特許第6373611号(P6373611)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373611
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】安定化特徴部を有する眼科用装置
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
   G02C7/04
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-51144(P2014-51144)
(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公開番号】特開2014-182382(P2014-182382A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2016年7月26日
(31)【優先権主張番号】13/842,455
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510294139
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ランドール・ビー・ピュー
(72)【発明者】
【氏名】カーソン・エス・パット
(72)【発明者】
【氏名】エドワード・アール・カーニック
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・エイ・フリッチュ
(72)【発明者】
【氏名】カミール・ハイアム
(72)【発明者】
【氏名】シャリカ・スヌーク
【審査官】 廣田 健介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−535942(JP,A)
【文献】 特表2001−507136(JP,A)
【文献】 特表2006−515689(JP,A)
【文献】 特表2012−504257(JP,A)
【文献】 特表2012−507747(JP,A)
【文献】 特表2012−507748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定化特徴部を有する眼科用装置の製造方法であって、
レンズを形成する工程であって、該レンズは生体適合性材料を含む、工程と、
事前に設定された三次元トポグラフィに、成形用シートを熱成形する工程を含む方法により、前記レンズの特定の向きに依存する機能性を与える剛性挿入物を形成する工程と、
前記剛性挿入物を前記レンズ内に封入する工程と、
前記安定化特徴部を前記眼科用装置に含める工程であって、該安定化特徴部は、前記眼科用装置を眼上で方向付けることができる、工程と、を含み、
前記レンズを形成する工程が、
前側湾曲鋳型及び後側湾曲鋳型部分の一方又は両方に反応性モノマー混合物を加える工程と、前記後側湾曲鋳型を前記前側湾曲鋳型に近接して定置する工程と、前記反応性モノマー混合物を硬化して前記レンズを形成する工程と、前記前側湾曲鋳型部分及び前記後側湾曲部分を離型する工程と、前記離型した前側湾曲鋳型及び後側湾曲から前記レンズを取り外す工程と、前記レンズを水和させる工程と、を含み、
前記安定化特徴部が安定化挿入片を含み、
前記安定化特徴部を前記眼科用装置に含める工程が、前記安定化挿入片を、前記剛性挿入物の機能性を有効にする前記剛性挿入物の方向に整列させる工程と、前記安定化挿入片を前記剛性挿入物に接着する工程と、を含み、
前記安定化挿入変を前記剛性挿入物に接着する工程が、硬化性材料を用いて前記安定化挿入片を前記剛性挿入物に一時的に接着する工程を含み、
前記剛性挿入物の封入後に前記硬化性材料を硬化する工程を更に含み、該硬化により、前記剛性挿入物から前記安定化挿入物を分離する、方法。
【請求項2】
前記安定化特徴部を含める工程が、前記安定化特徴部を前記反応性モノマー混合物に注入する工程を更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記安定化挿入片が、熱成形三次元トポグラフィを含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記安定化特徴部を含める工程が、生体適合性ポリマーと接触している前記前側鋳型部分の表面上の収差において生じる、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記反応性モノマー混合物を加える工程及び前記安定化特徴部を含める工程が同時に生じる、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記剛性挿入物が前記安定化特徴部備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記安定化特徴部がマークを含み、該マークが前記レンズの眼上における方向を示す視覚的なキューを与える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記安定化特徴部が硬化性材料を含み、該硬化性材料の膨潤可能指数が、前記生体適合性材料の膨潤可能指数と異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記熱成形三次元トポグラフィが、前記安定化特徴部を含む、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科用装置内への安定化特徴部(stabilization feature)の封入に関連した方法、機器、及び装置について記述し、より詳細には、いくつかの実施形態では、眼上での向きが眼科用装置の機能性に大きな影響を与える安定化特徴部の封入に関連した方法、機器、及び装置について記述する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンタクトレンズ、眼内レンズ、又は涙点プラグなどの眼科用装置には、矯正、美容、若しくは治療的性質を有する生体適合性装置が含まれていた。例えば、コンタクトレンズは、視力矯正機能、美容効果、及び治療効果のうちの1つ以上を提供することができる。それぞれの機能は、レンズの物理的特性によって与えられる。レンズに屈折性を組み込んだ設計によれば、視力矯正機能を与えることができる。レンズに顔料を組み込むことによって、美容効果を与えることができる。レンズに活性薬剤を組み込むことによって、治療効果を与えることができる。そのような物理的特性は、眼科用レンズをエネルギー印加状態にすることなく達成され得る。レンズの機能性は、眼上でのレンズの特定の向きに依存し得る。したがって、眼上での向きを安定させる必要性は重要であり得る。
【0003】
最近になって、能動的構成要素がコンタクトレンズに組み込まれるようになり、この組み込みは、眼科用装置内にエネルギー印加要素を封入することを含み得る。この効果を達成するための比較的複雑な構成要素は、該構成要素を挿入装置(insert device)の中に含ませ、そしてそれを最先端の眼科用レンズの製造において有用な標準的材料又は同種材料と共に含むことによって、改善された特性を誘導することができる。様々な種類の挿入物(inserts)を実現するために、プロセス、方法、及び得られる装置を改善するのが望ましくあり得る。エネルギーが印加される挿入物のためのいくつかの解決策は、エネルギーが印加されない装置及びその他の生物医学装置に新規な側面をもたらす可能性があることが予想され得る。したがって、挿入物と共に形成される眼科用装置及び生物医学装置の様々な構成要素の熱成形に関連した新規な方法、装置、及び機器が重要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、安定化特徴部を有する眼科用装置の製造方法に関するイノベーションを含み、該方法は、レンズを形成する工程と、ここで、レンズは生体適合性材料を含む;剛性挿入物をレンズ内に封入する工程と、ここで、剛性挿入物は眼科用装置に機能性を提供することができ、該機能性は眼上の眼科用装置の特定の向きに依存する;安定化特徴部を眼科用装置に追加する工程と、ここで、安定化特徴部は、眼上で眼科用装置の向きを決めることができる;を含み得る。いくつかの実施形態では、安定化特徴部は着色又はマークを更に含み、該着色又はマークは可視的な方向のキューを構成する。
【0005】
いくつかの実施形態では、眼科用レンズを形成する工程は、前側湾曲鋳型及び後側湾曲鋳型部分の一方又は両方に反応性モノマー混合物を加える工程と;後側湾曲鋳型を前側湾曲鋳型に近接して定置する工程と;反応性モノマー混合物を硬化して眼科用装置を形成する工程と;前側湾曲鋳型部分及び後側湾曲部から眼科用レンズを離型する工程と;眼科用レンズを水和する工程と;を更に含み得る。いくつかの実施形態では、生体適合性ポリマーの添加及び安定化特徴部の追加は同時に生じる。
【0006】
いくつかの実施形態では、安定化特徴部を追加する工程は、安定化特徴部を反応性モノマー混合物に注入する工程を更に含み得る。いくつかの実施形態では、安定化特徴部は硬化性材料を含み得、該硬化性材料の膨潤可能指数(swellable index)は生体適合性材料の膨潤可能指数と異なる。安定化特徴部を追加する工程は、生体適合性ポリマーと接触している前側鋳型部分の表面上の収差において生じ得る。
【0007】
あるいは、安定化特徴部は安定化挿入片を含み得、該安定化挿入片は、第1の熱成形三次元形状を含み得る。剛性挿入物は第2の熱成形三次元形状を含み得る。例えば、剛性挿入物と安定化特徴部とが同じ熱成形用シートから熱成形され得る場合には、剛性挿入物の封入は眼科用レンズに安定化特徴部を追加できる。
【0008】
いくつかのそのような実施形態では、安定化挿入片は、剛性挿入物の機能性と整列されてもよく、剛性挿入物に接着されてもよい。第2の硬化性材料は、安定化挿入片を剛性挿入物に一時的に接着することができる。例えば、第2の硬化性材料は、剛性挿入物を封入した後、少なくとも部分的に硬化されてもよく、この硬化は、安定化挿入物を剛性挿入物から分離する。これにより、安定化挿入片は、眼科用レンズ内の特定深さ、又は剛性挿入物から特定の距離に定置され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】エネルギー印加された眼科用装置のための媒体挿入物の例示的な実施形態、及びエネルギー印加された眼科用装置の例示的な実施形態を示す。
図2】その機能性が眼上での特定の向きに依存し得る剛性挿入物を有する眼科用レンズの例示的実施形態を示す。
図3A】安定化特徴部が剛性挿入物から分離している、安定化特徴部を有する眼科用レンズの例示的実施形態を示す。
図3B】安定化特徴部が剛性挿入物から分離している、安定化特徴部を有する眼科用レンズの例示的実施形態を示す。
図3C】安定化特徴部が剛性挿入物から分離している、安定化特徴部を有する眼科用レンズの例示的実施形態を示す。
図4A】安定化特徴部が剛性挿入物から分離している、安定化特徴部を有する眼科用レンズの代替実施形態を示す。
図4B】安定化特徴部が剛性挿入物から分離している、安定化特徴部を有する眼科用レンズの代替実施形態を示す。
図4C】安定化特徴部が剛性挿入物から分離している、安定化特徴部を有する眼科用レンズの代替実施形態を示す。
図5A】安定化特徴部が剛性挿入物に包含されている、安定化特徴部を有する眼科用レンズの例示的実施形態を示す。
図5B】安定化特徴部が剛性挿入物に包含されている、安定化特徴部を有する眼科用レンズの例示的実施形態を示す。
図6】安定化特徴部が剛性挿入物から分離している場合の、安定化特徴部を有する眼科用レンズを形成するための例示的なプロセスフローチャートを示す。
図7】安定化特徴部が剛性挿入物から分離している場合の、安定化特徴部を有する眼科用レンズを形成するための代替プロセスフローチャートを示す。
図8】熱成形プロセスにより剛性挿入物を形成するための例示的なプロセスフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、剛性挿入物を有する眼科用レンズを製造するための方法及び機器を含み、該眼科用レンズは安定化特徴部を含む。更に、本発明は、剛性挿入物を有する眼科用レンズを含み、該眼科用レンズは安定化特徴部を含む。本発明によると、眼科用レンズは剛性挿入物を有して形成され、安定化特徴部は該眼科用レンズに組み込まれることができる。いくつかの実施形態では、眼科用レンズの機能性は、眼上での特定の向きに依存し得る。
【0011】
場合によっては、剛性挿入物は、空洞を形成する複数の片を含んでいてもよい。空洞は、電気化学セル又は電池などのエネルギー源をエネルギーの蓄積手段として含むことができる。いくつかの実施形態では、剛性挿入物はまた、回路、構成要素、及びエネルギー源のパターンを含む。様々な実施形態が、レンズの装用者がそれを通して見るであろう光学ゾーン周辺部の周囲に回路、構成要素、及びエネルギー源のパターンを配置する剛性挿入物を含み得るが、一方で、他の実施形態は、コンタクトレンズの装用者の視界に悪影響を及ぼさないほど小型の回路、構成要素、及びエネルギー源のパターンを含むことができ、したがって、光学ゾーン内に電気素子を位置付けることができる。
【0012】
剛性挿入物の挿入片は熱成形によって形成されることができ、熱成形前の薄い基材シート又は熱成形後の挿入片に対して行われる、眼科用装置の挿入物に基づく機能性に対処し得る多くの工程が存在し得る。
【0013】
一般的に、本発明のいくつかの実施形態によれば、剛性挿入物は、レンズを作るために使用する鋳型に対して所望の位置に挿入物を定置する自動操作により、眼科用レンズ内に組み入れられる。挿入片を眼科用レンズに内に定置するいくつかの実施形態は、挿入片を封止又は封入する工程を含み得る。
【0014】
いくつかの実施形態は、生体適合性の方法により眼科用レンズ内に収容された剛性の又は形成可能なエネルギー印加された挿入物を有する、鋳造成形されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを含み得、その場合、挿入物の表面又は眼科用装置自体の表面若しくはその近傍に、パターニングが施されてもよい。なお更なる実施形態は、挿入片の熱成形による場合があり、その場合、片から形成される挿入物は、エネルギー印加され得ない構成要素か、又はエネルギー印加されない眼科用装置内に存在し得る構成要素を収容する。
【0015】
熱成形により眼科用挿入物を形成する様々な方法のいずれかは、いくつかの実施形態では、眼科用レンズ装置を作るために更に用いられてもよい。前側湾曲鋳型片と後側湾曲鋳型片とによって画定された空洞内に挿入物を位置決めし、この挿入物を反応混合物で囲み、これを後で重合することによって、眼科用レンズが形成され得る。いくつかの実施形態では、少量の反応物質の中に挿入物を位置決めした後にこれを重合してもよく、次に、鋳型片の間の空洞を反応混合物で充填した後にこれを重合してもよい。
【0016】
以下のセクションでは、本発明の実施形態の「発明を実施するための形態」が記載される。好ましい実施形態及び代替の実施形態の両方の説明は、代表的な実施形態に過ぎず、変形、修正、及び代替が当業者にとって明白であり得ることが理解される。したがって、これらの代表的な実施形態は基礎をなす発明の範囲を制限しない点は理解されなければならない。
【0017】
用語集
本発明を対象としたこの説明及び特許請求の範囲においては、以下の定義が適用される様々な用語が用いられ得る。
「後方湾曲片又は後方挿入片」とは、本明細書では(及びときに挿入物後側湾曲部として用いる場合)、複数片からなる剛性挿入物の、組立てられて該挿入物になると、レンズの裏面となる側の位置を占めることになる固体要素を指す。眼科用装置では、そのような片は、挿入物の、ユーザーの目の表面により近くなる側に位置することになる。いくつかの実施形態では、後方湾曲片は、そこを通って光がユーザーの眼に進入することができる、眼科用装置の中央の領域(光学ゾーンと呼ぶことができる)を収容し得る及び含み得る。他の実施形態では、片は、光学ゾーン内の領域の一部又はすべてを収容しない又は含まない、環状形状をとってもよい。眼科用挿入物のいくつかの実施形態では、複数の後方湾曲片が存在してもよく、それらのうちの1つは光学ゾーンを含んでもよく、一方で、他の片は環状又は環の一部であってもよい。
【0018】
「構成要素」とは、本明細書では、論理的状態、又は物理的状態の1つ以上の変化を生じるためにエネルギー源から電流を引くことができる装置を指す。
【0019】
「封入」とは、本明細書では、実体(例えば、媒体挿入など)を、実体に隣接する環境から分離するためのバリアを構築することを指す。
【0020】
「封入材」とは、本明細書では、実体に隣接する環境から該実体を分離するためのバリアを構築する、該実体(例えば、媒体挿入など)を囲むように形成された層を指す。例えば、封入材は、例えば、エタフィルコン(Etafilcon)、ガリフィルコン(Galyfilcon)、ナラフィルコン(Narafilcon)、及びセノフィルコン(Senofilcon)、又は他のヒドロゲルコンタクトレンズ材料などのシリコーンヒドロゲルからなってもよい。いくつかの実施形態では、封入材は、特定物質を実体内に収容し、かつ特定物質(例えば、水など)が実体に入るのを防止するために、半透性であってもよい。
【0021】
「エネルギー印加された」とは、本明細書では、電流を供給するか、又は内部に貯蔵される電気エネルギーを有することができる状態を指す。
【0022】
「エネルギー」とは、本明細書では、ある物理系が仕事をする能力のことを指す。本発明で使用される場合の多くは、動作する際に電気的作用を行うことが可能なこの容量に関連し得る。
【0023】
「エネルギー源」とは、本明細書では、エネルギーを供給するか、又は生物医学的装置をエネルギー印加された状態とすることが可能な装置のことを指す。
【0024】
「エネルギーハーベスター」とは、本明細書では、環境からエネルギーを抽出し、これを電気エネルギーに変換することができる装置を指す。
【0025】
「前方湾曲片又は前方挿入片」とは、本明細書では(及びときに挿入物前側湾曲部として用いる場合)、複数片からなる剛性挿入物の、組立てられて該挿入物になると、レンズの前面となる側の位置を占めることになる固体要素を指す。眼科用装置では、前方湾曲片は、挿入物の、ユーザーの目の表面から離れることになる側に位置することになる。いくつかの実施形態では、該片は、そこを通って光がユーザーの眼に進入することができる、眼科用装置の中央の領域(光学ゾーンと呼ぶことができる)を収容し得る及び含み得る。他の実施形態では、片は、光学ゾーン内の領域の一部又はすべてを収容しない又は含まない、環状形状をとってもよい。眼科用挿入物のいくつかの実施形態では、複数の前方湾曲片が存在してもよく、それらのうちの1つは光学ゾーンを含んでいてもよく、一方で、他の片は環状又は環の一部であってもよい。
【0026】
「レンズ形成用混合物、若しくは反応混合物、又は反応性モノマー混合物(RMM)」とは、本明細書では、硬化及び架橋することができるか、又は架橋して眼科用レンズを形成することができるモノマー材料又はプレポリマー材料を指す。様々な実施形態は、UV遮断剤、染料、光開始剤、又は触媒、及びコンタクトレンズ若しくは眼内レンズ等の眼科用レンズに望まれ得る他の添加剤等の1つ以上の添加剤を有するレンズ形成混合物を含むことができる。
【0027】
「レンズ形成表面」とは、レンズの成形に用いられる表面を指す。いくつかの実施形態では、任意のこのような表面は、光学品質表面仕上げを有することができ、光学品質表面仕上げとは、表面が十分に滑らかで、成型表面に接触しているレンズ形成材料の重合によって作られるレンズ表面が光学的に許容可能であるように形成されていることを示す。更に、いくつかの実施形態では、レンズ形成表面は、レンズ表面に所望の光学特性を付与するのに必要な幾何学形状を有することができ、該光学特性としては、限定されるものではないが、球面屈折力、非球面屈折力、及び円筒屈折力、波面収差補正、角膜トポグラフィ補正など、並びにこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0028】
「リチウムイオン電池」とは、リチウムイオンがセルを通して動くことによって電気的エネルギーを生成する電気化学セルを指す。典型的には電池とよばれるこの電気化学セルは、その通常の状態にエネルギー再印加又は再充電され得る。
【0029】
「媒体挿入物」とは、本明細書では、エネルギー印加された眼科用装置に含まれる封入挿入物を指す。エネルギー印加素子及び回路は、媒体挿入物の中に埋め込まれてもよい。媒体挿入物は、エネルギー印加された眼科用装置の主要目的を特徴付ける。例えば、エネルギー印加された眼科用装置によりユーザーが光学的屈折力を調節することが可能となる実施形態では、媒体挿入物は、オプティカルゾーンの液体メニスカス部分を制御するエネルギー印加素子であり得る。あるいは、オプティカルゾーンが材料の空隙であるように、媒体挿入物は環状であってもよい。そのような実施形態では、レンズのエネルギー印加された機能は光学的性質でなくてもよく、該機能は、例えば、グルコースを監視するか、又は薬剤を投与してもよい。
【0030】
「成形型」とは、未硬化の配合物からレンズを形成するために使用可能な、剛性又は半剛性の物体のことを指す。いくつかの好ましい成形型は、前部湾曲成形型部分及び後部湾曲成形型部分を形成する2つの成形型部分を含む。
【0031】
「眼科用レンズ」若しくは「眼科用装置」又は「レンズ」とは、本明細書では、眼内又は眼上に存在する任意の装置を指す。この装置は、光学補正を提供してもよく、美容強化を提供してもよく、又は光学的性質と無関係のいくつかの機能性を提供してもよい。例えば、レンズという用語は、コンタクトレンズ、眼内レンズ、オーバーレイレンズ、眼科用挿入物、光学挿入物、又はそれを通して視力が矯正若しくは変更されるか、又は視力を妨げることなくそれを通して目の生理機能が美容的に拡張される(例えば、虹彩色)その他の同様の装置を指すことができる。あるいは、レンズは、視力矯正以外の機能(例えば、涙液成分の監視又は活性薬剤投与手段など)を備えた、眼上に定置され得る装置を指すことができる。いくつかの実施形態では、本発明の好ましいレンズは、例えば、シリコーンヒドロゲル及びフルオロヒドロゲルなどであり得る、シリコーンエラストマー又はヒドロゲルから製造されるソフトコンタクトレンズであり得る。
【0032】
「光学ゾーン」とは、本明細書では、眼科用レンズの装用者がそこを通して見ることになる眼科用レンズの区域を指す。
【0033】
「電力」とは、本明細書では、単位時間当たりに行われる仕事又は移動するエネルギーのことを指す。
【0034】
「再充電可能又は再充電可能」とは、本明細書では、仕事をするためのより高いキャパシティの状態へと復元可能な能力を指す。本発明においては多くの場合、特定の率で、特定の再度回復された時間の間、電流を流す能力は復元可能な能力との関連で使用され得る。
【0035】
「再エネルギー印加又は再充電する」とは、仕事をするためのキャパシティがより高い状態へと復元することを指す。本発明においては多くの場合、特定の率で、特定の再度回復された時間の間、電流を流すことができるように、装置を復元することに関連して使用され得る。
【0036】
成形型から取り外された:レンズが成形型から完全に分離されたか、又は軽い振動によって取り外すか若しくは綿棒を用いて押し外すことができるようにほんの軽く付着しているだけのいずれかであることを意味する。
【0037】
「剛性挿入物」とは、本明細書では、所定のトポグラフィを維持する挿入物を指す。剛性挿入物は、コンタクトレンズに含まれると、レンズの機能性に寄与し得る。例えば、剛性挿入物の様々なトポグラフィ又は該挿入物内部の密度は、非点収差を有するユーザーの視力を矯正することができるゾーンを規定する。いくつかの実施形態では、挿入物装置は、複数の挿入片を含み得る。
【0038】
「安定化特徴部」とは、本明細書では、眼科用装置が眼上に定置されたときに、眼科用装置を眼上で特定の向きに安定させる物理的特性を指す。いくつかの実施形態では、安定化特徴部は、眼科用装置を安定させるのに十分な質量を加えることができる。いくつかの実施形態では、安定化特徴部は前側湾曲面に変更を加えることができ、その場合、眼瞼が安定化特徴部を引っかけることができて、ユーザーはまばたきによってレンズの向きを直すことができる。そのような実施形態は、質量を加えることができる安定化特徴部を含むことで増強され得る。いくつかの例示的実施形態では、安定化特徴部は、封入生体適合性材料と別の材料であってもよく、成形プロセスと別に形成された挿入物であってもよく、又は剛性挿入物又は媒体挿入物中に含まれてもよい。
【0039】
「積層一体型コンポーネントデバイス(SICデバイス)」とは、本明細書では、電気的及び電気機械的デバイスを含み得る基材の薄層を、各層の少なくとも一部分を互いの上に積み重ねる手段により、動作可能な一体型デバイスへと組み立て得るパッケージング技術製品を指す。層は、様々な型式、材料、形状及びサイズのコンポーネントデバイスを含んでもよい。更に、層は、様々なデバイス製造技術により、様々な輪郭に適合させかつ該輪郭を呈するように作製され得る。
【0040】
「膨潤可能指数」とは、本明細書では、眼科用レンズの製造中の特定材料の膨張性又は膨張傾向を指す。
【0041】
「三次元表面又は三次元基板」とは、本明細書では、平面状表面と対照的に、トポグラフィが特定の目的のために設計されている、三次元的に形成された任意の表面又は基材を指す。
【0042】
安定化特徴部
眼科用レンズのいくつかの実施形態では、レンズの機能性は眼上での特定の向きに依存する。例えば、乱視の患者の視力矯正に対処する現在のレンズでは、安定化特徴部は、非点収差を適切に反映させるようにレンズを方向付ける、剛性挿入物を眼科用レンズに組み込むことにより、眼科用レンズが提供し得る機能の数を増やすことができる。これら機能は、安定化特徴部を更に必要とし得る。現在の安定化特徴部は、比較的均質なレンズの方向付けの基本的ニーズに取り組んでいる。こうしたレンズは規定された三次元表面を有し得るが、材料は、安定化特徴部を含むレンズ全体にわたって同じであり得る。更に、現行の安定化特徴部は、眼科用レンズの三次元表面を生成する鋳型の表面上に収差として含まれている。
【0043】
それに対して、剛性挿入物は独立して生成され、その後、眼科用レンズが形成される前に成形装置に挿入され得る。剛性挿入物は封入材と異なる別個の材料を含み得、該材料は、柔軟な生体適合性ポリマーであり得る。剛性挿入物は、眼科用レンズの機能性を提供することができる。したがって、安定化特徴部は、眼科用レンズを剛性挿入物との関連で眼上で方向付けしてもよい。これは、安定化特徴部を製造し、成形プロセス中にこの安定化特徴部を、剛性挿入物と安定化特徴部との相対的配置に従って眼科用レンズ内含ませる、複雑な方法を必要とし得る。こうした方法は、眼科用レンズの特定の実施形態及び対応する剛性挿入物に依存し得る。
【0044】
図1を参照すると、エネルギー印加された素子を備えた剛性挿入物を有する眼科用レンズの例示的な実施形態が示されている。いくつかの実施形態では、剛性挿入物100は、例えば、シリコーンヒドロゲルなどの生体適合性ポリマー材料を含み得る眼科用レンズ150に含まれ得る。眼科用レンズ150は、中央が剛性でスカートが柔軟な設計を有し得、中央の剛性光学素子は剛性挿入物100を包含している。いくつかの特定の実施形態では、剛性挿入物100は、前面及び後面のそれぞれが大気及び角膜表面と直接接触していてもよく、あるいは、剛性挿入物100は眼科用装置150に封入されていてもよい。周辺部155又は、いくつかの実施形態では、眼科用レンズ150の封入材は、例えば、ヒドロゲル材料などの柔軟なスカート材料であってもよい。
【0045】
エネルギー印加素子を有する剛性挿入物は、例示目的のみのために示されている。いくつかの実施形態は、例えば、単一片の剛性挿入物であってもよく、その場合、機能性は、剛性挿入物の表面上又は剛性挿入物の組成物内に含まれる。あるいは、剛性挿入物は、組み合わされると静的な機能性を提供する受動素子を有する複数の片を含み得る。
【0046】
図2を参照すると、剛性挿入物201、241、281を有する眼科用レンズ200、240、280の例示的実施形態が示されており、眼科用レンズ200、240、280に含まれる剛性挿入物201、241、281は、安定化特徴部205、206、245、246、285、286を必要とし得る異なる機能性を提供する。いくつかの実施形態では、眼科用レンズ200は、偏光機能を提供する剛性挿入物201を含み得る。偏光は方向性であり得、眼上における眼科用レンズ200の特定の向きを必要とし得る。安定化特徴部205、206は、眼科用レンズ200が眼上に定置されたとき、剛性挿入物201が正しく方向付けるのを確実にすることができる。
【0047】
他の実施形態は、乱視の患者の視力を矯正する剛性挿入物241を有する眼科用レンズ240を含み得る。眼の様々な曲率に適応させるために、剛性挿入物241は非対称であり得る。例えば、剛性挿入物241はゾーン242〜244を含み得、各ゾーン242〜244は異なる屈折角を補正する。各ゾーン242〜244は、特定の一連の非点収差特性に合わせられてもよい。その結果、安定化特徴部245、246は、ゾーン242〜244がそれらの対応する眼の曲率と適切に一致するように、眼科用レンズ240を適切に方向付けることができる。
【0048】
剛性挿入物241は、正確な視力矯正を可能にし得ない単純なソフト眼科用レンズよりも、非点収差の補正に関してより効果的であり得る。眼科用レンズ240内に剛性挿入物241を組み込むことにより、典型的な硬質ガス透過性レンズよりも快適となり得る。安定化特徴部245、246を追加することで、快適性と非点収差の正確な視力矯正とを組み合わせることができる。
【0049】
他の代替的な実施形態では、眼科用レンズ280に含まれる剛性挿入物281は、能動電気部品282〜284を封入するための空洞を生成し得る複数の片を含み得る。そのような実施形態では、剛性挿入物281は、可変視覚部分287、例えば、液体メニスカスレンズを含み得、該液体メニスカスの活性化は、レンズの矯正度数を変更する。活性化するため、剛性挿入物281は、電子部品が光学ゾーン287を妨げないように、挿入物の周辺部に負荷282と、電源283と、導体トレース284とを含み得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、可変視覚部分287を有する剛性挿入物281は対称でなくてもよい。いくつかのそのような実施形態では、異なる構成要素282〜284が異なる質量を加えてもよい。例えば、負荷282は、導体トレース284及び電源283よりも有意に大きな質量を加え得る。安定化特徴部285、286がなければ、負荷282が眼科用レンズを下に引っ張る可能性があり、そのため可変視覚部分287が眼の光学ゾーンと整列しない。そのような実施形態では、安定化特徴部285、286は、不快感を和らげるように眼上で眼科用レンズ280を方向付けることも可能である。
【0051】
図2の実施形態は例示目的のみのために示されており、眼科用レンズの他の機能性は、眼上での特定の向きを必要とし得る。方向付けを必要とする機能性は、以下の図ごとに仮定することができる。例示を目的として、図2に示される機能を含む剛性挿入物が示されるが、剛性挿入物は他の機能を提供してもよく、それら機能性は本発明の技術の範囲内であると考えるべきである。
【0052】
図3Aに進むと、偏光剛性挿入物301と安定化特徴部305、306とを含む眼科用レンズ300の例示的な実施形態が示されている。いくつかの実施形態では、安定化特徴部305、306は、眼科用レンズ300の重合RMM(ヒドロゲルなど)を含む生体適合性軟質部302に含まれ得る。そのような実施形態では、安定化特徴部305、306は、軟質部302と異なる材料であり得る。例えば、安定化特徴部305、306は、周辺軟質部302より高密度の材料を含み得、又は、安定化特徴部305、306は、軟質部302と異なる膨潤可能指数を有する材料を含み得る。例えば、膨潤可能指数が異なることにより、安定化特徴部は異なる速度で膨潤することが可能となり得、安定化特徴部は封入材よりも膨潤することができ、又はこれらの組み合わせが可能となり得る。
【0053】
図3Bに進むと、剛性挿入物321、341と安定化特徴部325、345とを含む眼科用レンズ320、340の例示的実施形態が断面で示されており、安定化特徴部325、345は剛性挿入物321、341から独立している。上記の例示的実施形態では、安定化特徴部325、345は軟質部322、342と異なる材料を含んでおり、軟質部322、342には特殊材料が含まれている。いくつかの実施形態では、安定化特徴部325は、眼科用レンズ320の軟質部322に完全に封入されていてもよく、その場合、安定化特徴部325は、眼科用レンズの前面トポグラフィに影響を与えない。そのような実施形態では、安定化特徴部325の付加質量は、眼上で眼科用レンズ320を方向付けるのに十分であり得る。
【0054】
代替実施形態では、安定化特徴部345は、眼科用レンズ340の前面トポグラフィを変更し得る。そのような実施形態では、ユーザーがまばたきすると、眼瞼は、各まばたきが眼上で眼科用レンズ340の向きを直すように安定化特徴部345を引っかけることができる。安定化特徴部345はまた、眼科用レンズ340の軟質部342の特定領域に質量を加えることができ、これにより眼上のレンズの安定性が増強され得る。
【0055】
図3Cに進むと、剛性挿入物361、381と安定化特徴部365、385とを含む眼科用レンズを形成するための成形装置360、380の例示的実施形態が断面で示されている。安定化特徴部365、385は剛性挿入物361、381に対して適所に含まれることができ、安定化特徴部365、385は、レンズの意図する機能性を有効にするやり方で、剛性挿入物361、381を含む眼科用レンズを眼上で方向付けることができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、剛性挿入物361、381は、熱成形材料から挿入片を切り抜くプロセスにより形成されてもよく、例えば切欠き部、溝、又は平坦部などのアライメント特徴が、挿入片に切り込まれてもよい。これら特徴を用いて、挿入片又は成形眼科用挿入物装置を後続処理において整列することができる。挿入片上のアライメント特徴は、構成要素の精密配置に有用であり得る。薄膜基材を処理する設備は、これら特徴を利用して、シート及び取り付けられた機材又は保持機材を、その作動空間内の内部整列位置まで移動させることができる。例えば、機器が片を正確に定置するための切欠き部を有する挿入片があってもよく、他の片又は成形装置との適切な整列を確実にするための溝を含む挿入片があってもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、機器は、前側湾曲鋳型364、384と後側湾曲鋳型363、383との間で眼科用レンズを成形することを含み得る。剛性挿入物361、381は、封入モノマーを加える前に、鋳型片363と364との間、383と384との間に含められてもよい。次に、モノマーが硬化プロセスによって重合され得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、安定化特徴部365の材料は、封入材料を加える前に、前側湾曲鋳型片364の表面に加えられてもよい。そのような実施形態では、得られる眼科用レンズ340は、図3Bに示すように、レンズ340の軟質部342によって完全に封入されていない安定化特徴部345を含み得る。安定化特徴部365が露出している場合、安定化特徴部365は、眼科用レンズの軟質部と異なる膨潤可能指数を有する生体適合性材料を含み得、その場合、安定化特徴部365は、眼科用レンズの形成工程を通して独立した形状を呈する。例えば、安定化特徴部365の材料は、封入材を加える前に部分的に硬化されてもよい。安定化特徴部365の材料は、安定化特徴部365が眼科用レンズの表面に適切に付着できるように、接着性を更に含み得る。
【0059】
あるいは、図示しないが、安定化特徴部は封入前に剛性挿入物に適用されてもよい。そのような実施形態では、安定化特徴部は、成形プロセスの前に剛性挿入物と整列され得る。
【0060】
代替実施形態では、安定化特徴部385は、封入材が前側湾曲鋳型片384と後側湾曲鋳型片383との間に加えられた後に、眼科用レンズに追加されてもよい。安定化特徴部385の追加は、封入材382が完全に硬化される前に生じ得る。例えば、安定化特徴部385は、部分的に硬化した封入材382に注入されてもよく、その場合、残りの硬化プロセスで、封入材382及び安定化特徴部385が完全に硬化される。安定化特徴部385の材料は、安定化特徴部385が完全に硬化されると特定の形状を呈し得るように、封入材と異なる膨潤可能指数を有していてもよい。例えば、安定化特徴部385の材料は、封入材内部の特定深さまで注入され得、硬化プロセス中に安定化特徴部385の材料を膨潤させることで、眼科用レンズの前面トポグラフィを変更する。
【0061】
図4Aに進むと、安定化特徴部405、406と剛性挿入物401とを含む眼科用レンズ400の代替実施形態が示されている。そのような実施形態では、安定化特徴部405、406は、別個の安定化挿入物であり得る。そのような挿入物は、眼科用レンズ400の形成とは別個に形成され得る。
【0062】
図4Bに進むと、剛性挿入物421、431と、安定化挿入物である安定化特徴部425、435とを有する眼科用レンズ420、430の実施形態の例が、断面で示されている。図3Bの実施形態と同様に、安定化特徴部425、435は、眼科用レンズ420、430の様々な深さに配置され得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、安定化特徴部の挿入物425は、眼科用レンズ420の前面トポグラフィを変更しない深さまで、軟質部422内に挿入されてもよく、この付加質量は、ユーザーによる追加的行動なしで眼上の眼科用レンズ420を方向付ける。あるいは、安定化特徴部の挿入物431は、眼科用レンズ430の前面トポグラフィを変更するように含まれてもよく、ユーザーはまばたきによって眼科用レンズ430を方向付けることができる。この付加質量は、眼上での眼科用レンズ430の安定性を高めることができる。
【0064】
図4Cに進むと、剛性挿入物461、471と安定化特徴部の挿入物465、475とを含む眼科用レンズを形成するための機器の例示的実施形態が断面で示されている。安定化特徴部465、475は、剛性挿入物461、471に対して適所に含まれることができ、安定化特徴部465、475は、レンズの意図する機能性を有効にするやり方で、剛性挿入物461、471を含む眼科用レンズを眼上で方向付けることができる。
【0065】
安定化特徴部465、475は、剛性挿入物461、471と同様のプロセス工程により形成され得る。いくつかの実施形態では、安定化特徴部の挿入物465、475は、熱成形プロセスにより形成され得る。そのような実施形態では、剛性挿入物461、471と安定化特徴部465、475との間の精密な整列を可能にすることができるアライメント特徴が、安定化特徴部465、475に含まれ得る。
【0066】
図3Cと同様に、眼科用レンズは、封入材料(例えば、ヒドロゲルなど)を前側湾曲鋳型464、474と後側湾曲鋳型463、473との間で成形することによって、形成され得る。剛性挿入物461、471は、封入材料を加える前に剛性挿入物461、471を前側湾曲鋳型463、473と後側湾曲鋳型464、474との間に定置することによって、眼科用レンズ内に含まれてもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、安定化特徴部の挿入物465は、封入材料を加える前で、かつ剛性挿入物461を追加するのとは別に、前側湾曲鋳型464の上に定置されてもよい。前側湾曲鋳型464は、安定化特徴部465の挿入物の位置を固定することができる収差を、その表面上に含み得る。そのような収差は、剛性挿入物461に対する安定化特徴部465の挿入物のより正確な配置を可能にすることができる。そのような実施形態では、安定化特徴部465の挿入物は、ヒドロゲルによって完全に封入されなくてもよく、それにより、例えば図4Bに示すように、安定化特徴部465が眼科用レンズ430の前面トポグラフィを変更させることができる。
【0068】
代替実施形態では、安定化特徴部475の挿入物は、前側湾曲鋳型片474と後側湾曲鋳型片473との間に定置される前に、まず最初に接続点476において剛性挿入物471に接着されてもよい。剛性挿入物471に安定化特徴部475を取り付けることにより、精密な整列が可能となり得る。例えば、剛性挿入物471が熱成形プロセスによって形成され得る実施形態では、剛性挿入物471は、接続点476を特定し得るアライメント特徴を含んで熱成形され得る。そのようなアライメント特徴は、剛性挿入物471の意図される向きを示すことができ、このことは、剛性挿入物471が安定化特徴部475の挿入物と別に製造され得る場合に、特に重要であり得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、接続点476における接着材料は、周囲の封入材と異なる膨潤可能指数を有し得る。このことは、安定化特徴部475の挿入物が硬化プロセス中に剛性挿入物471から分離するのを可能にすることができる。例えば、接着材料は、安定化特徴部475挿入物を押して、例えば、図4Bに示すように眼科用レンズ435の前面トポグラフィを変更する程度まで、膨潤し得る。かかる実施形態により、完全に封入された安定化特徴部475が可能となり得る。
【0070】
図5Aに進むと、安定化特徴部505、506を有する剛性挿入物501を含む眼科用レンズ500の実施形態が示されている。上記実施形態では、安定化特徴部505、506は剛性挿入物501に包含されており、剛性挿入物501は、ヒドロゲルなどの柔軟な生体適合性材料502内に封入される。いくつかのそのような実施形態では、安定化特徴部505、506は、熱成形プロセスによって剛性挿入物501上に含められてもよい。例えば、剛性挿入物501は、複雑な剛性挿入物501の設計を可能にし得る熱成形シートから取り出されてもよく、その場合、剛性挿入物501は対称でない。熱成形されるいくつかの実施形態では、剛性挿入物501はアライメント特徴を含んでいてもよく、安定化特徴部505、506は、例えば、溶接工程などの別個の付着プロセスにより添着されてもよい。
【0071】
そのような実施形態は、図4B及び図4Cに示される例と異なる。図4Bでは、安定化特徴部425、435は、眼科用レンズ内の剛性挿入物421、431から分離されていてもよい。接続点476は、剛性挿入物471と安定化特徴部475との間の適切な整列を確実にするための一時的な接着であってもよい。
【0072】
図5Bに進むと、剛性挿入物521、531、541を含む眼科用レンズ520、530、540の例示的実施形態であって、剛性挿入物521、531、541が安定化特徴部525、535、545を包含している実施形態の断面が示されている。いくつかの実施形態は、単一片の剛性挿入物521、531を有する眼科用レンズ520、530を含み、剛性挿入物521、531は安定化特徴部525、535を包含している。いくつかの実施形態では、安定化特徴部525は、安定化特徴部525が眼科用レンズ520の前面トポグラフィを変更するのを防止するように、剛性挿入物521に包含され得る。そのような実施形態では、安定化特徴部525の付加質量は、眼科用レンズ520を眼上で適切に方向付けるのに十分であり得る。あるいは、安定化特徴部535は、眼科用レンズ530の前面トポグラフィを変更するように剛性挿入物531から延びていてもよく、その場合、眼瞼は凸部を引っかけることができる。そのような実施形態では、ユーザーはまばたきによって眼科用レンズ530を再配置することができる。
【0073】
他の実施形態では、剛性挿入物541、551は、複数片からなる剛性挿入物を含み得る。剛性挿入物541、551は、前方挿入片547、557と後方挿入片548、558とを含み得る。いくつかのそのような実施形態では、前方挿入片547、557と後方挿入片548、558とは空洞を形成してもよく、該空洞は、例えば、電気的能動素子及び可変視覚部分を含めるのを可能にし得る。あるいは、前方挿入片547、557及び後方挿入片548、558は、組み合わされて眼科用レンズ540、550に機能性をもたらす2つの受動層を含んでいてもよい。
【0074】
複数片からなる剛性挿入物541、551を有する実施形態では、安定化特徴部545、555は様々な方法で含まれることができる。いくつかの実施形態では、後方挿入片548又は前方挿入片542は、例えば、単一片の剛性挿入物521、531に適用され得るような熱成形プロセスによって、安定化特徴部545を含み得る。そのような実施形態では、前方挿入片547は、安定化特徴部545を含む工程とは別の工程で後方挿入片548に取り付けられてもよい。
【0075】
あるいは、安定化特徴部555は、前方挿入片557が後方挿入片558に取り付けられるときに剛性挿入物551に含まれてもよい。そのような実施形態では、安定化特徴部は、前方挿入片557と後方挿入片558との間に定置され得る。前方挿入片557、後方挿入片558、及び安定化特徴部55は、例えば、接着、溶接、又は相互接続アライメント特徴等の種々の手段によって取り付けられることができる。熱成形を含む実施形態では、前方挿入片557、後方挿入片558、及び安定化特徴部555は、眼上で眼科用レンズ550を剛性挿入物551に対して確実に適切に方向付けるためのアライメント特徴を含み得る。
【0076】
挿入物をベースにした眼科用レンズのための材料
いくつかの実施形態では、レンズの種類は、シリコーン含有成分を含んでいるレンズであり得る。「シリコーン含有成分」は、モノマー、マクロマー又はプレポリマー中に少なくとも1個の[−Si−O]を含有する成分である。好ましくは、合計Si及び結合Oは、シリコーン含有成分中に、当該シリコーン含有成分の総分子量の約20重量%より大きい、更に好ましくは30重量%より大きい量で存在する。有用なシリコーン含有成分は、好ましくは、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニル、N−ビニルラクタム、N−ビニルアミド及びスチリル官能基などの重合性官能基が含まれる。
【0077】
いくつかの実施形態では、挿入物を包囲する挿入物封入層とも呼ばれる場合がある眼科用レンズのスカートは、標準的なヒドロゲルレンズ配合物から構成され得る。多くの挿入物材料との許容可能な調和もたらすことができる特性を備える代表的な材料には、ナラフィルコン系(ナラフィルコンA及びナラフィルコンBなど)を挙げることができる。あるいは、エタフィルコン系(エタフィルコンAなど)は、良好で代表的な材料の選択肢であり得る。本明細書の技術に合致する材料の性質についてのより技術的に包括的な記述が続くが、封止及び封入挿入物の許容可能な包囲体又は部分的包囲体を形成し得るあらゆる材料が合致し、かつ包含されることは明らかであろう。
【0078】
好適なシリコーン含有成分は、式Iの化合物を含む:
【化1】
式中、
は、独立して、一価反応性基、一価アルキル基、又は一価アリール基から選択され、前述のいずれかは、ヒドロキシ、アミノ、オキサ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、アルコキシ、アミド、カルバメート、カーボネート、ハロゲン、又はこれらの組み合わせから選択される官能基を更に含み得、1−100 Si−Oの反復単位を含む一価シロキサン鎖は、アルキル、ヒドロキシ、アミノ、オキサ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、アルコキシ、アミド、カルバメート、ハロゲン、又はこれらの組み合わせから選択される官能基を更に含むこともあり、
式中、b=0〜500であり、bが0以外のときに、bは、表示値と同等のモードを有する分配であると理解され、
少なくとも1つのRは、一価反応性基を含み、一部の実施形態では、1〜3個のRが一価反応性基を含む。
【0079】
「一価反応性基」とは、本明細書では、フリーラジカル及び/又はカチオン重合を受けることができる基である。フリーラジカル反応性基の非限定的な例としては、(メタ)アクリレート、スチリル、ビニル、ビニルエーテル、C1〜6アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、C1〜6アルキル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルラクタム、N−ビニルアミド、C2〜12アルケニル、C2〜12アルケニルフェニル、C2〜12アルケニルナフチル、C2〜6アルケニルフェニルC1〜6アルキル、O−ビニルカルバメート及びO−ビニルカーボネートが挙げられる。カチオン反応性基の非限定例としては、ビニルエーテル又はエポキシド基及びこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、フリーラジカル反応基には、(メタ)アクリレート、アクリルオキシ、(メタ)アクリルアミド、及びこれらの混合物が含まれる。
【0080】
好適な一価アルキル基及びアリール基には、置換及び非置換のメチル、エチル、プロピル、ブチル、2−ヒドロキシプロピル、プロポキシプロピル、ポリエチレンオキシプロピル、これらの組み合わせなどの非置換の一価C〜C16アルキル基、C〜C14アリール基が挙げられる。
【0081】
一実施形態では、bは、ゼロであり、1個のRは、一価の反応性基であり、少なくとも3個のRは、1〜16個の炭素原子を有する一価アルキル基から選択され、別の実施形態では、1〜6個の炭素原子を有する一価アルキル基から選択される。本発明のシリコーン成分の制限されない例には、2−メチル−、2−ヒドロキシ−3−[3−[1,3,3,3−テトラメチル−1−[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキザニル]プロポキシ]プロピルエステル(「SiGMA」)、
2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルオキシプロピル−トリ(トリメチルシロキシ)シラン、
3−メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(「TRIS」)、
3−メタクリルオキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、及び
3−メタクリルオキシプロピルペンタメチルジシロキサンが含まれる。
【0082】
別の実施形態では、bは、2〜20、3〜15、又は一部の実施形態では、3〜10であり、少なくとも1つの末端Rは、一価反応性基を含み、残りのRは、1〜16個の炭素原子を有する一価アルキル基から選択され、別の実施形態では、1〜6個の炭素原子を有する一価アルキル基から選択される。更に他の一実施形態では、bが3〜15であり、1つの末端Rが一価の反応性基を含み、その他の末端Rが1〜6の炭素原子を有する一価のアルキル基を含み、残余のRが1〜3の炭素原子を有する一価のアルキル基を含む。本発明のシリコーン成分の制限されない例には、(モノ−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピル)−プロピルエーテル末端のポリジメチルシロキサン(400〜1000MW))(「OH−mPDMS」)、モノメタクリルオキシプロピル末端のモノ−n−ブチル末端のポリジメチルシロキサン(800〜1000MW)、(「mPDMS」)が含まれる。
【0083】
別の実施形態では、bは、5〜400、又は10〜300であり、両方の末端Rは、一価反応性基を含み、残りのRは、独立して、炭素原子間のエーテル結合を有することもあり、ハロゲンを更に含むこともある、1〜18個の炭素原子を有する一価アルキル基から選択される。
【0084】
一実施形態では、シリコーンヒドロゲルレンズが望ましい場合、本発明のレンズは、ポリマーが作製される反応性モノマー成分の総重量に基づき、少なくとも約20重量%、好ましくは、約20〜70重量%のシリコーン含有成分を含む、反応混合物から作製される。
【0085】
別の実施形態では、1〜4のRはビニルカーボネート又は以下の式のカルバメートを含む。
【化2】
式中、YはO−、S−又はNH−を意味し、
Rは、水素又はメチルを意味し、dは1、2、3又は4、そしてqは0又は1である。
【0086】
シリコーン含有ビニルカーボネート又はビニルカルバメートモノマーは、具体的には、1,3−ビス[4−(ビニルオキシカルボニルオキシ)ブト−1−イル]テトラメチル−ジシロキサン、3−(ビニルオキシカルボニルチオ)プロピル−[トリス(トリメチルシロキシ)シラン]、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルアリルカルバメート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメート、トリメチルシリルエチルビニルカーボネート、トリメチルシリルメチルビニルカーボネートを含み、
【化3】
約200以下の弾性率を有するバイオ医療用デバイスが所望される場合、1個のRのみが一価の反応性基を含むものとし、残りのR基のうちの2個以下は、一価シロキサン基を含む。
【0087】
別のクラスのシリコーン含有成分としては、次の式のポリウレタンマクロマーが挙げられる。
式IV〜VI
G)
E(A) 又は
E(G)
式中、
Dは、炭素原子6〜30個を有するアルキルジラジカル、アルキルシクロアルキルジラジカル、シクロアルキルジラジカル、アリールジラジカル又はアルキルアリールジラジカルを示し、
Gは、炭素原子1〜40個を有するアルキルジラジカル、シクロアルキルジラジカル、アルキルシクロアルキルジラジカル、アリールジラジカル又はアルキルアリールジラジカルを示し、これは、主鎖中にエーテル、チオ又はアミン結合を含有できる。
はウレタン又はウレイド結合を意味し、
は、少なくとも1であり、
Aは次の式の二価重合ラジカルを意味する。
【化4】
11は独立してアルキル又は1〜10個の炭素原子を有するフルオロ置換アルキル基を意味し、これには炭素原子間にエーテル結合を含んでよく、yは少なくとも1であり、pは400〜10,000の部分重量を提供し、E及びEはそれぞれ独立して次の式に示される重合性不飽和有機ラジカルを意味する。
【化5】
式中、R12は水素又はメチルであり、R13は水素、1〜6個の炭素原子を有するアルキルラジカル又はa−CO−Y−R15ラジカルで、Yは−O−、Y−S−又は−NH−であり、R14は1〜12個の炭素原子を有する二価ラジカルであり、Xは−CO−又は−OCO−を意味し、Zは−O−又は−NH−を意味し、Arは6〜30個の炭素原子を有する芳香族ラジカルを意味し、wは0〜6であり、xは0又は1であり、yは0又は1であり、zは0又は1である。
【0088】
1つの好ましいシリコーン含有成分は、以下の式で示されるポリウレタンマクロマーである。
式IX(構造全体は対応する星印の部分である****をつなげることによって理解され得る)
【化6】
16は、イソホロンジイソシアネートのジラジカルなどのイソシアネート基除去後のジイソシアネートのジラジカルである。別の好適なシリコーン含有マクロマーは、フルオロエーテル、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン、イソホロンジイソシアネート及びイソシアネートエチルメタクリレートの反応によって形成される式X(式中、x+yは10〜30の範囲の数である)の化合物である。
【0089】
式X(構造全体は対応する星印の部分であるをつなげることによって理解され得る)
【化7】
【0090】
本発明の使用に好適な他のシリコーン含有成分には、ポリシロキサン、ポリアルキレンエーテル、ジイソシアネート、ポリフッ素化炭化水素、ポリフッ素化エーテル、及び多糖類基を含有するマクロマー、末端のジフルオロで置換された炭素原子に結合する水素原子を有する、極性のフッ素化グラフト又は側基を有するポリシロキサン、エーテルを含有する親水性シロキサニルメタクリレート、並びにポリエーテル及びポリシロキサニル基を含有するシロキサニル結合及び架橋性モノマーが含まれる。前述のポリシロキサンのいずれもまた、本発明のシリコーン含有成分として使用することができる。
【0091】
方法
以下の方法ステップは、本発明のいくつかの態様により実施しても良いプロセスの例として与えられる。本方法のステップが示される順番は限定を意図するものではなく、他の順番を用いて本発明を実施しても良いことを理解されるべきである。加えて、本発明を実施するためにすべてのステップを必要とするわけではなく、また本発明の種々の実施形態には付加的なステップを含んでも良い。
【0092】
図6に進むと、安定化特徴部と剛性挿入物とを有する眼科用レンズを形成するための例示的なフローチャートが示されている。605において、剛性挿入物を形成することができ、その機能性は光学ゾーンに対する特定の向きに依存する。610において、材料を前側湾曲鋳型片に堆積させることができ、該材料は眼科用レンズに含まれる安定化特徴部であり得る。615において、材料を部分的に硬化させることができ、それにより安定化特徴部をより固くしかつ形状を維持できるようにする。620において、安定化特徴部材料と反応性モノマー混合物との間の接着性を高める接着促進処理に材料を暴露することができる。625において、剛性挿入物を安定化特徴部と整列することができ、この整列により、眼科用レンズが眼上で方向付けされた時の剛性挿入物の機能性を確保する。630において、剛性挿入物を前側湾曲鋳型片と後側湾曲鋳型片との間に定置することができる。635において、反応性モノマー混合物を前側湾曲鋳型片に堆積させることができる。640において、前側湾曲鋳型片を後側湾曲鋳型片に近接して位置決めすることができ、この位置決めによりRMMは剛性挿入物を封入することができる。いくつかの実施形態では、645において、RMMを重合して眼科用レンズを形成する。その場合、610における安定化特徴部の堆積は、部分的硬化の後に生じ得る。そのような実施形態では、安定化特徴部はRMM内の特定深さに注入され得る。
【0093】
図7に進むと、安定化特徴部の挿入物を有する眼科用レンズを形成するための例示的なフローチャートが示されている。705において、剛性挿入物を形成することができ、その機能性は光学ゾーンに対する特定の向きに依存する。710において、安定化挿入物を前側湾曲鋳型片と後側湾曲鋳型片との間に定置することができ、該挿入物は眼科用レンズを眼上で方向付けることができる。
【0094】
図8に進むと、安定化特徴部を有する剛性挿入物を熱成形プロセスにより形成するための例示的なフローチャートが示されている。805において、典型的には材料のシートの形態の平坦な基材に、アライメント特徴を付与することができる。これら特徴は、シートに形成された刻印形状若しくは切欠き形状であってもよく、又は、材料を切断することなく刻印がもたらすことができる変形領域であってもよい。いくつかの実施形態は、シート上に印刷されたアライメント特徴を含み得る。
【0095】
他の実施形態では、シートの表面又は大部分は、熱処理などの種々のプロセスによる着色の改変を有し得る。形状としては、加工用具によって観察することにより片の明確な並進整列及び回転整列が可能となり得る、十字形、バーニア(vernier)、多方向の線等を挙げることができる。更に、いくつかの実施形態では、処理中に基材を所定の位置に固定係止することができる保持特徴が形成され得る。これら特徴は、定められた様式で位置決めピン又は構成要素を基材シートに通すことができる、様々な形状の切り取り特徴であり得る。
【0096】
810において、電気トレースを形成する必要があるいくつかの実施形態では、これら相互接続特徴は、平坦な基材上のアライメント特徴に対して定められた位置に形成され得る。これら相互接続特徴の形成方法としては、例えば、堆積及びパターン化エッチング、場合に応じてレーザー誘起化学気相堆積法による相互接続特徴の直描、例えば導電性インク印刷などによる基材上への印刷、又は導電材料のスクリーン堆積によるパターン形成などを挙げることができる。処理の特定バージョンにおいて、いくつかの実施形態では、アライメント特徴の輪郭形成(definition)及び相互接続特徴の配置は、同じ処理工程で同時に行われてもよい。
【0097】
815において、いくつかの実施形態では、誘電体膜又は絶縁膜が選択された領域内に形成され得る。これらは、堆積領域内のトレースを覆いかつ絶縁することができる。誘電体膜又は絶縁膜は、全面方式での堆積された後にパターン化エッチングプロセスが行われてもよく、絶縁インク材料で印刷されてもよく、又は、スクリーン堆積プロセスによって局所的に堆積されてもよい。
【0098】
820において、いくつかの実施形態、特にエレクトロウェッティングベースのメニスカスレンズ活性光学素子を形成する実施形態では、適用された基材及び基材特徴表面の疎水性を変更するために、膜は局所的に適用され得る。適用方法は、ステップ810及び815で概して説明されている方法に従うことができる。
【0099】
825において、適用された膜を有する薄いシートは、次に、熱成形プロセスに供されることができる。多くの実施形態では、ステップ805又は810で形成されたアライメント特徴は、薄膜基材を、基材がその上で所望の三次元形状に熱成形され得る鋳型片に対して正しい位置で整列させるために使用され得る。いくつかの実施形態では、処理は一度に1つの成形特徴に対して生じてもよく、他の実施形態では、複数の熱成形特徴を作るために、複数の熱成形用ヘッドが基材材料に同時に適用されてもよい。
【0100】
三次元的に形成された基材に対して次に行われるステップは、多数存在し得る。830において、熱成形シートに安定化特徴部を含ませることができる。いくつかの実施形態では、安定化特徴部は、825においてシート全体に適用されたのと同様か又は同じ熱成形プロセスで、シート上に熱成形され得る。熱成形プロセスは、安定化特徴部を挿入片から特定の角度及び距離で延ばすことができ、それにより安定化特徴部の眼科用レンズ内での深さが規定され得る。
【0101】
835では、熱成形された基材は、そこから切り取られる挿入片を有することができる。ここでも同様に、ステップ805又は810のアライメント特徴は、三次元基材の様々な整列された特徴及び三次元基材上の該特徴に対する、切断プロセスの正しい整列を確実にするために有用であり得る。いくつかの実施形態では、挿入片は、835において、安定化特徴部を含むようにシートから切り取られてもよく、これにより、挿入片が形成されるときに挿入片と安定化特徴部との間の整列が可能となり得る。剛性挿入物又は媒体挿入物が複数の片を含む実施形態では、少なくとも1つの挿入片が安定化特徴部を含み得る。
【0102】
切断プロセスは、鋭利なスタンピング工程又は他の剪断工程で行われ得るような機械的剪断(mechanical sheering)によって行われてもよく、また、切断作業によりこれまであったアライメント特徴が除去された場合でも同時に位置決めするための他のアライメント特徴を、分離された又は切り取られた挿入片に導入してもよい。これら新しいアライメント特徴としては、切欠き部、スロット、円形物、平坦部、又はこれらの種々の組み合わせを挙げることができる。得られた挿入片は、単一片の挿入物の場合には挿入物を構成し得る。
【0103】
複数片からなる剛性挿入物では、840において、得られた挿入片を、他の三次元形状特徴又は他の挿入片と組み合わせることができる。挿入片が他の三次元挿入片に封止、接合、又は接続されると、それらは全体として眼科用挿入物を形成し得る。いくつかのそのような実施形態では、840のステップは、例えば、複数の片が同時に作製される場合又は機能性特徴が熱成形温度の影響を受けにくい場合には、熱成形プロセスを利用してもよい。
【0104】
845において、得られた眼科用挿入物は、眼科用装置を形成するための眼科用レンズ形成材料で封入され得る。例えば、眼科用レンズは、形成された挿入物を2つの鋳型部分の間に定置し、挿入片が眼科用レンズ内部となるように成形するレンズ形成混合物を反応させることによって形成され得る。この成形プロセスはまた、最初に反応混合物の薄層を鋳型表面上に形成し、次いで挿入物を定置し、そして反応混合物を反応させることによって固定する、複数プロセスで行ってもよい。次に、第1の眼科用レンズ層と挿入物との組み合わせは、鋳型の間の更なる反応混合物と共に眼科用レンズへと形成される。記述してきた種々の材料を単独で又は組み合わせて使用して、熱成形によって形成された三次元片を含み得る埋め込まれた挿入物を含む眼科用装置を形成することができる。
【0105】
本発明を用いて、任意の既知のレンズ材料、又はそのようなレンズの製造に好適な材料から製造される、挿入物を収容しているハード又はソフトコンタクトレンズを提供し得るが、好ましくは、本発明のレンズは、約0〜約90パーセントの含水量を有する、ソフトコンタクトレンズである。更に好ましくは、レンズは、モノマー含有ヒドロキシ基、カルボキシル基、又はこれらの両方から製造される、若しくは、シロキサン、ヒドロゲル、シリコーンヒドロゲル、及びこれらの組み合わせ等のシリコーン含有ポリマーから製造される。本発明のレンズを形成するのに有用な材料は、重合開始剤等の添加剤に加えて、マクロマー、モノマー、及びこれらの組み合わせの混合物を反応させることによって、製造し得る。好適な材料は、シリコーンマクロマー及び親水性モノマーから製造されるシリコーンヒドロゲルを含むが、これらに限定されない。
【0106】
結論
本発明は、上述されたように、また以下の特許請求の範囲によって更に定義されるように、安定化特徴部と剛性挿入物とを有する眼科用レンズであって、該安定化特徴部は該眼科用レンズが眼上に定置されるとこれを方向付けることができる眼科用レンズ、を生成する方法を提供する。いくつかの実施形態では、安定化特徴部は、封入反応性モノマー混合物と異なる特性を有する特有の反応性モノマー混合物として含まれ得る。他の実施形態は、個別挿入片を含む安定化特徴部を含み得る。代替実施形態では、剛性挿入物は、例えば、熱成形技術を介して安定化特徴部を含み得る。
【0107】
〔実施の態様〕
(1) 安定化特徴部を有する眼科用装置の製造方法であって、
レンズを形成する工程であって、該レンズは生体適合性材料を含む、工程と、
剛性挿入物を前記レンズ内に封入する工程であって、該剛性挿入物は前記眼科用装置に機能性を与えることができ、該機能性は眼上での前記眼科用装置の特定の向きに依存する、工程と、
安定化特徴部を前記眼科用装置に追加する工程であって、該安定化特徴部は、前記眼科用装置を眼上で方向付けることができる、工程と、
を含む方法。
(2) 前記眼科用レンズを形成する工程が、
前側湾曲鋳型及び後側湾曲鋳型部分の一方又は両方に反応性モノマー混合物を加える工程と、
前記後側湾曲鋳型を前記前側湾曲鋳型に近接して定置する工程と、
前記反応性モノマー混合物を硬化して前記眼科用装置を形成する工程と、
前記前側湾曲鋳型部分及び前記後側湾曲部分を離型する工程と、
前記離型した前側湾曲鋳型及び後側湾曲から眼科用レンズを取り外す工程と、
前記眼科用レンズを水和させる工程と、
を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記安定化特徴部を追加する工程が、前記安定化特徴部を前記反応性モノマー混合物に注入する工程を更に含む、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記安定化特徴部が安定化挿入片を含む、実施態様2に記載の方法。
(5) 前記安定化挿入片が、第1の熱成形三次元形状を含む、実施態様4に記載の方法。
【0108】
(6) 前記剛性挿入物が、第2の熱成形三次元形状を含む、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記安定化特徴部を追加する工程が、生体適合性ポリマーと接触している前記前側鋳型部分の表面上の収差において生じる、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記生体適合性ポリマーを添加する工程及び前記安定化特徴部を追加する工程が同時に生じる、実施態様3に記載の方法。
(9) 前記剛性挿入物の封入により、前記眼科用レンズに前記安定化特徴部が追加される、実施態様2に記載の方法。
(10) 前記安定化特徴部が着色又はマークを含み、該着色又は該マークが可視的な方向付けのキューを構成する、実施態様1に記載の方法。
【0109】
(11) 前記安定化特徴部が硬化性材料を含み、該硬化性材料の膨潤可能指数が、前記生体適合性材料の膨潤可能指数と異なる、実施態様1に記載の方法。
(12) 前記第2の熱成形三次元形状が、前記安定化特徴部を含む、実施態様6に記載の方法。
(13) 前記安定化特徴部を追加する工程が、
前記安定化挿入片を前記剛性挿入物の機能性と整列する工程と、
前記安定化挿入片を前記剛性挿入物に接着する工程と、
を更に含む、実施態様4に記載の方法。
(14) 第2の硬化性材料が、前記安定化挿入片を前記剛性挿入物に一時的に接着することができる、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記剛性挿入物の封入後に前記第2の硬化性材料を硬化する工程を更に含み、該硬化により、前記剛性挿入物から前記安定化挿入物を分離する、実施態様14に記載の方法。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
図7
図8