係る配線検出システム100の実施形態は、信号選択技術をさらに改善した。特に本発明の実施形態は、システム製造プロセスをより簡易化することにより、送信器102と受信器140の製造較正プロセスを不要とし、コストと時間を低減できるようにした。また実施形態において、送信器102のアーキテクチャは従来のシステムよりも大幅に簡易化されており、コストを低減するとともに信頼性を向上させている。さらに実施形態において、受信器104は位相ロックループに依拠する必要はなく(ソフトウェアを実行するプロセッサによって実装されているか、または電気回路によって実装されている)、復調機能を実現するための応答時間(ロックイン時間)をより早くしている。実施形態において、配線検出システム100の全体的な信号対ノイズ性能を改善できる。
【0032】
図2は、送信器102のシステムアーキテクチャを一般的に示す。
図2に示すように、ユーザインターフェース202はフィードバックコントロール204に連結されている。フィードバックコントロール204の出力は、増幅器206を介して配線106(パイプまたはケーブル)に連結されている。配線は終端器208によって終了している。電流フィードバック210は、フィードバックコントロール204の入力と増幅器206からの出力信号を連結している。
【0033】
実施形態において、信号選択システムは複合波形を用いる。例えば低周波数(f0×50/51)において8サイクルを有し、高周波数(f0×50/49)において8サイクルを有する。この送信器102が生成する分岐波形により、搬送周波数(f0)上で動作し周波数f0/16を有する変調機能を実施できる。
【0034】
送信器102の実施形態は、電子ハードウェアとマイクロプロセッサを利用して上述の信号選択波形を実装することができ、取り付けられたパイプ、ケーブル、導体106へ電流を駆動または誘起することができる。導体106は、概ねいかなる負荷インピーダンスをも示し得る。したがって送信器102は、導体105の複素インピーダンス(リアクタンス)によって生じる位相シフトに適応する。
【0035】
図2に示す送信器102の実施形態は、本発明の側面に基づく特徴を示している。
図2に示す出力増幅器206は、例えば多くの標準ケーブル検出システムにおいて用いられるDクラス増幅器である。
図2に示す送信器102の例は一般に定電流生成器として動作し、オペレータはユーザインターフェース202を介して規定の搬送周波数における固定電流を要求することができる。
【0036】
本発明の実施形態において、送信器102はダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS)デバイスを利用する。これは、マイクロプロセッサの制御下にある閉ループフィードバックシステムを形成するために用いられる。
図3は、フィードバックコントロール204の実施形態の機能部を示す。過度な複雑さを避けるため、
図3に示す図は電気的な詳細部分を省略している。これらの機能は当業者の能力の範囲内である。例えば実施形態は、3以上のDDSデバイスと2以上のマイクロプロセッサを備えることができる。
図3に示すように、DDS304と312を利用して、信号選択波形を駆動し信号選択変調機能の位相を訂正することができる。
【0037】
図3に示すように、DDS304として例えばAnalog Devices社のAD9833DDSのような標準ダイレクトデジタルシンセサイザを用いることができる。DDS304は、信号選択出力信号306(図面においてはVout)を提供する。これは
図2に示す増幅器206に連結されている。入力308におけるFSK信号は、周波数f0/16の方形波であり、DDS304を2つの周波数成分(f0×50/51)と(f0×50/49)との間で分岐させる。これら周波数成分はそれぞれ8サイクルを有する波形である。FSK信号は、DDS304へ入力される前に遅延器310によって遅延される。したがって、DDS304はFSK信号に応じて、DDS304内部の周波数積算器レジスタが保持している2値の間でスイッチする。DDS304に対するその他の入力は入力302における制御位相信号であり、これはフィードバック成分である。制御位相信号は、DDS304が生成したVout信号の位相を進めまたは遅らせる役割を有し、DDS304内部の位相積算レジスタを使用する。
【0038】
DDS312は、DDS304と同様のデバイスであり、DDS304と同様の動作においてFSK制御信号を用いる。ただしDDS312は位相積算レジスタを用いない。DDS312の目的は固定基準位相を提供することだからである。「正弦出力」とマークした出力344は、2つの周波数成分の8サイクルをカウントし、入力308においてFSK信号を生成するために用いられる。
図3に示すように、出力344からの信号はカウンタ314に入力され、カウンタ314はスイッチ316を制御する。スイッチ316は入力320と入力318との間でスイッチし、入力308においてFSK信号を出力する。
【0039】
出力342「方形(COS)」および出力340「方形(SIN)」は、同相方形波および直角位相方形波である。これらによりフィードバック204は、導体106に接続されたメイン電流フィードバック信号の位相を計算することができる。
図3に示すように、出力340からの信号は、乗算器324の入力210からの電流フィードバック信号と混合される。乗算器324からの出力信号は、フィルタ330に対して入力される。同様に出力342からの信号は、乗算器326の入力210からの電流フィードバック信号と混合される。乗算器326からの出力は、フィルタ328に対して入力される。フィルタ328と330は例えば積分フィルタであり、1次低域通過(LP)IIRフィルタである。これらフィルタは、増幅器を用いたハードウェアによって実装することもできるし、マイクロプロセッサドメインのデジタルフィルタとして実装することもできる。「K Integ」とマークした入力332における入力信号は、積分器の時定数である(アナログシステムにおける1/RC)。フィルタ328からの出力信号は、インバータ332と加算器334において組み合わせられ、ブロック336において位相と振幅が計算され、出力338において出力信号が得られる。「電流位相」とマークした出力信号は、以下に説明する実施形態における位相分散の問題を訂正するために利用することができる。
【0040】
実施形態において、フィードバック204は、DDS312周りのトポロジーを利用することができる。DDS312は、出力342からの余弦フィードバック項のみを用いる。この実装において、入力302における制御位相は、余弦フィードバック信号が0になるまで調整される。
【0041】
図4は、電流フィードバック210を用いてDDS304の位相を全体的に制御する一般的な態様を示す。
図4において、DDS304と312の機能は、フィードバックブロック402へ組み合わされている。
図4に示すように、加算器408と遅延器406および410によって形成される積分器は、「制御位相」入力を駆動する。この積分に対する入力信号は、出力338からの電流位相信号から得られたものである。この信号は加算器312の入力404からの分散オフセット信号と加算され、増幅器414によって増幅される。この加算器408からの積分信号は、波形全体の位相を進めまたは遅れさせる。本発明の実施形態においてその他のフィードバックプロセスを用いることもできる。
【0042】
上述の信号選択の波形定義に基づき、変調機能(周波数f0/16の方形波)は、送信波形の元々の位相情報を搬送する。これは導体106に沿って信号が伝搬する際に生じる位相シフトとは無関係である。
【0043】
図5は、本発明の実施形態に基づく信号選択モードを有する送信器102の他例を示す。
図5に示す送信器102の例は、ケーブル・パイプ検出業界からの要求に基づき、複数機能モードを備えることができる。
図5に示すように、送信器102は、信号生成モジュール502、出力ステージ526、測定回路518を備えることができる。マイクロプロセッサ516は、測定回路518からの信号を受け取るように連結し、信号生成モジュール502に対して信号を提供することができる。マイクロプロセッサ516をユーザインターフェース202へ連結し、ユーザインターフェース202から受信した入力に応じて複数の動作モードを提供することができる。出力ステージ526は、出力信号(出力306におけるVout)を受け取り、出力信号に基づき例えば導体106などの負荷を駆動することができる。信号生成モジュール502と出力ステージ526は、測定回路518に対して信号を提供する。
【0044】
図5に示すように、信号生成モジュール502は、DDS504とDDS506を備えることができる。DDS304の場合と同様に、DDS504は導体106にカップリングされる出力信号を提供する。DDS506は、DDS312と同様に、測定回路518に対して信号を提供する。マイクロプロセッサ516は、DDS504と506に対して制御線とFSK制御信号を提供する。第3のDDS508は、マイクロプロセッサ516からの制御線とFSK制御信号を受け取るように連結され、マイクロプロセッサ506と測定回路518に対して基準信号を提供する。
図5に示すように、DDS506からの出力信号は直交信号SIG_Qであり、DDS508からの出力信号は同相信号SIG_Iである。
【0045】
出力ステージ526は、信号生成モジュール502からの出力信号を受け取るように連結されたパルス波変調(PWM)生成器510を備えることができる。PWM生成器510からの出力信号は、増幅器512に対して入力される。増幅器512は例えばデジタル増幅器である。増幅器512からの出力信号は、出力回路514に対して入力される。出力回路514は、導体106などの負荷に信号をカップリングし、測定回路518に対してフィードバック信号を提供する。
【0046】
測定回路518は、出力ステージ526からフィードバック信号を受け取る増幅器524を備える。増幅器524からの出力信号は、直交検出器522に対して入力される。直交検出器522はまた、信号生成モジュール502から出力信号SIG_QとSIG_Iを受け取る。直交検出器522は、検出直交信号DET_Qと検出同相信号DET_Iを測定プロセッサ520に対して提供する。測定プロセッサ520からの出力信号は、マイクロプロセッサ516に対して提供される。
【0047】
ユーザインターフェース202を介してユーザが信号選択モードを選択すると、マイクロプロセッサ516は信号生成モジュール502内のDDS504に適正な周波数を生成させる。この信号の最初の位相は基準値にセットされる。
【0048】
DDS506とDDS508は同時に、
図5において「SIG_I」「SIG_Q」とマークした適切な直交信号を生成するようにセットされる。信号生成モジュール502のDDS504が生成した信号選択は、出力ステージ526に対して印加され、さらに出力ステージ526から導体106などの負荷に対して印加される。負荷リアクタンスに基づき、電圧と生成された電流との間の位相オフセットが生じる。測定回路518は、負荷内の電流をサンプリングし、これを直交検出器522へ印加する。上述の「SIG_I」「SIG_」も投入されている。直交検出器522の出力における「DET_I」「DET_Q」信号は、測定プロセッサ520に対して印加される。測定プロセッサ520は、サンプリングした信号の振幅と位相を計算する。これらの結果はマイクロプロセッサ516に送信され、マイクロプロセッサ516はこれらに基づき、信号選択原理の要求にしたがって、出力信号レベルを制御し、DDS504の位相を調整する。
【0049】
このとき、信号選択出力信号はFSK波形タイプであるため、信号生成モジュール502のDDS508が生成した信号「SIG_I」は、FSK信号の2つの成分F1とF2のスイッチングをトリガするために用いられる。この制御信号はマイクロプロセッサ516によって生成され、「FSK制御」信号として信号生成モジュール502に対して印加される。
【0050】
高パフォーマンス信号選択機能に特有の位相精度測定を向上させるため、上述のようにマイクロプロセッサ516が専用ソフトウェアアルゴリズムを実行することができる。位相訂正アルゴリズムが実行されると、ユニットは動作可能状態になる。実施形態において、信号生成モジュール502は
図5に示す3つのDDS回路の組み合わせを用いて実装されているが、周波数制御および位相制御ができるその他回路を同様に用いることもできる。
【0051】
電流波形が2つの周波数成分間で変化するとき、電流波形のゼロクロスを制御できることが望ましい。送信器102が複素インピーダンス(通常はインダクタンスとキャパシタンスを有する)とカップリングされたとき、変調機能は復調デバイス(この場合は受信器104)に誘起された位相オフセットを利用して、真の元位相を判定する。
【0052】
上述の2つの周波数成分は、送信器102の出力にカップリングされた任意のリアクタンスによってシフトする。重要なのは、2つの周波数成分は搬送周波数f0に対してそれぞれ異なる量シフトすることである。遷移点において、位相変調は不連続となり、これは
図4に示す補償分散オフセットによって訂正することができる。本発明の実施形態は、位相分散関数(∂φ/∂f)の勾配測定の原理を用いて、補償分散オフセットに適応的に提供することができる。したがって送信器102は、はじめに周波数「f0−Δ/2」、その後に「f0+Δ/2」で位相変調Φを測定する。周波数間隔Δは、位相コントラストの関数として高測定精度が得られるレベルにセットされる。Δの一般的な値は例えば30Hzであるが、その他の値も用いることができる。位相分散関数勾配(∂φ/∂f)が既知になると、この値は下記式にしたがって位相変調機能へ追加される:
【数1】
【数2】
Φ’は補償分散オフセットであり、αは位相分散勾配の「ランタイム」補間を表すパラメータである。実施形態において、パラメータαは25Hzにすることができる。
【0053】
受信器104は、複数の重要機能を実施する。特に受信器104は、送信器102について上述した信号選択システムに関するいくつかの機能を実施する。その機能の1つとして、受信器104はフェライトアンテナなどのアンテナセットから到着する信号を処理し、正確な信号振幅を計算する。信号強度を判定する際に、狭帯域フィルタ(例えば約7Hz)を用いることができる。アンテナが検出する到着信号は、位相同期しているが受信器102に位相固定されていない。信号振幅は、本発明の実施形態に基づき信号選択信号を規定する分岐周波数によって影響を受けるべきではない。受信器104は、信号選択波形を復調し、真の送信器位相のための基準位相を確定する。真の送信器位相とは、配線リアクタンスが位相シフトを生じさせる前の位相である。さらに受信器104は、基準位相と測定位相との間の差異を評価し、これにより「信号歪」を測定することができる。
【0054】
図6は、受信器104の所与のアンテナチャネルに関する受信器信号経路600の基本要素を示す。実施形態において、受信器104は複数アンテナを有し、したがって複数の受信器信号経路600を有する。
図6に示すように、信号経路600は電磁信号を受信するアンテナ602を備える。電磁信号は、CODEC(coder−decoder)608によって処理される前に、フィルタ604によってフィルタリングされ、増幅器606によって増幅される。CODEC608は例えばDelta−Sigmaデバイスであり、これは固有のアンチエイリアスフィルタを含む。
図6に示す例において、CODEC608は例えば24ビットデータを約48kHzでサンプリングすることができる。したがって信号選択信号は、CODEC608のベースバンド内で完全に処理できる。CODEC608からの出力信号は、デジタル信号プロセッサ(DSP)610に対して入力される。
【0055】
図7は、DSP610の例を示す。DSP610は、狭帯域信号処理を採用することができる。これは帯域幅をCODECデータレート(48kHz)からDSP610の出力における例えば94Hzへ圧縮する。これに応じて、信号帯域幅は24kHz(CODEC608からの出力)からDSP610の出力における例えば7Hzへ圧縮される。この帯域幅圧縮により、ダイナミックレンジを拡張し、良好な受信器が24ビットCODEC608から138dBrms/√Hzを実現することが期待できる(CODEC608はSINAD(信号対ノイズプラス歪)比>96dBを有することを想定している)。
【0056】
図7に示すように、DSP610はCODEC608からの信号を受け取って2つの信号処理経路で処理する。この処理経路は、同相成分と直交成分を処理する。受信器104は送信器102の位相にロックする必要はないからである。この信号選択に対して適用される2重処理は、従来の信号選択の実装とは異なる。従来の実装は位相ロックループを用いて全情報を単一位相キャリアへ向けるからである。
【0057】
図7に示すように、同相経路においてCODEC608からの信号は乗算器702に対して入力され、乗算器702は出力信号を数値合成器710からの出力信号と混合する。乗算器702からの出力信号は、シンクロナイザ704に対して入力される。この信号はコンバータ706においてダウンサンプリングされ、フィルタ708によってフィルタリングされる。コンバータ706は、
図7に示すように例えば係数512でダウンサンプリングすることができる。フィルタ708は、例えば低域通過フィルタである。同様に直交経路において、CODEC608からの出力信号は、乗算器712において数値合成器710からのもう1つの出力信号と混合される。乗算器702からの出力信号は、シンクロナイザ714において同期化され、コンバータ716においてダウンサンプリングされ、フィルタ718においてフィルタリングされる。フィルタ718は例えば低域通過フィルタである。同相経路と直交経路は同一の構成要素を備えることができる。2つの経路の違いは、CODEC608からの出力信号が混合される数値合成器710からの信号である。
【0058】
数値合成器710は、例えばThomas等の米国特許第4285044号(満了済)に記載されているものと同様のものである。数値合成器710は、搬送周波数f0において正弦出力と余弦出力を提供し、信号選択波形をDC信号に近づけるようにシフトさせる。正確なプログラミング搬送周波数は、FIRフィルタ708と718において積分される「平均」周波数のため、以下のようにオフセットすることができる:
【数3】
γはパラメータであり、例えば50である。
【0059】
図7に示すように、フィルタ708と718からの出力信号は、連結器720において連結される。計算器722は2つの出力724と726を提供する。出力724からの棒グラフ信号は、信号振幅を表し、下記式により与えられる:
【数4】
Iは同相信号振幅であり、Qは直交信号振幅である。同様に位相は下記式により与えられる:
【数5】
【0060】
この位相は、搬送周波数f0の基準位相としての役割を有する。位相復調プロセスは同様のアルゴリズムにしたがう。この場合、同相Iの情報と直交位相Qの情報の一部が抽出される。これは例えば1/8であり、CODEC608の帯域幅である(
図7に示すように、512と比較した等化ダウンサンプリング係数8)。変調情報は、
図8に示すようなデジタルFM復調器を用いて抽出される。
【0061】
意図しない干渉がない理想的な状況において、復調器からの出力信号(
図7における結合器720に対する入力信号)は、16Hz方形波である(実際には、若干非対称な方形波であり、低周波数において8サイクルを有し、高周波数において8サイクルを有する)。したがって連結器720は、真の送信器位相(周波数シフトキーFSK)を復元できる。
【0062】
次の処理は、真の送信器位相(周波数シフトキーFSK)を復元することである。
図8に示すように、入力802と804はそれぞれフィルタ708と712から出力信号を受け取る。これらは信号IとQに対応する。
図8に示すように、入力802からの入力信号Iは、デジタルフィルタ810と遅延器808に対して提供され、また乗算器806に提供されてI
2を計算する。同様に入力804からの入力信号Qは、デジタルフィルタ812と遅延器814に対して提供され、また乗算器816に提供されてQ
2を計算する。乗算器816と806からの出力信号は加算器818において加算され、I
2+Q
2が得られる。これは遅延器820へ提供される。遅延器808からの出力信号Iは、乗算器822において、デジタルフィルタ812が信号QをフィルタリングしたQ’と混合される。遅延器814からの出力信号Qは、乗算器824において、デジタルフィルタ810が信号IをフィルタリングしたI’と混合される。乗算器822と824からの出力信号は、加算器826に対して入力され、I’Q−Q’Iが計算される。遅延器820と加算器826からの出力信号は、除算器828に対して入力され、出力値(I’Q−Q’I)/(I
2+Q
2)が得られる。これはエラー指標を提供する。遅延器810、814、820は、信号をフィルタ810および812からの出力信号と時間的に揃える。
【0063】
上記のように、
図8は周波数復調器を示している。
図8は、例えばCODEC帯域幅/10などのような圧縮された帯域幅から信号を取得し、例えばf0/16で発振する方形波などのような変調機能にしたがう出力を提供する。
【0064】
図9は、さらなる処理900を示す。
図9に示すように、入力902における入力信号は、入力908からの位相増分とともに入力904の入力において16で除算され、これらはThomas発振器910に対して入力される。Thomas発振器910は、正弦波関数と余弦波関数を提供する。FM復調器からの出力信号、フィルタ708と718からの信号は、Thomas発振器910からの正弦出力および余弦出力と乗算される。Thomas発振器910はf0/16にプログラムされている。
図9に示すように、発振器910からの出力信号は、
図8によって生成された周波数復調信号と混合される。これは出力830からの出力信号であり、入力912において受信される。
図9に示すように、入力912における信号入力は、乗算器914と916においてフィルタ708および718からの信号と混合される。その結果は結合器920により結合される。各信号は、シンクロナイザ920、ダウンサンプラ922、デジタルフィルタ924によって処理され、増幅器928がゲインを調整し、加算器932が加算する。計算ブロック930は、信号の振幅と位相を提供する。出力934は、位相信号を提供する。これは基準位相として用いることができる。
【0065】
図9に示すように、ダウンサンプリングレートは64であり、これによりダウンサンプリング全体として狭帯域信号処理アルゴリズムに等化となる。したがってこの例において:512(狭帯域信号アルゴリズム)=8(FM復調器前のダウンサンプリング)×64である。
【0066】
最終処理ステージは、信号位相、すなわち出力726からの出力信号と、復調基準位相、すなわち出力830からの出力信号との比較である。またさまざまな数値エラーが除去される。これらエラーはThomas発振器のプログラミングにおける数値切り捨てによって生じる。これらが処理されないままだと、基準位相における遅ドリフトを生じさせ、信号選択が有用でなくなってしまう。位相データは整数値(16ビット)にキャストされる。これは2πラジアンをラッピングするので自然対数関数を記述するのに便利なメカニズムである:
【数6】
【数7】
上記式において、Φ
NB Phaseは
図7に示す位相出力信号726に対応し、信号選択信号の2周波数成分の平均位相を表す。パラメータΦ
Demod Phaseは、
図9の出力934における出力信号に対応する。
【0067】
訂正係数Φ
Oscillator Correctionは微訂正であり、これが存在するのは、32ビット計算を用いる数値切り捨てにより、f0およびf0/16で動作する数値Thomas発振器が時間経過にともなって固定位相関係を維持しないことになるからである。このドリフトは小さいが、わずかな時間(例えば1〜2分)後であっても信号選択信号が有用でなくなる程度の大きさはある。この位相ドリフトは受信器104によって即座に測定され、その結果が用いられる。よって上記差異は、数値合成器710(周波数f0の信号を生成する)の周波数出力の位相と、発振器910(周波数f0/16の信号を生成する)の位相との差分である。
【0068】
出力はΦ
Signal Selectであり、これは信号選択処理において利用される。信号位相は導体106に沿って変化するので、この関数は基準成分Φ
Demod Phaseに対する位相変化をトラッキングする。信号選択の通常の用途は、信号歪のリアルタイム測定を提供することである。
【0069】
その他のタスクは位相トラッキングタスクである。送信器と受信器は、完全に分離されたシステムとして動作し、共通基準位相またはシステムクロックを共有していない。この課題を解決するた・BR>゜、受信器104は送信器出力信号を自動的にトラッキングする。これは本発明の実施形態における繊細な機能である。受信器104は全くの仮想周波数をトラッキングする必要があるからである。換言すると、信号選択は(f0×50/51)と(f0×50/49)の8サイクルで規定され、したがってトラッキングは平均周波数f0を発見することになり、これは実際には生じないということである。これが繊細であるのは、トラッキングしないとしても、f0は受信器104と送信器102との間の自然周波数エラーを含んでおり(通常は水晶発振器によるクロックエラーであり、30ppmオーダである)、訂正しなければこのエラーは上記数式の成分の精度を大きく損ねてしまうからである。
【0070】
位相トラッキングは、
図7に示す狭帯域信号処理アルゴリズムによって実装される。位相出力は微分され、その結果信号は積分される。この値は負フィードバック周波数エラーとしての役割を有し、Thomas発振器における周波数積算器を調整するために用いられる(
図7において数値合成器として示した)。
【0071】
上述の説明において、添付する図面を参照して様々な実施形態を説明した。ただし、特許請求範囲が規定する本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正や変更をなし、別実施形態を実装し得ることは明らかである。したがって本明細書および図面は、説明のためのものであると解釈すべきであり、限定的に解釈すべきではない。