【文献】
佐野 昌洋 et al.,新規に開発した再生用アスファルトの特性,北陸道路舗装会議技術報文集,2012年,p.D-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アスファルトのコロイダルインデックス(Ci)と、前記ブロック共重合体の動的粘弾性のスペクトルにおける損失正接のピーク温度(Tg(℃))と、が以下の関係を満たす、請求項1又は2に記載のアスファルト組成物。
Ci≦0.0127×Tg+0.94
前記ブロック共重合体の前記共役ジエン単量体単位が、1,2−結合及び/又は3,4−結合に由来する共役ジエン単量体単位(a)と、1,4−結合に由来する共役ジエン単
量体単位(b)と、からなり、
前記共役ジエン単量体単位の総含有量を100質量%とした場合に、
前記共役ジエン単量体単位(a)が水添されたアルケニル単量体単位(a1)の含有量が、10質量%以上50質量%以下であり、
前記共役ジエン単量体単位(b)が水添されたアルケニル単量体単位(b1)の含有量が、0質量%以上80質量%以下であり、
水添後に水添されていない共役ジエン単量体単位(a2)と水添後に水添されていない共役ジエン単量体単位(b2)の含有量の和が、0質量%以上90質量%以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のアスファルト組成物。
前記ブロック共重合体が、水酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シラノール基、及びアルコキシシラン基からなる群から選択される少なくとも一つの官能基を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のアスファルト組成物。
前記ブロック共重合体の前記共役ジエン単量体単位の総含有量に対して、1,2−結合及び/又は3,4−結合に由来する共役ジエン単量体単位(a)の含有量が、10質量%以上50質量%以下である、請求項1〜8のいずれかに記載のアスファルト組成物。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について、詳細に説明する。本発明は以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0021】
〔アスファルト組成物〕
本実施形態のアスファルト組成物は、
ブロック共重合体0.5質量部以上20質量部以下と、
アスファルト100質量部と、を含有し、
前記ブロック共重合体が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)、及び共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位を含む共重合体ブロック(B)を有し、
前記ブロック共重合体中の前記ビニル芳香族単量体単位の含有量が、20質量%以上60質量%以下であり、
前記ブロック共重合体中の前記重合体ブロック(A)の含有量が、10質量%以上40質量%以下であり、
前記ブロック共重合体の前記共役ジエン単量体単位中の二重結合の水添率が、40%以上100%以下であり、
前記アスファルトのコロイダルインデックス((飽和分含有量+アスファルテン分含有量)/(レジン分含有量+芳香族分含有量))が、0.30以上0.54以下であり、かつ飽和分の含有量が11質量%以下である。
【0022】
〔ブロック共重合体〕
本実施形態のブロック共重合体は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)、及び共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位を含む共重合体ブロック(B)を有し、前記ビニル芳香族単量体単位の含有量が、20質量%以上60質量%以下であり、前記重合体ブロック(A)の含有量が、10質量%以上40質量%以下であり、前記共役ジエン単量体単位中の二重結合の水添率が、40%以上100%以下である。
【0023】
本実施形態において、「共役ジエン単量体単位」とは、共役ジエン化合物が重合した結果生じる、共役ジエン化合物1個当たりの単位である。なお、本明細書中、共役ジエン単量体単位は、水添前後に係らず「共役ジエン単量体単位」と称する。
【0024】
共役ジエン化合物は一対の共役二重結合を有するジオレフィンである。共役ジエン化合物としては、特に限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。中でも、好ましくは1,3−ブタジエン及びイソプレンである。共役ジエン化合物は一種のみならず二種以上を使用してもよい。
【0025】
本実施形態において、「ビニル芳香族単量体単位」とは、ビニル芳香族化合物が重合した結果生じる、ビニル芳香族化合物1個当たりの単位である。
【0026】
ビニル芳香族化合物としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等が挙げられる。ビニル芳香族化合物は一種のみならず二種以上を使用してもよい。
【0027】
〔重合体ブロック(A)〕
本実施形態において、重合体ブロック(A)とは、ビニル芳香族単量体単位を主体とするブロックである。ここで「主体とする」とは、重合体ブロック(A)中にビニル芳香族単量体単位を、95質量%を超えて、100質量%以下含むことをいい、好ましくは96質量%以上100質量%以下含むことをいい、より好ましくは97質量%以上100質量%以下含むことをいう。
【0028】
重合体ブロック(A)の含有量は、ブロック共重合体全体に対して、10質量%以上40質量%以下であり、好ましくは13質量%以上35質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上30質量%以下であり、さらに好ましくは17質量%以上22質量%以下である。重合体中の重合体ブロック(A)の含有量が上記範囲内にあることにより、軟化点、及び高温貯蔵安定性がより向上する。
【0029】
本実施形態において、重合体ブロック(A)の含有量は、四酸化オスミウムを触媒として重合体をターシャリーブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,et.al,J.Polym.Sci.1,p.429(1946)に記載の方法)で求めたビニル芳香族重合体ブロック成分の質量(但し、平均重合度が約30以下のビニル芳香族重合体ブロック成分は除かれている)を用いて、次の式から求めることができる。
重合体ブロック(A)の含有量(質量%)=(ビニル芳香族重合体ブロック成分の質量/重合体の質量)×100
【0030】
重合体が水添されている場合の、重合体中の重合体ブロック(A)の含有量は水添前の重合体ブロック(A)の重合体に対する含有量とほぼ等しいので、本実施形態においては、重合体が水添されている場合の重合体中の重合体ブロック(A)の含有量は、水添前の重合体ブロック(A)の含有量として求めてもよい。
【0031】
〔重合体ブロック(B)〕
本実施形態において、共重合体ブロック(B)とは、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位を含むブロックであり、好ましくはビニル芳香族単量体単位の含有量が5質量%以上95質量%以下であるブロックである。
【0032】
本実施形態において、共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族単量体単位の含有量は、アスファルト組成物の軟化点、耐わだち掘れ性(G*/sinδ)の観点から、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、さらに好ましくは25質量%以上である。また、共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族単量体単位の含有量は、アスファルト組成物の高温貯蔵安定性、伸度の観点から、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは35質量%以下であり、よりさらに好ましくは30質量%以下である。
【0033】
なお、共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族単量体単位の含有量(RS)は、ブロック共重合体中のビニル芳香族単量体単位の含有量(TS)から、上記重合体ブロック(A)の含有量(BS)を除して求めることができる。
RS(%)=(TS−BS)/(100−BS)×100
【0034】
耐わだち掘れ性は、通常、実際の道路舗装と同様の骨材を含む配合物をホイールトラッキング試験で求める動的安定度(DS値)で判断されるが、本実施形態のアスファルト組成物の場合、後述する実施例記載の動的安定度の指標であるG*/sinδの値を測定し、耐わだち掘れ性を判断することができる。
【0035】
共重合体ブロック(B)はランダムブロックであることが好ましい。ここで「ランダム」とはブロック共重合体中のビニル芳香族単量体単位の連続が10個以下である状態をいう。
【0036】
共重合体ブロック(B)の含有量は、ブロック共重合体に対して、好ましくは60質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは65質量%以上85質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以上80質量%以下である。ブロック共重合体中の共重合体ブロック(B)の含有量が上記範囲内にあることにより、ブロック共重合体のアスファルト組成物における溶解性、及び軟化点がより向上する傾向にある。
【0037】
本実施形態における共重合体ブロック(B)中の短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量は、重合体ブロック(B)中のビニル芳香族単量体単位の含有量100質量%に対して、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、よりさらに好ましくは90質量%以上である。また、共重合体ブロック(B)中の短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量の上限は、特に限定されないが、好ましくは100質量%以下であり、より好ましくは99質量%以下である。重合体ブロック(B)中の短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量が上記範囲内であることにより、ブロック共重合体とアスファルトとの相溶性、伸度、高温貯蔵安定性がより向上する傾向にある。
【0038】
ここで、「短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分」とは、重合体ブロック(B)中の2〜6個のビニル芳香族単量体単位からなる成分である。そして、短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量は、重合体ブロック(B)中のビニル芳香族単量体単位の含有量を100質量%とし、その中で2〜6個繋がったビニル芳香族単量体単位の含有量として求められる。
【0039】
また、2個繋がったビニル芳香族単量体単位の含有量は、重合体ブロック(B)中のビニル芳香族単量体単位の含有量100質量%に対して、好ましくは10質量%以上45質量%以下であり、より好ましくは13質量%以上42質量%以下であり、さらに好ましくは19質量%以上36質量%以下である。2個繋がったビニル芳香族単量体単位の含有量が上記範囲内であることにより、ブロック共重合体とアスファルトとの相溶性、伸度、高温貯蔵安定性がより向上する傾向にある。
【0040】
さらに、3個繋がったビニル芳香族単量体単位の含有量は、重合体ブロック(B)中のビニル芳香族単量体単位の含有量100質量%に対して、好ましくは45質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは45質量%以上75質量%以下であり、さらに好ましくは45質量%以上65質量%以下である。3個繋がったビニル芳香族単量体単位の含有量が上記範囲内であることにより、ブロック共重合体とアスファルトとの相溶性、伸度、高温貯蔵安定性がより向上する傾向にある。
【0041】
本実施形態において、ビニル芳香族単量体単位の含有量は、ブロック共重合体に対して、20質量%以上60質量%以下であり、好ましくは33質量%以上55質量%以下であり、より好ましくは37質量%以上48質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以上45質量%以下である。ブロック共重合体中のビニル芳香族単量体単位の含有量が上記範囲内であることにより、軟化点、伸度、アスファルト組成物の軟化点と伸度のバランスがより向上する。なお、ビニル芳香族単量体単位の含有量は、後述する実施例記載の方法で測定することができる。
【0042】
ブロック共重合体が水添されている場合の、ブロック共重合体に対するビニル芳香族単量体単位の含有量は、水添前のブロック共重合体に対するビニル芳香族単量体単位の含有量とほぼ等しいので、ブロック共重合体が水添されている場合のビニル芳香族単量体単位の含有量は、水添前のビニル芳香族単量体単位の含有量として求めてもよい。
【0043】
本実施形態において、共役ジエン単量体単位の総含有量中の水添されている共役ジエン単量体単位の含有量である水添率(モル%)、すなわち、共役ジエン単量体単位中の二重結合の水添率は、40%以上100%以下であり、好ましくは40%以上95%以下であり、より好ましくは50%以上90%以下であり、より好ましくは60%以上90%以下である。ブロック共重合体中の水添率が上記範囲であることにより、アスファルトとの相容性が優れ、軟化点、伸度及び高温貯蔵安定性の性能バランスが優れる。本実施形態において水添率は、後述する実施例記載の方法で求めることができる。
【0044】
ブロック共重合体は、動的粘弾性のスペクトルにおいて、−70℃以上0℃以下の範囲に損失正接のピークトップを有し、前記ピークトップの値が0.7以上2.0以下であることが好ましい。アスファルト組成物の軟化点、伸度、及び耐わだち掘れ性(G*/sinδ)の性能バランスがより向上する傾向にある。
【0045】
アスファルト組成物の軟化点と伸度及び耐わだち掘れ性(G*/sinδ)の性能バランスの観点から、損失正接のピークトップの範囲は、より好ましくは−50℃以上−10℃以下であり、さらに好ましくは−45℃以上−20℃以下である。
【0046】
また、アスファルト組成物の軟化点と伸度の観点から、ピークトップの値は、より好ましくは0.8以上1.6以下であり、さらに好ましくは0.9以上1.4以下であり、よりさらに好ましくは1.0以上1.3以下である。上記、tanδピーク高さや温度は、後述する実施例記載の方法により求めることができる。
【0047】
tanδピーク温度は、例えば共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位の含有量の比率、共役ジエン化合物のミクロ構造、水添率等を制御することにより、−70℃以上0℃以下の範囲にtanδのピークトップを有するように調整することができる。例えば共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族単量体単位の比率を上げるとtanδのピークトップは高温側に有する傾向にあり、ビニル芳香族単量体単位の比率を下げるとtanδのピークトップは低温側に有する傾向にある。
【0048】
また、共重合体ブロック(B)の重合において温度と各単量体の添加時間もしくは添加回数を制御することにより、ピークトップの値を0.7以上2.0以下に調整することができる。具体的には、反応器内温を56〜90℃の範囲内で、反応器内圧を0.1MPa〜0.50MPaの範囲内で、かつ一定速度で添加する共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体の添加時間を10〜60分の範囲内もしくは、添加回数を3回以上とする。また、別の方法として、水添反応時の温度にも依存する傾向があり、上記いずれかの方法に加えて水添反応時の温度を80℃以上120℃以下にするとピークトップの値が0.7以上2.0以下に近づく傾向がある。
【0049】
本実施形態において、共役ジエン単量体単位は1,2−結合及び/又は3,4−結合に由来する共役ジエン単量体単位(a)と1,4−結合に由来する共役ジエン単量体単位(b)からなる。
【0050】
ここで「1,2−結合及び/又は3,4−結合に由来する共役ジエン単量体単位(a)」とは、共役ジエン化合物が1,2−結合及び/又は3,4−結合で重合した結果生じる、共役ジエン化合物1個当たりの単位である。また「1,4−結合に由来する共役ジエン単量体単位(b)」とは、共役ジエン化合物が1,4−結合で重合した結果生じる、共役ジエン化合物1個当たりの単位である。
【0051】
ブロック共重合体中の共役ジエン単量体単位の総含有量に対する、共役ジエン単量体単位(a)の含有量(以下、ビニル結合量ともいう)は、アスファルト組成物の軟化点と伸度の性能バランスの観点から、好ましくは10質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは15質量%以上45質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以上40質量%以下である。
【0052】
本実施形態において、共役ジエン単量体単位の総含有量を100質量%とした場合に、共役ジエン単量体単位(a)が水添されたアルケニル単量体単位(a1)の含有量は、10質量%以上50質量%以下であり、共役ジエン単量体単位(b)が水添されたアルケニル単量体単位(b1)の含有量は、0質量%以上80質量%以下であり、水添後に水添されていない共役ジエン単量体単位(a2)と水添後に水添されていない共役ジエン単量体単位(b2)の含有量の和が0質量%以上90質量%以下であることが好ましい。このようなブロック共重合体を用いることにより、アスファルト組成物の軟化点と伸度の性能バランスがより向上する傾向にある。
【0053】
アスファルト組成物の軟化点と伸度の性能バランスの観点から、アルケニル単量体単位(a1)の含有量は、好ましくは15質量%以上45質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上40質量%以下である。
【0054】
また、アスファルト組成物の軟化点と伸度の性能バランスの観点から、アルケニル単量体単位(b1)の含有量は、好ましくは10質量%以上70質量%以下であり、より好ましくは15質量%以上65質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以上65質量%以下である。
【0055】
さらに、アスファルト組成物の軟化点と伸度の性能バランスの観点から、共役ジエン単量体単位(a2)と共役ジエン単量体単位(b2)の含有量の和は、好ましくは0質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上70質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上60質量%以下である。
【0056】
共役ジエン単量体単位(a)が水添されたアルケニル単量体単位(a1)の含有量、共役ジエン単量体単位(b)が水添されたアルケニル単量体単位(b1)の含有量、水添されなかったアルケニル単量体単位(a2)の含有量、水添されなかったアルケニル単量体単位(b2)の含有量は、後述する実施例記載の方法で求めることができる。
【0057】
ブロック共重合体における水添前の共役ジエン単量体単位(a)の含有量及び共役ジエン単量体単位のミクロ構造(シス、トランスとビニルの比率)は、後述する極性化合物等の使用により調整することができる。
【0058】
本実施形態に用いるブロック共重合体は、アスファルト組成物の高い伸度、高い伸長回復性および5℃等の低温での高い伸度の点で、水酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シラノール基、及びアルコキシシラン基からなる群から選択される少なくとも一つの官能基を有することが好ましい。この中でも、ブロック共重合体が、アミノ基、及びアミド基からなる群から選択される少なくとも一つの官能基を有することがより好ましく、アミノ基を有することがさらに好ましい。ブロック共重合体は、その分子1molに対して、アミノ基、及びアミド基からなる群から選択される少なくとも一つの官能基を2mol以上含有することがより好ましい。なお、上記官能基は、後述するブロック共重合体の製造方法により導入することができる。
【0059】
本実施形態において、ブロック共重合体のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.05以上10以下であり、より好ましくは0.05以上8以下であり、さらに好ましくは0.05以上6以下である。ブロック共重合体のMFRが上記範囲内であることにより、アスファルト組成物の加工性と軟化点のバランスに優れる傾向にある。MFRの測定は、水添ブロック共重合体を使用し、メルトインデクサー(L247;TECHNOLSEVEN CO.,LTD製)を用い、JIS K7210に準じた方法により算出することができる。試験温度が230℃、試験荷重が2.16kgfであり、測定値の単位はg/10分間のL条件で測定することが好ましい。
【0060】
本実施形態において、アスファルト組成物の軟化点と溶融粘度のバランスの観点から、ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは50000以上300000以下であり、より好ましくは60000以上280000以下であり、さらに好ましくは70000以上260000以下であり、よりさらに好ましくは70000以上200000未満である。
【0061】
本実施形態において、アスファルト組成物の軟化点と溶融粘度のバランスの観点から、ブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)(重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比)は、好ましくは2.0以下であり、より好ましくは1.8以下であり、さらに好ましくは1.5以下である。
【0062】
重量平均分子量及び分子量分布は、後述する実施例記載の方法で求めることができる。ブロック共重合体が水添されている場合の、重量平均分子量および分子量分布は水添前のブロック共重合体の重量平均分子量及び分子量分布とほぼ等しいので、ブロック共重合体が水添されている場合の重量平均分子量及び分子量分布は、水添前のブロック共重合体の重量平均分子量及び分子量分布を求めてもよい。
【0063】
本実施形態において、ブロック共重合体の構造に関しては、いかなる構造のものでも使用できる。例えば、下記式で表されるような構造を有するものが挙げられる。
(A−B)
n+1、A−(B−A)
n、B−(A−B)
n+1、[(A−B)
n]
m−X
、[(B−A)
n−B]
m−X、[(A−B)
n−A]
m−X、[(B−A)
n+1]
m
−X
(上記式において、各Aはそれぞれ独立して重合体ブロック(A)を表す。各Bはそれぞれ独立して共重合体ブロック(B)を表す。各nはそれぞれ独立して1以上の整数であり、好ましくは1〜5の整数である。各mはそれぞれ独立して2以上の整数であり、好ましくは2〜11の整数である。各Xはそれぞれ独立してカップリング剤の残基又は多官能開始剤の残基を表す。)
【0064】
ブロック共重合体は、上記式で表される構造を有するものの任意の混合物であってもよい。これらの中でも、A−B−A構造がアスファルトバインダ性能のバランスの点から好ましい。
【0065】
本実施形態において、共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族単量体単位は、均一に分布していてもよいし、テーパー状、階段状、凸状、あるいは凹状に分布していてもよい。ここで、「テーパー構造」とは、共重合体ブロック(B)中のポリマー鎖に沿って、ビニル芳香族単量体単位の含有量が漸増する構造を意味する。共重合体ブロック(B)の重合開始直後の共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族単量体単位の含有量をS1、重合途中、例えば導入した単量体の1/2が重合した時点での共重合体中のビニル芳香族単量体単位の含有量をS2、重合完了後の共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族単量体単位の含有量をS3とした場合、S2/S1>1且つS3/S2>1の関係が成り立つ構造である。
【0066】
共重合体ブロック(B)には、ビニル芳香族単量体単位が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個存在していてもよい。また共重合体ブロック(B)には、ビニル芳香族単量体単位の含有量が異なるセグメントが複数個存在していてもよい。
【0067】
〔ブロック共重合体の製造方法〕
本実施形態のブロック共重合体は、例えば、炭化水素溶媒中で有機アルカリ金属化合物等の重合開始剤を用いてアニオンリビング重合により製造することができる。
【0068】
炭化水素溶媒としては、特に限定されないが、例えば、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタンなどの脂環式炭化水素類;及びベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素等が挙げられる。
【0069】
重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、共役ジエン及びビニル芳香族化合物に対してアニオン重合活性を有する脂肪族炭化水素アルカリ金属化合物、芳香族炭化水素アルカリ金属化合物、有機アミノアルカリ金属化合物等が挙げられる。アルカリ金属としては、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
【0070】
本実施形態において、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とを重合する際に、ブロック共重合体に組み込まれる共役ジエン単量体単位に起因するビニル結合(1,2−結合または3,4−結合)の量の調整や共役ジエンとビニル芳香族化合物とのランダム重合性を調整するために、極性化合物である、第3級アミン化合物またはエーテル化合物を添加してもよい。
【0071】
第3級アミン化合物としては、特に限定されないが、例えば、式R
1R
2R
3N(ただし、R
1、R
2、R
3はそれぞれ独立して炭素数1から20の炭化水素基または第3級アミノ基を有する炭化水素基である)で表される化合物が挙げられる。
【0072】
具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N−エチルピペリジン、N−メチルピロリジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタン、トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルエチレントリアミン、N,N’−ジオクチル−p−フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0073】
エーテル化合物としては、特に限定されないが、例えば、直鎖状エーテル化合物および環状エーテル化合物が挙げられる。
【0074】
直鎖状エーテル化合物としては、特に限定されないが、具体的には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル; エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等の、エチレングリコールのジアルキルエーテル化合物類; ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等の、ジエチレングリコールのジアルキルエーテル化合物類が挙げられる。
【0075】
環状エーテル化合物としては、特に限定されないが、具体的には、テトラヒドロフラン、ジオキサン、2,5−ジメチルオキソラン、2,2,5,5−テトラメチルオキソラン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン、フルフリルアルコールのアルキルエーテル等が挙げられる。
【0076】
本実施形態において有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とを重合する方法は、バッチ重合であっても連続重合であってもよく、それらの組み合わせであってもよい。重合温度は、通常0℃以上180℃以下であり、好ましくは30℃以上150℃以下である。重合に要する時間は他の条件によって異なるが、通常は48時間以内であり、好ましくは0.1〜10時間である。重合系の雰囲気は、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気にすることが好ましい。重合圧力は、上記重合温度範囲で単量体及び溶媒を液相に維持するのに充分な圧力の範囲であれば特に限定はない。重合系内は触媒及びリビング重合体を不活性化させるような不純物(水、酸素、炭酸ガスなど)が混入しないように留意する必要がある。
【0077】
本実施形態において、重合が終了した時点で2官能以上のカップリング剤を用いてカップリング反応を行うこともできる。2官能以上のカップリング剤には特に限定はなく、公知のものを用いることができる。
【0078】
2官能性のカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジブロモシラン等のジハロゲン化合物;安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、フタル酸エステル類等の酸エステル類等が挙げられる。
【0079】
3官能以上の多官能カップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、3価以上のポリアルコール類;エポキシ化大豆油、ジグリシジルビスフェノールA等の多価エポキシ化合物;式R
4−nSiX
n(ただし、各Rはそれぞれ独立して炭素数1から20の炭化水素基を表し、各Xはそれぞれ独立してハロゲン原子を表し、nは3または4を表す)で表されるハロゲン化珪素化合物、例えばメチルシリルトリクロリド、t−ブチルシリルトリクロリド、四塩化珪素、及びこれらの臭素化物;式R
4−nSnX
n(ただし、各Rはそれぞれ独立して炭素数1から20の炭化水素基を表し、各Xはそれぞれ独立してハロゲン原子を表し、nは3または4を表す)で表されるハロゲン化錫化合物、例えばメチル錫トリクロリド、t−ブチル錫トリクロリド、四塩化錫等の多価ハロゲン化合物が挙げられる。また、炭酸ジメチルや炭酸ジエチル等も多官能カップリング剤として使用できる。
【0080】
なお、開始剤、単量体、カップリング剤、又は停止剤として、官能基を有する化合物を用いることにより、得られるブロック共重合体に官能基を付加することができる。
【0081】
官能基を含む開始剤としては、窒素含有基を含有する開始剤が好ましく、ジオクチルアミノリチウム、ジ−2−エチルヘキシルアミノリチウム、エチルベンジルアミノリチウム、(3−(ジブチルアミノ)−プロピル)リチウム、ピペリジノリチウム等が挙げられる。
【0082】
官能基を含む単量体としては、前述の重合に用いる単量体に、水酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シラノール基、アルコキシシラン基を含む化合物が挙げられる。この中でも窒素含有基を含有する単量体が好ましく、例えばN,N−ジメチルビニルベンジルアミン、N,N−ジエチルビニルベンジルアミン、N,N−ジプロピルビニルベンジルアミン、N,N−ジブチルビニルベンジルアミン、N,N−ジフェニルビニルベンジルアミン、2−ジメチルアミノエチルスチレン、2−ジエチルアミノエチルスチレン、2−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルスチレン、1−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレン、N,N−ジメチル−2−(4−ビニルベンジロキシ)エチルアミン、4−(2−ピロリジノエチル)スチレン、4−(2−ピペリジノエチル)スチレン、4−(2−ヘキサメチレンイミノエチル)スチレン、4−(2−モルホリノエチル)スチレン、4−(2−チアジノエチル)スチレン、4−(2−N−メチルピペラジノエチル)スチレン、1−((4−ビニルフェノキシ)メチル)ピロリジン、及び1−(4−ビニルベンジロキシメチル)ピロリジン等が挙げられる。
【0083】
官能基を含むカップリング剤及び停止剤としては、前述のカップリング剤の内、水酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シラノール基、アルコキシシラン基を含む化合物が挙げられる。
【0084】
この中でも窒素含有基又は酸素含有基を含有するカップリング剤が好ましく、例えばテトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ジグリシジルアニリン、γ−カプロラクトン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエチルエトキシシラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、N,N’−ジメチルプロピレンウレア、及びN−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0085】
〔水添方法〕
本実施形態において、ブロック共重合体を水添する場合の製造方法については特に限定はなく、公知の方法を用いることができる。
【0086】
ブロック共重合体を水添する際に使用する水添触媒としては、特に制限はされないが、従来から公知である、Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒;Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩などの遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒;Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒が用いられる。
【0087】
水添触媒としては、例えば、特公昭63−4841号公報、特公平1−53851号公報、特公平2−9041号公報に記載された水添触媒を使用することができる。好ましい水添触媒としてはチタノセン化合物および/または還元性有機金属化合物との混合物が挙げられる。
【0088】
チタノセン化合物としては、特開平8−109219号公報に記載された化合物が使用できるが、具体的には、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格あるいはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上もつ化合物が挙げられる。
【0089】
還元性有機金属化合物としては、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物あるいは有機亜鉛化合物等が挙げられる。
【0090】
ブロック共重合体の水添反応は、通常0〜200℃の温度範囲内、好ましくは30〜150℃の温度範囲内で実施される。水添反応に使用される水素の圧力は、通常0.1MPa以上15MPa以下であり、好ましくは0.2MPa以上10MPa以下であり、より好ましくは0.3MPa以上5MPa以下である。水添反応時間は、通常3分〜10時間であり、好ましくは10分〜5時間である。水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、或いはそれらの組み合わせのいずれでも用いることができる。
【0091】
上記のようにして得られた水添されたブロック共重合体の溶液は、必要に応じて触媒残査を除去し、水添されたブロック共重合体を溶液から分離することができる。溶媒の分離の方法としては、例えば水添後の反応液にアセトンまたはアルコール等の水添ブロック共重合体等に対する貧溶媒となる極性溶媒を加えてブロック共重合体を沈澱させて回収する方法、反応液を撹拌下熱湯中に投入し、スチームストリッピングにより溶媒を除去して回収する方法、または直接ブロック共重合体溶液を加熱して溶媒を留去する方法等を挙げることができる。本実施形態のブロック共重合体には、各種フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤、アミン系安定剤等の安定剤を添加することができる。
【0092】
〔アスファルト〕
本実施形態で用いることができるアスファルトとしては、特に限定されないが、例えば、石油精製の際の副産物(石油アスファルト)、または天然の産出物(天然アスファルト)として得られるもの、もしくはこれらと石油類を混合したもの等が挙げられる。その主成分は瀝青(ビチューメン)と呼ばれるものである。具体的には、ストレートアスファルト、セミブローンアスファルト、ブローンアスファルト、タール、ピッチ、オイルを添加したカットバックアスファルト、アスファルト乳剤等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0093】
本実施形態のアスファルトは、アスファルト組成物の軟化点、耐わだち掘れ性(G*/sinδ)の観点から、アスファルトのコロイダルインデックス((飽和分含有量(質量%)+アスファルテン分含有量(質量%))/(レジン分含有量(質量%)+芳香族分含有量(質量%))は、0.30以上0.54以下であり、かつ飽和分含有量が11質量%以下である。コロイダルインデックスは、好ましくは0.31以上であり、より好ましくは0.32以上であり、さらに好ましくは0.36以上であり、よりさらに好ましくは0.37以上であり、さらにより好ましくは0.38以上である。コロイダルインデックスが0.30以上であることにより、軟化点及び耐わだち掘れ性(G*/sinδ)がより向上する。また、コロイダルインデックスは、好ましくは0.53以下であり、より好ましくは0.52以下であり、さらに好ましくは0.51以下であり、さらにより好ましくは0.50以下である。コロイダルインデックスが0.54以下であることにより、施工性(低い溶融粘度)及び伸度がより向上する。
【0094】
飽和分含有量は、好ましくは10.0質量%以下であり、より好ましくは9.5質量%以下であり、さらに好ましくは9.0質量%以下である。飽和分含有量が11.0質量%以下であることにより、軟化点及び耐わだち掘れ性(G*/sinδ)がより向上する傾向にある。また、飽和分含有量は、好ましくは4質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは5.5質量%以上である。飽和分含有量が6質量%以上であることにより、施工性(低い溶融粘度)及び伸度がより向上する傾向にある。
【0095】
アスファルテン分含有量は、好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは24質量%以下であり、さらに好ましくは23質量%以下である。アスファルテン分含有量が26質量%以下であることにより、施工性(低い溶融粘度)及び伸度がより向上する傾向にある。また、アスファルテン分含有量は、好ましくは18質量%以上であり、より好ましくは18.5質量%以上であり、さらに好ましくは19質量%以上である。アスファルテン分含有量が16質量%以上であることにより、軟化点及び耐わだち掘れ性(G*/sinδ)がより向上する傾向にある。
【0096】
レジン分含有量は、好ましくは29質量%以下であり、より好ましくは28質量%以下であり、さらに好ましくは27.5質量%以下である。レジン分含有量が30質量%以下であることにより、伸度がより向上する傾向にある。また、レジン分含有量は、好ましくは19質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、さらに好ましくは20.5質量%以上である。レジン分含有量が18質量%以上であることにより、軟化点、耐わだち掘れ性(G*/sinδ)及び施工性(低い溶融粘度)がより向上する傾向にある。
【0097】
芳香族分含有量は、好ましくは58質量%以下であり、より好ましくは56質量%以下であり、さらに好ましくは54質量%以下である。芳香族分含有量が60質量%以下であることにより、軟化点及び耐わだち掘れ性(G*/sinδ)がより向上する傾向にある。また、芳香族分含有量は、好ましくは38質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上であり、さらに好ましくは42質量%以上である。芳香族分含有量が35質量%以上であることにより、施工性(低い溶融粘度)及び伸度がより向上する傾向にある。
【0098】
アスファルトのコロイダルインデックス(Ci)と、ブロック共重合体の動的粘弾性のスペクトルにおける損失正接のピーク温度(Tg(℃))と、が以下の関係を満たすことが好ましい。これにより、軟化点、耐わだち掘れ性がより向上する傾向にある。
Ci≦0.0127×Tg+0.94
【0099】
また、この時、損失正接のピークトップの範囲は、−70℃以上0℃以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは−50℃以上−10℃以下であり、さらに好ましくは−45℃以上−20℃以下である。
【0100】
ここで「飽和分」とは、分子量が300〜2,000のパラフィン、ナフテンの油分であり、「アスファルテン分」とは、分子量が1,000〜100,000の層状構造の縮合多環芳香族であり、「レジン分」とは、分子量が500〜50,000の縮合多環芳香族の樹脂であり、「芳香族分」とは、分子量が500〜2,000の芳香族の油分である。なお、これら各成分は、石油学会の石油類試験関係規格のJPI−5S−70−10に準拠した測定法で分析することができる。
【0101】
コロイダルインデックス、飽和分は、後述する実施例記載の方法で求めることができる。
【0102】
アスファルトの針入度は、好ましくは40を超え120以下であり、好ましくは50以上100以下であり、より好ましくは60以上120以下である。アスファルトの針入度が40を超えることにより、溶融粘度が低下し、伸度がより向上する傾向にある。また、アスファルトの針入度が120以下であることにより、軟化点、耐わだち掘れ性がより向上する傾向にある。アスファルトの針入度は実施例に記載の方法により測定することができる。また、アスファルトの針入度は、石油の精製条件の温度、時間、減圧度等を制御することにより調整することができる。
【0103】
ブロック共重合体の含有量は、溶融粘度と軟化点及び耐わだち掘れ性(G*/sinδ)の性能バランスの観点から、アスファルト100質量部に対して、0.5質量部以上20質量部以下であり、好ましくは1質量部以上18質量部以下であり、より好ましくは2質量部以上15質量部以下である。また、施工性の観点から低い溶融粘度が求められる道路舗装用の場合、アスファルト100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上15質量部以下、より高い軟化点、伸度を求められるアスファルト防水シートの場合、アスファルト100質量部に対して、好ましくは2質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
【0104】
〔その他の成分〕
本実施形態のアスファルト組成物には、上述したブロック共重合体、アスファルトの他、後述する各成分を添加することができる。
【0105】
(上述したブロック共重合体以外の重合体)
高い軟化点、耐油性あるいは経済性の点で、上述したブロック共重合体以外の重合体を含んでいてもよい。その他の重合体としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体(SBBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、エチレンプロピレン共重合体等のオレフィン系エラストマー;エチレン−エチルアクリレート共重合体、クロロプレンゴム、アクリルゴム、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0106】
この中では、アスファルト組成物の低い粘度や低温での高い伸度の点で、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)が好ましい。さらに、SBSは、スチレン−ブタジエンジブロック体を含有することがより好ましい。SBSの例としては、Kraton社製のD1101やD1184が挙げられる。
【0107】
(粘着付与樹脂)
本実施形態のアスファルト組成物には、粘着付与剤樹脂を添加してもよい。粘着付与剤樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ロジン系樹脂、水添ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン系樹脂、フェノール系樹脂、テルペン−フェノール系樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂等の公知の粘着付与性樹脂が挙げられる。
【0108】
粘着付与剤樹脂は、単独で使用してもよく、2種類以上混合して使用してもよい。粘着付与剤樹脂の具体例としては、「ゴム・プラスチック配合薬品」(ラバーダイジェスト社編)に記載されたものが使用できる。
【0109】
粘着付与剤樹脂を用いることにより、本実施形態のアスファルト組成物において施工性及び弾性率の改良が図られる。本実施形態のアスファルト組成物中における粘着付与剤樹脂の含有量は、上述したブロック共重合体を100質量部としたとき、好ましくは0〜200質量部、より好ましくは10〜100質量部の範囲で使用される。上記範囲の含有量とすることにより、施工性及び弾性率の改良効果が確実に得られる。
【0110】
(軟化剤)
本実施形態のアスファルト組成物には、軟化剤を添加してもよい。軟化剤としては、鉱物油系軟化剤又は合成樹脂系軟化剤のいずれも使用できる。鉱物油系軟化剤としては、一般に、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、芳香族系オイル等が挙げられる。
【0111】
なお、パラフィン系炭化水素の炭素原子数が全炭素原子中の50%以上を占めるものがパラフィン系オイルと呼ばれ、ナフテン系炭化水素の炭素原子が30〜45%のものがナフテン系オイルと呼ばれ、また、芳香族系炭化水素の炭素原子が35%以上のものが芳香族系オイルと呼ばれている。
【0112】
また、合成樹脂系軟化剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリブテン、低分子量ポリブタジエン等が好ましいものとして挙げられる。軟化剤としては、ゴム用軟化剤であるパラフィン系オイルが好ましい。軟化剤を含有させることにより、本実施形態のアスファルト組成物において、施工性の改良が図られる。
【0113】
本実施形態のアスファルト組成物中の軟化剤の含有量は、軟化剤のブリード抑制や、本実施形態のアスファルト組成物において実用上十分な機械強度を確保する観点から、上述したブロック共重合体を100質量部としたとき、0〜100質量部であることが好ましく、0〜50質量部の範囲がより好ましく、2〜30質量部の範囲がさらに好ましい。
【0114】
(安定剤)
本実施形態のアスファルト組成物には、酸化防止剤、光安定剤等の各種安定剤を添加してもよい。
【0115】
酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルべンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−[1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)]アクリレート等のヒンダードフェノール系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネートペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリルチオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0116】
光安定剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
【0117】
本実施形態のアスファルト組成物中の安定剤の含有量は、ブロック共重合体100質量部に対して、0〜10質量部であることが好ましく、0〜5質量部の範囲がより好ましく、0〜3質量部の範囲がさらに好ましく、0.2〜2質量部の範囲がよりさらに好ましい。
【0118】
(添加剤)
本実施形態のアスファルト組成物には、その他、必要に応じて、従来、アスファルト組成物に慣用されている各種添加剤を添加することができる。
【0119】
例えば、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、鉱物質粉末、ガラス繊維等の充填剤や補強剤、鉱物質の骨材、ベンガラ、二酸化チタン等の顔料、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、低分子量ポリエチレンワックス等のワックス類、あるいは、アゾジカルボンアミド等の発泡剤、アタクチックポリプロピレン、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のポリオレフィン系又は低分子量のビニル芳香族系熱可塑性樹脂、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレンーブタジエンゴム、エチレンープロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、イソプレンーイソブチレンゴム、ポリペンテナマーゴム、及び本発明以外のスチレンーブタジエン系ブロック共重合体、スチレンーイソプレン系ブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレン系ブロック共重合体等の合成ゴムが挙げられる。
【0120】
本実施形態のアスファルト組成物中の上記添加剤の含有量は、ブロック共重合体100質量部に対して、0〜100質量部であることが好ましく、0〜50質量部の範囲がより好ましく、0〜30質量部の範囲がさらに好ましく、1〜20質量部の範囲がよりさらに好ましい。
【0121】
(その他)
上記の他に以下のような物質を添加することができる。
【0122】
ゴム加硫剤、架橋剤:例えば硫黄、硫黄化合物、硫黄以外の無機加硫剤、オキシム類、ニトロソ化合物、ポリアミン、有機過酸化物、樹脂加硫剤が挙げられる。
【0123】
可塑剤:例えばフタル酸誘導体、テトラヒドロフタル酸誘導体、アジピン酸誘導体、アゼライン酸誘導体、セバシン酸誘導体、ドデカン−2−酸誘導体、マレイン酸誘導体、フマル酸誘導体、トリメリット酸誘導体、ピロメリット酸誘導体、くえん酸誘導体、オレイン酸誘導体、リシノール酸誘導体、スルホン酸誘導体、リン酸誘導体、グルタール酸誘導体、グリコール誘導体、グセリン誘導体、パラフィン誘導体、エポキシ誘導体が挙げられる。
【0124】
造核剤:脂肪酸金属塩系、ソルビトール系、リン酸エステル金属塩型が挙げられる。
本実施形態のアスファルト組成物中の上記その他成分の含有量は、本実施形態のアスファルト組成物において、上述したブロック共重合体を100質量部としたとき、0〜10質量部であることが好ましく、0〜5質量部の範囲がより好ましく、0〜3質量部の範囲がさらに好ましく、0.2〜2質量部の範囲がよりさらに好ましい。
【0125】
アスファルト組成物を用いる舗装形態としては、特に限定されないが、例えば、密粒度舗装、排水性舗装、透水性舗装、密粒度ギャップアスファルト舗装、砕石マスチックアスファルト舗装、カラー舗装、半たわみ性舗装、保水性舗装、薄層舗装が挙げられる。
【0126】
密粒度舗装においては、耐流動、滑り抵抗性の改善が主に求められる。この場合、アスファルト組成物中のブロック共重合体の含有量は、アスファルト100質量%に対して、好ましくは3〜5.5質量%である。また、密粒度舗装に用いられ得るアスファルト組成物の組成としては、各骨材とフィラーの合計量100質量%(アスファルトを除く)に対して、好ましくは、粗骨材40〜55質量%、細骨材40〜50質量%、フィラー3〜5質量%、アスファルト5〜7%質量%である。
【0127】
排水性舗装においては、排水性、視認性、騒音性の改善が主に求められる。この場合、アスファルト組成物中のブロック共重合体の含有量は、アスファルト100質量%に対して、好ましくは5〜10質量%である。また、排水性舗装に用いられ得るアスファルト組成物の組成としては、各骨材とフィラーの合計量100質量%(アスファルトを除く)に対して、好ましくは、粗骨材60〜85質量%、細骨材5〜20質量%、フィラー3〜5質量%、アスファルト4〜6%質量%である。
【0128】
透水性舗装においては、透水性の改善が主に求められる。この場合、アスファルト組成物中のブロック共重合体の含有量は、アスファルト100質量%に対して、好ましくは0.5〜6質量%である。また、透水性舗装に用いられ得るアスファルト組成物の組成としては、各骨材とフィラーの合計量100質量%(アスファルトを除く)に対して、好ましくは、粗骨材60〜85質量%、細骨材5〜20質量%、フィラー3〜5質量%、アスファルト4〜6質量%である。
【0129】
密粒度ギャップ舗装においては、摩耗性、耐流動、耐久性、滑り抵抗性の改善が主に求められる。この場合、アスファルト組成物中のブロック共重合体の含有量は、アスファルト100質量%に対して、好ましくは5〜12質量%である。また、密粒度ギャップ舗装に用いられ得るアスファルト組成物の組成としては、各骨材とフィラーの合計量100質量%(アスファルトを除く)に対して、好ましくは、粗骨材50〜60質量%、細骨材30〜40質量%、フィラー3〜6質量%、アスファルト4.5〜6質量%である。
【0130】
砕石マスチックアスファルト舗装においては、摩耗性、不透水性、応力緩和性、耐流動、騒音性の改善が主に求められる。この場合、アスファルト組成物中のブロック共重合体の含有量は、アスファルト100質量%に対して、好ましくは4〜10質量%である。また、砕石マスチックアスファルト舗装に用いられ得るアスファルト組成物の組成としては、各骨材とフィラーの合計量100質量%(アスファルトを除く)に対して、粗骨材55〜70質量%、細骨材15〜30質量%、フィラー5〜10質量%、アスファルト5.5〜8質量%である。
【0131】
半たわみ性舗装においては、視認性、耐油性、耐流動の改善が主に求められる。この場合、アスファルト組成物中のブロック共重合体の含有量は、アスファルト100質量%に対して、好ましくは4〜10質量%である。また、半たわみ性舗装に用いられ得るアスファルト組成物の組成としては、各骨材とフィラーの合計量100質量%(アスファルトを除く)に対して、好ましくは、粗骨材60〜85質量%、細骨材5〜20質量%、フィラー3〜5質量%、アスファルト4〜6質量%であり、また、空隙率15〜20%程度で空隙にセメント系モルタルを充填することが好ましい。
【0132】
保水性舗装においては、舗装温度上昇の抑制、保水性の改善が主に求められる。この場合、アスファルト組成物中のブロック共重合体の含有量は、アスファルト100質量%に対して、好ましくは4〜10質量%である。また、保水性舗装に用いられ得るアスファルト組成物の組成としては、各骨材とフィラーの合計量100質量%(アスファルトを除く)に対して、粗骨材60〜85質量%、細骨材5〜20質量%、フィラー3〜5質量%、アスファルト4〜6質量%であり、また、空隙率15〜20%程度で空隙にセメント系や石膏系などの保水材を充填することが好ましい。
【0133】
薄層舗装においては、経済性、工期短縮、施工性の改善が主に求められる。この場合、アスファルト組成物中のブロック共重合体の含有量は、アスファルト100質量%に対して、好ましくは4〜8質量%である。また、薄層舗装に用いられ得るアスファルト組成物の組成としては、各骨材とフィラーの合計量100質量%(アスファルトを除く)に対して、好ましくは、骨材(5〜2.5mm)60〜85質量%、細骨材(2.5mm以下)5〜20質量%、フィラー3〜5質量%、アスファルト4〜6.5質量%である。
【0134】
〔アスファルト組成物の製造方法〕
本実施形態のアスファルト組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の混合機、熱溶融釜、ニーダー等により各成分を加熱溶融混練し、均一混合する方法で製造できる。
【0135】
例えば、160℃〜200℃(通常は180℃前後)の熱溶融釜に、アスファルトを浸漬し、完全に溶融させ、ホモミキサー等の攪拌機で攪拌しながら、ブロック共重合体、その他の所定の添加剤を添加し、その後、攪拌速度を上げ、混練することによりアスファルト組成物を製造できる。なお、通常の撹拌速度は、用いる装置により適時選択すればよいが、通常、100rpm以上8,000rpm以下であり、撹拌時間は好ましくは30分〜6時間、より好ましくは1時間〜3時間である。
【実施例】
【0136】
以下、具体的な実施例と比較例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。先ず、実施例及び比較例に適用した、評価方法及び物性の測定方法について下記に示す。
【0137】
[I.ブロック共重合体の組成及び構造の評価]
(I−1)ブロック共重合体中のビニル芳香族単量体単位の含有量(スチレン含有量)
一定量の重合体をクロロホルムに溶解し、紫外分光光度計(島津製作所製、UV−2450)を用いて、ビニル芳香族化合物(スチレン)に起因する吸収波長(262nm)のピーク強度から検量線を用いてビニル芳香族単量体単位(スチレン)の含有量を算出した。
【0138】
(I−2)ブロック共重合体中の重合体ブロック(A)の含有量
水添前の重合体を使用し、I.M.Kolthoff,etal.,J.Polym.Sci.1,p.429(1946)に記載の四酸化オスミウム酸法で測定した。重合体の分解にはオスミウム酸0.1g/125mL第3級ブタノール溶液を用いた。
【0139】
(I−3)ブロック共重合体の組成分析と水素添加率
部分水添ブロック共重合体中のビニル含有量及び共役ジエン中の不飽和基の水素添加率を、核磁気共鳴スペクトル解析(NMR)により、下記の条件で測定した。水添反応後のブロック共重合体を、大量のメタノール中に沈澱させることで、部分水添ブロック共重合体を沈殿させて回収した。次いで、部分水添ブロック共重合体をアセトンで抽出し、抽出液を真空乾燥し、1H−NMR測定のサンプルとして用いた。1H−NMR測定の条件を以下に記す。
(測定条件)
測定機器 :JNM−LA400(JEOL製)
溶媒 :重水素化クロロホルム
測定サンプル :ブロック共重合体を水素添加する前後の抜き取り品
サンプル濃度 :50mg/mL
観測周波数 :400MHz
化学シフト基準:TMS(テトラメチルシラン)
パルスディレイ:2.904秒
スキャン回数 :64回
パルス幅 :45°
測定温度 :26℃
【0140】
また、上記で得られた1H−NMRスペクトルに基づいて、共役ジエン単量体単位(a)が水添されたアルケニル単量体単位(a1)の含有量、共役ジエン単量体単位(b)が水添されたアルケニル単量体単位(b1)の含有量、水添されなかったアルケニル単量体単位(a2)の含有量、水添されなかったアルケニル単量体単位(b2)の含有量を算出した。
【0141】
(I−4)重量平均分子量、分子量分布
GPC〔装置は、ウォーターズ製〕で測定し、溶媒にはテトラヒドロフランを用い、温度35℃でクロマトグラムを測定した。市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して、得られたクロマトグラムから重量平均分子量(ポリスチレン換算分子量)と数平均分子量を求め、これらの比から分子量分布を求めた。
【0142】
(I−5)動的粘弾性のスペクトル
tanδ(損失正接)ピーク高さ、温度は、粘弾性測定解析装置ARES(ティー・エイ・インスルメント・ジャパン株式会社製、商品名)を用い、粘弾性スペクトルを測定することにより求めた。捻じりタイプのジオメトリーに、測定用資料をセットし、ひずみ0.5%、測定周波数は1Hzで測定した。
【0143】
[II.アスファルトの組成分析]
(II−1)コロイダルインデックス(Ci)
薄層クロマトグラフィー自動検出装置(イアトロスキャンMK−6:三菱化学メディエンス株式会社製、商品名)を用いて、石油学会の石油類試験関係規格のJPI−5S−70−10に準拠した測定法で、各アスファルトの飽和分、アスファルテン分、レジン分、芳香族分を求めた。コロイダルインデックス(Ci)は以下の式により求めた。
Ci=(飽和分含有量+アスファルテン分含有量)/(レジン分含有量+芳香族分含有量)
なお、コロイダルインデックスは、アスファルト道路舗装体からアスファルト成分を抽出し、抽出成分を分析することによっても測定可能である。
【0144】
(II−2)アスファルトの針入度
JIS−K 2207に準じ、恒温水浴槽で25℃に保った試料に規定の針が5秒間に進入する長さを測定することにより、アスファルトの針入度を求めた。なお、実施例で用いたアスファルトは、上記測定において針入度が60以上100以下であった。
【0145】
[III.アスファルト組成物の特性]
(III−1)溶融粘度
160℃及び180℃でブルックフィールド型粘度計(DV−III型)により溶融粘度を測定した。溶融粘度の測定値(mPa・s)が、道路舗装用の場合、160℃で500以下、アスファルト防水シートの場合、180℃で500以下であれば実用上優れた性能、各々の温度条件で450以下であれば実用上十分な性能であると判断した。
【0146】
(III−2)軟化点
JIS−K2207に準じて、アスファルト組成物の軟化点を測定した。規定の環に試料を充填し、グリセリン液中に水平に支え、試料の中央に3.5gの球を置き、液温を5℃/minの速度で上昇させたとき、球の重さで試料が環台の底板に触れた時の温度を測定した。軟化点の測定値(℃)が、75以上であれば実用上優れた性能、82以上であれば実用上十分な性能であり、さらに120以上であればアスファルト防水シート用途としても実用上優れた性能、130以上であれば実用上十分な性能であると判断した。
【0147】
(III−3)伸度
JIS−K2207に準じ、試料を形枠に流し込み、規定の形状にした後、恒温水浴内で15℃に保ち、次に試料を5cm/minの速度で引っ張ったとき、試料が切れるまでに伸びた距離を測定した。伸度力の測定値(cm)が、55以上であれば実用上優れた性能、60以上であれば実用上十分な性能であると判断した。
【0148】
(III−4)高温貯蔵安定性(軟化点の変化差)
アスファルト組成物製造直後、180℃のオーブン中で、3日間加熱した。その後、金属缶を取り出し軟化点を測定した。製造直後の軟化点と3日間加熱後の軟化点差を高温貯蔵安定性の尺度とした。軟化点差が小さいほど、高温貯蔵安定性は良好である。高温貯蔵前後の軟化点差の値(℃)が、10以下であれば実用上優れた性能、5以下であれば実用上十分な性能であると判断した。
【0149】
(III−5)わだち掘れ性
わだち掘れ性の指標としてG*/sinδを用いて評価した。G*/sinδは、粘弾性測定解析装置ARES(ティー・エイ・インスルメント・ジャパン株式会社製、商品名)を用い、粘弾性スペクトルを測定することにより求めた。捻じりタイプのジオメトリーに、測定用資料をセットし、ひずみ0.5%、測定周波数は1Hz、パラレルプレート直径7.9mmでG*(複素弾性率)とsinδを測定した。G*/sinδの測定値(Pa)が、750以上であれば実用上優れた性能、900以上であれば実用上十分な性能であると判断した。
【0150】
[IV.水添触媒の調製]
窒素置換した反応容器に乾燥、精製したシクロヘキサン2リットルを仕込み、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタニウムジ−(p−トリル)40ミリモルと分子量が約1,000の1,2−ポリブタジエン(1,2−ビニル結合量約85%)150グラムを溶解した後、n−ブチルリチウム60ミリモルを含むシクロヘキサン溶液を添加して室温で5分反応させ、直ちにn−ブタノール40ミリモルを添加攪拌して室温で保存した。
【0151】
[V.ブロック共重合体の調整]
<ポリマー1>
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を用いて、重合を以下の方法で行った。
【0152】
(1段目)
シクロヘキサン10質量部を反応器に仕込んで温度70℃に調整した後、n−ブチルリチウムを全モノマー(反応器に投入したブタジエンモノマー及びスチレンモノマーの総量)の質量に対して0.058質量%、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(以下TMEDAと称する)をn−ブチルリチウム1モルに対して0.4モル添加し、その後モノマーとしてスチレン10.5質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を約3分間かけて添加し、反応器内温を約70℃、反応器内圧を0.30MPaになる様に調整しながら30分間反応させた。
【0153】
(2段目)
次に、ブタジエン56質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)とスチレン23質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)をそれぞれ30分間と10分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給し、その後、30分間反応させた。この間、反応器内温は約70℃、反応器内圧を0.30MPaになるように調整した。
【0154】
(3段目)
その後、更にモノマーとしてスチレン10.5質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を約3分間かけて添加し、反応器内温を約70℃、反応器内圧を0.30MPaに調整しながら30分間反応させ、ブロック共重合体を得た。
【0155】
次に、得られたブロック共重合体に、上記水添触媒をブロック共重合体の質量に対してチタンとして95ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。反応終了後にメタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートをブロック共重合体の質量に対して0.3質量%添加し、水添ブロック共重合体(以下、ポリマー1と称する)を得た。水添率は87%であった。
【0156】
<ポリマー2>
n−ブチルリチウムの供給量を0.037質量%添加とし、1段目に供給するスチレンを10質量部、2段目に供給するブタジエンを70質量部、スチレンを10質量部、ブタジエンの添加時間を15分間、3段目に供給するスチレンを10質量部に変えること以外は、ポリマー1と同様の方法により重合を行った。
【0157】
次に、得られたブロック共重合体に、上記水添触媒をブロック共重合体の質量に対してチタンとして93ppm添加する以外は、ポリマー1と同様に水添反応を行い、水添ブロック共重合体(以下、ポリマー2と称する)を得た。水添率は84%であった。
【0158】
<ポリマー3>
n−ブチルリチウムの供給量を0.063質量%添加とし、1段目に供給するスチレンを17.5質量部、2段目に供給するブタジエンを50質量部、スチレンを15質量部、3段目に供給するスチレンを17.5質量部に変えること以外は、ポリマー1と同様の方法により重合を行った。
【0159】
次に、得られたブロック共重合体に、上記水添触媒をブロック共重合体の質量に対してチタンとして90ppm添加する以外は、ポリマー1と同様に水添反応を行い、水添ブロック共重合体(以下、ポリマー3と称する)を得た。水添率は80%であった。
【0160】
<ポリマー4>
n−ブチルリチウムの供給量を0.045質量%添加とし、1段目に供給するスチレンを7.5質量部、2段目に供給するブタジエンを62質量部、ブタジエンの添加時間を20分間、3段目に供給するスチレンを7.5質量部に変えること以外は、ポリマー1と同様の方法により重合を行った。
【0161】
次に、得られたブロック共重合体に、上記水添触媒をブロック共重合体の質量に対してチタンとして80ppm添加する以外は、ポリマー1と同様に水添反応を行い、水添ブロック共重合体(以下、ポリマー4と称する)を得た。水添率は62%であった。
【0162】
<ポリマー5>
n−ブチルリチウムの供給量を0.077質量%添加とし、1段目に供給するスチレンを12.5質量部、2段目に供給するブタジエンを45質量部、スチレンを30質量部、ブタジエンの添加時間を45分間、3段目に供給するスチレンを12.5質量部に変え、反応器内温は85℃、反応器内圧を0.42MPaになる様に調整すること以外は、ポリマー1と同様の方法により重合を行った。
【0163】
次に、得られたブロック共重合体に、上記水添触媒をブロック共重合体の質量に対してチタンとして68ppm添加、反応器内温は85℃にする以外は、ポリマー1と同様に水添反応を行い、水添ブロック共重合体(以下、ポリマー5と称する)を得た。水添率は45%であった。
【0164】
<ポリマー6>
n−ブチルリチウムの供給量を0.056質量%添加とし、1段目に供給するスチレンを10質量部、2段目に供給するブタジエンを57質量部、ブタジエンの添加時間を25分間、3段目に供給するスチレンを10質量部に変えること以外は、ポリマー1と同様の方法により重合を行った。
【0165】
次に、得られたブロック共重合体に、上記水添触媒をブロック共重合体の質量に対してチタンとして75ppm添加する以外は、ポリマー1と同様に水添反応を行い、水添ブロック共重合体(以下、ポリマー6と称する)を得た。水添率は50%であった。
【0166】
<ポリマー7>
n−ブチルリチウムの供給量を0.070質量%添加とし、1段目に供給するスチレンを15.5質量部、2段目に供給するブタジエンを30質量部、スチレンを39質量部、ブタジエンの添加時間を55分間、3段目に供給するスチレンを15.5質量部に変えること以外は、ポリマー1と同様の方法により重合を行った。
【0167】
次に、得られたブロック共重合体に、上記水添触媒をブロック共重合体の質量に対してチタンとして67ppm添加する以外は、ポリマー1と同様に水添反応を行い、水添ブロック共重合体(以下、ポリマー7と称する)を得た。水添率は43%であった。
【0168】
<ポリマー8>
n−ブチルリチウムの供給量を0.042質量%添加とし、1段目に供給するスチレンを6質量部、2段目に供給するブタジエンを85質量部、スチレンを3質量部、ブタジエンの添加時間を10分間、3段目に供給するスチレンを6質量部に変えること以外は、ポリマー1と同様の方法により重合を行った。
【0169】
次に、得られたブロック共重合体に、上記水添触媒をブロック共重合体の質量に対してチタンとして94ppm添加する以外は、ポリマー1と同様に水添反応を行い、水添ブロック共重合体(以下、ポリマー8と称する)を得た。水添率は85%であった。
【0170】
<ポリマー9>
n−ブチルリチウムの供給量を0.048質量%添加とし、1段目に供給するスチレンを4質量部、2段目に供給するブタジエンを78質量部、スチレンを14質量部、ブタジエンの添加時間を10分間、3段目に供給するスチレンを4質量部に変えること以外は、ポリマー1と同様の方法により重合を行った。
【0171】
次に、得られたブロック共重合体に、上記水添触媒をブロック共重合体の質量に対してチタンとして96ppm添加する以外は、ポリマー1と同様に水添反応を行い、水添ブロック共重合体(以下、ポリマー9と称する)を得た。水添率は87%であった。
【0172】
<ポリマー10>
n−ブチルリチウムの供給量を0.062質量%添加とし、1段目に供給するスチレンを23質量部、2段目に供給するブタジエンを50質量部、スチレンを5質量部、3段目に供給するスチレンを22質量部に変えること以外は、ポリマー1と同様の方法により重合を行った。
【0173】
次に、得られたブロック共重合体に、ポリマー1と同様に水添反応を行い、水添ブロック共重合体(以下、ポリマー10と称する)を得た。水添率は84%であった。
【0174】
<ポリマー11>
n−ブチルリチウムの供給量を0.057質量%添加とし、1段目に供給するスチレンを15質量部、2段目に供給するブタジエンを51質量部、スチレンを19質量部、ブタジエンの添加時間を35分間、反応器内温は75℃になる様に調整し、3段目に供給するスチレンを15質量部に変えること以外は、ポリマー1と同様の方法により重合を行った。
【0175】
次に、得られたブロック共重合体に、上記水添触媒をブロック共重合体の質量に対してチタンとして65ppm添加する以外は、ポリマー1と同様に水添反応を行い、水添ブロック共重合体(以下、ポリマー11と称する)を得た。水添率は34%であった。
【0176】
<ポリマー12>
1段目に供給するスチレンを10質量部、2段目に供給するブタジエンを57質量部、ブタジエンの添加時間を25分間、3段目に供給するスチレンを10質量部に変えること以外は、ポリマー1と同様の方法により重合を行った。
【0177】
次に、得られたブロック共重合体に、上記水添触媒をブロック共重合体の質量に対してチタンとして35ppm添加する以外は、ポリマー1と同様に水添反応を行い、水添ブロック共重合体(以下、ポリマー12と称する)を得た。水添率は9%であった。
【0178】
<ポリマー13>
1段目に供給するスチレンを9質量部、2段目に供給するブタジエンを60質量部、スチレンを22質量部、ブタジエンの添加時間を8分間、3段目に供給するスチレンを9質量部に変えること以外は、ポリマー1と同様の方法により重合を行った。
【0179】
次に、得られたブロック共重合体に、上記水添触媒をブロック共重合体の質量に対してチタンとして85ppm添加する以外は、ポリマー1と同様に水添反応を行い、水添ブロック共重合体(以下、ポリマー13と称する)を得た。水添率は75%であった。
【0180】
<ポリマー14>
n−ブチルリチウムの供給量を0.065質量%添加とし、1段目に供給するスチレンを10質量部、2段目に供給するブタジエンを50質量部、スチレンを30質量部、ブタジエンの添加時間を40分間、3段目に供給するスチレンを10質量部に変え、反応器内温は95℃、反応器内圧を0.52MPaになる様に調整すること以外は、ポリマー1と同様の方法により重合を行った。
【0181】
次に、得られたブロック共重合体に、上記水添触媒をブロック共重合体の質量に対してチタンとして85ppm添加する以外は、ポリマー1と同様に水添反応を行い、水添ブロック共重合体(以下、ポリマー14と称する)を得た。水添率は70%であった。
【0182】
<ポリマー15>
n−ブチルリチウムの供給量を0.062質量%添加とし、1段目に供給するスチレンを20質量部、2段目に供給するブタジエンを61質量部、スチレンを添加せず、3段目に供給するスチレンを19質量部に変えること以外は、ポリマー1と同様の方法により重合を行った。
【0183】
水添反応は行わず、ポリマー15を得た。水添率は0%であった。
【0184】
<ポリマー16>
1段目に供給するスチレンを7.5質量部、2段目に供給するブタジエンを30質量部、スチレンを55質量部、ブタジエンの添加時間を70分間、3段目に供給するスチレンを7.5質量部に変えること以外は、ポリマー1と同様の方法により重合を行った。
【0185】
次に、得られたブロック共重合体に、上記水添触媒をブロック共重合体の質量に対してチタンとして99ppm添加する以外は、ポリマー1と同様に水添反応を行い、水添ブロック共重合体(以下、ポリマー16と称する)を得た。水添率は98%であった。得られた各ブロック共重合体の性状を、表1に示した。
【0186】
<ポリマー17>
n−ブチルリチウムの供給量を0.057質量%添加とし、1段目に供給するスチレンを10質量部、2段目に供給するブタジエンを57質量部、ブタジエンの添加時間を25分間、3段目に供給するスチレンを10質量部添加した後に、第1ステップの前に添加したn−ブチルリチウム1molに対して、N,N’−ジメチルプロピレンウレア0.9molを添加した以外は、ポリマー1と同様の方法により重合を行った。
【0187】
次に、得られたブロック共重合体に、上記水添触媒をブロック共重合体の質量に対してチタンとして80ppm添加する以外は、ポリマー1と同様に水添反応を行い、水添ブロック共重合体(以下、ポリマー17と称する)を得た。水添率は50%であった。
【0188】
<ポリマー18>
TMEDAをn−ブチルリチウム1モルに対して0.05モル添加し、n−ブチルリチウムの供給量を0.105質量部添加とし、1段目に供給するスチレンを15質量部、2段目に供給するブタジエンを70質量部、スチレンを添加せず、3段目に供給するスチレンを15質量部加えた後に、ジメチルジクロロシランを添加した以外は、ポリマー1と同様の方法により重合を行った。水添反応は行わず、ポリマー18を得た。水添率は0%であった。
【0189】
<ポリマー:EVA>
エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA):EV460(三井・デュポンポリケミカル株式会社、商品名、VA含有量19%)
【0190】
【表1】
【0191】
〔実施例1〕
400gのコロイダルインデックス(Ci値)が0.36、飽和分が5.4質量%、芳香族分が52.78質量%、レジン分が20.69質量%、アスファルテン分が21.13質量%)のストレートアスファルト(歴世礦油製(韓国))を750ccの容器に入れ、容器を180℃のオイルバスに浸漬し、ストレートアスファルトを完全溶解させた。
【0192】
次に、回転速度3000rpmでストレートアスファルトをホモミキサーで攪拌しながら、上述のようにして得られたブロック共重合体(ポリマー1)14gを、少しずつストレートアスファルト中に添加した。添加が終了したら、攪拌速度を6000rpmに上げ、30分間混練してアスファルト組成物を得た。得られた各アスファルト組成物の物性を、表2に示した。
【0193】
〔実施例2〜
6及び9、比較例1〜8
、並びに参考例7及び8〕
下記表2に示すように、所定のポリマーを用い、それぞれのブロック共重合体とアスファルトとの比率を実施例1と同等にし、実施例1と同様の混練方法により、アスファルト組成物を得た。得られた各アスファルト組成物の物性を、表2に示した。なお、コロイダルインデックス(Ci値)が0.36のアスファルトとしては、韓国の歴世礦油製、ストアス60−80を用いた。
【0194】
〔実施例10〕
下記表2に示すように、ポリマー6を8g、ポリマー18を8g添加する以外は、実施例1と同様の混練方法により、アスファルト組成物を得た。得られた各アスファルト組成物の物性を、表2に示した。
【0195】
〔実施例11〕
下記表2に示すように、ポリマー17を12g、EVAポリマーを4g添加する以外は、実施例1と同様の混練方法により、アスファルト組成物を得た。得られた各アスファルト組成物の物性を、表2に示した。
【0196】
〔実施例12〕
下記表2に示すように、ポリマー6を14g添加後に、硫黄をアスファルト組成物中に0.1質量%添加し、添加後に120分間撹拌して、160℃12時間養生し、アスファルト組成物を得た以外は実施例1と同様にアスファルト組成物を作製した。得られた各アスファルト組成物の物性を、表2に示した。
【0197】
〔実施例13〕
下記表2に示すように、ポリマー6を8g、ポリマー18を8g添加後に、ポリリン酸(キシダ化学社製)をアスファルト組成物中に0.2質量%添加した以外は実施例12と同様にアスファルト組成物を作製した。得られた各アスファルト組成物の物性を、表2に示した。
【0198】
【表2】
【0199】
〔実施例14〜16、比較例9〜11〕
下記表3に示すように、所定のポリマーを用い、それぞれのブロック共重合体とアスファルトとの比率に従い、実施例1と同様の混練方法により、アスファルト組成物を得た。得られた各アスファルト組成物の物性を、表3に示した。なお、コロイダルインデックス(Ci値)が0.5(飽和分:10.6質量%、芳香族分:43.1質量%、レジン分:23.6質量%、アスファルテン分:22.6質量%)のアスファルトとしては、Caladium Middle East FZE製、ストアス60−70を用い、コロイダルインデックス(Ci値)が0.28(飽和分:4.52質量%、芳香族分:59.16質量%、レジン分:19.06質量%、アスファルテン分:17.27質量%)のアスファルトとしては、JX日鋼日石エネルギー株式会社根岸製油所製、ストアス60−80を用い、コロイダルインデックス(Ci値)が0.55のアスファルトとしては、Petro Chem製、ストアス70−80を用いた。なお、コロイダルインデックス(Ci値)が0.36のアスファルトとしては、上記同様のものを用いた。
【0200】
〔実施例17〜20〕
下記表3に示すように、実施例17と実施例20のアスファルトには、コロイダルインデックス(Ci値)が0.41(飽和分:7.4質量%、芳香族分:47.8質量%、レジン分:23.3質量%、アスファルテン分:21.5質量%)のアスファルトとしては、韓国製ストアス60−80、実施例18と実施例19のアスファルトには、コロイダルインデックス(Ci値)が0.44(飽和分:5.8質量%、芳香族分:42.4質量%、レジン分:27.2質量%、アスファルテン分:24.6質量%)のアスファルトとしては、インド産ストアス80−100を用い、実施例17と実施例19にはポリマー6、実施例18にはポリマー4、実施例20にはポリマー2を用いる以外は、実施例1と同様の混練方法により、アスファルト組成物を得た。得られた各アスファルト組成物の物性を、表2に示した。
【0201】
【表3】
【0202】
以上のとおり、本発明のアスファルト組成物は、軟化点、伸度が高く、溶融粘度が低く、また、耐わだち掘れ性、高温貯蔵安定性に優れることが示された。また、実施例1〜13のアスファルト組成物は道路舗装用として、実施例14〜16のアスファルト組成物はアスファルト防水シート用として良好であり、それぞれ優れた加工性を有していることが分かった。
【0203】
本出願は、2014年5月8日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2014−096959)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。