【実施例1】
【0023】
図1は本発明の溝の内側に島状に一列に並んだ内壁を有する水晶振動子の斜視図である。
図1に示すように、本発明の水晶振動子10は、基部30と基部30から突出した2本の振動脚100、110からなる振動片20上に、所望の形状でパターニングされた異なる電位の電極50、51が形成される構造をなしている。また振動脚100、110には、表裏の主面に振動脚の長手方向に沿って溝40が形成されており、その溝40の内側には、溝40を幅方向に仕切る内壁70が、振動脚の長手方向に沿って島状に一列に並んで形成されている。
【0024】
なお振動脚100の溝40の内側の側面には電極50が形成されており、振動脚100の外側の側面には電極50とは異なる電位の電極51が形成されている。一方、振動脚110の溝40の内側の側面には電極51が形成されており、振動脚110の外側の側面には電極51とは異なる電位の電極50が形成されている。このようにして振動脚100、110の外側の側面と溝40の内側の側面との間に電圧を印加し、電位を交互に切り替えることによって、圧電材料である水晶からなる振動脚100、110は電歪作用により振動する。
【0025】
図2は本発明の島状に一列に並んだ内壁を有する水晶振動子の断面図である。
図2(a)は
図1における内壁70が存在する領域の溝40の断面(A−A断面)を示した図であり、
図2(b)は
図1における内壁70が存在しない領域の溝40の断面(B−B断面)を示した図である。なお、本発明の内容をわかりやすく説明するために、電極50、51は省略して記載していない。
【0026】
図2(a)に示すように、内壁70が存在するA−A断面では、溝40aは内壁70によって、振動脚100a、110aの幅方向に2分割されており、2溝と同じような断面形状になっている。その結果、溝40aは溝幅が狭く、深さが深い形状で形成されるので、溝40aの内側の側壁400aは垂直に近い形状で形成されることとなる。
【0027】
このように、溝40aの内側の側壁400aが垂直に近い形状で形成されることで、振動脚100a、110aの側壁300との距離は、溝40aの開口部側から溝40aの底部側まで、ほぼ一定の距離にすることができ、側壁300と側壁400aの間に無駄なく電位をかけることができる。これにより、非常に良好な電界効率が得られる。
【0028】
一方、
図2(b)に示すように、内壁70が存在しないB−B断面では、溝40bは1本の溝の断面と同じような形状になっている。その結果、溝40bは溝幅が広く、開口面積が非常に広くなっている。
【0029】
このように、部分的に内壁70を無くし、溝40bの開口面積を広くしたことで、電極材料をスパッタリング法や蒸着法で成膜する工程において、電極材料が溝40bの奥深くまで届くので、良好な電界効率を得るのに必要な膜厚を溝40bの奥深くまで成膜することが可能となる。その結果、良好な電界効率が得られる。
【0030】
なお、本発明のように所定の間隔で溝40の内側に島状の内壁70を形成して、電極材料を成膜すると、内壁70と内壁70の隙間から、電極材料は回り込んで成膜されるため、内壁70が存在する領域(
図2(a)の領域)においても、良好な電界効率を得るのに必要な膜厚を溝40aの奥深くまで成膜することが可能となる。
【0031】
よって本発明では、内壁70が存在する領域においては、溝形状の最適化による電界効率の向上効果と、電極50、51を溝40aの奥深くまで必要な膜厚で成膜できることによる電界効率の向上効果の両方を得ることができるのである。
【0032】
本発明は、製造工程において、不良の発生を抑え信頼性の高い水晶振動子10を製造することができるという利点も有している。
図3は本発明の水晶振動子の電極形成工程を示した図である。なお、
図3では、一方の振動脚100の内壁70が存在する領域の断面を用いて説明されているが、内壁70が存在しない領域においても同じ製造方法で電極50、51が形成される。さらには、他方の振動脚110においても同じ製造方法で電極50、51が形成される。
【0033】
まず始めに、
図1における本発明の水晶振動子10は、エッチング法によって振動片20を形成した後に、
図3(a)に示すように、スパッタリング法や蒸着法等の真空成膜法を用いて、振動脚100aの全面に電極膜500を成膜する。
図1に示す本発明の構成のように、溝40の内側に島状に内壁70を並べ、各々の内壁70の間に隙間を設けることで、上述のように
図3(a)に示す溝40aの側壁にも所望の膜厚で電極膜500を成膜することができる。
【0034】
次に、
図3(b)に示すように、電極膜500上に電着法によってレジスト200を形成する。電着法は電流の流れる表面にのみレジストをコーティングすることができる方法で、本製造方法のように導電性を有する電極膜500に電気を流せば、容易に電極膜500上にレジストをコーティングすることができるので、非常に生産効率が良い。
【0035】
その一方で、電流が流れる表面の導電膜が不均一な膜厚であったり、絶縁されているような場合、これらの欠陥を挟んだ2点間の膜間抵抗値は、正常な導電膜の膜間抵抗値よりも悪くなる場合が多い。その様な欠陥を有する導電膜に対して電着法でレジストを成膜すると、電流が流れ難い部分ではレジスト200を所望の厚さに成膜できないという欠点があった。従って、
図7に示す溝43や
図8に示す溝44の内側には電極膜500が薄く成膜されてしまい均一な厚さでレジスト200をコーティングすることができなかった。
【0036】
しかしながら、本発明の構造の水晶振動子10では、溝40aの内側の側壁にも電流が流れるのに十分な膜厚で電極膜500が成膜されているので、溝40aの内側にも、均一にレジスト200を形成することができる。
【0037】
次に
図3(c)に示すように、フォトリソグラフィー法によって、レジスト200を電極50、51と同様の形状にパターニングする。
【0038】
その後、
図3(d)に示すように、レジスト200で覆われていない電極膜500が露出している部分をエッチングによって除去し、電極膜500を電極50、51の形状にパターニングする。
【0039】
最後に、
図3(e)に示すように、レジスト200を剥離して、電極50、51の形成が完了する。
【0040】
以上のように、本発明によれば、溝40aの内側にもレジスト200を均一にしっかりと形成することができるので、溝40aの内側の電極50も所望の形状で安定してパターニングすることができる。その結果、電極50のパターニング不良の発生を減少させることができ、生産性が向上する。
【実施例5】
【0045】
また、内壁は、複数列形成しても良く、
図8は本発明の溝の内側に島状に二列に並んだ内壁を有する中央脚を備えた水晶振動子の平面図である。本実施例は小型化に適した中央脚81を備えた水晶振動子12に本発明を適用した例である。
【0046】
図8に示すように、本実施例に示す水晶振動子12は2本の振動脚140、150の間に中央脚81を配置し、その中央脚81の先端に支持部80があり、支持部80と中央脚81とで水晶振動子11を固定する構造となっている。このような構造にすることで、
図1に示すような基部30から振動脚100、110が突出する構造の水晶振動子10に比べて、全長を短くすることができるため、小型化に適している。
【0047】
そうした理由から、中央脚81を備えた水晶振動子12は、小型化を目的として利用されることが多い。しかしながら、水晶振動子12は小型化されればされるほど、CI値が高くなって悪化することが知られており、その結果、振動特性が悪くなるのが一般的であった。
【0048】
本実施例に示す本発明の形態は、小型化した水晶振動子12であってもCI値が低く振動特性が良好であるのが利点である。
【0049】
本発明の中央脚81を備える水晶振動子12は、中央脚81の両隣に配置される振動脚140、150からなる振動片22上に、所望の形状でパターニングされた異なる電位の電極54、55が形成される構造をなしている。また振動脚140、150には、表裏の主面に振動脚の長手方向に沿って溝42が形成されており、その溝42の内側には、溝42を幅方向に仕切る内壁72が、振動脚の長手方向に沿って島状に二列に並んで形成されている。
【0050】
なお振動脚140の溝42の内側の側面には電極54が形成されており、振動脚140の外側の側面には電極54とは異なる電位の電極55が形成されている。一方、振動脚150の溝42の内側の側面には電極55が形成されており、振動脚150の外側の側面には電極55とは異なる電位の電極54が形成されている。このようにして振動脚140、150の外側の側面と溝42の内側の側面との間に電圧を印加し、電位を交互に切り替えることによって、圧電材料である水晶からなる振動脚140、150は電歪作用により振動する。
【0051】
図9は本発明の島状に二列に並んだ内壁を有する中央脚を備えた水晶振動子の断面図である。
図9(a)は
図8における内壁72が存在する領域の溝42の断面(E−E断面)を示した図であり、
図9(b)は
図8における内壁72が存在しない領域の溝42の断面(F−F断面)を示した図である。なお、本発明の内容をわかりやすく説明するために、電極54、55は省略して記載していない。
【0052】
図9(a)に示すように、内壁72が存在するE−E断面では、溝42aは内壁72によって、振動脚140a、150aの幅方向に3分割されており、3溝と同じような断面形状になっている。その結果、溝42aは溝幅が狭く、深さが深い形状で形成されるので、溝42aの内側の側壁420aは垂直に近い形状で形成されることとなる。
【0053】
このように、溝42aの内側の側壁420aが垂直に近い形状で形成されることで、振動脚140a、150aの外側の側壁320と内側の側壁420aとの距離(壁の厚さ)は、溝42aの開口部側から溝42aの底部側まで、ほぼ一定の距離にすることができ、側壁320と側壁420aの間に無駄なく電位をかけることができる。これにより、非常に良好な電界効率が得られる。
【0054】
さらに、振動脚140a、150aを内壁72によって幅方向に3分割し3溝と同じような断面形状にすることで、振動脚140a、150aの柔軟性が増し振動しやすくなるので、2分割にした場合よりもさらにCI値を低下させることができる。
【0055】
一方、
図9(b)に示すように、内壁72が存在しないF−F断面では、溝42bは1本の溝の断面と同じような形状になっている。その結果、溝42bは溝幅が広く、開口面積が非常に広くなっている。
【0056】
このように、部分的に内壁72を無くし、溝42bの開口面積を広くしたことで、電極材料をスパッタリング法や蒸着法で成膜する工程において、電極材料が溝42bの奥深くまで届くので、良好な電界効率を得るのに必要な膜厚を溝42bの奥深くまで成膜することが可能となる。その結果、良好な電界効率が得られる。
【0057】
なお、本発明のように一定の間隔で部分的に内壁72を形成して、電極材料を成膜すると、内壁72と内壁72の隙間から、電極材料は回り込んで成膜されるため、内壁72が存在する領域(
図9(a)の領域)においても、良好な電界効率を得るのに必要な膜厚を溝42bの奥深くまで成膜することが可能となる。
【0058】
よって本発明では、内壁72が存在する領域においては、溝形状の最適化による電界効率の向上効果と、電極54、55を溝42aの奥深くまで必要な膜厚で成膜できることによる電界効率の向上効果の両方を得ることができるのである。
【0059】
以上のように、本発明は小型化に適した中央脚81を備えた水晶振動子12であっても、CI値を低くすることができるので、小型で振動特性に優れた水晶振動子12を提供することができる。