特許第6373684号(P6373684)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373684
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】X線診断装置及びX線CT装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20180806BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   A61B6/00 333
   A61B6/03 330B
   A61B6/03 373
【請求項の数】20
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2014-167901(P2014-167901)
(22)【出願日】2014年8月20日
(65)【公開番号】特開2016-42933(P2016-42933A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩井 春樹
(72)【発明者】
【氏名】坂口 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】永井 清一郎
【審査官】 九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−064756(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0270055(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を照射するX線管を含む照射部と、
前記X線の入射に応じて検出信号を出力する検出器と、
前記検出器が出力した検出信号によって計測されたエネルギー値を、複数のエネルギー区間のいずれかに振り分けることで、当該複数のエネルギー区間それぞれの計数データを収集する収集部と、
前記収集部で収集された前記複数のエネルギー区間の計数データの中から、特定の区間の計数データを選択し、選択された計数データに基づいて、X線照射条件に関する情報を前記照射部に送信する撮影制御部と
を備えたことを特徴とするX線診断装置。
【請求項2】
前記撮影制御部は、映像化する対象物質に基づいて、前記複数のエネルギー区間の計数データの中から、前記特定の区間の計数データを選択することを特徴とする請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記撮影制御部は、前記X線照射条件に関する情報として、前記X線管の電圧に関する情報を前記照射部に送信することを特徴とする請求項1又は2に記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記撮影制御部は、前記X線照射条件に関する情報として、前記X線管の電流に関する情報を前記照射部に送信することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記撮影制御部は、前記X線照射条件に関する情報として、前記X線管の線質フィルターの制御に関する情報を前記照射部に送信することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つに記載のX線診断装置。
【請求項6】
前記撮影制御部は、前記X線照射条件に関する情報として、X線の絞りに関する情報を前記照射部に送信することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載のX線診断装置。
【請求項7】
前記撮影制御部は、前記X線照射条件に関する情報として、X線の露光調整制御に関する情報を前記照射部に送信することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1つに記載のX線診断装置。
【請求項8】
前記露光調整制御は、予め設定された照射時間だけX線を照射するように前記照射部を制御する制御、または、露光調整用の検出器で得られた入射X線量を示す電気信号に基づいて、前記電気信号が示す入射X線量が所定の値となった場合に、X線の照射を停止するように前記照射部を制御する制御である請求項7に記載のX線診断装置。
【請求項9】
前記検出器の位置を制御する駆動部を更に備え、
前記撮影制御部は、前記X線照射条件に関する情報として、前記検出器の位置に関する情報を前記駆動部に送信することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載のX線診断装置。
【請求項10】
前記撮影制御部は、被検体に対するX線照射計画に連動したパラメータを用いて、前記X線照射条件に関する情報を前記照射部に送信することを特徴とする、請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項11】
前記撮影制御部は、撮影対象部位、着目物質又は被検体の個体差に応じたX線照射計画に連動したパラメータを用いて、前記X線照射条件に関する情報を前記照射部に送信することを特徴とする請求項10に記載のX線診断装置。
【請求項12】
前記撮影制御部は、前記複数のエネルギー区間ごとの計数値、又は、前記複数のエネルギー区間ごとの単位時間当たりの計数値を基に、前記X線照射条件に関する情報を前記照射部に送信することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載のX線診断装置。
【請求項13】
前記撮影制御部は、複数の関心領域それぞれの前記複数のエネルギー区間ごとの計数データ、又は、複数の関心領域それぞれの前記複数のエネルギー区間ごとの計数データを束ねた計数データを基に、前記X線照射条件に関する情報を前記照射部に送信することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1つに記載のX線診断装置。
【請求項14】
前記撮影制御部は、前記X線照射条件に関する情報として、2種類以上の情報を前記照射部に送信することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1つに記載のX線診断装置。
【請求項15】
前記撮影制御部は、前記計数データに応じて、前記X線照射条件に関する情報に含める制御量を変更することを特徴とする請求項1〜14のいずれか1つに記載のX線診断装置。
【請求項16】
前記撮影制御部は、前記計数データに応じてパラメータを変更することで、前記X線照射条件に関する情報を決定することを特徴とする請求項1〜15のいずれか1つに記載のX線診断装置。
【請求項17】
前記収集部は、前記複数のエネルギー区間の計数データを、複数フレームに渡って収集し、
前記撮影制御部は、前記X線照射条件に関する情報として、前記収集部が収集した前記複数のエネルギー区間の計数データに基づいて、次に前記収集部が収集する前記複数のエネルギー区間の計数データのためのX線照射条件を決定することを特徴とする請求項1〜16のいずれか1つに記載のX線診断装置。
【請求項18】
前記撮影制御部は、前記X線照射条件に関する情報を履歴として所定の記憶部に格納することを特徴とする請求項1〜17のいずれか1つに記載のX線診断装置。
【請求項19】
X線を照射するX線管を含む照射部と、
前記X線の入射に応じて検出信号を出力する検出器と、
前記検出器が出力した検出信号によって計測されたエネルギー値を、複数のエネルギー区間のいずれかに振り分けることで、当該複数のエネルギー区間それぞれの計数データを収集する収集部と、
前記収集部で収集された前記複数のエネルギー区間の計数データの中から、特定の区間の計数データを選択し、選択された計数データに基づいて、X線照射条件に関する情報を照射部に送信する撮影制御部と、
を備えたことを特徴とするX線CT装置。
【請求項20】
被検体が載置される寝台装置を更に備え、
前記X線管は、前記被検体にX線を照射し、
前記検出器は、前記被検体を透過したX線の入射に応じて検出信号を出力し、
前記撮影制御部は、前記X線照射条件に関する情報として、前記寝台装置の位置に関する情報を前記寝台装置に送信することを特徴とする請求項19に記載のX線CT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線診断装置及びX線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光子計数型検出器を用いたX線診断装置は、光子計数型検出器の出力より光子計数データを作成し、光子計数データを用いた様々な画像処理により、特定組織の高コントラスト画像を得ることができる。かかる画像処理としては、検出器出力により作成された光子計数データの各エネルギー帯(エネルギーBIN)のカウント値を重み付け加算したデータから画像を得る「Energy Weighted処理」がある。また、かかる画像処理としては、光子計数データの各エネルギーBINのカウント値から、被写体内部の物質構成情報を作成する処理を行なう「Material Decomposition処理」がある。
【0003】
しかし、光子計数データを用いた画像処理の際、特定のX線条件(管電圧、管電流等)による自動露光調整機能を用いて照射を行った場合、不要な被ばくを伴う場合がある。例えば、画像処理に不要なエネルギー帯の情報も、自動露光調整機能の判断材料として用いられるため、画像処理に必要なX線量以上の曝射が行われる可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2011−527223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、被ばく量を低減することができるX線診断装置及びX線CT装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るX線診断装置は、照射部と、検出器と、収集部と、撮影制御部とを備える。前記照射部は、X線を照射するX線管を含む。前記検出器は、前記X線の入射に応じて検出信号を出力する。前記収集部は、前記検出器が出力した検出信号によって計測されたエネルギー値を、複数のエネルギー区間のいずれかに振り分けることで、当該複数のエネルギー区間それぞれの計数データを収集する。前記撮影制御部は、前記収集部で収集された前記複数のエネルギー区間の計数データの中から、特定の区間の計数データを選択し、選択された計数データに基づいて、X線照射条件に関する情報を前記照射部に送信する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、履歴情報のデータ構造の一例を示す図である。
図3図3は、照射領域の一例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態に係るX線診断装置のX線照射条件制御処理の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、第1の実施形態に係るX線診断装置のフィードバック処理の一例を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態の第1の変形例に係るX線診断装置のフィードバック処理の一例を示す図である。
図7図7は、第1の実施形態の第3の変形例に係るフィードバック処理の一例を説明するための図(1)である。
図8図8は、第1の実施形態の第3の変形例に係るフィードバック処理の一例を説明するための図(2)である。
図9図9は、第3の実施形態に係るフィードバック処理の一例を説明するための図(1)である。
図10図10は、第3の実施形態に係るフィードバック処理の一例を説明するための図(2)である。
図11図11は、第4の実施形態に係るフィードバック処理の一例を説明するための図である。
図12図12は、第5の実施形態に係るフィードバック処理の一例を説明するための図である。
図13図13は、第5の実施形態の第1の変形例を説明するための図である。
図14図14は、第5の実施形態の第2の変形例を説明するための図である。
図15図15は、第6の実施形態に係るフィードバック処理の一例を説明するための図である。
図16図16は、第7の実施形態を説明するための図(1)である。
図17図17は、第7の実施形態を説明するための図(2)である。
図18図18は、第8の実施形態に係るX線診断装置の構成例を示すブロック図である。
図19図19は、第8の実施形態に係るフィードバック処理の一例を説明するための図である。
図20図20は、第9の実施形態に係るX線CT装置の構成例を示すブロック図である。
図21A図21Aは、第9の実施形態に係るX線CT装置が実行する処理の一例を説明するための図である。
図21B図21Bは、第9の実施形態に係るX線CT装置が実行する処理の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係るX線診断装置の実施形態を詳細に説明する。
【0009】
積分型検出器を用いたX線診断装置とは異なり、光子計数(フォトンカウンティング)型検出器を用いた光子計数型X線診断装置では、被検体を透過したX線の光子を計数し、そのエネルギーを計測することができる。光子計数型X線診断装置は、検出したX線光子のエネルギーの値に応じて、複数のエネルギー区間(BIN)それぞれに計数値を割り振ることで、複数のエネルギー区間それぞれの計数データを得ることができる。ここで、X線吸収率のエネルギー依存性が物質ごとに異なることを利用して、光子計数型X線診断装置では、例えば、ユーザが着目する物質が強調された画像を生成することができる。
【0010】
かかる画像を生成するためには、情報量を確保するために、X線光子のカウント数が一定以上必要である。従来、X線の照射条件を制御する方法として、予め設定されたX線条件に基づく自動露光調整機能がある。しかし、従来の自動露光調節機能では、X線のエネルギーごとに露光量を調節できないため、画像処理に必要なX線量以上の曝射が行われる可能性があった。
【0011】
そこで、本実施形態に係るX線診断装置は、エネルギーBIN(区間)ごとの計数データを元にX線照射条件を決定し、X線照射条件をX線を照射する照射部にフィードバックさせることで、画像処理に必要なX線量以上の曝射が行われることを回避して、被ばく量を低減させる。
【0012】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係るX線診断装置は、照射部と、検出器と、収集部と、撮影制御部とを備える。照射部は、X線を照射するX線管を含む。検出器は、X線の入射に応じて検出信号を出力する。収集部は、検出器が出力した検出信号によって計測されたエネルギー値を、複数のエネルギー区間のいずれかに振り分けることで、複数のエネルギー区間それぞれの計数データを収集する。撮影制御部は、収集部で収集された複数のエネルギー区間それぞれの前記計数データに基づいて、X線照射条件に関する情報を照射部に送信する。
【0013】
まず、第1の実施形態に係るX線診断装置の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、第1の実施形態に係るX線診断装置は、撮影装置10と、制御・データ処理装置30とを有する。
【0014】
撮影装置10は、被検体PにX線を照射し、被検体Pを透過したX線を計数する装置であり、高電圧発生部11と、X線管12aを含む照射部12と、検出器13と、収集部14と、駆動部16とを有する。
【0015】
高電圧発生部11は、X線管12aに高電圧を供給する装置であり、X線管12aは、高電圧発生部11から供給される高電圧を用いてX線を発生する。すなわち、高電圧発生部11は、X線管12aに供給する管電圧や管電流を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線量を調整する。
【0016】
照射部12は、例えば、天井レールに配置され、前後左右上下方向に移動可能なX線管球支持器によって支持される。照射部12は、X線管12aと線質フィルタ12bと絞り12cと有する。X線管12aは、例えば、X線を照射する真空管である。
【0017】
線質フィルタ12bは、X線管12aから照射されたX線のX線量を調節するためのX線フィルタである。具体的には、線質フィルタ12bは、X線管12aから被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管12aから曝射されたX線を透過して減衰するフィルタである。線質フィルタ12bは、ウェッジフィルター(wedge filter)や、ボウタイフィルター(bow-tie filter)とも呼ばれる。絞り12cは、線質フィルタ12bによってX線量が調節されたX線の照射範囲を絞り込むためのスリットである。例えば、絞り12cは、スライド可能な4枚の絞り羽根を有し、これら絞り羽根をスライドさせることで、X線管12aが発生したX線を絞り込んで被検体Pに照射させる。なお、照射範囲には、関心領域が含まれる。以下では、関心領域をROI(Region Of Interest)と記載する場合がある。
【0018】
駆動部16は、撮影制御部33からの信号を受信して、照射部12及び検出器13の位置を、前後左右上下に移動させる。また、駆動部16は、撮影制御部33からの信号を受信して、線質フィルタ12bをX線管12aの前面に移動させたり、線質フィルタ12bをX線管12aの前面から移動させたりする。また、駆動部16は、絞り12cを制御して、照射範囲の大きさを変更したり、照射範囲の位置を移動させたりする。
【0019】
検出器13は、X線の入射に応じて検出信号を出力する。具体的には、検出器13は、被検体Pを透過したX線光子を計数するための複数の検出素子を有する。検出器13としては、例えば、光子計数型検出器が用いられる。例えば、検出器13が有する各検出素子は、テルル化カドミウム(CdTe)系の半導体である。かかる場合、第1の実施形態に係る検出器13は、入射したX線を光を電荷正孔対に変換して、検出素子に掛けられたバイアス電圧により、発生した電荷を回収する直接変換型の半導体検出器となる。
【0020】
具体的には、検出器13は、テルル化カドミウムにより構成される検出素子が、縦方向にN列、横方向にM列配置された面検出器である。なお、検出器13は、X軸方向に検出素子が並んだライン検出器であってもよい。検出素子は、光子が入射すると、1パルスの電気信号を出力する。なお、後述の収集部14は、検出素子が出力した個々のパルスを弁別することで、検出素子に入射したX線に由来する光子(X線光子)の数を計数することができる。また、後述の収集部14は、個々のパルスの強度に基づく演算処理を行なうことで、計数した光子のエネルギーを計測することができる。また、検出器13の中に、後述する収集部14を含めることもできる。この場合には、検出器13は、上述した検出器13の機能に加えて、後述する収集部14の機能を有する。また、この場合には、検出器13と収集部14とが一体となる。
【0021】
なお、以下では、検出器13が直接変換型の半導体検出器である場合について説明するが、第1の実施形態は、例えば、シンチレータと光センサとにより構成される間接変換型の検出器が検出器13として用いられる場合でも適用可能である。なお、光センサは、光電子増倍管や、アバランシェフォトダイオード(APD:Avalanche Photodiode)を用いたシリコンフォトマルチプライアー(SiPM:Silicon Photomultiplier)等である。
【0022】
収集部14は、いわゆるエネルギーBIN弁別処理を行う。エネルギーBIN弁別処理は、検出器出力から、該当するエネルギーBINのカウント回路にイベント信号を出力する処理のことをいう。ここで、エネルギーBINとは、特定のエネルギー幅を一つにまとめて処理する場合の、グループを意味する。
【0023】
すなわち、収集部14は、検出器13が出力した検出信号によって計測されたエネルギー値を、複数のエネルギー区間(BIN)のいずれかに振り分けることで、当該複数のエネルギー区間それぞれの計数データを収集する。このエネルギー区間の振分け方としては、例えば、収集部14で設定可能な最小限の個数の複数のエネルギー区間が設定される。
【0024】
収集部14は、検出素子が出力した各パルスを弁別して計数したX線光子の入射位置(検出位置)と、当該X線光子のエネルギー値とを計数結果として収集する。収集部14は、例えば、計数に用いたパルスを出力した検出素子の位置を、入射位置とする。また、収集部14は、例えば、パルスのピーク値とシステム固有の応答関数とから、エネルギー値を演算する。或いは、収集部14は、例えば、パルスの強度を積分することで、エネルギー値を演算する。
【0025】
そして、収集部14は、計数結果を、複数のエネルギー区間のいずれかに振り分けることで、計数データを収集する。計数データは、例えば、『入射位置「P11」の検出素子において、エネルギー範囲「E1L〜E1R」を有する光子の計数値が「N1」であり、エネルギー範囲「E2L〜E2R」を有する光子の計数値が「N2」である』といった情報となる。
【0026】
制御・データ処理装置30は、操作者による操作を受け付けるとともに、撮影装置10によって収集された計数データ群を用いてX線画像を生成する装置である。制御・データ処理装置30は、図1に示すように、入力部31と、表示部32と、撮影制御部33と、画像生成部36と、画像記憶部37と、システム制御部38とを有する。
【0027】
入力部31は、X線診断装置の操作者が各種指示や各種設定の入力に用いるマウスやキーボード等を有し、操作者から受け付けた指示や設定の情報を、システム制御部38に転送する。例えば、入力部31は、X線照射条件や、X線画像に対する画像処理条件等を受け付ける。
【0028】
表示部32は、操作者によって参照されるモニタであり、システム制御部38による制御のもと、X線画像を操作者に表示したり、入力部31を介して操作者から各種指示や各種設定等を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。
【0029】
撮影制御部33は、後述するシステム制御部38の制御のもと、高電圧発生部11、駆動部16、収集部14の動作を制御することで、撮影装置10における計数データの収集処理を制御する。
【0030】
第1の実施形態に係る撮影制御部33は、収集部14で収集された複数のエネルギー区間それぞれの計数データに基づいて、X線照射条件に関する情報を照射部12に送信する。例えば、撮影制御部33は、収集部14から取得した光子計数データを基に、高電圧発生部11及び駆動部16に、X線照射条件に関する制御信号を送信する。高電圧発生部11に送信される制御信号の例としては、管電圧又は管電流を制御するための信号が挙げられる。また、駆動部16に送信される制御信号の例としては、X線管12aと被検体Pの位置関係を調整するための信号、照射範囲を調整するための信号、線質フィルタ12bを調節するための信号、絞り12cを調整するための信号、後述のフィードバック信号等が挙げられる。ここで、後述のフィードバック信号には、例えば、検出器13がライン検出器である場合に、全てのエネルギー区間が後述の「H」と判定されたときには、Y軸方向の次のステップに検出器13を移動させる指示が含まれる。検出器13は、かかる指示を含むフィードバック信号を受信すると、Y軸方向の次のステップに移動する。
【0031】
なお、第1の実施形態に係る撮影制御部33は、複数のエネルギー区間ごとの計数値(例えば、関心領域中のエネルギー区間ごとの計数値)を基に、X線照射条件に関する情報を照射部12に送信する。また、第1の実施形態に係る撮影制御部33は、X線照射条件に関する情報として、X線管12aの電圧に関する情報を照射部12に送信する。また、第1の実施形態に係る撮影制御部33は、X線照射条件に関する情報として、X線管12aの電流に関する情報を照射部12に送信する。撮影制御部33が行う処理については、後述する。
【0032】
また、画像記憶部37は、X線照射条件の履歴を示す履歴情報を記憶しており、撮影制御部33は、X線照射条件に関する情報を照射部12に送信するたびに、画像記憶部37に記憶された履歴情報に、X線照射条件を登録する。これにより、履歴情報には、X線照射条件の履歴が登録される。図2は、履歴情報のデータ構造の一例を示す図である。図2の例に示すように、履歴情報は、「Time」、「X−Ray kV」、「X−Ray mA」、「(X0,Y0,X1,Y2)」及び「タイプ」の各項目を有する。「Time」の項目には、フィードバック制御を行ったタイミングと同期した時間が登録される。「X−Ray kV」の項目には、同一のレコードの「Time」の項目に登録された時間に、単位を「kV」とするX線管12aに供給した管電圧の大きさが登録される。「X−Ray mA」の項目には、同一のレコードの「Time」の項目に登録された時間に、単位を「mA」とするX線管12aに供給した管電流の大きさが登録される。図3は、照射領域の一例を示す図である。「(X0,Y0,X1,Y2)」には、図3に示すように、照射領域のXY座標における原点に最も近い位置(X0,Y0)が登録されるとともに、照射領域のXY座標における原点に最も遠い位置(X1,Y1)が登録される。「タイプ」の項目には、同一のレコードの「Time」の項目に登録された時間に用いた線質フィルタの識別子が登録される。例えば、図2の例に示す履歴情報の1番目のレコードは、時間「0」の場合に、撮影制御部33が、管電圧「90」kVが印加され、管電流「100」mAが流れるようにX線管12aを制御し、照射領域のXY座標における原点に最も近い位置が(0,0)となり、最も遠い位置が(1024,1024)となるように絞り12cを制御し、識別子「1」が示す線質フィルタをX線管12aの前面に移動させるように制御したことを示す。なお、X線管12aの出力(X線出力)をモニタできる他の検出器を用いて、X線出力をモニタリングするようにしてもよい。
【0033】
画像生成部36は、収集部14から取得したエネルギーBINごとの計数データを基に、出力対象となるX線画像を生成する。X線画像を生成する処理の一例として、例えば、「Energy Weighted処理」や、「Material Decomposition処理」等、特定組織の高コントラスト画像を得るための処理があげられる。「Energy Weighted処理」は、計数データの各エネルギー帯(エネルギーBIN)のカウント値を重み付け加算したデータから画像を得る処理である。また、「Material Decomposition処理」は、計数データの各エネルギーBINのカウント値から、被写体Pの内部の物質構成情報を作成する処理である。「Material Decomposition処理」のアルゴリズムは、複数存在する。画像記憶部37は、画像生成部36で生成された画像を取得し、記憶する。なお、画像生成部36は、収集部14から取得した計数データを画像記憶部37に格納してもよい。
【0034】
システム制御部38は、X線診断装置の全体制御を行う。具体的には、システム制御部38は、撮影制御部33を制御することで、撮影装置10で行なわれる撮影を制御する。また、システム制御部38は、画像生成部36及び画像記憶部37等を制御することで、画像生成処理を制御する。また、システム制御部38は、画像記憶部37が記憶する各種画像を、表示部32に表示するように制御する。また、システム制御部38は、入力部31や表示部32で表示されたGUIを用いて操作者が入力した各種情報に基づく制御信号を、該当する処理部に送信する。
【0035】
次に、図4を用いて、第1の実施形態に係るX線診断装置のX線照射条件制御処理について説明する。図4は、第1の実施形態に係るX線診断装置のX線照射条件制御処理の一例を示すフローチャートである。
【0036】
図4に例示するように、撮影制御部33は、X線撮影を開始するための条件として、X線照射条件の入力を受け付けたか否かを判定する(ステップS100)。X線照射条件を受け付けていないと判定した場合(ステップS100否定)、撮影制御部33は、X線照射条件の入力があるまで待機する。X線照射条件の入力を受け付けた場合(ステップS100肯定)、撮影制御部33は、高電圧発生部11及び駆動部16にX線照射条件を通知する。その結果、X線管12aはX線を照射する(ステップS101)。
【0037】
検出器13は、X線管12aから照射され、被検体Pを透過したX線を検出した信号を出力する。収集部14は、検出器13が出力した検出信号によって計測したエネルギー値を、複数のエネルギー区間のいずれかに振り分けることで、当該複数のエネルギー区間それぞれの光子計数データを作成する(ステップS102)。収集部14によって作成された光子計数データは、撮影制御部33及び画像生成部36へと逐次送信される。収集部14は、光子計数データを送信する手段としては、通信によるデジタル信号を用いても良いし、アナログ信号(カウント値に応じた逐次電圧変化)を用いても良い。
【0038】
撮影制御部33は、収集部14から受信した光子計数データを基に、高電圧発生部11及び駆動部16に、フィードバック信号を送信すべきか否かを判定する(ステップS103)。ステップS103の処理については後述する。
【0039】
フィードバック信号の送信は不要と判断した場合(ステップS103否定)、撮影制御部33の制御により、X線管12aはX線の照射を終了し、画像生成部36は、蓄積された光子計数データを基に、画像を生成する(ステップS105)。画像生成部36で、画像が生成されると、その結果は必要に応じて画像記憶部37に送信されるとともに、必要に応じて、システム制御部38を通じて表示部32に画像のデータが送信される。表示部32は、画像のデータを受信すると、画像を表示し(ステップS106)、一連の処理が終了する。
【0040】
一方、撮影制御部33が、フィードバック信号を送信すべきと判断した場合(ステップS103肯定)、撮影制御部33は、照射部12にフィードバック信号を送信する(ステップS104)。具体的には、撮影制御部33は、高電圧発生部11及び駆動部16に、X線照射条件を通知する。通知されたX線照射条件に基づき、X線管12aに供給される電圧、電流等が変更され、処理はステップS101に戻る。以降、ステップS103否定となるまで、フィードバック信号が送信され続ける。
【0041】
なお、第1の実施形態では、撮影制御部33が行うフィードバック制御処理は、ON−TIME(リアルタイム)で行われる。すなわち、X線が照射されている間に、X線照射条件がフィードバック信号により変更される。ステップS103否定となるまで、X線照射条件は、フィードバック信号により、リアルタイムで変更され続ける。
【0042】
次に、図5を用いて、図4に示すステップS103及びステップS104で撮影制御部33が行うフィードバック処理について説明する。図5は、第1の実施形態に係るX線診断装置のフィードバック処理の一例を示す図である。なお、以下では、説明を簡単にするために、光子計数データ(計数データ)として、エネルギーの異なる3つのエネルギーBIN(区間)に、光子計数データが振り分けられている場合を考える。BIN1が最も低エネルギー区間のエネルギーBINであり、BIN2が2番目にエネルギー区間の低いエネルギーBINであり、BIN3は最も高いエネルギー区間のエネルギーBINである。
【0043】
撮影制御部33は、各エネルギーBINに、光子のカウント数が、「H」(閾値を超える)であるか、または、「L」(閾値を超えない)であるかを判定する。すなわち、光子のカウント数が「H」であるBINでは、画像を生成するために十分な個数の光子のカウント数が集まったことを示し、「L」であるBINでは、不十分な個数しか集まっていないことを示す。例えば、撮影制御部33は、ROI内部の光子の平均カウント数が、所定の値を超えるかどうかを判断する。例えば、BIN1において、ROI内部の光子の平均カウント数が、閾値1を超えた場合、「H」と判定し、閾値1を超えなかった場合、「L」と判定する。同様に、BIN2において、ROI内部の光子の平均カウント数が、閾値2を超えた場合、「H」と判定し、閾値2を超えなかった場合、「L」と判定する。同様に、BIN3において、ROI内部の光子の平均カウント数が、閾値3を超えた場合、「H」と判定し、閾値3を超えなかった場合、「L」と判定する。すなわち、「H」と判定するか「L」と判定するかの閾値は、エネルギーBINごとに異なっても良い。
【0044】
図5に示すように、撮影制御部33は、BIN1,BIN2,BIN3のすべてについて、「H」と判定した場合、すべてのエネルギーBINについて、画像を生成するのに十分な個数の光子がカウントされたことから、これ以上のX線照射は不要と判断し(ステップS103否定)、フィードバック処理として、「END」の処理を行う。具体的には、X線照射を終了する。なお、検出器13がライン検出器である場合に、BIN1,BIN2,BIN3のすべてについて、「H」と判定したとき、撮影制御部33は、Y軸方向の次のステップに検出器13を移動させる指示が含まれたフィードバック信号を照射部12に送信する。そして、画像生成部36は、得られた光子計数データを基に、画像を生成する(ステップS105)。また、撮影制御部33は、BIN1,BIN2,BIN3のいずれかについて、「L」と判定した場合、撮影制御部33は、フィードバック信号を照射部12に送信する必要があると判断し(ステップS103肯定)、照射部12に、フィードバック信号を送信する。
【0045】
ここで、撮影制御部33が、照射部12に、フィードバック信号を送信する手段としては、通信によるデジタル信号を用いても良いし、アナログ信号(カウント値に応じた逐次電圧変化)を用いても良い。
【0046】
次に、フィードバック信号の例について説明する。フィードバック信号としては、例えば、「管電流を大きくする」「管電流を小さくする」「管電圧を高くする」「管電圧を低くする」の4種類の制御信号が考えられる。
【0047】
まず、管電流について考える。管電流が大きくなると、X線管12aから放出されるX線光子の数が増加する。管電流が大きくなると、すべてのエネルギーBINについて、光子のカウント数が、おおむね同じ割合で増大する。
【0048】
これに対して、管電圧が大きくなると、X線管12aから放出されるX線光子のエネルギーが増大する。照射されるX線のエネルギーのピークが高エネルギー側にシフトすることになるので、高エネルギーのエネルギーBINでの光子のカウントの増加率(カウントレート)が増加し、逆に低エネルギーのエネルギーBINでの光子のカウントの増加率が減少する。
【0049】
同様に、管電圧が小さくなると、X線管12aから放出されるX線光子のエネルギーが減少するので、高エネルギーのエネルギーBINでの光子カウントの増加率が減少し、逆に低エネルギーのエネルギーBINでの光子のカウントの増加率が増大する。
【0050】
このことを踏まえて、フィードバック処理は、図5に例示するように行われる。まず、はじめに、BIN1が「L」、BIN2が「L」、BIN3が「L」と判定された場合、すべてのエネルギーBINに関して、X線カウント数が不足しているので、管電流を上げて、全体的なX線カウント数を上げることが有効である。従って、フィードバック処理として、「管電流大」の処理を行う。具体的には、撮影制御部33は、照射部12に、管電流を増大させる旨の信号を送信する。
【0051】
次に、BIN1が「H」、BIN2が「H」、BiN3が「L」と判定された場合、低エネルギーのエネルギーBINでは、十分な個数の光子のカウント数が収集されているのに対して、高エネルギーのエネルギーBINでは、光子のカウント数が不足している。従って、フィードバック処理として、「管電圧高」の処理を行うのが適切である。具体的には、撮影制御部33は、照射部12に、管電圧を増大させる旨の信号を送信する。
【0052】
次に、BIN1が「L」、BIN2が「H」、BIN3が「H」と判定された場合、高エネルギーのエネルギーBINでは、十分な個数の光子のカウント数が収集されているのに対して、低エネルギーのエネルギーBINでは、光子のカウント数が不足している。従って、フィードバック処理として、「管電圧低」の処理を行うのが適切である。具体的には、撮影制御部33は、照射部12に、管電圧を低下させる旨の信号を送信する。
【0053】
同様な考え方で、BIN1が「H」、BIN2が「L」、BIN3が「L」と判定された場合、フィードバック処理として、「管電圧高」の処理を行う。また、BIN1が「L」、BIN2が「L」、BIN3が「H」の場合、フィードバック処理として、「管電圧低」の処理を行う。なお、BIN1が「H」、BIN2が「L」、BIN3が「H」の場合、或いは、BIN1が「L」、BIN2が「H」、BIN3が「L」の場合においては、管電圧を低エネルギー側にシフトしても高エネルギー側にシフトしてもうまくいかないと期待されることから、フィードバック処理として、「管電流大」の処理を行うのが適切である。
【0054】
(第1の実施形態の第1の変形例)
次に、第1の実施形態の第1の変形例について説明する。一部のエネルギーBINが「L」と判定されたとき、一般に、適切なフィードバックとしては、「管電流を増加させる」或いは、「管電圧を変化させる」の2通りの方法が存在しうる。第1の実施形態の第1の変形例では、そのような状況において、第1の実施形態と異なるフィードバック処理を行う。図6は、第1の実施形態の第1の変形例に係るX線診断装置のフィードバック処理の一例を示す図である。
【0055】
図6において、フィードバック処理は、『BIN1が「H」、BIN2が「L」、BIN3が「L」のケース』、及び、『BIN1が「L」、BIN2が「L」、BIN3「H」のケース』以外のフィードバック処理は、図3の場合における処理と同様である。図3では、『BIN1が「H」、BIN2が「L」、BIN3が「L」のケース』では、「管電圧高」とし、『BIN1が「L」、BIN2が「L」、BIN3「H」のケース』では、「管電圧低」としていた。一方、第1の実施形態の第1の変形例では、図4に示すように、双方のケースで、「管電流大」の処理を行う。すなわち、X線エネルギーのピークをシフトするのではなく、すべてのエネルギーBINのカウント数を底上げすることで、すべてのエネルギーBINで、必要な光子のカウント数を確保できるようにする。
【0056】
(第1の実施形態の第2の変形例)
第1の実施形態の第2の変形例として、開始時のX線照射条件や、フィードバック処理の内容が、保持された照射計画ごとに、予め設定されて(プリセットされて)いても良い。具体的には、撮影制御部33は、被検体Pに対するX線照射計画に連動したパラメータを用いて、X線照射条件に関する情報(制御情報、フィードバック信号)を照射部12に送信する。ここで、X線照射計画に連動したパラメータとして、例えば、注目部位(物質)、検査、患者体型、患者年齢等が挙げられる。一例として、撮影制御部33は、撮影対象部位、着目物質又は被検体Pの個体差に応じたX線照射計画に連動したパラメータを用いて、X線照射条件に関する制御情報を、照射部12に送信する。
【0057】
ここで、照射計画とは、撮影対象、被検体の固体差、用いる造影剤の種類、被検体の年齢等の情報を考慮し、照射するX線の照射時間、強度、エネルギー、範囲等を定めた計画のことを言う。
【0058】
撮影対象等の違いにより、適切なX線照射条件は異なる。第一の例として、例えば胸部を撮影する場合と腕を撮影する場合では、適切なX線の照射条件(管電圧、管電流)が異なる。撮影対象部位によって、X線の吸収率が異なり、また、撮影対象部位の厚みが異なるからである。第2の例として、被検体Pの固体差に応じて、適切なX線の照射条件が異なる。例えば、太っている人と、痩せている人では、体厚が異なるため、照射すべきX線のエネルギー及び、強さが異なる。第3の例として、造影撮影に用いる造影剤の種類や、「Material Decomposition処理」において注目する物質の種類によっても、適切なX線の照射条件が異なる。
【0059】
従って、X線照射計画に連動して、開始時のX線照射条件や、フィードバック処理の内容をプリセットしておくことで、撮影対象等に応じて適切な撮影をすることが可能になる。
【0060】
(第1の実施形態の第3の変形例)
第1の実施形態の第3の変形例として、各エネルギーBINについて、「H」(閾値より高い)又は「L」(閾値より低い)の2段階でX線カウント数を分類するのではなく、各エネルギーBINにX線のカウント数を多段階のレベルに分類し、それに応じたX線照射条件に関する制御信号を送信しても良い。
【0061】
図7及び図8は、第1の実施形態の第3の変形例に係るフィードバック処理の一例を説明するための図である。
【0062】
図7は、エネルギーBINごとに、X線のカウント数を多段階のレベルに分類する方法の一例を説明した図である。ROI内部の平均カウント数であるxに対して、各エネルギーBINに、第1の閾値「C1」、第2の閾値「C2」、第3の閾値「C3」、第4の閾値「C4」が設定される。図7に示す一例では、X線のカウント数が、判定条件「x<C1」を満たすと、当該エネルギーBINのカウントレベルとして、「L1」と判定され、判定条件「C1≦x<C2」を満たすと、「L2」と判定され、判定条件「C2≦x<C3」を満たすと、「L3」と判定され、判定条件「C3≦x<C4」を満たすと、「H1」と判定され、判定条件「C4≦x」を満たすと、「H2」と判定される。
【0063】
図5と同様に、エネルギーBINが、エネルギーBIN1,エネルギーBIN2,エネルギーBIN3の3つに振り分けられている場合について説明する。第3の変形例では、エネルギーBINでのカウント数の収集状況を多段階に分類し、分類されたカウントレベルに応じて、きめ細かな制御処理を行う。
【0064】
エネルギーBIN1,エネルギーBIN2,エネルギーBIN3がいずれも「L」(すなわち、「L1」「L2」「L3」のいずれかであった場合)であった場合、撮影制御部33は、制御信号として、「管電流大」、すなわちX線管の電流を増大させる制御信号を照射部12に送信する。
【0065】
第1の実施形態の第3の変形例においては、これらの場合、更にどの程度カウント数が足りないかに応じて、図8に示すように、フィードバック量を変化させる。
【0066】
エネルギーBINすべてが「L」であった場合において、一つ以上のエネルギーBINが「L1」であった場合、管電流が必要量に比べ大幅に不足しているので、撮影制御部33は、照射部12に、管電流を現在の管電流に比べて0.5mA増加させるように制御信号を送信する。また、エネルギーBINのカウントレベルすべてが、「L1」でなく、かつ、「L2」が一つ以上ある場合には、管電流は必要量に比べて中程度不足しているので、撮影制御部33は、照射部12に、管電流を現在の管電流に比べて0.2mA増加させるように制御信号を送信する。また、エネルギーBINのすべてのカウントレベルが「L3」であるか、または、エネルギーBINのすべてのカウントレベルが「L3」以上の場合には、管電流は微小な量だけ不足しているので、撮影制御部33は、照射部12に、管電流を現在の管電流に比べて0.1mA増加させるように制御信号を送信する。
【0067】
このように、各エネルギーBINについて、X線のカウント数を多段階のカウントレベルに分類することで、きめ細かい制御をすることができ、被検体Pが不必要な被ばくをすることを防ぐことができる。
【0068】
以上、説明したように、第1の実施形態及び第1の実施形態の各変形例では、上述した計数データ(光子計数データ)から得られる各BINの計数値に基づいて、例えば、カウント数が十分に収集されていないBINでのカウント数を上げるように、X線照射条件を適応的に変更する。従って、第1の実施形態では、被ばく量を低減することができる。
【0069】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、撮影制御部33が、X線照射条件に関する情報を照射部12に送信するかを決定する条件式として、ROI内部のX線カウント数の平均値を用いた条件式を使用していた。第2の実施形態では、X線カウント数以外の量を用いた条件式を用いて、制御処理を行う例について説明する。
【0070】
第2の実施形態では、複数のエネルギー区間ごとの単位時間当たりの計数値(例えば、関心領域中のエネルギー区間ごとの単位時間当たりの計数値)を基に、X線照射条件に関する情報を照射部12に送信する。具体的には、撮影制御部33は、ROI内部のX線カウント数の単位時間当たりの平均値(カウントレート)を用いた条件式を用いた制御処理を行う。
【0071】
ROI内部のX線カウント数の平均値ではなく、ROI内部のX線カウント数の単位時間当たりの平均値(カウントレート)を用いることの意義の一例として、例えば、パルスパイルアップの対策をすることができることがあげられる。
【0072】
パルスパイルアップについて簡単に説明する。検出器13は、X線光子が入射すると、入射したX線光子を電気信号に変換する。この電気信号は、X線光子が入射した直後に大きな値を持ち、時間の経過とともに減衰する。この電気信号の強度及び減衰速度を計測することにより、検出器13は、入射したX線光子を一つ一つ同定し、そのエネルギーを計測することができる。
【0073】
しかしながら、入射するX線光子の個数が増大すると、検出器13に入射した第1のX線光子が電気信号に変換され、その電気信号が減衰しない間に、第2のX線光子が入射して電気信号に変換され、第1のX線光子由来の電気信号の値に加算される。この現象をパルスパイルアップと呼ぶ。パルスパイルアップが起こる結果、後段の処理で、より高いエネルギーを持ったX線光子が1個入射したと誤って判定され、画像にアーチファクトが発生する。
【0074】
ところで、パルスパイルアップが起こる確率は、X線光子が単位時間に入射する個数が大きくなればなるほど大きくなる。従って、例えば、カウントレートを条件式として用いて、第1の実施形態と同じように制御処理を行いつつ、カウントレートが所定の閾値を超えたときには、それ以上管電流を増加させない、との処理を行うことで、パルスパイルアップ対策を行うことができる。
【0075】
また、撮影制御部33が、管電流の値を変化させるか管電圧の値を変化させるかいずれの制御信号を送るかの判断基準として、カウントレートを用いることもできる。例えば、撮影制御部33は、現在の管電流が、パルスパイルアップを起こす可能性が少ない低電流であれば管電流を増加させ、これ以上の管電流の増加はパルスパイルアップを招くと判断した場合には、管電圧の変化で対処すると判断しても良い。
【0076】
このように、第2の実施形態に係るX線診断装置は、制御信号送信の判断のための条件式として、ROI内部のX線カウント値の単位時間当たりの平均値(カウントレート)を用いても良い。これにより、第2の実施形態では、被ばく量を低減することができるとともに、パルスパイルアップが発生する確率も低減することができる。
【0077】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。これまでの実施形態では、フィードバック信号として、「管電圧高」「管電圧低」「管電流大」等、管電圧や管電流に関するフィードバック信号を送信していた。第3の実施形態では、撮影制御部33は、X線照射条件に関する制御情報として、X線管12aの線質フィルタ12cの制御に関する制御情報を照射部12に送信する。
【0078】
線質フィルタ12cは、上述したように、特定のエネルギーのX線をカットするために使用されるフィルタであり、例えば、アルミニウム等が用いられる。線質フィルタ12cは、典型的には軟線(波長が長くエネルギーが低いX線)をカットするために用いられる。エネルギーBINごとのカウント値をもとに、必要に応じて線質フィルタ12cを用いるか否かを制御することでも、撮影制御部33は、被検体Pの被ばく量を低減することができる。
【0079】
図9及び図10は、第3の実施形態に係るフィードバック処理の一例を説明するための図である。この例において、線質フィルタ12cは、エネルギー値が、「BIN1」の範囲のX線を、選択的にカットするものとする。エネルギーBIN2及びエネルギーBIN3については、カウントレベルは、第1の実施形態と同じように、「L」及び「H」の2段階とする。エネルギーBIN1に関しては、図9の判定条件を用いてカウントレベルの判定を行う。
【0080】
図9は、第3の実施形態において、線質フィルタ12cに対応するエネルギーBINであるエネルギーBIN1に対して、X線カウント数を、どのようなカウントレベルに割り振るかを説明した図である。ここで、エネルギーBIN1におけるX線カウント数を「x」、第1の閾値を「C1」、第2の閾値を「C2」とする。撮影制御部33は、判定条件「x<C1」を満たした場合、エネルギーBIN1のカウントレベルを、「L」と判断する。同様に、撮影制御部33は、判定条件「C1≦x<C2」を満たした場合、「H1」と判断する。同様に、撮影制御部33は、判定条件「C2≦x」を満たした場合、「H2」と判断する。
【0081】
図10は、第3の実施形態における線質フィルタ制御の一例を説明するための例である。エネルギーBIN1が「H1」、エネルギーBIN2が「H」、エネルギーBIN3が「L」であった場合、撮影制御部33は、「管電圧高」の制御信号を照射部12に送信し、管電圧を高電圧側にシフトさせ、X線のエネルギーを高エネルギー側にシフトさせる。管電圧が高電圧側にシフトする結果、X線のエネルギーが全体的に高エネルギー側にシフトし、エネルギーBIN1の範囲の計数データは、少なくなることが予想される。
【0082】
次に、エネルギーBIN1が「H2」、エネルギーBIN2が「H」、エネルギーBIN3が「L」であった場合、撮影制御部33は、エネルギーBIN1が「H1」であった場合と同様に、撮影制御部33は、「管電圧高」の制御信号を、照射部12に送信する。エネルギーBIN1のカウントレベルは「H2」であり、「管電圧高」の制御信号が照射部12に送信されることにより、エネルギーBIN1のカウント数が今後減少することを織り込んでもなお、エネルギーBIN1については、十分なX線光子のカウント数が得られている。従って、エネルギーBIN1については、もはやX線の照射は必要でないから、撮影制御部33は、「管電圧高+線質フィルタ」のフィードバック信号を送信することで、線質フィルタ12cを作動させ、エネルギーBIN1に属するエネルギーのX線光子が被検体Pに照射されるのを防ぐ。
【0083】
このように、第3の実施形態では、例えば、カウント数に基づいて管電圧及び管電流を変更する制御とともに、線質フィルタ12cを使用するか否かを制御することで、例えば、エネルギーBIN1に属するエネルギーのX線に関して、不要な被ばくを防ぐことができる。なお、第3の実施形態で説明した制御方法は、カウントレートに基づいて行われる場合であっても良い。
【0084】
(第4の実施形態)
これまでの実施形態では、一つの関心領域中のエネルギーBINごとのカウント数又は単位時間当たりのカウント数を基に、X線照射条件に関する情報を照射部12に送信していた。第4の実施形態では、複数の関心領域(ROI)が存在する場合について説明する。第4の実施形態では、撮影制御部33は、複数の関心領域それぞれの複数エネルギー区間ごとの計数データ(例えば、計数値)を基に、X線照射条件に関する情報を照射部12に送信する。
【0085】
また、第4の実施形態では、撮影制御部33が送信する制御情報の一例として、前述の「電流」「電圧」「線質フィルタ」だけでなく、「絞り」、若しくは「露光制御」に関する制御情報を、照射部12に送信する。すなわち、第4の実施形態では、撮影制御部33は、X線照射条件に関する制御情報として、絞り12b、又は、露光調整制御に関する制御情報を照射部12に送信する。ここで、「絞り」に関する制御情報とは、照射されるX線を絞り12bで絞ることにより、X線の照射される空間的範囲を制御する情報である。X線の照射される空間的範囲を制御することで、全体的に照射されるX線の量を制御することができる。また、「露光調整制御」も、同様に、照射されるX線の量を制御することであるが、典型的には、X線の照射される時間を制御することにより照射されるX線の量を制御することに力点が置かれているものを指す。一例としては、「露光調整制御」は、予め設定された照射時間だけX線を照射するように照射部12を制御することを指す。他の例としては、「露光調整制御」は、露光(露出)調整用の検出器(図示せず)で得られた入射X線量を示す電気信号に基づいて、電気信号が示す入射X線量が所定の値となったら、X線の照射を停止するように照射部12を制御することを指す。
【0086】
図11は、第4の実施形態に係るフィードバック処理の一例を説明するための図である。図11は、撮影制御部33が送信する制御情報の一例として、「絞り」制御を行う場合の一例を示している。また、図11では、領域1及び領域2の二つの関心領域が設定されており、絞り12bは、領域2に照射されるX線を遮断することにより、領域2に照射されるX線の量を制御することができるものとする。撮影制御部33は、X線のエネルギーの大きさ及び関心領域の両方を用いて振分けられた計数データを基に、制御情報を照射部12に送信する。
【0087】
まず、エネルギーBIN1において領域1及び領域2に対応する計数データのカウントレベルが「H」と判定され、エネルギーBIN2において領域1及び領域2に対応する計数データのカウントレベルが「H」と判定され、エネルギーBIN3において領域1及び領域2に対応する計数データのカウントレベルが「L」と判定された場合、撮影制御部33は、図11の上段に示すように、「管電圧高」の制御情報を照射部12に照射する。次に、図11の上段から図11の下段の状態に変化した場合、すなわち、領域2に関してはすべてのエネルギーBINが「H」と判定された場合、領域2に関してはもはやこれ以上のX線照射が不要であるから、撮影制御部33は、「領域2絞り制御」の信号を、更に、照射部12に送信する。
【0088】
このように、第4の実施形態に係るX線診断装置は、絞り12bを用いた制御も、計数データに基づくフィードバック信号に含めることで、被ばく量を効果的に低減することができる。なお、上記で説明した制御方法は、関心領域それぞれで、複数のエネルギーBINごとの計数値を束ねた計数値に基づいて、行われる場合であっても良い。また、第4の実施形態で説明した制御方法は、カウントレートに基づいて行われても良い。
【0089】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。これまでの実施形態では、フィードバック信号として、「管電圧高」「管電圧低」「管電流大」「線質フィルタ制御」「絞り制御」「露光制御」等、一つの種類のフィードバック信号を送信していた。第5の実施形態では、フィードバック信号として、複数のフィードバック信号の同時選択を行う。すなわち、第5実施形態では、撮影制御部33は、X線照射条件に関する情報として、2種類以上の情報を照射部12に送信する。
【0090】
図12は、第5の実施形態に係るフィードバック処理の一例を説明するための図である。図12では、図5と同様に、3つのエネルギーBINが設定されている。図12のフィードバック処理では、撮影制御部33は、『エネルギーBIN1が「H」、エネルギーBIN2「L」、エネルギーBIN3「L」の場合』及び『エネルギーBIN1が「L」、エネルギーBIN2が「L」、エネルギーBIN3が「H」の場合』以外のケースにおいては、図5及び図6の同様のフィードバック処理を行う。ここで、『エネルギーBIN1が「H」、エネルギーBIN2「L」、エネルギーBIN3「L」の場合』、図5では、撮影制御部33は、「管電圧高」のフィードバック処理を行なっている。また、『エネルギーBIN1が「L」、エネルギーBIN2が「L」、エネルギーBIN3が「H」の場合』、図5では、撮影制御部33は、「管電圧低」のフィードバック処理を行い、図6では、撮影制御部33は、「管電流大」のフィードバック処理を行っている。
【0091】
一方、第5の実施形態に係る撮影制御部33は、図12に示すように、『エネルギーBIN1が「H」,エネルギーBIN2「L」、エネルギーBIN3「L」の場合』、フィードバック処理として、「管電流大」及び「管電圧高」の2つの制御信号を、照射部12に送信する。また、第5の実施形態に係る撮影制御部33は、図12に示すように、『エネルギーBIN1が「L」、エネルギーBIN2が「L」、エネルギーBIN3が「H」の場合』、フィードバック処理として、「管電流大」及び「管電圧低」の2つの制御信号を、照射部12に送信する。
【0092】
第5の実施形態では、2種類以上の制御信号を送信することで、精密なX線照射条件の制御を行なうことができる。なお、第5の実施形態では、X線照射条件の履歴を示す履歴情報に、領域1及び領域2のそれぞれの位置を示す情報が含まれる。
【0093】
(第5の実施形態の第1の変形例)
第5の実施形態の第1の変形例では、管電圧及び管電流の値を同時に制御する場合において、管電圧及び管電流の値をどのような値に定めるかを、所定の方法で算出する。図13は、第5の実施形態の第1の変形例を説明するための図である。図13では、管電圧及び管電流のフィードバック量を算出する方法の一例を示している。
【0094】
図13は、撮影制御部33が照射部12に送信する制御情報(フィードバック量が管電圧変化量δV及び管電流変化量δIであること)を示す。以下、管電流がIであり、X線のエネルギーがEであるときの、X線カウント数fを、管電流及びX線のエネルギーの関数としてf(E,I)と定義する。
【0095】
被ばく量Pは、管電圧変化量δV及び管電流変化量δIが定まれば一意的に定まるから、被ばく量Pは、δV及びδIの関数となる。従って、撮影のために必要な所定の条件を満たすという制約条件のもと、P(δV,δI)を最小化することで目的関数が得られる。ここで、「撮影のために必要な所定の条件を満たす」ための十分条件の一例として、例えば、「管電圧及び管電流を変化させたときの、i番目のエネルギーBINの予想カウント数Xiが、当該エネルギーBINに対する閾値Thiを上回る」という条件が考えられる。
【0096】
予想カウント数Xiは、現在のi番目のエネルギーBINのカウント数Ci、定数Ai、Biを用いて、「Xi=Ci×(1+Ai×δV+Bi×δI)」のように書くことができる。
【0097】
ここで、Ciは現在のカウント数であり、係数Ai、Biについては、「Xi=f(E+δV,I+δI)≒f(E,I)+δV×∂f/∂E+δI×∂f/∂I」であることに注意すると、管電流I及びX線のエネルギーEの関数としてのX線カウント数fから、容易に求めることができる。
【0098】
制約条件及び目的関数の両者が、δV及びδIの関数として一意的に定まるから、線形計画法、最小二乗法、ラグランジュの未定乗数法、変分法等、所定の方法を用いることにより、撮影制御部33は、適切な管電圧変化量δV及び管電流変化量δIを算出することができる。その結果、撮影制御部33は、当該フィードバック量を照射部12に送信することができる。上記の変形例では、2種類以上の制御信号として設定する2種類以上のフィードバック量を高精度に算出することができる。
【0099】
(第5の実施形態の第2の変形例)
第5の実施形態の第2の変形例では、複数の種類の計数データを用いて、どのような制御信号を送るかを判断する。すなわち、第5の実施形態の第2の変形例では、撮影制御部33は、関心領域中のエネルギー区間ごとの計数値、関心領域中のエネルギー区間ごとの単位時間当たりの計数値、関心領域の全エネルギー区間の計数値及び関心領域の全エネルギー区間の単位時間当たりの計数値のうち、2種類以上の情報をもとに、X線照射条件に関する情報を照射部12に送信する。
【0100】
図14は、第5の実施形態の第2の変形例を説明するための図である。図14は、第5の実施形態の第2の変形例で撮影制御部33が行うX線照射条件に関する情報の決定方法の一例を示している。第5の実施形態の第2の変形例においては、X線照射条件を決定するための条件式として、X線カウント数及び、単位時間当たりのX線カウント数(カウントレート)の両方を用いる。
【0101】
ここで、エネルギーBINは、今までと同様に3つ存在し、低エネルギーのエネルギーBIN1及び、2番目に低いエネルギーのエネルギーBIN2においては、「カウント数」及び「カウントレート」いずれの基準においても、「L」となっている場合を用いて説明する。
【0102】
図14において、エネルギーBIN3において、「カウント数」が「L」と判定され、「カウントレート」も「L」と判定された場合は、エネルギーBIN3は、カウント数、カウントレートいずれの基準を用いても「L」であり、エネルギーBIN1、エネルギーBIN2も「L」であるから、図5と同様に、撮影制御部33は、「管電流大」の制御信号を、照射部12に送信する。同様に、「カウント数」が「H」と判定され、「カウントレート」も「H」と判定された場合は、エネルギーBIN3は、カウント数、カウントレートいずれの基準を用いても「H」であるから、エネルギーBIN1が「L」、エネルギーBIN2が「L」であることを考慮し、撮影制御部33は、「管電圧低」の制御信号を、照射部12に送信する。
【0103】
次に、エネルギーBIN3において、「カウント数」が「L」と判定され、「カウントレート」では「H」と判定されたケースを考える。この場合、カウントレートが閾値を超えており、これ以上電流を流した場合、第2の実施形態において述べたように、パルスパイルアップを引き起こす危険性がある。従って、撮影制御部33は、フィードバックを行う制御信号として、「管電流大」を選択せず、「管電圧低」の制御信号を、照射部12に送信する。
【0104】
最後に、エネルギーBIN3において、「カウント数」が「H」と判定され、「カウントレート」が「L」と判定されたケースを考える。この場合、カウントレートに関しては閾値を下回っていることから、管電流を増加させても、パルスパイルアップが起こる危険性が少ない。従って、撮影制御部33は、フィードバックを行う制御信号として、「管電圧低」及び「管電流大」の2つの制御信号を、照射部12に送信する。
【0105】
このように、第5の実施形態の第2の変形例に係るX線診断装置は、複数の種類の計数データを、フィードバック信号を決定するための判断材料として用いる。これにより、第5の実施形態の第2の変形例では、より精密なフィードバック制御を行うことができる。なお、第5の実施形態の第2の変形例は、関心領域が複数設定されている場合、各関心領域で上記の制御を行なっても良い。また、第5の実施形態の第2の変形例は、関心領域が複数設定されている場合、全エネルギー区間の計数データを束ねた計数データ(カウント数、又は、カウントレート)を用いて、各関心領域で上記の制御を行なっても良い。
【0106】
(第6の実施形態)
これまでの実施形態では、制御信号のフィードバック量(管電圧の変化量、管電流の変化量等)は、固定値であった。第6の実施形態では、フィードバック量をON TIME(X線照射時間中)でリアルタイムに変化させる例を説明する。第6の実施形態に係るX線診断装置では、撮影制御部33は、計数データに応じて、X線照射条件に関する情報に含める制御量(フィードバック量)を変更する。図15は、第6の実施形態に係るフィードバック処理の一例を説明するための図である。
【0107】
図15においては、図7及び図8のセットアップと同様、エネルギーBIN1、エネルギーBIN2、エネルギーBIN3の三つのエネルギーBINに振り分けられているケースを考える。図15のカウントレベル「L1」「L2」「L3」に対する判定条件は、それぞれ、図7に与えられている。エネルギーBINのカウントレベルに応じて、異なる電流のフィードバック量が与えられる。図8の時の場合と同様、全てのエネルギーBINが「L」であったときの、フィードバック制御の例が、図15に与えられている。
【0108】
ここで、撮影制御部33は、「管電流大」という項目に対して、「現在のフィードバック量」という値を保持する。「現在のフィードバック量」の初期値としては、例えば、「0mA」という量が与えられる。撮影制御部33は、制御信号として、「管電流大」という項目が選ばれると、「現在のフィードバック量」の値を更新する。例えば、「現在のフィードバック量」が「0mA」で、エネルギーBINが、「L1一つ以上」ならば、変更後のフィードバック量は、現在のフィードバック量を「x」として、「x+0.5」で与えられる。すなわち、変更後のフィードバック量は、「0+0.5=0.5mA」となる。従って、撮影制御部33は、照射部12に、管電流の値を、現在の値に加えて「0.5mA」増加させるよう制御信号を送信する。このとき、撮影制御部33は、「変更後のフィードバック量」の値を、「現在のフィードバック量」として保持させる。従って、撮影制御部33が照射部12に、当該制御信号を送信すると、「現在のフィードバック量」は、「0.5mA」となる。
【0109】
例えば、「現在のフィードバック量=0.5mA」の状態で、撮影制御部33が、新たな計数データを収集部14から取得したとする。このとき、管電流が増加したことにより、エネルギーBINそれぞれのカウントレベルが、「L1」がなく、かつ、「L2」が一以上となったとする。その場合、変更後のフィードバック量は、「x+0.2」であり、現在のフィードバック量「x」は、「0.5mA」であるから、変更後のフィードバック量は、「0.5+0.2=0.7」であり、「0.7mA」となる。撮影制御部33は、照射部12に、管電流の値を、現在の値に加えて0.7mA増加させるよう制御信号を送信し、同時に、現在のフィードバック量「x」は、「0.7mA」となる。
【0110】
或いは、 例えば、「現在のフィードバック量=0.5mA」の状態で、撮影制御部33が、新たな計数データを収集部14から取得し、管電流が増加したことにより、エネルギーBINそれぞれのカウントレベルが、すべて「L3」になったとする。その場合、変更後のフィードバック量は、「x+0.1」であり、現在のフィードバック量「x」は、「0.5mA」であるから、変更後のフィードバック量は、「0.5+0.1=0.6」であり、「0.6mA」となる。撮影制御部33は、照射部12に、管電流の値を、現在の値に加えて0.6mA増加させるよう制御信号を送信し、同時に、現在のフィードバック量「x」は、「0.6mA」となる。
【0111】
次に、撮影制御部33が、「管電流大」という項目以外の項目を、制御信号として選択した場合における動作について説明する。撮影制御部33は、「管電流大」という項目以外の項目が、制御信号として選択された場合、当該「管電流大」に対応する「現在のフィードバック量」の値を、初期値にリセットする。例えば、現在のフィードバック量xが「0.6mA」であるときに、制御信号として、「管電流小」や、「管電圧高」の項目が、制御信号として選択された場合、「管電流大」に対応するフィードバック量xの値は、「0mA」となる。同時に、「管電流小」や、「管電圧高」の項目に対応する「現在のフィードバック量」の値が、所定の値に更新されることになる。
【0112】
X線照射条件を、計数データに応じて、動的に変更させることで、現在のX線照射条件がどのようなものであっても、最適なX線照射条件へと、早く近づくことができる。例えば、「現在の電圧値」が「20keV」であったとして、「最適な電圧値」が、「20.1keV」又は「50keV」の場合を考える。フィードバック量が0.1keVであった場合、20.1keVには、1回のフィードバックで到達できる一方、50keVには、(50−20)/0.1=300回のフィードバックを要する。一方、フィードバック量が10keVであった場合、50keVへは、3回のフィードバックで到達できる一方、20.1keVには、1回当たりのフィードバック量が大きすぎて、到達することができない。
【0113】
一方、計数データに応じて、フィードバック量を動的に変更させた場合、すなわち、変更後のフィードバック量を、現在のフィードバック量に0.1keVを加えるとした場合、フィードバック量が加速度的に増加する結果、20.1keVには1回、50keVには24回で到達することができる。すなわち、第6の実施形態の第1の変形例では、X線照射条件のフィードバック量を動的に変更させることで、最適なX線照射条件へと速やかに近づけることができ、被ばく量を更に低減することができる。
【0114】
(第6の実施形態の第2の変形例)
第6の実施形態の第2の変形例として、フィードバック量の代わりに、フィードバックの条件式に用いられるパラメータを、動的に変更しても良い。第6の実施形態の第2の変形例では、撮影制御部33は、計数データに応じてパラメータを変更することで、X線照射条件に関する情報を決定する。
【0115】
動的に変更されるパラメータの一例としては、フィードバック信号を送信する否かを判定するための時間間隔が挙げられる。例えば、フィードバック信号を送信する否かを判定するための時間間隔が「1秒間」であり、カウントレートに対して「Thr」が設定されているとする。かかる場合、撮影制御部33は、各エネルギーBINのカウントレートのいずれかが「Thr」を超えている場合、カウント数が急激に上昇していると判断し、時間間隔を「0.5秒間」に変更して、フィードバック信号を送信する否かを判定する。
【0116】
第6の実施形態の第2の変形例では、例えば、計数値の変化率に応じて、フィードバック信号を送信する否かを判定するための時間間隔を動的に短縮することで、被ばく量を確実に低減することができる。
【0117】
(第7の実施形態)
第1〜第6の実施形態では、X線診断装置として、被検体Pが立った状態で撮影する、いわゆる立位撮影台方式でX線一般撮影を行う装置を一例として説明した。しかし、第1〜第6の実施形態で説明した内容は、X線一般撮影を行う装置以外のX線診断装置以外にも適用可能である。図16及び図17は、第7の実施形態を説明するための図である。
【0118】
ここで、図16は、第1〜第6の実施形態で説明した内容を適用可能なX線診断装置として、上部消化管検査用のX線一般撮影装置の構成例を示している。また、図17は、第1〜第6の実施形態で説明した内容を適用可能なX線診断装置として、マンモグラフィの構成例を示している。なお、図16及び図17では、説明を簡単にするため、図1に示すX線診断装置を構成する複数の処理部それぞれに対応する処理部に対して同一の符号を付与している。
【0119】
図16に例示する上部消化管検査用のX線一般撮影装置は、例えば、天井に設置されたX線管12a、線質フィルタ12b及び絞り12cを有する照射部12から、下向きにX線が照射され、被検体Pが横になるベッドの裏側に設置された検出器13が、X線の入射に応じて検出信号を出力する。ここで、上部消化管検査用のX線一般撮影装置は、照射部12及びベッドが臥位から立位、立位から臥位等、様々な状態に移動されることで、例えば、被検体Pの上部消化管の造影撮影が行われる。すなわち、臥位撮影台方式のX線一般撮影装置では、複数回X線撮影が行われるので、撮影時間の短縮及び被ばく量の低減が要求される。従って、かかる構成の元、図16に例示する臥位撮影台方式のX線一般撮影装置が、第1〜第6の実施形態で説明したX線照射条件の適応的変更処理を行うことで、撮影時間の短縮及び被ばく量の低減を実現することができる。
【0120】
また、図17に例示するマンモグラフィは、X線管12a、線質フィルタ12b及び絞り12cを有する照射部12から、圧迫板及び撮影台で挟み込まれて伸展された被検体Pの乳房20に対してX線が照射される。そして、図17に例示するマンモグラフィは、撮影台の裏側に設置された検出器13が、X線の入射に応じて検出信号を出力する。通常、マンモグラフィを用いた検査では、左右それぞれの乳房20を撮影台に抑えつけて圧迫し、所定の厚みになったところで、例えば、左右それぞれ撮影方向を変えて2枚ずつ、合計で4枚撮影する。かかる場合、4回のX線曝射が必要であり、また、乳房20が圧迫される被検体Pとっては撮影時間の短縮が要求される。従って、かかる構成の元、図17に例示するマンモグラフィが、第1〜第6の実施形態で説明したX線照射条件の適応的変更処理を行うことで、撮影時間の短縮及び被ばく量の低減を実現することができる。
【0121】
(第8の実施形態)
第1〜第7の実施形態では、X線診断装置が静止画としてのX線画像を生成する例を用いて説明した。これに対して、第7の実施形態では、X線透視撮影を行うX線診断装置において、複数のエネルギー区間それぞれの計数データに基づくX線照射条件の適応的変更が行われる場合について説明する。
【0122】
ここで、X線透視撮影とは、X線を用いてリアルタイムに観察部位を時系列に沿って撮影することを言う。X線透視撮影装置としてのX線診断装置は、複数の撮影時間で時系列に沿った複数の静止画を生成し、生成した複数の静止画を、順次表示することで、X線透視画像の動画表示を行う。例えば30fpsの場合、X線透視撮影装置は、1秒間当たり30フレーム(30個)の静止画を撮影する。
【0123】
第1〜第7の実施形態で説明した制御処理は、1フレームの間の処理、すなわち、一つの静止画を作成する過程でのフィードバック制御処理であった。第8の実施形態に係るX線診断装置は、例えば、あるフレームにおいて得られた計数データを基に、次のフレームにおけるX線照射条件を決定する。
【0124】
図18は、第8の実施形態に係るX線診断装置の構成例を示すブロック図である。なお、図18では、説明を簡単にするため、図1に示すX線診断装置を構成する複数の処理部それぞれに対応する処理部に対して同一の符号を付与している。図18に例示するX線診断装置は、アンギオ(血管造影)検査等を行う装置であり、照射部12及び検出器13を保持するCアームを有し、駆動部16は、Cアームを回転及び移動させる。図18に例示するX線診断装置は、被検体Pがベッドに載置した状態で、透視撮影に適したX線照射角度となるまで、Cアームが回転及び移動される。また、図18に例示するX線診断装置は、被検体Pがベッドに載置した状態で、Cアームが様々な位置に回転及び移動されることで、複数のX線照射角度で透視撮影を行う。
【0125】
かかる構成の元、第8の実施形態に係る収集部14は、複数のエネルギー区間の計数データを、複数フレームに渡って収集する。そして、第8の実施形態に係る撮影制御部33は、X線照射条件に関する情報として、収集部14が収集した複数のエネルギー区間の計数データに基づいて、次に収集部14が収集する複数のエネルギー区間の計数データのためのX線照射条件を決定する。図19は、第8の実施形態に係るフィードバック処理の一例を説明するための図である。
【0126】
図19の横軸は時刻「t」を表し、フレーム1の静止画、フレーム2の静止画、フレーム3の静止画が時系列に沿って順次生成されることを示している。また、図19で、フレーム1、フレーム2、フレーム3それぞれからの下向きの矢印は、X線照射から、各フレームでの画像が生成されるまでの処理の流れを概念的に表したものである。すなわち、一つのフレームにおいて、第1の段階として、X線が被検体Pに照射される。第2の段階として、被検体Pを透過したX線を、検出器13が検出する。第3の段階として、収集部14が、検出器13からの出力信号を、エネルギーBINに振分け、計数データを作成する。計数データは、撮影制御部33において撮影制御処理に用いられる。
【0127】
なお、1フレーム分のX線照射が終了すると、画像生成部36は、収集部14から受け渡された計数データを基に、「Energy Weighted処理」や「Material Decomposition処理」等により、一つのX線画像を生成する。生成された画像は、必要に応じて、画像記憶部37に保存され、或いは、システム制御部38の制御により表示部32で表示される。
【0128】
ここで、1フレーム分のX線照射が終了すると、第8の実施形態に係る撮影制御部33は、収集部14から受け渡された計数データを基に、どのようなフィードバック信号を照射部12に送信するかを決定する。フィードバック信号の種類及びフィードバック量については、撮影制御部33は、第1〜第7の実施形態で説明してきた方法のいずれかを用いる。ただし、これまでの実施形態では、フィードバック信号が、撮影制御部33から照射部12にリアルタイムで送信されていた。一方、第8の実施形態では、撮影制御部33は、1フレーム分のX線照射が終了したのち、次のフレームにおけるX線照射条件を指定するフィードバック信号を送信する。
【0129】
このようにして、フレーム1においてX線照射が終了すると、撮影制御部33は、図19に示すように、フレーム2におけるX線照射条件を決定し、決定したX線照射条件に応じたフィードバック信号を照射部12に送信する。また、画像生成部36は、フレーム1に対応する静止画を生成する。次に、フレーム2において、X線照射が開始され、その後X線照射が終了すると、撮影制御部33は、図19に示すように、フレーム3におけるX線照射条件を決定し、決定したX線照射条件に応じたフィードバック信号を照射部12に送信する。また、画像生成部36は、フレーム2に対応する静止画を生成する。この処理が、撮影終了まで繰り返される。
【0130】
このような処理を行うことで、第8の実施形態では、X線透視画像の連続撮影においても、被ばく量を低減することができる。
【0131】
(第8の実施形態の第1の変形例)
上記では、撮影制御部33のフィードバック処理が、1フレームの終了ごとに行う場合について説明した。しかし、第8の実施形態はこれには限られない。第8の実施形態の第1の変形例では、撮影制御部33は、1フレームの間で、ON−TIME(リアルタイム)でフィードバック信号を照射部12に送信しつつ、1フレームが終了すると、次のフレームにおけるX線照射条件に関するフィードバック信号を同時に送信する。ここで、ON−TIMEで、及び、1フレーム終了ごとに、撮影制御部33が照射部12に送信するフィードバック信号の種類、フィードバック量、並びに、フィードバック信号を決定するための条件式については、第1〜第7の実施形態で説明したいずれかの方法を用いることが可能である。
【0132】
第8の実施形態の第1の変形例では、X線透視画像の連続撮影において、フレーム間だけでなく、フレーム内でも計数データに基づくフィードバック制御を行うことで、被ばく量を更に低減することができる。
【0133】
(第8の実施形態の第2の変形例)
第8の実施形態の第2の変形例では、撮影制御部33は、あるフレームで決定したX線照射条件が、以降の連続した複数フレーム(例えば、3フレーム)において変更する必要がなかった場合、最適なX線照射条件が決定されたと判断して、フィードバック信号の送信を停止する。一方、あるフレームで決定したX線照射条件を順次変更した場合には、フィードバック信号の送信処理を継続する。
【0134】
かかる第8の実施形態の第2の変形例では、X線照射条件が安定して最適であると判断した場合は、このX線照射条件を維持して、不要な撮影制御処理を行うことを回避することができる。なお、第8の実施形態の第2の変形例では、X線照射条件が安定して最適であると判断した場合であっても、例えば、10フレームごとに、X線照射条件を変更する必要があるか否かを判定し、必要がある場合は、再度、X線照射条件を決定して、フィードバック信号の送信処理を行っても良い。
【0135】
(第8の実施形態の第3の変形例)
第8の実施形態の第3の変形例では、撮影制御部33は、X線照射条件が安定して最適であると判断した場合でも、バックグランド処理として、X線照射条件を変更する必要があるか否かを継続して判定し、必要がある場合は、再度、X線照射条件を決定して、フィードバック信号の送信処理を行う。これにより、X線照射条件が安定している場合において、途中で何らかの事態が発生してX線照射条件が不安定になった場合にも、適切にフィードバック処理を行うことができる。
【0136】
(第9の実施形態)
第1〜第8の実施形態では、複数のエネルギー区間それぞれの計数データに基づくX線照射条件のフィードバック制御が、X線診断装置において行われる場合について説明した。しかし、第1〜第8の実施形態で説明したX線照射条件のフィードバック制御は、X線CT装置に適用される場合であっても良い。図20は、第9の実施形態に係るX線CT装置の構成例を示すブロック図である。
【0137】
第9の実施形態に係るX線CT装置は、架台装置としての撮影装置100、寝台装置200、及び、コンソール装置としての制御・データ処理装置300を備える。撮影装置100は、例えば、高電圧発生部110、X線管120aと線質フィルタ120bと絞り120cとを有する照射部120、検出器130、収集部140、回転フレーム151及び架台駆動部160を備える。高電圧発生部110は、図1の高電圧発生部11に対応する。また、X線管120aと線質フィルタ120bと絞り120cとを有する照射部120は、図1のX線管12aと線質フィルタ12bと絞り12cとを有する照射部12に対応する。また、収集部140は、図1の収集部14に対応する。ただし、X線CT装置では、回転フレーム151により、照射部120と検出器130とが被検体Pを挟んで対向するように支持され、回転フレーム151は、架台駆動部160によって被検体Pを中心した円軌道にて高速に回転する。
【0138】
すなわち、照射部120は、X線を照射するX線管120aを含む。また、検出器130は、X線の入射に応じて検出信号を出力する。収集部140は、検出器130が出力した検出信号によって計測されたエネルギー値を、複数のエネルギー区間のいずれかに振り分けることで、当該複数のエネルギー区間それぞれの計数データを収集する。収集部140は、複数の管球位相(複数のビュー)それぞれで、複数のエネルギー区間それぞれの計数データを収集する。
【0139】
また、図20に示すように、寝台装置200は、被検体Pを載せる装置であり、天板220と、寝台駆動装置210とを有する。天板220は、被検体Pが載置されるベッドであり、寝台駆動装置210は、天板220をZ軸方向へ移動して、被検体Pを回転フレーム151内に移動させる。
【0140】
また、図20に示すように、制御・データ処理装置300は、入力部310、表示部320、撮影制御部330、前処理部340、投影データ記憶部350、画像再構成部360、画像記憶部370及びシステム制御部380を備える。
【0141】
入力部310及び表示部320は、図1の入力部31及び表示部32に対応する。また、撮影制御部330は、図1の撮影制御部33に対応し、後述するシステム制御部380の制御のもと、撮影装置100及び寝台装置200の動作を制御することで、撮影装置100における計数データの収集処理を制御する。第9の実施形態では、撮影制御部330は、収集部140で収集された複数のエネルギー区間それぞれの計数データに基づいて、X線照射条件に関する情報を照射部120に送信する。なお、撮影制御部330については、後述する。
【0142】
前処理部340は、収集部140から送信された計数データに対して、対数変換処理、オフセット補正、感度補正、ビームハードニング補正等の補正処理を行なうことで、投影データを生成する。
【0143】
投影データ記憶部350は、前処理部340により生成された投影データを記憶する。すなわち、投影データ記憶部350は、X線CT画像データを再構成するための投影データ(補正済み計数データ)を記憶する。
【0144】
画像再構成部360は、投影データ記憶部350が記憶する投影データ(補正済み計数データ)を用いて、撮影部位における画像(X線CT画像)を再構成する。再構成方法としては、種々の方法があり、例えば、逆投影処理が挙げられる。また、逆投影処理としては、例えば、FBP(Filtered Back Projection)法による逆投影処理が挙げられる。また、画像再構成部360は、逐次近似法により、再構成処理を行っても良い。また、画像再構成部360は、X線CT画像や、再構成前の投影データに対して各種画像処理を行なうことで、単色X線画像や密度画像、実効原子番号画像等様々な画像を生成する。かかる画像処理としては、例えば、再構成画像レベルや、投影データレベルでの「Energy Weighted処理」や、再構成画像レベルや、投影データレベルでの「Material Decomposition処理」が挙げられる。画像再構成部360は、再構成したX線CT画像や、各種画像処理により生成した画像を画像記憶部370に格納する。
【0145】
システム制御部380は、撮影装置100、寝台装置200及び制御・データ処理装置300の動作を制御することによって、X線CT装置の全体制御を行う。具体的には、システム制御部38は、撮影制御部330を制御することで、撮影装置100で行なわれるCTスキャンを制御する。また、システム制御部380は、前処理部340や、画像再構成部360を制御することで、制御・データ処理装置300における画像再構成処理や画像生成処理を制御する。また、システム制御部380は、画像記憶部370が記憶する各種画像データを、表示部320に表示するように制御する。
【0146】
ここで、X線診断装置で得られる1方向(1ビュー)での計数データ(又は、画像)は、X線CT装置で収集される1方向(1ビュー)での計数データに基づく投影データと見なすことができる。ここで、ビューとは、X線管120a、被検体P及び検出器130の相対的位置関係のことを言う。X線CT装置は、回転フレーム151を回転させることにより、X線管120a、被検体P及び検出器130の間の互いの位置関係を少しずつ変えながら撮影して、複数方向の各エネルギー区間の計数データを収集し、複数方向の各エネルギー区間の計数データから生成した複数方向の各エネルギー区間の投影データを再構成することで、様々な画像を生成する。
【0147】
X線CT装置では、例えば、回転フレーム151が1回転すると、1フレーム分の投影データが収集される。ここで、撮影開始時から、回転フレーム151の最初の1回転を第1サイクル、回転フレーム151の2回目の1回転を第2サイクルと呼ぶ。
【0148】
撮影制御部330は、第1サイクルで得られた複数ビューそれぞれでの各エネルギー区間の計数値の統計値(最小値、最大値、平均値、中央値等)、又は、単位時間当たりの計数値の統計値を用いて、第2サイクルにおけるX線照射条件を決定し、決定したX線照射条件に基づくフィードバック信号を照射部120に送信する。或いは、撮影制御部330は、第1サイクルで得られた複数ビューそれぞれでの各エネルギー区間の計数値、又は、単位時間当たりの計数値の統計値を用いて、第2サイクルにおける各ビューにおけるX線照射条件を決定し、決定した各ビューにおけるX線照射条件に基づくフィードバック信号を照射部120に送信する。図21A及び図21Bは、第9の実施形態に係るX線CT装置が実行する処理の一例を説明するための図である。図21A及び図21Bは、横軸をビューとし、縦軸を管電圧とするグラフを示す。図21Aには、第1サイクルにおける各ビューにおける管電圧の大きさを示すグラフ80が示されている。図21Bには、グラフ80に加えて、第2サイクルにおける各ビューにおける管電圧の大きさを示すグラフ81が示されている。例えば、撮影制御部330は、第1サイクルにおいて、各ビューにおける管電圧の大きさが、図21Aのグラフ80が示す各ビューにおける管電圧の大きさとなるように管球12aを制御する。そして、撮影制御部330は、第1サイクルで得られた複数のビューそれぞれにおける各エネルギー区間における計数値に基づいて、第2サイクルにおいて、各ビューにおける管電圧の大きさが、図21Bのグラフ81が示す各ビューにおける管電圧の大きさとなるように管球12aを制御する。第1サイクル撮影制御部330は、上記の処理をX線CT画像の撮影が終了するまで、繰り返す。
【0149】
或いは、撮影制御部330は、あるビューで収集された計数データに基づいて、次のビューで計数データを収集するためのX線照射条件を決定し、決定したX線照射条件に基づくフィードバック信号を照射部12に送信しても良い。
【0150】
また、撮影制御部330は、あるサイクルで得られた複数のビューそれぞれにおける各エネルギー区間における計数値に基づいて、次のサイクルにおける天板220のZ軸方向の移動を制御することもできる。例えば、撮影制御部330は、あるサイクルで得られた複数のビューそれぞれにおける各エネルギー区間における計数値に基づいて、次のサイクルにおける天板220のZ軸方向の移動量を算出し、算出した移動量分だけ天板220をZ軸方向に移動させる指示を寝台駆動装置210に送信する。これにより、寝台駆動装置210は、算出した移動量分だけ天板220をZ軸方向に移動させる。
【0151】
このように、第9の実施形態では、第1〜第8の実施形態で説明したフィードバック制御を、X線CT装置に適用することで、フォトンカウンティングCTにおいても被ばく量を低減することができる。
【0152】
なお、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0153】
また、上記の第1〜第9の実施形態で説明した制御方法は、予め用意された信号制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この制御プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0154】
以上述べた少なくとも一つの実施形態によれば、被ばく量を低減することができる。
【0155】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0156】
12 照射部
13 検出器
14 収集部
33 撮影制御部
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図21B