(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373640
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】筒型電流ヒューズの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01H 69/02 20060101AFI20180806BHJP
H01H 85/045 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
H01H69/02
H01H85/045 D
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-98362(P2014-98362)
(22)【出願日】2014年5月12日
(65)【公開番号】特開2015-216030(P2015-216030A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2017年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【復代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(74)【復代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100092406
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 信太郎
(72)【発明者】
【氏名】豊住 晃之
(72)【発明者】
【氏名】前野 浩二
(72)【発明者】
【氏名】林 勇希
【審査官】
杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】
西独国特許出願公開第02401821(DE,A)
【文献】
特開2012−234624(JP,A)
【文献】
特開昭52−004041(JP,A)
【文献】
特開昭51−129653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 69/02
H01H 85/00−87/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス筒体内部の貫通孔に可溶体ワイヤを張る構造の筒形電流ヒューズの製造方法において、
グラスファイバーまたはセラミックファイバーからなる芯材に可溶体ワイヤを巻線加工してヒューズエレメントを形成し、
前記ヒューズエレメント上に所定間隔で該ヒューズエレメントの切断箇所の前後に仮止め金属材を設け、前記可溶体ワイヤ自体を固定し、前記切断箇所において前記ヒューズエレメントを切断することを特徴とする筒型電流ヒューズの製造方法。
【請求項2】
請求項1の記載において、仮止め金属材は、はんだであることを特徴とする筒型電流ヒューズの製造方法。
【請求項3】
請求項1の記載において、仮止め金属材は、ろうであることを特徴とする筒型電流ヒューズの製造方法。
【請求項4】
請求項1の記載において、前記芯材に前記可溶体ワイヤが巻回され、両端に前記仮止め金属材が固定されたヒューズ1個分の長さの前記ヒューズエレメントが得られることを特徴とする筒型電流ヒューズの製造方法。
【請求項5】
請求項4の記載において、前記切断箇所において切断して得られたヒューズ1個分の長さの前記ヒューズエレメント両端の前記仮止め金属材を、内部の貫通孔両端の開口部に、はんだハトメを形成したセラミックス筒体に挿入し、仮止め金属材の周面がはんだハトメの内周面に対面し、且つ近接した位置に配置され、金属キャップを該筒体の両端に嵌め込み、加熱手段により加熱し、前記はんだハトメおよび前記仮止め金属材を溶融して両者が一体となり、内部電極接合が形成されることを特徴とする筒型電流ヒューズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス筒体内部の貫通孔に可溶体ワイヤを張る構造の筒形電流ヒューズの製造方法に係り、特に芯材に巻線加工したヒューズエレメントを用いた筒型電流ヒューズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
古くから、セラミックス筒体内部の貫通孔に可溶体ワイヤを張る構造の筒形電流ヒューズが知られている(例えば特許文献1参照)。そして、芯材に巻線加工したヒューズエレメントを用いた筒型電流ヒューズが望まれている。巻線加工をしたヒューズエレレメントは芯になるグラスファイバーまたはセラミックファイバーへ可溶体ワイヤを巻くことにより製作され、所要の過電流で溶断するヒューズ特性を有すると共に、ヒューズエレメントがインダクタンス成分を有することから耐パルス性を有している。
【0003】
しかし、芯材に可溶体ワイヤを巻線加工したヒューズエレメントを定寸に切断する際には、巻き乱れが生じてしまう可能性がある。そして、筒型ケース内部に巻き線加工したヒューズエレレメントを挿入し、半田を圧入したキャップを筒型ケースの両端部に被せ、ヒューズエレメントの両端部をキャップに加熱接合すると、可溶体ワイヤの端部において、ワイヤの巻き乱れに起因して、接続不良が発生する可能性がある。
【0004】
すなわち、巻線加工した可溶体ワイヤの端部において、ワイヤの巻き乱れが発生し、可溶体ワイヤの長さが長くなると、キャップの接合時に可溶体ワイヤが湾曲して筒型のケースの内壁に接触し、過電流印加時に安定した溶断特性が得られなくなるという問題がある。また、筒型ケースの長さよりも可溶体ワイヤの長さが短くなると、キャップへの接合(圧入と加熱)を行う際に、可溶体ワイヤが未接合又は接合が不十分となり、ヒューズとしての機能を果たさなくなり、接続信頼性が得られなくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−234624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の事情に基づいてなされたもので、芯材に巻線加工した可溶体ワイヤの巻き乱れを防止し、可溶体ワイヤの金属キャップへの接続の信頼性が向上する筒型電流ヒューズの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の筒型電流ヒューズの製造方法は、
グラスファイバーまたはセラミックファイバーからなる芯材に可溶体ワイヤを巻線加工してヒューズエレメントを形成し、前記ヒューズエレメント上に所定間隔で該ヒューズエレメントの切断箇所の前後に仮止め金属材を設け、前記可溶体ワイヤ自体を固定し、前記切断箇所において
前記ヒューズエレメントを切断することを特徴とする。仮止め金属材は、はんだまたはろう等の内部接続用導体であることが好ましい。切断し
て得られたヒューズ1個分の長さの前記ヒューズエレメント
両端の前記仮止め金属材を、内部の貫通孔両端の開口部に、はんだハトメを形成したセラミックス筒体に挿入し、
仮止め金属材の周面がはんだハトメの内周面に対面し、且つ近接した位置に配置され、金属キャップを該筒体の両端に嵌め込み、加熱手段により加熱し、
前記はんだハトメおよび
前記仮止め金属材を溶融して両者が一体となり、内部電極接合が形成される。
【0008】
本発明によれば、芯材に可溶体ワイヤを巻線加工し、予め可溶体ワイヤ上に所定間隔で該可溶体ワイヤの切断箇所の前後に内部接続用導電材料(はんだまたはろう)からなる仮止め金属材を設け、可溶体ワイヤ自体を固定することで、切断にあたり可溶体ワイヤの巻乱れを防止できる。そして、内部接続用導電材料(はんだまたはろう)からなる仮止め金属材を設け、加熱することで、はんだハトメ加工した金属材と溶融して一体の内部電極が形成され、可溶体ワイヤの金属キャップへの接続の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)は本発明の一実施例の芯材に可溶体ワイヤを巻線加工し、切断箇所の前後に仮止め金属材を設け、可溶体ワイヤ自体を固定した段階を示す図であり、(b)は切断箇所において切断した一区画分のヒューズエレメントの図であり、(c)は(b)における仮止め金属材の内部を示した図である。
【
図2A】
図1(b)に示すヒューズエレメントを、セラミックス筒体内部の貫通孔に挿入し、金属キャップを装着し、加熱して内部電極接合を形成する筒型電流ヒューズの製造工程の前半段階の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、
図1乃至
図2Bを参照して説明する。なお、各図中、同一または相当する部材または要素には、同一の符号を付して説明する。
【0011】
図1は本発明の筒型電流ヒューズのヒューズエレメントの形成段階を示す。まず、(a)に示すように、芯材11になるグラスファイバーまたはセラミックファイバーを準備し、これに、Cu,Ni等にAg,Sn等のメッキを施した可溶体ワイヤ12を巻回し、ヒューズエレメント10を形成する。そして、ヒューズエレメント10に1個のヒューズエレメントに対応した所定間隔で、該ヒューズエレメントの切断箇所Cの前後に内部接続用導電材料(はんだまたはろう)からなる仮止め金属材13を設け、可溶体ワイヤ12自体を固定する。仮止め金属材13は、例えばSnめっきした金属線またはリボンを可溶体ワイヤの巻回部分に巻き付けて、カシメを行うこと等でも形成することができる。
【0012】
そして、可溶体ワイヤ12は芯材11に巻線加工したものであり、予め可溶体ワイヤ上に所定間隔で該可溶体ワイヤの切断箇所Cの前後に仮止め金属材13が設けられ、切断箇所Cにおいて可溶体ワイヤ12を切断する。これにより、
図1(b)(c)に示すように、芯材11に可溶体ワイヤ12が巻回され、両端にはんだまたはろうからなる仮止め金属材13が固定されたヒューズ1個分の長さのヒューズエレメント10が得られる。そして、仮止め金属材13により可溶体ワイヤ12の端部が固定されているので、切断時の巻き乱れが防止される。また、仮止め金属材13は後述するように、金属キャップ22の装着後の工程において、加熱を行うことで内部接続用導電材料(はんだ等)が溶融し、可溶体ワイヤ12を金属キャップ22に接続する内部電極接合24の形成に寄与する。
【0013】
図2A−2Bはセラミックス筒体20の内部の貫通孔にヒューズエレメント10を挿入し、その両端の仮止め金属材13を金属キャップ22に融着して、可溶体ワイヤ12を金属キャップ22に接続固定する段階を示す。まず、
図2A(a)に示すように、セラミックス筒体20の内部の貫通孔両端の開口部に、はんだハトメ21を形成する。はんだハトメ21は円板状のはんだ板を準備し、これをセラミックス筒体20の貫通孔開口部の両端面に配置し、パンチを用いて円板状のはんだ板の中央部を貫通孔内部に押し込むことで、貫通孔内部の周面およびセラミックス筒体の端面にはんだ材からなるはんだハトメ21を形成でき、パンチで抜いた部分は開口部となる。
【0014】
次に、
図2A(b)に示すように、金属キャップ22をセラミックス筒体20の下端に挿入し、嵌め込み固定する。そして、
図2A(c)に示すように、セラミックス筒体20の上端に設けたはんだハトメ21の開口部から貫通孔内部にヒューズエレメント10を挿入する。ヒューズエレメント10はその下端が金属キャップ22の内側端面に当接する位置迄挿入する。この時、ヒューズエレメント10の上端はセラミックス筒体10の上端と同一位置となる。
【0015】
そして、
図2B(d)に示すように、金属キャップ22をセラミックス筒体20の上端に挿入して嵌め込む。この時、金属キャップ22の内側端面がヒューズエレメント10の上端に当接もしくは近接し、仮止め金属材13の周面がはんだハトメ21の内周面に対面し、且つ近接した位置に配置される。これにより、芯材11に巻回された可溶体ワイヤ12が貫通孔内部の中央部に位置決めされ、固定される。
【0016】
そして、
図2B(e)に示すように、セラミックス筒体20の両端に嵌め込まれた金属キャップ22にヒーターチップを押し当てる等の加熱手段23により加熱し、はんだハトメ21および仮止め金属材13を溶融する。これにより、両者は内部接続用導電材料(はんだまたはろう等)からなるので、溶融して一体となり、内部電極接合24が形成される。そして、
図2B(f)に示すように、ヒューズエレメント10の上下端はセラミックス筒体10の上下端に嵌め込まれた金属キャップ22の内側端面に固定され、可溶体ワイヤ12の端部が内部電極接合23を介して金属キャップ22に接続して固定される。
【0017】
本発明によれば、予めヒューズ外装ケース(セラミックス筒体)11の貫通孔両端に、ハトメ加工したはんだ材料21と、ヒューズエレメントの両端に設けた内部接続用導体からなる仮止め金属材13を加熱溶融して一体化した内部電極接合24により可溶体ワイヤ12の端部を金属キャップ22に接続する。これにより、芯材11に可溶体ワイヤ12を巻回したヒューズエレメント10の両端に設けた仮止め金属材13により、可溶体ワイヤ自体を固定することで、切断にあたり可溶体ワイヤの巻き乱れを防止でき、且つ内部電極接合24により可溶体ワイヤ12の金属キャップ22への接合信頼性が格段に向上する。
【0018】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、筒型電流ヒューズの製造に好適に利用可能である。