(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る外装用建材を
図1に概略的に示す。本実施形態の外装用建材10は、金属製であり、
図1Aに示されるように、複数の並列する溝11を表面に有する。溝11は、互いに平行に配置されている。溝11は、二本の並列する稜線12と、その間に位置する谷底13と、谷底13から一方の稜線12を繋ぐ第一傾斜面14と、溝の谷底13から他方の稜線12を繋ぐ第二傾斜面15とを有する。外装用建材10を平面視したときの稜線12および谷底13は互いに平行である。
図1Bに示されるように、稜線12は、溝11の横断面(溝を垂直に横切る断面)形状における最高点であり、谷底13は、溝11の横断面形状における最下点である。
【0020】
なお、溝11は、互いに平行でなくてもよい。また、稜線12および谷底13は、後述する溝の深さDおよびピッチPの条件を満たす範囲において、いずれも、直線であっても曲線であってもよい。さらに、第一傾斜面14および第二傾斜面15は、いずれも、溝11の横断面における直線であってもよいし、曲線であってもよい。
【0021】
溝の深さDは、0.15mm以上である。溝の深さDは、全ての溝で同じであってもよいし、異なっていてもよい。溝の深さDとは、溝11の深さ方向における稜線12から谷底13までの距離である。溝の深さDが0.15mm未満であると、雨筋汚れを目立たせなくする効果が不十分となることがある。溝の深さDの上限値は、特に限定されないが、下記の溝のピッチPを実現する観点から、例えば5mmである。溝の深さDは、0.2mm以上であることが、雨筋汚れを目立たせなくする効果をより高める観点から好ましく、0.5mm以上であることが、溝のより大きなピッチ(例えばピッチが3.0mmである場合)において上記の効果を高める観点から好ましい。
【0022】
溝のピッチPは、1.0〜3.0mmである。溝のピッチPは、外装用建材を平面視したときの隣り合う二本の溝の谷底13間の距離である。溝のピッチPは、全ての溝で同じであってもよいし、異なる二種以上を含んでいてもよい。溝のピッチPが1.0mm未満であると、上記の溝の深さを実現することが困難であり、溝のピッチPが3.0mmを超えると、雨筋汚れを目立たせなくする効果が不十分となることがある。溝のピッチPが1.0〜1.6mmであることが、雨筋汚れを目立たせなくする効果をより高める観点から好ましい。
【0023】
第一傾斜面14または第二傾斜面15の傾斜角Aは、10〜60°であることが好ましい。傾斜角Aは、溝11の横断面における稜線12または谷底13の接線に対して第一傾斜面14または第二傾斜面15がなす角度である。第一傾斜面14または第二傾斜面15が曲面である場合は、傾斜角Aは、溝11の横断面における稜線12または谷底13の接線に対して第一傾斜面14または第二傾斜面15の接線がなす角度である(
図1B参照)。第一傾斜面14の傾斜角Aは、第二傾斜面15の傾斜角Aと同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、第一傾斜面14の傾斜角Aは全て同じであってもよいし、異なっていてもよく、第二傾斜面15の傾斜角Aは全て同じであってもよいし、異なっていてもよい。傾斜角Aが10°未満であると、雨筋汚れを目立たせなくする効果が不十分となることがある。傾斜角Aが60°を超えると、溝の形成が困難になることがある。傾斜角Aは、雨筋汚れを目立たせなくする効果をより高める観点から、20〜60°であることがより好ましい。
【0024】
また、隣り合う二本の溝11のうちの一方の溝11の第一傾斜面14と他方の溝11の第二傾斜面15との間に形成された凸曲面に稜線12が含まれることが、溝を横断して流下する雨水に対して適度な堰き止め作用を呈する観点から好ましい。このような観点から、溝の横断面における溝の稜線付近の上記凸曲面の曲率半径R(
図1Bおよび
図1C参照)は、0.4〜1.5mmであることがより好ましく、雨筋汚れを目立たせなくする効果をより高める観点から、0.4〜1.0mmであることがさらに好ましい。曲率半径Rが0.4mm未満では材料割れが発生することがある。
【0025】
上記溝は、外装用建材の表面の一部分に形成されていてもよいし、当該表面の全面に形成されていてもよい。上記溝は、外装用建材を建物に設置したときに外部から見える部分に形成されていることが、雨筋汚れによる建物の美観の低下を防止する観点から好ましい。
【0026】
本発明に係る外装用建材の形態は、上記の溝を表面に有していれば、特に限定されない。たとえば、本発明に係る外装用建材は、波板状に成形された金属板によって構成されうる。
【0027】
上記金属板の板厚は、機械的強度の観点から0.2mm以上であることが好ましい。金属板の板厚は、後述するローレット加工によって金属板または塗装金属板を波板状に成形する場合では、加工性の観点から、2.0mm以下であることが好ましい。金属板の板厚が厚すぎると、ローレット加工によって上記の溝が形成されない場合がある。
【0028】
上記金属板は、その表面に塗膜を有する波板状の塗装金属板であることが、意匠性の付与および防錆の観点から好ましい。波板状の塗装金属板は、波板状の金属板の表面を塗装することによって得られるが、塗膜の均一性の観点から、塗装金属板が波板状に成形されてなることが好ましい。
【0029】
波板状の塗装金属板は、
図2に示されるようなリブロールを用いるローレット加工によって形成されうる。
図2に示されるリブロールは、凸型ロール21および凹型ロール22を含む。凸型ロール21の周面には、複数の山形の凸条が周設されており、凹型ロール22の周面には、上記凸条に噛み合う複数の谷型の凹条が周設されている。凸条の突端縁付近は凸曲面で形成されており、凸条の横断面における突端縁の曲率半径は、例えば0.5mmである。その他、凸条および凹条の寸法は、作製すべき上記の溝の寸法に応じて適宜に決められうる。これらのロールは、互いに回転駆動し、かつ、周面間の距離を自在に調整可能である。凸型ロール21と凹型ロール22との間隔を塗装金属板の厚さに応じて適宜に設定し、塗装金属板を両ロール間に通すと、ローレット加工によって、波板状の塗装金属板が得られる。
【0030】
上記金属板の種類は、特に限定されない。金属板の例には、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、Zn−Al合金めっき鋼板、Zn−Al−Mg合金めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、ステンレス鋼板(オーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系、フェライト・マルテンサイト二相系を含む)、アルミニウム板、アルミニウム合金板、銅板などが含まれる。金属板は、脱脂や酸洗などの公知の塗装前処理が施されていてもよい。
【0031】
たとえば、めっき層によって構成される金属板の表面には、塗装金属板の塗膜密着性および耐食性を向上させる観点から、化成処理皮膜が形成されていてもよい。化成処理の種類は、特に限定されない。化成処理の例には、クロメート処理、クロムフリー処理、リン酸塩処理などが含まれる。化成処理皮膜の付着量は、塗膜密着性の向上および腐食の抑制に有効な範囲内であれば特に限定されない。たとえば、クロメート処理の場合、全Cr換算付着量が5〜100mg/m
2となるように付着量を調整すればよい。また、クロムフリー処理の例には、シランカップリング剤、シリカ、Ti塩、Zr塩および樹脂からなる群から選択される2種類以上の成分を含有する溶液または分散液を塗布する処理が含まれる。具体的には、シリカ:10〜20質量%、Ti塩:10〜35質量%、Zr塩:5〜25質量%、樹脂:50〜75質量%を含有する分散液を塗布する処理や、シランカップリング剤:10〜90質量%、樹脂:10〜90質量%を含有する溶液または分散液を塗布する処理などが挙げられる。いずれの場合であっても、上記群から選択された全成分の換算付着量が5〜500mg/m
2となるように付着量を調整すればよい。また、Ti−Mo複合皮膜では10〜500mg/m
2、フルオロアシッド系皮膜ではフッ素換算付着量または総金属元素換算付着量が3〜100mg/m
2の範囲内となるように付着量を調整すればよい。また、リン酸塩皮膜の場合、リン換算付着量が100〜1000mg/m
2となるように付着量を調整すればよい。
【0032】
化成処理皮膜は、公知の方法で形成されうる。たとえば、化成処理液をロールコート法、スピンコート法、スプレー法などの方法で金属板の表面に塗布し、水洗せずに乾燥させればよい。乾燥温度および乾燥時間は、水分を蒸発させることができれば特に限定されない。生産性の観点からは、乾燥温度は、金属板の到達温度で60〜150℃の範囲内が好ましく、乾燥時間は、2〜10秒の範囲内が好ましい。
【0033】
上記塗膜は、下塗り塗膜と上塗り塗膜の2コート構成の塗膜または下塗り塗膜と中塗り塗膜と上塗り塗膜の3コート構成の塗膜であってもよい。
【0034】
下塗り塗膜は、金属板の表面(化成処理皮膜が形成されている場合は、化成処理皮膜の表面)に形成されている。下塗り塗膜は、塗装金属板の塗膜密着性および耐食性を向上させる。また、下塗り塗膜は、各種顔料を配合されることで、本発明に係る外装用建材の意匠性を向上させることもできる。
【0035】
上記下塗り塗膜のベースとなる樹脂には、ポリエステル、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などの、ヒドロキシ基を有する樹脂が好適に用いられる。これらの樹脂のうち、数平均分子量が2000〜30000程度の樹脂が、生産性の観点から好適に用いられる。下塗り塗膜は、意匠性の観点から、着色顔料を含有していてもよい。着色顔料の例には、酸化チタン、カーボンブラック、酸化クロム、酸化鉄、ベンガラ、チタンイエロー、コバルトブルー、コバルトグリーン、アニリンブラック、フタロシアニンブルーなどが含まれる。また、下塗り塗膜は、耐食性を向上させる観点から、防錆顔料を配合してもよい。防錆顔料の例には、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、リン酸亜鉛マグネシウム、リン酸マグネシウム、亜リン酸マグネシウム、シリカ、カルシウムイオン交換シリカ、リン酸ジルコニウム、トリポリリン酸2水素アルミニウム、酸化亜鉛、リンモリブデン酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、バナジン酸、バナジン酸カルシウム、リン酸マンガン、クロム酸ストロンチウム、クロム酸亜鉛などが含まれる。さらに、下塗り塗膜は、体質顔料を含有していてもよい。体質顔料の例には、硫酸バリウム、酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウムなどが含まれる。
【0036】
上記中塗り塗膜は、上記3コート構成の下塗り塗膜の表面に形成される。中塗り塗膜のベースとなる樹脂の種類は、特に限定されず、プレコート金属板用に使用されている公知の樹脂から適宜選択すればよい。ベースとなる樹脂は、熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。そのような樹脂の例には、ポリフッ化ビニリデン樹脂とアクリル樹脂との混合樹脂や、溶剤可溶型フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニリデン樹脂などが含まれる。また、熱硬化性樹脂の例としては、平均分子量が数千程度のレギュラーポリエステル樹脂(OH価:1〜250mgKOH/g)および硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物が含まれる。硬化剤は、焼付け時に樹脂間を架橋する。硬化剤の種類は、使用する樹脂の種類や、焼付け条件などによって既知のものを適宜選択することができる。硬化剤の例には、メラミン化合物やイソシアネート化合物が含まれる。メラミン化合物の例には、イミノ基型、メチロールイミノ基型、メチロール基型および完全アルキル基型のメラミン化合物が含まれる。また、上塗り塗膜用の塗料の貯蔵安定性に影響しない範囲内であれば、硬化触媒が適宜添加されていてもよい。
【0037】
上記上塗り塗膜は、2コート構成または3コート構成における下塗り塗膜または中塗り塗膜の表面に形成されている。上塗り塗膜のベースとなる樹脂の種類は、特に限定されず、プレコート金属板用に使用されている公知の樹脂から適宜選択すればよいが、3コート構成の場合、中塗り塗膜のそれと同系の(同様の物性や構造などを有する)樹脂を用いることがより好ましい。ベースとなる樹脂は、熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。そのような樹脂の例には、上記中塗り塗膜のベースとなる樹脂で例示された樹脂が含まれる。
【0038】
上塗り塗膜には、顔料が含まれていなくてもよいが、顔料がさらに含まれていてもよい。顔料は、着色顔料や体質顔料などである。顔料は、1種のみであってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。顔料の種類は、特に限定されず、後述するpHの条件を満たすように公知の顔料から適宜選択することができる。着色顔料の例には、酸化チタン、カーボンブラック、鉄黒、チタンイエロー、ベンガラ、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、群青、コバルトグリーン、モリブデン赤などの無機顔料;CoAl、CoCrAl、CoCrZnMgAl、CoNiZnTi、CoCrZnTi、NiSbTi、CrSbTi、FeCrZnNi、MnSbTi、FeCr、FeCrNi、FeNi、FeCrNiMn、CoCr、Mn、Co、SnZnTiなどの金属成分を含む複合酸化物焼成顔料;Al、樹脂コーティングAl、Niなどのメタリック顔料;および、リソールレッドB、ブリリアントスカーレットG、ピグメントスカーレット3B、ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、レーキレッドD、パーマネントレッド4R、ボルドー10B、ファストイエローG、ファストイエロー10G、パラレッド、ウォッチングレッド、ベンジジンイエロー、ベンジジンオレンジ、ボンマルーンL、ボンマルーンM、ブリリアントファストスカーレット、バーミリオンレッド、フタロシアニンブロー、フタロシアニングリーン、ファストスカイブルー、アニリンブラックなどの有機顔料;が含まれる。また、体質顔料の例には、クレー、タルク、硫酸バリウム、シリカ、炭酸カルシウム、などが含まれる。顔料の含有量は、ベースとなる樹脂に対して5〜150質量%の範囲内であることが好ましい。顔料の含有量が5質量%未満の場合、必要な色調が得られないおそれがある。一方、顔料の含有量が150質量%超の場合、加工性や塗装性などが低下するおそれがある。
【0039】
塗膜は、上記2コート構成または3コート構成の塗膜が形成された面の反対側の面(裏面)にも形成されていてもよい。この裏面に形成された裏面塗膜は、1コート構成であってもよいし、2コート構成であってもよい。また、裏面塗膜を構成する樹脂の種類や、顔料の種類も特に限定されない。たとえば、裏面塗膜は、公知の塗料を公知の方法で塗布することで形成されうる。
【0040】
その他にも、本発明に係る外装用建材は、表面に上記溝が刻まれた板状金属部材であってもよい。たとえば、本発明に係る外装用建材は、特開2012−81584号公報に記載されているように、複数枚の円盤型カッターを積層したマルチカッターを回転させながら移動させて板状金属部材の表面に複数の溝を形成することによって形成されうる。
【0041】
本発明に係る外装用建材による雨筋汚れに対する効果を説明する。
図3は、外装用建材に雨水が流れたときの雨筋汚れを模式的に示す図である。
図3Aは、平らな表面を有する外装用建材30に形成される雨筋汚れを模式的に示す図であり、
図3Bは、上記溝を表面に有する外装用建材10に形成される雨筋汚れを模式的に示す図であり、
図3Cは、
図3B中の矢印X方向から見た外装用建材10を模式的に示す図である。
【0042】
通常、雨水は、建物の外壁上を筋状に流れる。平らな表面を有する外装用建材に雨水を筋状に流すと、
図3Aに示されるように、例えば幅が3〜4mm程度の細い雨筋汚れ31が発生する。この雨筋汚れ31は、経時的に濃くなり、より明瞭になる。
【0043】
一方、本発明に係る外装用建材に上記建材と同じ条件で雨水を流すと、雨水は、溝の上方側の傾斜面(例えば
図3C中の第一傾斜面14)でせき止められ、当該溝に沿って広がり、かつ流下する。このため、
図3Bに示されるように、例えば幅が10〜15mm程度の広い雨筋汚れ31が発生する。この雨筋汚れ31は、非常に薄く、そして不明瞭である。これは、雨水が溝に沿って広がることで雨水中の汚れが溝の延出方向へ分散するため、と考えられる。
【0044】
また、本発明に係る外装用建材では、雨水が第一傾斜面14で堰き止められながら流下することから、雨筋汚れ31には、幅の広い部分と狭い部分とが交互に形成される。このため、雨筋汚れ31の縁がジグザグに形成され、外装用建材を正面視したときの雨筋汚れ31の境界がより不明瞭になっている、と考えられる。
【0045】
さらに、本発明に係る外装用建材では、雨水中の汚れが第一傾斜面14上により付着しやすい。このため、雨水の流れ方向において、雨筋汚れ31のわずかな濃淡が交互に生じ、外装用建材を正面視したときの雨筋汚れ31自体がより不明瞭になっている、と考えられる。
【0046】
以上の説明から明らかなように、本発明に係る外装用建材は、雨筋汚れを溝に沿って分散することから、雨筋汚れを目立たなくさせることができる。第一傾斜面による堰き止め効果が発現されると、雨水は溝に沿って広がる。したがって、前述した溝の稜線部における曲率半径Rや、第一傾斜面の傾斜角A、溝のピッチPなどを調整することによって、雨筋汚れを目立たなくする効果をより高めることが可能である。さらに、前述した塗膜によって、雨筋汚れを目立たなくする外観(例えばメタリック塗装、中間色塗装、金属板や塗膜の表面粗さの調整など)を付与することによって、雨筋汚れを目立たなくする効果をより高めることが可能である。
【0047】
本発明に係る外装用建材は、通常、溝の稜線または谷底が水平となる向きに、建物の垂直な外壁面を構成するように配置される。しかしながら、本発明に係る外装用建材の配置は、雨水が溝を横断するように外装用建材の表面を流れる範囲内であれば、特に限定されない。たとえば、
図4Aに示されるように、外装用建材10は、溝の稜線または谷底の水平方向に対する傾きBが45°以下となるように配置されてもよい。また、例えば、
図4Bに示されるように、外装用建材10は、その斜度C(外装用建材を側面視したときの谷底と稜線との間の中心線の水平方向に対する角度)が60〜120°となるように配置されてもよい。
【0048】
本発明に係る外装用建材が配置された建物の外壁は、鉛直方向に対して交差する、複数の並列する溝を有する部分を含む。本発明に係る外装用建材は、本発明の効果が得られる範囲において、他の構成をさらに含んでいてもよい。たとえば、本発明に係る外装用建材は、上記溝が鉛直方向に対して交差する向きで外装用
建材が設置されるための構成をさらに有していてもよい。このような構成の例には、溝の上記の向きで外装用
建材を建物に固定するための部材や、当該向きで外装用建材同士を連結するための部材、および、外装用建材の取り付け時の向きを示すマーク、が含まれる。また、本発明に係る外装用建材は、建物に配置される時の形状にさらに成形されていてもよい。たとえば、本発明に係る外装用建材は、上記の向きの溝を有するように、化粧屋根(パラペット)や外壁用パネルなどとして取り付けられる形状にさらに成形されまたは組み立てられていてもよい。
【0049】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
【実施例】
【0050】
塗装金属板として、3コート構成の着色メタリックフッ素塗装鋼板を用意した。この塗装鋼板は、両面に化成処理皮膜を有する溶融55%アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板(厚さ0.5mm)と、表面側塗膜(膜厚39μm)と、裏面側塗膜(膜厚12μm)とを有する。表面側塗膜は、上記めっき鋼板の表面に塗布されたエポキシ樹脂系塗料による下塗り塗膜と、この下塗り塗膜上に塗布された、メタリック顔料(Al)を含有するフッ素樹脂塗料による中塗り塗膜と、この中塗り塗膜の上に塗布された、透明なフッ素樹脂系塗料による上塗り塗膜とから構成されている。裏面側塗膜は、上記めっき鋼板の裏面に塗布されたエポキシ樹脂系塗料による下塗り塗膜と、この下塗り塗膜上に塗布されたポリエステル樹脂系塗料による上塗り塗膜とから構成されている。
【0051】
一方で、上記塗装鋼板をローレット加工するためのリブロールを用意した。このリブロールは、例えば、ロール幅が100mmであり、ロール直径が120mmであり、凸条および凹条のピッチが1.6mmであり、凸条の頂部から凹条の底部までの高低差が0.1mmであり、凸条の先端縁のR(溝の横断面における稜線の曲率半径)が0.5mmである。このリブロール(凸条の先端R:0.5mm)を用い、上記塗装鋼板(板厚0.5mm)を波板状に成形し、前述した稜線、谷底、第一傾斜面および第二傾斜面からなる溝を表面に有する外装用建材1を得た。外装用建材1の溝の深さDは0.09mmであり、溝のピッチPは1.6mmであり、溝の稜線部における曲率半径Rは1.5mmであり、第一傾斜面または第二傾斜面の傾斜角Aは8°であった。
【0052】
また、ピッチPのみが異なる(ピッチPが3.0mmおよび4.5mmの)リブロールを用いた以外は外装用建材1と同様にして外装用建材2および3を得た。外装用建材2の溝の深さDは0.09mmであり、上記ピッチPは3.0mmであり、曲率半径Rは3.0mmであり傾斜角Aは5°であった。また、外装用建材3の溝の深さDは0.09mmであり、上記ピッチPは4.5mmであり、曲率半径Rは12.0mmであり傾斜角Aは3.5°であった。
【0053】
さらに、上記高低差のみが異なる(上記高低差が0.15mmの)リブロールを用いた以外は外装用建材1と同様にして外装用建材4を得た。外装用建材4の溝の深さDは0.15mmであり、上記ピッチPは1.6mmであり、上記曲率半径Rは1.0mmであり、上記傾斜角Aは15°であった。
【0054】
さらに、上記高低差とピッチとが異なる(上記高低差が0.15mmであり、ピッチが3.0mmおよび4.5mmの)リブロールを用いた以外は外装用建材1と同様にして外装用建材5および6を得た。外装用建材5の溝の深さDは0.15mmであり、上記ピッチPは3.0mmであり、上記曲率半径Rは1.0mmであり、上記傾斜角Aは10°であった。また、外装用建材6の溝の深さDは0.17mmであり、上記ピッチPは4.5mmであり、曲率半径Rは8.0mmであり上記傾斜角Aは4°であった。
【0055】
さらに、上記高低差のみが異なる(上記高低差が0.2mmの)リブロールを用いた以外は外装用建材1と同様にして外装用建材7を得た。外装用建材7の溝の深さDは0.21mmであり、上記ピッチPは1.6mmであり、上記曲率半径Rは1.0mmであり、上記傾斜角Aは25°であった。
【0056】
さらに、上記高低差とピッチとが異なる(上記高低差が0.2mmであり、ピッチが3.0mmおよび4.5mmの)リブロールを用いた以外は外装用建材1と同様にして外装用建材8および9を得た。外装用建材8の溝の深さDは0.22mmであり、上記ピッチPは3.0mmであり、上記曲率半径Rは1.0mmであり、上記傾斜角Aは12°であった。また、外装用建材9の溝の深さDは0.24mmであり、上記ピッチPは4.5mmであり、曲率半径Rは5.0mmであり、上記傾斜角Aは5°であった。
【0057】
さらに、凸条および凹条の深さが0.3mmのリブロールを用いた以外は外装用建材1と同様にして外装用建材10を得た。外装用建材10の溝の深さDは0.30mmであり、上記ピッチPは1.6mmであり、上記曲率半径Rは1.0mmであり、上記傾斜角Aは27°であった。
【0058】
さらに、上記高低差とピッチとが異なる(上記高低差が0.3mmであり、ピッチが3.0mmおよび4.5mmの)リブロールを用いた以外は外装用建材1と同様にして外装用建材11および12を得た。外装用建材11の溝の深さDは0.30mmであり、上記ピッチPは3.0mmであり、上記曲率半径Rは1.0mmであり、上記傾斜角Aは15°であった。また、外装用建材12の溝の深さDは0.30mmであり、上記ピッチPは4.5mmであり、曲率半径Rは3.0mmであり、上記傾斜角Aは6°であった。
【0059】
さらに、上記高低差のみが異なる(上記高低差が0.5mmの)リブロールを用いた以外は外装用建材1と同様にして外装用建材13を得た。外装用建材13の溝の深さDは0.50mmであり、上記ピッチPは1.6mmであり、上記曲率半径Rは1.0mmであり、上記傾斜角Aは30°であった。
【0060】
さらに、上記高低差とピッチとが異なる(上記高低差が0.5mmであり、ピッチが3.0mmおよび4.5mmの)リブロールを用いた以外は外装用建材1と同様にして外装用建材14および15を得た。外装用建材14の溝の深さDは0.50mmであり、上記ピッチPは3.0mmであり、上記曲率半径Rは1.0mmであり、上記傾斜角Aは20°であった。また、外装用建材15の溝の深さDは0.50mmであり、上記ピッチPは4.5mmであり、曲率半径Rは2.0mmであり、上記傾斜角Aは8°であった。
【0061】
さらに、板厚0.2mmの溶融55%アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板を用い、上記高低差が0.20mmであり、ピッチが3.0mmであり、先端Rが1.0mmであるリブロールを用いたこと以外は、外装用建材1と同様にして外装用建材16を得た。外装用建材16の溝の深さDは0.20mmであり、上記ピッチPは3.0mmであり、上記曲率半径Rは2.0mmであり、上記傾斜角Aは5°であった。
【0062】
さらに、上記高低差とピッチとが異なるリブロールを用いた以外は外装用建材16と同様にして外装用建材17〜20を得た。外装用建材17は、上記高低差が2.0mmであり、先端Rが0.2mmのリブロールを用いて作製された。外装用建材17の溝の深さDは2.0mmであり、上記ピッチPは3.0mmであり、上記曲率半径Rは0.4mmであり、上記傾斜角Aは61°であった。外装用建材18は、上記高低差が0.3mmであり、先端Rが1.0mmのリブロールを用いて作製された。外装用建材18の溝の深さDは0.30mmであり、上記ピッチPは3.0mmであり、上記曲率半径Rは1.5mmであり、上記傾斜角Aは9°であった。外装用建材19は、上記高低差が1.0mmであり、先端Rが0.1mmのリブロールを用いて作製された。外装用建材19の溝の深さDは1.0mmであり、上記ピッチPは3.0mmであり、上記曲率半径Rは0.3mmであり、上記傾斜角Aは35°であった。外装用建材20は、上記高低差が0.3mmであり、先端Rが1.2mmのリブロールを用いて作製された。外装用建材20の溝の深さDは0.30mmであり、上記ピッチPは3.0mmであり、上記曲率半径Rは1.6mmであり、上記傾斜角Aは10°であった。
【0063】
なお、外装用建材1〜20の傾斜角Aについて、稜線12や谷底13が曲面となっている場合、その曲率が大きいほど、傾斜角Aは大きくなる。よって、傾斜角Aの実測値は、溝の深さDおよびピッチPから単純に算出した値とは異なる。
【0064】
また、比較用に、溝を形成していない上記塗装鋼板(板厚0.5mm)を、外装用建材21として用意した。
【0065】
外装用建材1〜21を、縦20cm、横10cmの基板の表面に固定し、試験板を作製した。そして、
図5に示されるように、試験板50を、溝の傾きBを0°とし、外装用建材の表面の斜度Cを90°として、屋外の波板の屋根51下の横支柱52,53に、固定具54によって三点で固定することにより、屋根51の縁の直下に配置した。雨が降ると、屋根51の波板の溝を流れ、屋根51の縁から筋状に流れ落ちる雨水が、試験板50上の外装用建材1〜21の表面を流れた。こうして、外装用建材1〜21を屋外に210日間設置した。
【0066】
そして、1mの距離で外装用建材1〜21を正面から撮影したときの画像を目視で観察し、雨筋汚れの有無について以下の基準で評価した。外装用建材1〜21の溝のおよび上記評価の結果を表1に示す。
(評価基準)
◎:10人中10人が雨筋汚れを判別不能と判定した。
○:10人中7〜9人が雨筋汚れを判別不能と判定した。
△:10人中4〜6人が雨筋汚れを判別不能と判定した。
×:10人中0〜3人が雨筋汚れを判別不能と判定した。
【0067】
【表1】
【0068】
外装用建材4、5、7、8、10、11、13、14、16、17、18、19および20は、いずれも10人中5人以上が雨筋汚れの判別不能と判定し、雨筋汚れの境界が不明瞭であり、雨筋汚れを目立たなくする効果が認められた。特に、外装用建材8に比べて、溝のピッチがより小さな外装用建材7では、雨筋汚れの位置を特定するのが困難なほど、雨筋汚れを目立たなくする効果が認められた。外装用建材11に比べて溝のピッチの小さい外装用建材10、外装用建材14に比べて溝のピッチの小さい外装用建材13も、同様な効果が認められた。
【0069】
一方、外装用建材4および5に比べて、溝の深さDがより小さな外装用建材1および2、ピッチPがより大きな外装用建材6、および、深さDがより小さくピッチPがより大きな外装用建材3、のそれぞれでは、外装用建材21と比べると雨筋汚れの水平方向への広がりは確認された。しかしながら、これらの外装用建材1〜3および6では、雨筋汚れが目立たないほどの効果までは認められなかった。これは、第一傾斜面および第二傾斜面がなだらか過ぎて、第一傾斜面の堰き止め作用を呈しつつも一様に雨水が流下したためと考えられる。同様にピッチの大きな外装用建材9、12、15でも、雨筋汚れが目立たないほどの効果は得られなかった。
【0070】
また、ピッチPを3.0mmと固定して溝の深さD、曲率半径Rおよび傾斜角Aを変化させた16〜20においては、いずれも10人中5人以上が雨筋汚れの判別不能と判定し、雨筋汚れの境界が不明瞭であった。一方、傾斜角Aが60°を越えた外装用建材17は、成形後に歪みが生じ、形状不良となった。また、曲率半径Rの小さい外装用建材19では成形後に材料割れが発生した。このように、外装用建材17および19は、ローレット加工で作製される場合には、実用上の問題を有していた。