特許第6373582号(P6373582)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6373582X線、ガンマ線又は粒子線のためのコリメータ
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  • 特許6373582-X線、ガンマ線又は粒子線のためのコリメータ 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373582
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】X線、ガンマ線又は粒子線のためのコリメータ
(51)【国際特許分類】
   G01T 7/00 20060101AFI20180806BHJP
   C22C 1/04 20060101ALI20180806BHJP
   C22C 27/04 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   G01T7/00 B
   C22C1/04 D
   C22C27/04 101
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-532014(P2013-532014)
(86)(22)【出願日】2011年10月4日
(65)【公表番号】特表2014-503061(P2014-503061A)
(43)【公表日】2014年2月6日
(86)【国際出願番号】AT2011000414
(87)【国際公開番号】WO2012045106
(87)【国際公開日】20120412
【審査請求日】2014年7月10日
【審判番号】不服2016-7199(P2016-7199/J1)
【審判請求日】2016年5月17日
(31)【優先権主張番号】GM619/2010
(32)【優先日】2010年10月7日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】390040486
【氏名又は名称】プランゼー エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】ハントトラック、ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ケストラー、ハインリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ライヒトフリート、ゲアハルト
【合議体】
【審判長】 小松 徹三
【審判官】 伊藤 昌哉
【審判官】 森林 克郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−30372(JP,A)
【文献】 特開2005−308748(JP,A)
【文献】 特開2007−155638(JP,A)
【文献】 米国特許第5462576(US,A)
【文献】 特開平7−166287(JP,A)
【文献】 特表2006−505688(JP,A)
【文献】 特開平1−301807(JP,A)
【文献】 特開平5−309088(JP,A)
【文献】 特開平6−100973(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/010607(WO,A1)
【文献】 特開平9−257996(JP,A)
【文献】 特開平9−71828(JP,A)
【文献】 特開平11−36003(JP,A)
【文献】 特開2010−85211(JP,A)
【文献】 特開昭63−238600(JP,A)
【文献】 特開2004−177250(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0006781(US,A1)
【文献】 特開2010−190802(JP,A)
【文献】 特開平11−350060(JP,A)
【文献】 特公昭53−41087(JP,B2)
【文献】 米国特許第4801330(US,A)
【文献】 特開平5−9641(JP,A)
【文献】 特開2008−63985(JP,A)
【文献】 特開2006−505688(JP,A)
【文献】 特開2003−287590(JP,A)
【文献】 特開2002−30372(JP,A)
【文献】 DENSIMET UND INERMET WOLFRAMLEGIERUNGEN,INERMET CITATION[ONLINE],2009年 4月 8日,P1−16,URL,http://www.plansee.com/lib/dl_710_DENSIMET−INERMET_DE.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T1/00-7/12
C22C1/04,27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
散乱線を低減するためのタングステン含有材料製の複数のコリメータ要素を有するX線、ガンマ線又は粒子線のためのコリメータであって、少なくとも1つのコリメータ要素が80重量%を超え、92.5重量%以下のタングステン含有量を有するタングステン合金からなり、前記タングステン合金が、タングステンと、総含有量が3〜14重量%のMo単体又はMo及びTaからなる金属、総含有量が4.5〜9重量%のFe、Ni、Co及び/又はCuからなる金属とからなり、1.5より小さい平均粒子アスペクト比を有するタングステン粒子を含有し、前記コリメータ要素の厚さが50〜250μmであり、前記コリメータ要素の厚さ当たりのタングステン粒子数の平均が5より大きく、放射線吸収の均質率がHF≦0.25であることを特徴とするX線、ガンマ線又は粒子線のためのコリメータ。
【請求項2】
前記コリメータ要素の厚さ当たりのタングステン粒子数の平均が10より大きいことを特徴とする請求項1に記載のコリメータ。
【請求項3】
前記タングステン合金が、球形状のタングステン粒子を含有することを特徴とする請求項1に記載のコリメータ。
【請求項4】
前記コリメータ要素がコリメータ板であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコリメータ。
【請求項5】
前記コリメータがコンピュータ断層撮影装置の画像形成ユニットの部分であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のコリメータ。
【請求項6】
80重量%を超え、92.5重量%以下のタングステン含有量を有するタングステン合金からなり、厚さが50〜250μmであるコリメータ要素であって、前記タングステン合金が、タングステンと、総含有量が3〜14重量%のMo単体又はMo及びTaからなる金属、総含有量が4.5〜9重量%のFe、Ni、Co及び/又はCuからなる金属とからなり、1.5より小さい平均粒子アスペクト比を有するタングステン粒子を含有するタングステン合金であり、コリメータ要素厚さ当たりのタングステン粒子数の平均が5より大きく、放射線吸収の均質率がHF≦0.25であることを特徴とするコリメータ要素。
【請求項7】
コリメータ要素がフィルム押出又はテープ成形によって製造されることを特徴とする請求項6に記載のコリメータ要素の製造方法。
【請求項8】
下記のプロセスステップ:
80重量%を超え、92.5重量%以下のタングステンと、総含有量が3〜14重量%のMo単体又はMo及びTaからなる金属、総含有量が4.5〜9重量%のFe、Ni、Co及び/又はCuからなる金属とからなる金属粉末45〜65体積%、熱可塑性のバインダー35〜55体積%、並びに、分散剤又はその他の補助剤0〜5体積%を含んでなる粉末コンパウンドの製造ステップ;
前記粉末コンパウンドの可塑化ステップ;
前記可塑化された粉末コンパウンドの賦形によるグリーンシートの製造ステップ;
化学的手段又は熱的手段により前記グリーンシートのバインダーを除去して少なくとも部分的にバインダーが除去されたグリーンシートを得る前記グリーンシートのバインダー除去ステップ;
前記少なくとも部分的にバインダーが除去されたグリーンシートの、1,100〜1,500℃の焼結温度における、焼結による焼結板の製造ステップ;
並びに、
加工によるコリメータ要素最終形状の製造ステップを備えることを特徴とする請求項に記載のコリメータ要素の製造方法。
【請求項9】
更に、前記グリーンシートの平滑化ステップ及び前記焼結板の較正圧延ステップのうちの少なくとも1つを備える請求項8に記載のコリメータ要素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散乱線を低減するためのタングステン含有材料製の複数のコリメータ要素を有するX線、ガンマ線又は粒子線のためのコリメータ、コリメータ要素及びコリメータ要素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コリメータは、無限に遠く離れた放射線源が発生するような、平行した放射線の流れを発生させるための機器であり、例えば、X線装置、例えばコンピュータ断層撮影装置、の画像形成において用いられる。コリメータは、検出要素のシンチレータアレイの上部に配置されており、特定の空間方向のX線のみをシンチレータアレイ上に到達させるようになっている。コリメータは、散乱放射線を低減するために相互に決められた間隔で配置され且つ固定された、複数のコリメータ要素を有する。斜めに入射する散乱放射線は、コリメータ要素によって吸収される。それによって、放射線主方向の放射線のみが放射線検知モジュールに入る。コリメータ要素が小板状に形成されている場合には、コリメータ要素は、コリメータ板と呼ばれる。小板の厚さは、典型的には、約100μmである。
【0003】
コリメータ要素は、典型的には、タングステン又はモリブデンを基礎とする材料から製造される。高い密度と高い原子番号の故に、タングステンは、X線、ガンマ線及び粒子線に対し最良の吸収挙動を示す。高い剛性と高い弾性係数により、良好な安定性が保証される。タングステンを使用する際の欠点として、薄いコリメータ板の製造に必要とされる費用のかかる圧延プロセスが挙げられる。
【0004】
タングステンと、より低融点の金属結合相とを、含むタングステン合金は、重金属と呼ばれる。タングステンは、このとき、合金の主成分であり、タングステン含有量は、典型的には、85〜98重量%である。結合相は、典型的には、Ni/Fe又はNi/Cuからなる。
【0005】
重金属合金は、粉末冶金プロセス技術によって製造される。この場合、合金構成要素は混合され、こうして製造された粉末は圧縮され、液相焼結によって密集させられる。焼結の際、結合相中へのタングステンの溶解及び結合相からのタングステンの析出が起きる。重金属は、何十年にも亘って、遮蔽装置に使用されてきた。しかしながら、200μm未満の壁厚の場合は、遮蔽装置の壁厚に関する結合相成分の分率が、放射線の入射する方向において、局所的に異なるという問題点がある。このことは、結合相の吸収能力がタングステンに比べて著しく低いので、吸収能力も異なるという結果をもたらす。焼結に続く圧延プロセスによって、タングステン粒子が圧延方向に引き延ばされた、遮蔽挙動にとって一層有利な、微細構造を生じさせることは、確かに基本的には可能である。しかしながら、このことは、著しくより高い製造コストと結び付き、このため、このように製造された板は、純粋なタングステンで製造されたコリメータ要素に比べ、利点を有しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、良好で均一な遮蔽作用を有し簡単な方法で製造可能なコリメータ要素を備える、X線、ガンマ線又は粒子線のための、コリメータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコリメータは、散乱線を低減するためのタングステン含有材料製の複数のコリメータ要素を有するX線、ガンマ線又は粒子線のためのコリメータであって、少なくとも1つのコリメータ要素が72〜98重量%のタングステン含有量を有するタングテン合金からなり、前記タングステン合金が、Mo、Ta及びNbからなる群からの少なくとも1つの金属1〜14重量%とFe、Ni、Co及びCuからなる群からの少なくとも1つの金属1〜14重量%とを含むことを特徴とするX線、ガンマ線又は粒子線のためのコリメータである。
本発明のコリメーターにおいて、前記タングステン合金が、Mo、Ta及びNbからなる群からの少なくとも1つの金属1〜14重量%、Fe、Ni、Co及びCuからなる群からの少なくとも1つの金属1〜14重量%及び残部タングステンからなることが好ましい。また、前記タングステン合金が、Mo、Ta及びNbからなる群からの少なくとも1つの金属2〜8重量%とFe、Ni、Co及びCuからなる群からの少なくとも1つの金属2〜9重量%とを含むことが更に好ましい。また、前記タングステン合金が、Mo2〜8重量%とFe及びNiからなる群からの少なくとも1つの金属2〜9重量%とを含むことが特に好ましい。
本発明のコリメータにおいて、前記タングステン合金が、1.5より小さい平均粒子アスペクト比を有するタングステン粒子を含有することが好ましく、前記タングステン合金が、球形状のタングステン粒子を含有することが更に好ましい。
本発明のコリメータにおいて、前記コリメータ要素の厚さが50〜250μmであることが好ましい。
本発明のコリメータにおいて、均質率がHF≦0.5であることが好ましく、HF≦0.25であることが更に好ましい。
本発明のコリメータにおいて、前記コリメータ要素の厚さに対する平均タングステン粒子数の比が、5より大きいことが好ましく、10より大きいことが更に好ましい。
本発明のコリメータにおいて、前記コリメータ要素はコリメータ板であることができる。
本発明のコリメータにおいて、前記コリメータがコンピュータ断層撮影装置の画像形成ユニットの部分であることができる。
本発明のコリメータ要素は、72〜98重量%のタングステン含有量を有するタングテン合金からなり、前記タングステン合金が、Mo、Ta及びNbからなる群からの少なくとも1つの金属1〜14重量%とFe、Ni、Co及びCuからなる群からの少なくとも1つの金属1〜14重量%とを含むことを特徴とする。
本発明のコリメータ要素の製造方法は、コリメータ要素がフィルム押出又はテープ成形によって製造されることを特徴とする。
本発明のコリメータ要素の製造方法は、下記のプロセスステップ:
タングステン72〜98重量%と、Mo、Ta及びNbからなる群からの少なくとも1つの金属1〜14重量%とFe、Ni、Co及びCuからなる群からの少なくとも1つの金属1〜14重量%とを含有する金属粉末45〜65体積%、熱可塑性のバインダー35〜55体積%、並びに、所望により分散剤及び/又はその他の補助剤5体積%以下を含んでなる粉末コンパウンドの製造ステップ;
前記粉末コンパウンドの可塑化ステップ;
前記可塑化された粉末コンパウンドの賦形によるグリーンシートの製造ステップ;
所望により、前記グリーンシートの平滑化ステップ;
化学的手段及び/又は熱的手段による前記グリーンシートのバインダー除去ステップ;
前記少なくとも部分的にバインダー除去されたグリーンシートの、1,100〜1,500℃の焼結温度における、焼結による焼結板の製造ステップ;
所望により、前記焼結板の較正圧延ステップ;並びに、
加工、好ましくは酸洗い、打抜き及び/又は削剥、によるコリメータ要素最終形状の製造ステップを備えることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】均質率HFの決定を図式的に示す、表1の試料2の光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
コリメータ要素は、72〜98重量%のタングステン含有量を有し、Mo、Ta及びNbからなる群からの少なくとも1つの金属を1〜14重量%並びにFe、Ni、Co及びCuからなる群からの少なくとも1つの金属を1〜14重量%含むタングステン合金から作られている場合には、薄い壁厚であっても、体積に関していえば、均質で高い吸収能力を有する。明確にするため、1つの群からの2又はそれ以上の金属が合金中に含まれている場合に、上記規定された含有量はそれぞれの総含有量を表わすことを、述べておきたい。タングステン合金は、本発明の効果を損なうことなく、上述の合金元素及び不純物以外に、結合相内に溶けている別の元素を5重量%未満の総含有量で含んでいてもよい。タングステン合金は、好ましくは、Mo、Ta及びNbからなる群からの少なくとも1つの金属1〜14重量%、Fe、Ni、Co及びCuからなる群からの少なくとも1つの金属1〜14重量%及び残部タングステンからなる。従って、Mo、Ta、Nb、Fe、Ni、Co及びCuの総含有量は、好ましくは、2〜28重量%である。
【0010】
コリメータ要素は、好ましくは、理論密度の95%より大きい密度を有する。最良の結果は、密度が理論密度の99%より大きい場合に達成される。
タングステン含有量が72重量%未満の場合には、十分な遮蔽作用が得られない。タングステン含有量が98重量%を超える場合には、液相焼結では十分な焼結密度が達成されず、そのことは吸収能力及び機械的特性に不利な結果をもたらす。
【0011】
Mo、Ta及び/又はNbの総含有量が1重量%未満の場合には、遮蔽作用の十分な均質性が達成されない。Mo、Ta及び/又はNbの総含有量が14重量%を超える場合には、十分な焼結密度が達成されない。Mo、Ta及び/又はNbの総含有量は、好ましくは、2〜8重量%である。最良の結果は、モリブデンが合金中含有量で2〜8重量%のときに、達成することができるであろう。Fe、Ni、Co及び/又はCuの総含有量が1%未満の場合には、十分な焼結密度が達成されない。Fe、Ni、Co及び/又はCuの総含有量が14重量%を超えると、吸収能力が著しく小さい。Fe、Ni、Co及び/又はCuの好ましい総含有量は、2〜9重量%であり、最良の成果は、2〜9重量%のFe及び/又はNiで達成されるであろう。
【0012】
本発明のコリメータ要素は、1.5より小さい平均粒子アスペクト比を持ったタングステン粒子からなるのが好ましい。粒子アスペクト比は、まず金属組織学的検鏡試片を作ることによって決定される。次いで、コリメータ要素の表面に平行な方向のタングステン粒子の最大の粒子直径が算出される。この測定は、少なくとも20の他のタングステン粒子について繰り返される。すぐ次のステップとして、タングステン粒子についてコリメータ要素の表面に垂直な方向の最大粒子直径が決定される。このステップは、やはり、少なくとも20回繰り返される。その後、コリメータ要素の表面に平行する方向及び表面に垂直な方向の平均の粒子直径が決定される。
【0013】
平均の粒子アスペクト比は、GAR(grain aspect ratio)とも言われるが、表面に平行な方向の平均粒子直径を、表面に垂直な方向の平均粒子直径によって、除することによって計算される。平均粒子アスペクト比は、好ましくは、1.2より小さい。本発明の方法は、平均粒子アスペクト比がほぼ1のタングステン合金のコスト効率の良い製造を可能にする。このことは、タングステン粒子が球形を有することを意味する。ほぼ球形の粒子は、球状粒子とも呼ばれる。そうすると、コリメータ要素が焼結によってのみ作られる場合には、タングステン合金は、球形状を有するタングステン粒子を含有する。1.2までの低い粒子アスペクト比は、コリメータ要素が較正目的のために圧延プロセスを受ける場合に達成される。1.5より大きい粒子アスペクト比を生じる形成プロセスは、より高い製造コストに結び付く。
【0014】
コリメータ要素の厚さは、有利には、50〜250μmである。50μm未満では、剛性も遮蔽効果も十分でない。250μmを超えると体積が大きくなり過ぎる。厚さは、好ましくは50〜150μmである。好ましい実施形態はコリメータ板のそれである。
【0015】
本発明のコリメータ要素は、吸収能力の均一性に対する要求が極めて高い場合に、使用される。このことは、特に、コンピュータ断層撮影に当てはまる。従って、本発明のコリメータは、コンピュータ断層撮影装置の画像形成ユニットの部分に好ましい。
【0016】
コリメータは、コリメータ要素の厚さに対する平均タングステン粒子数の比が5より大きいのが好ましい。粒子は重なり合って配置されている。タングステン粒子の数の多さ及びその重なり合った配置によって、放射線がタングステン構成部分により均一に吸収されることが保証される。
【0017】
コリメータ要素の厚さに対する平均タングステン粒子数の比は、以下のように決定される。金属組織学的検鏡試片において、コリメータ要素の1つの表面から他の表面へ、表面に垂直に走る線が引かれる。次のステップとして、その線によって少なくとも部分的に切られたタングステン粒子の数が決定される。この手順は少なくとも20回繰り返され、平均値が決定される。コリメータ要素の厚さに対する平均タングステン粒子数の比は、10より大きいのが好ましく、20より大きいのが特に好ましい。
【0018】
好ましくコスト効率の高いコリメータ要素の製造方法は、可塑化された粉末コンパウンド又は懸濁液の成形によって、例えばフィルム押出又はテープ成形によって、行なわれる。
【0019】
第一に、成形コンパウンドとも呼ばれる粉末コンパウンドが製造される。粉末コンパウンドは、好ましくは45〜65体積%の金属粉末、35〜55体積%の熱可塑性バインダー、並びに、所望により、5体積%までの分散剤及び/又はその他の助剤を含んでなる。方法に関連付けられた要求プロフィールに従って、それぞれの粉末コンパウンドの処方関連形態の可能性が生じる。ポリマー及び軟化剤を含有してなる熱可塑性バインダーが特に有利であることが明らかになった。
【0020】
フィルム押出の場合には、例えばポリウレタン及びポリアミドのような窒素含有ポリマーによって、特に有利な結果が達成され得る。適切な溶融粘度を設定し、かつ十分な室温強度を保証するため、液状及び固体状の軟化剤からなる混合物が添加されるのが好ましい。脂肪酸、脂肪酸エステル又は脂肪酸アルコールは、それ自体、軟化剤である。軟化剤に対するポリマーの好ましい体積比は1:1〜1:6である。金属粉末は、Wを72〜98重量%、Mo、Ta及びNbからなる群からの少なくとも1つの金属を1〜14重量%及びFe、Ni、Co及びCuからなる群からの少なくとも1つの金属を1〜14重量%含む。好ましくは、金属粉末は、Mo、Ta及びNbからなる群からの少なくとも1つの金属1〜14重量%、Fe、Ni、Co及びCuからなる群からの少なくとも1つの金属1〜14重量%と残部タングステンからなる。次のステップにおいて、モールディングコンパウンドは可塑化される。この可塑化は、例えば、60℃とそれぞれのバインダーの分解温度との間の温度で、押出機において行なうことができる。その後、可塑化された粉末コンパウンドの成形によってグリーンシートの製造が行なわれる。この場合、スリットノズルを通した押出成形が特に有利であることが実証された。グリーンシートは、引き続いて、平滑化処理をすることができる。このとき、この平滑化処理は、厚さの減少を引き起こすことなく、グリーンシートのくぼみ及び隆起が均一化される均質化仕上げとすることができる。しかしながら、また、平滑化処理ごとの厚さ減少は、グリーンシートを損なうことなく、70%まで可能である。
【0021】
次のステップとして、グリーンシートのバインダー除去が行なわれる。バインダー除去は、典型的な化学的方法及び/又は熱的方法によって行なうことができる。熱的バインダー除去は、焼結の不可欠のプロセス構成要素でもある。焼結は、結合金属相の液相線温度より少なくとも高い温度で行なわれる。本発明の結合金属合金に対しては、液相線温度は、1,100℃より高いのが好ましい。液相線温度は、既知の状態図から推定することができる。好ましい最大焼結温度は、1,500℃である。従って、好ましい温度範囲は、1,100から1,500℃の間にある。焼結後、このようにして製造されたグリーンシートは、圧延処理に供され、このとき、変形の程度は、好ましくは20%未満である(変形度=(出発厚さ−最終厚さ)/出発厚さ)×100)。焼結板は、所望により、較正圧延をすることができる。焼結板又は圧延された焼結板の更なる加工及び仕上げは、典型的な加工方法によって、好ましくは打抜き、削剥又は酸洗いによって、行なわれる。
【0022】
グリーンシートの製造は、例えばテープ成形によっても、行なうことができる。この場合、粉末及びバインダーが、本発明の合金粉末を有する溶媒と混合されて、固体粒子懸濁液となる。このとき、好ましくは、非水溶性のサブミクロン・ポリマー粒子(例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン)の安定な懸濁液を生じる水性バインダー系、例えばエマルションバインダー、が使用される。水溶性ポリビニルアルコール又は溶媒に基づくバインダー系、例えばメチルエチルケトン中に溶解したアクリル樹脂、も適している。
【0023】
必要な場合には、固体粒子懸濁液中に閉じ込められた空気が除泡器によって除去される。固体粒子懸濁液は、ドクターブレードを用いて支持フィルム上に塗布され、シートが製造される。シートは、更なるプロセスステップにおいて、乾燥器内で加熱によって乾燥される。更なる仕上げは、フィルム押出のために挙げられた方法ステップに従って行なわれる。
【実施例】
【0024】
以下に、本発明を例示的に示す。
【0025】
試験のために以下の粉末を用いた。
−タングステン(フィッシャー粒度 4μm)
−ニッケル(フィッシャー粒度 5μm)
−鉄(フィッシャー粒度 6μm)
−モリブデン(フィッシャー粒度 4μm)
−タンタル(フィッシャー粒度 7μm)
−ニオブ(フィッシャー粒度 7μm)
−コバルト(フィッシャー粒度 5μm)
−銅(フィッシャー粒度 6.5μm)
【0026】
先ず、拡散混合器内での混合によって、表1に示されているような組成の粉末混合物が造られた。それぞれの粉末混合物のバッチは、ポリアミド及び軟化剤と混合され、このとき、粉末の分率は、それぞれ、53体積%、バインダーの分率は、それぞれ、47体積%であった。バインダーは、次に示すような組成を有していた。
ポリアミド 30重量%
C8の鎖長を有する脂肪族アルコールの芳香族カルボン酸エステル 44重量%
C16〜C22の鎖長を有する脂肪酸 26重量%
【0027】
粉末とバインダーとの混合は、混練機械ユニットにおいて130℃で20分間行なわれた。粉末コンパウンドは、110℃で押し出され、冷却され、約3〜4mmの粒子直径を持った顆粒状の成形コンパウンドに調製された。成形コンパウンドは、単軸押出機を用いて、80℃〜130℃のバレル域温度において融解され、スリットノズルを通して押し出された。このようにして造られたグリーン体は、平滑化圧延機において、厚さ低減率40%で平滑化され、室温まで冷却された。次のプロセスステップにおいて、グリーン体は、アセトン中、42℃で、部分的な化学的バインダー除去に供された。
【0028】
残りのバインダーは、加熱し(加熱速度10℃/分)、30分に亘って600℃に保持することによって熱分解的に/熱的に除去された。バインダーが除去されたグリーン体は、既知の状態図から推定することができるそれぞれの液相線温度を20℃超える温度において、15分間、焼結された。焼結後のシート厚は、100μmであった。密度は、浮力法によって決定された。その値を、また、表1に示す。
【0029】
その後、金属組織学的検鏡試片が作られ、この検鏡試片は計量的金属組織学によって評価された。表面に45°の線が引かれ、結合相についての全区間長(SSL)が決定された。ここでSSLとは、図1から示されるように、個別の区間長s1〜snの総和を意味する。
【0030】
【数1】
【0031】
この測定は20回繰り返され、結合相についての平均の全区間長
【数2】
(20回測定の平均値)及び結合相についての最大の全区間長SSLMAX(20回測定の最大測定値)が決定された。
【0032】
その後、均質率HFが次式により決定された。
【0033】
【数3】
【0034】
放射線吸収の均質性は、以下のように、分類された。
HF≦0.25(高均質性=HH)
0.25<HF≦0.5(中均質性=MH)
HF>0.5(低均質性=GH)
その結果は、表1に示されている。
【0035】
【表1】
NEG:本発明によらないもの
EG:本発明によるもの
HH:HF≦0.25(高均質性)
MH:0.25<HF≦0.5(中均質性)
GH:HF>0.5(低均質性)
【符号の説明】
【0036】
1、s2、s3:個別区間長
図1