(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373362
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】空気イオン化モジュール
(51)【国際特許分類】
H01T 19/00 20060101AFI20180806BHJP
H01T 23/00 20060101ALI20180806BHJP
A61L 9/22 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
H01T19/00
H01T23/00
A61L9/22
【請求項の数】11
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-515761(P2016-515761)
(86)(22)【出願日】2014年5月26日
(65)【公表番号】特表2016-526266(P2016-526266A)
(43)【公表日】2016年9月1日
(86)【国際出願番号】EP2014060812
(87)【国際公開番号】WO2014191346
(87)【国際公開日】20141204
【審査請求日】2017年5月9日
(31)【優先権主張番号】102013210114.7
(32)【優先日】2013年5月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515329883
【氏名又は名称】エル・カー ルフトクヴァリテート アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】LK Luftqualitaet AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ベーダ ヴァイベル
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル オスヴァルト
【審査官】
内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−273892(JP,A)
【文献】
特開2009−163951(JP,A)
【文献】
特開2003−059693(JP,A)
【文献】
特表2002−539591(JP,A)
【文献】
特開2007−080664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 19/00
H01T 23/00
A61L 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソケットに取り外し可能に配置されたイオン化管と、前記ソケットを備えた支持体とを有する空気イオン化モジュールであって、
前記支持体(1)は、互いに間隔を置いて配置された2つのプレート(4,5)を有しており、第1のプレート(4)は取り付け板(4)であり、第2のプレート(5)は前記ソケットを備えたプリント基板(5)であって、前記2つのプレート(4,5)の間には、断熱材料から成る部材(6)が配置されており、これにより前記第2のプレート(5)は前記第1のプレート(4)に対して断熱されて配置されていることを特徴とする、空気イオン化モジュール。
【請求項2】
前記断熱材料から成る部材(6)は、前記2つのプレート(4,5)と、この部材(6)を取り囲む、少なくとも所定の領域で断熱材料から成る壁(7)との間に配置されている、請求項1記載の空気イオン化モジュール。
【請求項3】
前記プレート(4,5)は係止機構を介して互いに接続されている、請求項1記載の空気イオン化モジュール。
【請求項4】
前記取り付け板(4)は前記プリント基板(5)よりも大きい、請求項1記載の空気イオン化モジュール。
【請求項5】
前記ソケットは、前記断熱材料から成る部材(6)内に配置されており、これにより前記ソケットは、前記プリント基板(5)の外側に面した表面と同一平面にある、請求項1記載の空気イオン化モジュール。
【請求項6】
前記ソケットは、前記プリント基板(5)の導体路に電気的に接続されていて、ひいては同時に固定されており、前記イオン化管(2)の陽極は、前記プリント基板(5)のソケットと導体路とを介して互いに接続されており、少なくとも1つの陰極を分離可能に接続するための電気的な接続エレメントの少なくとも1つの構成部材が、前記プリント基板(5)の少なくとも1つの導体路に導電接続されていて、ひいては同時に固定されており、イオン化管(2)の互いに接続された前記陽極と陰極とは、イオン化管(2)の1つのグループを成す、請求項1又は5記載の空気イオン化モジュール。
【請求項7】
1つのグループの前記イオン化管(2)の陽極は、変圧器(8)の二次コイルに接続されており、前記変圧器(8)の一次コイルはスイッチ(9)を介して電気的な低電圧網(10)に接続可能であって、前記イオン化管(2)の陰極はアース接続されている、請求項1又は6記載の空気イオン化モジュール。
【請求項8】
機械的に作用するスイッチ(9)の操作装置、又は電気的に制御可能なスイッチ(9)の制御電極が、データ処理システムに接続されていて、これにより、前記データ処理システムによって、前記イオン化管(2)の自動的なかつ/又は規定された運転が行われる、請求項7記載の空気イオン化モジュール。
【請求項9】
イオン化管(2)の複数のグループ用の複数の変圧器(8)は1つのハウジング(3)内に配置されており、前記ハウジング(3)は前記取り付け板(4)に取り付けられており、これにより前記イオン化管(2)と、前記支持体(1)と、前記ハウジング(3)とは1つのコンパクトな空気イオン化モジュールとなる、請求項1又は6又は7記載の空気イオン化モジュール。
【請求項10】
前記取り付け板(4)と前記プリント基板(5)との間に位置する前記断熱材料から成る部材(6)は、発泡性のプラスチックから成っている、請求項1記載の空気イオン化モジュール。
【請求項11】
4つのイオン化管(2)は、イオン化管(2)の1つのグループであって、前記イオン化管(2)は、直角を有さない平行四辺形の角部に配置されている、請求項1又は6記載の空気イオン化モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソケットに取り外し可能に配置されたイオン化管と、これらのソケットを備えた支持体とを有する空気イオン化モジュールに関する。
【0002】
イオン化装置により空間の空気を処理することができ、ひいては呼吸空気を処理することができることが公知である。このとき、細菌及びその他の病原菌は死滅し、高分子は小分子断片に分解される。複合された大きな分子はとりわけ臭い物質であるので、空気イオン化によって臭気を軽減することができる。さらに、空気中の微生物も効果的に減じることができる。
【0003】
イオン化装置では、電圧ポテンシャルを有した2つの電極間にある電場を利用して、気中放電により衝突電離でイオンを発生させている。このために、内部電極と外部電極とを備えたガラス管の形の公知の形式のイオン化管が使用され、この場合、同軸的な構造が存在している。気中放電のために十分に高い電圧がかけられると、壁のガラスは、その内部に大きな電場が存在する誘電体を形成する。貫流空気にはイオンが添加される。この場合の欠点は、所定の電圧を超えるとオゾンが形成され、電圧が増大するとオゾン形成は高まるということである。
【0004】
独国特許第4334956号明細書により、イオンによる空気処理法と、この方法を実施する装置が公知である。この場合、イオン化装置の長期安定性が高められている。主要な点は、高められたオゾン形成を回避することである。このためには、空気質センサ、空気流センサ、空気湿度センサの形のセンサが使用される。例えばスモッグ、逆転層、雷雨、外部のエネルギ場のような外的な障害要因、及び電気機器の運転による内的な障害要因が生じた場合、供給空気へのオゾンの負荷が、不都合なほど上昇してしまい、限界値を超過してしまう恐れがある。
【0005】
独国特許第10007523号明細書には、イオンによる空気処理法と、この方法を実施する装置が記載されていて、この場合、付加的に、オゾン含量を検出するオゾンセンサが使用されている。
【0006】
周囲の空気と例えば冷却された供給空気との間の温度差により生じる水分の凝結という問題については、この明細書では言及されていない。
【0007】
請求項1に記載した本発明の根底を成す課題は、凝結水をほぼ生じさせることなく空気流にイオンを添加するコンパクトな空気イオン化モジュールを提供することである。
【0008】
この課題は、請求項1の特徴部に記載の構成により解決される。
【0009】
取り外し可能にソケットに配置されたイオン化管と、前記ソケットを備えた支持体とを有する空気イオン化モジュールは、特に、空気流にイオンを添加する際に凝結がほぼ生じないことを特徴とする。
【0010】
このために支持体は、互いに間隔を置いて配置された2つのプレートを有しており、第1のプレートは取り付け板であり、第2のプレートはソケットを備えたプリント基板である。さらに、これらのプレートの間には、断熱材料から成る部材が配置されているので、第2のプレートは第1のプレートに対して断熱されて配置されている。
【0011】
空気イオン化モジュールは、建物の少なくとも1つの内部空間のために、空気流中にイオンを発生させるために用いられる。イオン化された空気は例えば、臭気を発生させる多数の分子を分解し、微生物を死滅させ、気体の流動性の炭化水素を分解させ、空気の酸化ポテンシャルを減じる。これにより快適な自然に近い空気が、このイオンを供給された空間内で得られる。
【0012】
この場合使用されるイオン化管は、コロナ放電によりイオンを発生させるために使用される。これは、イオン化管に加えられる高い交流電圧によって行われる。このために、公知のイオン化管は例えば陽極と、この陽極を取り囲む格子状の陰極とを有している。この場合、陰極は好適にはアース接続されている。
【0013】
空気イオン化モジュールは、互いに断熱されて配置されている取り付け板とプリント基板とから成る支持体を有している。公知のように、プリント基板は電気絶縁体から成っていて、このプリント基板には導体路と、場合によっては導電材料から成る接触個所とが設けられている。断熱材料からなる部材は、これら両プレート間に位置している。これにより、両プレート間に好適には熱の橋絡は生じない。さらに、この材料は特に不燃性であっても良いので、くん焼火災を回避することができる。断熱材料からなる部材は好適にはプラスチック、特にポリイソシアヌレート(PIR)又はポリウレタン(PU)から成っていて良い。空気イオン化モジュールは公知のように、空気供給通路の1つの構成部分である。この場合、支持体は同時に、空気供給通路の壁の構成部分であって良い。取り付け及び取り外しはずっと簡単になる。特にイオン化管のクリーニング作業及び保守整備作業は特に好適である。空気供給通路の壁における配置は特に省スペースである。さらには、少なくとも1つの空気イオン化モジュールが、空気供給通路又は空調設備自体に位置していて良い。さらには、少なくとも1つの空気イオン化モジュールが空気供給通路に位置していて良い。イオン化管は、通路空間、ひいては供給空気流内に突入している。比較的高い温度が生じる場合に冷却された空気が供給される場合、支持体で熱の橋絡が生じない空気イオン化モジュールを使用することにより、水の凝結は回避される。凝結水及び高電圧によって作動されるイオン化管により生じるリスクは回避される。これにより空気イオン化モジュールを、比較的高い空気温度においても、比較的空気湿度が高い場合でも確実に運転することができる。モジュールの耐用期間はこれにより高まる。
【0014】
本発明の有利な構成は請求項2〜11に記載されている。
【0015】
断熱材料からなる部材は、請求項2に記載の別の構成によれば、プレートと、この部材を取り囲む、少なくとも所定の領域で断熱材料から成る壁との間に位置している。これによりプレートと壁とはコンパクトなユニットを形成する。この部材は様々な材料から成っていて良く、この部材は、弾性的な材料から成る部材であっても良い。
【0016】
請求項3記載の別の構成によれば、前記プレートは係止機構を介して互いに接続されており、この場合、係止エレメントは孔に係合するようになっている。これにより容易な取り付け及び取り外しが可能である。
【0017】
取り付け板は、請求項4記載の別の構成によれば、プリント基板よりも大きい。これにより、空気イオン化モジュールは、熱の橋絡を発生させることなく通路の壁に容易に組み込むことができる。これは、プリント基板と通路壁との間の互いに間隔を置いた配置により行うことができる。勿論、熱伝導性でない材料から成っている、プリント基板と通路壁との間の隙間を橋絡する部材を配置することもできる。
【0018】
請求項5記載の別の構成によれば、ソケットは、断熱材料からなる部材内に配置されていて、これによりこれらのソケットは、プリント基板の外部に面した表面と同一平面に位置している。
【0019】
請求項6記載の別の構成によれば、ソケットは、プリント基板の導体路に電気的に接続されていて、ひいては同時に固定されている。イオン化管の陽極は、プリント基板のソケットと導体路とを介して互いに接続されている。少なくとも1つの陰極の分離可能な接続のための電気的な接続エレメントの少なくとも1つの構成部材は、プリント基板の少なくとも1つの導体路に導電接続されていて、ひいては同時に固定されている。イオン化管の互いに接続された陽極と陰極とは、イオン化管の1つのグループである。
【0020】
1つのグループのイオン化管の陽極は、請求項7記載の別の構成によれば、変圧器の二次コイルに接続されている。変圧器の一次コイルは、スイッチを介して、電気的な低電圧網に接続可能である。さらにはイオン化管の陰極はアース接続されている。
【0021】
機械的に作用するスイッチの操作装置、又は電気的に制御可能なスイッチの制御電極は、請求項8記載の別の構成によれば、データ処理システムに接続されていて、これにより、データ処理システムによってイオン化管の自動的なかつ/又は規定された運転が行われる。
【0022】
イオン化管の複数のグループ用の変圧器は、請求項9記載の別の構成によれば1つのハウジング内に配置されている。このハウジングはさらに、取り付け板に取り付けられていて、これによりイオン化管と、支持体と、ハウジングとは、1つのコンパクトな空気イオン化モジュールである。
【0023】
取り付け板とプリント基板との間にある、断熱材料からなる部材は、請求項10記載の別の構成によれば、発泡性のプラスチックから成っている。このプラスチックは簡単に、これらのプレート間の空間に挿入され、硬化の際に自動的に形成され、この際、空気で満たされた気泡も生じるので、両プレート間には良好な断熱性が存在する。同時に、存在している空間を簡単に完全に充填することができる。
【0024】
好適には、請求項11記載の別の構成によれば、4つのイオン化管が、イオン化管の1つのグループである。これらのイオン化管は、さらに好適には、直角を有さない平行四辺形の角部に配置されている。これによりイオン化管は互いにずらされて配置されているので、イオン化管を取り巻く良好な空気流が存在する。
【0025】
本発明の実施態様を図面にそれぞれ原則的に示し、以下に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】空気イオン化モジュールを示す側面図である。
【
図2】空気イオン化モジュールを示す平面図である。
【
図3】イオン化管と変圧器用のハウジングとを備えた支持体を示す図である。
【0027】
空気イオン化モジュールは主として、イオン化管2を備えた支持体1と、変圧器8用のハウジング3とから成っている。
【0028】
これについて、
図1は、空気イオン化モジュールを原則的な側面図で示していて、
図2は、空気イオン化モジュールを原則的な平面図で示している。
【0029】
支持体1は、互いに間隔を置いて配置された2つのプレート4,5を有しており、この場合、第1のプレート4は取り付け板4であり、第2のプレート5はプリント基板5である。プレート4,5の間には、断熱材料から成る部材6が配置されているので、第2のプレート5は第1のプレート4に対して断熱されて配置されている。取り付け板4はプリント基板5よりも大きく形成されている。実施態様では、取り付け板4及び/又はプリント基板5はU字形を有していても良い。断熱材料から成る部材6は発泡性のプラスチックから成っている。取り付け板4は金属板4であり、プリント基板5は公知のように、被着された導体路を備えた電気絶縁体から成るプレート5である。
【0030】
図3は、イオン化管2を備えた支持体1と変圧器用のハウジング3とを原則的な図で示している。
【0031】
断熱材料から成る部材6は、プレート4,5と、この部材6を取り囲む壁7との間に位置している。この壁7はこの場合、少なくとも所定の領域で、断熱材料、好適にはプラスチックから成っている。壁7は好適には同時に、係止機構を有しており、この係止機構は空所に係合する。
【0032】
イオン化管2は取り外し可能にソケットに配置されている。
【0033】
プリント基板5がソケットを有しており、イオン化管2の陽極は、プリント基板5のソケットと導体路とを介して互いに接続されている。同時に、イオン化管2の陰極用の接続エレメントは、プリント基板5の表面又は内面に配置されており、これによりイオン化管2の陰極は、接続エレメントと導体路とを介して互いに接続されている。このために、陰極はケーブルを介して接続エレメントに、ねじ結合により分離可能に接続されている。イオン化管2の互いに接続された陽極と陰極とは、イオン化管2の1つのグループを成すように互いに接続されている。このために、イオン化管2の1つのグループは例えば、直角を有さない平行四辺形の角部に配置された4つのイオン化管2から成っていて良い。
【0034】
ソケットは、このソケットが、プリント基板5の外部に面した表面と同一平面となるように、プリント基板5に接続されている。
【0035】
1つのグループのイオン化管2の陽極は、変圧器8の二次コイルに接続されている。変圧器8の一次コイルは、スイッチ9を介して、電気的な低電圧網10に接続可能である。イオン化管2の陰極はアース接続されている。
【0036】
図4は、イオン化管2を備えた回路を原則的な図で示している。
【0037】
イオン化管2のグループ用の変圧器8は、ハウジング3内に位置していて、このハウジング3はさらに取り付け板4に取り付けられている。これによりイオン化管2、支持体1、変圧器8を有したハウジング3は、1つのコンパクトな空気イオン化モジュールとなる。
【0038】
機械的に作用するスイッチ9の操作装置、又は電気的に制御可能なスイッチ9の制御電極は、データ処理システムに接続されていて、これにより、イオン化管2の自動的なかつ/又は規定された運転が行われる。