(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0018】
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るデュアルフューエルエンジン1の一例を示す模式図である。本実施形態に係るデュアルフューエルエンジン1は、クロスヘッド型ディーゼルエンジンを含み、例えば、船舶等の推進用エンジンとして使用される。
【0019】
デュアルフューエルエンジン1は、台板50と、台板50に設けられた架構(本体)51と、架構51に設けられたジャケット52とを備えている。
【0020】
また、デュアルフューエルエンジン1は、ジャケット52に設けられたシリンダ2と、シリンダ2の内部で往復移動するピストン3と、ピストン3に接続されたピストン棒41と、連接棒43と、ピストン棒41と連接棒43とを連結するクロスヘッド42と、クランクピン44を介して連接棒43と接続されたクランク軸4とを備えている。
【0021】
シリンダ2は、ジャケット52に設けられたシリンダライナ2Aと、シリンダライナ2A上に設けられたシリンダカバー2Bとを有する。クロスヘッド42は、架構51に設けられた案内部51Gに沿って動き、ピストン棒41からの機械的動力を連接棒43に伝達する。クランク軸4は、台板50に配置され、ピストン3から伝達される機械的動力を出力する。
【0022】
ピストン3の頂面とシリンダ2の天井面とが対向する。シリンダ2の天井面の中央部に排気弁11が設けられる。ピストン3とシリンダ2と排気弁11との間に燃焼室7が形成される。
【0023】
また、デュアルフューエルエンジン1は、クランク軸4の回転角度(クランク角度)を検出する検出装置6と、燃焼室7に気体燃料PGを供給する気体燃料噴射弁8を含む気体燃料供給システム15と、燃焼室7に液体燃料FOを供給する液体燃料噴射弁9を含む液体燃料供給システム20と、燃焼室7の圧力を検出する筒内センサ16と、デュアルフューエルエンジン1を制御する制御装置10とを備えている。
【0024】
気体燃料噴射弁8は、燃焼室7に気体燃料PGを噴射可能である。気体燃料PGは、例えば、CNG(圧縮天然ガス)、及びH
2(水素ガス)の少なくとも一つを含む。本実施形態において、気体燃料噴射弁8は、燃焼室7に2つ配置される。なお、気体燃料噴射弁8の数は任意である。
【0025】
液体燃料噴射弁9は、燃焼室7に液体燃料FOを噴射可能である。液体燃料FOは、例えば、軽油、重油、及び重質油の少なくとも一つを含む。本実施形態において、液体燃料噴射弁9は、燃焼室7に2つ配置される。なお、液体燃料噴射弁9の数は任意である。
【0026】
検出装置6は、クランクアングルセンサを含み、クランク軸4のクランク角度を検出する。検出装置6は、ピストン3の上死点を基準としてクランク角度を検出してもよい。クランクアングルセンサは、例えば、クランク軸4に装着された計測部材(円盤、検出用歯車など)の回転位置からクランク角度を検出してクランク角度信号を出力する。クランクアングルセンサは、光学式でもよいし電磁式でもよい。なお、検出装置6は、クランク軸4の回転位置、又はピストン3の位置などからクランク角度を検出してもよい。また、上死点センサを使ってピストン3が上死点に位置するときのクランク軸4の位置情報(基準位置情報)を検出し、その位置情報とクランク軸4の回転速度情報とに基づいて、クランク角度を求めてもよい。
【0027】
検出装置6の検出結果は制御装置10に出力される。クランク角度とピストン3の位置とは関連付けられている。制御装置10は、検出装置6の検出結果に基づいて、上死点及び下死点を含むピストン3の位置を求めることができる。また、制御装置10は、内蔵されているタイマーの出力と、検出装置6の検出結果とに基づいて、例えば、ピストン3が上死点に配置された時点、及び下死点に配置された時点を求めることができる。制御装置10は、クランク角度に基づいて、排気弁11の開閉、気体燃料噴射弁8からの気体燃料PGの噴射、及び液体燃料噴射弁9からの液体燃料FOの噴射を制御するための指令信号を出力する。
【0028】
筒内センサ16は、燃焼室7の圧力を検出する。筒内センサ16の検出結果は、制御装置10に入力される。制御装置10は、筒内センサ16の検出結果に基づいて、燃焼室7の異常の有無を判定することができる。制御装置10は、筒内センサ16の検出結果に基づいて、燃焼室7の異常の種類(内容)を求めることができる。
【0029】
燃焼室7の異常は、燃焼異常、気体燃料の供給過多、及び気体燃料の供給過少の少なくとも一つを含む。燃焼異常は、失火を含む。燃焼室7が正常な状態と異常な状態とで燃焼室7の圧力は異なる。また、燃焼室7の異常の種類によっても燃焼室7の圧力は異なる。本実施形態においては、燃焼室7の異常の種類とその異常の種類に対応する燃焼室7の圧力との関係が予め求められている。その関係は、予備実験又はシミュレーションにより求められ、制御装置10に接続されている記憶装置に記憶されている。制御装置10は、筒内センサ16の検出結果と記憶装置の記憶情報とに基づいて、燃焼室7の異常の有無を判定可能であり、異常が生じている場合、その異常の種類を判定可能である。
【0030】
図2は、デュアルフューエルエンジン1の動作の一例を示す模式図である。本実施形態において、デュアルフューエルエンジン1は、2ストローク1サイクルのユニフロー掃排気式ディーゼルエンジンであり、ピストン3が下死点近傍に配置されたときに掃気ポートから燃焼室7に新しい空気が導入され、上死点から下死点へ移行中に燃焼室7の気体が排気ポートから排出される。デュアルフューエルエンジン1の動作は、新しい空気を取り入れて燃焼室7に送る吸入工程(A)と、燃焼室7の空気をピストン3で圧縮する圧縮工程(B)と、燃焼室7に燃料を噴射してその燃料を燃焼させる燃焼工程(C)と、燃焼工程後の燃焼室7の気体を排気弁11から排出する排気工程(D)と、を含む。
【0031】
デュアルフューエルエンジン1は、液体燃料FOのみを使う燃料油専用モードと、液体燃料FO及び気体燃料PGの両方を使う二種燃料モードとのそれぞれで作動可能である。
【0032】
燃料油専用モードは、液体燃料噴射弁9から燃焼室7に液体燃料FOを供給し、液体燃料FOを燃焼させる一方、気体燃料噴射弁8から燃焼室7に気体燃料PGを供給しないモードである。燃料油専用モードでは、圧縮工程において、燃焼室7の空気が圧縮された後、燃焼工程において、液体燃料噴射弁9から燃焼室7に液体燃料FOが噴射される。高温高圧の空気に液体燃料FOが噴射されることにより、液体燃料FOは自然発火して燃焼する。
【0033】
二種燃料モードは、燃焼室7に液体燃料FO及び気体燃料PGの両方が供給されるモードである。二種燃料モードでは、気体燃料噴射弁8から燃焼室7に気体燃料PGを噴射した後、液体燃料噴射弁9から燃料室7に少量の液体燃料FOを噴射してパイロット火炎を生成することで、パイロット火炎で気体燃料PGを着火して燃焼させる。
【0034】
次に、
図3、
図4、及び
図5を参照して二種燃料モードの詳細について説明する。
図3は、二種燃料モードにおいて、気体燃料弁8から燃焼室7に気体燃料PGが噴射され、液体燃料弁9から燃焼室7に液体燃料FOが噴射されている状態の一例を模式的に示す平面図である。
図4は、二種燃料モードにおいて、液体燃料FO及び気体燃料PGのそれぞれが燃焼している状態の一例を模式的に示す図である。
図5は、二種燃料モードにおいて、液体燃料FO及び気体燃料PGが燃焼している状態の一例を模式的に示す平面図である。
【0035】
圧縮工程において、燃焼室7の空気が圧縮される。
図3に示すように、燃焼工程において、気体燃料噴射弁8から燃焼室7に気体燃料PGが噴射される。また、液体燃料噴射弁9から燃焼室7に少量の液体燃料FOが噴射される。ピストン3が上死点近傍に配置される時点において、液体燃料FOと気体燃料PGとが燃焼室7にほぼ同時に噴射される。二種燃料モードにおいて、主燃料は、気体燃料PGである。
【0036】
図3に示すように、気体燃料噴射弁8は、気体燃料PGを噴射する噴射口8Sを複数有する。液体燃料噴射弁9は、液体燃料FOを噴射する噴射口9Sを複数有する。気体燃料噴射弁8は、その気体燃料噴射弁8の軸に対する放射方向に関して外側に向かって気体燃料PGを噴射する。液体燃料噴射弁9は、その液体燃料噴射弁9の軸に対する放射方向に関して外側に向かって液体燃料FOを噴射する。気体燃料噴射弁8及び液体燃料噴射弁9のそれぞれは、気体燃料PGと液体燃料FOとが交差するように、気体燃料PG及び液体燃料FOを噴射する。
【0037】
液体燃料噴射弁9から噴射された少量の液体燃料FOは自然発火して、パイロット火炎を生成する。気体燃料噴射弁8は、圧力P1の気体燃料PGを噴射する。高温高圧の空気が満たされ、パイロット火炎が生成されている燃焼室7に、高圧の気体燃料PGが供給されることにより、
図4及び
図5に示すように、燃焼室7において拡散燃焼が生じる。本実施形態において、二種燃料モードは、拡散燃焼方式で気体燃料PGを燃焼させる。
【0038】
次に、本実施形態に係る気体燃料供給システム15の一例について説明する。
図6は、本実施形態に係る気体燃料供給システム15の一例を示す図である。
【0039】
気体燃料供給システム15は、デュアルフューエルエンジン1の燃焼室7に気体燃料PGを供給する。気体燃料供給システム15は、制御装置10により制御される。気体燃料供給システム15は、燃焼室7に気体燃料PGを噴射する気体燃料噴射弁8と、気体燃料噴射弁8に供給される気体燃料PGが流れる供給流路21と、供給流路21を開閉可能なゲート弁22と、気体燃料噴射弁8とゲート弁22との間の供給流路21の圧力を検出する圧力センサ23とを備えている。気体燃料噴射弁8及びゲート弁22は、制御装置10に制御される。圧力センサ23の検出結果は、制御装置10に出力される。ゲート弁22は、気体燃料PGを送出可能なポンプを含む気体燃料供給源と接続される。気体燃料供給源は、ゲート弁22に気体燃料PGを供給する。気体燃料供給源は、圧力P1の気体燃料PGを供給する。
【0040】
ゲート弁22は、安全弁(インターロック機構)として機能する。気体燃料噴射弁8及びゲート弁22の両方が開くことにより、気体燃料供給源からの気体燃料PGは、ゲート弁22、供給流路21、及び気体燃料噴射弁8を介して、燃焼室7に供給される。
【0041】
圧力センサ23は、気体燃料噴射弁8とゲート弁22との間の供給流路21の圧力を検出する。圧力センサ23は、気体燃料噴射弁8の入口の圧力を検出可能である。圧力センサ23の検出結果は、制御装置10に出力される。本実施形態において、制御装置10は、圧力センサ23の検出結果と、検出装置6の検出結果とに基づいて、気体燃料噴射弁8及びゲート弁22の少なくとも一方の異常を検知する。
【0042】
図7は、気体燃料噴射弁8及びゲート弁22が正常に作動しているときのクランク角度と、供給流路21の圧力(気体燃料噴射弁8の入口の圧力)との関係を示す図である。
図7は、気体燃料噴射弁8の開閉動作、及びゲート弁22の開閉動作のタイミングチャートを含む。
【0043】
図7において、クランク角度が0度のとき、ピストン3は上死点に配置される。クランク角度が180度(又は−180度)のとき、ピストン3は下死点に配置される。なお、
図7は、クランク角度が−30度から90度の範囲における、気体燃料噴射弁8とゲート弁22との間の供給流路21の圧力を示す。
【0044】
制御装置10は、燃焼室7に気体燃料PGを供給するために、ゲート弁22を開けた後、気体燃料噴射弁8を開けるように指令信号を出力する。制御装置10は、ピストン3が上死点近傍に位置する時点において、ゲート弁22を開ける。
図7において、クランク角度がA1度になったとき、制御装置10は、ゲート弁22を開けるように指令信号を出力する。また、制御装置10は、ピストン3が上死点近傍に位置する時点において、気体燃料噴射弁8を開ける。
図7において、クランク角度がA2度になったとき、制御装置10は、気体燃料噴射弁8を開けるように指令信号を出力する。クランク角度がA1度になったときからA2度になるまでの期間T1においては、ゲート弁22が開いており、気体燃料噴射弁8は閉じている。
【0045】
ゲート弁22には、気体燃料供給源から圧力P1の気体燃料PGが供給される。気体燃料噴射弁8が閉じた状態でゲート弁22が開くことにより、期間T1において、気体燃料噴射弁8とゲート弁22との間の供給流路21の圧力は、圧力P1となる。
【0046】
クランク角度がA2度になったときに、ゲート弁22が開いている状態で気体燃料噴射弁8が開くことにより、気体燃料噴射弁8から気体燃料PGが燃焼室7に噴射される。なお、本実施形態において、クランク角度A2は、0度である。すなわち、ピストン3が上死点に配置されたときに、気体燃料噴射弁8から気体燃料PGが噴射される。なお、クランク角度A2は、0度でなくてもよい。気体燃料噴射弁8が開いて気体燃料PGが噴射されることにより、気体燃料噴射弁8とゲート弁22との間の供給流路21の圧力は低下する。
【0047】
制御装置10は、気体燃料噴射弁8を閉じた後、ゲート弁22を閉じるように指令信号を出力する。
図7において、クランク角度がA3度になったとき、制御装置10は、気体燃料噴射弁8を閉じるように指令信号を出力する。クランク角度がA3度よりも大きいA4度になったとき、制御装置10は、ゲート弁22を閉じるように指令信号を出力する。
【0048】
クランク角度がA2度になったときからA3度になるまでの期間T2においては、気体燃料噴射弁8及びゲート弁22の両方が開いている。期間T2において、気体燃料噴射弁8とゲート弁22との間の供給流路21の圧力は徐々に低下する。
【0049】
クランク角度がA3度になったとき、制御装置10は、ゲート弁22が開いている状態で、気体燃料噴射弁8を閉じる。これにより、クランク角度がA3度になったときからA4度になるまでの期間T3において、気体燃料噴射弁8とゲート弁22との間の供給流路21の圧力は徐々に増大する。
【0050】
クランク角度がA4度になったとき、制御装置10は、気体燃料噴射弁8を閉じている状態で、ゲート弁22を閉じる。これにより、期間T3の後の期間T4において、気体燃料噴射弁8とゲート弁22との間の供給流路21の圧力は、一定となる。本実施形態においては、気体燃料噴射弁8とゲート弁22との間の供給流路21の圧力が圧力P1に上昇する前に、ゲート弁22が閉じられる。本実施形態において、期間T4における供給流路21の圧力は、圧力P1よりも低い圧力P2である。
【0051】
本実施形態において、期間T1は、ゲート弁22を開けるための指令信号が出力されてから、気体燃料噴射弁8を開けるための指令信号が出力されるまでの期間を含む。期間T2は、気体燃料噴射弁8を開けるための指令信号が出力されてから、気体燃料噴射弁8を閉じるための指令信号が出力されるまでの期間を含む。期間T3は、気体燃料噴射弁8を閉じるための指令信号が出力されてから、ゲート弁22を閉じるための指令信号が出力されるまでの期間を含む。期間T4は、ゲート弁22を閉じるための指令信号が出力されてから、次のサイクルにおいてゲート弁22を開けるための指令信号が出力されるまでの期間を含む。制御装置10は、検出装置6の検出結果に基づいて、指令信号を出力するタイミングを決定する。
【0052】
次に、気体燃料噴射弁8及びゲート弁22の異常検出方法について説明する。
図8は、制御装置10がゲート弁22を閉じる指令信号を出力したにもかかわらず、ゲート弁22が開いている異常(開異常)を示す図である。
図8において、横軸はクランク角度であり、縦軸は、気体燃料噴射弁8とゲート弁22との間の供給流路21の圧力(気体燃料噴射弁8の入口の圧力)である。
【0053】
図7を参照して説明したように、制御装置10は、クランク角度がA1度のとき、ゲート弁22を開ける指令信号を出力し、クランク角度がA2度のとき、気体燃料噴射弁8を開ける指令信号を出力し、クランク角度がA3度のとき、気体燃料噴射弁8を閉じる指令信号を出力し、クランク角度がA4度のとき、ゲート弁22を閉じる指令信号を出力する。
【0054】
クランク角度A4のとき、制御装置10からゲート弁22を閉じる指令信号が出力されたにもかかわらず、ゲート弁22が閉じないと、期間T4においても、気体燃料供給源からの圧力P1の気体燃料PGが供給流路21に供給される。これにより、
図8に示すように、期間T4における供給流路21の圧力は、圧力P1となる。
【0055】
期間T4は、ピストン3が下死点近傍に位置する時点を含む。すなわち、期間T4は、クランク角度が180度である時点を含む。上述のように、気体燃料噴射弁8及びゲート弁22が正常に作動しているときの期間T4における供給流路21の圧力は、圧力P2である。このように、ゲート弁22が異常(開異常)なときと正常なときとで、期間T4における供給流路21の圧力は異なる。すなわち、ゲート弁22が正常なときは、期間Th(期間T4)における供給流路21の圧力は、
図8中、実線で示すように、圧力P2となり、ゲート弁22が開異常なときは、期間Thにおける供給流路21の圧力は、
図8中、点線で示すように、圧力P2よりも高い圧力P1となる。したがって、制御装置10は、ピストン3が下死点近傍に配置されているときの期間T4の少なくとも一部の期間Thにおける圧力センサ23の検出結果に基づいて、ゲート弁22が異常か否かを検出することができる。
【0056】
次に、制御装置10がゲート弁22を開ける指令信号を出力したにもかかわらず、ゲート弁22が閉じている異常(閉異常)について説明する。
図9は、ゲート弁22が閉異常であるときの、クランク角度と供給流路21の圧力(気体燃料噴射弁8の入口の圧力)との関係を示す図である。
【0057】
クランク角度A1のとき、制御装置10からゲート弁22を開ける指令信号が出力されたにもかかわらず、ゲート弁22が開かずに、クランク角度A2のとき、気体燃料噴射弁8が開くと、ゲート弁22が閉じた状態で、供給流路21の気体燃料PGは気体燃料噴射弁8から燃焼室7に噴射される。その結果、
図9に示すように、クランク角度A2の時点から、供給流路21の圧力は低下する。このように、ゲート弁22が異常(閉異常)なときと正常なときとで、期間T2、期間T3、及び期間T4(期間Th)における供給流路21の圧力は異なる。すなわち、ゲート弁22が正常なときは、期間Th(期間T4)における供給流路21の圧力は、
図9中、実線で示すように、圧力P2となり、ゲート弁22が閉異常なときは、期間Thにおける供給流路21の圧力は、
図9中、点線で示すように、圧力P2よりも低い圧力となる。また、本例では、期間T2及び期間T3においても、ゲート弁22が閉異常なときの供給流路21の圧力は、ゲート弁22が正常なときの供給流路21の圧力よりも低くなる。したがって、制御装置10は、例えば、期間Thの圧力センサ23の検出結果に基づいて、ゲート弁22が異常か否かを検出することができる。
【0058】
次に、制御装置10が気体燃料噴射弁8を閉じる指令信号を出力したにもかかわらず、気体燃料噴射弁8が開いている異常(開異常)について説明する。
図10は、気体燃料噴射弁8が開異常であるときの、クランク角度と供給流路21の圧力(気体燃料噴射弁8の入口の圧力)との関係を示す図である。
【0059】
クランク角度A3のとき、制御装置10から気体燃料噴射弁8を閉じる指令信号が出力されたにもかかわらず、気体燃料噴射弁8が閉じずに、クランク角度A4のとき、ゲート弁22が閉じると、ゲート弁22が閉じた状態で、供給流路21の気体燃料PGは気体燃料噴射弁8から燃焼室7に噴射される。その結果、
図10に示すように、クランク角度A3の時点から、供給流路21の圧力は低下する。このように、気体燃料噴射弁8が異常(開異常)なときと正常なときとで、期間T3、及び期間T4(期間Th)における供給流路21の圧力は異なる。すなわち、気体燃料噴射弁8が正常なときは、期間Th(期間T4)における供給流路21の圧力は、
図10中、実線で示すように、圧力P2となり、気体燃料噴射弁8が開異常なときは、期間Thにおける供給流路21の圧力は、
図10中、点線で示すように、圧力P2よりも低い圧力となる。また、本例では、期間T3においても、気体燃料噴射弁8が開異常なときの供給流路21の圧力は、気体燃料噴射弁8が正常なときの供給流路21の圧力よりも低くなる。したがって、制御装置10は、例えば、期間Thの圧力センサ23の検出結果に基づいて、ゲート弁22が異常か否かを検出することができる。
【0060】
次に、制御装置10が気体燃料噴射弁8を開ける指令信号を出力したにもかかわらず、気体燃料噴射弁8が閉じている異常(閉異常)について説明する。
図11は、気体燃料噴射弁8が閉異常であるときの、クランク角度と供給流路21の圧力(気体燃料噴射弁8の入口の圧力)との関係を示す図である。
【0061】
クランク角度A2のとき、制御装置10から気体燃料噴射弁8を開ける指令信号が出力されたにもかかわらず、気体燃料噴射弁8が開かないと、気体燃料噴射弁8が閉じ、ゲート弁22が開いている状態で、気体燃料供給源からの圧力P1の気体燃料PGが供給流路21に供給される。これにより、
図11に示すように、期間T2、期間T3、及び期間T4(期間Th)における供給流路21の圧力は、圧力P1となる。このように、気体燃料噴射弁8が異常(閉異常)なときと正常なときとで、期間T2、期間T3、及び期間T4(期間Th)における供給流路21の圧力は異なる。すなわち、気体燃料噴射弁8が正常なときは、期間Th(期間T4)における供給流路21の圧力は、
図11中、実線で示すように、圧力P2となり、気体燃料噴射弁8が閉異常なときは、期間Thにおける供給流路21の圧力は、
図11中、点線で示すように、圧力P2よりも高い圧力P1となる。また、本例では、期間T2及び期間T3においても、気体燃料噴射弁8が閉異常なときの供給流路21の圧力は、気体燃料噴射弁8が正常なときの供給流路21の圧力よりも高くなる。したがって、制御装置10は、例えば、期間Thの圧力センサ23の検出結果に基づいて、ゲート弁22が異常か否かを検出することができる。
【0062】
本実施形態において、
図8に示す圧力(ゲート弁22が開異常のときの圧力)と
図11に示す圧力(気体燃料噴射弁8が閉異常のときの圧力)とは、期間T2及び期間T3において異なるものの、期間T4において近似する。そのため、ゲート弁22及び気体燃料噴射弁8のどちらが異常なのかを、期間T4における圧力センサ23の検出結果に基づいて判断することが困難となる可能性がある。
【0063】
その場合、制御装置10は、圧力センサ23の検出結果と燃焼室7の圧力を検出する筒内センサ16の検出結果とに基づいて、気体燃料噴射弁8及びゲート弁22のどちらに異常が生じたかを判定してもよい。ゲート弁22が開異常のときと気体燃料噴射弁8が閉異常のときとで、燃焼室7の圧力は異なる。例えば、気体燃料噴射弁8が閉異常のとき、気体燃料噴射弁8から燃焼室7に気体燃料PGが噴射されないため、燃焼室7において失火が生じる可能性が高くなる。一方、ゲート弁22が開異常のとき、ゲート弁22及び気体燃料噴射弁8を介して燃焼室7に気体燃料PGが供給されるため、燃焼室7において失火が生じる可能性は低い。このように、ゲート弁22が開異常のときと気体燃料噴射弁8が閉異常のときとで、燃焼室7の異常の種類は異なる可能性が高い。また、上述したように、燃焼室7の異常の種類によって、燃焼室7の圧力は異なる。そのため、気体燃料噴射弁8に異常が生じたときの圧力センサ23の検出結果と、ゲート弁22に異常が生じたときの圧力センサ23の検出結果とが近似する場合、筒内センサ16による燃焼室7の圧力の検出結果に基づいて、気体燃料噴射弁8及びゲート弁22のどちらに異常が生じたかを判定することができる。
【0064】
上述のように、燃焼室7の異常の種類とその異常の種類に対応する燃焼室7の圧力との関係が記憶装置に記憶されている。制御装置10は、筒内センサ16の検出結果と、記憶装置の記憶情報とに基づいて、気体燃料噴射弁8及びゲート弁22のどちらに異常が生じたかを判定することができる。
【0065】
また、
図9に示す圧力(ゲート弁22が閉異常のときの圧力)と
図10に示す圧力(気体燃料噴射弁8が開異常のときの圧力)とは、期間T2において異なるものの、期間T4において近似する。そのため、ゲート弁22及び気体燃料噴射弁8のどちらが異常なのかを、期間T4における圧力センサ23の検出結果に基づいて判断することが困難となる可能性がある。
【0066】
その場合においても、ゲート弁22が閉異常のときと気体燃料噴射弁8が開異常のときとで、燃焼室7の異常の種類は異なり、燃焼室7の圧力は異なる。例えば、ゲート弁22が閉異常のとき、ゲート弁22から気体燃料噴射弁8に気体燃料PGが供給されないため、燃焼室7において失火が生じる可能性は高くなる。一方、気体燃料噴射弁8が開異常のとき、気体燃料噴射弁8から燃焼室7に気体燃料PGが噴射されるため、燃焼室7において失火が生じる可能性は低い。そのため、制御装置10は、筒内センサ16の検出結果と、記憶装置の記憶情報とに基づいて、気体燃料噴射弁8及びゲート弁22のどちらに異常が生じたかを判定することができる。
【0067】
以上説明したように、本実施形態によれば、気体燃料噴射弁8とゲート弁22との間の供給流路21の圧力の検出結果と、クランク角度の検出結果とに基づいて、気体燃料噴射弁8の異常及びゲート弁22の異常の少なくとも一方を検出することができる。したがって、例えば、その異常を解消するための適切な措置を講ずることができる。また、異常が生じている気体燃料供給システム15を使用し続けてしまう不都合を防止できる。
【0068】
また、本実施形態において、ゲート弁22は、安全弁(インターロック機構)として機能し、気体燃料PGを噴射するためにピストン3が上死点の近傍に配置されるときに作動する。気体燃料噴射弁8は、ゲート弁22が開いている状態で作動するため、気体燃料噴射弁8から燃焼室7に適切なタイミングで気体燃料PGが噴射される。ピストン3が上死点の近傍に配置されている状態で気体燃料噴射弁8及びゲート弁22が作動するため、ピストン3が下死点近傍に配置されているときの期間Thにおける圧力センサ23の検出結果に基づいて、気体燃料噴射弁8及びゲート弁22の少なくとも一方の異常を円滑に検出することができる。
【0069】
また、本実施形態においては、期間Thにおける、気体燃料噴射弁8に異常が生じたときの圧力センサ23の検出結果と、ゲート弁22に異常が生じたときの圧力センサ23の検出結果とが近似する場合でも、筒内センサ16の検出結果を参照することにより、気体燃料噴射弁8及びゲート弁22のどちらに異常が生じたかを判定することができる。
【0070】
なお、本実施形態において、例えば、燃焼室7から排気ポート12を介して排出される気体(排気ガス)の温度を検出可能な温度センサを設け、その温度センサの検出結果と圧力センサ23の検出結果とに基づいて、気体燃料噴射弁8及びゲート弁22のどちらに異常が生じたかを判定してもよい。期間Thにおける、気体燃料噴射弁8に異常が生じたときの圧力センサ23の検出結果と、ゲート弁22に異常が生じたときの圧力センサ23の検出結果とが近似する場合でも、その温度センサの検出結果を参照することにより、気体燃料噴射弁8及びゲート弁22のどちらに異常が生じたかを判定することができる。
【0071】
燃焼室7の異常の種類によって、排気ポート12から排出される排気ガスの温度は異なる。そのため、気体燃料噴射弁8に異常が生じたときの圧力センサ23の検出結果と、ゲート弁22に異常が生じたときの圧力センサ23の検出結果とが近似する場合、温度センサによる排気ガスの温度の検出結果に基づいて、気体燃料噴射弁8及びゲート弁22のどちらに異常が生じたかを判定することができる。燃焼室7の異常の種類とその異常の種類に対応する排気ガスの温度との関係を記憶装置に記憶しておくことにより、制御装置10は、温度センサの検出結果と、記憶装置の記憶情報とに基づいて、気体燃料噴射弁8及びゲート弁22のどちらに異常が生じたかを判定することができる。
【0072】
<第2実施形態>
第2実施形態について説明する。以下の実施形態において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0073】
本実施形態においては、燃料油専用モードにおける圧力センサ23の検出結果に基づいて、気体燃料噴射弁8の異常を検出する例について説明する。燃料油専用モードにおいて、気体燃料供給源から気体燃料PGは供給されず、制御装置10は、気体燃料噴射弁8を閉じるように指令信号を出力する。燃料油専用モードにおいて、気体燃料噴射弁8が正常に作動するとき、気体燃料噴射弁8は閉じ、気体燃料噴射弁8から気体燃料PGは噴射されない。
【0074】
制御装置10が気体燃料噴射弁8を閉じる指令信号を出力したにもかかわらず、気体燃料噴射弁8が開いている異常(開異常)が生じた場合、圧力センサ23の検出結果に基づいて、その気体燃料噴射弁8の異常を検出することができる。
【0075】
図12は、燃料油専用モードにおいて気体燃料噴射弁8が正常及び開異常であるときの、クランク角度と供給流路21の圧力(気体燃料噴射弁8の入口の圧力)との関係を示す図である。
図12において、横軸はクランク角度であり、縦軸は、気体燃料噴射弁8とゲート弁22との間の供給流路21の圧力(気体燃料噴射弁8の入口の圧力)である。
【0076】
燃料油専用モードにおいて気体燃料噴射弁8が正常である場合、圧力センサ23の出力は一定である。一方、燃料油専用モードにおいて気体燃料噴射弁8が異常である場合(開いている場合)、燃焼室7の高温高圧の気体が気体燃料噴射弁8から供給流路21に流入する。これにより、供給流路21の圧力が上昇する。供給流路21の圧力は、圧力センサ23に検出される。そのため、制御装置10は、圧力センサ23の検出結果に基づいて、燃料油専用モードにおいて気体燃料噴射弁8に異常が生じたか否かを検出することができる。
【0077】
以上説明したように、本実施形態によれば、気体燃料噴射弁8が使用されない燃料油専用モードにおいても、気体燃料噴射弁8の異常を検出することができる。
【0078】
<第3実施形態>
第3実施形態について説明する。以下の実施形態において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0079】
図13は、本実施形態に係る気体燃料供給システム15の一例を示す模式図である。
図13に示すように、気体燃料供給システム15は、燃焼室7に気体燃料PGを噴射する気体燃料噴射弁8と、プレ噴射弁30とを備えている。プレ噴射弁30は、制御装置10に制御される。プレ噴射弁30は、気体燃料PGを燃焼室7に噴射する。
【0080】
プレ噴射弁30は、気体燃料噴射弁8からの気体燃料PGの噴射前に、気体燃料PGを燃焼室7に噴射する。本実施形態においては、プレ噴射弁30から噴射された気体燃料PGにより、燃焼室7において、まず空気と気体燃料PGとの混合気体が生成された後、さらに気体燃料噴射弁8から気体燃料PGが噴射されることにより、燃焼室7において燃焼が行われる。
【0081】
図14は、部分予混合燃焼を行う部分予混合燃焼モードのクランク角度と供給流路21の圧力(気体燃料噴射弁8の入口の圧力)との関係を示す図である。
図14において、横軸はクランク角度であり、縦軸は、気体燃料噴射弁8とゲート弁22との間の供給流路21の圧力(気体燃料噴射弁8の入口の圧力)である。また、
図14は、プレ噴射弁30が正常及び開異常であるときの、クランク角度と供給流路21の圧力との関係を示す。
【0082】
部分予混合燃焼モードにおいては、気体燃料噴射弁8からの気体燃料PGの噴射が行われる前に、プレ噴射弁30からの気体燃料PGの噴射が行われる。気体燃料噴射弁8から気体燃料PGを噴射するときの気体燃料噴射弁8及びゲート弁22の動作は、上述の実施形態と同様である。すなわち、制御装置10は、クランク角度がA1度のとき、ゲート弁22を開け、クランク角度がA2度のとき、気体燃料噴射弁8を開け、クランク角度がA3度のとき、気体燃料噴射弁8を閉じ、クランク角度がA4度のとき、ゲート弁22を閉じるように指令信号を出力する。
【0083】
プレ噴射弁30から気体燃料PGを噴射するときのゲート弁22及びプレ噴射弁30の開閉のシーケンスは、気体燃料噴射弁8から気体燃料PGを噴射するときのゲート弁22及び気体燃料噴射弁8の開閉のシーケンスと同様である。すなわち、プレ噴射弁30から気体燃料PGを噴射するとき、制御装置10は、クランク角度がA1p度のとき、ゲート弁22を開け、クランク角度がA2p度のとき、プレ噴射弁30を開け、クランク角度がA3p度のとき、プレ噴射弁30を閉じ、クランク角度がA4p度のとき、プレ噴射弁30を閉じる。
【0084】
制御装置10は、クランク角度A3pにおいて気体燃料PGを噴射したプレ噴射弁30を閉じてからクランク角度A4pにおいてゲート弁22を閉じた後、気体燃料噴射弁8からの気体燃料PGの噴射が行われるように、クランク角度A1においてゲート弁22を開けるように指令信号を出力する。
【0085】
図14を参照して、制御装置10がプレ噴射弁30を閉じる指令信号を出力したにもかかわらず、プレ噴射弁30が開いている異常(開異常)について説明する。
【0086】
クランク角度A3pのとき、制御装置10からプレ噴射弁30を閉じる指令信号が出力されたにもかかわらず、プレ噴射弁30が閉じずに、クランク角度A4pのとき、ゲート弁22が閉じると、ゲート弁22が閉じた状態で、気体燃料PGはプレ噴射弁30から燃焼室7に噴射される。その結果、
図14に示すように、クランク角度A3pの時点から、供給流路21の圧力は低下する。このように、プレ噴射弁30が異常(開異常)なときと正常なときとで、クランク角度A3pにおいてプレ噴射弁30を閉じるための指令信号が出力されてからクランク角度A1においてゲート弁22を開くための指令信号が出力されるまでの期間Tjにおける供給流路21の圧力は異なる。すなわち、プレ噴射弁30が正常なときは、期間Tjにおける供給流路21の圧力は、
図14中、実線で示すように、圧力P2となり、プレ噴射弁30が開異常なときは、期間Tjにおける供給流路21の圧力は、
図14中、点線で示すように、圧力P2よりも低い圧力となる。したがって、制御装置10は、期間Tjにおける圧力センサ23の検出結果に基づいて、プレ噴射弁30が異常か否かを検出することができる。
【0087】
次に、制御装置10がプレ噴射弁30を開ける指令信号を出力したにもかかわらず、プレ噴射弁30が閉じている異常(閉異常)について説明する。
図15は、プレ噴射弁30が閉異常であるときの、クランク角度と供給流路21の圧力(気体燃料噴射弁8の入口の圧力)との関係を示す図である。
【0088】
クランク角度A2pのとき、制御装置10からプレ噴射弁30を開く指令信号が出力されたにもかかわらず、プレ噴射弁30が開かないと、プレ噴射弁30が閉じ、ゲート弁22が開いている状態で、圧力P1の気体燃料PGが供給流路21に供給される。これにより、
図15に示すように、期間Tjにおける供給流路21の圧力は、圧力P1となる。このように、プレ噴射弁30が異常(閉異常)なときと正常なときとで、期間Tjにおける供給流路21の圧力は異なる。すなわち、プレ噴射弁30が正常なときは、期間Tjにおける供給流路21の圧力は、
図15中、実線で示すように、圧力P2となり、プレ噴射弁30が閉異常なときは、期間Tjにおける供給流路21の圧力は、
図15中、点線で示すように、圧力P2よりも高い圧力P1となる。したがって、期間Tjにおける圧力センサ23の検出結果に基づいて、プレ噴射弁30が異常か否かを検出することができる。
【0089】
以上説明したように、本実施形態によれば、気体燃料供給システム15がプレ噴射弁30を有する場合、プレ噴射弁30が閉じてからゲート弁22が開くまでの期間Tjにおける圧力センサ23の検出結果に基づいてプレ噴射弁30の異常を検出することができる。