特許第6373371号(P6373371)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6373371充電式マグネシウム電池用のフラーレンカソード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373371
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】充電式マグネシウム電池用のフラーレンカソード
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/054 20100101AFI20180806BHJP
   H01M 4/46 20060101ALI20180806BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20180806BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20180806BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20180806BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20180806BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   H01M10/054
   H01M4/46
   H01M4/587
   H01M4/36 B
   H01M10/0568
   H01M4/133
   H01M4/66 A
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-519778(P2016-519778)
(86)(22)【出願日】2014年9月16日
(65)【公表番号】特表2016-536743(P2016-536743A)
(43)【公表日】2016年11月24日
(86)【国際出願番号】US2014055861
(87)【国際公開番号】WO2015050697
(87)【国際公開日】20150409
【審査請求日】2017年5月24日
(31)【優先権主張番号】14/045,906
(32)【優先日】2013年10月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ルイガン
(72)【発明者】
【氏名】水野 史教
【審査官】 宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−037993(JP,A)
【文献】 特開平06−342655(JP,A)
【文献】 特開2013−182862(JP,A)
【文献】 特開2013−008671(JP,A)
【文献】 特開2008−192601(JP,A)
【文献】 特開平05−101850(JP,A)
【文献】 特開2005−001983(JP,A)
【文献】 米国特許第05302474(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0034780(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0302697(US,A1)
【文献】 国際公開第2001/017900(WO,A1)
【文献】 Daniele PONTIROLI et al.,Ionic conductivity in the Mg intercalated fullerene polymer Mg2C60,CARBON,Elsevier,2012年 8月19日,Vol.51,pp.143-147
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
H01M 4/36− 4/62
H01M 4/13− 4/1399
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウムを含む負極と、
マグネシウム塩を含む電解質と、
マグネシウムイオンを層間浸入および放出することができ活性材料を含む正極とを備え、
前記活性材料は、フラーレンと、非クラスタカーボン材料との乾燥共粉砕物であり、
前記非クラスタカーボン材料は、黒鉛、カーボンナノチューブ、及びカーボンブラックのうち少なくとも一つであり、
前記フラーレンの含量は、前記活性材料の50重量%以上である、電気化学電池。
【請求項2】
前記フラーレンは、ケージ構造を有する、請求項に記載の電気化学電池。
【請求項3】
前記フラーレンの前記ケージ構造は、球状である、請求項に記載の電気化学電池。
【請求項4】
前記フラーレンは、C60、C70、またはそれらの組み合わせである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気化学電池。
【請求項5】
前記マグネシウム塩は、有機マグネシウムハロゲン化物からなる群から選択される化合物を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気化学電池。
【請求項6】
電気化学電池であって、
マグネシウムを含む負極と、
マグネシウム塩を含む電解質と、
2枚のカーボン紙の間に圧入され、マグネシウムイオンを層間浸入および放出することができる活性材料を含む正極とを備え、
前記活性材料は、フラーレンの乾燥粉砕物を含む、電気化学電池。
【請求項7】
前記活性材料は、粉砕された非クラスタカーボン材料をさらに含
前記非クラスタカーボン材料は、黒鉛、カーボンナノチューブ、及びカーボンブラックのうち少なくとも一つである、請求項に記載の電気化学電池。
【請求項8】
前記活性材料は、前記フラーレンと前記非クラスタカーボン材料との乾燥共粉砕物を含む、請求項に記載の電気化学電池。
【請求項9】
2枚のカーボン紙の間に挟まれ、マグネシウムイオンを層間浸入および放出することができる活性材料を含
前記活性材料は、フラーレンの乾燥粉砕物を含む、マグネシウム電気化学電池用のカソード。
【請求項10】
前記活性材料は、非クラスタカーボン材料の粉砕物をさらに含
前記非クラスタカーボン材料は、黒鉛、カーボンナノチューブ、及びカーボンブラックのうち少なくとも一つである、請求項に記載のマグネシウム電池用のカソード。
【請求項11】
前記ラーレンは、C60およびC70のうち少なくとも1つを含む、請求項9又は10に記載のマグネシウム電池用のカソード。
【請求項12】
前記活性材料は、バインダをさらに含む、請求項1に記載の電気化学電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、マグネシウム電気化学電池の正極用の活性材料、およびこの活性材料に基づくカソードを備えるマグネシウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池(LIB)は、1991年から商用上使用され、一般的に携帯型電子機器の電源として使用されてきた。リチウムイオン電池の作製および組成に関連する技術は、研究および改善されてきたため、現行のLIB電池は、最大700Wh/Lのエネルギ密度を有すると報告される程度に成熟している。しかしながら、最先端のLIBであっても、将来の商用電気自動車(EV)の要求を満たすことができる動力源として使用できるとは考えられない。たとえば、現行の伝統的な内燃機関車に相当する伝動機構を有するEVが300マイル距離を続行する場合、約2000Wh/Lのエネルギ密度を有するEV電池パックが必要となる。このエネルギ密度は、リチウムイオン活性材料の理論限界に近く、より高いエネルギ密度の電池システムを提供することができる技術が、検討されている。
【0003】
多価イオンとしてのマグネシウムは、潜在的に非常に高い体積エネルギ密度を提供することができるため、リチウムの代替的な電極材料として魅力的である。マグネシウムは、RHEに対して−2.375Vという高い標準電位、12.15g/等量という低い当量重量、および649oCという高い融点を有する。リチウムに比べて、マグネシウムの取扱い、加工および配置は、容易である。マグネシウムは、比較的豊富であるため、原料としてリチウムよりもコストが低い。また、マグネシウム化合物は、一般的にリチウム化合物よりも毒性が低い。さらに、マグネシウムは、リチウムに比べて、空気および湿気に対する感受性が低い。これらのすべての性質によって、マグネシウムは、リチウムの代替的なアノード材料として魅力的である。
【0004】
マグネシウムに基づくアノードを有する電池の製造には、マグネシウムイオンを可逆的に吸着および脱着することができるカソード、およびマグネシウムイオンを効率的に輸送する電解質システムが必要である。世界中の多くの研究機関は、これらの領域で多大な努力を払っており、研究されている活性材料は、元素としての硫黄を含むさまざまな硫黄化合物、分子式MgMo(式中、xは、0〜4の数字であり、Tは、S、SeまたはTeであり、nは、8である)を有するシェブレル化合物として知られている材料、および種々の金属酸化物、たとえば、MnO(カリウムによって安定化したα−MnO)、Vおよびイオンによって安定化したMg、TiまたはVの酸化物またはホランダイトなどを含む。
【0005】
カーボン系材料は、リチウムイオン電池の電極材料として、広く研究されている。このような材料は、含量豊富で、環境に優しいという利点を有する。しかしながら、カーボンを活性マグネシウムの層間浸入材料として充電式マグネシウム電池に適用することは、まだ報告されていない。通常のカーボン相、たとえば黒鉛および硬質カーボンは、電気化学上マグネシウムに対して不活性である。本発明の発明者らは、これらの材料が二価のMg2+から電荷を効率的に転移することができないと考えている。唯一報告されたマグネシウムの層間浸入材料であるシェブレル相材料は、結晶構造中のMO原子クラスタがMg2+の層間浸入によって電気的中性を達成することができるため、機能できると考えられる。しかしながら、これまでに報告されたシェブレル材料に基づくカソードを有する電池の容量および動作電位は低い。
【0006】
したがって、本発明の発明者らは、可能な層間浸入材料として、原子クラスタに構成されたカーボン材料を研究してきた。このような材料たとえばマグネシウム層間浸入剤をカソードとしてマグネシウム電池に使用する実用性は、これまでにまだ報告されていない。
【0007】
Pontiroliら(CARBON 51 (2013) 143-147)は、式Mg60に従って層間浸入したMgを含む2次元フラーレンポリマ網目構造の形成を報告している。この網目構造の導電率は、Mgイオンがフラーレン格子を通って拡散することによって得られると記載されている。
【0008】
Evenら(Int. J. Mol. Sci., 2004, 5,333-346)は、「ジェリウムシェルモデル」として同定されたフラーレンモデル中のMgイオンに基づき、電子エネルギーレベルの数学モデル計算を記載した。
【0009】
Heguriら(Chemical Physical Letters, 490 (2010) 34-37)は、さまざまな制御量の拡散Mgを含むC60薄膜の作製および特徴付けを記載した。これらの薄膜は、Ca60、Sr60およびBa60と同様に、半導体性または絶縁性を有し、超伝導性を有していない。
【0010】
Borondicsら(Solid State Communications, 127 (2003) 311-313)は、Mg60の固体合成、ならびにX線粉末回折法およびラマン分光法による生成物の特徴付けを記載した。
【0011】
Jinら(US 7994422)は、粒状構造を記載した。この粒状構造は、細孔を有する金属酸化物半導体微粒子と、多孔質金属酸化物半導体微粒子の細孔内に配置された5nm〜100nmのサイズを有する触媒金属粒子と、多孔質金属酸化物半導体微粒子の細孔内に配置されたカーボンナノチューブとを備え、たカーボンナノチューブは、多孔質金属酸化物半導体微粒子の細孔内に配置された触媒金属粒子に基づいて成長させられている。
【0012】
Matsubaraら(US 6869730)は、リチウム二次電池の正極用のバインダシステムを記載した。フラーレンは、リチウムイオンを吸着および脱着可能な活性材料に含まれる。
【0013】
Uetani(US 2011/0005598)は、有機光電変換素子を記載した。この有機光電変換素子は、アノードと、カソードと、アノードとカソードとの間に配置され、電子受容性化合物および電子供与性化合物を含む活性層と、アノードに隣接するように、アノードとカソードとの間に配置された機能層とを備え、電子受容性化合物は、フラーレン誘導体である。
【0014】
Leeら(US 2011/0091775)は、負極を有するリチウム二次電池を記載した。この負極は、負極活性材料、水分散性バインダおよび導電剤を含む水性混合物を集電体上に塗布した後、乾燥によって水を除去することによって、得られる。負極活性材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、カーボン繊維、非黒鉛化カーボン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、活性炭などのカーボン材料および黒鉛材料と、リチウムと合金化することができるAl、Si、Sn、Ag、Bi、Mg、Zn、In、Ge、Pb、Pd、PtまたはTiなどの金属およびこれらの元素を含む化合物と、金属およびその化合物とカーボンおよび黒鉛材料との複合体と、リチウムを含む窒化物とを含むことができる。
【0015】
Gennettら(US 2012/0295166)は、(たとえば、リチウムイオン電池のような)エネルギ蓄積/放電装置または(たとえば、スマートガラスのような)エレクトロクロミック素子のようなハイブリッド固体電気化学装置として定義された有機ラジカル電池(ORB)を記載した。この有機ラジカル電池は、予めリチウム化したナノ構造材料からなるアノードと、安定した高分子有機ラジカル系材料からなるカソードと、高性能固体ポリマからなる電解質と、必要に応じて設けられたアノード集電体およびカソード集電体とを備えることができる。リチウムおよびマグネシウムに基づくアノードも記載されている。マグネシウムアノードは、ホウ素を用いてさらにドープすることができるMgドープしたカーボンを含む。このアノードは、ナノ構造カーボンに基づくナノ構造無機ラジカルなどのナノ構造の形で、存在し得る。このアノードは、異種カーボン系の負極材料から作られてもよく、ドープされたカーボンナノチューブまたはドープされていなカーボンナノチューブ(たとえば、単一壁ナノチューブ(SWNT)、二重壁ナノチューブ、多重壁ナノチューブ、フラーレン、およびメソカーボンマイクロビーズのようなビーズであってもよい。このアノードは、(たとえば、単一壁ナノチューブ、二重壁ナノチューブおよび/または多重壁ナノチューブのような)カーボンナノチューブ、カーボンファイバ、フラーレン、グラフェン、および/またはドープされたカーボンナノ構造、たとえば、ホウ素または窒素によりドープされたナノチューブおよび/またはBCNナノ構造(たとえば、ホウ素(B)、カーボン(C)および/または窒素(N)から構成されたハイブリッドナノチューブ、またはいわゆるBCN材料系から構成された他のナノ構造)を含む任意のカーボン系ナノ構造材料から形成されることができる。
【0016】
Zhouら(CN101414678B)は、リチウムイオン電池用のカソード材料を記載した。このカソード材料は、金属をカーボン質材料とともにボールミリングした後、水素を用いて金属を還元することによって金属水素化物を形成することにより、形成される。使用したカーボン質材料は、黒鉛である。
【0017】
Yoshiakiら(JP09045312)は、フラーレン誘導体に基づくカーボンナノチューブから構成された負極を有する非水性リチウム二次電池を記載した。この負極チューブは、Li、Na、K、MgおよびCaのうち少なくとも1つを含む。リチウムイオンを蓄積および放出することができる従来のカソードが使用される。
【0018】
Toriら(JP09283173)は、フラーレン化合物および還元された金属に基づく負極を備える電池を記載した。正極として、金属酸化物を使用する。
【0019】
Yoshiakiら(JP3475652)は、アルカリ蓄電池を記載した。このアルカリ蓄電池は、金属を含むフラーライドに基づく負極と、コバルト水酸化物または酸化物および亜鉛水酸化物または酸化物の両方を含む水酸化ニッケルからなる正極とを有する。
【0020】
カーボンクラスタ材料、たとえば、マグネシウムの層間浸入材料としてのフラーレン、そのような材料から構成されるカソード、およびそのようなカソードを含むマグネシウム電池としての有用性は、上述の文献のいずれにも開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、本発明の目的は、カーボンクラスタ組成物に基づいたカソード活性材料を提供することである。本発明のカソード活性材料は、高エネルギマグネシウム電池の要件を満たしながら、従来公知の層間浸入材料の欠点を克服することができる。
【0022】
本発明の別の目的は、カーボンクラスタ組成物に基づいたカソードを備えるマグネシウム電池を提供することである。本発明のマグネシウム電池は、公知のマグネシウム電気化学電池に比べて、エネルギ密度および性能を有意に改善することができる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
発明の概要
これらの目的および他の目的は、本発明によって実現される。本発明の第1実施形態は、電気化学電池を含む。本発明の電気化学電池は、マグネシウムを含む負極と、マグネシウム塩を含む電解質と、マグネシウムイオンを層間浸入および放出することができるカーボンクラスタ化合物を含む正極とを備える。
【0024】
第2実施形態において、本発明は、マグネシウム電池を提供する。本発明のマグネシウム電池は、アノードと、カーボンクラスタ化合物を含むカソードと、電解質とを備え、カーボンクラスタ化合物は、フラーレンである。
【0025】
第3実施形態において、本発明は、上記実施形態に係るマグネシウム電池を提供する。この実施形態において、フラーレン化合物は、ケージ構造を有する。さらなる実施形態において、ケージ構造は、球状である。
【0026】
特定の一実施形態において、フラーレン材料は、C60化合物、C70の化合物またはその混合物である。
【0027】
さらなる実施形態において、本発明は、上記実施形態のいずれかに係るマグネシウム電池を提供する。この実施形態において、カーボンクラスタ化合物またはフラーレンは、粉砕される。
【0028】
別の実施形態において、本発明は、上記実施形態のいずれかに係るマグネシウム電池を提供する。この実施形態において、カーボンクラスタ化合物またはフラーレンは、カーボンブラックまたは黒鉛などのカーボン化合物と混合される。本実施形態のさらなる変形例において、これらの材料は、カソードを形成する準備において、共粉砕される。これらの材料を粉砕する方法として、ボールミリングを使用してもよい。
【0029】
本発明の更なる特定の実施形態において、フラーレンを含むカソード活性材料を2枚のカーボン紙の間に圧入することによって、カソードを形成することができる。
【0030】
上記は、一般的な説明として提供されており、以下の特許請求の範囲を限定するものではない。現在好ましい実施形態および更なる利点は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態に係るマグネシウム電池を示す概略図である。
図2】本発明の実施例1に記載したように、カソード活性材料として、市販のC60を用いて作製された電池の電気化学性能を示す図である。
図3】本発明の実施例2に記載したように、カソード活性材料として、粉砕したC60を用いて作製された電池の電気化学性能を示す図である。
図4】本発明の実施例2に記載したように、カソード活性材料として、粉砕したC60/C組成物(1:1)を用いて作製された電池の電気化学性能を示す図である。
図5】本発明の実施例3に記載したように、カソード活性材料として、粉砕したC60/C組成物(1:1)を用いて作製された電池の電気化学性能を示す図である。
図6】本発明の実施例3に記載したように、カソード活性材料として、粉砕したC60/C組成物(1:1)を用いて作製された電池の電気化学性能を示す図である。
図7】本発明の実施例1に記載したように、カソード活性材料として、市販のC70を用いて作製された電池の電気化学性能を示す図である。
図8】本発明の実施例4に記載したように、カソード活性材料として、市販の黒鉛を用いて作製された電池の電気化学性能を示す図である。
図9】本発明の実施例4に記載したように、カソード活性材料として、市販のカーボンナノチューブを用いて作製された電池の電気化学性能を示す図である。
図10】本発明の実施例4に記載したように、カソード活性材料として、市販のカーボンブラックを用いて作製された電池の電気化学性能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の好ましい実施形態の説明
本発明の発明者らは、マグネシウム二次電池用のカソード活性材料として機能することができる材料について、幅広い研究および評価を行っている。研究の目的は、容易に入手することができ、生産環境において安全かつ比較的容易に扱うことができ、且つ、高容量および高動作電位を有するマグネシウム電池を提供するカソード活性材料を発見することである。
【0033】
特に明記しない限り、本明細書の全体において、記載された全ての範囲は、その範囲内の全ての値およびサブ範囲を含む。さらに、特に明記しない限り、本明細書の全体において、不定冠詞「a」または「an」は、「1つ以上」のものを意味する。
【0034】
驚くべきことに、本発明の発明者らは、カーボンクラスタ化合物がマグネシウムを層間浸入および放出することができ、このような化合物をカソードに化合する場合、高容量および高動作電位を有するマグネシウム電池の製造を可能にすることを発見した。したがって、第1実施形態において、本発明は、マグネシウムを含む負極と、マグネシウム塩を含む電解質と、マグネシウムイオンを層間浸入および放出することができるカーボンクラスタ化合物を含む正極とを備える電気化学電池を提供する。
【0035】
一実施形態において、カーボンクラスタ化合物は、フラーレンである。好ましくは、フラーレン化合物は、ケージ構造を有する。さらなる実施形態において、ケージ構造は、球状である。C60またはC70を含む材料またはそれらの混合物は、本発明の一実施形態に使用される。C60またはC70を含む材料は、C60およびC70の混合物とともに、異なる純度で市販されている。好ましい実施形態において、驚くべきことに、本発明の発明者らは、材料をカソードに複合する前にボールミリングなどによって粉砕する場合、電極を備えるマグネシウム電池の放電容量を大幅に増加することができることを見出した。さらに、得られた素子の酸化還元電位は、平坦かつ安定である。さらに驚くべきことに、本発明の発明者らは、粉砕された材料を黒鉛、カーボンナノチューブまたはカーボンブラックのような非クラスタ材料と混合する場合、電極を備えるマグネシウム電池の容量をさらに増加することができることを発見した。
【0036】
1つの有利な実施形態において、バインダまたは他の材料を使用せず、粉砕されたカーボンクラスタ材料をカーボン紙の間に圧入することによって、電極を形成することができる。本実施形態は、最大密度の活性材料を提供するため、最大容量の電池を提供することができる。
【0037】
別の非常に有利な実施形態において、粉砕されたカーボンクラスタ材料を2枚のカーボン紙の間に挟み、圧入することによって、カソード構造を形成することができる。圧入の際に、必要に応じてバインダを含んでもよい。
【0038】
他の実施形態において、カソードは、ポリテトラフルオロエチレンなどのバインダを含むように、形成されてもよい。
【0039】
陰極を作製するために、まず、カーボンクラスタ材料は、粉砕され、好ましくはボールミリングによって粉砕される。非クラスタカーボン材料を添加する場合、非クラスタカーボン材料をカーボンクラスタ材料と共粉砕することができる。その後、粉砕物をバインダと混合してもよい。バインダ材料は、特に限定されず、当業者によって認識される任意の適切なバインダを使用することができる。適切なバインダは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、およびポリイミドを含むことができる。好ましい一実施形態において、ポリテトラフルオロエチレンを使用することができる。
【0040】
カソード組成物におけるバインダおよび非クラスタカーボン材料の含有量を50重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは10重量%以下にすることができる。非常に好ましい実施形態において、バインダを添加せず、非クラスタカーボン材料の含有量を50重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは10重量%以下にすることができる。
【0041】
マグネシウム電池のアノードは、マグネシウム電池に適した任意のアノードであってもよい。このようなアノードは、マグネシウム金属またはマグネシウム金属を含む組成物からなるアノードを含む。負極の活性材料は、導電性材料およびバインダをさらに含むことができる。導電性材料の例としては、カーボンブラックなどのカーボン粒子が挙げられる。バインダの例としては、PVDF、PTFE、SBR、およびポリイミドなどのさまざまなポリマが挙げられる。
【0042】
電解質層は、アノードとカソードとの間に配置される。正極と負極との間の電気的絶縁を維持するために、セパレータを設けてもよい。セパレータは、電極間の物理接触および/または短絡の危険性を低減するように構成された繊維、粒子、ウェブ、多孔質シート、または他の形態の材料を含むことができる。セパレータは、一体の要素であってもよく、粒子または繊維のような複数の個別スペーサ要素を含んでもよい。電解質層は、電解液に浸したセパレータを含むことができる。いくつかの例では、たとえば、高分子電解質を使用する場合、セパレータを省略してもよい。
【0043】
電解質層は、有機溶媒のような非水性溶媒、およびマグネシウム塩のような活性イオンの塩を含むことができる。マグネシウム塩によって提供されたマグネシウムイオンは、活性材料と電解的に相互作用する。電解質は、マグネシウムイオンを含む電解質であってもよく、またはそうでない場合、マグネシウムイオンを提供することができる電解質、たとえばマグネシウム塩を含む非水性電解質または非プロトン性電解質であってもよい。電解液は、有機溶剤を含むことができる。マグネシウムイオンは、マグネシウムの塩または錯体、または任意の適切な形態として存在してもよい。
【0044】
電解質は、他の化合物、たとえばイオン伝導性を高める添加剤を含むことができる。いくつかの例において、電解質は、酸性または塩基性化合物を添加剤として含むことができる。電解質は、液体、ゲルまたは固体であってもよい。電解質は、たとえば可塑化ポリマを含むポリマ電解質であってもよく、マグネシウムイオンを注入したポリマ、またはそうでない場合、マグネシウムイオンを含むポリマを有してもよい。いくつかの例において、電解質は、溶融塩を含むことができる。一態様において、電解質は、PhMgおよびPhMgClAlCl(Mg−Phenylと略す)またはMg−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Mg−TFSIと略す)を含む有機マグネシウムハロゲン化物を含むことができる。好ましい実施形態において、電解質は、THF中のMg−Phenylであってもよい。
【0045】
カソード活性材料は、シート状、リボン状、粒子状、または他の物理形状で存在してもよい。カソード活性材料を含む電極は、集電体によって支持されてもよい。
【0046】
集電体は、電極を支持する金属シートまたは他の導電性シートを含んでもよい。集電体は、カーボン、カーボン紙、カーボン布、金属または貴金属メッシュ、もしくは金属または貴金属箔から形成されてもよい。
【0047】
図1は、充電式マグネシウム電池5の一構成例を示す図である。電池5は、本発明のカーボンクラスタ物質をカソード活性材料として含む正極10と、電解質層12と、負極14と、カソード集電体16と、負極ハウジング18と、不活性層21を含む正極ハウジング20と、密封ガスケット22とを含む。電解質層12は、電解液に浸したセパレータを含むことができる。正極10は、カソード集電体16によって支持されてもよい。この例において、負極14は、金属マグネシウムからなる活性材料を含む。
【0048】
電池おける有用性、取り扱いの安全性および容易さを考慮して、エーテル溶媒は、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテルおよびビス−2−メトキシエチルエーテルのうち1つ以上であってもよい。電池の構造および要件によって、異なる物理特性を有するエーテルを必要となるが、テトラヒドロフランは、最も好ましい。
【0049】
本発明を一般に説明したが、例示のみの目的のために本明細書に提供され、特に明記しない限り限定することを意図していない特定の具体的な実施例を参照することによって、本発明の更なる理解を得ることができる、
実施例
【実施例1】
【0050】
原料フラーレンC60またはC70粉末(10mg、シグマ社、≧98%)をカーボン紙(D= 13mm)に挟み、10トンの圧力下でペレット状に押圧した。カスタマイズTomcell(TJ-AC Tomcell、日本)において、各電極ペレットを検査した。セパレータとして、厚さ0.2μm(直径28mm)の標準ガラスフィルタ(Sigma-Aldrich社)を使用し、対極および参照極として、Mg箔(直径19mm)を使用した。Mg箔の両側面をサンドペーパで研磨し、キムワイプ(Kimberly-Clark社)できれいに拭くことによって、Mg箔を仕上げた。カソード側の集電体として、1つのガラス状カーボン皿を使用した。すべての電池は、Ar雰囲気の下、グローブボックス(水および酸素<0.1ppm)において、組み立てられた。電気化学検査は、バイオロジックポテンショスタット/ガルバノスタットVMP電池検査システムを用いて、25μAの定電流で、Mg/Mg2+対して0.8Vから2.75Vまでの間の電圧範囲に行われた。検査の間に、すべての電池は、一定温度(25±0.5℃)でオーブン中に保持された。図2に示すように、C60ペレットは、10mAh/gの放電容量ならびに1.5Vおよび1.2Vで2つの平坦電圧曲線を示した。C70に関する結果は、図7に示される。
【実施例2】
【0051】
フラーレンおよび他のカーボン材料の混合物を形成するために、以下の材料を準備した。1.0gのC60原料、1.0gのカーボンブラック(使用する前に真空下、150℃で一晩乾燥した)、8.5インチのジルコニアボールおよび20.25インチのジルコニアボールを65mlのジルコニアバイアルに密封した。Retsh社のPM100ボールミル粉砕機を用いて、機械的ミリングを合計6時間で行った。カソード活性材料としてのC60/C複合物に対する電気化学検査の結果は、図3および4に示される。
【実施例3】
【0052】
C60/Cペレット化電極は、70重量%の作製された材料、20重量%のカーボンブラック、および10重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE、Daikin社)から形成された。混合物に5mlのエタノールを添加し、乳鉢および乳棒を用いて研磨した。研磨30分後、混合物は、ソフトブロックとなり、加圧ロールを用いて加圧することによって、120μm厚さのシートを形成した。C60/C PTFEシートを真空下、120℃で一晩乾燥した。シートから、直径13mm(面積1.33cm)でC60/Cペレットを切り出した。C60/Cに対する電気化学検査の結果は、図5および図6に示される。
【実施例4】
【0053】
次のように、カーボンブラックまたは黒鉛またはカーボンナノチューブから、比較例の電極を作製した。0.9gのカーボンブラック(または黒鉛またはカーボンナノチューブ)にエタノール5mlを添加し、0.1gのPTFEとともに手動で研磨した。研磨30分後、混合物は、ソフトブロックとなり、加圧ロールを用いて加圧することによって、120μm厚さのシートを形成した。C60/C PTFEシートを真空下、120℃で一晩乾燥した。シートから、直径13mm(面積1.33cm)でC60/Cペレットを切り出した。カーボンブラック、黒鉛およびカーボンナノチューブに対する電気化学検査の結果は、図8、9および10にそれぞれ示される。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10