【実施例】
【0045】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
<実施例1>
[マスクブランクの製造]
本実施例について、
図1、
図2および
図3を参照して説明する。
図1は、本実施例のマスクブランクを示す断面図である。
図2は、本実施例のフォトマスクブランクの製造工程を示すフローチャートである。
図3は、位相シフト膜の成膜に用いたRFスパッタリング装置の構成を示す概略図である。
【0046】
図2のフローチャートに示すように、本実施例のマスクブランク100の製造方法は、透光性基板の準備(S1)、位相シフト膜の形成(S2)、遮光膜の形成(S3)、および、エッチングマスクの形成(S4)を主な手順としている。
位相シフト膜の形成(S2)のステップは、低透過層の形成(S21)、高透過層の形成(S22)および酸化層の形成(S23)のステップが含まれている。各ステップについて以下に詳述する。
【0047】
(透光性基板1の準備:ステップS1)
まず、マスクブランクに用いる透光性基板1の準備を行った。透光性基板1としては、表面の寸法が約152mm×約152mmで、厚さが約6.35mmの合成石英ガラス基板を準備した。この透光性基板1は、端面および主表面が所定の表面粗さに研磨され、その後、所定の洗浄処理および乾燥処理を施されたものである。
【0048】
(位相シフト膜の成膜:ステップS2)
次いで位相シフト膜2の成膜を行った(S2)。位相シフト膜2は、
図3の概略図に示す枚葉式RFスパッタリング装置30を用いて成膜した。まず、枚葉式RFスパッタリング装置30について、
図3を参照して説明する。
【0049】
枚葉式RFスパッタリング装置30は、スパッタリングを行う真空容器32を備えている。真空容器32は、メインバルブ34を介して真空容器32内を排気する真空ポンプ36に接続している。
スパッタリング装置30は、真空容器32へ不活性ガスを導入することのできる不活性ガス導入管42と、反応性ガスを導入することのできる反応性ガス導入管46を備えている。不活性ガス導入管42は不活性ガス供給源40に連通しており、反応性ガス導入管46は反応性ガス供給源44に連通している。これら導入管42、46は、ガス供給源40、44との間に図示しないマスフローコントローラーおよび各種バルブ等が備えられている。なお、実施例において、不活性ガスはアルゴンであり、反応性ガスは窒素である。また、真空容器32内の圧力は、圧力計48によって測定される。
【0050】
真空容器32の内部には、ターゲット材の表面が露出している二つのターゲット55、65がバッキングプレート53、63を介してターゲットホルダー52、62に保持されている。また、ターゲット55、65から放出されたスパッタリング粒子が到達する所定の位置に、透光性基板1の被成膜面を上に向けて保持するための基板ホルダー35が設けられている。基板ホルダー35は図示しない回転機構と接続しており、スパッタリング中に透光性基板1の被成膜面が水平面で回転できるように構成されている。
【0051】
ターゲット55およびターゲット65は、透光性基板1の成膜面に対して斜め上方に備えられている。ターゲットホルダー52、62には、図示しない整合器を介してスパッタ放電用の電力を印加するRF電源50、60が接続している。電源50、60により、ターゲット55、65に電力が印加され、プラズマが形成されることでスパッタリングが行われる。
ターゲットホルダー52、62は、絶縁体により真空容器32から絶縁されている。ターゲットホルダー52、62は金属製であり、電力が印加された場合には電極となる。
ターゲット55、65は、基板に形成する薄膜の原料から構成されている。本実施例において、ターゲット55、65はいずれもシリコンターゲットである。
ターゲットホルダー52、62は、真空容器32内の円筒型の室56、66に入れられている。この円筒型の室56、66にターゲットホルダー52、62が収納されていることにより、一方のターゲット55、65を用いてスパッタリングを行っているときに他方のターゲット65、55にスパッタリング粒子が付着することが防止されている。
【0052】
次に、位相シフト膜2の具体的な成膜方法を説明する。
【0053】
(低透過膜の形成:ステップS21)
まず、枚葉式RFスパッタリング装置30内の基板ホルダ35上に形成面を上にして透光性基板1を設置し、低透過層21を形成した(ステップS21)。
低透過層21は、シリコン(Si)ターゲット55を用いたRFスパッタリング法で形成した。
スパッタリングガスは、不活性ガスであるアルゴン(Ar)ガスと反応性ガスである窒素(N
2)ガスの混合ガスを使用した。この条件は、RFスパッタリング装置30で事前に、スパッタリングガスにおけるArガスとN
2ガスとの混合ガス中のN
2ガスの流量比と、成膜速度との関係を検証し、メタルモードの領域で安定的に成膜できる流量比等の成膜条件を選定した。本実施例では、混合ガスの流量比をAr:N
2=2:3、真空容器32内の圧力を0.035Paとして成膜を行った。混合ガスの流量は、不活性ガス導入管42に備えられたマスフローコントローラーと、反応性ガス導入管46に備えられたマスフローコントローラーにより制御した。この状態で、RF電源50から2.8kWの電力をターゲット55に印加して放電を開始し、透光性基板1上にシリコンおよび窒素からなる低透過層21(Si:N=59at%:41at%)を12nmの厚さで形成した。
別の透光性基板の主表面に対して、同条件で低透過層21のみを形成し、分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製 M−2000D)を用いてこの低透過層21の光学特性を測定したところ、波長193nmにおける屈折率nが1.85、消衰係数kが1.70であった。なお、低透過層21の組成は、X線光電子分光法(XPS)によって得られた結果である。以下、他の膜に関しても同様である。
【0054】
(高透過層の形成:ステップS22)
次に、真空容器32内のスパッタリングガス条件をポイズンモードに変更し、低透過層21の表面に高透過層22を形成した(ステップS22)。高透過層22の形成は、低透過層21を形成した後に連続して行った。
高透過層22は、シリコン(Si)ターゲット65を用いたRFスパッタリング法で形成した。
スパッタリングガスは、不活性ガスであるアルゴン(Ar)ガスと反応性ガスである窒素(N
2)ガスの混合ガスを使用した。この条件は、RFスパッタリング装置30で事前にスパッタリングガスにおけるArガスとN
2ガスとの混合ガス中のN
2ガスの流量比と、成膜速度との関係を検証し、ポイズンモードの領域で安定的に成膜できる流量比等の成膜条件を選定した。本実施例では、混合ガスの流量比をAr:N
2=1:3、真空容器32内の圧力を0.090Paとして成膜を行った。混合ガスの流量は、不活性ガス導入管42に備えられたマスフローコントローラーと、反応性ガス導入管46に備えられたマスフローコントローラーにより制御した。この状態で、RF電源60から2.8kWの電力をターゲット65に印加して放電を開始し、透光性基板1上にシリコンおよび窒素からなる高透過層22(Si:N=46at%:54at%)を55nmの厚さで形成した。
別の透光性基板の主表面に対して、同条件で高透過層22のみを形成し、分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製 M−2000D)を用いてこの高透過層22の光学特性を測定したところ、波長193nmにおける屈折率nが2.52、消衰係数kが0.39であった。
【0055】
(酸化膜の形成:ステップS23)
次に、枚葉式RFスパッタリング装置30とは異なるRFスパッタリング装置の真空容器内に、低透過層21および高透過層22が積層された透光性基板1を設置し、二酸化シリコン(SiO
2)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)ガス(圧力=0.03Pa)をスパッタリングガスとし、RF電源の電力を1.5kWとし、RFスパッタリングにより、高透過層22上に、シリコンおよび酸素からなる酸化膜23を4nmの厚さで形成した。なお、別の透光性基板の主表面に対して、同条件で酸化膜23のみを形成し、分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製 M−2000D)を用いてこの酸化膜23の光学特性を測定したところ、波長193nmにおける屈折率nは1.56、消衰係数kは0.00であった。
【0056】
以上の手順により、透光性基板1上に、低透過層21、高透過層22および酸化膜23からなる位相シフト膜2を形成した。この位相シフト膜2に対し、位相シフト量測定装置(透過率も測定できる)でArFエキシマレーザーの光の波長(約193nm)における透過率と位相差を測定したところ、透過率は5.97%、位相差が177.7度であった。
【0057】
(遮光膜の形成:ステップS3)
次に、位相シフト膜2の表面に最下層、下層および上層からなる3層構造の遮光膜3を形成した。
まず、枚葉式DCスパッタリング装置内に低透過層21、高透過層22および酸化膜23からなる位相シフト膜2が形成された透光性基板1を設置し、クロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO
2)、窒素(N
2)およびヘリウム(He)の混合ガス(流量比 Ar:CO
2:N
2:He=22:39:6:33、圧力=0.2Pa)をスパッタリングガスとし、DC電源の電力を1.9kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、酸化膜23上に、CrOCNからなる遮光膜3の最下層を30nmの厚さで形成した。
【0058】
次に、同じクロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)および窒素(N
2)の混合ガス(流量比 Ar:N
2=83:17,圧力=0.1Pa)をスパッタリングガスとし、DC電源の電力を1.4kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、遮光膜3の最下層上に、CrNからなる遮光膜3の下層を4nmの厚さで形成した。
【0059】
次に、同じクロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO
2)、窒素(N
2)およびヘリウム(He)の混合ガス(流量比 Ar:CO
2:N
2:He=21:37:11:31,圧力=0.2Pa)をスパッタリングガスとし、DC電源の電力を1.9kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、遮光膜3の下層上に、CrOCNからなる遮光膜3の上層を14nmの厚さで形成した。以上の手順により、位相シフト膜2側からCrOCNからなる最下層、CrNからなる下層、CrOCNからなる上層の3層構造からなるクロム系材料の遮光膜3を合計膜厚48nmで形成した。
【0060】
(エッチングマスク膜の形成:ステップS4)
次に、遮光膜3の表面にエッチングマスク膜4を形成した。
エッチングマスク膜4は、RFスパッタリング装置内に位相シフト膜2および遮光膜3が積層された透光性基板1を設置し、二酸化シリコン(SiO
2)ターゲットを用いてRFスパッタリングで形成された膜である。RFスパッタリングの条件は、スパッタリングガスがアルゴン(Ar)ガス(圧力=0.03Pa)であり、RF電源の電力が1.5kWである。このような条件下で、遮光膜3の上にエッチングマスク膜4を5nmの厚さに形成した。
【0061】
以上の手順により、透光性基板1上に、低透過層21、高透過層22および酸化膜23からなる3層構造の位相シフト膜2、遮光膜3、エッチングマスク膜4が積層した構造を備えるマスクブランク100を製造した。
【0062】
[位相シフトマスクの製造]
この実施例1のマスクブランク100を用い、以下の手順で位相シフトマスク200を作成した。
図4および
図5を参照して説明する。
図4は、位相シフトマスク200の製造方法を示すフローチャートである。
図5は、位相シフトマスク200の製造工程を示す模式的部分断面図である。
【0063】
(第一レジスト膜の形成:ステップS5)
まず、エッチングマスク膜4の表面にHMDS処理を施した。次いで、スピン塗布法によって、エッチングマスク膜4の表面に、電子線描画用化学増幅型レジストからなるレジスト膜を膜厚80nmで形成した。
【0064】
(位相シフトパターンの形成1 第一レジスト膜の描画露光・現像:ステップS6)
次に、第一レジスト膜に対して位相シフト膜2に形成すべき位相シフトパターン2aである第一のパターンを電子線描画し、所定の現像処理およびリンス処理を行い、第一のパターンを有する第一のレジストパターン5a)を形成した(
図5(a)参照)。
【0065】
(位相シフトパターンの形成2 エッチングマスク膜のエッチング:ステップS7)
次に、第一のレジストパターン5aをマスクとし、CF
4ガスを用いたドライエッチングを行い、エッチングマスク膜4に第一のパターン(エッチングマスクパターン4a)を形成した(
図5(b)参照)。その後、第一のレジストパターン5aを除去した。
【0066】
(位相シフトパターンの形成3 遮光膜のエッチング:ステップS8)
続いて、エッチングマスクパターン4aをマスクとし、塩素と酸素の混合ガス(ガス流量比 Cl
2:O
2=4:1)を用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第一のパターンを形成(遮光パターン3a)した(
図5(c)参照)。
【0067】
(位相シフトパターンの形成4 位相シフト膜のエッチング:ステップS9)
次に、遮光パターン3aをマスクとし、フッ素系ガス(SF
6+He)を用いたドライエッチングを行い、低透過層21、高透過層22および酸化膜23からなる位相シフト膜2に第一のパターン(位相シフトパターン2a)を形成し、かつ同時にエッチングマスクパターン4aを除去した(
図5(d)参照)。
【0068】
(第二レジスト膜の形成:ステップS10)
次に、遮光膜パターン4a上に、スピン塗布法によって、電子線描画用化学増幅型レジストからなる第二レジスト膜を膜厚150nmで形成した。
【0069】
(遮光パターンの形成 第二レジスト膜の描画露光・現像、遮光膜のエッチング:ステップS11)
次に、レジスト膜に対して、遮光膜3に形成すべきパターン(遮光パターン)である第二のパターンを露光描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、遮光パターンを有する第二のレジストパターン6bを形成した。
続いて、第二のレジストパターン6bをマスクとして、塩素と酸素の混合ガス(ガス流量比 Cl
2:O
2=4:1)を用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第二のパターン(遮光パターン3b)を形成した(
図5(e)参照)。さらに、第二のレジストパターン6bを除去し、洗浄等の所定の処理を経て、位相シフトマスク200を得た(
図5(f)参照)。
【0070】
作製した実施例1のハーフトーン型の位相シフトマスク200に対してマスク検査装置によってマスクパターンの検査を行ったところ、設計値から許容範囲内でDRAM hp32nm世代に対応する微細パターンが形成されていることが確認された。次に、この実施例1のハーフトーン型位相シフトマスク200の位相シフトパターン2aに対して、ArFエキシマレーザーを積算照射量20kJ/cm
2で照射する処理を行った。この照射処理の前後における位相シフトパターン2aのCD変化量は、2nm程度であり、位相シフトマスクとして使用可能な範囲のCD変化量であった。
【0071】
ArFエキシマレーザーの照射処理を行った後の実施例1のハーフトーン型位相シフトマスク200に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を十分に満たしていた。この結果から、ArFエキシマレーザーが積算照射量20kJ/cm
2で照射された後の実施例1の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージをセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンは高精度で形成できるといえる。
【0072】
<実施例2>
本実施例のマスクブランク101について
図6を参照して説明する。
図6は、本実施例のマスクブランク101の構成を示す模式的断面図である。
なお、位相シフト膜2の構成を除くと実施例1と同様であるので重複する説明は省略する。
[マスクブランクの製造]
実施例1と同様の手順で同様の透光性基板1を準備した。
次に、位相シフト膜2を、枚葉式RFスパッタリング装置30を用いて形成した。枚葉式RFスパッタリング装置30は、実施例1と同じ装置である(
図3参照)。
まず、透光性基板1をRFスパッタリング装置30内の基板ホルダー35に形成面を上にして設置した。次いで、実施例1の高透過層22と同様のポイズンモードの成膜条件で膜厚18nmの高透過層22を形成した。この高透過層22の光学特性は、実施例1の高透過層22と同じく、波長193nmにおける屈折率nが2.52、消衰係数kが0.39であった。
【0073】
次に、実施例1の低透過層21と同様のメタルモードの成膜条件で、厚さ7nmの低透過層21を形成した。低透過層21の光学特性は、実施例1の低透過層21と同じく、波長193nmにおける屈折率nが1.85、消衰係数kが1.70であった。
【0074】
次に、実施例1の高透過層22と同様のポイズンモードの成膜条件で、厚さ18nmの高透過層22を成した。この高透過層22の光学特性は、1層目の高透過層22と同様である。
【0075】
次に、実施例1の低透過層21と同様のメタルモードの成膜条件で、厚さ7nmの低透過層21を成した。この低透過層21の光学特性は、2層目の低透過層21と同様である。
【0076】
次に、実施例1の高透過層22と同様のポイズンモードの条件で、厚さ18nmのシリコン窒化物層を形成した。次いで、最表面にあるシリコン窒化物層に対し、オゾンを用いた酸化処理を行い、表層に酸化層23を形成した。
【0077】
以上の手順により、透光性基板1上に、高透過層22、低透過層21、高透過層22、低透過層21および酸化層23からなる5層構造の位相シフト膜2を形成した。この位相シフト膜2の対し、位相シフト量測定装置(透過率も測定できる)でArFエキシマレーザーの光の波長(約193nm)における透過率と位相差を測定したところ、透過率は5.91%、位相差が181.2度であった。
【0078】
次に、実施例1と同様の手順で、位相シフト膜2上に3層構造からなるクロム系材料の遮光膜3を48nmの合計膜厚で形成した。続いて、実施例1と同様の手順で、遮光膜3上に、シリコンおよび酸素からなるエッチングマスク膜4を5nmの厚さで形成した。以上の手順により、透光性基板1上に、5層構造の位相シフト膜2、遮光膜3、エッチングマスク膜4、および、レジスト膜5が積層した構造を備える実施例2のマスクブランク101を製造した。
【0079】
[位相シフトマスクの製造]
次に、この実施例2のマスクブランク101を用い、実施例1と同様の手順で、実施例2の位相シフトマスク200を作製した。作製した実施例2のハーフトーン型の位相シフトマスク200に対してマスク検査装置によってマスクパターンの検査を行ったところ、設計値から許容範囲内で微細パターンが形成されていることが確認された。次に、この実施例2のハーフトーン型位相シフトマスク200の位相シフトパターン2aに対して、ArFエキシマレーザーを積算照射量20kJ/cm
2で照射する処理を行った。この照射処理の前後における位相シフトパターン2aのCD変化量は、2nm程度であり、位相シフトマスクとして使用可能な範囲のCD変化量であった。
【0080】
ArFエキシマレーザーの照射処理を行った後の実施例2のハーフトーン型位相シフトマスク200に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を十分に満たしていた。この結果から、ArFエキシマレーザーが積算照射量20kJ/cm
2で照射された後の実施例2の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージをセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンは高精度で形成できるといえる。
【0081】
<実施例3>
本実施例のマスクブランク102について
図7を参照して説明する。
図7は、本実施例のマスクブランク102の構成を示す模式的断面図である。
なお、位相シフト膜2、20の構成を除くと実施例1と同様であるので重複する説明は省略する。
[マスクブランクの製造]
実施例1と同様の手順で同様の透光性基板1を準備した。
次に、位相シフト膜20を、枚葉式RFスパッタリング装置30を用いて形成した。枚葉式RFスパッタリング装置30は、実施例1と同じ装置である(
図3参照)。
まず、透光性基板1をRFスパッタリング装置30内の基板ホルダー35に形成面を上にして設置した。次いで、実施例1の高透過層22と同様のポイズンモードの成膜条件で膜厚8nmの高透過層22を形成した。この高透過層22の光学特性は、実施例1の高透過層22と同じく、波長193nmにおける屈折率nが2.52、消衰係数kが0.39であった。
【0082】
次に、実施例1の低透過層21と同様のメタルモードの成膜条件で、厚さ2.8nmの低透過層21を形成した。低透過層21の光学特性は、実施例1の低透過層21と同じく、波長193nmにおける屈折率nが1.85、消衰係数kが1.70であった。
その後、厚さ9nmの高透過層22と厚さ2.8nmの低透過層21を交互に成膜し、合計10層の積層膜を形成した。
次に、積層膜の最表面にあるシリコン窒化物層に対し、オゾンを用いた酸化処理を行い、表層に酸化層23を形成した。
【0083】
以上の手順により、透光性基板1上に、高透過層22と低透過層21の積層および酸化層23からなる11層構造の位相シフト膜20を形成した。この位相シフト膜20の対し、位相シフト量測定装置(透過率も測定できる)でArFエキシマレーザーの光の波長(約193nm)における透過率と位相差を測定したところ、透過率は6.05%、位相差が179.2度であった。
【0084】
次に、実施例1と同様の手順で、位相シフト膜20上に3層構造からなるクロム系材料の遮光膜3を48nmの合計膜厚で形成した。続いて、実施例1と同様の手順で、遮光膜3上に、シリコンおよび酸素からなるエッチングマスク膜4を5nmの厚さで形成した。以上の手順により、透光性基板1上に、11層構造の位相シフト膜20、遮光膜3、エッチングマスク膜4、および、レジスト膜5が積層した構造を備える実施例3のマスクブランク102を製造した。
【0085】
[位相シフトマスクの製造]
次に、この実施例3のマスクブランク102を用い、実施例1と同様の手順で、実施例3の位相シフトマスク200を作製した。作製した実施例3のハーフトーン型の位相シフトマスク200に対してマスク検査装置によってマスクパターンの検査を行ったところ、設計値から許容範囲内で微細パターンが形成されていることが確認された。次に、この実施例3のハーフトーン型位相シフトマスク200の位相シフトパターン2aに対して、ArFエキシマレーザーを積算照射量20kJ/cm
2で照射する処理を行った。この照射処理の前後における位相シフトパターン2aのCD変化量は、2nm程度であり、位相シフトマスクとして使用可能な範囲のCD変化量であった。
【0086】
ArFエキシマレーザーの照射処理を行った後の実施例3のハーフトーン型位相シフトマスク200に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を十分に満たしていた。この結果から、ArFエキシマレーザーが積算照射量20kJ/cm
2で照射された後の実施例3の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージをセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンは高精度で形成できるといえる。
【0087】
<比較例1>
[マスクブランクの製造]
実施例1の場合と同様の手順で、主表面の寸法が約152mm×約152mmで、厚さが約6.35mmの合成石英ガラスからなる透光性基板を準備した。次に、枚葉式DCスパッタリング装置内に透光性基板を設置し、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)との混合焼結ターゲット(Mo:Si=12at%:88at%)を用い、アルゴン(Ar)、窒素(N
2)およびヘリウム(He)の混合ガス(流量比 Ar:N
2:He=8:72:100,圧力=0.2Pa)をスパッタリングガスとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、透光性基板1上に、モリブデン、シリコンおよび窒素からなる位相シフト膜を69nmの厚さで形成した。
【0088】
次に、透光性基板上の位相シフト膜に対し、大気中での加熱処理を行った。この加熱処理は、450℃で1時間行われた。この加熱処理がおこなわれた後の比較例1の位相シフト膜の対し、位相シフト量測定装置でArFエキシマレーザーの光の波長(約193nm)における透過率と位相差を測定したところ、透過率は6.02%、位相差が177.9度であった。
【0089】
次に、実施例1と同様の手順で、位相シフト膜上に3層構造からなるクロム系材料の遮光膜3を48nmの合計膜厚で形成した。続いて、実施例1と同様の手順で、遮光膜3上に、シリコンおよび酸素からなるエッチングマスク膜を5nmの厚さで形成した。以上の手順により、透光性基板上に、MoSiNからなる位相シフト膜、遮光膜およびエッチングマスク膜が積層した構造を備える比較例1のマスクブランクを製造した。
【0090】
[位相シフトマスクの製造]
次に、この比較例1のマスクブランクを用い、実施例1と同様の手順で、比較例1の位相シフトマスクを作製した。作製した比較例1のハーフトーン型の位相シフトマスクに対してマスク検査装置によってマスクパターンの検査を行ったところ、設計値から許容範囲内でDRAM hp32nm世代に対応する微細パターンが形成されていることが確認された。次に、この比較例1のハーフトーン型位相シフトマスクの位相シフトパターンに対して、ArFエキシマレーザーを積算照射量20kJ/cm
2で照射する処理を行った。この照射処理の前後における位相シフトパターンのCD変化量は、20nm以上であり、位相シフトマスクとして使用可能な範囲を大きく超えるCD変化量であった。
【0091】
ArFエキシマレーザーの照射処理を行った後の比較例1のハーフトーン型位相シフトマスク200に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、位相シフトパターンのCD変化による影響で設計仕様を満たすことはできていなかった。この結果から、ArFエキシマレーザーが積算照射量20kJ/cm
2で照射された後の比較例2の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージをセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した場合、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンには、回路パターンの断線や短絡が発生することが予想される。
【0092】
<比較例2>
透光性基板上に、単層の窒化ケイ素膜からなるハーフトーン型位相シフト膜を成膜する場合について検討した。
透光性基板1、枚葉式RFスパッタリング装置30については実施例1と同様とした。
単層の窒化ケイ素膜は、シリコン(Si)ターゲット55を用いたRFスパッタリング法で形成した。
スパッタリングガスは、不活性ガスであるアルゴン(Ar)ガスと反応性ガスである窒素(N
2)ガスの混合ガスを使用した。この条件は、RFスパッタリング装置30で事前に、スパッタリングガスにおけるArガスとN
2ガスとの混合ガス中のN
2ガスの流量比と、成膜速度との関係を検証した。
その結果、単層のハーフトーン型位相シフト膜として望ましい消衰係数を有する単層の窒化ケイ素膜を成膜するためには、スパッタリングターゲットが不安定な「遷移モード」で成膜する必要があり、安定的に成膜することが出来ないことがわかった。
【0093】
<比較例3>
1つのターゲットを用いてメタルモードとポイズンモードの膜を交互に成膜する場合について検討した。その結果、ターゲットのモードが転換する際に生じるパーティクルの影響で、膜の欠陥が増加することがわかった。
詳しくは、同一のターゲットを用いて、ポイズンモード成膜(ターゲット表面が反応ガスと結合している状態)とメタルモード成膜(ターゲット表面が反応ガスと未結合)を繰り返すと、ターゲットのモード転換時にパーティクルが発生する。具体的例として、ポイズンモード時に反応ガスと結合したターゲット材がメタルモードに移行する際に剥離して、それがパーティクルの要因となることがある。
また、同一のターゲットを用いると、反応ガスを変化させた時に改めてターゲットのコンディショニングを行う必要があることから、コンディショニング時に用いる遮蔽板などの機械的動作に伴い、パーティクルが発生することがある。
【0094】
<参考例1、2>
実施例1、2および比較例1において、レジスト膜の膜厚が100nmより大きい場合(例えば150nmである場合)であって、エッチングマスク膜に形成すべき転写パターン(位相シフトパターン)に、例えば、線幅が40nmのSRAF(Sub-Resolution Assist Feature)を設ける場合においては、このパターンに対応するレジストパターンの断面アスペクト比が大きくなるので、レジスト膜の現像時、リンス時等にレジストパターンが倒壊や脱離するおそれがある。このため、DRAM hp32nm世代に対応する微細パターンの形成は困難である(参考例1)。
また、実施例1、2および比較例1において、エッチングマスク膜を形成しない場合は、レジスト膜の膜厚を100nm以下とすることは実質的に困難であり(遮光膜をエッチングする際にレジスト膜厚が不足するため)、DRAM hp32nm世代に対応する微細パターンの形成は実質的に困難である(参考例2)。
【0095】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
このような例の一つとして、透光性基板および位相シフト膜の間に形成するエッチングストッパ膜が挙げられる。エッチングストッパ膜は、透光性基板および位相シフト膜の両方にエッチング選択性を有する材料からなる膜である。上記実施例の構成でいえば、クロムを含有する材料、例えば、Cr、CrN、CrC、CrO、CrON、CrC等がエッチングマスク膜に適している。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。