(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、その画像形成原理から液晶パネル表面に偏光板を配置することが必要不可欠である。偏光板の機能は、直交する偏光成分(いわゆるP偏光波、S偏光波)の一方を吸収し、他方を透過させることである。
【0003】
従来、このような偏光板として、フィルム内にヨウ素系や染料系の高分子有機物を含有させた二色性の偏光板が多く用いられている。これらの一般的な製法として、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性材料で染色を行った後、架橋剤を用いて架橋を行い、一軸延伸する方法が用いられる。このように二色性の偏光板は、延伸により作製されるため、一般に収縮し易い。また、ポリビニルアルコール系フィルムは、親水性ポリマーを使用していることから、特に加湿条件下においては非常に変形し易い。また、根本的にフィルムを用いるため、デバイスとしての機械的強度が弱く、透明保護フィルムを接着する必要がある場合がある。
【0004】
近年、液晶表示装置は、その用途が拡大し、高機能化している。それに伴い、液晶表示装置を構成する個々のデバイスに対して、高い信頼性、耐久性が求められる。例えば、透過型液晶プロジェクターのような光量の大きな光源を使用する液晶表示装置の場合には、偏光板は強い輻射線を受ける。よって、これらに使用される偏光板には、優れた耐熱性が必要となる。しかしながら、上記のようなフィルムベースの偏光板は、有機物であることから、これらの特性を上げることにはおのずと限界がある。
【0005】
米国では、コーニング社よりPolarcorという商品名で耐熱性の高い無機偏光板が販売されている。この偏光板は、銀微粒子をガラス内に拡散させた構造をしておりフィルム等の有機物を使用していない。原理は、島状微粒子のプラズマ共鳴を利用するものである。すなわち、貴金属や遷移金属の島状粒子に光が入射した時の表面プラズマ共鳴による光吸収を利用するものであり、吸収波長は、粒子形状、周囲の誘電率の影響を受ける。ここで島状微粒子の形状を楕円形にすると長軸方向と短軸方向の共鳴波長が異なり、これにより偏光特性が得られ、具体的には長波長側での長軸に平行な偏光成分を吸収し、短軸と平行な偏光成分を透過させるという偏光特性が得られる。しかしながら、Polarcorの場合、偏光特性が得られる波長域は赤外部に近い領域であり、液晶表示装置で求められるような可視光域をカバーしていない。これは島状微粒子に用いられている銀の物理的性質によるものである。
【0006】
特許文献1には、上記の原理を応用し熱還元によりガラス中に微粒子を析出させることによるUV偏光板が示されており、金属微粒子として銀を用いることが提示されている。この場合、先のPolarcorとは逆に短軸方向での吸収を用いるものと考えられる。Figure1に示されているように400nm付近でも偏光板として機能はしているが消光比が小さくかつ吸収できる帯域が非常に狭いので、仮にPolarcorと特許文献1の技術を組み合わせたとしても可視光全域をカバーできる偏光板にはならない。
【0007】
また、非特許文献1には、金属島状微粒子のプラズマ共鳴を使った無機偏光板の理論解析が述べられている。この文献によればアルミニウム微粒子は銀微粒子より共鳴波長が200nm程度短く、このためアルミニウム微粒子を用いることで可視光域をカバーする偏光板を製作できる可能性があることが記述されている。
【0008】
また、特許文献2には、アルミニウム微粒子を使った偏光板の幾つかの作成方法が示されている。その中で、ケイ酸塩をベースとしたガラスでは、アルミニウムとガラスが反応するので基板としては望ましくなく、カルシウム・アルミノ硼酸塩ガラスが適していると記述されている(段落0018,0019)。しかし、ケイ酸塩を使用したガラスは、光学ガラスとして広く流通しており、信頼性の高い製品を安価に入手でき、これが適さないということは経済的に好ましくない。また、レジストパターンをエッチングすることで島状粒子を形成する方法が述べられている(段落0037,0038)。通常、プロジェクターで使用する偏光板は、数cm程度の大きさが必要でかつ高い消光比が要求される。従って、可視光用偏光板を目的とした場合、レジストパターンサイズは可視光波長より充分に短い、すなわち、数十ナノメートルの大きさが必要であり、また、高い消光比を得るためには、パターンを高密度に形成する必要がある。また、プロジェクター用として使用する場合には、大面積のパターンの形成が必要である。しかしながら、記述されているようなリソグラフィにより高密度微細パターン形成を応用する方法では、そのようなパターンを得るために電子ビーム描画などを用いる必要がある。電子ビーム描画は、個々のパターンを電子ビームより描く方法であり生産性が悪く実用的でない。
【0009】
また、特許文献2には、アルミニウムを塩素プラズマにより除去すると記述されているが、通常そのようにエッチングした場合には、アルミニウムパターンの側壁に塩化物が付着する。市販のウエットエッチング液(例えば東京応化工業のSST−A2)により塩化物の除去が可能であるが、アルミニウム塩化物に反応する薬液はアルミニウムにもエッチング速度は遅いながらも反応はするので、述べられているような方法で所望のパターン形状を実現することは難しい。
【0010】
さらに、特許文献2には、別な方法として、パターン化されたフォトレジスト上に斜め成膜によりアルミニウムを堆積し、フォトレジストを除去する方法が記述されている(段落0045,0047)。しかし、このような方法では、基板とアルミニウムの密着性を得るために、ある程度基板面にもアルミニウムを堆積する必要があるものと考えられる。しかし、これは堆積したアルミニウム膜の形状が段落0015に記述されている適当な形状である扁長の楕円体を含む扁長の球体とは異なることを意味する。また、段落0047には表面に垂直な異方性エッチングにより過沈積分を除去すると記述されている。偏光板として機能させるには、アルミニウムの形状異方性は極めて重要である。従ってレジスト部と基板面に堆積するアルミニウムの量をエッチングにより所望の形状が得られるように調整する必要があると考えられるが、段落0047に記述されているような0.05μmというサブミクロン以下のサイズでこれらを制御することは非常に困難と考えられ、生産性の高い製作方法として適しているか疑問である。また、偏光板の特性として透過軸方向については高い透過率が求められるが、通常、基板にガラスを用いた場合、ガラス界面から数%の反射は避けられず、高い透過率を得ることが難しい。
【0011】
また、特許文献3には、斜め蒸着による偏光板について記述されている。この方法は、使用帯域の波長に対して透明及び不透明な物質を斜め蒸着により微小柱状構造を製作することで偏光特性を得るものであり、特許文献1と異なり、簡便な方法で微細パターンを得られるため生産性の高い方法と考えられる。しかしながら、使用帯域に対して不透明な物質の微小柱状構造のアスペクト比、個々の微小柱状構造の間隔、直線性は、良好な偏光特性を得るために重要な要素であり、特性の再現性の観点からも意図的に制御されるべきものであるが、この方法では蒸着粒子の初期堆積層の影となる部分に次に飛来する蒸着粒子が堆積しないことにより柱状構造が得られるという現象を利用しているため、上記の項目を意図的に制御することが難しい。これを改善する方法として、蒸着前にラビング処理により基板に研磨痕を設ける方法が記述されているが、一般的には蒸着膜の粒子径は最大でも数十nm程度の大きさであり、このような粒子の異方性を制御するにはサブミクロン以下のピッチを研磨により意図的に製作する必要がある。しかし、一般の研磨シート等では、サブミクロン程度が限界であり、そのような微細な研磨痕を製作することは容易でない。また、前記のようにAl微粒子の共鳴波長は周りの屈折率に大きく依存し、この場合、透明及び不透明な物質の組み合わせが重要であるが、特許文献3には、可視光域で良好な偏光特性を得るための組み合わせについて記述がされていない。また、特許文献1と同様に、基板としてガラスを用いた場合、ガラス界面から数%の反射は避けられない。
【0012】
また、非特許文献2には、Lamipolと称する赤外通信用の偏光板について記述されている。これは、AlとSiO
2の積層構造をしており、この文献によれば非常に高い消光比を示す。また、非特許文献3には、Lamipolの光吸収を担うAlの代わりにGeを使うことで、波長1μm以下で高い消光比を実現できることが述べられている。また、同資料中のFig3からTe(テルル)も高い消光比が得られることが期待できる。このようにLamipolは、高い消光比が得られる吸収型偏光板であるが、吸光物質と透過性物質の積層厚が受光面の大きさとなるために数cm角の大きさが必要なプロジェクター用途の偏光板には向かない。
【0013】
また、特許文献4には、ワイヤグリッド構造と吸収膜とを組み合わせた偏光板が記載されている。吸収膜に金属や半導体膜を用いる場合、材料の光学特性に強く影響されるため、材料とワイヤグリッドと吸収膜の間の誘電体膜厚を調整することで、特定域の反射率を軽減することが可能であるが、広波長域でこれを実現することは困難である。
【0014】
また、吸収性の高いTaやGeなどを使うことで、帯域を広げることが可能であるが、透過軸方向の吸収が同時に大きくなり、偏光板で重要な特性である透過軸方向の透過率が低下してしまう。
【0015】
上記問題への改善策として、吸収膜への微粒子の適用がある。しかし、これまで提案されている斜め成膜を用いて直接吸収膜を堆積する方法では、堆積させる吸収膜のシャドーイングによる自己組織化に頼っているため、材料自体の物性や基板の粗度などに強く影響を受け、吸収特性の制御が困難であった。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する。
1.偏光板の構成
2.偏光板の製造方法
3.実施例
【0026】
<1.偏光板>
本実施の形態に係る偏光板は、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成されたバンドル構造層が光吸収や光散乱を増大させるため、結果として、反射率を低下させ、優れた光学特性を得るものである。
【0027】
なお、本明細書及び図面の光学特性を示すグラフにおいて、Tpは、x軸方向の直線偏光に対する透過率(透過軸透過率)、Tsは、y軸方向の直線偏光に対する透過率(吸収軸透過率)、Rpは、x軸方向の直線偏光に対する反射率(透過軸反射率)、及び、Rsは、y軸方向の直線偏光に対する反射率(吸収軸反射率)を示す。
【0028】
[第1の実施の形態]
図1Aは、構成例1の偏光板を示す概略断面図であり、
図1Bは、構成例2の偏光板を示す概略断面図である。
【0029】
図1Aに示す構成例1の偏光板は、使用帯域の光を透過する透光基板11と、透光基板11上に形成され、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成されたバンドル構造層12と、バンドル構造層12上に形成された吸収層13と、吸収層13上に形成された誘電体層14と、誘電体層14上に形成され、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された反射層15とを備える。
【0030】
また、バンドル構造層12、吸収層13、及び誘電体層14のうち1層以上が、反射層15と同様、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列されてなることが好ましい。
【0031】
また、バンドル構造層12、吸収層13、及び誘電体層14の全てが、反射層15と同様、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列されてなることがより好ましい。例えば、
図1Bに示す構成例2の偏光板のように、使用帯域の光を透過する透光基板11と、透光基板11上に形成され、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成されたバンドル構造層12と、バンドル構造層12上に形成された吸収層13と、吸収層13上に形成された誘電体層14と、誘電体層14上に形成された反射層15とを備え、バンドル構造層12、吸収層13、誘電体層14、及び反射層15が一次元格子状に配列されてなることが好ましい。すなわち、この偏光板は、透光基板11側からバンドル構造層12と吸収層13と誘電体層14と反射層15とがこの順に積層された凸部が、透光基板11上に一定間隔に並んだ一次元格子状のワイヤグリッド構造を有する。なお、バンドル構造層12の透過軸透過率が高く、所望の光学特性が得られるならば、ワイヤグリッド構造の凹部の底部が、透光基板11ではなく、バンドル構造層12であっても構わない。また、プロセス上の都合で、透明基板11がエッチングされ、溝部になっても構わない。
【0032】
このようにバンドル構造層12、吸収層13、及び誘電体層14のうち1層以上が、反射層15と同様に使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列されてなることにより、コントラスト(消光比:透過軸透過率/吸収軸透過率)を向上させることができる。
【0033】
透光基板11は、使用帯域の光に対して透明で、屈折率が1.1〜2.2の材料、例えば、ガラス、サファイア、水晶などで構成されている。本実施の形態では、透光基板11の構成材料として、熱伝導性の高い水晶やサファイア基板を用いることが好ましい。これにより、強い光に対して高い耐光性を有することとなり、発熱量の多いプロジェクターの光学エンジン用の偏光板として有用となる。
【0034】
また、透光基板11が水晶のような複屈折の結晶からなる場合、結晶の光学軸に対して平行方向又は垂直方向に格子状凸部を配置することにより、優れた光学特性を得ることができる。ここで、複屈折結晶において、O(常光線)とE(異常光線)に分かれない光の入射方向を光学軸という。
【0035】
なお、偏光板の用途によっては、ガラス、特に、石英(屈折率1.46)やソーダ石灰ガラス(屈折率1.51)を用いてもよい。ガラス材料の成分組成は特に制限されず、例えば光学ガラスとして広く流通しているケイ酸塩ガラスなどの安価なガラス材料を用いることができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0036】
バンドル構造層12は、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成され、斜め蒸着又は斜めスパッタにより誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる無機微粒子が積層されて形成される。誘電体としては、Ta、Si、Ti、Al、Mg、La、Zr、Nbのうち1種以上を含む酸化物からなることが好ましい。酸化物の具体例としては、Ta
2O
5、SiO
2、TiO
2、Al
2O
3、MgO、CeO
2、ZrO
2、ZrO、Nb
2O
5などが挙げられる。
【0037】
また、金属材料、半導体材料などの光学定数の消衰定数が零でない、光吸収作用を持つ物質を用いてもよい。金属材料としては、Ta、Al、Ag、Cu、Au、Mo、Cr、Ti、W、Ni、Fe、Sn単体もしくはこれらを含む合金が挙げられる。半導体材料としては、Si、Ge、Te、ZnO、シリサイド材料(β−FeSi
2、MgSi
2、NiSi
2、BaSi
2、CrSi
2、C
OSi
2、TaSi)などが挙げられる。また、例えばSiにFeが添加された混合材料のように、半導体材料と金属材料の混合材料を用いてもよい。このように金属材料、半導体材料などによる光吸収の異方性と、無機微粒子の堆積による光吸収の異方性とを利用することにより、バンドル構造層12の光吸収の異方性を増大させることができる。
【0038】
図2Aは、斜め蒸着により無機微粒子が柱状に堆積されたバンドル構造例を示す断面図であり、
図2Bは、1回の斜め蒸着により形成される無機微粒子層を示す斜視図である。バンドル構造層12は、x、y、z直交座標におけるxy平面を基板面としたとき、xy平面において180°異なる蒸着方向Aと蒸着方向Bの2方向から交互に無機微粒子12aを斜め蒸着させて形成される。無機微粒子12aは、使用帯域の波長以下のサイズであって、個々の粒子が完全に孤立していることが望ましい。無機微粒子12aは、斜め蒸着特有のシャドーイング効果により形状異方性を有し、この結果、X軸、Y軸の光学定数(屈折率と消衰係数)が異なる光学異方性が生じやすい。バンドル構造層12の消衰係数は、酸化の度合いで制御でき、消衰係数がゼロでない場合は、光吸収特性を有する。
【0039】
図3Aは、X方向から観察した断面のSEM(Scanning Electron Microscope)写真であり、
図3Bは、
図3Aの拡大写真である。また、
図4Aは、Y方向から観察した断面のSEM写真であり、
図4Bは、
図4Aの拡大写真である。また、
図5は、Z方向から観察した平面のSEM写真である。このバンドル構造は、
図2Aにおいて、1回の斜め蒸着による無機微粒子層の厚さt
1が7nmとなるようにTa
2O
5を柱状に堆積して形成した。また、バンドル構造の総厚さtは1500nmであった。
【0040】
このバンドル構造は、
図3B及び
図4Bに示す断面形状(X,Y)のように、ナノサイズの柱の束で構成され、柱間には空隙が存在する。また、
図5に示す平面写真(Y)のように、基板面から見ると細長い微粒子形状の集合体で構成されている。
【0041】
図6Aは、ガラス基板上にTa
2O
5を柱状に50nm堆積したバンドル構造の光学特性を示すグラフであり、
図6Bは、バンドル構造をZ方向から観察した平面のSEM写真である。
図6Aに示すように、バンドル構造は、光学的異方性を有し、通常の誘電薄膜とは大きく異なる特性となる。また、バンドル構造が光学異方性を有することは、光学異方性が必要となる偏光板にとって非常に有用である。
【0042】
吸収層13は、Si、Ta、Fe、Al、W、Ti、Nbのうち1種以上を含むことが好ましい。吸収層13は、蒸着法やスパッタ法により、金属、半導体など光学定数の消衰定数が零でない、光吸収作用を持つ物質の1種以上から形成され、その材料は、適用される光の波長範囲によって選択される。金属材料としては、Ta、Al、Ag、Cu、Au、Mo、Cr、Ti、W、Ni、Fe、Sn、Nb単体もしくはこれらを含む合金が挙げられる。半導体材料としては、Si、Ge、Te、ZnO、シリサイド材料(β−FeSi
2、MgSi
2、NiSi
2、BaSi
2、CrSi
2、C
OSi
2、TaSi)などが挙げられる。また、例えばSiにFeが添加された混合材料のように、半導体材料と金属材料の混合材料を用いてもよい。
【0043】
なお、半導体材料を用いる場合、吸収作用に半導体のバンドギャップエネルギーが関与するため、半導体材料のバンドギャップエネルギーが、使用帯域の波長の吸収に相当するバンドギャップエネルギー以下であることが必要である。例えば、可視光で使用する場合、波長400nm以上での吸収、すなわちバンドギャップとしては3.1eV以下の材料を使用する必要がある。
【0044】
また、吸収層13は、前述した金属材料及び/又は半導体材料を組み合わせて使用することにより、使用帯域の光に対して干渉効果を高めて所望の波長での透過軸方向のコントラストを増大させるとともに、透過型液晶表示装置において好ましくない偏光板からの反射成分を低下させることができる。
【0045】
具体的な材料の組み合わせは、屈折率n、消衰定数kなどの光学定数に基づいて選択される。例えば、屈折率が高いSi(n=4.08(550nm)、k=0.04)を用いる場合、屈折率差が大きく、消衰定数kがSiよりも大きいTa(n=2.48(550nm)、k=1.83)を用いることにより、吸収効果や干渉効果を高めてコントラストを増大させることができる。また、バンドル構造層12の誘電体にTa
2O
5(n=2.16(550nm))を用いた場合、バンドル構造層12上に屈折率差が小さいTa層を形成し、Ta層上にSi層を形成することにより、反射を抑制し、透過率を向上させることができる。また、Si層は、Feを含有することが好ましい。これにより、反射率の抑制効果を向上させることができる。
【0046】
図7Aは、バンドル構造層上にTaをスパッタ法により20nm堆積させた構成の光学特性を示すグラフであり、
図7Bは、この構成をZ方向から観察した平面のSEM写真である。
また、
図8Aは、ガラス基板上にTaをスパッタ法により20nm堆積させた構成の光学特性を示すグラフであり、
図8Bは、この構成をZ方向から観察した平面のSEM写真である。バンドル構造は、ガラス基板上にTa
2O
5を25nm堆積させて形成した。
【0047】
図7Aと
図8Aとを比較すれば分かるように、ガラス/バンドル構造/Ta膜の光学特性は、光学異方性を有し、ガラス/Ta膜とは大きく異なる特性となっている。ガラス/バンドル構造/Ta膜の光学特性は、バンドル構造が波長以下の大きさの細長い微粒子で構成されているため、ガラス/Ta膜の光学特性に比べて吸収や散乱が増大し、結果として反射率の低下を達成することができる。また、Tp>Tsとなっており、光学異方性の観点からも良好である。
【0048】
このようにバンドル構造層12と吸収層13とを組み合わせることにより、偏光機能を発現させることができ、これらを単独で偏光板として利用することが可能であるが、さらにこの上に誘電体層14を介して反射層15を形成し、干渉効果を高めてもよい。
【0049】
誘電体層14は、吸収層13で反射した偏光に対して、吸収層13を透過し、反射層15で反射した当該偏光の位相が半波長ずれる膜厚で形成されている。具体的な膜厚は、偏光の位相を調整し、干渉効果を高めることが可能な1〜500nmの範囲で適宜設定される。本実施の形態では、吸収層13が反射した光を吸収するため、膜厚が最適化されていなくてもコントラストの向上が実現でき、実用上は、所望の偏光特性と実際の作製工程の兼ね合いで決定して構わない。
【0050】
誘電体層14を構成する材料は、SiO
2、Al
2O
3、MgF
2などの一般的な材料を用いることができる。また、誘電体層14の屈折率は、1.0より大きく2.5以下とすることが好ましい。なお、吸収層13の光学特性は、周囲の屈折率によっても影響を受けるため、誘電体層14の材料により偏光特性を制御してもよい。
【0051】
反射層15は、誘電体層14上に吸収軸であるY方向に帯状に延びた金属薄膜が配列されてなるものである。すなわち、反射層15は、ワイヤグリッド型偏光子としての機能を有し、透光基板11側から入射した光のうち、ワイヤグリッドの長手方向に平行な方向(Y軸方向)に電界成分をもつ偏光波(TE波(S波))を減衰させ、ワイヤグリッドの長手方向と直交する方向(X軸方向)に電界成分をもつ偏光波(TM波(P波))を透過させる。
【0052】
反射層15の構成材料には、使用帯域の光に対して反射性を有する材料であれば特に制限されず、例えばAl、Ag、Cu、Mo、Cr、Ti、Ni、W、Fe、Si、Ge、Teなどの金属単体もしくはこれらを含む合金あるいは半導体材料を用いることができる。なお、金属材料以外にも、例えば着色等により表面の反射率が高く形成された金属以外の無機膜や樹脂膜で構成されていてもよい。
【0053】
なお、反射層15のピッチ、ライン幅/ピッチ、薄膜高さ(厚さ、格子深さ)、薄膜長さ(格子長さ)は、それぞれ以下の範囲とするのが好ましい。
0.05μm<ピッチ<0.8μm
0.1<(ライン幅/ピッチ)<0.9
0.01μm<薄膜高さ<1μm
0.05μm<薄膜長さ
【0054】
また、光学特性の変化が実用上影響を与えない範囲で、透光基板11及び格子状凸部の表面を被覆する保護膜を備えることが好ましい。例えばSiO
2などを堆積させることにより、耐湿性などの信頼性を改善することができる。保護膜の形成方法としては、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)を用いることが好ましい。プラズマCVDを用いることにより、格子状凸部の隙間にも保護膜を堆積させることができる。
【0055】
このような構成の偏光板によれば、透過、反射、干渉、偏光波の選択的光吸収の4つの作用を利用することで、反射層の格子に平行な電界成分をもつ偏光波(TE波(S波))を減衰させ、格子に垂直な電界成分をもつ偏光波(TM波(P波))を透過させることができる。すなわち、TE波は、吸収層13の偏光波の選択的光吸収作用によって減衰され、吸収層13及び誘電体層14を透過したTE波は、ワイヤグリッドとして機能する格子状の反射層15によって反射される。ここで、誘電体層14の厚さ、屈折率を適宜調整することによって、反射層15で反射したTE波について、吸収層13を透過する際に一部を反射し、反射層15に戻すことができ、また、吸収層13を通過した光を干渉により減衰させることができる。以上のようにしてTE波の選択的減衰を行うことにより、所望の偏光特性を得ることができる。
【0056】
また、第1の実施の形態に係る偏光板は、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成されたバンドル構造層12を有しているため、光吸収や光散乱を増大させ、結果として、反射率を低下させ、優れた光学特性を得ることができる。また、第1の実施の形態に係る偏光板は、有機物よりも耐久性の高い無機物で構成されているため、液晶プロジェクターに使われるような強い光に対して高い耐光特性を示し、高い信頼性を得ることができる。また、第1の実施の形態に係る偏光板は、広波長域で反射率を軽減することができるため、カメラ用偏光フィルターや、液晶TV用偏光板など、汎用偏光板への適用が可能となり、高い信頼性で様々なニーズに応えることができる。
【0057】
[第1の実施の形態の変形例]
次に、第1の実施の形態の変形例について、図面を参照して説明する。なお、
図1A及び
図1Bに示す構成例1、2と同一又は相当要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0058】
図9Aは、構成例3の偏光板を示す概略断面図であり、
図9Bは、構成例4の偏光板を示す概略断面図である。前述したように、バンドル構造層12と吸収層13とを組み合わせることにより、光吸収の異方性を増大させることができ、偏光板として利用することができる。
【0059】
図9Aに示す構成例3の偏光板は、使用帯域の光を透過する透光基板11と、透光基板11上に形成され、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成されたバンドル構造層12と、バンドル構造層12上に形成された吸収層13とを備える。
【0060】
また、バンドル構造層12、及び吸収層13のうち1層以上が、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列されてなることが好ましい。
【0061】
また、バンドル構造層12、及び吸収層13の全てが、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列されてなることがより好ましい。例えば、
図9Bに示す構成例4の偏光板のように、使用帯域の光を透過する透光基板11と、透光基板11上に形成され、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成されたバンドル構造層12と、バンドル構造層12上に形成された吸収層13とを備え、バンドル構造層12、及び吸収層13が一次元格子状に配列されてなることが好ましい。すなわち、この偏光板は、透光基板11側からバンドル構造層12と吸収層13とがこの順に積層された凸部が、透光基板11上に一定間隔に並んだ一次元格子状のグリッド構造を有する。
【0062】
このようにバンドル構造層12、及び吸収層13のうち1層以上が、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列されてなることにより、コントラスト(消光比:透過軸透過率/吸収軸透過率)を向上させることができる。なお、バンドル構造層12の透過軸透過率が高く、所望の光学特性が得られるならば、グリッド構造の凹部の底部が、透光基板11ではなく、バンドル構造層12であっても構わない。
【0063】
図10Aは、構成例5の偏光板を示す概略断面図であり、
図10Bは、構成例6の偏光板を示す概略断面図である。この構成例5、6は、
図1に示す構成例1、2にさらに上部バンドル構造層22と、上部吸収層23とを備えたものである。
【0064】
すなわち、
図10Aに示す構成例5の偏光板は、使用帯域の光を透過する透光基板11と、透光基板11上に形成され、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成されたバンドル構造層12と、バンドル構造層12上に形成された吸収層13と、吸収層13上に形成された誘電体層14と、誘電体層14上に形成され、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された反射層15と、反射層15上に形成され、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成され、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された上部バンドル構造層22と、上部バンドル構造層22上に形成され、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された上部吸収層23とを備える。上部バンドル構造層22及び上部吸収層23は、それぞれバンドル構造層12及び吸収層13と相当する要素であり、ここでは説明を省略する。
【0065】
また、バンドル構造層12、吸収層13、及び誘電体層14のうち1層以上が、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列されてなることが好ましい。
【0066】
また、バンドル構造層12、吸収層13、及び誘電体層14の全てが、反射層15と同様、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列されてなることがより好ましい。例えば、
図10Bに示す構成例6の偏光板のように、使用帯域の光を透過する透光基板11と、透光基板11上に形成され、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成されたバンドル構造層12と、バンドル構造層12上に形成された吸収層13と、吸収層13上に形成された誘電体層14と、誘電体層14上に形成された反射層15と、反射層15上に形成され、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成された上部バンドル構造層22と、上部バンドル構造層22上に形成された上部吸収層23とを備え、バンドル構造層12、吸収層13、誘電体層14、反射層15、上部バンドル構造層22、及び上部吸収層23が一次元格子状に配列されてなることが好ましい。すなわち、この偏光板は、透光基板11側からバンドル構造層12と吸収層13と誘電体層14と反射層15と上部バンドル構造層22と上部吸収層23とがこの順に積層された凸部が、透光基板11上に一定間隔に並んだ一次元格子状のワイヤグリッド構造を有する。
【0067】
また、
図11Aは、構成例7の偏光板を示す概略断面図であり、
図11Bは、構成例8の偏光板を示す概略断面図である。この構成例7、8は、
図10に示す構成例5、6において、反射層15と上部バンドル構造層22との間に、上部誘電体層24を備えたものである。
【0068】
すなわち、
図11Aに示す構成例7の偏光板は、使用帯域の光を透過する透光基板11と、透光基板11上に形成され、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成されたバンドル構造層12と、バンドル構造層12上に形成された吸収層13と、吸収層13上に形成された誘電体層14と、誘電体層14上に形成され、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された反射層15と、反射層15上に形成され、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された上部誘電体層24と、上部誘電体層24上に形成され、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成され、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された上部バンドル構造層22と、上部バンドル構造層22上に形成され、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された上部吸収層23とを備える。上部誘電体層24は、誘電体層14に相当する要素であり、ここでは説明を省略する。
【0069】
また、
図11Bに示す構成例8の偏光板は、使用帯域の光を透過する透光基板11と、透光基板11上に形成され、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成されたバンドル構造層12と、バンドル構造層12上に形成された吸収層13と、吸収層13上に形成された誘電体層14と、誘電体層14上に形成された反射層15と、反射層上に形成された上部誘電体層24と、上部誘電体層24上に形成され、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成された上部バンドル構造層22と、上部バンドル構造層22上に形成された上部吸収層23とを備え、バンドル構造層12、吸収層13、誘電体層14、反射層15、上部誘電体層24、上部バンドル構造層22、及び上部吸収層23が一次元格子状に配列されてなる。
【0070】
図10A、
図10B、
図11A、及び
図11Bに示す構成例5〜構成例8のように、上部バンドル構造層22及び上部吸収層23を備えることにより、透光基板11側及び上部吸収層23側の両面に光源を配置することができる。
【0071】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について、図面を参照して説明する。第1の実施の形態では、透光基板11上にバンドル構造層12を形成することとしたが、第2の実施の形態では、吸収膜上にバンドル構造層12を形成する。なお、第1の実施の形態と同一又は相当要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0072】
図12Aは、構成例9の偏光板を示す概略断面図であり、
図12Bは、構成例10の偏光板を示す概略断面図である。
【0073】
図12Aに示す構成例9の偏光板は、使用帯域の光を透過する透光基板11と、透光基板11上に形成された吸収層33と、吸収層33上に形成され、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成されたバンドル構造層12とを備える。
【0074】
吸収層33は、例えば、バンドル構造層12をマスクとしてエッチングを施すことや、斜め蒸着などにより、微粒子化されている。吸収層33の材料は、構成例1〜構成例8の吸収層13と同様に、例えば、Si、Ta、Fe、Al、W、Ti、Nb、Ag、Cu、Auのうち1種以上を含むものが用いられる。これにより、優れた偏光特性を得ることができる。
【0075】
また、吸収層33、及びバンドル構造層12のうち1層以上が、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列されてなることが好ましい。
【0076】
また、吸収層33、及びバンドル構造層12の全てが、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列されてなることがより好ましい。例えば、
図12Bに示す構成例10の偏光板のように、使用帯域の光を透過する透光基板11と、透光基板11上に形成された吸収層33と、吸収層13上に形成され、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成されたバンドル構造層12とを備え、吸収層33、及びバンドル構造層12が一次元格子状に配列されてなることが好ましい。すなわち、この偏光板は、透光基板11側から吸収層33とバンドル構造層12とがこの順に積層された凸部が、透光基板11上に一定間隔に並んだ一次元格子状のグリッド構造を有する。
【0077】
このように吸収層33、及びバンドル構造層12のうち1層以上が、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列されてなることにより、コントラスト(消光比:透過軸透過率/吸収軸透過率)を向上させることができる。
【0078】
図13Aは、構成例11の偏光板を示す概略断面図であり、
図13Bは、構成例12の偏光板を示す概略断面図である。
【0079】
図13Aに示す構成例11の偏光板は、使用帯域の光を透過する透光基板11と、透光基板11上に形成された吸収層33と、吸収層33上に形成され、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成されたバンドル構造層12と、バンドル構造層12に形成され、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された反射層15とを備える。
【0080】
また、吸収層33、及びバンドル構造層12のうち1層以上が、反射層15と同様、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列されてなることが好ましい。
【0081】
また、吸収層33、及びバンドル構造層12の全てが、反射層15と同様、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列されてなることがより好ましい。例えば、
図13Bに示す構成例12の偏光板のように、使用帯域の光を透過する透光基板11と、透光基板11上に形成された吸収層33と、吸収層33上に形成され、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成されたバンドル構造層12と、バンドル構造層12上に形成された反射層15とを備え、吸収層33、バンドル構造層12、及び反射層15が一次元格子状に配列されてなることが好ましい。すなわち、この偏光板は、透光基板11側から吸収層33とバンドル構造層12と反射層15とがこの順に積層された凸部が、透光基板11上に一定間隔に並んだ一次元格子状のワイヤグリッド構造を有する。
【0082】
このように吸収層33、及びバンドル構造層12のうち1層以上が、反射層15と同様に使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列されてなることにより、コントラスト(消光比:透過軸透過率/吸収軸透過率)を向上させることができる。
【0083】
図14Aは、構成例13の偏光板を示す概略断面図であり、
図14Bは、構成例14の偏光板を示す概略断面図である。この構成例13、14は、
図13に示す構成例11、12にさらに上部バンドル構造層22と、上部吸収層23とを備えたものである。
【0084】
すなわち、
図14Aに示す構成例13の偏光板は、使用帯域の光を透過する透光基板11と、透光基板11上に形成された吸収層33と、吸収層33上に形成され、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成されたバンドル構造層12と、バンドル構造層12に形成され、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された反射層15と、反射層15上に形成され、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成され、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された上部バンドル構造層22と、上部バンドル構造層22上に形成され、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された上部吸収層23とを備える。上部バンドル構造層22及び上部吸収層23は、それぞれバンドル構造層12及び吸収層33と相当する要素であり、ここでは説明を省略する。
【0085】
また、吸収層33、及びバンドル構造層12のうち1層以上が、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列されてなることが好ましい。
【0086】
また、吸収層33、及びバンドル構造層12の全てが、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列されてなることがより好ましい。例えば、
図14Bに示す構成例14の偏光板のように、使用帯域の光を透過する透光基板11と、透光基板11上に形成された吸収層33と、吸収層33上に形成され、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成されたバンドル構造層12と、バンドル構造層12上に形成された反射層15と、反射層15上に形成され、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成された上部バンドル構造層22と、上部バンドル構造層22上に形成された上部吸収層23とを備え、吸収層33、バンドル構造層12、及び反射層15が一次元格子状に配列されてなることが好ましい。すなわち、この偏光板は、透光基板11側から吸収層33とバンドル構造層12と反射層15と上部バンドル構造層22と上部吸収層23とがこの順に積層された凸部が、透光基板11上に一定間隔に並んだ一次元格子状のワイヤグリッド構造を有する。
【0087】
また、
図15Aは、構成例15の偏光板を示す概略断面図であり、
図15Bは、構成例16の偏光板を示す概略断面図である。この構成例15、16は、
図14に示す構成例13、14において、反射層15と上部バンドル構造層22との間に、上部誘電体層24を備えたものである。
【0088】
すなわち、
図15Aに示す構成例15の偏光板は、使用帯域の光を透過する透光基板11と、透光基板11上に形成された吸収層33と、吸収層33上に形成され、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成されたバンドル構造層12と、バンドル構造層12上に形成され、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された反射層15と、反射層15上に形成され、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された上部誘電体層24と、上部誘電体層24上に形成され、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成され、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された上部バンドル構造層22と、上部バンドル構造層22上に形成され、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された上部吸収層23とを備える。上部誘電体層24は、構成例1〜2及び構成例5〜8の誘電体層14に相当する要素であり、ここでは説明を省略する。
【0089】
また、
図15Bに示す構成例16の偏光板は、使用帯域の光を透過する透光基板11と、透光基板11上に形成された吸収層33と、吸収層33上に形成され、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成されたバンドル構造層12と、バンドル構造層12上に形成された反射層15と、反射層15上に形成された上部誘電体層24と、上部誘電体層24上に形成され、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成された上部バンドル構造層22と、上部バンドル構造層22上に形成された上部吸収層23とを備え、吸収層33、バンドル構造層12、反射層15、上部誘電体層24、上部バンドル構造22、及び上部吸収層23が一次元格子状に配列されてなる。
【0090】
図14A、
図14B、
図15A、及び
図15Bに示す構成例13〜構成例16のように、上部バンドル構造層22及び上部吸収層23を備えることにより、透光基板11側及び上部吸収層23側の両面に光源を配置することができる。
【0091】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態について、図面を参照して説明する。第3の実施の形態では、透光基板11上に反射層15を形成して偏光板を構成する。なお、第1の実施の形態と同一又は相当要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0092】
図16Aは、構成例17の偏光板を示す概略断面図であり、
図16Bは、構成例18の偏光板を示す概略断面図である。
【0093】
図16Aに示す構成例17の偏光板は、使用帯域の光を透過する透光基板11と、透光基板11上に形成され、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された反射層15と、反射層15上に形成され、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成された上部バンドル構造層22と、上部バンドル構造層22上に形成された上部吸収層23とを備える。
【0094】
また、構成例18は、構成例17において、反射層15と上部バンドル構造層22との間に、上部誘電体層24を備えたものである。すなわち、
図16Bに示す構成例18の偏光板は、使用帯域の光を透過する透光基板11と、透光基板11上に形成され、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された反射層15と、反射層15上に形成され、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された上部誘電体層24と、上部誘電体層24上に形成され、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成され、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された上部バンドル構造層22と、上部バンドル構造層22上に形成され、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された上部吸収層23とを備える。
【0095】
図16A、及び
図16Bに示す構成例17、18のように、基板上の反射層と吸収層とを、第1及び第2の実施の形態に係る偏光板の構成と反対になるように形成することにより、上部吸収層23側に光源を配置することができる。
【0096】
[第4の実施の形態]
次に、第4の実施の形態について、図面を参照して説明する。第4の実施の形態は、バンドル構造内に吸収層を形成するものであり、バンドル構造層が、金属、又は半導体からなる層を1層以上含むものである。なお、第1の実施の形態と同一又は相当要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0097】
図17Aは、構成例19の偏光板を示す概略断面図である。
図17Aに示す構成例19の偏光板は、使用帯域の光を透過する透光基板11と、透光基板11上に形成され、誘電体からなる柱状の束で構成されたバンドル構造層12aと、バンドル構造層12a上に形成され、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成されたバンドル構造層12bと、バンドル構造層12b上に形成され、誘電体からなる柱状の束で構成されたバンドル構造層12cとを備える。
【0098】
バンドル構造層12bは、金属、又は半導体からなる層を1層以上含むものである。バンドル構造層12bの各層は、Si、Ta、Fe、Al、W、Ti、Nb、Ag、Cu、Auのうち1種以上を含む微粒子からなり、バンドル構造層12a,12cと同様に斜め蒸着により形成される。すなわち、構成例19の偏光板は、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成されたバンドル構造が透光基板11上に形成されたものである。この構成例19単独で偏光板として利用することが可能であるが、バンドル構造層12c上に誘電体層と、反射層とを備えるワイヤグリッド構造をさらに形成することにより、コントラストを向上させることができる。
【0099】
[第5の実施の形態]
次に、第5の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、第1の実施の形態と同一又は相当要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0100】
図17Bは、構成例20の偏光板を示す概略断面図である。
図17Bに示す構成例20の偏光板は、使用帯域の光を透過する透光基板11と、透光基板11上に形成され、酸化物からなる柱状の束で構成されたバンドル構造層32とを備える。
【0101】
バンドル構造層32は、Si、Ta、Ti、Al、Mg、La、Zr、Nbのうち1種以上を含む酸化物からなり、水素ガスなどを使用した還元などにより、酸化物が酸化欠損している。これにより、酸化物の酸化度が低下し、光吸収特性を向上させることができる。この構成例20単独で偏光板として利用することも可能であるが、バンドル構造層32上に誘電体層と、反射層とを備えるワイヤグリッド構造をさらに形成することにより、コントラストを向上させることができる。
【0102】
[第6の実施の形態]
次に、第6の実施の形態について、図面を参照して説明する。前述したように、バンドル構造のみで優れた光学異方性を得ることが可能であり、第6の実施の形態では、バンドル構造層が吸収層を兼ねる。なお、第1の実施の形態と同一又は相当要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0103】
図18Aは、構成例21の偏光板を示す概略断面図であり、
図18Bは、構成例22の偏光板を示す概略断面図である。
【0104】
図18Aに示す構成例21の偏光板は、使用帯域の光を透過する透光基板11と、透光基板11上に形成され、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成され、光学異方性を有するバンドル構造層42と、バンドル構造層42上に形成された誘電体層14と、誘電体層14上に形成され、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された反射層15とを備える。バンドル構造層42は、光学異方性を有し、金属、又は半導体からなる層を1層以上含むことが好ましい。具体的には、バンドル構造層42の各層は、Si、Ta、Fe、Al、W、Ti、Nb、Ag、Cu、Auのうち1種以上を含む微粒子からなる層を1層以上含むことが好ましい。
【0105】
また、バンドル構造層42、及び誘電体層14のうち1層以上が、反射層15と同様、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列されてなることが好ましい。
【0106】
また、バンドル構造層42、及び誘電体層14の全てが、反射層15と同様、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列されてなることがより好ましい。例えば、
図18Bに示す構成例22の偏光板のように、使用帯域の光を透過する透光基板11と、透光基板11上に形成され、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成されたバンドル構造層42と、バンドル構造層42上に形成された誘電体層14と、誘電体層14上に形成された反射層15とを備え、バンドル構造層42、誘電体層14、及び反射層15が一次元格子状に配列されてなることが好ましい。すなわち、この偏光板は、透光基板11側からバンドル構造層42と誘電体層14と反射層15とがこの順に積層された凸部が、透光基板11上に一定間隔に並んだ一次元格子状のワイヤグリッド構造を有する。なお、バンドル構造層42の透過軸透過率が高く、所望の光学特性が得られるならば、ワイヤグリッド構造の凹部の底部が、透光基板11ではなく、バンドル構造層42であっても構わない。
【0107】
このようにバンドル構造層42、及び誘電体層14のうち1層以上が、反射層15と同様に使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列されてなることにより、コントラスト(消光比:透過軸透過率/吸収軸透過率)を向上させることができる。
【0108】
[蒸着装置の構成例]
TVなど大型画面用の偏光板を製造する場合、大面積のバンドル構造を作製する必要がある。ここでは、大面積のバンドル構造を作製可能な蒸着装置の構成例について説明する。
【0109】
図19A、
図19B、
図20、
図21A、及び
図21Bは、それぞれバンドル構造を作製する蒸着装置の構成例1〜5を示す図である。
図19A、
図19B、
図20、及び
図21Bに示すように、蒸着装置は、2次元において基板50の法線方向に対称となる位置に、それぞれ蒸着源51A及び蒸着源51Bを備える。また、
図21Aに示すように、1つの蒸着源51を備え、基板50を反転させるようにしてもよい。
【0110】
図19Aに示す構成例1の蒸着装置は、基板50を矢印の一方向に移動させ、蒸着源51A及び蒸着源51Bを同時に動作させることにより、基板50上に蒸着源51Aによる層と蒸着源51Bによる層とを交互に積層することができる。また、構成例1の蒸着装置は、基板50を矢印の一方向に移動させる毎に、蒸着源51A又は蒸着源51Bを切り替えることにより、基板50上に蒸着源51Aによる層と蒸着源51Bによる層とを交互に積層することができる。また、構成例1の蒸着装置では、1バッチ当たり同時に4枚の大型基板にバンドル構造を形成することができる。
【0111】
また、
図19Bに示す構成例2の蒸着装置は、基板50を往復移動させ、往路移動又は復路移動によって蒸着源51A又は蒸着源51Bを切り替えることにより、基板50上に蒸着源51Aによる層と蒸着源51Bによる層とを交互に積層することができる。
【0112】
また、
図20Aは、ロール式の構成例3の蒸着装置の断面図であり、
図20Bは、構成例3の蒸着装置の側面図である。
図20に示す構成例3の蒸着装置は、薄いガラスやフィルムなどの曲げることが可能な基板50を回転させ、蒸着源51A及び蒸着源51Bを同時に動作させることにより、基板50上に蒸着源51Aによる層と蒸着源51Bによる層とを交互に積層することができる。
【0113】
また、
図21Aに示す構成例4の蒸着装置は、基板50を斜め上下方向に往復移動させ、また、基板50を反転機構により180度反転させることで、往路移動又は復路移動によって蒸着源51により、基板50上にx、y、z直交座標におけるxy平面を基板面としたとき、xy平面において180°異なる蒸着方向Aと蒸着方向Bの2方向から交互に積層することができる。
【0114】
また、
図21Bに示す構成例5の蒸着装置は、基板50を斜め上下方向に往復移動させ、蒸着源51A及び蒸着源51Bを同時に動作させることにより、基板50上に蒸着源51Aによる層と蒸着源51Bによる層とを交互に積層することができる。
【0115】
<2.偏光板の製造方法>
次に、本実施の形態における偏光板の製造方法について説明する。ここでは、
図1Bに示す構成例2、
図12Aに示す構成例9、及び
図17Bに示す構成例20の偏光板の製造方法について説明する。
【0116】
[構成例2の偏光板の製造方法]
構成例2の偏光板の製造方法では、先ず、透光基板11上に、バンドル構造層12、吸収層13、誘電体層14、反射層15をこの順に成膜する。
【0117】
バンドル構造層12は、斜め蒸着又は斜めスパッタにより形成される。例えば、一方の方向から誘電体材料を斜め蒸着させた後、透明基板を180°回転させ、他方の方向から誘電体材料を斜め蒸着させる蒸着サイクルを複数回行うことにより、柱状の誘電体の束を得る。
【0118】
バンドル構造層12の作製において、柱状の誘電体の直進性を向上させるために、基板上にナノ粒子を配列したり、基板に一次元格子などのテクスチャーを形成したりすることが有効である。
【0119】
図22Aは、基板上にナノ粒子を配列した状態を示す平面図であり、
図22Bは斜め蒸着開始時を示す断面図であり、
図22Cは、斜め蒸着後を示す断面図であり、
図22Dは、アニール後のバンドル構造を示す断面図である。
【0120】
図22Aに示すように、先ず、基板60上又はテクスチャー上に使用帯域の波長よりも直径が小さいナノ粒子61を配列する。ナノ粒子61としては、シリカ、フェリチン、ポリスチレンなどを用いることができる。次に、
図22Bに示すように、x、y、z直交座標におけるxy平面を基板面としたとき、xy平面において180°異なる2方向から交互に無機微粒子を斜め蒸着させる。そして、
図22Cに示すように、ナノ粒子61上に無機微粒子からなる柱62の束で構成されたバンドル構造層を得る。シリカ、フェリチン、ポリスチレンなどを用いた場合、バンドル構造層を形成した後、還元処理又は熱処理を施すことにより、
図22Dに示すように、ナノ粒子61を消失させることができる。ナノ粒子61部分は、蒸着膜に対しては薄いので、消失しても影響は無い。また、還元処理を行うことにより、偏光度を向上させることができる。また、バンドル構造層を形成した後に使用帯域以下のピッチで、バンドル構成層をフォトリソグラフィ及びエッチングにてグリッド形状に加工してもよい。
【0121】
また、
図23Aは、基板上に形成されたテクスチャーを示す平面図であり、
図23Bは、斜め蒸着開始時を示す断面図であり、及び
図23Cは、斜め蒸着後を示す断面図である。
図23Aに示すように、テクスチャーとして、例えば使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に凸部71を基板70上に配列する。次に、
図23Bに示すように、x、y、z直交座標におけるxy平面を基板面としたとき、xy平面において180°異なる2方向から交互に無機微粒子を斜め蒸着させる。そして、
図23Cに示すように、凸部71上に無機微粒子からなる柱72の束で構成されたバンドル構造層を得る。また、バンドル構造層を形成した後に使用帯域以下のピッチで、バンドル構成層をフォトリソグラフィ及びエッチングにてグリッド形状に加工してもよい。
【0122】
このように基板上にナノ粒子を配列したり、基板に一次元格子などのテクスチャーを形成したりすることにより、蒸着粒子の堆積位置はこれらの影響を受けるため、無機微粒子からなる柱の直線性を高めることができ、偏光特性を向上させることができる。
【0123】
また、バンドル構造層12の作製において、斜め蒸着とイオンエッチングとを組み合わせることにより、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱の直線性を向上させてもよい。具体的には、x、y、z直交座標におけるxy平面を基板面としたとき、xy平面において180°異なる2方向から交互に無機微粒子を斜め蒸着させ、バンドル構造層12を形成した後、180°異なる2方向のxy平面上の直線に対し直交する方向からイオンエッチングを行う。エッチングには、ArイオンやXeイオンが用いられる。このようなイオンエッチングによれば、エッチング時間やイオン照射量を制御することにより、ピッチ間隔を調整することができ、直線性を向上させることができる。
【0124】
また、バンドル構造層12は、無機微粒子により、誘電体層と1層以上の金属層又は半導体層とで形成されてなることが好ましい。所望のコントラスト(消光比:透過軸透過率/吸収軸透過率)が得られるならば、第4の実施の形態と同様、このバンドル構造層12のみで偏光板として機能させることができる。また、バンドル構造上にワイヤグリッド構造を形成することにより、コントラストを向上させてもよい。
【0125】
また、斜め蒸着とイオンエッチングとを組み合わせることにより、誘電体層、金属層、又は半導体層のいずれか1層からなるバンドル構造を得てもよい。このバンドル構造は、柱状カラムの規則性が高いため、これを偏光板、波長板などに利用することにより、優れた光学特性が得られる。
【0126】
吸収層13は、蒸着法やスパッタ法により成膜する。具体的には、成膜時に透光基板11をターゲットに対して対向させて配置し、アルゴンガス粒子をターゲットに衝突させ、その衝撃ではじき飛ばされたターゲット成分を基板上に付着させ、吸収層13を得る。
【0127】
また、誘電体層14及び反射層15は、スパッタ法、気相成長法、蒸着法などの一般的な真空成膜法あるいはゾルゲル法(例えばスピンコート法によりゾルをコートし熱硬化によりゲル化させる方法)により成膜することができる。
【0128】
透光基板11上に、バンドル構造層12、吸収層13、誘電体層14、反射層15をこの順に成膜した後、反射層15上に、ナノインプリント、フォトリソグラフィなどにより格子状のマスクパターンを形成、その後、ドライエッチングにより格子状凸部を形成する。ドライエッチング用のガスとしては、反射防止膜(BARC)にはAr/O
2、AlSiにはCl
2/BCl
3、SiO
2、Si、Taには、CF
4/Arを挙げることができる。また、エッチング条件(ガス流量、ガス圧、パワー、基板の冷却温度)を最適化することによって、垂直性の高い格子形状を実現する。また、エッチング条件により、吸収層13の幅(X軸方向)を調整することができる。
【0129】
なお、反射層15にAlやAlSiを用いる場合には、吸収層13及び誘電体層14には、フッ素でエッチング可能な材料を選択することが望ましい。そうすることで、高いエッチング選択比が得られ、吸収層13及び誘電体層14の膜厚設計値の幅を広くすることができ、プロセス構築上有利となる。
【0130】
また、光学特性の変化が応用上影響を与えない範囲で、最上部に耐湿性などの信頼性改善の目的でSiO
2などの酸化物の保護膜を堆積することも可能である。
【0131】
[構成例9の偏光板の製造方法]
図12Aに示す構成例9の偏光板の製造方法は、透光基板11上に吸収層33と、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成されたバンドル構造層12とをこの順番に形成し、バンドル構造層12をマスクとしてエッチングを施し、吸収層33を微粒子化する。これにより、吸収層33の光特性を制御することができる。
【0132】
バンドル構造層12は、誘電体、金属、及び半導体のうち1種以上からなる柱状の束で構成されているため、これをマスクとして下地の吸収層33をエッチングすることができる。エッチングは、吸収層33及びバンドル構造層12の材料などに応じて適宜選択され、例えば、Cl
2/BCl
3、CF
4/Arなどのガスを用いるドライエッチングが好適に用いられる。
【0133】
図12Aに示す構成例9で単独で偏光板として利用してもよいが、構成例10に示すように、バンドル形成後に使用帯域以下のピッチでバンドル構造層12をグリッド形状に加工してもよい。また、構成例11、12に示すように、ワイヤグリッド構造を形成してもよい。
【0134】
[構成例20の偏向板の製造方法]
図17Bに示す構成例20の偏光板の製造方法は、透光基板11上に形成され、柱状の酸化物の束で構成されたバンドル構造層を還元処理して、
図17Bのバンドル構造層32を形成する。これにより、酸化物の酸化度を下げ、光吸収性を向上させることができる。
【0135】
バンドル構造層の還元処理としては、水素ガスなどを使った還元を挙げることができる。水素還元を用いる場合、透光基板11として石英基板などの耐熱性の高い透明基板を用いることが好ましい。
【実施例】
【0136】
<4.実施例>
以下、本発明の実施例について説明する。ここでは、実施例1として
図1Bに示す構成例2、実施例2として
図17Aに示す構成例19、実施例3として
図12Aに示す構成例9、実施例4として
図17Bに示す構成例20、実施例5として
図1Bに示す構成例2、及び実施例6として
図17Bに示す構成例20の偏光板を作製した。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0137】
図24は、本実施例で使用した蒸着装置を示す概略図である。この蒸着装置は、基板80を保持する基板ステージ81と、基板ステージ81を回転させるステッピングモータ82と、回転位置を検出するセンサ83と、回転位置に基づいてステッピングモータを制御するコントローラ84とを備える。この蒸着装置は、1つの蒸着源を備え、1層毎に基板ステージ81を180°回転させることにより、無機微粒子を積層させ、バンドル構造層を作製可能となっている。
【0138】
[実施例1]
先ず、斜め蒸着によりガラス基板上にTa
2O
5を柱状に25nm堆積させ、バンドル構造層を形成した。次に、スパッタによりバンドル構造層上にTaを15nm堆積させ、吸収層を形成した。次に、スパッタにより吸収層上にSiO
2を50nm堆積させ、誘電体層を形成した。次に、スパッタにより誘電体層上にAlを60nm堆積させ、反射層を形成した。そして、リソグラフィによるパターニング及びエッチングにより、ピッチ約150nmのワイヤグリッド構造を形成し、実施例1の偏光板を作製した。
【0139】
図25は、実施例1の偏光板の断面のSEM写真である。
図25に示すSEM写真より、エッチングにより吸収層まで除去され、バンドル構造層上に吸収層と誘電体層と反射層とからなる凸部が一次元格子状に形成されたワイヤグリッド構造が形成されていることが分かる。
【0140】
図26Aは、実施例1の偏光板の光学特性を示すグラフであり、
図26Bは、実施例1の偏光板の反射率を示すグラフである。また、
図27Aは、比較例の偏光板の光学特性を示すグラフであり、
図27Bは、比較例の偏光板の反射率を示すグラフである。比較例の偏光板は、ガラス基板上にSiO
2を50nm、Taを20nm、SiO
2を50nm、及びAlを60nm堆積させ、実施例1と同様に、リソグラフィによるパターニング及びエッチングにより、ピッチ約150nmのワイヤグリッド構造を形成した。また、比較例の偏光板は、実施例1の偏光板と短波長域の透過軸透過率がほぼ一致するようにTaの膜厚を調整した。
【0141】
図26B及び
図27Bに示すグラフより、実施例1の偏光板が、比較例1の偏光板に比べ、他の光学特性をそのままにして反射率を大幅に低下させることができた。また、実施例1の偏光板は、反射率が測定波長域全体で6%以下になっており、広波長域に対応することが可能となった。また、実施例1の偏光板のコントラスト(消光比:透過軸透過率/吸収軸透過率)は約9であった。なお、コントラストを向上させたい場合には、Alの膜厚を増やし、高くすればよい。
【0142】
[実施例2]
先ず、斜め蒸着によりガラス基板上にSiO
2を15nm周期で柱状に450nm堆積させ、バンドル構造層を形成した。次に、斜め蒸着によりバンドル構造層上にAlを15nm堆積させ、吸収層を形成した。そして、斜め蒸着により吸収層上にSiO
2を150nm堆積させ、上部バンドル構造層を形成し、実施例2の偏光板を作製した。
【0143】
図28は、実施例2の偏光板の光学特性を示すグラフであり、
図29は、実施例2の偏光板の表面のAFM写真である。
図28に示すグラフより、実施例2の偏光板は、可視光全域で偏光特性を示すことが分かる。
【0144】
[実施例3]
先ず、スパッタによりガラス基板上にAlを20nm堆積させ、吸収層を形成した。次に、斜め蒸着により吸収層上にTa
2O
5を柱状に50nm堆積させ、バンドル構造層を形成した。そして、バンドル構造をマスクに吸収層をCF
4/Arガスにてドライエッチングし、実施例3の偏光板を作製した。
【0145】
図30Aは、実施例3のエッチング前の偏光板の光学特性を示すグラフであり、30Bは、実施例3のエッチング後の偏光板の光学特性を示すグラフである。また、
図31は、実施例3の偏光板の表面のSEM写真である。
図30A及び
図30Bに示すグラフより、吸収層をエッチングすることにより、偏光特性が得られていることが分かる。
【0146】
[実施例4]
先ず、斜め蒸着によりガラス基板上にTa
2O
5を柱状に2000nm堆積させ、バンドル構造層を形成した。そして、水素還元炉にて水素7%、400℃の条件で、バンドル構造層を還元し、実施例4の偏光板を作製した。
【0147】
図32は、実施例4の偏光板の光学特性を示すグラフである。
図32に示すグラフより、バンドル構造層を還元し、バンドル構造層を構成する酸化物の酸化度を下げることにより、光吸収性を向上させることが可能であることが分かる。
【0148】
[実施例5]
実施例5では、吸収層が2層構成の偏光板を作製した。先ず、斜め蒸着によりガラス基板上にTa
2O
5を柱状に35nm堆積させ、バンドル構造層を形成した。次に、スパッタによりバンドル構造層上にTaを10nm堆積させ、第1の吸収層を形成した。次に、スパッタにより第1の吸収層上にFeSi(Fe=5atm%)を15nm堆積させ、第2の吸収層を形成した。次に、スパッタにより第2の吸収層上にSiO
2を30nm堆積させ、誘電体層を形成した。次に、スパッタにより誘電体層上にAlを60nm堆積させ、反射層を形成した。そして、リソグラフィによるパターニング及びエッチングにより、ピッチ約150nmのワイヤグリッド構造を形成し、実施例5の偏光板を作製した。
【0149】
図33は、実施例5の偏光板の断面のSEM写真である。また、
図34Aは、実施例5の偏光板の斜視断面のSEM写真であり、
図34Bは、
図34Aを拡大したSEM写真である。
図33及び
図34に示すSEM写真より、エッチングにより第1の誘電体層まで除去され、バンドル構造層上に第1の誘電体層と第2の誘電体層と反射層とからなる凸部が一次元格子状に形成されたワイヤグリッド構造が形成されていることが分かる。
【0150】
図35Aは、実施例5の偏光板の光学特性を示すグラフであり、
図35Bは、実施例5の偏光板の反射率を示すグラフである。実施例5は、
図26に示す実施例1と同様、広い波長域で低い反射率が得られ、また、実施例1よりも高い透過率が得られた。このように吸収層を2層以上にすることにより、光学特性の調整が容易となり、高い透過率及び低い反射率が得られることが分かった。
【0151】
[実施例6]
実施例6では、斜め蒸着とイオンエッチングとを組み合わせることにより、直進性を向上させた酸化物からなる柱状のバンドル構造層を作製し、還元処理により光吸収性を向上させた。
【0152】
先ず、
図24に示す蒸着装置を用いて、斜め蒸着によりガラス基板上にTa
2O
5を柱状に200nm堆積させ、バンドル構造層を形成した。その後、Arイオンビームを蒸着方向に対し平行方向、基板表面法線に対し70度傾けた位置から照射した。照射時間は90秒、180秒とした。
【0153】
図36Aは、バンドル構造の作成後のバンドル構造表面のSEM写真であり、
図36Bは、
図36Aを拡大したSEM写真である。また、
図37Aは、Arイオンビーム90秒照射後のバンドル構造表面のSEM写真であり、
図37Bは、
図37Aを拡大したSEM写真である。また、
図38Aは、Arイオンビーム180秒照射後のバンドル構造表面のSEM写真であり、
図38Bは、
図38Aを拡大したSEM写真である。これらのSEM写真から分かるように、Arイオンビームを照射することにより、グリッド直線性を大幅に改善させることができた。
【0154】
次に、水素還元炉にて水素7%、400℃の条件で、バンドル構造層を1時間還元し、実施例6の偏光板を作製した。
図39Aは、Arイオンビーム0秒照射のバンドル構造表面のSEM写真であり、
図39Bは、
図39Aを拡大したSEM写真である。また、
図40は、Arイオンビーム0秒照射のバンドル構造の光学特性を示すグラフである。また、
図41Aは、Arイオンビーム90秒照射後のバンドル構造表面のSEM写真であり、
図41Bは、
図41Aを拡大したSEM写真である。また、
図42は、Arイオンビーム90秒照射後のバンドル構造の光学特性を示すグラフである。偏光特性の測定は、透過軸、吸収軸にそれぞれ平行な直線偏光の光を入射して行った。
【0155】
図40及び
図42に示す光学特性より、バンドル構造の直線性を向上させることにより、透過軸透過率と吸収軸透過率の差(すなわちコントラストに相当)を大きくすることができることが分かった。