特許第6373525号(P6373525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6373525
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】外ケーブル方式の緊張材の緊張定着方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/12 20060101AFI20180806BHJP
   E01D 1/00 20060101ALI20180806BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   E04G21/12 104E
   E01D1/00 D
   E01D22/00 B
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-92001(P2018-92001)
(22)【出願日】2018年5月11日
【審査請求日】2018年5月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000163110
【氏名又は名称】極東鋼弦コンクリート振興株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】菊池 厚
(72)【発明者】
【氏名】黒輪 亮介
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3754981(JP,B1)
【文献】 特開2016−079687(JP,A)
【文献】 特開2011−190616(JP,A)
【文献】 特開2011−122905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00
E01D 22/00
E04G 21/12
E04C 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外ケーブル方式で構造体に張架される緊張材の緊張定着方法であって、
前記緊張材の張架領域における第1固定端と第2固定端との間に、互いに連結可能な第1中継定着ブロックと第2中継定着ブロックとを所定の間隔を空けて配置する工程と、
前記第1固定端に第1緊張材の一端を仮止めするとともに、前記第1緊張材の他端を前記第1中継定着ブロックに仮止めする第1仮止め工程と、
前記第2固定端に第2緊張材の一端を仮止めするとともに、前記第2緊張材の他端を前記第2中継定着ブロックに仮止めする第2仮止め工程と、
前記第1中継定着ブロックと前記第2中継定着ブロックとを互いに連結する工程と、
連結された前記第1中継定着ブロックと前記第2中継定着ブロックとを互いに近接させる方向に移動させて仮止めされた前記第1緊張材及び前記第2緊張材を緊張し、前記固定端及び前記中継定着ブロックそれぞれに前記緊張材を定着固定する工程と、
を含むことを特徴とする緊張材の緊張定着方法。
【請求項2】
前記連結する工程は、前記第1中継定着ブロックに設けられた挿入孔と、前記第2中継定着ブロックに設けられた挿入孔とに連結ロッドを挿入し、前記連結ロッドに対して前記第1中継定着ブロック及び前記第2中継定着ブロックが互いに離間する方向への移動を規制する係止部材を設置するとともに、
前記挿入孔は、前記緊張材が仮止めされる領域を囲むように複数設けられ、
前記連結ロッドは、前記挿入孔が形成される平面内において前記領域を挟んで対向する2つの前記挿入孔をペアとして、少なくとも1つの前記ペアとなる前記挿入孔それぞれに複数設けられることを特徴とする請求項1に記載の緊張材の緊張定着方法。
【請求項3】
前記連結する工程は、前記第1中継定着ブロックに設けられた挿入孔と、前記第2中継定着ブロックに設けられた挿入孔とに連結ロッドを挿入し、
前記定着固定する工程は、前記連結ロッドによって連結された前記第1中継定着ブロックと前記第2中継定着ブロックとを互いに近接させる方向に移動させることに伴って変化する前記連結ロッドのひずみ又は荷重を検出する検出センサの検出値をモニタリング装置に出力する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の緊張材の緊張定着方法。
【請求項4】
前記連結する工程は、前記第1中継定着ブロックに設けられた挿入孔と、前記第2中継定着ブロックに設けられた挿入孔とに連結ロッドを挿入し、前記連結ロッドに対して前記第1中継定着ブロック及び前記第2中継定着ブロックが互いに離間する方向への移動を規制する係止部材を設置し、
前記定着固定する工程は、先端が前記挿入孔の周囲に当接するとともに、内部に前記連結ロッド及び前記係止部材が収容可能なスペースを有する圧接部材を備えたジャッキを用いて、前記連結ロッドによって連結された前記第1中継定着ブロックと前記第2中継定着ブロックとを互いに近接させる方向に移動させるとともに、前記圧接部材に設けられた前記スペースの開口部を介して前記係止部材を前記近接させる方向に移動させて前記連結ロッドに対して前記第1中継定着ブロック及び第2中継定着ブロックを固定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の緊張材の緊張定着方法。
【請求項5】
前記第1固定端、前記第2固定端、前記第1中継定着ブロック及び前記第2中継定着ブロックには、前記緊張材の周囲に配置されるオス部材が挿入される挿通孔が形成されており、
前記第1仮止め工程及び前記第2仮止め工程は、前記各挿通孔に前記緊張材を前記オス部材と共に押し込んで前記緊張材を仮止めする工程であり、
前記定着固定する工程は、前記第1中継定着ブロックと前記第2中継定着ブロックとが互いに近接する移動に伴う仮止めされた前記緊張材の緊張によって前記オス部材が前記挿通孔に挿入され、前記緊張材がくさびによって定着固定されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の緊張材の緊張定着方法。
【請求項6】
前記第1仮止め工程及び前記第2仮止め工程は、前記緊張材の端部に固定されるとともに、前記第1固定端、前記第1中継定着ブロック、前記第2固定端、前記第2中継定着ブロックに当接する定着体を、前記第1固定端、前記第1中継定着ブロック、前記第2固定端、前記第2中継定着ブロックに仮止めし、
前記定着固定する工程は、前記第1中継定着ブロックと前記第2中継定着ブロックとが互いに近接する移動に伴う仮止めされた前記緊張材の緊張によって前記定着体が当接して定着固定されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の緊張材の緊張定着方法。
【請求項7】
前記緊張材は、複数のPCケーブルで構成されており、
前記第1中継定着ブロック及び前記第2中継定着ブロックには、複数の前記PCケーブルそれぞれが挿通される複数の貫通孔が個別に設けられ、
複数の前記PCケーブルそれぞれが、前記各貫通孔に挿入されて定着固定されることを特徴とする請求項5又は6に記載の緊張材の緊張定着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外ケーブル方式で張架される緊張材の緊張定着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PC(プレストレストコンクリート)構造物では、コンクリート躯体に対して内部に又は外部にPC鋼材を緊張させ、両端を定着装置でコンクリート躯体に固定することにより、躯体全体に圧縮力を与えている。
【0003】
定着装置を用いてPC鋼材をコンクリート躯体に定着固定する場合、PC鋼材が張架されるコンクリート躯体の端部に作業空間を設けてジャッキを配置し、ジャッキでPC鋼材を引っ張って緊張させる(例えば、特許文献2)。
【0004】
一方で、特許文献1に記載のように、桁端ではなく、桁端よりも内方で緊張定着を行う技術が提案されている。特許文献1の外ケーブル方式の緊張定着技術によれば、ジャッキ等の作業機器を配置する作業空間を確保する必要がなく、容易に緊張定着を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3754981号公報
【特許文献2】特許第5427657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の緊張定着技術は、1つの定着板に対して張架方向左右の2つの緊張材を固定しており、緊張材の本数が増えると定着板の構造が大きくせざるを得なくなり、隣接する緊張材同士が干渉するおそれもあるため、安定した緊張定着作業の効率化を図り難い。
【0007】
そこで本発明は、張架方向端部にジャッキ等による緊張作業の作業空間を確保する必要がなく、安定した緊張定着作業を実現することができる外ケーブル方式の緊張材の緊張定着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、外ケーブル方式で構造体に張架される緊張材の緊張定着方法であり、以下の各工程を含む。前記緊張材の張架領域における第1固定端と第2固定端との間に、互いに連結可能な第1中継定着ブロックと第2中継定着ブロックとを所定の間隔を空けて配置する工程と、前記第1固定端に第1緊張材の一端を仮止めするとともに、前記第1緊張材の他端を前記第1中継定着ブロックに仮止めする第1仮止め工程と、前記第2固定端に第2緊張材の一端を仮止めするとともに、前記第2緊張材の他端を前記第2中継定着ブロックに仮止めする第2仮止め工程と、前記第1中継定着ブロックと前記第2中継定着ブロックとを互いに連結する工程と、連結された前記第1中継定着ブロックと前記第2中継定着ブロックとを互いに近接させる方向に移動させて仮止めされた前記第1緊張材及び前記第2緊張材を緊張し、前記固定端及び前記中継定着ブロックそれぞれに前記緊張材を定着固定する工程と、を含む。
【0009】
ここで、前記連結する工程は、前記第1中継定着ブロックに設けられた挿入孔と、前記第2中継定着ブロックに設けられた挿入孔とに連結ロッドを挿入し、前記連結ロッドに対して前記第1中継定着ブロック及び前記第2中継定着ブロックが互いに離間する方向への移動を規制する係止部材を設置するように構成することができる。このとき、前記挿入孔は、前記緊張材が仮止めされる領域を囲むように複数設けることができ、前記連結ロッドを、前記挿入孔が形成される平面内において前記領域を挟んで対向する2つの前記挿入孔をペアとして、少なくとも1つの前記ペアとなる前記挿入孔それぞれに複数設けるように構成することができる。
【0010】
また、前記連結する工程は、前記第1中継定着ブロックに設けられた挿入孔と、前記第2中継定着ブロックに設けられた挿入孔とに連結ロッドを挿入するように構成することができる。そして、前記定着固定する工程は、前記連結ロッドによって連結された前記第1中継定着ブロックと前記第2中継定着ブロックとを互いに近接させる方向に移動させることに伴って変化する前記連結ロッドのひずみ又は荷重を検出する検出センサの検出値をモニタリング装置に出力する工程を含むように構成することができる。
【0011】
また、前記連結する工程は、前記第1中継定着ブロックに設けられた挿入孔と前記第2中継定着ブロックに設けられた挿入孔とに連結ロッドを挿入し、前記連結ロッドに対して前記第1中継定着ブロック及び前記第2中継定着ブロックが互いに離間する方向への移動を規制する係止部材を設置することができる。このとき、前記定着固定する工程は、先端が前記挿入孔の周囲に当接するとともに、内部に前記連結ロッド及び前記係止部材が収容可能なスペースを有する圧接部材を備えたジャッキを用いて、前記連結ロッドによって連結された前記第1中継定着ブロックと前記第2中継定着ブロックとを互いに近接させる方向に移動させるとともに、前記圧接部材に設けられた前記スペースの開口部を介して前記係止部材を前記近接させる方向に移動させて前記連結ロッドに対して前記第1中継定着ブロック及び第2中継定着ブロックを固定するように構成することができる。
【0012】
また、前記第1固定端、前記第2固定端、前記第1中継定着ブロック及び前記第2中継定着ブロックには、前記緊張材の周囲に配置されるオス部材が挿入される挿通孔を形成することができる。このとき、前記第1仮止め工程及び前記第2仮止め工程は、前記各挿通孔に前記緊張材を前記オス部材と共に押し込んで前記緊張材を仮止めする工程であり、前記定着固定する工程は、前記第1中継定着ブロックと前記第2中継定着ブロックとが互いに近接する移動に伴う仮止めされた前記緊張材の緊張によって前記オス部材が前記挿通孔に挿入され、前記緊張材がくさびによって定着固定されるように構成される。
【0013】
また、前記第1仮止め工程及び前記第2仮止め工程は、前記緊張材の端部に固定されるとともに、前記第1固定端、前記第1中継定着ブロック、前記第2固定端、前記第2中継定着ブロックに当接する定着体を、前記第1固定端、前記第1中継定着ブロック、前記第2固定端、前記第2中継定着ブロックに仮止めするように構成することができる。このとき、前記定着固定する工程は、前記第1中継定着ブロックと前記第2中継定着ブロックとが互いに近接する移動に伴う仮止めされた前記緊張材の緊張によって前記定着体が当接して定着固定されるように構成される。
【0014】
また、前記緊張材は、複数のPCケーブルで構成することができる。このとき、前記第1中継定着ブロック及び前記第2中継定着ブロックには、複数の前記PCケーブルそれぞれが挿通される複数の貫通孔を個別に設けることができ、複数の前記PCケーブルそれぞれが、前記各貫通孔に挿入されて定着固定されるように構成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、互いに連結可能な第1中継定着ブロックと第2中継定着ブロックとを緊張材の張架領域における第1固定端と第2固定端との間に、所定の間隔を空けて配置する。そして、第1固定端に第1緊張材の一端を仮止めするとともに、第1緊張材の他端を第1中継定着ブロックに仮止めする。同様に、第2固定端に第2緊張材の一端を仮止めするとともに、第2緊張材の他端を第2中継定着ブロックに仮止めする。
【0016】
このような中継定着ブロックの配置工程と緊張材の仮止め工程とを経て、第1中継定着ブロックと第2中継定着ブロックとを互いに連結し、連結された第1中継定着ブロックと第2中継定着ブロックとを互いに近接させる方向に移動させる。そして、中継定着ブロックの移動に伴って仮止めされた第1緊張材及び第2緊張材を緊張させ、固定端及び中継定着ブロックそれぞれに緊張材を定着固定することができる。
【0017】
互いに独立した中継定着ブロックそれぞれに各緊張材が定着固定されるため、各中継定着ブロックの小型化を図ることができるともに、仮止めされた各緊張材を個別に緊張させるのではなく、中継定着ブロック間を接近させるだけで、仮止めした緊張材を容易に緊張させることができるので、安定した緊張定着作業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】外ケーブル方式を採用したPC構造物(例えば、橋桁)の概略側面図である。
図2】本実施形態の緊張定着装置の正面図である。
図3図2における緊張定着装置のA−A断面視図である。
図4】本実施形態の緊張定着方法の工程を説明するための図である。
図5】本実施形態の図4に続く緊張定着方法の工程を説明するための図である。
図6】本実施形態の図5に続く緊張定着方法の工程を説明するための図である。
図7】本実施形態の図6に続く緊張定着方法の工程を説明するための図である。
図8】本実施形態のジャッキの側面図及び正面図である。
図9】本実施形態の緊張定着装置が適用された既設PCケーブルの取り換え方法を説明するための図である。
図10】本実施形態の図9に続く緊張定着装置が適用された既設PCケーブルの取り換え方法を説明するための図である。
図11】本実施形態の図10に続く緊張定着装置が適用された既設PCケーブルの取り換え方法を説明するための図である。
図12】本実施形態の緊張定着装置に緊張力モニタリング手段を適用した図である。
図13】本実施形態の緊張材の定着固定の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態につき、図面を参照して説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1から図11は、第1実施形態を示す図である。図1は、外ケーブル方式を採用したプレストレストコンクリート構造物(PC構造物、例えば、橋桁など)の概略側面図である。外ケーブル方式の橋桁1は、左右両端が橋台に支持(支承)され、橋桁1の左右端部付近に設けられた各定着装置10,20の間にPCケーブル(緊張材)Cが張架される。
【0021】
本実施形態の外ケーブル方式の緊張材の緊張定着方法は、内ケーブルの一部を外ケーブル方式に置き換えた内外併用ケーブル方式や全外ケーブル方式に適用することができる。橋桁1において、外ケーブルであるPCケーブルの第1固定端が定着装置10であり、第2固定端が定着装置20である。そして、第1固定端と第2固定端の間の張架領域に、橋脚や中間隔壁等を介してPCケーブルCが敷設されて緊張されている。PCケーブルは、PC鋼線、PC鋼より線等を束状に複数本集合させて形成されたものや単線であってもよい。また、鋼線に限らず、炭素繊維ケーブルや繊維強化プラスチック線条体であってもよい。
【0022】
図2は、緊張定着装置100の正面図である。緊張定着装置100は、PCケーブルCの張架領域における第1固定端と第2固定端との間に配置され、第1固定端の定着装置10から敷設された第1のPCケーブルC1と、第2固定端の定着装置20から敷設された第2のPCケーブルC2の双方の中継定着端となる。緊張定着装置100が配置される位置、すなわち、第1固定端と第2固定端とに対する中継定着端の位置は、張架領域の任意の位置とすることができる。
【0023】
緊張定着装置100は、互いに連結可能な2つの中継定着ブロック100A,100Bと、所定の間隔を空けて対向配置された2つの中継定着ブロック100A,100B同士を連結する複数の連結ロッド111と、を含んで構成されている。中継定着ブロック100Aは、くさび(オス部材)103に対するくさび受け部(メス部材)としての挿通孔101aが形成された固定部材101と、連結ロッド111が挿通される挿入孔102bが形成された定着板102と、PCケーブルC1の周囲に配置されるくさび103と、を備えている。
【0024】
定着板102には、PCケーブルC1の挿通孔102aが複数形成されており、挿通孔102aと固定部材101の挿通孔101aとが一致するように、固定部材101が定着板102に当接配置される。挿通孔102aと挿通孔101aとが中継定着ブロック100Aの貫通孔として構成され、PCケーブルC1が貫通孔に挿通され、PCケーブルC1がくさび103と共に挿通孔101aに挿入されることで、PCケーブルC1がくさび103によって中継定着ブロック100Aに定着固定される。なお、定着板102と固定部材101は、一体形成であってもよい。
【0025】
図3は、図2における緊張定着装置100のA−A断面視図である。図3に示すように、固定部材101の周囲を囲むように連結ロッド111の挿入孔102bが等間隔で配置されている。つまり、各挿入孔102bは、PCケーブルC1が仮止め又は定着固定される領域(固定部材101)を囲むように複数設けられている。
【0026】
そして、連結ロッド111は、挿入孔102bが形成される平面内において固定部材101(領域)を挟んで対向する2つの挿入孔102bをペアとして、少なくとも1つのペアとなる挿入孔102bそれぞれに設けられるように構成されている。挿入孔102bは、少なくとも固定部材101を挟んで対角線上に2つ形成され、固定部材101を挟んだ対角線上の2つの挿入孔102bのペアが少なくとも1つ設けられている。なお、図3に示す6つ全ての挿入孔102bに連結ロッド111それぞれが設けられるように構成してもよい。
【0027】
本実施形態では、一例として、複数のPCケーブルが緊張材として用いられている。第1中継定着ブロック100Aには、複数のPCケーブルC1それぞれが挿通される複数の貫通孔(挿通孔101a、102b)が設けられ、複数のPCケーブルC1それぞれが、各貫通孔に挿入されて定着固定される。このとき、図3に示すように、複数の各PCケーブルC1は、固定部材101において、互いに干渉することなく、かつ密集して配置されている。なお、本方法は、1本のPCケーブルのみであっても適用できる。また、固定部材101は、例えば、2つに分割されたブロックとして構成し、1つのPCケーブルを分割されたブロックで挟み込み、ブロック間を連結するように構成してもよい。
【0028】
連結ロッド111は、中継定着ブロック100A(定着板102)に係止される。このため、連結ロッド111にはナットなどの係止部材112Aが設けられる。係止部材112Aは、例えば、連結ロッド111に対してネジ嵌合するように構成し、連結ロッド111の軸方向において中継定着ブロック100Aの位置に応じた移動を許容するように構成されている。本実施形態では、少なくとも2本の連結ロッド111Aと111Bとが、固定部材101を挟んで対角線上の各挿入孔102bに挿入されて、係止部材112A,112Aでそれぞれ固定される。
【0029】
このように中継定着ブロック100Aは、第1固定端の定着装置10に対して固定部材101が定着板(支圧板)102の外側に位置しており、PCケーブルC1の端部領域が定着固定される。なお、中継定着ブロック100Bは、中継定着ブロック100Aと同様の構成なので、同符号(又は関連する符号)を付して説明を省略するが、中継定着ブロック100Bは、第2固定端の定着装置20に対して固定部材101が定着板(支圧板)102の外側に位置しており、PCケーブルC2の端部領域が定着固定される。
【0030】
図2に示すように、第1中継定着ブロック100Aと第2中継定着ブロック100Bとを所定の間隔を空けて配置し、挿入孔102bを介して連結ロッド111A,111Bで両者を連結する。連結ロッド111A,111Bで連結された第1中継定着ブロック100Aと第2中継定着ブロック100Bとは、互いに近接する方向と、互いに離間する方向とに連結ロッド111の軸方向に沿って移動することができ、移動した位置において係止部材112A,112Bで固定することができる。
【0031】
第1中継定着ブロック100Aと第2中継定着ブロック100Bとを互いに近接する方向に移動させることで、PCケーブルC1とPCケーブルC2とを同時に緊張させることができる。一方、緊張状態で第1中継定着ブロック100Aと第2中継定着ブロック100Bとを互いに離間する方向に移動させると、PCケーブルC1とPCケーブルC2とを同時に解放、すなわち、緊張力を解放することができる。
【0032】
次に図4から図8を参照して、本実施形態の緊張定着方法について説明する。図4は、本実施形態の緊張定着方法の工程を説明するための図であり、第1固定端及び第2固定端には、定着装置10,20が設置される固定端定着領域がそれぞれ形成されている。固定端定着領域は、定着装置10の支圧板12が当接する所定深さを有する作業空間であり、左右の幅は、支圧板12、定着ブロック11及びくさび13と共に定着ブロック11に挿入されるPCケーブルC1の端部が配置可能な領域を有する。このとき、第1固定端では、ジャッキによるPCケーブルC1の緊張作業を行わないので、固定端定着領域においてジャッキ等を配設するスペースやジャッキによる緊張作業スペースが不要となる。
【0033】
固定端定着領域付近のPCケーブルC1は、一部が内ケーブル方式と同様に埋設されているが、緊張定着装置100が配置される領域においては露出しており、定着ブロック11にくさび13によって定着固定される。PCケーブルC2の端部が定着固定される定着装置20についても同様である。
【0034】
まず、作業者は、PCケーブルの張架領域における第1固定端と第2固定端との間の、例えば、橋桁1の下床板に、第1中継定着ブロック100Aと第2中継定着ブロック100Bとを所定の間隔を空けて対向配置する。
【0035】
次に、定着装置10(第1固定端)にPCケーブルC1(第1緊張材)の一端を仮止めするとともに、PCケーブルC1の他端を第1中継定着ブロック100A(固定部材101)に仮止めする(第1仮止め工程)。また、定着装置20(第2固定端)にPCケーブルC2(第2緊張材)の一端を仮止めするとともに、PCケーブルC2の他端を第2中継定着ブロック100Bに仮止めする(第2仮止め工程)。ここで、仮止めとは、緊張せずに、PCケーブルC1,C2の周囲に設けられるくさび13,23を、PCケーブルC1,C2と一緒に各定着ブロック11,21に押し込んだり、PCケーブルC1,C2の周囲に設けられるくさび103,103を、PCケーブルC1,C2と一緒に各固定部材101,101に押し込んだりするものである。
【0036】
仮止め工程の後に、第1中継定着ブロック100Aと第2中継定着ブロック100Bとを互いに連結する。具体的には図5に示すように、第1中継定着ブロック100Aの各挿入孔102bと第2中継定着ブロック100Bの各挿入孔102bとに連結ロッド111A,111Bをそれぞれ挿通し、各定着板102,102の外側から連結ロッド111A,111Bに係止部材112A,112Bを嵌合する。係止部材112A,112Bは、連結ロッド111A,111Bに対して第1中継定着ブロック100A及び第2中継定着ブロック100Bが互いに離間する方向への移動を規制する。
【0037】
図6に示すように、ジャッキ200を用いて、連結ロッド111A,111Bによって連結された第1中継定着ブロック100Aと第2中継定着ブロック100Bとを互いに近接させる方向に移動させて、仮止めされたPCケーブルC1及びPCケーブルC2を緊張し、第1,第2固定端及び中継定着ブロック100A,100BそれぞれにPCケーブルC1,C2を定着固定する(定着固定する工程)。
【0038】
図8は、本実施形態のジャッキ200の側面図及び正面図である。ジャッキ200は、内部に連結ロッド111A及び係止部材112Aが収容可能なスペースS1を有する筒状の圧接部材203を備えており、圧接部材203とピストン202とがシリンダ201に格納されている。ジャッキ200は、連結ロッド111A,111Bが内部を通過するセンターホールジャッキである。
【0039】
図6に示すように、連結ロッド111A,111Bの先端部分及び係止部材112Aを圧接部材203で覆うように各ジャッキ200を取り付け、圧接部材203の先端を定着板102の挿入孔102bの周囲に当接させる。このとき、連結ロッド111A,111Bの各先端部分は、シリンダ201及びピストン202を貫通して圧接部材203とは反対側に突出しており、突出した部分にナット等の係止部材204が設けられる。係止部材204によって、連結ロッド111A,111Bがピストン202に固定される。そして、ピストン202が圧接部材203を押圧すると、連結ロッド111A,111Bに対して第1中継定着ブロック100A(定着板102)を、第2中継定着ブロック100Bに近接させる方向に移動させることができる。このとき、図8に示すように、圧接部材203には、スペースS1の開口部203bが設けられているので、開口部203bを介して係止部材112A,112Aを近接させる方向に移動させながら連結ロッド112A,112Bに対して第1中継定着ブロック100A及び第2中継定着ブロック100Bを固定する。開口部203bは、スペースS1の周囲の壁部203aの一部を切り欠いた窓部であり、開口部203bを介して係止部材112A,112Bを操作することができる。
【0040】
PCケーブルC1,C2を緊張して定着固定して後、図7に示すように、第1固定端及び第2固定端の各固定端定着領域の定着装置10,20が配置される作業空間を埋めて緊張定着作業を終了する。その後、左右両端外側にはパラペット(胸壁)が構築される(図1参照)。
【0041】
本実施形態の外ケーブル方式の緊張材の緊張定着方法は、張架方向端部にジャッキ等による緊張作業の作業空間を確保する必要がなく、安定した緊張定着作業を実現することができる。
【0042】
特に、互いに独立した中継定着ブロック100A,100Bそれぞれに各PCケーブルC1,C2が定着固定されるため、各中継定着ブロック100A,100Bの小型化を図ることができるともに、仮止めされた各PCケーブルC1,C2を個別に緊張させるのではなく、中継定着ブロック100A,100B間を接近させるだけで、仮止めしたPCケーブルC1,C2を容易に緊張させることができるので、安定した緊張定着作業の効率化を図ることができる。
【0043】
また、本実施形態の緊張定着装置100が適用された外ケーブル方式の緊張材は、張架方向端部(第1固定端、第2固定端)にジャッキ等による作業空間を確保する必要がなく、容易に既設PCケールの緊張力を解放して取り換え作業を行うことができる。図9から図11は、本実施形態の緊張定着装置100が適用された既設PCケーブルの取り換え方法を説明するための図である。
【0044】
図9は、図7に対応しており、既設PCケーブルC1,C2の取り換えに際して、固定端定着領域に埋設されている定着装置10,20をそれぞれ露出させる。このとき、緊張力の解放は、固定端定着領域ではなく、緊張定着装置100で行うので、構築済みのパラペットによって作業空間が確保し難いなどといった問題が生じない。
【0045】
そして、図10に示すように、連結ロッド111A,111Bによって連結された第1中継定着ブロック100Aと第2中継定着ブロック100Bとを互いに離間させる方向に移動させて、緊張されたPCケーブルC1及びPCケーブルC2の緊張力を解放する。
【0046】
互いに独立した中継定着ブロック100A,100Bそれぞれに定着固定された各PCケーブルC1,C2は、互いに離間させる方向に移動するだけの単純な作業で、PCケーブルC1,C2の緊張力を容易に解放することができる。なお、離間させる方向への移動は、ジャッキ200を用いて、係止部材112A,112Aを連結ロッド111A,111Bの端部方向に移動させたりすることができる。
【0047】
図11に示すように、既存のPCケーブルC1を定着装置10と第1中継定着ブロック100Aから取り外すとともに、既存のPCケーブルC2を定着装置20と第2中継定着ブロック100Bから取り外す。このように既設PCケーブルの緊張力解放と取り外しを容易に行うことができ、図4から図7に示したように、新たにPCケーブルC1,C2を容易に付け替えることができる。
【0048】
本実施形態の緊張定着装置100は、既設PCケーブルの全てを交換したり、一方の中継定着ブロック100A(又は100B)のPCケーブルだけを交換したり、中継定着ブロック100A(又は100B)において、複数のPCケーブルのうち交換対象のPCケーブルのみを交換したりすることができる。
【0049】
図12は、本実施形態の緊張定着装置100に緊張力モニタリング手段を適用した図である。図12は、図6に対応しており、2つの中継定着ブロック100A,100B間の連結ロッド111A,111Bに、緊張力検出センサ300が取り付けられている。緊張力検出センサ300は、ひずみセンサや荷重計である。緊張力検出センサ300の検出値は、緊張力モニタリング装置301に出力される。定着固定する工程において、連結ロッド111A,111Bによって連結された第1中継定着ブロック100Aと第2中継定着ブロック100Bとを互いに近接させる方向に移動させることに伴って連結ロッド111A,111Bのひずみ又は荷重が変化するので、その検出値を緊張力モニタリング装置301に出力してモニタリングすることができる。なお、連結ロッド111A,111Bの双方又は一方に緊張力検出センサ300を取り付けてモニタリングすることができる。
【0050】
PCケーブルC1,C2の緊張力計測に連結ロッド111A,111Bを用いることより、1)複数本分のPCケーブルの緊張力を連結ロッド111A,111Bが負担していることから,少ない計器でPCケーブル全体の緊張力を直接的に計測することができる。2)連結ロッド111A,111Bに、例えば、丸棒などの軸方向に断面形状(断面積)の変化がない均一形状のロッドを用いることで、安定した測定値が得られる。
【0051】
図13は、本実施形態の緊張材の定着固定の変形例を示す図である。図13に示す変形例は、第1中継定着ブロック100A及び第2中継定着ブロック100Bに対するPCケーブルC1,C2の定着手段が、くさびではなく、定着体としてグリップ体103aを用いている。第1中継定着ブロック100A及び第2中継定着ブロック100B(固定部材101)の各挿通孔101bは、PCケーブルC1,C2が挿通する均一な径を有する貫通した孔であり、各挿通孔101bにPCケーブルC1,C2を挿通させた後の挿通孔101bから突出するPCケーブルC1,C2の端部に、挿通孔101bの周囲に当接するグリップ体103aを固定する。
【0052】
グリップ体103aは、軸方向においてPCケーブルC1,C2の周囲に設けられ、PCケーブルC1,C2の径よりも幅広の径を有する。グリップ体103aは、例えば、PCケーブルC1,C2に対してカシメ加工により圧着して固定されたり、PCケーブルC1,C2の周囲に設けられたグリップ体103aの内部に膨張材を充填したりして固定することができる。
【0053】
定着固定する工程において、第1中継定着ブロック100Aと第2中継定着ブロック100Bとが互いに近接する移動に伴う仮止めされたPCケーブルC1,C2の緊張によってグリップ体103aが挿通孔101bの周囲に当接して定着固定される。
【0054】
なお、グリップ体103aを用いた定着方法の他の例としては、固定部材101の周方向端部において凹状の係止部を形成し、係止部にPCケーブルを挿通させつつ、係止部の周囲にグリップ体103aが当接して固定されるように構成することができる。つまり、周方向から凹状に切り欠いた係止部は、PCケーブルの張架方向において、PCケーブルとほぼ同じ径を有する穴部として形成され、グリップ体103aは、係止部の凹領域よりも幅広の径を有し、図13の例と同様に固定部材101の張架方向端面においてグリップ体103aが当接することで、PCケーブルが第1中継定着ブロック100A及び第2中継定着ブロック100Bに定着固定される。この場合、グリップ体103aは、予めPCケーブルの端部に形成しておくことができ、定着板102の挿通孔102aをグリップ体103aが挿通可能な大きさに形成することで、仮止め工程において、予め端部にグリップ体103aが予め形成されたPCケーブルを仮止めすることができる。
【0055】
したがって、第1仮止め工程及び第2仮止め工程は、くさびを用いずに、PCケーブルの端部に固定されるとともに、第1中継定着ブロック100A、第2中継定着ブロック100Bに当接するグリップ体103aを仮止めし、定着固定する工程において、第1中継定着ブロック100Aと第2中継定着ブロック100Bとが互いに近接する移動に伴う仮止めされたPCケーブルC1,C2の緊張によってグリップ体103aが当接して定着固定されるように構成することができる。
【0056】
なお、図13の例では、第1中継定着ブロック100Aと第2中継定着ブロック100Bとに、グリップ体103aを用いた定着手段を例示したが、第1固定端及び第2固定端における定着装置10,20の定着手段としても適用することができる。つまり、第1固定端、第2固定端、第1中継定着ブロック100A及び第2中継定着ブロック100Bは、くさび又はグリップ体103aを用いた任意の定着手段を適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
10 定着装置(第1固定端)
20 定着装置(第2固定端)
100 緊張定着装置
100A 第1中継定着ブロック
100B 第2中継定着ブロック
101 固定部材
101a 挿通孔
102 定着板
102a 挿通孔
102b 挿入孔
103 くさび
111,111A,111B 連結ロッド
112A,112B 係止部材
200 ジャッキ
300 緊張力検出センサ
301 緊張力モニタリング装置
C,C1,C2 PCケーブル
【要約】
【課題】張架方向端部にジャッキ等による緊張作業の作業空間を確保する必要がなく、安定した緊張定着作業を実現することができる外ケーブル方式の緊張材の緊張定着方法を提供する。
【解決手段】本発明の外ケーブル方式で構造体に張架される緊張材の緊張定着方法は、張架領域における第1固定端と第2固定端との間に、互いに連結可能な第1中継定着ブロックと第2中継定着ブロックとを所定の間隔を空けて配置する。第1固定端と第1中継定着ブロックとに第1緊張材を仮止めすると共に、第2固定端と第2中継定着ブロックとに第2緊張材を仮止めして、第1中継定着ブロックと第2中継定着ブロックとを互いに連結する。連結された第1中継定着ブロックと第2中継定着ブロックとを互いに近接させる方向に移動させて仮止めされた第1緊張材及び第2緊張材を緊張し、固定端及び中継定着ブロックそれぞれに緊張材を定着固定する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13