(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373585
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】タイヤのトレッドの溝中に挿入されるようになったノイズ軽減装置及びこの種の装置を有するタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/04 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
B60C11/04
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-541290(P2013-541290)
(86)(22)【出願日】2011年11月22日
(65)【公表番号】特表2014-501658(P2014-501658A)
(43)【公表日】2014年1月23日
(86)【国際出願番号】EP2011070621
(87)【国際公開番号】WO2012072444
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2014年9月18日
【審判番号】不服2016-17763(P2016-17763/J1)
【審判請求日】2016年11月28日
(31)【優先権主張番号】1060018
(32)【優先日】2010年12月2日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】ピアロ フレデリク
【合議体】
【審判長】
氏原 康宏
【審判官】
平田 信勝
【審判官】
一ノ瀬 覚
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−341655(JP,A)
【文献】
特開2003−335109(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/063749(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ(T)のトレッドの溝(L)に追加されるようになったノイズ軽減装置(A)であって、前記溝(L)に沿った長手方向に延びる弾性ソール(S)を含む、ノイズ軽減装置において、前記ソールは、該ソールのフェースのうちの一方の上に設けられた1つ又は数個の可撓性壁(P)を有し、前記可撓性壁の平面は、前記ソールの前記長手方向に実質的に垂直に延び、
前記可撓性壁の厚さは、0.5mm〜2mmであり、
前記ソール(S)の2つの長手方向端部の厚さが、長手方向端に向かって薄くなっており、
前記ソール(S)の周長は、前記タイヤ(T)の前記溝(L)の底部の周長未満である、
ことを特徴とするノイズ軽減装置(A)。
【請求項2】
前記装置を構成するために用いられる材料は、ゴム含有エラストマーである、
請求項1記載のノイズ軽減装置(A)。
【請求項3】
前記装置を構成するために用いられる材料は、熱可塑性エラストマーである、
請求項1又は2記載のノイズ軽減装置(A)。
【請求項4】
前記壁及び前記ソールは、同一材料で作られている、
請求項2又は3記載のノイズ軽減装置(A)。
【請求項5】
前記可撓性壁(P)は、前記長手方向に互いに10mm〜50mmの距離を置いて配置されている、
請求項1〜4のうちいずれか一に記載のノイズ軽減装置(A)。
【請求項6】
前記ソール(S)の2つの長手方向端部は、前記ソールが連続弾性リングを形成するよう互いに突き合わされ、前記可撓性壁(P)は、前記リングの半径方向外側に位置している、
請求項1〜5のうちいずれか一に記載のノイズ軽減装置(A)。
【請求項7】
深さ(h)及び幅(w)の1本又は数本の溝を有するタイヤ(T)において、少なくとも1本の溝(L)は、請求項1〜6のうちいずれか一に記載のノイズ軽減装置(A)を少なくとも1つ有する、タイヤ(T)。
【請求項8】
前記ソールの厚さ(e)だけ増大した前記ノイズ軽減装置(A)の前記可撓性壁(P)の高さは、前記溝(L)の前記深さ(h)以下である、
請求項7記載のタイヤ(T)。
【請求項9】
前記ノイズ軽減装置(A)の前記可撓性壁(P)及び前記ソール(S)の幅は、前記溝(L)の前記幅(w)以下である、
請求項7記載のタイヤ(T)。
【請求項10】
前記ノイズ軽減装置(A)は、前記タイヤ(T)の前記溝(L)の半径方向内壁に結合されている、
請求項7〜9のうちいずれか一に記載のタイヤ(T)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッドパターンの溝内に配置された可撓性壁を有するタイヤの製造分野に関する。
【背景技術】
【0002】
トレッドパターンの溝の目的は、タイヤが濡れた又は水浸しの路面上を走行しているときに水を排出して除去することにある。これら溝は、圧力下の空気が溜まって音波を発生させる領域を構成する点で走行ノイズ現象の何割かの原因となっている。溝は、円周方向且つ軸方向に延び、これらのレイアウト、寸法及び本数は、タイヤトレッドパターン設計者の側における詳細な研究対象である。
【0003】
タイヤ走行ノイズのレベルを減少すると同時に排水性を保つ目的で、先行技術において、小さな厚さの可撓性壁を溝の方向に対し横方向に位置決めすることが慣例である。フラップとも呼ばれているこれら可動壁は、ドアと同様、溝の壁のうちの一方から横方向に延びると共にタイヤが乾いた路面上を走行しているときに閉鎖位置のままであって音波の広がりを阻止すると共に排出溝に入った水を除くことができるようにするためにタイヤが濡れた路面上を走行しているときに開くことができるという特別な特徴を有している。
【0004】
特許文献である仏国特許第2,715,891号明細書、英国特許第2,450,723号明細書又は欧州特許第908,330号明細書は、これらノイズ軽減装置の種々の実施形態を記載している。
【0005】
これら特許文献に記載されているノイズ軽減装置は、溝の壁のうちの一方に連結され、この連結は、一種の関節を形成し、ノイズ軽減装置の可動壁は、その可撓性により、水又は空気からの圧力の作用を受けて、この関節周りに開放位置から閉鎖位置に連続的に移行する。
【0006】
可撓性壁又はドアはそれ自体、1つ又は2つ以上の半径方向切れ目を有する場合がある。可撓性壁の厚さは、0.2mmから1mmまで様々である。切れ目の幅は、ノイズ軽減装置のドアの側縁が備えるべきであることが望まれる特定の形状に応じて意のままに調節できる。
【0007】
実際には、これら工夫を備えたタイヤを成形するようになったモールドは、排水溝を成形するようになったリブに設けられている実質的に半径方向の切れ目を有し、かかる切れ目は、これらリブの方向に対して横方向に延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】仏国特許第2,715,891号明細書
【特許文献2】英国特許第2,450,723号明細書
【特許文献3】欧州特許第908,330号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、所要の正確さのレベルを備えた状態でこれら切れ目を作ることと関連して、アンダーカットを制御する必要があるので、多くの問題がある。加うるに、かかる切れ目を備えたモールドを用いて多くの本数のタイヤを成形しようとする場合、切れ目は、汚れた状態になり又はそれどころか詰まり状態になることが判明しており、このことは、得られるタイヤの品質にとって有害であり、しかもこれにより大々的で且つコスト高の保守の必要性が生じる。
【0010】
本発明の目的は、上述の問題を解決することができる簡単な解決手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一要旨は、タイヤのトレッドの溝に追加されるようになったノイズ軽減装置であって、好ましくは所与の長手方向に延びる弾性ソールを含む形式のノイズ軽減装置である。本発明によれば、ソールは、そのフェースのうちの一方の上に設けられた1つ又は数個の可撓性壁を有し、可撓性壁の平面は、ソールの長手方向に実質的に垂直に延びる。
【0012】
本発明は又、所与の溝及び所与の幅の1本又は数本の溝を有するタイヤであって、少なくとも1つの溝が前段落において提案したノイズ軽減装置を少なくとも1つ有するタイヤに関する。
【0013】
このように、ノイズ軽減装置を加硫済みのタイヤの溝に追加するだけでノイズ軽減装置を設置することができる。かくして、本発明により、成形と関連した上述の欠点を回避することができると共に既存のモールドを改造する必要なしにタイヤにノイズ軽減装置を指定どおりに且つ分配回路内で遥か下流側に取り付けることが可能である。
【0014】
有利には、可撓性壁の厚さは、0.5mm〜2mmである。
【0015】
慣例によれば、上述の装置を構成するために用いられる材料は、ゴム含有エラストマー又は熱可塑性エラストマーである。
【0016】
また、壁及びソールを同一材料で作るのが有利であることが判明していると言える。
【0017】
好ましくは、可撓性壁は、長手方向に互いに10mm〜50mmの距離を置いて配置される。
【0018】
溝の底部中へのソールの結合具合を向上させるため、ソールの2つの
長手方向端部は、有利には、厚さ方向にテーパしているのが良い。
【0019】
本発明の一変形形態では、2つの長手方向端部は、ソールが連続弾性リングを形成するよう互いに突き合わされるのが良く、可撓性壁は、リングの半径方向外側に位置する。
【0020】
また、ソールの厚さだけ増大したノイズ軽減装置の可撓性壁の高さは、溝の深さ以下であるのが良く、ノイズ軽減装置の可撓性壁及びソールの幅は、タイヤの溝の幅以下であるのが良い。
【0021】
有利には、ソールは、溝の半径方向内壁に結合される。
【0022】
タイヤがリングに対応した形式のノイズ軽減装置を有する場合、ソールの周長がタイヤの溝の底部の周長未満であるようにする注意が払われることになろう。
【0023】
以下の説明は、
図1〜
図7によって裏付けされている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】円周方向溝内に配置された可撓性壁を有するタイヤの概略部分図である。
【
図5】本発明のノイズ軽減装置をタイヤの溝の底部内に結合することによるノイズ軽減装置の位置決めの一例を示す図である。
【
図6】タイヤの溝内における本発明の特定の一実施形態としてのノイズ軽減装置の位置決めの仕方を示す図である。
【
図7】タイヤの溝内における本発明の特定の一実施形態としてのノイズ軽減装置の位置決めの仕方を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示されているタイヤTの一部分は、トレッドの円周方向に延びる複数本の溝L
1,L
2,L
3,L
4を有している。一例を挙げると、これら溝L
1,L
3のうちの2本は、可撓性壁Pを備えている。これら壁は、溝の底壁にしっかりと関節連結されており、これら壁は、溝L
3の可撓性壁Pの頂部上に引かれた両方向を指し示す矢印によって示されている方向にこの連結部周りに1つ置きに角度をなして設けられている。
【0026】
図3及び
図4は、本発明のノイズ軽減装置の1つの第1の実施形態を示しており、このノイズ軽減装置は、1つ又は2つ以上の可撓性壁Pを備えたソールSを有し、可撓性壁Pの平面は、ソールSの長手方向に実質的に垂直に配置されている。
【0027】
ソールSの2つの
長手方向端部は、厚さ方向にテーパしている。この工夫により、ノイズ軽減装置が溝Lの底部内に結合されたときにソールの保持具合が向上する。
【0028】
図2は、深さh及び幅wの溝内に配置された本発明のノイズ軽減装置の断面図である。この場合、ソールSの幅及び壁Pの幅は、溝の幅w以下であり、ソールの厚さeだけ増大した壁Pの高さは、溝の深さh以下であることが計画されている。
【0029】
ノイズ軽減装置は、ゴムを主成分とし又は熱可塑性樹脂を主成分とするエラストマー材料で作られるのが良い。可撓性壁を作るために選択される材料は、好ましくは、最適曲げ特性を備えた材料、特に、弾性率が水の圧力の作用を受けた場合に開放を可能にし、上述のように構成されたノイズ軽減装置を備えたタイヤが取り付けられるようになった車両の通常の走行速度において空気の圧力だけが2つのフェースに作用しているときに開放を可能にする材料である。このパラメータは、有利には0.5mm〜2mmである可撓性壁の厚さを変えることによっても調節可能である。
【0030】
同様に、ソールがトレッドの動きを伴うことができるようにすると同時にノイズ軽減装置のソールの下側フェースがトレッドの構成材料にくっつくようにするために用いられる結合手段との良好な適合性を示す弾性を有する。
【0031】
ノイズ軽減装置の製造と関連した実用的理由のため、他方、可撓性壁及びソールについて互いに異なる複合材を用いてノイズ軽減装置を製造することが全面的に可能ではあるが、これら装置は、所望の曲げ機能に合うようにするために可撓性壁の寸法パラメータを調節する同一材料で作られている。
【0032】
2つの連続して位置する可撓性壁相互間の間隔は、本発明の装置を備えたタイヤが取り付けられるべき車両の特性によっても定められ、これに関し、一般に、幾つかの装置を接触パッチ内に同時に存在するようにすることが望ましい。大抵のありふれた使用に関し、この距離は、10mm〜50mmである。
【0033】
結合手段の選択は、トレッド及びノイズ軽減装置のソールの構成材料の性状に合うよう行われる。特に、結合部の品質が高速走行によって生じる遠心力と両立するようにする注意が払われる。
【0034】
ソールの構成材料は、任意の種類のエラストマー材料を用いて構成できる。ただし、結合システムがタイヤのトレッドに用いられる材料へのソールの結合に合っていることを条件とする。
【0035】
一例を挙げると、ジエンエラストマー又は熱可塑性エラストマーで作られたトレッドの場合、同種のジエンエラストマー又は熱可塑性エラストマー材料、ポリウレタン系の材料、シリコンを主成分とする材料又はブチル系若しくはEPDMのエラストマーで作られた材料で作られるソールが選択されるのが良い。これら種々の場合、用いられる接着剤は、選択された材料の対に応じて、表面活性剤を含むポリウレタン‐ウレア系の接着剤又は表面下塗剤を含むポリ尿素系接着剤であろう。結合は、高温状態又は周囲温度よりも僅かに高い温度状態で実施されるのが良い。
【0036】
この時点で注目されるように、ノイズ軽減装置をタイヤのトレッドの溝の底部内に結合するとき、この溝を本質的に円周方向に差し向けるか軸方向に差し向けるかは、重要性が低い。重要なことは、その長さがソールの長さ以上であるということだけである。
【0037】
図6及び
図7は、トレッドが本質的に円周方向に延びる溝を備えているタイヤを取り付けることが望ましい場合に特に有利であることが判明している変形実施形態を示している。
【0038】
この実施形態によれば、
ソールの2つの長手方向端部は、リングを形成するよう互いに接合される。可撓性壁は、リングの外側寄りに半径方向に配置されている。したがって、必要なことは、自由周長がこのノイズ軽減装置を配置すべきタイヤの溝の底部の周長よりも僅かに短い連続弾性リングを選択することだけであり、その結果、弾性ソールは、リングがトレッドの溝の底部内に配置されたときに張力下にあるようになる。この張力より、走行中、ノイズ軽減装置がトレッドの溝の中に位置したままであるようにするのに必要なグリップが得られる。
【0039】
この場合、ソールを溝の底部に結合する必要はもはやない。ただし、このような結合が依然として推奨される。