特許第6373612号(P6373612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373612
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】蓋体開閉構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/03 20060101AFI20180806BHJP
   H01R 13/52 20060101ALI20180806BHJP
   G06F 1/16 20060101ALI20180806BHJP
   H04M 1/02 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   H05K5/03 B
   H01R13/52 302C
   G06F1/16 312P
   G06F1/16 312Q
   H04M1/02 C
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-61539(P2014-61539)
(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2015-185722(P2015-185722A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2017年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】313003417
【氏名又は名称】株式会社ザクティ
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉井 一人
(72)【発明者】
【氏名】小林 大三
【審査官】 梅本 章子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−116562(JP,A)
【文献】 特開2005−258066(JP,A)
【文献】 実開昭61−070984(JP,U)
【文献】 実開昭60−000976(JP,U)
【文献】 特開2013−080995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/00 − 5/06
G06F 1/16
H01R 13/52
H04M 1/02
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側に向けて開口を有する凹部が設けられたケーシングと、
前記開口を開閉可能に塞ぐ蓋板を具えた蓋体と、
を具えた蓋体開閉構造であって、
前記蓋体には、弾性部材によって形成され、前記蓋板の裏面から前記裏面と
略平行方向、且つ、前記蓋板から離れる方向に延出する一対のアーム部と、前
記アーム部間に形成されたスリットと、前記アーム部の先端どうしを連繋する繋ぎ部であ って、前記スリット側の面が、前記蓋板の裏面と略垂直である当たり面を有する繋ぎ部と 、を具えるコネクタが設けられており、
前記ケーシングには、前記凹部の側方に前記凹部と連通して設けられ、前記凹部の底面 よりも深く形成されたスライド空間と、前記凹部の前記底面から側方に向けて前記スライ ド空間に突設された抜止めと、を具え、
前記コネクタは、前記スライド空間に前記繋ぎ部が収容され、前記スリット
が前記抜止めに摺動可能に嵌まり、前記蓋板を前記ケーシングに対して略垂直
となるように開いたときに、前記繋ぎ部は、弾性変形しながら、前記スライド
空間の底面に形成されたスライド面と前記抜止めとの間に侵入して移動し、
記当たり面が該当たり面と対向する前記抜止めの面である接触面と面当たり
する、
ことを特徴とする蓋体開閉構造。
【請求項2】
前記繋ぎ部は、先端に面取されたスライド当接面を有しており、
前記スライド面は、前記蓋板の開閉の際に前記スライド当接面が摺接する
であって、略円弧状の凹形状である、
請求項1に記載の蓋体開閉構造。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシングに設けられた開口を外側から開閉可能に覆う蓋板を具えた蓋体開閉構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器には、メモリカード、外部接続端子、バッテリ等を収容又は接続する収容部を具える凹部が形成されているものがあり、この種の機器では、ケーシングに凹設された凹部の開口を開閉可能に蓋板で覆っている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の蓋体は、蓋板がケーシングから脱落しないように、ケーシングと蓋板とを、熱可塑性エラストマーからなる弾性帯で連繋している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−233752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、弾性帯は、端部がケーシング及び蓋板に夫々固定されている。従って、蓋板の開放状態では、弾性帯の復元力によって蓋板が閉じ方向に付勢されるから、完全に開放した状態を維持できない。また、蓋板の閉止状態では、弾性帯の復元力によって蓋板が開き方向に付勢されてしまい、蓋板が開いてしまうことがある。
【0006】
また、近年では、メモリカードや外部接続端子などが小型化しており、これに合わせて、蓋板も小さくなっている。このため、蓋板の開閉をスムーズに行なうことのできる蓋体開閉構造が求められている。
【0007】
本発明の目的は、蓋板の開閉をスムーズに行なうことができ、開放状態、閉止状態を維持することのできる蓋体開閉構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る蓋体開閉構造は、
外側に向けて開口を有する凹部が設けられたケーシングと、
前記開口を開閉可能に塞ぐ蓋板を具えた蓋体と、
を具えた蓋体開閉構造であって、
前記蓋体には、弾性部材によって形成され、前記蓋板の裏面から前記裏面と略平行方向、且つ、前記蓋板から離れる方向に延出する一対のアーム部と、前記アーム部間に形成されたスリットと、前記アーム部の先端どうしを連繋する繋ぎ部であって、前記スリット側の面が、前記蓋板の裏面と略垂直である当たり面を有する繋ぎ部と、を具えるコネクタが設けられており、
前記ケーシングには、前記凹部の側方に前記凹部と連通して設けられ、前記凹部の底面よりも深く形成されたスライド空間と、前記凹部の前記底面から側方に向けて前記スライド空間に突設された抜止めと、を具え、
前記コネクタは、前記スライド空間に前記繋ぎ部が収容され、前記スリットが前記抜止めに摺動可能に嵌まり、前記蓋板を前記ケーシングに対して略垂直となるように開いたときに、前記当たり面は、前記抜止めと面当たりする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の蓋体開閉構造によれば、蓋板を開いたときに、コネクタのアーム部が抜止めを摺動し、繋ぎ部の当たり面が抜止めと面当たりすることで開状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明に係る電子機器の蓋板の開放状態を示す斜視図である。
図2図2は、本発明に係る電子機器の蓋板の閉止状態を示す斜視図である。
図3図3は、蓋体を裏面側から見た斜視図である。
図4図4は、蓋板の閉止状態におけるアーム部を通る断面図である。
図5図5は、蓋板の閉止状態におけるスリットを通る断面図である。
図6図6は、蓋板が開閉移行にあるアーム部を通る断面図である。
図7図7は、蓋板が開閉移行にあるスリットを通る断面図である。
図8図8は、蓋板の開放状態におけるアーム部を通る断面図である。
図9図9は、蓋板の閉止状態におけるスリットを通る断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の蓋体開閉構造を電子機器に採用した実施形態について説明する。電子機器として、デジタルカメラ、携帯電話機、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、PDA(Personal Digital Assistant)携帯型音楽プレーヤー、ノート型パソコンなどを例示することができる。以下では、本発明を電子機器10としてデジタルカメラに適用して説明する。
【0012】
図1に示すように、電子機器10は、ケーシング20に形成された開口21を具える凹部23と、凹部23を覆う蓋板52を含む蓋体50と、を具える。
【0013】
図示の実施形態では、凹部23は、ケーシング20に外向きに形成された略矩形の開口21を有し、凹部23の底面24には、メモリカード、外部接続端子、バッテリ等を収容又は接続する収容部27が形成されている。たとえば、収容部27は、micro SDカードを挿脱可能に収容する。凹部23の詳細については、後述する。
【0014】
蓋体50は、図1に示すように、前述した蓋板52と、蓋板52をケーシング20から脱落しないように接続するコネクタ60を具える。蓋板52は、開口21を塞いだときに、図2に示すように、ケーシング20の外面と段差なくフラットに連続するよう形成することができる。
【0015】
蓋板52には、図1乃至図3に示すように、開放状態における自由端側に、蓋体50を開き方向に回動させる際にユーザが爪などを挿入する爪掛かり部54が形成されている。また、蓋板52の裏面には、図1及び図3に示すように、弾性部材からなるコネクタ60が装着されている。
【0016】
コネクタ60は、熱可塑性エラストマーの如き弾性部材から構成することができる。たとえば、蓋板52をポリカーボネートとし、蓋板52とコネクタ60を二色成形することで作製することができる。
【0017】
コネクタ60は、図1及び図3に示すように、蓋板52の裏面に装着される基部61と、基部61から開放状態において蓋板52の裏面と略平行に延びる一対のアーム部63,63と、アーム部63,63の先端どうしを連繋する繋ぎ部65(図3)を具える。
【0018】
基部61には、蓋板52の先端や側面近傍に先端方向や側方に向けて爪片の形成されたフック62が形成されており、このフック62をケーシング20に形成されたフック係合孔25に係合することで、蓋板52をケーシング20に閉止状態で維持することができる。
【0019】
アーム部63は、より詳細には、蓋板52の裏面に取り付けられた基部61から、図1及び図3に示すように、蓋板52の裏面から略垂直方向に離れつつ、略平行方向に屈曲し、蓋板52から略平行方向に離れる方向に延出している。
【0020】
アーム部63どうしは、略平行に延びており、これらの間には、図1及び図3に示すようにスリット64が形成されている。
【0021】
図3に示すように、アーム部63の先端どうしは、繋ぎ部65によって連繋されている。すなわち、スリット64は、繋ぎ部65によって終端する。
【0022】
図3において、蓋板52の裏面側、即ち紙面前方を前、紙面上方を上とすると、繋ぎ部65は、アーム部63よりも前後方向に膨出しており、スリット64の終端に、蓋板52の裏面と略垂直な当たり面66が形成されている。また、当たり面66は、後端に、上方に向けて延びるストッパ部68を有する。
【0023】
繋ぎ部65は、下端前方に面取りが施されたスライド当接面67を有する。スライド当接面67は、略円弧状の凸形状とすることができる。
【0024】
蓋体50は、コネクタ60が装着された状態で、図1図4及び図5等に示すように、ケーシング20に装着される。
【0025】
ケーシング20は、たとえば、外装を構成する第1シャーシ30と第2シャーシ32、これらの内部に収容されるインナーシャーシ34を含んでいる。インナーシャーシ34を第1シャーシ30と第2シャーシ32との間に収容された状態で、第1シャーシ30と第2シャーシ32とを嵌め合わせることにより、ケーシング20が構成される。もちろん、ケーシング20の構成はこれに限定されるものではない。
【0026】
第1シャーシ30と第2シャーシ32との接合面には、上記した開口21が形成されている。開口21に連続する凹部23は、第2シャーシ32とインナーシャーシ34から構成することができる。第2シャーシ32には、凹部23の底面24に、前述した蓋体50のフック62が係合するフック係合孔25が対応箇所に凹設されている。
【0027】
凹部23の一端には、図4及び図5に示すように、凹部23の側方に連通するスライド空間40が形成されている。図示の実施形態では、スライド空間40は、第1シャーシ30とインナーシャーシ34から構成される。
【0028】
スライド空間40は、図4乃至図9に示すように、蓋板52を開閉したときに、コネクタ60の繋ぎ部65が移動する空間である。凹部23の底面24には、図1及び図6に示すように、凹部23の底面24と略平行であり、スライド空間40に向けて延びる抜止め42が突設されている。図示の実施形態では、抜止め42は、インナーシャーシ34により構成され、先端上面が第1シャーシ30の内面と略接触するよう形成している。抜止め42は、コネクタ60のスリット64が摺動可能に嵌まる幅に形成されている。
【0029】
また、スライド空間40の底面もインナーシャーシ34により構成され、蓋板52の開閉の際に繋ぎ部65のスライド当接面67が摺接スライドするスライド面44となっている。望ましくは、スライド面44は、略円弧状の凹形状とし、抜止め42の下面とスライド面44との間隔は、繋ぎ部65の当たり面66から繋ぎ部65の先端(図3では下端)までの長さと略一致するように形成する。
【0030】
上記構成のケーシング20に蓋体50が装着される。より詳細には、蓋体50は、インナーシャーシ34の抜止め42にコネクタ60のスリット64を嵌めて、第1シャーシ30と第2シャーシ32をインナーシャーシ34を挟むように嵌め合わせることで、蓋体50をケーシング20に脱落不能に装着できる。
【0031】
図4及び図5は、蓋板52を閉じた状態を示している。図に示すように、蓋板52が閉じた状態では、フック62がフック係合孔25に嵌まることで、蓋板52が凹部23の開口21を封止する。
【0032】
このとき、コネクタ60は、アーム部63がスライド空間40に侵入し、繋ぎ部65がスライド空間40の奥側、すなわち、凹部23から離れる方向に位置している。
【0033】
この状態から、蓋板52の爪掛かり部54にユーザの爪などを差し込んで、図6及び図7中矢印A方向で示す方向に引っ張ると、フック62とフック係合孔25との係合が解け、蓋板52が開口21から外れる。このとき、アーム部63は、スリット64が抜止め42を摺動し、繋ぎ部65は、スライド当接面67が、スライド空間40のスライド面44に摺接しながら凹部23側にスムーズに移動する。
【0034】
そして、図8及び図9に示すように、蓋板52をケーシング20に対して略垂直となるまで開くと、繋ぎ部65は、抜止め42とスライド面44との間に侵入し、当たり面66が抜止め42の下面と面当たりする(図9)。
【0035】
この状態において、蓋板52が倒れ方向に移動しようとしても、繋ぎ部65の当たり面66が、抜止め42の下面と面当たりしているから、蓋板52は倒れず、開状態を維持することができる。また、抜止め42の下面とスライド面44との距離を繋ぎ部65の当たり面66から先端となる下端までの距離と略一致させることで、繋ぎ部65は、弾性変形しながら抜止め42の下面とスライド面44との間に侵入することとなり、抜止め42の下面と当たり面66との当たり強さを高めることができ、蓋板52の開状態におけるぐらつきを抑えることができる。
【0036】
たとえば、蓋板52の開状態において、蓋板52が自重により閉じるように、略水平となるようにケーシング20を傾けても(図9を反時計回りに90°回転刺せる方向)、抜止め42の下面と当たり面66との面当たりにより、蓋板52が閉じてしまうことはない。
【0037】
なお、図4及び図5の状態から、蓋板52が開方向にこれ以上回転しないように、蓋板52がケーシング20に対して略垂直となったときに、繋ぎ部65の先端がスライド空間40の壁面に当接したり、繋ぎ部65のストッパ部68が抜止め42の先端に当接するようにすることが望ましい。
【0038】
開状態にある蓋板52を閉じるには、蓋板52を図6及び図7の矢印B方向に押し込む。これにより、図9に示すように抜止め42の下面とスライド面44との間に侵入していた繋ぎ部65は、これらの間から抜け出して、図6及び図7に示すようにスライド面44上をスライド当接面67しながら、蓋板52が開口21に接近していく。スライド面44を円弧状の凹形状とし、スライド当接面67を面取りしておくことで、スムーズに蓋板52を閉じ方向に移動させることができる。
【0039】
そして、図4及び図5に示すように、蓋板52と開口21を位置合わせし、フック62がフック係合孔25に嵌るように蓋板52を押し込むことで、蓋板52は開口21を塞ぐ。
【0040】
本発明では、蓋体50は、蓋板52がケーシング20に対して略垂直な開状態を安定して維持することができるから、凹部23に形成された収容部27へのmicro SDカード等の挿脱作業を行なうときに、蓋板52が閉じないように押さえておく必要はない。とくに、メモリカードや外部接続端子などの小型化により、収容部27や開口21を小さくした電子機器10において、これらに合わせて小さい蓋板52を開閉する際に、本発明は特に有用である。
【0041】
本発明では、蓋板52の開状態、開閉途上状態、閉状態において、アーム部63はほとんど変形しないから、アーム部63が開閉の繰り返しにより曲げ疲労により破断等してしまうことも抑えることができ、蓋体50の長寿命化を達成できる。
【0042】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0043】
10 電子機器
20 ケーシング
21 開口
23 凹部
24 底面
40 スライド空間
42 抜止め
44 スライド面
50 蓋体
52 蓋板
60 コネクタ
63 アーム部
64 スリット
65 繋ぎ部
66 当たり面
67 スライド当接面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9