(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記DC/DCコンバータから前記各ブロックのバッテリに至る、前記各ブロック共通の充電経路に、当該充電経路を介して前記各ブロックのバッテリに流れる充電電流を遮断するための充電電流遮断部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリパック。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
本実施形態のバッテリパック2は、例えば、使用者が手に持って使用する電動工具や電動草刈機等の電動作業機に対し電源供給を行うためのものである。
【0023】
図1、2に示すように、バッテリパック2は、2つのブロック(第1ブロック10、第2ブロック20)に分けられたバッテリ12、22を、合成樹脂製のケース(筐体)4内に収納することにより構成されている。
【0024】
各バッテリ12、22は、電動工具に装着して使用されるバッテリに比べて大容量(例えば、6Ah)であり、重量も体積も大きいことから、ケース4は、使用者がベルトを使って背負うことができるようになっている。
【0025】
そして、ケース4の側壁(
図1では手前側)には、電源コード5を介して外部機器に電源供給(放電)するのを許可する主電源スイッチ(以下、メインSWという)6、及び、充電用アダプタから充電用の直流電圧を取り込むための充電用コネクタ7が設けられている。
【0026】
なお、充電用コネクタ7には、防水用のキャップが被されている。また、充電用コネクタ7に接続される充電用アダプタは、
図3に例示するように、ACプラグ8を介して商用電源から電源電圧(交流)を取り込み、所定の直流電圧に変換して出力するAC/DC変換器9にて構成される。
【0027】
次に、各ブロック10、20のバッテリ12、22は、
図4に示すように多数のセル30にて構成されており、ケース4内には、各ブロック10、20毎にセル30を固定した支持部材14、24を介して、固定されている。
【0028】
また、ケース4内には、これら各ブロック10、20のバッテリ12、22に加えて、各バッテリ12、22に対する充電及び放電を制御するための回路部品が実装された回路基板40が収納される。
【0029】
この回路基板40は、
図3,
図4に示す充放電用回路の共通基板であり、ケース4内には、各ブロック10、20のバッテリ12、22を覆うように、各ブロック10、20の支持部材14、24に固定されている。
【0030】
また、回路基板40のバッテリ12、22とは反対側には、所定の間隔を開けて放熱用のヒートシンク(図示せず)が配置される。そして、このヒートシンクは、回路基板40に実装されたFET等の発熱体が固定されて、発熱体からの熱を放熱する。
【0031】
次に、この回路基板40にて構成される充放電用回路について説明する。
図3に示すように、回路基板40には、充放電用回路として、上記各ブロック10、20のバッテリ12、22毎に設けられる充放電部16、26、DC/DCコンバータ42、自己溶断ヒューズ44、電源部46、及び、充放電制御部48が組み付けられている。
【0032】
充放電部16、26は、各ブロック10、20のバッテリ12、22に対する充電及び放電の切り替え、及び、バッテリ状態の監視を行うためのものであり、回路基板40上の配線パターンにて構成されるポートP1〜P6を介して、他の回路に接続される。
【0033】
ここで、ポートP1は、バッテリ12、22への充電電圧を入力するためのものであり、ポートP2は、電源コード5が接続される出力端子50へバッテリ電圧を出力するためのものであり、ポートP3は、ヒューズ88を介して回路基板40のグランドに接地するためのものである。
【0034】
また、ポートP4は、充放電制御部48との間で通信を行うためのものであり、ポートP5は、バッテリ12、22への充電経路を遮断する遮断信号を出力するためのものであり、ポートP6は、電源部46にバッテリ電圧を出力するためのものである。
【0035】
図4に示すように、各充放電部16、26において、バッテリ12、22の正極側は、充電スイッチとしてのFET(以下、充電FETという)52及び逆流防止ダイオード54を介して、ポートP1に接続されている。
【0036】
なお、逆流防止ダイオード54は、アノードがポートP1側、カソードがバッテリ12、22の正極側、となるように配置されることで、バッテリ12、22の正極からポートP1側に電流が流れるのを防止するためのものである。
【0037】
また、バッテリ12、22の正極側は、放電スイッチとしてのFET(以下、放電FETという)62、及び、逆流防止用のFET(以下、逆流防止FETという)64を介して、ポートP2に接続されている。
【0038】
逆流防止FET64は、寄生ダイオード65にて、ポートP2側からバッテリ12、22の正極側に電流が流れるのを防止するためのものである。
そして、寄生ダイオード65の両端(つまり、逆流防止FET64のドレイン、ソース)には、その両端電圧から寄生ダイオード65の順方向に放電電流が流れたことを検出して、逆流防止FET64をオンさせる放電検出部66が接続されている。
【0039】
なお、バッテリ12、22の正極側は、ポートP6にも接続されている。
また、各充放電部16、26には、充電FET52及び放電FET62のオン・オフ状態を切り替えるバッテリ制御部68、及び、バッテリ12、22への充電時に各セル30の電圧を監視して、過電圧になると充電を停止させる過電圧保護部70が備えられている。
【0040】
バッテリ制御部68は、ポートP4を介して充放電制御部48との間で通信を行い、充放電制御部48からの指令に従い充電FET52及び放電FET62をオン・オフさせる。
【0041】
また、バッテリ制御部68には、バッテリ12、22を構成する各セル30の両端電圧、バッテリ温度を検出する温度センサ72からの検出信号、バッテリ12、22の充放電経路に設けられた抵抗74の両端電圧(換言すれば充放電電流)が入力される。
【0042】
そして、バッテリ制御部68は、これら各入力データを、ポートP4を介して充放電制御部48に出力する。また、バッテリ制御部68は、バッテリ12、22への充電時や放電時に流れる充放電電流に基づき、バッテリ12、22の残容量を監視しており、その監視結果も、ポートP4を介して充放電制御部48に出力する。
【0043】
過電圧保護部70は、バッテリ12、22を構成する各セル30の両端電圧を取り込み、その電圧が通常よりも高い過電圧になると、バッテリ12、22への充電経路を遮断させるための遮断信号を、ポートP5から出力させる。
【0044】
なお、バッテリ制御部68及び過電圧保護部70は、上述した機能を有する集積回路(IC)にて構成されている。
次に、回路基板40において、DC/DCコンバータ42及び自己溶断ヒューズ44は、充電用コネクタ7から各充放電部16、26のポートP1に至る充電経路の内、各充放電部16、26共通の充電経路に設けられている。
【0045】
DC/DCコンバータ42は、充電用コネクタ7に接続された充電用アダプタ(AC/DC変換器9等)から供給される直流電圧(例えば、DC12V)を、バッテリ12、22を充電するのに必要な直流電圧(例えば、DC42V)に昇圧するためのものである。
【0046】
そして、DC/DCコンバータ42にて生成された直流電圧は、自己溶断ヒューズ44を介して、各充放電部16、26のポートP1へ、バッテリ12、22の充電電圧として入力される。
【0047】
次に、自己溶断ヒューズ44は、DC/DCコンバータ42から充放電部16、26への充電経路上に設けられるヒューズ部44aと、通電により発熱してヒューズ部44aを溶断させる発熱抵抗体44bとを備える。
【0048】
発熱抵抗体44bは、一端が充電経路に接続され、他端がNPNトランジスタからなるスイッチング素子82を介してグランドラインに接地されている。また、スイッチング素子82の制御端子(ベース)には、充放電部16、26のポートP5が接続されている。
【0049】
このため、各充放電部16、26(詳しくは過電圧保護部70)は、ポートP5から遮断信号(ハイレベル)を出力することで、スイッチング素子82をオンさせ、これにより自己溶断ヒューズ44を溶断させて、バッテリ12、22への充電経路を遮断することができる。
【0050】
次に、電源部46には、外部の充電用アダプタから充電用コネクタ7に入力された直流電圧、及び、充放電部16、26のポートP6から出力されるバッテリ電圧が、それぞれ、逆流防止用のダイオード84、85、86を介して入力される。
【0051】
そして、電源部46は、その入力された直流電圧から、充放電制御部48や充放電部16、26を駆動するための電源電圧(直流定電圧)を生成して、これら各部に供給する。
また、電源部46は、充電用コネクタ7に外部の充電用アダプタから直流電圧が入力されているとき(つまりバッテリ12、22への充電時)には、その直流電圧を利用して電源電圧を生成し、そうでなければ、充放電部16、26から供給されるバッテリ電圧を利用して電源電圧を生成する。
【0052】
次に、充放電制御部48は、MCU(Micro Control Unit)にて構成されており、充放電部16、18内のバッテリ制御部68を介して、各ブロック10、20毎にバッテリ12、22への充電及び放電を制御する。
【0053】
また、充放電制御部48は、バッテリ12、22への充電時には、DC/DCコンバータ42を動作させることで、充電用の高電圧を生成させる。
また、充放電制御部48及び各ブロック10、20のバッテリ制御部68は、消費電力を抑えるために、通常、スリープ状態になっている。
【0054】
そして、充放電制御部48は、充電用コネクタ7に外部の充電用アダプタから直流電圧が入力されたとき、若しくは、外部操作によってメインSW6がオフ状態からオン状態に切り替えられたときに起動(ウェイクアップ)し、充電制御処理若しくは放電制御処理を実行する。
【0055】
また、バッテリ制御部68は、充放電制御部48の起動後、充放電制御部48から送信される起動指令に従い起動する。
次に、充放電制御部48にて実行される充電制御処理及び放電制御処理について説明する。
【0056】
図5に示すように、充電用アダプタからの直流電圧の入力により充放電制御部48が起動すると、充電制御処理を実行する。
この充電制御処理では、まずS100にて、各ブロック10、20のバッテリ制御部68に起動指令を送信することにより、バッテリ制御部68を起動する。そして、続くS110では、各ブロック10、20のバッテリ制御部68から、バッテリ12、22の両端電圧(つまりバッテリ電圧)を取得し、S120に移行する。
【0057】
S120では、各バッテリ制御部68から取得したバッテリ電圧に基づき、最初に充電を開始すべきブロックを選択する。
つまり、本実施形態では、第1ブロック10のバッテリ12と、第2ブロック20のバッテリ22とを同時に充電するのではなく、これら各ブロック10、20のバッテリ12、22を交互に充電する。
【0058】
このため、S120では、2つのブロック10、20の内、例えば、バッテリ電圧が低い方を、充電ブロックとして選択する。
次に、S130では、S120にて充電ブロックとして選択したブロック(以下、選択ブロックという)10又は20のバッテリ制御部68に対し、充電FET52をオンさせる指令を送信することで、選択ブロック10又は20の充電FET52をオンさせる。
【0059】
また、続くS140では、DC/DCコンバータ42を動作させることで、DC/DCコンバータ42から充電電圧を出力させる。この結果、選択ブロックのバッテリ12又は22への充電が開始されることになる。
【0060】
なお、充放電制御部48は、バッテリ12、22への充電時、DC/DCコンバータ42からの出力(電流・電圧)を制御することで、選択ブロックのバッテリ12又は22に対しCC−CV充電(定電流定電圧充電)を行う。
【0061】
このように、S140にてDC/DCコンバータ42を動作させて、選択ブロックのバッテリ12又は22への充電を開始すると、S150にて、充電中のバッテリ12又は22は満充電状態になったか否かを判断する。
【0062】
そして、充電中のバッテリ12又は22は満充電状態でなければ、S160に移行して、現在充電中のバッテリ12又は22の残容量Aが、充電していない非選択ブロックのバッテリ22又は12の残容量Bよりも所定値以上大きいか否か(換言すれば、残容量の差(A−B)が所定値以上になったか否か)を判断する。
【0063】
なお、この判断には、各バッテリ12、22の絶対容量ではなく、後述のS200にて、前回各バッテリ12、22が満充電状態となったときに記憶したバッテリ容量を100%とする相対容量が使用される。
【0064】
これは、充電中のバッテリの相対容量の計算方法によって算出された残容量が、他のバッテリの相対容量の計算方法によって算出された残容量よりも所定値以上大きくなったことを検出して、充電するバッテリを切り替えることで、各ブロック10、20のバッテリ12、22が略同時に満充電となって、充電制御を完了できるようにするためである。
【0065】
S160にて、各ブロック10、20のバッテリ12、22の相対容量の差は所定値以上になったと判断されると、S170に移行し、そうでなければ、再度S150に移行する。
【0066】
S170では、DC/DCコンバータ42の動作を停止(オフ)させることにより、現在充電中のバッテリ12又は22への充電を停止させる。そして、続くS180では、充電ブロックを今まで充電していなかった非選択ブロックに変更することで、選択ブロックを切り替え、再度S140に移行する。
【0067】
次に、S150にて、充電中のバッテリ12又は22は満充電状態になったと判断されると、S190に移行して、今回満充電状態になった選択ブロックのバッテリ12又は22に加え、非選択ブロックのバッテリ22又は12も満充電状態になっているか否かを判断する。
【0068】
そして、2つのブロック10、20のバッテリ12、22が共に満充電状態になっていれば、今回の充電は完了したと判断して、S200に移行し、非選択ブロックのバッテリ22又は12は未だ満充電状態になっていなければ、S170に移行する。
【0069】
次に、S200では、S160での相対容量の比較のために、各ブロック10、20のバッテリ12、22の現在の充電容量(換言すれば満充電時の充電容量)を記憶し、S210に移行する。なお、充電容量は、既知の容量から充電を開始し、満充電状態になるまでの間の充電電流値を積算して得ることができる。
【0070】
S210では、DC/DCコンバータ42の動作を停止(オフ)させることにより、選択ブロックのバッテリ12又は22への充電を停止させる。
また、続くS220では、選択ブロック10又は20のバッテリ制御部68に対し、充電FET52をオフさせる指令を送信することで、選択ブロック10又は20の充電FET52をオフさせる。
【0071】
そして、最後に、S230にて、各ブロック10、20のバッテリ制御部68に対しスリープ状態への移行指令を送信することで、各バッテリ制御部68をスリープ状態にし、当該充電制御処理を終了する。なお、充電制御処理終了後は、充放電制御部48は、スリープ状態へ移行する。
【0072】
このように充電制御処理では、第1ブロック10及び第2ブロック20のバッテリ12、22への充電を、ブロック10、20毎に交互に実施する。また、充電するバッテリ12、22の切り替えは、充電中のバッテリの相対容量が、他のバッテリの相対容量に比べて所定値以上大きくなった時点で行う。
【0073】
この結果、各ブロック10、20のバッテリ12、22は、
図8に示すように、交互にバランス良く充電されてゆき、略同タイミングで満充電となって、バッテリ12、22への充電が完了する。
【0074】
次に、
図6に示すように、メインSW6がオフ状態からオン状態に切り替えられることにより、充放電制御部48が起動すると、放電制御処理を実行する。
この充電制御処理では、まずS310にて、各ブロック10、20のバッテリ制御部68に起動指令を送信することにより、バッテリ制御部68を起動し、続くS320にて、その起動した各バッテリ制御部68から、バッテリ電圧を取得する。
【0075】
そして、続くS330では、S320で各バッテリ制御部68から取得したバッテリ電圧に基づき、最初に外部負荷への放電を開始すべき放電ブロックを選択する。
つまり、本実施形態では、充電時と同様、外部負荷への電源供給(つまり放電)についても、第1ブロック10のバッテリ12と、第2ブロック20のバッテリ22とを交互に切り替えながら実施する。このため、S330では、2つのブロック10、20の内、例えば、バッテリ電圧が高い方を、放電ブロックとして選択する。
【0076】
次に、S340では、S330にて放電ブロックとして選択した選択ブロック10又は20のバッテリ制御部68に対し、放電FET62をオンさせる指令を送信することで、選択ブロック10又は20の放電FET62をオンさせる。
【0077】
また、続くS350では、外部負荷への放電により各ブロック10、20のバッテリ12、22に加わる負荷を検出するための過負荷検出処理を起動する。
この過負荷検出処理は、当該放電制御処理実行時にバッテリ12、22から外部負荷に流れる負荷電流に基づき過負荷カウンタを更新することで、各バッテリ12、22の負荷状態を監視する処理であり、
図7に示す手順で実行される。
【0078】
すなわち、過負荷検出処理は、予め設定された設定時間毎に、各ブロック10、20のバッテリ12、22に対し実行される。そして、この過負荷検出処理では、まずS510にて、バッテリ制御部68から放電電流を取得し、S520にて、その取得した放電電流が予め設定されたしきい値以上であるか否かを判断する。
【0079】
そして、放電電流がしきい値以上であれば、現在のバッテリ12又は22に加わっている負荷が大きいと判断して、S530にて、そのバッテリ12又は22の過負荷カウンタをインクリメント(+1)する。
【0080】
また、放電電流がしきい値未満であれば、バッテリ12又は22からの放電は停止しているか、或いは、放電していてもバッテリ負荷は小さいので、S540にて、そのバッテリ12又は22の過負荷カウンタをデクリメント(−1)する。
【0081】
この結果、各バッテリ12、22の過負荷カウンタは、外部負荷への放電電流が大きく、かつ、放電時間が長いほど、大きくなり、放電停止時や、放電電流が小さい場合には、減少するように、更新されることになる。
【0082】
このように、S350にて過負荷検出処理を起動すると、S360に移行し、メインSW6が外部操作によってオフ状態に切り替えられたか否かを判断する。
そして、メインSW6がオフ状態に切り替えられていれば、S460に移行し、メインSW6がオフ状態に切り替えられていなければ、S370に移行して、現在放電中のバッテリ12又は22に対する保護動作が必要であるか否かを判断する。
【0083】
この保護動作は、対象となるバッテリ12、22が、過放電状態、高温(過熱)状態、若しくは、過負荷状態にあるときに、放電を停止させるものである。
このため、S370では、現在放電ブロックとして選択されている選択ブロック10又は20のバッテリ制御部68から、バッテリ電圧を取得し、その取得したバッテリ電圧が所定値以下であるとき、バッテリ12又は22が過放電状態にあると判断する。
【0084】
また、S370では、選択ブロック10又は20のバッテリ制御部68から、バッテリ温度を取得し、バッテリ温度が所定温度以上であるとき、バッテリ12又は22が高温(過熱)状態にあると判断する。
【0085】
また、S370では、S350にて起動した過負荷検出処理にて更新される過負荷カウンタの内、現在放電中のバッテリ12又は22の過負荷カウンタを読み出し、過負荷カウンタの値が所定の過負荷判定値以上であるとき、バッテリ12又は22が過負荷状態にあると判断する。
【0086】
このように、現在放電中のバッテリ12又は22が過放電状態、高温(過熱)状態、若しくは、過負荷状態であり、S370にて、そのバッテリに対する保護動作が必要であると判断されると、S440に移行し、保護動作が必要でなければ、S380に移行する。
【0087】
S380では、外部負荷の運転状態が安定しているか否かを判断することにより、放電ブロックを切替可能であるか否かを判断する。
つまり、例えば、外部負荷としてのモータが加速状態若しくは高負荷状態にある場合、放電ブロックを現在放電中の選択ブロックから非選択ブロックに切り替えると、外部負荷への供給電力が変化して、外部負荷の運転に影響を与えることが考えられる。
【0088】
そこで、S380では、現在放電中のバッテリからの放電電流の大きさ、及び、バッテリ電圧の変化に基づき、外部負荷が過渡運転状態若しくは高負荷運転状態にあるか否かを判断し、外部負荷が過渡運転状態及び高負荷運転状態にないときに、放電ブロックを切替可能であると判断する。
【0089】
そして、S380にて、外部負荷が過渡運転状態若しくは高負荷運転状態にあり、放電ブロックを切り替えることはできないと判断されると、再度S370に移行し、S380にて、放電ブロックを切り替え可能であると判断されると、S390に移行する。
【0090】
S390では、現在放電ブロックとして選択されている選択ブロックのバッテリ12又は22の残容量Cを算出する。そして、続くS400にて、その残容量Cが、非選択ブロックのバッテリ22又は12の残容量Dよりも所定値以上小さいか否か(換言すれば残容量の差(D−C)が所定値以上か否か)を判断する。
【0091】
なお、この判断には、各バッテリ12、22の絶対容量が使用される。これは、各バッテリ12、22から外部負荷に供給可能な電力量を略同じにして、放電に使用するバッテリを切り替えることで、外部負荷を安定して駆動できるようにするためである。
【0092】
S400にて、各ブロック10、20のバッテリ12、22の絶対容量の差は所定値以上になったと判断されると、S410に移行して、放電ブロックを、現在選択中の選択ブロックから非選択ブロックに切り替え、S360に移行する。
【0093】
なお、S410での放電ブロックの切り替えは、まず、非選択ブロックの放電FET62をオン状態に切り替え、その後、所定時間が経過して非選択ブロックからの放電が安定してから、選択ブロックの放電FET62をオフ状態に切り替える、といった手順で実行される。
【0094】
非選択ブロックの放電FET62をオン状態にした瞬間、選択ブロックの放電FET62もオンしている。そのため、バッテリブロックの電圧差により、片方のバッテリブロックから他方のバッテリブロックへ流れ込みが生じることが考えられる。しかしながら、この双方の放電FET62がオン状態である時間は非常に短いため、バッテリブロックを劣化させることなく、切り替えができる。
【0095】
これは、放電ブロックの切り替えにより外部負荷への電力供給が瞬断したり、不安定になったりするのを防止するためである。
次に、S400にて、各ブロック10、20のバッテリ12、22の絶対容量の差は所定値以上になっていないと判断された場合には、S420に移行し、選択ブロックのバッテリ12又は22の無負荷電圧を推定する。
【0096】
具体的には、現在放電ブロックとして選択されているブロック10又は20のバッテリ制御部68から、バッテリ電圧及び放電電流を取得し、予め設定された計算式『バッテリ電圧+放電電流×係数1+係数2』を用いて、対応するバッテリの無負荷電圧を推定する。
【0097】
なお、係数2は、実際の無負荷電圧に比べて推定した無負荷電圧が所定のオフセット電圧分(例えば、1V未満の値)大きくなるようにするための、オフセット値である。
そして、続くS430では、非選択ブロックのバッテリ制御部68から、バッテリ電圧(つまり無負荷電圧)を取得し、S420にて推定した選択ブロックのバッテリの無負荷電圧は非選択ブロックのバッテリの無負荷電圧よりも小さいか否かを判断する。
【0098】
S430にて、選択ブロックのバッテリの無負荷電圧は非選択ブロックのバッテリの無負荷電圧よりも小さいと判断されなければ、再度S370に移行する。逆に、S430にて、選択ブロックの無負荷電圧は非選択ブロックの無負荷電圧よりも小さいと判断されると、S410に移行して、放電ブロックを切り替える。
【0099】
これは、
図9に示すように、バッテリ12、22の残容量が少なくなると、バッテリパック2からの出力電圧が急激に低下し、このときに放電ブロックを切り替えると、出力電圧が大きく変化するからである。
【0100】
つまり、本実施形態では、S420、S430の処理により、バッテリ12、22間での無負荷電圧の差を監視して、その差が大きくならないように放電ブロックを切り替えることで、バッテリパック2からの出力電圧が大きく変化するのを防止し、外部負荷を安定して駆動できるようにしている。
【0101】
次に、S370にて保護動作が必要であると判断されたときに実行されるS440においては、現在放電ブロックとして選択されているブロックとは異なる他ブロックからの放電が可能であるか否かを判断する。
【0102】
そして、他ブロックからの放電が可能であれば、S410に移行して、放電ブロックを切り替えた後、再度S370に移行する。また、他ブロックからの放電が可能でなければ、S450にて、現在放電ブロックとして選択されている選択ブロック10又は20のバッテリ制御部68に対し、放電FET62をオフさせる指令を送信することで、放電FET62をオフさせ、S460に移行する。
【0103】
S460では、全ブロック10、20の放電FET62をオフさせることで、各バッテリ12、22から外部負荷への放電を停止させる。また、続くS470では、各ブロック10、20のバッテリ制御部68に対しスリープ状態への移行指令を送信することで、各バッテリ制御部68をスリープ状態にし、当該放電制御処理を終了する。なお、放電制御処理終了後は、充放電制御部48は、スリープ状態へ移行する。
【0104】
このように放電制御処理では、各ブロック10、20のバッテリ12、22を放電ブロックとして交互に切り替えながら、出力端子50に接続された外部負荷への放電(電力供給)を実施する。
【0105】
また、放電ブロックの切り替えは、放電中のバッテリの残量量(絶対容量)が、他のバッテリの残容量(絶対容量)に比べて所定値以上小さくなった時点で行う。
この結果、
図8に示すように、バッテリパック2から外部負荷への出力電圧は、放電ブロックの切り替えによって大きく変化することがなく、外部負荷に対し電源電圧を安定して供給することができる。
【0106】
以上説明したように、本実施形態のバッテリパック2には、AC/DC変換器等にて構成される外部の充電用アダプタ9から供給される直流電圧を、バッテリ12、22への充電に要する直流電圧に変換(本実施形態では昇圧)するDC/DCコンバータ42が備えられている。
【0107】
このため、本実施形態のバッテリパック2によれば、出力電圧がバッテリ12、22への充電に要する電圧値とは異なる充電用アダプタ9を使って、バッテリ12、22を充電できる。
【0108】
また、DC/DCコンバータ42からバッテリ12、22に至る充電経路が短くなるので、その経路で生じる電圧降下(電力損失)を抑制し、バッテリ12、22を安定して効率よく充電できる。
【0109】
また、DC/DCコンバータ42の出力電圧は、バッテリ12、22を充電するのに要する電圧に設定すればよく、電圧の異なる複数のバッテリを充電できるように、DC/DCコンバータ42からの出力電圧を切り替える必要がないので、回路構成を簡素化できる。
【0110】
DC/DCコンバータ42から各バッテリ12、22への充電経路の内、両バッテリ12、22共通の充電経路には、自己溶断ヒューズ44が設けられている。そして、この自己溶断ヒューズ44は、バッテリ12、22毎に設けられた過電圧保護部70がバッテリ電圧の異常を検出した際に通電されて、充電経路を遮断する。
【0111】
このため、本実施形態のバッテリパック2によれば、自己溶断ヒューズ44を介して、バッテリ12、22を過電圧から保護することができる。また、自己溶断ヒューズ44は、各バッテリ12、22への充電経路を一括して遮断できるので、バッテリパック2の安全性を高めることができる。また、自己溶断ヒューズ44は、各バッテリ12、22共通の充電経路に設けられているので、バッテリ12、22毎に設けた場合に比べて、装置構成を簡単にすることができる。
【0112】
一方、各バッテリ12、22には、過電圧保護部70とは別に、バッテリ12、22に対する充電及び放電の切り替え、及び、バッテリ状態の監視を行うバッテリ制御部68がそれぞれ設けられている。
【0113】
そして、各バッテリ12、22共通の充放電制御部48は、バッテリ制御部68を介して、バッテリ12、22毎に充放電を制御することから、各バッテリ12、22に対する充放電を、それぞれ、適正に実施することができる。
【0114】
また、充放電制御部48やバッテリ制御部68を含むバッテリパック2内の全ての回路は、一つの回路基板40に組み付けられている。このため、本実施形態のバッテリパック2は、バッテリパック2の筐体であるケース内に上述した各種回路部を収納する際の作業を簡単に行うことができ、バッテリパック2の組み立て時の作業性を向上できる。
【0115】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内にて種々の態様をとることができる。
例えば、上記実施形態では、バッテリ12、22は、2つのブロック10、20に分けられ、ブロック10、20毎に設けられた充放電部16、26を介して、充電及び放電されるものとしたが、バッテリのブロック数は、3以上であってもよく、或いは、1つであってもよい。なお、バッテリを3ブロック以上に分けた場合、各ブロックには上記実施形態と同様、充放電部を設けるとよい。
【0116】
また、上記実施形態では、バッテリ12、22に対する充放電は、バッテリ毎に、交互に行うものとして説明したが、全ブロック同時に充電又は放電を実施するようにしてもよく、充電及び放電の一方だけを全ブロック同時に実施するようにしてもよい。