特許第6373395号(P6373395)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373395
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】工作機械の制御装置および工作機械
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/404 20060101AFI20180806BHJP
   B23Q 15/22 20060101ALI20180806BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20180806BHJP
   G05B 19/18 20060101ALI20180806BHJP
   B23Q 15/00 20060101ALI20180806BHJP
   B23Q 17/22 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   G05B19/404 F
   B23Q15/22
   B23Q17/24 B
   G05B19/18 S
   B23Q15/00 307A
   B23Q17/22 D
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-551414(P2016-551414)
(86)(22)【出願日】2014年9月30日
(86)【国際出願番号】JP2014076221
(87)【国際公開番号】WO2016051543
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2016年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100130133
【弁理士】
【氏名又は名称】曽根 太樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】河合 理恵
(72)【発明者】
【氏名】瓶子 英樹
(72)【発明者】
【氏名】大野 堅一
【審査官】 稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−305237(JP,A)
【文献】 特開平06−179153(JP,A)
【文献】 特開平04−348842(JP,A)
【文献】 実開平07−024543(JP,U)
【文献】 特開平10−118890(JP,A)
【文献】 特開2004−355464(JP,A)
【文献】 特開平10−143233(JP,A)
【文献】 特開平05−066819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18 − 19/416
G05B 19/42 − 19/46
B23Q 15/00 − 15/28
B23Q 17/22 − 17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工プログラムに基づいて工具を交換してワークを加工する工作機械の制御装置であって、
加工プログラムにて加工を行う前に加工プログラムを解析し、前記工具の寸法測定に関連し、工具径の補正の有無の情報が工具ごとに含まれる測定関連情報を加工プログラムの内部から抽出する加工プログラム解析部と、
前記測定関連情報を記憶する記憶部と、
加工に関する情報を表示する表示部と、
加工プログラムの内部で工具径の補正が含まれていない工具は工具径の測定を実施しないように、更に、加工プログラムの内部で工具径の補正が含まれている工具は工具径の測定を実施するように、表示部に工具径の測定の有無を選択した画像を表示する表示制御部と、
前記測定関連情報と予め入力されている前記工具の基本情報と表示部において設定される工具径の測定の有無とに基づいて、前記工具の寸法を測定するための測定プログラムを作成する測定プログラム作成部と、
を備えることを特徴とした、工作機械の制御装置。
【請求項2】
前記測定関連情報は、工具番号、工具長の補正の有無、および加工時の主軸の回転速度のうち少なくとも一つを含む、請求項1に記載の工作機械の制御装置。
【請求項3】
前記工具の基本情報は、工具の種類、基準の工具長、基準の工具径、刃数および工具の端部の曲率半径のうち少なくとも一つを含む、請求項1に記載の工作機械の制御装置。
【請求項4】
前記記憶部は、測定プログラムを作成する規則を記憶しており、
前記測定プログラム作成部は、前記測定関連情報および前記工具の基本情報に対応する1つの規則を選定し、選定した規則に基づいて測定プログラムを作成する、請求項1に記載の工作機械の制御装置。
【請求項5】
前記測定プログラム作成部は、前記工具の基本情報に基づいて、前記工具における測定位置を算出し、前記測定位置に基づいて測定プログラムを作成する、請求項4に記載の工作機械の制御装置。
【請求項6】
寸法を測定した工具が、予め定められた工具か否かを判別する工具判定部を備え、
工具判定部は、測定した工具の寸法が予め定められた許容範囲を超えている場合には、測定した工具が予め定められた工具とは異なると判定する、請求項1に記載の工作機械の制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載の工作機械の制御装置と、
工具の寸法を測定する工具測定装置とを備えることを特徴とした、工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の制御装置および工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術では、ワークに対して工具を相対移動させて切削等の加工を行う工作機械が知られている。また、このような工作機械において工具の経路を所定の送り軸の座標等により指定し、ワークに対して工具を移動させながら加工を行う数値制御式の工作機械が知られている。工作機械は、制御装置の指令に従ってワークおよび工具のうち少なくとも一方が移動することにより、ワークに対する工具の相対位置を変更しながら自動的に加工を行うことができる。
【0003】
ワークに対する工具の相対位置を定めた工具経路を作成するときには、工具の形状が考慮される。たとえば、工具の移動する経路は工具中心を基準に設定される。工具中心は工具の中心軸上に設定されるが、実際に加工を行うのは工具の表面である。このために、工具経路は、工具径を考慮して作成される。ところが、工具の形状には個体差があり、工具の基準寸法に対して誤差が存在する。このために、工作機械には、工具長や工具径などの工具の寸法を測定する工具測定装置を備えるものがある。
【0004】
特開平8−229776号公報においては、静電容量式の変位測定器にて工具長を測定する測定装置を備える工作機械が開示されている。この工作機械では、実際の加工時の回転数で回転中の工具を変位測定器の測定電極に接近させる。工具と測定電極との間隙が所定の基準値になったときの送り軸の位置データを位置検出部で検出する。そして、演算部は、工具データ記憶部に予め記憶された工具データを取り込み、位置データと工具データとから工具の刃先位置変位を演算することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−229776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
工作機械では、工具の基準寸法に基づいて作成された工具経路を含む加工プログラムを用いることができる。また、工作機械は、工具測定装置にて工具の寸法を測定し、実際に測定した工具の寸法に基づいて工具経路を補正することができる。実際に測定した工具の寸法に基づいて工具経路を補正することにより、ワークの加工後の寸法の誤差を低減することができる。このために、ワークの加工を行う前には工具の寸法を実際に測定して工具経路を補正することが好ましい。
【0007】
ところで、従来の技術における工作機械の工具測定装置では、作業者が加工プログラムにて使用される工具を予め選定する。そして、作業者が1本の工具ごとに工具測定装置にて寸法の測定を行っていた。工具の寸法測定を行う場合には、作業者が手動で工具測定装置を駆動して測定する他に、1本の工具ごとに自動的に測定を行う測定プログラムを作成し、測定プログラムに基づいて工具の寸法測定を行っていた。
【0008】
ところが、作業者が手動で工具の寸法の測定を行う場合には、使用する工具を選定するときに誤りが生じたり、工具測定装置の操作を誤ったりすることがあった。また、時間がかかるという問題があった。予め測定プログラムを作成して工具の寸法測定を行う場合にも、測定プログラムに誤りが含まれていたり、全ての工具の測定プログラムを作成するために時間がかかったりするという問題がある。
【0009】
本発明は、自動的に工具に応じた測定方法にて工具の寸法の測定を行うことができる工作機械の制御装置および工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の工作機械の制御装置は、加工プログラムに基づいて工具を交換してワークを加工する工作機械の制御装置であって、加工プログラムにて加工を行う前に加工プログラムを解析し、工具の寸法測定に関連し、工具径の補正の有無の情報が工具ごとに含まれる測定関連情報を加工プログラムの内部から抽出する加工プログラム解析部と、測定関連情報を記憶する記憶部と、加工に関する情報を表示する表示部と、加工プログラムの内部で工具径の補正が含まれていない工具は工具径の測定を実施しないように、更に、加工プログラムの内部で工具径の補正が含まれている工具は工具径の測定を実施するように、表示部に工具径の測定の有無を選択した画像を表示する表示制御部と、測定関連情報と予め入力されている工具の基本情報と表示部において設定される工具径の測定の有無とに基づいて、工具の寸法を測定するための測定プログラムを作成する測定プログラム作成部とを備える。
【0011】
上記発明においては、測定関連情報は、工具番号、工具長の補正の有無、および加工時の主軸の回転速度のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0012】
上記発明においては、工具の基本情報は、工具の種類、基準の工具長、基準の工具径、刃数および工具の端部の曲率半径のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0013】
上記発明においては、記憶部は、測定プログラムを作成する規則を記憶しており、測定プログラム作成部は、測定関連情報および工具の基本情報に対応する1つの規則を選定し、選定した規則に基づいて測定プログラムを作成することができる。
【0014】
上記発明においては、測定プログラム作成部は、工具の基本情報に基づいて、工具における測定位置を算出し、測定位置に基づいて測定プログラムを作成することができる。
【0016】
上記発明においては、寸法を測定した工具が、予め定められた工具か否かを判別する工具判定部を備え、工具判定部は、測定した工具の寸法が予め定められた許容範囲を超えている場合には、測定した工具が予め定められた工具とは異なると判定することができる。
【0017】
本発明の工作機械は、上述の工作機械の制御装置と、工具の寸法を測定する工具測定装置とを備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、自動的に工具に応じた測定方法にて工具の寸法の測定を行うことができる工作機械の制御装置および工作機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】工作機械の平面図である。
図2】工作機械のブロック図である。
図3】工作機械の制御装置の演算処理部のブロック図である。
図4】工作機械の操作盤の概略正面図である。
図5】実施の形態におけるプログラム編集画面である。
図6】実施の形態の工具情報画面における第1の画面である。
図7】ラジアスエンドミルの先端部の正面図である。
図8】暖気時間に対する主軸の伸び量のグラフである。
図9】実施の形態の工具情報画面における第2の画面である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1から図9を参照して、実施の形態における工作機械の制御装置および工作機械について説明する。本実施の形態の工作機械は、加工プログラムに基づいて自動的に工具とワークとを相対的に移動させて加工を行う数値制御式である。
【0021】
図1は、本実施の形態の数値制御式の工作機械の概略平面図である。工作機械1は、横形マシニングセンタである。工作機械1は、工具とワークとを相対移動させる移動装置を備える。移動装置は、複数の移動軸の方向に被駆動物を移動させる。複数の移動軸は、直線送り軸として互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を含む。
【0022】
工作機械1は、基台となるベッド12と、ベッド12の上面に立設されたコラム16とを備える。ベッド12の上面には、Z軸ガイドレール18が固定されている。Z軸ガイドレール18の上面には、テーブルベースを介してテーブル14が配置されている。ワークは、パレット15を介してテーブル14に固定される。テーブル14は、Z軸ガイドレール18に沿ってZ軸方向に移動可能に形成されている。
【0023】
コラム16の前面には、サドル17が配置されている。コラム16には、X軸ガイドレール19が固定されている。サドル17は、X軸ガイドレール19に沿って移動可能に形成されている。
【0024】
サドル17の前面には、主軸ヘッド3が配置されている。サドル17には、Y軸ガイドレールが固定されている。主軸ヘッド3は、Y軸ガイドレールに沿って移動可能に形成されている。主軸ヘッド3は、主軸4を支持する。主軸4には、ワークを加工する工具5が固定される。主軸4には、工具5を回転させるためのモータが内蔵されている。このモータが駆動することにより、工具5は主軸4の軸線を回転軸にして回転する。
【0025】
本実施の形態の工作機械1は、工具5がX軸方向およびY軸方向に移動し、ワークがZ軸方向に移動する。なお、移動装置としては、この形態に限られず、任意の装置でワークに対して工具を相対移動させることができる。また、工作機械としては、直線送り軸の他に、所定の軸線の周りに回転する回転送り軸を有していても構わない。
【0026】
本実施の形態の工作機械1は、工具の寸法を測定する工具測定装置60を備える。工具測定装置60は、テーブル14の端部に配置されている。本実施の形態の工具測定装置60は、レーザ光60aを発振する。レーザ光60aに工具5を接近させると、工具5によりレーザ光60aが遮断される。レーザ光60aが遮断された機械座標に基づいて工具5の寸法を測定することができる。工具測定装置としては、この形態に限られず、工具の寸法の測定が可能な任意の装置を採用することができる。たとえば、プローブを工具に接触させることにより工具の寸法を測定する装置や、工具の形状を撮影して画像解析することにより工具の寸法を測定する装置等を例示することができる。
【0027】
工作機械1は、自動的に工具を交換する工具交換装置40を備える。工具交換装置40は、複数の工具5を保管する工具マガジン41と、工具マガジン41と主軸4との間で工具を操作する操作装置42とを含む。操作装置42は、ベッド12と工具マガジン41との境界の部分に配置されている。操作装置42は、Z軸方向に延びる回転軸線を中心として旋回可能な交換アーム43を有している。
【0028】
本実施の形態の工具マガジン41は、ガイドレールに沿って移動するチェーン組立て体44を含む。チェーン組立て体44は、工具5を挿入する工具ポットを保持するように形成されている。工具5を交換する時には、チェーン組立て体が移動することにより、所定の工具を交換アーム43にて保持できる位置まで移動する。また、主軸ヘッド3が移動することにより、主軸4に保持されている工具5を交換アーム43にて保持できる位置に配置する。そして、操作装置42は、工具マガジン41に保管されている工具を主軸4に取り付けることができる。または、操作装置42は、主軸4に取り付けられている工具を工具マガジン41に移動することができる。なお、工具交換装置としては、この形態に限られず、主軸に取り付ける工具を交換可能に形成されていれば構わない。
【0029】
図2に、本実施の形態における工作機械のブロック図を示す。工作機械1は、各送り軸の移動装置の制御を行う制御装置70を備える。制御装置70は、例えば、バスを介して互いに接続されたCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read Only Memory)等を備えている。
【0030】
制御装置70は、入力部71、読取解釈部72、補間演算部73、およびサーボモータ制御部74を含む。数値制御式の工作機械にて加工する場合には、加工プログラム76を予め準備する。加工プログラム76は、ワークの目標形状に基づいてCAM(Computer Aided Manufacturing)装置等にて作成することができる。ワークの目標形状は、例えば、CAD(Computer Aided Design)装置にて作成することができる。
【0031】
入力部71には、加工プログラム76が入力される。加工プログラム76には、ワークに対する工具の相対移動の情報が含まれている。加工プログラム76には、例えば、GコードやMコード等の指令コードにより工作機械1に対する指令が記載されている。なお、制御装置70の情報制御部20において作業者が新規に作成した加工プログラムが入力部71に入力されても構わない。
【0032】
読取解釈部72は、入力部71から加工プログラム76を読み込む。読取解釈部72は、移動指令を補間演算部73に送出する。補間演算部73は、補間周期毎の位置指令値を演算する。例えば、補間演算部73は、移動指令に基づいて設定された時間間隔ごとの移動量を算出する。補間演算部73は、位置指令値をサーボモータ制御部74に送出する。サーボモータ制御部74は、位置指令値に基づいてX軸、Y軸、およびZ軸等の各送り軸の移動量を算出し、各軸サーボモータ75を駆動する。
【0033】
本実施の形態の制御装置70は、ワークの加工に関連する加工情報を制御する情報制御部20と、作業者が加工情報等を入力する操作部30と、加工情報を表示する表示部28とを含む。加工情報としては、プログラムに関する情報、工具に関する情報、座標に関する情報、および検査に関する情報等を例示することができる。情報制御部20は、今回の加工を行うための加工プログラム76を入力部71から取得する。情報制御部20は、プログラムを新規に作成または編集したり、加工情報を取得して加工情報の操作を行ったりする演算処理部25を含む。例えば、演算処理部25は、入力部71から入力された加工プログラム76を編集して今回の加工の加工プログラムを作成し、入力部71に送出することができる。更に、演算処理部25は、入力された加工情報に基づいて所定の判断や所定の計算を行うことができる。
【0034】
操作部30は、キーボード等を有し、作業者の手動操作により加工情報を入力する手入力部29を含む。本実施の形態の操作部30は、表示部28を含む。本実施の形態では、表示部28は、画面を接触することにより所望の部分の選択が可能なタッチパネル方式が採用されている。作業者が表示部28の画面を操作することにより、加工情報を入力することができる。操作部30としては、この形態に限られず、作業者が加工情報を入力可能な任意の装置を採用することができる。
【0035】
制御装置70は、加工情報を記憶する記憶部26を含む。記憶部26は、前述のROMやRAMの他に、通信インターフェイスを介して接続されたメモリーカードやハードディスクなどの記憶装置であっても構わない。
【0036】
情報制御部20は、表示部28に表示する画像を制御する表示制御部22を含む。表示制御部22は、演算処理部25から情報を取得したり、演算処理部25に情報を提供したりする。また、表示制御部22は、加工情報に基づいて画像を作成し、この画像を表示部28に表示する機能を有する。
【0037】
情報制御部20は、工作機械の運転状態を検出する各種センサの信号を取得することができる。各種センサとしては、それぞれの送り軸の移動量を検出するセンサ、各軸サーボモータ75に取り付けられた回転速度を検出するセンサ、および、主軸の負荷を検出するセンサ等を例示することができる。
【0038】
工具交換装置40は、情報制御部20の指令に基づいて駆動する。また、工具測定装置60は、情報制御部20の指令に基づいて動作する。そして、工具測定装置60にて検出されたレーザ光に関する情報は、情報制御部20に送出される。演算処理部25は、工具測定装置60にて取得されたレーザ光60aの遮断状態と、各軸の機械座標とを取得し、遮断状態と機械座標とに基づいて工具の寸法を算出する。
【0039】
図3に、演算処理部25のブロック図を示す。演算処理部25は、加工プログラム76の解析を行う加工プログラム解析部25aを含む。演算処理部25は、工具の寸法を測定する測定プログラムを作成する測定プログラム作成部25bを含む。演算処理部25は、工具測定装置により測定した工具の寸法に基づいて各種の判定を行う工具判定部25cを含む。演算処理部25は、記憶部26に加工情報を記憶させたり、記憶部26から加工情報を読み込んだりする記憶制御部25dを含む。
【0040】
図4に、工作機械の制御装置に配置されている操作盤の正面図を示す。図1図2および図4を参照して、操作盤31は、制御装置70の操作部30および表示部28を含む。操作盤31は、キー入力部32を含む。キー入力部32には、複数のキースイッチが配置されている。キー入力部32のキースイッチを押すことにより、所定の数字や文字を入力することができる。
【0041】
また、操作盤31は、所定の操作の選択を行う操作スイッチ部34およびオーバライド値の設定を行うオーバライド設定部33を含む。オーバライド設定部33は、例えば、主軸の回転速度のオーバライド値や加工の送り速度のオーバライド値等を設定することができる。キー入力部32、操作スイッチ部34およびオーバライド設定部33等は、手入力部29として機能する。その他に操作盤31は、工作機械1の異常時に即時に工作機械1を停止させる非常停止ボタン36や工作機械1の駆動を開始するための実行ボタン35等のボタンを含む。
【0042】
図5に、加工プログラムを表示および編集するためのプログラム編集画面を示す。表示部28に表示されるプログラム編集画面55は、ワークの加工を行う加工プログラムや試運転のための試験プログラムを作成および表示するための画面である。プログラムの作成には、新規にプログラムを作成する場合と、既に作成されているプログラムを編集する場合とが含まれる。画面の左側には、表示する画面を切り替える選択部51a〜51dが配置されている。図5の例では、作業者がプログラム編集の選択部51aを押すことにより、プログラム編集画面55が表示されている。
【0043】
選択部51a〜51dを押すことにより、実際の加工の際に頻繁に使う画面を表示することができる。例えば、工具情報の選択部51bを押すことにより、工具情報画面を表示することができる。工具情報画面は、工具に関する情報を入力、表示および編集するための画面である。座標情報の選択部51cを押すことにより、座標情報画面を表示することができる。座標情報画面は、座標情報を入力、表示および編集するための画面である。プログラム実行情報の選択部51dを押すことにより、実行情報画面を表示することができる。実行情報画面は、加工プログラムを実行している期間中に工作機械の状態や加工状態を表示する画面である。それぞれの画面の下部には、ボタン領域54が配置されている。ボタン領域54には、予め定められた操作を行うためのボタンが配置されている。
【0044】
プログラム編集画面55は、加工プログラムの内容が表示されている表示領域55aと、加工プログラムの概要が表示されている表示領域55bとを含む。作業者がボタン54aを押すと、演算処理部25の加工プログラム解析部25aは、加工プログラムの解析を実施する。図5に示す例では加工プログラムの解析を実施した後の画面が示されている。表示領域55bには、正面フライスやドリルなどの使用する工具ごとに加工面や座標系の情報等が表示される。また、主プログラムに副プログラムが含まれる場合には、副プログラムの情報が示される。作業者は、表示領域55bを確認しながら表示領域55aに示される加工プログラムの確認を行うことができる。または、作業者は、加工プログラムの編集を容易に行うことができる。
【0045】
図6に、工具情報を表示および編集するための工具情報画面を示す。工具情報の選択部51bを選択することにより、工具情報を表示することができる。工具情報画面56には、使用する工具を表示する画面を選択する選択部56aと、記憶部に記憶されている工具の情報を表示および編集する画面を選択する選択部56bとを有する。ここでは、工具データの選択部56bが選択されている。それぞれの工具の情報は、表形式で表示されている。工具番号は、それぞれの工具を特定するための番号である。ポット番号の欄には、工具マガジン41のツールポケットの番号が示されている。そして、主軸工具は、主軸に取り付けられている工具を示している。次工具は、工具の待機位置に配置され、次に使用される予定の工具を示している。
【0046】
工具情報画面56では、それぞれの工具に対して複数の情報が表示可能に形成されている。スクロールバー56cを動かすことにより、それぞれの工具についての様々な情報を表示することができる。また、スクロールバー56dを動かすことにより、画面に表示されていない工具の情報を表示することができる。工具情報画面56では、工具マガジン41に保管されているすべての工具が表示されている。このために、今回の加工の加工プログラムに記載されていない工具も表示されている。なお、工具情報画面56では、記憶部26に記憶されている全ての工具を表示することもできる。
【0047】
本実施の形態の工作機械1では、加工プログラムにて加工を行う前に、加工プログラムに使用されている工具を自動的に選定することができる。そして、工作機械は、工具測定装置60にて、選定した工具の寸法を一括して測定することができる。
【0048】
図3および図5を参照して、工具の寸法測定を一括して自動的に行う場合には、始めにプログラム編集画面55において、プログラムの解析を行う。ボタン領域54の解析のボタン54aを押すと、加工プログラム解析部25aは、加工プログラムの解析を実施する。
【0049】
加工プログラム解析部25aは、工具の寸法測定に関連する測定関連情報を加工プログラムから抽出する。測定関連情報は、工具番号、工具長の補正の有無、工具径の補正の有無、および加工時の主軸の回転速度のうち少なくとも一つを含むことができる。本実施の形態においては、加工プログラム解析部25aは、測定関連情報として、工具番号、工具の寸法を補正する項目、およびそれぞれの工具について定められている加工時の主軸の回転速度を抽出する。本実施の形態の工具の寸法を補正する項目は、工具長および工具径である。
【0050】
本実施の形態では、工具の寸法測定を行う場合には、作業者の指定が無い限り工具長の測定を実施するように設定される。本実施の形態では、加工プログラム76の内部で工具径の補正が行われている場合には工具径の測定も実施するように設定される。一方で、加工プログラム76の内部で工具径の補正が行われていない場合には工具径の測定は実施しないように設定される。なお、工具長についても、加工プログラム76の内部で工具長の補正が行われていない場合には工具長の測定は実施しないように設定しても構わない。このように、加工プログラム解析部25aは、加工プログラム76の内部を解析して、測定関連情報のうち工具長の補正の有無と工具径の補正の有無を抽出することができる。
【0051】
加工プログラム解析部25aにおいて解析を行った後には、記憶制御部25dは、抽出した工具番号、工具の寸法を補正する項目、および主軸の回転速度を測定関連情報として記憶部26に記憶させる。
【0052】
図6を参照して、作業者は、加工プログラム76の解析が終了した後に、選択部51bを選択し、工具情報画面56を表示する。選択欄56e,56fは、自動的に寸法測定を実施する工具を選択する欄である。表示制御部22は、加工プログラム76から抽出した工具の寸法を補正する項目に基づいて、選択欄56e,56fにマーク57a,57bを表示する。マーク57aが表示されている工具は、加工プログラム76に記載されており、寸法の測定を行っていない工具である。マーク57bは、加工プログラム76に記載されており、過去に測定を行って記憶部26に測定結果が記憶されている工具に表示される。
【0053】
工具長の測定については、加工プログラム76に記載されている全ての工具が自動的に選定される。工具径の測定については、加工プログラム76の内部で工具径の補正が行われている工具が自動的に選定される。なお、工具情報画面56では、作業者は、所定の工具に対して、工具長などの測定する項目を追加したり削除したりすることができる。
【0054】
このように、加工プログラム解析部25aは、加工プログラムに記載されている工具を抽出する。表示制御部22は、加工プログラムに記載されている工具について工具長の測定を選択した画像を表示する。一方で、加工プログラム解析部25aは、加工プログラムに工具径の補正が含まれているか否かを判別する。工具径の補正が含まれている場合に、表示制御部22は、表示部28に工具径の測定を選択した画像を表示する。
【0055】
本実施の形態の制御装置70は、加工プログラムに使用されている工具および補正の項目を自動的に選定することができて、作業者が選定し忘れたり、測定が不必要の工具を選定したりすることを回避できる。また、短時間で容易に加工プログラム76に記載されている工具および補正の項目を選定することができる。
【0056】
次に、作業者は、ボタン領域54の一括測定のボタン54bを押す。表示部28には、工具の一括測定を実施する通知が表示される。この状態で、図4を参照して、操作盤31の実行ボタン35を押すことにより工具の寸法の一括測定が開始される。工作機械1は、選択された複数の工具の寸法測定を連続して行う。
【0057】
図2および図3を参照して、演算処理部25は、はじめに工具の寸法測定を行うための測定プログラムを自動的に作成する。測定プログラム作成部25bは、加工プログラム76から抽出した測定関連情報と、工具の基本情報とに基づいて測定プログラムを作成する。
【0058】
図6を参照して、工具に関連する情報には、作業者が予め制御装置70に入力し、記憶部26に記憶されている工具の基本情報が含まれる。工具の基本情報としては、工具の名称や工具の種類を例示することができる。また、工具の基本情報としては、刃数、基準の工具長である基準長、および基準の工具径である基準径を例示することができる。基準長には、基準寸法に加えて、使用可能か否かを判別する許容値が含まれる。本実施の形態では、正側の許容値と負側の許容値とが個別に設定されている。基準径は、スクロールバー56cを移動させて表示することができる。基準径についても、基準長と同様に、基準寸法および正側の許容値および負側の許容値が予め設定されている。
【0059】
さらに、ボールエンドミルは、先端部が曲面状になっている。ラジアスエンドミルは、先端部の角部が曲面状に形成されている。このような曲面状の部分を有する工具については、工具の基本情報に基準となる端部の曲率半径が含まれる。曲率半径についても、基準寸法が予め設定されている。これらの基準寸法および許容値等の工具の基本情報は、作業者が操作部30を操作することにより入力したり変更したりすることができる。
【0060】
本実施の形態の測定プログラム作成部25bは、それぞれの工具ごとに測定プログラムを作成する。記憶部26には、測定プログラムを作成する規則が予め記憶されている。測定プログラム作成部25bは、工具の基本情報と測定関連情報とに基づいて、工具の寸法を測定する1つの規則を選定する。そして、選定した規則に従って測定プログラムを作成する。例えば、工具長や工具径を測定する為の指令コードには、引数を設定する必要がある。測定プログラム作成部25bは、指令コードの引数を工具の基本情報および測定関連情報に基づいて設定する。
【0061】
指令コードの引数としては、測定関連情報に含まれる主軸の回転速度を例示することができる。また、指令コードの引数としては、工具径を測定する時に使用する工具の軸方向のシフト量を例示することができる。また、工具長を測定する時に使用する工具の径方向のシフト量を例示することができる。次に、これらの測定位置に関するシフト量について説明する。
【0062】
図7に、ラジアスエンドミルの先端の拡大正面図を示す。ここでは、工具としてラジアスエンドミル81を例示して説明する。本実施の形態の工具の寸法測定では、工具を回転させながら工具の一部分をレーザ光に接触させることにより、工具の寸法を測定する。ラジアスエンドミル81は、先端部の角部81aが曲面状に形成されている。すなわち、フラットエンドミルとは異なり、角部81aの断面形状が曲線状になる。このために、寸法の測定では曲面状の部分を避けて、ワークに接触する最も外側の位置を測定することが好ましい。
【0063】
たとえば、工具径の測定を行う場合には、曲面状の部分を避けた測定点82aがレーザ光に接触するように工具を移動することが好ましい。ラジアスエンドミル81の先端から軸方向にシフト量La離れた測定点82aにて測定を行うことが好ましい。そして、矢印101に示すように、工具測定装置60のレーザ光60aに測定点82aを接触させることにより、正確な測定を行うことができる。同様に、工具長の測定を行う場合には、曲面状の部分を避けた測定点82bがレーザ光60aに接触するように工具を移動することが好ましい。ラジアスエンドミル81の中心軸CLから径方向にシフト量Ra離れた測定点82bにて測定を行うことが好ましい。
【0064】
これらのシフト量La,Raは、工具の種類や大きさに依存して定まる。それぞれの工具の角部81aの曲率半径は、工具の基本情報に含まれている。本実施の形態の測定プログラム作成部25bは、工具の基本情報に基づいて、シフト量La,Raを自動的に算出する。そして、測定プログラム作成部25bは、シフト量La,Raを工具の寸法測定を行う指令コードの引数として設定する。制御装置70がこの指令コードに基づいて各軸サーボモータ75を駆動することにより、測定点82a,82bをレーザ光60aに接触させることができる。
【0065】
このような測定点のシフト量は、工具ごとに異なる。たとえば、工具がフラットエンドミルの場合には、径方向のシフト量Raは、基準径から予め定められた値を減算した値を設定することができる。軸方向のシフト量Laは、0mmに設定することができる。また、工具がボールエンドミルの場合には、径方向のシフト量Raは、0mmに設定することができる。軸方向のシフト量Laは先端の曲率半径に設定することができる。
【0066】
本実施の形態の測定プログラム作成部25bは、工具ごとに必要なシフト量を算出可能に形成されている。測定プログラム作成部25bは、工具の基本情報に基づいて、それぞれの工具の測定位置を算出する。算出した測定位置において、工具の寸法測定を行う。このために、正確な工具の寸法測定を行うことができる。また作業員のシフト量の設定の誤り等を回避することができる。
【0067】
本実施の形態の制御装置は、自動的に工具ごとに測定プログラムを作成する。このために、作業者は、それぞれの工具に対応する測定プログラムを作成する必要がなく、容易に工具の寸法測定を実施することができる。
【0068】
ところで、工具の寸法を測定する前には工作機械1の暖機運転を実施する。工作機械1は、運転を継続すると、軸受等の発熱により主軸4の温度が上昇する。主軸4の温度が上昇すると、主軸が熱膨張して工具中心の位置が変化する。例えばフラットエンドミルの先端の位置は、主軸の温度が上昇するとともに移動する。
【0069】
図8は、工作機械の暖機時間と主軸の軸方向の伸び量との関係を示すグラフである。主軸の伸び量は、工具の先端の位置の移動量に対応する。このグラフでは、3種類の主軸4の回転速度の伸び量が記載されている。主軸4の回転速度が大きくなるほど主軸の最高温度が高くなり、主軸の伸び量が大きくなることがわかる。しかしながら、いずれの回転速度においても、所定の時間の経過後には、主軸の伸び量が、ほぼ一定になることが分かる。このように、暖気時間を予め定められた時間以上で継続することにより、主軸の伸び量が一定になる。工作機械1が定まると、主軸の最大の伸び量は工具の種類や工具の大きさには依存せずに、主軸4の回転速度に依存する。
【0070】
制御装置70の演算処理部25は、加工プログラム76から工具の回転速度を抽出する。工具の回転速度は、主軸の回転速度に相当する。暖機運転では、実際の加工を行う回転速度にて駆動する。このために、主軸の伸び量を実際の加工時と同じにすることができて、工具の寸法の正確な測定を行うことができる。記憶部26には、主軸の回転速度に対する暖機運転の時間が予め記憶されている。そして、工作機械の制御装置70は、主軸の回転速度に応じて暖機運転の時間を設定する。
【0071】
制御装置70は、工具の寸法測定の前に設定された時間にて暖機運転を実施する。次に、測定プログラムに基づいて工具の寸法を測定する。なお、測定プログラムに暖機運転の指令が含まれていても構わない。このように、1本の工具の寸法測定を実施することができる。記憶制御部25dは、測定した工具の寸法を記憶部26に記憶させる。
【0072】
制御装置70は、1つの工具の測定が終了すると工具交換装置40を駆動して、工具を交換する。工具交換装置40は、主軸4に取り付けてあった工具を工具マガジン41に戻す。そして、工具交換装置40は、次の測定を行う工具を主軸4に取り付ける。この後に、次の工具の暖機運転および寸法測定を自動的に実施する。制御装置70は、マーク57a,57bが表示されている全ての工具の測定が終了するまでこの制御を繰り返す。
【0073】
なお、本実施の形態では、1本の工具ごとに、工具の回転速度に対応した時間長さにて暖機運転を実施しているが、この形態に限られず、前の工具と次の工具との測定時の主軸の回転速度に基づいて、暖機運転の時間を短くしたり暖機運転を省略したりしても構わない。
【0074】
図9に、工具の寸法測定を実施した後の工具情報画面を示す。図9に示す工具情報画面56では、スクロールバー56cを移動して測定結果として、補正長および補正半径が示されている。補正長は、工具長の測定結果を示している。補正半径は、工具径の測定結果を示している。実際の加工では、これらの補正長および補正半径に基づいて工作機械1が駆動される。たとえば、情報制御部20は、補正長および補正半径に基づいて工具経路を補正するように加工プログラムを編集する。
【0075】
表示制御部22は、記憶部26から測定結果を取得して工具情報画面56に測定結果を表示する。測定を行った工具には、補正長および補正半径の欄に測定値が表示されている。作業者は、測定値を確認することができる。なお、補正コーナーRは、ラジアスエンドミルの角部の曲率半径である。本実施の形態では、曲率半径を補正する場合には、曲率半径の補正値は、作業者が操作部30により入力している。
【0076】
図9に示す例では、寸法の測定を行っていない工具や補正半径等の項目については空欄になっているが、この形態に限られず、例えば基準長、基準径および基準となる曲率半径などが表示されていても構わない。
【0077】
本実施の形態の制御装置は、工具ごとに自動的に測定条件を切り替えながら、工具の寸法測定を行うことができる。自動的に工具に応じた測定方法にて寸法測定を行うことができる。また、複数の工具の寸法測定を連続して自動的に行うことができる。このために、作業員の誤操作を抑制することができる。更に、短時間で工具の寸法測定を行うことができる。また、寸法の測定を行う工具の測定位置を自動的に計算し、その測定位置にて測定するために、精度よく短時間で工具の寸法測定を行うことができる。
【0078】
更に、本実施の形態の工具の寸法の測定においては、測定関連情報から抽出した回転速度にて主軸を回転させながら工具の寸法を測定する。実際の加工における回転速度と同じ速度で回転させるために、工具の寸法を正確に測定することができる。この結果、加工精度が向上する。
【0079】
ところで、本実施の形態の工具の基本情報には、回転が禁止されている工具、使用が禁止されている工具、および工具の寸法測定が禁止されている工具が予め設定されている。回転が禁止されている工具としては、例えば、ワークの測定を行うためのプローブやヘールバイトを例示することができる。使用が禁止されている工具としては、工具の寸法が許容範囲を超えている工具、工具寿命に達した工具、または折損した工具等を例示することができる。寸法測定が禁止される工具としては、例えば、工具の先端部が大きくて、工具測定装置では測定できない工具を例示することができる。例えば、正面フライス等を例示することができる。
【0080】
このような工具の禁止事項は、スクロールバー56cを移動することにより表示させることができる。また、図2および図6を参酌して、演算処理部25は、これらの禁止事項が設定されている工具が選択欄56e,56fにて寸法測定を実施するように選択されている場合においても、寸法測定を行わない制御を行っている。この制御により、不必要な測定を行うことを回避できる。
【0081】
また、本実施の形態の演算処理部25は、基準長の基準寸法と許容値から概略工具長を設定する。第1の概略工具長は、基準寸法に正側の許容値を加算した長さである。第1の概略工具長は、長い方の概略工具長になる。第2の概略工具長は、基準寸法から負側の許容値を減算した長さである。第2の概略工具長は、短い方の概略工具長になる。そして、制御装置70の測定プログラム作成部25bは、第1の概略工具長を工具の測定の指令コードの引数に設定することができる。工作機械1は、第1の概略工具長に基づいて、レーザ光60aから工具が僅かに離れた位置まで高速にて主軸4およびテーブル14を相対移動させることができる。たとえば、第1の概略工具長に所定の余裕長さを含めた長さにて工具がレーザ光60aから離れている位置まで、高速に相対移動することができる。この制御により、テーブル14および主軸4の移動時間を短縮することができて、工具の測定時間の短縮を図ることができる。
【0082】
更に、本実施の形態の制御装置70は、工具の寸法の測定結果に基づいて、測定した工具が加工プログラムに使用されている工具か否かを判定することができる。図6を参照して、基準長や基準径には、基準寸法と許容値とが予め定められている。すなわち、工具長や工具径に対して許容範囲が定められている。
【0083】
図3を参照して、工具判定部25cは、工具の測定結果が工具の寸法の許容範囲内であるか否かを判別する。工具の寸法が許容範囲から外れている場合に、工具判定部25cは、測定した工具、すなわち工具マガジン41に配置されている工具が所望の工具ではなくて、別の工具であると判定する。この場合に、表示制御部22は、工具情報画面56において、誤った工具が工具マガジン41に配置されている画像を表示する。たとえば、図9を参照して、スクロールバー56cを移動させると警告を表示する欄があり、この欄に誤りの内容を示す警告文が表示される。
【0084】
使用する工具が所望の工具であるか否かを判定する別の制御としては、第1の概略工具長または第2の概略工具長に基づいて判定することができる。工具判定部25cは、工具測定装置60に工具を近づけている期間中に第1の概略工具長に基づいた位置よりも早い時期に信号が検出された場合には、測定している工具が異なっていると判定することができる。本実施の形態の工作機械1では、工具がレーザ光60aを遮断した位置が、第1の概略工具長に基づいた相対位置よりも離れている場合には、工具が異なっていると判定する。そして、工具の寸法測定を中断して、表示制御部22は、工具が異なっていることを工具情報画面56に表示することができる。
【0085】
または、工具判定部25cは、工具測定装置60に工具を近づけている期間中に、第2の概略工具長に基づいた位置に到達しても信号が検出されない場合には、工具が異なっていると判定することができる。本実施の形態の工作機械1では、工具の先端部とレーザ光60aとの距離が第2の概略工具長になっても、工具の先端部がレーザ光を遮断しない場合には、測定している工具が異なっていると判定することができる。そして、工具の寸法測定を中断して、工具が異なっていることを工具情報画面に表示する。
【0086】
また、工具径についても、工具長に基づく判定と同様に、第1の概略工具径および第2の概略工具径を設定し、第1の概略工具径および第2の概略工具径に基づいて使用する工具が所望の工具であるか否かを判定することができる。
【0087】
このように、本実施の形態の制御装置70は、異なる工具が工具マガジン41に配置されていることを自動的に検出することができる。特に、外形が類似している工具であっても所望の工具でないことを容易に検出することができる。
【0088】
上記の実施の形態は、適宜組み合わせることができる。上述のそれぞれの図において、同一または相等する部分には同一の符号を付している。なお、上記の実施の形態は例示であり発明を限定するものではない。また、実施の形態においては、請求の範囲に示される実施の形態の変更が含まれている。
【符号の説明】
【0089】
1 工作機械
5 工具
20 情報制御部
22 表示制御部
25 演算処理部
25a 加工プログラム解析部
25b 測定プログラム作成部
25c 工具判定部
26 記憶部
28 表示部
30 操作部
40 工具交換装置
41 工具マガジン
55 プログラム編集画面
56 工具情報画面
56e,56f 選択欄
60 工具測定装置
70 制御装置
76 加工プログラム
81 ラジアスエンドミル
82a,82b 測定点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9