【実施例】
【0055】
1.カプセル製剤
参考例1:ベンダムスチンカプセル製剤(従来技術)
20.0±1mgのベンダムスチン塩酸塩を空の硬ゼラチンカプセルのボディに秤り入れ、それをAgilentのクリアガラスHPLCバイアル(6ml)に入れた。ボディの上にキャップをのせて軽く押すことによってカプセルを閉じた。
【0056】
カプセルを40℃/75%RH(開けたガラスバイアル)又は50℃(閉じたガラスバイアル)で貯蔵した。ベンダムスチン塩酸塩及び関連物質の量をHPLC(カラム:Zorbax Bonus−RP、5μm;カラムオーブン温度:30℃;オートサンプラー温度:5℃;検出器:254nm)で測定した。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
*1:NP1:4−[6−(2−クロロエチル)−3,6,7,8−テトラ−ヒドロ−3−メチル−イミダゾ[4,5−h]−[1,4]ベンゾチアジン−2−イル]ブタン酸
BM1ダイマー:4−{5−[N−(2−クロロエチル)−N−(2−{4−[5−ビス(2−クロロエチル)アミノ−1−メチルベンズイミダゾール−2−イル]ブタノイルオキシ}エチル)アミノ]−1−メチルベンズイミダゾール−2−イル}ブタン酸
BM1EE:4−[5−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−1−メチル−ベンズイミダゾ−2−イル]ブタン酸エチルエステル
*2:n.d.:検出不能、すなわち、検出限界外(面積パーセンテージ0.05%未満)
【0058】
参考例2
【表2】
【0059】
1000カプセルのバッチサイズの場合、コロイド状二酸化ケイ素とステアリン酸以外の全ての賦形剤をSomakon容器(5L)に装填した。ベンダムスチンを加え、1000rpm(ワイパー10rpm)で4分間ブレンドを行った。得られたブレンドを0.5mmの篩に通した。容器にブレンドを再装填し、コロイド状二酸化ケイ素を加えた。上記条件で2分間ブレンドを行った。その後、ステアリン酸を加え、ブレンドを1分間続けた。続いてブレンドを0.5mmの篩に通し、容器に再装填し、全て同一の条件で更に30秒間ブレンドした。
【0060】
ブレンドをカプセル充填機(Zanassi AZ 5)に移し、硬ゼラチンカプセル(サイズ2)(平均質量:259.5mg(初め)〜255.3mg(終わり))及びヒプロメロースカプセル(サイズ2)(平均質量:255.8(初め)〜253.4mg(終わり))にそれぞれ充填した。カプセル剤を、閉じたガラスバイアル内で40℃/75%RHにて貯蔵した。ベンダムスチン塩酸塩、並びに分解生成物、合成副生成物のような関連物質の量をHPLCで測定した(カラム:Zorbax Bonus−RP、5μm;カラムオーブン温度:30℃;オートサンプラー温度:5℃;検出器:254nm)。結果を表2b(ヒプロメロースカプセルに充填)及び2c(ゼラチンカプセルに充填)に示す。
【0061】
【表3】
*3:主ピークに比べて0.65の相対保持時間の未同定化合物ピーク
【0062】
【表4】
【0063】
参考例3
【表5】
【0064】
1000カプセルの場合、コロイド状二酸化ケイ素とステアリン酸以外の全ての賦形剤をSomakon容器(5L)に装填した。ベンダムスチンを加え、1000rpm(ワイパー10rpm)で4分間ブレンドを行った。得られたブレンドを0.5mmの篩に通した。容器にブレンドを再装填し、コロイド状二酸化ケイ素を加えた。上記条件で2分間ブレンドを行った。その後、ステアリン酸を加え、ブレンドを1分間続けた。続いてブレンドを0.5mmの篩に通し、容器に再装填し、全て同一の条件で更に30秒間ブレンドした。
【0065】
ブレンドをカプセル充填機(Zanassi AZ 5)に移し、硬ゼラチンカプセル(サイズ2)(平均質量:257.9mg(初め)〜255.2mg(終わり))及びヒプロメロースカプセル(サイズ2)(平均質量:261.1(初め)〜257.8mg(終わり))にそれぞれ充填した。カプセル剤を、閉じたガラスバイアル内で40℃/75%RHにて貯蔵した。ベンダムスチン塩酸塩及び関連物質の量を上記のようにHPLCで測定した。結果を表3b(ヒプロメロースカプセルに充填)及び3c(ゼラチンカプセルに充填)に示す。
【0066】
【表6】
【0067】
【表7】
【0068】
参考例4
【表8】
【0069】
1000カプセルの場合、コロイド状二酸化ケイ素とステアリン酸マグネシウム以外の全ての賦形剤をSomakon容器(2.5L)に装填した。ベンダムスチンを加え、1000rpm(ワイパー10rpm)で4分間ブレンドを行った。得られたブレンドを0.5mmの篩に通した。容器にブレンドを再装填し、コロイド状二酸化ケイ素を加えた。上記条件で2分間ブレンドを行った。その後、ステアリン酸マグネシウムを加え、ブレンドを1分間続けた。続いてブレンドを0.5mmの篩に通し、容器に再装填し、全て同一の条件で更に30秒間ブレンドした。
【0070】
ブレンドをカプセル充填機(Zanassi AZ 5)に移し、硬ゼラチンカプセル(サイズ2)(平均質量:241.3mg(初め)〜244.mg(終わり))及びヒプロメロースカプセル(サイズ2)(平均質量:243.5(初め)〜243.mg(終わり))にそれぞれ充填した。カプセル剤を、閉じたガラスバイアル内で40℃/75%RHにて貯蔵した。ベンダムスチン塩酸塩及び関連物質の量を上記のようにHPLCで測定した。結果を表4b(ヒプロメロースカプセルに充填)及び4c(ゼラチンカプセルに充填)に示す。
【0071】
【表9】
【0072】
【表10】
【0073】
実施例1
【表11】
【0074】
0.68gのメチルパラベン、0.068gのプロピルパラベン及び0.068gのブチルヒドロキシトルエンを秤量し、6.14gのエタノールに溶解させた。クレモフォール(登録商標)RH 40を十分な量で40℃にて融解した。得られた5.56gのエタノール溶液、36.83gの融解クレモフォール(登録商標)RH 40及び202.82gのプルロニック(登録商標)L44 NFを秤量し、混合物が透明になるまで機械的撹拌機を用いて800rpmで混合した。この混合物を10℃に置くことによって凝固させた。次に、凝固したブレンドに、手で撹拌することによって24.80gのベンダムスチン塩酸塩を加え、その後、Ultraturrax T18高速ホモジナイザーを用いて15500rpmで10分間ホモジナイゼーションを行うことによりそのブレンド全体に分布させた。CFS 1200カプセル充填及び密封機を用い、25℃で操作してホモジナイズ懸濁液を硬ゼラチンカプセルに充填した。カプセルを閉じて密封した。
【0075】
液体充填カプセル剤をねじ込みプラグ付きの閉じた琥珀色ガラス瓶内で40℃/75%RH、30℃/65%RH、25℃/60%RH及び5℃にて貯蔵した。ベンダムスチン塩酸塩、並びに分解生成物、合成副生成物のような関連物質の量をHPLCで測定した(カラム:Zorbax Bonus−RP、5μm;カラムオーブン温度:30℃;オートサンプラーの温度:5℃;検出器:254nm)。結果を表5bに示す。
【0076】
【表12】
【0077】
実施例2
【表13】
【0078】
0.68gのメチルパラベン、0.068gのプロピルパラベン及び0.068gのブチルヒドロキシトルエンを秤量し、6.14gのエタノールに溶解させた。クレモフォール(登録商標)RH 40を十分な量で40℃にて融解した。得られた5.56gのエタノール溶液及び、239.65gの融解クレモフォール(登録商標)RH 40を秤量し、混合物が透明になるまで機械的撹拌機を用いて800rpmで混合した。この混合物を凝固させ、室温に冷ました。次に、凝固したブレンドに、手で撹拌することによって24.80gのベンダムスチン塩酸塩を加え、その後、Ultraturrax T18高速ホモジナイザーを用いて15500rpmで10分間ホモジナイゼーションを行うことによりそのブレンド全体に分布させた。CFS 1200カプセル充填及び密封機を用い、40℃で操作してホモジナイズ懸濁液を硬ゼラチンカプセルに充填した。カプセルを閉じて密封した。
【0079】
このようにして得られた液体充填カプセル剤をねじ込みプラグ付きの閉じた琥珀色ガラス瓶内で40℃/75%RH、30℃/65%RH、25℃/60%RH及び5℃にて貯蔵した。ベンダムスチン塩酸塩、並びに分解生成物、合成副生成物のような関連物質の量を上記のようにHPLCで測定した。結果を表6bに示す。
【0080】
【表14】
【0081】
実施例3
【表15】
【0082】
0.68gのメチルパラベン、0.068gのプロピルパラベン及び0.068gのブチルヒドロキシトルエンを秤量し、6.14gのエタノールに溶解させた。クレモフォール(登録商標)RH 40を十分な量で40℃にて融解した。得られた5.56gのエタノール溶液、36.83gの融解クレモフォール(登録商標)RH 40及び202.82gのソフチサン(登録商標)645を秤量し、混合物が透明になるまで機械的撹拌機を用いて800rpmで混合した。この混合物を10℃に置くことによって凝固させた。次に、凝固したブレンドに、手で撹拌することによって24.80gのベンダムスチン塩酸塩を加え、その後、Ultraturrax T18高速ホモジナイザーを用いて15500rpmで10分間ホモジナイゼーションを行うことによりそのブレンド全体に分布させた。CFS 1200カプセル充填及び密封機を用い、30℃で操作してホモジナイズ懸濁液を硬ゼラチンカプセルに充填した。カプセルを閉じて密封した。
【0083】
液体充填カプセル剤をねじ込みプラグ付きの閉じた琥珀色ガラス瓶内で40℃/75%RH、30℃/65%RH、25℃/60%RH及び5℃にて貯蔵した。ベンダムスチン塩酸塩、並びに分解生成物、合成副生成物のような関連物質の量を上記のようにHPLCで測定した。結果を表7bに示す。
【0084】
【表16】
【0085】
実施例4
物理化学的に安定な製剤を得るのに好適な油性懸濁液に基づくLFHC製剤を調製した。以下、液体充填硬カプセル剤(LFHC)の製剤開発を、製剤開発及び安定性プログラム中のこれらの製品の分析評価とともに表す。
【0086】
最終的なLFHCの試験した特徴は、外観、溶解速度、並びに種々の条件下で少なくとも3か月間の物理的及び化学的安定性を含んだ。
【0087】
水とLiCapsカプセル剤皮の間の強い不適合性のために、硬ゼラチンカプセルの充填に好適な一連の代替油性ビヒクル中のベンダムスチン塩酸塩の挙動を評価した。この種の油に加えたベンダムスチン塩酸塩の大部分は、溶解ではなくむしろ懸濁されることが判明した。従って、製剤開発に用いる賦形剤はベンダムスチン塩酸塩懸濁液のための担体であると考えられた。また、各担体に溶解したベンダムスチン塩酸塩の量を測定するための分析法も開発した。
【0088】
使用担体はまず、それらの、ベンダムスチン塩酸塩及びLiCapsの両方との物理化学的適合性に従って、及び安定製剤と速い溶解の両方を可能とするそれらの能力に従って選択及び特性決定を行った。
【0089】
ベンダムスチン塩酸塩の懸濁を助けるために、室温で低粘度の担体には増粘剤の必要も考慮した。
【0090】
種々の相対湿度条件での製剤のロバスト性を評価するためには、担体水分含量の影響(ベンダムスチン塩酸塩及びカプセル剤皮の双方に対する)の評価が必要であると思われた。この目的で、水吸/脱着分析を行い、安定性試験の際の製剤挙動を推定するために各担体に関してそれらの吸湿性の傾向を求めた。
【0091】
懸濁液の安定性に対するベンダムスチン塩酸塩濃度の影響を、ベンダムスチン塩酸塩/担体比を高めたバッチを製造することによって評価した。
【0092】
物理的にエージングした担体などの低純度級の担体は、製剤の安定性に影響を及ぼす可能性があり、この側面を、バッチ製造においてエージング担体を用いて検討した。
【0093】
製造された全てのバッチを3ヶ月間、周囲安定保持(stability)条件及び加速安定保持条件下に置き、下記の事項を評価した。
・アッセイ
・純度
・外観
・pH1.5での溶解
【0094】
各担体に溶解し得るベンダムスチン塩酸塩の量を測定するために試験並びに溶解後のLFHC挙動の視覚的評価を行った。
【0095】
担体の水分含量並びにその吸湿性は、製剤の物理化学的安定性に影響を及ぼし得る。水分含量が高いと、その感受性のためにベンダムスチン塩酸塩が分解する可能性があり、一方、吸湿性担体はカプセル剤皮に損傷を与え、その脆性を高める可能性がある。それらの水分含量を高め、貯蔵中のそれらの挙動を推定するために、選択された担体に対して水吸/脱着分析を行った。更に、2つの異なる担体の水分含量を人為的に変更し、これらをバッチ製造で用いた。
【0096】
安定性に対する調製の初期段階から物理的に安定な懸濁液を確認するために、バッチ製造において、低粘度担体を、視覚的沈降現象を回避するために好適な最少量の増粘剤と併用した。ケイ素粉末(エアロシル(登録商標))と40℃より高い融点を有する半固体マトリックス(ゲルシル(登録商標)44/14)の2つの異なる種類の増粘剤を用いた。
増粘剤を含まない同じ担体も試験し、得られた製剤を上記の製剤と比較した。
【0097】
これまでに開発された製剤よりもベンダムスチン塩酸塩が高濃度の懸濁液の、物理的安定性及び溶解に関する挙動を評価するために、2つの異なる担体に関して2つの異なるベンダムスチン塩酸塩/担体比を評価した。
【0098】
2つの異なる担体に対して、起こり得る「エージング」現象を加速化するために人為的処理を施し、低純度の担体の製剤の安定性に対する影響を評価するためにバッチ製造に用いた。
【0099】
ビヒクル中に溶解したベンダムスチン塩酸塩は、懸濁したものよりも化学的分解に曝されやすい。安定保持中に起こり得るベンダムスチン塩酸塩の分解を確認するために、ベンダムスチン塩酸塩及び油により可溶化される関連不純物の実際の量を定量するための分析法を開発した。
【0100】
速い溶解はLFHCの最も重要な特徴の1つである。カプセル剤の製造に使用される油のいくつかは水との混和性が低いため、in vitro溶解の際の懸濁液の挙動の視覚的外観は、製造された懸濁液の種々の物理的側面を明らかにするために、また、対応するin vivo挙動を推定するために役立つことが分かった。
【0101】
実験の部
【表17】
【0102】
【表18】
(
*)公定格の名称に相当するものではないと考えられる。
(
**)「そのまま」の製品に対してHoeppler法で測定。
(
-)ヘプラー(Hoeppler)法で測定した水溶液の粘度:20〜40mPa/s。
(
+)30〜35℃で得ることのできる粘度:500〜600mPa/s。
【0103】
【表19】
*:文献からのデータ
【0104】
バッチの製造
異なる分類の懸濁液を製造し、続いてサイズ0のLiCaps(登録商標)カプセルに充填した。
【0105】
増粘剤を含む低粘度及び中粘度担体
製剤の安定性に対する粘度改良剤の効果を評価するために、下記の配合に従って一連の有効バッチを製造した。
・ベンダムスチン塩酸塩
・低粘度担体
・エアロシル(登録商標)又はゲルシル(登録商標)44/14(増粘剤)
上記配合に添加する増粘剤の好適な量を決定するための方法を見出すために種々の試験を行った。開発された方法に従い、懸濁液に添加する増粘剤の量を、ベンダムスチン塩酸塩を懸濁状態で維持し、その沈降を回避するのに十分な粘稠な液体製剤を得るために好適な最少量として評価した。添加する増粘剤の量は、担体の最初の粘度に強く関連することが分かった。開発された製剤のベンダムスチン塩酸塩:担体比は全て同じであった(約1:10)。
【0106】
増粘剤を含まない低粘度及び中粘度担体
ベンダムスチン塩酸塩沈降の影響及び間接的に粘度改良剤の効果を評価するために、下記の配合に従って低粘度担体を採用することによって種々のLFHC有効バッチを製造した。
・ベンダムスチン塩酸塩
・低粘度担体
開発された製剤のベンダムスチン塩酸塩:担体比は全て同じであった(約1:10)。
【0107】
高粘度担体
製剤中のベンダムスチン塩酸塩の化学安定性に対する温度の効果を評価するために、30℃を超える融点を有する種々の半固体担体をLFHC有効バッチの製造に用いた。
評価のため、下記の標準配合に従って懸濁液を製造した。
・ベンダムスチン塩酸塩
・高粘度担体
開発された製剤のベンダムスチン塩酸塩:担体比は全て同じであった(約1:10)。
【0108】
ベンダムスチン塩酸塩/担体比
最終製品の安定性に対する懸濁液中のベンダムスチン塩酸塩濃度の効果を評価するために、2つの異なる種類の担体を用いて2つの異なるベンダムスチン塩酸塩/担体比を検討した。
【0109】
2種類の懸濁液について代表的なデータを得るために、低粘度と高粘度の両分類の担体の中で担体の選択を行った。低粘度担体を含む製剤は、懸濁液の物理的安定性を確保するために粘度改良剤を含んだ。
【0110】
評価のために下記の標準配合に従って懸濁液を製造した。
・ベンダムスチン塩酸塩
・担体
【0111】
担体純度:「エージング」工程
2つの異なる担体を開放したガラス瓶に入れ、約5日間
・人工光
・大気中の酸素
・それらの表面における圧縮空気流
に曝した。これらの担体を下記の配合に従ってバッチ製造に用いた。
・ベンダムスチン塩酸塩
・エージング担体
開発された製剤のベンダムスチン塩酸塩:担体比は全て同じであった(約1:10)。
【0112】
水分含量を変更した担体
ベンダムスチン塩酸塩の安定性に対する担体の水取り込みの効果を評価するために、担体をより吸湿性の高いものから選択した。各担体について2つの異なる水分レベルを得るために、2種類の担体を蓋のないガラスビーカーに分注し、下記の条件に置いた。
・25℃/75%RH
・25℃/100%RH
水分含量を上記のように変更した担体を、下記の配合に従ってバッチ製造に用いた。
・ベンダムスチン塩酸塩
・水分含量を変更した担体
開発された製剤のベンダムスチン塩酸塩:担体比は全て同じであった(約1:10)。
【0113】
担体におけるベンダムスチン塩酸塩の溶解度
ビヒクルに加えたベンダムスチン塩酸塩の部分が溶解しているかどうかを判定する必要があるので、起こり得る分解を確認するために、サンプル調製からその分析までの分析手順を開発した。
【0114】
液体油に関するサンプル調製
本質的にこれは油中のベンダムスチン塩酸塩過飽和溶液の作製からなった。すなわち、容器の底に固体粒子の沈降を形成するのに好適な最少量のベンダムスチン塩酸塩を40℃に温めた油中に加え、この溶液を室温で数日(約4日)間磁気撹拌し、その後、3000rpmで15分間遠心分離した。上清をHPLCにより、ベンダムスチン塩酸塩検量線用標準の溶液(0.551mg/ml)に対して分析した。
【0115】
半固体ビヒクルに関するサンプル調製
本質的にこれはビヒクル中のベンダムスチン塩酸塩過飽和溶液の作製からなった。すなわち、容器の底に固体粒子の沈降を形成するのに好適な最少量のベンダムスチン塩酸塩を、その融点より5℃高い温度に加熱した油に加え、この溶液をこの温度で一晩、静止状態で維持し、底に沈降させた。上清をHPLCにより、API検量線用標準の溶液(0.551mg/ml)に対して分析した。
【0116】
溶解試験中の視覚的外観
分析カプセル剤の溶解試験の終了時に溶解容器及びビーカーの一連の写真を撮影した。
写真の他、容器中の溶液の外観の簡単な視覚的記述を報告した。
【0117】
安定性試験
全ての製造バッチを下記の貯蔵条件(表10)で琥珀色のガラス瓶中、安定な状態に置いた。
【0118】
【表20】
【0119】
結果及び考察
低粘度及び中粘度担体と増粘剤を用いて製造したバッチ
ビヒクルの製造
視覚的評価の後に物理的に安定な懸濁液に好適なビヒクルを得るために低粘度油性賦形剤に添加するための増粘剤の最少量を調べることを目的に、種々の試験を行った。
【0120】
この第一段階では、ソフチサン(登録商標)645を除き、表9に報告した全ての液体賦形剤を用いた。
【0121】
増粘剤としてエアロシル(登録商標)を用いて得られるビヒクルは、油中粉末の粗大懸濁液をホモジナイズしてコロイド分散液を得ることによって製造した。このようにして得られたビヒクルの大部分は、温度変動よりもむしろ適用されるずり応力に大きく依存してそれらの粘度を変化させることができるチキソトロピー材料であった(表11参照)。この挙動により、カプセル充填工程中のベンダムスチン塩酸塩への温度ストレスが回避できる。
【0122】
増粘剤としてゲルシル(登録商標)44/14を用いて得られるビヒクルは、成分の混合物をホモジナイズして、室温で凝固する透明な液体を得ることによって製造した。このようにして得られたビヒクルは、温度変動に応じてそれらの粘度を変化させることができる半固体又は固体マトリックス(増粘剤の濃度による)であった。製造した全ビヒクルを表11に示す。
【0123】
粘度に基づいてスクリーニングを行うために、また、ベンダムスチン塩酸塩を含む懸濁液中での挙動を推定するために、調製した全サンプルに対して視覚的評価を行った。行った評価によれば、チキソトロピー性でありかつ半固体のサンプルのみが好適であるとみなされ、次のプラセボ懸濁液製造工程に用いた。
【0124】
【表21】
【0125】
ベンダムスチン塩酸塩を含有するバッチの調製
8種類のビヒクルを更に検討し、ベンダムスチン塩酸塩含有LFHC製剤の調製に使用した。製造した全バッチの組成を、0時間における対応する分析結果とともに表12a、b及びcに報告する。
【0126】
バッチは、増粘剤(エアロシル(登録商標))を担体に加えた後、このようにして得られた混合物をホモジナイズすることによって製造することを意図した。その後、ベンダムスチン塩酸塩を加えた後にホモジナイズした。得られた混合物をLiCaps(登録商標)カプセルに充填した。1バッチ(D001L/035)についてのみ、この製造方法を用いた。というのも、ベンダムスチンを加えた後の2回目のホモジナイゼーション工程の結果、懸濁液の粘度が著しく高まったことから、その後の充填工程に問題が生じた。このためにこの懸濁液はゼラチンカプセルに手で充填し、カプセル充填及び密封機CFS 1200によって密封した。
【0127】
従って、これらのバッチの製造方法を至適化したところ、下記の製造方法が得られた。これらのバッチは、増粘剤(エアロシル(登録商標))を担体に加えることによって製造した。その後、ベンダムスチン塩酸塩を加えた後にホモジナイズした。得られた混合物をLiCaps(登録商標)カプセルに充填した。
【0128】
【表22】
【0129】
【表23】
【0130】
【表24】
【0131】
上記の製造方法に従って、1バッチ(D001L/036)のみを調製した。というのも、この場合にも、ベンダムスチン塩酸塩を担体に加えた後、ホモジナイゼーション前に懸濁液の粘度の著しい増大が見られた。そのため、ホモジナイゼーションは実施しなかった。恐らく、この工程中にベンダムスチン塩酸塩とエアロシル(登録商標)の間に何らかの物理的相互作用が起こったものと思われた。この懸濁液はカプセルに充填しなかった。
【0132】
製造工程を次のように更に至適化した。すなわち、ベンダムスチンを担体に加え、このようにして得られた混合物をホモジナイズした。その後、撹拌下で増粘剤(エアロシル(登録商標))を粘稠な液体懸濁液を得るために好適な最少量で加えた。このようにしてバッチD001L/037〜D001L/049及びバッチD001l/052を調製した。バッチD001L/038とD001L/052(低粘度の懸濁液)を除き、他の全ての懸濁液は高粘度の液体であったことからゼラチンLiCapsに手で充填した。添加する最少量のエアロシル(登録商標)は担体の最初の粘度によって異なった。
【0133】
増粘剤としてゲルシル(登録商標)44/14を加えたバッチに対して提案される製造方法は、増粘剤を担体に加える工程及びこのようにして得られた混合物をホモジナイズする工程を含んだ。その後、ベンダムスチンを加え、このようにして得られた混合物をLiCaps(登録商標)カプセルに充填する前に再びホモジナイズした。この製造方法に従って、バッチ番号D001L/049、050、053、085及び086を調製した。全ての懸濁液が室温で半固体マトリックスであり、温度が上昇するとそれらの粘度の低下を示した。CFS1200によって用量分配したバッチD001L/085及びD001L/086を除き、製造した懸濁液は全てゼラチンLicapsに手で充填した。
【0134】
担体の最初の粘度に応じて、室温で半固体であり、約35℃で液体であるビヒクルを得るために製造に用いたゲルシル(登録商標)44/14の量を決定した。
【0135】
LiCapsに充填した全てのバッチを下記に関して分析した。
・ベンダムスチン含量
・不純物及び
・pH1.5におけるベンダムスチンの溶解特性
【0136】
カプセルの手による充填後に見られた大きな重量変動のため、D001L/085及び086以外には含量均一性試験を実施しなかった。
【0137】
増粘剤を含まずに低粘度及び中粘度担体を用いて製造したバッチ
更に、低粘度の担体を、下記の製造方法に従ってベンダムスチン含有懸濁液の調製に用いた。すなわち、ベンダムスチンを、増粘剤を含まずに担体に加え、その混合物をホモジナイズした後にLiCapsに充填した。この種の担体を使用することにより、いくつかのLFHC製剤を製造した。懸濁液は全て低粘度であるため、カプセル充填及び密封機CFS 1200でsLiCapsに充填することができた。製造された全てのバッチの組成を0時間における対応する分析結果とともに表13a、b及びcに報告する。
【0138】
全ての製剤で沈降が見られ、最終生成物の物理化学的安定性に対するその影響を、安定性試験前、試験中及び試験後に報告される分析試験を実施することにより評価した。この安定性試験期間中、時々カプセルを逆転させ、固化を防いだ。
【0139】
【表25】
【0140】
【表26】
【0141】
【表27】
【0142】
【表28】
【0143】
【表29-1】
【表29-2】
【0144】
【表30-1】
【表30-2】
【0145】
【表31-1】
【表31-2】
【0146】
【表32-1】
【表32-2】
【0147】
【表33-1】
【表33-2】
【0148】
【表34-1】
【表34-2】
【0149】
【表35-1】
【表35-2】
【0150】
【表36-1】
【表36-2】
【0151】
高粘度担体を用いて製造したバッチ
調製の初期段階から貯蔵寿命までの温度の影響を評価するために、ベンダムスチン塩酸塩含有製剤の調製に用いるための室温で半固体又は固体であり、かつ高粘度を有する担体を選択した。高粘度担体を表14に挙げる。
【0152】
【表37】
【0153】
製造した全バッチの組成を、分析試験の結果を含めて表15a及び15bに報告する。
ベンダムスチン塩酸塩を含有するLFHC製剤に対して提案される製造方法は、ベンダムスチン塩酸塩を融解した担体に加え、その混合物をホモジナイズし、その混合物を、25℃を越える温度でLiCaps(登録商標)カプセルに充填することであった。これらの懸濁液は室温で半固体又は固体であり、従って、これらはカプセル充填及び密封機CFS 1200を用い、それらの融点に応じたある特定の温度範囲内でLiCaps(登録商標)カプセルに充填する必要があることが分かった(表14参照)。これらの担体は室温で高粘度であるため、これらの懸濁液中で沈降は見られなかった。
【0154】
【表38】
【0155】
他の全ての担体についても、表15aに挙げられている担体の場合と同じベンダムスチン塩酸塩:担体比を用いた。
【0156】
【表39】
【0157】
【表40-1】
【表40-2】
【0158】
【表41-1】
【表41-2】
【0159】
【表42-1】
【表42-2】
【0160】
【表43-1】
【表43-2】
【0161】
【表44-1】
【表44-2】
【0162】
【表45-1】
【表45-2】
【0163】
【表46-1】
【表46-2】
【0164】
【表47-1】
【表47-2】
【0165】
【表48-1】
【表48-2】
【0166】
【表49-1】
【表49-2】
【0167】
【表50-1】
【表50-2】
【0168】
【表51-1】
【表51-2】
【0169】
【表52-1】
【表52-2】
【0170】
【表53-1】
【表53-2】
【0171】
【表54-1】
【表54-2】
【0172】
【表55-1】
【表55-2】
【0173】
【表56-1】
【表56-2】
【0174】
【表57-1】
【表57-2】
【0175】
【表58-1】
【表58-2】
【0176】
【表59-1】
【表59-2】
【0177】
ベンダムスチン塩酸塩/担体比を変更して製造したバッチ
最終生成物の安定性に対する懸濁液中のベンダムスチン塩酸塩濃度の効果を評価するために、2つの異なる担体を用いて2つの異なるベンダムスチン塩酸塩/担体比を検討した。
【0178】
それぞれ低粘度及び高粘度を有するミグリオール(登録商標)812及びソフチサン(登録商標)649を本試験に好適なものとして選択した。ミグリオール(登録商標)812を含む製剤は、懸濁液の物理的安定性を確保するために粘度改良剤としてエアロシル(登録商標)を含んだ。
【0179】
ベンダムスチン塩酸塩含有LFHCバッチの組成と0時間における対応するそれらの分析結果を表16a及びbに報告する。
【0180】
【表60】
【0181】
バッチ番号D001L/070及び073は、ベンダムスチン塩酸塩を担体に加えた後にホモジナイズし、その後、この混合物に粘稠な液体懸濁液を得るのに好適な最少量の増粘剤を加えることにより製造し、これはLiCaps(登録商標)カプセルに手で充填した。
【0182】
API/担体比は、懸濁液の最終量にかかわらず、最初に確定した。増粘剤は添加した量のAPIを懸濁させる限りで有用であった。
【0183】
バッチ番号D001L/071及び072は、融解した担体にベンダムスチン塩酸塩を加え、その混合物をホモジナイズし、それを充填及び密封機CFS1200を用いてLiCaps(登録商標)カプセルに充填することによって製造した。ベンダムスチン塩酸塩/担体比は、懸濁液の最終量にかかわらず、最初に確定した。
【0184】
【表61】
*API面積に対して計算した値
【0185】
エージングした担体を用いて製造したバッチ
担体エージング手順
ラブラフィル(登録商標)M1944 CS及びプルロニック(登録商標)L44 NF INHを開放した透明なガラス瓶に入れ、約5日間
・人工光
・大気中の酸素
・それらの表面における圧縮空気流
に曝した。
【0186】
有効バッチの製造
エージングしたラブラフィル(登録商標)M1944 CS及びプルロニック(登録商標)L44 NF INHをベンダムスチン塩酸塩含有製剤の調製に用いた(表17aのバッチD001L/074及びD001L/079)。これらのバッチは、エージングした担体にベンダムスチン塩酸塩を加えた後、ホモジナイズすることによって製造した。それらは好適な粘度であったため、全ての懸濁液をカプセル充填及び密封機CFS 1200を用いてLiCaps(登録商標)カプセルに充填することができた。
【0187】
【表62】
【0188】
0時間における分析結果を表17bに報告する。
【0189】
【表63】
【0190】
水分含量を変更した担体を用いて製造したバッチ
担体選択の原理
水分含量試験のために、それらの水吸/脱着特性に従って担体の選択を行った。ベンダムスチン塩酸塩の安定性に対する、担体による水取り込みの効果を評価するために、より高い吸湿性を示したものの中から担体を選択した。
【0191】
この目的で、Surface Measurement SystemsからのDynamic Vapour Sorption装置を用いて試験を行った。この装置は、温度制御キャビネット内に収容されたCahnマイクロバランスからなる。実験条件は以下の通りであった。
・温度:25℃
・開始時のRH:10%
・開始時のサイズ:10%
・次工程の条件:dm/dt(%/分)<0.002%又は360分後
・最大RH:80%
・方法:フルサイクル(10%RHから80%RH、10%に戻る)
・パージガス:窒素
・ガス流速:200ml/分
【0192】
検討後、賦形剤は次の3つのカテゴリーに分類することができた。
・低吸湿性:80%RHで吸着≦1%
・中吸湿性:80%RHで吸着>1%かつ≦5%
・高吸湿性:80%RHで吸着>5%
結果は、表18参照。
【0193】
【表64】
【0194】
クレモフォール(登録商標)A6及びプルロニック(登録商標)L44 NF INHは、この目的で最も好適な担体であると考えられた。。
トランスクトール(登録商標)HPは、25℃で蒸発したため、水分吸着は評価できなかった。
【0195】
水分含量増加手順
担体ごとに2つの異なる水分レベルを得るために、各担体のサンプルを開放したガラスビーカーに分注し、下記の条件下で維持した。
・25℃/75%RH
・25℃/100%RH
【0196】
一番目の条件は人工気候チャンバーで達成し、二番目の条件は、プラットフォームの下の空間に蒸留水を満たした真空デシケーターで達成した。サンプルは、撹拌せずに静置条件で貯蔵した。
【0197】
貯蔵2日後、カールフィッシャー滴定によって測定したところ、担体は下記の湿度値に達していた(表19)。
【0198】
【表65】
【0199】
有効バッチの製造
水分含量を上記のように変更したクレモフォール(登録商標)A6及びプルロニック(登録商標)L44 NF INHを、ベンダムスチン塩酸塩含有バッチの調製に用いた(クレモフォール(登録商標)についてはD001L/075及びD001L/076、並びにプルロニック(登録商標)についてはD001L/080及びD001L/081)。
【0200】
全ての懸濁液を、カプセル充填及び密封機CFS 1200を用いてLiCaps(登録商標)カプセルに充填することができた。しかしながら、クレモフォール(登録商標)A6は、25℃で半固体の物理的状態であったため、それを懸濁液の調製に用いる前に50℃に加熱しなければならなかった。クレモフォール(登録商標)A6含有バッチは、融解した担体にベンダムスチン塩酸塩を加えた後にホモジナイズし、そのバッチを高温(約55℃)でLiCaps(登録商標)カプセルに充填することによって製造した。
【0201】
プルロニック(登録商標)L44 INH NF含有バッチは、ベンダムスチン塩酸塩を担体に加えた後にホモジナイズし、LiCaps(登録商標)カプセルに充填することによって製造した。全てのバッチの組成及び0時間における対応する分析結果を表20a及びbに報告する。
【0202】
【表66】
*水分含量(MC)を変更した担体:
D001L/075:クレモフォールA6 MC=8,74%
D001L/080:プルロニックL44 MC=2,08%
D001L/076:クレモフォールA6 MC=3,68%
D001L/081:プルロニックL44 MC=2,71%
【0203】
【表67】
【0204】
担体中のベンダムスチン塩酸塩の溶解度
下表21.aにおいて、分析結果を、選択された担体の溶液約1gに完全に熔解したベンダムスチン塩酸塩のmgとして表して報告する。
【0205】
【表68】
【0206】
mg及びAPIパーセンテージの計算は下式を用いて行った。
【数1】
【0207】
溶解度評価のためのさらなるサンプルは、撹拌下で、相分離を生ずるのに好適な量の有効成分(API)を所定量の各担体に加えることによって調製した。これらのサンプルは各担体の融点をやや越える温度で調製し(液体ビヒクル以外)、この温度で約5時間(見積もられた製造工程時間)維持した。適用可能であれば、相分離を加速するために各サンプルを遠心分離し、カプセルの充填重量に相当する量(約600mg)の上清を抜き取り、実際に溶解したAPIの量を決定するためのアッセイで評価した。
【0208】
各溶解度値は、カプセルに充填するために設定した値に相当する特定の温度に関連がある(表14参照)。結果を表21.bに報告する。
【0209】
【表69】
【0210】
溶解試験中の視覚的外観
表22a及び22bでは、この目的で選択したLFHCバッチに関して、溶解試験の終了時における容器内の溶液の外観についての簡単な視覚的記述を示している。
【0211】
【表70】
【0212】
【表71】
【0213】
結論(DL001L/001〜092)
上記の結果に基づき、下記の結論を報告することができる。
・エアロシル(登録商標)及びゲルシル(登録商標)44/14は、ベンダムスチン塩酸塩懸濁液のための物理的に安定なビヒクルを得るために、低粘度油に好適な増粘剤とみなすことができる。いくつかの油にエアロシルを添加すると、チキソトロピー性の担体が得られたが、液体の油に溶解したゲルシル44/14は、その物理的状態を、製剤中のその濃度に応じて半固体又は固体に変えた。懸濁液に加える増粘剤の量は、担体の最初の粘度に応じて調整する必要がある。
【0214】
・バッチD001L/051、052、089及び092では、恐らくは使用した担体の高い吸湿性のためにカプセルの高い摩損度が見られた。
【0215】
・3か月の安定保持の後のバッチD001L/052の高い不純物値は、恐らくはベンダムスチン塩酸塩との不適合性のためである。
【0216】
・ベンダムスチン塩酸塩の沈降は、カプセル剤の溶解よりもバッチの含量均一性に大きな影響を及ぼすと思われる。
【0217】
・バッチD001L/054(表12)、D001L/075及び076のカプセル剤は、分析的希釈液にわずかに溶解するだけであることが分かった。実際に、1時間の音波処理の後にも大きな不溶残渣がまだ存在した。これはアッセイの低い値を説明する。これはクレモフォール(登録商標)A6の高粘度とその高融点によるものである可能性がある。
【0218】
・エージングを行ったラブラフィル(登録商標)M1944 CS及びプルロニック(登録商標)L44(D001L/074及びD001L/079)、ソフチゲン(登録商標)701(D001L/077)、並びに水分含量を変更した担体(D001L/075、076、080及び081)に基づくバッチの不純物は、0時間においては制限内であった。40℃で3か月の安定保持の後、バッチD001L/076のみ不純物が制限外であることが分かった。予期しないことに、このデータは、担体の水分含量を高めることがベンダムスチンの安定性に有益であり得ることを示す。第I相治験を裏付けるために実施されたこの安定性試験からの結果は、担体(この場合、クレモフォール(登録商標)RH 40)による水分の取り込みが予想された通りベンダムスチンの安定性に有害であったことを示したことから、これは恐らく変則的な結果であると思われる。
・低粘度担体及び増粘剤としてのエアロシル(登録商標)に基づくバッチ(バッチD001L/035〜D001L/049及びD001L/052)とエアロシル(登録商標)を含まない対応物(バッチD001L/057〜D001L/068及びD001L/078)の溶解挙動を比較することにより、エアロシル(登録商標)がベンダムスチン塩酸塩の溶解時間に影響を及ぼすことが明らかであった。ベンダムスチンは低粘度で増粘剤を含まない担体に速やかに溶解するにもかかわず、貯蔵時のベンダムスチンの沈降を防ぐためにこの担体の粘度を改変した。長期間おける「稠密な」沈降物の形態でのLFHC中のベンダムスチンの溶解特性は、やがて、LFHCが薬品仕様の要件(目標値:30分後にNLT80%)にもはや従わなくなる程度まで変化してしまう可能性が高い。従って、粘度改良剤を除き、一方で溶解特性を改変し、他の代替担体を薬品の調剤に利用可能とすることが、恐らく商業上価値の無いLFHCをもたらしたものと思われる。
・報告された不純物及び溶解の安定性結果によれば、クレモフォール(登録商標)EL、プルロニック(登録商標)L44 NF INH及びクレモフォール(登録商標)RH40が、商業上価値のあるLFHC製剤のために最も好適な担体であると考えられる。しかしながら、クレモフォール(登録商標)ELはカプセル剤皮との不適合性を示し(摩損度の増大)、また、プルロニック(登録商標)L44は室温で液体である。クレモフォール(登録商標)RH 40はゼラチンカプセル剤皮の摩損度を増大させず、かつ、室温で半固体のビヒクルであることから、この極めて粘稠な系におけるベンダムスチン塩酸塩の沈降は考えにくいので、粘度の改変は必要ない。この担体は高粘度であるにもかかわらず、LFHCの溶解特性は目標値である80%を十分越えている。これらの側面は3つの担体候補の間でのさらなる選択のための決定因子となり得る。
・選択された担体中でのベンダムスチン塩酸塩の溶解度は極めて低く、液体又は半固体油性ビヒクル中のベンダムスチン塩酸塩の過飽和溶液において回収されたベンダムスチン塩酸塩は1%未満であった。
・溶解中の視覚的外観は、溶解媒体中でのビヒクルの種々の挙動を強調して表し、その外観は、高いHLB値を有する数種の界面活性剤(クレモフォール(登録商標)A 25など)に特徴的な明澄な溶液から、数種の強親油性マトリックス(ラブラファック(登録商標)PGなど)に特徴的な表面に浮遊している油性液体の懸濁液まで、様々であった。エアロシル(登録商標)を含有するほとんどのカプセル剤は、恐らくは増粘剤の効果のために水で明澄なエマルションを形成した。
【0219】
結論(9DL001l/093〜120)
27のさらなるLFHCバッチを製造し、アルミニウムブリスターに包装し、周囲安定保持条件及び加速安定保持条件下に最大3か月置いた。
【0220】
アッセイ及び含量均一性の値は、製造及び充填装置における懸濁液の処理能力に厳格に依存するが、溶解及び不純物特性は固有の特徴であり、従って、ベンダムスチン塩酸塩の担体として用いる賦形剤の適合性の最終的評価(表9.b)においてより重要であると考えることができる。
【0221】
40℃及び相対湿度75%での安定保持期間の後に得られた結果にはかなりの変動がある。この変動性は恐らく種々の担体の物理化学的特性に関連しているものと思われ、媒体中のビヒクルの恐らくは内因的な低溶解度、又は担体とゼラチンとの不適合性の存在、並びにより高い融点が、半固体又は固体担体を用いて製造されたバッチのカプセル剤の低い溶解を正当化する可能性がある。実際のところ、30分後にはAPIの十分な放出が見られなかったので、製造されたバッチのほとんどについて200rpmでの更に30分の追加工程が必要となった。しかしながら、半固体又は固体担体を含有する数種の製剤(例えば、バッチ番号D001L/107、111、112、115及び116)は、高速点後も低い溶解速度を示した。
【0222】
恐らくは、数種のカプセル剤バッチに含まれる固体及び半固体担体の物理化学的特徴が上記の貯蔵条件において変化した。すなわち、アッセイ評価のためのサンプル調製の終了時にバッチD001L/094、095、102、103、104、106、107、108、111、112、115及び116のカプセル剤がフラスコ内に残した不溶残渣でこの低いアッセイ値を説明することができるのに対し、バッチD001L/102、103、104、112はより高いアッセイ値を示す。
【0223】
不純物特性は、0時間に比べて未知不純物の全般的増加を示した。更に、バッチD001L/097、099、100は、恐らく安定保持時間中の湿度の上昇のために、HP1に関して高レベルを示した。いくつかのバッチ(例えば、D001L/093、094、095、097、098、099、100、101、103、104、106、109、110、111及び113)で、潜在的化学不適合性が高レベルのBM1EEダイマー及び主要な未知不純物を生成した可能性があった。
【0224】
しかしながら、上記のように、製造したバッチのアッセイ、含量均一性及び不純物特性の決定に適用された分析方法は、担体としてクレモフォール(登録商標)RH40を含有するカプセル製剤用に開発され、至適化されたものであった。
【0225】
全てのバッチについて、40℃及び75%RHで3か月後の水分含量は、0時点において得られた結果よりも高い。水分浸透に対して最も好適な包装としてのアルミニウムブリスターを仮定すると、恐らくは剤皮とカプセル内容物の間の水分の再分布が起こった可能性がある。バッチD001L/093〜D001L/104、D001L/106〜D001L/112及びD001L/115〜D001L/119では、この側面も、対応する担体の高い吸湿性を考慮することによって説明することができる。
【0226】
ベンダムスチン塩酸塩単独を充填したカプセルは、0時間に比べて不純物特性及び溶解挙動の変化を示さない。
【0227】
予想されたように、ベンダムスチンHClは、恐らくはその親水性のために、選択された各担体における溶解度が低い。
【0228】
ほとんどのバッチに関して溶解度が低いという結果は、供試したほとんどの賦形剤が、安定で速い溶解を示す液体充填硬カプセル製剤中のベンダムスチンHClのためのビヒクルとして適していないことを示す。
【0229】
2.崩壊及び溶解試験
実施例5
実施例1、2及び3の液体充填カプセル製剤に対する崩壊試験は、崩壊装置Aを用いて37.0℃±0.5℃で操作し、pH=1.0±0.05のバッファー溶液1000.0ml中で行った。結果を表23a、23b及び23cに示す。
【0230】
実施例6
実施例1、2及び3の液体充填カプセル製剤に対する溶解試験は、pH1.5の人工胃酸溶液中で行った(Ph Eur:2.9.3: Dissolution test for solid dosage forms in Recommended Dissolution Media参照)。
【0231】
溶解サンプルに対してHPLC(カラム:Zorbax Bonus−RP、5μm;カラムオーブン温度:30℃;オートサンプラー温度:5℃;検出器:254nm)によるアッセイ試験を行った。pH1.5の人工胃液は、250.0mLの0.2M塩化カリウム0.2Mを1000mL容のフラスコに入れ、207.0mLの0.2M塩酸を加えた後にMilli−Q水で1000mLに希釈することによって調製した。pHを測定し、必要ならば、2N塩酸又は2N水酸化カリウムでpHを1.5±0.05に調整した。
【0232】
欧州薬局方6.0の第2.9.3章に準拠し、装置2(パドル装置)を用いて溶解試験を行った。パドルの回転速度は50rpm、温度は37℃±0.5℃、溶解媒体の量は500mlであった。
【0233】
実施例1、2及び3の液体充填硬カプセル剤の結果を表23a、23b及び23cに示す。
【0234】
【表72】
【0235】
【表73】
【0236】
【表74】
【0237】
上の表23a、23b及び23cから分かるように、本発明の実施例2の液体充填硬カプセル製剤だけが、ベンダムスチンの好ましい速い溶解特性(500mlの人工胃液中、欧州薬局方に準拠してパドル装置を用いて50rpmで測定した場合に10分で少なくとも60%、20分で70%及び30分で80%である)を示す。
【0238】
3.in vivo試験
実施例7
50mgのベンダムスチンを含有する実施例2の液体充填硬カプセル剤を雄と雌のビーグル犬に経口投与し、参考例1のカプセル剤と比較して、1用量(すなわち50mg)のベンダムスチンのバイオアベイラビリティー(AUC及びCmax)を決定し、これらのカプセル製剤のバイオアベイラビリティーにおける変動レベル(すなわちAUC及びCmaxについての%CV)を決定した。さらなる製剤(製剤X)も試験に含めたが、この製剤は本発明の範囲外であるため、詳細は示さない。必要とされる動物の総数は16匹であった。基本的な試験計画は、各処置群につき動物8匹のクロスオーバーデザインとした。
【0239】
【表75】
【0240】
1週間の休薬期間があった。
【0241】
【表76】
【0242】
カプセル製剤(参考例1)と実施例2の液体充填カプセル製剤の両方についての、時間に対する平均血漿特性を
図1に示す。
【0243】
実施例8
癌患者における経口ベンダムスチンの絶対バイオアベイラビリティーを評価するための非盲検無作為化二元配置クロスオーバー試験を行って、経口製剤(実施例2)として投与されたベンダムスチンの絶対バイオアベイラビリティーを評価した。経口及びi.v.投与後の血漿中のベンダムスチンの薬物動態を評価することに加えて、さらなる目的は、実施例2の製剤のi.v.投与、特に経口投与後のベンダムスチンの安全性と耐容性を評価することであった。
ベンダムスチン塩酸塩の液体充填硬カプセル製剤の経口投与後のベンダムスチンのバイオアベイラビリティーを検討するために、計12名の患者を第1相非盲検無作為化二元配置クロスオーバー試験に割り付けた。多発性骨髄腫、B細胞種慢性リンパ性白血病又は進行型緩徐進行性非ホジキンリンパ腫の14名の患者を登録し、ベンダムスチンで処置した。患者は事前に静脈内ベンダムスチンで処置することができたが、試験薬の最初の投与の少なくとも7日前に最後の静脈内サイクルを受けていなければならなかった。インフォームド・コンセント・フォームに署名をし、スクリーニング期間(21日前〜2日前)を経過した後、適格な患者に各試験施設に固有の患者番号を割り当てた。1日目に下記のうち一方を受けた後、8日目に他方を受けるように患者を無作為化した。
・110.2mg(2×55.1mg)ベンダムスチンHClの単回経口用量
・100mgベンダムスチンHClの単回静脈内用量
【0244】
ベンダムスチンは、a)LFHC製剤(液体充填硬剤皮カプセル剤)のカプセル剤として経口で、及びb)注射溶液の調製のために粉末を再構成した後に溶液として静脈内に与えた。LFHC製剤(カプセル当たり)は、55.1mgのベンダムスチン塩酸塩、1.2mgのメチルパラベン、0.12mgのポリパラベン、0.12mgのブチル化ヒドロキシトルエン、10.9mgのエタノール及び532.56mgのクレモフォール(登録商標)RH40から調製した。溶液の濃縮物としての粉末の入ったバイアルはドイツの市販製品(リボムスチン(登録商標))であり、これにはバイアル当たり100mgのベンダムスチン塩酸塩と賦形剤としてのマンニトールが入っている。この製品を、添付文書の説明書に従って、注射水でベンダムスチンHClの終濃度が2.5mg/mlとなるように再構成し、更に患者に投与する前に0.9%NaClで約500mlまで希釈した。
【0245】
患者を、1日前〜2日目(期間1)と7日目〜9日目(期間2)の2期間の間、試験施設に入院させた。計12名の患者を処置の受容に関して無作為化することとした。6名の患者には、110.2mg(2×55.1mg)ベンダムスチンHClの単回経口用量(1日目)の後、100mgベンダムスチンHClの単回静脈内用量(8日目)による処置を施し、他の6名の患者には、逆の順序で処置を施すこととした。患者には処置間に少なくとも7日の休薬期間を設けた。
【0246】
ベンダムスチンは加水分解によって不活性代謝物であるモノヒドロキシベンダムスチン(HP1)及びジヒドロキシベンダムスチン(HP2)へ、また、シトクロムP450(CYP 1A2)によって活性代謝物であるγ−ヒドロキシベンダムスチン(M3)及びN−デスメチルベンダムスチン(M4)へと代謝される。
【0247】
ベンダムスチンの経口投与及び静脈内投与後、ベンダムスチンの濃度並びにベンダムスチン活性代謝物(M3及びM4)の濃度を1日目と8日目の血漿及び尿サンプルにおいて測定した。患者は、2回目の処置期間の終了又は早期退院/中止の7〜14日後に試験後来診のために試験施設に戻った。その後、ベンダムスチン及びその代謝産物の薬物動態パラメーターを計算した。
【0248】
中間分析は計画又は実施しなかった。
【0249】
以下の結果が得られた。
集団:
本試験のスクリーニングを受けた23名の患者のうち14名の患者が処置に無作為に割り付けられ、少なくとも1用量の試験投薬を受けた。これらには経口/静脈内の順序で受けた6名の患者と静脈内/経口の順序で受けた8名の患者が含まれた。これらの14名の患者のうち
・1名はプロトコール違反(並行投薬)のために排除され、経口投薬のみを受け、静脈内投与は受けなかった。
・1名は嘔吐のために経口分析から排除され、バイオアベイラビリティー評価については適格でなかった。
・1名は有害事象のために静脈内投与から排除された。この患者は経口投与のみを受け、静脈投与は受けなかった。
【0250】
14名の患者のうち10名(71%)は男性であり、全て白人であった。患者の年齢は54〜82歳の範囲であり、平均はおよそ70歳であった。7名の患者は多発性骨髄腫、4名は緩徐進行性非ホジキンリンパ腫、及び3名は慢性リンパ性白血病であった。
【0251】
薬物動態結果:
ベンダムスチン(塩基)、M3及びM4の血漿薬物動態パラメーターをそれぞれ表24、表25及び表26に示す。統計分析に基づけば、ベンダムスチンの絶対バイオアベイラビリティー(AUC
infの経口:静脈内比)は66%(幾何平均;90%CI:55%、78%)であった。経口投与後のC
maxは、静脈内投与後のC
maxの42%(90%CI:32%、54%)であった。
【0252】
【表77】
【0253】
注:
嘔吐のAEのために薬物動態データが信頼できないとみなされた1名の患者を除き、全患者が少なくとも1用量の試験薬を受容し、かつ、少なくとも1つの薬物動態パラメーターを導くのに十分な血漿濃度データが利用可能であった(変更された薬物動態分析セット)。
† 算術的平均。幾何平均は66%(90%CI:55%、78%)であった。
‡ 経口投与後のC
maxは、静脈内投与後のC
maxの42%(90%CI:32%、54%)であった。
【0254】
【表78】
【0255】
注:
嘔吐のAEのために薬物動態データが信頼できないとみなされた1名の患者を除き、全患者が少なくとも1用量の試験薬を受容し、かつ、少なくとも1つの薬物動態パラメーターを導くのに十分な血漿濃度データが利用可能であった(変更された薬物動態分析セット)。
【0256】
【表79】
【0257】
注:
嘔吐のAEのために薬物動態データが信頼できないとみなされた1名の患者を除き、全患者が少なくとも1用量の試験薬を受容し、かつ、少なくとも1つの薬物動態パラメーターを導くのに十分な血漿濃度データが利用可能であった(変更された薬物動態分析セット)。
【0258】
経口投与後、ベンダムスチンはt
maxおよそ0.95時間(個々の値は15分〜1.8時間の範囲))で吸収された。静脈内投与後の平均CLは21.2L/時であった。平均t
1/2は経口摂取後及び静脈内投与後の双方でおよそ30分であった。静脈内投与後の平均V
Z及びV
SSはそれぞれ14.7L及び10.3Lであった。
【0259】
血漿のM3及びM4曝露はベンダムスチンの場合よりもかなり低かった。ベンダムスチンの平均AUC
infは、経口投与後のM3及びM4の場合よりもそれぞれ10.6倍及び88倍高かった。ベンダムスチンとは対照的に、M3及びM4 AUC
inf値は経口投与と静脈内投与で同等であった。統計分析に基づけば、経口投与後、M3のAUC
infは静脈内投与後のAUC
infの86%(90%CI:76%、98%)であった。M4について、これは88%(90%CI:77%、102%)であった。
【0260】
ベンダムスチン、M3及びM4の尿の薬物動態パラメーターをそれぞれ表27、表28及び表29に示す。尿中に排泄された用量のパーセンテージは低かった(経口及び静脈内ベンダムスチンについてそれぞれ2.6%及び2.1%)。
【0261】
【表80】
【0262】
注:
嘔吐のAEのために薬物動態データが信頼できないとみなされた1名の患者を除き、全患者が少なくとも1用量の試験薬を受容し、かつ、少なくとも1つの薬物動態パラメーターを導くのに十分な血漿濃度データが利用可能であった(変更された薬物動態分析セット)。
【0263】
【表81】
【0264】
注:
嘔吐のAEのために薬物動態データが信頼できないとみなされた1名の患者を除き、全患者が少なくとも1用量の試験薬を受容し、かつ、少なくとも1つの薬物動態パラメーターを導くのに十分な血漿濃度データが利用可能であった(変更された薬物動態分析セット)。
【0265】
【表82】
【0266】
注:
嘔吐のAEのために薬物動態データが信頼できないとみなされた1名の患者を除き、全患者が少なくとも1用量の試験薬を受容し、かつ、少なくとも1つの薬物動態パラメーターを導くのに十分な血漿濃度データが利用可能であった(変更された薬物動態分析セット)。
【0267】
安全性結果:
ベンダムスチンの経口及び静脈内投与は安全であり、十分な耐用性があった。全体で、経口処置中に6名の患者(43%)が処置により発生する有害事象を受け、3名の患者(25%)が静脈内処置中に処置により発生する有害事象を受けた。試験者が試験薬に関連するものと考えた有害事象を少なくとも1つ受けた患者は、経口用量を受けた患者では4名(29%)であり、静脈内用量を受けた患者ではいなかった。これらには頭痛が1名、頭痛と疲労の双方が1名、悪心が1名、嘔吐が1名含まれた。これらの事象は重症度グレード2である嘔吐以外は重症度グレード1であった。
【0268】
ほとんどの有害事象は重症度グレード1又はグレード2であった。経口用量を受けた1名の患者は、グレード3の血清クレアチニン増加、低カリウム血症及び急性腎不全、並びにグレード4の血小板減少症を受けたが、試験者は全て患者の多発性骨髄腫に関連するものであって、試験薬に関連するものではないとみなした。血清クレアチニン増加及び急性腎不全は重篤な有害事象であり、その患者は試験から早期離脱するに至った。試験中、死亡は見られなかった。
【0269】
ベースラインからの平均変化、又は血液学、生化学、尿検査若しくはバイタルサインパラメーターのカテゴリーシフトには、臨床上有意な傾向は見られなかった。少数の患者は、有害事象として報告された異常な血液学的又は生化学的所見を持っていたが、これらの中で試験者が試験薬に関するものであるとみなしたものは無かった。
【0270】
心拍数におけるベースラインからの平均変化は小さく、処置群の間で同等であった。本試験における患者の年齢及び病歴のために、ほとんどがスクリーニング時及び/又は試験中に「臨床上有意ではないが異常な」少なくとも1つの心電図所見を有していた。静脈内/経口群の1名の患者では、スクリーニング時、並びに静脈内及び経口の両投与の後に異常な、臨床上有意な心房細動、非特異性ST鬱病及び左軸偏位が見られた。
【0271】
結論:
・カプセル剤を用いた単回経口投与後のベンダムスチンの絶対バイオアベイラビリティーは66%(幾何平均;90%CI:55%、78%)であった。
・静脈内投与後の平均ベンダムスチンCL、Vz及びVssはそれぞれ21.2L/h、14.7 L及び10.3Lであった。
・ベンダムスチンは経口投与後に急速に吸収された(中央値t
maxおよそ0.95時間)。平均t
1/2はおよそ30分であった。経口投与後にはその用量のおよそ2.6%が尿中に排泄されたが、M3としては0.6%が排泄され、M4としては0.1%が排泄された。経口投与後のM3及びM4曝露はベンダムスチン曝露のそれぞれおよそ9%及び1%であった。
【0272】
有害事象報告、臨床検査評価、バイタルサイン、身体検査及び心電図に基づけば、ベンダムスチンの経口(110.2mg)及び静脈内(100mg)双方の単回用量形態は安全であり、緩徐進行性非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫又はB細胞種慢性リンパ性白血病患者の、このほとんどが高齢者の集団において十分な耐用性があることが示された。