(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記側部、頂部及び底部断熱片が、それぞれ、前記断熱インサートの厚さよりも大きいか、又は、前記断熱インサートの厚さに等しい厚さを有する、請求項1に記載のPVT成長装置。
前記断熱インサートが、20mm〜50mmの厚さ及び前記単結晶SiCシードの最大寸法に対して90%〜120%の最大寸法を有する、請求項15に記載のPVT成長装置。
さらに、前記成長るつぼ、断熱材及びヒーターが配置された成長チャンバーを含み、前記成長チャンバーが、前記成長るつぼの頂部に対して離れて配置された頂部を含み、前記成長チャンバーの頂部の少なくとも内側に面する表面が黒色である、請求項15に記載のPVT成長装置。
前記工程(b)が、前記単結晶SiCシード上の前記成長SiC単結晶の成長界面でフラットな等温線を形成する前記成長るつぼの底部及び頂部を通過する純粋に軸方向の熱流束を含む、請求項19に記載の方法。
【背景技術】
【0003】
SiC単結晶は、SiCウェーハがSiC又はGaNのエピタキシャル層の成長用の基板として機能する様々な半導体、電子及び光電子デバイスでの使用が見出されている。そして、前記エピタキシャル層は、電源切替デバイス、RF/マイクロ波デバイス及びLED等のデバイスに製造される。従来のSi系デバイスに比べて、SiC系及びGaN系デバイスは、非常に高い温度、電力レベル、周波数で作動することができ、すべてが効率の向上に結び付く。
【0004】
SiC系及びGaN系デバイスの広範な用途は、全体的なデバイスコストの主要な要因である高コストSiC基板によって妨げられる。現在、商業的に入手可能な最大の4H−SiC及び6H−SiC基板は、直径が100mm及び150mmであり、200mmSiC基板の開発が公表されている。デバイス技術における、例えば直径200mm、250mm又は300mmの大型SiC基板の実装は、SiC系及びGaN系デバイスのコストを実質的に削減することができる。
【0005】
前記SiC基板内の結晶欠陥は、特にN型4H−SiC基板上に形成されたSiC系電源切替デバイスにおいて、デバイス性能に害を及ぼす。貫通転位が電荷漏れ及びデバイス劣化を引き起こし、一方で、底面転位及び積層欠陥が端末デバイスの故障を引き起こすことが知られている。前記SiC基板の応力及び歪みは、デバイス加工において負の要因である。
【0006】
例えば直径100mm及び150mmの工業的サイズのSiC単結晶は、物理的気相輸送(PVT)技術によって成長させる。従来のPVT成長装置の断面を
図1に模式的に示す。SiC原料2及び単結晶SiCシード3が間隔を空けて充填されたグラファイト成長るつぼ1は、成長チャンバー20内に配置される。るつぼ1の内側を昇華成長温度、例えば2000℃〜2400℃に加熱する加熱手段4は、チャンバー20の外側の周囲に設けることができ、チャンバー20は、水冷することができ、かつ、溶融シリカから形成することができる。この例では、加熱手段4は、外側RF加熱コイルとすることができる。しかしながら、チャンバー20内の抵抗ヒーターの形態の加熱手段が想定される。この説明のために、加熱手段4はRF加熱コイルとして説明する。しかしながら、これは限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0007】
るつぼ1は、チャンバー20の内部で、断熱材5によって取り囲まれる。断熱材5には、比較的小さな直径を有する頂部窓5aが設けられる。この窓5aは、成長るつぼ1の頂部又は蓋部22に取り付けられたSiCシード3の裏側からの放熱のために設けられる。また、窓5aは、光高温計を用いて、チャンバー20の頂部又は蓋部22において封止されたビューイングポート30を介して、るつぼ頂部の温度を測定するために使用することができる。
【0008】
SiCシード3上にSiC単結晶6を成長させるための準備として、チャンバー20ひいては成長るつぼ1は、真空ポンプによって排気され、入口36を通って供給される適切なプロセスガス、例えばアルゴン、窒素、ホウ素が所望の圧力まで充填される。ガス入口36を通ってチャンバー20ひいては成長るつぼ1内に導入されるプロセスガスの流れを制御すること、及び、チャンバー20の出口38に接続された真空ポンプの動作を制御することにより、チャンバー20ひいては成長るつぼ1内のガス圧力を、単結晶SiCシード3上におけるSiC単結晶6の成長に適した圧力に調整することができる。一例では、この圧力は5〜300Torrとすることができる。窓5bは、チャンバー20の底部24における封止されたビューイングポート32を介した光高温計を用いたるつぼ1の温度測定のために、成長るつぼ1の底部に隣接した断熱材に設けることができる。
【0009】
使用時、るつぼ1は、加熱手段4によって、SiC原料2を蒸発させ、チャンバー20ひいては成長るつぼ1内のプロセスガスの適切な圧力下で、るつぼ材料をSiC
2、Si
2C及びSiの蒸気種7で充填するのに充分な2000℃〜2400℃に加熱される。成長るつぼ1は多孔質グラファイトで形成されるので、チャンバー20内に導入されたプロセスガスは、成長るつぼ1の内側にほぼ同時に現れる。同様に、チャンバー20に適用された真空状態は、成長るつぼ1の内側にほぼ同時に現れる。
【0010】
SiC原料2の温度がSiCシード3の温度よりも高くなるように、加熱手段4をるつぼに対して適切に配置することによって、軸方向の温度勾配がるつぼ1内に設定される。一例では、この温度勾配は、30℃〜150℃とすることができる。しかしながら、これは限定的な意味で解釈されるべきではない。この温度勾配によって駆動されて、矢印7で模式的に示すように、蒸気種7がSiCシード3の方へ移動し、SiCシード3上で濃縮し、SiCシード3上のSiC単結晶6の成長を引き起こす。
【0011】
PVT成長装置における熱輸送のパターンを、
図1に矢印8及び9で模式的に示す。るつぼ1によって加熱手段4から吸収された熱は、水平熱流束8によって、前記るつぼの内側に輸送される。熱は、るつぼ1の頂部及び頂部窓5aを通って、垂直熱流束9の形で、るつぼ1を逃れる。このような熱輸送パターンの結果、曲線状の等温線10が、前記るつぼ1及び前記成長SiC単結晶6内に現れる。
【0012】
前記成長プロセスの2つの特徴は、独立したものではないが、PVT成長SiC結晶の品質にとって極めて重要である:(i)SiCシード3上におけるSiC単結晶6の成長界面の形状、及び、(ii)前記成長SiC単結晶6における径方向の温度勾配の大きさ。前記成長界面は前記等温線形状に従うことが知られている。大きく湾曲した成長界面は、積層欠陥、異質のポリタイプ及び他の欠陥をもたらす。前記成長SiC単結晶6における急な径方向の温度勾配の存在は、応力、歪み、及び、底面転位のような関連する欠陥を引き起こす。結晶品質にとって最も好ましいのは、フラットな成長界面、特に大径SiC結晶成長の場合だと認識されている。
【0013】
US6800136では、SiC昇華成長における害のある径方向の勾配を減少させることが可能なPVT成長装置及び方法が開示されている。前記装置は、前記るつぼの外側の下方及び上方に配置された2つのフラットなヒーターを利用する。この配置の欠点は、(i)RF加熱の場合におけるフラットなRFコイルの前記るつぼへの乏しい結合、及び、(ii)抵抗加熱の場合における前記成長結晶中の凹んだ径方向の温度勾配が凹んだ成長界面をもたらすことを含む。US6800136は、参照によって、本明細書に組み込まれる。
【0014】
US8741413では、蒸気を運ぶSiCの流束が前記成長結晶の中央部に限定されるSiC昇華成長装置及び方法が開示されている。この配置を用いたSiCブール成長は、凸に出すぎる前記成長界面に悩まされる。US8741413は、参照によって、本明細書に組み込まれる。
【0015】
US9228274では、加熱装置が頂部ヒーター及び底部ヒーターの2つの抵抗ヒーターの間に配置された成長るつぼを含む、他のSiC昇華成長装置及び方法が開示されている。前記ヒーターは、るつぼと同軸に配置される。頂部のリング状ヒーターは前記るつぼの上に配置され、一方で、底部のカップ状ヒーターは前記るつぼの下方及び周囲に配置される。この配置は、以下の欠点を有する。成長時に、前記SiC源が主に前記るつぼ壁に位置する高温領域から蒸発し、よって、蒸気を主に前記成長SiC結晶の周囲に供給する。これは、特に、ブール直径が大きい時に、凹んだ成長界面をもたらす。US9228274は、参照によって、本明細書に組み込まれる。
【0016】
大径SiC単結晶を成長させるため、大径SiCシードウェーハが必要となる。大径SiCシードは、一般的に「拡径」と呼ばれるプロセスで製造することができる。US2012/0285370及びUS8313720では、成長ガイドを用いたブール径の拡大を組み合わせたSiC昇華成長が開示される。成長中、ブール形状及び拡径速度は、前記成長ガイド形状によって決定される。US2012/0285370及びUS8313720は、参照によって、本明細書に組み込まれる。
【0017】
あるいは、US6805745に開示されるように、大きなサイズのシードは、より小さなサイズのタイル状のシード結晶の相互成長によって製造され得る。US6805745は、参照によって、本明細書に組み込まれる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付の図面を参照して、様々な限定されない実施例を説明する。同様の符号は、同様又は機能的に等しい要素に対応する。
【0023】
大径SiC単結晶の成長のための大径PVT成長装置の一例の断面図を
図2に模式的に示す。
図2のPVT成長装置は、グラファイト成長るつぼ1、断熱材12(円筒側部断熱材12a、頂部断熱材12b及び底部断熱材12cを含む)、並びに、成長るつぼ1の底部26と底部断熱材12cとの間に配置された単一のフラットな抵抗ヒーター40の形態の加熱手段を含む。一実施例では、断熱材12は、グラファイトフェルト又はフォームのように軽い繊維状グラファイトで作ることができる。一実施例では、チャンバー20は必要に応じて水冷することができる。この実施例では、抵抗ヒーター40はチャンバー20の内側で成長るつぼ1の底部26と断熱材12の底部との間に配置されたフラット抵抗ヒーターの形態であるから、チャンバー20は、単結晶SiCシード3上に成長するSiC単結晶6の成長中に、抵抗ヒーター40によって生成される熱に耐え得る任意の適した及び/又は望ましい材料で形成することができる。一実施例では、チャンバー20は、溶融シリカ又は適した金属若しくは金属合金、例えばステンレス鋼で形成することができる。しかしながら、チャンバー20は任意の適した及び/又は望ましい材料で形成することができると想定されるため、これは限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0024】
一実施例では、抵抗ヒーター40は緻密なグラファイトで作ることができる。前記グラファイトは、同一成形又は押出成形することができる。抵抗ヒーター40は、
図2に示すように、フラットディスクとして形作られ、成長るつぼ1の下に配置することができる。
【0025】
図3(a)〜(d)を参照して、抵抗ヒーター40の電気的構成は、3相“デルタ”(
図3(a))、3相“スター”(
図3(b))又は単相(
図3(c)及び(d))を含むことができる。
図3(a)〜(d)に示す抵抗ヒーター40のパターンは、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0026】
成長の準備において、SiC原料2及び単結晶SiCシード3が間隔を空けて充填された成長るつぼ1は、成長チャンバー20内に配置することができる。
図2に示すように、抵抗ヒーター40は、るつぼ底部26の下に配置することができる。成長るつぼ1は、チャンバー20内に配置することができ、チャンバー20は、必要に応じて水冷し、必要に応じて溶融シリカ、金属又は金属合金から作ることができる。しかしながら、これは限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0027】
断熱材12はるつぼ1を取り囲み、るつぼ1とチャンバー20との間に配置することができる。
図1のPVT成長装置とは対照的に、
図1の断熱材5における頂部窓5aは、
図2では、るつぼ1の頂部の外側の少なくとも一部を超えて広がる断熱材12bの開口部14に配置される断熱インサート12dに置き換えることができる。それから、成長るつぼ1の頂部又は蓋部の上方の断熱材は、頂部断熱材12b及び断熱インサート12dを含む。断熱インサート12dの厚さ及び形状は、以下に述べる。
【0028】
小径窓16及び18は、それぞれ、底部断熱片12c及びヒーター40内に設けることができる。これらの窓は、光高温計を用いた、るつぼ1の前記底部26において封止されたビューイングポート34を介した温度測定に使用する。
【0029】
使用時、るつぼ1は、SiC原料2を蒸発させ、チャンバー20内ひいては成長るつぼ1内の適したガス圧存在下で、C及びSi含有蒸気種7で前記るつぼ1を満たすために、抵抗ヒーター40によって、SiC昇華温度、例えば2000℃〜2400℃に加熱され得る。抵抗ヒーター40によって成長るつぼ1内に形成された軸方向の温度勾配によって駆動されて、これらの蒸気種7は、単結晶SiCシード3方へ移動し、単結晶SiCシード3上で濃縮し、単結晶SiCシード3上のSiC単結晶6の成長を引き起こす。
【0030】
図2に示すPVT成長装置における熱輸送パターンは、
図1に示すPVT成長装置の一例とは異なる。
図2に示すPVT成長装置における熱輸送は、
図2に矢印8及び9で模式的に示されるように、垂直である。成長るつぼ1の前記底部26の下に配置された抵抗ヒーター40からの熱は、矢印8で示される前記垂直熱流束によって、るつぼ1の内側へ輸送される。熱は、矢印9で示される垂直熱流束の形で、成長るつぼ1の頂部又は蓋部22から逃げて、断熱インサート12dを超えて拡散する。このような純粋な垂直熱流束の結果、フラットな等温線10が成長るつぼ1の内側及び前記成長SiC単結晶6内に現れる。
【0031】
断熱インサート12dは、繊維状グラファイト断熱ボードで作ることができる。断熱インサート12dの厚さtの値は、SiC成長実験から決定することができる。しかしながら、t(mm)のおおよその値は、下記(1)式を用いて計算することができる。
【0033】
(1)式において、λは断熱インサート12dの熱伝導率(W/mK)であり、ΔTは断熱インサート12dにおける温度差(K)であり、Aは断熱インサート12dの面積(m
2)であり、Qは断熱インサート12dにおける熱流束(kW)である。λ≒0.5W/mK、ΔT≒2000K、Q≒0.5kW及びA=0.02m
2であると、(1)式はインサート厚さt≒40mmをもたらす。
【0034】
平坦な円盤状断熱インサート12dの寸法例は、望ましくは20〜50mmの厚さ、又は、より望ましくは25〜45mmの厚さ、及び、前記単結晶SiCシード3の直径の90%〜120%の直径を有する。
【0035】
成長るつぼ1における等温線10及び径方向の温度勾配は、さらに、非フラットな形状の断熱インサート12d1〜12d4を用いることによって調整することができる。断熱インサート12d〜12d4の構成例が、
図4(a)〜(e)に示されている。一実施例では、断熱インサート12d(
図4(a))は、平行な頂部及び底部表面を有するフラットインサートとすることができる。断熱インサート12d1及び12d2(
図4(b)及び(c))は、傾斜したエッジとともに、平らな頂部表面及び底部表面(使用中、成長るつぼ1に面する)を有し得る。断熱インサート12d3及び12d4は、湾曲したエッジとともに、平らな頂部表面及び底部表面(使用中、成長るつぼ1に面する)を有し得る。インサート12d1及び12d3(
図4(b)及び(d))は、凹形状を有することができる。インサート12d2及び12d4(
図4(c)及び(e))は、凸形状を有することができる。インサート12d1及び12d3は、フラットな中央部及び凹状の又は成長るつぼ1に向かって傾斜したエッジ領域を有することができる。これらのインサート12d1及び12d3は、SiC単結晶6の前記成長界面が凹状で、前記結晶がるつぼ1の成長ガイド11に付着する際、使用することができる。断熱インサート12d2及び12d4は、フラットな中央部及び凸状の成長るつぼ1から離れて傾斜したエッジ領域を有し得る。これらのインサート12d2及び12d4は、SiC単結晶の前記成長界面が凸状であるときに、使用することができる。
【0036】
一実施例では、フラット(又は実質的にフラット)な等温線10を、前記成長SiC単結晶6の内部で成長するSiC単結晶6の前記成長界面において存在させるために、成長るつぼ1内の凹状(12d1及び12d3)又は凸状(12d2及び12d4)のエッジ領域の曲率半径又は傾斜角度、及び/又は、断熱インサート12d1〜12d4のフラットな中央部が終わる位置及び前記曲率半径又は傾斜が開始する位置を選択又は調整することができる。
【0037】
また、るつぼ1の高さに対するるつぼ1の外径(OD)の比として定義される前記成長るつぼ1のアスペクト比は、1よりも大きく、すなわち、るつぼODは、るつぼの高さよりも大きくすることができる。前記るつぼODの増加は、るつぼ1の中央部における望ましくない径方向の温度勾配のさらなる減少に役立つことが観察される。一実施例では、200mm結晶成長のために、成長るつぼ1の前記アスペクト比は、望ましくは1〜3であり、より望ましくは1.5〜2.5である。他の実施例では、300mm結晶成長のために、成長るつぼ1の前記アスペクト比は、望ましくは1.5〜4であり、より望ましくは2〜3である。
【0038】
成長るつぼ1内でフラット(又は実質的にフラット)な等温線の形成を助けるために、少なくとも成長チャンバー20の頂部又は蓋部22の内側に面する表面を黒色にする。前記黒色は、前記熱流束のチャンバー20の内側への反射を回避又は低減しながら、頂部22がそれと接触する熱流束を吸収することを可能にさせる。頂部22の内側表面は、任意の適切な又は望ましい方法、例えば、頂部又は蓋部22を形成する材料に適合する高温黒色ペイントで黒色にすることができる。しかしながら、これは限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0039】
内側に面する表面を黒色にすることにより、チャンバー20の頂部又は蓋部22は、その表面上に注がれる放射線を吸収する黒体(古典物理学で知られる)にさらに近くなる。もちろん、全ての放射線を吸収する理想的な黒体は存在しない。しかしながら、チャンバー20の頂部及び蓋部22の少なくとも内側表面を黒色とする、又は、黒色の材料の頂部22を形成することによって、頂部22からチャンバー20内へ戻る熱流束の反射を減少させ、又は、頂部若しくは蓋部22の内側に面する表面によってチャンバー20内へ反射される熱流束の少なくともいくらかの制御を可能にすることを避けることができる。理想的でないが、頂部又は蓋部22の内側に面する表面の黒色は、特に、成長SiC単結晶6の前記成長界面で、及び、前記成長SiC単結晶6の内側で、成長るつぼ1内におけるフラットな(実質的にフラットな)等温線10の形成に好都合であることが認められる。
【0040】
ここで、実質的にフラットな等温線(有限要素解析によって決定されるように)は、前記成長るつぼ1の中心線42と、SiCシード3上に成長する前記SiC単結晶6の外径との間において10℃より低い前記成長るつぼ内の径方向の温度変化に相当するとみなされる。しかしながら、これは限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0041】
前述の手がかりを用いて径方向の勾配を最適化することによって、フラットな成長界面及び低レベルの応力を有する大径SiC結晶6ブールが成長し得る。
【0042】
実施例1
工程 GQ0090:高結晶品質の直径200mmN型4H−SiCブールの成長
【0043】
この成長工程では、高品質4H−SiC単結晶シード3ウェーハを、225mmの直径を有し、軸から4度外した向きに合わせて準備した。この単結晶SiCシード3ウェーハは、US2012/0285370及び/又はUS8313720の教示に沿った拡径によって製造された大径4HSiCブールからスライスされた。
【0044】
図5に示すフローチャートによると、SiCブール直径の拡大は、多数の連続した結晶成長工程を通して達成される。拡径は、より小さな直径の良質な単結晶SiCシード3の選択から開始される。このシードは、欠陥がない又は実質的に欠陥がない拡径を生じさせるように調整されたPVT成長プロセスで使用することができる。このようにして成長したSiC単結晶6ブールは、初期のSiCシード3よりも直径が大きいウェーハにスライスすることができる。前記ウェーハは、完全に特徴付けることができ、最高品質のウェーハのみを、次の成長工程(拡大ラウンド)におけるシード3として使用することができる。SiCシード3の直径が一の成長工程(拡大ラウンド)から次の成長工程まで増加するにつれて、各工程の成長工程を、例えば、各ラウンドの拡大に対してSiC単結晶6の成長を最適化するため、調整することができる。
【0045】
図2に示すPVT成長装置は、この実施例1の成長工程で使用された。このPVT成長装置のグラファイト成長るつぼ1は、ODが250mmであった。成長るつぼ1には、前記るつぼの底部に配置されるSiC原料粒2が搭載された。前述の直径225mmの4H−SiC単結晶シード3ウェーハは、成長るつぼ1の内側頂部又は蓋部22に配置された。
図3(a)に模式的に示される3相フラットの曲がりくねったヒーター40は、るつぼ1の底部26の下に配置された。
【0046】
この工程では、フラットな断熱インサート12d(
図2及び4(a)に示す)を使用した。断熱インサート12dは、堅い断熱板で作られた。断熱インサート12dの寸法は、直径が220mmで、厚さが25mmであった。この工程中、従来のPVT成長に典型的な温度及び圧力を使用した。N型材料を製造するため、プロセスガスとして窒素ガス(アルゴンに対して)を成長雰囲気に加えた。
【0047】
この実施例1の成長工程は、
図6に示す4H−SiCブールを産出した。前記ブールは、フラットな成長界面を有し、それゆえに、ブールのごく端に小さなc面が見られた。前記フラットな成長界面は、フラットな等温線の影響であり、低結晶応力の表れであった。
【0048】
実施例1の前記成長したままのブールは、直径200mmのウェーハに加工した。これらのウェーハのうち1つの交差偏光子画像を
図7に示す。前記画像は、局所的な結晶応力も全体的な結晶応力も示さない。
【0049】
実施例1の成長したままのブールからスライスされたウェーハは、研磨され、X線ロッキング曲線を用いて特徴付けられた。前記ウェーハは、2つの直交する方向:結晶学的方位<1−210>に平行な方向及び<10−10>に平行な方向に走査された。これらのウェーハの一つから得られた結果を
図8(a)及び(b)に示す。図から分かるように、このウェーハの格子曲率(
図8(a))は0.1°未満であるが、前記ウェーハ領域全体にわたるFWHM(
図8(b))は25秒角を超えない。これは、この成長したままのSiCウェーハの優れた結晶品質を保証する。
【0050】
図9は、実施例1の前記4H−SiCブールからスライスされた200mmウェーハの一つで測定されたマイクロパイプ密度マップである。図に示すように、前記ウェーハは、前記ウェーハエッジの近傍に明らかなマイクロパイプがわずかにあるのみで、実質的にマイクロパイプフリーである。このウェーハにおけるウェーハ平均マイクロパイプ密度(MPD)は、0.09cm
−2であると測定され、したがって、非常に高い結晶品質であることを示す。
【0051】
実施例1の前記4H−SiCブールからスライスされた200mmウェーハの一つで測定した転位密度マップを
図10(a)〜(c)に示す。転位エッチピットは、溶融したKOH中でウェーハをエッチングすることによって明らかにされた。前記ウェーハは、全転位密度が2800cm
−2(
図10(a))、らせん転位(TSD)密度が620cm
−2(
図10(b))、底面転位(BPD)密度が170cm
−2(
図10(c))であった。これらの結果はすべて、優れた結晶品質を示す。
【0052】
実施例2
工程 GP0105:高結晶品質の直径200mmバナジウムドープ、半絶縁4H−SiCブールの成長
【0053】
この成長工程では、直径210mmの高品質4H−SiC単結晶シード3ウェーハを準備した。このSiCシード3ウェーハは、上述の拡径プロセスによって、大径4H−SiCブールからスライスした。前記SiCシード3ウェーハは、軸上、すなわち、基底(0001)面に平行な面でスライスされた。
【0054】
この実施例2の成長は、
図2に示すPVT成長装置と同様のPVT成長装置内で行われた。半絶縁結晶を製造するため、窒素及びホウ素のバックグラウンド不純物の存在の正確な制御と組み合わせて、バナジウムドープを使用した。炭化ケイ素のバナジウム補償は、US7608524及びUS8216369の教示に従った。
【0055】
この実施例2の成長は、
図11に示す直径209mmの4H−SiCブールを産出した。前記成長したままのブールは、複数の200mmウェーハに製造され、特徴付けられた。前記特徴には、電気的特性及び結晶品質の評価が含まれた。前記結果は、製造したウェーハが、室温で1×10
12Ω・cmを超える抵抗率及び約1eVの抵抗率の活性化エネルギーであるN型であったことを示した。
【0056】
SIMS分析が、この実施例2の前記ブールからスライスされたウェーハの一つで行われ、バナジウム濃度が1×10
17atoms・cm
−3、窒素濃度が6×10
15atoms・cm
−3、ホウ素濃度が3×10
15atoms・cm
−3を示した。
【0057】
溶融したKOH中でのこの実施例2のブールからスライスされたウェーハのエッチングは、ウェーハ平均マイクロパイプ密度が0.1cm
−2であることを明らかにした。研磨されたウェーハのX線ロッキング曲線を用いた走査は、0.1°未満の格子曲率及び25秒角未満のX線反射の半値全幅(FWHM)を示した。
【0058】
本明細書で記載される装置及び方法の様々な限定されない実施例は、以下の段落で説明する特徴の1以上又は任意の組合せを含むことができる。
【0059】
図から分かるように、本明細書で示すのは、成長チャンバー20を含むSiC単結晶を成長させるPVTのためのPVT成長装置である。成長るつぼ1は成長チャンバー20内に配置される。前記成長るつぼは、前記成長るつぼ1の底部26にSiC原料2が充填され、前記成長るつぼ1の頂部又は蓋部28に単結晶SiCシード3が前記SiC原料と前記単結晶SiCシードとの間隔を空けて充填されるように構成される。断熱材12は、前記成長チャンバー20内の前記成長るつぼ1を取り囲む。断熱材12は、前記成長るつぼ1の側部30と前記成長チャンバー20の側部25との間の側部断熱片12a、前記成長るつぼ1の底部26と前記成長チャンバー20の底部24との間の底部断熱片12c、前記成長るつぼ1の頂部28と前記成長チャンバー20の頂部22との間の頂部断熱片12bを含む。さらに、前記断熱材12は、前記頂部断熱片12b内の開口部32に配置された断熱インサート12dも含む。前記断熱インサート12dは、20mm〜50mmの厚さ及び前記単結晶SiCシード3の最大寸法に対して90%〜120%の最大寸法を有する。前記断熱インサートの形状は、前記PVT成長装置の使用時に前記単結晶SiCシード上に成長するSiC単結晶中の熱流束を制御するように調整することができる。ヒーター40は、前記成長るつぼ1の底部26と前記底部断熱片12cとの間に配置される。
【0060】
前記成長るつぼ1の側部30は、中心軸42のまわりで円筒形状を有する。
【0061】
一実施例では、前記成長チャンバー20の頂部の少なくとも内側に面する表面を黒色にすることができる。前記成長チャンバー20は、金属若しくは金属合金、例えばステンレス鋼で作ることができる。
【0062】
一実施例では、前記断熱インサート12dから離れて面する前記成長チャンバー20の頂部22の少なくとも内側に面する表面を黒色にすることができる。
【0063】
一実施例では、成長ガイド11が、前記成長るつぼ1の頂部28から底部26に向かって垂れ下がり、SiC原料2の最上部よりも上で終えることができる。前記成長ガイド11は、前記成長るつぼ1の側部30の内側から離れて配置され得る。
【0064】
一実施例では、前記側部、頂部及び底部断熱片12a,12b,12cが、それぞれ、前記断熱インサート12dの厚さよりも大きいか、又は、前記断熱インサート12dの厚さに等しい厚さを有することができる。前記側部、頂部及び底部断熱片12a,12b,12cは、それぞれ、前記断熱インサート12dの厚さの少なくとも2倍の厚さを有することができる。
【0065】
一実施例では、前記ヒーター40がフラット抵抗ヒーターを含むことができる。前記ヒーター40は、前記成長るつぼ1の底部26の最大寸法よりも大きな最大寸法を有することができる。
【0066】
一実施例では、望ましくは、側部断熱片12aが占める前記成長るつぼ1の側部30と前記成長チャンバー20の側部25との間の領域に、前記ヒーターの一部が存在しない。
【0067】
一実施例では、前記ヒーター40は、前記成長るつぼ1の底部26と前記底部断熱片12cとの間にのみ存在することができる。
【0068】
一実施例では、前記成長るつぼ1の高さに対する前記成長るつぼ1の外径の比は、1〜3又は1.5〜4とすることができる。
【0069】
また、側部30、頂部28及び底部26を有し、高さに対する外径のアスペクト比が1〜4である成長るつぼ1を含む、SiC単結晶をPVT成長させるためのPVT成長装置を開示する。前記成長るつぼ1の頂部28は、前記成長るつぼ1の内側に単結晶SiCシード3を支持するように構成される。断熱材12は、前記成長るつぼ1の外側を取り囲む。前記断熱材12は、それぞれ前記成長るつぼ1の側部、頂部及び底部30,28,26に隣接して配置された側部、頂部及び底部断熱片12a,12b,12cを含む。さらに、前記断熱材12は、前記頂部断熱片12b内の開口部32に配置された断熱インサート12dも含む。前記断熱インサート12dは、前記側部、頂部及び底部断熱片12a,12b,12cのいずれか一つの厚さよりも薄い。前記断熱インサートの形状は、前記PVT成長装置の使用時に前記単結晶SiCシード上に成長するSiC単結晶中の熱流束を制御するように調整され得る。前記ヒーター40は、前記成長るつぼ1の底部26と前記底部断熱片12cとの間にのみ配置される。
【0070】
一実施例では、前記断熱インサート12dは、20mm〜50mmの厚さ及び前記単結晶SiCシード3の最大寸法に対して90%〜120%の最大寸法を有することができる。
【0071】
一実施例では、さらに、前記PVT成長装置は、前記成長るつぼ1、断熱材12及びヒーター40が配置された成長チャンバー20を含むことができる。前記成長チャンバー20は、前記成長るつぼ1の頂部28に対して離れて配置された頂部22を含むことができる。前記成長チャンバー20の頂部22の少なくとも内側に面する表面は、黒色とすることができる。
【0072】
一実施例では、さらに、前記PVT成長装置は、前記底部断熱片12c内の窓5b;及び前記ヒーター40内の窓5cのうち少なくとも一つを含むことができる。
【0073】
さらに、本明細書では、前記成長るつぼ1内で間隔を空けて配置された前記単結晶SiCシード3及びSiC原料2とともに、前記記載のPVT成長装置を提供する工程と、SiC原料2が昇華し、前記成長るつぼ1を加熱する前記ヒーター40に応じて前記成長るつぼ1内に形成される温度勾配によって、前記単結晶SiCシード3へ輸送されるように、前記ヒーター40が前記成長るつぼ1を加熱する工程であって、前記単結晶SiCシード3では昇華されたSiC原料2が濃縮して成長SiC単結晶6を形成する工程とを含む、SiC単結晶ブールをPVT成長させる方法が開示される。
【0074】
一実施例では、前記工程(b)が、前記単結晶SiCシード3上の前記成長SiC単結晶6の少なくとも成長界面でフラットな等温線を形成する前記成長るつぼ1の底部26及び頂部28を通過する純粋に軸方向の熱流束8,9を含むことができる。
【0075】
一実施例では、本明細書で記載される成長装置及び方法は、少なくとも305mm、例えば205mm〜305mmの第一外径、少なくとも10mmの厚さ、前記第一外径よりも小さい前記SiC単結晶ブールの第二外径の範囲内、全厚さ変化が20%未満、例えば10%未満であるSiC単結晶ブールのPVT成長に利用され得る。ここで、全厚さ変化は、前記第二外径の範囲内のブールの最大値と最小値との差を平均ブール厚さで割った値として定義される。
【0076】
一実施例では、前記第二外径は、前記第一外径よりも少なくとも5mm小さくすることができる。別の言い方をすれば、前記第一外径は、前記第二外径よりも少なくとも5mm大きくすることができる。
【0077】
一実施例では、前記SiC単結晶ブール及びそこから準備(スライス)されたウェーハは、4H又は6Hポリタイプとすることができる。
【0078】
一実施例では、前記SiC単結晶ブールは、窒素ドープN型SiC単結晶ブールとすることができる。
【0079】
一実施例では、前記SiC単結晶ブールは、バナジウムドープ及び半絶縁とすることができる。
【0080】
一実施例では、直径200mmのウェーハは、205mmのSiC単結晶ブールから準備(スライス)することができる。他の実施例では、直径250mmのウェーハは、255mmのSiC単結晶ブールから準備(スライス)することができる。他の実施例では、直径300mmのウェーハは、305mmのSiC単結晶ブールから準備(スライス)することができる。
【0081】
一実施例では、直径200mm、250mm又は300mmのN型4H−SiCウェーハは、本明細書に記載する原則に従って準備することができ、0.1cm
−2未満、例えば0.05cm
−2未満のウェーハ平均マイクロパイプ密度、1000cm
−2未満、例えば300cm
−2未満のウェーハ平均らせん転位密度、500cm
−2未満、例えば200cm
−2未満のウェーハ平均底面転位密度を有することができる。
【0082】
一実施例では、直径200mm、250mm又は300mmのN型4H−SiCウェーハは、本明細書に記載する原則に従って準備することができ、0.3°未満、例えば0.1°未満の格子曲率、及び、25秒角未満、例えば15秒角未満のロッキング曲線の半値全幅(FWHM)を有することができる。
【0083】
一実施例では、直径200mm、250mm又は300mmのN型4H−SiCウェーハは、本明細書に記載する原則に従って準備することができ、全ウェーハ領域に対して10%未満、例えば2%未満の積層欠陥が存在する全領域を有することができる。
【0084】
一実施例では、直径200mmの半絶縁バナジウムドープSiCウェーハは、本明細書に記載する原則に従って準備することができ、0.1cm
−2未満のマイクロパイプ密度、0.3°未満、例えば0.1°未満の格子曲率、及び、25秒角未満、例えば15秒角未満のロッキング曲線の半値全幅(FWHM)を有することができる。
【0085】
一実施例では、直径200mmの半絶縁バナジウムドープSiCウェーハは、本明細書に記載する原則に従って準備することができ、室温で1×10
11Ω・cmより大きい抵抗率を有することができる。
【0086】
一実施例では、直径200mmの半絶縁バナジウムドープN型6H−SiCウェーハは、本明細書に記載する原則に従って準備することができ、室温で1×10
11Ω・cmより大きい抵抗率、少なくとも0.8eVの抵抗率の活性化エネルギー、又は、その両方を有することができる。
【0087】
一実施例では、直径200mmの半絶縁バナジウムドープP型6H−SiCウェーハは、本明細書に記載する原則に従って準備することができ、室温で1×10
12Ω・cmより大きい抵抗率、少なくとも1.2eVの抵抗率の活性化エネルギー、又は、その両方を有することができる。
【0088】
一実施例では、直径200mmの半絶縁バナジウムドープN型4H−SiCウェーハは、本明細書に記載する原則に従って準備することができ、室温で1×10
12Ω・cmより大きい抵抗率、少なくとも1eVの抵抗率の活性化エネルギー、又は、その両方を有することができる。
【0089】
一実施例では、直径200mmの半絶縁バナジウムドープP型4H−SiCウェーハは、本明細書に記載する原則に従って準備することができ、室温で1×10
12Ω・cmより大きい抵抗率、少なくとも1.5eVの抵抗率の活性化エネルギー、又は、その両方を有することができる。
【0090】
前述の実施例は、図面を参照して説明されている。説明のために提供され、限定的な意味に解釈されるべきではない前述の実施例を読み理解した上で、改変及び変更は他人に生じるだろう。それゆえに、前述の実施例は、本開示を限定するものとして解釈されるべきではない。