(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
同一の撮像素子の撮像面にそれぞれ異なる倍率で光学像を結像する複数の結像光学系を備える撮像装置と、各結像光学系で撮像した画像を合成してモニターに表示する画像制御手段とを備える車両用外部監視装置であって、前記撮像装置は、車両の外部の後方から側方を撮像するように構成され、焦点距離の長い第1結像光学系で車幅方向内側領域を撮像し、焦点距離の短い第2結像光学系で車幅方向外側領域を撮像し、前記画像制御手段は前記各結像光学系で撮像した画像を並べて合成して前記モニターに表示させることを特徴とする車両用外部監視装置。
前記画像制御手段は、2つの画像の共通画像を検出し、1つの画像の共通画像を残し、他の画像の共通画像を削除して両画像を合成することを特徴とする請求項1に記載の車両用外部監視装置。
前記画像制御手段は、複数の画像を左右方向または上下方向に並べかつ連続した状態に合成してモニターに表示することを特徴とする請求項2に記載の車両用外部監視装置。
前記画像制御手段は、複数の画像のうち少なくとも1つの画像を画像処理して他の画像と合成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用外部監視装置。
前記撮像装置は車両の左右にそれぞれ配設され、前記モニターは左右の撮像装置で撮像された画像をそれぞれ個別に表示する2つのモニターあるいは両画像を合一表示する1つのモニターで構成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の車両用外部監視装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、自動車の左右に配設された各カメラは単一の焦点距離の光学系(レンズ系)を用いた構造であるため、撮像領域(撮像画角)が光学系によって決定されてしまう。すなわち、狭い画角の光学系で構成したカメラでは、自動車の後方ないし側方の広い領域を撮像することができず、いわゆる死角が生じる。一方、広い画角の光学系で構成したカメラでは広い範囲を撮像して死角を解消する上では有効であるが、監視する対象物、例えば自車の周囲に存在する他車両が小さい画像で撮像されるため、撮像した画像をそのままモニターに表示したときには、他車両を鮮明に視認することが難しい。特に、カメラを小型にすべく小型の撮像素子を用いたときには、撮像面を構成する画素数に制限を受けるため、解像度の高い画像を得ることは困難である。
【0005】
そこで、画角が広いカメラと狭いカメラを併用することが考えられるが、その場合にはカメラの台数が多くなり、自動車への配設が難しくなるとともにコスト高の要因になる。特許文献2では、1つの撮像素子に対して撮像光軸方向が異なる2つの結像光学系を配設し、これら2つの結像光学系を利用することでそれぞれ異なる領域を1つの撮像素子で撮像する技術が提案されている。この特許文献2の技術では、カメラ台数を増加することなく複数(2つ)の異なる領域を同時に撮像して監視することは可能であるが、撮像画角を広げるためには2つの撮像領域を離した状態に設定しなければならず、2つの撮像領域を連続させた広い領域を監視することができなくなり死角を回避することは難しい。また、このように監視領域を拡大しても、撮像素子の画素数の制限によって解像度を高くすることはできず、鮮明な画像を得ることが難しいことは特許文献1と同じである。
【0006】
本発明の目的は、異なる領域を撮像した複数の画像を連続した状態で表示するとともに、監視する対象物を拡大して表示することが可能な車両用外部監視装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用外部監視装置は、同一の撮像素子の撮像面にそれぞれ異なる倍率で光学像を結像する複数の結像光学系を備える撮像装置と、各結像光学系で撮像した画像を合成してモニターに表示する画像制御手段とを備えており、
撮像装置は車両の外部の後方から側方を撮像するように構成され、焦点距離の長い第1結像光学系で車幅方向内側領域を撮像し、焦点距離の短い第2結像光学系で車幅方向外側領域を撮像し、画像制御手段は各結像光学系で撮像した画像を並べて合成してモニターに表示させる。ここで、画像制御手段は、2つの画像の共通画像を検出し、1つの画像の共通画像を残し、他の画像の共通画像を削除して両画像を合成することが好ましい。ここで、両画像が連続する形態は、両画像間に撮像されない領域が存在しないようにすることであり、両画像に共通する画像が重複した画像として合成される場合も含まれるものである。
【0008】
本発明において、画像制御手段は、複数の画像を左右方向または上下方向に並べかつ連続した状態に合成してモニターに表示する。この場合、画像制御手段は、複数の画像のうち少なくとも1つの画像を画像処理して他の画像と合成するようにしてもよい。例えば、画像制御手段は、少なくとも1つの画像を拡大または縮小処理する。
【0009】
本発明の好ましい形態
は、撮像装置は車両の左右にそれぞれ配設され、モニターは左右の撮像装置で撮像された画像をそれぞれ個別に表示する2つのモニターあるいは両画像を合一表示する1つのモニターで構成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の光学系で撮像した画像の撮像領域、例えば画像が重複する領域を検出し、この重複した領域に基づいて合成した画像をモニターに表示することで、自車両の外部に存在する他車両等の対象物を拡大して撮像することによって当該対象物を正確に認識し、また、自車両の外部の広い領域にわたって死角が生じることを回避し、これによる自車両の周囲の対象物を監視して安全走行を確保することが可能になる。
【0011】
本発明において、車両の外部の後方から側方を撮像してモニターに表示する外部監視装置として構成された場合、焦点距離の長い第1結像光学系で車幅方向内側領域を撮像し、焦点距離の短い第2結像光学系で車幅方向外側領域を撮像し、画像制御手段は各結像光学系で撮像した画像を左右に並べて合成してモニターに表示させる構成とすることで、自車両の後続車や後方車を拡大して正確に監視することができ、かつ自車両の側方の広い領域に存在する並走車や対向車を死角を生じることなく確実に監視することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明を自動車に設けられる左右のサイドミラーに代えて、自動車の左右の後方ないし側方領域(以降においては後側方領域と称する)を撮像し、撮像した画像をモニターに表示する外部監視装置として構成した実施形態の概略図である。自動車CARの左右のフロントフェンダには左サイドターンシグナルランプL−TSLと右サイドターンシグナルランプR−TSLが配設されている。これらのサイドターンシグナルランプL−TSL,R−TSLは、運転席等からのターン信号を受けて点灯状態とされたときに点滅して自動車の進行方向を表示するものである。これらのサイドターンシグナルランプはハザードランプとしても使用される。
【0014】
前記各サイドターンシグナルランプL−TSL,R−TSLのランプハウジング内には小型のカメラモジュール1L,1Rが組み込まれており、このカメラモジュール1L,1Rにより、
図1に符号θL,θRで示す当該自動車CARの後側方領域を撮像することが可能とされている。ここでは、自動車の右側のサイドターンシグナルランプR−TSLに組み込んだ右カメラモジュール1Rは当該自動車CARの右側の後側方角度領域θRを撮像し、左側のサイドターンシグナルランプL−TSLに組み込んだ左カメラモジュール1Lは当該自動車CARの左側の後側方角度領域θLを撮像する。
【0015】
前記自動車CARの車室内のダッシュボードにはモニターが配設されており、前記左右のカメラモジュール1R.1Lで撮像した画像を表示するようになっている。ここでは、ダッシュボードの運転席に対面する位置に右モニター3Rと左モニターが3L左右に並んで配設されている。そして、前記左右のモニター3L,3Rによる表示を行うために、前記自動車CARには画像制御手段としての画像ECU(電子制御ユニット)2が装備されており、前記左右のカメラモジュール1L,1Rで撮像した画像をこの画像ECU2において画像処理し、左右のモニター3L,3Rに表示する。
【0016】
この実施形態では、右カメラモジュール1Rで撮像した画像を右モニター3Rに表示し、左カメラモジュール1Lで撮像した画像を左モニター3Lに表示する。この表示の形態については後述するが、これにより運転者は左右のモニター3L,3Rの画像を観察することで、従来の左右のサイドミラーにより自動車の後側方を監視する場合と同様に監視が可能になる。したがって、この自動車CARにはサイドミラーは備えられていない。
【0017】
図2は前記自動車CARの左側のサイドターンシグナルランプL−TSLの一部を破断した斜視図である。この左サイドターンシグナルランプL−TSLは、自動車CARの車体BD、ここでは左フロントフェンダに固定されるベース41と、このベース41の内面となる面を覆うように被せられて当該ベース41に固定されるドーム状の透光カバー42とでランプハウジング4が構成されている。このランプハウジング4内の前記ベース41の内面には光源40としてバルブ(小型電球)あるいはLED(発光ダイオード)が搭載されている。ここではディスクリート型のLED40が搭載されている。また、前記ランプハウジング4内の自動車CARの後方側の位置には、撮像光軸を後方側に向けた左カメラモジュール1Lが内装され、前記ベース41の内面に支持されている。さらに、前記ランプハウジング4内には前記光源(LED)40から出射された光がカメラモジュール1Lにまで回り込んで撮像する画像にかぶりを生じさせないように遮光板43が内装されている。
【0018】
前記ランプハウジング4の透光カバー42は透光樹脂で形成されており、前記左カメラモジュール1Lの後方側の領域は光を屈折ないし拡散することがない透明なクリアー部として構成され、その他の領域は発光面として前記光源40から出射した光を所要の領域に向けて屈折ないし拡散するための光学ステップが形成されている。なお、この発光面は透光カバー42をアンバー色等に着色してもよい。前記右サイドターンシグナルランプR−TSLはこれと対称に構成されている。
【0019】
図3(a)は前記左カメラモジュール1Lの内部構造を説明する模式構成図である。カメラボディ11とレンズ鏡筒12とを有しており、カメラボディ11内に1個の撮像素子13が内装され、レンズ鏡筒12内にレンズ系14が内装されている。前記撮像素子13はCCD撮像素子あるいはCMOS撮像素子等の半導体撮像素子で構成されている。この撮像素子13は、詳細については説明を省略するが、多数の撮像画素がマトリクス状に配列された撮像面を有しており、前記レンズ系14により撮像面に結像された対象物の光学像を各撮像画素で受光することにより当該対象物を撮像するものである。前記撮像素子13の撮像面は所定の縦横寸法比率の横長の長方形に形成され、当該撮像面は前記レンズ鏡筒12の筒軸方向、すなわち前記レンズ系14の撮像光軸に対してほぼ垂直に向けられている。
【0020】
前記レンズ鏡筒12内のレンズ系14は、ここではそれぞれの撮像光軸(レンズ系の中心を通る光軸)Ot,Owが自動車CARの後方よりも若干車幅方向の外側に向けられた第1レンズ系14tと第2レンズ系14wとで構成されている。これら第1レンズ系14tと第2レンズ系14wは車幅方向に並んで配置され、それぞれは前記撮像素子13の撮像面の異なる領域に光学像を結像するように構成されている。ここでは第1レンズ系14tは第2レンズ系14wよりも自動車CARの車幅方向の内側、すなわち車体BDに近い側に配置され、第2レンズ系14wはその外側に配置されている。なお、図示している各レンズ系は、単一レンズ(単玉レンズ)もしくは複数のレンズを結合したレンズ群を意味している。
【0021】
そして、前記第1レンズ系14tで結像される光学像は、前記撮像素子13の撮像面の車幅方向内側のほぼ1/2の領域13tに結像されて撮像される。また、前記第2レンズ系14wで結像される光学像は、前記撮像素子13の撮像面の車幅方向外側のほぼ1/2の領域13wに結像されて撮像される。これにより前記撮像素子13は第1レンズ系14tと第2レンズ系14wによってそれぞれ結像された光学像を同時に撮像することが可能とされている。
【0022】
図3(b)は前記撮像素子13と第1および第2のレンズ系14t,14wの光学系を説明するための平面構成図である。前記第1レンズ系14tと第2レンズ系14wは基本的な構成はほぼ同じであるが、第1レン系14tの焦点距離は第2レンズ系14wの焦点距離よりも長く設計されている。したがって、以降においては第1レンズ系14tをテレ(望遠)レンズ系と称し、第2レンズ系14wをワイド(広角)レンズ系と称する。
【0023】
一般にレンズ系で撮像する際の撮像画角は、当該レンズ系の焦点距離と撮像面のサイズによって決定されるが、この実施形態では、撮像素子13の撮像面を左右に2分した領域13t,13wの左右方向の寸法がほぼ同じとされているので、テレレンズ系14tの撮像画角θtはワイドレンズ系14wの撮像画角θwよりも狭くなる。例えば、テレレンズ系14tの撮像画角θtは約30°、ワイドレンズ系14wの撮像画角θwは約70°とされている。なお、この実施形態では各レンズ系14t,14wの光軸Ot,Owをそれぞれの撮像面13t,13wの中心に対して車幅方向外側に偏位させているので、各レンズ系14t,14wの撮影画角θt,θwは車幅方向の内側よりも外側に角度が大きくされた画角とされている。
【0024】
また、テレレンズ系14tの焦点距離はワイドレンズ系14wの焦点距離よりも長いので、テレレンズ系14tの撮像倍率はワイドレンズ系14wのそれよりも大きくなる。さらに、テレレンズ系14tとワイドレンズ系14wの撮像面の領域13t,13wが左右方向に並んでいるので、テレレンズ系14tの撮影領域とワイドレンズ系14wの撮影領域は一部において重なることになる。また、これらテレレンズ系14tとワイドレンズ系14wを合わせたカメラモジュール1Lの全体の撮影画角は
図1に示した画角θLとなる。右カメラモジュール1Rについても同様である。
【0025】
図1に示した前記画像ECU2は、撮像素子13で撮像した画像を画像処理、例えば、拡大、縮小、歪み補正、トリミング、合成等の処理が可能である。ここで、拡大、縮小には画像の縦寸法と横寸法を独立して拡大、縮小すること、すなわち画像の縦横寸法比を変化させる処理をも含むものである。このような画像処理はソフト(プログラム)によって実現できるので、ここではそのソフトに関する具体的な説明は省略する。
【0026】
次に、この実施形態の外部監視装置によるモニター3R,3Lでの表示動作を説明する。
図4は自車両CARの後方に自車線を走行する後続車CAR1が存在し、左側車線に並走車CAR2と後方車CAR3が存在している状況において、自車両から左後方を見たときの状況を示している。この状況においては、左カメラモジュール1Lで撮像を行うと、撮像素子13においてはテレレンズ系14tでは符号ATで示す領域を撮像し、ワイドレンズ系14wでは符号AWで示す領域を撮像することになる。因みに、SMの領域は自動車に設けられていると仮定する左サイドミラーで視認することが可能な領域である。
【0027】
図5(a),(b)はテレレンズ系14tで領域ATを撮像した画像(以下、テレ画像ATと称する)と、ワイドレンズ系14wで領域AWを撮像した画像(以下、ワイド画像AWと称する)であり、それぞれモニター3Lに表示すべく左右が反転されている。テレ画像ATは自車両CARの後方領域の画像であり、左サイドミラーで視認する領域よりも狭いが、後続車CAR1と後方車CAR3が拡大した状態で撮像されている。ワイド画像AWは自車両CARの後側方の広い領域の画像であり、撮像領域は左サイドミラーで視認する領域よりも広い領域を撮像でき、後続車CAR1と並走車CAR2と後方車CAR3が全て撮像されている。
【0028】
画像ECU2はこれらの画像をそれぞれ取り込むと、テレ画像ATとワイド画像AWについてそれぞれ画像認識を行い、両画像が重複して撮像されている部分である重複部、すなわち両画像AT,AWに共に撮像されている共通画像を検出する。そして、この共通画像を一方の画像から削除する。ここでは、撮像画角が大きいワイド画像AWから共通画像を削除する。このとき、共通画像よりもさらに車幅方向の内側領域に撮像されている画像は、右カメラモジュール1Rによって撮像される可能性が大きいので当該共通画像と共に削除してもよい。また、共通画像については、その上下方向の全領域にわたって削除する。この例では、
図5(b)のワイド画像AWは破線で囲まれた領域を削除することになる。
【0029】
なお、実際にはテレレンズ系14tとワイドレンズ系14wの光軸と撮影画角は固定的に設定されており、両レンズ系で重なる撮像領域、すなわち本発明における重複部は予め分かるので、このような共通画像の検出と削除を行うことなく、最初から各レンズ系で撮像した画像のうち両レンズ系で重ならない画像のみを選択するようにしてもよい。
【0030】
そして、
図5(c)のように、ECU2はテレ画像ATと、共通画像を削除して得られたワイド画像AWとを左右方向に並べて左モニター3Lに表示する。この左モニター3Lでは、表示面のほぼ右半分領域にテレ画像ATを表示し、左半分領域にワイド画像AWを表示する。このとき表示されるワイド画像AWではテレ画像ATとの共通画像が削除されており、また両画像AT,AWは左右方向に並んで、しかも両画像が連続した状態で表示されているので、テレ画像ATとワイド画像AWとで自車両の後側方の広い領域を死角のない連続した状態で表示することができ、当該後側方領域の好適な監視が可能になる。
【0031】
また、この左モニター3Lでの表示では、通常のサイドミラーでは小さいサイズに視認される後続車CAR1や後方車CAR3はテレ画像ATにより倍率の高い画像として撮像され、かつ表示されるので、これら後続車CAR1や後方車CAR3を拡大された解像度の高い画像として観察することができ、正確な監視が可能になる。一方、通常のサイドミラーでは死角が生じる側方領域については、ワイド画像AWによって広角度の画像として表示されるので、自車両の隣に存在する並走車CAR2を観察し、死角が生じることなく監視することが可能になる。右カメラモジュール1Rと右モニター3Rについても同様であるが、左右方向はこれと反対になる。また、右モニター3Rでは、特に右側方領域に存在する対向車を監視することが可能である。
【0032】
ここで、前記実施形態でのモニターにおけるテレ画像とワイド画像の表示形態では、テレ画像とワイド画像の撮像倍率が相違しているため、監視者に違和感を生じさせることもある。そこで、例えばモニターを監視する者の操作によってテレ画像またはワイド画像の表示倍率を適宜調整するようにしてもよい。すなわち、ワイド画像について表示倍率を高くし、テレ画像の撮像倍率に近い大きさでワイド画像を表示するようにする。あるいは、テレ画像について表示倍率を小さくし、ワイド画像の撮像倍率に近い大きさに縮小してテレ画像を表示するようにする。
【0033】
このようにすることで、テレ画像とワイド画像の倍率の違いを緩和した状態でモニターに表示することができ、撮像倍率の違いが要因となる違和感を解消する。例えば、後続車を含む他車を大きな画像で正確に観察することが必要と考えたときには前者のようにワイド画像を拡大表示するようにする。また、自車両の後側方の広い範囲を観察することが必要と考えたときには後者のようにテレ画像を縮小表示するようにする。
【0034】
図6はカメラモジュールの変形例の模式構成図であり、
図3(b)と同様に左カメラモジュール1Lの例である。
図6(a)では、テレレンズ系14tは1つの主レンズL1の片側領域を利用した構成であり、ワイドレンズ系14wは当該主レンズL1の他の片側領域を利用し、これに副レンズL2を組み合わせた構成である。これにより、テレレンズ系14tの焦点距離をワイドレンズ系14wよりも長い構成とし、テレレンズ系14tの撮像倍率をワイドレンズ系14wよりも大きくし、反対にワイドレンズ系14wの撮像画角をテレレンズ系14tの撮像画角よりも大きくしている。
【0035】
図6(b)は
図6(a)の主レンズL1に組み合わせる副レンズL3として非球面レンズを用いている。この非球面レンズは、レンズ面の片側が両凸レンズであり、他の片側は片凸レンズとして構成されている。テレレンズ系14tでは副レンズL3の片凸レンズ領域を利用し、ワイドレンズ系14wでは副レンズL3の両凸レンズ領域を利用して構成したものである。これにより、テレレンズ系14tの焦点距離をワイドレンズ系14wよりも長い構成とし、テレレンズ系14tの撮像画角よりもワイドレンズ系14wの撮像画角を大きくしている。
【0036】
ところで、本発明にかかる車両外部監視装置のカメラモジュールは、自動車の後側方領域の自車両の周囲に存在する他車や歩行者等を監視するためのものであるので、上下方向の撮像画角よりも左右方向の撮像画角を広くとることが好ましい。
図7はこのような目的で構成された実施形態のカメラモジュール1Lの模式的な斜視図であり、撮像素子13の撮像面に対してテレレンズ系14tとワイドレンズ系14wを上下に配置するとともに、横長の長方形をした撮像素子13の撮像面に対し、テレレンズ系14tで結像される光学像は、当該撮像面の下側のほぼ1/2の領域13tにおいて撮像され、ワイドレンズ系14wで結像される光学像は、当該撮像面の上側のほぼ1/2の領域13wにおいて撮像されるように構成している。
【0037】
この構成では、
図8に示すような自車両の後側方の状況を撮像したときには、同図に鎖線で示すように、横長の偏平に近い領域AT,AWがそれぞれテレ画像、ワイド画像として撮像される。SMはサイドミラーによる視認領域である。これにより、テレレンズ系14tとワイドレンズ系14wの左右方向(水平方向)の撮像画角を拡大し、自動車の後方から側方の極めて広い領域を撮像することが可能になる。
【0038】
すなわち、
図9(a)はワイドレンズ系14wで撮像したワイド画像AWであり、
図9(b)はテレレンズ系14tで撮像したテレ画像ATであり、いずれもモニターに表示するために左右反転したものである。ワイド画像AWはサイドミラーの視認領域SMよりも格段に広い領域を撮像でき、テレ画像ATはサイドミラーの視認領域SMを含む領域を拡大した画像として撮像できる。したがって、これらワイド画像ATとテレ画像Aを画像ECU2において前記実施形態の場合と同様にして合成し、かつこれを左モニター3Lに表示することで、
図9(c)のように、自車両の左側の後側方の広い領域を表示することができる。ただし、この場合、モニターの左右方向の寸法の関係から、テレ画像ATとワイド画像AWをそれぞれ左右方向に縮小している。そのため、表示された画像中の他車は変形された状態で表示されることになるが、表示倍率や表示領域はそのまま維持されるので、自車両の後側方の広い領域を死角のない連続した状態で表示することができ、後側方領域の好適な監視が可能になる。
【0039】
このようにテレレンズ系14tとワイドレンズ系14wを上下に配置した場合でも、テレレンズ系14tとワイドレンズ系14wの焦点距離を相違させ、これにより各レンズ系での撮像画角および撮像倍率を相違させることが可能であれば、各レンズ系は図に示したと同様なレンズ構成とすることが可能である。
【0040】
前記実施形態のカメラモジュール1Lでは、レンズ鏡筒12を自動車の後方に向けると、カメラボディ11内の撮像素子13は撮像面が自動車の後方に向けられることになる。そのため、
図2に示したようにカメラモジュール1Lを内装するランプハウジング4の車幅方向を向く高さ寸法は、カメラモジュール1Lの左右方向の寸法、すなわち撮像素子13の左右方向の寸法よりも大きくする必要がある。このランプハウジング4の高さ寸法を低減するために、次の実施形態のカメラモジュールは、撮像素子の撮像面はレンズ鏡筒の筒軸に対してほぼ平行に向けられた構成とされている。
【0041】
図10はこのようにしたカメラモジュール1Lの模式的な斜視図である。テレレンズ系14tとワイドレンズ系14wは各光軸Ot,Owが自動車のほぼ前後方向に向けられているが、撮像素子13は撮像面13t,13wが自動車の車幅方向に向けられている。そして、テレレンズ系14tとワイドレンズ系14wの各光軸Ot,Ow上にそれぞれ光反射用のミラー15t,15wを配設し、このミラー15t,15wによって各レンズ系14t,14wの撮像光軸をほぼ直角に曲げている。
【0042】
この構成とすることにより、カメラモジュールを自動車に搭載したときには撮像素子13は撮像面が自動車の前後方向に沿って配置されるため、車幅方向の寸法を低減した薄型のカメラモジュール1Lとなる。したがって、
図2に示したように、カメラモジュール1Lを内装するサイドターンシグナルランプL−TSLのランプハウジング4の高さ寸法を低減し、当該サイドターンシグナルランプL−TSLの薄型化を図って自動車の車体の側面から突出する寸法を低減することができる。
【0043】
図11は
図10に示したカメラモジュールの変形例の光学系の構成図である。
図11(a)は、前記各レンズ系14t,14wにそれぞれ配設した各ミラー15t,15wの反射面の角度位置をテレレンズ系14tとワイドレンズ系14wとで相違させることにより、テレレンズ系14tとワイドレンズ系14wの光軸Ot,Owの方向を相違させている。すなわち、テレレンズ系に設けたミラー15tの車幅方向に対する角度位置をテレレンズ系14tに設けたミラー15tの角度位置よりも大きくすることにより、ワイドレンズ系14wの光軸Owを車幅方向の外側に向けている。
【0044】
これにより、撮像画角の大きなワイドレンズ系14wの撮像領域をさらに自動車の側方領域にまで広げることができる。また、テレレンズ系14tの撮像領域とワイドレンズ系14wの撮像領域の重なる領域を低減し、カメラモジュール全体としての撮像領域を格段に広げることができる。
【0045】
図11(b)はテレレンズ系14tに配設したミラーを直角プリズム16tに置き換え、この直角プリズム16tの斜面を反射面として構成したものである。この構成においてもミラー15wと直角プリズム16tの反射面の角度位置を適宜に調整することで、テレレンズ系14tとワイドレンズ系14wの撮像光軸Ot,Owの方向を相違させている。
【0046】
このように撮像素子13の撮像面を自動車の車幅方向に向けたカメラモジュールの場合でも、撮像面を上下に分割してテレレンズ系とワイドレンズ系で結像される光学像を撮像してもよい。この場合にはテレレンズ系とワイドレンズ系を上下方向に配設することになる。
【0047】
以上の実施形態では、自動車の車体の左右面に配設して当該自動車の左右の後方から側方の領域を撮像するカメラモジュールとして構成した例を示したが、自動車の車体後部に配設し、当該自動車の後方を左右に広い領域にわたって撮像する撮像装置として構成してもよい。この場合には、真後ろの領域を焦点距離の長いテレレンズ系で撮像し、後方の左右に広い領域を焦点距離の短いワイドレンズ系で撮像する。これにより、自車両の真後ろを走行する後続車を大きく撮像して追突防止等の監視が可能になり、自車両の片側または両側を走行する車両を死角を生じることなく確実に監視することが可能になる。
【0048】
前記実施形態では、第1レンズ系(テレレンズ系)と第2レンズ系(ワイドレンズ系)で撮像した各画像を左右方向に連続して合成する例を示したが、監視する外部の状況によっては第1レンズ系と第2レンズ系で上下の異なる領域を撮像してもよく、この場合には画像制御手段は各画像を上下方向に連続して合成してモニターに表示するようにしてもよい。
【0049】
本発明の外部監視装置を構成する撮像装置の結像光学系は実施形態に記載の単一レンズあるいはレンズ群からなるレンズ系に限られるものではなく、結像機能を有する反射鏡やその他の前記したミラーやプリズム等の光学素子を用いた光学系であってもよい。また、結像光学系は実施形態のような2つに限られるものではなく、3つ以上であってもよい。この場合には3つの画像を全て合成して、あるいはいずれか2以上の画像を選択して合成してモニターに表示することが可能である。さらに、複数の画像を連続した画像として合成する際には、必ずしも共通画像の全てを削除する必要はなく、モニターに表示される画像に違和感を生じない程度であれば、共通画像の一部は重複した状態で合成されてもよい。
【0050】
また、実施形態では1つの画像ECUにおいて左右のカメラモジュールで撮像した画像を左右のモニターに表示させているが、左右のモニターにそれぞれ独立した画像ECUを内蔵させ、左右のカメラモジュールで撮像したそれぞれの画像を各画像ECUにおいてそれぞれ独立して画像処理して各モニターに表示させるようにしてもよい。
【0051】
さらに、モニターを1つのモニターで構成し、当該モニターの表示面に左右のカメラモジュールで撮像した画像を並べて表示するようにしてもよい。