(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373398
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】薬剤を送達するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/20 20060101AFI20180806BHJP
A61M 5/32 20060101ALI20180806BHJP
A61M 5/31 20060101ALI20180806BHJP
A61M 5/315 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
A61M5/20 572
A61M5/32 510R
A61M5/31 520
A61M5/315 500
【請求項の数】17
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-555512(P2016-555512)
(86)(22)【出願日】2015年3月3日
(65)【公表番号】特表2017-506975(P2017-506975A)
(43)【公表日】2017年3月16日
(86)【国際出願番号】EP2015054365
(87)【国際公開番号】WO2015132234
(87)【国際公開日】20150911
【審査請求日】2016年9月2日
(31)【優先権主張番号】61/948,716
(32)【優先日】2014年3月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】1450345-2
(32)【優先日】2014年3月25日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】513186729
【氏名又は名称】ケアベイ・ヨーロッパ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CAREBAY EUROPE LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベンデック,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンバティスタ,ルシオ
【審査官】
川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−521482(JP,A)
【文献】
特表2013−525061(JP,A)
【文献】
特表2012−511350(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0112163(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20
A61M 5/31
A61M 5/315
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達用装置であって、
近位端および遠位端を有する、細長いハウジングと、
前記ハウジング内に搭載され、内部に含まれる摺動可能ストッパを有し、液体薬剤を含むように構成された、容器と、
近位端、前記ストッパに接触している遠位端、くぼみ、および長手方向溝を有するプランジャロッドを含む、回転しないプランジャアセンブリとを含み、前記プランジャアセンブリは、準備位置から注射終了位置まで前記ハウジングに対して軸方向に動くように構成され、前記薬剤送達用装置はさらに、
座面で終了する長手方向リブを含む外面を有する、前記ハウジングに対して軸方向に摺動可能な回転しない保護シールドを含み、前記保護シールドは近位方向に延在するビームを有し、部分的に伸長した位置から後退した位置まで、および完全に伸長した位置まで動くように構成され、前記薬剤送達用装置はさらに、
開放された遠位端および近位端壁を有する、円筒チューブとして構成された回転子を含み、前記回転子は前記ハウジングの内部に軸方向に固定されており、前記保護シールドが前記完全に伸長した位置にある場合に動くことを防止するために、前記リブとの係合を通して回転されて不可逆的ロックを形成し、前記薬剤送達用装置はさらに、
外側の前記ハウジングに対して軸方向に固定された遠位端、および前記プランジャアセンブリに取付けられた近位端を有する、コイル状ばねを含み、前記コイル状ばねは、前記プランジャアセンブリが注射準備位置にある場合、蓄積エネルギを有する、伸長して部分的に非コイル状の緊張構成にあるようになっており、前記薬剤送達用装置はさらに、
第1の位置および第2の位置を有する、回転可能なラッチを含み、前記ラッチは前記保護シールドが前記後退した位置に動いたときに、前記保護シールドによって回転可能であり、前記第1の位置では、前記ラッチは前記プランジャアセンブリが軸方向に動くことを防止し、前記第2の位置では、前記ラッチは前記プランジャアセンブリから係合解除されて、前記プランジャロッドが前記ラッチ、前記回転子、および外側の前記ハウジングに対して軸方向に遠位方向に動くことを可能にし、前記プランジャロッドおよび前記ストッパを前記容器内で予め定められた軸方向距離だけ駆動するために前記蓄積エネルギが前記プランジャロッドに伝えられるようにし、それにより前記容器内の前記薬剤が送達される、薬剤送達用装置。
【請求項2】
前記ハウジングの前記近位端は、前記薬剤の送達中に動くスクロールするテープをユーザが目視観察できるようにする窓を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ばねは、非コイル状の緊張状態からコイル状の弛緩状態まで動くように構成されたコイル状バンドを含む可変力ばねである、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記可変力ばねは、積層構成または並列構成で配置された2つ以上のばねを含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ハウジングに軸方向に固定されたラッチキャリアをさらに含み、前記ラッチは前記ラッチキャリアに回転可能に位置付けられ、前記ラッチキャリアは、前記保護シールドが近位方向に動くにつれて前記保護シールド上の前記近位方向に延在するビームの通過を可能にする貫通穴を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記回転子は、前記リブの軸方向移動を受け入れるように構成された、内面上の長手方向チャネルを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記回転子の前記近位端壁は、前記ビームが通過して前記ラッチに係合することを可能にするための貫通穴を有する、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記回転子の前記近位端壁は、前記ラッチキャリア上の可撓性歯に係合するように構成された、周方向に配置されたラチェット歯を有し、前記可撓性歯との前記ラチェット歯の係合が第2の付勢力を作り出し、前記回転子に第1の位置から第2の位置まで回転するよう促すようになっている、請求項5に記載の装置。
【請求項9】
前記回転子は、前記リブの軸方向移動を受け入れるように構成された、内面上の長手方向チャネルを有し、前記チャネルは、前記リブが近位方向に動く場合に前記リブに係合するように構成されたまっすぐな側壁および傾斜側壁を有し、前記傾斜側壁との前記リブの前記座面の係合が第1の付勢力を付与し、前記第1の付勢力は、前記可撓性歯が1つのラチェット歯から隣接するラチェット歯へと部分的に割出しする第1の位置まで、前記回転子を前記ハウジングに対して回転させるようになっている、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記チャネルは、前記完全に伸長した位置にある場合の前記保護シールドの軸方向移動を防止するために、前記リブの前記座面に係合して不可逆的ロックを作り出すように構成された硬質止め具を有する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記ラッチは、前記ビームの近位端上の座面に係合するように構成されたカムを有する、請求項5に記載の装置。
【請求項12】
前記カムは、前記カムと係合された場合の前記ビームの近位方向の軸方向移動が前記ラッチを前記第1の位置から前記第2の位置まで回転させるように、カム角度を有して構成される、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記ラッチは、前記ラッチが前記第1の位置にある場合に前記プランジャロッド上の前記くぼみに係合して、前記ハウジングに対するプランジャロッドの軸方向移動を防止するように構成された、内向きに突出する突起を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記プランジャロッドは、前記ラッチが前記第2の位置にある場合に前記突起を受け入れるように構成された長手方向溝を有する、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記保護シールドは、前記プランジャアセンブリが前記準備位置にある場合に前記シールドの一部が前記ハウジングの前記遠位端から突出するように、前記保護シールドに遠位方向に動くよう促す、付勢要素に接続される、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記ハウジングは、前記薬剤の送達中に可聴音を生成するクリッカー機構をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記クリッカー機構は、外側の前記ハウジングに対して軸方向に固定されたクリッカートラック上の歯に係合する、前記プランジャアセンブリ上のクリッカーアームを含む、請求項16に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、装置内に搭載された容器から薬剤を患者に送達するための装置および方法に関する。装置は、ユーザが装置を注射部位に押し付けることのみを必要とすることによって、送達を自動的に行なうように適合される。送達に必要な駆動力は、回転するラッチによって発動される(triggered)コイル状引張ばねによって供給される。送達後の保護シールドの後退を防止するために、ロックアウト機構が設けられる。
【背景技術】
【0002】
背景
薬剤を自動的に送達するための装置、たとえば自動注射器は、患者がさまざまな薬物自体を自己投与するための便利で安全な装置として知られている。安全上の理由により、主として針刺しに対して防護するために、多くの薬剤送達用装置は、注射器の使用前後にユーザを保護するカバーおよび他の構成要素を含む。さまざまな薬剤送達用装置は、それらの総合的な特徴集合は異なるものの、それらはすべて、予め装填され、予め充填された容器の中身を自動的に、すなわち、人が容器の中身を送達部材、たとえば針またはノズルを通して患者に手動で押し込むことを必要とすることなく、送達する機構を有する。
【0003】
自動注射器は、たとえば、ビディンガー(Bitdinger)らへの米国特許第5,478,316号、カールソン(Karlsson)への米国特許第7,112,187号、およびホンマン(Hommann)らへの米国特許第7,125,395号、ギエルモ(Guillermo)への米国特許出願公開第2007/0021720号、ならびにオルソンによる国際公開WO2006/057604に記載されている。薬剤送達用装置における自動送達機構は通常、圧縮されたつる巻き圧縮ばねを含み、それは、装置の起動によって非圧縮状態になるとプランジャロッドを前方へ駆動する。設計によっては、そのようなばねはうまく機能する。十分に圧縮されたつる巻きばねは、プランジャと容器の内壁との間の静止摩擦に打ち勝つのに十分大きい力、いわゆる解放力(break loose force)を提供し、十分に伸長したばねは、十分な非圧縮状態ではないことも多いものの、注射ストロークを完了するのに十分大きい力を提供するが、容器破損の可能性を引き起こす。
【0004】
そのようなばねの設計における難問は、ストロークの終わりでの十分な力の必要性と、装置の他の構成要素に過負荷をかけ得る(ばねが十分に圧縮された)保管中の大き過ぎない力の必要性とのバランスを取ることである。そのような他の構成要素は、限られた強度を有するプラスチック、ガラスまたは同様の材料で作られる場合がある。
【0005】
このため、そのような薬剤送達用装置における駆動機構は、1)容器ストッパの「解放」力に打ち勝つのに十分な力を加えて薬剤の送達を開始する、2)注射ストロークを完了するのに十分な力を加える、3)受入れ可能な時間枠(通常、数秒)で目標1)および2)を満たす、ならびに、4)保管中に小さい力を加える、という同時の目標を満たすべきである。
【0006】
典型的なつる巻き圧縮ばねを使用するのではなく、いくつかの送達装置は、上述の目標を達成しようとして、定力ばね、さらには可変力ばねを使用する。たとえば、以前に発行された我々の米国特許第8,460,245号では、そのような可変力引張ばねが述べられている。
【0007】
定力ばねまたは可変ばねは圧縮つる巻きばねよりも良好に注射器装置の設計目標を満たすことができるが、注射プロセスを開始するように装置を発動させるための円滑で信頼できるやり方を提供する必要もある。注射プロセスの開始を視覚的に示し、注射の進行を示すことも、自動注射器などの薬剤送達装置の設計において重要である。同様に、注射の完了後、偶発的な針刺しを防止することによってユーザおよび他の人々を保護することが、安全上の理由で重要である。好ましくは、使用した針をカバーすることは、自動的でかつ非可逆的であるべきである。言い換えれば、設計は、ユーザが装置の構成要素、特に装置の遠位端つまり針端に位置する構成要素の手動操作を行なうことを必要とすべきではない。我々の発明は、注射を行なうための駆動力として可変力ばねを採用しつつ、これらの問題に対処する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
概要
この発明のある目的は、自動薬剤または薬物送達装置を提供することであり、それは送達中に、少なくとも2つの異なる力プロファイルの予め定められたシーケンスを容器ストッパに適用し、それは装置の最適な機能性を保証する。この設計は、先行技術の自動薬剤送達装置と比較して、薬剤送達中に容器および/または装置を破損する危険を低下させ、送達装置のプラスチック材料の塑性変形の問題を減少させる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
別の目的は、ユーザが患者の皮膚への針の手動挿入を制御しつつ、同時に針シールドを装置ハウジング内に押し込むことを可能にすることである。シリンジ針が皮膚を穿通すると、針シールドの後退が起こる。予め定められた深さの針穿通が達成されると、針シールド後退は完了し、注射器は自動的に発動される。これを「発動点」と呼ぶ。注射器の発動または始動(firing)は、針シールド上の近位方向に延在する1つ以上のビームが回転可能なラッチ上のカム表面に係合すると達成される。カム作用は、ラッチの円滑な回転を保証し、以前の注射器設計によって呈された唐突な発動を回避する。ビームの係合によって生じるラッチの回転は、プランジャ上のくぼみからロッキング突起を係合解除する。突起がプランジャ上のくぼみから長手方向溝内へと動くにつれて、プランジャは解放され、障害なくラッチを通って遠位方向に動く。非コイル状の緊張したプランジャばねは巻き戻り(rewind)、プランジャロッドを強制的にシリンジストッパに押し付け、それは薬剤送達を開始させる。
【0010】
プランジャばねは、注射器の可変力駆動機構の一部であり、好ましくは、薬剤送達中にのみ、少なくとも2つの異なる力プロファイルを有する予め定められたシーケンスを生成することができる可変力ばねである。ばねのバンド材料の巻付き、揺動、幅または厚さを変更すること、または、ばねを作製するために使用される材料の弾性率を変更することは、シーケンスの力プロファイルに影響を与え得る。異なる部分における加工材料を選択すること、または、異なる部分における基材上に他の材料を積層することなども、これを達成できる。可変力ばねの予め定められたシーケンスは最終力プロファイルを含み、それは、力が増加するプロファイルである。したがって、薬剤送達装置は、容器またはシリンジの薬剤をすべて完全に空にすることという利点を有するであろう。
【0011】
この発明の自動注射器は、注射プロセスが進行していること、およびそれが完了する時点についての可視情報およびフィードバックをユーザに確実にかつ明確に提供する視覚表示機構も含む。この視覚表示機構は、異なる指標を有して配置された可撓性バンドを含み、バンドはスクロール上に巻かれ、スクロールの反対側でプランジャに接続される。プランジャロッドがその非送達状態から解放されると、可撓性バンドは、動くプランジャアセンブリによって遠位方向に引張られ、可撓性バンド上の関連する印刷によってステータス情報をユーザに示す。
【0012】
この発明のさらに別の目的は、偶発的な針刺しの防止であり、それは、後退可能な針シールドと回転子との組合せを通して達成される。針シールドの外面上に配置された長手方向リブが、回転子の内部側壁上に配置された溝と協働する。針穿通中に針シールドが装置ハウジング内に押し込まれると、すなわち後退すると、リブと溝との間の相互作用によって回転子はねじられ、つまり若干回転されるであろう。注射後、ユーザは注射部位から装置を取外し、針シールドは、針シールドばねの力を受けて、シリンジ針をカバーするために十分に伸長するであろう。針シールドが十分に伸長した位置に達すると、回転子は再び同じ方向に若干回転して、チャネルの遠位端に位置する1つ以上の硬質止め具とリブの近位端に位置する1つ以上の支持面との整列を引き起こす。この整列は、リブ(および針シールド)が軸方向に動くことを防止し、このため、針シールドの後退および使用した針の露出を防止する。硬質止め具とリブの支持面との組合せは、針シールドの不可逆的ロックを形成する。
【0013】
上述の目的は、以下に説明される他の目的とともに、細長いハウジングと、摺動可能ストッパを有する、ハウジング内に搭載された薬剤の容器と、ストッパに接触している回転しないプランジャアセンブリとを含む、送達装置で達成される。プランジャロッドはくぼみおよび長手方向溝を有し、準備位置から注射終了位置までハウジングに対して軸方向に動くように構成される。支持面で終了する長手方向リブを含む外面を有する、ハウジングに対して軸方向に摺動可能な回転しない針シールドがあり、針シールドは近位方向に延在するビームを有し、部分的に伸長した位置から後退した位置まで、および十分に伸長した位置まで動くように構成される。
【0014】
装置は、開放された遠位端および近位端壁を有する、円筒チューブとして構成された回転子も含み、回転子はハウジングの内部に軸方向に固定されており、針シールドが十分に伸長した位置にある場合に動くことを防止するために、リブとの係合を通して回転されて不可逆的ロックを形成する。回転子はまた、リブの軸方向移動を受け入れるように構成された、内面上の長手方向チャネルを有し得る。近位端壁には、針シールドビームが通過してラッチに係合することを可能にするために、貫通穴が設けられる。回転子チャネルは好ましくは、リブが近位方向に動く場合にリブに係合するように構成されたまっすぐな側壁および傾斜側壁を有し、傾斜側壁とのリブの支持面の係合が第1の付勢力を付与し、第1の付勢力は、可撓性歯が1つのラチェット歯から隣接するラチェット歯へと部分的に指し示す(index)第1の位置まで、回転子をハウジングに対して回転させるようになっている。回転子の近位端壁は好ましくは、ラッチキャリア上の可撓性歯に係合するように構成された、周方向に配置された一組のラチェット歯を有し、可撓性歯とのラチェット歯の係合が第2の付勢力を作り出し、回転子に第1の位置から第2の位置まで回転するよう促すようになっている。部分指示は回転付勢力を作り出し、それは最終的には回転子に、硬質止め具をリブと整列させる第2の若干の回転を完了させて、針シールドをロックアウトする。
【0015】
駆動機構は、外側のハウジングに対して軸方向に固定された遠位端、およびプランジャアセンブリに取付けられた近位端を有する、コイル状ばねによって動力供給され、コイル状ばねは、プランジャアセンブリが注射準備(cocked)位置にある場合、蓄積エネルギを有する、伸長して部分的に非コイル状の緊張構成にあるようになっている。駆動機構を解放するために、すなわち装置を始動するために、第1の位置および第2の位置を有する、回転可能なラッチが使用され、第1の位置では、ラッチはプランジャアセンブリが軸方向に動くことを防止し、第2の位置では、ラッチはプランジャアセンブリから係合解除されて、プランジャがラッチ、回転子、および外側のハウジングに対して軸方向に遠位方向に動くことを可能にし、プランジャロッドおよびストッパを容器内で予め定められた軸方向距離だけ駆動するために蓄積エネルギがプランジャロッドに伝えられるようにし、それにより前記容器内の薬剤が送達される。ラッチは、針シールドビームの近位端上の座面に係合するように構成されたカムを有する。カムは、カムと係合された場合のビームの近位方向の軸方向移動が、ラッチの円滑でかつ唐突でない回転を引き起こして第1の位置から第2の位置まで回転させるように、カム角度を有して構成され得る。ラッチは好ましくは、プランジャロッドの軸方向移動を受け入れるための貫通穴を有し、また、ラッチが第1の位置にある場合にプランジャロッド上のくぼみに係合して、ハウジングに対するプランジャ
ロッドの軸方向移動を防止するように構成された、内向きに突出する突起を有する。プランジャロッドはまた、ラッチが第2の位置にある場合に突起を受け入れるように構成された長手方向溝を有していてもよく、このため、ラッチに対する、およびラッチを通るプランジャロッドの妨害されない軸方向移動を可能にする
【0016】
ユーザが送達の進行を見ることを可能にするために、ハウジングの近位端は、薬剤の送達中に動くスクロールするテープをユーザが目視観察できるようにする窓を含む。装置はまた、ハウジングに軸方向に固定されたラッチキャリアを含んでいてもよく、ラッチはラッチキャリアに回転可能に位置付けられ、ラッチキャリアは、針シールドが近位方向に動くにつれて針シールド上の近位方向に延在するビームの通過を可能にする貫通穴を有する。針シールドは好ましくは、プランジャアセンブリが準備位置にある場合にシールドの一部がハウジングの遠位端から突出するように、針シールドに遠位方向に動くよう促す、付勢要素に接続される。クリッカー機構が薬剤の送達中に可聴音を生成し、好ましくは、外側のハウジングに対して軸方向に固定されたクリッカートラック上の歯に係合する、プランジャアセンブリ上のクリッカーアームを含む。
【0017】
ここに説明される薬剤送達装置を使用して、この発明は、以下のステップを組合せて含む、注射を行なう方法を含み、前記以下のステップは、
a) 針シールドを注射部位に配置するステップを含み、針シールドは自動注射器のハウジングの遠位端から部分的に伸長し、前記以下のステップはさらに、
b) ハウジングを遠位方向に押して、針
シールドを完全に後退した位置までハウジング内へと後退させるステップを含み、針
シールドは、近位方向に突出するビームと、ハウジングに軸方向に固定された回転子上のチャネルに係合する、外面上の長手方向リブとを有し、前記以下のステップはさらに、
c) 針
シールドが完全に後退した位置にある場合にビームを回転可能なラッチと係合させ、ラッチを回転させてプランジャロッドをロック解除させるステップと、
d) プランジャロッドに取付けられた可変力ばねをコイル化してプランジャロッドを軸方向に遠位方向に動かし、そこでそれは薬剤の容器内の摺動可能ストッパに係合して、注射部位への注射により薬剤を送達するステップと、
e) 注射部位からハウジングを近位方向に動かす場合に、針シールドを完全に伸長したロック位置まで伸長するステップと、
f) 針シールドが伸長したロック位置にある場合に、回転子を回転させてリブを回転子上の硬質止め具と整列させ、ハウジング内への針シールドの後退を防止するステップとを含む。方法はまた、ハウジングに対して回転子を回転させ、回転子と回転可能に固定されたラッチキャリアとの間のラチェット係合を部分的に割出しするための、チャネルとのリブの係合を含んでいてもよく、針
シールドが完全に伸長した位置にある場合に回転子の第2のかつ最終の回転をもたらす付勢力を作り出す。
【0018】
この発明の別の局面によれば、シーケンスにおける最終力プロファイルは、力が増加するプロファイルである。可変力ばねはバンド材料のコイルばねであり、異なる力プロファイルは、ばねの材料および/または形状寸法および/または自然半径および/または弾性率を適切に調節することによって得られる。可変力ばねは、ハウジングに固定して配置されるラッチキャリアに取付けられた一端と、可変的に巻付けられ、プランジャの近位端上で揺動される第2の端とを有する。
【0019】
この発明のこれらのおよび他の局面、ならびにこの発明の利点は、以下の詳細な説明および添付図面から明らかになるであろう。
【0020】
図面の簡単な説明
この発明を、添付図面を参照して以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】完全に組立てられた状態での、自動注射器として示された、この発明に従った薬剤送達装置の一実施形態の斜視図である。
【
図2】部分的に分解された状態での、
図1の実施形態の断面図である。
【
図3】分解された状態での、
図1の実施形態の分解斜視図である。
【
図4】
図1の実施形態の針シールドの斜視図である。
【
図5】
図1の実施形態の針シールド、プランジャアセンブリ、ラッチキャリア、および回転子の斜視図である。
【
図6】プランジャロッド、ラッチキャリア、およびラッチの、遠位方向に見た拡大斜視図である。
【
図7】ラッチキャリアから分解されたラッチの、近位方向に見た拡大斜視図である。
【
図8】テープおよびばねが取付けられたプランジャアセンブリの近位部分の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
本願では、「遠位部分/端」という用語が使用される場合、これは、送達装置の使用時に患者の薬剤送達部位の最も近くに位置する送達装置の部分/端、またはその部材の部分/両端を指す。それに対応して、「近位部分/端」という用語が使用される場合、これは、送達装置の使用時に患者の薬剤送達部位から最も遠くに位置する送達装置の部分/端、またはその部材の部分/両端を指す。そのため、たとえば、ここに説明される再使用可能な自動注射訓練装置のキャップは訓練注射器の遠位端に位置し、連窓は近位端に位置する。ここに使用されるように、「容器」という用語は、注射可能な液体組成物にとって好適な、商業的に入手可能なあらゆるタイプの薬剤容器を包含し、予め充填されたシリンジ、カートリッジおよびアンプルを含む。
【0023】
一実施形態では、この発明は、
図1および
図3に最良に示されるような、ハウジングまたは外側本体4と取外し可能なキャップ2とを含む自動注射装置1に関する。キャップ2は針カバーリムーバ2aを含み、それは、キャップ2がハウジング4から引抜かれると、硬いカバー2bおよび関連付けられた可撓性針カバー2cを把持して、針10aが固定されたシリンジバレル10の遠位端への取付けから取外すように構成される。ハウジング4は、シリンジバレル10およびシリンジバレル内に含まれる摺動可能ストッパ3の目視観察を可能にする窓または切欠5を有する。薬剤送達プロセスが進行するにつれて、ユーザは、ストッパが軸方向に遠位方向に摺動するのを見ることができる。
【0024】
外側本体またはハウジング4は、近位端に位置するスクロール窓6を有し、ハウジング4は好ましくは、上側本体ハウジング4aおよび下側ハウジング本体4bから構成され、それらは各々、熱可塑性材料を含むことが好ましい。これら2つの本体ハウジングは、製造中に、ピン、隆起と溝、スナップ嵌合、のり、締結具、溶接、またはしっかりした接続を提供するための他の公知のプロセスによって取付けられ得る。
【0025】
コイル状ばね8は、プランジャアセンブリ9を遠位方向に動かして、シリンジバレル10内の摺動可能ストッパ3を動かし、針10aから薬剤10bを吐出するための駆動力を提供する。ばね8の一端、すなわち遠位端36は、コネクタ38を通してラッチキャリア15に取付けられる。ラッチキャリア15は、ラッチキャリア15とハウジング4との間に相対移動がないように、下側ハウジング4bに軸方向に固定される。これは、プランジャばね8の遠位端36のための固定または留め位置を提供する。ばね8の近位端に取付けられたスプール37がプランジャアセンブリ9の近位端9bに固定されるため、スプール37および取付けられたばね8は、それが弛緩状態へと巻き戻る、つまりコイル化するにつれて、ばねの遠位端36およびラッチキャリア15に対して動くであろう。製造中、装置を注射準備状態にするためにプランジャアセンブリ9が近位方向に動かされると、ばね8はスプール37から巻かれておらず、蓄積エネルギを蓄えた伸長状態となる。ばね8を形成するために使用されるバンド材料の非巻取または巻出しは、プランジャばね8において引張力または巻付力を作り出して、装置の製造および組立て中のプランジャアセンブリの近位方向設定移動に対抗する傾向がある。この巻付力は、スプール37の周りにばねを巻き戻す、すなわちコイル化するために、反対方向つまり遠位方向にプランジャアセンブリを引き戻す傾向がある。この巻付力は、プランジャロッド9aが薬剤送達中に遠位方向に動くこと、または、図示された自動注射器の実施形態の場合には注射を行なうことを可能にする駆動力である。
【0026】
ばね8は好ましくは可変力ばねであり、ワイヤのつる巻きから作られた従来のつる巻き圧縮ばねではない。ばね8は好ましくは、コイル状に形成された板ばねまたは帯ばねである。より好ましくは、ばね8は定力ばね(constant-force spring:CFS)ではない。CFSでは、力、つまり荷重は、材料幅、厚さ、およびコイル直径の関数である。荷重は、CFSでは材料幅に正比例し、材料厚さに正比例せず、式P=Ebt3 126,4R2(数式1)によって与えられる。式中、Pは荷重、Eは材料の弾性率、bは材料の幅、tは材料の厚さ、Rは自然半径である。弾性率がポンド/平方インチ(psi)という単位で与えられ、材料幅、厚さ、および自然半径がインチで与えられる場合、荷重はポンド(lb)で与えられる。もちろん、他の単位系を使用することができる。
【0027】
上述のように、ばね8は好ましくは、少なくとも2つの異なる力プロファイルの予め定められたシーケンスを作用させるバンド材料のコイルとして構成された可変力ばね(variable-force spring:VFS)である。力プロファイルには3つのタイプがある。第1の力プロファイルは、ばねが緩むにつれて力が減少するプロファイルである。第2の力プロファイルは、ばねが緩むにつれて力が増加するプロファイルである。第3のプロファイルは、ばねが緩む際に力が一定であるプロファイルである。多くの可能な例のうちの単なる一例として、コイルの半径を変更すること、増加または減少する力を加えるばねを産み出すことは、薬剤送達用装置を含む広範囲の製品において有利である。自然半径、すなわちコイルの半径を変更する代わりに、数式1における他のパラメータ、たとえばばねの物理的形状を修正することによって、少なくとも2つの異なる力プロファイルの予め定められたシーケンスを作用させるVFSを作ることが可能である。材料の厚さまたは幅または双方を増加させる。好ましくは、VFSは、ばねが緩むにつれて増加力を生成するばね、すなわちコイルを産み出すように構成される。VFSを作製するために使用される材料の幅を変更することは、所望の負荷プロファイルを生成する。
【0028】
数式1におけるパラメータは、VFSの適用のために必要に応じてさまざまなやり方で扱うことができる。たとえば、バンド材料の幅を変更することに加えて、またはその代わりに、材料の厚さおよび/または弾性率を変更することが可能である。VFSによって加えられる荷重は、幅を2倍にすることよりも厚さを2倍にすることによって、より増加する。材料の異なる部分における弾性率は、多くのやり方で、たとえば、そのような部分における材料を選択的に加工すること、そのような部分における基材上に他の材料を積層すること、などによって変更可能である。好ましいアプローチは、ばね材料のコイルの半径を変更することである。この発明で使用されるVFSは、特に送達ストロークの終わりでのストッパシリンジ壁界面のシリコン処理プロファイルに起因する問題を克服するのに有利である。ここに説明されるVFSは、生成されたばね力が、異なる製造業者およびプロセスによって生成された容器内の解放力プロファイルおよび滑走力プロファイルに、従来の圧縮ばねよりも良好に整合し、またはそれらを補償することを可能にする。
【0029】
好ましくは、プランジャばね8は、自動注射器の製造および組立て中に印加力で巻出可能であり、装置が注射準備状態に設定される際に生成された蓄えられた印加力を使用する自己巻き戻し特性を有する、ばね鋼、記憶を有するプラスチック、または他の材料から構成される。上述したように、好ましくは、ばねは定力プロファイルまたは可変力プロファイルを有する。好ましくは、この発明のばねは、力の約13N±10%の定力区分と約17.4N±10%を提供する可変力区分とを含む可変力プロファイルを有する。この発明で使用されるばねはねじり板ばねとしても公知であり、それは典型的には金属製である。なぜなら、金属を使用して生じる変形および特性変化が最小量であるためである。よく使用される金属はステンレス鋼または同等の金属であり、それは、それが特定の一定のねじり力で繰返し非コイル化しコイル化する際にその十分な保全性および特性を維持しつつ、非常に短距離の非コイル化運動において所望の力の正確な繰返し性を有するであろう。これらのタイプのばねは、ワイヤのつる巻きから作られた圧縮ばねに比べ、必要な空間がより小さく、このため、圧縮ばねなら嵌合しないであろう非常に短く狭い区域における装置への配置用に設計され得る。
【0030】
プランジャばね8に設計が類似しているのが、
図2〜3に示すようなシールドばね7である。このばね7は、保護または針シールド13を、シールドリング40が取付けられた遠位端13aがハウジング4の遠位端4cから突出する第1の待機位置で付勢するために使用される。ばね7の遠位端7aはハウジング4bに固定され、ばね7の近位端つまりコイルはシールド13の外面上の柱または突起13cに固定される。好ましい一実施形態では、シールドばね7は2つの定力ばねを含む。これらのばねは、別の種類の弾性手段、たとえばコイルばね、渦巻きばねと置き換えることもできる。ばねの巻付いた、つまりコイル状の端は外向きの環状棚部13c内で揺動され、ばねの他端はハウジング4に固定される。
【0031】
保護または針シールド13は、注射が完了する前および後の双方において、ユーザの視野から針をカバーまたは遮蔽し、偶発的な針刺しからのユーザ保護を提供する。シールド13は、ハウジング4に対して軸方向に摺動するように構成されるが、ハウジングに対して回転するように固定される。シールド13を待機または準備位置から起動または注射位置に動かすために、ユーザはシールドリング40を注射部位に押し付け、ハウジングを注射部位に向かって遠位方向に押し、または動かす。これにより、針シールド13は、フィンガーまたはビーム29がラッチ14に係合するまで(
図4および
図7参照)、ハウジング4に対して、およびハウジング4内へと近位方向に摺動し、つまり後退するようになる。ラッチ14とのビーム29のこの係合は、回転子60およびラッチキャリア15上にそれぞれ位置するフィンガー貫通穴65および30を通して起こる。シールド13が近位方向に摺動するにつれて、ばね7は、シールド13に取付けられた近位コイル端から巻出され、このため、装置1の組立て中にプランジャアセンブリ9が設定される際のプランジャばね8の巻出しに関して上述したばね力に性質が類似している引張力を作り出す。この引張力または巻付力はばね7にそれ自体を巻き戻るよう促し、シールド13を遠位方向に引張り、または促す。シールド13がいったん起動位置に達すると、シールドリング40の遠位端は、ハウジング4の遠位端4cとほぼ同一平面上となる。
【0032】
起動または発動位置に達する際、針シールドビーム29は支持面29aを有し、それは、傾斜カム表面31a上のラッチカム31と、ビーム29の近位端の支持面29aに対して傾斜カム表面が摺動し回転する支持面関係で接触する(
図4および
図7参照)。針シールド13はハウジング4に対して回転するように固定されるため、この支持的な接触は、
図7に示すように近位方向に見た場合、ラッチ14を反時計回りに回転させる。シールド13は回転できないため、フィンガーは、同様にハウジング4に回転するようにかつ軸方向に固定されたラッチキャリア15に対する、ラッチ14の回転運動を付与する。ラッチ14が
図6の矢印の方向に回転されるにつれて、
図6に示すように、ラッチ14上のばねアーム26がばね止め27を通してラッチキャリア15の近位内面のキャッチ28に係合し、ばねアーム26は、ラッチ14に反対方向に逆回転するよう促す反付勢力、つまり復帰力を提供する。ラッチ14は、プランジャロッド9aの外径または形状にほぼ整合する内面を有するプランジャ貫通穴14aを有する。この内面は、径方向に延在する1つ以上の突起またはキー24を有し、それらは内向きに延在し、かつ、キーノッチまたはくぼみ23、もしくは長手方向スロットまたは溝22のいずれかにおいてプランジャロッド9aに係合するように構成される。
図7に示すように2つのキー24が使用される場合、2つのノッチ23および2つのスロット22が、各々好ましくは互いに正反対に位置するであろう。
【0033】
装置の製造および組立て中にプランジャアセンブリ9が押し戻されて準備位置に設定されると、プランジャロッド9a上のノッチまたはくぼみ23は突起24に対して摺動する。最初に、突起24はプランジャロッド9a上の長手方向スロットまたは溝22内に位置付けられ、それにより、プランジャロッドは、ラッチキャリア15に位置付けられたラッチ14に対して軸方向に動くようになる。装置の初期設定中にプランジャアセンブリ9およびノッチ23が近位方向に動くにつれて、ノッチ23は最終的に突起24に隣接するようになるであろう。その時、ばねアーム26によって付与される逆回転力のため、これはラッチ突起24をノッチ23内へと回転させるであろう。このノッチまたはくぼみは、プランジャアセンブリ9が十分に注射準備された位置に達すると突起およびノッチ23のラッチングが起こるように、プランジャロッド9aに沿って長手方向に位置付けられる。この注射準備位置では、プランジャばね8は十分に張力をかけられ、プランジャアセンブリに軸方向に遠位方向に動くよう促しているが、ノッチ23との突起24の係合が、軸方向の動きをいずれの方向においても防止し、または妨げている。
図6の方向矢印で示すように、突起24をノッチ23から係合解除し、溝22に落として係合するためには、ラッチは(遠位方向に見た場合に)時計回りに回転しなければならない。上述したように、これは、フィンガー29がカム31に接触し、矢印で示す方向にラッチ14を回転させる際に起こる。ラッチ14の回転は、カム31が傾斜表面31aを有するために生じる。突起24がいったん溝22内へと回転すると、プランジャロッド9aがラッチ14、突起24、およびラッチキャリア15に対して遠位方向に動くことを防止するための止め具や他の障害物が、溝にはない。
【0034】
この発明の別の特徴は、
図2および
図5において最良に示されるような回転子60である。回転子60は、送達または注射シーケンスまたはプロセスの終わりで、針シールド13が、使用した針をカバーする十分に伸長した位置で不可逆的にロックされるように、回転子がハウジング4に対して動く(回転する)点で、安全機能を装置に提供する。回転子は、針シールドがハウジング内へと近位方向に後退することを防止する、以下に説明されるような硬質止め具64を提供する。そのため、ユーザおよび他の人々は、偶発的な針刺しに対して保護される。
図4を参照して、支持面51aで終了する1つ以上のリブ51が、針シールド13の外面上に位置する。好ましくは、これらのリブはシールドと一体となっており、シールド13を作製するために使用される成形プロセス中に形成される。注射プロセス中に針シールドがハウジング内に押し込まれるにつれて、支持面51aはまず側壁62aに係合し、次に傾斜側壁または傾斜路63に係合する(
図5参照)。針シールドはハウジングに対して回転可能に固定されるため、それは回転できず、したがって、支持面51aと傾斜路63との相互作用により、回転子60が矢印70が示す方向に若干回転するようになる。支持面51aがチャネル61内にあり、回転子が目下静止している状態で、針シールドリブ51は、シールド13が近位方向に動きながらハウジング4内にさらに押し込まれ、つまり後退するにつれて、側壁62bに沿って移動し続ける。最終的に、フィンガーまたはビーム29は、回転子60の近位端壁68の貫通穴65を通過するであろう。好ましくは、2つのフィンガー29と整列する2つの貫通穴65がある。フィンガー29がラッチ14に接触してそれを回転させると、ピストンロッド9aは遠位方向に動いて薬剤送達を完了するであろう。ユーザが注射部位から針シールド13を取外すと、針シールドは方向を反転させ、ハウジングから伸長し始めて遠位方向に動き、リブ51をチャネル61に沿って逆方向に運ぶ。支持面51aがチャネル61の遠位端のちょうど外側の点に達すると、針シールドは十分に伸長して、使用した針をカバーする。支持面51aはチャネル61のちょうど外側にあり、支持面51aがチャネル61の末端つまり遠位端に位置する硬質止め具64と整列するように、回転子60が第1の若干の回転と同じ方向に若干回転することを可能にする。シールドをハウジング内に後退させようとして、針シールドを近位方向に押したとしても、支持面51aは硬質止め具64に係合して、シールドの軸方向のつまり後退する動きを防止するであろう。本質的には、支持面51aと硬質止め具64との組合せは、後退に対する不可逆的ロックを形成する。
【0035】
回転子は本質的に、始めから終わりまでの薬剤送達プロセス中、2つの小さい回転を行なう。双方の回転を引き起こすには、付勢力が必要である。第1の回転は、支持面51aが傾斜側壁63に接触することによって付与される付勢力から生じる。回転子が強制的に回転されるにつれて、プランジャロッド9aの通過を可能にする貫通穴の周りに周方向に配置されたラチェット歯66が、ラッチキャリア15の遠位方向に突出した延長部上に位置する1つ以上の可撓性歯67との係合から抜け出す。回転子のこの第1の回転は、可撓性歯67を隣接するラチェット歯へと十分に指し示すのに十分なほど大きくはない。この十分でない指示、すなわち部分指示は、可撓性歯が回転子に、リブ51によって付与された第1の付勢力によって生じた第1の若干の回転の方向に回転し続けるよう促した結果、回転子上に第2の付勢力を付与する。リブ51がチャネル61内を近位方向に移動し、次に遠位方向に移動する際、この第2の付勢力は残る。針シールドがハウジングから十分に伸長可能となった際にリブ51がチャネル61から係合解除されると、第2の付勢力は、硬質止め具64が支持面51aと軸方向に整列するように、回転子に第2の若干の回転を完了させる。回転子のこの第2の回転は、針シールド13の不可逆的ロックアウトの形成を完了する。
【0036】
上述のように、薬剤送達装置がユーザによって始動または発動されると、プランジャばね8は、プランジャアセンブリ9を軸方向に遠位方向に動かすための駆動力を提供する。装置1を始動させるための発動ボタンまたはスイッチは必要ないため、装置には、装置を始動させるためにユーザの指を使用して押したり、はじいたり、ラッチ解除したり、または他の態様で起動する操作を必要とする機構がない。注射手順を発動させるのに必要なことは、シールド13を注射部位に押し付けることだけである。
【0037】
図3に示すような薬剤容器または予め充填されたシリンジ10は、キャリア11に位置付けられ、キャリア11によって軸方向に固定されて保持される。キャリア11は、それがシリンジ用の追加のハウジング構成要素とシリンジシールド用の軸方向整列構成とを提供するため、必要である。キャリアはまた、起動段階または非起動段階およびユーザによる反復動作の結果、容器が最小の回転およびまたは動きを有するであろう位置に、薬剤容器が保持されることを可能にする。シリンジカラー55が、シリンジフィンガーフランジ56とキャリア11との間に配置される(
図2参照)。このカラーは、シリンジとキャリアとの間に減衰力または緩衝効果を提供して、シリンジまたは送達装置の破損を回避する。カラーは好ましくは、ばね8によって生成される薬剤送達力を吸収できる熱可塑性エラストマー(TPE)または他の軟質プラスチックから作製される。
【0038】
我々の発明の薬剤送達装置は、注射が始めから終わりまで進むにつれて、ユーザへの可聴ノイズまたは合図も生成する。この可聴特徴は好ましくは、ハウジング4bに固定され、プランジャアセンブリ9に取付けられた可撓性のクリッカーアーム21によって係合される、クリッカートラック17の使用によって達成される。
図3および
図8に示すように、好ましい構成は、互いに正反対に位置する2つのクリッカーアーム21および2つのクリッカートラック17を使用する。一方のクリッカートラックは軸方向に固定され、ハウジング4bの内面の長手方向軸と平行であり、他方のクリッカートラックも同様に、ハウジング4aの内面に軸方向に固定される。一方のクリッカーアーム21は、
図8に示すようにプランジャアセンブリ9の上部に位置し、他方のクリッカーアーム(図示せず)は、プランジャアセンブリ9の近位端9bの下側または底に位置して、
図8に示すクリッカートラック17に係合する。注射プロセス中にプランジャアセンブリが遠位方向に動くにつれて、クリッカーアームはクリッカートラックに係合し、トラック17に沿って長手方向に位置付けられた歯に乗り上げて、ユーザに聞こえる「クリック」音を引き起こす。歯の分離および構成は、各クリックが好ましくは、予め充填された容器からの薬剤の単位用量の送達に整合するように選択される。クリッカーアーム21およびクリッカートラック17の設計は、組立て中の装置の設定を考慮に入れなければならず、そのため、設定中にプランジャアセンブリが反対の近位方向に動くことを可能にしなければならない。言い換えれば、クリッカーアームとクリッカートラックとの係合は、一方向性であってはならず、代わりに双方向性でなければならない。クリッカーの別の特徴は、ノイズがいったん止まると、ユーザは、注射が完了したこと、または組立て中に装置が十分に設定されたことを知るであろう、ということである。これに代えて、クリッカートラックは遠位端により大きいかまたは異なる形状の歯を1つまたは複数有してもよく、プランジャアセンブリが遠位方向に動き終わると、クリッカーアームがより大きい/異なる歯に係合し、より大きいかまたは異なるノイズを出して、注射プロセスの終わりを示すようになっていてもよい。
【0039】
ハウジング4の近位端に位置するスクロール窓6により、ユーザは、注射手順が進行するにつれてテープ33の動くスクロールが巻出されるのを見ることができる。窓は、ユーザにテープ33の動きが見えるように、任意の透き通った透明のまたは半透明の材料から構成され得る。好ましくは、窓は、テープ33の見た目を拡大するためのレンズとして構築または形成される。動くテープ33の観察は、注射の開始時点、その進行状況、および注射の終了時点についての目に見える合図をユーザに提供する。
図2に示すように、進行スクロールまたはテープ33は、スクロールスピンドル20上に搭載される。好ましくは、テープ33は、注射が進行するにつれてテープが
図8の矢印の方向に動いているという目に見える合図を窓6を通してユーザに提供する指標34を含む。
【0040】
スピンドル20は下側ハウジング4bに固定され、軸方向に動くことを防止されるが、静止した固定軸方向位置の周りを回転可能にされる。スピンドル20とは反対のテープの端はプランジャアセンブリ9に固定され、または取付けられ、送達または注射プロセスの起動中、
図8の矢印で示すように軸方向に遠位方向に動く。プランジャアセンブリ9が遠位方向に動くにつれて、それはテープ33を矢印の方向に引張り、このためスピンドル20からテープを巻出し、好ましくは指標34を露出させる。それは次にテープの動きをユーザに示し、注射プロセスが進行していることを合図する。プランジャアセンブリ9がその末端または最終遠位位置に移動した注射シーケンスの完了時、テープ33はスピンドル20からすでに巻出されたが、スピンドルに接続されたままである。
【0041】
好ましくは、テープ33は、装置の製造および組立て中にプランジャアセンブリ
9が設定される際にテープが開始位置までスピンドル上に巻付くように、ばね鋼または記憶を有するプラスチック複合物のように弾力があり記憶を有する材料から構成される。この巻付プロセスは、自動再巻付特徴を有する手持ち巻尺で使用されるものと類似している。これに代えて、スピンドルは、ばねなどの付勢アセンブリまたは構成要素に接続されて、テープが巻出されると付勢構成要素に応力または張力がかけられるようになってもよい。プランジャアセンブリの初期設定中、そのような付勢構成要素は、スピンドルに回転方向を反転させ、テープを開始位置まで巻付ける。
【0042】
上に説明された、および図面における実施形態は、この発明の単なる非限定的な例として見なされるべきであること、ならびに、それらは特許請求の範囲内で多くのやり方で変更されてもよいことが理解されるべきである。本願はしたがって、その一般的な原理を使用するこの発明のあらゆる変形、用途または適合を網羅するよう意図される。また、本願は、本開示からのそのような逸脱を、この発明が関する技術分野における公知のまたは慣例的な行為に該当するとして網羅するよう意図される。