特許第6373691号(P6373691)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373691
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】鉄筋接合用工具
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/00 20060101AFI20180806BHJP
   B23K 37/053 20060101ALI20180806BHJP
   B25B 5/16 20060101ALI20180806BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   B23K20/00 330C
   B23K37/053 G
   B25B5/16
   E04G21/12 105D
   E04G21/12 105E
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-183521(P2014-183521)
(22)【出願日】2014年9月9日
(65)【公開番号】特開2016-55313(P2016-55313A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】593001897
【氏名又は名称】岩下 和久
(73)【特許権者】
【識別番号】394024983
【氏名又は名称】東海ガス圧接株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100067873
【弁理士】
【氏名又は名称】樺山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100090103
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 章悟
(72)【発明者】
【氏名】岩下 和久
(72)【発明者】
【氏名】宮口 樹哉
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−97388(JP,U)
【文献】 特開2008−307588(JP,A)
【文献】 特開2008−212997(JP,A)
【文献】 特開平8−291634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/00
B25B 5/16
E04G 21/12
B23K 37/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合対象である一対の鉄筋の一方を挟持するために支持体に固定されている固定クランプ部と、
前記支持体に対して摺動する摺動体と一体で前記支持体に対して移動する、前記鉄筋の他方を挟持する摺動クランプ部と、
前記摺動体と前記摺動クランプ部とを連結した延長部と、
前記延長部を挟んで設けられ、該延長部を該延長部の厚さ方向に押し動かすことで前記摺動クランプ部に挟持されている前記鉄筋の断面中心の位相をずらす調整部材と、を備え、
前記調整部材は、前記厚さ方向両面に対向する片部と、該片部において前記摺動体の摺動方向と前記延長部の延長方向とのうちの少なくとも前記延長方向を含む方向に沿って複数箇所に形成され、ネジの先端が前記延長部に向けて挿通される締結部とを有する鉄筋接合用工具。
【請求項2】
前記締結部は、前記片部の両方で同じ位置にそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1記載の鉄筋接合用工具。
【請求項3】
前記締結部は、前記片部の双方で互い違いとなる位置にそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1記載の鉄筋接合用工具。
【請求項4】
前記ネジの先端には、前記延長部に面接触させる案内部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一つに記載の鉄筋接合用工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋接合用工具に関し、さらに詳しくは、溶接等を行うために圧接される鉄筋の端面同士の中心位置を一致させるための芯合わせ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、RC積層構造などにより鉄筋コンクリート構造物を構築する際には、コンクリート内に埋設される骨材としての鉄筋が用いられる。
鉄筋には、主筋として用いられる柱筋や、柱筋同士を囲むように接合される帯筋がある。
【0003】
柱筋は所定長さの鉄筋を縦方向に継ぎ足して設計通りの長さとされる。
継ぎ足しの際には、クランプ部材により挟持されている2本の鉄筋の端面同士を突き当てた状態で加熱および加圧して端面同士が互いに接合される。
端面同士を接合する場合には、端面同士の中心位置を一致させることが必要となる。これは、端面同士の接触面積が最大となるように位置決めして接合後の引張り強度を確保するためである。
従来、端面同士の中心位置を一致させる方法として、鉄筋同士の芯合わせ作業を行うことが知られている。
【0004】
鉄筋同士の芯合わせ作業は、接合される鉄筋の一方をクランプするクランプ部を固定側とし、鉄筋の他方をクランプするクランプ部を固定側のクランプ部に対して接離できるように摺動可能に設けた構成を対象とすることがある(例えば、特許文献1)。
この構成は、支持体に対して摺動可能な摺動部とクランプ部を一体化する連結部を備えるとともに、摺動部を基端側として連結部を水平面内で摺動方向と直角な方向に押し動かす量を調整可能なネジを備えた構成である。
この構成では、ネジの進退量に応じて連結部に一体のクランプ部を鉄筋の端面と平行する方向に移動させて鉄筋同士の芯合わせができるようになっている。
端面と平行する方向で鉄筋同士の芯合わせが行われると、クランプされる鉄筋の種類が変わるまでの間、芯合わせされたクランプ部同士の対向関係が維持されるため、鉄筋を交換することによって次々に鉄筋の接合作業を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−351474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、端面と平行する方向での芯合わせ作業が行われた後、経時的に芯合わせの精度が悪化することがある。つまり、鉄筋を押さえつけて挟持するクランプ部は、接合時に生じる圧力を繰り返し受けることで変形などにより表面状態が変化することがある。また、ネジの螺旋面に作用する反力の影響や螺旋面の摩耗によっても経時的に芯合わせ位置が変化することがある。このような理由により芯合わせ精度が当初の接合作業開始時から作業回数が増加するに従って変化していくと、図6に示す状態が発生する可能性がある。
図6(A)には、鉄筋a,b同士の端面をバーナーにより加熱しながら加圧力を作用させて突き当て接合を行う状態が示されている。
経時的な変化として、鉄筋同士の軸線が図6(B)に示す作業開始時に対して、図6(C)に示すように横方向でずれてしまう横ずれ状態や、図6(D)に示すように傾きが生じる折れ曲がり状態が発生する。
【0007】
鉄筋の一方を固定し、鉄筋の他方を鉄筋の一方に向けて摺動させる場合には、摺動部とこれが支持される支持体との間に摺動部の摺動を許容するための隙間が設けられているため、この隙間が上述した横ずれや折れ曲がりに大きな影響を及ぼすことがある。
つまり、ネジの進退量に応じてクランプ部を移動させる場合には、ネジを用いたピボット支承構造と同じ構造となり、上記隙間内で摺動部もクランプ部も共にネジの位置を支点として相反する方向に揺動し、シーソー運動する。このため、クランプ部の揺動による傾きは、ネジが位置する支点から隙間が存在する位置までの距離に依存することとなり、距離が大きければ、クランプ部側での傾きも大きくなってしまう。よって、経時的な変化で現れる傾きの変化が大きくなると横ずれや折れ曲がりが顕著となり、芯合わせの精度が崩れて悪化する。
【0008】
本発明は、以上のような問題に鑑み、鉄筋の端面同士の芯合わせ精度を向上すると共にこの精度が経時的に悪化するのを防止あるいは抑制する鉄筋接合用工具の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため、本発明は、接合対象である一対の鉄筋の一方を挟持するために支持体に固定されている固定クランプ部と、前記支持体に対して摺動する摺動体と一体で前記支持体に対して移動する、前記鉄筋の他方を挟持する摺動クランプ部と、前記摺動体と前記摺動クランプ部とを連結した延長部と、前記延長部と挟んで設けられ、該延長部を該延長部の厚さ方向に押し動かすことで前記摺動クランプ部に挟持されている前記鉄筋の断面中心位相をずらす調整部材と、を備え、前記調整部材は、前記厚さ方向両面に対向する片部と、該片部において前記摺動体の摺動方向と前記延長部の延長方向とのうちの少なくとも前記延長方向を含む方向に沿って複数箇所に形成され、ネジの先端が前記延長部に向けて挿通される締結部とを有する鉄筋接合用工具にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、調整部材に用いられるネジが、少なくとも延長部の延長方向で複数箇所に挿通されることにより鉄筋の横ずれおよび折れ曲がりの発生を経時的に防止又は抑制して芯合わせ精度の悪化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る実施の形態の一例である鉄筋接合用工具の構成を説明するための図であり、(A)は外観斜視図、(B)は(A)中、符号(B)で示す方向の矢視断面図である。
図2図1に示した構成と従来構成との作用の対比を説明するための図である。
図3】外径の違う鉄筋での現象の現れ方の違いを説明する図である。
図4図1に示した鉄筋接合用工具に用いられる調整部材の配置位置に関する構成の変形例を説明するための図である。
図5図1に示した調整部材に用いられる調整ネジの取り付け構造に関する変形例を示す図である。
図6】鉄筋の芯合わせができていない場合の現象を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づき本発明を実施するための形態について説明する。
図1において鉄筋接合用工具10は、中空状の支持体1(以下、便宜上、中空状支持体1ともいう)に固定されている固定クランプ部2と、中空状支持体1の長手方向に沿って摺動可能な摺動クランプ部3とを備えている。
固定クランプ部2は、中空状支持体1の長手方向一方側の端部の外周面に固定されて接合対象である鉄筋の一方を挟持するために用いられる。
摺動クランプ部3は、中空状支持体1内で摺動自在の円柱状の摺動体3Aの外周面に一体でその外周面から外側に向け延長された延長部3A1の先端に位置して接合対象である鉄筋の他方(便宜上、(図1(B)において符号Aで示す)を挟持するために用いられる。
摺動体3Aは、中空状支持体1の周面の一部に形成された長穴(便宜上、図1(B)において符号1Aで示す)から外側に向けて延長部3A1を突出させている。延長部3A1は、摺動体3Aと摺動クランプ部3とを連結した部分であり、その先端には、上述した摺動クランプ部3が備えられている。
摺動体3Aは、図示しない油圧シリンダのプランジャによって中空状支持体1の長手方向と平行になるように摺動体3にクランプされる鉄筋の他方Aの長手方向に中空支持体1内を摺動できる部材である。摺動クランプ部3と異なり固定クランプ部2は、中空状支持体1の内部からではなく、中空状支持体1の外周面に一体化された延長部の先端に設けられている。
【0013】
接合対象である一対の鉄筋は、挟持部である固定クランプ部2および摺動クランプ部3にそれぞれ挟持されるようになっているが、それぞれの構成は、摺動クランプ部3を対象として図1(B)を用いて説明すると次のとおりである。
摺動クランプ部3は、鉄筋Aの外周面を保持するための凹状曲面3B1と、この凹状曲面3B1に対向して図1(B)において垂直方向の内壁面を有する縦壁面3B2とを備えている。縦壁面3B2には、固定用ネジ4が挿通されている。固定用ネジ4を凹状曲面3B1側に向け進出させると、固定用ネジ4の先端が鉄筋Aに突き当たり、凹状曲面3B1に鉄筋Aを押しつけることができるので、鉄筋Aが挟持状態に維持される。なお、図1(A)に示すように、固定クランプ部2における凹状曲面および縦壁面は、符号2B1,2B2で示してある。
【0014】
摺動クランプ部3により挟持されている鉄筋Aの断面中心の位相をずらすために、摺動体3Aと摺動クランプ部3との間の延長部3A1を挟むように調整部材5が設けられている。
この場合にいう、断面中心の位相をずらすとは、図1(B)において摺動体3Aの真円状の断面の中心を通り紙面に垂直な軸を揺動中心として摺動クランプ部3が紙面の左右方向に揺動する動作に相当している。この動作により、固定クランプ部2側での鉄筋の中心位置に対して摺動クランプ部3での鉄筋Aの中心位置を整合させることができる。鉄筋同士の中心位置合わせ、いわゆる芯合わせが行われた固定クランプ部2と摺動クランプ部3との対向関係は、クランプされる鉄筋のサイズが変更されるまでの間又は経時的変化による横ずれや折れ曲がりが顕著となるまでの間、維持されることになる。
【0015】
図1において調整部材5は、基端が中空状支持体1の長穴1Aの両サイドにおいて長穴1Aの外周面に固定され、先端側が延長部3A1の厚さ方向両面に対向、すなわち、図1(B)の紙面左右方向の両面に対向するように中空状支持体1の外周面から張り出した支持片部5Aと、支持片部5Aの複数箇所に形成された締結部5B(図1(B)参照)とを備えている。各支持片部5Aの締結部5Bは、摺動体3Aの摺動方向および延長部3A1の延長方向の両方において複数設けられている。
【0016】
締結部5Bには、上述した各方向のうちで、少なくとも延長部3A1の延長方向における複数の締結部5Bを対象として延長部3A1に向けて調整ネジ6が挿通されている。図1(A)には、延長部3A1の延長方向に加えて摺動体3の摺動方向においても複数の締結部に調整ネジ6が取り付けられている状態が示されている。
【0017】
調整ネジ6を調整部材5に対して回し、延長部3A1の厚さ方向に移動させると、この厚さ方向において対向している一対の調整ネジ6の先端の間の隙間の位置がこの厚さ方向において移動する。これにより、調整部材5は、延長部3A1の厚さ方向一方側から延長部3A1を押し動かすことで摺動クランプ部3側を揺動させることができる。摺動クランプ部3が揺動することで、凹状曲面3B1および固定用ネジ4により挟持されている鉄筋Aの断面中心の位相をずらすことができる。
【0018】
図1に示した構成では、摺動クランプ部3側を揺動させる際の支点、すなわち、調整ネジ6の先端が延長部3A1に当接する位置が複数箇所に設けられている。これにより、ピボット支承構造と違って、後述するように、摺動クランプ部3側での揺動量が大きくなるのを抑えることができる。よって、摺動クランプ部3に挟持された鉄筋Aの横ずれあるいは傾きが抑えられる。この結果、経時的にも摺動クランプ3の揺動量が大きくなるのを抑えることができるので、経時的な芯合わせ精度の低下が防止あるいは抑制される。
【0019】
ここで、上述した摺動クランプ3側での揺動量が大きくなるのを抑える作用について、図2により従来のピボット支承構造と対比して説明すると次の通りである。
中空状支持体1の内面と摺動体3Aの外周面との間には、摺動体3Aの摺動を許容するためにわずかな隙間δ1が設けられている。この隙間δ1の存在により、図2(B)に示す従来構造では、ピボット支承構造であるために、調節ネジ60が当接する延長部3A1の位置P1を支点として隙間δ1がなくなるまでの揺動量θ2が発生する。この揺動量θ2は、符号P1で示す支点からの半径に影響される。このため、摺動クランプ部3側での揺動量も上述した半径に比例して大きくなり、鉄筋同士のずれも大きくなる。
【0020】
一方、図2(A)に示す構成では、延長部3A1に当接する調整ネジ6が延長部3A1の延長方向で複数箇所にあるため、ピボット支承構造にはならない。
これにより、隙間δ1がなくなるまで延長部3A1を揺動したとしても、図2(A)中、符号P0で示す揺動支点を基準とする揺動量θ1が得られる半径が、図2(B)中、符号P1で示す従来の場合の揺動支点を基準とする揺動量θ2が得られる半径よりも短いことが理由となって、符号θ1で示す揺動量が、符号θ2で示す揺動量に比較して少なくなる。
しかも、調整ネジ6の当接位置が延長部3A1の延長方向に複数あることにより、仮に符号P0で示す調整ネジ6の当接位置を支点として揺動が生じる場合でも、支点P0の下方に位置する調整ネジ6の当接により摺動クランプ3側での揺動を抑えることができる。換言すれば、支点P0を基準とした延長部3A1のシーソー運動が阻止されることになる。よって、摺動クランプ部3側での揺動量が小さく抑えられることになる。摺動クランプ3側での揺動量が抑えられると、固定クランプ部2側の鉄筋との芯合わせに要する調整ネジ6の調整量も少なくてすむことになり、作業性を向上させることができる。
調整ネジ6の挿通位置に関しては、図2に示した延長部3A1の延長方向に複数設けることに限らず、摺動体3Aの摺動方向に複数設けることも対象となる。このため、図1において中空状支持体1の長手方向と平行する摺動体3Aの摺動方向を対象とする傾きに関し、調整ネジ6を1カ所設けたピボット支承構造と調整ネジ6を複数箇所に設けた支承構造との違いも、図2に示した場合と同様な結果が得られる。
【0021】
図1に示した構成による作用が得られない場合には、鉄筋の外径が小さくなるにつれて接合への悪影響が顕著となる。
図3は、外径が大きい鉄筋A(外径が(D(A)φ))の場合(図3(A)参照)と、これよりも外径が小さい鉄筋A’(外径が(D(A’)φ))の場合(図3(B)参照)とをそれぞれ対象として接合後に発生した横ずれおよび折れ曲がりの状態を示している。
なお、図3には、鉄筋Aと鉄筋A’との外径の大きさの関係が、D(A)φ>D(A’)φという関係式で示してある。
横ずれ量が大径、小径いずれの場合にも2mmであるとすると、大径(D(A)φ)に比べて小径(D(A’)φ)の場合には外径に対するずれ量の占める割合が大径よりも大きくなり、ずれていることが目立ちやすい。また傾きに関しても同じ理由により小径の方が、目立ちやすい。
【0022】
以上のように、図1に示した構成においては、ピボット支承構造にしないという簡単な構成、すなわち、複数支点による支承構造を用いることにより、横ずれや折れ曲がりを抑制することができるので、芯合わせ精度を維持しやすくできる。よって、後続の接合作業に際しての芯合わせ精度も維持できるので、接合後の接合部での機械的強度も確保できることになる。
【0023】
ところで、調整部材5に設けられている締結部5Bおよび調整ネジ6の挿通位置は、図1に示したように、延長部3A1の延長方向および摺動体3Aの摺動方向の複数箇所の全てを必須として設けることに限らない。
図4は、支持片部5Aに形成される締結部5Bの類別を示している。なお、以下の説明では、表裏の関係に位置する支持片部5Aに形成される締結部を符号5Bと5B’とで区別して示す。
図4において、(A−1)〜(A−3)は、前述した摺動方向および延長方向にそれぞれ2列を対象として締結部5B,5B’を設ける場合を示し、(B−1)〜(B−3)は、摺動方向に3列、延長方向に2列を対象として締結部5B,5B’を設ける場合を示している。また、図4(A−1)〜(A−3),(B−1)〜(B−3)のいずれにおいても、2つの支持片部5A,5Aのうちの一方の側から見た状態での締結部5B,5B’の配置位置を示している。
図4の(A−1)は、摺動方向および延長方向の表裏各面の支持片部5Aにおける同じ位置に締結部5B,5B’が設けられている場合を示し、図4の(A−2)は、摺動方向および延長方向で各締結部5B,5B’が設けられる4隅を結ぶ対角線の一つを対象として表裏各面の支持片部5Aの同じ位置にそれぞれ締結部5B,5B’が設けられている場合を示している。また、図4の(A−3)は、摺動方向および延長方向で締結部5B,5B’が設けられる4隅を結ぶ対角線の双方を対象として一方の対角線では表裏一方側の支持片部5Aに締結部5Bが、そして他方の対角線では表裏他方側の支持片部5Aに締結部5B’が設けられている場合を示している。
図4の(B−1)は、摺動方向および延長方向における締結部5B,5B’を設ける位置全てを対象として表裏各面の支持片部5A,5Aの同じ位置にそれぞれ締結部5B,5B’が設けられている場合を示し、図4の(B−2)は、摺動方向および延長方向で互い違いとなる関係を持たせて表裏各面の支持片部5A,5Aにおける同じ位置にそれぞれ締結部5B,5B’を設けた場合を示している。また図4(B−3)は、(B−2)に示した場合と同様に、摺動方向および延長方向で互い違いとなる関係を持たせて支持片部5Aの表裏各面で互い違いの位置にそれぞれ締結部5B,5B’を設けた場合を示している。
従って、図4(A−1),(B−1)では、各支持片部5Aの摺動方向及び延長方向に複数の締結部5B,5B’が設けられており、図4(A−2),(A−3),(B−2),(B−3)では、各支持片部5Aの摺動方向と延長方向とのいずれか一方を含む方向に沿った方向で複数の締結部5B,5B’が設けられている。
いずれの場合も、各支持片部5Aの摺動方向と延長方向とのうちの少なくとも延長方向を含む方向に沿って締結部5B,5B’が複数箇所に形成されている。
【0024】
調整部材5に用いられる調整ネジ6の先端部は、延長部3A1に直接当接する形式とすることに限らず、例えば、図5において符号5Cで示す案内部材を先端に取り付けて面接触させる構成とすることも可能である。この場合にも、例えば、調整ネジ6が複数箇所にて取り付けられるので、ピボット支承構造にはならない。また、案内部材5Cを設けた場合には、案内部材5Cと延長部3A1との間に延長部3A1の摺動を許容する隙間が設けられることになる。このため、調整ネジ6の挿通位置を支点として、その隙間がなくなるまで揺動することができるが、図2において説明した場合と同様に、調整ネジ6の挿通位置を支点とした場合の隙間が存在する位置までの半径がピボット支承構造の場合と違って小さくなる。よって、摺動クランプ部3側での揺動量も少なく抑えることができるので、芯合わせの精度が悪化することを防止あるいは抑制することができる。
【0025】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、摺動体3Aの摺動方向あるいは延長部3A1の延長方向で調整ネジ6の挿通位置が多い程、高精度な中心位置調整が行えることになるが、作業性を考慮すれば、少ない方がよいという観点に基づき挿通位置の数を適宜設定する。また、例えば、図4(A−1)または図4(B−1)に示したように、各支持片部5Aの摺動方向及び延長方向に複数設けられた締結部5B,5B’の一部のみに調整ネジ6を選択的に螺合させるようにしてもよい。この場合、各支持片部5A,5Aの摺動方向と延長方向とのうちの少なくとも延長方向を含む方向に沿って調整ネジ6を配置することが好ましい。
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0026】
1 支持体
2 固定クランプ部
3 摺動クランプ部
3A 摺動体
3A1 延長部
5 調整部材
5A 片部
5B,5B’ 締結部
5C 案内部材
6 ネジ
A 鉄筋の他方
図1
図2
図3
図4
図5
図6