特許第6373334号(P6373334)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373334
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】給水装置及び給水装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 15/00 20060101AFI20180806BHJP
   F04B 49/06 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   F04D15/00 K
   F04B49/06 321A
   F04D15/00 J
【請求項の数】16
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-236136(P2016-236136)
(22)【出願日】2016年12月5日
(65)【公開番号】特開2018-91248(P2018-91248A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2016年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】坂谷 哲則
(72)【発明者】
【氏名】山崎 修平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智大
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 章太
【審査官】 井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−284872(JP,A)
【文献】 特開昭62−093498(JP,A)
【文献】 特許第2721669(JP,B2)
【文献】 特開2010−242511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 15/00
F04B 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水源に接続された吸込配管と、
前記吸込配管に接続された流路部と、
前記流路部に設けられたポンプ及び前記ポンプを駆動するモータを有するポンプ部と、
前記ポンプの二次側に設けられた流量センサと、
前記ポンプの二次側に設けられた圧力センサと、
前記ポンプ部の停止流量時の定格全揚程、並びに、前記モータの定格最高回転速度及び前記定格最高回転速度よりも低い減速回転速度が記憶された記憶部と、
電源投入後の前記ポンプ部を吐出圧力一定制御又は推定末端圧一定制御により駆動する通常運転前に、前記通常運転における前記モータの定格最高回転速度よりも低速の試運転回転速度で前記ポンプ部を試運転し、前記流量センサで検出された流量が前記停止流量以下であることを検出後、前記圧力センサで検出された圧力を前記ポンプ部の定格全揚程から減算して吸上揚程を算出し、算出した前記吸上揚程から、前記記憶部に記憶された前記定格最高回転速度又は前記減速回転速度を選択し、選択した前記定格最高回転速度又は前記減速回転速度に基づいて前記ポンプ部を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする給水装置。
【請求項2】
前記試運転回転速度を、前記吸上揚程が0m、且つ、定格流量での目標圧力で運転した場合の停止流量時の回転速度としたことを特徴とする請求項1に記載の給水装置。
【請求項3】
前記記憶部には、前記ポンプ部を前記減速回転速度で駆動する前記吸上揚程である第1閾値が記憶され、
前記制御部は、算出した前記吸上揚程が前記第1閾値よりも深い場合には、前記減速回転速度を上限として前記ポンプ部を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の給水装置。
【請求項4】
前記記憶部には、前記ポンプを起動する起動圧力が記憶され、
前記制御部は、前記流量センサで検出された流量が前記停止流量を超え、且つ、前記圧力センサで検出された圧力が前記起動圧力以下のときに、前記減速回転速度で前記ポンプ部を制御することを特徴とする請求項3に記載の給水装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記ポンプ部の吐出圧力が前記起動圧力よりも一定値以上となった場合に、前記定格最高回転速度を上限として前記ポンプ部を制御することを特徴とする請求項4に記載の給水装置。
【請求項6】
渦流ポンプを使用するとともに、前記記憶部には、前記定格最高回転速度よりも高い増速回転速度と、前記ポンプ部を前記増速回転速度で駆動する前記吸上揚程である第2閾値が記憶され、
前記制御部は、算出した前記吸上揚程が前記第2閾値よりも浅い場合には、前記増速回転速度を上限として前記渦流ポンプを制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の給水装置。
【請求項7】
前記記憶部には、前記渦流ポンプを起動する起動圧力が記憶され、
前記制御部は、前記通常運転中に前記流量センサで検出された流量が前記停止流量を超え、且つ、前記圧力センサで検出された圧力が前記起動圧力以下のときに、前記増速回転速度で前記渦流ポンプを制御することを特徴とする請求項6に記載の給水装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記通常運転中に前記渦流ポンプの吐出圧力が前記起動圧力よりも一定値以上となった場合に、前記定格最高回転速度を上限として前記渦流ポンプを制御することを特徴とする請求項7に記載の給水装置。
【請求項9】
吸上揚程が異なる設置場所を選択する切換スイッチを備え、
前記制御部は、前記切換スイッチにより深い吸上揚程が選択された場合には、前記通常運転中に前記定格最高回転速度を上限として前記ポンプ部を制御し、
前記切換スイッチにより浅い吸い上げ揚程が選択された場合には、前記通常運転中に、前記流量センサで検出された流量が前記停止流量を超え、且つ、前記圧力センサで検出された圧力が前記起動圧力より一定値以下のときに、前記増速回転速度を上限とし、且つ、前記ポンプ部の吐出圧力が前記起動圧力よりも一定値以上となった場合に、前記定格最高回転速度を上限として前記ポンプ部を制御することを特徴とする請求項6に記載の給水装置。
【請求項10】
給水源に接続された吸込配管に接続された流路部に設けられたポンプ及び前記ポンプを駆動するモータを有するポンプ部を電源投入後に吐出圧力一定制御又は推定末端圧一定制御により駆動する通常運転前に、前記通常運転における前記モータの定格最高回転速度よりも低速の試運転回転速度で前記ポンプ部を試運転し、
前記ポンプの二次側に設けられた流量センサで検出された流量が前記停止流量以下であることを検出後、前記ポンプの二次側に設けられた圧力センサで検出された圧力を前記ポンプ部の全揚程から減算して吸上揚程を算出し、
算出した前記吸上揚程から、記憶部に記憶された前記定格最高回転速度又は減速回転速度を選択し、
選択した前記定格最高回転速度又は前記減速回転速度に基づいて前記ポンプ部を制御する、
ことを特徴とする給水装置の制御方法。
【請求項11】
前記記憶部には、前記ポンプ部を前記減速回転速度で駆動する前記吸上揚程である第1閾値が記憶され、
算出した前記吸上揚程が前記第1閾値よりも深い場合には、前記減速回転速度を上限として前記ポンプ部を制御する、
ことを特徴とする請求項10に記載の給水装置の制御方法。
【請求項12】
前記記憶部には、前記ポンプ部を停止する停止流量及び前記ポンプを起動する起動圧力が記憶され、
前記流量センサで検出された流量が前記停止流量を超え、且つ、前記圧力センサで検出された圧力が前記起動圧力以下のときに、前記減速回転速度で前記ポンプ部を制御することを特徴とする請求項11に記載の給水装置の制御方法。
【請求項13】
渦流ポンプを使用するとともに、
前記記憶部には、前記定格最高回転速度よりも高い増速回転速度と、前記ポンプ部を前記増速回転速度で駆動する前記吸上揚程である第2閾値が記憶され、
算出した前記吸上揚程が前記第2閾値よりも浅い場合には、前記増速回転速度を上限として前記渦流ポンプを制御する、
ことを特徴とする請求項10に記載の給水装置の制御方法。
【請求項14】
前記記憶部には、前記渦流ポンプを起動する起動圧力が記憶され、
前記通常運転中に、前記流量センサで検出された流量が前記停止流量を超え、且つ、前記圧力センサで検出された圧力が前記起動圧力以下のときに、前記増速回転速度で前記ポンプ部を制御することを特徴とする請求項13に記載の給水装置の制御方法。
【請求項15】
前記通常運転中に、前記ポンプ部の吐出圧力が前記起動圧力よりも一定値以上となった場合に、前記定格最高回転速度を上限として前記ポンプ部を制御することを特徴とする請求項14に記載の給水装置の制御方法。
【請求項16】
前記吸上揚程が異なる設置場所を選択する切換スイッチにより深い前記吸上揚程が選択された場合に、前記定格最高回転速度を上限として前記ポンプ部を制御し、
前記通常運転中に、前記切換スイッチにより浅い吸い上げ揚程が選択された場合に、前記流量センサで検出された流量が前記停止流量を超え、且つ、前記圧力センサで検出された圧力が前記起動圧力より一定値以下のときに、前記増速回転速度を上限とし、且つ、前記ポンプ部の吐出圧力が前記起動圧力よりも一定値以上となった場合に、前記定格最高回転速度を上限として前記ポンプ部を制御することを特徴とする請求項13に記載の給水装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を増圧する給水装置及び給水装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
井戸水の揚水や、水道水のブースト用に、小型の給水装置を用いる技術が知られている。このような給水装置は、ベース上にブラシレスモータに直結された渦流ポンプ、電源投入時に自吸するための自吸室、自動運転のための逆止弁、アキュムレータ、圧力センサ、流量センサ及び電装部が配置され、これら構成品をカバーにより覆う構成が知られている。
【0003】
給水装置は、例えば、井戸水の揚水に用いられる場合には、給水装置の一次側に設けられる吸込配管が井戸内に配置され、水道水のブースト用に用いられる場合には、給水装置は、水道水を貯水する小型の受水槽上部に配置される。
【0004】
給水装置は、井戸水の揚水に用いられる場合の吸上揚程が例えば、Δ4m乃至Δ8mの範囲で用いられる。また、水道水のブースト用に用いられる場合には、給水装置は、吸上揚程がΔ1m以下の範囲で用いられる。例えば、給水装置は、インバータによってブラシレスモータの回転速度を可変し、吐出圧力一定制御を行い、目標圧力よりも約4m低く設定された起動圧力でポンプを駆動する。
【0005】
このような小型の給水装置において、ポンプ部に渦流ポンプを用いると、吸上揚程がΔ7mより深い場合には、キャビテーションが発生し、回転速度が低下することで、流量が低下する。
【0006】
そこで、キャビテーションの発生を防止する給水装置も知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された給水装置は、モータの回転数の上限を定めず、吐出圧力を一定とするようにモータの軸出力を最大として駆動する。そして、吸上揚程が小さい場合には、モータの軸動力を維持しつつ、回転速度を増加させることで、水流を増加させる。また、吸上揚程が大きい場合には、使用流量の増大に伴って吐出圧力が低下して回転速度を増加させ、モータの軸出力が低下した場合に、回転速度を逆に低下させる。このような制御を行うことで、キャビテーションの発生を防止する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5075390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した給水装置では、次のような問題があった。即ち、特許文献1に開示された給水装置では、徐々に流量が増大する場合、単位時間あたりの吐出圧力の低下が緩慢になり、回転速度を上昇させたときのモータの軸出力の低下が少ない。このため、キャビテーションの発生を確実に検出できない虞がある。
【0009】
また、小型の給水装置に用いられる渦流ポンプは、使用流量の増大に伴って吐出圧力が低下した場合であって、当該吐出圧力低下前と回転速度が同じ場合には、モータの軸出力が大きく低下する。このモータの軸出力の低下が、回転速度の増加に伴うモータの軸出力の上昇と相殺され、キャビテーションによるモータの軸出力の低下と区別できない、という問題もある。
【0010】
そこで本発明は、キャビテーションの発生を防止可能な給水装置及び給水装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明の給水装置及び給水装置の制御方法は次のように構成されている。
【0012】
本発明の一態様として、給水装置は、給水源に接続された吸込配管と、前記吸込配管に接続された流路部と、前記流路部に設けられたポンプ及び前記ポンプを駆動するモータを有するポンプ部と、前記ポンプの二次側に設けられた流量センサと、前記ポンプの二次側に設けられた圧力センサと、前記ポンプ部の停止流量時の定格全揚程、並びに、前記モータの定格最高回転速度及び前記定格最高回転速度よりも低い減速回転速度が記憶された記憶部と、電源投入後の前記ポンプ部を吐出圧力一定制御又は推定末端圧一定制御により駆動する通常運転前に、前記通常運転における前記モータの定格最高回転速度よりも低速の試運転回転速度で前記ポンプ部を試運転し、前記流量センサで検出された流量が前記停止流量以下であることを検出後、前記圧力センサで検出された圧力を前記ポンプ部の定格全揚程から減算して吸上揚程を算出し、算出した前記吸上揚程から、前記記憶部に記憶された前記定格最高回転速度又は前記減速回転速度を選択し、選択した前記定格最高回転速度又は前記減速回転速度に基づいて前記ポンプ部を制御する制御部と、を備える。
【0013】
本発明の一態様として、給水装置の制御方法は、給水源に接続された吸込配管に接続された流路部に設けられたポンプ及び前記ポンプを駆動するモータを有するポンプ部を電源投入後に吐出圧力一定制御又は推定末端圧一定制御により駆動する通常運転前に、前記通常運転における前記モータの定格最高回転速度よりも低速の試運転回転速度で前記ポンプ部を試運転し、前記ポンプの二次側に設けられた流量センサで検出された流量が前記停止流量以下であることを検出後、前記ポンプの二次側に設けられた圧力センサで検出された圧力を前記ポンプ部の全揚程から減算して吸上揚程を算出し、算出した前記吸上揚程から、記憶部に記憶された前記定格最高回転速度又は減速回転速度を選択し、選択した前記定格最高回転速度又は前記減速回転速度に基づいて前記ポンプ部を制御する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、キャビテーションの発生を防止可能な給水装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る給水装置の構成を模式的に示す説明図。
図2】本発明の一実施形態に係る給水装置の他の設置例を模式的に示す説明図。
図3】同給水装置の構成を示す平面図。
図4】同給水装置の要部構成を示す断面図。
図5】同給水装置の記憶部に記憶されたテーブルの一例を示す説明図。
図6】同給水装置を用いた給水方法の一例を示す流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明の一実施形態に係る給水装置1の構成であって、井戸100の井戸水101を建造物200に揚水する構成を示す説明図、図2は給水装置1の構成を示す平面図、図3は給水装置1の構成を上面視で示す平面図、図4は給水装置1の流量センサ24及び圧力センサ25の構成を示す断面図、図5は給水装置1の記憶部52に記憶された吸上揚程に関する減速回転速度及び増速回転速度のテーブルの一例を示す説明図、図6は給水装置1を用いた給水方法の一例を示す流れ図である。
【0017】
図1に示すように、給水装置1は、例えば、井戸100の近傍に、吸込配管10が井戸水101に延びて設置される。給水装置1は、井戸水101を直接増圧し、建造物200に設けられた複数の蛇口211やシャワーヘッド等の給水先210に給水する。
【0018】
なお、給水装置1は、図2に示すように、水道本管300に接続された水道分岐管310により水321が貯留される受水槽320に設置される構成であってもよい。即ち、給水装置1は、水道水のブースト用に用いる構成であってもよい。
【0019】
図1乃至図4に示すように、給水装置1は、吸込配管10と、吐出配管11と、を備えている。給水装置1は、ベース21と、ベース21上に設けられた流路部22と、流路部22に設けられたポンプ部23と、流路部22に設けられた流量センサ24と、流路部22に設けられた圧力センサ25と、流路部22に設けられたアキュムレータ26と、ベース21上に設けられた電装部27と、ベース21上を覆うポンプカバーと、を備えている。
【0020】
吸込配管10は、一次側の給水源である井戸100の井戸水101中にその端部が配置される。吐出配管11は、二次側に給水先210である蛇口211やシャワーヘッド等に接続される。
【0021】
流路部22は、一次側に吸込配管10が接続され、二次側に吐出配管11が接続される。流路部22は、吸込配管10から吐出配管11までの水の流路を構成する。流路部22は、中途部に、自吸室22aを有する。
【0022】
ポンプ部23は、流路部22の中途部であって、自吸室22aの一次側に設けられる。ポンプ部23は、縦軸のモータ23aと、モータ23aに接続された回転軸23bと、回転軸23bに接続されたインペラ及びインペラを収容するポンプケーシングを有するポンプ23cと、を備えている。なお、ポンプケーシングは、流路部22の一部に一体に構成されていてもよい。ポンプ23cは、例えば、渦流ポンプである。
【0023】
図2に示すように、流量センサ24は、流路部22の中途部であって、且つ、ポンプ部23の二次側に設けられる。流量センサ24は、例えば、自吸室22aの天井部に設けられる。
【0024】
図3に示すように、流量センサ24は、例えば、フロートセンサである。流量センサ24は、流量を検出可能に構成されている。流量センサ24は、信号線を介して電装部27に接続されたセンサ部31と、センサ部31を収容する円筒状の外郭体32と、外郭体32の外周面に設けられたフロート33と、フロート33内に設けられた磁石34と、を備えている。
【0025】
流量センサ24は、流路部22の自吸室22aの天井部に設けられた重力方向の水の流れを構成する流路に設けられる。流量センサ24は、水が流量の増加に伴い、フロート33が水流によって上昇し、センサ部31が磁石34の磁束を検出することで、流量を検出する。
【0026】
圧力センサ25は、流路部22の中途部であって、且つ、ポンプ部23の二次側に設けられる。圧力センサ25は、ポンプ部23の二次側の圧力、換言するとポンプ23cの吐出圧力を検出可能に構成されている。
【0027】
圧力センサ25は、例えば、自吸室22aの上部、且つ、流量センサ24の二次側に設けられる。圧力センサ25は、例えば、ダイヤフラム41と、当該ダイヤフラム41に設けられたセンサ部42と、センサ部42に電気的に接続された基板43と、を備えている。センサ部42は、例えば歪みゲージである。センサ部42は、基板43及び信号線を介して電装部27に接続される。
【0028】
アキュムレータ26は、流路部22の中途部であって、且つ、ポンプ部23の二次側に設けられる。例えば、アキュムレータ26は、自吸室22aの二次側の流路部22に設けられる。
【0029】
電装部27は、記憶部52と、制御部53と、を備えている。
【0030】
記憶部52は、流量センサ24及び圧力センサ25で検出した流量及び圧力、及び、停止流量と目標圧力を記憶可能に構成されている。記憶部52には、ポンプ部23の各運転制御として、自吸運転、試運転、及び、通常運転を行うプログラム等が記憶されている。なお、流量センサ24が停止流量以下にてOFFし、停止流量を超えるとONするON/OFF式の場合は、上記の停止流量の設定は不要となる。
【0031】
記憶部52には、ポンプ部23(給水装置1)の全揚程、ポンプ部23の駆動を開始する起動圧力、ポンプ部23を停止する停止流量、ポンプ部23の定格最高回転速度、自吸運転を行う自吸運転回転速度、及び、試運転を行う試運転回転速度が記憶されている。
【0032】
全揚程は、製造段階等において予め測定され、記憶部52に記憶される。
【0033】
起動圧力は、目標圧力よりも一定の圧力を減算した値であり、例えば、4mを目標圧力から減算した圧力である。停止流量は、給水先210における水の使用が停止したと判断され、ポンプ部23を停止する水量であり、例えば、4L/minである。
【0034】
定格最高回転速度とは、モータ23aを駆動する最高回転速度である。例えば、定格最高回転速度は、3390min−1である。自吸運転回転速度は、定格最高回転速度よりも高速の回転速度であり、例えば、定格最高回転速度の124%となる4200min−1である。
【0035】
吐出圧力一定制御により給水装置1を制御する場合には、試運転回転速度は、吸上揚程が0m、且つ、定格流量での目標圧力で運転した場合の、停止流量時の回転速度であり、例えば、定格最高回転速度の約59%となる2010min−1である。
【0036】
また、推定末端圧一定制御により給水装置1を制御する場合には、試運転回転速度は、管路抵抗を考慮して、吸上揚程が0m、且つ、管路抵抗を考慮した定格流量での目標圧力より低い圧力で運転した場合の、停止流量時の回転速度である。
【0037】
記憶部52には、通常運転時において、モータ23aの回転速度を減速する判断を行う第1閾値、及び、モータ23aの回転速度を増速する判断を行う第2閾値が記憶されている。第1閾値は、揚程であり、例えば、7mに設定される。第2の閾値は、揚程であり、例えば、4mに設定される。
【0038】
また、記憶部52には、図5に示すように、吸上揚程に関する減速回転速度及び増速回転速度がテーブルとして予め記憶されている。
【0039】
制御部53は、信号線を介して、モータ23a、流量センサ24、圧力センサ25、及び記憶部52に接続されている。また、制御部53は、電源供給源に接続される。制御部53は、モータ23aに供給する電力の周波数を制御することで、ポンプの回転数を制御可能に構成される。
【0040】
制御部53は、以下の(1)乃至(4)の機能を有している。
【0041】
(1)電源投入後に、自吸運転を行う機能。
【0042】
(2)自吸運転後に、吐出圧力一定制御又は推定末端圧一定制御によりポンプ部を駆動する通常運転を行うための目標圧力を決定する機能。
【0043】
(3)吐出圧力一定制御又は推定末端圧一定制御によりポンプ部を駆動する通常運転を行う機能。
【0044】
(4)通常運転中に吸上揚程を算出し、モータ23aの最高回転速度を補正する機能。
【0045】
以下、制御部53の機能(1)乃至機能(4)について以下説明する。
【0046】
機能(1)は、給水装置1に電源が投入された後のポンプ部23の駆動制御として、自吸運転を行い、ポンプ23cの自吸を行う機能である。
【0047】
具体的には、機能(1)は、電源投入後に、圧力センサ25で検出した流路部22の圧力が所定の圧力として、5m以下の場合において、自吸運転回転速度でポンプ部23を駆動する自吸運転を行う。なお、このとき、自吸運転時におけるポンプ部23の駆動電流として、最大定格電流よりも低い電流値である、自吸運転時最大電流が予め設定され、記憶部52に記憶されている。このため、機能(1)として、当該自吸時最大電流以下となるように、電流検出による出力周波数の制限、換言すると、出力周波数の制御を併せて行う。
【0048】
また、機能(1)は、自吸運転後、圧力センサ25で検出される圧力、即ちポンプの吐出圧力が5m以上となった場合、又は、流量センサ24が停止流量を超えた流量を検出した場合に、揚水完了と判断し、自吸運転を停止させる。
【0049】
このように、機能(1)は、電源投入後に、揚水が完了したと判断するまで、定格最高回転速度よりも高速でポンプ部23を駆動して、流路部22及びポンプ23c内を水で満たす自吸運転を行う機能である。
【0050】
機能(2)は、試運転を行い、流量センサ24で検出される流量が停止流量以下であるときの、圧力センサ25で検出される圧力を通常運転における目標圧力とする機能である。
【0051】
具体的には、機能(2)は、自吸運転後に、先ず、試運転回転速度にてポンプ部23を駆動する。給水先210の蛇口211等が閉められる等によって、流量センサ24で検出された流量が停止流量以下であることを検出後、圧力センサ25でポンプ部23の吐出圧力を検出し、検出した圧力を当該試運転以後の通常運転における目標圧力として設定する。また、設定した目標圧力を記憶部52に記憶する。
【0052】
試運転開始後、所定の時間、例えば、10分間、流量が停止流量以下とならなかった場合においては、予め記憶部52に記憶された機種別のポンプ部23の目標圧力を通常運転における目標圧力として設定する。なお、この場合においては、機能(4)は行わない。
【0053】
このように、機能(2)は、自吸運転後に、試運転を行い、通常運転において用いる目標圧力を設定する機能である。
【0054】
機能(3)は、機能(2)で設定された目標圧力に基づいて、吐出圧力一定制御又は推定末端圧一定制御を行う機能である。
【0055】
具体的には、機能(3)は、圧力センサ25で検出される圧力が起動圧力以下となった場合には、機能(2)で設定された目標圧力となるように、吐出圧力一定制御又は推定末端圧一定制御により、ポンプ部23の回転数を制御する。また、ポンプ部23の駆動中において、流量センサ24で検出される流量が停止流量以下となった場合には、ポンプ部23の駆動を停止する。また、ポンプ部23の停止中において、圧力センサ25で検出される圧力が起動圧力以下となった場合に、再びポンプ部23を駆動し、目標圧力に基づいて、回転数を制御する。また、このときのモータ23aの回転速度の上限(最高回転速度)は、機能(4)で最高回転速度が補正されるまで、予め記憶部52に記憶された定格最高回転速度、例えば3390min−1が設定される。
【0056】
機能(4)は、吸上揚程を算出し、当該算出した吸上揚程から記憶部52に記憶されたテーブルに基づいて、モータ23aの最高回転速度を補正する機能である。
【0057】
具体的には、機能(4)は、機能(2)において、流量センサ24で検出される流量が停止流量以下であるときの、圧力センサ25で検出される圧力を記憶部52に記憶された全揚程から減算して吸上揚程を算出する。
【0058】
次に、算出した吸上揚程及び第1閾値を比較し、算出した吸上揚程が第1閾値よりも大きい、即ち、吸上揚程が深い場合には、記憶部52に記憶されたテーブルに吸上揚程を当て嵌め、モータ23aの最高回転速度を低減する。通常運転中であって、且つ、流量が停止流量を越えている場合において、低減した最高回転速度である減速回転速度を用いて、ポンプ部23を制御する。
【0059】
例えば、吸上揚程が7m乃至7.5m未満である場合には、最高回転速度を3390min−1から約93%である3150min−1に低減させ、以後の通常運転においては当該減速回転速度(3150min−1)を最高回転速度としてモータ23aを制御する。また、吸上揚程が7.5m以上である場合には、最高回転速度を3390min−1から約80%である2700min−1に低減させ、以後の通常運転においては当該減速回転速度(2700min−1)を最高回転速度としてモータ23aを制御する。
【0060】
算出した吸上揚程が第1閾値以下である場合には、当該吸上揚程及び第2閾値を比較する。算出した吸上揚程が第2閾値よりも小さい、即ち、吸上揚程が浅い場合には、記憶部52に記憶されたテーブルに吸上揚程を当て嵌め、モータ23aの最高回転速度を増加させる。通常運転中であって、且つ、流量が停止流量を越えている場合において、増加した最高回転速度である増速回転速度を用いて、ポンプ部23を制御する。
【0061】
ここで、吸上揚程が4m未満である場合には、最高回転速度を3390min−1から3540min−1に増加させ、以後の通常運転においては当該増速回転速度(3540min−1)を最高回転速度としてモータ23aを制御する。
【0062】
算出した吸上揚程が、第1閾値以下であって、且つ、第2閾値以上の場合においては、最高回転速度は定格最高回転速度(3390min−1)を維持する。このような最高回転速度の補正を、通常運転の間、継続して行う。また、給水量が減少し、吐出圧力が起動圧力よりも一定値、例えば2m以上になった場合に、定格の最高回転速度を上限として運転する。
【0063】
このように、機能(4)は、通常運転中において、吸上揚程を算出し、当該算出した吸上揚程から記憶部52に記憶されたテーブルに基づいて、モータ23aの最高回転速度を補正し、当該補正した最高回転速度で通常運転を行う機能である。
【0064】
次に、このように構成された給水装置1の制御方法について、図6を用いて以下説明する。
【0065】
先ず、給水装置1に電力が投入されると、制御部53は、自吸運転を行う(ステップST1)。具体的には、制御部53は、圧力センサ25で検出した流路部22の圧力が第1閾値以下であるか否かの判断を行う。圧力センサ25で検出した圧力が所定の圧力、本形態においては5m以下である場合には、制御部53は、自吸時最大電流以下となるように出力周波数の制御を行いながら、自吸運転回転速度でポンプ部23を駆動する。
【0066】
自吸運転開始後に圧力センサ25で検出される圧力が所定の圧力(5m)以上となった場合、又は、流量センサ24が停止流量を越えた流量を検出した場合には、制御部53は、揚水完了と判断し、自吸運転を停止させる。なお、制御部53は、圧力センサ25で検出した圧力が第1閾値を超えている場合には、自吸運転が不要と判断し、制御部53は、自吸運転を行わない。
【0067】
制御部53は、自吸運転終了後、又は、自吸運転不要と判断した後、試運転を行い、通常運転を行うための目標圧力を設定する。具体的には、制御部53は、先ず、試運転回転速度にてモータ23aを回転させることにより、ポンプ部23を駆動し、試運転を開始する(ステップST2)。
【0068】
試運転開始後から所定の時間、例えば、10分間、制御部53は、流量センサ24で検出される流量を監視し、流量センサ24で検出される流量が停止流量以下であるか否かの判断を行う(ステップST3)。
【0069】
流量センサ24で検出された流量が停止流量以下である場合(ステップST3のYES)には、制御部53は、次に、圧力センサ25で検出された圧力を、通常運転における目標圧力として設定する(ステップST4)。また、制御部53は、設定した目標圧力を記憶部52に記憶する。
【0070】
次に、制御部53は、ステップST4で設定された目標圧力に基づいて、吐出圧力一定制御又は推定末端圧一定制御による通常運転を行う(ステップST5)。
【0071】
次に、制御部53は、通常運転中に、吸上揚程を算出する(ステップST6)。具体的には、制御部53は、通常運転中に圧力センサ25で検出したポンプ部23の吐出圧力を記憶部52に記憶された全揚程から減算し、この減算した全揚程と吐出圧力の差を吸上揚程として算出する。
【0072】
次に、制御部53は、算出した吸上揚程及び第1閾値を比較し、算出した吸上揚程が第1閾値より大きいか否かを判断する(ステップST7)。算出した吸上揚程が第1閾値よりも大きい、即ち、吸上揚程が深い場合(ステップST7のYES)には、制御部53は、モータ23aの最高回転速度を低減する(ステップST8)。
【0073】
具体的には、制御部53は、記憶部52に記憶されたテーブルに算出した吸上揚程を当て嵌め、モータ23aの最高回転速度を導出する。ここで、第1閾値よりも算出した吸上揚程が大きい場合には、最高回転速度が低減された減速回転速度により、以後、モータ23aの最高回転速度として通常運転を行う。
【0074】
ステップST7において、算出した吸上揚程が第1閾値以下である場合(ステップST7のNO)には、制御部53は、算出した吸上揚程及び第2閾値を比較し、算出した吸上揚程が第2閾値より小さいか否かを判断する(ステップST9)。算出した吸上揚程が第2閾値よりも小さい、即ち、吸上揚程が浅い場合(ステップST9のYES)には、制御部53は、モータ23aの最高回転速度を増加する(ステップST10)。
【0075】
具体的には、制御部53は、記憶部52に記憶されたテーブルに算出した吸上揚程を当て嵌め、モータ23aの最高回転速度を導出する。ここで、第1閾値よりも算出した吸上揚程が大きい場合には、最高回転速度が低減された減速回転速度により、以後、モータ23aの最高回転速度として通常運転を行う。なお、ステップST8及びステップST10において、モータ23aの最高回転速度を増減した場合には、制御部53は、通常運転において、繰り返しステップST7以降の処理を繰り返す。
【0076】
ステップST9において、算出した吸上揚程が第2閾値以上である場合(ステップST9のNO)には、制御部53は、記憶部52に予め定められたモータ23aの最高回転速度、即ちモータ23aの定格最高回転速度にて通常運転を行う(ステップST11)。
【0077】
以後、停止指示がある(ステップST12)まで、制御部53は、ステップST7以降のモータ23aの最高回転速度の補正を繰り返し行いながら、通常運転を継続する。
【0078】
また、流量センサ24で検出された流量が停止流量より大きい場合(ステップST3のNO)には、制御部53は、予め記憶部52に記憶されたポンプ部23の目標圧力を、通常運転における目標圧力として設定する(ステップST13)。次に、制御部53は、ステップST13で設定された予め記憶部52に記憶されたポンプ部23の目標圧力に基づいて、吐出圧力一定制御又は推定末端圧一定制御による通常運転を行う(ステップST14)。なお、記憶部52に予め記憶されたポンプ部23の目標圧力を用いて通常運転を行う場合には、ステップST7以降のモータ23aの最高回転速度の補正は行わず、停止指示がある(ステップST12)まで、定格最高回転速度にて通常運転を行う。
【0079】
このように構成された給水装置1によれば、試運転時において停止流量以下となった時点におけるポンプ部23の吐出圧力を、通常運転時の目標圧力とすることで、給水装置1を設置した吸上揚程に応じて、最高の吐出圧力となるように、ポンプ部23を制御することが可能となる。
【0080】
また、給水装置1は、吸上揚程を算出し、当該吸上揚程に基づいて最高回転速度を補正することで、キャビテーションの発生の防止及び揚水性能を向上することが可能となる。具体的に説明すると、小型の給水装置1において、ポンプ23cに渦流ポンプが用いられる場合においては、インペラの周速が早いと、キャビテーションが発生する。結果、ポンプ部23から吐出される流量が低下する。なお、吐出圧力一定制御の場合においては、目標圧力での最大流量時にモータ23aが最高回転速度に達する。しかし、流量がさらに増大し、吐出圧力が低下して、目標圧力より4m低く設定された起動圧力における流量未満においては、キャビテーションが発生することがないが、起動圧力における流量以上においてはキャビテーションが発生する虞がある。
【0081】
そこで、流量が停止流量を超えており、上記の機能(4)にあるように、吸上揚程が第1閾値より深い場合であって、且つ、吐出圧力が起動圧力以下の状態においては、減速回転速度を上限として通常運転を行う。また、給水量が減少し、吐出圧力が起動圧力よりも一定値(2m)以上となった場合に、定格最高回転速度を上限として運転する。
【0082】
このように、モータ23aの最高回転速度を補正することで、キャビテーションの発生が防止できる。換言すると、減速回転速度によりモータ23aの上限として通常運転することで、給水装置1は、例えば、吸上揚程Δ7.5m以上の場合における揚水性能を、キャビテーションによる流量低下が比較的軽微な吸上揚程がΔ7.5mより低い揚程時の揚水性能に近づけることができ、さらに回転速度低減により消費電力を低減できる。即ち、給水装置1は、キャビテーションの発生を軽減し、そして、運転流量を増加することで、揚水性能の向上、省エネ運転が可能となる。
一例として吸上揚程Δ8m時の揚水性能の実験結果では、最高回転速度を2700min−1に減速させることで、減速しない場合の最大流量17.7L/minであるのに対して、流量が20.8L/minとなり、流量が3.1L/min増加する結果となった。また、消費電力は、減速しない場合の356Wに対して267Wとなり、消費電力が89W減少する結果となった。また、最高総合効率は、減速しない場合の18.2%に対して28.4%となり、最高総合効率が10.2%改善される結果となった。これらの結果は、上述のように、インペラ外周の周速を低減することにより、キャビテーションによる気泡の発生量が少なくなり、流量が増加し、回転速度低減により消費電力が低減するためである。
【0083】
また、渦流ポンプを用いたポンプ部23によれば、目標圧力での最大流量時に最高回転速度に到達し、消費電力(電流)も最大となる。また、渦流ポンプを用いたポンプ部23によれば、使用流量の増大に伴い吐出圧力が低下すると、渦巻きポンプやタービンポンプと異なり、消費電力が大幅に低下する特性を有する。
【0084】
このため、求めた吸上揚程が、全流量域においてキャビテーションの発生の虞が無い吸上揚程(第2の閾値)より浅い場合には、定格最高回転速度よりも増加させた増速最高回転速度によりポンプ部23を駆動する。増速最高回転速度によりモータ23aを駆動することで、最大消費電力を、定格最高回転速度での運転時の最大消費電力と同等することが可能となる。これにより、給水装置1の揚水性能の向上が可能となる。
【0085】
また、図2に示すように、受水槽320の水を建造物200に給水する用途で給水装置1が用いられる場合においては、水道を各戸が同時に使用することになる。このとき、使用水量が増加することから、吸上揚程がΔ1m以下であることから、最高回転速度を増速することで、給水装置1は、流量を増加することが可能となる。結果、給水装置1の性能を、より向上することが可能となる。
【0086】
上述したように、本発明の一実施形態に係る給水装置1によれば、キャビテーションの発生を防止可能となる。
【0087】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。上述した例では、給水装置1は、吸上揚程が異なる設置場所に設置される構成として井戸100及び受水槽320のそれぞれに設けられる構成を説明し、吸上揚程を制御部53が算出する構成を説明したがこれに限定されない。図3に符号51で示すように、例えば、給水装置1は、電装部27に、切換スイッチ51をさらに有する構成であってもよい。このような本発明の他の実施形態に係る給水装置1について以下説明する。
【0088】
切換スイッチ51は、吸上揚程が異なる給水装置1を設置する設置場所を選択可能に構成されている。即ち、切換スイッチ51は、図1に示すように、給水装置1を井戸100の近傍に設置する場合、及び、図2に示すように、給水装置1を水道水のブースト用に受水槽320に設置する場合のいずれかを選択可能に構成される。
【0089】
即ち、切換スイッチ51は、使用者が井戸モード及び受水槽モードを選択し、これらモードを切り換え可能に構成されている。
【0090】
制御部53は、切換スイッチ51により井戸モードが選択された場合には、定格最高回転速度を上限として通常運転する。また、制御部53は、切換スイッチ51により受水槽モードが選択された場合には、機能(4)によりモータ23aの最高回転速度を増減する補正を行い、通常運転を行う。このような構成とすることで、受水槽320に給水装置1が設置される場合において、給水装置1の揚水性能を向上させることが可能となる。
【0091】
また、さらに他の実施形態としては、給水装置1に用いられる切換スイッチ51は、3段階に切り換え可能な構成としてもよい。
【0092】
例えば、切換スイッチ51は、使用者が浅井戸モード、深井戸モード及び受水槽モードのいずれかを選択し、これらのモードを切り換え可能に構成される。
【0093】
このような切換スイッチ51を用いる場合には、制御部53は、切換スイッチ51により浅井戸モードが選択された場合には、定格最高回転速度を上限として通常運転を行う。
【0094】
また、制御部53は、切換スイッチ51により深井戸モードが選択された場合には、機能(4)において、算出された吸上揚程が第1閾値よりも大きい場合には、記憶部52に記憶されたテーブルに吸上揚程を当て嵌め、モータ23aの最高回転速度を低減する。制御部53は、第1閾値よりも小さい場合には、定格最高回転速度で通常運転を行う。即ち、深井戸モードにおいては、制御部53は、最高回転速度の減速のみの補正を行う。
【0095】
さらに、制御部53は、切換スイッチ51により受水槽モードが選択された場合には、機能(4)によりモータ23aの最高回転速度を増減する補正を行い、通常運転を行う。
【0096】
このような構成とすることで、井戸100が深い場合にいては、キャビテーションの発生を防止でき、また、受水槽320に給水装置1が設置される場合においては、給水装置1の揚水性能を向上させることが可能となる。
【0097】
また、上述した例では、給水装置1のポンプ部23に渦流ポンプを用いる構成を説明したがこれに限定されない。例えば、ポンプ部23のポンプ23cは、渦巻きポンプ、ジェットポンプ、水中ポンプ及び容積式ポンプ等、種々多様なポンプを用いることが可能となる。但し、渦流ポンプ以外のポンプ23cを用いる場合においては、渦流ポンプと同等の特性を有するポンプ23c以外には、モータ23aの最高回転速度を増加させる補正は行わない。これは、増速回転速度を用いることで、揚水性能が向上する特性を有するポンプとして渦流ポンプが挙げられるが、他のポンプで渦流ポンプと同様の特性を有さない場合には、消費電力が増大する虞があるためである。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 給水源に接続された吸込配管と、
前記吸込配管に接続された流路部と、
前記流路部に設けられたポンプ及び前記ポンプを駆動するモータを有するポンプ部と、
前記ポンプの二次側に設けられた流量センサと、
前記ポンプの二次側に設けられた圧力センサと、
前記ポンプ部の停止流量時の定格全揚程、並びに、前記モータの定格最高回転速度及び前記定格最高回転速度よりも低い減速回転速度が記憶された記憶部と、
電源投入後の前記ポンプ部を吐出圧力一定制御又は推定末端圧一定制御により駆動する通常運転前に、前記通常運転における前記モータの定格最高回転速度よりも低速の試運転回転速度で前記ポンプ部を試運転し、前記流量センサで検出された流量が前記停止流量以下であることを検出後、前記圧力センサで検出された圧力を前記ポンプ部の定格全揚程から減算して吸上揚程を算出し、算出した前記吸上揚程から、前記記憶部に記憶された前記定格最高回転速度又は前記減速回転速度を選択し、選択した前記定格最高回転速度又は前記減速回転速度に基づいて前記ポンプ部を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする給水装置。
[2] 前記試運転回転速度を、前記吸上揚程が0m、且つ、定格流量での目標圧力で運転した場合の停止流量時の回転速度としたことを特徴とする[1]に記載の給水装置。
[3] 前記記憶部には、前記ポンプ部を前記減速回転速度で駆動する前記吸上揚程である第1閾値が記憶され、
前記制御部は、算出した前記吸上揚程が前記第1閾値よりも深い場合には、前記減速回転速度を上限として前記ポンプ部を制御する、
ことを特徴とする[1]に記載の給水装置。
[4] 前記記憶部には、前記ポンプを起動する起動圧力が記憶され、
前記制御部は、前記流量センサで検出された流量が前記停止流量を超え、且つ、前記圧力センサで検出された圧力が前記起動圧力以下のときに、前記減速回転速度で前記ポンプ部を制御することを特徴とする[3]に記載の給水装置。
[5] 前記制御部は、前記ポンプ部の吐出圧力が前記起動圧力よりも一定値以上となった場合に、前記定格最高回転速度を上限として前記ポンプ部を制御することを特徴とする[4]に記載の給水装置。
[6] 渦流ポンプを使用するとともに、前記記憶部には、前記定格最高回転速度よりも高い増速回転速度と、前記ポンプ部を前記増速回転速度で駆動する前記吸上揚程である第2閾値が記憶され、
前記制御部は、算出した前記吸上揚程が前記第2閾値よりも浅い場合には、前記増速回転速度を上限として前記渦流ポンプを制御する、
ことを特徴とする[1]に記載の給水装置。
[7] 前記記憶部には、前記渦流ポンプを起動する起動圧力が記憶され、
前記制御部は、前記流量センサで検出された流量が前記停止流量を超え、且つ、前記圧力センサで検出された圧力が前記起動圧力以下のときに、前記増速回転速度で前記渦流ポンプを制御することを特徴とする[6]に記載の給水装置。
[8] 前記制御部は、前記渦流ポンプの吐出圧力が前記起動圧力よりも一定値以上となった場合に、前記定格最高回転速度を上限として前記渦流ポンプを制御することを特徴とする[7]に記載の給水装置。
[9] 吸上揚程が異なる設置場所を選択する切換スイッチを備え、
前記制御部は、前記切換スイッチにより深い吸上揚程が選択された場合には、前記定格最高回転速度を上限として前記ポンプ部を制御し、
前記切換スイッチにより浅い吸い上げ揚程が選択された場合には、前記流量センサで検出された流量が前記停止流量を超え、且つ、前記圧力センサで検出された圧力が前記起動圧力より一定値以下のときに、前記増速回転速度を上限とし、且つ、前記ポンプ部の吐出圧力が前記起動圧力よりも一定値以上となった場合に、前記定格最高回転速度を上限として前記ポンプ部を制御することを特徴とする[6]に記載の給水装置。
[10] 給水源に接続された吸込配管に接続された流路部に設けられたポンプ及び前記ポンプを駆動するモータを有するポンプ部を電源投入後に吐出圧力一定制御又は推定末端圧一定制御により駆動する通常運転前に、前記通常運転における前記モータの定格最高回転速度よりも低速の試運転回転速度で前記ポンプ部を試運転し、
前記ポンプの二次側に設けられた流量センサで検出された流量が前記停止流量以下であることを検出後、前記ポンプの二次側に設けられた圧力センサで検出された圧力を前記ポンプ部の全揚程から減算して吸上揚程を算出し、
算出した前記吸上揚程から、記憶部に記憶された前記定格最高回転速度又は減速回転速度を選択し、
選択した前記定格最高回転速度又は前記減速回転速度に基づいて前記ポンプ部を制御する、
ことを特徴とする給水装置の制御方法。
[11] 前記記憶部には、前記ポンプ部を前記減速回転速度で駆動する前記吸上揚程である第1閾値が記憶され、
算出した前記吸上揚程が前記第1閾値よりも深い場合には、前記減速回転速度を上限として前記ポンプ部を制御する、
ことを特徴とする[10]に記載の給水装置の制御方法。
[12] 前記記憶部には、前記ポンプ部を停止する停止流量及び前記ポンプを起動する起動圧力が記憶され、
前記流量センサで検出された流量が前記停止流量を超え、且つ、前記圧力センサで検出された圧力が前記起動圧力以下のときに、前記減速回転速度で前記ポンプ部を制御することを特徴とする[11]に記載の給水装置の制御方法。
[13] 渦流ポンプを使用するとともに、
前記記憶部には、前記定格最高回転速度よりも高い増速回転速度と、前記ポンプ部を前記増速回転速度で駆動する前記吸上揚程である第2閾値が記憶され、
算出した前記吸上揚程が前記第2閾値よりも浅い場合には、前記増速回転速度を上限として前記渦流ポンプを制御する、
ことを特徴とする[10]に記載の給水装置の制御方法。
[14] 前記記憶部には、前記渦流ポンプを起動する起動圧力が記憶され、
前記流量センサで検出された流量が前記停止流量を超え、且つ、前記圧力センサで検出された圧力が前記起動圧力以下のときに、前記増速回転速度で前記ポンプ部を制御することを特徴とする[13]に記載の給水装置の制御方法。
[15] 前記ポンプ部の吐出圧力が前記起動圧力よりも一定値以上となった場合に、前記定格最高回転速度を上限として前記ポンプ部を制御することを特徴とする[14]に記載の給水装置の制御方法。
[16] 前記吸上揚程が異なる設置場所を選択する切換スイッチにより深い前記吸上揚程が選択された場合に、前記定格最高回転速度を上限として前記ポンプ部を制御し、
前記切換スイッチにより浅い吸い上げ揚程が選択された場合に、前記流量センサで検出された流量が前記停止流量を超え、且つ、前記圧力センサで検出された圧力が前記起動圧力より一定値以下のときに、前記増速回転速度を上限とし、且つ、前記ポンプ部の吐出圧力が前記起動圧力よりも一定値以上となった場合に、前記定格最高回転速度を上限として前記ポンプ部を制御することを特徴とする[13]に記載の給水装置の制御方法。
【符号の説明】
【0098】
1…給水装置、10…吸込配管、11…吐出配管、21…ベース、22…流路部、22a…自吸室、23…ポンプ部、23a…モータ、23b…回転軸、23c…ポンプ、24…流量センサ、25…圧力センサ、26…アキュムレータ、27…電装部、31…センサ部、32…外郭体、33…フロート、34…磁石、41…ダイヤフラム、42…センサ部、43…基板、51…切換スイッチ、52…記憶部、53…制御部、100…給水源、100…井戸、101…井戸水、200…建造物、210…給水先、211…蛇口、300…水道本管、310…水道分岐管、320…受水槽、321…水。
図1
図2
図3
図4
図5
図6