特許第6373381号(P6373381)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6373381ゼオライト膜、その製造方法およびこれを用いた分離方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373381
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】ゼオライト膜、その製造方法およびこれを用いた分離方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/02 20060101AFI20180806BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20180806BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20180806BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20180806BHJP
   B01D 61/36 20060101ALI20180806BHJP
   C01B 39/48 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   B01D71/02
   B01D71/02 500
   B01D53/22
   B01D69/10
   B01D69/12
   B01D61/36
   C01B39/48
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-532919(P2016-532919)
(86)(22)【出願日】2015年7月6日
(86)【国際出願番号】JP2015069394
(87)【国際公開番号】WO2016006564
(87)【国際公開日】20160114
【審査請求日】2017年1月10日
(31)【優先権主張番号】特願2014-142386(P2014-142386)
(32)【優先日】2014年7月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】今坂 怜史
(72)【発明者】
【氏名】板倉 正也
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 泰久
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 剛一
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/046545(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/098473(WO,A1)
【文献】 特開2012−050930(JP,A)
【文献】 特表2010−532259(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/125660(WO,A1)
【文献】 ITAKURA, Masaya et al.,"Synthesis of high-silica CHA type zeolite by interzeolite conversion of FAU type zeolite in the pre,Microporous and Mesoporous Materials,2011年 3月24日,144,pp.91-96
【文献】 HASEGAWA, Yasuhisa et al.,"Preparation of High-Silica Chabazite Membrane",MEMBRANE,日本,2014年 1月 1日,39(1),pp.56-60
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00−71/82
B01D 53/22
C01B 39/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間層を有する多孔質支持体の中間層上に製膜されたCHA型結晶構造を有するゼオライト膜であって、CHA型ゼオライト粒子のSi/Al(モル比)が60〜100.5であり、ゼオライト膜表面にX線を照射して得たX線回折パターンにおいて、2θ=18°付近のピーク強度が2θ=21°付近のピーク強度の0.5倍未満、および/または、2θ=10°付近のピーク強度が2θ=21°付近のピーク強度の4倍未満であることを特徴とするゼオライト膜を製造する方法において、
Si元素源、Al元素源、アルカリ源および有機テンプレートを含む水性反応混合物を用いて、水熱合成により、CHA型結晶構造を有するゼオライト膜を多孔質支持体の中間層上に形成するに当たり、Si元素源およびAl元素源として脱アルミニウム処理してないFAU型ゼオライトを用いることを特徴とするゼオライト膜の製造方法。
【請求項2】
前記水熱合成において種結晶を用い、当該種結晶は、Si元素源、Al元素源、アルカリ源および有機テンプレートを含む水性反応混合物を用いる水熱合成においてSi元素源およびAl元素源としてFAU型ゼオライトを用いて調製されることを特徴とする請求項1に記載のゼオライト膜の製造方法。
【請求項3】
CHA型結晶の粒子径が100nm〜1μmであることを特徴とする請求項2に記載のゼオライト膜の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法で得られたゼオライト膜に、分離すべき化合物を含む液体または気体の混合物を接触させて、該混合物から高透過性の物質を透過させて該化合物を分離することを特徴とする分離方法。
【請求項5】
分離すべき化合物を含む混合物が、含水率10重量%以上の2−プロパノールと水の混合物であり、温度75°C、膜前後の圧力差1気圧の条件で分離を行った場合、透過流束が10kg/(mh)以上、透過液の水濃度が99重量%以上であることを特徴とする請求項4に記載の分離方法。
【請求項6】
分離すべき化合物を含む混合物が、含水率30重量%以上の酢酸と水の混合物であり、温度75°C、膜前後の圧力差1気圧の条件で分離を行った場合、透過流束が10kg/(mh)以上、透過液の水濃度が99重量%以上であることを特徴とする請求項4に記載の分離方法。
【請求項7】
分離すべき化合物を含む混合物が、二酸化炭素の割合が50重量%以上である二酸化炭素と、メタン、アンモニアまたは六フッ化硫黄との混合気体であり、温度40°C、膜前後の圧力差3気圧の条件で分離を行った場合、二酸化炭素の透過係数が1×10−6mol/(msPa)以上であることを特徴とする請求項4に記載の分離方法。
【請求項8】
分離すべき化合物を含む混合物が、二酸化炭素の割合が50重量%以上である二酸化炭素と、メタン、アンモニアまたは六フッ化硫黄との混合気体であり、温度100〜120°C、膜前後の圧力差3気圧の条件で分離を行った場合、二酸化炭素の透過係数が1×10−7mol/(msPa)以上であることを特徴とする請求項4に記載の分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライト膜、その製造方法およびこれを用いた分離方法に関するものである。本発明によるゼオライト膜は、目的の化合物を高い分離性能と処理量で分離回収することができ、とりわけ、水を含有する有機酸その他の有機化合物からの脱水に好適に使用できる。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは規則的に配列したミクロ孔を有し、一般に耐熱性が高く化学的にも安定なものが数多く得られることから様々な分野で利用されている。ゼオライトは、Siの一部がAlに置換したアルミノシリケートであり、酸素8員環から14員環までの分子オーダー(0.3〜1nm程度)の細孔を有し、立体選択的な吸着作用を持つことから例えば、液体分離、蒸気分離、気体分離、メンブレンリアクター、固体酸触媒、分離吸着剤、イオン交換剤等の分野で幅広く用いられている。近年、有機化合物を含む混合物から同化合物を分離回収するのに、多くの熱エネルギーを要する蒸留法に代って、ゼオライト膜を用いた膜分離法が提案され、すでに実用化された例もある。
【0003】
ゼオライトを製造するには、通常、水熱合成法、すなわち、大量の水とアルミニウム源、シリカ源、アルカリ金属、アミン類などの有機テンプレートを、目的の生成物ゼオライト組成になるように調合し、オートクレーブ等の圧力容器に調合物を封じ込めて、多孔質支持体を共存させて加熱することにより、支持体上にゼオライト膜を合成する。支持体はアルミナやムライト、多孔質金属やバイコールガラスなどで構成され、場合によってはこれに種結晶を付着させる。
【0004】
例えば、特許文献1には、Si元素源、Al元素源、カリウムを含むアルカリ源および有機テンプレートとして1−アダマンタンアミン誘導体を含む水性反応混合物を用いて、水熱合成により、CHA型結晶構造を有するゼオライト膜を多孔質支持体上に形成する方法が記載されている。
【0005】
しかし、この方法で得られたCHA型結晶構造を有するゼオライト膜を分離膜として用いて、例えば、水/酢酸の混合物、または水/2−プロパノールの混合物からそれぞれ酢酸または2−プロパノールを分離回収しようとすると、透過流束(単位時間、単位面積当たりの透過物質の質量)が低くて処理量が少ないため、分離作業に長時間を要するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−121854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した先行技術の問題点に鑑み、ゼオライト分離膜による分離において、実用上十分に高い分離性能と処理量を両立させることができるばかりでなく、長期間安定して分離性能を保持することができるゼオライト膜を提供することを課題とする。
【0008】
本発明はまた、このような高性能のゼオライト膜を形成することができるゼオライト膜の製造方法、および、該ゼオライト膜を用いて、目的の化合物を高い分離性能と処理量で分離回収することができる分離方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決すべく、下記のゼオライト膜の製造方法およびこれを用いた分離方法を提供する。
(1) 中間層を有する多孔質支持体の中間層上に製膜されたCHA型結晶構造を有するゼオライト膜であって、CHA型ゼオライト粒子のSi/Al(モル比)が9.5〜100.5であり、ゼオライト膜表面にX線を照射して得たX線回折パターンにおいて、2θ=18°付近のピーク強度が2θ=21°付近のピーク強度の0.5倍未満、および/または、2θ=10°付近のピーク強度が2θ=21°付近のピーク強度の4倍未満であることを特徴とするゼオライト膜を製造する方法において、
Si元素源、Al元素源、アルカリ源および有機テンプレートを含む水性反応混合物を用いて、水熱合成により、CHA型結晶構造を有するゼオライト膜を多孔質支持体の中間層上に形成するに当たり、Si元素源およびAl元素源として脱アルミニウム処理してないFAU型ゼオライトを用いることを特徴とするゼオライト膜の製造方法。
(2) 前記水熱合成において種結晶を用い、当該種結晶は、Si元素源、Al元素源、アルカリ源および有機テンプレートを含む水性反応混合物を用いる水熱合成においてSi元素源およびAl元素源としてFAU型ゼオライトを用いて調製されることを特徴とする前記(1)に記載のゼオライト膜の製造方法。
(3) CHA型結晶の粒子径が100nm〜1μmであることを特徴とする前記(2)に記載のゼオライト膜の製造方法。
(4) 前記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法で得られたゼオライト膜に、分離すべき化合物を含む液体または気体の混合物を接触させて、該混合物から高透過性の物質を透過させて該化合物を分離することを特徴とする分離方法。
(5) 分離すべき化合物を含む混合物が、含水率10重量%以上の2−プロパノールと水の混合物であり、温度75℃、膜前後の圧力差1気圧の条件で分離を行った場合、透過流束が10kg/(mh)以上、透過液の水濃度が99重量%以上であることを特徴とする前記(4)に記載の分離方法。
(6) 分離すべき化合物を含む混合物が、含水率30重量%以上の酢酸と水の混合物であり、温度75℃、膜前後の圧力差1気圧の条件で分離を行った場合、透過流束が10kg/(mh)以上、透過液の水濃度が99重量%以上であることを特徴とする前記(4)に記載の分離方法。
(7) 分離すべき化合物を含む混合物が、二酸化炭素の割合が50重量%以上である二酸化炭素と、メタン、アンモニアまたは六フッ化硫黄との混合気体であり、温度40℃、膜前後の圧力差3気圧の条件で分離を行った場合、二酸化炭素の透過係数が1×10−6mol/(msPa)以上であることを特徴とする前記(4)に記載の分離方法。
(8) 分離すべき化合物を含む混合物が、二酸化炭素の割合が50重量%以上である二酸化炭素と、メタン、アンモニアまたは六フッ化硫黄との混合気体であり、温度100〜120℃、膜前後の圧力差3気圧の条件で分離を行った場合、二酸化炭素の透過係数が1×10−7mol/(msPa)以上であることを特徴とする前記(4)に記載の分離方法。
【0010】
本発明におけるCHA型結晶構造を有するゼオライト膜とは、International Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライトの構造を規定するコードでチャバサイト(CHA)型構造のものを示し、天然に産出するチャバサイトと同等の結晶構造を有するゼオライトである。
【0011】
本発明において、耐酸性を有するとは一般的な無機酸や酢酸などの有機酸水溶液で5日間浸漬処理しても、その構造に変化がなく、かつ骨格内の脱Alが起こりにくく、そのSi/Al化学組成が処理前後でほぼ変わらないことを意味する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上述のように構成され、平均細孔径が比較的小さい中間層の上にゼオライト膜が形成されるために、ピンホールの形成を抑制しつつ緻密でより薄いゼオライト膜が得られる。また、ゼオライト薄膜が接触しない支持体は中間層よりも平均細孔径が大きいため、支持体において高いガス透過流束を得ることができる。このため、実用上十分に高い分離性能と処理量を両立させることができるばかりでなく、長期間安定に分離性能を保持できる。とりわけ、本発明によるゼオライト膜は耐酸性に優れており、本発明によるゼオライト膜を用いることによって、水と酢酸のような有機酸との混合物から目的とする有機酸を高い透過流束で分離回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1で得られたゼオライト膜の電子顕微鏡像であり、(a)は膜の表面、(b)は膜の断面をそれぞれ示す。
図2】実施例1で得られたゼオライト膜のX線回折パターンである。
図3】第29回ゼオライト研究発表会、予稿集、第73頁に掲載された、Al含有量の小さいCHA型構造を有するゼオライト膜の表面の電子顕微鏡像(図1と同倍率)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の詳細を説明する。
[中間層を有する多孔質支持体]
本発明における多孔質支持体は、ゼオライト膜を形成すべき表面に中間層を有する。多孔質支持体は、中間層の上にゼオライトを薄膜として結晶化できるものであれば良く、アルミナ、シリカ、ムライト、ジルコニア、チタニア、ステンレススチールやアルミニウムを代表とする金属あるいは各種合金製の多孔質支持体、陽極酸化膜多孔質支持体などである。多孔質支持体上にゼオライト膜を形成したものを分子ふるい等として利用する場合、(a)ゼオライト膜を強固に担持することができ、(b)圧損ができるだけ小さく、かつ(c)多孔質支持体が十分な自己支持性(機械的強度)を有するという条件を満たすように、多孔質支持体の平均細孔径等を設定するのが好ましい。具体的には、多孔質支持体の平均細孔径は10〜50μmであるのが好ましい。中間層を含む多孔質支持体の肉厚は1〜3mmであるのが好ましい。中間層の平均細孔径は0.1〜1μmであるのが好ましい。1μmより大きい場合は緻密なゼオライト層を形成することが難しい。また、0.1μmより小さい場合は、中間層の物質透過抵抗が大きいため適さない。中間層の厚さは1〜50μmであるのが好ましく、1〜10μmであるのがより好ましい。また、多孔質支持体の気孔率は20〜50%であるのが好ましく、35〜40%であるのがより好ましい。
【0015】
多孔質支持体の形状は特に限定されず、管状、平板状、ハニカム状、中空糸状、ペレット状等、種々の形状のものを使用できる。例えば管状の場合、多孔質支持体の大きさは特に限定されないが、実用的には長さ2〜200cm程度、内径0.5〜2cm、厚さ0.5〜4mm程度である。
【0016】
多孔質支持体は、水洗い、超音波洗浄などの方法で表面処理することが好ましい。例えば、水による1〜10分の超音波洗浄により、支持体表面の洗浄を行えば良い。表面平滑性を改善するために、紙やすりやグラインダーなどにより、その表面を研磨しても良い。
[ゼオライト膜の合成]
本発明による方法では、前述した多孔質支持体の中間層の上に、Si元素源、Al元素源、アルカリ源および有機テンプレートを含む水性反応混合物を用いて、水熱合成により、CHA型結晶構造を有するゼオライト膜を形成する。
【0017】
水熱合成に際して、支持体の中間層の上におけるゼオライトの結晶化を促進するために、合成系に種結晶を加えることが好ましい。種結晶を加える方法としては、水性反応混合物中に種結晶を加える方法や、支持体の中間層の上に種結晶を付着させておく方法などを用いることができる。支持体の中間層の上に予め種結晶を付着させておくことで緻密で分離性能良好なゼオライト膜が生成しやすくなる。
水熱合成において使用する種結晶としては、Si元素源およびAl元素源として脱アルミニウム処理してないFAU型ゼオライトを用いて水熱合成により調製したCHA結晶を用いることが好ましい。
種結晶の粒子径は小さい方が望ましく、必要に応じて粉砕して用いても良い。支持体の中間層の上に種結晶を付着させるには、例えば、種結晶を水などの溶媒に分散させてその分散液に支持体を浸けて種結晶を付着させるディップ法や、種結晶を水などの溶媒と混合してスラリー状にしたものを支持体表面上に塗り込む方法などを用いることができる。種結晶の大きさは、好ましくは100nm〜1μm、より好ましくは100〜800nmである。種結晶が1μmより大きい場合、支持体中間層の細孔径との兼ね合いにより、緻密なゼオライト層を形成できない。なお、種結晶の粒子径は大塚電子株式会社製の粒子径測定器(商品名、FPAR−1000)を用いて測定することができる。
【0018】
水熱合成には、オートクレーブのような圧力容器を使えばよい。圧力容器内の多孔質支持体の配置は、垂直では重力の影響による水熱合成液の濃度の偏りが生じる虞があるので、圧力容器に対して水平が好ましい。
【0019】
本発明方法においては、Si元素源およびAl元素源として脱アルミニウムしてないFAU型ゼオライトを用いる。該FAU型ゼオライトを用いることで短時間合成が可能である。本発明では5時間で合成に成功している。特開2011−121854では、Si元素源およびAl元素源としてコロイダルシリカ及び水酸化アルミニウムを用いており、合成に48時間かかっている。特開2013−126649では、脱AlしたFAUゼオライトを用いているが、これは硫酸処理し酸除去といった工程が必要で工業的ではない。脱アルミニウムしてないFAU型ゼオライトが水熱合成反応中にCHA型ゼオライトに変換されるので、Si/Al(モル比)比が9.5〜100.5という高シリカCHA型ゼオライト膜が形成できる。
水熱処理により、多孔質支持体の表面において、FAU型ゼオライト粉末は一旦、分解した後、種結晶を起点として、種結晶と同じ結晶構造(すなわち、CHA構造)を有するゼオライトの核を形成する。あるいは、FAU型ゼオライトが分解した後、有機テンプレートの作用によって、CHA構造を有するゼオライトの核を形成する。形成された核から、生成ゼオライトの結晶が成長する。FAUとCHAの構造ユニットが同じであるため、FAUの構造の一部がそのままCHAの結晶化に寄与する。そのため、結晶構造内に欠陥が生じにくい。
さらに、本発明では、脱アルミニウム処理を行っていないFAU型ゼオライトを用いているため、FAUの結晶性が高く、よりFAUの構造を活かしたCHA膜の合成が可能となる。
【0020】
形成された核の一部は、多孔質支持体の表面で成長し、多孔質支持体の表面を覆うゼオライト膜を形成する。この時、核が大量に生成するため、膜表面でCHA結晶が微粒子サイズで留まるため、緻密かつ透過性に優れたCHA膜が生成される。また、微粒子により構成されるため、結晶間の粒界すなわちクラックが生じにくい。
【0021】
FAU型ゼオライトは市販品、例えば、HSZ−350HUA(USY=Ultra Stable Y、Si/Al(モル比)=10、NaO/Al=0.007、東ソー社製)やHSZ−360HUA(USY=Ultra Stable Y、Si/Al(モル比)=14、NaO/Al=0.006、東ソー社製)、FAU型ゼオライトは1種用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
本発明方法においては、有機テンプレートとしてN,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヒドロキシドを用いることが好ましい。N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヒドロキシドを用いることで、短時間で合成が可能である。本発明でも5時間で合成が可能であった。特開2013−126649ではベンジルトリメチルアンモニウムを用いているが、合成時間が7日で工業的に不向きである。
【0023】
本発明方法においては、水熱合成時間および温度等の合成条件は常法のものであってよいが、100℃〜200℃、好ましくは120℃〜150℃、5時間〜15日、好ましくは3日〜7日である。また、水熱合成終了後は圧力容器から膜を取り出し、膜表面の余分なゲル状物質を取り除く水洗、室温〜150℃の空気中での乾燥、および、膜層内に存在する有機テンプレートを取り除くための焼成を行う。焼成条件は、400℃以上で3時間〜100時間、好ましくは、500〜600℃で10時間であり、昇温および降温を0.1〜1℃/分で行って、熱膨張によるゼオライト膜のクラックの発生を防ぐ。
[ゼオライト膜]
本発明の製造方法により、中間層を有する多孔質支持体の中間層上に製膜されたCHA型結晶構造を有するゼオライト膜は、CHA型ゼオライト粒子のSi/Al(モル比)が9.5〜100.5、好ましくは10〜100、より好ましくは20〜80であり、ゼオライト膜表面にX線を照射して得たX線回折パターンにおいて、2θ=18°付近のピーク強度が2θ=21°付近のピーク強度の0.5倍未満、好ましくは0.4未満、より好ましくは0.35未満、最も好ましくは0.25未満であり、2θ=10°付近のピーク強度が2θ=21°付近のピーク強度の4倍未満、好ましくは3未満、より好ましくは2.5未満、最も好ましくは0.2未満あるものである。(2θ=18°付近のピーク強度)/(2θ=21°付近のピーク強度)の下限は限定されないが、通常は0.1である。(2θ=10°付近のピーク強度)/(2θ=21°付近のピーク強度)の下限も限定されないが、通常は1である。
本明細書および特許請求の範囲を通して、2θ=18°付近のピークとは基材に由来しないピークのうち18°±0.6°の範囲に存在するピークのうち最大のものを指すこととし、2θ=21°付近のピークとは基材に由来しないピークのうち21°±0.6°の範囲に存在するピークで最大のものを指すこととし、2θ=10°付近のピークとは基材に由来しないピークのうち10°±0.6°の範囲に存在するピークのうち最大のものを指すこととする。
【0024】
Si/Al(モル比)が上記の範囲にあるときゼオライト膜が緻密に生成し更に生成したゼオライトが強い親水性を示し、有機物を含有する混合物中から親水性の化合物、特に水を選択的に透過することができる。また耐酸性に強く脱Alしにくいゼオライト膜が得られる。
【0025】
Si/Al(モル比)は、走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光法(SEM−EDX)により得られた数値である。
【0026】
ゼオライト膜の厚さは好ましくは1〜10μm、より好ましくは1〜4μmである。
【0027】
本発明において、CHA型ゼオライト粒子の大きさは10nm〜1μmのナノ粒子であることが好ましく、より好ましくは10〜100nmのナノ粒子である。1μmより大きい場合は、ゼオライト結晶間に粒界が生じ、緻密な膜とならない。
【0028】
なお、CHA型ゼオライトとは、International Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライトの構造を規定するコードでCHA構造のものであり、天然に産出するチャバサイトと同等の結晶構造を有するゼオライトである。CHA型ゼオライトは3.8×3.8Åの径を有する酸素8員環からなる3次元細孔を有することを特徴とする構造をとり、その構造はX線回折データにより特徴付けられる。
[分離方法]
本発明の分離方法において、本発明によるゼオライト膜を用いて、常法に従って分離操作を行うことができる。パーベーパレーション法(浸透気化法)、ベーパーパーミエーション法(蒸気透過法)と呼ばれる分離・濃縮方法が、本発明によるゼオライト膜を用いて好適に実施できる。例えば、水と有機化合物の混合物の場合、通常水がゼオライト膜に対する透過性が高いので、混合物から水が分離され、有機化合物は元の混合物中で濃縮される。
【0029】
本発明による分離方法は、酢酸に代表されるカルボン酸を含む水溶液からのカルボン酸の分離、2−プロパノールのようなアルコール類を含む水溶液からのアルコール類の分離、酢酸エステルなどのエステル類を含む水溶液からのエステル類の分離、さらには二酸化炭素と窒素、メタン、アンモニアまたは六フッ化硫黄との混合気体からの二酸化炭素の分離などに好適に適用される。
【0030】
具体的には、含水率10重量%以上の2−プロパノールと水の混合物を、本発明方法によって、温度75℃、膜前後の圧力差1気圧の条件で分離処理する場合、透過流束10kg/(mh)以上、透過液の水濃度99重量%以上で水を透過させ、2−プロパノールを分離回収することができる。
【0031】
また、含水率30重量%以上の酢酸と水の混合物を、温度75℃、膜前後の圧力差1気圧の条件で分離処理する場合、透過流束10kg/(mh)以上、透過液の水濃度99重量%以上で水を透過させ、酢酸を分離回収することができる。
【0032】
さらに、二酸化炭素の割合が50重量%以上である二酸化炭素とメタン、アンモニアまたは六フッ化硫黄との混合気体の混合気体を、温度40℃、膜前後の圧力差3気圧の条件で分離処理する場合、二酸化炭素を透過係数1×10−6mol/(msPa)以上、好ましくは2.5×10−6mol/(msPa)以上で透過させ、二酸化炭素を分離することができる。本発明の高シリカCHA膜は、分子篩効果によって物質を分離することが可能である。CHA膜の細孔径は0.38nmであり、二酸化炭素はそれよりも小さいため透過できるが、メタン、アンモニウム、六フッ化硫黄はそれ以上の大きさであるため分子篩効果により透過できない。
【0033】
また、二酸化炭素の割合が50重量%以上である二酸化炭素と、メタン、アンモニアまたは六フッ化硫黄との混合気体を、温度100〜120℃、膜前後の圧力差3気圧の条件で分離を行った場合、二酸化炭素の透過係数1×10−7mol/(msPa)以上で透過させ、二酸化炭素を分離することができる。
【0034】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明の範囲は、以下の実施例により何ら制約されるものではない。
[実施例1]
<CHA型ゼオライト膜の形成>
下記の製造例1において、CHA型ゼオライトを無機多孔質支持体の中間層の上に直接水熱合成することでCHA型ゼオライト膜を形成した。
製造例1
表面に中間層(厚み約50μm、平均細孔径0.8μm)を有する円柱状のアルミナ支持体(日立造船社製、直径16mm、長さ60mm、平均細孔径10μm)を用意し、その中間層の表面に種結晶としてCHA型ゼオライトを25g/m付着させた。中間層の平均細孔径の測定は、JIS K 3832に準拠して行った。
【0035】
種結晶は、FAU型ゼオライトを原料とし、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヒドロキシド(TMAdaOH)を有機テンプレートとして、下記の方法で予め調製したものである。
【0036】
まず50mlビーカーにTMAdaOH水溶液(SACHEM社製、25重量%)を8.09g入れ、水酸化ナトリウムを0.38g加え、全体を5分間攪拌した。その後、FAU型ゼオライトとして、HSZ−360とHSZ−390(東ソー社製)をそれぞれ2.1gと0.9g加え、15分間攪拌を行った。こうして得られた混合液中の各物質のモル組成はTMAdaOH/SiO=0.2、NaOH/SiO=0.2、HO/SiO=7、Si/Al=10であった。
【0037】
次いで、この混合液をオートクレーブのテフロン(登録商標)製の内筒内に仕込んだ後、オートクレーブを密封し、160℃で40時間水熱合成を行った。その後、オートクレーブを冷却し、テフロン内筒内のゲルをイオン交換水で洗浄し遠心分離し、上澄み液が中性になったら、これに水を加えた。こうして5重量%の種結晶分散液を調製した。この時、CHA種結晶の粒子径は300〜500nmであった。
【0038】
この種結晶分散液に、支持体を30分間浸漬し、その後、支持体を液から取り出し、40℃で一晩乾燥させた。こうして、支持体に種結晶を付着させた。
【0039】
次いで、ゼオライト膜を製膜するための二次成長溶液を下記の方法で調製した。
【0040】
100mlビーカーにTMAdaOHを1.04g入れ、ここへイオン交換水を28.1g加えた。さらにNaOHを0.13g加え、全体を5分間攪拌した。その後、この混合液にFAU型ゼオライトHSZ−360とHSZ−390をそれぞれ0.64gと0.32g加え、3時間攪拌を行った。こうして二次成長溶液を調製した。二次成長溶液中の各物質のモル組成は、TMAdaOH/SiO=0.076、NaOH/SiO=0.2、HO/SiO=100、Si/Al=10であった。
【0041】
次いで、オートクレーブのテフロン製の内筒内に、種結晶を付着させた中間層を有するアルミナ製の支持体を設置し、該内筒を二次成長溶液で満たした後、オートクレーブを密封し、160℃で16時間水熱合成を行った。こうして二次成長液中での水熱合成によって支持体の中間層の上にCHA型ゼオライト膜を形成させた。
【0042】
その後、オートクレーブを冷却し、形成されたゼオライト膜を有する支持体を内筒から取り出し、イオン交換水で洗浄した。
最後に、有機テンプレートを除去するため、電気炉にて500℃で10時間焼成を行った。
得られたゼオライト膜の電子顕微鏡像を図1に示す。図1の(a)は膜の表面、(b)は膜の断面である。ゼオライト膜の表面は、10〜100nmの微粒子で隙間無く覆われており、その厚みは2〜3μmであった。
【0043】
比較として、Al含有量の小さいCHA型構造を有する公知のゼオライト膜の表面電子顕微鏡像(図1と同倍率)を図3に示す。図1(a)と図3の比較から明らかなように、製造例1で得られたゼオライト膜は緻密な構造を有し、Si/Al=10を維持した。
【0044】
次いで、得られたゼオライト膜のX線回折測定(Rigaku社製、Ultima IV)を行った。
得られたX線回折パターンを図2に示す。このX線回折パターンから、この膜がCHA型ゼオライトで構成されていることを確認した。X線回折パターンにおいて、2θ=18°付近のピーク強度は2θ=21°付近のピーク強度の0.3倍であり、2θ=10°付近のピーク強度は2θ=21°付近のピーク強度の2.7倍であることが分かった。
製造例2 (Si/Al比の影響=25)
表面に中間層(厚み約50μm、平均細孔径0.8μm)を有する円柱状のアルミナ支持体(日立造船社製、直径16mm、長さ60mm、平均細孔径10μm)を用意し、その中間層の表面に種結晶としてCHA型ゼオライトを25g/m付着させた。
【0045】
種結晶は製造例1と同様の方法で調製を行った。また、支持体への種結晶の付着方法も製造例1と同様の方法で行った。
【0046】
次いで、ゼオライト膜を製膜するための二次成長溶液を製造例1同様の方法で調製した。二次成長溶液中の各物質のモル組成は、TMAdaOH/SiO=0.076、NaOH/SiO=0.2、HO/SiO=100、Si/Al=25であった。
以降の工程は製造例1と同様の方法で行った。
得られたゼオライト膜のX線回折測定の結果は、製造例1で得られたゼオライト膜と同じX線回折パターンを示した。
製造例3 (Si/Al比の影響=50)
表面に中間層(厚み約50μm、平均細孔径0.8μm)を有する円柱状のアルミナ支持体(日立造船社製、直径16mm、長さ60mm、平均細孔径10μm)を用意し、その中間層の表面に種結晶としてCHA型ゼオライトを25g/m付着させた。
【0047】
種結晶は製造例1と同様の方法で調製を行った。また、支持体への種結晶の付着方法も製造例1と同様の方法で行った。
【0048】
次いで、ゼオライト膜を製膜するための二次成長溶液を製造例1同様の方法で調製した。二次成長溶液中の各物質のモル組成は、TMAdaOH/SiO=0.076、NaOH/SiO=0.2、HO/SiO=100、Si/Al=50であった。
以降の工程は製造例1と同様の方法で行った。
得られたゼオライト膜のX線回折測定の結果は、製造例1で得られたゼオライト膜と同じX線回折パターンを示した。
製造例4 (Si/Al比の影響=100)
表面に中間層(厚み約50μm、平均細孔径0.8μm)を有する円柱状のアルミナ支持体(日立造船社製、直径16mm、長さ60mm、平均細孔径10μm)を用意し、その中間層の表面に種結晶としてCHA型ゼオライトを25g/m付着させた。
【0049】
種結晶は製造例1と同様の方法で調製を行った。また、支持体への種結晶の付着方法も製造例1と同様の方法で行った。
【0050】
次いで、ゼオライト膜を製膜するための二次成長溶液を製造例1同様の方法で調製した。二次成長溶液中の各物質のモル組成は、TMAdaOH/SiO=0.076、NaOH/SiO=0.2、HO/SiO=100、Si/Al=100であった。
以降の工程は製造例1と同様の方法で行った。
得られたゼオライト膜のX線回折測定の結果は、製造例1で得られたゼオライト膜と同じX線回折パターンを示した。
製造例5 (Si/Al比の影響=110)
表面に中間層(厚み約50μm、平均細孔径0.8μm)を有する円柱状のアルミナ支持体(日立造船社製、直径16mm、長さ60mm、平均細孔径10μm)を用意し、その中間層の表面に種結晶としてCHA型ゼオライトを25g/m付着させた。
【0051】
種結晶は製造例1と同様の方法で調製を行った。また、支持体への種結晶の付着方法も製造例1と同様の方法で行った。
【0052】
次いで、ゼオライト膜を製膜するための二次成長溶液を製造例1同様の方法で調製した。二次成長溶液中の各物質のモル組成は、TMAdaOH/SiO=0.076、NaOH/SiO=0.2、HO/SiO=100、Si/Al=110であった。
以降の工程は製造例1と同様の方法で行った。
得られたゼオライト膜のX線回折測定の結果は、製造例1で得られたゼオライト膜と同じX線回折パターンを示した。
<分離性能の測定>
試験例1
上記製造例1で形成したゼオライト膜の分離性能を、パーベーパレーション法で評価した。すなわち、水/2−プロパノールの50重量%/50重量%の混合物から水を選択的に透過させる分離を行った。分離条件は、温度75℃、膜前後の圧力差1気圧とした。その結果、透過流束は32kg/(mh)となり、分離係数α(水/2−プロパノール
)は386で、透過液の水濃度は99.7重量%であった。
試験例2
分離対象液を水/2−プロパノールの20重量%/80重量%の混合物に変え、その他の点は試験例1と同様に操作した。その結果、透過流束は20kg/(mh)となり、分離係数α(水/2−プロパノール)は1128で、透過液の水濃度は99.6重量%であった。
試験例3
分離対象液を水/2−プロパノールの10重量%/90重量%の混合物に変え、その他の点は試験例1と同様に操作した。その結果、透過流束は10kg/(mh)となり、透過液の水濃度は99.6重量%であった。
試験例4
分離対象液を水/酢酸の50重量%/50重量%の混合物に変え、その他の点は試験例1と同様に操作した。その結果、透過流束は10kg/(mh)となり、透過液の水濃度は99.9重量%であった。
試験例5
上記製造例1で形成したゼオライト膜のガス分離性能を評価した。すなわち、二酸化炭素/メタンのモルで50%/50%の混合物から二酸化炭素を選択的に透過させる分離を行った。分離条件は、温度40℃、膜前後の圧力差3気圧とした。その結果、透過係数は1.2E−06mol/(msPa)となり、分離係数αは10であった。
試験例6
試験条件における温度を100℃に変え、その他の点は試験例5と同様に操作した。その結果、透過係数は1.2E−06mol/(msPa)となり、分離係数αは22であった。
試験例7
試験条件における温度を120℃に変え、その他の点は試験例5と同様に操作した。その結果、透過係数は1.0E−06mol/(msPa)となり、分離係数αは21であった。
【0053】
試験例1〜4の試験条件および試験結果を表1にまとめて示し、試験例5〜7の試験条件および試験結果を表2にまとめて示す。これらの結果は特許文献1と比較すると、高い透過速度を示しており本発明の優位性が分かる。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
上記表から分かるように、いずれの系においても、本発明によるゼオライト膜は高い分離性能を示した。
試験例8
上記製造例2で形成したゼオライト膜のガス分離性能を評価した。二酸化炭素/メタンのモルで50%/50%の混合物から二酸化炭素を選択的に透過させる分離を行った。分離条件は、温度40℃、膜前後の圧力差3気圧とした。その結果、透過係数は1.4E−06mol/(msPa)となり、分離係数αは122であった。
試験例9
試験条件における温度を100℃に変え、その他の点は試験例8と同様に操作した。その結果、透過係数は9.5E−07mol/(msPa)となり、分離係数αは66であった。
試験例10
試験条件における温度を120℃に変え、その他の点は試験例8と同様に操作した。その結果、透過係数は7.1E−07mol/(msPa)となり、分離係数αは47であった。
【0057】
【表3】
【0058】
Si/Al比を25にすることで、二酸化炭素/メタンの高い分離性能が得られた。
試験例11
上記製造例3で形成したゼオライト膜の分離性能を、パーベーパレーション法で評価した。分離対象液を水/酢酸の30重量%/70重量%の混合物に変え、その他の点は試験例1と同様に操作した。その結果、透過流束は10kg/(mh)となり、分離係数は155であった。
試験例12
上記製造例4で形成したゼオライト膜の分離性能をパーベーパレーション法で評価した。分離対象液を水/2―プロパノールの50重量%/50重量%の混合物に変え、その他の点は試験例1と同様に操作した。その結果、透過流束は50kg/(mh)となり、分離係数は30であった。
試験例13
上記製造例4で形成したゼオライト膜の分離性能をパーベーパレーション法で評価した。分離対象液を水/酢酸の30重量%/70重量%の混合物に変え、その他の点は試験例1と同様に操作した。その結果、透過流束は15kg/(mh)となり、分離係数は20であった。
試験例14
上記製造例5で形成したゼオライト膜の分離性能をパーベーパレーション法で評価した。分離対象液を水/2−プロパノールの50重量%/50重量%の混合物に変え、その他の点は試験例1と同様に操作した。その結果、透過流束は90kg/(mh)となり、分離係数は1であった。よって、緻密な膜は得られなかった。
【0059】
以上の試験例を表4にまとめた。
【0060】
【表4】
図1
図2
図3