特許第6373599号(P6373599)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6373599リニア共振アクチュエータを備える触覚装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373599
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】リニア共振アクチュエータを備える触覚装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20180806BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20180806BHJP
   G06F 3/0488 20130101ALI20180806BHJP
   H02N 2/06 20060101ALI20180806BHJP
   H02N 2/12 20060101ALI20180806BHJP
   H02N 2/14 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   G06F3/01 560
   G06F3/041 480
   G06F3/0488
   H02N2/06
   H02N2/12
   H02N2/14
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-30613(P2014-30613)
(22)【出願日】2014年2月20日
(65)【公開番号】特開2014-170534(P2014-170534A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2016年10月31日
(31)【優先権主張番号】13/782,684
(32)【優先日】2013年3月1日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500390995
【氏名又は名称】イマージョン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】IMMERSION CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,リー
(72)【発明者】
【氏名】クルス‐ヘルナンデス,ファン マヌエル
【審査官】 萩島 豪
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−521597(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0163985(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0202841(US,A1)
【文献】 SHREHARSHA RAO,High-definition haptics: Feel the difference!,[online],2012年,第29ページ,[検索日:平成29年7月27日]、インターネット<URL:http://www.ti.com/lit/an/slyt483/slyt483.pdf>,URL,http://www.ti.com/lit/an/slyt483/slyt483.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/00 − 3/04
G06F 3/01
3/03 − 3/0489
H02N 2/00 − 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触覚効果を生成するアクチュエータと、
前記触覚効果を生成するために、駆動信号を前記アクチュエータに伝達し、また、制動信号を前記アクチュエータに伝達するプロセッサと、を備え、
前記駆動信号が前記アクチュエータの共振周波数とは異なる周波数を有し、前記駆動信号と前記共振周波数との相違は、前記共振周波数の25%から50%までの範囲であり、前記制動信号の周波数が前記アクチュエータの共振周波数と10%以内の相違を有しかつ前記駆動信号の逆相にある、
触覚出力装置。
【請求項2】
前記アクチュエータがリニア共振アクチュエータである、請求項1記載の触覚出力装置。
【請求項3】
前記アクチュエータが圧電リニア共振アクチュエータである、請求項2記載の触覚出力装置。
【請求項4】
前記アクチュエータが圧電ベンダを備える、請求項3記載の触覚出力装置。
【請求項5】
前記プロセッサが、前記駆動信号および前記制動信号を生成する信号発生器を備える、請求項1記載の触覚出力装置。
【請求項6】
前記プロセッサが、異なる周波数を有する異なる駆動信号に対する最適な制動パラメータを含む参照テーブルを備える、請求項1記載の触覚出力装置。
【請求項7】
前記最適な制動パラメータが、前記制動信号の最適な開始時間および前記制動信号の最適な振幅を含む、請求項6記載の触覚出力装置。
【請求項8】
プロセッサとアクチュエータを備える触覚出力装置を用いて触覚効果を生成する方法であって、
前記プロセッサを用いて、1サイクルよりも大きい周期的信号である駆動信号であって、前記アクチュエータの共振周波数とは異なる周波数を有する駆動信号を生成する工程と、
前記駆動信号を前記アクチュエータに伝達して、前記アクチュエータを駆動する工程と、
前記プロセッサを用いて、1サイクルのみを有する制動信号であって、前記アクチュエータの共振周波数と実質的に同じ周波数を有しかつ前記駆動信号の逆相である制動信号を生成する工程と、
前記制動信号を前記アクチュエータに伝達して前記アクチュエータを制動する工程と、
を含む方法。
【請求項9】
前記駆動信号が前記アクチュエータの前記共振周波数よりも低い周波数を有し、前記駆動信号の最後のサイクルの終了時よりも前に前記制動信号が前記アクチュエータに伝達される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記駆動信号を生成する前記工程の前に、異なる周波数を有する異なる駆動信号に対する最適な制動パラメータを決定する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記最適な制動パラメータが、前記制動信号の最適な開始時間および前記制動信号の最適な振幅を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
ユーザ入力を受けるタッチ・スクリーン装置と、
前記ユーザ入力に応答して触覚効果を生成する触覚装置と、を備える電子装置であって、
前記触覚装置は、
アクチュエータと、
駆動信号を前記アクチュエータに伝達し、制動信号を前記アクチュエータに伝達するプロセッサと、を備え、
前記駆動信号が前記アクチュエータの共振周波数よりも小さい周波数を有し、前記駆動信号と前記共振周波数との相違は、前記共振周波数の25%から50%までの範囲であり、前記制動信号が前記アクチュエータの共振周波数と10%以内のずれを有しかつ前記駆動信号の逆相にあり、
前記プロセッサは、前記駆動信号の周波数に基づき、前記制動信号の開始時間と振幅を変更するよう構成される、
電子装置。
【請求項13】
前記アクチュエータがリニア共振アクチュエータである、請求項12記載の電子装置。
【請求項14】
前記アクチュエータが圧電リニア共振アクチュエータである、請求項13記載の電子装置。
【請求項15】
前記アクチュエータが圧電ベンダを備える、請求項14記載の電子装置。
【請求項16】
前記プロセッサが、前記駆動信号および前記制動信号を生成する信号発生器を備える、請求項12記載の電子装置。
【請求項17】
前記プロセッサが、異なる周波数を有する異なる駆動信号に対する最適な制動パラメータを含む参照テーブルを備える、請求項12記載の電子装置。
【請求項18】
前記最適な制動パラメータが、前記制動信号の最適な開始時間および前記制動信号の最適な振幅を含む、前記プロセッサは、参照テーブルに基づき、前記制動信号の開始時間と振幅を変更するよう構成される、請求項17記載の電子装置。
【請求項19】
前記駆動信号は、前記アクチュエータの共振周波数よりも小さい周波数を有し、1サイクルよりも大きい持続時間を有する周期的信号であり、前記駆動信号の最後のサイクルの終了時よりも前に前記制動信号が前記アクチュエータに伝達される、請求項1記載の触覚出力装置。
【請求項20】
前記駆動信号は、1サイクルよりも大きい持続時間を有する周期的信号であり、前記駆動信号の最後のサイクルの終了時よりも前に前記制動信号が前記アクチュエータに伝達される、請求項12記載の電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は触覚装置用のリニア共振アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置の製造者はユーザにリッチなインターフェースを提供すべく努力している。従来の装置はユーザにフィードバックを提供するための視覚的かつ聴覚的な合図を用いている。一部のインターフェース装置においては、運動感覚フィードバック(例えば、作用力および抵抗力フィードバック)および/または触知フィードバック(例えば、振動、感触、および熱)もユーザに提供されており、これらは総称して「触覚フィードバック」または「触覚効果」として、より一般的に知られている。触覚フィードバックは、ユーザインターフェースを向上させ、かつ単純化する合図を提供することができる。具体的には、振動効果、すなわち振動触知触覚効果は、電子装置のユーザに対して合図を提供し、特定のイベントについてユーザに注意喚起する、または現実的なフィードバックを提供して、模擬または仮想の環境内で没入感を創造するのに有用である。
【0003】
振動効果を生成するために、多くの装置が何らかのアクチュエータまたは触覚出力装置を用いている。この目的のために使用される公知の触覚出力装置には、偏心質量体がモータにより動かされる偏心回転質量体(「ERM」)などの電磁アクチュエータ、ばねに取り付けられた質量体が前後に駆動されるリニア共振アクチュエータ(「LRA」)、または圧電ポリマー、電気活性ポリマー、もしくは形状記憶合金などの「スマートマテリアル」がある。触覚出力装置はまた広義には、非機械的または非振動装置、例えば、静電摩擦(「ESF」)や超音波表面摩擦(「USF」)を用いる装置、超音波触覚トランスデューサを用いて音響放射圧力を生じさせる装置、触覚基板および可撓性もしくは変形可能な表面を用いる装置、またはエアジェットを用いた空気の吹きかけなどの発射型の触覚出力を提供する装置などを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
触覚フィードバック構造体の開発によって、より小さく、コンパクトな装置が造られた。解像度の高いディスプレイが増えたことにより、解像度の高い(「HD」:High Definition)触覚フィードバックに対する需要も高まっている。圧電素子を用いたリニア共振アクチュエータは、タッチスクリーン表面やその他の用途における次世代のHD触覚アクチュエータとなる可能性がある。共振アクチュエータであるという性質により、圧電素子を用いたリニア共振アクチュエータは、若干の振動音を発する触覚フィードバックを生成することができる。また、この振動音は、駆動信号が終了した後も圧電リニア共振アクチュエータがしばらくの間振動を続けるような、アクチュエータの低い減衰比率が原因で生じる。この残存振動はできるだけ素早く停止することが望ましい。振動音を低減するために閉ループ制御戦略が用いられてきたが、閉ループ制御戦略はリアルタイムでの検知能力や何らかの計算能力を要求するため、アクチュエータのコストが増加する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
システムのコストを増加させることなく、リニア共振アクチュエータ、特に圧電素子を用いたアクチュエータの性能を向上させることが望ましい。本発明の実施形態によれば、外部センサを用いない開ループ制動戦略を用いる装置および方法が提供される。
【0006】
本発明の一態様によれば、提供される触覚出力装置は、触覚効果を発生させるアクチュエータと、駆動信号を当該アクチュエータに伝達し、当該駆動信号を停止して前記触覚効果を発生させる前にまたはそれと同時に制動信号を前記アクチュエータに伝達するプロセッサとを含む。制動信号は、周波数が前記アクチュエータの共振周波数と実質的に同じであり、前記駆動信号の逆相にある。
【0007】
本発明の一態様によれば、プロセッサとアクチュエータを備えた触覚出力装置を用いて触覚効果を生成する方法が提供される。当該方法は、前記プロセッサを用いて駆動信号を生成する工程、当該駆動信号を前記アクチュエータに伝達して前記アクチュエータを駆動する工程、およびプロセッサを用いて制動信号を生成する工程を含む。制動信号は、周波数が前記アクチュエータの共振周波数と実質的に同じであり、前記駆動信号の逆相にある。前記方法はまた、駆動信号の伝達が停止される前またはそれと同時に前記制動信号を前記アクチュエータに伝達して、前記アクチュエータを制動する工程を含む。
【0008】
本発明の一態様によれば、ユーザからの入力を受けるタッチスクリーン装置と、当該ユーザからの入力に応答して触覚効果を生成する触覚装置とを備えた電子装置が提供される。触覚装置は、アクチュエータと、駆動信号を当該アクチュエータに伝達し、当該駆動信号を停止して前記触覚効果を発生させる前に、またはそれと同時に、制動信号を前記アクチュエータに伝達するプロセッサとを含む。制動信号は、周波数が前記アクチュエータの共振周波数と実質的に同じであり、前記駆動信号の逆相にある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
以下の図面の構成要素は、本開示の一般的な原理を強調するように描写されており、必ずしも寸法通りには記載されていない。一貫性及び明瞭性を確保するために、対応する構成要素を指し示す参照番号は、必要に応じ、複数の図面にわたって繰り返し用いられる。
【0010】
図1】本発明の実施形態にかかる電子装置の概略図である。
【0011】
図2図1の電子装置で用いられる、本発明の実施形態にかかる触覚装置の概略図である。
【0012】
図3】本発明の実施形態にかかる、図2の触覚装置のアクチュエータの概略図である。
【0013】
図4】本発明の実施形態にかかる、図2の触覚装置のアクチュエータの概略図である。
【0014】
図5】本発明の実施形態にかかる、図2の触覚装置のアクチュエータを駆動するために用いられる駆動信号を示す図である。
【0015】
図6図5の駆動信号と、当該駆動信号に応答した、図2の触覚装置におけるアクチュエータの経時的な加速を示す図である。
【0016】
図7】本発明の実施形態にかかる、図2の触覚装置のアクチュエータを制動するために用いられる制動信号を示す図である。
【0017】
図8】本発明の実施形態にかかる、図7の制動信号と組み合わされた図5の駆動信号を示す図であり、ここで、当該制動信号は駆動信号が停止されるのと同時に開始される。
【0018】
図9】本発明の実施形態にかかる、図7の制動信号と組み合わされた図5の駆動信号を示す図であり、ここで、当該制動信号は駆動信号が停止される前に開始される。
【0019】
図10図9の駆動信号と制動信号、および当該駆動信号と制動信号に応答した、図2の触覚装置におけるアクチュエータの経時的な加速を示す図である。
【0020】
図11図9の駆動信号と同じ駆動信号(図9の制動信号は除く)に応答した、図2の触覚装置におけるアクチュエータの経時的な加速を示す図である。
【0021】
図12】本発明の実施形態にかかる触覚効果の生成方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示では、ユーザ・インターフェース、ヒューマン・コンピュータ・インターフェース、またはユーザ装置のその他の部分を介してユーザに対して触覚効果を与える触覚フィードバック・アクチュエータを含む触覚装置の実施形態を説明する。ここで、当該アクチュエータは前記ユーザ装置上またはその内部に存在する。特に、本明細書で説明する触覚装置の実施形態は、ユーザ装置のタッチ感知表面に触覚効果を適用するように構成することができる。実施形態によっては、タッチ感知表面は、視覚出力機構およびタッチ感知入力機構の両方を含む表示装置の部分となり得る。このように、触覚フィードバックは、ユーザにとって豊かな感覚上の経験を提供するために、例えば電子ハンドヘルド装置などのユーザ装置に適用することができる。
【0023】
本明細書で説明される多くの例はタッチ・スクリーン装置に関するものであるが、本発明には、タッチ感知構造体を含む他の種類のヒューマン・コンピュータ・インターフェースが含まれることを理解されたい。さらに、本発明の全般的な原理を読んで理解すれば、他の特徴および利点は、当該分野の通常の技能を有する者には明らかとなるであろう。これら他の特徴および利点も、本発明に含まれるものとする。
【0024】
図1は本発明の一実施形態にかかる電子装置10のブロック図である。図示されるように、電子装置10は処理装置(例えば、プロセッサ)12、記憶装置14、入力/出力装置16を備えており、これらはバス18を介して相互に接続されている。一実施形態において、入力/出力装置16はタッチ・スクリーン装置20または他のヒューマン・コンピュータ・インターフェース装置を含む。
【0025】
タッチ・スクリーン装置20は、いかなる適切なヒューマン・コンピュータ・インターフェースまたはタッチ/コンタクト表面組立体として構成されてもよい。タッチ・スクリーン装置20は、いかなるタッチ・スクリーン、タッチ・パッド、タッチ感知構造体(touch sensitive structure)、コンピュータ・モニタ、ラップトップ表示装置、ワークブック表示装置、キオスク・スクリーン、携帯用電子装置スクリーン、またはその他の適切なタッチ感知装置であってもよい。タッチ・スクリーン装置20は、スタイラスや指などのユーザによって制御された装置を用いる物理的な相互作用のために構成されている。実施形態によっては、タッチ・スクリーン20は少なくとも1つの出力装置および少なくとも1つの入力装置を備えている。例えば、タッチ・スクリーン装置20は、視覚ディスプレイおよびそれに重ねられたタッチ感知スクリーンを含み、ユーザの指からの入力を受ける。視覚ディスプレイは高解像度ディスプレイ・スクリーンを含む。
【0026】
様々な実施形態において、タッチ・スクリーン装置20は、電子装置10の少なくとも一部に対して触覚フィードバックを提供し、その触覚フィードバックは、電子装置10に接触しているユーザに対して伝達される。特に、タッチ・スクリーン装置20は、ユーザがスクリーンに接触しているときにタッチ・スクリーン自体に触覚フィードバックを提供し、触覚効果を与える。触覚効果を用いると、ユーザの経験を向上させることができ、具体的には、ユーザがスクリーンに対してタッチ・スクリーン装置に検出されるのに十分な接触を行ったことを、ユーザに確認させることができる。
【0027】
電子装置10は、デスクトップ・コンピュータ、ラップトップ・コンピュータ、電子ワークブック、電子ハンドヘルド装置(例えば、携帯電話、ゲーム装置、携帯情報端末(personal digital assistant:「PDA」)、携帯用電子メール装置、携帯用インターネット・アクセス装置、電卓など)、キオスク(例えば、現金自動預け払い機、ティッキング購入機(ticking purchasing machine)など)、プリンタ、POS(point−of−sale)装置、ゲーム・コントローラ、または他の電子装置である。
【0028】
処理装置12は、汎用または特殊用途プロセッサ、あるいは電子装置10の動作および機能を管理するマイクロ・コントローラである。例えば、処理装置12は、触覚効果を提供するために、特定用途向け集積回路(application−specific integrated circuit:「ASIC」)として、入力/出力装置16のドライバへの出力信号を制御するように特別に設計されてもよい。処理装置12は、どのような触覚効果が奏され、当該触覚効果がどのような順序で奏され、および/またはどの程度の大きさ、頻度、持続時間、および/またはその他のパラメータを触覚効果が有するかを、所定の係数に基づいて決定する。また、処理装置12は、特定の触覚効果を提供するための触覚アクチュエータを駆動するために用いることができるストリーミング・モータ・コマンドを提供するように構成することができる。実施形態によっては、処理装置12は実際には複数のプロセッサを含み、当該プロセッサの各々が電子装置10の内部で特定の機能を果たすように構成されている。
【0029】
記憶装置14は内部に固定された1つまたは複数の記憶ユニット、リムーバブル記憶ユニット、および/またはリモート・アクセスが可能な記憶ユニットを含む。これら様々な記憶ユニットは、揮発性メモリと不揮発性メモリのいかなる組合せをも含み得る。記憶ユニットは、情報、データ、命令、ソフトウェア・コードなどのいかなる組合せをも記憶し得るように構成されている。より具体的には、記憶装置は、触覚効果のプロフィール、入力/出力装置16の触覚駆動装置がいかにして駆動されるかを指示する命令、または触覚効果を生成するためのその他の情報を含む。
【0030】
タッチ・スクリーン装置20に加えて、入力/出力措置16も特定の入力機構および出力機構を含む。例えば、入力機構は、キーボード、キーパッド、カーソル・コントロール装置(例えば、コンピュータのマウス)、またはその他のデータ入力装置を含む。出力機構は、コンピュータのモニタ、仮想現実ディスプレイ装置、音声出力装置、プリンタ、またはその他の周辺装置を含む。入力/出力装置16は、ユーザからの入力を受けるだけでなくユーザにフィードバックを提供するように設計された機構を含み、それは例えば、タッチ・スクリーン装置の多くの例が該当する。タッチ・スクリーン装置20およびその他の入力/出力装置16は、ボタン、キーボード、カーソル制御装置、タッチ・スクリーン・コンポーネント、スタイラス受容コンポーネント、またはその他のデータ入力コンポーネントのいかなる適切な組合せおよび構成をも含む。また、タッチ・スクリーン装置20は、コンピュータのモニタ、ディスプレイ・スクリーン、タッチ・スクリーン・ディスプレイ、触覚または触知アクチュエータ、触覚効果装置、またはユーザに出力を提供するその他の通知装置の任意の適切な組合せをも含む。
【0031】
図2は、図1の入力/出力装置16の一部として使われる触覚装置100の一実施形態を示す図である。図示されるように、触覚装置100はプロセッサ102と、当該プロセッサ12と信号通信するアクチュエータ104とを含む。プロセッサ102は、アクチュエータ104との通信のための駆動信号および制動信号を生成する信号発生器106を含むが、これについては以下でさらに詳細に述べる。アクチュエータ104は、例えば、リニア共振アクチュエータなどの共振アクチュエータである。触覚装置100に用いられるアクチュエータの実施形態は、以下でさらに詳細に述べるが、それには限定されない。
【0032】
図3は、図2のアクチュエータ104の一実施形態(104’で表す)を示す図である。図示されるように、アクチュエータ104’は積層構造体であり、第1の電極層107、圧電層108、および第2の電極層109を含む。圧電層は、複合圧電材料から作成される。第1の電極層107および第2の電極層109は、圧電層108の反対の面に形成され、図2の信号発生器106に接続されている。信号発生器106にはアクチュエータ駆動回路110が含まれる。アクチュエータ駆動回路110は、圧電層108に刺激を与えることにより、圧電層108を膨張させたり、または収縮させたりして、ユーザに感知できる触覚効果を生成する。第1の電極層107および第2の電極層109は導電体層であり、アクチュエータ駆動回路110からの信号を圧電層108の両側に配信することを可能にする。実施形態によっては、第1の電極層107および第2の電極層109は、圧電層108の両側に等しく信号を配信する。
【0033】
図4は、図2のアクチュエータ104の一実施形態(104”で表す)を示す図である。図示されるように、アクチュエータ104”は圧電ベンダ112を含み、当該圧電ベンダ112は、当該圧電ベンダ112をその一部の動きを制限するように保持するホルダ114によって、一端あるいはその近傍で支持される細長い本体を有する。当技術分野では圧電ベンダは知られており、一般に少なくとも1層の圧電セラミック材料および少なくとも1層の金属基板を含む。質量体116は、圧電ベンダ112のホルダ114とは反対側の端部に取り付けられている。質量体116は、例えば接着剤等の適切な手段により、圧電ベンダ112に接続される。図4に示されるように、圧電ベンダ112は、プロセッサ102からの入力信号に基づいて電気的な駆動信号を生成する駆動回路110に接続されている。この電気的な駆動信号が圧電ベンダ112の両面間に印加されると、圧電ベンダ112は撓み始める。信号の振幅を変動させることにより、例えば、図5に示すように正弦駆動信号120を与えることにより、圧電ベンダ112は振動し始める。
【0034】
駆動回路110によって与えられる駆動信号の周波数および振幅、圧電ベンダ112の自然発生的な機械的共振周波数、圧電ベンダの長さ、および質量体116の大きさによって、圧電ベンダ112の振動の周波数と振幅、および触覚装置100によって提供される触覚効果が制御される。圧電ベンダ112に適切な電圧が印加されると、圧電ベンダ112は固定された端部から屈曲し、質量体116を前後に移動させる。質量体116の動きは、取り付けられたシステムに加速を与える。図5において、駆動信号120は正弦信号として示されているが、本発明の実施形態はそのように制限されない。例えば、当該技術分野で知られているように、駆動信号120は三角形、矩形、その他の形をとり得る。図示の実施形態は、いかなる限定をも意味するものではない。
【0035】
図3および図4に示される圧電リニア共振アクチュエータ104’および104”のような共振アクチュエータは、一般に携帯電話やタブレット・コンピュータのような携帯用電子装置に用いられる。アクチュエータ104が駆動されると、ユーザは電子装置10における振動加速を通して触覚フィードバックを感じることができる。図6は、正弦電圧信号である駆動信号120のプロットの一例と、駆動信号120に応答する電子装置10における加速度の計測値(122で表される)を示している。図示されるように、駆動信号120は3つのサイクルにわたって印加される。上述のように、共振アクチュエータであるという性質により、圧電素子を用いたリニア共振アクチュエータ、例えば上述の実施形態のアクチュエータ104は、若干の振動音を発する触覚フィードバックを生成することができる。また、この振動音は、図6に示すように、駆動信号120が終了した後も圧電リニア共振アクチュエータがしばらくの間振動を続けるような、アクチュエータ104の低い減衰比率が原因で生じる。図6において加速度信号122の末尾部124に示されるように、電子装置10は振動し続けており、これは駆動信号120の終了後40秒以上にわたって振動音または共鳴音としてユーザに感知される。この末尾部124は電子装置10における振動や共鳴の感覚を生成し、通常ユーザには好まれない。
【0036】
本発明の実施形態によれば、図7に示されるようにアクチュエータ104の共振周波数かその近傍において位相がずれる制動信号130を用いて、駆動信号120が停止した後にアクチュエータ104が共振することを防ぐ。制動信号は事前に設計されたいかなる信号であってもよく、当該技術分野において知られているように、1つまたは複数の正弦サイクルを有している信号や、連続的または非連続的な三角形の信号または矩形の信号などが挙げられる。図示の実施形態は、いかなる限定をも意味するものではない。本発明の実施形態において、制動信号130の周波数はアクチュエータ104の共振周波数と概ね同じであるが、逆相を有している。その位相のずれは必ずしも180°、すなわち逆相ではなく、アクチュエータ104の駆動信号120の周波数によって他の値(例えば、100Hz、150Hz、200Hz)を取り得るが、これらは常に共振するわけではない(例えば、200Hzでは共振するなど)。
【0037】
制動パルス130の周波数が、良好な制動結果を達成する程度にアクチュエータ104の共振周波数に感応するわけではないことは、実験的に示されている。例えば、実施形態によっては制動信号130の周波数は何パーセントか(約10%)ずれているが、それでも許容できる制動結果が得られている。本発明の実施形態によれば、アクチュエータの共振周波数における1サイクルまたは1.5サイクルの正弦制動信号130を用いてアクチュエータが制動される。制動信号130は適切なタイミングに合わせて印加する必要がある。制動信号を不適切なタイミングで印加すると、制動信号は実際にはシステムを制動するのではなく、より活性化してしまう。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、駆動信号120の停止に対する制動信号130の印加タイミングは、電子装置10およびアクチュエータ104の数学的モデルから算出される。駆動信号120が生成されると、システムは強制的な振動モードに入る。駆動信号120が停止または終了すると、システムの振動周波数はシステムの共振周波数に変わる。アクチュエータ104を制動するために、システムの共振周波数を有し、かつシステムの共振周波数である加速度の逆相にある正弦制動信号130が生成されてアクチュエータ104に伝達され、これにより振動音が低減される。制動信号130は正弦信号の複数サイクルであるが、一般に、良好な制動効果を達成するのには1サイクルで十分であることが分かっている。
【0039】
一実施形態において、制動信号130を印加するタイミングは実験により決定できる。例えば、共振周波数を有する正弦信号の1サイクルは良好な制動結果を達成するのに十分であることが実験により分かっている。制動信号の周波数およびサイクル数に加えて、制動信号130の開始点および制動信号130の振幅が実験により決定できる。制動信号130の最適な開始点および振幅は、一般に駆動信号120の周波数に依存することが分かっている。
【0040】
大部分の圧電リニア共振アクチュエータの共振周波数は約150Hzから約250Hzの間である。例えば200Hzの共振周波数を用いると、図8に示すように、制動信号130は200Hzの信号の1サイクルを含み、その正弦信号は駆動信号120の逆相になっている。駆動信号120が共振周波数(すなわちこの例では200Hz)を有している場合、最初のテストとして、制動信号130は図8に示すように駆動信号120が停止された直後に印加される。後続のテストでは、制動信号130の開始点を時系列上で前および後に徐々に移動することによって、制動信号130をアクチュエータ104に伝達する最適なタイミングを判定する。このような実験によって、多くのシステムにおいて最良の結果を得るためには、制動信号130は駆動信号120と部分的に重複する必要があることが判明した。これは駆動信号120が終了する前に制動信号130を印加する必要があることを意味している。
【0041】
駆動信号120の周波数が共振周波数より低い場合、最適な結果を得るためには、図9に示すように制動信号130の開始点がさらに駆動信号120と重なる方向に移動する必要があることが、実験により判明した。一般に、最適な結果を達成するためには、駆動信号120の周波数が低いほど、駆動信号120と制動信号130の重複が大きくなる必要がある。同様に、駆動信号120の周波数が高いほど、駆動信号120と制動信号130の重複は小さくてよい。駆動信号120の周波数が、典型的には共振周波数の付近となる特定の周波数よりも高い場合、駆動信号120と制動信号130の重複はないことが最も望ましい。
【0042】
制動信号130の振幅については、共振周波数かその付近で最も高い振幅となることが望ましい。駆動信号の周波数が増加または低減するにつれて、制動信号の最適な振幅は低下する。
【0043】
同じシステムに対して一連の実験を行った後、異なる周波数の駆動信号120に対する最適な制動パラメータを含むデータテーブルが生成される。一実施形態において、当該データテーブルは参照テーブルとしてプロセッサ102に記憶される。制動信号130の最適な開始時間と最適な制動振幅は、ともに圧電リニア共振アクチュエータの減衰係数に依存する。上記データテーブルと減衰係数を組み合わせて、実験データに基づく公式が生成されるが、これにより最適な開ループ制動戦略が提供される。一実施形態において、当該公式はプロセッサ102に記憶される。目標共振周波数および制動周波数が200Hzであり、かつシステムの実際の共振が220Hzから190Hzの間である場合、良好な制動結果が達成される。
【0044】
図10および図11は、同じ駆動信号120に対して、本発明の実施形態にかかる開ループ制動を用いた場合(図10)と制動を用いない場合(図11)の加速度の差異を示している。図示するように、図10の加速度カーブ132は図11の加速度カーブ122よりも急速に減衰しており、これは図10に示す末尾部134のサイクルの振幅を、図11に示す末尾部124と比較すれば明らかである。このような減衰により、電子装置のユーザによって感知される振動音や共鳴音が低減される。
【0045】
図12は本発明の一実施形態にかかる、上述の触覚装置100を用いて触覚効果を生成する方法200を示す図である。図示するように、この方法は工程202から開始する。工程204において、アクチュエータの駆動信号がプロセッサにより生成される。一実施形態において、駆動信号は上述の駆動信号120であり、アクチュエータは上述のアクチュエータ104、104’、104”であり、プロセッサは上述のプロセッサ102である。一実施形態において、駆動信号は、例えば上述のプロセッサ102の信号発生器106などの信号発生器によって生成される。工程206において、駆動信号がアクチュエータに伝達され、それにより当該アクチュエータが駆動される。工程208において、アクチュエータの制動信号がプロセッサ/信号発生器により生成される。制動信号は上述の制動信号130であり、周波数が前記アクチュエータの共振周波数と実質的に同じであり、前記駆動信号の逆相にある。工程210において、触覚効果を生成するために駆動信号が停止される前かそれと同時に、制動信号がアクチュエータに伝達される。方法200は工程212において終了する。
【0046】
本発明の実施形態の態様は他の共振アクチュエータにおいて用いてもよく、本明細書に記載された圧電材料を有する触覚装置の共振アクチュエータの実施形態のみに限定して使用されるものではない。さらに、本発明の実施形態の態様は、当該技術分野において知られる触覚装置と比較して、適合性と性能の水準を向上させるものであり、高解像度の装置に適している。
【0047】
本発明の実施形態は、タッチ・スクリーン・ハンドヘルド装置(モバイル装置、PDA、ナビゲーション・システム)、自動車用途、ゲーム・コンソールなどの様々な電子装置における触覚フィードバックを可能にする駆動ユニットとして用いられる。
【0048】
本明細書に記載された実施形態は、実施可能な実装例および実施例であるが、本発明を特定の実施形態に制限することを必ずしも意図するものではない。むしろ、これらの実施形態には、当該技術分野における当業者に理解できるような変更を加えることができる。このような変更が加えられた態様も本発明の要旨及び範囲に含まれ、そして以下の請求項によって保護されるべきものである。
図1
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図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12