特許第6373590号(P6373590)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373590
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】電池及び電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20180806BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20180806BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20180806BHJP
【FI】
   H01M10/04 Z
   H01M2/02 A
   H01M10/058
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-10386(P2014-10386)
(22)【出願日】2014年1月23日
(65)【公開番号】特開2015-138701(P2015-138701A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北澤 祐介
(72)【発明者】
【氏名】柏崎 永記
(72)【発明者】
【氏名】豊田 夏樹
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−195490(JP,A)
【文献】 特開2012−169255(JP,A)
【文献】 特開2006−260883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 2/02
H01M 10/058
H01M 2/04
B23K 26/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極及び電解液を収容する筐体と、
前記筐体に設けられた第1の壁と、
前記筐体に設けられるとともに前記第1の壁に溶接され、溶接された部分が表れた表面と、外縁と、を有する、第2の壁と、
を具備する電池であって、
前記溶接された部分は、前記第1の壁と前記第2の壁とが互いに固着された第1の溶接痕と、前記第1の溶接痕よりも前記外縁に近く、前記第1の溶接痕に部分的に重なり、且つ前記第1の壁と前記第2の壁とが互いに固着された第2の溶接痕と、を含み、
前記表面から溶け込む前記第1の溶接痕の深さは、前記表面から溶け込む前記第2の溶接痕の深さ以上であり、
前記表面において、前記第1の溶接痕の幅W1と、前記第2の溶接痕の幅W2と、前記第1の溶接痕と前記第2の溶接痕とが重なる部分の幅W0との関係が、
0.3<W0/(W1+W2−W0)≦0.8
である、
電池。
【請求項2】
端面と、当該端面に開口するとともに電極及び電解液を収容する収容部と、を有する容器と、
前記端面に支持される第1の面と、前記第1の面の反対側に位置する第2の面と、前記第1の面から突出して前記収容部に嵌る凸部と、を有し、前記容器に溶接されることで前記収容部を塞ぐ、蓋体と、
を具備し、
前記容器と前記蓋体とが溶接された部分は第2の面に表れるとともに、前記端面に開口する前記収容部の縁を含んで形成されるとともに前記容器と前記蓋体とが互いに固着された第1の溶接痕と、前記第1の溶接痕よりも前記収容部の前記縁から離れ、前記第1の溶接痕に部分的に重なるとともに、前記容器と前記蓋体とが互いに固着された第2の溶接痕と、を含み、
前記第2の面から溶け込む前記第1の溶接痕の深さは、前記第2の面から溶け込む前記第2の溶接痕の深さ以上であり、
前記第2の面において、前記第1の溶接痕の幅W1と、前記第2の溶接痕の幅W2と、前記第1の溶接痕と前記第2の溶接痕とが重なる部分の幅W0との関係が、
0.3<W0/(W1+W2−W0)≦0.8
である、
電池。
【請求項3】
前記容器は、前記収容部を形成する内面を有し、
前記凸部は、前記内面に接触する第3の面を有し、
前記第1の溶接痕は、前記端面と前記第1の面とを固着させるとともに、前記内面と前記第3の面とを固着させ、
前記第2の溶接痕は、前記端面と前記第1の面とを固着させる、
請求項の電池。
【請求項4】
前記第1の面と、前記第3の面とは、互いに直交する、請求項の電池。
【請求項5】
電極及び電解液を収容する筐体の第1の壁に、第2の壁を支持させること、
第2の壁の表面に前記第1の壁と前記第2の壁とが互いに固着された第1の溶接痕が表れるように、前記第1の壁と前記第2の壁とを、エネルギー線によって溶接すること、
前記第1の溶接痕よりも前記第2の壁の外縁に近く、部分的に前記第1の溶接痕と重なり、且つ前記第1の壁と前記第2の壁とが互いに固着された第2の溶接痕が前記表面に現れるように、前記第1の壁と前記第2の壁とを、エネルギー線によって溶接すること、
を具備し、
前記表面から溶け込む前記第1の溶接痕の深さは、前記表面から溶け込む前記第2の溶接痕の深さ以上であり、
前記表面において、前記第1の溶接痕の幅W1と、前記第2の溶接痕の幅W2と、前記第1の溶接痕と前記第2の溶接痕とが重なる部分の幅W0との関係が、
0.3<W0/(W1+W2−W0)≦0.8
である、
電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電池及び電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池のような電池は、正極、負極、及びセパレータを含む電極群と、電解液とを収容する容器を有する。当該電極群は、容器に設けられた開口から、容器内に収容される。容器の開口は、蓋体によって塞がれる。蓋体は、例えば溶接により容器に固着させられることで、容器を密閉する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−169255号公報
【特許文献2】特開2013−127906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓋体と容器との溶接のような、電解液を密封するための溶接の密閉性が低い場合、電解液が電池の外に漏れ出す可能性がある。例えば、溶接された部分にマイクロクラックが生じた場合、電池が繰り返し使用されると、電池から電解液が漏れる可能性がある。
【0005】
本発明の解決すべき課題の一つは、溶接された部分の密閉性が高い電池と、当該電池の製造方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの実施の形態に係る電池は、筐体と、第1の壁と、第2の壁と、を備える。前記筐体は、電極及び電解液を収容する。前記第1の壁は、前記筐体に設けられる。前記第2の壁は、前記筐体に設けられるとともに前記第1の壁に溶接され、溶接された部分が表れた表面と、外縁と、を有する。前記溶接された部分は、前記第1の壁と前記第2の壁とが互いに固着された第1の溶接痕と、前記第1の溶接痕よりも前記外縁に近く、前記第1の溶接痕に部分的に重なり、且つ前記第1の壁と前記第2の壁とが互いに固着された第2の溶接痕と、を含む。前記表面から溶け込む前記第1の溶接痕の深さは、前記表面から溶け込む前記第2の溶接痕の深さ以上である。前記表面において、前記第1の溶接痕の幅W1と、前記第2の溶接痕の幅W2と、前記第1の溶接痕と前記第2の溶接痕とが重なる部分の幅W0との関係が、0.3<W0/(W1+W2−W0)≦0.8である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施の形態に係る電池を示す斜視図である。
図2図2は、第1の実施形態の電池の一部を示す断面図である。
図3図3は、第1の実施形態の電池の一部を示す平面図である。
図4図4は、第1の実施形態の電池の製造方法の一部を示すフローチャートである。
図5図5は、第1の実施形態の第1の実験結果を示す表である。
図6図6は、第1の実施形態の第2の実験結果を示す表である。
図7図7は、第1の実施形態の第3の実験結果を示す表である。
図8図8は、第1の実施形態の第4の実験結果を示す表である。
図9図9は、第2の実施の形態に係る電池の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、第1の実施の形態について、図1乃至図4を参照して説明する。なお、本明細書においては基本的に、ユーザから見て上方を上方向、ユーザから見て下方を下方向と定義する。また、実施形態に係る構成要素や、当該要素の説明について、複数の表現を併記することがある。当該構成要素及び説明について、記載されていない他の表現がされることは妨げられない。さらに、複数の表現が記載されない構成要素及び説明について、他の表現がされることは妨げられない。
【0009】
図1は、第1の実施の形態に係る電池10を示す斜視図である。図2は、電池10の一部を示す断面図である。電池10は、例えばリチウムイオン二次電池である。なお、電池10はこれに限らず、他の種類の電池であっても良い。図1に示すように、電池10は、略直方体に形成される。なお、電池10は他の形状であっても良い。
【0010】
図面に示されるように、本明細書において、X軸、Y軸及びZ軸が定義される。X軸とY軸とZ軸とは、互いに直交する。X軸は、電池10の幅(長手方向の長さ)に沿う。Y軸は、電池10の厚さ(短手方向の長さ)に沿う。Z軸は、電池10の高さ(鉛直方向の長さ)に沿う。
【0011】
電池10は、筐体21と、電極群22と、二つの出力端子23と、ガス排出弁24と、封止栓25と、を有する。筐体21は、例えば、容器、外装、ケース、缶、箱、又は壁とも称され得る。電極群22は、電極の一例であり、部品又はモジュールとも称され得る。出力端子23は、例えば、正極、負極、端子、導電部、又は突出部とも称され得る。封止栓25は、例えば、封止部、密閉部、被覆部、部材、蓋、又は壁とも称され得る。
【0012】
筐体21は、例えば、アルミニウムによって形成される。なお、筐体21は、例えば他の金属によって形成されても良い。筐体21は、容器31と、蓋体32とを有する。容器31は、例えば、ケース、外装部、収容部、部材、又は壁とも称され得る。蓋体32は、第2の壁の一例であり、例えば、外壁、封止部、密閉部、被覆部、部材、又は壁とも称され得る。
【0013】
容器31は、扁平な略直方体の箱状に形成される。容器31は、四つの側壁41と、端面42と、収容部43とを有する。側壁41は、第1の壁の一例であり、例えば、部材又は部分とも称され得る。端面42は、例えば、端部、縁、支持部、又は固着部とも称され得る。収容部43は、例えば、開口、凹部、又は孔とも称され得る。
【0014】
側壁41は、略矩形(四角形)に形成される。四つの側壁41は、略矩形の底壁の四つの縁から、それぞれZ軸に沿う方向に延びる。側壁41はそれぞれ、隣り合う他の側壁41と直交する。
【0015】
図2に示すように、側壁41は、内面41aと、外面41bとを有する。内面41aは、筐体21の内側に向く。外面41bは、内面41aの反対側に位置し、筐体21の外側に向く。内面41a及び外面41bは、それぞれ平坦な面である。
【0016】
端面42は、容器31の端面であるとともに、側壁41の端面である。端面42は、略矩形の枠状の、平坦な面である。端面42は、側壁41の内面41a及び外面41bに対して直交する。なお、端面42は、例えば、凹凸を有しても良く、側壁41の内面41a及び外面41bに対して傾斜しても良い。
【0017】
図1に破線で示すように、収容部43は、端面42に開口する有底の凹部である。言い換えると、収容部43は、容器31の端面42において外部に開放される。側壁41の内面41aは、収容部43を形成する。
【0018】
蓋体32は、略矩形の板状に形成される。蓋体32は、容器31の端面42に支持され、収容部43を塞ぐ。蓋体32は、例えばレーザ溶接によって容器31に固定され、収容部34を密閉する。
【0019】
図2に示すように、蓋体32は、表面51と、支持面52と、四つの外縁53と、凸部54と、を有する。表面51は、第2の面の一例である。支持面52は、第1の面の一例である。外縁53は、例えば、縁、端部、辺、又は側面とも称され得る。凸部54は、例えば、嵌合部、挿入部、又は基部とも称され得る。
【0020】
表面51は、筐体21の外部に向く平面である。出力端子23、ガス排出弁24、及び封止栓25は、表面51に配置される。支持面52は、表面51の反対側に位置する。支持面52は、容器31の端面42に接する。言い換えると、支持面52は、容器31の端面42に支持される。
【0021】
四つの外縁53は、表面51と支持面52との間にそれぞれ設けられる。外縁53は、表面51及び支持面52に直交する平面である。なお、外縁53はこれに限らず、例えば曲面であっても良い。外縁53は、支持面52が容器31の端面42に支持されると、側壁41の外面41bとともに一つの平面を形成する。
【0022】
凸部54は、支持面52から突出する、略矩形の部分である。凸部54は、支持面52が容器31の端面42に支持されると、端面42に開口する収容部43に嵌る。凸部54は、底面54aと、四つの側面54bとを有する。
【0023】
底面54aは、蓋体32の表面51の反対側に位置する平面である。底面54aは、表面51及び支持面52に対して平行である。なお、底面54aは、例えば凹凸を有しても良い。底面54aは、収容部43に面する。
【0024】
側面54bは、底面54aと支持面52との間に設けられる。側面54bは、支持面52及び凸部54の底面54aに直交する平面である。凸部54が収容部43に嵌ると、側面54bは、側壁41の内面41aに接触する。
【0025】
上述の説明と異なる表現によれば、蓋体32は、フランジ部57を有する。フランジ部57は、第2の壁の一例である。フランジ部57は、蓋体32の、Z軸に沿う方向の端部に位置する。フランジ部57は、支持面52を有し、容器31の端面42に支持される。凸部54は、当該フランジ部57から突出する。
【0026】
図1に破線で示す電極群22は、例えば、複数の正極と、複数の負極と、複数のセパレータとを有する。前記正極及び負極は、例えば、帯状の集電体と、当該集電体の少なくとも一面に形成された活物質の層とを有する。前記集電体は、例えば、アルミニウム箔のような金属箔によって形成される。前記セパレータは、例えば、多孔質材料によって帯状に形成される。
【0027】
前記正極、負極、及びセパレータは、シート状に形成される。前記正極及び負極は、前記セパレータを介して積層され、コイル状に巻回される。円筒形状に巻回された前記正極、負極、及びセパレータは、扁平にプレスされる。なお、前記正極、負極、及びセパレータは、巻回されずに積層されても良い。
【0028】
前記正極及び負極の集電体に、複数のタブが設けられる。当該タブは、電極群22の上端から延びる。前記正極の複数のタブは、互いに重ねられる。同じく、前記負極の複数のタブも、互いに重ねられる。
【0029】
電極群22は、非水電解液とともに、容器31の収容部43に収容される。当該非水電解液は、電解液の一例である。前記非水電解液は、例えば、非水溶媒にリチウム塩のような電解質を溶解させることにより調製される。
【0030】
二つの出力端子23は、それぞれ電池10の正極端子及び負極端子である。二つの出力端子23は、蓋体32の表面51の、X軸に沿う方向における一方の端部と他方の端部とにそれぞれ配置される。
【0031】
出力端子23は、リベット状に形成される。出力端子23は、蓋体32の表面51から突出する。出力端子23の一部は、蓋体32に設けられた孔を通って、凸部54の底面54aから突き出る。底面54aから突出する出力端子23の当該一部は、収容部43に設けられたリードによって、電極群22の前記タブに電気的に接続される。出力端子23と蓋体32との間の隙間に、絶縁体であるガスケット39が介在する。出力端子23及びガスケット39によって、蓋体32の前記孔が密閉される。
【0032】
ガス排出弁24は、二つの出力端子23の間に位置する。ガス排出弁24は、例えば、収容部43の内部の圧力が閾値より高くなった場合に開放される。開放されたガス排出弁24は、収容部43のガスを筐体21の外部に放出し、収容部43の圧力を低下させる。
【0033】
封止栓25は、例えば円盤状に形成される。封止栓25は、蓋体21に設けられた注液口を塞ぐ。前記非水電解液は、当該注液口を通って収容部43に注入される。封止栓25は、蓋体21の表面51に溶接され、前記注液口を密閉する。
【0034】
図2に示すように、筐体21に、溶接部60が設けられる。溶接部60は、溶接された部分、及び容器と蓋体とが溶接された部分の一例である。溶接部60は、四つの第1の溶接部分61と、四つの第2の溶接部分62とを有する。溶接部60、第1の溶接部分61、及び第2の溶接部分62は、例えば、ビード、溶接ビード、溶接痕、溶接封止、軌跡、又は変質部分とも称され得る。
【0035】
図3は、電池10の一部を示す平面図である。図2及び図3において、第1の溶接部分61及び第2の溶接部分62は、二点鎖線で示される。第1の溶接部分61及び第2の溶接部分62は、例えば、レーザ溶接によって形成された、容器31と蓋体32とが互いに固着する部分である。すなわち、第1の溶接部分61と、第2の溶接部分62とは、蓋体32から容器31に亘って形成される。
【0036】
第1の溶接部分61及び第2の溶接部分62において、容器31と蓋体32とは、溶融して一体化する。しかし、図2は、理解を容易にするため、容器31と蓋体32とを別個の部材として示す。
【0037】
容器31及び蓋体32は、上述のように、アルミニウムによって形成される。このため、レーザ溶接におけるシールドガスとして窒素が用いられる場合、第1の溶接部分61及び第2の溶接部分62は、例えばアルミナイトライド(窒化アルミニウム)によって形成される。なお、第1の溶接部分61及び第2の溶接部分62はこれに限らない。
【0038】
図2に示すように、第1の溶接部分61は、例えば蓋体32の表面51に照射されたレーザ光によって形成される。このため、第1の溶接部分61は、表面51に形成された隆起部61aを有する。すなわち、第1の溶接部分61は、表面51に表れる。なお、第1の溶接部分61は隆起部61aを形成しなくても良い。第1の溶接部分61は、例えば、表面51に変色部分として表れても良い。
【0039】
第1の溶接部分61は、容器31の端面42の一部と、側壁41の内面41aの一部と、蓋体32の支持面52の一部と、凸部54の側面54bの一部と、を含む。すなわち、第1の溶接部分61は、容器31の端面42と、蓋体32の支持面52とを固着させるとともに、側壁41の内面41aと、凸部54の側面54bとを固着させる。言い換えると、第1の溶接部分61は、容器31と蓋体32とを、X軸又はY軸に沿う方向と、Z軸に沿う方向とに固着させる。
【0040】
さらに、第1の溶接部分61は、端面42に開口する収容部43の縁43aを含む。縁43aは、略矩形の枠状に形成された端面42の内縁、及び収容部43の上端である。言い換えると、第1の溶接部分61は、側面41の内面41aと、端面42との間の角部分を含む。加えて、第1の溶接部分61は、蓋体32の支持面52と、凸部54の側面54bとの間の角部分を含む。
【0041】
第1の溶接部分61は、凸部54の底面54aにも、収容部43を形成する側壁41の内面41aにも表れない。言い換えると、第1の溶接部分61は、側壁41の内面41aよりも外面41b側に位置するとともに、凸部54の底面54aよりも表面51側に位置する。このため、第1の溶接部分61は、収容部43に溶け込まない。
【0042】
蓋体32の表面51から溶け込む第1の溶接部分61の深さ(溶け込み深さ、溶接深さ)d1は、フランジ部57の厚さt1よりも大きい。深さd1は、蓋体32の表面51から、第1の溶接部分61の先端までの、Z軸に沿う長さである。厚さt1は、表面51と支持面52との間の距離である。深さd1は、厚さt1の四倍よりも小さい。なお、深さd1の大きさはこれに限らない。
【0043】
図3に示すように、第1の溶接部分61は、対応する蓋体32の外縁53に沿って延びる。なお、図3は、説明のために一つの外縁53に沿う一つの第1の溶接部分61を示すが、四つの第1の溶接部分61が、それぞれ対応する外縁53に沿って延びる。
【0044】
図2に示すように、第2の溶接部分62は、例えば蓋体32の表面51に照射されたレーザ光によって形成される。このため、第2の溶接部分62は、表面51に形成された隆起部62aを有する。すなわち、第2の溶接部分62は、表面51に表れる。なお、第2の溶接部分62は隆起部62aを形成しなくても良い。第2の溶接部分62は、例えば、表面51に変色部分として表れても良い。
【0045】
第2の溶接部分62は、容器31の端面42の一部と、蓋体32の支持面52の一部と、を含む。すなわち、第2の溶接部分62は、容器31の端面42と、蓋体32の支持面52とを固着させる。言い換えると、第2の溶接部分62は、容器31と蓋体32とを、Z軸に沿う方向に固着させる。
【0046】
第2の溶接部分62は、蓋体32の外縁53と、側壁41の外面41bとに表れない。言い換えると、第2の溶接部分62は、側壁41の外面41bよりも内面41a側に位置するとともに、蓋体32の外縁53よりも内側に位置する。
【0047】
第2の溶接部分62は、第1の溶接部分61よりも、蓋体32の外縁53に近い。言い換えると、第2の溶接部分62は、第1の溶接部分61よりも蓋体32の外側に位置する。さらに別の表現をすれば、第2の溶接部分62は、第1の溶接部分61よりも、収容部43の縁43aから離れる。
【0048】
第2の溶接部分62は、第1の溶接部分61に部分的に重なる。すなわち、第1の溶接部分61の一部と、第2の溶接部分62の一部とが一体化する。言い換えると、溶接部60は、互いに結合された二重の溶接部分(第1の溶接部分61及び第2の溶接部分62)を有する。
【0049】
蓋体32の表面51から溶け込む第2の溶接部分62の深さ(溶け込み深さ、溶接深さ)d2は、フランジ部57の厚さt1よりも大きい。深さd2は、蓋体32の表面51から、第2の溶接部分62の先端までの、Z軸に沿う長さである。なお、第2の溶接部分62の前記先端は、第1の溶接部分61に溶け込むことで消失しても良い。深さd2は、厚さt1の四倍よりも小さい。さらに、第1の溶接部分61の深さd1は、第2の溶接部分62の深さd2以上である。なお、深さd2の大きさはこれに限らない。
【0050】
図3に示すように、第2の溶接部分62は、蓋体32の外縁53に沿って延びる。このため、第2の溶接部分62は、第1の溶接部分61と略平行に延びる。さらに、第1の溶接部分61と第2の溶接部分62とは、表面51において部分的に重なる。なお、図3は、説明のために一つの外縁53に沿う一つの第2の溶接部分62を示すが、四つの第2の溶接部分62が、それぞれ対応する外縁53に沿って延びる。
【0051】
第1の溶接部分61の幅をW1、第2の溶接部分62の幅をW2、第1の溶接部分61と第2の溶接部分62とが重なる部分の幅をW0と定義する。幅W1,W2,W0の関係は、例えば、0.3<W0/(W1+W2−W0)≦0.8である。言い換えると、幅W0は、溶接部60の幅(結合した第1の溶接部分61及び第2の溶接部分62の幅)の30%〜80%である。
【0052】
第1の溶接部分61及び第2の溶接部分62の幅W1,W2は、第1の溶接部分61及び第2の溶接部分62が延びる方向と直交する方向における、第1の溶接部分61及び第2の溶接部分62の寸法である。図3において、幅W1,W2は、Y軸に沿う第1の溶接部分61及び第2の溶接部分62の寸法である。
【0053】
溶接部60は、第1及び第2の溶接部分61,62に限らず、互いに部分的に重なる三つ以上の溶接部分を有しても良い。この場合、溶接部60は、蓋体32の表面51に、多重軌跡(ビード)を形成する。
【0054】
以下、図4を参考に、電池10の製造方法の一部について例示する。なお、電池10の製造方法は以下の方法に限らず、他の方法を用いても良い。図4は、電池10の製造方法の一部を示すフローチャートである。
【0055】
図4に示すように、まず、容器31の収容部43に、電極群22が収容される(S11)。電極群22の前記タブは、前記リードによって出力端子23に予め結合される。このため、電極群22は、前記タブ及びリードを介して、蓋体32に接続される。
【0056】
次に、容器31の端面42に、蓋体32が配置される(S12)。すなわち、容器31の端面42が、蓋体32のフランジ部57を支持する。同時に、蓋体32の凸部54が、収容部43に嵌め込まれる。前記タブ及びリードの弾性によって蓋体32は端面42から離れようとする。このため、蓋体32は、端面42に押し付けられる。
【0057】
次に、蓋体32が、容器31に仮溶接される(S13)。例えば、蓋体32の表面51の少なくとも一つの地点にレーザ光が照射される。これにより、蓋体32が、容器31の端面42に部分的に溶接される。
【0058】
次に、蓋体32が容器31にレーザ溶接されることで、第1の溶接部分61が形成される(S14)。例えば、蓋体32の表面51に、例えば連続波レーザ(CW(Continuous Wave)レーザ)光が照射される。連続波レーザ光は、エネルギー線の一例である。
【0059】
連続波レーザ光により、第1の溶接部分61が形成され、容器31と蓋体32とが溶接される。容器31及び蓋体32が、連続波レーザ光の照射装置に対して移動させられることで、第1の溶接部分61は、蓋体32の外縁53に沿って延びる。蓋体32の表面51に連続波レーザ光が照射されることで、第1の溶接部分61の隆起部61aが表面51に表れる。
【0060】
次に、蓋体32が容器31に再度レーザ溶接されることで、第2の溶接部分62が形成される(S15)。例えば、第1の溶接部分61よりも蓋体32の外縁53に近い位置において、蓋体32の表面51に連続波レーザ光が照射される。
【0061】
連続波レーザ光により、第2の溶接部分62が形成され、容器31と蓋体32とがさらに溶接される。容器31及び蓋体32が、連続波レーザ光の前記照射装置に対して移動させられることで、第2の溶接部分62は、蓋体32の外縁53に沿って、第1の溶接部分61と平行に延びる。蓋体32の表面51に連続波レーザ光が照射されることで、第2の溶接部分62の隆起部62aが表面51に表れる。
【0062】
第2の溶接部分62を形成する連続波レーザ光は、第1の溶接部分61を形成する連続波レーザ光よりも、例えば、出力が低く設定される。なお、第2の溶接部分62は、第1の溶接部分61と異なる種類のエネルギー線(例えばパルスレーザ光)によって形成されても良い。
【0063】
容器31と蓋体32との溶接方法は、連続波レーザ光によるレーザ溶接に限らない。例えば、パルスレーザ光によるレーザ溶接、又は電子ビーム溶接により、容器31と蓋体32とが溶接されても良い。
【0064】
上述のように、第1の溶接部分61と第2の溶接部分62とを含む溶接部60が形成されることで、容器31と蓋体32とが溶接される。この後、収容部43に非水電解液が注入され、前記注液口を封止栓25が塞ぐことにより、電池10が作られる。
【0065】
図5乃至図8を参照して、上記電池10に関連して行なわれた複数の例示的実験の結果について説明する。図5は、第1の実験結果を示す表である。図5に示される第1の実験は、深さd1及びd2と、第1の溶接部分61と第2の溶接部分62とが重なる部分(重なり)の幅W0とが変化した場合における、電池10の耐圧試験である。
【0066】
図5乃至図8に示される実験において、フランジ部57の厚さtは300μmである。図5乃至図8において、W1,W2,W0,d1,d2、及び溶接部の「幅」として示される数値の単位は「μm」である。
【0067】
図5乃至図8において、溶接部の「幅」は、溶接部60の幅(結合した第1の溶接部分61及び第2の溶接部分62の幅)を示す。さらに、「重なり率」は、W0/(W1+W2−W0)の値を示す。
【0068】
図5乃至図8に示される実験は、密閉された筐体21に注水孔を形成し、当該注水孔から、筐体21が破壊されるまで筐体21の内部に水を注入するものである。筐体21が破壊された際の、筐体21の内部の圧力が1.0MPa以上であった場合、「耐圧」の項に「○」が記される。
【0069】
筐体21が破壊された際の、破壊モードも観測される。破壊モードが、容器31の側壁41において破壊が生じる「缶側面破壊」である場合、筐体21が十分な信頼性を有すると規定する。破壊モードが、第1の溶接部分71及び第2の溶接部分72の下方で破壊が生じる「軌跡下側破壊」である場合、筐体21の信頼性が不十分であると規定する。さらに、破壊モードが、第1の溶接部分71と第2の溶接部分72との重なる部分で破壊が生じる「軌跡間ワレ」である場合、筐体21の信頼性がより不十分であると規定する。
【0070】
なお、上記の筐体21の信頼性についての規定は、実験における評価の一例である。ある電池の破壊モードが「缶側面破壊」であるか否かは、当該電池が本明細書における電池の技術的範囲に含まれるか否かについて定めるものではない。
【0071】
図5に示すように、重なり率が0.3より小さい場合、筐体21が破壊された際の筐体21の内部の圧力が1.0MPaより低く(「耐圧」の項が「×」)、及び/又は、破壊モードが「軌跡間ワレ」である。一方、重なり率が0.3より大きい場合、「耐圧」の項が「○」であるとともに、破壊モードが「缶側面破壊」である。
【0072】
図6は、第2の実験結果を示す表である。図6に示される第2の実験は、第1の溶接部分61の深さd1が第2の溶接部分62の深さd2よりも小さい場合における、電池10の耐圧試験である。図6に示すように、深さd1が深さd2よりも小さい場合、「耐圧」の項が「×」であり、及び/又は、破壊モードが「軌跡下側破壊」若しくは「軌跡間ワレ」である。
【0073】
図7は、第3の実験結果を示す表である。図7に示される第3の実験は、第2の溶接部分62の深さd2が一定の場合における、電池10の耐圧試験である。図7に示すように、深さd1が深さd2よりも小さい場合、及び/又は、重なり率が0.3よりも小さい場合、破壊モードが殆ど「軌跡下側破壊」又は「軌跡間ワレ」である。一方、深さd1が深さd2以上であるとともに、重なり率が大よそ0.3以上である場合、破壊モードが「缶側面破壊」である。
【0074】
図8は、第4の実験結果を示す表である。図8に示される第4の実験は、第1の溶接部分61の深さd1がフランジ部57の厚さtと同じ場合における、電池10の耐圧試験である。図8に示すように、重なり率が0.3よりも小さい場合、破壊モードが「軌跡間ワレ」である。一方、重なり率が0.3よりも大きい場合、破壊モードが「缶側面破壊」である。
【0075】
図5乃至図8に示す実験において、深さd1が深さd2以上で、且つ、重なり率(W0/(W1+W2−W0)の値)が0.3より大きい場合、「耐圧」の項が「○」であるとともに破壊モードが「缶側面破壊」である。上述のように、第1の実施形態の筐体21は、当該条件に当てはまり、十分な信頼性を有する。
【0076】
第1の実施の形態に係る電池10において、溶接部60が、第1の溶接部分61と、第1の溶接部分61に部分的に重なる第2の溶接部分62とを含む。このため、容器31と蓋体32とが第1の溶接部分61と第2の溶接部分62とによって二重に溶接され、溶接部60の強度(耐久性)が向上する。
【0077】
さらに、第2の溶接部分62が第1の溶接部分61に部分的に重なる。このため、例えば、第1の溶接部分61に例えばマイクロクラックが生じたとしても、第2の溶接部分62によって当該マイクロクラックを消失させることができる。さらに、溶接部70の幅を狭くでき、例えば側壁41の厚さが小さくても、容器31と蓋体32とを強固に溶接できる。
【0078】
以上のような第1の実施形態の電池10によれば、溶接部60に、マイクロクラックのような溶接欠陥が生じることを抑制でき、溶接部60の密閉性(気密性)が高まる。したがって、収容部43に収容された電解液が電池10の外に漏れ出すことを抑制でき、電池10の信頼性及び品質が向上する。
【0079】
第1の溶接部分61の深さd1は、第2の溶接部分62の深さd2以上である。これにより、図5乃至図8に示す実験のように、筐体21の信頼性が向上する。さらに、第2の溶接部分62を形成する溶接に使われるエネルギー(例えばレーザ光の出力)を小さくでき、電池10の製造コストを低減できる。
【0080】
第1及び第2の溶接部分61,62が表れる表面51において、幅W1と、幅W2と、幅W0との関係が、0.3<W0/(W1+W2−W0)≦0.8である。これにより、図5乃至図8に示すように、筐体21の信頼性が向上する。例えば、第1の溶接部分61と第2の溶接部分62とが過剰に重なることによる、溶接部60の密閉性向上効果が低減するが抑制される。さらに、第1の溶接部分61と第2の溶接部分62との重なりが過剰に小さくなることによって、第1の溶接部分61と第2の溶接部分62との結合部分が弱くなることが抑制される。
【0081】
第1の溶接部分61は、収容部43の縁43aを含む。すなわち、第1の溶接部分61は、蓋体32の厚さ方向(Z軸に沿う方向)において容器31と蓋体32とを固着させる。さらに、第1の溶接部分61は、蓋体32が支持される容器31の側壁41の厚さ方向(X軸又はY軸に沿う方向)においても、容器31と蓋体32とを固着させる。これにより、溶接部60の強度が向上し、蓋体32が容器31の収容部43をより確実に密閉できる。
【0082】
以下に、第2の実施の形態について、図9を参照して説明する。なお、以下の実施形態の説明において、既に説明された構成要素と同様の機能を持つ構成要素は、当該既述の構成要素と同じ符号が付され、さらに説明が省略される場合がある。また、同じ符号が付された複数の構成要素は、全ての機能及び性質が共通するとは限らず、各実施形態に応じた異なる機能及び性質を有していても良い。
【0083】
図9は、第2の実施の形態に係る電池10の一部を示す断面図である。図9に示すように、第2の実施形態において、筐体21に、溶接部70が設けられる。溶接部70は、四つの第1の溶接部分71と、四つの第2の溶接部分72とを有する。
【0084】
第1の溶接部分71は、例えば側壁41の外面41bと、蓋体32の外縁53とに照射されたレーザ光によって形成される。このため、第1の溶接部分71は、側壁41の外面41b及び蓋体32の外縁53に形成された隆起部71aを有する。すなわち、第1の溶接部分71は、側壁41の外面41bに表れる。
【0085】
第2の実施形態において、蓋体32が第1の壁の一例であり、側壁41が第2の壁の一例である。さらに、側壁41の外面41bが表面の一例であり、容器31の端面42が外縁の一例である。
【0086】
第1の溶接部分71は、容器31の端面42の一部と、側壁41の内面41aの一部と、蓋体32の支持面52の一部と、凸部54の側面54bの一部と、を含む。すなわち、第1の溶接部分71は、容器31の端面42と、蓋体32の支持面52とを固着させるとともに、側壁41の内面41aと、凸部54の側面54bとを固着させる。言い換えると、第1の溶接部分71は、容器31と蓋体32とを、X軸又はY軸に沿う方向と、Z軸に沿う方向とに固着させる。また、第1の溶接部分71は、収容部43に溶け込まない。
【0087】
側壁41の外面41bから溶け込む第1の溶接部分71の深さd3は、側壁41の厚さt2よりも大きい。深さd3は、側壁41の外面41bから、第1の溶接部分71の先端までの、X軸又はY軸に沿う長さである。厚さt2は、側壁41の内面41aと外面41bとの間の距離である。深さd3は、厚さt2の四倍よりも小さい。なお、深さd3の大きさはこれに限らない。
【0088】
第2の溶接部分72は、例えば側壁41の外面41bと、蓋体32の外縁53とに照射されたレーザ光によって形成される。このため、第2の溶接部分72は、側壁41の外面41b及び蓋体32の外縁53に形成された隆起部72aを有する。すなわち、第2の溶接部分72は、側壁41の外面41bに表れる。
【0089】
第2の溶接部分72は、容器31の端面42の一部と、側壁41の内面41aの一部と、蓋体32の支持面52の一部と、凸部54の側面54bの一部と、を含む。すなわち、第2の溶接部分72は、容器31の端面42と、蓋体32の支持面52とを固着させるとともに、側壁41の内面41aと、凸部54の側面54bとを固着させる。言い換えると、第2の溶接部分72は、容器31と蓋体32とを、X軸又はY軸に沿う方向と、Z軸に沿う方向とに固着させる。
【0090】
さらに、第2の溶接部分72は、収容部43の縁43aを含む。言い換えると、第2の溶接部分72は、側面41の内面41aと、端面42との間の角部分を含む。加えて、第2の溶接部分72は、蓋体32の支持面52と、凸部54の側面54bとの間の角部分を含む。また、第2の溶接部分72は、蓋体32の表面51に表れない。
【0091】
第2の溶接部分72は、第1の溶接部分71よりも、容器31の端面42、及び蓋体32の表面51に近い。言い換えると、第2の溶接部分72は、第1の溶接部分71よりも側壁41の外側(上方)に位置する。さらに、第2の溶接部分72は、第1の溶接部分71に部分的に重なる。
【0092】
側壁41の外面41bから溶け込む第2の溶接部分72の深さd4は、側壁41の厚さt2よりも大きい。深さd4は、側壁41の外面41bから、第2の溶接部分72の先端までの、X軸又はY軸に沿う長さである。なお、第2の溶接部分72の前記先端は、第1の溶接部分71に溶け込むことで消失しても良い。深さd4は、厚さt2の四倍よりも小さい。さらに、第1の溶接部分71の深さd3は、第2の溶接部分72の深さd4以上である。なお、深さd4の大きさはこれに限らない。
【0093】
第1の溶接部分71及び第2の溶接部分72は、容器31の端面42に沿って延びる。このため、第2の溶接部分72は、第1の溶接部分71と略平行に延びる。さらに、第1の溶接部分71と第2の溶接部分72とは、側壁41の外面41bにおいて部分的に重なる。
【0094】
第2の実施形態に示すように、溶接部70は、側壁41の外面41bと、蓋体32の外縁53とに照射されたレーザ光によって形成されても良い。なお、溶接部70は、レーザ光に限らず、例えば電子ビームのような他のエネルギー線によって形成されても良い。
【0095】
上記複数の実施形態に係る電池は、単独あるいは複数のリチウムイオン二次電池を有した組電池の形態で、例えば、携帯電話や、パーソナルコンピュータ、携帯音楽プレーヤー等の比較的小型の装置等の電源として使用される他、電動自転車や、ハイブリッド電気自動車、電気自動車等の比較的大型の装置等の電源としても使用され得る。また、組電池は、例えば、自動車や自転車(移動体)等の電源等、移動型の電源としても使用される他、例えば、POS(point of sales)システム用の電源等、定置型の電源としても使用される。また、種々の装置等には、複数の組電池を、直列あるいは並列に接続したセットとして搭載することができる。
【0096】
リチウムイオン二次電池は、非水電解質二次電池の一種であり、電解質中のリチウムイオンが電気伝導を担う。正極材料としては、例えば、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、リチウムマンガンコバルト複合酸化物、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物等が用いられ、負極材料としては、例えば、チタン酸リチウム(LTO)等の酸化物系材料や、炭素質材料、シリコン系材料等が用いられる。また、電解質(一例としては電解液)としては、例えば、フッ素系錯塩(例えばLiBF4、LiPF6)等のリチウム塩が配合された、例えば、炭酸エチレンや炭酸プロピレン、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジメチル等の有機溶媒等が単独であるいは複数混合されて用いられる。
【0097】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、第1の壁と第2の壁とが溶接された部分は、第1の溶接部分と、前記第1の溶接部分よりも前記第2の壁の外縁に近く且つ前記第1の溶接部分に部分的に重なる第2の溶接部分と、を含む。これにより、溶接された部分の密閉性が高くなる。
【0098】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0099】
例えば、上記実施形態において、蓋体32は、第2の壁の一例であるフランジ部57を有する。しかし、第2の壁はこれに限らず、例えば、凸部54を有さない平坦な板状の蓋体32が、第2の壁の一例であっても良い。
以下に、出願当初の特許請求の範囲の内容を付記する。
[1]
電極及び電解液を収容する筐体と、
前記筐体に設けられた第1の壁と、
前記筐体に設けられるとともに前記第1の壁に溶接され、溶接された部分が表れた表面と、外縁と、を有する、第2の壁と、
を具備する電池であって、
前記溶接された部分は、第1の溶接部分と、前記第1の溶接部分よりも前記外縁に近く且つ前記第1の溶接部分に部分的に重なる第2の溶接部分と、を含む、
電池。
[2]
前記表面から溶け込む前記第1の溶接部分の深さは、前記表面から溶け込む前記第2の溶接部分の深さ以上である、[1]の電池。
[3]
前記第1の溶接部分の深さは、前記第2の壁の厚さよりも大きく、前記第2の壁の厚さの四倍よりも小さい、[2]の電池。
[4]
前記第2の溶接部分の深さは、前記第2の壁の厚さよりも大きく、前記第2の壁の厚さの四倍よりも小さい、[3]の電池。
[5]
前記第1の溶接部分と前記第2の溶接部分とは、前記表面において部分的に重なり且つ前記外縁に沿って平行に延び、
前記表面において、前記第1の溶接部分の幅W1と、前記第2の溶接部分の幅W2と、前記第1の溶接部分と前記第2の溶接部分とが重なる部分の幅W0との関係が、
0.3<W0/(W1+W2−W0)≦0.8
である、
[1]の電池。
[6]
端面と、当該端面に開口するとともに電極及び電解液を収容する収容部と、を有する容器と、
前記端面に支持される第1の面と、前記第1の面の反対側に位置する第2の面と、前記第1の面から突出して前記収容部に嵌る凸部と、を有し、前記容器に溶接されることで前記収容部を塞ぐ、蓋体と、
を具備し、
前記容器と前記蓋体とが溶接された部分は第2の面に表れるとともに、前記端面に開口する前記収容部の縁を含んで形成される第1の溶接部分と、前記第1の溶接部分よりも前記収容部の前記縁から離れるとともに前記第1の溶接部分に部分的に重なる第2の溶接部分と、を含む、
電池。
[7]
電極及び電解液を収容する筐体の第1の壁に、第2の壁を支持させること、
第2の壁の表面に第1の溶接部分が表れるように、前記第1の壁と前記第2の壁とを、エネルギー線によって溶接すること、
前記第1の溶接部分よりも前記第2の壁の外縁に近く且つ部分的に前記第1の溶接部分と重なる第2の溶接部分が前記表面に現れるように、前記第1の壁と前記第2の壁とを、エネルギー線によって溶接すること、
を具備する電池の製造方法。
【符号の説明】
【0100】
10…電池、21…筐体、22…電極群、31…容器、32…蓋体、41…側壁、41b…外面、42…端面、43…収容部、43a…縁、51…表面、52…支持面、53…外縁、54…凸部、57…フランジ部、60,70…溶接部、61,71…第1の溶接部分、62,72…第2の溶接部分、d1,d2…深さ、t1,t2…厚さ、W1,W2,W0…幅。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9