特許第6373372号(P6373372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニデック・ゲーペーエム・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧 ▶ ヴィーアール・オートモーティヴ・ディヒトゥングスジステーメ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許6373372-ラジアル軸シール 図000002
  • 特許6373372-ラジアル軸シール 図000003
  • 特許6373372-ラジアル軸シール 図000004
  • 特許6373372-ラジアル軸シール 図000005
  • 特許6373372-ラジアル軸シール 図000006
  • 特許6373372-ラジアル軸シール 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373372
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】ラジアル軸シール
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3252 20160101AFI20180806BHJP
   F16J 15/3232 20160101ALI20180806BHJP
【FI】
   F16J15/3252
   F16J15/3232 201
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-522269(P2016-522269)
(86)(22)【出願日】2014年6月26日
(65)【公表番号】特表2016-524102(P2016-524102A)
(43)【公表日】2016年8月12日
(86)【国際出願番号】DE2014000326
(87)【国際公開番号】WO2014206393
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2017年5月23日
(31)【優先権主張番号】102013010926.4
(32)【優先日】2013年6月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515261723
【氏名又は名称】ニデック・ゲーペーエム・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(73)【特許権者】
【識別番号】516002945
【氏名又は名称】ヴィーアール・オートモーティヴ・ディヒトゥングスジステーメ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】ブレヒシュミット・アンドレーアス
(72)【発明者】
【氏名】シャーウプ・マルティン
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−133217(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102008010338(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/3252
F16J 15/3232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業ケーシング(2)の孔内に配置された、後壁(6)とこの後壁(6)内に配置された軸貫通孔(7)とを有する金属のシールケーシング(5)を有し、シールケーシング(5)内に、弾性材料から成る複数のリング状のシール体(8)が配置され、これらシール体が、シール体(8)に配置されたシールリップ(9)によって軸(3)又は軸(3)に回転不能に配置された軸受スリーブ(10)に直接的に当接し、シール体(8)が、リング状の金属の支持体(11)によってシールケーシング(5)内に位置決めされている、作業ケーシング(2)の液状の媒体で充填された圧力室(1)から案内された回転する軸(3)を外部空間(4)、即ち大気に対してシールするためのラジアル軸シールにおいて、
・シールケーシング(5)内に位置決めすべき金属の支持体(11)に、軸貫通孔(7)を有する当接板(12)が配置され、シールケーシング(5)内に位置決めすべき支持体(11)の外縁(14)が、シールケーシング(5)の内側半径に対して過剰寸法を備え、従って、支持体(11)が、プレス嵌めでシールケーシング(5)内に接合され、
・支持体(11)に対して、2つのシール体(8)、即ち圧力側の外リップ要素(15)と大気側の内リップ要素(16)は、外リップ要素(15)が支持体(11)の当接板(12)と外リップ当接ウェブ(13)に全面的に当接し、内リップ要素(16)がシールケーシング(5)の後壁(6)に全面的に当接するように位置決めされ、
・外リップ要素(15)及び内リップ要素(16)には、それぞれ軸(3)もしくは軸受スリーブ(10)に当接する領域に、常に圧力側だけに向かって形成されたシリンダ状のシールリップ(9)の形態のシールシリンダが、シールシリンダの外周に配置された外溝(17)を有して配置され、これら外溝(17)に、それぞれ1つの線バネ(18)が配置され、この線バネが、外リップ要素(15)のシールシリンダ、即ち外リップ(19)及び内シール要素(16)のシールシリンダ、即ち内リップ(20)を、軸(3)もしくは軸(3)に回転不能に配置された軸受スリーブ(10)に押し付け、これにより、
・外リップ(19)、支持体(11)、内リップ(20)を有する内リップ要素(16)及び軸(3)もしくは軸受スリーブ(10)によって、全方面をシールされた潤滑チャンバ(21)が形成され、軸(3)もしくは軸受スリーブ(10)に当接するシールリップ(9)のシールシリンダ、即ち外リップ(19)のシールシリンダ及び内リップ(20)のシールシリンダは、それぞれ、外リップ(19)の圧力側及び内リップ(20)の圧力側に常に入口テーパ面(22)が配置され、これに対して外リップ(19)の負圧側及び内リップ(20)の負圧側に常に出口テーパ面(23)が配置され、入口テーパ面と出口テーパ面の間にシリンダ状の接触ゾーン(24)が配置されているように、相並んで位置する3つのシールシリンダ領域に区分けされ、外溝(17)の溝中心軸(25)が、接触ゾーン(24)から出口テーパ面(23)への移行領域に配置され、
・入口テーパ面(22)が、軸中心軸に対して1°〜10°の圧力入口角度(α)を有する入口テーパを備え、接触ゾーン(24)のシリンダ壁が、軸中心軸(26)に対して回転対称に延在し、出口テーパ面(23)が、軸中心軸(26)に対して1°〜15°の圧力出口角度(β)を有する出口テーパを備え、
・ラジアル軸シールの全潤滑チャンバ(21)内に、0.005bar〜0.01barの充填後の残留圧力下で5000mm/s〜1000mm/sの範囲の動粘度を有する室温において流動性の潤滑媒体が配置されていること、
を特徴とするラジアル軸シール。
【請求項2】
支持体(11)が、軸貫通孔(7)の領域に、リング状に圧力側に屈曲した外リップ当接ウェブ(13)を備えること、を特徴とする請求項1に記載のラジアル軸シール
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体で充填された内部空間を外部空間、好ましくは大気に対してシールするために、シールケーシングと、このシールケーシング内に配置された、シールリップによって軸に封止当接する少なくとも1つのリング状のシール体と、シール体をシールケーシング内に位置決めする少なくとも1つのリング状の金属の支持体とを有する、液状の媒体の作用を受ける空間から案内された回転する軸をシールするためのラジアル軸シールに関する。
【背景技術】
【0002】
このような軸シールの使用領域は、例えば、軽潤滑添加物を有するさらさらした水ベースの冷媒に対する冷却剤ポンプの駆動軸のシールのような、機械構造、装置構造及び自動車構造である。
【0003】
独国特許出願公開第10 2008 010 338号明細書及び独国特許出願公開第10 2008 010 341号明細書から、相互に離間して配置された2つのシール体を有し、これらシール体が、軸に線状に封止当接するそれぞれ2つのシールリップを備える、ウォーターポンプためのラジアル軸シールが公知である。
【0004】
両シール体が、それぞれ同一に形成され、従って、同じ型内で製造できることが、最後に述べた両構造にとって特徴的である。
【0005】
独国特許出願公開第10 2008 010 338号明細書に対して、独国特許出願公開第10 2008 010 341号明細書は、漏洩液のための集積室を有しており、この集積室内へ、シールすべき軸と回転不能に結合された遠心分離要素が突出している。
【0006】
これら前記全ての構造にとって、軸もしくは軸に配置された軸用軸受スリーブに線状に当接するシール体のシールリップが、“楔状”に形成されていること、即ち、作動状態で軸もしくは軸用軸受スリーブに押し付けられたこれら狭幅のシール体の線状面が、高い摩耗の影響下にあることが特徴的であり、最も強度に汚染物と直面している、内部空間に隣接するシール膜体のシールリップが最初に摩耗するので、その時には、第2のシール膜体の、更に外側に配置されたシールリップが、摩耗したリップを通って入る漏洩をシールしなければならない。
【0007】
即ち、これら構造の場合には、“第1”のシールの摩耗後、後続の“第2”のシールが、次いで、第1のシールの使命を引き受ける。
【0008】
しかしながら、第2のシール膜体のシールリップは、冷却されていない状態で、軸もしくは軸用軸受スリーブ上を“走行”するので、封隙リップは、必然的に、高まった摩耗の影響下にあり、比較的短い使用時間の後に硬くなる。
【0009】
これにより、シールリップは、漏洩の回避のために強制的に必要なそのシールテンションを失い、定められた使用時間(即ち、シールリップが本来使用される場合)の後、シールとしてのその使命を、もはや完全には満足することができないので、この軸シールの漏洩損失は、操作時間に渡って明らかに増加する。
【0010】
出願人によって供託された西独国特許第101 41 138号明細書には、相互に離間して配置され、圧力方向に対して傾斜させた、線状に軸に封止当接する2つのシールリップを有し、これらシールリップが、互いの中へ配置された2つのシール体に配置され、両シール体の間に、1つの支持体が配置され、この支持体が、内部空間に隣接するシール膜を、その内部チャンバとは反対側の側面で支持する、別のラジアル軸シールが記載されている。両シール膜の間の空間内に、この構造の場合、高温グリースが充填された。
【0011】
国際公開第2007/101429号パンフレットから、相互に離間して配置され、圧力方向に対して傾斜させた、線状に軸に封止当接する、2つの封隙リップを有するラジアル軸シールのための、出願人の更に別の解決策が公知であるが、このラジアル軸シールの場合には、両シール膜の間の空間が、同様に、高温グリースで充填された。
【0012】
西独国特許第101 41 138号明細書で紹介された解決策及び国際公開第2007/101429号パンフレットで紹介された解決策により、両シール膜の間の空間が高温グリースで充填された事項は、これら両構造において問題になっているシールリップの形状と関連して、約200℃の滴下点を有するこの高温グリースが、冷却剤ポンプの始動状態で粘液状に壁部に“粘着”し、少ない押付け力で線状に軸受スリーブに当接するくさび状のシールリップの潤滑を行なうことができないとのことを結果として招いた。
【0013】
内部チャンバ内のアクティブな一方の内部圧力の欠如及び“乾燥空間”の側のリップを軸に対して押し付けるために有効な他方の押付け力の欠如に基づいて、これらリップは、軸に対する接触損失を生む傾向にあり、これにより、さらさらした潤滑剤でも、非常に素早く両方のシールリップの間の空間から漏出することになる。
【0014】
潤滑剤の前記“欠如”に基づいて、“乾燥空間”の側のリップに、非常に高い摩耗が生じる。
【0015】
加えて、従来技術から、外側のエラストマーリップが、その下に位置する高いPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)成分を有するプラスチックから成るリップと組み合わされ、両リップの間に、少量の市販の潤滑グリースが収容され、この場合、グリースが、更にまた、エラストマーリップの短時間の潤滑のために使用される、複数の解決策が公知である。
【0016】
しかしながら、多くの時間にわたる冷却媒体の無い乾燥−耐久運転時に、これら構造において広幅の面で軸上に載っているプラスチックリップが、摩擦エネルギーの注入によって摩耗することが判明した。両リップの間に収容された市販の潤滑グリースは、決して所望の運転改善の作用を示さない。
【0017】
例えば、西独国特許出願公開第917 942号明細書、西独国特許出願公開第977 331号明細書、米国特許第2,467,210号明細書、米国特許第2,630,357号明細書、米国特許第5,303,935号明細書又は独国特許出願公開第10 2010 044 427号明細書でのような、大きな面で軸に当接するシールリップもしくは軸に当接する大きな面のシールリップを有する他のリップ形状の場合には、増大した摩耗が、大きな面で軸に押し付けられるシールリップのエッジ領域の弱潤滑媒体(冷却液)と関連して比較的短い使用時間の後に生じる。何故ならば、使用開始と共に、即座に混合摩擦が、これにより増大した摩耗が発生するからであり、従って、大きな面で軸もしくは軸スリーブに当接するシールリップを有する二重リップ式のシールシステムの場合でも、既に前で説明した全ての欠点が生じる。これら欠点は、特に、ドライランモードでは両方のリップが、また冷媒よる標準モードでは内側の、即ち冷媒とは反対側のリップが、ポンプの使用開始後に非常に強い摩耗の影響下にあることにある。
【0018】
ポンプの使用開始後に冷却回路内に生じるこの開始摩耗は、リップシールの極端な損傷と、リップシールの早期の欠損を生じさせる。
【0019】
従来技術で前に説明した全ての解決策は、冷却回路の使用開始時の増大した開始摩擦の基本問題を解決可能でない。
【0020】
これに関係して生じる問題のあるトライポロジは、比較的に短い運転時間の後、常に、ウォーターポンプ支承部の側のシールリップの故障を生じさせる。何故ならば、シールリップは、開始段階では無潤滑で乾燥摩擦中で作動し、これにより、の温度及び摩耗が強く増加するからである。
【0021】
この強い開始摩耗の原因は、内側のリップが、標準的な作動条件下で、一般的に、冷媒が外側のリップを通って内側のリップへ通り抜け、次に内側のリップを「潤滑する」/「潤滑できる」まで、乾燥状態で走行するということだけによって説明することができる。
【0022】
例えばこれら構造において使用されるエラストマーシールリップ及びそこで使用されるPTFEベースのプラスチックシールリップにとって、ドライランのこの期間は、トライポロジ的に不利な混合摩擦/乾燥摩擦時に回転数が比較高く、冷却液が欠如している場合には、比較的短い作動時間の後に、内側のリップの完全な破壊を結果として招く損傷、即ち、混合摩擦摩耗又は乾燥摩擦摩耗による「焼失」が生じるような長さであるので、更なる作動中は、外側のリップしか、更にシール機能を引き受けることができない。
【0023】
しかしながら、“エンドオブライン”エンジンテスト、即ち、冷却液の無い冷却剤ポンプによる数時間までにわたるエンジンテストは、冷却剤ポンプ内で使用されるラジアル軸シールの前で述べた全ての構造の場合は、シールリップの完全な破壊を結果として招く。
【0024】
加えて、従来技術で説明した構造の別の欠点は、製造及び組立と結びついたコストを明らかに増大させる、その機能に適合した製造及び組立のために生じる製造精度からのような、従来技術で前に説明したラジアル軸シールを構成する多数の個々の部品から生じる。
【0025】
自動車の冷却システム内でラジアル軸シールを使用する際の現在ある別の問題は、冷却システムが、吸引ポンプによって真空引きされ、シール性を検査され、次いで発生させた負圧を利用して空気なしで冷却剤を充填されるように、冷却システムの最初の充填が行われる点にある。
【0026】
この場合、前で説明したシールリップにおける摩耗現象は、この最初の充填に、当然影響を及ぼさない。
【0027】
しかし、既に多くの修理工場が、修理作業もしくは保守作業の範囲内で、負圧によって空気なしで充填しているので、摩耗した非封止のシールリップを介して、空気は、これから生じる欠点と共に冷却回路内へと到達可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2008 010 338号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2008 010 341号明細書
【特許文献3】西独国特許第101 41 138号明細書
【特許文献4】国際公開第2007/101429号パンフレット
【特許文献5】西独国特許出願公開第917 942号明細書
【特許文献6】西独国特許出願公開第977 331号明細書
【特許文献7】米国特許第2,467,210号明細書
【特許文献8】米国特許第2,630,357号明細書
【特許文献9】米国特許第5,303,935号明細書
【特許文献10】独国特許出願公開第10 2010 044 427号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
従って、本発明の課題は、軽潤滑添加物を有するさらさらした水ベースの冷却剤の使用下にある冷却剤ポンプにおいても前記の従来技術の欠点を排除し、ラジアル軸シールに損傷を与えることなく数時間にわたる冷却液を有しない冷却剤ポンプによる“エンドオブライン”エンジンテストも可能にし、軸の回転時に、二重リップ式のシールシステムにおけるシールリップの摩耗、特に開始摩耗を、現在の従来技術に対して明らかに最小化し、漏洩損失を従来技術に対して明らかに低下させ、加えて、確実に停止漏洩を回避し、同時に製造技術的に簡単に製造可能及び組立可能であり、これにより最終製造での製造コスト及び組立コストを明らかに低減し、長い使用時間の後でも更に“空気なしの”冷却剤ポンプの真空充填が可能であるように、寿命以外に信頼性も明らかに高める、液状の媒体で充填された空間から案内された回転する軸を大気に対してシールするための新形式のラジアル軸シールを開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明によれば、この課題は、本発明の主請求項の特徴によるラジアル軸シールによって解決される。
【0031】
本発明の有利な実施形態、詳細、および特徴は、従属請求項、並びに、本発明による解決策に関する図面と関連した本発明による実施例の以下の説明からわかる。
【発明の効果】
【0032】
以下で、本願発明を、以下の図と関連した1つの実施例に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】最終組立後の、即ち、例えば冷却剤ポンプ内への取付け後の、取付け状態の本発明によるラジアル軸シールの横から見た断面図
図2】最終組立前の、軸受スリーブが挿入された本発明によるラジアル軸シールの平面図
図3図2による最終組立前の、軸受スリーブが挿入された本発明によるラジアル軸シールの横から見た断面図A−A
図4】最終組立前の、軸受スリーブ10を有しない本発明によるラジアル軸シールの横から見た断面図
図5】本発明による内リップ20の図を含む、図4による本発明によるラジアル軸シールの詳細X
図6】本発明による外リップ19の図を含む、図4による本発明によるラジアル軸シールの詳細Y
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1に、冷却剤ポンプへの取付け状態の、即ち最終組立後の、本発明によるラジアル軸シールが図示されている。
【0035】
この図1は、作業ケーシング2の液状の媒体で充填された圧力室1から案内された回転する軸3を外部空間4、好ましくは大気に対してシールするための本発明によるラジアル軸シールを示す。
【0036】
作業ケーシング2の孔内に、後壁6を有する1つの金属のシールケーシング5が配置されている。
【0037】
この後壁6に、軸貫通孔7が存在する。シールケーシング5内に、弾性材料から成る2つのリング状のシール体8が配置され、これらシール体は、これらシール体8に配置されたシールリップ9でもって、軸3に回転不能に配置された軸受スリーブ10に直接的に当接し、両シール体8は、リング状の金属の支持体11によって同時にシールケーシング5内に位置決めされている。
【0038】
シールケーシング5内に位置決めすべき金属の支持体11に、軸貫通孔7を有する当接板12が配置され、シールケーシング5内に位置決めすべき支持体11の外縁14が、シールケーシング5の内側半径に対して過剰寸法を備え、従って、支持体11が、プレス嵌めでシールケーシング5内に接合されていることが、発明にとって重要である。
【0039】
金属のシールケーシング5内での金属の支持体11のこのプレス嵌めは、温度変化時でも、シールケーシング5内の支持体11の確実なはめ合いを保証する。
【0040】
これに関係して特徴的であるのは、支持体11に対して、2つのシール体8、即ち圧力側の外リップ要素15と大気側の内リップ要素16は、外リップ要素15が支持体11の当接板12に全面的に当接し、内リップ要素16がシールケーシング5の後壁6に全面的に当接するように位置決めされているので、高い圧力作用下でも、両シール体8が、同時に位置を安定させてシールケーシング5内に位置決めされていることである。
【0041】
この場合、外リップ要素15及び内リップ要素16には、それぞれ軸3もしくは軸受スリーブ10に当接する領域に、常に圧力が輪だけに向かって形成されたシリンダ状のシールリップ9の形態のシールシリンダが、シールシリンダの外周に配置された外溝17を有して配置され、シールリップ9のこれら外溝17に、それぞれ1つの線バネ18が配置され、この線バネが、外リップ要素15のシールシリンダ、即ち外リップ19及び内シール要素16のシールシリンダ、即ち内リップ20を、軸3もしくは軸3に回転不能に配置された軸受スリーブ10に押し付け、これにより、それぞれのシールシリンダと軸3もしくは軸受スリーブ10の間に、常に軸3の回転時の最適な押付け圧力が保証され、この軸が、特に漏洩損失も最小化し、最後に停止漏洩を回避することが、本発明にとって重要である。
【0042】
外リップ19、支持体11、内リップ20を有する内リップ要素16及び軸3もしくは軸受スリーブ10によって、全方面をシールされた潤滑チャンバ21が形成され、軸3もしくは軸受スリーブ10に当接するシールリップ9のシールシリンダ、即ち外リップ19のシールシリンダ及び内リップ20のシールシリンダは、それぞれ、外リップ19の圧力側及び内リップ20の圧力側に常に入口テーパ面22が配置され、これに対して外リップ19の負圧側及び内リップ20の負圧側に常に出口テーパ面23が配置され、かつ、入口テーパ面と出口テーパ面の間にシリンダ状の接触ゾーン24が配置されているように、相並んで位置する3つのシールシリンダ領域に区分けされ、外溝17の溝中心軸25が、接触ゾーン24から出口テーパ面23への移行領域に配置されていることも、重要である。
【0043】
これにより、軸3もしくは軸受スリーブ10と作用結合するそれぞれのシールリップ9の全作業幅にわたる正確に定められた圧力経過を保証することができる。
【0044】
図1と関連して今説明したこの本発明によるラジアル軸シールは、図2では、軸受スリーブ10が挿入された、即ち最終組立前のものが、平面図で図示されている。
【0045】
図3は、図2による本発明によるラジアル軸シールを、横から見た断面図A−Aで示す。
【0046】
図4には、シールリップ9の本発明による形成を明確にするために、軸受スリーブ10を有しない本発明によるラジアル軸シールが、横から見た断面図で図示されている。
【0047】
図5は、本発明による内リップ20の図を含む、図4による本発明によるラジアル軸シールの詳細Xを示し、図6には、本発明による外リップ19を含む、図4による本発明によるラジアル軸シールの詳細Yが図示されている。
【0048】
この場合、特に、図5および6は、本発明によるシールリップの形成を示すが、これらシールリップは、入口テーパ面22が、軸中心線26に対して、圧力入口角度αを有する入口テーパを備え、この圧力入口角度が、本発明により、1°〜10°の範囲内にあることを特徴とする。
【0049】
図5及び6に図示されているように、接触ゾーン24のシリンダ壁が、軸中心軸26に対して回転対称に延在し、出口テーパ面23が、軸中心軸26に対して、1°〜15°の圧力出口角度βを有する出口テーパを備えることが、発明にとって重要である。
【0050】
本発明による外リップ19の入口テーパ面22は、作動状態で、即ち、図1に図示されているように、圧力室1内の作動圧力下で、接触ゾーン24に向か領域内に圧力上昇を生じさせ、この接触ゾーンは、線ばね18のばね圧力負荷下で、最小の作業シール間隙を保証するので、本発明による解決策によって、最小の漏洩損失時でも、出口テーパ面23を介して潤滑チャンバ21に向かって同時に圧力低下を生じさせつつ、混合摩擦領域の最小化が実現される。
【0051】
内リップ20のほぼ同様の構造は、同様に、低減された圧力レベル、即ち、潤滑チャンバ内の内部圧力から外部空間4内の大気圧への低減された圧力レベルだけで、外リップ19と関連して説明した作用を達成する。
【0052】
支持体11が、軸貫通孔7の領域に、リング状に圧力側に屈曲した外リップ当接ウェブ13を備え、この外リップ当接ウェブが、支持体11の軸貫通孔7と軸3もしくは軸受スリーブ10との間の間隙内への、作動圧力によって負荷を受けた外リップ19の弾性材料の押出しを回避することも、本発明にとって重要である。
【0053】
更に、本発明によるラジアル軸シールの全潤滑チャンバ21内に、0.005bar〜0.01barの充填後の残留圧力下で、5000mm/s〜1000mm/sの範囲の動粘性を有する室温において流動性の潤滑媒体が配置されていること、即ち、充填後に、潤滑チャンバが、常に完全に充填されており、この潤滑チャンバ内の潤滑媒体が、若干の超過圧下にあること、が重要である。
【0054】
本実施例内において、潤滑チャンバ21の容積は、30mmのシール直径の場合、約1cmである。
【0055】
本発明により本発明による潤滑チャンバ21内に配置された潤滑媒体との、本発明によるシールリップ形状の本発明による配置の組み合わせは、冷却液を有しない冷却剤ポンプによる“エンドオブライン”エンジンテストでも、即ち、12時間のテスト時間にわたる4000rpmまでの本発明によるラジアル軸シールのドライランテストでも、シールリップの機能を損なう予損傷を結果として招かないというような、驚くべき本発明によるトライポロジ的効果を生じさせる。
【0056】
この場合、これら極端な条件下で、前で説明した本発明による最適なシール機能は、シールリップの摩耗が最小であっても、驚くべきことに、本発明によるリップ形状の浅いテーパ角と関連して初めて得られた。
【0057】
加えて更に、約7300時間にわたって実施された耐久テストで、本発明によるラジアル軸シールは、冷却剤ポンプ内での使用と関連して、驚くべき漏洩特性を示したが、この漏洩特性の場合、非常に少ないが、未だ測定可能な漏洩を有する段階が、繰り返して、測定可能でない漏洩を有する段階によって入れ替えられた。
【0058】
異なる漏洩段階のこの繰り返す効果によって、全く、シール特性における“自己最適化効果”という言葉を使うことができるが、但し、この効果は、これまで技術的に未だに理由付けすることができてない。
【0059】
冷却剤ポンプに統合された本発明によるラジアル軸シールによる実地テストで、本発明によるラジアル軸シールに損傷を与えることない、数時間にわたる冷却液を有しない冷却剤ポンプによる“エンドオブライン”エンジンテストでも問題なく可能であることが、一義的に確認された。
【0060】
従って、本発明によるラジアル軸シールは、極端な条件下でも、高い信頼性及び長い寿命を保証する。
【0061】
ラジアル軸シールが、図2及び3に図示したように、軸受スリーブ10と共に予組立てされ、この場合、潤滑チャンバ21内に本発明による潤滑媒体が既に配置されている場合も有利である。
【0062】
このように予組立てされた本発明によるラジアル軸シールは、例えば冷却剤ポンプ内への簡単な取付けを可能にし、例えば特殊鋼から成る精密加工された軸受スリーブ10の使用によって、本発明により潤滑チャンバ21内に配置された潤滑媒体によってシールリップ9の同時の最適な潤滑をしつつ、シールリップ9の摩耗の最小化を保証するが、この潤滑媒体は、加えて同時に、ゴム弾性的な材料から成るシールリップを連続的に冷却し、これらシールリップを、同様に連続的に、作動中“状態維持”/潤滑し、これにより、シールリップのゴムが、硬化し、例えば、軸3もしくは軸受スリーブ10の“走行領域”へ“食い込み”、その際に摩耗することを回避する。
【0063】
同時に、このように予組立てされたラジアル軸シールは、本発明による潤滑チャンバ21内の作動圧力によって信頼性を向上させ、同時に、製造中の、例えば冷却剤ポンプへの本発明によるラジアル軸シールの取付け時の、組立コストの明らかな低減を生じさせる。
【0064】
本発明による解決策により、軽潤滑添加物を有するさらさらした水ベースの冷却剤の使用下にある冷却剤ポンプにおいても従来技術の欠点を排除し、ラジアル軸シールに損傷を与えることなく数時間にわたる冷却液を有しない、本発明によるラジアル軸シールを統合した却剤ポンプによる“エンドオブライン”エンジンテストも可能にし、軸の回転時に、二重リップ式のシールシステムにおけるシールリップの摩耗を、現在の従来技術に対して明らかに最小化し、漏洩損失を従来技術に対して明らかに低下させ、加えて、確実に停止漏洩を回避し、同時に製造技術的に簡単に製造可能及び組立可能であり、これにより最終製造での製造コスト及び組立コストを明らかに低減し、同時に、長い使用時間の後でも更に“空気なしの”真空充填が可能であるように、寿命以外に信頼性も明らかに高める、液状の媒体で充填された空間から案内された回転する軸を大気に対してシールするための新形式のラジアル軸シールを開発することに成功している。
【符号の説明】
【0065】
1 圧力室
2 作業ケーシング
3 軸
4 外部空間
5 封隙ケーシング
6 後壁
7 軸貫通孔
8 シール体
9 シールリップ
10 軸受スリーブ
11 支持体
12 当接板
13 外リップ当接ウェブ
14 外縁
15 外リップ要素
16 内リップ要素
17 外溝
18 線ばね
19 外リップ
20 内リップ
21 潤滑チャンバ
22 入口テーパ面
23 出口テーパ面
24 接触ゾーン
25 溝中心軸
26 軸中心軸
α 圧力入口角度
β 圧力出口角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6