(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
◎実施の形態の概要
図1(a)(b)は本発明が適用された実施の形態に係るゲル粒子測定方法の概要を示す説明図である。
同図において、ゲル粒子測定方法は、ゲル化反応によって試料S中の目的物質を粒子化したゲル粒子Gを測定するに際し、少なくとも一部に光が入射される入射部を有し、測定対象である目的物質が含まれる試料S及び目的物質のゲル化を生ずる試薬Rが含まれる溶液を収容する試料セル1と、試料セル1内の試料S及び試薬Rが含まれる混合溶液W全体がゲル化するのを抑制するように混合溶液Wを連続的に撹拌する撹拌手段2と、試料セル1の入射部の外部に設けられ、試料セル1内の混合溶液Wに対してコヒーレントな光Bmを照射させる光源3と、試料セル1の入射部の外部で光源3と同じ側に設けられ、試料セル1内の混合溶液W中で散乱した光のうち光源3側の方向に戻る後方散乱光成分を検出する後方散乱光検出手段4と、を用い、試料セル1内に混合溶液Wを収容した状態で撹拌手段2にて混合溶液Wを連続的に撹拌する撹拌工程と、撹拌工程を実施中に、混合溶液Wに対して光源3からの照射光Bmを入射させ、後方散乱光検出手段4に向かう光の検出光路STに対して試料セル1の表面にて反射される光の反射光路DTを異ならせ、混合溶液W中で散乱した光成分を後方散乱光検出手段4で捕捉する光分離工程と、光分離工程を経て得られる後方散乱光検出手段4の検出出力に基づいて散乱光の変動成分を計測し、混合溶液Wがゾル相からゲル相へ相変化する時点につながる混合溶液W内のゲル粒子Gの生成開始時点が少なくとも含まれるゲル粒子Gの生成状態を判別する計測工程と、を備える。
【0020】
このような技術的手段において、本件の目的物質は、所定の試薬Rとの間でゲル化反応し、ゲル粒子Gが生成されるものであれば広く含む。例えばエンドトキシンやβ−D−グルカンが挙げられる。ここで、目的物質がエンドトキシンである場合には、これをゲル化する試薬Rとしては、代表的にはリムルス試薬(リムルス属のカブトガニ血球由来の試薬)が挙げられるが、これに限られず、タキプレウス属のカブトガニ血球由来の試薬や、これらと同等な生物血球由来の試薬でもよい。
また、試料セル1は、少なくとも一部に光が入射される入射部を有するものであればよく、その形状は円筒状周壁を有するものに限られず、多角形状周壁を有するものでもよい。
更に、撹拌手段2としては、試料S及び試薬Rが含まれる混合溶液Wに対して撹拌作用を与えるものであれば広く含み、内蔵して直接的に撹拌する態様は勿論のこと、エアによる撹拌作用を与えたり、振盪による撹拌作用を与えるなど適宜選定して差し支えない。
更にまた、光源3はコヒーレントな光を照射するものであればレーザ光源によるレーザ光に限られず、例えばナトリウムランプの光のような単色光をピンホールに通すことによっても作成可能である。また、光源3は試料セル1の外側近傍に設けられていてもよいし、試料セル1から離れた位置に設けられ、各種の光学部品(結像部材、反射部材、絞り部材、光ファイバなど)を介在させて試料セル1の入射部に導くようにすればよい。
また、後方散乱光検出手段4としては、光源3から試料セル1内に入射された光で試料S及び試薬Rが含まれる混合溶液W中で散乱した光のうち光源3側の方向に戻る後方散乱光成分を検出するものであればよい。この場合、後方散乱光検出手段4としては、試料セル1の外側近傍に設けてもよいが、試料セル1から離れた位置に光学部品を用いて導くようにしてもよい。
【0021】
また、本実施の形態においては、ゲル粒子測定方法は、前述した構成要素を用いて、撹拌工程、光分離工程を経て計測工程を実施するようにすればよい。
ここで、撹拌工程は、撹拌手段2にて試料セル1内の混合溶液W全体がゲル化するのを抑制するように連続的に撹拌することが必要であり、光分離工程、計測工程を実施する間は撹拌工程を継続することが必要である。
また、光分離工程については、
図1(b)に示すように、光源3から照射された光Bmは試料セル1を透過する光Bm
1成分と、試料セル1の表面で反射される光Bm
0成分とがあり、試料セル1の表面で反射される光Bm
0の反射光路DTを試料セル1内の混合溶液W中で散乱して後方散乱光検出手段4に向かう光Bm
2の検出光路STと異なるように分離するものであればその手段は適宜選定して差し支えない。
更に、計測工程は、後方散乱光検出手段4の検出出力に基づいて散乱光の変動成分を計測することを要し、例えば検出出力を平均化又はスムージングすると共にフィルタリング化する手法が挙げられる。更に、計測結果に基づいて、混合溶液Wがゾル相からゲル相へ相変化する時点につながる混合溶液W内のゲル粒子Gの生成開始時点が少なくとも含まれるゲル粒子Gの生成状態を判別するものであればよい。ここで、「ゲル粒子Gの生成状態」とは、ゲル粒子Gの生成開始(出現)時点以外に、生成過程の変化、生成終了時点、生成量などを広く含み、「ゲル粒子Gの生成状態を判別する」とは、ゲル粒子Gの生成状態に関する情報を直接判別することは勿論、ゲル粒子Gの生成状態に基づいて判別可能な情報(例えば目的物質の定量情報)を判別することも含むものである。
【0022】
また、光分離工程の好ましい態様としては、検出光路STが光源3から試料セル1内に照射される光Bmの照射光路ATの一部を含むものが挙げられる。
光分離工程は、前述した反射光路DTと検出光路STとを分離するものであればよく、光源3から試料セル1内に向かう光Bmの照射光路ATと後方散乱光検出手段4へ向かう検出光路STとが一致しない態様をも含むが、真の後方散乱方向に向かう散乱光成分を捕捉するという観点からすれば、検出光路STが照射光路ATと同じ光路を経ることが好ましい。ここで、光源3と後方散乱光検出手段4とは通常異なる場所に設置される態様が多いが、この態様では、後方散乱光検出手段4による検出動作を可能にするには照射光路ATの途中から検出光路STを分岐させることが必要である。但し、光源3と後方散乱光検出手段4とを一体化したデバイスを用いる態様ではこの限りではない。
【0023】
また、実施の形態に係るゲル粒子測定方法を具現化したゲル粒子測定装置の概要は以下の通りである。
図1(a)(b)において、ゲル粒子測定装置は、ゲル化反応によって試料S中の目的物質を粒子化したゲル粒子Gを測定するものであって、少なくとも一部に光が入射される入射部を有し、測定対象である目的物質が含まれる試料S及び前記目的物質のゲル化を生ずる試薬Rが含まれる溶液を収容する試料セル1と、試料セル1内の試料S及び試薬Rが含まれる混合溶液W全体がゲル化するのを抑制するように混合溶液Wを連続的に撹拌する撹拌手段2と、試料セル1の入射部の外部に設けられ、撹拌手段2にて混合溶液Wを撹拌中に、試料セル1内の混合溶液Wに対してコヒーレントな光Bmを照射させる光源3と、試料セル1の入射部の外部で光源3と同じ側に設けられ、試料セル1内の混合溶液W中で散乱した光のうち光源3側の方向に戻る後方散乱光成分を検出する後方散乱光検出手段4と、試料セル1の入射部に向かって光源3からの照射光を入射するときに、試料セル1内の混合溶液W中で散乱した光のうち後方散乱光検出手段4に向かう検出光路STと、試料セル1の表面にて反射される光Bm
0の反射光路DTとを異ならせるように試料セル1の入射部表面を調整する光路調整手段5と、後方散乱光検出手段4の検出出力に基づいて散乱光の変動成分を計測し、混合溶液Wがゾル相からゲル相へ相変化する時点につながる混合溶液W内のゲル粒子Gの生成開始時点が少なくとも含まれるゲル粒子Gの生成状態を判別する計測手段6と、を備えたものである。
【0024】
ここで、光路調整手段5としては、試料セル1の入射部表面を調整することで、光源3から試料セル1の入射部に照射される光のうち試料セル1の入射部表面の反射光路DTと、試料セル1内の混合溶液W中で散乱した光のうち後方散乱光検出手段4に向かう検出光路STとを異ならせるものであれば適宜選定して差し支えない。
光路調整手段5の代表的態様としては以下のものが挙げられる。
代表的態様1としては、
図1(b)に示すように、試料セル1は少なくとも入射部が透過可能な有底の断面円形の筒状容器を有し、光路調整手段5は光源3からの光軸mを、筒状容器の中心軸Oから変位した位置を過ぎるように配置するものが挙げられる。
但し、光源3からの光軸mと、当該光軸mと平行で試料セル1の筒状容器の中心軸Oを通過する仮想光路との間の変位量については、試料セル1の外径や肉厚、更には、素材(光の屈折率)を考慮し、少なくとも光源3からの照射光Bmの一部が試料セル1の周壁を透過することが可能なように選定することが必要である。つまり、前述した変位量につき大き過ぎた選定をしてしまうと、光源3からの照射光Bmが試料セル1の入射部表面で全反射してしまう懸念があるので、これを避けるように選定するようにすればよい。
本例は、試料セル1が有底の断面円形の筒状容器である態様を前提とし、光源3からの光軸mを筒状容器の中心軸Oから変位した位置を過ぎるように配置すると、光源3から照射された光Bmは筒状容器の表面の法線H方向に対して鋭角で交差する方向から入射するため、法線H方向を挟んで入射角度と略同じ角度をもって正反射する。このため、光源3から入射されて試料セル1の表面にて反射された光Bm
0は、後方散乱光検出手段4に向かう検出光路STとは異なる方向の反射光路DTに向かう。
このとき、光源3からの照射光Bmのうち試料セル1(筒状容器)表面にて反射された光Bm
0の反射光路DTは試料セル1内の混合溶液W中で散乱した光のうち後方散乱光検出手段4に向かう光Bm
2の検出光路STと分離され、反射光路DTの光が検出光路STに紛れる懸念は少ない。
【0025】
また、光路調整手段5の代表的態様2としては、試料セル1の中心軸Oと光源3の光軸mとを直交位置から傾けて配置する態様が挙げられる。本例は、試料セル1の断面形状を問わず、光源3の光軸mを含む水平面に対して試料セル1の表面から反射される反射光路DTを傾斜配置するものである。この場合、試料セル1の傾斜角度としては、反射光路DTと検出光路STとを分離する上で必要な角度を選定し、しかも、撹拌手段2による撹拌動作等を実現可能な範囲で適宜選定して差し支えない。
更に、光路調整手段5の代表的態様3としては、試料セル1の入射部には光源3からの照射光Bmのうち入射部表面にて反射される反射光Bm
0が後方散乱光検出手段4に向かう方向とは異なる方向に向かうように予め成形された反射面を有する態様が挙げられる。本例は、試料セル1の入射部に所望の反射面を成形することで、試料セル1の入射部で反射される光を後方散乱光検出手段4に向かう検出光路STとは異なる方向の反射光路DTへと導くものである。
更にまた、光路調整手段5の代表的態様1〜3についてはこれらを適宜組み合わせてもよいことは勿論である。
【0026】
本実施の形態では、光学系は、少なくとも光源3、後方散乱光検出手段4及び光路調整手段5を含むものであれば適宜選定して差し支えないが、光学系の好ましい態様としては以下のものが挙げられる。
光学系の好ましい態様1としては、光源3から試料セル1の入射部に向かって照射される光Bmを透過し、かつ、混合溶液W中で散乱した光のうち後方散乱光検出手段4に向かう光Bm
2の検出光路STを光源3からの照射光路ATに対し途中で分岐させる光路分岐部材7を備える態様が挙げられる。本例は、光源3から試料セル1に向かう照射光路ATの途中に光路分岐部材7を配置したもので、光路分岐部材7としては、光源3からの光Bmを透過させる機能と、試料セル1から後方散乱光検出手段4に向かう光Bm
2の検出光路STを光源3からの照射光路ATから途中で分岐させる機能を有するものであればよい。この光路分岐部材7としては、例えば反射部材の一部に光源3からの光Bmを透過させる孔を設けたり、一方からは光を透過し、他方からの光を反射させる光学部材を用いるようにすればよい。
また、光学系の好ましい態様2としては、光源3からの照射光Bmが試料セル1内壁を通過した近接位置を焦点位置として収束する入射用の結像部材(図示せず)を有し、後方散乱光検出手段4に向かう光Bm
2が当該後方散乱光検出手段4の検出面を共役焦点位置として収束する検出用の結像部材(図示せず)を有する態様が挙げられる(
図5に示す実施の形態1参照)。
本例は、光源3からの照射した光Bmが試料セル1内壁を通過した近接位置を焦点位置として収束する態様であるため、焦点位置近傍のゲル粒子Gによって散乱した光は後方散乱光検出手段4に向かって当該後方散乱光検出手段4の検出面に共役焦点位置として収束する。このため、試料セル1の内壁近傍にて生成されたゲル粒子Gからの散乱光情報は後方散乱光検出手段4にピントの合った状態で検出される。
【0027】
更に、光学系の好ましい態様としては、光源3からの照射光Bmが試料セル1内壁を通過した近接位置を焦点位置として収束する入射用の結像部材(図示せず)を有し、後方散乱光検出手段4に向かう検出光路STの途中に絞り部材(図示せず)が配置され、後方散乱光検出手段4に向かう光Bm
2が絞り部材位置を共役焦点位置として収束する第1の検出用の結像部材(図示せず)を有すると共に、絞り部材を通過した光が後方散乱光検出手段4の検出面を共役焦点位置として収束する第2の検出用の結像部材(図示せず)を有する態様が挙げられる(
図14に示す実施の形態2参照)。
本例は、光源3からの照射した光Bmが試料セル1内壁を通過した近接位置を焦点位置として収束する態様であるため、焦点位置近傍のゲル粒子Gによって散乱した光は後方散乱光検出手段4に向かって絞り部材(例えばピンホール)位置を共役焦点位置として収束した後、絞り部材を通過した光が後方散乱光検出手段4の検出面を共役焦点位置として収束する。このため、試料セル1の内壁近傍にて生成されたゲル粒子Gからの散乱光は絞り部材を通過するが、その他の散乱光は絞り部材を通過せず、ゲル粒子Gからの散乱光のみが後方散乱光検出手段4にピントの合った状態で検出される。
また、光学系の好ましい態様4としては、光源3から試料セル1に向かう光束を絞り部材(図示せず)を介して絞り込み、光束を、混合溶液W中で散乱した光のうち後方散乱光検出手段4に向かう光束よりも狭く設定する態様が挙げられる。本例は、試料セル1内の混合溶液W中に絞った光束を照射させ、混合溶液W中で散乱して後方散乱光検出手段4に向かう光束を入射光の光束の周囲から導くものである。
【0028】
また、試料セル1の好ましい態様としては、ゲル化反応を恒温環境下で行うという観点からすれば恒温槽8内に設けられる態様が挙げられる。
更に、試料セル1の別の好ましい態様としては、それ自体又はその周囲に、光源3からの照射光Bmのうち混合溶液W中で後方散乱光検出手段4に向かう後方散乱光成分以外の透過又は試料セル1内壁での散乱で生じる迷光成分が除去させられる迷光除去手段9を備えている態様が挙げられる。
本例は、試料セル1の入射部から入射された光が入射部と異なる試料セルの周壁(外壁、内壁)で反射散乱すると、その反射散乱光の一部が迷光として後方散乱光検出手段4に誤って捕捉される懸念があるため、このような検出に影響する迷光が生じない構成を採用することを企図したものである。ここで、迷光除去手段9としては、試料セル1の周壁に迷光成分が吸収可能な吸収部材を設けたり、試料セル1の内壁に迷光成分が乱反射可能な粗面を設けるなど適宜選定して差し支えない。
更にまた、計測手段6による計測結果を目視するという観点からすれば、計測手段6による計測結果が表示される表示手段10を備えていることが好ましい。
また、本実施の形態では、前述した後方散乱光検出手段4を第1の散乱光検出手段とし、更に、前記混合溶液W内で散乱した光のうち光源3側の方向に戻る後方散乱光成分以外の散乱光成分を検出する第2の散乱光検出手段11と、を備え、計測手段6は、第1の散乱光検出手段4の検出出力の変動成分の計測結果に基づいて混合溶液W内のゲル粒子Gの生成開始時点が含まれるゲル粒子Gの生成状態を判別し、第1の散乱光検出手段4及び第2の散乱光検出手段11の検出出力又は第2の散乱光検出手段11の検出出力の変動成分の計測結果に基づいて前述した以外のゲル粒子Gの生成状態を判別するようにしてもよい。
つまり、第1の散乱光検出手段4の検出出力の変動成分に基づいて混合溶液W内のゲル粒子Gの生成開始時点が含まれるゲル粒子Gの生成状態を判別し、これ以外のゲル粒子Gの生成状態については、第1の散乱光検出手段4と共に第2の散乱光検出手段11の検出出力、あるいは、第2の散乱光検出手段11の検出出力の変動成分に基づいて判別する。
【0029】
次に、
図1(a)(b)に示すゲル粒子測定装置の作動について説明する。
先ず、ゲル化反応を
図2(a)に模式的に示す。
同図において、試料Sの目的物質Stに対し特異的に反応する試薬Rが存在すると、試料S中の目的物質Stの濃度に依存した割合にて、その目的物質Stが試薬Rと特異的に反応する現象が起こる。この反応過程において、試薬Rは、目的物質Stの刺激を受けて所定の因子が活性化し、これに起因して所定の酵素が活性化するタイミングで例えば水溶性のタンパク質が酵素による分解反応にて不溶性のタンパク質に転換し、ゲル粒子Gの出現に至ることが起こる。
より具体的には、エンドトキシンを例に挙げて、エンドトキシンのゲル化反応過程を模式的に示すと、
図3の通りである。
同図において、(1)に示すエンドトキシンの刺激が例えばリムルス試薬に伝わると、先ず(2)に示すように、因子C(Factor C)が活性化されて活性化因子C(Activated Factor C)となり、次いで、活性化因子Cの作用により、(3)に示すように、因子B(Factor B)が活性化されて活性化因子B(Activated Factor B)になる。この後、活性化因子Bの作用により、(4)に示すように、Pro-Clotting酵素がClotting酵素になり、(5)に示すように、このClotting酵素がCoagulogen(水溶性タンパク質)を分解してCoagulin(不溶性タンパク質)を生成させる。このCoagulin(不溶性タンパク質)は、この条件下で撹拌が行われると全体のゲル化が阻害されるに伴ってゲル粒子Gとして出現し、一方ここで静置すると(6)に示すように、溶液系全体が重合化・ゲル化を起こす。
【0030】
つまり、試料Sの目的物質Stがエンドトキシンである場合には、混合溶液Wに対して一定の撹拌状態を与えることで混合溶液W全体のゲル化を阻害しつつ、この状態で、リムルス試薬Rにエンドトキシンの刺激が伝わると、Clotting酵素の周りにCoagulin(不溶性タンパク質)のゲル粒子Gを産出させることが可能であり、Coagulin(不溶性タンパク質)がゲル粒子Gとして生成された後に、ゲル粒子Gが順次生成される反応過程を経ることが理解される。
また、リムルス試薬Rの反応の流れ(カスケード)にエンドトキシンの刺激が伝わる速度(リムルス反応速度)はエンドトキシン濃度に依存的であり、エンドトキシン濃度が高い程リムルス反応速度が速く、Coagulin(不溶性タンパク質)からなるゲル粒子Gの出現タイミングが早いことが見出された。
よって、散乱光変化を精度良く検出するようにすれば、ゲル粒子Gの生成開始時点として前記Coagulin(不溶性タンパク質)からなるゲル粒子Gの出現タイミングを把握することは可能であり、本実施の形態に係るゲル粒子測定装置の測定原理の基本である。
このようなゲル粒子測定装置の測定原理は、例えば従前のゲル化法や比濁時間分析法の測定原理(リムルス試薬Rによる反応過程において、静置した条件下、活性化されたClotting酵素の影響で最終的にゲル化するに至り、このゲル化する過程を濁度により定量測定する態様)とは全く相違するものである。
【0031】
ここで、ゲル粒子測定装置の測定原理を
図2(b)に模式的に示す。
本実施の形態のゲル粒子測定装置では、
図2(b)の工程Iに示すように、試料S及び試薬R溶液の混合溶液Wにゲル粒子Gがない場合(混合溶液Wがゾル相である場合に相当)には、光源3(
図1(a)参照)から試料セル1内に入射する照射光Bm
1はゲル粒子Gによって遮られることがないため、その照射光Bm
1がゲル粒子Gによって散乱することはなく、当然ながら光源3側の後方に戻る後方散乱光成分はない。このため、後方散乱光検出手段4にて検出される散乱光強度は略0に保たれる(
図2(c)I工程P
1参照)。
そして、
図2(b)の工程IIに示すように、試料S及び試薬R溶液の混合溶液Wにゲル粒子Gが生成開始し始めた場合(混合溶液Wがゾル相からゲル相へ相変化し始めた場合に相当)、例えばエンドトキシンの場合のCoagulin(不溶性タンパク質)のゲル粒子Gが産出し始めると、光源3から試料セル1内に入射された照射光Bm
1の一部は産出されたCoagulin(不溶性タンパク質)からなるゲル粒子Gの存在によって一部遮られるため、その照射光Bm
1の一部が散乱することになり、その散乱光のうち光源3側の方向に戻る後方散乱光Bm
2成分が後方散乱光検出手段4に検出されることになる。このため、後方散乱光検出手段4による検出出力が安定領域である0レベルから立ち上がり変化しようとする(
図2(c)II工程P
2参照)。この場合、照射光Bm
1の当たる試料セル1直後の後方散乱光Bm
2は、溶媒による減衰をほとんど受けずに検出される。
このとき、本例では、光源3から試料セル1への照射光Bm
1は、
図1(a)(b)に示すように、試料セル1内に入射される照射光Bm
1以外に、試料セル1の表面にて反射光Bm
0として反射されるが、本例では、光路調整手段5によって試料セル1の入射部表面を調整しているため、後方散乱光検出手段4に向かう後方散乱光Bm
2の検出光路STと、試料セル1表面からの反射光Bm
0の反射光路DTとが異なるようになっている。このため、反射光Bm
0成分が後方散乱光検出手段4への検出光路STに紛れ込んで検出される懸念はない。
この後、
図2(b)の工程IIIに示すように、試料S及び試薬R溶液の混合溶液Wにゲル粒子Gの生成が次第に進行していく場合には、光源3から試料セル1内に入射した照射光Bm
3は順次生成される多くのゲル粒子Gの存在によって散乱度合が次第に増加することになり、後方散乱光検出手段4に検出される光源3側の後方に戻る後方散乱光Bm
3成分も次第に増加する。このため、後方散乱光検出手段4による検出出力が順次増加していき、後方散乱光検出手段4にて検出される散乱光強度は変化点P
2を境に順次立ち上がり変化していく(
図2(c)III工程P
3参照)。一方、ある程度強度が増加すれば、前方や側方散乱も、溶媒による減衰以上に強度が上がり検出されるようになる。しかし初期の散乱は減衰により検出されず、試料セル1直後での後方散乱検出が遅れる。
上述した実施の形態では、混合溶液W中に照射された照射光Bmの後方散乱光の変動成分に基づいて、他方向の散乱に比べて有意に早く混合溶液Wがゾル相からゲル相へ相変化するタイミングにつながるゲル粒子Gの生成開始時点(
図2(b)II工程P
2に相当)を判別する態様が示されている。
【0032】
一般に、臨床試料におけるエンドトキシン測定の要請は、特に救命救急という目的の下では、簡便で早く測れることが第一に求められるゆえんである。
従来法の比濁時間分析法で問題になっていた事項である‘感度の悪さによる測り落とし’と、‘測定時間の長さによる不便さ’は、上述した測定方式でより確実に解消される。
つまり、本実施の形態に係るゲル粒子測定装置は、原理的に、均一に試料及びリムルス試薬からなる混合溶液を撹拌することで、均一な反応の下、混合溶液系全体としてではなく、局所での微小なゲル粒子を発生させ、それをレーザ光のようなコヒーレントな均一の光を当てることで散乱を起こさせ、それを検出することにより、エンドトキシンが加わったことによるゲル粒子の出現というゾル相からゲル相への相変化につながる相変化点を検出し、その相変化点に至るまでの時間を測ることにより、リムルス試薬におけるエンドトキシンの量を推量することが可能になるものである。
要約すれば、本実施の形態に係るゲル粒子測定装置は、混合溶液系全体の変化(ゲル化)を追うことなく、相変化を起こすまでのタイミング(ゲル粒子の生成開始時点)がエンドトキシンに依存的な反応であることに着眼して構成されたものであり、これにより、従来法の比濁時間分析法に比べて、エンドトキシンを早く検出することができるゆえんである。
【0033】
特に、本実施の形態では、散乱光のうち光源3側の後方に戻る後方散乱光成分に着眼しているが、この理由は以下の通りである。
一般に、
図4(a)に示すように、粒子に例えばレーザ光等のコヒーレントな均一の光(コヒーレント光)が照射されたモデルを想定すると、コヒーレント光は粒子の存在によって散乱することは広く知られている。このような散乱現象において、粒子の大きさと散乱光の関係とについて調べたところ、単一光の入射によって生じる散乱光の強さ及び方向性は例えば
図4(b)に示すような関係が見られる。同図において、散乱現象としては、粒子に対して入射した光と同方向に発生する前方散乱、入射した光と直角方向に発生する側方散乱、そして入射光と反対の方向に発生する後方散乱がある。
このような散乱現象においては、発生するエネルギはさておき、粒子の大きさと散乱の方向を考えると、粒子が大きくなるほど前方散乱が主になり、粒子が小さいと後方散乱を含めた全方位への散乱が観察される。このような観察結果からすれば、大きな粒子を捉えるには前方散乱が有利と言える。一方、無の状態から発生し、成長するという現象の下、最初に発生する小さな粒子を早く捉えるためには、どの方向でもよいとはいえるが、エネルギが小さいことを考えると、粒子の存在する溶媒中における散乱光の減衰を考慮したときには、その減衰の少ない(溶媒の影響による吸収の少ない)後方散乱が適していると考えられる。
とりわけ、本実施の形態でのゲル粒子測定装置は、無から生成する粒子(ゲル化という相変化)を捉えるため、なるべく早く発生する微小な粒子を検出するという目的に、試料セルへの入射光照射直下での後方散乱によるゲル粒子検出は他のいかなる方向の散乱検出よりも優っているものと推測される。
このように、例えばリムルス試薬による相変化によって出現する微小粒子を、早く感度よく検出することを目的として、後方散乱による検出方式を採用することで前記相変化のタイミングをより測ろうとするものである。
要するに、微小粒子出現により発生する散乱光のうち後方散乱光成分を検出する方式は、同一反応においても小さな粒子を早く検出できることと、粒子の浮遊する溶媒による減衰無く散乱光を検出することができることの2つが優れている点である。
【0034】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明をより詳細に説明する。
◎実施の形態1
本実施の形態1に係るゲル粒子測定装置は、試料Sとして目的物質としてエンドトキシンを含むものを対象とし、試薬Rとして目的物質であるエンドトキシンとゲル化反応を起こすものが用いられている。
−試薬−
本実施の形態においては、試薬Rは、エンドトキシンとの間でゲル化反応する試薬基剤を少なくとも含んでいればよいが、ゲル粒子Gの形成を促進するために、試薬基剤に粒子形成因子を添加するものが用いられている。
試薬基剤は、目的物質とゲル化反応する因子(酵素等)を含んでいればよい。例えば目的物質がエンドトキシンやβ−D−グルカンであれば代表的にはリムルス試薬が挙げられるが、リムルス試薬に限定されるものではなく、アメリカカブトガニ(Limulus)以外のカブトガニ類のアメーバ状血球成分に含まれる因子群がエンドトキシンやβ−D−グルカンに特異的に反応するものであれば、当該アメーバ状血球水解物を利用して試薬基剤を作製するようにしてもよいことは勿論である。
また、粒子形成因子は、試薬基剤に添加され、生物的に不活性であって試料Sに対して可溶性を有し且つ0.002ないし1%の濃度で溶解すると共に、ゲル粒子Gに至る産物を凝集させる。尚、本願における粒子形成因子の濃度値は容量パーセント(v/v)で表記したものである。
【0035】
ここで、粒子形成因子の各要件の必要性について補足する。
先ず、試料Sに対して可溶性であることを要する。仮に、不溶性である場合には、ゲル粒子Gの生成開始時点を正確に把握する点で邪魔になる懸念があるからである。
また、粒子形成因子は、ゲル粒子Gに至る核となる産物(例えば酵素の産物)の凝集を促進させる凝集因子として働き、ゲル粒子Gの形成を促進する作用を奏するものであればよい。この場合、粒子形成因子としては、ゲル粒子Gの形成に至るリムルス反応最終産物コアグリンを一定サイズに集積させる作用を奏するものと推測される。つまり、粒子形成因子を加えると、時間の経過に伴って生じる不溶性蛋白質コアグリンの凝集を、無制限、無定型な大きさの様々な粒子サイズを生成するのではなく、所定範囲の粒子サイズ(例えば粒子サイズのレベルに対し小さいSサイズに偏った範囲)に集中したゲル粒子Gに至る産物を生成し、これが凝集してゲル粒子Gに早期に至るものである。ここでいう‘所定範囲の粒子サイズ’とは凝集し易い比較的小サイズのものであればよく、ある範囲内に含まれていればよい。
そして、粒子形成因子は、0.002〜1%の濃度であることを要する。この場合、0.002%未満である場合には、ゲル粒子Gの形成は制御されず、小から大に至る粒子形成が発生し、結果的に形成が抑制される。一方、1%を超えると、過剰な粒子形成因子が加わり、コアグリン分子が分散して相互の作用が却って干渉し合う結果、逆に凝集反応が抑制される傾向が見られる。
更に、粒子形成因子は生物的に不活性であることを要する。これは、例えば生物的に活性がある因子では、因子の特性が活性に伴って変化するため、因子としての作用が不安定になるばかりか、試薬基剤による反応自体にも影響する懸念がある。
また、粒子形成因子の代表的態様としては、例えば可溶性の熱変性蛋白質が挙げられる。この熱変性蛋白質としては、血漿蛋白質類、酵素類、植物蛋白質類、卵白アルブミンなどを含む。例えば血漿蛋白質は希釈溶液を熱処理(例えば120℃・20分高圧滅菌処理)することで可溶性の熱変性蛋白質として得られる。
更にまた、粒子形成因子としては、粒子形成という微小なゲル化の核となる物質であればよいため、必ずしも熱変性蛋白質である必要はなく、粒子形成因子としての別の代表的態様としては、生物由来の高分子又は石油高分子化学成分由来の多孔質微粒子が挙げられる。但し、これらについても、可溶性で且つ生物的に不活性であることを要する。
前記生物由来の高分子には、例えばセルロース、多糖類、糖蛋白質などが含まれ、また、石油高分子化学成分由来の多孔質微粒子には例えばナノパーティクル樹脂などが挙げられる。
【0036】
−ゲル粒子測定装置−
<ゲル粒子測定装置の全体構成>
本実施の形態において、ゲル粒子測定装置は
図5及び
図6に示すように構成されている。
同図において、ゲル粒子測定装置は、エンドトキシンを含む試料Sが注入される試料セル100を有し、例えば試料Sの目的物質としてのエンドトキシンの濃度を試薬R(本例ではリムルス試薬に粒子形成因子を添加した試薬)を用いたゲル化反応にて測定するものである。
本例では、試料セル100は、予め決められた測定ステージに設置されるが、ヒータ116付きの恒温槽115内に配置されて試料S及び試薬Rからなる混合溶液Wを一定の恒温環境(例えば37℃)下におき、測定条件を一定にするようになっている。
また、符号120は試料セル100内の混合溶液Wを撹拌するために試料セル100内の磁性撹拌棒121を駆動する撹拌駆動装置であり、例えば混合溶液Wに対して一定の撹拌状態を与え、混合溶液Wを均一に撹拌しながら混合溶液W全体がゲル化するのを抑制するようになっている。
特に、本例では、撹拌駆動装置120は、試料セル100内の底壁に内蔵された磁性体からなる撹拌棒(スターラーバー)121に対して磁力による撹拌力を作用させる撹拌駆動源(マグネチックスターラー)として構成されている。
更に、試料セル100の周囲には試料セル100内の混合溶液Wでのゲル化反応を測定するための光学系130が設けられている。
【0037】
<試料セルの構成例>
次に、本実施の形態で用いられる試料セル100の構成例、及び、試料セル100への撹拌棒121、試料Sの導入例を
図7(a)(b)に基づいて詳述する。
同図において、試料セル100は、例えばガラス材料にて一体的に成形され且つ上部が開口した横断面円形の有底の筒状容器101からなり、その上部にフランジ部102を形成すると共に、このフランジ部102の下部にくびれ部103を形成し、フランジ部102及びくびれ部103には小径孔部104を形成し、この小径孔部104より大径の大径空間部105を内部に形成したものである。
そして、この試料セル100内には、エンドトキシンを含む試料Sとゲル化反応を生ずる試薬106が例えば凍結乾燥粉末状にて予め無菌的かつ無エンドトキシン的(“エンドトキシンフリー”あるいは“パイロジェンフリー”と一般的にはいわれている)に収容されると共に、磁性材料を用いた撹拌棒121が予め収容される。
更に、この試料セル100の小径孔部104にはゴム等の弾性材料からなる密封栓108が嵌め込まれている。この密封栓108は断面略T字状に成形されており、その頭部108aが試料セル100のフランジ部102に載置され、その脚部108bが小径孔部104に密接した状態で挿入されている。尚、密封栓108の脚部108bの一部には切欠108cが設けられている。
更にまた、試料セル100のフランジ部102及び密封栓108の頭部108aは例えばアルミニウム製のキャップ状の保持カバー109で覆われ、この保持カバー109は試料セル100のフランジ部102の周壁に嵌り込み、密封栓108を外側から抱き込み保持するようになっている。そして、この保持カバー109の例えば中央には密封栓108の頭部108aに面して孔部109aが形成されている。
【0038】
また、試料セル100は、
図7(a)(b)に示すように、筒状容器101の小径孔部104を開放した状態で試薬106及び撹拌棒121を収容し、この状態で、筒状容器101の小径孔部104を密封栓108で密封すると共に、この密封栓108を保持カバー109で覆うようにしたものである。
このような試料セル100は、ゲル粒子測定装置の付属品や測定キットとしてユーザーに供給される。
そして、本態様の試料セル100の筒状容器101への試料Sの導入例としては、例えば保持カバー109の孔部109aを利用して密封栓108に注射針のような穿孔具(図示せず)にて穿孔し、この穿孔を通じて注入器(図示せず)にて試料Sを注入するようにしたものが挙げられる。更に、試料Sの導入を容易に行うため、筒状容器101内が大気圧に対して所定の負圧レベルを保つように密封栓108の密封仕様を設定してもよい。
【0039】
<光学系の全体構成>
本例では、光学系130は、
図5に示すように、コヒーレントな光Bmが照射されるレーザ光源131を有し、このレーザ光源131からの照射光Bmをコリメータレンズ132を介して平行にした後、プリズム型ミラー133を経てレーザ光源131の光軸mの向きを略90°変換することで、試料セル100に向かってレーザ光源131からの照射光Bmを案内するようにしたものである。そして、プリズム型ミラー133と試料セル100との間の照射光路ATのうち、プリズム型ミラー133の直後には絞り部材としてのピンホール134(孔径d1:例えば2mm)が配置され、ピンホール134で絞られた光Bmは結像レンズ135を介して試料セル100の所定部位に収束するようになっている。
また、光学系130は、試料セル100の外部でレーザ光源131と同じ側に後方散乱光検出器140を有している。この後方散乱光検出器140は、レーザ光源131からの照射光Bmが試料セル100内に入射したときに、試料セル100内の混合溶液W中に生じたゲル粒子Gにて散乱した光のうち、レーザ光源131からの照射光路AT側に戻る後方散乱光成分を検出するものである。そして、レーザ光源131からの照射光路ATのうち、ピンホール134と結像レンズ135との間には反射ミラー141が配置され、試料セル100から後方散乱光検出器140に向かう後方散乱光は反射ミラー141にて略90°光軸mを変換するように反射された後、結像レンズ142を介して後方散乱光検出器140の所定部位に収束する。
ここで、反射ミラー141にはピンホール134にて絞られた光Bmがそのまま通過する孔部141a(孔径d2>d1:例えば5mm)が予め形成されており、また、試料セル100からの後方散乱光は入射焦点位置から周囲に拡散しながら結像レンズ135を透過して略平行光になって反射ミラー141に至ることになるが、反射ミラー141に至る後方散乱光Bm
2の光束は反射ミラー141の孔部141aの孔径d2に比べて十分に広く、反射光Bm
2のうち反射ミラー141の孔部141aでの減衰量は極めて低い。
【0040】
<光路調整手法1>
本実施の形態では、試料セル100は、
図5及び
図8(a)に示すように、横断面円形の筒状容器101を有しており、レーザ光源131からの照射光路ATは筒状容器101の中心軸Oから変位した位置を過ぎるように設定されている。つまり、レーザ光源131からの照射光Bmと平行で筒状容器101の中心軸Oを過ぎる仮想光路L
0に対し、レーザ光源131からの照射光路ATがy>0だけ変位した態様である。例えば筒状容器101の外径が11.8mmである態様でy=2.5mmである。
このとき、レーザ光源131からの照射光Bmが水平面上で筒状容器101の表面の法線H方向に対して鋭角の角度αで交差する方向から入射すると、レーザ光源131からの照射光Bmの一部Bm
1は筒状容器101の入射部表面を経て筒状容器101の周壁を屈折通過して混合溶液W内に入射し、前述した照射光Bmの残りBm
0は法線H方向を挟んで入射角度αと略同じ角度をもって正反射する。
一方、筒状容器101内に入射した照射光Bm
1は混合溶液W中で発生したゲル粒子Gに当たると散乱光として散乱し、散乱光のうち後方散乱光検出器140に向かう後方散乱光Bm
2成分が入射光Bm
1と略同じ光路を経て筒状容器101の周壁を屈折通過し、照射光路ATと同じ光路を含む検出光路STへ向かって戻る。
この状態において、レーザ光源131から照射されて筒状容器101の表面にて反射された反射光Bm
0は後方散乱光検出器140に向かう検出光路STと異なる方向の反射光路DTに向かうため、反射光Bm
0が検出光路STに紛れ込む懸念はない。
ここで、検出光路STと反射光路DTとの間の角度(2α)については、筒状容器101の外径、肉厚や素材を考慮し、レーザ光源131からの照射光路ATの変位量yに応じて適宜選定して差し支えない。
【0041】
<光路調整手法2>
本実施の形態では、試料セル100は、
図6及び
図8(b)に示すように、セルホルダ110によって保持されている。本例では、セルホルダ110は、鉛直方向に延びる支柱111と、試料セル100が保持可能な保持部が予め形成されたホルダアーム112とを有し、支柱111には当該支柱111に交差する水平方向を揺動支点とする揺動軸113を介してホルダアーム112を揺動可能に支持し、ホルダアーム112の保持部に試料セル100を保持させた後、ホルダアーム112を揺動軸113を中心に適宜揺動させ、揺動軸113と同軸に設けられた図示外の止め具にて所定の揺動位置にホルダアーム112を固定するようにしたものである。
このようなセルホルダ110を用いれば、ホルダアーム112を所定の揺動位置に固定することで、試料セル100は鉛直軸z
0に対して筒状容器101の中心軸Oをβだけ傾斜させた状態で配置される。
この場合、レーザ光源131からの照射光Bmは、略水平方向から照射され、鉛直方向では試料セル100の周壁表面の法線H方向に対してβだけ傾斜して入射するため、法線H方向を挟んで入射角度βと略同じ角度をもって正反射する。
この状態において、レーザ光源131から照射されて試料セル100(筒状容器101)の表面にて反射された反射光Bm
0は、水平面に対して鉛直方向に2βの角度をもった反射光路DTに向かうため、後方散乱光検出器140に向かう検出光路STに紛れ込む懸念はない。
ここで、試料セル100の傾斜角度βについては、反射光路DTと検出光路STとを正確に分離するという観点から試料セル100の支持構造等に応じて適宜選定して差し支えない。
尚、本実施の形態では、セルホルダ110は揺動可能なホルダアーム112を用いた態様であるが、これに限られるものではなく、例えば恒温槽115を構成するヒータ付き加温ブロックに試料セル100の収容部、レーザ光源131あるいは後方散乱光検出器140に通じる光路を設けるなど、加温ブロックそのものをセルホルダとして利用するようにしてもよい。
【0042】
<焦点調整手法>
本実施の形態では、光学系130で用いられる結像レンズ135,142の焦点調整は以下のように設定されている。
結像レンズ135は、レーザ光源131からの照射光Bmが試料セル100の周壁を通過した直後の位置を入射焦点位置Q
1として収束するようになっている。ここで、入射焦点位置Q
1と照射光Bmが入射する試料セル100の周壁表面位置との間の距離をg(
図8(a)参照)とすれば、gは試料セル100の周壁の肉厚寸法より大きく、かつ、試料セル100の内壁面に近接するという条件で適宜選定するようにすればよい。例えば外径11.8mmで肉厚0.7mmの試料セル100である場合、gは1.0〜2.5mmの範囲で選定するようにすればよい。詳細は実施例2にて後述する。
また、結像レンズ142は、後方散乱光検出器140に向かう照射光Bm
2が後方散乱光検出器140の検出面を共役焦点位置Q
2として収束するようになっている。
【0043】
<データ解析装置>
図5及び
図6において、符号160は後方散乱光検出器140からの検出出力を取り込み、例えば
図9に示すデータ解析処理を実行するデータ解析装置、符号170はデータ解析装置160で解析された解析結果を表示するディスプレイである。
このデータ解析装置160はCPU、ROM、RAM、I/Oインターフェースなどを含むコンピュータシステムにて構成されており、例えばROM内に
図9に示すデータ解析処理プログラムを予め格納しておき、後方散乱光検出器140からの検出出力に基づいてCPUにてデータ解析処理プログラムを実行するものである。
尚、後方散乱光検出器140からの検出出力は例えば図示外の増幅器により電流電圧変換された後、AD変換器によりAD変換され、データ解析装置160に取り込まれる。
【0044】
次に、本実施の形態に係るゲル粒子測定装置の作動について説明する。
本実施の形態において、
図5及び
図6に示すように、予め試薬Rが収容された試料セル100にエンドトキシンを含む試料Sを注入した後、図示外のスタートスイッチをオン操作すると、ゲル粒子測定装置による測定シーケンスが開始される。
この測定シーケンスは、撹拌駆動装置120にて撹拌棒121が回転され、試料セル100内の試料S及び試薬Rからなる混合溶液Wを撹拌する。このため、混合溶液W全体が均一に撹拌されると共に、混合溶液W全体としてはゲル化することが抑制される。
更に、測定シーケンスは、レーザ光源131からコヒーレントな光Bmを試料セル100内の混合溶液Wに照射し、混合溶液W中で散乱した光のうちレーザ光源131側の方向に向かう後方散乱光成分を後方散乱光検出器140にて検出すると共に、後方散乱光検出器140の検出出力をデータ解析装置160に取り込む。
このとき、レーザ光源131からの照射光Bmは、
図5及び
図8(a)に示すように、コリメータレンズ132、プリズム型ミラー133を経た後に試料セル100に向けて光軸変換され、しかる後に、ピンホール134にて外径d1(本例ではd1=2mm)の光束に絞られ、反射ミラー141の孔部141a(孔径d2>d1:本例ではd2=5mm)をそのまま通過し、結像レンズ135にて試料セル100の予め決められた入射焦点位置Q
1を収束点として試料セル100に入射する。
【0045】
ここで、レーザ光源131からの照射光Bmが試料セル100の入射部に入射した状況について補足すると、前述した照射光Bmは、
図8(a)に示すように、試料セル100の周壁表面からの反射光Bm
0と、試料セル100の周壁を屈折入射して試料セル100内の混合溶液Wに入射する透過光Bm
1とに分かれる。尚、試料セル100の周壁表面にて一部散乱する光成分もある。
この状態において、試料セル100内の混合溶液W中にゲル粒子Gが生成されたとすると、透過光Bm
1はゲル粒子Gに当たって散乱し、その散乱光のうち後方散乱光Bm
2成分が試料セル100の周壁の入射部側に戻り、主として透過光Bm
1の入射経路と同じ経路を経て照射光路ATと同じ領域にある検出光路STへと出射される。
一方、試料セル100の周壁表面での反射光Bm
0は、
図8(a)(b)に示すように、反射光路DTに沿って反射されるが、この反射光路DTは、水平面において検出光路STとは2αの角度を持ち、しかも、鉛直面において検出光路STとは2βの角度を持つため、反射光路DTは検出光路ST(本例では照射光路ATと同じ経路を含む)とは全く異なる方向に向かうものである。このため、試料セル100の周壁表面で反射された反射光Bm
0成分が検出光路STに向かう後方散乱光Bm
2成分と渾然一体に紛れ込む懸念は全くない。
【0046】
このように、ゲル粒子Gからの後方散乱光Bm
2は、検出光路STを通じて後方散乱光検出器140へ向かうことになるが、ゲル粒子Gが結像レンズ135の入射焦点位置若しくはその付近で生成されたとすると、試料セル100から出射した後方散乱光Bm
2はゲル粒子Gを起点として拡散放射することになり、レーザ光源131からの照射光Bmの光束よりも広い光束になって結像レンズ135に到達する。そして、結像レンズ135に到達した後方散乱光Bm
2は結像レンズ135を通過することで略平行な結像レンズ135の口径に略対応した外径d3(d3>>d1)の光束に変化した後、反射ミラー141に至り、反射ミラー141にて略90°の光軸変換した後に、後方散乱光検出器140に向かう。
この状態において、後方散乱光Bm
2の検出光路STは照射光Bmの照射光路ATの途中から分離されるため、後方散乱光検出器140はレーザ光源131や反射ミラー141よりもレーザ光源131側にある光学部品(コリメータレンズ132、プリズム型ミラー133)とは無関係な場所に設置することが可能である。尚、反射ミラー141には孔部141aが設けられているため、後方散乱光Bm
2の一部は孔部141aを通じて損失することになるが、後方散乱光Bm
2が反射される反射ミラー141の反射面は孔部141aに比べて十分に広いため、後方散乱光Bm
2の損失量は極わずかである。
【0047】
この後、反射ミラー141で反射された後方散乱光Bm
2は結像レンズ142に至り、結像レンズ142にて後方散乱光検出器140の検出面を共役焦点位置Q
2として収束する。このため、入射焦点位置Q
1若しくはその近傍に位置するゲル粒子Gからの後方散乱光Bm
2は後方散乱光検出器140の検出面にピントの合った状態で結像される。
ここで、後方散乱光検出器140の出力例を
図10(a)に示す。
同図において、ゲル粒子Gからの後方散乱光Bm
2は後方散乱光検出器140の検出面の略中央にピントが合った状態で出力される。また、試料セル100表面からの乱反射光のごく一部は検出光路STに紛れ込むことはあり得るが、試料セル100表面は結像レンズ135の入射焦点位置Q
1とは距離gだけ離れているため、後方散乱光検出器140の検出面では試料セル100表面からの乱反射光Bm
2’成分はゲル粒子Gからの後方散乱光Bm
2からは離れた箇所にピントが合っていない状態で出力される。
また、
図10(a)に示す出力例について、散乱光強度分布を測定したところ、
図10(b)に示す結果が得られた。同図によれば、ゲル粒子Gからの後方散乱光Bm
2成分は、試料セル100表面からの乱反射光Bm
2’成分に比べて強い強度を示すため、仮に、試料セル100表面からの乱反射光Bm
2’成分が紛れていたとしても、これを除外して、ゲル粒子Gからの後方散乱光Bm
2を検出することは可能である。
【0048】
一方、試料セル100内の混合溶液W中では、リムルス試薬にエンドトキシンの刺激が伝わり、
図3に示すようなリムルス反応が起こり、混合溶液W全体のゲル化が抑制された状態で、ゲル粒子Gが順次生成されていく。
本実施の形態では、レーザ光源131からのコヒーレントな光Bmの通過面積内にゲル粒子Gが例えば1個生成されたときに、混合溶液Wがゾル相からゲル相に変化する相変化点のタイミングにつながるゲル粒子Gの生成開始時点として把握されるものである。
このような反応過程において、データ解析装置160は、例えば
図9に示すように、後方散乱光検出器140からの検出出力を散乱光量データ(デジタルデータ)として読み込んだ後、平均化・フィルタリング化処理を行って散乱光量データの変動成分を計測する。
次いで、散乱光量データの変動成分に基づいて、後方散乱光検出器140にて検出された散乱光量データの増加変化点(
図2(c)II工程P
2に相当)を抽出し、予め規定されている検量線を参照することによって試料Sのエンドトキシン濃度(ETX濃度)を決定し、ディスプレイ170に表示する。
本例では、検量線は、エンドトキシン濃度(ETX濃度)と散乱光量データの増加変化点に至るまでの時間閾値との関係を示すものであり、散乱光量データの増加変化点に至る時間と検量線との相関に基づいてエンドトキシン濃度(ETX濃度)が決定される。また、ディスプレイ170にはエンドトキシン濃度(ETX濃度)以外に、散乱光量データの時系列データ、散乱光量データの変動成分の時系列計測データなどのデータが切り換え表示されるようになっている。
【0049】
<検量線の作成例>
ここで、本実施の形態で採用された検量線の作成例について説明する。
本実施の形態1に係るゲル粒子測定装置を用い、予め決められた実験条件を例えば以下のように定め、様々なエンドトキシン濃度(例えば10・1・0.1pg/ml)のサンプル試料を添加したときのリムルス試薬に対して、ゲル粒子測定装置で後方散乱光検出器140による散乱光強度(散乱光量データ)の変化を調べたものである。
本例で用いられる実験条件は以下の通りである。
・レーザ光源131:赤色光又は青色光
・後方散乱光検出器140:フォトダイオード
・撹拌棒(スターラーバー)121の回転数:1000rpm
・恒温条件:37℃
図11(a)は、エンドトキシン濃度10pg/ml、1pg/ml、0.1pg/mlのサンプル試料に対する散乱光強度につき夫々の時間経過を追ってプロットしたものである。尚、
図11(a)の縦軸は散乱光強度U(グラフ中の最大散乱光強度スケールをUyで表記)、横軸は反応時間(グラフ中の最大反応時間スケールをtx[例えば100min]で表記)を示す。
同図において、各条件の散乱光強度の変化は、いずれも略0の一定のレベルを維持する部分がある時間になって増加する傾向を示している。この散乱光強度の増加変化点はゲル粒子Gの生成開始時点(エンドトキシンを含むサンプル試料がゾル相からゲル相へと相変化するタイミング)に相当し、ゲル化開始時による増光を意味するものと想定される。
このゲル化開始時を求めるために、本実施の形態では、
図11(a)のグラフにおいて、マニュアルで、一定散乱光強度の部分を近似した直線(通常は0)と散乱光強度が増加傾斜していく変化部分を近似した直線との交点を求め、夫々ゲル化開始時間(反応時間)t(10)、t(1)、t(0.1)を求めた。
更に、本実施の形態では、
図11(a)のグラフから求めたゲル化開始時間t(10)、t(1)、t(0.1)の値を用いて検量線を作成するようにした(
図11(b)参照)。
図11(b)において、検量線は、X軸をエンドトキシン濃度であるETX濃度(log変換)、Y軸をゲル化開始時間として各ゲル化開始時間の値をプロットし、これらの値に対して最小自乗法による直線を描くことで求められるものである。このとき、各エンドトキシン濃度のサンプル試料に対するゲル化開始時間の値には直線関係が得られ、相関係数の高い相関が示される。
【0050】
本実施の形態では、試料セル100はそれ自体又はその周囲に別途工夫を施していないが、これに限られるものではなく、以下のような変形の形態1,2のような構成を採用しても差し支えない。
◎変形の形態1,2
変形の形態1,2では、試料セル100は、混合溶液W中で後方散乱光検出器140に向かう後方散乱光Bm
2成分以外の透過又は試料セル100内壁での散乱で生ずる迷光成分が除去させられる迷光除去部材150を備えている。
変形の形態1では、迷光除去部材150は、例えば
図12(a)に示すように、試料セル100の周囲を囲繞するように筒状カバー151を設置し、この筒状カバー151の内面を例えば黒色の光吸収材で覆うと共に、筒状カバー151の一部にはレーザ光源131からの照射光Bm及び後方散乱光検出器140に向かう後方散乱光Bm
2が通過する通孔152を開設するようにしたものである。
尚、本変形の形態では、試料セル100は透過性のある材料にて構成されているが、試料セル100内の混合溶液W中での光の透過をほとんど求めないため、試料セル100のうちレーザ光源131からの照射光Bm及び後方散乱光検出器140への後方散乱光Bm
2が通過する箇所に対応した一部だけを透過性を有する入射部とし、試料セル100の他の部位については非透過性の材料で構成したり、あるいは、非透過性の塗料を塗布するようにしてもよい。
更に、変形の形態2では、迷光除去部材150は試料セル100の外部に設ける態様に限られるものではなく、例えば
図12(b)に示すように、試料セル100の内壁周面に迷光除去部材150として微小粗面155を形成し、この微小粗面155にてレーザ光源131から照射された照射光Bmのうち迷光成分を乱反射させることで減衰させるようにしてもよい。
尚、本変形の形態では、迷光除去部材150を設けているが、必ずしも迷光除去部材150を用いる必要はなく、例えば予め迷光成分がどの程度影響するかを既知のエンドトキシン濃度のサンプル試料を用いて実測し、この実測値に基づいて例えば後方散乱光検出器140による検出出力から実測した迷光成分を補正するようにしてもよい。
【0051】
◎変形の形態3,4
本実施の形態では、試料セル100の入射部表面の調整に関し、光路調整手法1,2を採用しているが、これに限られるものではなく、以下のような変形の形態3,4の光路調整手法3を採用してもよい。
先ず、変形の形態3では、光路調整手法3は、
図13(a)(b)に示すように、例えば試料セル100が断面円形状の筒状容器101を有する態様において、レーザ光源131からの照射光Bmが入射される入射部に予め反射面180を成形し、その反射面180にて反射された反射光Bm
0の反射光路DTが後方散乱光検出器140に向かう後方散乱光Bm
2の検出光路STとは異なるようにしてもよい。ここで、反射面180の角度については反射光路DTに反射された反射光Bm
0が検出光路STに紛れ込まないように選定すればよい。
尚、本例において、光路調整手法1又は2を適宜組み合わせてもよいことは勿論である。
また、変形の形態4では、光路調整手法3は、例えば
図13(c)(d)に示すように、断面矩形状の筒状容器181を有する態様において、レーザ光源131からの照射光Bmが入射される入射部に予め反射面180を成形し、その反射面180にて反射された反射光Bm
0の反射光路DTが後方散乱光検出器140に向かう後方散乱光Bm
2の検出光路STとは異なるようにしてもよい。
尚、本例においては、光路調整手法3に加えて光路調整手法2を組み合わせてもよい。
【0052】
◎実施の形態2
図14は実施の形態2に係るゲル粒子測定装置の全体構成を示す。
同図において、ゲル粒子測定装置の基本的構成は、実施の形態1と略同様であるが、実施の形態1と異なる光学系130を備えている。尚、実施の形態1と同様な構成要素については実施の形態1と同様な符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
本実施の形態において、ゲル粒子測定装置は、実施の形態1と同様な試料セル100、撹拌駆動装置120を備えている。
更に、光学系130は、実施の形態1と同様に、レーザ光源131、コリメータレンズ132、プリズム型ミラー133、ピンホール134、結像レンズ135、後方散乱光検出器140及び反射ミラー141(孔部141aを具備)を備えているが、実施の形態1と異なり、反射ミラー141と後方散乱光検出器140との間の検出光路ST中に、複数(本例では3つ)の結像レンズ144〜146を配置し、第1の結像レンズ144と第2の結像レンズ145との間に孔径d4のピンホール147を配置したものである。
そして、本例では、ピンホール147の孔径d4(
図15(a)参照)は十分に小さい値、例えば1mm以下、好ましくは0.5mm以下のものが使用されている。
第1の結像レンズ144は、反射ミラー141にて反射された後方散乱光Bm
2をピンホール147位置(ピンホール147の光軸位置に相当)を共役焦点位置Q
21として収束するようにしたものである。
更に、第2の結像レンズ145は、共役焦点位置Q
21との間の距離を焦点距離とするもので、ピンホール147を通過した後方散乱光Bm
2を入射して平行光として出射させるものである。
更にまた、第3の結像レンズ146は、第2の結像レンズ145を通過した後方散乱光Bm
2を後方散乱光検出器140の検出面を共役焦点位置Q
22として収束するようにしたものである。
【0053】
本実施の形態によれば、ゲル粒子測定装置は実施の形態1と略同様に作動し、試料セル100内のゲル粒子Gからの後方散乱光Bm
2は、結像レンズ135を経て平行光になり、反射ミラー141にて光軸変換され、後方散乱光検出器140に向かうことになるが、この後の作動が実施の形態1と異なる。
つまり、反射ミラー141にて反射された平行な後方散乱光Bm
2は、第1の結像レンズ144を通過してピンホール147位置を共役焦点位置Q
21として収束する。このとき、試料セル100の入射焦点位置Q
1若しくはこの近傍に生成されたゲル粒子Gからの後方散乱光Bm
2成分は、
図15(a)に示すように、ピンホール147の孔部147a(孔径d4)位置で一旦結像することから、ピンホール147を通過する。しかしながら、例えば試料セル100表面からの乱反射光のごく一部が検出光路STに紛れ込んだとしても、試料セル100表面と入射焦点位置Q
1との間が距離gだけ離れているため、試料セル100表面からの乱反射光Bm
2’成分がピンホール147を通過することはできず、ピンホール147にて除去される。
この後、ピンホール147を通過した後方散乱光Bm
2成分は、第2の結像レンズ145にて平行光になり、第3の結像レンズ146を経て後方散乱光検出器140の検出面を共役焦点位置Q
22として収束する。このため、入射焦点位置若しくはその近傍に位置するゲル粒子Gからの後方散乱光Bm
2は後方散乱光検出器140の検出面にピントの合った状態で結像される。このとき、後方散乱光検出器140の出力例としては、
図15(b)に示すように、ゲル粒子Gからの後方散乱光Bm
2は後方散乱光検出器140の検出面にピントが合った状態で画像Imとして出力され、試料セル100表面からの乱反射光Bm
2’成分はピンホール147にて除去されることから、これが検出面に出力されることはない。
このため、本実施の形態によれば、実施の形態1に比べて、ゲル粒子Gからの後方散乱光Bm
2をより正確に検出することが理解される。
【0054】
◎実施の形態3
図16は本発明が適用されたゲル粒子測定装置の実施の形態3の要部を示す。尚、実施の形態1と同様な構成要素については、実施の形態1と同様な符号を付し、その詳細な説明は省略する。また、
図16では、
図6に図示したセルホルダ110やヒータ116は省略した。
同図において、ゲル粒子測定装置は、実施の形態1と略同様な試料セル100、撹拌駆動装置120及び光学系130を備えているが、実施の形態1と異なり、試料セル100の外部で例えば試料セル100を挟んで後方散乱光検出器(第1の散乱光検出器に相当)140とは反対側に第2の散乱光検出器190を設置し、第1の散乱光検出器140のみならず、第2の散乱光検出器190の検出出力をデータ解析装置160に取込み、第1の散乱光検出器140による検出出力に基づいて実施の形態1と同様にゲル粒子Gの生成開始時点を判別すると共に、第2の散乱光検出器190による検出出力(前方散乱光出力)に基づいてゲル粒子Gの生成開始時点以外のゲル粒子Gの生成状態情報(例えばゲル粒子Gの生成量など)を判別するようにしたものである。
本例では、第2の散乱光検出器190において、後方散乱光成分以外の散乱光成分を検出するようにしているが、第2の散乱光検出器190には例えば透過光成分も合わせて検出される可能性があるため、データ解析にあたり、第2の散乱光検出器190の検出対象として透過光成分を除去したいという要請がある場合には、散乱光成分と透過光成分とは位相がずれることを利用して偏向フィルタ191を設置し、透過光成分を除去するようにすればよい。
また、このような偏向フィルタ191を用いない場合には、第2の散乱光検出器190は透過光成分が含まれた散乱光成分を検出することになるが、データ解析装置160側で透過光成分が含まれることを考慮して散乱光成分を解析するようにしてもよいし、あるいは、データ解析装置160側で透過光成分を除去するように補正した後に散乱光成分を解析するようにしてもよい。
尚、第2の散乱光検出器190は基本的に散乱光成分を単独若しくは透過光成分と共に検出するものであるが、例えば散乱光成分除去用の偏向フィルタを介在させるようにすれば、散乱光成分を含まない透過光成分だけを解析することも可能である。
【0055】
また、本例では、第1の散乱光検出器140による検出出力を用いてゲル粒子Gの生成開始時点を判別し、第2の散乱光検出器190を用いてゲル粒子Gの生成開始時点以外のゲル粒子Gの生成状態情報を判別するようにしているが、これに限られるものではなく、第1の散乱光検出器140及び第2の散乱光検出器190の両方の検出出力を用いてゲル粒子Gの生成開始時点以外のゲル粒子Gの生成状態情報を判別するようにしてもよい。この場合、第1の散乱光検出器140及び第2の散乱光検出器190の検出出力の差分情報を用いることにより、例えば散乱光と試料に由来する非特異的な濁度の増加や迷光の発生、または、試料溶媒に由来する散乱光の吸収による減衰の度合から試料溶媒の性質が検量出来ることになり、ゲル粒子Gの生成状態情報をより細かく解析することが可能である。
尚、本実施の形態では、第2の散乱光検出器190は、第1の散乱光検出器140に対して試料セル100の反対側に設置されているが、これに限られるものではなく、第2の散乱光検出器190の設置箇所は第1の散乱光検出器140と異なる部位であれば任意の部位に設置して差し支えない。例えば第1の散乱光検出器140に対して試料セル100の周囲方向に90°偏倚した部位に設置するようにすれば、
図4(b)に示す側方散乱光を検出することが可能である。