(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
<人工的に生成される多能性幹細胞の生成>
本発明の個別生物学的製剤を生産するために、あらゆる種類の人工的に生成された多能性幹細胞を使用することができる。2つの主なカテゴリーは、誘導または再プログラム化された多能性幹細胞(iPSC)と、核移植(SCNT)、ANT−OAR、および単為発生によって産生された幹細胞である。
【0021】
体
細胞核移植(SCNT)は、成体体細胞の核を除核卵に注入し、その卵を、準備されたレシピエントの子宮内に移植して、完全な核遺伝学的クローンを得る出生をもたらす技術である。加えて、多能性幹細胞は、SCNT法からの培養物中でも誘導された(Cell Reprogram.12:105−113,2010、およびGenome Res.,19:2193−2201,2009)。
【0022】
改変
核移植卵母細胞補助再プログラム化(ANT−OAR)は、SCNTに類似する技術であるが、ドナー核が、レシピエント卵内に注入される前に遺伝学的に改変されるため、ANT卵母細胞の分化および完全な生物体形成が防止される(Genome Res.19:2193−2201,2009)。
【0023】
多能性幹細胞を生成するために、帯なし(zona−free)核移植、単為発生活性化等の技術を使用する単為発生(PGA)も使用され、SCNTおよび単為発生(PGA)等のクローン技術も再プログラム化多能性幹細胞を生成するために使用されてきた(Cell Reprogram.,12:105−113,2010、およびNature,450:497−502 2007)。
【0024】
これらの多能性幹細胞は、多少の長期不定期間に渡って培養物中で維持することができ、組み換えタンパク質、DNA、およびウイルス等の生物学的製剤製造の供給源となり得る。
【0025】
<誘導または再プログラム化したspPSC>
人工多能性幹細胞は、特定の幹細胞遺伝子およびタンパク質の発現、クロマチンメチル化パターン、倍加時間、胚様体形成、奇形腫形成、生存可能なキメラ形成、ならびに発生能および分化能等の多くの点で、胚性幹(ES)細胞等の天然の多能性幹細胞に類似する。
【0026】
一般にiPS細胞またはiPSCと略記される人工多能性幹細胞は、特定の遺伝子の「強制的」発現を誘導することにより、非多能性細胞、典型的には成体の体細胞から人工的に誘導される、多能性幹細胞の一種である(Nature Reports Stem Cells.2007)。
人工多能性幹細胞(iPSC)は、特定の幹細胞関連遺伝子を非多能性細胞にトランスフェクトすることにより生成される。人工多能性幹細胞は、典型的に、特定の幹細胞関連遺伝子を、成体の線維芽細胞等の非多能性細胞にトランスフェクトすることによって誘導される。トランスフェクションは、典型的に、レトロウイルス等のウイルスベクターまたはレトロトランスポゾンを通して達成される。トランスフェクトされる遺伝子には、マスター転写調節因子Oct−3/4(Pou5f1)およびSox2が含まれるが、他の遺伝子が誘導の効率を強化することが示唆されている。3〜4週間後、少数のトランスフェクトされた細胞が、形態学的および生化学的に多能性幹細胞に類似し始め、典型的には、形態的選択、倍加時間、またはレポーター遺伝子および抗生物質選択を通して単離される。
【0027】
胚性幹細胞由来の線維芽細胞および成体の線維芽細胞ならびに他の細胞は、胚性幹細胞との融合により(Cell.126:652−655,2006およびStem Cell Rev,2:331−340,2006)、レトロウイルストランスフェクション法を使用した4遺伝子の追加により(Cell.126:663−676,2006)、単一カセットまたは双シストロン性レンチウイルストランスフェクション法により[Stem Cells.,27:543−549,2009およびStem Cells.,27:1042−1049,2009]、ならびに転写因子を要する多能性の内因的刺激により(Stem Cells.,27:3053−3062,2009)、多能性状態に再プログラム化されてきた。多能性の誘発は、ゲノムのメチル化またはポリアデニル化状態を改変すること(PLoS One.,4:e8419,2009)、マイクロRNA(Dev Biol.,344:16−25,2010)、要求される転写因子の小分子活性化因子、エピジェネティックな再プログラム化(Regen Med.,2:795−816,2007)、タンパク質に基づく再プログラム化(Blood 116:386−395,2010)、培養物中の多能性細胞からの培養上清または細胞抽出物の添加、多能性遺伝子を再活性化するための化学的もしくは放射線または他の手段の遺伝子突然変異、および、内因的多能性状態を誘発または維持する成長因子もしくはサイトカインまたは細胞シグナル伝達部分の付加によっても、達成され得る。
【0028】
細胞を多能性状態に再プログラム化するためのレトロウイルスの使用は、免疫不全の遺伝子療法治験を想起させる危険性を提示する。再プログラム化の成功後にレトロウイルスを除去するために、Cre−lox等の切除技術が使用されており、piggyBacトランスポゾン法は、レトロウイルスの必要性を完全に排除する(Curr Opin Biotechnol.,20:516−521,2009)。
【0029】
ヒトiPSCは、レトロウイルス系を用い、4つの中枢遺伝子であるOct3/4、Sox2、Klf4、およびc−Mycを使用して、ヒト線維芽細胞を多能性幹細胞に形質転換することにより生成されてきた。ヒトiPSCはまた、レンチウイルス系を使用して、OCT4、SOX2、NANOG、および異なる遺伝子LIN28を使用しても生成されてきた。アデノウイルスも、マウスの皮膚細胞および肝細胞のDNAに4つの必須の遺伝子を移入するために使用され、胚性幹細胞と同一の細胞をもたらした(Science322(5903):945−949,2008)。成体細胞のiPSCへの再プログラム化は、いずれのウイルストランスフェクション系も全く用いずにプラスミドを介して達成することもできる(Science 322(5903):949−953,2008)。piggy bacトランスポゾン系、ミニサークル(mini circle)技術、タンパク質で刺激または調整された培地刺激による再プログラム化を使用してiPSCが生成されてきた。
【0030】
iPS細胞の生成は、誘導に使用される遺伝子に決定的に依存する。Oct−3/4およびいくつかのSox遺伝子ファミリー(Sox1、Sox2、Sox3、およびSox15)は、誘導プロセスに関与する重要な転写調節因子と同定されており、その不在は誘導を不可能にする。しかしながら、いくつかのKlfファミリー(Klf1、Klf2、Klf4、およびKlf5)、Mycファミリー(C−myc、L−myc、およびN−myc)、Nanog、およびLIN28を含む追加的遺伝子が誘導の効率を増加させることが同定されている。
○ Oct−3/4(Pou5f1)(Bioclone,San Diego CAからcDNAが入手可能)(Nucleic Acids Res.20(17):4613−20,1992):Oct−3/4は、八量体(「Oct」)転写因子のファミリーのうちの1つであり、多能性の維持に重要な役割を果たす。卵割球および胚性幹細胞等のOct−3/4
+細胞におけるOct−3/4の不在は、自発的な栄養膜分化をもたらし、よって、Oct−3/4の存在は、胚性幹細胞の多能性および分化可能性をもたらす。Oct−3/4の類縁物であるOct1およびOct6を含む「Oct」ファミリーの他の様々な遺伝子は、誘導を引き起こすことができず、よって、誘導プロセスに対するOct−3/4の限定性が示されている。
○ Soxファミリー:Soxファミリーの遺伝子は、Oct−3/4と同様に多能性の維持と関連するが、多能性幹細胞でのみ発現されるOct−3/4とは対照的に、多能性幹細胞および単能性幹細胞と関連する(Dev Biol.227(2):239−55,2000)。Sox2(Bioclone,San Diego,CAからcDNAが入手可能)は、誘導に使用された最初の遺伝子であったが(Mamm.Genome 5(10):640−642,1995)、Soxファミリーの他の遺伝子も誘導プロセスにおいて機能することが分かった。Sox1(Bioclone,Inc.,San Diego,CAからcDNAが入手可能な)は、Sox2と同様の効率でiPS細胞を生じ、Sox3遺伝子(Bioclone,Inc.,San Diego,CAからヒトcDNAが入手可能)、Sox15、およびSox18も、効率は減少するが、iPS細胞を生成する。
○ Klfファミリー:Klfファミリーの遺伝子のKlf4は、マウスiPS細胞の生成因子である。Klf2(Bioclone,Inc.,San Diego,CAからcDNAが入手可能)およびKlf4(Bioclone,Inc.,San Diego,CAからcDNAが入手可能)は、iPS細胞を生成することができる因子であり、関連遺伝子のKlf1(Bioclone,Inc.,San Diego,CAからcDNAが入手可能)およびKlf5(Bioclone,Inc.,San Diego,CAからcDNAが入手可能)も、効率は減少するが、iPS細胞を生成した。
○ Mycファミリー:Mycファミリーの遺伝子は、癌に関与する癌原遺伝子である。C−myc(Bioclone,Inc.,San Diego,CAからcDNAが入手可能)は、マウスiPS細胞の生成に関与する因子である。しかしながら、c−mycは、ヒトiPS細胞の生成には不要となり得る。c−myc誘導iPS細胞を移植されたマウスの25%が致死的な奇形腫を発生したため、iPS細胞の誘導における「myc」ファミリーの遺伝子の使用は、臨床療法としてのiPS細胞の最終的状況に支障をきたす。N−myc(Bioclone,Inc.,San Diego,CAからcDNAが入手可能)およびL−mycは、c−mycの代わりに、類似する効率で誘導することが確認されている。
○ Nanog:(Bioclone,Inc.,San Diego,CAからcDNAが入手可能)胚性幹細胞において、Oct−3/4およびSox2と共にNanogは、多能性の促進に必要である(Cell113(5):643−55,2003)。
○ LIN28:(Bioclone,Inc.,San Diego,CAからcDNAが入手可能)LIN28は、胚性幹細胞および胚性癌細胞で発現され分化および増殖と関連するmRNA結合タンパク質である(Dev Biol258(2):432−42,2003)。
【0031】
<人工的に生成された多能性幹細胞のアイデンティティ>
生成したspPSCは、以下の点において、天然に単離される多能性幹細胞(例えば、それぞれmESCおよびhESCと呼ばれるマウスおよびヒトの胚性幹細胞(ESC))と非常に類似しており、よって、天然に単離される多能性幹細胞に対するspPSCの同一性、信憑性、および多能性を裏付ける。
細胞生物学的特性:
○ 形態学:iPSCは、形態学的にESCに類似する。それぞれの細胞は、形状が丸く、大型の核小体、およびわずかな細胞質を有する。iPSCのコロニーも、ESCのものに類似する。ヒトiPSCは、hESCと同様に、縁が鋭利で平坦で密集したコロニーを形成し、マウスiPSCは、mESCに類似した、hESCより平坦さが少なくより凝集したコロニーを形成する。
○ 成長特性:幹細胞はその定義の一部として自己再生しなければならないため、倍加時間および有糸分裂活性はESCの基本である。iPSCは、有糸分裂的に活性であり、活発に自己再生し、増殖し、ESCと等しい速度で分裂する。
○ 幹細胞マーカー:iPSCは、ESC上で発現されるのと同じ細胞表面抗原マーカーを発現する。ヒトiPSCは、hESCに特異的なマーカーを発現し、これにはSSEA−3、SSEA−4、TRA−1−60、TRA−1−81、TRA−2−49/6E、およびNanogが含まれる。マウスiPSCは、SSEA−1を発現していたが、mESCと同様に、SSEA−3もSSEA−4も発現していなかった。
○ 幹細胞遺伝子:iPSCは、未分化ESCで発現される遺伝子を発現し、これにはOct−3/4、Sox2、Nanog、GDF3、REX1、FGF4、ESG1、DPPA2、DPPA4、およびhTERTが含まれる。
○ テロメラーゼ活性:テロメラーゼは、約50細胞分裂のヘイフリック限界により制限されない細胞分裂を維持するために必要である。hESCは、自己再生および増殖を維持するために高いテロメラーゼ活性を発現し、iPSCもまた高いテロメラーゼ活性を示し、テロメラーゼタンパク質複合体において必要な構成要素であるhTERT(ヒトテロメラーゼ逆転写酵素)を発現する。
【0032】
多能性:iPSCは、ESCに類似する様式で、完全に分化した組織へと分化することができる。
○ 神経分化:iPSCは、βIIIチューブリン、チロシンヒドロキシラーゼ、AADC、DAT、ChAT、LMX1B、およびMAP2を発現するニューロンに分化することができる。カテコールアミン関連酵素の存在は、iPSCが、hESCと同様に、ドーパミン作動性ニューロンに分化可能であり得ることを示し得る。幹細胞関連遺伝子は、分化後下方制御される。
○ 心臓分化:iPSCは、自発的に拍動し始める心筋細胞に分化することができる。心筋細胞は、TnTc、MEF2C、MYL2A、MYHCβ、およびNKX2.5を発現していた。幹細胞関連遺伝子は、分化後下方制御された。
○ 奇形腫形成:免疫不全マウスに注入されたiPSCは、9週間後に、自発的に奇形腫を形成する。奇形腫は、内胚葉、中胚葉、および外胚葉の3つの胚葉に由来する組織を含む多系列の腫瘍であり、これは、典型的に単一の細胞型のみのものである他の腫瘍と異なる。奇形腫形成は、多能性の指標的な試験である。
○ 胚様体:培養物中のhESCは、「胚様体」と呼ばれるボール様の胚様構造を自発的に形成し、これは、有糸分裂的に活性で分化しているhESCのコアと、3つ全ての胚葉由来の完全に分化した細胞の周縁とからなる。iPSCも胚様体を形成し、周縁分化細胞を有する。
○ 4倍体相補性:4倍体胚盤胞(それ自体は胚体外組織のみを形成することができる)に注入された、マウス胎児線維芽細胞由来iPS細胞は、成功率は低いものの、完全な、非キメラ性の生殖可能マウスを形成することができる。4倍体相補性アッセイは、2つの哺乳類胚の細胞が組み合わされて新しい胚が形成される生物学の技法である。これは、遺伝子改変生物体を構築すること、胚発生における特定の突然変異の因果関係を研究すること、および多能性幹細胞の研究において使用されている。
【0033】
人工多能性幹細胞(iPS)は、腸の腸間膜細胞(Cell Reprogram.,12:237−247,2010)、網膜色素上皮細胞(Stem Cells.,28:1981−1991,2010)、羊膜細胞(Differentiation.,80:123−129,2010)、線維芽細胞(J Vis Exp.,8:1553,2009)、成体神経細胞(Nature.,Vol.454,pp.646−650,2008)、歯髄(J Dent Res,Vol.89,pp.773−778,2010)、脂肪細胞(Cell Transplant.,19:525−536,2010)、卵巣(J Reprod Dev.,56:481−494,2010)、ならびに胚、胎児、および成体供給源からの他の多くの細胞から生成されてきた。iPS細胞は、理論的に、あらゆる細胞型から生成され得るが、身体の全220種の細胞型がすでに系統的に検証されたわけではない。最近のいくつかの研究は、iPS細胞がその起始細胞型に関する「記憶」を維持することを実証した。これは、iPS細胞が、培養物中で、時として自発的に、最も容易にその起始細胞型に再分化する傾向として表される。
【0034】
<内因性幹細胞の単離>
内因性多能性幹細胞(ePSC)を含む幹細胞は、その表面上に発現される特定の抗原によって特徴付けられ、それによって単離され得る。多能性幹細胞は、段階特異的胚抗原(SSEA)、転写因子Oct4およびNanogならびに他のマーカーの発現等の方法により特徴付けられ得る。今まで単離されてきた内因性多能性幹細胞の主な型は、極小胚様(VSEL)幹細胞である。
【0035】
VSELは小さく(マウスにおいては直径3〜5ミクロン、ヒトに関しては直径3〜7ミクロン)、核対細胞質比は高い。VSELは、SSEA1、Oct4、Nanog、Rex1および他の多能性幹細胞マーカー、ならびにCD133、CD34、AP、cMet、LIF−R、およびCXCR4に関して陽性である(J Am Coll Cardiol 53(1):10−20,2009、Stem Cell Rev4:89−99,2008)。これらはCD45に関して陰性である。VSELはHSCより小さく(3〜6 vs.6〜8μm)、核/細胞質比がより高い。VSEL核は大きく、開放型クロマチンを含み、多数のミトコンドリアを有する細胞質の細い縁によって囲まれる。したがって、その形態は、原子的なPSCと一致する。
【0036】
PBにおける循環VSELの絶対数は、例外的に低く(定常状態条件下の1mLの血液中に1〜2細胞)、よって、その同定および単離のためには特別なフローサイトメトリープロトコルが適用されなければならない。VSELを同定するために使用される表現型マーカーは、CD45(マウスおよびヒト)の陰性発現、Sca−1(マウス)、CXCR4、CD133、およびCD34(マウスおよびヒト)の陽性発現、前駆体幹細胞マーカー(つまり、Oct−4、Nanog、およびSSEA)に関する陽性を含み、胚盤葉上層/生殖系幹細胞に特徴的ないくつかのマーカー特徴を発現する。
【0037】
VSELの蛍光活性化細胞選別単離のみを利用することにより、100mLのUCB中に存在する全VSELの選別は、4作業日内で完了し得る。より効率的で経済的な3工程単離プロトコルは、Lin−/CD45−/CD133+ UCB−のVSELの初期数の60%の回収を可能にする。このプロトコルは、低張塩化アンモニウム溶液中での赤血球の溶解、免疫磁気ビーズによるCD133+細胞選択、およびサイズマーカービーズコントロールを伴うFACSによるLin−/CD45−/CD133+細胞の選別を含む。単離された細胞は、小さい高度に原始的なLin−/CD45−/CD133+細胞のOct−4+およびSSEA−4+集団が高度に濃縮されている。
【0038】
VSELを選別する別の方法は、いくつかの表面マーカーの存在および細胞の直径に基づく。簡潔に述べると、初期工程は、赤血球を溶解して有核細胞の画分を得ることである。赤血球溶解緩衝液がフィコール遠心分離の代わりに使用されるが、これは、後者の手法は非常に小さい細胞の集団を除去する可能性があるためである。続いて、細胞をSca−1(マウスVSEL)またはCD133(ヒトVSEL)に対する抗体、全造血抗原(CD45)、造血系列マーカー(lin)、およびCXCR4で染色し、多重パラメータ生減菌細胞選別システム(MoFlo, Beckman Coulter;FACSAria,Beckton Dickinson)を使用して選別する。この方法は、約95%のVSELを含む直径2〜10μmの事象を含むように、「拡張リンパ球ゲート」を使用する。
【0039】
内因性幹細胞は、骨髄、全血、さい帯血、脂肪組織、もしくは他の供給源からの単核球画分内に含まれるか、またはそれらは、CD34、CD133、CD105、CD117、SSEA1−4、色素排除、もしくは他の特定の幹細胞抗原についての選択により精製され得る。幹細胞は、フィコールハイパックまたは他の商業的に利用可能な勾配を使用した密度勾配遠心分離により、全血、骨髄、さい帯血、脂肪組織、嗅粘膜からの組織剥離物、および、さい帯組織のような単一細胞懸濁液中に解離され得る他の幹細胞供給源から単離され得る。幹細胞は、そのような手順から得られる単核球の画分から回収され得る。あるいは、幹細胞は、密度勾配遠心分離後に他の画分内に見出され得る(Stem Cells Dev.2011[印刷前の電子出版])。例えば、さい帯血をPBS中に1:1に希釈し、Histopaque1077(Sigma)上に慎重に積層し、室温で30分間、1500rpmで遠心分離し得る。示されているような、得られた層は、幹細胞単離のためにさらに処理され得る。層1は血小板層であり、層2は単核球を含むバフィーコートであり、層3はフィコール層であり、層4はVSELも含む赤血球ペレット層である。層1、2、および3が回収され、FBSを含むまたは含まないDMEM F12等の適切な培地で希釈され、再度遠心分離されて細胞ペレットが取得され得る。層4は、DMEM F12等の適切な培地で希釈され、標準的な卓上遠心分離器で、室温で15分間、800rpmで遠心分離され得る。幹細胞は、上記に概説する何種類かのフローサイトメトリー法に従って、主に層2(バフィーコート)および層4(RBCペレット)から回収され得る。
図1は、全血の勾配遠心分離によって得られる典型的な層の図を示す。1は血小板を示す。2はMNCおよび幹細胞を有するバフィーコートを示す。3はフィコールを示す。4はRBCペレットおよび幹細胞を示す。
【0040】
加えて、グリコシル化パターンおよび他の翻訳後修飾は、組織および細胞型によって異なり得るため、患者特異的幹細胞系は、その器官から、または生物学的製剤を内因的に発現する細胞型の中から単離された成体細胞もしくは体細胞から調製され得る。Rajpert−De Meyts E,et al.“Changes in the profile of simple mucin−type O−glycans and polypeptide GalNAc−transferases in human testis and testicular neoplasms are associated with germ cell maturation and tumour differentiation”.,Virchows Arch,Vol.451:805−814 (2007)を参照。Pevalova M.,et al.“Post−translational modifications of tau protein”.Bratisl Lek Listy,107:346−353(2006)を参照。
【0041】
[好ましい実施形態の詳細な説明]
<不死化spPSCおよびePSCの生成>
本発明の好ましい実施形態では、spPSCおよびePSCは、典型的にはポリオーマサルウイルス40(SV40)を使用して、好ましくは大型T抗原の非ウイルス誘導を通して不死化される。Rose,M.R.et al.,(1983).“Expression of the Large T Protein of Polyoma Virus Promotes the Establishment in Culture of “Normal” Rodent Fibroblast Cell Lines”.PNAS 80:4354−4358(1983)およびHofmann,M.C.et al.“Immortalization of germ cells and somatic testicular cells using the SV40 large T antigen”Experimental Cell Research,201:417−435(1992)を参照。
【0042】
<人工的に生成された、好ましくは人工多能性幹細胞、より好ましくは単離された内因性多能性幹細胞を使用した実施形態の概要>
好ましい実施形態において、
1.内因性多能性幹細胞が単離される。
2.そのePSCが不死化される。
3.不死化されたePSCが、非ウイルス技術の使用により目的の遺伝子、ウイルス、または核酸でトランスフェクトされる。
4.トランスフェクトされた不死化ePSCが、次いで、より効率的な様式で核酸産物を発現することができるように、生殖系細胞、好ましくは卵巣細胞に分化するように誘導される。
5.分化された細胞は、ここで、目的の核酸を含む、前にトランスフェクトしたベクターから目的の核酸産物を発現するように誘導され得る。
【0043】
別の好ましい実施形態では、
1.体細胞が単離される。
2.その体細胞が、人工多能性幹細胞(iPS細胞)に形質転換される。
3.そのiPS細胞が不死化される。
4.不死化されたiPS細胞は、目的の遺伝子、ウイルス、または核酸を含むベクターによってトランスフェクトされる。
5.トランスフェクトされた不死化iPS細胞は、次いで、より効率的な様式でタンパク質を発現することができるように、体細胞に再分化するように誘導される。
6.再分化された細胞は、ここで、目的の遺伝子を含む、前にトランスフェクトしたベクターから目的のタンパク質を発現するように誘導され得る。
【0044】
さらにより好ましい実施形態では、
1.内因性多能性幹細胞が単離される。
2.その不死のePSCは、非ウイルス技術の使用により、目的の遺伝子、ウイルス、または核酸でトランスフェクトされる。
3.トランスフェクトされた不死化ePSCは、次いで、より効率的な様式で核酸産物を発現することができるように、生殖系細胞、好ましくは卵巣細胞に分化するように誘導される。
4.その分化された細胞は、ここで、目的の核酸を含む、前にトランスフェクトしたベクターから目的の核酸産物を発現するように誘導され得る。
【0045】
本発明の好ましい実施形態を達成するための方法は、当業者によく知られている。
【0046】
代替的な実施形態では、ePSCまたはspPSCは、不死化される前に、目的の核酸を含むベクターでトランスフェクトされ得る。Du C. et al.“Generation of Variable and Fixed Length siRNA from a novel siRNA Expression Vector”,Biomed.&Biophys.Res.Comm.345:99−105(2006)、2008年11月21日に出願されたYork Zhuの米国特許出願第12/313,554号を参照。あるいは、ePSCまたはspPSC細胞は、再分化するように誘導され得、次いで、その細胞は不死化され得、そして、その不死化した再分化細胞が、目的の核酸を含むベクターでトランスフェクトされ得る。別の可能性は、ePSCまたはspPSC細胞が再分化するように誘導され得、その再分化した細胞が、目的の核酸でトランスフェクトされ得、その再分化しトランスフェクトされた細胞が不死化され得る。
【0047】
ePSCまたはspPSC細胞は、再分化前に、培養物中で、好ましくは自己ヒト血清および幹細胞因子もしくは白血病阻害因子を含む細胞培養培地中で、増殖されることが好ましい。
【0048】
生成されるポリペプチドまたはタンパク質は、あらゆるポリペプチドまたはタンパク質であり得る。特に関心を引くものは、エリスロポエチン、第VIII因子、第IX因子、トロンビン、抗体もしくは抗体断片、αインターフェロン、インターフェロンα2Aおよび2B(米国特許第4,810,645号および同第4,874,702号を参照)、βインターフェロン(米国特許第4,738,931号を参照)、コンセンサスインターフェロン(米国特許第5,661,009号を参照)、成長ホルモン、抗血友病因子、G−CSF、GM−CSF、可溶性受容体、可溶性受容体と免疫グロブリン(Ig)の定常領域との融合体等の融合タンパク質(米国特許第5,155,027号を参照)、TGF−β、骨形成タンパク質(BMP)、TGFα、インターロイキン2、β−グルコセレブロシダーゼもしくはその類似体、α1−プロテイナーゼ阻害因子、フィブリン、フィブリノーゲン、フォンビルブランド因子、イミグルセラーゼ、アガルシダーゼβ、ラロニダーゼ、アルグルコシダーゼα、アルグルコシダーゼα、サイロトロピンα、およびチモシンαからなる群から選択されるポリペプチドまたはタンパク質である。
【0049】
本発明のプロセスにより、あらゆる抗体または抗体断片が製造され得る。特に関心を引くものは、ターゲットに結合する抗体または抗体断片であり、そのターゲットは、腫瘍壊死因子(TNF)分子、成長因子受容体、血管内皮成長因子(VEGF)分子、インターロイキン1、インターロイキン4、インターロイキン6、インターロイキン11、インターロイキン12、γインターフェロン、核因子カッパB活性化受容体リガンド(RANKL)、およびBlysからなる群から選択される。
【0050】
<幹細胞の分化の誘導>
目的のタンパク質の生産を最適化するためには、トランスフェクトされたePSCまたはspPSC細胞は、体細胞に分化するように誘導されるべきである。
【0051】
代替的な実施形態では、ePSCまたはspPSC細胞の集団が増殖され得、分化が誘導され得、次いで、分化した細胞が、目的の核酸でトランスフェクトされ得る。幹細胞は、細胞生物学および細胞分化の分野の者に公知である他の方法の中でも、様々な成長因子を培養物に添加すること(Blood.,85:2414−2421,1995)、培養培地中の栄養素を変更すること、酸素分圧(BMC Cell Biol.11:94,2010)もしくは温度等の培養条件を操作すること、または幹細胞を様々な細胞外マトリックス上で培養することにより、培養物中で体細胞型に分化するように誘導され得る。例えば、レチノイン酸、TGF−β、骨形成タンパク質(BMP)、アスコルビン酸、およびβ−グリセロホスフェートは、骨芽細胞の生成をもたらし、インドメタシン、IBMX(3−イソブチル−1−メチルキサンチン)、インスリン、およびトリヨードサイロニン(T3)は、脂肪細胞の生成をもたらし、αFGF、βFGF、ビタミンD3、TNF−β、およびレチノイン酸は、筋細胞の生成をもたらす(CARDIAC−DERIVED STEM CELLS.(国際公開第1999/049015号)1998年3月)。生殖細胞は、単層培養、胚様体(EB)の形成、BMP4生成細胞との共凝集、および精巣細胞もしくは卵巣細胞馴化培地の使用、または組み換えヒト骨形成タンパク質(BMP)を用いたEB形成を使用して、多能性幹細胞から生成されている(PLoS One.2009;4(4):e5338)。生殖細胞マーカー遺伝子は、ZNFドメインを伴うPRドメインコンテイニング1(PRDM1、BLIMP1としても知られる)、PRドメインコンテイニング14(PRDM14)、タンパク質アルギニンメチルトランスフェラーゼ5(PRMT5)、DPPA3、IFITM3、GDF3、c−KIT、ケモカイン(C−X−Cモチーフ)受容体4(CXCR4)、NANOS1−3、DAZL、VASA、PIWIファミリー遺伝子(PIWIL1およびPIWIL2、それぞれ、ヒトにおいてHIWIおよびHILIとしても知られる)、Mut−L Homologue−1(MLH1)、シナプトネマ複合体タンパク質1(SCP1)、およびSCP3を含む。得られた生殖細胞系は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞および他の現在使用されている製造細胞系の使用と同様に、目的の遺伝子またはタンパク質生成物を発現するように遺伝学的に改変され得る。様々な段階の幹細胞から様々な体細胞系を得るための分化戦略は、幹細胞生物学の分野の者によく知られている。
【0052】
患者特異的細胞系からの発現レベルを最適化するために、高レベルの生物学的製剤の生成と関連することが知られる転写因子が、目的の遺伝子と共トランスフェクトされ得る。例えば、高レベルのPit−1発現は、細胞型において高プロラクチン発現をもたらし、一方で、成長ホルモンの発現を遮断または防止することができる(Genes Dev,3:946−958 1989)。
【0053】
モノクローナル抗体の生成は、Sino Biological Incによって開発されたもの等の系を使用した遺伝子コドンの最適化、モルフォジェニクス(morphogenics)、または他の標準的なバイオテクノロジー法によって強化され得る。
【0054】
本発明によると、組み換えポリペプチドおよびタンパク質がePSCおよびspPSCにおいて製造され、ここで、動物の特定の種のいくつかの血統または民族はその特定の血統または民族により生成されるポリペプチドまたはタンパク質において異なるグリコシル化パターンを有するという事実のために、そのspPSCおよびePSCは特定の血統または民族の細胞から生成または単離される。本発明によると、民族とは、そのメンバーが共通の遺伝形質(heritage)により相互に同一視する人々の群であって、多くの場合、共通の祖先または同族結婚(特定の集団内での結婚の習慣、例えばアシュケナージ系ユダヤ人)からなる。一般にそれは高度に生物学的に自己永続的な集団である。ポリペプチドおよびタンパク質において異なるグリコシル化パターンを有し得る民族の例は、Levinson,David(1998),Ethnic Groups Worldwide:A Ready Reference Handbook,Greenwood Publishing Groupに示されている。
【0055】
<幹細胞療法のための方法およびシステム>
本発明は、奇形腫を形成することなく幹細胞療法を促進するための方法も含む。本発明は、より大きな治療利益のために、上記に定義される人工的に生成された多能性幹細胞(spPSC)とここで呼ばれる再プログラム化体細胞の、観察される「記憶」をいかに有利に利用するかを教示する。再プログラム化の前の起始細胞型へと再分化する選好を付与するspPSCの記憶は、再生医療のためのspPSCの安全性および治療的有用性を強化するための手段を提供する。
【0056】
一般的な工程
本発明は、
1.目的の体細胞、特に再生したい体細胞の単離、
2.その体細胞の、人工的に生成される多能性幹細胞(spPSC)、特に上述のような人工多能性幹細胞(iPSC)への形質転換、
3.spPSCが上記体細胞の固有のエピジェネティック的記憶を維持する、spPSCの集団の増殖、
4.培養物中における上記spPSCの、元の体細胞型を有する再分化体細胞への再分化、および
5.その細胞型が望まれる身体の領域への、上記再分化体細胞の投与または送達
を伴う。
【0057】
最近のいくつかの研究は、spPSC細胞がその起始細胞型の「記憶」を維持することを実証した(Stem Cells.28:1981−1991,2010)、(Nature,467(7313):285−90,2010)、(Nat Biotechnol,28,:848−855,2010)、および(Mol Hum Reprod.,16:880−885,2010)。これは、spPSCが、培養物中で、時として自発的に、最も容易にその起始細胞型に再分化する傾向として表される。科学者および臨床科学者は、臨床療法、薬剤開発、疾患モデル化、または毒性スクリーニング(Curr Opin Biotechnol.,20:516−521,2009)に有用となり得る多能性幹細胞の生成にやみくもに重点を置き、多能性幹細胞のこの記憶側面が安全なヒト療法のために提供する治療的利点を見逃してきた。実際、再プログラム化多能性幹細胞のこの「記憶」の側面に関するデータを発表した科学者らは、spPSC細胞のこの特性が治療に関して生じる制約に重点を置き、これらの細胞の治療的有用性を提供するためのこの特性の意義を見逃してきた。
【0058】
spPSCの記憶側面は、複数の起源の体細胞で観察されてきた。例えば、初代胎児網膜上皮細胞が、OCT4、SOX2、LIN28、およびNanogのレンチウイルス発現を使用してiPSCに再プログラム化され(Stem Cells.28:1981−1991,2010)、多能性に関する標準的な試験に合格し、それらは奇形腫を形成し多能性幹細胞マーカーを発現した。成長培地からの塩基性FGFの除去後、網膜spPSC系の一部が、自発的に網膜上皮細胞系列に再分化し戻った。ヒトの胎児網膜上皮spPSC細胞から自発的に分化する細胞の約60%は網膜上皮細胞であり、これは、ヒト胎児肺線維芽細胞由来spPSC、ヒト包皮線維芽細胞由来spPSC、またはヒトESC細胞から生じる網膜上皮細胞が5〜16%であることと対比される。しかしながら、ヒト胎児網膜上皮細胞からのspPSC細胞の3つのうちの1つは、網膜上皮細胞に全く分化しなかった。Kimら(Nature,467(7313):285−90,2010)は、Oct4、Sox2、Klf4、およびMycのレトロウイルス導入を使用して、加齢マウスからの骨髄前駆体細胞および真皮線維芽細胞を再プログラム化した。それらの得られた全ての幹細胞系は、ヒトサンプルに典型的に適用される基準に基づく多能性を示した。それらの再プログラム化多能性幹細胞のその後の分化は、造血系供給源は線維芽細胞供給源よりも容易に造血系列へと再分化し、同様に、線維芽細胞供給源は造血系供給源よりも容易に間葉系列へと再分化したことを示した。これらの著者はまた、その起始体細胞系列へと好んで分化するこの傾向が、造血系列への分化後の再度の多能性再プログラム化、そしてそれに続くさらなる分化により、部分的に克服され得ることも示した。例えば、神経前駆体細胞に由来する再プログラム化細胞を造血系列へと分化した後に、多能性に再プログラム化したところ、神経細胞に分化され再プログラム化された後に造血系細胞に分化した神経前駆体と比べて造血系コロニーの形成がより高かったことが示された。
【0059】
ヒト胎児神経前駆体細胞の非ウイルス性再プログラム化を使用して再プログラム化した細胞が、その起始細胞型へと好んで再分化するという同様の観察がなされている(PLoS One.,4:e7076−e7088,2009)。得られた再プログラム化細胞は、いくつかの多能性マーカー、3つ全ての胚葉のマーカーを発現し、胚様体を培養物中で形成し奇形腫を形成することができたが、その著者らは、GeneChip分析を用いて、再プログラム化した神経前駆体細胞が神経幹細胞遺伝子の発現を一部維持していたことを実証した。Poloら(Nat Biotechnol,28,:848−855,2010)は、マウス尾端部由来線維芽細胞、脾臓B細胞、骨髄顆粒球、および骨格筋前駆体から多能性再プログラム化細胞を誘導した。自己分化研究により、脾臓B細胞および骨髄顆粒球の再プログラム化spPSC細胞は、線維芽細胞または骨格筋に由来するspPSC細胞より効率的に造血系前駆体を生じることが示された。興味深いことに、これらの様々なspPSC細胞の連続継代は、継代16までに遺伝子およびメチル化の相違の抑止をもたらし、これらの細胞はまた、その時点で、継代4におけるより初期の結果とは対照的に、同等の分化効率を示した。興味深いことに、この差次的な分化能力の現象は、再プログラム化した体細胞に限定されず、胚性幹細胞系においても観察されており、これら胚性幹細胞系は、異なる遺伝子シグネチャーを有し、特定の細胞系列に自発的に好んで分化することが見出されている(Nat Biotechnol.,26:313−315,2008)(Hum Reprod Update.,13:103−120,2007)(Dev Biol.,307:446−459,2007)(BMC Cell Biol,10:44,2009)。
【0060】
幹細胞は、その表面上に発現する特定の抗原によって、特徴付けられ、単離され得る。多能性幹細胞は、他の方法の中でも、段階特異的胚抗原(SSEA)、転写因子Oct4およびNanogならびに他のマーカーの発現により特徴付けられ得る。胚性幹細胞由来線維芽細胞および成体の線維芽細胞ならびに他の細胞が、胚性幹細胞との融合(Cell 126:652−655,2006およびStem Cell Rev,2:331−340,2006)、レトロウイルストランスフェクション法を使用した4つの遺伝子の付加(Cell126:663−676,2006)、単一カセットまたは双シストロン性レンチウイルストランスフェクション法(Stem Cells27:543−549,2009およびStem Cells27:1042−1049,2009)、ならびに転写因子を要する多能性の内因的刺激(Stem Cells27:3053−3062,2009)によって多能性状態に再プログラム化されてきた。多能性の誘導は、ゲノムのメチル化またはポリアデニル化状態を改変すること(PLoS One4:e8419,2009)、マイクロRNA(Dev Biol.344:16−25,2010)、要求される転写因子の小分子活性化因子、エピジェネティックな再プログラム化(Regen Med.2:795−816,2007)、タンパク質に基づく再プログラム化(Blood116:386−395,2010)、多能性細胞からの培養上清または細胞抽出物を培養において添加すること、多能性遺伝子を再活性化するための、化学的もしくは放射線または他の手段の遺伝子突然変異、あるいは、内因性多能性状態を誘導または維持する成長因子もしくはサイトカインまたは細胞シグナル伝達部分の付加によっても達成され得る。細胞を多能性状態に再プログラム化するためのレトロウイルスの使用は、免疫不全の遺伝子治療治験を想起させる危険性を提示する。再プログラム化の成功後にレトロウイルスを除去するために、Cre−loxまたはpiggyBacトランスポゾン法等の切除技術が使用されてきた(Curr Opin Biotechnol.20:516−521,2009)。SCNTおよび単為発生(PGA)等のクローニング技術法(Cell Reprogram.12:105−113,2010)も、再プログラム化された多能性幹細胞を生成するために使用されてきた(Nature450:497−502,2007)。
【0061】
主にこれらの幹細胞がヒトの再生医療の療法に適切であるという期待のもと、多能性幹細胞の様々な供給源を発見することに大量の資源(経済的、知的、および労力的)が注ぎ込まれてきた。残念なことに、成体VSELを除き(Stem Cell Rev4:89−99,2008)、今までに単離された全ての多能性幹細胞は、奇形腫形成、腫瘍形成、さらには新生物的特性の問題のために阻まれている。したがって、過去15年ほどにわたってなされてきた経済的、知的、および労力的な投資を生かすために、これら多能性幹細胞の何らかの実用性が必要とされる。
幹細胞は、細胞生物学および細胞分化の分野の者に公知である他の方法の中でも、様々な成長因子を培養物に添加すること(Blood.,85:2414−2421,1995)、培養培地中の栄養素を変更すること、酸素分圧(BMC Cell Biol.11:94,2010)もしくは温度等の培養条件を操作すること、または幹細胞を様々な細胞外マトリックス上で培養することにより、培養物中で体細胞型に分化するように誘導され得る。例えば、レチノイン酸、TGF−β、骨形成タンパク質(BMP)、アスコルビン酸、およびβ−グリセロホスフェートは骨芽細胞の生成をもたらし、インドメタシン、IBMX(3−イソブチル−1−メチルキサンチン)、インスリン、およびトリヨードサイロニン(T3)は脂肪細胞の生成をもたらし、aFGF、bFGF、ビタミンD3、TNF−β、およびレチノイン酸は筋細胞の生成をもたらす(国際公開第1999/049015号)1998年3月)。様々な段階の幹細胞から様々な体細胞系を得るための分化戦略は、幹細胞生物学の分野の者によく知られている。
【0062】
幹細胞療法は、多くのヒト疾患の治療のために研究され、改良されている。NIHウェブサイトwww.clinicaltrials.govに含まれる臨床試験の情報は、3000を超える幹細胞の研究を列挙している。評価中の疾患としては、血液悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、癌、大理石骨病、再生不良性貧血、および血球減少症、鎌状赤血球疾患およびサラセミア、角膜縁幹細胞欠損、乳癌、急性心筋梗塞、冠動脈疾患、末梢血管疾患、心不全、1型糖尿病、2型糖尿病、脳卒中、脊髄損傷、神経芽細胞腫、多発性硬化症、全身性硬化症、紅斑性狼瘡、慢性創傷治癒、火傷、骨折治癒、軟骨修復、CNS腫瘍、変形性関節炎、腎不全、パーキンソン病、骨髄腫、糖尿病性足病変、肝臓および胆汁性肝硬変、拡張型心筋症、貧血、網膜色素変性症、クローン病、糖尿病性神経障害、肥満細胞症、卵巣癌、癲癇、重症筋無力症、自己免疫疾患、肉芽腫性疾患、骨壊死、肝不全、PMD疾患、リポジストロフィー、脱髄性疾患、軟骨欠損、網膜症、ループス腎炎、アルツハイマー病、外傷性脳損傷、肉腫、筋炎、高血糖、黄斑変性症、潰瘍性大腸炎、筋変性等が挙げられる。
【0063】
幹細胞は、当業者に公知の様々なマーカーを使用して単離され得る。例えば、一般的な幹細胞マーカーのリストは、http://stemcells.nih.gov/info/scireport/appendixe.asp#eiiに見出され得る。神経幹細胞はCD133を使用して、間葉幹細胞および前駆体細胞は骨形成タンパク質受容体(BMPR)を使用して、造血幹細胞はCD34により、間葉幹細胞はCD34+Sca1+Lin−マーカーの組み合わせにより、造血幹細胞および間葉幹細胞はckit、Stro1、またはThy1により、神経前駆体および膵臓前駆体はネスチンにより、外胚葉、神経前駆体および膵臓前駆体はビメンチンその他のマーカーにより、単離され得る。
【0064】
本発明は、再生医療に関して、体細胞を安全に再プログラム化し再分化させるための方法をさらに提供する。有用な体細胞としては、完全に分化した体細胞、前駆体細胞、またはより原始的な幹細胞が挙げられ得る。再生療法を必要とする器官に応じて、より原始的な幹細胞は、器官穿刺、生検、剥離、または外科的アクセスにより、多かれ少なかれ利用可能であり得る。より原始的な幹細胞へのアクセスが可能である場合には、それらの幹細胞を使用することが好ましい。それらほどは好ましくないが、しかし完全に分化した体細胞よりは好ましいのは、前駆体細胞の使用である。
【0065】
治療のターゲットとされる特定の器官からの体細胞の単離、これらの体細胞の再プログラム化、spPSCの固有の「記憶」が維持されることを保証する培養物中での短期増殖、続いて培養物中での起始細胞型への再分化、その後の治療への適用は、腫瘍または奇形腫の形成の危険性を減少させながら多能性幹細胞方法を患者の治療のために使用することを可能にする。
【0066】
再プログラム化体細胞は、継代1から12の間で、最も好ましくは継代4で使用され得る。再プログラム化体細胞は、標準的な細胞生物学および分化の技術により、所望の再生のための細胞型へと分化され得る。得られた治療用細胞は、静脈内、動脈内、筋肉内、または、NOGAStarもしくはMyoStar注入カテーテルもしくは他の承認済みカテーテル注入装置等のカテーテルを含み得る標準的な注入法を使用する他の注入法により、投与され得る。あるいは、治療用細胞は、低侵襲性の、またはより侵襲性の高い外科的方法によりターゲット組織に投与されてもよい。治療用細胞は、0〜15%、より好ましくは5%の自己ヒト血清アルブミンを含む緩衝組成物において投与され得る。中枢神経系の疾患の治療のためには、治療用細胞は、好ましくは自己脳脊髄液を使用して緩衝される。治療用細胞はまた、コラーゲン、フィブリノーゲン、または他の細胞外マトリックスもしくは複数の細胞外マトリックスの組み合わせ等のスキャフォールドの使用を通して、または、アルギネートを使用して作製されたもののような縫合糸または他の標準的な方法を使用して、細胞を適所に保ち、再生修復を必要とする器官との接触を保持することにより、投与されてもよい。
【0067】
好ましくは、最低500個の治療用細胞が投与され、一般的には、細胞療法は1500万〜5憶個の細胞を利用する。より好ましくは、1500万〜1憶個の細胞が最適効果のために投与される。
【0068】
例として、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳卒中、ハンチントン病、多発性硬化症、麻痺、および中枢神経系(CNS)の他の疾患等の神経疾患の細胞療法においては、好ましくは、刊行されているように(J Spinal Cord Med.29:191−203,2006)、剛性内視鏡を使用して、嗅粘膜を単離する。神経幹細胞および前駆体細胞もしくは嗅神経鞘細胞は、再生医療の分野の当業者に周知の方法により嗅粘膜から単離される。あるいは、神経冠幹細胞が、ヒトの毛嚢から単離され得る(Folia Biol.56:149−157,2010)。最も好ましくは、神経幹細胞は、特定の因子の付加により再プログラム化され、4継代に渡り増殖および継代され、特定の因子の付加により特定の中枢神経系細胞型に再分化され、次いで再生療法のために患者に投与される。
【0069】
本発明は、再生医療に関して、体細胞を安全に再プログラム化し再分化させるための方法を提供する。有用な体細胞としては、完全に分化した体細胞、前駆体細胞、またはより原始的な幹細胞が挙げられ得る。再生療法を必要とする器官に応じて、より原始的な幹細胞が、器官穿刺、生検、剥離、または外科的アクセスにより、多かれ少なかれ利用可能であり得る。より原始的な幹細胞へのアクセスが可能である場合には、それらの幹細胞を使用することが好ましい。それらほどは好ましくないが、完全に分化した体細胞よりは好ましいのは、前駆体細胞の使用である。
【0070】
脊髄損傷の修復のために、嗅粘膜が剛性内視鏡により除去され、1992年にReynoldsとWeissにより最初に記述された神経球アッセイを使用して神経幹細胞が単離され(Science,255:1707−1710,1992)、上皮成長因子(EGF)および塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)が、嗅粘膜の数日間の培養中で生存する細胞に添加されて神経球成長を刺激し、そして神経幹細胞が、7〜10日間以内の培養で回収可能である。得られた神経幹細胞は、5〜7日間に渡り、ハイグロマイシン選択を伴うOCT4およびNANOGの送達のためのエピソーム性ベクターの添加により再プログラム化される。細胞は、継代4まで継代され増殖されて、遺伝子挿入のない(integration−free)コロニーが取得され、それから、自己脳脊髄液または特定の因子を使用して、嗅神経鞘、幹様神経前駆体細胞に分化される。標準的な正中切開および後方正中脊髄切開術を使用した手術において、損傷脊髄を露出させ、許容できる限り瘢痕組織を除去し、治療用細胞を自己脳脊髄液中に緩衝させ、生理活性スキャフォールド上に播種し、そして損傷脊髄に直接適用する。
【実施例】
【0071】
<実施例1>
組み換えタンパク質生産のための、人工的に生成された患者特異的多能性幹細胞の遺伝学的改変
患者からのSCNTもしくはPGAもしくはANT−OARもしくはiPSC等の人工的に生成された多能性幹細胞(spPSC)が、生物学的製剤の産生を誘導するための遺伝学的改変に使用される。SCNT由来幹細胞は、患者の細胞の核を、調製した除核卵母細胞内に移入することにより調製される。ANT−OAR由来幹細胞は、患者の核DNAを遺伝学的に改変した後に、その改変した核を、除核され調製された卵母細胞内に移入することにより調製される。iPSC由来幹細胞は、遺伝学的改変、多能性転写因子の活性化因子、エピジェネティックな修飾、または上述した当該技術分野において公知の他の方法を使用して、患者の細胞を再プログラム化することにより調製される。得られた人工的に生成された患者特異的幹細胞系は、生物学的製剤の産生のための後続の遺伝学的改変のために、マスターセルバンク(master cell bank)およびワーキングバンク(working bank)として「貯蔵」される。
【0072】
生殖細胞は、単層培養、胚様体(EB)の形成、BMP4生成細胞との共凝集、精巣細胞もしくは卵巣細胞馴化培地の使用、または組み換えヒト骨形成タンパク質(BMP)を用いたEB形成を使用して、多能性幹細胞から生成される。生殖細胞は、ZNFドメインを伴うPRドメインコンテイニング1(PRDM1、BLIMP1としても知られる)、PRドメインコンテイニング14(PRDM14)、タンパク質アルギニンメチルトランスフェラーゼ5(PRMT5)、DPPA3、IFITM3、GDF3、c−KIT、ケモカイン(C−X−Cモチーフ)受容体4(CXCR4)、NANOS1−3、DAZL、VASA、PIWIファミリー遺伝子(PIWIL1およびPIWIL2、それぞれ、ヒトにおいてHIWIおよびHILIとしても知られる)、Mut−L Homologue−1(MLH1)、シナプトネマ複合体タンパク質1(SCP1)、およびSCP3を含み得るマーカー遺伝子の発現により同定される。得られた生殖細胞は、組み換え第VIII因子の製造に一般的に使用される方法に従う第VIII因子等、目的の遺伝子でトランスフェクトされる。
【0073】
<実施例2>
組み換えインスリン生産のための、人工的に生成された患者特異的多能性幹細胞の遺伝学的改変
患者からのSCNTもしくはPGAもしくはANT−OARもしくはiPSC由来幹細胞等の、人工的に生成された多能性幹細胞(spPSC)が、生物学的製剤の産生を誘導するための遺伝学的改変に使用される。SCNT由来幹細胞は、患者の細胞の核を、調製した除核卵母細胞内に移入することにより調製される。ANT−OAR由来幹細胞は、患者の核DNAを遺伝学的に改変した後に、その改変した核を、除核され調製された卵母細胞内に移入することにより調製される。iPSC由来幹細胞は、遺伝学的改変、多能性転写因子の活性化因子、エピジェネティックな修飾、または上述した当該技術分野において公知の他の方法を使用して、患者の細胞を再プログラム化することにより調製される。得られた人工的に生成された患者特異的幹細胞系は、生物学的製剤の産生のための後続の遺伝学的改変のために、マスターセルバンクおよびワーキングバンクとして「貯蔵」される。
【0074】
患者特異的幹細胞におけるインスリン前駆体の発現は、出芽酵母におけるインスリンの製造に一般的に使用される方法[Kjeldsen T.,et al.,“Engineering−enhanced protein secretory expression in yeast with application to insulin”.21,May 2002,J Biol Chem.,277:18245−18248(May 2002)、Zhang B.,et al.,“Intracellular retention of newly synthesized insulin in yeast is caused by endoproteolytic processing in the Golgi complex”.,J Cell Biol.,153:1187−1198(June 2001)、およびKristensen C.et al.,“Alanine scanning mutagenesis of insulin”.,J Biol Chem.,272:12978−12983(May 1997)]またはE. Coli [Son YJ.,et al.“Effects of beta−mercaptoethanol and hydrogen peroxide on enzymatic conversion of human proinsulin to insulin”.,J.Microbiol Biotechnol.,18:983−989(May 2008)]に従って行われ、それから標準的な方法により処理され、精製される。インスリン前駆体を発現する患者特異的細胞系は、後のインスリン産生のために、マスターセルバンクおよびワーキングセルバンクとして「貯蔵」される。
【0075】
<実施例3>
人工的に生成された患者特異的多能性幹細胞の遺伝学的改変を使用した、インスリン生産のためのβ細胞の生成
インスリンを生産するために、患者からの体細胞を、spPSCを生成するための遺伝学的改変に使用し、これらを使用して生物学的製剤の産生を誘導する。spPSC由来幹細胞は、遺伝学的改変、多能性転写因子の活性化因子、エピジェネティックな修飾、または当該技術分野において公知の他の方法を使用して、患者の細胞を再プログラム化することにより調製される。得られた患者特異的幹細胞系は、生物学的製剤の産生のための後続の遺伝学的改変のために、マスターセルバンクおよびワーキングバンクとして「貯蔵」される。あるいは、内因性多能性幹細胞(ePSC)が上述の技法により単離されて貯蔵され得る。
【0076】
患者特異的幹細胞におけるインスリン前駆体の発現は、上述のように、出願酵母または大腸菌におけるインスリンの製造に一般的に使用される方法により行われる。適切なインスリン遺伝子構築物を用いた遺伝子トランスフェクションの後、[Shi,Y.,et.Al.“Inducing embryonic stem cells to differentiate into pancreatic beta cells by a novel three−step approach with activin A and all−trans retinoic acid”.Stem Cells.,23:656−662(2005)またはTateishi,K.,et.Al.“Generation of insulin−secreting islet−like clusters from human skin fibroblasts”.,J Biol Chem.,283:31601−31607(2008)] of the Beta Cell Biology Consortium,http://www.protocolonline.org/prot/Cell_Biology/Stem_Cells/Differentiation_of_Stem_Cell/index.html.Protocol Online.[オンライン][2010年12月19日に引用。]に見出される標準的なプロトコルに従って、当該細胞はβ細胞系列に分化される。
【0077】
次いで、結果として発現された生物学的製剤産物を、標準的な方法により処理し、精製する。得られたインスリン前駆体発現性患者特異的幹細胞系は、生物学的製剤の産生のための後続の遺伝学的改変のために、マスターセルバンクおよびワーキングバンクとして「貯蔵」される。
【0078】
あるいは、得られた患者特異的幹細胞が、上記Beta Cell Biology ConsortiumのShi et.Al.同上またはTateishi et.Al.同上に見出される標準的なプロトコルに従い、β細胞系列に分化される。一旦分化されると、患者特異的幹細胞におけるインスリン前駆体の発現が、上述の出芽酵母または大腸菌におけるインスリンの製造に一般的に使用される方法により行われる。次いで、標準的な方法に従って、結果として発現された生物学的製剤産物を処理し、精製する。
【0079】
<実施例4>
生物学的製剤抗体治療薬を生産するための再プログラム化およびトランスフェクションのための、成体(体細胞)抗体生成細胞の単離
患者特異的製造細胞系を生成して治療用抗体生物学的製剤を製造する目的のために、抗体産生B細胞を、末梢血、骨髄、および他の容易に利用可能な造血細胞源から単離する。B細胞は、利用可能なキット(StemCell Technologies)を利用して、CD19発現に基づき単離される。限界希釈法または細胞選別法を利用して、もっとも高いレベルの免疫グロブリン(Ig)を生成する細胞を選択することができる。短期間増殖させた後、標準的な再プログラム化法を使用して、高Ig産生クローン細胞を、多能性または前駆体状態に再プログラム化する。得られた患者特異的幹細胞は、標準的な分子生物学的技法および方法を使用して、所望の抗体遺伝子構築物で形質導入される。得られた発現抗体治療薬は、公的に入手可能となるか、抗体治療薬用組成物の所有者によって内密に維持されるかに関わらず、現状技術のバイオテクノロジー法により処理され、精製される。所望の精製された抗体産物を得るための方法としては、イオン交換クロマトグラフィーが挙げられる。
【0080】
<実施例5>
抗体生成体細胞への再分化を伴う、生物学的製剤抗体治療薬を生産するための再プログラム化およびトランスフェクションのための成体(体細胞)抗体生成細胞の単離
患者特異的製造細胞系を生成して治療用抗体生物学的製剤を製造する目的のために、抗体産生B細胞を、末梢血、骨髄、および他の容易に利用可能な造血細胞源から単離する。限界希釈法または細胞選別法を利用して、もっとも高いレベルの免疫グロブリン(Ig)を産生する細胞を選択することができる。短期間増殖させた後、標準的な再プログラム化法を使用して、高Ig産生クローン細胞を、多能性または前駆体状態に再プログラム化する。得られた患者特異的幹細胞は、標準的な技法および方法を使用して、所望の抗体遺伝子構築物で形質導入される。遺伝学的改変後、多能性患者特異的細胞系は、CD40L、BAFF、toll様受容体活性化(TLR)の存在下[Hayashi E.A.,et al.“TLR4 promotes B cell maturation: independence and cooperation with B lymphocyte−activating factor”.,J Immunol.,184:4662−4672(2010)、またはB細胞受容体(BCR)活性化およびノッチ受容体リガンドファミリー活性化等の当該技術分野に公知の他のB細胞成熟因子[Palanichamy A.et al.“Novel human transitional B cell populations revealed by B cell depletion therapy”.10,May 2009,J Immunol.,Vol.182,pp.5982−5993(2009)、Thomas M.D.et al.,“Regulation of peripheral B cell maturation”.,Cell Immunol.,239:92−102(2006)の存在下での培養により、成熟抗体産生B細胞に分化される。
【0081】
治療用抗体の力価および親和性は、Li J.,et al.,“Human antibodies for immunotherapy development generated via a human B cell hybridoma technology”.,Proc Natl Acad Sci,103:3557−3562(2006)に記載されるように、形態形成法等の方法を使用することにより改善され得る。得られた発現抗体治療薬は、公的に入手可能となるか、抗体治療薬用組成物の所有者により内密に維持されるかに関わらず、現状技術のバイオテクノロジー法により処理され、精製される。
【0082】
あるいは、多能性患者特異的幹細胞は、CD40L、BAFF、toll様受容体活性化(Hayashi,et al.同上を参照)の存在下での培養、またはB細胞受容体(BCR)活性化およびノッチ受容体リガンドファミリー活性化等の当該技術分野に公知の他のB細胞成熟因子の存在下での培養により、成熟抗体産生B細胞に分化される(Palanichamy A.et al.同上,およびThomas,M.D.et al.同上を参照)。治療用抗体の力価および親和性は、記載されたような形態形成法等の方法を使用することにより改善され得る(Li,et al.同上を参照)。
【0083】
得られた患者特異的抗体産生細胞は、標準的な技法および方法を使用して、所望の抗体遺伝子構築物で形質導入される。得られた発現抗体治療薬は、公的に入手可能となるか、抗体治療薬用組成物の所有者により内密に維持されるかに関わらず、現状技術のバイオテクノロジー法により処理され、精製される。
【0084】
<実施例6>
高活性ADCC抗体製造のための患者特異的細胞系の生成
免疫グロブリンのN−アセチルグルコサミン(GlcNac)翻訳後修飾は、抗体依存性細胞媒介毒性(ADCC)において重要であり、フコシル化されていないGlcNac残基はFcγ受容体に対して最高の親和性を有する。Mori K.,et al.,“Non−fucosylated therapeutic antibodies:the next generation of therapeutic antibodies”.,Cytotechnology.,55:109−114(2007)。
【0085】
したがって、高レベルのADCCを有する抗体治療薬が所望される場合、適切なレベルでGlcNacを付与しながらGlcNacを非フコシル化状態で残すことができる患者特異的細胞系が望ましい。癌細胞は高レベルのGMDを発現することが知られており、したがって、癌幹細胞および多能性細胞は類似する遺伝子シグネチャーを有することから、多能性細胞も、翻訳後GlcNac結合に関与する酵素であるGMDを高レベルで発現することが推測され得る。正常組織のなかでは、結腸および膵臓が最高レベルのGMDを発現する。リツキシマブまたはハーセプチン等の、有効性のためにADCC活性に依存する治療用抗体の製造のための患者特異的幹細胞系においては、抗体をフコシル化する酵素の要因であるFUT8が欠如していることが望ましいであろう。例えば、ラットハイブリドーマYB2/0細胞において生成されたモノクローナル抗体は、CHO細胞を使用して生成された同じモノクローナル抗体よりADCC活性が50倍高い。脂肪由来幹細胞および生殖細胞系ならびにB細胞リンパ腫は、平均レベルより高いFUT8を発現し、一方、造血幹細胞(HSC)、未成熟B細胞、正常な骨格筋は、平均より低いFUT8を発現する。
【0086】
造血幹細胞は、幹細胞動員剤による前処置を伴ってまたは伴わずに、標準的な方法により、骨髄穿刺液から、または全血アフェレーシス法により単離される。単離したHSCは、続いて前述のように多能性に再プログラム化される。得られた患者特異的幹細胞は、標準的な技法および方法を使用して、所望の抗体遺伝子構築物で形質導入される。遺伝子トランスフェクション後、多能性患者特異的細胞系は、CD40L、BAFF、toll様受容体活性化(TLR)の存在下での培養(Hayashi E.A.,et al.,同上を参照)、またはB細胞受容体(BCR)活性化,およびノッチ受容体リガンドファミリー活性化等の当該技術分野で公知の他のB細胞成熟因子の存在下での培養により、成熟抗体産生B細胞に分化される(Palanichamy A.et al.同上,およびThomas,M.D.et al.同上を参照)。治療用抗体の力価および親和性は、記載された形態形成法等の方法を使用することにより改善され得る(Li,et al.同上を参照)。得られた発現抗体治療薬は、公的に入手可能となるか、抗体治療薬用組成物の所有者により内密に維持されるかに関わらず、現状技術のバイオテクノロジー法により処理され、精製される。
【0087】
あるいは、患者特異的製造細胞系を生成して治療用抗体生物学的製剤を製造する目的のために、末梢血、骨髄、および他の容易に利用可能な造血系細胞源から抗体産生B細胞が単離される。限界希釈法または細胞選別法を利用してもっとも高いレベルの免疫グロブリン(Ig)を産生する細胞を選択することができる。短期間増殖させた後、標準的な再プログラム化法を使用して、高Ig産生クローン細胞を、多能性または前駆体状態に再プログラム化する。得られた患者特異的幹細胞は、標準的な技法および方法を使用して、所望の抗体遺伝子構築物で形質導入される。遺伝学的改変の後、この多能性患者特異的細胞系は、フコースが低い、またはフコースを欠く治療用抗体の産生のために、HSC、未成熟B細胞、または骨格筋細胞に分化される。
【0088】
本発明の好ましい実施形態が説明され、記述されてきたが、上述のように、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、多くの変更を行うことができる。したがって、本発明の範囲は、好ましい実施形態の開示によって限定されない。そうではなく、本発明は、続く特許請求の範囲を参照することにより決定されるべきである。