特許第6373300号(P6373300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6373300-ベンダムスチンの経口投与形 図000120
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373300
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】ベンダムスチンの経口投与形
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4184 20060101AFI20180806BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20180806BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20180806BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20180806BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180806BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20180806BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20180806BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20180806BHJP
   A61K 31/475 20060101ALI20180806BHJP
   A61K 33/24 20060101ALI20180806BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20180806BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   A61K31/4184
   A61K47/34
   A61K47/04
   A61K9/48
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61K39/395 E
   A61K39/395 T
   A61K31/704
   A61K31/475
   A61K33/24
   A61K31/282
   A61K31/573
【請求項の数】13
【全頁数】131
(21)【出願番号】特願2016-112195(P2016-112195)
(22)【出願日】2016年6月3日
(62)【分割の表示】特願2013-512795(P2013-512795)の分割
【原出願日】2011年6月1日
(65)【公開番号】特開2016-153438(P2016-153438A)
(43)【公開日】2016年8月25日
【審査請求日】2016年6月3日
(31)【優先権主張番号】11075047.8
(32)【優先日】2011年3月14日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】10075231.0
(32)【優先日】2010年6月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511134609
【氏名又は名称】アステラス ドイチュランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】カレッジ ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】オルトフ マルガレータ
【審査官】 原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−519047(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/147212(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/124617(WO,A1)
【文献】 特表2012−525387(JP,A)
【文献】 特表2012−510483(JP,A)
【文献】 特開2015−061864(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第00159289(DE,A1)
【文献】 Pharmazie, 1985, Vol.40(11), p.782-784
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/4184
A61K 9/48
A61K 31/282
A61K 31/475
A61K 31/573
A61K 31/704
A61K 33/24
A61K 39/395
A61K 47/04
A61K 47/34
A61P 35/00
A61P 35/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経口投与用医薬組成物であって、有効成分としてのベンダムスチン又はその薬学上許容される塩と、薬学上許容される賦形剤とを含み、前記薬学上許容される賦形剤が、薬学上許容される非イオン性親水性界面活性剤であり、該非イオン性親水性界面活性剤が、プロピレングリコールジカプリロカプレート(ラブラファック(登録商標)PG)、プロピレングリコールモノラウレート(ラウログリコール(登録商標)90)、リノレオイルマクロゴールグリセリド(ラブラフィル(登録商標)M2125)、オレオイルマクロゴールグリセリド(ラブラフィル(登録商標)M1944CS)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(トランスクトール(登録商標))、プロピレングリコールカプリレート(Capryol(登録商標)PGMC)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリソルベート20(Tween(登録商標)20)、マクロゴールグリセリルココエート(cocoate)(Glycerox(登録商標)HE)、ポロキサマー105(プルロニック(登録商標)L35)、ポロキサマー184(プルロニック(登録商標)L64)、ポリソルベート40(Tween(登録商標)40)、マクロゴール15ヒドロキシステアレート(ソルトール(登録商標)HS)、及びマクロゴール23ラウリルエーテル(Brij(登録商標)L23)からなる群から選択され、
500mlの溶解媒体中、pH1.5で、欧州薬局方に準拠してパドル装置を用いて50rpmで30分間、その後200rpmで更に30分間測定した場合に、60分後に少なくとも80%のベンダムスチンの溶解を示すことを特徴とする、経口投与用医薬組成物。
【請求項2】
前記有効成分が、ベンダムスチン塩酸塩である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
10〜1000mgの前記有効成分を含む、請求項1又は請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
コロイド状二酸化ケイ素を更に含む、請求項1、2又は3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
ラウロイルマクロゴールグリセリド(ゲルシル(登録商標)44/14)を更に含む、請求項1、2又は3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
硬ゼラチンカプセル剤である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
500mlの溶解媒体中、pH1.5で、欧州薬局方に準拠してパドル装置を50rpmで用いて測定した場合に、20分後に少なくとも60%、40分後に70%及び60分後に80%のベンダムスチンが溶解特性を示す、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記ベンダムスチンの溶解が、30分後に少なくとも80%である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄球性白血病、急性骨髄球性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、乳癌、卵巣癌、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌から選択される医学的状態の治療のために使用される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
少なくとも1種類のさらなる有効薬剤と併用投与され、前記さらなる有効薬剤が前記医薬組成物の投与前、投与と同時又は投与後に与えられ、かつ、CD20に特異的な抗体、アントラサイクリン誘導体、ビンカアルカロイド又はプラチン誘導体からなる群から選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記CD20に特異的な抗体が、リツキシマブであり、前記アントラサイクリン誘導体が、ドキソルビシン又はダウノルビシンであり、前記ビンカアルカロイドが、ビンクリスチンであり、かつ前記プラチン誘導体が、シスプラチン又はカルボプラチンである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
少なくとも1種類のコルチコステロイドと併用投与され、前記コルチコステロイドが、前記医薬組成物の投与前、投与と同時又は投与後に与えられる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記コルチコステロイドが、プレドニゾン又はプレドニゾロンである、請求項12に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンダムスチン又はその薬学上許容されるエステル、塩若しくは溶媒和物を含む経口投与形に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンダムスチン(4−[5−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−1−メチルベンズイミダゾ−2−イル]ブタン酸、ナイトロジェンマスタード)は、二官能性アルキル化活性を有するアルキル化薬である。それは下式(I)に相当する。
【化1】

ベンダムスチンは、他のアルキル化薬と如何なる交差耐性もないようであり、このことはアルキル化薬による治療を既に受けたことのある患者の化学療法の観点から利点を提供する。
【0003】
ベンダムスチンは最初にドイツ民主共和国(GDR)で合成された。ベンダムスチンの塩酸は、1971〜1992年に商標名シトスタサン(Cytostasan)(登録商標)として入手可能な市販製品の有効成分であった。それ以来、それは独国で商標リボムスチン(Ribomustin)(登録商標)として市販され、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫及び多発性骨髄腫を治療するために広く使用されてきた。
【0004】
市販製品は、ベンダムスチン塩酸塩の凍結乾燥粉末を含み、これを注射用水で再構成して濃縮液とする。その後、これを0.9%塩化ナトリウム水溶液で希釈すると、注入用の最終溶液となる。この最終溶液を約30〜60分かけて静注により患者に投与する。
【0005】
水中におけるベンダムスチンのビス−2−クロロエチルアミノ基の加水分解が効力の低下及び不純物形成をもたらす(B. Maas et al. (1994), Pharmazie 49: 775-777)。従って、投与は、通常は病院内又は少なくとも医学的管理下で、凍結乾燥粉末の再構成後即座に行わなければならない。更に、再構成は難しいと報告されている。再構成は30分より長い時間を要することがある。更に、2工程法で製品の再構成を担当する医療専門家にとってこの再構成は厄介であり、時間がかかる。
【0006】
Preissら(1985)はPharmazie 40:782-784で、それぞれ4.2〜5.5mg/kgの範囲の用量で静脈投与及び経口投与した後の7名の患者の血漿中のベンダムスチン塩酸塩の薬物動態を比較した。市販のシトスタサン(登録商標)製品から調製した静注液を3分かけて投与し、一方で等価用量の経口薬は、25mgのベンダムスチン塩酸塩を含有するカプセル剤の形態を採った。患者が摂取すべきカプセル剤の数は10〜14個で変動し、250〜350mgの絶対経口用量を表す。経口投与後1時間以内で最大血漿レベルが検出できた。平均経口バイオアベイラビリティーを計算すると57%であったが、25%〜94%の範囲にわたり、大きな個体間変動を示した(%CV=44%)。
【0007】
Weber(1991)(Pharmazie 46(8): 589-591)は、B6D2F1マウスにおけるベンダムスチン塩酸塩のバイオアベイラビリティーを調査し、胃腸管からの該薬物の吸収が不完全であり、わずか約40%のバイオアベイラビリティーをもたらすに過ぎないことを見出した。
【0008】
米国特許第2006/0128777A1号明細書は、一般に、細胞死耐性細胞及びベンダムスチン含有組成物を特徴とする癌の治療方法を記載している。これらの中で組成物は、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤又は顆粒剤である経口投与形であり、有効化合物が少なくとも1種類の不活性賦形剤、例えばスクロース、ラクトース又はデンプンと混合され得る。しかしながら、具体的な組成物は例示されなかった。
【0009】
ベンダムスチン塩酸塩はpH2.0で水にわずかしか溶けず、多様な有機溶媒にわずか又は極めてわずかしか溶けない。しかし、エタノール及びメタノールでは良好な溶解度が見られた。従って、Preissら及びWeberが調査したように、経口ベンダムスチン組成物が相対的に低いバイオアベイラビリティー結果と大きな個体間変動を示したのは驚くことではない。
【0010】
一度水で再構成した市販の静脈製剤に伴う安定性の問題を考慮して、また、患者のコンプライアンスを改善するために、患者に投与しやすく、かつ大きな個体間及び個体内変動のない良好なバイオアベイラビリティーをもたらす、ベンダムスチンを含む安定な投与形が長年にわたって要望されている。
【発明の概要】
【0011】
上記の問題を解決するため、本発明者らは詳細な検討を行った。本発明者らは、最終的に本発明の安定医薬組成物を得ることに成功した。これらの組成物は、経口投与に適しており、かつ有効成分としてのベンダムスチン又はその薬学上許容されるエステル、塩若しくは溶媒和物と、少なくとも1種類の薬学上許容される賦形剤とを含み、本組成物は、良好な安定性を有する他、適当な溶解特性も有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】従来技術のカプセル剤(参考例1)及び実施例2の液体充填硬カプセル製剤の形態でベンダムスチン塩酸塩をイヌに投与した後に得られた時間に対する平均血漿濃度曲線を示す。図1から、該液体充填硬カプセル剤製剤は従来技術の参考カプセル製剤に比べて高い最大濃度のベンダムスチンをもたらすことが明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、有効成分としてのベンダムスチン又はその薬学上許容されるエステル、塩若しくは溶媒和物と、非イオン性親水性界面活性剤である薬学上許容される賦形剤とを含む、経口投与用医薬組成物に関する。
【0014】
一実施形態は、ベンダムスチン又はその薬学上許容されるエステル、塩若しくは溶媒和物と、非イオン性親水性界面活性剤である薬学上許容される賦形剤とを含む医薬組成物であり、該組成物は硬ゼラチンカプセル剤に含ませることにより経口投与に好適となる。
【0015】
さらなる実施形態は、硬ゼラチンカプセル剤である固体投与形の経口投与用医薬組成物であり、該組成物は、ベンダムスチン又はその薬学上許容されるエステル、塩若しくは溶媒和物と、非イオン性親水性界面活性剤である薬学上許容される賦形剤とを含み、特定の非イオン性親水性界面活性剤の使用は、500mlの溶解媒体中、pH1.5で、欧州薬局方に準拠してパドル装置を用いて50rpmで30分間、及び200rpmで更に30分間測定した場合に、該組成物から60分後に少なくとも80%のベンダムスチンの溶解をもたらす。好ましくは特定の非イオン性界面活性剤の使用は、500mlの溶解媒体中、pH1.5で、欧州薬局方に準拠してパドル装置を50rpmで用いて測定した場合に、20分後に少なくとも60%、40分後に70%及び60分後に80%ベンダムスチンが溶解する溶解特性をもたらす。より好ましくは、特定の非イオン性親水性界面活性剤の使用は、500mlの溶解媒体中、pH1.5で、欧州薬局方に準拠してパドル装置を50rpmで用いて測定した場合に、該組成物から30分後に少なくとも80%のベンダムスチンの溶解をもたらし、最も好ましくは、10分後に少なくとも60%、20分後に70%及び30分後に80%のベンダムスチンが溶解する溶解特性をもたらす。
【0016】
好ましい実施形態は、硬ゼラチンカプセル剤である固体投与形の経口投与用医薬組成物であり、該組成物は、ベンダムスチン塩酸塩と、非イオン性親水性界面活性剤である薬学上許容される賦形剤とを含み、特定の非イオン性界面活性剤の使用は、500mlの溶解媒体中、pH1.5で、欧州薬局方に準拠してパドル装置を50rpmで用いて測定した場合に、10分後に少なくとも60%、20分後に70%及び30分後に80%のベンダムスチンの溶解をもたらす。
【0017】
本発明は、医薬組成物にある種の非イオン性界面活性剤を配合することによって、特定の望ましい溶解特性を有するベンダムスチンの安定組成物が得られるという驚くべき知見に基づいている。薬学上許容される非イオン性親水性界面活性剤を、有効成分としてのベンダムスチン又は薬学上許容されるエステル、塩若しくは溶媒和物を含む医薬組成物中で賦形剤として使用すれば、安定性及び分解生成物、溶解、バイオアベイラビリティー並びにバイオアベイラビリティーの変動性の低減に関して該組成物の特に好ましい特性が達成されることが見出された。限定されるものではないが、ポリエトキシル化ヒマシ油又はその誘導体(特に、マクロゴールグリセロールヒドロキシステアレート又はポリオキシル−35−ヒマシ油)、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマー(特に、プルロニック(Pluronic)(登録商標)L44 NF又はポロキサマー(Poloxamer)(登録商標)124;プルロニック(登録商標)L35又はポロキサマー(登録商標)105;プルロニック(登録商標)L64又はポロキサマー184)、マクロゴールグリセロールココエート(グリセロックス(Glycerox)(登録商標)HE)、マクロゴール15ヒドロキシステアレート(ソルトール(Solutol)(登録商標)HS15)、ポリソルベート20及び40である非イオン性親水性界面活性剤をベンダムスチン含有組成物に配合すると、500mlの溶解媒体中、pH1.5で、欧州薬局方に準拠してパドル装置を50rpmで用いて測定した場合に、20分後に少なくとも60%、40分後に70%及び60分後に80%のベンダムスチンが溶解する溶解特性が得られ、好ましくは、10分後に少なくとも60%、20分後に70%及び30分後に80%のベンダムスチンの溶解が得られる。
【0018】
以下に本発明のさらなる詳細を示す。
【0019】
「その薬学上許容されるエステル」という表現は、ベンダムスチンの任意の薬学上許容されるエステル、例えば、アルキルアルコール及び糖アルコールとのエステルを表す。アルキルアルコールの例は、C1-6−アルキルアルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール及びtert−ブタノールである。糖アルコールの例は、マンニトール、マルチトール、ソルビトール、エリスリトール、グリコール、グリセロール、アラビトール、キシリトール及びラクチトールである。ベンダムスチンエステルの好ましい例は、エチルエステル、イソプロピルエステル、マンニトールエステル及びソルビトールエステルであり、そのエチルエステルが最も好ましい。
【0020】
「その薬学上許容される塩」という表現は、患者に投与されると(直接又は間接的に)ベンダムスチンを与える、ベンダムスチンの任意の薬学上許容される塩を表す。この用語は、ベンダムスチンエステルの薬学上許容される塩を更に含む。しかしながら、薬学上許容されない塩も、これらの化合物が薬学上許容される塩の調製に有用であり得るので、本発明の範囲内に含まれると見なされる。例えば、ベンダムスチンの薬学上許容される塩は、従来の化学的方法によって、酸性又は塩基性基を含む対応する化合物から合成される。一般に、これらの塩は、例えば、水若しくは有機溶媒又は両者の混合物中で化学量論のこれらの化合物の遊離酸性形又は塩基性形と対応する塩基又は酸とを反応させることにより調製される。一般にエーテル、酢酸エチル、イソプロパノール又はアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。ベンダムスチンの薬学上許容される塩の塩形成に使用可能な酸の例としては、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸及びリン酸、並びに有機酸、例えば、酢酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、メチルスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸が挙げられる。ベンダムスチンの薬学上許容される塩を無機又は有機塩基から誘導してアンモニウム塩;アルカリ金属塩(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類塩(カルシウム若しくはマグネシウムなど)、アルミニウム塩、低級アルキルアミン塩(メチルアミン若しくはエチルアミン塩など)、低級アルキルジアミン塩(エチレンジアミン塩など)、エタノールアミン、N,N−ジアルキレンエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びグルカミン塩、並びにアミノ酸の塩基性塩を得ることができる。塩酸、臭化水素酸及びヨウ化水素酸から調製された酸性塩が特に好ましいが、塩酸塩がベンダムスチンの最も好ましい薬学上許容される塩である。薬学上許容される塩は、当技術分野で周知の従来法によって調製される。
【0021】
「その薬学上許容される溶媒和物」という表現は、患者に投与されると(直接又は間接的に)ベンダムスチンを与える、薬学上許容される任意の溶媒和物を表す。この用語は、ベンダムスチンエステルの薬学上許容される溶媒和物を更に含む。好ましくは、溶媒和物は水和物、メタノール、エタノール、プロパノール若しくはイソプロパノールなどのアルコールとの溶媒和物、酢酸エチルなどのエステルとの溶媒和物、メチルエーテル、エチルエーテル若しくはTHF(テトラヒドロフラン)などのエーテルとの溶媒和物、又はDMF(ジメチルホルムアミド)との溶媒和物であり、水和物、又はエタノールなどのアルコールとの溶媒和物がより好ましい。溶媒和物を構成するための溶媒は、好ましくは薬学上許容される溶媒である。
【0022】
本発明の組成物中の有効成分がベンダムスチン又はその薬学上許容される塩であることが特に好ましい。有効成分がベンダムスチン塩酸塩であることが最も好ましい。
【0023】
医薬組成物中の有効成分の用量は、患者の状態、性別、体重、体表面積又は年齢に応じて、特に患者の体重及び体表面積に応じて、当業者によって容易に決定され得る。一日用量は約50〜約1000mg、好ましくは約100〜約500mgの有効成分の範囲であることが好ましい。一日用量は単回用量、又は1日に2回若しくは3回などの多回用量として摂取してもよく、最も好ましくは単回一日用量として摂取する。一日用量を1週間に1回又は1週間に数回摂取してよい。投与形は、単回一日用量又はその一部の量を含有し得る。本発明の投与形が約10〜約1000mg、好ましくは約25〜約600mg、より好ましくは約50〜約200mg、最も好ましくは約100mgの有効成分を含むことが好ましい。
【0024】
本明細書で使用する場合、用語「非イオン性親水性界面活性剤」は、極性の親水性基と非極性の親油性基若しくは鎖とを有する両親媒性化合物を表し、ここで、該化合物の親水性及び親油性特性はいわゆる親水性親油性バランス(Hydrophilic-Lipophilic Balance)(HLB)値によって特徴付けられる。本発明の組成物を調製するために用いられる非イオン性界面活性剤は10〜20の間のHLB値を有する。非イオン性界面活性剤は更に5℃〜体温(37℃)の間の融点、流動点又は融解範囲を有する。該非イオン性界面活性剤は室温で液体又は半固体状であり得る。該非イオン性親水性界面活性剤はベンダムスチン有効成分の担体であり、溶解形態、懸濁形態又は部分的溶解形態及び部分的懸濁形態で存在し得る。
【0025】
本発明の組成物の調製に有利に用いられる非イオン性親水性界面活性剤は好ましくは10〜19の間、より好ましくは12〜18の間のHLB値を有し、室温で液体であるか、又は室温(20℃)のやや下〜体温の間、好ましくはおよそ30℃の融点、流動点又は融解範囲を有する。その例はポリエトキシル化ヒマシ油又はその誘導体の群、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマー群及びポリソルベート群に見出すことができる。
【0026】
一実施形態では、非イオン性界面活性剤はポリエトキシル化ヒマシ油である。ポリエトキシル化ヒマシ油の一例は、商標クレモフォール(Cremophor)(登録商標)として販売されている。様々な純度及び粘度のクレモフォール(登録商標)製品が製造されており、本発明で使用可能である。特にマクロゴールグリセロールヒドロキシステアレート(クレモフォール(登録商標)RH 40)及びポリオキシル−35−ヒマシ油(クレモフォール(登録商標)EL又はクレモフォール(登録商標)ELP)を使用できる。クレモフォール(登録商標)ELP及びクレモフォール(登録商標)ELは、ヒマシ油をエチレンオキシドと1対35のモル比で反応させることによって製造される非イオン性可溶化剤及び乳化剤として知られる。それらはHLB値12〜14及び融点26℃を有する。周囲温度に応じて、これらの製品は半固体又は中程度の粘度の液体として特徴付けることができる。マクロゴールグリセロールヒドロキシステアレート(クレモフォール(登録商標)RH 40として市販)は25℃で半固体物質であり、同温度で20〜40cpsの粘度範囲を有する(30%水溶液として)。それは非イオン性可溶化剤及び乳化剤として知られる。それはヒマシ油をエチレンオキシドと1対45のモル比で反応させることによって製造される。そのHLB値は14〜16の範囲であり、融解範囲は20〜28℃である。実験では、マクロゴールグリセロールヒドロキシステアレートをそのまま有利に本発明の組成物の調製のために使用することができることが示された。
【0027】
示されているように、商標名クレモフォール(登録商標)A6及びクレモフォール(登録商標)A25として販売されている製品は、これらが10〜20の間のHLB値を有する非イオン性親水性界面活性剤であるということにもかかわらず、融点又は融点範囲が指定温度(=37℃)を越えるために、本発明に従う好適な担体ではない。
【0028】
プルロニック(登録商標)ブロックコポリマーはエチレンオキシドブロックとプロピレンオキシドブロックからなり、下式:HO(C2H4O)a(C3H6O)b(C2H4O)aHで特徴付けられる。エチレンオキシド単位が親水性を有し、プロピレンオキシド単位が親油性を有する。親水性エチレンオキシド単位と親油性プロピレンオキシド単位の数の変動が異なる分子量及び異なる親水性−親油性バランス(HLB)を有するコポリマーをもたらす。本発明の組成物を作製するためのHLB値と融点又は流動点又は融解範囲の要件を満たすプロピレンオキシド(「PEO」)−ポリプロピレンオキシド(「PPO」)のブロックコポリマーの一例はプルロニック(登録商標)L44であり、こここで、aブロック及びbブロックは、プルロニックL44NF/ポロキサマー124の場合には下記の値を有する:a=12及びb=20。他の好適なエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーは、プルロニック(登録商標)L35、プルロニックL64及びプルロニック(登録商標)L43である。全て室温で液体である。
【0029】
示されているように、商標名プルロニック(登録商標)68又はポロキサマー(登録商標)F188及びプルロニック(登録商標)127又はポロキサマー(登録商標)F407として販売されている製品は、これらが10〜20の範囲外のHLB値と指定温度(=37℃)を越える融点又は融点範囲を有することから、本発明に従う好適な担体ではない。
【0030】
乳化剤の一種であるポリソルベートはPEG化ソルビタン(ソルビトールの誘導体)から誘導された油性の液体を脂肪酸でエステル化したものである。例としては、下記がある。
・ポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)
・ポリソルベート40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)
・ポリソルベート60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)
・ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)
ポリオキシエチレン部分の後の数字は、その分子中に見られるオキシエチレン−(CH2CH2O)−基の総数を表す。ポリソルベート部分の後の数字はその分子のポリオキシエチレンソルビタン部分と会合している脂肪酸の種類に関連している。モノラウレートは20で示され、モノパルミテートは40で示され、モノステアレートは60で示され、モノオレエートは80で示される。ポリソルベート20及びポリソルベート40はベンダムスチン塩酸塩の担体として好適であるが、ポリソルベート81、65及び61はそうではないことに留意されたい。
【0031】
ベンダムスチン又はその薬学上許容されるエステル、塩若しくは溶媒和物の担体として使用可能なさらなる非イオン性親水性界面活性剤は実施例に見出すことができる。
【0032】
マクロゴールグリセロールヒドロキシステアレートを除けば、上記非イオン性界面活性剤は全て、ベンダムスチン塩酸塩の沈降を回避するには低すぎるかもしれない粘度値を有する液体である。解決すべきさらなる課題は、混合物の粘度の総合値を、その混合物に添加した際にベンダムスチン塩酸塩の分離を回避するのに十分高いものとすることができる賦形剤又は賦形剤の組合せを見出すことであった。
【0033】
従って、液体非イオン性界面活性剤を含む本発明の組成物は、有利には、粘度改良剤を更に含む。好適な粘度改良剤としては、コロイド状二酸化ケイ素(商標エアロシル(Aerosil)(登録商標)として市販)などの散剤、又はラウロイルマクロゴールグリセリド(商標ゲルシル(Gelucire)(登録商標)44/14として市販)などの半固体蝋様物質が挙げられる。液体非イオン性界面活性剤に添加される散剤又は半固体物質の量は、液体非イオン性界面活性剤の粘度によって決まる。視覚的に有効成分の沈降を回避するために添加される粘度改良剤の好適な最少量を見出すために種々の濃度を試験した。添加されるコロイド状二酸化ケイ素の典型的な相対濃度は約1%〜約8%の範囲であるが、有効成分の溶解特性に悪影響を及ぼさないように、1.7%又は2.0%といった低いものが好ましい。ラウロイルマクロゴールグリセリドの典型的な相対濃度は、5〜50%、好ましくは約10%〜約45%の範囲である。
【0034】
本発明の好ましい組成物は実施例4に開示され、ベンダムスチン塩酸塩を下記と組み合わせて含む。
・マクロゴールグリセロールヒドロキシステアレート
・エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー(プルロニック(登録商標)L44 NF又はポロキサマー(登録商標)124;プルロニック(登録商標)L35又はポロキサマー105;プルロニック(登録商標)L64又はポロキサマー184;プルロニック(登録商標)L43又はポロキサマー123)(所望によりコロイド状二酸化ケイ素又はラウロイルマクロゴールグリセリド(ゲルシル(登録商標)44/14)と組み合わせる)
・ポリオキシル−35−ヒマシ油(所望によりラウロイルマクロゴールグリセリド(ゲルシル(登録商標)44/14と組み合わせる)
・ポリソルベート20及び40
・グリセロックス(登録商標)HE(マクロゴールグリセロールココエート)
・ソルトール(登録商標)HS15(マクロゴール15ヒドロキシステアレート)
【0035】
更に、本発明の組成物は、実施例1〜3に示されるように、付加的賦形剤、特に保護剤、例えば、抗酸化剤及び抗菌性保存剤、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン及びプロピルパラベンを含むことができる。抗酸化剤は、d−αトコフェロールアセテート、dl−αトコフェロール、アスコルビルパルミテート、ブチル化ヒドロキシアニドール(hydroxyanidole)、アスコルビン酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシキノン、ブチルヒドロキシアニソール、ヒドロキシクマリン、ブチル化ヒドロキシトルエン、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、没食子酸ラウリル、又はそれらの混合物であり得る。抗酸化剤は、好ましくはマクロゴールグリセロールヒドロキシステアレート又はポリオキシル−35−ヒマシ油を含有する組成物に添加される。
【0036】
本発明の医薬組成物は、実施例に記載されているように、有利にはカプセルに充填され、その後このカプセルは患者が容易に摂取することができる。
【0037】
2種類のカプセルが一般に使用され、カプセル剤皮の性質及び可撓性に従って軟カプセルと硬カプセルに分類される。軟カプセルは、液体充填物又は半固体充填物を含む単一の単位固体投与形である。それらは、ロータリーダイ工程を用いて一操作で形成、充填及び封止される。それらは、長年にわたって液体用の単位用量容器として使用され、一方で硬カプセルは粉末、顆粒及びペレットの形態の固体の送達用に慣用されている。硬カプセルはキャップとボディからなる単一の単位投与形であり、これらは別々に製造され、充填のために空の状態で供給される。
【0038】
軟カプセルは、最も一般的には、水の他に可塑剤、通常はグリセリン又はソルビトールが添加されたゼラチンから製造される。硬カプセルについても、最も一般的に用いられるポリマーはゼラチンである。付加的成分は、可塑剤として働く水である。しかしながら、この成分は、ベンダムスチン塩酸塩のような有効成分の分解に関与し得る。従って、代替として、ヒドロキシプロピルメチルセルロースから硬カプセルを製造することができる。軟カプセルも硬カプセルも更に着色剤及び乳白剤を含むことができる。
【0039】
本発明の組成物に好ましい種類のカプセルは硬カプセルであり、更に特に硬ゼラチンカプセルである。理想的には、カプセルに充填される物質は室温で流体であり、これにより充填操作中の加熱が避けられる。通常、加熱すると、有効成分が容易に分解してしまうおそれがある。
【0040】
原則として、硬カプセルに充填するために多くの賦形剤が利用可能であるが、生物医薬的考慮事項に加えて、最終投与形の化学的及び物理的安定性、並びに安全で効率的かつ安定な投与形をもたらすための溶解特性を考慮することも重要である。
【0041】
一般に、硬カプセル用の充填用製剤は、高温で充填され、かつ有効成分が中で微細な分散系として溶解又は懸濁されるニュートン液体、例えば、油、チキソトロピー若しくはずり減粘ゲル又は半固体マトリックス製品であり得る。充填物質の粘度が充填工程の要件を確定する限り、原則としていずれの賦形剤又は賦形剤混合物も使用可能である。カプセル充填重量の均一性が重要である。更に充填用製剤は、糸引き(stringing)を示すべきでなく、かつ投与ノズルからの良好な切れ(clean break)を可能とするべきである。
【0042】
驚くことに、本発明の組成物を硬ゼラチンカプセルで有利に投与できることが判明した。ポリエトキシル化ヒマシ油又はその誘導体及びエチレンオキシド/プロピレンオキシドのブロックコポリマーからなる群から選択され、特にマクロゴールグリセロールヒドロキシステアレート、ポリオキシル−35−ヒマシ油及びプルロニック(登録商標)L44又はポロキサマー(登録商標)124からなる群から選択される、特定の非イオン性親水性界面活性剤は、ベンダムスチン又はその薬学上許容されるエステル、塩、若しくは溶媒和物を配合し、かつ硬ゼラチンカプセルへ組み込んだ後に、良好な安定性、良好な溶解特性及び良好なバイオアベイラビリティーを達成する。
【0043】
対照的に、マクロゴールグリセロールヒドロキシステアレートを、ビス−ジグリセリルポリアシルアジペート−1(ソフチサン(Softisan)(登録商標)645として市販)及びエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー(プルロニック(登録商標)L44 NF又はポロキサマー124の名称で市販)などの液体物質と併用すると、マクロゴールグリセロールヒドロキシステアレートのみを含有する組成物に比べてベンダムスチンの溶解特性が低下する。更に、クレモフォール(登録商標)A25(セテアレス−25又はマクロゴール(25)セトステアリルエーテル)及びクレモフォール(登録商標)A6(セテアレス−6及びステアリルアルコール又はマクロゴール(6)セトステアリルエーテル)は非イオン性界面活性剤として使用できないことに留意されたい。また、液体充填カプセル製剤の調製のために一般的に用いられる他の賦形剤も満足のいく結果をもたらさないことが示されている。
【0044】
ベンダムスチンの水溶液の安定性は、pHによって強く影響を受ける。約5より高いpH値では、この化合物の著しい加水分解性の分解が見られる。pH>5では、分解が急速に進行し、このpH範囲では結果として生じる副生成物の含量が多い。主な加水分解生成物は、4−[5−[(2−クロロエチル)−(2−ヒドロキシ−エチル)アミノ]−1−メチル−ベンズイミダゾ−2−イル]−ブタン酸(HP1)、4−[5−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−1−メチル−ベンズイミダゾ−2−イル]−ブタン酸(HP2)及び4−(5−モルフォリノ−1−メチルベンズイミダゾール−2−イル)−ブタン酸(HP3)である。
【化2】
【0045】
経口投与された薬物の吸収は、通常、胃、小腸及び/又は大腸から起こる。胃内のpHは約1〜3.5であり、小腸内では約6.5〜7.6、大腸内では約7.5〜8.0である。従って、5より高いpHの水性環境内で分解しやすいベンダムスチンのような化合物では、分解を回避するために、それが胃内で吸収され、小腸又は更には大腸も通過しないことが極めて好ましい。従って、ベンダムスチンが胃内で完全に又は少なくとも高程度まで吸収され、それによって小腸又は大腸内でのベンダムスチンの分解を回避するか又は低減させる医薬組成物の必要がある。
【0046】
驚くことに、本発明の医薬組成物を用いてこの問題を解決できることが分かった。ポリエトキシル化ヒマシ油又はその誘導体及びエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーからなる群から選択される非イオン性親水性界面活性剤である薬学上許容される賦形剤中にベンダムスチン塩酸塩を含むこれらの組成物は、驚くことに、速い溶解、特に、人工胃液中、欧州薬局方に準拠してパドル装置を50rpmで用いて測定した場合に、20分で少なくとも60%、40分で70%及び60分で80%、好ましくは10分で少なくとも60%、20分で70%及び30分で80%のベンダムスチンの溶解を示す。本明細書で使用する場合、人工胃液は、1000mlの水に2gの塩化ナトリウムを溶解させた後に5N塩酸でpHを1.5±0.05に調整することによって調製された溶液を表す。
【0047】
更に、本組成物は、加速安定性試験下に置いた際に安定であることが示された。このことは、以下のことが示されていたことから驚くべきことである。
・硬ゼラチンカプセル中にベンダムスチン塩酸塩のみを含有する参照カプセル製剤(参考例1参照)では、40℃/75%RH(開けたガラスバイアル)及び50℃で貯蔵した場合、1カ月以内の貯蔵で分解生成物が形成された。40℃及び75%RH(相対湿度)での開けたバイアルの場合、加水分解生成物HP1の量は1カ月の貯蔵後に4倍に増加した。閉じたバイアルではHP1含量が更に高い。
・参考例2、3及び4のカプセル製剤では、40℃/75%RH(閉じたガラスバイアル)で貯蔵した場合、1カ月以内の貯蔵で分解生成物が形成され、更に貯蔵すると分解生成物が増加した。
【0048】
薬物が胃を通って小腸に至るまでの全時間は約20分〜5時間、通常は約30分〜3時間である。従って、本発明の医薬組成物は、胃内にある間にベンダムスチンが大部分の程度まで放出かつ溶解されるので、患者内でのベンダムスチンの分解を有利に低減させるはずである。従って、本発明のベンダムスチン含有組成物のバイオアベイラビリティーの改善さえ期待することができる。
【0049】
本発明のさらなる態様では、経口医薬組成物をヒト又は動物、好ましくはヒトの医学的状態の治療又はその再発の予防のために使用することができ、この医学的状態は、慢性リンパ性白血病(CLLと略記)、急性リンパ性白血病(ALLと略記)、慢性骨髄性白血病(CMLと略記)、急性骨髄性白血病(AMLと略記)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHLと略記)、多発性骨髄腫、乳癌、卵巣癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌及び自己免疫疾患から選択される。
【0050】
本発明はまた、ヒト又は動物の身体における慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、乳癌、卵巣癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌及び自己免疫疾患から選択される医学的状態の治療又はその再発の予防の方法であって、それを必要とするヒト又は動物の身体に有効量の本発明の医薬製剤を投与することを含む方法も含む。好ましくは、医学的状態は非ホジキンリンパ腫である。
【0051】
本発明の別の態様では、医薬組成物を少なくとも1種類のさらなる有効薬と併用投与することができ、ここで、該さらなる有効薬は、本医薬組成物の投与前、投与と同時、又は投与後に与えられる。この少なくとも1種類のさらなる有効薬は、好ましくはCD20に特異的な抗体(例はリツキシマブ又はオファツムマブである)、アントラサイクリン誘導体(例はドキソルビシン又はダウノルビシンである)、ビンカアルカロイド(例はビンクリスチンである)、プラチン誘導体(例はシスプラチン又はカルボプラチンである)、ダポリナド(FK866)、YM155、サリドマイド及びその類似体(例はレナリドマイドである)、又はプロテアソーム阻害薬(例はボルテズミブである)である。
【0052】
本発明の医薬組成物はまた、少なくとも1種類のコルチコステロイドと併用投与してもよく、前記コルチコステロイドは、本医薬組成物の投与前、投与と同時、又は投与後に与えられる。コルチコステロイドの例はプレドニゾン、プレドニゾロン及びデキサメタゾンである。
【0053】
本発明の組成物の利点は更に、所望により1種類以上の賦形剤との混合物中の有効成分が、更にこのような成分の味をマスキングするため、並びに/或いは該薬剤を光及び/又は湿気によって起こり得る有害な影響、例えば酸化、分解などから保護するため、或いは対象が該有効成分との相互作用によって口腔粘膜の損傷を受け得ることを予防するためにコーティングを施す必要がないことである。
【0054】
以下の実施例で本発明を更に説明する。当業者には当然のことながら、これらの実施例は単に説明のためのものであり、本発明を限定するものと考えるべきでない。
【実施例】
【0055】
1.カプセル製剤
参考例1:ベンダムスチンカプセル製剤(従来技術)
20.0±1mgのベンダムスチン塩酸塩を空の硬ゼラチンカプセルのボディに秤り入れ、それをAgilentのクリアガラスHPLCバイアル(6ml)に入れた。ボディの上にキャップをのせて軽く押すことによってカプセルを閉じた。
【0056】
カプセルを40℃/75%RH(開けたガラスバイアル)又は50℃(閉じたガラスバイアル)で貯蔵した。ベンダムスチン塩酸塩及び関連物質の量をHPLC(カラム:Zorbax Bonus−RP、5μm;カラムオーブン温度:30℃;オートサンプラー温度:5℃;検出器:254nm)で測定した。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
*1:NP1:4−[6−(2−クロロエチル)−3,6,7,8−テトラ−ヒドロ−3−メチル−イミダゾ[4,5−h]−[1,4]ベンゾチアジン−2−イル]ブタン酸
BM1ダイマー:4−{5−[N−(2−クロロエチル)−N−(2−{4−[5−ビス(2−クロロエチル)アミノ−1−メチルベンズイミダゾール−2−イル]ブタノイルオキシ}エチル)アミノ]−1−メチルベンズイミダゾール−2−イル}ブタン酸
BM1EE:4−[5−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−1−メチル−ベンズイミダゾ−2−イル]ブタン酸エチルエステル
*2:n.d.:検出不能、すなわち、検出限界外(面積パーセンテージ0.05%未満)
【0058】
参考例2
【表2】
【0059】
1000カプセルのバッチサイズの場合、コロイド状二酸化ケイ素とステアリン酸以外の全ての賦形剤をSomakon容器(5L)に装填した。ベンダムスチンを加え、1000rpm(ワイパー10rpm)で4分間ブレンドを行った。得られたブレンドを0.5mmの篩に通した。容器にブレンドを再装填し、コロイド状二酸化ケイ素を加えた。上記条件で2分間ブレンドを行った。その後、ステアリン酸を加え、ブレンドを1分間続けた。続いてブレンドを0.5mmの篩に通し、容器に再装填し、全て同一の条件で更に30秒間ブレンドした。
【0060】
ブレンドをカプセル充填機(Zanassi AZ 5)に移し、硬ゼラチンカプセル(サイズ2)(平均質量:259.5mg(初め)〜255.3mg(終わり))及びヒプロメロースカプセル(サイズ2)(平均質量:255.8(初め)〜253.4mg(終わり))にそれぞれ充填した。カプセル剤を、閉じたガラスバイアル内で40℃/75%RHにて貯蔵した。ベンダムスチン塩酸塩、並びに分解生成物、合成副生成物のような関連物質の量をHPLCで測定した(カラム:Zorbax Bonus−RP、5μm;カラムオーブン温度:30℃;オートサンプラー温度:5℃;検出器:254nm)。結果を表2b(ヒプロメロースカプセルに充填)及び2c(ゼラチンカプセルに充填)に示す。
【0061】
【表3】
*3:主ピークに比べて0.65の相対保持時間の未同定化合物ピーク
【0062】
【表4】
【0063】
参考例3
【表5】
【0064】
1000カプセルの場合、コロイド状二酸化ケイ素とステアリン酸以外の全ての賦形剤をSomakon容器(5L)に装填した。ベンダムスチンを加え、1000rpm(ワイパー10rpm)で4分間ブレンドを行った。得られたブレンドを0.5mmの篩に通した。容器にブレンドを再装填し、コロイド状二酸化ケイ素を加えた。上記条件で2分間ブレンドを行った。その後、ステアリン酸を加え、ブレンドを1分間続けた。続いてブレンドを0.5mmの篩に通し、容器に再装填し、全て同一の条件で更に30秒間ブレンドした。
【0065】
ブレンドをカプセル充填機(Zanassi AZ 5)に移し、硬ゼラチンカプセル(サイズ2)(平均質量:257.9mg(初め)〜255.2mg(終わり))及びヒプロメロースカプセル(サイズ2)(平均質量:261.1(初め)〜257.8mg(終わり))にそれぞれ充填した。カプセル剤を、閉じたガラスバイアル内で40℃/75%RHにて貯蔵した。ベンダムスチン塩酸塩及び関連物質の量を上記のようにHPLCで測定した。結果を表3b(ヒプロメロースカプセルに充填)及び3c(ゼラチンカプセルに充填)に示す。
【0066】
【表6】
【0067】
【表7】
【0068】
参考例4
【表8】
【0069】
1000カプセルの場合、コロイド状二酸化ケイ素とステアリン酸マグネシウム以外の全ての賦形剤をSomakon容器(2.5L)に装填した。ベンダムスチンを加え、1000rpm(ワイパー10rpm)で4分間ブレンドを行った。得られたブレンドを0.5mmの篩に通した。容器にブレンドを再装填し、コロイド状二酸化ケイ素を加えた。上記条件で2分間ブレンドを行った。その後、ステアリン酸マグネシウムを加え、ブレンドを1分間続けた。続いてブレンドを0.5mmの篩に通し、容器に再装填し、全て同一の条件で更に30秒間ブレンドした。
【0070】
ブレンドをカプセル充填機(Zanassi AZ 5)に移し、硬ゼラチンカプセル(サイズ2)(平均質量:241.3mg(初め)〜244.mg(終わり))及びヒプロメロースカプセル(サイズ2)(平均質量:243.5(初め)〜243.mg(終わり))にそれぞれ充填した。カプセル剤を、閉じたガラスバイアル内で40℃/75%RHにて貯蔵した。ベンダムスチン塩酸塩及び関連物質の量を上記のようにHPLCで測定した。結果を表4b(ヒプロメロースカプセルに充填)及び4c(ゼラチンカプセルに充填)に示す。
【0071】
【表9】
【0072】
【表10】
【0073】
実施例1
【表11】
【0074】
0.68gのメチルパラベン、0.068gのプロピルパラベン及び0.068gのブチルヒドロキシトルエンを秤量し、6.14gのエタノールに溶解させた。クレモフォール(登録商標)RH 40を十分な量で40℃にて融解した。得られた5.56gのエタノール溶液、36.83gの融解クレモフォール(登録商標)RH 40及び202.82gのプルロニック(登録商標)L44 NFを秤量し、混合物が透明になるまで機械的撹拌機を用いて800rpmで混合した。この混合物を10℃に置くことによって凝固させた。次に、凝固したブレンドに、手で撹拌することによって24.80gのベンダムスチン塩酸塩を加え、その後、Ultraturrax T18高速ホモジナイザーを用いて15500rpmで10分間ホモジナイゼーションを行うことによりそのブレンド全体に分布させた。CFS 1200カプセル充填及び密封機を用い、25℃で操作してホモジナイズ懸濁液を硬ゼラチンカプセルに充填した。カプセルを閉じて密封した。
【0075】
液体充填カプセル剤をねじ込みプラグ付きの閉じた琥珀色ガラス瓶内で40℃/75%RH、30℃/65%RH、25℃/60%RH及び5℃にて貯蔵した。ベンダムスチン塩酸塩、並びに分解生成物、合成副生成物のような関連物質の量をHPLCで測定した(カラム:Zorbax Bonus−RP、5μm;カラムオーブン温度:30℃;オートサンプラーの温度:5℃;検出器:254nm)。結果を表5bに示す。
【0076】
【表12】
【0077】
実施例2
【表13】
【0078】
0.68gのメチルパラベン、0.068gのプロピルパラベン及び0.068gのブチルヒドロキシトルエンを秤量し、6.14gのエタノールに溶解させた。クレモフォール(登録商標)RH 40を十分な量で40℃にて融解した。得られた5.56gのエタノール溶液及び、239.65gの融解クレモフォール(登録商標)RH 40を秤量し、混合物が透明になるまで機械的撹拌機を用いて800rpmで混合した。この混合物を凝固させ、室温に冷ました。次に、凝固したブレンドに、手で撹拌することによって24.80gのベンダムスチン塩酸塩を加え、その後、Ultraturrax T18高速ホモジナイザーを用いて15500rpmで10分間ホモジナイゼーションを行うことによりそのブレンド全体に分布させた。CFS 1200カプセル充填及び密封機を用い、40℃で操作してホモジナイズ懸濁液を硬ゼラチンカプセルに充填した。カプセルを閉じて密封した。
【0079】
このようにして得られた液体充填カプセル剤をねじ込みプラグ付きの閉じた琥珀色ガラス瓶内で40℃/75%RH、30℃/65%RH、25℃/60%RH及び5℃にて貯蔵した。ベンダムスチン塩酸塩、並びに分解生成物、合成副生成物のような関連物質の量を上記のようにHPLCで測定した。結果を表6bに示す。
【0080】
【表14】
【0081】
実施例3
【表15】
【0082】
0.68gのメチルパラベン、0.068gのプロピルパラベン及び0.068gのブチルヒドロキシトルエンを秤量し、6.14gのエタノールに溶解させた。クレモフォール(登録商標)RH 40を十分な量で40℃にて融解した。得られた5.56gのエタノール溶液、36.83gの融解クレモフォール(登録商標)RH 40及び202.82gのソフチサン(登録商標)645を秤量し、混合物が透明になるまで機械的撹拌機を用いて800rpmで混合した。この混合物を10℃に置くことによって凝固させた。次に、凝固したブレンドに、手で撹拌することによって24.80gのベンダムスチン塩酸塩を加え、その後、Ultraturrax T18高速ホモジナイザーを用いて15500rpmで10分間ホモジナイゼーションを行うことによりそのブレンド全体に分布させた。CFS 1200カプセル充填及び密封機を用い、30℃で操作してホモジナイズ懸濁液を硬ゼラチンカプセルに充填した。カプセルを閉じて密封した。
【0083】
液体充填カプセル剤をねじ込みプラグ付きの閉じた琥珀色ガラス瓶内で40℃/75%RH、30℃/65%RH、25℃/60%RH及び5℃にて貯蔵した。ベンダムスチン塩酸塩、並びに分解生成物、合成副生成物のような関連物質の量を上記のようにHPLCで測定した。結果を表7bに示す。
【0084】
【表16】
【0085】
実施例4
物理化学的に安定な製剤を得るのに好適な油性懸濁液に基づくLFHC製剤を調製した。以下、液体充填硬カプセル剤(LFHC)の製剤開発を、製剤開発及び安定性プログラム中のこれらの製品の分析評価とともに表す。
【0086】
最終的なLFHCの試験した特徴は、外観、溶解速度、並びに種々の条件下で少なくとも3か月間の物理的及び化学的安定性を含んだ。
【0087】
水とLiCapsカプセル剤皮の間の強い不適合性のために、硬ゼラチンカプセルの充填に好適な一連の代替油性ビヒクル中のベンダムスチン塩酸塩の挙動を評価した。この種の油に加えたベンダムスチン塩酸塩の大部分は、溶解ではなくむしろ懸濁されることが判明した。従って、製剤開発に用いる賦形剤はベンダムスチン塩酸塩懸濁液のための担体であると考えられた。また、各担体に溶解したベンダムスチン塩酸塩の量を測定するための分析法も開発した。
【0088】
使用担体はまず、それらの、ベンダムスチン塩酸塩及びLiCapsの両方との物理化学的適合性に従って、及び安定製剤と速い溶解の両方を可能とするそれらの能力に従って選択及び特性決定を行った。
【0089】
ベンダムスチン塩酸塩の懸濁を助けるために、室温で低粘度の担体には増粘剤の必要も考慮した。
【0090】
種々の相対湿度条件での製剤のロバスト性を評価するためには、担体水分含量の影響(ベンダムスチン塩酸塩及びカプセル剤皮の双方に対する)の評価が必要であると思われた。この目的で、水吸/脱着分析を行い、安定性試験の際の製剤挙動を推定するために各担体に関してそれらの吸湿性の傾向を求めた。
【0091】
懸濁液の安定性に対するベンダムスチン塩酸塩濃度の影響を、ベンダムスチン塩酸塩/担体比を高めたバッチを製造することによって評価した。
【0092】
物理的にエージングした担体などの低純度級の担体は、製剤の安定性に影響を及ぼす可能性があり、この側面を、バッチ製造においてエージング担体を用いて検討した。
【0093】
製造された全てのバッチを3ヶ月間、周囲安定保持(stability)条件及び加速安定保持条件下に置き、下記の事項を評価した。
・アッセイ
・純度
・外観
・pH1.5での溶解
【0094】
各担体に溶解し得るベンダムスチン塩酸塩の量を測定するために試験並びに溶解後のLFHC挙動の視覚的評価を行った。
【0095】
担体の水分含量並びにその吸湿性は、製剤の物理化学的安定性に影響を及ぼし得る。水分含量が高いと、その感受性のためにベンダムスチン塩酸塩が分解する可能性があり、一方、吸湿性担体はカプセル剤皮に損傷を与え、その脆性を高める可能性がある。それらの水分含量を高め、貯蔵中のそれらの挙動を推定するために、選択された担体に対して水吸/脱着分析を行った。更に、2つの異なる担体の水分含量を人為的に変更し、これらをバッチ製造で用いた。
【0096】
安定性に対する調製の初期段階から物理的に安定な懸濁液を確認するために、バッチ製造において、低粘度担体を、視覚的沈降現象を回避するために好適な最少量の増粘剤と併用した。ケイ素粉末(エアロシル(登録商標))と40℃より高い融点を有する半固体マトリックス(ゲルシル(登録商標)44/14)の2つの異なる種類の増粘剤を用いた。
増粘剤を含まない同じ担体も試験し、得られた製剤を上記の製剤と比較した。
【0097】
これまでに開発された製剤よりもベンダムスチン塩酸塩が高濃度の懸濁液の、物理的安定性及び溶解に関する挙動を評価するために、2つの異なる担体に関して2つの異なるベンダムスチン塩酸塩/担体比を評価した。
【0098】
2つの異なる担体に対して、起こり得る「エージング」現象を加速化するために人為的処理を施し、低純度の担体の製剤の安定性に対する影響を評価するためにバッチ製造に用いた。
【0099】
ビヒクル中に溶解したベンダムスチン塩酸塩は、懸濁したものよりも化学的分解に曝されやすい。安定保持中に起こり得るベンダムスチン塩酸塩の分解を確認するために、ベンダムスチン塩酸塩及び油により可溶化される関連不純物の実際の量を定量するための分析法を開発した。
【0100】
速い溶解はLFHCの最も重要な特徴の1つである。カプセル剤の製造に使用される油のいくつかは水との混和性が低いため、in vitro溶解の際の懸濁液の挙動の視覚的外観は、製造された懸濁液の種々の物理的側面を明らかにするために、また、対応するin vivo挙動を推定するために役立つことが分かった。
【0101】
実験の部
【表17】
【0102】
【表18】

*)公定格の名称に相当するものではないと考えられる。
**)「そのまま」の製品に対してHoeppler法で測定。
-)ヘプラー(Hoeppler)法で測定した水溶液の粘度:20〜40mPa/s。
+)30〜35℃で得ることのできる粘度:500〜600mPa/s。
【0103】
【表19】

*:文献からのデータ
【0104】
バッチの製造
異なる分類の懸濁液を製造し、続いてサイズ0のLiCaps(登録商標)カプセルに充填した。
【0105】
増粘剤を含む低粘度及び中粘度担体
製剤の安定性に対する粘度改良剤の効果を評価するために、下記の配合に従って一連の有効バッチを製造した。
・ベンダムスチン塩酸塩
・低粘度担体
・エアロシル(登録商標)又はゲルシル(登録商標)44/14(増粘剤)
上記配合に添加する増粘剤の好適な量を決定するための方法を見出すために種々の試験を行った。開発された方法に従い、懸濁液に添加する増粘剤の量を、ベンダムスチン塩酸塩を懸濁状態で維持し、その沈降を回避するのに十分な粘稠な液体製剤を得るために好適な最少量として評価した。添加する増粘剤の量は、担体の最初の粘度に強く関連することが分かった。開発された製剤のベンダムスチン塩酸塩:担体比は全て同じであった(約1:10)。
【0106】
増粘剤を含まない低粘度及び中粘度担体
ベンダムスチン塩酸塩沈降の影響及び間接的に粘度改良剤の効果を評価するために、下記の配合に従って低粘度担体を採用することによって種々のLFHC有効バッチを製造した。
・ベンダムスチン塩酸塩
・低粘度担体
開発された製剤のベンダムスチン塩酸塩:担体比は全て同じであった(約1:10)。
【0107】
高粘度担体
製剤中のベンダムスチン塩酸塩の化学安定性に対する温度の効果を評価するために、30℃を超える融点を有する種々の半固体担体をLFHC有効バッチの製造に用いた。
評価のため、下記の標準配合に従って懸濁液を製造した。
・ベンダムスチン塩酸塩
・高粘度担体
開発された製剤のベンダムスチン塩酸塩:担体比は全て同じであった(約1:10)。
【0108】
ベンダムスチン塩酸塩/担体比
最終製品の安定性に対する懸濁液中のベンダムスチン塩酸塩濃度の効果を評価するために、2つの異なる種類の担体を用いて2つの異なるベンダムスチン塩酸塩/担体比を検討した。
【0109】
2種類の懸濁液について代表的なデータを得るために、低粘度と高粘度の両分類の担体の中で担体の選択を行った。低粘度担体を含む製剤は、懸濁液の物理的安定性を確保するために粘度改良剤を含んだ。
【0110】
評価のために下記の標準配合に従って懸濁液を製造した。
・ベンダムスチン塩酸塩
・担体
【0111】
担体純度:「エージング」工程
2つの異なる担体を開放したガラス瓶に入れ、約5日間
・人工光
・大気中の酸素
・それらの表面における圧縮空気流
に曝した。これらの担体を下記の配合に従ってバッチ製造に用いた。
・ベンダムスチン塩酸塩
・エージング担体
開発された製剤のベンダムスチン塩酸塩:担体比は全て同じであった(約1:10)。
【0112】
水分含量を変更した担体
ベンダムスチン塩酸塩の安定性に対する担体の水取り込みの効果を評価するために、担体をより吸湿性の高いものから選択した。各担体について2つの異なる水分レベルを得るために、2種類の担体を蓋のないガラスビーカーに分注し、下記の条件に置いた。
・25℃/75%RH
・25℃/100%RH
水分含量を上記のように変更した担体を、下記の配合に従ってバッチ製造に用いた。
・ベンダムスチン塩酸塩
・水分含量を変更した担体
開発された製剤のベンダムスチン塩酸塩:担体比は全て同じであった(約1:10)。
【0113】
担体におけるベンダムスチン塩酸塩の溶解度
ビヒクルに加えたベンダムスチン塩酸塩の部分が溶解しているかどうかを判定する必要があるので、起こり得る分解を確認するために、サンプル調製からその分析までの分析手順を開発した。
【0114】
液体油に関するサンプル調製
本質的にこれは油中のベンダムスチン塩酸塩過飽和溶液の作製からなった。すなわち、容器の底に固体粒子の沈降を形成するのに好適な最少量のベンダムスチン塩酸塩を40℃に温めた油中に加え、この溶液を室温で数日(約4日)間磁気撹拌し、その後、3000rpmで15分間遠心分離した。上清をHPLCにより、ベンダムスチン塩酸塩検量線用標準の溶液(0.551mg/ml)に対して分析した。
【0115】
半固体ビヒクルに関するサンプル調製
本質的にこれはビヒクル中のベンダムスチン塩酸塩過飽和溶液の作製からなった。すなわち、容器の底に固体粒子の沈降を形成するのに好適な最少量のベンダムスチン塩酸塩を、その融点より5℃高い温度に加熱した油に加え、この溶液をこの温度で一晩、静止状態で維持し、底に沈降させた。上清をHPLCにより、API検量線用標準の溶液(0.551mg/ml)に対して分析した。
【0116】
溶解試験中の視覚的外観
分析カプセル剤の溶解試験の終了時に溶解容器及びビーカーの一連の写真を撮影した。
写真の他、容器中の溶液の外観の簡単な視覚的記述を報告した。
【0117】
安定性試験
全ての製造バッチを下記の貯蔵条件(表10)で琥珀色のガラス瓶中、安定な状態に置いた。
【0118】
【表20】
【0119】
結果及び考察
低粘度及び中粘度担体と増粘剤を用いて製造したバッチ
ビヒクルの製造
視覚的評価の後に物理的に安定な懸濁液に好適なビヒクルを得るために低粘度油性賦形剤に添加するための増粘剤の最少量を調べることを目的に、種々の試験を行った。
【0120】
この第一段階では、ソフチサン(登録商標)645を除き、表9に報告した全ての液体賦形剤を用いた。
【0121】
増粘剤としてエアロシル(登録商標)を用いて得られるビヒクルは、油中粉末の粗大懸濁液をホモジナイズしてコロイド分散液を得ることによって製造した。このようにして得られたビヒクルの大部分は、温度変動よりもむしろ適用されるずり応力に大きく依存してそれらの粘度を変化させることができるチキソトロピー材料であった(表11参照)。この挙動により、カプセル充填工程中のベンダムスチン塩酸塩への温度ストレスが回避できる。
【0122】
増粘剤としてゲルシル(登録商標)44/14を用いて得られるビヒクルは、成分の混合物をホモジナイズして、室温で凝固する透明な液体を得ることによって製造した。このようにして得られたビヒクルは、温度変動に応じてそれらの粘度を変化させることができる半固体又は固体マトリックス(増粘剤の濃度による)であった。製造した全ビヒクルを表11に示す。
【0123】
粘度に基づいてスクリーニングを行うために、また、ベンダムスチン塩酸塩を含む懸濁液中での挙動を推定するために、調製した全サンプルに対して視覚的評価を行った。行った評価によれば、チキソトロピー性でありかつ半固体のサンプルのみが好適であるとみなされ、次のプラセボ懸濁液製造工程に用いた。
【0124】
【表21】

【0125】
ベンダムスチン塩酸塩を含有するバッチの調製
8種類のビヒクルを更に検討し、ベンダムスチン塩酸塩含有LFHC製剤の調製に使用した。製造した全バッチの組成を、0時間における対応する分析結果とともに表12a、b及びcに報告する。
【0126】
バッチは、増粘剤(エアロシル(登録商標))を担体に加えた後、このようにして得られた混合物をホモジナイズすることによって製造することを意図した。その後、ベンダムスチン塩酸塩を加えた後にホモジナイズした。得られた混合物をLiCaps(登録商標)カプセルに充填した。1バッチ(D001L/035)についてのみ、この製造方法を用いた。というのも、ベンダムスチンを加えた後の2回目のホモジナイゼーション工程の結果、懸濁液の粘度が著しく高まったことから、その後の充填工程に問題が生じた。このためにこの懸濁液はゼラチンカプセルに手で充填し、カプセル充填及び密封機CFS 1200によって密封した。
【0127】
従って、これらのバッチの製造方法を至適化したところ、下記の製造方法が得られた。これらのバッチは、増粘剤(エアロシル(登録商標))を担体に加えることによって製造した。その後、ベンダムスチン塩酸塩を加えた後にホモジナイズした。得られた混合物をLiCaps(登録商標)カプセルに充填した。
【0128】
【表22】
【0129】
【表23】
【0130】
【表24】
【0131】
上記の製造方法に従って、1バッチ(D001L/036)のみを調製した。というのも、この場合にも、ベンダムスチン塩酸塩を担体に加えた後、ホモジナイゼーション前に懸濁液の粘度の著しい増大が見られた。そのため、ホモジナイゼーションは実施しなかった。恐らく、この工程中にベンダムスチン塩酸塩とエアロシル(登録商標)の間に何らかの物理的相互作用が起こったものと思われた。この懸濁液はカプセルに充填しなかった。
【0132】
製造工程を次のように更に至適化した。すなわち、ベンダムスチンを担体に加え、このようにして得られた混合物をホモジナイズした。その後、撹拌下で増粘剤(エアロシル(登録商標))を粘稠な液体懸濁液を得るために好適な最少量で加えた。このようにしてバッチD001L/037〜D001L/049及びバッチD001l/052を調製した。バッチD001L/038とD001L/052(低粘度の懸濁液)を除き、他の全ての懸濁液は高粘度の液体であったことからゼラチンLiCapsに手で充填した。添加する最少量のエアロシル(登録商標)は担体の最初の粘度によって異なった。
【0133】
増粘剤としてゲルシル(登録商標)44/14を加えたバッチに対して提案される製造方法は、増粘剤を担体に加える工程及びこのようにして得られた混合物をホモジナイズする工程を含んだ。その後、ベンダムスチンを加え、このようにして得られた混合物をLiCaps(登録商標)カプセルに充填する前に再びホモジナイズした。この製造方法に従って、バッチ番号D001L/049、050、053、085及び086を調製した。全ての懸濁液が室温で半固体マトリックスであり、温度が上昇するとそれらの粘度の低下を示した。CFS1200によって用量分配したバッチD001L/085及びD001L/086を除き、製造した懸濁液は全てゼラチンLicapsに手で充填した。
【0134】
担体の最初の粘度に応じて、室温で半固体であり、約35℃で液体であるビヒクルを得るために製造に用いたゲルシル(登録商標)44/14の量を決定した。
【0135】
LiCapsに充填した全てのバッチを下記に関して分析した。
・ベンダムスチン含量
・不純物及び
・pH1.5におけるベンダムスチンの溶解特性
【0136】
カプセルの手による充填後に見られた大きな重量変動のため、D001L/085及び086以外には含量均一性試験を実施しなかった。
【0137】
増粘剤を含まずに低粘度及び中粘度担体を用いて製造したバッチ
更に、低粘度の担体を、下記の製造方法に従ってベンダムスチン含有懸濁液の調製に用いた。すなわち、ベンダムスチンを、増粘剤を含まずに担体に加え、その混合物をホモジナイズした後にLiCapsに充填した。この種の担体を使用することにより、いくつかのLFHC製剤を製造した。懸濁液は全て低粘度であるため、カプセル充填及び密封機CFS 1200でsLiCapsに充填することができた。製造された全てのバッチの組成を0時間における対応する分析結果とともに表13a、b及びcに報告する。
【0138】
全ての製剤で沈降が見られ、最終生成物の物理化学的安定性に対するその影響を、安定性試験前、試験中及び試験後に報告される分析試験を実施することにより評価した。この安定性試験期間中、時々カプセルを逆転させ、固化を防いだ。
【0139】
【表25】
【0140】
【表26】
【0141】
【表27】
【0142】
【表28】
【0143】
【表29-1】
【表29-2】
【0144】
【表30-1】
【表30-2】
【0145】
【表31-1】
【表31-2】
【0146】
【表32-1】
【表32-2】
【0147】
【表33-1】

【表33-2】
【0148】
【表34-1】
【表34-2】
【0149】
【表35-1】
【表35-2】
【0150】
【表36-1】
【表36-2】
【0151】
高粘度担体を用いて製造したバッチ
調製の初期段階から貯蔵寿命までの温度の影響を評価するために、ベンダムスチン塩酸塩含有製剤の調製に用いるための室温で半固体又は固体であり、かつ高粘度を有する担体を選択した。高粘度担体を表14に挙げる。
【0152】
【表37】

【0153】
製造した全バッチの組成を、分析試験の結果を含めて表15a及び15bに報告する。
ベンダムスチン塩酸塩を含有するLFHC製剤に対して提案される製造方法は、ベンダムスチン塩酸塩を融解した担体に加え、その混合物をホモジナイズし、その混合物を、25℃を越える温度でLiCaps(登録商標)カプセルに充填することであった。これらの懸濁液は室温で半固体又は固体であり、従って、これらはカプセル充填及び密封機CFS 1200を用い、それらの融点に応じたある特定の温度範囲内でLiCaps(登録商標)カプセルに充填する必要があることが分かった(表14参照)。これらの担体は室温で高粘度であるため、これらの懸濁液中で沈降は見られなかった。
【0154】
【表38】
【0155】
他の全ての担体についても、表15aに挙げられている担体の場合と同じベンダムスチン塩酸塩:担体比を用いた。
【0156】
【表39】
【0157】
【表40-1】
【表40-2】
【0158】
【表41-1】
【表41-2】
【0159】
【表42-1】
【表42-2】
【0160】
【表43-1】
【表43-2】
【0161】
【表44-1】
【表44-2】
【0162】
【表45-1】
【表45-2】
【0163】
【表46-1】
【表46-2】
【0164】
【表47-1】
【表47-2】
【0165】
【表48-1】
【表48-2】
【0166】
【表49-1】
【表49-2】
【0167】
【表50-1】
【表50-2】
【0168】
【表51-1】
【表51-2】
【0169】
【表52-1】
【表52-2】
【0170】
【表53-1】
【表53-2】
【0171】
【表54-1】
【表54-2】
【0172】
【表55-1】
【表55-2】
【0173】
【表56-1】
【表56-2】
【0174】
【表57-1】
【表57-2】
【0175】
【表58-1】
【表58-2】
【0176】
【表59-1】
【表59-2】
【0177】
ベンダムスチン塩酸塩/担体比を変更して製造したバッチ
最終生成物の安定性に対する懸濁液中のベンダムスチン塩酸塩濃度の効果を評価するために、2つの異なる担体を用いて2つの異なるベンダムスチン塩酸塩/担体比を検討した。
【0178】
それぞれ低粘度及び高粘度を有するミグリオール(登録商標)812及びソフチサン(登録商標)649を本試験に好適なものとして選択した。ミグリオール(登録商標)812を含む製剤は、懸濁液の物理的安定性を確保するために粘度改良剤としてエアロシル(登録商標)を含んだ。
【0179】
ベンダムスチン塩酸塩含有LFHCバッチの組成と0時間における対応するそれらの分析結果を表16a及びbに報告する。
【0180】
【表60】
【0181】
バッチ番号D001L/070及び073は、ベンダムスチン塩酸塩を担体に加えた後にホモジナイズし、その後、この混合物に粘稠な液体懸濁液を得るのに好適な最少量の増粘剤を加えることにより製造し、これはLiCaps(登録商標)カプセルに手で充填した。
【0182】
API/担体比は、懸濁液の最終量にかかわらず、最初に確定した。増粘剤は添加した量のAPIを懸濁させる限りで有用であった。
【0183】
バッチ番号D001L/071及び072は、融解した担体にベンダムスチン塩酸塩を加え、その混合物をホモジナイズし、それを充填及び密封機CFS1200を用いてLiCaps(登録商標)カプセルに充填することによって製造した。ベンダムスチン塩酸塩/担体比は、懸濁液の最終量にかかわらず、最初に確定した。
【0184】
【表61】
*API面積に対して計算した値
【0185】
エージングした担体を用いて製造したバッチ
担体エージング手順
ラブラフィル(登録商標)M1944 CS及びプルロニック(登録商標)L44 NF INHを開放した透明なガラス瓶に入れ、約5日間
・人工光
・大気中の酸素
・それらの表面における圧縮空気流
に曝した。
【0186】
有効バッチの製造
エージングしたラブラフィル(登録商標)M1944 CS及びプルロニック(登録商標)L44 NF INHをベンダムスチン塩酸塩含有製剤の調製に用いた(表17aのバッチD001L/074及びD001L/079)。これらのバッチは、エージングした担体にベンダムスチン塩酸塩を加えた後、ホモジナイズすることによって製造した。それらは好適な粘度であったため、全ての懸濁液をカプセル充填及び密封機CFS 1200を用いてLiCaps(登録商標)カプセルに充填することができた。
【0187】
【表62】
【0188】
0時間における分析結果を表17bに報告する。
【0189】
【表63】
【0190】
水分含量を変更した担体を用いて製造したバッチ
担体選択の原理
水分含量試験のために、それらの水吸/脱着特性に従って担体の選択を行った。ベンダムスチン塩酸塩の安定性に対する、担体による水取り込みの効果を評価するために、より高い吸湿性を示したものの中から担体を選択した。
【0191】
この目的で、Surface Measurement SystemsからのDynamic Vapour Sorption装置を用いて試験を行った。この装置は、温度制御キャビネット内に収容されたCahnマイクロバランスからなる。実験条件は以下の通りであった。
・温度:25℃
・開始時のRH:10%
・開始時のサイズ:10%
・次工程の条件:dm/dt(%/分)<0.002%又は360分後
・最大RH:80%
・方法:フルサイクル(10%RHから80%RH、10%に戻る)
・パージガス:窒素
・ガス流速:200ml/分
【0192】
検討後、賦形剤は次の3つのカテゴリーに分類することができた。
・低吸湿性:80%RHで吸着≦1%
・中吸湿性:80%RHで吸着>1%かつ≦5%
・高吸湿性:80%RHで吸着>5%
結果は、表18参照。
【0193】
【表64】

【0194】
クレモフォール(登録商標)A6及びプルロニック(登録商標)L44 NF INHは、この目的で最も好適な担体であると考えられた。。
トランスクトール(登録商標)HPは、25℃で蒸発したため、水分吸着は評価できなかった。
【0195】
水分含量増加手順
担体ごとに2つの異なる水分レベルを得るために、各担体のサンプルを開放したガラスビーカーに分注し、下記の条件下で維持した。
・25℃/75%RH
・25℃/100%RH
【0196】
一番目の条件は人工気候チャンバーで達成し、二番目の条件は、プラットフォームの下の空間に蒸留水を満たした真空デシケーターで達成した。サンプルは、撹拌せずに静置条件で貯蔵した。
【0197】
貯蔵2日後、カールフィッシャー滴定によって測定したところ、担体は下記の湿度値に達していた(表19)。
【0198】
【表65】
【0199】
有効バッチの製造
水分含量を上記のように変更したクレモフォール(登録商標)A6及びプルロニック(登録商標)L44 NF INHを、ベンダムスチン塩酸塩含有バッチの調製に用いた(クレモフォール(登録商標)についてはD001L/075及びD001L/076、並びにプルロニック(登録商標)についてはD001L/080及びD001L/081)。
【0200】
全ての懸濁液を、カプセル充填及び密封機CFS 1200を用いてLiCaps(登録商標)カプセルに充填することができた。しかしながら、クレモフォール(登録商標)A6は、25℃で半固体の物理的状態であったため、それを懸濁液の調製に用いる前に50℃に加熱しなければならなかった。クレモフォール(登録商標)A6含有バッチは、融解した担体にベンダムスチン塩酸塩を加えた後にホモジナイズし、そのバッチを高温(約55℃)でLiCaps(登録商標)カプセルに充填することによって製造した。
【0201】
プルロニック(登録商標)L44 INH NF含有バッチは、ベンダムスチン塩酸塩を担体に加えた後にホモジナイズし、LiCaps(登録商標)カプセルに充填することによって製造した。全てのバッチの組成及び0時間における対応する分析結果を表20a及びbに報告する。
【0202】
【表66】
*水分含量(MC)を変更した担体:
D001L/075:クレモフォールA6 MC=8,74%
D001L/080:プルロニックL44 MC=2,08%
D001L/076:クレモフォールA6 MC=3,68%
D001L/081:プルロニックL44 MC=2,71%
【0203】
【表67】
【0204】
担体中のベンダムスチン塩酸塩の溶解度
下表21.aにおいて、分析結果を、選択された担体の溶液約1gに完全に熔解したベンダムスチン塩酸塩のmgとして表して報告する。
【0205】
【表68】
【0206】
mg及びAPIパーセンテージの計算は下式を用いて行った。
【数1】
【0207】
溶解度評価のためのさらなるサンプルは、撹拌下で、相分離を生ずるのに好適な量の有効成分(API)を所定量の各担体に加えることによって調製した。これらのサンプルは各担体の融点をやや越える温度で調製し(液体ビヒクル以外)、この温度で約5時間(見積もられた製造工程時間)維持した。適用可能であれば、相分離を加速するために各サンプルを遠心分離し、カプセルの充填重量に相当する量(約600mg)の上清を抜き取り、実際に溶解したAPIの量を決定するためのアッセイで評価した。
【0208】
各溶解度値は、カプセルに充填するために設定した値に相当する特定の温度に関連がある(表14参照)。結果を表21.bに報告する。
【0209】
【表69】
【0210】
溶解試験中の視覚的外観
表22a及び22bでは、この目的で選択したLFHCバッチに関して、溶解試験の終了時における容器内の溶液の外観についての簡単な視覚的記述を示している。
【0211】
【表70】
【0212】
【表71】
【0213】
結論(DL001L/001〜092)
上記の結果に基づき、下記の結論を報告することができる。
・エアロシル(登録商標)及びゲルシル(登録商標)44/14は、ベンダムスチン塩酸塩懸濁液のための物理的に安定なビヒクルを得るために、低粘度油に好適な増粘剤とみなすことができる。いくつかの油にエアロシルを添加すると、チキソトロピー性の担体が得られたが、液体の油に溶解したゲルシル44/14は、その物理的状態を、製剤中のその濃度に応じて半固体又は固体に変えた。懸濁液に加える増粘剤の量は、担体の最初の粘度に応じて調整する必要がある。
【0214】
・バッチD001L/051、052、089及び092では、恐らくは使用した担体の高い吸湿性のためにカプセルの高い摩損度が見られた。
【0215】
・3か月の安定保持の後のバッチD001L/052の高い不純物値は、恐らくはベンダムスチン塩酸塩との不適合性のためである。
【0216】
・ベンダムスチン塩酸塩の沈降は、カプセル剤の溶解よりもバッチの含量均一性に大きな影響を及ぼすと思われる。
【0217】
・バッチD001L/054(表12)、D001L/075及び076のカプセル剤は、分析的希釈液にわずかに溶解するだけであることが分かった。実際に、1時間の音波処理の後にも大きな不溶残渣がまだ存在した。これはアッセイの低い値を説明する。これはクレモフォール(登録商標)A6の高粘度とその高融点によるものである可能性がある。
【0218】
・エージングを行ったラブラフィル(登録商標)M1944 CS及びプルロニック(登録商標)L44(D001L/074及びD001L/079)、ソフチゲン(登録商標)701(D001L/077)、並びに水分含量を変更した担体(D001L/075、076、080及び081)に基づくバッチの不純物は、0時間においては制限内であった。40℃で3か月の安定保持の後、バッチD001L/076のみ不純物が制限外であることが分かった。予期しないことに、このデータは、担体の水分含量を高めることがベンダムスチンの安定性に有益であり得ることを示す。第I相治験を裏付けるために実施されたこの安定性試験からの結果は、担体(この場合、クレモフォール(登録商標)RH 40)による水分の取り込みが予想された通りベンダムスチンの安定性に有害であったことを示したことから、これは恐らく変則的な結果であると思われる。
・低粘度担体及び増粘剤としてのエアロシル(登録商標)に基づくバッチ(バッチD001L/035〜D001L/049及びD001L/052)とエアロシル(登録商標)を含まない対応物(バッチD001L/057〜D001L/068及びD001L/078)の溶解挙動を比較することにより、エアロシル(登録商標)がベンダムスチン塩酸塩の溶解時間に影響を及ぼすことが明らかであった。ベンダムスチンは低粘度で増粘剤を含まない担体に速やかに溶解するにもかかわず、貯蔵時のベンダムスチンの沈降を防ぐためにこの担体の粘度を改変した。長期間おける「稠密な」沈降物の形態でのLFHC中のベンダムスチンの溶解特性は、やがて、LFHCが薬品仕様の要件(目標値:30分後にNLT80%)にもはや従わなくなる程度まで変化してしまう可能性が高い。従って、粘度改良剤を除き、一方で溶解特性を改変し、他の代替担体を薬品の調剤に利用可能とすることが、恐らく商業上価値の無いLFHCをもたらしたものと思われる。
・報告された不純物及び溶解の安定性結果によれば、クレモフォール(登録商標)EL、プルロニック(登録商標)L44 NF INH及びクレモフォール(登録商標)RH40が、商業上価値のあるLFHC製剤のために最も好適な担体であると考えられる。しかしながら、クレモフォール(登録商標)ELはカプセル剤皮との不適合性を示し(摩損度の増大)、また、プルロニック(登録商標)L44は室温で液体である。クレモフォール(登録商標)RH 40はゼラチンカプセル剤皮の摩損度を増大させず、かつ、室温で半固体のビヒクルであることから、この極めて粘稠な系におけるベンダムスチン塩酸塩の沈降は考えにくいので、粘度の改変は必要ない。この担体は高粘度であるにもかかわらず、LFHCの溶解特性は目標値である80%を十分越えている。これらの側面は3つの担体候補の間でのさらなる選択のための決定因子となり得る。
・選択された担体中でのベンダムスチン塩酸塩の溶解度は極めて低く、液体又は半固体油性ビヒクル中のベンダムスチン塩酸塩の過飽和溶液において回収されたベンダムスチン塩酸塩は1%未満であった。
・溶解中の視覚的外観は、溶解媒体中でのビヒクルの種々の挙動を強調して表し、その外観は、高いHLB値を有する数種の界面活性剤(クレモフォール(登録商標)A 25など)に特徴的な明澄な溶液から、数種の強親油性マトリックス(ラブラファック(登録商標)PGなど)に特徴的な表面に浮遊している油性液体の懸濁液まで、様々であった。エアロシル(登録商標)を含有するほとんどのカプセル剤は、恐らくは増粘剤の効果のために水で明澄なエマルションを形成した。
【0219】
結論(9DL001l/093〜120)
27のさらなるLFHCバッチを製造し、アルミニウムブリスターに包装し、周囲安定保持条件及び加速安定保持条件下に最大3か月置いた。
【0220】
アッセイ及び含量均一性の値は、製造及び充填装置における懸濁液の処理能力に厳格に依存するが、溶解及び不純物特性は固有の特徴であり、従って、ベンダムスチン塩酸塩の担体として用いる賦形剤の適合性の最終的評価(表9.b)においてより重要であると考えることができる。
【0221】
40℃及び相対湿度75%での安定保持期間の後に得られた結果にはかなりの変動がある。この変動性は恐らく種々の担体の物理化学的特性に関連しているものと思われ、媒体中のビヒクルの恐らくは内因的な低溶解度、又は担体とゼラチンとの不適合性の存在、並びにより高い融点が、半固体又は固体担体を用いて製造されたバッチのカプセル剤の低い溶解を正当化する可能性がある。実際のところ、30分後にはAPIの十分な放出が見られなかったので、製造されたバッチのほとんどについて200rpmでの更に30分の追加工程が必要となった。しかしながら、半固体又は固体担体を含有する数種の製剤(例えば、バッチ番号D001L/107、111、112、115及び116)は、高速点後も低い溶解速度を示した。
【0222】
恐らくは、数種のカプセル剤バッチに含まれる固体及び半固体担体の物理化学的特徴が上記の貯蔵条件において変化した。すなわち、アッセイ評価のためのサンプル調製の終了時にバッチD001L/094、095、102、103、104、106、107、108、111、112、115及び116のカプセル剤がフラスコ内に残した不溶残渣でこの低いアッセイ値を説明することができるのに対し、バッチD001L/102、103、104、112はより高いアッセイ値を示す。
【0223】
不純物特性は、0時間に比べて未知不純物の全般的増加を示した。更に、バッチD001L/097、099、100は、恐らく安定保持時間中の湿度の上昇のために、HP1に関して高レベルを示した。いくつかのバッチ(例えば、D001L/093、094、095、097、098、099、100、101、103、104、106、109、110、111及び113)で、潜在的化学不適合性が高レベルのBM1EEダイマー及び主要な未知不純物を生成した可能性があった。
【0224】
しかしながら、上記のように、製造したバッチのアッセイ、含量均一性及び不純物特性の決定に適用された分析方法は、担体としてクレモフォール(登録商標)RH40を含有するカプセル製剤用に開発され、至適化されたものであった。
【0225】
全てのバッチについて、40℃及び75%RHで3か月後の水分含量は、0時点において得られた結果よりも高い。水分浸透に対して最も好適な包装としてのアルミニウムブリスターを仮定すると、恐らくは剤皮とカプセル内容物の間の水分の再分布が起こった可能性がある。バッチD001L/093〜D001L/104、D001L/106〜D001L/112及びD001L/115〜D001L/119では、この側面も、対応する担体の高い吸湿性を考慮することによって説明することができる。
【0226】
ベンダムスチン塩酸塩単独を充填したカプセルは、0時間に比べて不純物特性及び溶解挙動の変化を示さない。
【0227】
予想されたように、ベンダムスチンHClは、恐らくはその親水性のために、選択された各担体における溶解度が低い。
【0228】
ほとんどのバッチに関して溶解度が低いという結果は、供試したほとんどの賦形剤が、安定で速い溶解を示す液体充填硬カプセル製剤中のベンダムスチンHClのためのビヒクルとして適していないことを示す。
【0229】
2.崩壊及び溶解試験
実施例5
実施例1、2及び3の液体充填カプセル製剤に対する崩壊試験は、崩壊装置Aを用いて37.0℃±0.5℃で操作し、pH=1.0±0.05のバッファー溶液1000.0ml中で行った。結果を表23a、23b及び23cに示す。
【0230】
実施例6
実施例1、2及び3の液体充填カプセル製剤に対する溶解試験は、pH1.5の人工胃酸溶液中で行った(Ph Eur:2.9.3: Dissolution test for solid dosage forms in Recommended Dissolution Media参照)。
【0231】
溶解サンプルに対してHPLC(カラム:Zorbax Bonus−RP、5μm;カラムオーブン温度:30℃;オートサンプラー温度:5℃;検出器:254nm)によるアッセイ試験を行った。pH1.5の人工胃液は、250.0mLの0.2M塩化カリウム0.2Mを1000mL容のフラスコに入れ、207.0mLの0.2M塩酸を加えた後にMilli−Q水で1000mLに希釈することによって調製した。pHを測定し、必要ならば、2N塩酸又は2N水酸化カリウムでpHを1.5±0.05に調整した。
【0232】
欧州薬局方6.0の第2.9.3章に準拠し、装置2(パドル装置)を用いて溶解試験を行った。パドルの回転速度は50rpm、温度は37℃±0.5℃、溶解媒体の量は500mlであった。
【0233】
実施例1、2及び3の液体充填硬カプセル剤の結果を表23a、23b及び23cに示す。
【0234】
【表72】
【0235】
【表73】
【0236】
【表74】
【0237】
上の表23a、23b及び23cから分かるように、本発明の実施例2の液体充填硬カプセル製剤だけが、ベンダムスチンの好ましい速い溶解特性(500mlの人工胃液中、欧州薬局方に準拠してパドル装置を用いて50rpmで測定した場合に10分で少なくとも60%、20分で70%及び30分で80%である)を示す。
【0238】
3.in vivo試験
実施例7
50mgのベンダムスチンを含有する実施例2の液体充填硬カプセル剤を雄と雌のビーグル犬に経口投与し、参考例1のカプセル剤と比較して、1用量(すなわち50mg)のベンダムスチンのバイオアベイラビリティー(AUC及びCmax)を決定し、これらのカプセル製剤のバイオアベイラビリティーにおける変動レベル(すなわちAUC及びCmaxについての%CV)を決定した。さらなる製剤(製剤X)も試験に含めたが、この製剤は本発明の範囲外であるため、詳細は示さない。必要とされる動物の総数は16匹であった。基本的な試験計画は、各処置群につき動物8匹のクロスオーバーデザインとした。
【0239】
【表75】
【0240】
1週間の休薬期間があった。
【0241】
【表76】
【0242】
カプセル製剤(参考例1)と実施例2の液体充填カプセル製剤の両方についての、時間に対する平均血漿特性を図1に示す。
【0243】
実施例8
癌患者における経口ベンダムスチンの絶対バイオアベイラビリティーを評価するための非盲検無作為化二元配置クロスオーバー試験を行って、経口製剤(実施例2)として投与されたベンダムスチンの絶対バイオアベイラビリティーを評価した。経口及びi.v.投与後の血漿中のベンダムスチンの薬物動態を評価することに加えて、さらなる目的は、実施例2の製剤のi.v.投与、特に経口投与後のベンダムスチンの安全性と耐容性を評価することであった。
ベンダムスチン塩酸塩の液体充填硬カプセル製剤の経口投与後のベンダムスチンのバイオアベイラビリティーを検討するために、計12名の患者を第1相非盲検無作為化二元配置クロスオーバー試験に割り付けた。多発性骨髄腫、B細胞種慢性リンパ性白血病又は進行型緩徐進行性非ホジキンリンパ腫の14名の患者を登録し、ベンダムスチンで処置した。患者は事前に静脈内ベンダムスチンで処置することができたが、試験薬の最初の投与の少なくとも7日前に最後の静脈内サイクルを受けていなければならなかった。インフォームド・コンセント・フォームに署名をし、スクリーニング期間(21日前〜2日前)を経過した後、適格な患者に各試験施設に固有の患者番号を割り当てた。1日目に下記のうち一方を受けた後、8日目に他方を受けるように患者を無作為化した。
・110.2mg(2×55.1mg)ベンダムスチンHClの単回経口用量
・100mgベンダムスチンHClの単回静脈内用量
【0244】
ベンダムスチンは、a)LFHC製剤(液体充填硬剤皮カプセル剤)のカプセル剤として経口で、及びb)注射溶液の調製のために粉末を再構成した後に溶液として静脈内に与えた。LFHC製剤(カプセル当たり)は、55.1mgのベンダムスチン塩酸塩、1.2mgのメチルパラベン、0.12mgのポリパラベン、0.12mgのブチル化ヒドロキシトルエン、10.9mgのエタノール及び532.56mgのクレモフォール(登録商標)RH40から調製した。溶液の濃縮物としての粉末の入ったバイアルはドイツの市販製品(リボムスチン(登録商標))であり、これにはバイアル当たり100mgのベンダムスチン塩酸塩と賦形剤としてのマンニトールが入っている。この製品を、添付文書の説明書に従って、注射水でベンダムスチンHClの終濃度が2.5mg/mlとなるように再構成し、更に患者に投与する前に0.9%NaClで約500mlまで希釈した。
【0245】
患者を、1日前〜2日目(期間1)と7日目〜9日目(期間2)の2期間の間、試験施設に入院させた。計12名の患者を処置の受容に関して無作為化することとした。6名の患者には、110.2mg(2×55.1mg)ベンダムスチンHClの単回経口用量(1日目)の後、100mgベンダムスチンHClの単回静脈内用量(8日目)による処置を施し、他の6名の患者には、逆の順序で処置を施すこととした。患者には処置間に少なくとも7日の休薬期間を設けた。
【0246】
ベンダムスチンは加水分解によって不活性代謝物であるモノヒドロキシベンダムスチン(HP1)及びジヒドロキシベンダムスチン(HP2)へ、また、シトクロムP450(CYP 1A2)によって活性代謝物であるγ−ヒドロキシベンダムスチン(M3)及びN−デスメチルベンダムスチン(M4)へと代謝される。
【0247】
ベンダムスチンの経口投与及び静脈内投与後、ベンダムスチンの濃度並びにベンダムスチン活性代謝物(M3及びM4)の濃度を1日目と8日目の血漿及び尿サンプルにおいて測定した。患者は、2回目の処置期間の終了又は早期退院/中止の7〜14日後に試験後来診のために試験施設に戻った。その後、ベンダムスチン及びその代謝産物の薬物動態パラメーターを計算した。
【0248】
中間分析は計画又は実施しなかった。
【0249】
以下の結果が得られた。
集団:
本試験のスクリーニングを受けた23名の患者のうち14名の患者が処置に無作為に割り付けられ、少なくとも1用量の試験投薬を受けた。これらには経口/静脈内の順序で受けた6名の患者と静脈内/経口の順序で受けた8名の患者が含まれた。これらの14名の患者のうち
・1名はプロトコール違反(並行投薬)のために排除され、経口投薬のみを受け、静脈内投与は受けなかった。
・1名は嘔吐のために経口分析から排除され、バイオアベイラビリティー評価については適格でなかった。
・1名は有害事象のために静脈内投与から排除された。この患者は経口投与のみを受け、静脈投与は受けなかった。
【0250】
14名の患者のうち10名(71%)は男性であり、全て白人であった。患者の年齢は54〜82歳の範囲であり、平均はおよそ70歳であった。7名の患者は多発性骨髄腫、4名は緩徐進行性非ホジキンリンパ腫、及び3名は慢性リンパ性白血病であった。
【0251】
薬物動態結果:
ベンダムスチン(塩基)、M3及びM4の血漿薬物動態パラメーターをそれぞれ表24、表25及び表26に示す。統計分析に基づけば、ベンダムスチンの絶対バイオアベイラビリティー(AUCinfの経口:静脈内比)は66%(幾何平均;90%CI:55%、78%)であった。経口投与後のCmaxは、静脈内投与後のCmaxの42%(90%CI:32%、54%)であった。
【0252】
【表77】
【0253】
注:
嘔吐のAEのために薬物動態データが信頼できないとみなされた1名の患者を除き、全患者が少なくとも1用量の試験薬を受容し、かつ、少なくとも1つの薬物動態パラメーターを導くのに十分な血漿濃度データが利用可能であった(変更された薬物動態分析セット)。
† 算術的平均。幾何平均は66%(90%CI:55%、78%)であった。
‡ 経口投与後のCmaxは、静脈内投与後のCmaxの42%(90%CI:32%、54%)であった。
【0254】
【表78】
【0255】
注:
嘔吐のAEのために薬物動態データが信頼できないとみなされた1名の患者を除き、全患者が少なくとも1用量の試験薬を受容し、かつ、少なくとも1つの薬物動態パラメーターを導くのに十分な血漿濃度データが利用可能であった(変更された薬物動態分析セット)。
【0256】
【表79】
【0257】
注:
嘔吐のAEのために薬物動態データが信頼できないとみなされた1名の患者を除き、全患者が少なくとも1用量の試験薬を受容し、かつ、少なくとも1つの薬物動態パラメーターを導くのに十分な血漿濃度データが利用可能であった(変更された薬物動態分析セット)。
【0258】
経口投与後、ベンダムスチンはtmaxおよそ0.95時間(個々の値は15分〜1.8時間の範囲))で吸収された。静脈内投与後の平均CLは21.2L/時であった。平均t1/2は経口摂取後及び静脈内投与後の双方でおよそ30分であった。静脈内投与後の平均VZ及びVSSはそれぞれ14.7L及び10.3Lであった。
【0259】
血漿のM3及びM4曝露はベンダムスチンの場合よりもかなり低かった。ベンダムスチンの平均AUCinfは、経口投与後のM3及びM4の場合よりもそれぞれ10.6倍及び88倍高かった。ベンダムスチンとは対照的に、M3及びM4 AUCinf値は経口投与と静脈内投与で同等であった。統計分析に基づけば、経口投与後、M3のAUCinfは静脈内投与後のAUCinfの86%(90%CI:76%、98%)であった。M4について、これは88%(90%CI:77%、102%)であった。
【0260】
ベンダムスチン、M3及びM4の尿の薬物動態パラメーターをそれぞれ表27、表28及び表29に示す。尿中に排泄された用量のパーセンテージは低かった(経口及び静脈内ベンダムスチンについてそれぞれ2.6%及び2.1%)。
【0261】
【表80】
【0262】
注:
嘔吐のAEのために薬物動態データが信頼できないとみなされた1名の患者を除き、全患者が少なくとも1用量の試験薬を受容し、かつ、少なくとも1つの薬物動態パラメーターを導くのに十分な血漿濃度データが利用可能であった(変更された薬物動態分析セット)。
【0263】
【表81】
【0264】
注:
嘔吐のAEのために薬物動態データが信頼できないとみなされた1名の患者を除き、全患者が少なくとも1用量の試験薬を受容し、かつ、少なくとも1つの薬物動態パラメーターを導くのに十分な血漿濃度データが利用可能であった(変更された薬物動態分析セット)。
【0265】
【表82】
【0266】
注:
嘔吐のAEのために薬物動態データが信頼できないとみなされた1名の患者を除き、全患者が少なくとも1用量の試験薬を受容し、かつ、少なくとも1つの薬物動態パラメーターを導くのに十分な血漿濃度データが利用可能であった(変更された薬物動態分析セット)。
【0267】
安全性結果:
ベンダムスチンの経口及び静脈内投与は安全であり、十分な耐用性があった。全体で、経口処置中に6名の患者(43%)が処置により発生する有害事象を受け、3名の患者(25%)が静脈内処置中に処置により発生する有害事象を受けた。試験者が試験薬に関連するものと考えた有害事象を少なくとも1つ受けた患者は、経口用量を受けた患者では4名(29%)であり、静脈内用量を受けた患者ではいなかった。これらには頭痛が1名、頭痛と疲労の双方が1名、悪心が1名、嘔吐が1名含まれた。これらの事象は重症度グレード2である嘔吐以外は重症度グレード1であった。
【0268】
ほとんどの有害事象は重症度グレード1又はグレード2であった。経口用量を受けた1名の患者は、グレード3の血清クレアチニン増加、低カリウム血症及び急性腎不全、並びにグレード4の血小板減少症を受けたが、試験者は全て患者の多発性骨髄腫に関連するものであって、試験薬に関連するものではないとみなした。血清クレアチニン増加及び急性腎不全は重篤な有害事象であり、その患者は試験から早期離脱するに至った。試験中、死亡は見られなかった。
【0269】
ベースラインからの平均変化、又は血液学、生化学、尿検査若しくはバイタルサインパラメーターのカテゴリーシフトには、臨床上有意な傾向は見られなかった。少数の患者は、有害事象として報告された異常な血液学的又は生化学的所見を持っていたが、これらの中で試験者が試験薬に関するものであるとみなしたものは無かった。
【0270】
心拍数におけるベースラインからの平均変化は小さく、処置群の間で同等であった。本試験における患者の年齢及び病歴のために、ほとんどがスクリーニング時及び/又は試験中に「臨床上有意ではないが異常な」少なくとも1つの心電図所見を有していた。静脈内/経口群の1名の患者では、スクリーニング時、並びに静脈内及び経口の両投与の後に異常な、臨床上有意な心房細動、非特異性ST鬱病及び左軸偏位が見られた。
【0271】
結論:
・カプセル剤を用いた単回経口投与後のベンダムスチンの絶対バイオアベイラビリティーは66%(幾何平均;90%CI:55%、78%)であった。
・静脈内投与後の平均ベンダムスチンCL、Vz及びVssはそれぞれ21.2L/h、14.7 L及び10.3Lであった。
・ベンダムスチンは経口投与後に急速に吸収された(中央値tmaxおよそ0.95時間)。平均t1/2はおよそ30分であった。経口投与後にはその用量のおよそ2.6%が尿中に排泄されたが、M3としては0.6%が排泄され、M4としては0.1%が排泄された。経口投与後のM3及びM4曝露はベンダムスチン曝露のそれぞれおよそ9%及び1%であった。
【0272】
有害事象報告、臨床検査評価、バイタルサイン、身体検査及び心電図に基づけば、ベンダムスチンの経口(110.2mg)及び静脈内(100mg)双方の単回用量形態は安全であり、緩徐進行性非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫又はB細胞種慢性リンパ性白血病患者の、このほとんどが高齢者の集団において十分な耐用性があることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0273】
本発明の組成物は多くの利点を示す。本組成物は管理医療スタッフの援助なしで患者が容易に使用することができる。従って、時間のかかる通院はもはや不要となり、それによって患者のコンプライアンスを向上させることができる。更に病院スタッフが細胞傷害性物質との接触に曝されることが少なく、それによって職業上の危険が軽減されるという利点がある。細胞傷害性化合物を含むバイアルを処分する必要がないので、環境ハザードも減少する。
【0274】
本投与形はそのまま嚥下することができ、これは有効成分の溶解が達成されるまで患者が待つ必要がないことを意味する。その上、薬物を嚥下することは、有効成分と口腔粘膜との接触を回避するために薬物を摂取する好ましい方法である。更に本投与形の良好な安定性のため、室温で、かつ特殊な貯蔵条件を必要とせずに本組成物を容易に貯蔵することができる。
【0275】
本発明の投与形を使用することによって、投与形の体積のかなりの縮小を果たすことができる。サイズの縮小は、製造及び取扱いの観点からも患者のコンプライアンスの観点からも望ましい。
【0276】
医薬組成物はin vitroで高い溶解を示し、これはin vivoでのベンダムスチンの分解を減少させるであろう。従って、本発明の組成物は、従来技術の経口製剤に比べて、in vivoにおいてベンダムスチンの改良されたバイオアベイラビリティー特性を示し得る。
本発明の好ましい態様には、以下のものがある。
1.経口投与用医薬組成物であって、有効成分としてのベンダムスチン又はその薬学上許容されるエステル、塩若しくは溶媒和物と、薬学上許容される賦形剤とを含み、前記薬学上許容される賦形剤が、薬学上許容される非イオン性親水性界面活性剤であることを特徴とする、経口投与用医薬組成物。
2.前記有効成分が、ベンダムスチン塩酸塩である、上記1に記載の医薬組成物。
3.10〜1000mg、好ましくは25〜600mg、より好ましくは50〜200mg、最も好ましくは約100mgの前記有効成分を含む、上記1又は上記2に記載の医薬組成物。
4.前記非イオン性親水性界面活性剤が、10〜20、好ましくは12〜18の間のHLB値を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
5.前記非イオン性親水性界面活性剤が、5℃〜体温(37℃)の間、好ましくは室温(20℃)〜体温(37℃)の間の融点、流動点又は融解範囲を有する、上記1に記載の医薬組成物。
6.コロイド状二酸化ケイ素を更に含む、上記1、2、3、4又は5に記載の医薬組成物。
7.ラウロイルマクロゴールグリセリド(ゲルシル(登録商標)44/14)を更に含む、上記1、2、3、4又は5に記載の医薬組成物。
8.硬ゼラチンカプセル剤である、上記1〜7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
9.500mlの溶解媒体中、pH1.5で、欧州薬局方に準拠してパドル装置を用いて50rpmで30分間、その後200rpmで更に30分間測定した場合に、60分後に少なくとも80%のベンダムスチンの溶解を示す、上記1〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
10.500mlの溶解媒体中、pH1.5で、欧州薬局方に準拠してパドル装置を50rpmで用いて測定した場合に、20分後に少なくとも60%、40分後に70%及び60分後に80%のベンダムスチンが溶解する溶解特性を示す、上記1〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
11.前記ベンダムスチンの溶解が30分後に少なくとも80%であること、好ましくは、10分後に少なくとも60%、20分後に70%及び30分後に80%のベンダムスチンが溶解する溶解特性である、上記10に記載の医薬組成物。
12.慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄球性白血病、急性骨髄球性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、乳癌、卵巣癌、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌から選択される医学的状態の治療のために使用される、上記1〜11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
13.少なくとも1種類のさらなる有効薬剤と併用投与され、前記さらなる有効薬剤が前記医薬組成物の投与前、投与と同時又は投与後に与えられ、かつ、CD20に特異的な抗体、アントラサイクリン誘導体、ビンカアルカロイド又はプラチン誘導体からなる群から選択される、上記1〜12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
14.前記CD20に特異的な抗体がリツキシマブであり;前記アントラサイクリン誘導体がドキソルビシン又はダウノルビシンであり;前記ビンカアルカロイドがビンクリスチンであり;かつ前記プラチン誘導体がシスプラチン又はカルボプラチンである、上記13に記載の医薬組成物。
15.少なくとも1種類のコルチコステロイドと併用投与され、前記コルチコステロイドが前記医薬組成物の投与前、投与と同時又は投与後に与えられる、上記1〜14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
16.前記コルチコステロイドがプレドニゾン又はプレドニゾロンである、上記15に記載の医薬組成物。
17.経口投与用医薬組成物であって、有効成分としてのベンダムスチン又はその薬学上許容される塩と、薬学上許容される賦形剤とを含み、前記薬学上許容される賦形剤が、薬学上許容される非イオン性親水性界面活性剤であり、該非イオン性親水性界面活性剤が、プロピレングリコールジカプリロカプレート(ラブラファック(登録商標)PG)、プロピレングリコールモノラウレート(ラウログリコール(登録商標)90)、リノレオイルマクロゴールグリセリド(ラブラフィル(登録商標)M2125)、オレオイルマクロゴールグリセリド(ラブラフィル(登録商標)M1944CS)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(トランスクトール(登録商標))、プロピレングリコールカプリレート(Capryol(登録商標)PGMC)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリソルベート20(Tween(登録商標)20)、マクロゴールグリセリルココエート(cocoate)(Glycerox(登録商標)HE)、ポロキサマー105(プルロニック(登録商標)L35)、ポロキサマー184(プルロニック(登録商標)L64)、ポリソルベート40(Tween(登録商標)40)、マクロゴール15ヒドロキシステアレート(ソルトール(登録商標)HS15)、及びマクロゴール23ラウリルエーテル(Brij(登録商標)L23)からなる群から選択されることを特徴とする、経口投与用医薬組成物。
18.前記有効成分が、ベンダムスチン塩酸塩である、請求項17に記載の医薬組成物。
19.10〜1000mgの前記有効成分を含む、上記17又は上記18に記載の医薬組成物。
20.コロイド状二酸化ケイ素を更に含む、上記17、18又は19に記載の医薬組成物。
21.ラウロイルマクロゴールグリセリド(ゲルシル(登録商標)44/14)を更に含む、上記17、18又は19に記載の医薬組成物。
22.硬ゼラチンカプセル剤である、上記17〜21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
23.500mlの溶解媒体中、pH1.5で、欧州薬局方に準拠してパドル装置を用いて50rpmで30分間、その後200rpmで更に30分間測定した場合に、60分後に少なくとも80%のベンダムスチンの溶解を示す、上記17〜22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
24.500mlの溶解媒体中、pH1.5で、欧州薬局方に準拠してパドル装置を50rpmで用いて測定した場合に、20分後に少なくとも60%、40分後に70%及び60分後に80%のベンダムスチンが溶解特性を示す、上記17〜22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
25.前記ベンダムスチンの溶解が、30分後に少なくとも80%である、上記24に記載の医薬組成物。
26.慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄球性白血病、急性骨髄球性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、乳癌、卵巣癌、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌から選択される医学的状態の治療のために使用される、上記17〜25のいずれか一項に記載の医薬組成物。
27.少なくとも1種類のさらなる有効薬剤と併用投与され、前記さらなる有効薬剤が前記医薬組成物の投与前、投与と同時又は投与後に与えられ、かつ、CD20に特異的な抗体、アントラサイクリン誘導体、ビンカアルカロイド又はプラチン誘導体からなる群から選択される、上記17〜26のいずれか一項に記載の医薬組成物。
28.前記CD20に特異的な抗体が、リツキシマブであり、前記アントラサイクリン誘導体が、ドキソルビシン又はダウノルビシンであり、前記ビンカアルカロイドが、ビンクリスチンであり、かつ前記プラチン誘導体が、シスプラチン又はカルボプラチンである、上記27に記載の医薬組成物。
29.少なくとも1種類のコルチコステロイドと併用投与され、前記コルチコステロイドが、前記医薬組成物の投与前、投与と同時又は投与後に与えられる、上記17〜28のいずれか一項に記載の医薬組成物。
30.前記コルチコステロイドが、プレドニゾン又はプレドニゾロンである、上記29に記載の医薬組成物。
図1