(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
再生可能エネルギに基づいて電力を供給する発電設備であって、気象条件によって発電する電力の値が変動する再生可能エネルギ発電設備から調達する電力値と、他の発電設備から調達する電力値との比率を定める電力管理装置であって、
前記再生可能エネルギ発電設備から調達する電力値の比率の関数であって、
前記再生可能エネルギ発電設備から調達する電力値に第1価格係数を乗じた値、および、前記他の発電設備から調達する電力値に第2価格係数を乗じた値の和の関数である調達関数と、
前記再生可能エネルギ発電設備から調達する予め計画された電力値から、前記再生可能エネルギ発電設備から調達した実際の電力値を引いた差の電力値に第3価格係数を乗じた関数であるインバランス関数と、
に基づいて、前記再生可能エネルギ発電設備から調達する電力値の比率を求める演算部と、
前記再生可能エネルギ発電設備から調達する電力値を前記再生可能エネルギ発電設備に通知し、前記他の発電設備から調達する電力値を前記他の発電設備に通知する出力部と、
前記第3価格係数または前記インバランス関数を補正する補正係数を入力する入力部と、
前記補正係数が記憶される記憶部と、
が設けられ、
前記演算部は、前記補正係数により補正された前記第3価格係数を用いた前記インバランス関数、または、前記補正係数により補正されたインバランス関数に基づき、前記再生可能エネルギ発電設備から調達する電力値の比率を求めることを特徴とする電力管理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の環境保護意識の高まりにより、再生可能エネルギを用いた発電の促進が政策により図られている。例えば、再生可能エネルギを用いた発電に対して固定買い取り制度を設ける等により、再生可能エネルギに基づく電力(「グリーンパワー」とも表記する。)の普及が図られている。
【0005】
このような再生可能エネルギに基づく電力を利用することにより、安価に電力の調達を図ることも可能となる。例えば、太陽光発電により供給される電力を用いることにより、従来の電力会社から供給される電力や、特定規模電力事業者から供給される電力を用いる場合と比較して、安価に電力の調達を図ることができる。
【0006】
しかしながら、太陽光発電により供給される電力は、天候によって供給可能な電力量が大きく変動することが知られている。例えば、太陽光発電により供給される電力が急減した場合、従来の電力会社等から不足する電力を調達することになる。このように電力を調達する場合、電力会社等にペナルティ(割増料金)を支払う必要があり、安価な電力調達に反して調達費用が嵩むおそれがあった。
【0007】
特許文献1に記載されているように、天候の情報や発電機の情報に基づいて、発電可能な電力量を予測することにより、上述のようなペナルティの発生を予防する種々の方法も提案されている。しかしながら、ペナルティを支払う可能性は依然として存在しており、太陽光発電により供給される電力の利用には困難が伴うという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、ペナルティ支払いの可能性がある再生可能エネルギに基づく電力の利用を容易とする電力管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の電力管理装置は、再生可能エネルギに基づいて電力を供給する発電設備であって、気象条件によって発電する電力の値が変動する再生可能エネルギ発電設備から調達する電力値と、他の発電設備から調達する電力値との比率を定める電力管理装置であって、前記再生可能エネルギ発電設備から調達する電力値の比率の関数であって、前記再生可能エネルギ発電設備から調達する電力値に第1価格係数を乗じた値、および、前記他の発電設備から調達する電力値に第2価格係数を乗じた値の和の関数である調達関数と、前記再生可能エネルギ発電設備から調達する予め計画された電力値から、前記再生可能エネルギ発電設備から調達した実際の電力値を引いた差の電力値に第3価格係数を乗じた関数であるインバランス関数と、に基づいて、前記再生可能エネルギ発電設備から調達する電力値の比率を求める演算部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の電力管理装置によれば、調達関数とインバランス関数とに基づいて再生可能エネルギ発電設備から調達する電力値の比率を求めるため、電力を調達する際の総合的なコストの抑制を図りやすくなる。
【0011】
一般的に、第1価格係数は、再生可能エネルギ発電設備を推進する政策上の理由などから、第2価格係数よりも値が小さく設定されている。また、第3価格係数は、当日に調達される電力に係る係数であるため、第1価格係数、第2価格係数よりも値が大きい。そのため、再生可能エネルギ発電設備から調達する電力の比率を増やすことにより、電力を調達する際のコストを抑えることができる。しかしながら、再生可能エネルギ発電設備は計画通りに発電を行えず、発電する電力値が計画の値を下回る場合がある。この場合には、不足する電力を当日に調達することとなり、結果として電力を調達する際のコストが増大するおそれがある。
【0012】
そこで、調達関数およびインバランス関数に基づくことにより、再生可能エネルギ発電設備における発電電力が計画値を下回る場合も考慮した再生可能エネルギ発電設備から調達する電力値の比率を求めることが可能となり、電力を調達する際の総合的なコストの抑制を図りやすくなる。
【0013】
上記発明においては、前記第1価格係数、前記第2価格係数、および前記第3価格係数が記憶される記憶部と、外部から前記第1価格係数、前記第2価格係数、および前記第3価格係数の少なくとも1つを取得する取得部と、が更に設けられ、前記記憶部に記憶された前記第1価格係数、前記第2価格係数、および前記第3価格係数の少なくとも1つは、前記取得部から前記第1価格係数、前記第2価格係数、および前記第3価格係数の少なくとも1つと置き換えられることが好ましい。
【0014】
このように取得部を設けて第1価格係数、第2価格係数、および第3価格係数の少なくとも1つを外部から取得することにより、第1価格係数、第2価格係数、および第3価格係数の少なくとも1つが変動する場合であっても対応することができる。
【0015】
上記発明において前記記憶部には、前記第3価格係数または前記インバランス関数を補正する補正係数が更に記憶され、前記演算部は、前記補正係数により補正された前記第3価格係数を用いた前記インバランス関数、または、前記補正係数により補正されたインバランス関数に基づき、前記再生可能エネルギ発電設備から調達する電力値の比率を求めることが好ましい。
【0016】
このように第3価格係数またはインバランス関数を補正係数により補正することにより、インバランス関数を修正することが可能となる。言い換えると、インバランスリスク回避の程度を調節することができる。
【0017】
上記発明においては、前記補正係数を入力する入力部が更に設けられていることが好ましい。
このように入力部から補正係数を入力することにより、例えば、再生可能エネルギ発電設備から調達する電力値の比率を管理する管理者が、所望の補正係数を入力することができる。言い換えると、管理者の意図を反映した補正係数を入力することができ、例えば、インバランスリスクを承知の上で再生可能エネルギの比率を高めることを意図した補正係数、または、インバランスリスクをできる限り避けることを意図した補正係数を入力することができる。
【0018】
上記発明において前記補正係数は、前記再生可能エネルギ発電設備が発電する電力値のばらつきに関する確率分布に基づいて定まる係数であることが好ましい。
このように再生可能エネルギ発電設備が発電する電力値のばらつきに関する確率分布に基づいて定まる補正係数を用いることにより、再生可能エネルギ発電設備に応じたインバランスリスクの回避が可能となり、電力を調達する際の総合的なコストの抑制をさらに図りやすくなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電力管理装置によれば、調達関数とインバランス関数とに基づいて再生可能エネルギ発電設備から調達する電力値の比率を求めるため、ペナルティ支払いの可能性がある再生可能エネルギに基づく電力の利用を容易とすることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の一実施形態に係る電力管理装置について、
図1から
図4を参照しながら説明する。
本実施形態では、再生可能エネルギに基づいて電力を供給する再生可能エネルギ発電設備が太陽光発電設備30であり、他の発電設備が電力会社50であり、電力管理装置1は、負荷設備40が太陽光発電設備30から調達する電力量の比率を求めるとともに、調達する電力量を管理するものである例に適用して説明する。
【0022】
なお、再生可能エネルギに基づいて電力を供給する発電設備は、上述のように太陽光発電設備30であってもよいし、風力発電設備であってもよいし、気象条件によって発電する電力が変動する発電設備であればよく、その種類を特に限定するものではない。また、他の発電設備は、上述のように電力会社50であってもよいし、特定規模電気事業者であってもよく、特に限定するものではない。
【0023】
電力管理装置1は、
図1に示すように、負荷設備40が太陽光発電設備30から調達する電力量と、電力会社50から調達する電力量との比率を求めるものであり、太陽光発電設備30から調達する電力量および電力会社50から調達する電力量を管理するものである。
【0024】
電力管理装置1は、CPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、ハードディスク、入出力インタフェース等を有するコンピュータシステムである。ROM等に記憶されている制御プログラムは、CPUを演算部11として機能させるものであり、入出力インタフェース等を取得部12、出力部13および入力部14として機能させるものであり、ハードディスク等を記憶部15として機能させるものである。
【0025】
取得部12は、電力市場(外部)55のサーバから電力の売買価格に関する情報を取得するものである。取得部12により取得される電力の売買各に関する情報としては、単位電力量当たりの買電価格である、第1価格係数C1、第2価格係数C2、第3価格係数C3を例示することができる。
【0026】
ここで、第1価格係数C1は、太陽光発電設備30から電力を調達する際に用いられる単位電力量当たりの買電価格である。第2価格係数C2は、予め立てられた需給計画に基づいて電力会社50から電力を調達する際に用いられる単位電力量当たりの買電価格である。
【0027】
第3価格係数C3は、電力会社50から電力を調達する際に用いられる単位電力量当たりの買電価格であり、例えば、需給計画に基づいて太陽光発電設備30から調達する予定であった電力量から、実際に太陽光発電設備30から調達した電力量の差である不足電力量を補うために、電力会社50から電力を調達する際に用いられる単位電力量当たりの買電価格である。
【0028】
さらに、取得部12は、インターネット等の情報通信網2を介して気象サーバ20から気象条件に関する気象情報を取得するものである。取得部12により取得される気象情報としては、太陽光発電設備30が設置位置を含む地域についての天気予報文字データや、GPVデータ(Grid Point Value データ)や、衛星画像や、天空画像などを例示することができる。
【0029】
記憶部15は、取得部12により取得された第1価格係数C1、第2価格係数C2、および第3価格係数C3を記憶するものである。なお、本実施形態では、第1価格係数C1、第2価格係数C2、および第3価格係数C3は、取得部12により取得されて記憶部15に記憶される例に適用して説明するが、第1価格係数C1、第2価格係数C2、および第3価格係数C3の少なくとも1つが取得部12により取得されて記憶部15に記憶され、残りの係数は予め記憶部15に記憶されていてもよく、特に限定するものではない。
【0030】
また、記憶部15に記憶されている第1価格係数C1、第2価格係数C2、および第3価格係数C3は、取得部12により定期的に取得された第1価格係数C1、第2価格係数C2、および第3価格係数C3によって繰り返し更新されてもよい。
【0031】
さらに記憶部15は、所定の気象情報において太陽光発電設備30が発電する電力量を表す設備情報のデータベース、および、所定の気象条件において太陽光発電設備30が発電する電力値の確率を表す発電情報のデータベースが記憶されるものでもある。
【0032】
設備情報は、例えば所定の日射量が得られた場合に太陽光発電設備30が発電する発電量と当該日射量との対応関係を示す情報であり、太陽光発電設備30ごとに固有な情報である。発電情報は、例えば同一の日射量が得られた場合であっても、太陽光発電設備30に生じる発電量のばらつきを表すものであり、ばらついたそれぞれの発電量が出現する確率を示す情報である。発電情報は、予め推定されたものを用いてもよいし、太陽光発電設備30を運用することにより蓄積される発電実績に基づいて逐次更新されるものであってもよい。
【0033】
入力部14は、電力管理装置1の管理者が、所望の補正係数を入力するものである。補正係数は、第3価格係数、または後述するインバランス関数を補正する係数であり、負荷設備40が太陽光発電設備30から調達する電力量の比率を調整するものである。
【0034】
演算部11は、太陽光発電設備30から調達する電力量の比率である再生エネルギ比率RLを求めるものである。再生エネルギ比率RLを求める演算処理の詳細な内容については後述する。
【0035】
出力部13は、太陽光発電設備30に対して調達する電力量である電力量P1を通知し、電力会社50へ調達する電力量である電力量P2を通知するものである。出力部13はインターネット等の情報通信網を介して太陽光発電設備30および電力会社50に接続されていてもよいし、専用回線を介して接続されていてもよく、特に制御信号を伝達する伝達手段の形式を限定するものではない。
【0036】
次に、上記の構成からなる電力管理装置1における電力量の管理方法について
図2から
図4を参照しながら説明する。
まず、電力管理装置1は取得部12を用いて気象サーバ20から、数値気象モデル、衛星画像、および天空画像を取得する。数値気象モデルは、天気予報文字データおよびGPVデータを含むものである。さらに取得部12は、太陽光発電設備30に設置されている日射量を測定する日射センサから日射データを取得する。
【0037】
演算部11は、
図2に示すように間接予測、または、直接予測により太陽光発電設備30により発電される発電量を予測する演算を行う。まず、間接予測による演算について説明する。演算部11は、取得した数値気象モデル、衛星画像、天空画像および日射データと、推定変換モデルCM1と、に基づいて、今後の日射を予測する演算を行う。
【0038】
その後、演算部11は、記憶部15から設備情報および発電情報を取得し、取得した設備情報および発電情報と、求められた日射予測と、推定変換モデルCM2と、に基づいて太陽光発電設備30により発電される発電量の予測を行う。
【0039】
直接予測による演算の場合、演算部11は、今後の日射予測を算出することなく、直接、太陽光発電設備30により発電される発電量の予測を行う。具体的には、取得した数値気象モデル、衛星画像、天空画像および日射データと、推定変換モデルCM1と、設備情報および発電情報と、推定変換モデルCM2と、に基づいて太陽光発電設備30により発電される発電量の予測を行う。
【0040】
次に、演算部11により予測される発電量について
図3を参照しながら説明する。
図3は横軸が時間の経過を示し、縦軸が太陽光発電設備30による発電された電力値、または、太陽光発電設備30から調達される電力値を示している。そのため、電力量は
図3において面積として示される。
【0041】
演算部11が、数値気象モデル、衛星画像、天空画像および日射データや、設備情報などに基づいて推定する太陽光発電設備30により発電される電力値の予測値は、例えば、
図3の曲線FCで示すようになる。また、太陽光発電設備30が発電できる電力値の理論的な最大値は、例えば、
図3の曲線MXで示すようになる。
【0042】
演算部11が、数値気象モデル、衛星画像、天空画像および日射データや、発電情報などに基づいて算出する太陽光発電設備30により発電される電力値のバラツキの範囲は、例えば、
図3の領域VBで示すようになる。領域VBの上限は上述の曲線MXであり、下限は曲線MNである。曲線MNは、例えば、電力値のバラツキの範囲において最も値が低い電力値を示すものである。
【0043】
領域VBは、言い換えると、太陽光発電設備30により発電される電力値が出現する確率分布を示すものでもある。確率分布は、予測値である曲線FCの近傍に係る電力値の出現確率が最も高く、曲線FCから
図3の上方向や下方向に離れるに伴い、その位置に係る電力値の出現確率が低下する分布となっている。
【0044】
その一方で、
図3の横軸と曲線MNとに挟まれる領域RBは、太陽光発電設備30により発電される電力値のバラツキの影響を受ける可能性が低いことを示す領域であり、領域RBに含まれる電力値を供給できる信頼度が、所定の信頼度よりも高いことを示す領域である。また、領域VBは、電力値を供給できる信頼度が、所定の信頼度以下であることを示す領域である。なお所定の信頼度は、予め定められた値であってもよいし、太陽光発電設備30の運用実績に基づいて値を新たに設定するものであってもよく、その数値を特に限定するものではない。
【0045】
演算部11は、上述のように説明した発電量の予測に基づいて、負荷設備40が太陽光発電設備30から調達する電力量P1の計画を作成する。具体的には、
図3に示すように、太陽光発電設備30において発電が行われる期間を均等な長さの複数の期間に分割して、それぞれの期間において調達する電力量P1を求める例に適用して説明する。複数の期間の長さとしては、30分などの分単位で区切られる長さであってもよいし、1時間などの時間単位で区切られる長さであってもよい。
【0046】
演算部11は更に、負荷設備40が要求する電力量の総量、および太陽光発電設備30から調達する電力量P1の計画に基づいて、電力会社50から調達する電力量P2の計画を作成する。電力量P1の計画および電力量P2の計画を含めて需給計画とも表記する。
【0047】
なお、太陽光発電設備30から調達する電力量P1は、気象条件などの変化が要因となって実際に調達される電力量P1と計画の電力量P1との間に差PDが、当日になって発生する場合がある。この場合、電力管理装置1は、差PDに相当する電力を電力会社50から負荷設備40に供給する制御を行うことになる。
【0048】
演算部11は、太陽光発電設備30から調達する電力量の比率(以下「再生エネルギ比率」とも表記する。)の関数であり、電力調達のコストを求める調達関数およびインバランス関数に基づいて、電力調達のコストを低減する再生エネルギ比率を定める演算処理を行う。
【0049】
ここで、調達関数は、太陽光発電設備30から調達する電力量P1に第1価格係数C1を乗じた値と、電力会社50から調達する電力量P2に第2価格係数C2を乗じた値の和で表される関数である。インバランス関数は、差PDに第3価格係数C3を乗じて表される関数である。
【0050】
調達関数により求められる電力の調達コストは、
図4(a)における曲線L1で示すように、太陽光発電設備30から調達する電力量P1の比率(再生エネルギ比率)が高くなるに伴い低くなる。
【0051】
その一方で、インバランス関数により求められるインバランスリスクのコストは、曲線L2で示すように、再生エネルギ比率が高くなるに伴い高くなる。このように、再生エネルギ比率を高めることは、太陽光発電設備30から調達する電力量P1が増大することを意味する。電力量P1が増大すると、
図3に示すように、増大した電力量P1が調達される信頼度が低下して差PDが発生する確率、言い換えるとインバランスリスクが発生する確率が高くなる。
【0052】
演算部11は、調達関数により求められる電力の調達コスト、および、インバランス関数により求められるインバランスリスクのコストの和である総合コスト(
図4(a)の曲線L3)が最も低くなる再生エネルギ比率RLを求める演算処理を行う。
【0053】
また、入力部14から補正係数が入力されている場合には、演算部11は、補正係数を考慮したインバランス関数を用いて総合コストが最も低くなる再生エネルギ比率RLを求める演算処理を行う。補正係数を考慮したインバランス関数としては、第3価格係数C3に補正係数を乗じた係数を用いたものや、第3価格係数C3から補正係数を減算した係数を用いたものや、差PDに第3価格係数C3を乗じた後に補正係数を減算したものを例示することができる。
【0054】
補正係数を考慮したインバランス関数により求められるインバランスリスクのコストは、例えば、
図4(b)の曲線L2に示すように、コストが低くなるように移動する。すると、調達関数により求められる電力の調達コスト、および、インバランス関数により求められるインバランスリスクのコストの和である総合コストも、
図4(b)の曲線L3に示すように移動する。その結果、総合コストが最も低くなる再生エネルギ比率RLは、太陽光発電設備30から調達する電力量P1の比率が高くなる方向(
図4(b)の右方向)へ移動する。
【0055】
上述では、再生エネルギ比率RLの値が大きくなる補正係数が入力された例に適用して説明したが、逆に、再生エネルギ比率RLの値が小さくなる補正係数を入力することも可能である。この場合、インバランスリスクのコスト(曲線L2)はコストが高くなる方向に移動し、総合コスト(曲線L2)もコストが高くなる方向に移動する。
【0056】
再生エネルギ比率RLが求められると、演算部11は、出力部13を介して太陽光発電設備30および電力会社50へ調達する電力量である電力量P1および電力量P2を、それぞれ出力する処理を行う。
【0057】
上記の構成の電力管理装置1によれば、調達関数とインバランス関数とに基づいて太陽光発電設備30から調達する電力量の比率を求めるため、電力を調達する際の総合的なコストの抑制を図りやすくなる。
【0058】
一般的に、第1価格係数C1は、太陽光発電設備30を推進する政策上の理由などから、第2価格係数C2よりも値が小さく設定されている。また、第3価格係数C3は、当日に調達される電力に係る係数であるため、第1価格係数C1、第2価格係数C2よりも値が大きい。そのため、太陽光発電設備30から調達する電力量の比率を増やすことにより、電力を調達する際のコストを抑えることができる。しかしながら、太陽光発電設備30は計画通りに発電を行えず、発電する電力量が計画の値を下回る場合がある。この場合には、不足する電力を当日に調達することとなり、結果として電力を調達する際のコストが増大するおそれがある。
【0059】
そこで、調達関数およびインバランス関数に基づくことにより、太陽光発電設備30における発電電力が計画値を下回る場合も考慮した太陽光発電設備30から調達する電力量の比率を求めることが可能となる。その結果、電力を調達する際の総合的なコストの抑制を図りやすくなり、ペナルティ支払いの可能性がある太陽光発電設備30に基づく電力の利用を容易とすることができる。
【0060】
取得部12を設けて第1価格係数C1、第2価格係数C2、および第3価格係数C3を電力市場55から取得することにより、第1価格係数C1、第2価格係数C2、および第3価格係数C3が変動する場合であっても対応することができる。
【0061】
第3価格係数C3またはインバランス関数を補正係数により補正することにより、インバランス関数を修正することが可能となる。言い換えると、インバランスリスク回避の程度を調節することができる。
【0062】
入力部14から補正係数を入力することにより、例えば、太陽光発電設備30から調達する電力量の比率を管理する管理者が、所望の補正係数を入力することができる。言い換えると、管理者の意図を反映した補正係数を入力することができ、例えば、インバランスリスクを承知の上で太陽光発電設備30から調達する電力量の比率を高めることを意図した補正係数、または、インバランスリスクをできる限り避けることを意図した補正係数を入力することができる。
【0063】
太陽光発電設備30が発電する電力量のばらつきに関する確率分布に基づいて定まる補正係数を用いることにより、太陽光発電設備30に応じたインバランスリスクの回避が可能となり、電力を調達する際の総合的なコストの抑制をさらに図りやすくなる。
【0064】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記の実施の形態においては、電力管理装置1と負荷設備40とが別々に設置され、かつ、情報通信網2などを介して接続されている例に適用して説明したが、電力管理装置1と負荷設備40とが別々に設置されているものに限られることなく、両者が一体に設置されているものにも適用することができる。