特許第6373406号(P6373406)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6373406超音波流量計とその製造方法、流量測定法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373406
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】超音波流量計とその製造方法、流量測定法
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/66 20060101AFI20180806BHJP
   G01F 1/00 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   G01F1/66 A
   G01F1/66 101
   G01F1/00 G
【請求項の数】24
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-562815(P2016-562815)
(86)(22)【出願日】2014年4月17日
(65)【公表番号】特表2017-515104(P2017-515104A)
(43)【公表日】2017年6月8日
(86)【国際出願番号】NL2014050249
(87)【国際公開番号】WO2015160235
(87)【国際公開日】20151022
【審査請求日】2017年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】596167974
【氏名又は名称】ベルキン ビーブイ
【氏名又は名称原語表記】BERKIN B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100138140
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 努
(72)【発明者】
【氏名】レッタース,ヨースト コンラッド
(72)【発明者】
【氏名】スナイダース,ゲルト ヤン
(72)【発明者】
【氏名】フォルカ,アーノ ウィルレム フレデリック
【審査官】 細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−180228(JP,A)
【文献】 特開2012−027012(JP,A)
【文献】 実開昭59−161035(JP,U)
【文献】 特表2008−514351(JP,A)
【文献】 特開平06−117894(JP,A)
【文献】 実開昭63−113920(JP,U)
【文献】 特開昭62−038355(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0123666(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0172743(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/66
G01F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量を測定したい流体のための流管を備える超音波流量計であって、該超音波流量計が、超音波を発生するための発信素子を備え、該発信素子が、上記流管の外側ジャケット上に設けられ、かつ、該超音波流量計が、超音波のための受信素子を備え、該受信素子は、上記流管の外側ジャケット上に、該発信素子から軸方向に間隔を置いて設けられている超音波流量計において、発信素子が、流管内にストンレー(Stonely)波を発生するように設計され、発信素子から受信素子を含んで該受信素子まで延びている上記流管の一部の少なくとも一部分の上に、影響付与素子が設けられており、該影響付与素子は、超音波の一部の速度及び方向の少なくとも一方に影響を与えるよう機能することを特徴とする超音波流量計。
【請求項2】
影響付与素子は、超音波の一部を偏向、遅延、加速、吸収のうちの少なくとも一つを行うように設計されていることとする請求項1に記載の超音波流量計。
【請求項3】
影響付与素子は、発信素子と受信素子との間の全距離に亘って延びていることとする請求項1又は請求項2に記載の超音波流量計。
【請求項4】
発信素子と受信素子の少なくとも一方は、影響付与素子によって包囲されていることとする請求項1ないし請求項3のうちのいずれか一つに記載の超音波流量計。
【請求項5】
影響付与素子は、流管を円周方向で完全に包囲していることとする請求項1ないし請求項4のうちのいずれか一つに記載の超音波流量計。
【請求項6】
影響付与素子の厚さは、発信素子と受信素子の少なくとも一方の厚さより大きいこととする請求項1ないし請求項5のうちのいずれか一つに記載の超音波流量計。
【請求項7】
発信素子と受信素子の少なくとも一方は、圧電素子を備えていることとする請求項1ないし請求項6のうちのいずれか一つに記載の超音波流量計。
【請求項8】
圧電素子は、ピエゾフィルムを備えていることとする請求項7に記載の超音波流量計。
【請求項9】
受信素子は、PZT材料を備えていることとする請求項1ないし請求項8のうちのいずれか一つに記載の超音波流量計。
【請求項10】
発信素子と受信素子の少なくとも一方は、少なくとも流管の周面に位置して設けられていることとする請求項1ないし請求項9のうちのいずれか一つに記載の超音波流量計。
【請求項11】
超音波のための他の受信素子を備え、該受信素子は、流管の外側ジャケット上に設けられていることとする請求項1ないし請求項10のうちのいずれか一つに記載の超音波流量計。
【請求項12】
他の受信素子は、発信素子から軸方向に間隔をもって配置されており、該発信素子は、該受信素子と該他の受信素子との間に配設されていることとする請求項11に記載の超音波流量計。
【請求項13】
発信素子は、受信素子としても機能するよう設計されていること、該受信素子は、発信素子としても機能するよう設計されていることの少なくとも一つの設計によることとする請求項1ないし請求項12のうちのいずれか一つに記載の超音波流量計。
【請求項14】
流管は、直管であることとする請求項1ないし請求項13のうちのいずれか一つに記載の超音波流量計。
【請求項15】
影響付与素子は、材料層を備えていることとする請求項1ないし請求項14のうちのいずれか一つに記載の超音波流量計。
【請求項16】
材料層は、エポキシ又はエポキシ複合材料であることとする請求項15に記載の超音波流量計。
【請求項17】
流管、発信素子及び受信素子のアセンブリは、該発信素子及び該受信素子が、エポキシ又はエポキシ複合材料で包囲されるように、該エポキシ又は該エポキシ複合材料内に成形されていることとする請求項1ないし請求項16のうちのいずれか一つに記載の超音波流量計。
【請求項18】
請求項1ないし請求項17のうちの一つの超音波流量計を用いて、流れの速度を測定するための方法であって、下記のステップ、すなわち、
・発信素子によって超音波を発生するステップと、
・発生した該超音波を該受信素子によって登録するステップと、
・登録された該超音波に基づいて流れの速度を求めるステップと、
を備え、
発信素子で、流管内にストンレー(Stonely)波を発生させ、影響付与素子を用いて、該超音波の一部分の速度と方向の少なくとも一方に影響を与えるステップを有することを特徴とする測定方法。
【請求項19】
影響付与素子は、流管の外側ジャケットにおいて発生した超音波の少なくとも一部分を、偏向、遅延、加速、吸収のうちの少なくとも一つを行うことによって、該超音波の少なくとも一部分に影響を与えることとする請求項18に記載の測定方法。
【請求項20】
発信素子は、表面波を発生し、該表面波が該流管と流量を測定すべき流れとの間の界面を伝播することとする請求項18又は請求項19に記載の測定方法。
【請求項21】
下記のステップ、すなわち、
・少なくとも流管、発信素子及び受信素子を備える超音波流量計を用意して、発信素子で流管内にストンレー(Stonely)波を発生させるステップと、
・発信素子、受信素子の少なくとも一方又は流管を、超音波の一部分の速度と方向の少なくとも一方に影響を与える影響付与素子で包囲するステップと、
を含む、
請求項1ないし請求項17のうちのいずれか一つに記載の超音波流量計の製造方法。
【請求項22】
包囲ステップは、液状の影響付与素子で包囲するステップを含むこととする請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】
液状の影響付与素子を硬化させるステップを含む請求項22に記載の製造方法。
【請求項24】
影響付与素子は、エポキシ又はエポキシ複合材料であることとする請求項21ないし請求項23のいずれか一つに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量を測定したい流体のための流管を備える超音波流量計であって、該超音波流量計が、超音波を発生するための発信素子を備え、該発信素子は、上記流管の外側ジャケット上に設けられ、かつ、該超音波流量計が、超音波のための受信素子を備え、該受信素子が、上記流管の外側ジャケット上に設けられている超音波流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
このような超音波流量計は、例えば、US6,055,868によって既知であり、該超音波流量計は、リング状の発振素子2個が管外面上に設けられている流管を備えている。これら二つの発振素子は、交互に付勢されて、超音波を発生し、該超音波は、他方の付勢されていない発振素子により検出される。この超音波流量計では、超音波が上流に伝播するのに必要な時間及び新規の該超音波が下流に伝播するのに必要な時間、並びにそれらの間の時間差が、流管内の流れの速度を求めるのに用いられる。
【0003】
上記時間差は、とりわけ、流管の直径、超音波が伝播する角度、及び該流管内の流れの速度によって決まる。この種の超音波流量計では、流量計の大きさが低減されると、上記時間差が非常に小さくなり、ピコ秒(10−12秒)のオーダーになる。この時間差を、それでもなお、測定できるようにするためには、ギガヘルツ(GHz)のオーダーの非常に高い周波数が必要になる。これらの高い周波数は、流体によって減衰されることが多いということは不利な事実である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、比較的小さな流量でも使用できる改良された超音波流量計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するため、本発明は、発信素子から受信素子を含んで該受信素子まで延びている流管の一部の少なくとも一部分の上に、影響付与素子が設けられており、該影響付与素子は、最大でも超音波の一部の速度及び方向の少なくとも一方に影響を与えるよう機能することを特徴とする超音波流量計を提供する。上記影響付与素子は、上記発信素子から該受信素子を含んで該受信素子まで延びている流管の一部域に位置している外側ジャケットの一部分の上に設けられている。上記影響付与素子は、流管の全体をカバーしていてよいが、その一部分しかカバーしていなくてもよい。上記影響付与素子は、例えば、エポキシ又はその複合材料を含む材料層である。
【0006】
本発明によれば、受信素子の位置にて、向上した信号対雑音比が得られることが判明した。この驚くべき効果は、理論的な解説を試みずに、単に図示するだけで、以下のように説明できよう。
【0007】
リング形の発振素子2個(発信素子1個及び受信素子1個)を使用すると、超音波は、流管の長手方向の軸と平行に伝播する。その場合には、上記超音波は、上記流管と上記流体との間の面において、少なくとも部分的に伝播する。したがって、発信素子と受信素子との間で該超音波が移動する距離は、流管の直径とは無関係である。これは、超音波流量計が比較的小さな大きさとなるよう設計可能であることを意味する。さらに、発信素子と受信素子との間の距離を十分大きく設計することによって、流量を求めるための測定可能な時間を得ることが可能となる。
【0008】
しかしながら、欠点もあり、それは、リング形の発振素子2個の従来技術による使用の結果として、比較的かなり複雑な波パターンが発生するという事実である。本発明に係わる流管内では、固体(流管)と流体との界面において、主としてストンレー(Stonely)波、すなわち、表面波(いわゆるショルテ(Scholte)波)が発生する。上記ストンレー(Stonely)波は、流量を測定したい媒体の流れによって影響を受ける。しかしながら、発生する該超音波の一部分は、ストンレー(Stonely)波ではなくて、例えば、流管の固体物質内全体に伝播する波である。この波は、所望の信号に対して外乱となる。また、この波は、流体と相互作用する超音波よりも速く伝播するが、この波は、減衰されず、したがって、測定値に影響を与える。
【0009】
影響付与素子を使用すること、すなわち、最大でも超音波の一部分(すなわち、該超音波の少なくとも一部分であって、測定したい流体と相互作用しない波)を遅延させ、加速させ、偏向させ、減衰させ、もしくは、別様に影響を与えるよう設計されている該影響付与素子を使用することによって、特に上記超音波の少なくとも一部分であって、測定したい流体と相互作用しない波は、受信素子に到達できない、又は、測定に用いられる時間窓(time window)の外で該受信素子に到達する、という程度にまで影響を受けることになる。したがって、該流体と相互作用しないそのような波の少なくとも一部は、正確に言えば、該流体と相互作用する該超音波と比較して、より早い、あるいは、より遅い時点で該受信素子に到達する(あるいは全く到達しない)という程度で影響を受ける。したがって、結果として、信号対雑音比の向上、すなわち、流量計測値を正確にする。
【0010】
したがって、向上した超音波流量計が得られたことは明白であり、また、この超音波流量計は、比較的小さな大きさに設計可能であることも明白である。以上により、本発明の目的は、達成される。
【0011】
以上の説明から、影響付与素子は、この超音波流量計の使用中、超音波の一部分を、偏向、遅延、加速、吸収のうちの少なくとも一つを行うよう設計するのが好ましいと考えられる。
【0012】
この点で、該影響付与素子は、ストンレー(Stonely)波に影響を与えないよう構成されている、例えば、該影響付与素子は、該ストンレー(Stonely)波にとって、存在しないようになっていることが好ましい。一実施形態では、これは、該影響付与素子が、適切な音響インピーダンスを確保していることによって達成可能である。すなわち、その場合には、ストンレー(Stonely)波以外の波が、影響付与素子によって、少なくとも部分的に影響を受けるよう、音響インピーダンスを選択する。
【0013】
影響付与素子は、好ましくは、受動素子である、すなわち、該影響付与素子は、電気的又は機械的な構成要素無しに動作し得る。一実施形態では、影響付与素子は、例えば、外側ジャケット上に設けられた材料層(エポキシ層又はエポキシ複合材料など)である。
【0014】
一実施形態では、影響付与素子は、発信素子と受信素子との間に存在する流管の外側ジャケットの少なくとも一部分の上に設けられている。影響付与素子はこのように、発信素子と受信素子との間のどこかに設けられていてよく、したがって、流管の外側ジャケットの比較的小さな部分の上にのみ設けられていてよい。
【0015】
一実施形態では、発信素子と受信素子の少なくとも一方は、影響付与素子によって包囲されている。すなわち、発信素子と受信素子の少なくとも一方は、該所望の波を発生し、そして、受け取るように、また、反対に、望ましくない波の発生が防止されるように該影響付与素子によって包囲されている、と考えられる。これは、例えば、発信素子及び受信素子を備える流管が、エポキシ、又はその複合材料で成形されている実施形態の場合である。
【0016】
特殊な実施形態では、受信素子のみが、影響付与素子、例えば、エポキシからなる材料層で包囲されている。このようにして、望ましくない波は、それらが受信素子に到達しないよう(あるいはより早い又はより遅い時点で到達するよう)、該受信素子の位置において偏向されており、そして、遅延されていることが確保される。
【0017】
別の実施形態では、反対に、発信素子のみが、影響付与素子によって包囲されている。しかしながら、この実施形態では、それでも望ましくない信号が再び生じ、その結果、比較的複雑な信号が、しかもなお、測定される場合があることを想定させる。
【0018】
一実施形態では、さらに、影響付与素子が、流管を円周方向に完全に包囲することが考えられる。また、この場合は、流管の軸方向の小さな一部分に影響付与素子を設けるか、あるいは、比較的大きな一部分(該発信素子と受信素子の少なくとも一方を含む部分)に影響付与素子を設けることができる。影響付与素子は、円周方向に完全に及ぶ材料層であってよい。この後者の場合は、流管(可能なら発信素子と受信素子の少なくとも一方とともに)は、影響付与素子の材料で構成された、いわば、より大きな第2の管で包囲されている。
【0019】
影響付与素子の厚さは、超音波の一部分における偏向影響を与え得る。(ステンレス)鋼の流管及びエポキシ材料層の場合は、該流管の半径方向で測定された影響付与素子の厚さと該流管の肉厚との比が、5またはそれ以上であると、良好な結果が得られることが分かっている。他の材料については、異なる比が必要となるかもしれない。一実施形態では、影響付与素子の厚さは、発信素子と受信素子の少なくとも一方の厚さより大きく、この場合は、影響付与素子の厚さと流管の肉厚との間の比は、原則として、任意の比が可能である。
【0020】
比較的簡単な実施形態(これはまた製作が比較的容易でもある)では、受信素子は、圧電素子を備えている。上記圧電素子は、比較的薄いピエゾフィルムを備えていてよい。
【0021】
非常に好適な実施形態では、受信素子は、ポリ弗化ビニリデン又はポリ二弗化ビニリデン(PVDF)材料を備えている。PVDFは、非常に強い圧電効果を有しており、また、PVDFは、材料を振動させた場合に、電圧を発生させるのに特に好適である。
【0022】
さらに、PZT素子(発信素子と受信素子の少なくとも一方として機能することができるセラミック結晶)を使用することが考えられる。
【0023】
流管は、金属流管、特にステンレス鋼製の金属流管であってよい。別法として、ハステロイは、適切な材料となり得る。用途によっては、非金属が使用できる。この関連では、テフロン(登録商標)、PEEKばかりでなく、ガラス又はセラミック材料も考えられる。
【0024】
一実施形態では、発信素子と受信素子の少なくとも一方は、流管の周りに少なくとも実質的に全体的に設けられている。このようにして、実質的に回転対称の信号が得られ、また、流量が全体的に一様でなくても、実質的に流量の平均値が求められる。
【0025】
発信素子は、流管の外側ジャケットと音響的に接触していることが好ましく、例えば、流管の外側ジャケットと直接的に接続されているか、あるいは、該流管の外側ジャケット上に音響的に導通性の(好ましくは薄い)層を介して設けられていることが好ましい。
【0026】
信号のさらにより正確な測定値を得るためには、超音波流量計は、超音波のための別の受信素子を備え、該別の受信素子は、流管の外側ジャケット上に設けられていることが考えられる。
【0027】
一実施形態では、上記別の受信素子は、発信素子が受信素子と該別の受信素子との間に位置するように、発信素子から軸方向に間隔を置いて配設されている。発信素子は、その場合には、例えば、受信素子と別の受信素子との間の中央位置に配設されており、したがって、上流に伝播する超音波及び下流に伝播する超音波が、該受信素子及び該別の受信素子によって測定されることになる。
【0028】
さらに超音波流量計は、超音波のための別の発信素子を備えることができ、該別の発信素子は、流管の外側ジャケット上に設けられる。上記別の発信素子は、該発信素子から間隔を置いて配置してよい。その配置位置は、発信素子と別の発信素子との間に該受信素子が配設されているような位置とすることができる。かくして、上流及び下流の測定が実施できる。また、別の発信素子と受信素子との間に、発信素子が配設されているように、該別の発信素子を配設して、異なる距離で測定を行うことも考えられる。他の位置も、もちろん考えられる。
【0029】
一実施形態では、発信素子(又は別の発信素子)は、流管内にストンレー(Stonely)波、特にショルテ(Scholte)波を発生するよう設計されている。
【0030】
一実施形態は、含まれている構成要素の数は比較的少ないが、それでもなお比較的高い精密さで機能する実施形態であり、この実施形態では、発信素子を受信素子としても機能するよう設計することが考えられる。また、それと同様に、(可能的には追加的に)受信素子を発信素子として機能するよう設計することも考えられる。
【0031】
一実施形態では、流管は、該流管内に実質的に一様な流量をもたらすため、真っ直ぐな管となっている。
【0032】
適切な影響付与素子は、超音波の一部分に影響を与える材料層とすることができる。一実施形態では、超音波を偏向させるための材料層は、エポキシ又はエポキシ複合材料を含む材料層で構成されている。
【0033】
流管、発信素子と受信素子の少なくとも一方を、例えば、エポキシなどの材料層内に成形すれば、もしくは、流管、発信素子及び受信素子のアセンブリを該材料層内に成形すれば、簡単な手段を用いて、影響付与素子を超音波流量計に材料層の形態で設けることができる。
【0034】
本発明の一態様によれば、本発明に係わる超音波流量計を用いて流れの速度を測定するための、次のステップを含む測定方法が得られる。すなわち、
・発信素子によって超音波を発生するステップと、
・発生した該超音波を該受信素子によって登録するステップと、
・登録された該超音波に基づいて流れの速度を求めるステップと、
を含む測定方法が得られる。
【0035】
本発明によれば、この測定方法の少なくとも一方は、影響付与素子を用いて、超音波の一部分の速度と方向に影響を与えるステップを備えている。すなわち、上記影響を与えるステップは、該超音波の一部分を偏向、遅延、加速、吸収の少なくとも一つを行う処理を含んでいる。したがって、既に説明したように、超音波の一部分(測定すべき流れの速度の測定対象ではない部分)は、受信素子に到達できない、あるいは、測定に用いられる時間窓外で該受信素子に到達するという程度で影響を受ける、と考えられる。したがって、向上した信号対雑音比が、該受信素子において得られる。
【0036】
一実施形態では、発信素子は、表面波(ストンレー(Stonely)波)を発生し、該表面波は、流管と流量を測定したい流れとの間の界面を伝播する。
【0037】
超音波の測定対象ではない該超音波の一部分は、単に該流管を通って伝播するのに過ぎない波と考えられる。よって、一実施形態では、この測定方法は、流管の外側ジャケットにおいて発生した超音波の少なくとも一部分を偏向させるステップを備えている。
【0038】
本発明は、さらに、超音波流量計、特に上述した本発明に係わる超音波流量計を製造する方法に関し、該製造方法は、少なくとも流管、発信素子及び受信素子を備える超音波流量計を用意するステップと、その後で、該発信素子、該受信素子の少なくとも一方又は該流管を、最大で超音波の一部分の速度と方向の少なくとも一方に影響を与える影響付与素子で包囲するステップと、を備えている。好ましくは、影響付与素子は、本発明に係わる超音波流量計を参照して既に説明したように構成されている。
【0039】
したがって、本発明に係わる超音波流量計は、簡単な製造方法で構成される。
【0040】
この製造方法は、特に、流管、発信素子及び受信素子のアセンブリを、影響付与素子を構成する材料層内に成形するステップを備えていてよい。その場合には、この製造方法は、流管、発信素子及び受信素子の一つを、液状の該影響付与素子によって包囲するステップを備えていてよい。
【0041】
このステップに続いて、液状の該影響付与素子を硬化させれば、固体材料層が得られる。
【0042】
液体材料内に成形と浸漬の少なくとも一方を行い、次いで硬化させる既述のステップは、該影響付与素子がエポキシ又はエポキシ複合材料であれば、簡単な方法で実現することができる。
【0043】
以下、添付の図面に示したいくつかの可能な実施形態の説明により、本発明をさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1図1は、本発明に係わる超音波流量計の第1の実施形態の斜視図である。
図2図2は、本発明に係わる超音波流量計の第2の実施形態の概略側面図である。
図3図3は、本発明に係わる超音波流量計の第3の実施形態の概略側面図である。
図4図4は、本発明に係わる超音波流量計の第4の実施形態の概略側面図である。
図5図5は、本発明に係わる超音波流量計の第5の実施形態の概略側面図である。
図6図6は、本発明に係わる超音波流量計の第6の実施形態の概略側面図である。
図7a図7aは、従来技術に係わる超音波流量計によって得られる信号の、時間の関数としての振幅を示すグラフである。
図7b図7b は、本発明に係わる超音波流量計によって得られる信号の、時間の関数としての振幅を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、本発明に係わる超音波流量計1の斜視図である。超音波流量計1は、流量を測定したい媒体のための流管2を備えている。該流管2は、外側ジャケット3を有している。該流管2には、入口A及び出口Bが設けられている。該流管2は、好ましくは、長手方向Lに延びている細長い真っ直ぐな管である。
【0046】
流管2の外側ジャケット3上には、第1の発振素子11が設けられており、該第1の発振素子11は、図示の実施形態では、リング状であり、かつ、流管2の外周の周囲全体に設けられている。第1の発振素子11は、音響導通層21を介して、流管2の外側ジャケット3と音響的に接触している。第1の発振素子11から上記長手方向Lに間隔を置いた位置には、第2の発振素子12が設けられており、これは、第一の発振素子11の場合と同様に、音響導通層22を介して、流管2の外側ジャケット3と接触している。
【0047】
第1の発振素子11と第2の発振素子12の少なくとも一方は、圧電素子として構成してよい。圧電素子は、その場合には、ピエゾフィルムを備えていてよい。受信素子は、PZT素子であるか、PVDF材料を備えているか、あるいは、セラミックの結晶であることも考えられる。
【0048】
第1の発振素子11は、発信素子であり、かつ、第2の発振素子12は、受信素子であることが考えられ、すなわち、受信素子は、発信素子の下流に配設されていることが考えられる。別法として、反対に、発信素子が受信素子の下流に配設されていることも、もちろん考えられる。
【0049】
流管2の周りに設けられた、発信素子として機能する、リング形の第1の発振素子11の図示の構成では、流管2内にいわゆるストンレー(Stonely)波が発生する、と考えられる。固体材料(流管2の内側ジャケット)と流量を測定したい流体との界面には、表面波が発生する。上記ストンレー(Stonely)波は、流量を測定したい媒体の流れによって影響を受ける。しかしながら、発生する超音波の一部は、ストンレー(Stonely)波ではなくて、流管2の固体材料内、例えば、流管2の外側ジャケット3に近い部分において全体的に伝播する。この波は、流量を測定したい流れについてのいかなる情報も含んでおらず、測定される信号に対して実際に外乱となる。
【0050】
この外乱を防ぐため、本発明に係わる超音波流量計1には、図1に示すように、影響付与素子が、発信素子11と受信素子12との間に、リング形の材料層13の形態で設けられている。リング形の材料層13は、流管2の外側ジャケット3と音響的に接触している。リング形の材料層13は、外側ジャケット3内に伝播する発生した超音波に影響を与えて、この超音波が受信素子12に到達不能、あるいは、測定用に用いられる時間窓(time window)の後まで受信素子12に到達しないようにする。したがって、結果として、信号対雑音比の向上が実現可能となり、流量表現の正確さが向上する。
【0051】
影響付与素子は、超音波の上記一部分を偏向、遅延、加速、吸収のうちの少なくとも一つを行うように設計することができる。図示の実施形態では、リング形の材料層13は、エポキシ層であり、これは、超音波の一部分を吸収するか、あるいは、少なくともそれに影響を与えて(その方向を変えて)、受信素子12に到達しないようにする、もしくは、より早く、又は、ストンレー(Stonely)波より遥か後まで到達しないようにすると考えられる。
【0052】
図2ないし図4は、さらなる可能な他の実施形態を示し、これらの図では、図1の場合と同様の部品は、同じ符号で示してある。
【0053】
図2では、発信素子11及び受信素子12が、流管の全周には設けられておらず、外側ジャケット3の一部しかカバーしていない。一方、影響付与素子13は、外側ジャケット3の全周に設けられている。
【0054】
しかしながら、図3は、影響付与素子13が外側ジャケット3の全周に設けられている必要は無く、発信素子11と受信素子12との間を結ぶ直線の経路範囲内に位置するように設けられていればよいことを示している。
【0055】
図4は、比較的容易に製造することができる好適な一実施形態を示すもので、この実施形態では、リング形発信素子11及びリング形受信素子12を用いている。これら発信素子及び受信素子は、流管2の外側ジャケット3と音響的に接触している。影響付与素子13は、流管2、発信素子11及び受信素子12のアセンブリを完全に囲むように全周にわたり設けられている。特殊な一実施形態では、アセンブリをこの目的に叶った材料層内にモールド成形することで、これが可能となっており、該材料層は、超音波の一部に影響を与えて、この波が、当該時間窓外で受信素子に到達するように設計されている。適切な材料としては、例えば、エポキシ、又はその複合材料が挙げられる。流管2に適切な材料としては、例えば、(ステンレス)鋼管などの金属材料が挙げられる。他の材料としては、既に述べたように、ハステロイ、又はテフロン(登録商標)、PEEK、ガラス又はセラミック材料などの非金属も考えられる。
【0056】
図5は、好適な別の実施形態を示す。図5は、リング形発信素子11、及びその上流及び下流にそれぞれ配設されている2つの受信素子12a,12bを備える超音波流量計1を示す。発信素子11及び受信素子12a,12bは、流管の外側ジャケット3と音響的に接触している。影響付与素子13は、エポキシ又はその複合材料で構成されており、図4を参照して上述したように、管2及び発信素子11及び受信素子12a,12bのアセンブリを囲んでいる。かかる実施形態を用いれば、正確な測定が実現できる。
【0057】
図6は、別の実施形態を示すもので、この実施形態では、2つの間隔を置いたリング形発信素子11a,11b及び、それらの間に配設されている2つの間隔を置いた受信素子12a,12bを有する超音波流量計1を備えている。影響付与素子13は、流管2及び発信素子11a,11b、及び受信素子12a,12bのアセンブリを囲んでいる。この種の実施形態では、上流及び下流での独立した測定が可能であり、したがって、異なる測定値の組合せを作ることができる。また、発信素子と受信素子とを前以て交換し、二つの受信素子をそれぞれ上流及び下流の最も遠い位置に配置することも考えられる。このような交換配置は、また、発信素子と受信素子との切換えが使用中にできるよう、例えば、制御装置を用いて制御方式で行うこともできる。結果として、異なるやり方で測定を行うことができるため、精密さが向上することになる。
【0058】
測定は、2つのパラメータを得るため行う。第1のパラメータは、上流側の測定値と下流側の測定値との間の時間差であり、第2のパラメータは、超音波の伝播速度である。さらに注目すべきことは、ここで測定されるのは、液体内の音の速度ではないことである。測定する伝播速度は、流体の速度に関わる。
【0059】
上流側の測定値と下流側の測定値は、さらに相互に関連させることができ、その結果から、時間差が求まり、それに基づいて、流量の測定値がさらに求まる。波面(wave fronts)間のこのような相関関係は、一般的な信号処理の分野における当業者には、公知のことである。
【0060】
図7aは、発信素子及び受信素子を備える超音波流量計であって、流管に影響付与素子が設けられていない超音波流量計によって得られた信号を示す。図7aは、信号の振幅(A、縦軸)を時間(t、横軸)の関数として示すグラフである。グラフから明らかなことは、測定された信号は、複合波の信号で構成されており、したがって、それから時間差を求めるのは、非常に難しい、ということである。
【0061】
図7bは、図7aに示した信号を得るのに使用した流管に、この場合、本発明に係わる影響付与素子を設けたもので得られた信号を示す。この場合、発信素子及び受信素子を設けた流管が、比較的厚いエポキシ層内に成形されている。図は、同じ設定を用いても、本発明に係わる超音波流量計で、より大きな信号の振幅が得られるため、向上した信号が得られることを明確に示している。これについては、発信素子及び受信素子が、影響付与素子の使用により、所望の振動を強制的に発信及び受信させられ、その結果、所望の信号に対するそれらの感度が高まり、したがって、より高い振幅が測定できるためである、という説明がつけられる。
【0062】
当業者は、既述した本発明が、好適な実施形態を参照して説明された、と考えるであろう。しかしながら、本発明は、これらの実施形態に限定されない。
【0063】
したがって、例えば、追加の発信素子及び受信素子の少なくとも一方を設けることが考えられる。すなわち、長手方向に間隔を置いた発信素子2個と、それらの間に配設された受信素子1個とを含む実施形態を用いることが考えられる。さらに、長手方向に間隔を置いた受信素子2個と、それらの間に配設された発信素子1個とを含む実施形態を用いることが考えられる。追加の発信素子及び受信素子の少なくとも一方の使用も、もちろん考えられ、その場合には、例えば、材料層で構成された(追加の)影響付与素子を、それぞれの発信素子とそれに関連した受信素子との間に、必要に応じて設けてよい。
【0064】
したがって、本発明の技術的範囲内で、各種の変形例が考えられる。必要な保護の範囲は、従属請求項によって決定されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b