特許第6373705号(P6373705)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373705
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】振れ測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 13/04 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
   G01M13/04
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-198854(P2014-198854)
(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公開番号】特開2016-70751(P2016-70751A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】榊原 育彦
【審査官】 伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭49−048153(JP,B1)
【文献】 特開昭57−060244(JP,A)
【文献】 特開平04−161830(JP,A)
【文献】 特開2008−014794(JP,A)
【文献】 特許第3968575(JP,B2)
【文献】 国際公開第2016/052039(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/04
F16C 41/00 − 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受の振れ測定装置であって、
測定すべき転がり軸受の内輪を固定する固定台と、前記軸受の外輪に測定用荷重を負荷するおもり部材と、前記外輪の振れ量を検出する振れ量検出手段と、前記振れ量検出手段にて検出した変位データである振れ量のうち、回転位相に同期した変位信号を取り込んで、その信号データを基に外輪の振れの大きさ及び振れの最大位相を算出する分析手段とを備え、前記分析手段は、回転に非同期な振動成分の除去を行う除去部を備え、前記除去部として、ドリフト補正処理部を有することを特徴とする振れ測定装置。
【請求項2】
転がり軸受の振れ測定装置であって、
測定すべき転がり軸受の外輪を固定する固定台と、前記軸受の内輪に測定用荷重を負荷するおもり部材と、前記内輪の振れ量を検出する振れ量検出手段と、内輪の位相情報を検出する位相検出手段と、前記振れ量検出手段にて検出した変位データである振れ量のうち、位相検出手段の位相情報を基に回転位相に同期した変位信号を取り込んで、内輪の振れの大きさ及び振れの最大位相を算出する分析手段とを備え、前記分析手段は、回転に非同期な振動成分の除去を行う除去部を備え、前記除去部として、ドリフト補正処理部を有することを特徴とする振れ測定装置。
【請求項3】
前記ドリフト補正処理部は、最小二乗法によりデータの一次近似線を算出し、元のデータから差し引くことによって、ドリフト成分の除去を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の振れ測定装置。
【請求項4】
前記ドリフト補正処理部は、データの先頭と末尾をつなぐ直線を算出し、元のデータから差し引くことによって、ドリフト成分の除去を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の振れ測定装置。
【請求項5】
前記分析手段の除去部として、位相補償型のローパスフィルタを備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の振れ測定装置。
【請求項6】
ローパスフィルタとしてガウシアンフィルタを用いることを特徴とする請求項5に記載の振れ測定装置。
【請求項7】
前記分析手段は調和解析部を備え、回転に非同期な振動成分の除去後の信号データに対して、前記調和解析部は調和解析を行い、得られた1次成分の位相を、軸受振れの最大位相として定量化することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の振れ測定装置。
【請求項8】
位相検出手段は、前記おもり部材に形成される位置情報としてのスリットと、スリットを検知する光電センサとを備えたことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の振れ測定装置。
【請求項9】
前記光電センサは、Z相検出用の光電センサと、A相検出用の光電センサとを有し、これらの組み合わせに位相検出用のロータリエンコーダを構成することを特徴とする請求項8に記載の振れ測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振れ測定装置に関し、特に転がり軸受の振れ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
転がり軸受のラジアル振れやアキシャル振れを測定する方法は、JIS(JIS B 1515)に規定されている。外輪のラジアル振れは図6に示す方法で測定され、内輪のラジアル振れは図7に示す方法で測定される。なお、図6図7に示すように、転がり軸受1は、内径面の外輪軌道面2が形成された外輪3と、外径面に内輪軌道面4が形成された内輪5と、外輪軌道面2と内輪軌道面4の間に介装されるボール6とを備える。
【0003】
図6に示す外輪のラジアル振れ測定装置は、基準平面10に転がり軸受の内輪5を固定し、外輪3におもり部材11により負荷をかけながら回転させる。そして、外輪3の外径の振れ(外輪ラジアル振れ)をラジアル振れ用測定器12で測定する。この場合、図示省略のアキシャル振れ用測定器によって外輪3の端面の振れ(外輪アキシャル振れ)を測定できる。
【0004】
図7に示す内輪のラジアル振れ測定装置は、基準平面15に転がり軸受の外輪3を固定し、内輪5におもり部材16により負荷をかけながら回転させる。そして、内輪5の内径の振れ(内輪ラジアル振れ)をラジアル振れ用測定器17で測定する。この場合、図示省略のアキシャル振れ用測定器によって内輪5の端面の振れ(内輪アキシャル振れ)を測定できる。
【0005】
このように、JIS(JIS B 1515)に規定されている方法を利用するものとしては、従来から種々の装置が提案されている(特許文献1及び特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭55−39010号公報
【特許文献2】特公昭49−48153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、軸受における振れを完全に無くすことは難しい。しかしながら、振れの最大位相が既知であれば、各種の装置に軸受を組み付ける際に、振れ最大位相と反対側にバランスウェイトを取り付けることによって、振れの影響をある程度相殺することができる。
【0008】
その為、軸受の振れ測定として、振れの大きさだけでなく振れ最大位相を測定できればよい。しかしながら、JIS(JIS B 1515)に規定されている方法、及びこの方法を用いた従来の方法においては、振れの最大位相を測定できるものは提案されていない。
【0009】
ところが、測定器である電気マイクロメータやダイヤルゲージ等の変位センサの指示値を目視にて確認し、振れが最大となる位置を記録することによって、振れの最大位相を測定できることになる。
【0010】
しかしながら、この場合、変位センサの指示値は、回転に同期した振れ成分(RRO)と回転に非同期な振動成分(NRRO)が混在して現れる。RROに対してNRROが大きい場合、目視による測定でRROのみを分離することが難しい。また。バランスウェイトの取り付けによって抑制できるのは、RROの中の1角成分(偏肉成分)であり、目視によりRROから1角成分のみを抽出し、最大位置を特定することは困難であるといる。すなわち、振れ最大位置の測定値にばらつきが生じることになる。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みて、バランスウェイトを取り付けるために必要な回転に同期した振れ最大位相を精度よく求めることが可能な振れ測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の振れ測定装置は、転がり軸受の振れ測定装置であって、測定すべき転がり軸受の内輪を固定する固定台と、前記軸受の外輪に測定用荷重を負荷するおもり部材と、前記外輪の振れ量を検出する振れ量検出手段と、前記振れ量検出手段にて検出した変位データである振れ量のうち、回転位相に同期した変位信号を取り込んで、その信号データを基に外輪の振れの大きさ及び振れの最大位相を算出する分析手段とを備え、前記分析手段は、回転に非同期な振動成分の除去を行う除去部を備え、前記除去部として、ドリフト補正処理部を有するものである。
【0013】
本発明の第1の振れ測定装置によれば、固定台に転がり軸受の内輪を固定した状態で、おもり部材にて、軸受の外輪に測定用荷重を負荷し、その状態で回転させて、振れ量検出手段にて外輪の振れ量を検出することができる。また、位相検出手段にて、外輪の位相情報を検出することができる。そして、分析手段にて、回転に非同期な振動成分の除去を行って、その除去後の信号データを基に外輪の振れ大きさ及び振れの最大位相を算出することができる。また、前記分析手段は、回転に非同期な振動成分の除去を行う除去部を備え、前記除去部として、ドリフト補正処理部を有するものであるので、回転に非同期な振動成分を除去することができる。
【0014】
本発明の第2の振れ測定装置は、転がり軸受の振れ測定装置であって、測定すべき転がり軸受の外輪を固定する固定台と、前記軸受の内輪に測定用荷重を負荷するおもり部材と、前記内輪の振れ量を検出する振れ量検出手段と、内輪の位相情報を検出する位相検出手段と、前記振れ量検出手段にて検出した変位データである振れ量のうち、位相検出手段の位相情報を基に回転位相に同期した変位信号を取り込んで、内輪の振れの大きさ及び振れの最大位相を算出する分析手段とを備え、前記分析手段は、回転に非同期な振動成分の除去を行う除去部を備え、前記除去部として、ドリフト補正処理部を有するものである。
【0015】
本発明の第2の振れ測定装置によれば、固定台に転がり軸受の外輪を固定した状態で、おもり部材にて、軸受の内輪に測定用荷重を負荷し、その状態で回転させて、振れ量検出手段にて内輪の振れ量を検出することができる。また、おもり部材に付設された位相検出手段にて、内輪の位相情報を検出することができる。そして、分析手段にて、回転に非同期な振動成分の除去を行って、その除去後の信号データを基に内輪の振れ大きさ及び振れの最大位相算出することができる。また、前記分析手段は、回転に非同期な振動成分の除去を行う除去部を備え、前記除去部として、ドリフト補正処理部を有するものであるので、回転に非同期な振動成分を除去することができる。
【0017】
前記ドリフト補正処理部は、最小二乗法によりデータの一時近似線を算出し、元のデータから差し引くことによって、ドリフト成分の除去を行うことができる。また、ドリフト補正処理部は、データの先頭と末尾をつなぐ直線を算出し、元のデータから差し引くことによって、ドリフト成分の除去を行うことができる。
【0018】
前記分析手段の前記除去部として、位相補償型のローパスフィルタを備えものであってもよい。ここで、ローパスフィルタ(Low-pass filter:LPF)はフィルタの一種で、なんらかの信号のうち、遮断周波数より低い周波数の成分はほとんど減衰させず、遮断周波数より高い周波数の成分を逓減させるフィルタである。このため、非同期な振動成分を除去することができる。
【0019】
ローパスフィルタとしてガウシアンフィルタを用いることができる。ここで、ガウシアンフィルタとは、注目データに近いほど、平均値を計算するときの重みを大きくし、遠くなるほど重みを小さくなるようにガウス分布の関数を用いてレートを計算するフィルタである。
【0020】
前記分析手段は調和解析部を備え、回転に非同期な振動成分の除去後の信号データに対して、前記調和解析部は調和解析を行い、得られた1次成分の位相を、軸受振れの最大位相として定量化するのが好ましい。
【0021】
位相検出手段は、前記おもり部材に形成される位置情報としてスリットと、スリットを検知する光電センサとを備えたもので構成することができ、前記光電センサは、Z相検出用の光電センサと、A相検出用の光電センサとを有し、これらの組み合わせに位相検出用のロータリエンコーダを構成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、振れ量検出手段にて、振れ量、つまり振れに大きさを検出でき、かつ、分析手段にて、振れの最大位相を算出することができる。これによって、振れ最大位相と反対側にバランスウェイトを安定して取り付けることができて、安定した回転が可能な軸受を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の振れ測定装置の簡略図である。
図2】前記振れ測定装置の分析手段の簡略ブロック図である。
図3】本発明の第2の振れ測定装置の簡略図である。
図4】本発明の第3の振れ測定装置の簡略図である。
図5】本発明の第4の振れ測定装置の簡略図である。
図6】JIS規定されている方法で外輪のラジアル振れを測定して状態を示す簡略図である。
図7】JIS規定されている方法で内輪のラジアル振れを測定して状態を示す簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下本発明の実施の形態を図1図5に基づいて説明する。図1は、転がり軸受の外輪の振れの大きさおよび振れの最大位相を検出する振れ測定装置を示す。ところで、転がり軸受21は、内径面の外輪軌道面22が形成された外輪23と、外径面に内輪軌道面24が形成された内輪25と、外輪軌道面22と内輪軌道面24の間に介装されるボール26とを備える。
【0025】
振れ測定装置は、測定すべき転がり軸受21の内輪25を固定する固定台30と、軸受21の外輪23に測定用荷重を負荷するおもり部材Wと、外輪23の振れ量を検出する振れ量検出手段32と、外輪23の位相情報を検出する位相検出手段33と、位相検出手段33によって検出された位相情報を基に軸受振れの最大位相を算出する分析手段34とを備える。
【0026】
固定台30は、ベース(基盤)35と、このベース35上に配設される内輪固定治具36とを有するものである。内輪固定治具36は円盤体からなり、上面外周部には周方向切欠からなる内輪嵌合部37が設けられている。すなわち、内輪25がこの内輪嵌合部37に嵌合することによって、この内輪25は固定台30に固定されることになる。
【0027】
おもり部材Wは、第1部材31と、この第1部材31に連設される第2部材41とからなる。第1部材31は、円盤状の本体部31aと、この本体部31aの下面外周部から垂下されるリング部31bとならなり、このリング部31bの下部内径部に周方向切欠からなる外輪嵌合部38が設けられている。すなわち、外輪23におもり部材Wの外輪嵌合部38を嵌合させた状態で、外輪23とおもり部材Wとが一体に回転する。この場合、固定台30の内輪固定治具36の軸心と、軸受軸心と、おもり部材Wの軸心とが、同一鉛直軸心上に配置される。なお、JIS(JIS B 1515)には、おもりの重さの最小値が規定されており、おもり部材Wの重さとして、この規定値以上の例えば、5kgの重さとする。
【0028】
また、振れ量検出手段32は例えば接触式変位センサからなり、固定台30のベース35に固定されている。すなわち、ベース35に支持片40が立設され、この支持片40に取付られる。そして、その接触ロッド32aが外輪23の外面に接触する。すなわち、外輪23を1回転させたときの測定器(センサ)の読みの最大値と最小値との差で、この外輪23のラジアル振れを検出(測定)できる。この測定データは分析手段34に入力される。
【0029】
位相検出手段33は、一対の光電センサ42、43を備えたものである。おもり部材Wの第2部材41には、位相情報としてZ相用のスリット44と、位相情報としてA相用のスリット45とが形成されている。この場合、Z相用のスリット44は、1本のみ形成され、A相用のスリット45は、周方向に沿って等ピッチで180本形成されている。このため、第1の光電センサ42がZ相検出用であり、第2の光電センサ43がA相検出用であり、この位相検出手段33は、ロータリエンコーダを構成することになる。この位相検出手段33の検出データは分析手段34に入力される。なお、一対の光電センサ42、43は、おもり部材Wに固定されるものではなく、第1の光電センサ42をスリット44に所定間隔で相対面するとともに、第2の光電センサ43をスリット45に所定間隔で相対面するように、図示省略の固定部材に固定している。
【0030】
分析手段34は、図2に示すように、AD変換部50と、非同期成分除去部51と、調和解析部52と、振れ量演算部53と、結果表示部54とを備える。AD変換部50は、センサ32からのデータをデジタル値に変換するものである。また、非同期成分除去部51は、温度ドリフトなどの影響を取り除くためにドリフト補正処理部55と、軸受21の回転により発生する非同期な振動成分(NRRO)の影響を取り除くためのローパスフィルタ(位相補償型)56とを有するものである。また、結果表示部54は、液晶パネル等で構成できる。
【0031】
ここで、ローパスフィルタ(Low-pass filter:LPF)はフィルタの一種で、なんらかの信号のうち、遮断周波数より低い周波数の成分はほとんど減衰させず、遮断周波数より高い周波数の成分を低減させるフィルタである。このため、非同期な振動成分を除去することができる。
【0032】
次に、図1に示す振れ測定装置にて軸受21の外輪23の振れの大きさおよび振れの最大位相を検出する方法を説明する。まず、図1に示すように、固定台30上に軸受21をセットする。すなわち、内輪固定治具36の内輪嵌合部37に軸受21の内輪25を嵌合させて、内輪25を固定台30に固定する。
【0033】
その後、位相検出手段33のおもり部材Wを外輪23に装着する。すなわち、おもり部材Wの外輪嵌合部38を外輪23に嵌合させる。また、振れ量検出手段32を構成する接触式変位センサの接触ロッド32aを外輪23の外周面に接触させる。
【0034】
この状態で、外輪23をおもり部材Wとともに回転させる。この場合、手動、つまり作業者の手回しにて行うことになる。そして、この手回し後に惰性回転状態なった状態で、Z相検出用の光電センサ42がONした時点からA相検出用の光電センサ43がONする毎に、振れ量検出手段32は例えば接触式変位センサからの変位値を1周分取り込む。
【0035】
また、A相検出用の光電センサ43のONのタイミングで、分析手段34のAD変換部50にて、デジタル値に変換された変位データに対して、まず、ドリフト補正処理部55にて測定中の変位センサのドリフト成分を除去する。このドリフト補正の方法としては、変位センサの信号データに対して最小二乗法による1次近似直線を算出し、元のデータから1次近似線を差し引くことによって行うことができる。また、元のデータの先頭と末尾を繋ぐ直線を求め、元データから差し引くことで補正を行いことも可能である。
【0036】
その後は、ローパスフィルタ56で、回転に非同期な振動成分(NRRO)の除去を行う。なお、この際、CRフィルタなどの位相が補償されないフィルタを用いるのは、最終的に求めたい振れの最大位置の位相がずれるおそれがある。このため、位相補償型のフィルタを用いるのが好ましい。位相補償型のフィルタとして、例えば、ガウシアンフィルタを用いることができる。ここで、ガウシアンフィルタとは、注目データに近いほど、平均値を計算するときの重みを大きくし、遠くなるほど重みを小さくなるようにガウス分布の関数を用いてレートを計算するフィルタである。
【0037】
次に、調和解析部52によって、調和解析(DFT)演算を行い、算出された1次成分の位相を振れ最大位相として、結果表示部54に表示することになる。また、前記振れ量検出手段にて得たデータから、JIS(JIS B 1515)に規定されている方法にて、最大値と最小値との差で、この外輪23のラジアル振れを検出(測定)できる。そして、ラジアル振れ量を前記振れ最大位相とともに、前記結果表示部54に表示するができる。
【0038】
次に、図3は、内輪のラジアル振れを検出する振れ検出装置を示す。この場合、測定すべき転がり軸受21の外輪23を固定する固定台60と、軸受21の内輪24に測定用荷重を負荷するおもり部材Wと、内輪25の振れ量を検出する振れ量検出手段62と、おもり部材Wに付設されて位相情報を検出する位相検出手段63と、位相検出手段63によって検出された位相情報を基に軸受振れの最大位相を算出する分析手段64とを備える。
【0039】
固定台60は筒体にて構成され、この筒体の上方開口部に形成される周方向切欠部からなる外輪嵌合部65が形成されている。このため、この外輪嵌合部65に外輪23を嵌合させることによって、外輪23を固定台60に固定できる。おもり部材Wは、円盤体からなる第1部材61aと、この第1部材61aに付設される第2部材61bとからなり、第1部材61の下面外周部に周方向切欠からなる内輪嵌合部66が設けられている。このため、おもり部材Wを内輪25に嵌合させることによって、このおもり部材Wにて、内輪25に測定用荷重を負荷することができる。なお、このおもり部材Wの重さとして、例えば、5kgの重さとする。
【0040】
振れ量検出手段62は、前記図1に示す振れ量検出手段32と同様、接触ロッドを有する接触式変位センサが用いられ、この接触ロッドが内輪25の内径面に接触する。また、位相検出手段63は、前記図1に示す位相検出手段33と同様、一対の光電センサ42、43を備えたものである。このため、おもり部材Wの第2部材41には、位相情報としてZ相用のスリット44と、位相情報としてA相用のスリット45とが形成されている。分析手段64も、前記図2に示す分析手段34と同様の構成とされる。
【0041】
従って、この図3に示す振れ測定装置で、内輪25のラジアル振動を測定するには、まず、固定台60に外輪23を固定するとともに、おもり部材Wを内輪25に装着した状態として、内輪25をおもり部材Wと一体的に、手動にて回転させる。この際、振れ量検出手段62の接触式変位センサの接触ロッドを内輪25の内径面に接触させる。そして、この手回し後に惰性回転状態なった状態で、Z相検出用の光電センサ42がONした時点からA相検出用の光電センサ43がONする毎に、振れ量検出手段32は例えば接触式変位センサからの変位値を1周分取り込む。
【0042】
その後は、前記図1に示す外輪のラジアル振れを検出する振れ検出装置の分析手段34と同様に処理(演算)を分析手段64にて行うことによって、前記図1に示す外輪のラジアル振れを検出する振れ検出装置と同様、内輪25のラジアル振れ量を前記振れ最大位相とともに、前記結果表示部54に表示することができる。
【0043】
図4は、外輪のアキシャル振れを検出する振れ検出装置を示している。この場合、図1に示すものに比べて、振れ量検出手段32の接触ロッド32aを、外輪23の軸方向端面に接触させている。他の構成は、図1に示す振れ検出装置と同様であり、同一部材については、図1に示す部材と同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0044】
従って、この図4に示す振れ測定装置で、外輪23のアキシャル振動を測定するには、まず、固定台30に内輪25を固定するとともに、おもり部材Wを外輪23に装着した状態として、外輪23をおもり部材Wと一体的に、手動にて回転させる。この際、振れ量検出手段32の接触式変位センサの接触ロッドを外輪23の軸方向端面に接触させに接触させる。そして、この手回し後に惰性回転状態なった状態で、Z相検出用の光電センサ42がONした時点からA相検出用の光電センサ43がONする毎に、振れ量検出手段32は例えば接触式変位センサからの変位値を1周分取り込む。
【0045】
その後は、前記図1に示す外輪のラジアル振れを検出する振れ検出装置の分析手段34と同様に処理(演算)をこの図4に示す分析手段34にて行うことによって、前記図1に示す外輪のラジアル振れを検出する振れ検出装置と同様、外輪のアキシャル振れ量を前記振れ最大位相とともに、前記結果表示部54に表示することができる。
【0046】
図5は内輪25のアキシャル振れを検出する振れ検出装置を示している。この場合、図3に示すものに比べて、振れ量検出手段32の接触ロッド32aを、内輪25の軸方向端面に接触させている。他の構成は、図3に示す振れ検出装置と同様であり、同一部材については、図3に示す部材と同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0047】
従って、この図5に示す振れ測定装置で、内輪25のアキシャル振動を測定するには、まず、固定台60に外輪23を固定するとともに、おもり部材Wを内輪25に装着した状態として、内輪25をおもり部材Wと一体的に、手動にて回転させる。この際、振れ量検出手段62の接触式変位センサの接触ロッドを内輪25の軸方向端面に接触させに接触させる。そして、この手回し後に惰性回転状態なった状態で、Z相検出用の光電センサ42がONした時点からA相検出用の光電センサ43がONする毎に、振れ量検出手段32は例えば接触式変位センサからの変位値を1周分取り込む。
【0048】
その後は、前記図1に示す外輪のラジアル振れを検出する振れ検出装置の分析手段34と同様に処理(演算)をこの図5に示す分析手段64にて行うことによって、前記図1に示す外輪のラジアル振れを検出する振れ検出装置と同様、内輪のアキシャル振れ量を前記振れ最大位相とともに、前記結果表示部54に表示することができる。
【0049】
本発明によれば、振れ量検出手段32(62)にて、振れ量、つまり振れの大きさを検出でき、かつ、分析手段34(64)にて、振れの最大位相を算出することができる。これによって、振れ最大位相と反対側にバランスウェイトを安定して取り付けることができて、安定した回転が可能な軸受を提供することができる。
【0050】
図1に示す振れ測定装置では、外輪23のラジアル擦れの振れ最大位相を精度よく検出することができ、図3の振れ測定装置では、内輪25のラジアル擦れの振れ最大位相を精度よく検出することができ、図4に示す振れ測定装置では、外輪23のアキシャル擦れの振れ最大位相を精度よく検出することができ、図5の振れ測定装置では、内輪の25アキシャル擦れの振れ最大位相を精度よく検出することができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、位相検出手段33(63)として、スリット44,45と光電センサ42,43との組み合わせを用いたが、おもり部材Wの第2部材41に形成される着磁部と、磁気センサとの組み合わせからなる磁気エンコーダを用いてもよい。振れ量検出手段62に接触式変位センサを用いたが、レーザ光や静電容量式などの非接触式センサを用いてもよい。また、測定する転がり軸受としては、前記各実施形態では、玉軸受であったかが、円すいころ軸受等であってもよい。さらには、測定時における軸受の内輪や外輪の回転力付与としては、前記実施形態では手動によって行っていたが、モータ駆動力を用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
21 軸受
23 外輪
25 内輪
30 固定台
32 振れ量検出手段
33 位相検出手段
34 分析手段
42、43 光電センサ
51 非同期成分除去部
52 調和解析部
55 ドリフト補正処理部
56 ローパスフィルタ
60 固定台
62 振れ量検出手段
63 位相検出手段
64 分析手段
W おもり部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7