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特許6373357無電解銅めっき溶液、無電解銅めっき方法、及び該溶液の使用法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373357
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】無電解銅めっき溶液、無電解銅めっき方法、及び該溶液の使用法
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/40 20060101AFI20180806BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20180806BHJP
   H01L 21/288 20060101ALI20180806BHJP
   G02F 1/1343 20060101ALN20180806BHJP
【FI】
   C23C18/40
   H05K3/18 H
   H01L21/288 E
   !G02F1/1343
【請求項の数】16
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-504636(P2016-504636)
(86)(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公表番号】特表2016-517914(P2016-517914A)
(43)【公表日】2016年6月20日
(86)【国際出願番号】EP2014055962
(87)【国際公開番号】WO2014154689
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2017年2月15日
(31)【優先権主張番号】13161330.9
(32)【優先日】2013年3月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】597075328
【氏名又は名称】アトーテヒ ドイッチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(74)【代理人】
【識別番号】100202016
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 喬
(72)【発明者】
【氏名】ブリューニング フランク
(72)【発明者】
【氏名】ラングハマー エリーザ
(72)【発明者】
【氏名】メルシュキー ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ロヴィンスキー クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】シュルツェ イェルク
(72)【発明者】
【氏名】エッツコルン ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ベック ビルギット
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−049084(JP,A)
【文献】 特表2002−515922(JP,A)
【文献】 特開2001−342453(JP,A)
【文献】 特表平11−513058(JP,A)
【文献】 特開昭60−026671(JP,A)
【文献】 特表2008−523253(JP,A)
【文献】 国際公開第97/008287(WO,A2)
【文献】 米国特許第05733858(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0206474(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C18/00−20/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無電解銅めっき水溶液であって、
- 銅イオン源と
- 還元剤若しくは還元剤源とを有し、
- 錯化剤として、
i)少なくとも1種のポリアミノジコハク酸若しくは少なくとも1種のポリアミノモノコハク酸若しくは少なくとも1種のポリアミノジコハク酸と少なくとも1種のポリアミノモノコハク酸の混合物と、
ii)エチレンジアミン四酢酸、N’-(2-ヒドロキシエチル)-エチレンジアミン-N,N,N’-三酢酸及びN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンから成る群から選択される1種以上の化合物と
から構成される組み合わせを有する、無電解銅めっき水溶液。
【請求項2】
錯化剤として、
i)少なくとも1種のポリアミノジコハク酸若しくは少なくとも1種のポリアミノモノコハク酸若しくは少なくとも1種のポリアミノジコハク酸と少なくとも1種のポリアミノモノコハク酸の混合物と、
ii)N’-(2-ヒドロキシエチル)-エチレンジアミン-N,N,N’-三酢酸と、
iii)N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンと
から構成される組み合わせを有する、請求項1に記載の無電解銅めっき水溶液。
【請求項3】
錯化剤i)が少なくとも1種のポリアミノジコハク酸である、請求項1又は2に記載の無電解銅めっき水溶液。
【請求項4】
錯化剤i)がエチレンジアミンジコハク酸である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の無電解銅めっき水溶液。
【請求項5】
全ての錯化剤i)+ii)又はi)+ii)+iii)の銅イオンに対するモル比が1:1〜10:1の範囲にある、請求項1〜4のいずれか一項に記載の無電解銅めっき水溶液。
【請求項6】
還元剤がグリオキシル酸とホルムアルデヒドから選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の無電解銅めっき水溶液。
【請求項7】
水溶液が更に1種以上の安定剤を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の無電解銅めっき水溶液。
【請求項8】
1種以上の安定剤が、ジピリジル、フェナントロリン、メルカプトベンゾチアゾール、チオ尿素やその誘導体、シアン化物、チオシアネート、ヨウ化物、エタノールアミン、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのような重合体やそれらの共重合体から選択される、請求項7に記載の無電解銅めっき水溶液。
【請求項9】
水溶液が更に水酸化物イオンの源を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の無電解銅めっき水溶液。
【請求項10】
基材を請求項1〜9のいずれか一項に記載の無電解銅めっき水溶液と接触するステップをプロセスが有する、無電解銅めっき方法。
【請求項11】
基材がガラス、セラミック又はプラスチックから作られた基材である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
基材がガラス基材である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
基材上に、二乗平均平方根粗さパラメータ(RMS)として表して5〜40nmの粗さを有する銅層が形成される、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
プリント回路基板、集積回路基材、ウェハ、成形回路デバイス、ディスプレイ、ディスプレイ部品、或いはプラスチック部品のめっきのための請求項1〜9のいずれか一項に記載の無電解銅めっき水溶液の使用法。
【請求項15】
ガラス基材のめっきのための請求項1〜9のいずれか一項に記載の無電解銅めっき水溶液の使用法。
【請求項16】
ディスプレイ用ガラスパネルのめっきのための請求項1〜9のいずれか一項に記載の無電解銅めっき水溶液の使用法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電解銅めっき溶液、前記溶液を用いる無電解銅めっきのための方法、及び基材のめっきのため該溶液の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
無電解めっきは、外部の電子供給の助けなしに、連続する金属フィルムの制御された自己触媒的析出である。非金属表面が析出のため受容性に或いは触媒作用的になるよう前処理され得る。表面の全体或いは選択された部分が適切に前処理され得る。無電解銅浴の主たる成分は銅塩、錯化剤、還元剤、及び任意成分としてアルカリ化剤、及び例えば安定剤のような添加剤である。錯化剤は析出される銅をキレート化して銅が溶液から沈殿する(即ち、水酸化物等として)のを避けるのに用いられる。銅のキレート化は銅を、銅イオンを金属形態に変える還元剤に利用できるようにする。
【0003】
特許文献1は、銅イオン、還元剤としてのグリオキシル酸(glyoxylate)、及び銅シュウ酸錯体よりも強い銅を有した錯体を形成することが可能な錯化剤、例えばEDTAを有する銅の無電解析出のための組成を開示する。
【0004】
特許文献2は、水溶性銅化合物、グリオキシル酸(glyoxylic acid)及びEDTAであってもよい錯化剤を有する無電解銅浴を教示する。
【0005】
特許文献3は、銅イオン源、還元剤としてのグリオキシル酸(glyoxylic acid)若しくはホルムアルデヒド、及び錯化剤としてのEDTA,酒石酸塩若しくはアルカノールアミンを有する無電解浴を開示する。
【0006】
特許文献4は、銅塩、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グリオキシル酸、NaBH、KBH、NaHPO、ヒドラジン、ホルマリン、グルコースのような多糖類及びそれらの混合物から成る群から選択され得る還元体、及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、N’-(2-ヒドロキシエチル)-エチレンジアミン-N,N,N’-三酢酸(HEDTA)、シクロヘキサンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸及びN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン(Quadrol)から成る群から選択され得る錯化剤を含む無電解銅めっき溶液を開示する。
【0007】
銅めっき溶液の性能は、予測することが困難で、その成分、特に錯化剤や還元剤、及びその成分のモル比に強く依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】US 4,617,205
【特許文献2】US 7,220,296
【特許文献3】US 2002/0064592
【特許文献4】US 2008/0223253
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、性能の改善した無電解銅めっき溶液、特に銅析出率の改善した無電解銅めっき溶液を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
− 銅イオン源、
− 還元剤若しくは還元剤源、及び
− 錯化剤として、
i)少なくとも1種のポリアミノジコハク酸若しくは少なくとも1種のポリアミノモノコハク酸若しくは少なくとも1種のポリアミノジコハク酸と少なくとも1種のポリアミノモノコハク酸の混合物と、
ii)エチレンジアミン四酢酸、N’-(2-ヒドロキシエチル)-エチレンジアミン-N,N,N’-三酢酸及びN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンから選択される1種以上の化合物と
を備えて成る組み合わせ、
を有する無電解銅めっき溶液を提供する。
【0011】
エチレンジアミン四酢酸は以下、「EDTA」とも称される。
N’-(2-ヒドロキシエチル)-エチレンジアミン-N,N,N’-三酢酸は以下、「HEDTA」とも称される。
N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンは以下、BASF社の商標である「Quadrol(カドロール)」とも称される。
【0012】
上記した目的の1つ以上は、請求項1に係る無電解銅めっき溶液(以下、「溶液」と略称する)によって、又は従属請求項や明細書に記載された有利な実施形態によって達成される。本発明の銅めっき溶液は、改善された銅析出率を示す。同時に、銅表面上の粗さを低くすることが達成可能であり、そのことは或る電子デバイスの性能にとって非常に重要である。高めの析出率のために、厚めの銅層が同じプロセス時間で達成可能である。
【0013】
本発明に係る溶液と本発明に係るプロセスとは、プリント回路基板、チップ担体及び半導体ウェハのコーティング、或いは他の回路担体やインターコネクトデバイスのコーティングにも好適に使用可能である。溶液は特にプリント回路基板やチップ担体において用いられるが、半導体ウェハにおいても用いられ、表面、トレンチ孔、有底マイクロビア、貫通孔ビア(スルーホール)等の構造を銅でめっきする。
【0014】
特に、本発明の溶液或いは本発明のプロセスは、表面上、トレンチ溝内、有底マイクロビア内、貫通孔ビア内、及びプリント回路基板、チップ、担体、ウェハ及び様々な他のインターコネクトデバイスにおける類似構造内に銅を析出するのに使用可能である。本発明で用いられる用語「貫通孔ビア」や「スルーホール」は、全ての種類の貫通孔ビアを網羅し、シリコンウェハにおける所謂「貫通シリコンビア(through silicon vias)」を含む。
【0015】
溶液が有益な効果を伴って使用可能な他の適用は、好ましくは大きな表面範囲を有するガラス、セラミック又はプラスチックから作られた滑らかな基材(substrates)の金属化/金属被覆である。その例は、例えばいずれかの種類のTFTディスプレイや液晶ディスプレイ(LCD)のような類のディスプレイである。上述のように、粗さの小さな銅表面が本発明の溶液で達成可能である。この効果はディスプレイ適用に特に有利である。というのは、そのような適用にとって適切な厚みを意味する薄い厚みを有し、良好な伝導性を有する銅層が製造可能だからである。本発明の溶液で製造される銅表面の粗さは、二乗平均平方根粗さパラメータ(root-mean-square roughness parameter、RMS)として表して、好ましくは5〜40nmで、より好ましくは10〜30nmで、更に好ましくは15〜30nmである。粗さ測定の方法と二乗平均平方根粗さパラメータ(RMS)の説明は、実施例において与えられる。1つのアスペクトにおける発明はまた、二乗平均平方根粗さパラメータ(RMS)として表した5〜40nm、より好ましくは10〜30nm、更に好ましくは15〜30nmの粗さを備えた銅層を有する銅めっき品に関する。
【0016】
本発明の無電解銅めっき溶液は、ガラスパネルのような特に大きな表面範囲を備えたガラス基材上に銅を析出するのに有益に利用可能である。ガラス基材は、上に述べたようにディスプレイ適用のため制限なく使用される。ガラス基材上での、上述したような溶液で、湿式無電解銅析出は、これまで用いられてきた金属スパッタリングプロセスに比べて、有益である。スパッタリング技術に比べて湿式無電解析出で達成され得る利点は、とりわけ、内部ストレスを減らすこと、ガラス基材の曲げを減らすこと、設備メンテナンスを減らすこと、金属の有効利用、材料浪費を減らすこと、プロセス温度を下げることである。
【0017】
いずれにせよ、一般に知れ渡った湿式無電解析出は、スパッタリングプロセスに比べて通常、粗めの金属表面を生じる。ディスプレイ製造の場合、これは貧弱なスイッチング特性、特に望ましくない間延びしたスイッチング時間のもととなる。それゆえ、ディスプレイ製造のためには、スパッタリングプロセスによって達成される範囲の粗さで金属層を生成することが必要である。驚くべきことに、本発明の無電解銅めっき溶液はより高い析出率で金属層を生成することができるだけでなく、同時にスパッタリングプロセスによって達成される範囲での低い粗さで金属層を生成することができる。
【0018】
更に、ディスプレイ製造用の基材は、必要な電気回路構成やスイッチング要素を構築するために、金属層析出の引き続いての析出用の金属シード層によって活性化(アクティブ化)される。それゆえ、金属シード層は、小さく及び/又は隔離された活性化範囲並びに大小の活性化範囲の組み合わせから成る電気回路構成やスイッチング要素の未来のパターンを既に示している。ガラス基材に関する高い銅析出は、本発明の溶液で達成され、特にこれら小さく及び/又は隔離された活性化範囲を有するガラス基材に関して達成される。加えて、本発明の溶液はまた、高い析出率で大小の活性化範囲上に同時に均一な厚みで金属層を析出することが可能である。
【0019】
本発明の溶液は水溶液である。用語「水溶液」は、溶液中の溶媒である主要な液状媒体が水であることを意味する。更に、水と混和性の液体、例えばアルコールや他の極性のある有機液体が加えられ得る。
【0020】
本発明の溶液は、水性の液状媒体、好ましくは水に全ての成分を溶解することによって調製され得る。
溶液は、例えば水溶性の銅塩であるような銅イオン源を含有する。銅は例えば硫酸銅、塩化銅、硝酸銅、酢酸銅、メタンスルホン酸銅((CH3O3S)2Cu)、水酸化銅、或いはそれらの水和物として添加され得るが、これらに限定されない。
【0021】
還元剤は、めっき用の金属銅を得るために、銅イオンを還元するのに供される。利用可能な還元剤は例えばホルムアルデヒド、グリオキシル酸、次亜リン酸塩(hypophosphite)、ヒドラジン、ほう化水素(borohydride)であるが、これらに限定されない。好ましい還元剤はホルムアルデヒドとグリオキシル酸である。
【0022】
用語「還元剤の源(還元剤源)」は、溶液中で還元剤に転換される物質を意味する。該源は例えば還元剤に転換される該還元剤の前駆体である。グリオキシル酸に関して以下で例が与えられる。
【0023】
特に好ましい還元剤は、安全条件、健康条件及び環境条件のためにグリオキシル酸である。ホルムアルデヒドは一般に知れ渡った無電解銅めっきプロセスの非常に重要で確立された還元剤であるけれども、ほぼ認められた人に対する発がん性物質として分類された。それゆえ、1つの実施形態における無電解銅めっき水溶液は、グリオキシル酸かグリオキシル酸の源を有する。この実施形態において、本発明の溶液はホルムアルデヒドを含有せず、換言すれば、溶液はこの実施形態によればホルムアルデヒドフリーである。
【0024】
用語「グリオキシル酸の源(グリオキシル酸源)」は、前駆体のような水溶液中でグリオキシル酸に転換される全ての化合物を網羅する。好ましい前駆体はジクロル酢酸である。グリオキシル酸は銅イオンを元素銅に還元するための還元剤である。溶液中にグリオキシル酸とグリオキシル酸塩イオンが存在し得る。ここで使用されるように、用語「グリオキシル酸」はその塩を含む。存在する化学種(species)、酸又は塩の正確な特質は溶液のpHに依存する。同様の考察が他の弱い酸や塩基に当てはまる。
【0025】
上記した還元剤の1つに加えて、例えば次亜リン酸、グリコール酸、ギ酸、これら酸の塩のような1つ以上の追加還元剤が加えられ得る。追加還元剤は好ましくは、還元剤として作用する剤であるが単独で作用する還元剤として用いることができないものである(例えば米国特許第7,220,296号公報第4欄20〜43行及び54〜62行参照)。したがって、そのような追加還元剤はこの意味において「増強剤(enhancer)」とも称される。
【0026】
上記した還元剤を用いる無電解銅浴は、好ましくは、比較的高いpH、通常11〜14、好ましくは12.5〜13.5を利用し、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化アンモニウム或いはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(RMAH)のような第4級水酸化アンモニウムによって通常調整される。それゆえ、溶液は例えば上に挙げられた化合物の1つ以上のような水酸化物イオンの源を含有し得るが、それらに限定されるものではない。水酸化物の源は例えば、溶液のアルカリpHが望まれ、pHがそれまでに他の成分によってアルカリ範囲にないならば、添加される。
【0027】
水酸化カリウムの使用が特に好ましい。水酸化カリウムは、グリオキシル酸が還元剤として用いられるならば、有利である。なぜならば、シュウ酸カリウム(potassium oxalate)の溶解度が高いからである。シュウ酸アニオンはグリオキシル酸の酸化によって溶液中で形成される。それゆえ、水酸化カリウムは本発明の溶液の安定性のために特に好ましい。
【0028】
ポリアミノジコハク酸は2個以上の窒素原子を有する化合物であり、2個の窒素がコハク酸(或いは塩)の基に結合され、好ましくは2個の窒素原子だけが各々、それに結び付けられる1つのコハク酸(或いは塩)の基を有する。ここで用いられるように、用語「コハク酸」にはその塩が含まれる。該化合物は少なくとも2個の窒素原子を有し、アミンの商業的入手性のために好ましくは約10個の窒素原子以下、より好ましくは約6個以下、最も好ましくは2個の窒素原子を有する。結び付くコハク酸部分(succinic acid moiety)を有さない窒素原子は、最も好ましくは水素原子と置換される。より好ましくはコハク酸の基は末端の窒素原子上にあり、最も好ましくは窒素の各々がまた水素置換基を有する。「末端」によって、他の置換基に無関係に、化合物中にある最初の窒素原子か最後の窒素原子を意味する。末端の窒素の他の定義は、コハク酸部分が結び付く前の一級アミン窒素(primary amine nitrogen)である。末端の窒素はコハク酸部分が結び付いた後に二級アミン窒素(secondary amine nitrogen)に変えられる。1つの窒素上での2つのコハク基(succinic groups)の立体障害のために、コハク基を有する各窒素がただ1つのそのような基を有するのが好ましい。コハク酸基を有する窒素における残りの結合は好ましくは窒素、又はアルキル基若しくはアルキレン基(直鎖状、分鎖状、或いは1個以上の窒素原子を接合する環状構造若しくは単独の窒素原子の1個以上の結合を含む環状、好ましくは直鎖状)、或いはエーテル若しくはチオエーテル結合(すべて好ましくは1個〜10個の炭素原子、より好ましくは1個〜6個、最も好ましくは1個〜3個の炭素原子を有する)を有するそのような基によって占められる(最も好ましくは窒素)。より好ましくは、窒素原子はアルキレン基によって連結され、該アルキレン基は好ましくは各々が2個〜12個の炭素原子、より好ましくは2個〜10個の炭素原子、より一層好ましくは2個〜8個、最も好ましくは2個〜6個の炭素原子を有し、即ち、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン若しくはヘキシレンである。ポリアミノジコハク酸化合物は好ましくは少なくとも約10個の炭素原子を有し、好ましくは最大約50個、より好ましくは最大約40個、最も好ましくは最大約30個の炭素原子を有する。用語「コハク酸」はここでは酸とその塩に対して用いられ;酸は金属カチオン(例えばカリウム、ナトリウム)とアンモニウム或いはアミノ塩を含む。
【0029】
本発明の実施において有用なポリアミノジコハク酸は未置換のもの(好ましくは)、或いは不活性な状態で置換されたもの、即ち、選択された適用においてポリアミノジコハク酸の活性を不必要に妨げない基で置換されたものである。そのような不活性な置換基には、アルキル基(好ましくは1個〜6個の炭素原子);アリールアルキル基やアルキルアリール基を含むアリール基(好ましくは6個〜12個の炭素原子)が含まれ、その中でもアルキル基が好ましく、アルキル基の中でもメチル基やエチル基が好ましい。
【0030】
不活性な置換基は分子のどの部分にあっても適していて、好ましくは炭素原子上に、より好ましくはアルキレン基上に、例えば窒素原子間若しくはカルボン酸基間のアルキレン基上に、最も好ましくは窒素基間のアルキレン基上にある。
【0031】
好適なポリアミノジコハク酸には、エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸(EDDS)、ジエチレントリアミン-N,N”-ジコハク酸、トリエチレンテトラアミン-N,N'''-ジコハク酸、1,6-ヘキサメチレンジアミンN,N’-ジコハク酸、テトラエチレンペンタミン-N,N''''-ジコハク酸、2-ヒドロキシプロピレン-1.3-ジアミン-N,N’-ジコハク酸、1,2-プロピレンジアミン-N,N’-ジコハク酸、1,3-プロピレンジアミン-N,N”-ジコハク酸、cis-シクロヘキサンジアミン-N,N’-ジコハク酸、トランスシクロヘキサンジアミン-N,N’-ジコハク酸、及びエチレンビス(オキシエチレンニトリロ)-N,N’-ジコハク酸が含まれる。好適なポリアミノジコハク酸はエチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸である。
【0032】
そのようなポリアミノジコハク酸は、例えばKezerianらによって米国特許3158635号公報で開示されたプロセスによって調製可能である(該公報は言及によってその全体において本明細書に組み込まれる)。Kezerianらは、無水マレイン酸(又はエステル又は塩)を、アルカリ条件下で所望のポリアミノジコハク酸に対応するポリアミンと反応させることを開示する。該反応は多数の光学異性体を生じ、例えばエチレンジアミンの無水マレイン酸との反応は3つの光学異性体[R,R]、[S,S]及び[S,R]エチレンジアミンジコハク酸(EDDS)の混合物を生じる。なぜならばエチレンジアミンジコハク酸中に2つの非対称炭素原子があるからである。これら混合物は混合物として用いられるか、代替的に、所望の異性体を得るために従来技術の範囲内の手段によって分離される。代替的に、NealとRose、「Stereospecific Ligands and Their Complexes of Ethylenediaminedisuccinic Acid(エチレンジアミンジコハク酸の立体特異的配位子とその錯体)」、Inorganic Chemistry、7巻(1968)、2405〜2412頁に記載されているように、[S,S]異性体はL-アスパラギン酸のような酸と1,2-ジブロモエタンのような化合物との反応によって調製される。
【0033】
ポリアミノモノコハク酸は、コハク酸(或いは塩)部分が窒素原子のいずれか1個に結び付く少なくとも2個の窒素原子を有する化合物である。好ましくは、化合物は少なくとも2個の窒素原子を有し、アミンの商業的入手性のために好ましくは約10個以下の窒素原子、より好ましくは約6個以下、最も好ましくは2個の窒素原子を有する。結び付くコハク酸部分を有さない残りの窒素原子は、好ましくは水素原子で置換される。コハク酸部分はアミンのどこにも結び付けられ得るが、好ましくはコハク酸基は末端の窒素原子に結び付けられる。「末端」によって、他の置換基に無関係に、化合物中にある最初のアミンか最後のアミンを意味する。末端の窒素の他の定義は、コハク酸部分が結び付く前の一級アミン窒素(primary amine nitrogen)である。末端の窒素はコハク酸部分が結び付いた後に二級アミン窒素(secondary amine nitrogen)に変えられる。コハク酸基を有する窒素における残りの結合は好ましくは窒素、又はアルキル基若しくはアルキレン基(直鎖状、分鎖状、又は1個以上の窒素原子を接合する環状構造若しくは単独の窒素原子の1個以上の結合を含む環状、好ましくは直鎖状)、或いはエーテル若しくはチオエーテル結合(すべて好ましくは1個〜10個の炭素原子、より好ましくは1個〜6個、最も好ましくは1個〜3個の炭素原子を有する)を有するそのような基によって占められる(最も好ましくは窒素)。一般に窒素原子はアルキレン基によって連結され、該アルキレン基は各々が2個〜12個の炭素原子、好ましくは2個〜10個の炭素原子、より好ましくは2個〜8個、最も好ましくは2個〜6個の炭素原子を有し、即ち、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン若しくはヘキシレンである。ポリアミノモノコハク酸化合物は好ましくは少なくとも約6個の炭素原子を有し、好ましくは最大約50個、より好ましくは最大約40個、最も好ましくは最大約30個の炭素原子を有する。本発明の実施において有用なポリアミノモノコハク酸は未置換のもの(好ましくは)、或いはポリアミノジコハク酸化合物に対して上述したような不活性な状態で置換されたものである。
【0034】
好適なポリアミノモノコハク酸には、エチレンジアミン モノコハク酸、ジエチレントリアミンモノコハク酸、トリエチレンテトラアミンモノコハク酸、1,6-ヘキサメチレンジアミンモノコハク酸、テトラエチレンペンタミンモノコハク酸、2-ヒドロキシプロピレン-1.3-ジアミンモノコハク酸、1,2-プロピレンジアミンモノコハク酸、1,3-プロピレンジアミンモノコハク酸、cis-シクロヘキサンジアミンモノコハク酸、トランスシクロヘキサンジアミンモノコハク酸、及びエチレンビス(オキシエチレンニトリロ)モノコハク酸が含まれる。好適なポリアミノモノコハク酸はエチレンジアミンモノコハク酸である。
【0035】
そのようなポリアミノモノコハク酸は、例えばBersworthらによって米国特許2761874号公報のプロセス(その開示は言及によって本明細書に組み込まれる)や特開昭57−116031号公報に開示されたプロセスによって調製可能である。一般にBersworthらは、穏やかな条件下のアルキレンジアミンとジアルキレントリアミンを、穏やかな条件下(アルコール中)のマレイン酸エステルと反応させてN-アルキル置換されたアスパラギン酸のアミノ誘導体を生じることを開示する。反応はR異性体とS異性体を生じる。
【0036】
1つの実施形態において、溶液がポリアミノジコハク酸とポリアミノモノコハク酸の混合物を含有する場合、ポリアミノジコハク酸とポリアミノモノコハク酸のポリアミノ置換基が同じであるのが好ましい。それゆえ一例としてポリアミノジコハク酸がエチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸であるならばポリアミノモノコハク酸はエチレンジアミンモノコハク酸である。
【0037】
好適な実施形態において、エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸(EDDS)が錯化剤として用いられる。EDDSは、その高い生物分解性のために好適な錯化剤である。EDDSは更に、銅析出率の非常に効率的な増加が達成可能なので、好適である。この効果はまたEDDSに加えて他の錯化剤が浴中にある場合に認められる。本発明がなされる前には、金属析出率の増加によって金属表面の粗さが増すことが認められた。本発明において、高い銅析出率と粗さの少ない銅表面とが得られる。
【0038】
析出率の増加は、特にEDDSの場合において、浴中のポリアミノジコハク酸及び/又はポリアミノモノコハク酸の濃度に比例する。それゆえ、析出率はポリアミノジコハク酸及び/又はポリアミノモノコハク酸の濃度によって制御可能である。これによって、プリント回路基板(PCB)やディスプレイの製造のための既に存在するプロセスに無電解銅析出プロセスを容易に統合することが可能で、また既に存在する製造プラントやその技術に容易に適合することが可能である。
【0039】
本発明の溶液には有毒なコメタル(co-metals)がない。本発明の溶液には特にニッケルがない。ニッケルは銅よりも、ここで用いられる錯化剤とでより安定な錯体を形成する。それゆえ、銅の錯体形成を減らし、銅析出に否定的に影響するか、妨げる。更に浴中のニッケルの存在によって、特にディスプレイ製造において避けられなければならない望ましくないニッケル析出を引き起こすことにもなろう。
【0040】
用語「EDDS」には、(S,S)-EDDSのようなラセミのEDDS或いは光学的に活性なその異性体、及びその塩や誘導体が含まれる。好ましくは、該用語は(S,S)-EDDSやその塩を意味する。EDDSはPCT/GB94/02397のプロセスによって調製可能である。溶液中にエチレンジアミンジコハク酸やエチレンジアミンジコハク酸塩イオンが溶液のpHに応じて存在し得る。
【0041】
本発明の溶液の1つの実施形態において、銅イオンに対する、全ての錯化剤のトータルモル量に関する錯化剤のモル比は1:1〜10:1の範囲にあり、好ましくは1:1〜8:1の範囲、より好ましくは2:1〜8:1の範囲、より好ましくは2:1〜5:1の範囲、より一層好ましくは2:1〜4:1の範囲にある。実施例において、錯化剤の量はまた当量として与えられる。1当量は所与量の銅イオンを完全に錯体形成する錯化剤の量である。EDDS、EDTA、HEDTA及びQuadrolの場合、錯化剤の1当量は1:1の銅イオンに対する錯化剤のモル比に対応する。EDDS、EDTA、HEDTA及びQuadrolの場合、銅イオンに対する錯化剤の1:1〜10:1のモル比は銅に関する錯化剤の1〜10当量を意味する。
【0042】
錯化剤がより少ないことによって、浴の不安定さを引き起こし、また析出が開始しない。銅に対して錯化剤をより多くすることによって浴の密度が高くなり、これによってまた、浴の寿命が短くなり、不安定になる。これらの範囲を用いることによって、高い銅析出率と低い粗さの有益な組み合わせとなる。
【0043】
他の実施形態において、銅イオンに対する、全ての錯化剤のトータル量を意味する錯化剤のモル比は3:1〜8:1の範囲にあり、より好ましくは3:1〜5:1の範囲、より一層好ましくは3:1〜4:1の範囲にある。これらの範囲を用いることによって、高い銅析出率と低い粗さの特に有益な組み合わせとなる。非常に再現可能な遂行、非常に再現可能な銅析出、非常に均一な厚みを有した銅層が達成可能である。
【0044】
1つの実施形態において、全ての錯化剤ii)のトータルモル量に関する錯化剤ii)に対する錯化剤i)のモル比は1:0.1〜1:30、1:0.5〜1:25、1:1〜1:20で変動し、好ましくは1:1〜1:15、より好ましくは1:1〜1:10、最も好ましくは1:1〜1:8で変動する。これらの範囲を用いることによって、高い銅析出率と低い粗さの有益な組み合わせとなる。
【0045】
錯化剤の特定な組み合わせは、
i)少なくとも1種のポリアミノジコハク酸、或いは少なくとも1種のポリアミノモノコハク酸、或いは少なくとも1種のポリアミノジコハク酸と少なくとも1種のポリアミノモノコハク酸の混合物と、
ii)N’-(2-ヒドロキシエチル)-エチレンジアミン-N,N,N’-三酢酸(HEDTA)と
から成る組み合わせである。
【0046】
錯化剤の更に特定な組み合わせは、
i)少なくとも1種のポリアミノジコハク酸、或いは少なくとも1種のポリアミノモノコハク酸、或いは少なくとも1種のポリアミノジコハク酸と少なくとも1種のポリアミノモノコハク酸の混合物と、
ii)エチレンジアミン-四酢酸(EDTA)と
から成る組み合わせである。
【0047】
錯化剤の更に特定な組み合わせは、
i)少なくとも1種のポリアミノジコハク酸、或いは少なくとも1種のポリアミノモノコハク酸、或いは少なくとも1種のポリアミノジコハク酸と少なくとも1種のポリアミノモノコハク酸の混合物と、
ii)N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン(Quadrol)と
から成る組み合わせである。
【0048】
1つの実施形態において、無電解銅めっき水溶液は、錯化剤として
i)少なくとも1種のポリアミノジコハク酸、或いは少なくとも1種のポリアミノモノコハク酸、或いは少なくとも1種のポリアミノジコハク酸と少なくとも1種のポリアミノモノコハク酸の混合物と、
ii)N’-(2-ヒドロキシエチル)-エチレンジアミン-N,N,N’-三酢酸(HEDTA)と、
iii)N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン(Quadrol)と
から成る組み合わせを有する。
【0049】
更なる実施形態において、無電解銅めっき水溶液は、錯化剤として
i)少なくとも1種のポリアミノジコハク酸、或いは少なくとも1種のポリアミノモノコハク酸、或いは少なくとも1種のポリアミノジコハク酸と少なくとも1種のポリアミノモノコハク酸の混合物と、
ii)N’-(2-ヒドロキシエチル)-エチレンジアミン-N,N,N’-三酢酸(HEDTA)と、
iii)エチレンジアミン-四酢酸(EDTA)と
から成る組み合わせを有する。
【0050】
なお更なる実施形態において、無電解銅めっき水溶液は、錯化剤として
i)少なくとも1種のポリアミノジコハク酸、或いは少なくとも1種のポリアミノモノコハク酸、或いは少なくとも1種のポリアミノジコハク酸と少なくとも1種のポリアミノモノコハク酸の混合物と、
ii)N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン(Quadrol)と、
iii)エチレンジアミン-四酢酸(EDTA)と
から成る組み合わせを有する。
【0051】
なお更なる実施形態において、少なくとも1種のポリアミノジコハク酸、或いは少なくとも1種のポリアミノモノコハク酸、或いは少なくとも1種のポリアミノジコハク酸と少なくとも1種のポリアミノモノコハク酸の混合物(成分i)は、EDTA、HEDTA及びQuadrolと組み合わされる。
【0052】
全ての実施形態において有益な錯化剤i)はEDDSである。
1つの実施形態における本発明の溶液は次の種類の成分を次の濃度で含有する:
銅イオン:0.016〜0.079モル/リットルに対応する1〜5g/リットル、好ましくは2.0〜3.0g/リットル
還元剤:0.027〜0.270モル/リットル、好ましくはグリオキシル酸:2〜20g/リットル、或いはホルムアルデヒド:0.8〜8.5g/リットル
錯化剤(全ての錯化剤のトータル量):5〜50g/リットル、より好ましくは20〜40g/リットル
【0053】
本発明の溶液は、例えば安定剤、表面活性剤、率制御添加物(rate controlling additives)、細粒化添加物、pH緩衝剤、pH調整剤としての添加物、及び増強剤のような更なる成分を有していてもよい(必ず有していなければならないものでもない)。そのような更なる成分は例えば次の文献に記載されており、言及によってその全体で本明細書に組み込まれる:US 4,617,205(特に第6欄第17行〜第7欄第25行)、US 7,220,296(特に第4欄第63行〜第6欄第26行)、US 2008/0223253(特に0033、0038段落参照)。
【0054】
安定化剤とも称する安定剤は、バルク溶液(bulk solution)中での望ましくないアウトプレーティング(outplating)に対して無電解めっき溶液を安定させる化合物である。用語「アウトプレーティング」は、例えば反応容器の底や他の表面上に銅が望ましくなく、及び/又は制御されずに析出されることを意味する。安定化機能は例えば触媒毒として作用する物質(例えば硫黄や他のカルコゲン化物を含有する化合物)によって、又は銅(I)錯体を形成し酸化銅(I)の形成を抑制する化合物によって果たされ得る。
【0055】
適切な安定剤は、限定なしに、ジピリジル(2,2’-ジピリジル、4,4’-ジピリジル)、フェナントロリン、メルカプトベンゾチアゾール、チオ尿素やその誘導体、NaCN、KCN、KCN、K[Fe(CN)]のようなシアン化物、Na、K、チオシアネート、ヨウ化物、エタノールアミン、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのような重合体やそれらの共重合体である。
【0056】
他のアスペクトにおいて、本発明は無電解銅めっきのためのプロセスに関し、該プロセスは基材を上記したような無電解銅めっき溶液と接触させるステップを有する。本プロセスにおいて、銅層が基材上に、好ましくは二乗平均平方根(root-mean-square)粗さパラメータ(RMS)で表される5〜40nmの粗さで形成される。
【0057】
例えば、基材は本発明の溶液中に漬けられ、或いは浸される。本プロセスにおいて、基材は、その全表面が銅でめっきされるか、選択された部分のみがめっきされる。
使用中、溶液が攪拌されるのが好適である。特に、ワーク攪拌(work-agitation)及び/又は溶液攪拌が用いられる。
【0058】
本プロセスは、特定の適用に応じて必要な厚みの析出物を生じるのに十分な時間、実施される。
本プロセスの1つの予想される適用は、プリント回路基板の調製である。本発明のプロセスに係る銅の無電解析出は特にプリント回路基板における孔、表面、トレンチ孔、有底マイクロビアのスルーめっき(through-plating)に用いられ得る。両面基板又は多層基板(リジッド又はフレキシブル)を、本発明を用いてめっきすることができる。
【0059】
本発明のプロセスは0.05〜10μmの範囲の厚みで無電解めっき析出物をもたらすのに有益である。銅層の厚みは実施例に記載されるように白色干渉法で決定される。
プリント回路基板製造に一般に用いられる基材は最も頻繁にエポキシ樹脂又はエポキシガラス複合材である。しかしながら他の基材、とりわけフェノール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド、ポリフェニレンオキサイド、BT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂、シアネートエステル及びポリスルホンが使用可能である。
【0060】
プリント回路基板の製造における本プロセスの適用の他に、ガラス、セラミック又は例えばABS、ポリカーボネート、ポリイミド若しくはポリエチレンテレフタレートのようなプラスチックから成る基板をめっきするのに有益であることが見出される。
【0061】
本プロセスの他の実施形態では、基材は好ましくは大きな表面範囲を備えたガラス、セラミック又はプラスチックから成る基材である。大きな表面範囲は、好ましくは少なくとも1mの範囲、より好ましくは少なくとも3mの範囲、より一層好ましくは少なくとも5mの範囲を意味する。大きな表面範囲は、他の実施形態では好ましくは1m〜9mの範囲、より好ましくは3m〜9mの範囲、より一層好ましくは5m〜9mの範囲を意味する。基材は、好ましくは滑らかな表面を有する。用語「滑らか」は、好ましくは数ナノメートルの粗さ(Sq又はRMS)を意味する。好ましくは、粗さは二乗平均平方根粗さパラメータ(RMS)で表される5〜30nmである。粗さ測定のための方法と「Sq」と「RMS」の説明は実施例において与えられる。
【0062】
特定の実施形態では、基材はガラス基材で、好ましくはガラスパネルである。前記ガラス基材、特にガラスパネルは液晶ディスプレイのようなTFTディスプレイでの適用のために用いられ得る。それゆえ、ガラス基材は特に、例えば厚みや滑らかさのようなディスプレイ製造で用いられる明細事項を満たすようなものである。好適なガラスは、無アルカリホウケイ酸ガラス(alkali free boro-silicate-glass)のようなアルカリフリーである。
【0063】
ガラス基材は本プロセスが実施される前に、以下で更に説明するように例えば金属シード(metal seeds)で前処理されてもよい。
【0064】
本発明のプロセスの1つの実施形態において、プロセスは20〜60℃の範囲の温度で、好ましくは30〜55℃の範囲の温度で実施される。少なくとも1種のポリアミノジコハク酸、或いは少なくとも1種のポリアミノモノコハク酸、或いは少なくとも1種のポリアミノジコハク酸と少なくとも1種のポリアミノモノコハク酸の混合物、特にEDDSが錯化剤として他の錯化剤との組み合わせにおいて用いられる場合、銅析出がこの成分のない場合よりも低めの温度でなされ得ることが、本発明において示された。たとえ温度が低めでも、析出率は、少なくとも1種のポリアミノジコハク酸、或いは少なくとも1種のポリアミノモノコハク酸、或いは少なくとも1種のポリアミノジコハク酸と少なくとも1種のポリアミノモノコハク酸の混合物、特にEDDSを含有しない浴を用いるよりも高い。
【0065】
基材、即ち、銅でめっきされることになる基材の表面、特に非金属表面は、従来技術の範囲内の(例えばUS 4,617,205、第8段落に記載されたような)手段によって前処理して、銅析出に対してより受容的に若しくは自己触媒的にしてもよい。表面の全て若しくは選択された部分が前処理され得る。しかしながら前処理は全ての場合において必要ではなく、基材と表面の種類に依る。前処理の範囲内で、無電解銅の析出に先立って基材の受容性を増加させることが可能である。これは、基材の表面上に(貴金属、例えばパラジウムのような)触媒金属を吸着させることによって実現可能である。
【0066】
前処理プロセスは、基材、所望の適用及び銅表面の所望の特質のようなパラメータに強く依存する。
特にプリント回路基板薄層や他の適切な基材のための例示であるが限定的でない前処理プロセスは、次のステップの1つ以上を有し得る:
a)吸着作用を増すために基材を任意にクリーニングしてコンディショニングするステップ。クリーナを用いて有機化合物や他の残留物が除去される。次の活性化プロセスのために表面を調製する、即ち、触媒の吸着作用を強めて、より一様に活性化された表面をもたらす追加物質(コンディショナ)が含まれていてもよい。
b)銅の表面から、特に孔内の内層から酸化物を除去するためにエッチングするステップ。これは過硫酸塩若しくは過酸化水素に基づいたエッチング系によってなされ得る。
c)塩酸溶液や硫酸溶液のような前浸漬(プレディップ)溶液と接触するステップ。任意には前浸漬溶液中に塩化ナトリウムのようなアルカリ金属塩も有する。
d)貴金属のようなコロイド性若しくはイオン性の触媒金属、好ましくはパラジウムを含有する活性剤溶液と接触して、表面を触媒作用的とするステップ。ステップc)における前浸漬が活性剤を引き摺り込み(drag-in)や汚染(contaminations)から保護するのに供される。そして任意に、特に活性剤がイオン性の触媒金属を含有するならば、
e)還元剤と接触するステップ。イオン性の活性剤の金属イオンが元素金属に還元され、或いは活性剤がコロイド性の触媒金属を含有するならば、
f)促進剤(accelerator)と接触するステップ。コロイドの成分、例えば保護コロイドが触媒金属から除去される。
【0067】
別の種類の前処理プロセスにおいて、過マンガン酸塩エッチングステップが用いられる。所謂スミア除去(Desmear)プロセスは多重段階プロセスであり、そのステップは膨潤(swelling)ステップ、過マンガン酸塩エッチングステップ及び還元ステップである。膨潤ステップで用いられる膨潤剤は有機溶媒の混合物から作られている。このステップ中、ドリルスミア(drill smear)や他の不純物が基材の表面から除去される。60〜80℃の高温が膨潤剤の浸入を促進して、膨潤表面を生じる。したがって引き続いて適用される過マンガン酸塩溶液の強めの攻撃が過マンガン酸塩エッチングステップ中に可能である。その後、還元ステップの還元溶液が過マンガン酸塩エッチングステップ中に生じた二酸化マンガンを表面から除去する。還元溶液は還元剤を含有し、任意にコンディショナを含有する。
【0068】
スミア除去プロセスは上記した複数のステップと組み合わせることができる。スミア除去プロセスは上記前処理プロセスのステップa)の前に行われ得、或いはスミア除去プロセスは上記前処理プロセスのステップa)とb)の代わりに行われてもよい。
【0069】
ディスプレイ適用のための金属被覆(金属化)やガラス基材の金属被覆に特に適した前処理プロセスにおいて、表面は単に前浸漬溶液と活性剤溶液と接触され、その後に本発明の溶液と接触される。前浸漬ステップ前にクリーニング溶液や密着増強剤と接触することは予め実行可能な任意ステップである。
【0070】
ガラス基材のためにしばしば用いられるなお他のプロセスは、銅めっき前に次のステップで実行され得る:めっきされることになるガラス表面は金属シード層を呈する。金属シード層はスパッタリング技術によって表面上にもたらされ得る。例示的なシードは銅、モリブデン、チタン又はそれらの混合物から成る層である。前処理されたガラス表面は、表面を触媒作用的にする貴金属のようなイオン性の触媒金属、特にパラジウムを含有する活性剤溶液と接触させられる。イオン性の触媒金属はシード金属によって表面上に還元される。このプロセスにおいて、更なる還元剤の追加は省略され得る。このプロセスは特にディスプレイ適用のためのガラス基材の銅めっきにおいて使用される。
【0071】
例示的な前処理プロセス、或いはその各単一ステップは、必要と見出されるならば、代替的な前処理プロセスに組み合わされ得る。
更なるアスペクトにおいて、本発明は、プリント回路基板、ウェハ、集積回路基材、成形回路デバイス(MID)部品、液晶若しくはプラズマディスプレイのようなディスプレイ、特に電子デバイスのためのディスプレイやTVディスプレイ、ディスプレイ部品、或いは機能目的や装飾目的のためのプラスチック部品のようなプラスチック部品のめっきのための上記した無電解銅めっき溶液の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】めっきプロセスでの銅厚みに関するポリアミノジコハク酸と更なる1種の錯化剤の組み合わせの影響を示すグラフである。
図2a】ポリアミノジコハク酸と更なる2種の錯化剤の組み合わせにおけるめっきプロセスでの銅析出率と銅層の粗さに関するポリアミノジコハク酸添加の影響を示すグラフである。
図2b】ポリアミノジコハク酸と更なる2種の錯化剤の組み合わせにおけるめっきプロセスでの銅析出率と銅層の粗さに関するポリアミノジコハク酸添加の影響を示すグラフである。
図2c】ポリアミノジコハク酸と更なる2種の錯化剤の組み合わせにおけるめっきプロセスでの銅析出率と銅層の粗さに関するポリアミノジコハク酸添加の影響を示すグラフである。
図3】ビーカーテスト、ポリアミノジコハク酸と更なる2種の錯化剤の組み合わせにおけるめっきプロセスでの銅の銅析出率に関するポリアミノジコハク酸添加の影響を示すグラフである。
図4】水平線実験、ポリアミノジコハク酸と更なる2種の錯化剤の組み合わせにおけるめっきプロセスでの銅の銅析出率に関するポリアミノジコハク酸添加の影響を示すグラフである。
図5】比較例、ポリアミノジコハク酸の添加なしで他の2種の錯化剤の量を変更する影響を示すグラフである。
図6】2種の錯化剤の比率の変化の結果を示すグラフである。
図7】錯化剤全体に対する銅の比率の変化の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0073】
本発明は、以下の実施例によって更に詳細に説明される。これらの実施例は本発明を説明するために述べられるが、本発明を限定するように解釈されるものではない。
【0074】
〔粗さ測定の方法〕
ATOS GmbH(ドイツ)の光学粗面計/白色光干渉計、モデルMIC-520が、無電解めっきされた銅層の厚み(基面とめっきされたパターンの間の高さ差)と表面粗さを測定するために用いられた。白色光干渉計はサンプルの目標範囲をCCDカメラ上に投影する当業者にとって既知の光学顕微鏡法である。内部ビームスプリッタを備えた干渉対物レンズを用いて、高精度参照ミラーが同様にCCDカメラ上に投影される。両方の画像の重ね合わせのため、空間的に解像されたインターフェログラム(とても平坦な参照ミラーと対象サンプルの間の高さの差を反映する)が生み出される。大きな高さ分布を伴ってサンプルを結像するために、垂直スキャン方式(vertical scan scheme)が用いられ、即ち、対象範囲の複数のインターフェログラムが、異なるサンプル-対物レンズ間隔の範囲内で一続きとして結像される。これらデータから、フル3次元画像が編集される。この方法を用いて、60μm×60μm〜1.2mm×1.2mmの範囲の凹凸画像が、数nmの範囲の垂直解像度で記録可能である。
【0075】
凹凸データは、表面輪郭に関するRq若しくはRMSと略称される二乗平均平方根粗さパラメータ(輪郭粗さパラメータ)、及び表面凹凸に関するSqと略称される二乗平均平方根粗さパラメータ(面積粗さパラメータ)として表される表面粗さを計算するのに用いられる。Rqの意味はRMSの意味と同じであり、Rq若しくはRMSはDIN EN ISO 4287(1998年のドイツ語版及び英語版、チャプター4.2.2)に定義された意味を有し、Sqは2012年4月のISO 25178-2(チャプター4.1.1)に定義された意味を有する。
【0076】
更に凹凸データは、基材表面(基礎面)とめっきされた金属パターンの表面の間の高さの差としてめっきされた銅層の厚みを計算するのに用いられる。凹凸画像、層の厚み及び表面粗さを計算するため、ATOS GmbH(ドイツ)の光学粗面計/白色光干渉計、モデルMIC-520には、Micromap CorporationによるコンピュータソフトフェアMicromap 123、バージョン4.0が備えられた。
【0077】
測定のモードはFocus 560 Mであった。凹凸画像は10倍率の対物レンズと2倍率の接眼レンズを用いて測定された。凹凸画像は312μm×312μmの範囲で記録され、480×480ポイントで構成される。
【0078】
〔実施例1:ポリアミノジコハク酸と別の錯化剤の組み合わせ〕
基材:無アルカリほうけい酸ガラス、厚み0.7mm、銅のスパッタリングされたシード層。
前処理:
1.アルカリ洗浄剤、40℃/1分
2.HOでのすすぎ
3.硫酸前浸漬溶液(pre dip solution)、室温(RT)/20秒
4.イオン性Pd-活性剤(CuとPdの交換反応)RT/2分
5.HOでのすすぎ
【0079】
無電解銅めっき溶液が製造された。錯化剤としてEDDS/EDTAとEDDS/HEDTAの組み合わせが使われた。EDDSが夫々0g/リットル、4.5g/リットル、6.8g/リットルの量で加えられた。Cu2+イオンがCuSO・6HOとして加えられ、増強剤HPOがNaHPO・2HOとして加えられ、安定剤としてシアン化物化合物とイオウ化合物の混合物が加えられた。浴のpHは21℃で13.2であった。唯一の錯化剤としてのEDDSが異なる量で比較例として用いられた。
【0080】
基材が上記された夫々のめっき溶液と55℃で各10分間、接触させられた。析出したCu層のサンプルは測定モード「Focus 560 M」において既述の方法にしたがって分析された。結果を以下の表1〜4に示す。図1は得られた結果のチャートである。
【0081】
【表1】
【0082】
【表3】
【表4】
【0083】
EDDS/EDTAの組み合わせ(表1、図1左)によって、同じプロセス時間が選択される際、EDTA単独に比べて銅の厚みが増すことになる。銅の厚みは約3の係数だけ、0.5μm(EDDSなし)から1.47μm(6.8g/リットルのEDDS)に増加可能である。
【0084】
EDDS/HEDTAの組み合わせ(表3、図1中央)によって、同じプロセス時間が選択される際、HEDTA単独に比べて銅の厚みが増すことになる。銅の厚みは約2.4の係数だけ、1.31μm(EDDSなし)から3.18μm(6.8g/リットルのEDDS)に増加可能である。
【0085】
唯一の錯化剤としてEDDSの量を増加して用いる場合、銅の厚みに関してさほど強くない影響が観察される(図1右側;表4)。28.4g/リットルのEDDSが基礎量として使われ、0g/リットル、4.5g/リットル、6.8g/リットルの量が他の実施例におけるように加えられた。銅の厚みが単に約1.2の係数だけ、3.34μm(0g/リットルの追加EDDS)から4.09μm(6.8g/リットルの追加EDDS)に増加する。
【0086】
〔実施例2:ポリアミノジコハク酸と更なる2種の錯化剤(HEDTAとQuadrol)の組み合わせ〕
実施例1におけると同じ基材、前処理手順、浴の成分とpHが用いられた。錯化剤としてEDDS、HEDTA及びN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンが用いられた。N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンは以下、BASF社の商標である「Quadrol」と略称される。
【0087】
析出率は、白色光干渉計を用いて決定された銅層の厚みと析出時間から決定された。
実験上の設定と決定が表5に示される。実験番号1,2,3において異なる量のグリオキシル酸が用いられた。析出率と粗さ(Sq)に関する結果はまた図2a(表5の実験番号1A、1B)、図2b(表5の実験番号2A、2B)、図2c(表5の実験番号3A、3B)に示される。滞留時間は、基材が無電解銅めっき溶液と接触する時間を意味する。
結果は、EDDSの追加が析出率を増加し同時に析出された銅層の粗さを減らすことを示す。
【0088】
【表5】
【0089】
〔実施例3:ポリアミノジコハク酸と更なる2種の錯化剤(HEDTAとQuadrol)の組み合わせ〕
実施例1におけると同じ基材、前処理手順、浴の成分とpHが用いられた。
【0090】
3.1ビーカーテスト
ビーカー内で実験が行われた。表6において、浴組成と実験の結果が示される。
実験番号4と5において、銅1当量当たりHEDTA/Quadrol3当量が用いられた。実験番号6において、銅1当量当たりEDDS2当量が加えられた。図3は、析出率に関する錯化剤の影響を示す。錯化剤HEDTAとQuadrolの混合物に対するEDDSの添加によって、析出率の増加となる(実験番号6)。以下で比較例3.3に示すように、HEDTA/Quadrolの更なる添加によって、析出率の増加には結び付かない。
【0091】
【表6】
【0092】
3.2水平線テスト
水平コンベア付き設備において実験が行われた。表7に、実験の浴組成と結果を示す。
実験番号7において、銅1当量当たりHEDTA/Quadrol3当量が用いられた。実験番号8において、EDDSが追加錯化剤として加えられた。図4は、析出率に関する錯化剤の影響を示す。錯化剤HEDTAとQuadrolの混合物に対するEDDSの添加によって、析出率の増加となる。以下で比較例3.3に示すように、HEDTA/Quadrolの更なる添加によって、析出率の増加とは結び付かない。
【0093】
【表7】
【0094】
3.3比較例、HEDTAとQuadrolのみ
水平線設定において実験が行われた。表8において、実験の浴組成と結果を示す。
実験番号9と10において、銅1当量当たりHEDTA/Quadrol3当量が用いられた。実験番号11で始めて、更にHEDTAとQuadrolの量を、全体で銅1当量当たりHEDTA/Quadrol6当量まで(実験番号16)増加して加えた。
【0095】
図5は、析出率に関する錯化剤の影響を示す。結果から分かるように、HEDTA/Quadrolの濃度増加によって、析出率の増加とならない。それどころか、析出率の低下傾向が、更にHEDTA/Quadrolを加える場合に、認められ得る。
【0096】
【表8】
【0097】
〔実施4:2種の錯化剤(EDDSとHEDTA)の比率の変動〕
実験が実施例1でのように実施された。
【0098】
【表9】
【0099】
浴組成
Cu2+ 2.5g/l
KOH 8g/l
安定剤 2mg/l
グリオキシル酸 4.6g/l
温度 45℃
析出時間 10分
実験と結果の更なる詳細は表10において与えられる。
【0100】
【表10】
【0101】
2種の錯化剤(EDDSとHEDTA)の比率の変動の結果を図6に示す。HEDTAに対するEDDSの比率が1:8と1:4で最も高い銅厚が達成される。1:0.05の比率で銅の厚みはひどく減少して、粗さはひどく増加する。
【0102】
〔実施例5:全錯化剤(EDDSとHEDTA)に対する銅の比率の変動〕
実験が実施例1でのように実施された。
【0103】
【表11】
【0104】
浴組成
Cu2+ 2.5g/l
KOH 8g/l
安定剤 2mg/l
グリオキシル酸 4.6g/l
温度 45℃
析出時間 10分
【0105】
実験と結果の更なる詳細は表10において与えられる。
全錯化剤(EDDSとHEDTA)に対する銅の比率の変動の結果を図7に示す。銅厚だけでなく粗さも、銅に対する全錯化剤の比率が増加するにつれて増加する。銅に対する全錯化剤の比率が0.5:1と11:1の銅浴が不安定で、3.1:1の比率の浴が安定だった。
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5
図6
図7