特許第6373707号(P6373707)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373707
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20180806BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20180806BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20180806BHJP
   C23C 16/509 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   H05H1/46 L
   H01L21/205
   H01L21/31 C
   C23C16/509
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-199708(P2014-199708)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-72065(P2016-72065A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】羽田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】山本 悟史
【審査官】 山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0191880(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/061787(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/104803(WO,A1)
【文献】 特開2010−157511(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/018024(WO,A1)
【文献】 特開2015−170598(JP,A)
【文献】 特開2014−216654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/46
C23C 16/509
H01L 21/205
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバーと、
前記チャンバー内に処理対象となる対象物を保持する対象物保持部と、
巻き数が一周未満である少なくとも1つの誘導結合型アンテナと、
前記少なくとも1つの誘導結合型アンテナに高周波電力を供給する高周波電源と、
前記少なくとも1つの誘導結合型アンテナが前記チャンバーの一壁部から前記チャンバー内に突出するように、前記少なくとも1つの誘導結合型アンテナのそれぞれを前記一壁部に対してそれぞれ保持する少なくとも1つのアンテナ保持部と、
を備え、
前記少なくとも1つのアンテナ保持部のそれぞれは、
前記少なくとも1つの誘導結合型アンテナのうち対応する誘導結合型アンテナの両端部を結ぶ線分の向きを、当該誘導結合型アンテナの突出方向と交差する面内で、あらかじめ規定された複数個の向きのいずれかに変更して当該向きで固定可能なように、前記対応する誘導結合型アンテナをその両端部において保持し、かつ
前記チャンバーへの前記アンテナ保持部の取付構造が、前記複数個の向きにそれぞれ対応した複数の取り付け方向でのみ前記アンテナ保持部を前記チャンバーに固定可能な構造として形成され、
前記少なくとも1つのアンテナ保持部のそれぞれは、前記少なくとも1つの誘導結合型アンテナのうち対応する誘導結合型アンテナを保持可能な板状部材であり、
前記少なくとも1つの誘導結合型アンテナと前記少なくとも1つのアンテナ保持部とのうち互いに対応する誘導結合型アンテナとアンテナ保持部とによって対応アンテナと対応保持部とを定義したとき、
前記チャンバーの前記一壁部には、前記対応保持部に保持された前記対応アンテナを挿通可能であり、かつ、前記対応保持部によって閉鎖可能なように前記対応保持部に対応した形状を有するアンテナ用貫通孔が設けられており、
前記アンテナ用貫通孔の周方向に沿った前記対応保持部の複数の回転角度において前記対応保持部が前記アンテナ用貫通孔を塞ぐように、前記対応保持部の周縁部を前記アンテナ用貫通孔の周辺部に着脱可能に取り付けるための第1および第2取付構造が、前記対応保持部の前記周縁部と、前記一壁部のうち前記アンテナ用貫通孔の前記周辺部にそれぞれ設けられおり、
前記対応アンテナを保持している前記対応保持部が前記対応アンテナを前記チャンバー内に突出させて前記アンテナ用貫通孔を閉鎖している状態で、前記第1および第2取付構造によって、前記周縁部が前記周辺部に取り付けられている、プラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ処理装置であって、
前記少なくとも1つの誘導結合型アンテナは、複数の誘導結合型アンテナであるとともに、前記少なくとも1つのアンテナ保持部は、複数のアンテナ保持部であり、
前記複数のアンテナ保持部は、
前記複数の誘導結合型アンテナのそれぞれの両端部を結ぶ線分の向きをそれぞれ独立して変更可能なように前記複数の誘導結合型アンテナを保持する、プラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載のプラズマ処理装置であって、
前記複数のアンテナ保持部は、
前記一壁部に沿って延在する予め定められた仮想軸に沿って前記複数の誘導結合型アンテナが一列に配列されるように、前記複数の誘導結合型アンテナを保持する、プラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載のプラズマ処理装置であって、
一列に配列された前記複数の誘導結合型アンテナを挟んで互いに対向するように、前記チャンバーの前記一壁部から立設された板状の一対のシールド部材を更に備える、プラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載のプラズマ処理装置であって、
前記一対のシールド部材の少なくとも一方は、
前記仮想軸に沿った位置と、前記チャンバーの前記一壁部からの高さとのうち少なくとも一方を変更可能に設けられている、プラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項2から請求項5の何れか1つの請求項に記載のプラズマ処理装置であって、
前記対象物保持部は、前記対象物を所定の搬送方向に前記対象物を搬送する保持搬送部となっており、
前記複数の誘導結合型アンテナは、前記搬送方向と交差する方向に沿って配列されているプラズマ処理装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1つの請求項に記載のプラズマ処理装置であって、
前記対応保持部の前記周縁部に設けられた前記第1取付構造は、
前記周縁部に規定される第1同心円上に形成され、雄ねじを挿通可能な複数のネジ用貫通孔であり、
前記アンテナ用貫通孔の前記周辺部に設けられた前記第2取付構造は、
前記周辺部のうち前記アンテナ保持部との対向面に前記第1同心円と同じ径を有して規定される第2同心円上に形成され、前記対向面に開口するとともに、前記ネジ用貫通孔を貫通した前記雄ねじと螺合可能な雌ねじが内周面に形成された複数の止まり孔である、プラズマ処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載のプラズマ処理装置であって、
前記複数のネジ用貫通孔は、前記第1同心円上に等間隔に形成されるとともに、前記複数の止まり孔は、前記第2同心円上に等間隔に形成され、
前記複数のネジ用貫通孔と前記複数の止まり孔のうち一方の個数が、他方の個数の倍数である、プラズマ処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載のプラズマ処理装置であって、
前記複数のネジ用貫通孔の個数と、前記複数の止まり孔の個数とは、それぞれ、4、6、8、12、および24から選ばれる任意の個数である、プラズマ処理装置。
【請求項10】
請求項7から請求項9の何れか1つの請求項に記載のプラズマ処理装置であって、
前記複数のネジ用貫通孔の個数は、前記複数の止まり孔の個数よりも多い、プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを生成して定められた処理を行うプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなプラズマ処理装置として、特許文献1には、周回せず終端し、高周波の1/4波長の長さよりも短い線状又は板状の導体からなるアンテナに、高周波電力を供給して高周波磁界を発生させ、その磁界によりプラズマを発生して、基板面に薄膜形成等の表面処理を行う誘導結合方式の装置が開示されている。この装置は、平面形状が矩形の真空容器の4辺の各々に、複数本のアンテナを設け、4辺に設けられた複数本のアンテナに高周波電力を並列に供給することにより、大面積の基板に対する処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3751909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、プラズマCVDによる均一な膜厚の薄膜の形成、あるいはプラズマエッチング等による均一な処理を行うためには、対象物の近傍空間におけるプラズマイオン密度を均一にすることが求められる。
【0005】
しかしながら、プラズマCVDにおいては、チャンバー内の反応プロセスが、チャンバー内の圧力、プロセスガスの流量、組成、各アンテナとチャンバー内の壁面との距離などに影響を受けた複雑なプロセスとなる。このため、特許文献1のプラズマ処理装置においては、対象物の近傍空間におけるプラズマイオン密度の均一化が困難であるといった問題がある。また、プラズマ処理装置が、例えば、1つのアンテナを有する場合など、アンテナの個数が少ない場合においても、チャンバー内の壁面の影響がより大きくなることなどによって、プラズマイオン密度の均一化が困難であるといった問題がある。
【0006】
本発明は、こうした問題を解決するためになされたもので、プラズマイオン密度の均一性を高めることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、第1の態様に係るプラズマ処理装置は、チャンバーと、前記チャンバー内に処理対象となる対象物を保持する対象物保持部と、巻き数が一周未満である少なくとも1つの誘導結合型アンテナと、前記少なくとも1つの誘導結合型アンテナに高周波電力を供給する高周波電源と、前記少なくとも1つの誘導結合型アンテナが前記チャンバーの一壁部から前記チャンバー内に突出するように、前記少なくとも1つの誘導結合型アンテナのそれぞれを前記一壁部に対してそれぞれ保持する少なくとも1つのアンテナ保持部と、を備え、前記少なくとも1つのアンテナ保持部のそれぞれは、前記少なくとも1つの誘導結合型アンテナのうち対応する誘導結合型アンテナの両端部を結ぶ線分の向きを、当該誘導結合型アンテナの突出方向と交差する面内で、あらかじめ規定された複数個の向きのいずれかに変更して当該向きで固定可能なように、前記対応する誘導結合型アンテナをその両端部において保持し、かつ前記チャンバーへの前記アンテナ保持部の取付構造が、前記複数個の向きにそれぞれ対応した複数の取り付け方向でのみ前記アンテナ保持部を前記チャンバーに固定可能な構造として形成され、前記少なくとも1つのアンテナ保持部のそれぞれは、前記少なくとも1つの誘導結合型アンテナのうち対応する誘導結合型アンテナを保持可能な板状部材であり、前記少なくとも1つの誘導結合型アンテナと前記少なくとも1つのアンテナ保持部とのうち互いに対応する誘導結合型アンテナとアンテナ保持部とによって対応アンテナと対応保持部とを定義したとき、前記チャンバーの前記一壁部には、前記対応保持部に保持された前記対応アンテナを挿通可能であり、かつ、前記対応保持部によって閉鎖可能なように前記対応保持部に対応した形状を有するアンテナ用貫通孔が設けられており、前記アンテナ用貫通孔の周方向に沿った前記対応保持部の複数の回転角度において前記対応保持部が前記アンテナ用貫通孔を塞ぐように、前記対応保持部の周縁部を前記アンテナ用貫通孔の周辺部に着脱可能に取り付けるための第1および第2取付構造が、前記対応保持部の前記周縁部と、前記一壁部のうち前記アンテナ用貫通孔の前記周辺部にそれぞれ設けられおり、前記対応アンテナを保持している前記対応保持部が前記対応アンテナを前記チャンバー内に突出させて前記アンテナ用貫通孔を閉鎖している状態で、前記第1および第2取付構造によって、前記周縁部が前記周辺部に取り付けられている。
【0008】
第2の態様に係るプラズマ処理装置は、第1の態様に係るプラズマ処理装置であって、前記少なくとも1つの誘導結合型アンテナは、複数の誘導結合型アンテナであるとともに、前記少なくとも1つのアンテナ保持部は、複数のアンテナ保持部であり、前記複数のアンテナ保持部は、前記複数の誘導結合型アンテナのそれぞれの両端部を結ぶ線分の向きをそれぞれ独立して変更可能なように前記複数の誘導結合型アンテナを保持する。
【0009】
第3の態様に係るプラズマ処理装置は、第2の態様に係るプラズマ処理装置であって、前記複数のアンテナ保持部は、前記一壁部に沿って延在する予め定められた仮想軸に沿って前記複数の誘導結合型アンテナが一列に配列されるように、前記複数の誘導結合型アンテナを保持する。
【0010】
第4の態様に係るプラズマ処理装置は、第3の態様に係るプラズマ処理装置であって、一列に配列された前記複数の誘導結合型アンテナを挟んで互いに対向するように、前記チャンバーの前記一壁部から立設された板状の一対のシールド部材を更に備える。
【0011】
第5の態様に係るプラズマ処理装置は、第4の態様に係るプラズマ処理装置であって、前記一対のシールド部材の少なくとも一方は、前記仮想軸に沿った位置と、前記チャンバーの前記一壁部からの高さとのうち少なくとも一方を変更可能に設けられている。
【0012】
第6の態様に係るプラズマ処理装置は、第2から第5の何れか1つの態様に係るプラズマ処理装置であって、前記対象物保持部は、前記対象物を所定の搬送方向に前記対象物を搬送する保持搬送部となっており、前記複数の誘導結合型アンテナは、前記搬送方向と交差する方向に沿って配列されている
【0013】
第7の態様に係るプラズマ処理装置は、第1から第6の何れかの態様に係るプラズマ処理装置であって、前記対応保持部の前記周縁部に設けられた前記第1取付構造は、前記周縁部に規定される第1同心円上に形成され、雄ねじを挿通可能な複数のネジ用貫通孔であり、前記アンテナ用貫通孔の前記周辺部に設けられた前記第2取付構造は、前記周辺部のうち前記アンテナ保持部との対向面に前記第1同心円と同じ径を有して規定される第2同心円上に形成され、前記対向面に開口するとともに、前記ネジ用貫通孔を貫通した前記雄ねじと螺合可能な雌ねじが内周面に形成された複数の止まり孔である。
【0014】
第8の態様に係るプラズマ処理装置は、第7の態様に係るプラズマ処理装置であって、前記複数のネジ用貫通孔は、前記第1同心円上に等間隔に形成されるとともに、前記複数の止まり孔は、前記第2同心円上に等間隔に形成され、前記複数のネジ用貫通孔と前記複数の止まり孔のうち一方の個数が、他方の個数の倍数である。
【0015】
第9の態様に係るプラズマ処理装置は、第8の態様に係るプラズマ処理装置であって、前記複数のネジ用貫通孔の個数と、前記複数の止まり孔の個数とは、それぞれ、4、6、8、12、および24から選ばれる任意の個数である。
【0016】
第10の態様に係るプラズマ処理装置は、第7から第9の何れか1つの態様に係るプラズマ処理装置であって、前記複数のネジ用貫通孔の個数は、前記複数の止まり孔の個数よりも多い。
【発明の効果】
【0017】
第1の態様に係る発明によれば、アンテナ保持部は、対応する誘導結合型アンテナの両端部を結ぶ線分の向きを、当該誘導結合型アンテナの突出方向と交差する面内で変更可能なように、当該誘導結合型アンテナをその両端部において保持する。ところで、巻数が一周未満である誘導結合型アンテナによってプラズマ化されたプロセスガスのプラズマイオン密度は、誘導結合型アンテナの突出方向と直交する面内において誘導結合型アンテナの両端部を結ぶ線分に直交する方向における密度が、当該線分方向における密度よりも高い。従って、アンテナ保持部によって誘導結合型アンテナの向きを変更することによって、プラズマイオン密度の均一性を高めることができる。
また、板状部材であるアンテナ保持部(対応保持部)に対応した形状を有して当該アンテナ保持部により閉鎖されるようにチャンバーの一壁部にはアンテナ用貫通孔が設けられている。そして、アンテナ保持部の周縁部と、当該一壁部のうちアンテナ用貫通孔の周辺部には、アンテナ用貫通孔の周方向に沿った対応保持部の複数の回転角度においてアンテナ保持部がアンテナ用貫通孔を塞げるように、アンテナ保持部の周縁部をアンテナ用貫通孔の周辺部に着脱可能に取り付けるための第1および第2取付構造がそれぞれ設けられている。従って、対応保持部の回転角度を変更することによって、対応保持部に保持された対応アンテナの向き(両端部を結ぶ線分の向き)を容易に変更することができる。
【0018】
第2の態様に係る発明によれば、複数の誘導結合型アンテナのそれぞれの両端部を結ぶ線分の向きをそれぞれ独立して変更できるので広範囲でプラズマイオン密度の均一性を高めることができる。
【0019】
第3の態様に係る発明によれば、複数の誘導結合型アンテナが、チャンバーの一壁部に沿って延在する仮想軸に沿って一列に配列されるので、幅の広い範囲でプラズマイオン密度の均一性を高めることができる。
【0020】
第4の態様に係る発明によれば、板状の一対のシールド部材が、一列に配列された複数の誘導結合型アンテナを挟んで互いに対向するようにチャンバーの一壁部から立設されている。従って、両端の誘導結合型アンテナに起因するプラズマイオン密度をシールド部材によって高めることによって、当該プラズマイオン密度の落ち込みを抑制できる。
【0021】
第5の態様に係る発明によれば、一対のシールド部材の少なくとも一方は、複数の誘導結合型アンテナの配列の方向を定める仮想軸方向における位置と、チャンバーの一壁部からの高さとのうち少なくとも一方を変更可能に設けられている。シールド部材を誘導結合型アンテナに近づけることによりプラズマイオン密度を高めることができる。また、シールド部材の高さを高くすることによってもプラズマイオン密度を高めることができる。従って、両端の誘導結合型アンテナに起因するプラズマイオン密度をより細かく調整することによって、当該プラズマイオン密度の落ち込みをさらに抑制できる。
【0023】
第7の態様に係る発明によれば、ネジ用貫通孔を貫通した雄ねじを、止まり孔の内周面に形成された雌ねじと螺合させることによって、アンテナ保持部の周縁部とアンテナ用貫通孔の周辺部とを強固に固定してチャンバー内の密閉性を高めることができる。
【0024】
第8の態様に係る発明によれば、複数のネジ用貫通孔と複数の止まり孔のうち一方の個数が、他方の個数の倍数である。従って、複数のネジ用貫通孔と複数の止まり孔とのうち一方の一部と、他方の全部とを位置合わせできる対応保持部の回転角度の個数を、ネジ用貫通孔の個数と止まり孔の個数とのうち少ない方の個数よりも多くすることができる。これにより、ネジ用貫通孔と止まり孔とのうち一方の個数を削減しても、誘導結合型アンテナ(誘導結合型アンテナの両端部を結ぶ線分)を、多くの向きに設定することができる。
【0025】
第9の態様に係る発明によれば、複数のネジ用貫通孔の個数と、複数の止まり孔の個数とは、それぞれ、4、6、8、12、および24から選ばれる任意の個数である。ネジ用貫通孔と止まり孔の個数を増やせば、多くの雄ねじを用いてアンテナ保持部をアンテナ用貫通孔の周縁部にさらに強固に固定できるのでチャンバー内の密閉性をより高められる一方、ネジ用貫通孔と止まり孔の製造コストが増加する。従って、ネジ用貫通孔と止まり孔のそれぞれの個数をこのように決定すれば、チャンバー内の密閉性能の向上とコストの低減との両立を図ることができる。
【0026】
第10の態様に係る発明によれば、止まり孔に比べて製造コストが低いネジ用貫通孔の個数が、止まり孔の個数よりも多いので、装置の製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態に係るプラズマ処理装置の概略構成を模式的に示すYZ側面図である。
図2図1のA−A断面図である。
図3】誘導結合型アンテナの配置の一例を説明するための図である。
図4図2のアンテナ保持部の概略構成を模式的に示す上面図である。
図5図4のB−B断面図である。
図6図4のC−C断面図である。
図7】複数のアンテナ保持部を備える台板の概略構成を模式的に示す斜視図である。
図8】1本のLIAによって生じたプラズマイオン密度分布の測定例を等高線図形式で示す図である。
図9】圧力に対するプラズマイオン密度分布の変動の測定例をグラフ形式で示す図である。
図10】2本のLIAによって生じたプラズマイオン密度分布の測定例をグラフ形式で示す図である。
図11】周囲にシールド板が設けられてない1本のLIAによって生ずるプラズマイオン密度分布を等高線図形式で模式的に示す図である。
図12】実施形態に係るプラズマ処理装置の他の構成例を模式的に示すYZ側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図面では同様な構成および機能を有する部分に同じ符号が付され、下記説明では重複説明が省略される。また、各図面は模式的に示されたものである。なお、一部の図面には、方向関係を明確にする目的で、Z軸を鉛直方向の軸としXY平面を水平面とするXYZ直交座標軸が適宜付されている。また、実施形態の説明において、上下方向は、鉛直方向であり、誘導結合型アンテナ41側が上で、基板9側が下である。
【0029】
<実施形態について>
<1.プラズマ処理装置100の全体構成>
図1は、実施形態に係るプラズマ処理装置100の概略構成を模式的に示すYZ側面図である。図2は、図1のプラズマ処理装置100のA−A断面から見た断面図であり、プラズマ処理装置100の概略構成を模式的に示すXZ側面図である。図3は、プラズマ処理装置100の誘導結合型アンテナ41の配置の一例を説明するための図である。
【0030】
プラズマ処理装置100は、プラズマCVD(plasma-enhanced chemical vapor deposition)によって、膜付けの対象物である基板9(例えば、太陽電池用の半導体基板であり、「基材」とも称される)にCVD膜(例えば、保護膜)を形成する装置である。
【0031】
プラズマ処理装置100は、内部に処理空間V1を形成する処理チャンバー1と、基板9(具体的には、キャリア90に配設された基板9)を保持して所定の搬送経路に沿って所定の搬送方向(図示+Y方向)に基板を搬送する保持搬送部2と、搬送される基板9を加熱する加熱部3と、処理空間V1にプラズマを発生させるプラズマ発生部4と、処理空間V1を規定する構造部5を備える。
【0032】
また、プラズマ処理装置100は、処理空間V1にガスを供給するガス供給部61と、処理チャンバー1内からガスを排気する排気部7とを備える。また、プラズマ処理装置100は、上記の各構成要素を制御する制御部8を備える。
【0033】
<処理チャンバー1>
処理チャンバー(「真空チャンバー」あるいは、単に、「チャンバー」とも称される)1は内部に処理空間V1を有する中空部材である。ここで、処理空間V1とは後述する誘導結合型アンテナ41によってプラズマCVD処理が実行される空間であり、本実施形態では構造部5によって1つの処理空間V1が形成されている。
【0034】
処理チャンバー1の天板11は、その下面111が水平姿勢となるように配置されており、当該下面111から処理空間V1に向けて、誘導結合型アンテナ41および構造部5(いずれも後述する)が突設されている。処理チャンバー1の底板付近には、加熱部3が配置されている。加熱部3の上側には、保持搬送部2による基板9の搬送経路(図示Y方向に沿う経路)が規定されている。また、処理チャンバー1の±Y側の側壁には、例えばゲートバルブによって開閉される搬出入口(図示省略)が設けられている。
【0035】
天板11には、後述するアンテナ保持部80に保持されている誘導結合型アンテナ41の先端44側部分を処理空間V1側に突出できるように、誘導結合型アンテナ41を挿通可能な径を有する複数(図示4個)のアンテナ用貫通孔12が基板9の搬送方向に垂直な方向に沿って間隔を空けて一列に設けられている。アンテナ用貫通孔12の大きさは、アンテナ保持部80の大きさよりも小さい。これにより、アンテナ保持部80は、両端部42、43を有している誘導結合型アンテナ41の先端44側部分を処理チャンバー1内に突出させた状態で、アンテナ用貫通孔12を塞ぐことができる。
【0036】
<保持搬送部2>
保持搬送部2は、キャリア90を水平姿勢で保持して、処理チャンバー1に形成された搬出入口を介して搬送経路に沿って搬送する。キャリア90の上面には、膜付けの対象物である複数の基板9(本実施形態では、Y方向に沿って合計3個の基板9)が配設されている。また、搬送経路の上方でかつ搬送経路を搬送される複数の基板9と対向する位置にはプラズマCVD処理が行われる処理空間V1が形成されている。
【0037】
保持搬送部2は、具体的には、搬送経路を挟んで対向配置された一対の搬送ローラ21と、これらを同期させて回転駆動する駆動部(図示省略)とを含んで構成される。一対の搬送ローラ21は、搬送経路の延在方向(図示Y方向)に沿って例えば複数組設けられる。この構成において、各搬送ローラ21がキャリア90の下面に当接しつつ回転することによって、キャリア90が搬送経路に沿って搬送される。その結果、キャリア90に保持されている基板9が、誘導結合型アンテナ41を有する処理空間V1に対して相対移動される。
【0038】
保持搬送部2は、基板9の搬送経路のうち処理空間V1に対向する部分において基板9を処理空間V1に対向させる。保持搬送部2は、基板9が処理空間V1に対向する際に、当該対向方向における基板9の位置を構造部5に対して保持する。保持搬送部2に代えて、例えば、天板11の下面111のうち処理空間V1に対向する部分に固定され、基板9を着脱自在に保持可能な固定機構を備えたステージ機構が採用されてもよい。また、基板9として、保持搬送部2の搬送方向に延在するフィルム状の基板が採用されてもよい。その場合には、保持搬送部2がキャリア90を備えておらず、各搬送ローラ21が当該基板の裏面(成膜対象の主面と反対側の主面)の両端部に直接接触して基板を搬送してもよい。
【0039】
<加熱部3>
加熱部3は、保持搬送部2によって保持搬送される基板9を加熱する部材であり、保持搬送部2の下方(すなわち、基板9の搬送経路の下方)に配置される。加熱部3は、例えば、セラミックヒータにより構成することができる。なお、プラズマ処理装置100には、CVD処理後に保持搬送部2にて保持されている基板9等を冷却する機構がさらに設けられてもよい。
【0040】
<プラズマ発生部4>
プラズマ発生部4は、処理空間V1にプラズマを発生させる。プラズマ発生部4は、誘導結合タイプの高周波アンテナである誘導結合型アンテナ41を複数(本実施形態では4個)備える。各誘導結合型アンテナ41は、具体的には、金属製のパイプ状導体をU字形状に曲げたものを、石英などの誘電体で覆ったものである。プラズマ発生部4は、処理空間V1において原料ガスを励起して、プラズマ化する励起部である。
【0041】
図3に示されるように、複数の誘導結合型アンテナ41は、その両端部42、43の中心点(中点)Cが、予め設定された仮想軸K上に並ぶように、仮想軸Kに沿って、間隔を空けて(好ましくは等間隔で)配列されている。各誘導結合型アンテナ41の保持搬送部2側の一部(U字形状の底部分である先端44を含む部分)は、天板11から保持搬送部2側、すなわち処理チャンバー1内に突出している。複数の誘導結合型アンテナ41は、YZ側面視において、基板9の搬送方向(Y方向)と交差する方向(特に好ましくは、図示されるように、基板9の搬送方向と直交する方向(X方向))に沿って配列されることが好ましい。
【0042】
また、図示の例では、基板9の搬送方向と直交する方向に沿って誘導結合型アンテナ41が4個設けられているが、誘導結合型アンテナ41の個数は必ずしも4個である必要はなく、処理チャンバー1の寸法等に応じて、適宜その個数を選択することができる。また、誘導結合型アンテナ41は、マトリクス状、あるいは、千鳥状に配列されてもよい。また、処理チャンバー1の寸法等に応じて1つの誘導結合型アンテナ41が設けられてもよい。すなわち、プラズマ処理装置100は、少なくとも1つの誘導結合型アンテナを備える。
【0043】
各誘導結合型アンテナ41の一端は、マッチングボックス430を介して、高周波電源440に接続されている。また、各誘導結合型アンテナ41の他端は接地されている。この構成において、高周波電源440から各誘導結合型アンテナ41に高周波電流(具体的に、例えば、13.56MHzの高周波電流)が流されると、誘導結合型アンテナ41の周囲の電界(高周波誘導電界)により電子が加速されて、プラズマ(誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP))が発生する。
【0044】
上述したとおり、誘導結合型アンテナ41は、U字形状を呈している。このようなU字形状の誘導結合型アンテナ41は、巻数が1回未満の誘導結合アンテナに相当し、巻数が1回以上の誘導結合アンテナよりもインダクタンスが低いため、誘導結合型アンテナ41の両端に発生する高周波電圧が低減され、生成するプラズマへの静電結合に伴うプラズマ電位の高周波揺動が抑制される。このため、対地電位へのプラズマ電位揺動に伴う過剰な電子損失が低減され、プラズマ電位が特に低く抑えられる。なお、このような誘導結合タイプの高周波アンテナは、特許第3836636号公報、特許第3836866号公報、特許第4451392号公報、特許第4852140号公報に開示されている。
【0045】
<アンテナ保持部80>
天板11に形成された複数(図示4個)のアンテナ用貫通孔12は、それぞれ誘導結合型アンテナ41の両端部42、43を保持する複数(図示4個)のアンテナ保持部80によって塞がれており、処理チャンバー1内の密閉性が保たれている。
【0046】
アンテナ保持部80は、円盤状の部材である。アンテナ保持部80は、誘導結合型アンテナ41が処理チャンバー1の天板11から処理空間V1に突出するように、誘導結合型アンテナ41のそれぞれを天板11に対して保持する。また、複数のアンテナ保持部80は、天板11に沿って延在する予め定められた仮想軸Kに沿って複数の誘導結合型アンテナ41が一列に配列されるように、複数の誘導結合型アンテナ41を保持している。なお、処理チャンバー1が1つの誘導結合型アンテナ41を備える場合には、アンテナ用貫通孔12およびアンテナ保持部80も、それぞれ1つ設けられる。
【0047】
アンテナ保持部80は、複数の誘導結合型アンテナ41のうち対応する誘導結合型アンテナ41の両端部42、43を結ぶ線分Lの向きを、当該誘導結合型アンテナ41の突出方向と交差する面内、より好ましくは、当該突出方向と直交する面内で変更可能なように、当該誘導結合型アンテナ41をその両端部42、43において保持する部材である。より詳細には、複数のアンテナ保持部80は、線分Lの向きをそれぞれ独立して変更可能なように複数の誘導結合型アンテナを保持している。
【0048】
アンテナ保持部80が誘導結合型アンテナ41の向きを変更することによって、当該誘導結合型アンテナ41によって生ずるプラズマイオン密度の分布を変えることができる。これにより、処理空間V1内のプラズマイオン密度の均一性を高めることができる。アンテナ保持部80を天板11のうち対応するアンテナ用貫通孔12の周辺部に取り付けるための取り付け構造については、後述する。
【0049】
<構造部5>
構造部5は、基板9の搬送経路に対向するように、天板11に対して固定されている。構造部5は、互いに対向する一対のサイドシールド51と、互いに対向する一対のシールド部材55とを備えて構成されている。一対のサイドシールド51と、一対のシールド部材55とは、それぞれアースされている。
【0050】
一対のサイドシールド51のそれぞれは、基板9の搬送経路を横切る方向(X方向)に延在する板状の部材であり、それぞれのX軸における両端部は、処理チャンバー1のX軸における両端の壁部の近傍まで延在している。一対のサイドシールド51の主面の法線方向は、基板9の搬送方向(Y方向)であり、一対のサイドシールド51は、搬送経路に垂直な板状体である。一対のサイドシールド51のそれぞれの先端には、フランジ部が形成されている。各フランジ部の主面の法線方向は、Z方向であり、各フランジ部は、XY平面に平行な板状体である。
【0051】
一対のサイドシールド51のそれぞれの先端の高さは、誘導結合型アンテナ41の先端(Uの字形状の底部)44よりも高く、かつ、互いに略等しい高さに設定されている。一対のサイドシールド51は、例えば、アルミニウム製である。
【0052】
一対のシールド部材55は、一列に配列された複数の誘導結合型アンテナ41を挟んで互いに対向するように、処理チャンバー1の天板11から立設された板状の部材である。
【0053】
一対のシールド部材55のそれぞれは、天板11の下面111に沿ってX方向に移動可能に取り付けられた平板状の台座56と、台座56の端縁に基端を固定されて、当該端縁から下方に立設された平板状の固定板57と、固定板57に対して鉛直方向に沿って移動可能な平板状の可動板58とを備えて構成されている。台座56は、天板11の下面111に沿って、複数の誘導結合型アンテナ41の配列方向、すなわち仮想軸Kの方向に移動可能なように天板11に取り付けられている。
【0054】
天板11には、複数の誘導結合型アンテナ41の配列方向、すなわち仮想軸Kの方向沿って配列する複数の止まり孔が形成されている。各止まり孔の内周面には、雄ねじと螺合する雌ねじが形成されている。また、台座56には、当該雄ねじが貫通する貫通孔が形成されている。これにより、台座56は、複数の誘導結合型アンテナ41の配列方向に沿った複数の位置において、天板11に固定される。
【0055】
また、固定板57には、固定板57を貫通して鉛直方向に延在する2つの長孔が形成されている。また、可動板58には、当該2つの長孔同士の間隔を隔てて形成された2つの貫通ネジ穴が設けられている。各貫通ネジ穴の内周面には、固定板57の長孔を貫通した雄ねじと螺合可能な雌ねじが形成されている。当該雄ねじを用いることにより、可動板58は、鉛直方向に沿った位置を変更できるように、固定板57に固定される。
【0056】
誘導結合型アンテナ41が突出している三次元空間におけるプラズマイオン密度は、U字形状を呈する誘導結合型アンテナ41のうち円弧状部分の両端を結ぶ線分の中心点において最も高い。プラズマイオン密度は、当該中心点から三次元空間における各方向に遠ざかるにつれて減衰していく。誘導結合型アンテナ41を中心に広がるプラズマイオン密度分布の中に、シールド部材55を挿入した場合、当該プラズマイオン密度の減衰が抑制される。より具体的には、シールド部材55を挿入した場合には、プラズマイオン密度は、シールド部材55を挿入しない場合に比べて緩やかに落ち込み、シールド部材55の近傍で急峻に落ち込む。シールド部材55の壁面では、プラズマは消失する。シールド部材55の挿入によるプラズマイオン密度の落ち込みの方向は、後述する図8を例とした場合、紙面上下方向となる。
【0057】
従って、下面111からのシールド部材55の高さを高くすると、基板9の近傍空間のプラズマイオン密度を上げることができる。また、シールド部材55を複数の誘導結合型アンテナ41の配列方向に沿って、複数の誘導結合型アンテナ41の端部のアンテナに近づけることによっても、基板9の近傍空間のプラズマイオン密度を上げることができる。複数の誘導結合型アンテナ41の配列方向に沿ってシールド部材55の位置を変更する方が、天板11からのシールド部材55の高さを変更する場合よりも、当該、プラズマイオン密度の変動幅を大きくできる。このように、シールド部材55の位置・高さの少なくとも一方を変更することによって、プラズマイオン密度の分布を調節することができる。なお、一対のシールド部材55のうち一方に近い誘導結合型アンテナ41に起因するプラズマイオン密度の分布を変更する必要がなければ、当該一方のシールド部材55に代えて、天板11に対する位置を変更できない構成を有するシールド部材が天板11に取り付けられてもよい。また、一対のシールド部材55を設けなくても、両端の誘導結合型アンテナ41によるプラズマイオン密度分布が、他の誘導結合型アンテナ41によるプラズマイオン密度分布との差が許容範囲内である場合には、一対のシールド部材55を設ける必要は無い。
【0058】
このように、一対のサイドシールド51と、一対のシールド部材55と、天板11の下面111とは、処理空間V1を囲む壁面をなしている。
【0059】
<ガス供給部61>
一対のガス供給部61のそれぞれは、原料ガスの供給源611と、原料ガスを処理空間V1に供給する複数(図示4個)のノズル615と、供給源611と複数のノズル615とを接続する配管612と、配管612の経路途中に設けられたバルブ613とを備えている。複数のノズル615は、複数の誘導結合型アンテナ41のそれぞれに対応してそれぞれ設けられている。
【0060】
ガス供給部61は、原料ガスを処理空間V1に供給する。具体的には、各ノズル615からは、原料ガスとして、例えば、シラン(SiH)ガス等が供給される。原料ガスとともに、原料ガスを運ぶ不活性ガスがキャリアガスとしてガス供給部61から供給されても良い。
【0061】
バルブ613は、配管612を流れるガスの流量を自動調整できるバルブであることが好ましく、具体的には、例えば、マスフローコントローラ等を含んで構成することが好ましい。
【0062】
<排気部7>
排気部7は、高真空排気系であり、具体的には、例えば、真空ポンプ71と、排気配管72と、排気バルブ73と備える。排気配管72は、一端が真空ポンプ71に接続され、他端が処理空間V1に連通接続される。また、排気バルブ73は、排気配管72の経路途中に設けられる。排気バルブ73は、具体的には、例えば、APC(オートプレッシャーコントローラ)等を含んで構成され、排気配管72を流れるガスの流量を自動調整できるバルブである。この構成において、真空ポンプ71が作動された状態で、排気バルブ73が開放されると、処理空間V1が排気される。
【0063】
<制御部8>
制御部8は、プラズマ処理装置100が備える各構成要素と電気的に接続され(図1では簡略的に図示)、これら各要素を制御する。制御部8は、具体的には、例えば、各種演算処理を行うCPU、プログラム等を記憶するROM、演算処理の作業領域となるRAM、プログラムや各種のデータファイルなどを記憶するハードディスク、LAN等を介したデータ通信機能を有するデータ通信部等がバスラインなどにより互いに接続された、一般的なコンピュータにより構成される。また、制御部8は、各種表示を行うディスプレイ、キーボードおよびマウスなどで構成される入力部等と接続されている。プラズマ処理装置100においては、制御部8の制御下で、基板9に対して定められた処理が実行される。
【0064】
<アンテナ保持部80の天板11への取付構造>
図4は、プラズマ処理装置100のアンテナ保持部80とその周辺部の概略構成を模式的に示す上面図である。図5は、図4のアンテナ保持部80のB−B断面図である。図6は、図4のアンテナ保持部80のC−C断面図である。
【0065】
各アンテナ保持部80は、対応する誘導結合型アンテナ41を保持可能な、例えば、円板形状等を有する板状部材である。処理チャンバー1の天板11には、上述したように、各アンテナ保持部80に保持された各誘導結合型アンテナ41を挿通可能な複数(図示4つ)のアンテナ用貫通孔12が形成されている。各アンテナ用貫通孔12は、対応するアンテナ保持部80によって閉鎖可能なようにアンテナ保持部80に対応した形状を有している。より具体的には、アンテナ用貫通孔12は、アンテナ保持部80よりも小サイズである。また、アンテナ保持部80が円形(円板状)であれば、アンテナ用貫通孔12の形状も円形であることが好ましい。アンテナ保持部80がアンテナ用貫通孔12を完全に塞いだ状態で、アンテナ保持部80の周縁部と、天板11のうちアンテナ用貫通孔12の周辺部とが、相互に固定できる幅を有して重なり合えれば、アンテナ保持部80とアンテナ用貫通孔12との形状は同じでなくてもよい。具体的には、アンテナ保持部80とアンテナ用貫通孔12とのうち、一方の形状が、例えば、正八角形で、他方の形状が、例えば、円であってもよい。
【0066】
アンテナ保持部80の周縁部と、天板11のうちアンテナ用貫通孔12の周辺部には、アンテナ用貫通孔12の周方向に沿ったアンテナ保持部80の複数の回転角度においてアンテナ保持部80がアンテナ用貫通孔12を塞ぐように、アンテナ保持部80の周縁部をアンテナ用貫通孔12の周辺部に着脱可能に取り付けるための取付構造830、130がそれぞれ設けられている。誘導結合型アンテナ41を保持しているアンテナ保持部80が誘導結合型アンテナ41を処理チャンバー1内に突出させてアンテナ用貫通孔12を閉鎖している状態で、アンテナ保持部80の周縁部とアンテナ用貫通孔12の周辺部とが互いに取り付けられる。
【0067】
具体的には、アンテナ保持部80の周縁部に設けられた取付構造830は、アンテナ保持部80に保持されている誘導結合型アンテナ41の両端部42、43を結ぶ線分Lの中点Cを中心として、周縁部に規定される同心円U1上に形成された複数(図示の例では、回転角度30°毎に設けられた12個)のネジ用貫通孔83である。各ネジ用貫通孔83は、雄ねじ99を挿通可能な大きさに形成されている。また、天板11のうちアンテナ用貫通孔12の周辺部の上面112には、アンテナ用貫通孔12と止まり孔13との間に、アンテナ用貫通孔12の周囲を周回する溝部14が形成されている。溝部14には、ゴム製のOリング15が嵌め込まれている。これにより、アンテナ保持部80による処理空間V1の密閉性を高めることができる。
【0068】
アンテナ用貫通孔12の周辺部に設けられた取付構造130は、当該周辺部のうちアンテナ保持部80との対向面に同心円U1と同じ径を有して規定される同心円U2上に形成され、当該対向面に開口する複数(図示の例では、回転角度60°毎に設けられた6個)の止まり孔13である。各止まり孔13の内周面には、ネジ用貫通孔83を貫通した雄ねじ99と螺合可能な雌ねじが形成されている。
【0069】
この場合には、アンテナ保持部80の回転角度を、30°毎に変更できる。すなわち、アンテナ保持部80が保持する誘導結合型アンテナ41の向きを12通りに設定できる。また、アンテナ保持部80とアンテナ用貫通孔12の周辺部とは、6本の雄ねじ99によって固定される。なお、各ネジ用貫通孔83の内周面に、雄ねじ99と螺合するための雌ねじが形成されているとしても本発明の有用性を損なうものではない。
【0070】
複数のネジ用貫通孔83は、同心円U1上に等間隔に形成されている。また、複数の止まり孔13は、同心円U2上に等間隔に形成されている。上述のように、図示の例では、ネジ用貫通孔83の個数が12個であり、止まり孔13の個数が6個である。すなわち、ネジ用貫通孔83の個数が止まり孔13の個数の倍数になっている。逆に、止まり孔13の個数が、ネジ用貫通孔83の個数の倍数であってもよい。また、ネジ用貫通孔83の個数と、アンテナ用貫通孔12の個数とが同じであってもよい。
【0071】
ネジ用貫通孔83の個数と、止まり孔13の個数とは、それぞれ、4、6、8、12、および24から選ばれる任意の個数であることが好ましい。これにより、処理チャンバー1内の密閉性の向上と、ネジ用貫通孔83、止まり孔13を設けるためのコストの低減との両立を図ることができる。
【0072】
また、ネジ用貫通孔83の方が、止まり孔13よりも製造コストが低いため、ネジ用貫通孔83の個数が、止まり孔の個数13よりも多く設定されることが好ましい。
【0073】
図7は、複数のアンテナ保持部80を備える台板120の概略構成を模式的に示す斜視図である。処理チャンバー1が大型化すると、処理チャンバー1の重量が、例えば、数トンにも及ぶため、図7に示されるように、アンテナ保持部80の個数と同数のアンテナ用貫通孔12が形成された台板120を用いることが好ましい。台板120は、天板11の一部をなしている。これにより、台板120ごと複数のアンテナ保持部80を処理チャンバー1から取り外して、各誘導結合型アンテナ41の向きを調節した後に、台板120を処理チャンバー1に戻すことにより、アンテナ保持部80の角度変更作業がより容易になる。台板120と、天板11のうち他の部分との取付は、アンテナ保持部80と、アンテナ用貫通孔12の周辺部とを固定する取付構造830、130と同様の取付構造によって行われる。
【0074】
図8は、1本の誘導結合型アンテナ41によって生じたプラズマイオン密度分布の測定例を等高線図形式で示す図である。図9は、圧力に対するプラズマイオン密度分布の変動の測定例をグラフ形式で示す図である。図10は、2本の誘導結合型アンテナ41によって生じたプラズマイオン密度分布の測定例をグラフ形式で示す図である。図11は、周囲にシールド板が設けられてない1本の誘導結合型アンテナ41によって生ずるプラズマイオン密度分布を等高線図形式で模式的に示す図である。
【0075】
図8は、処理チャンバー1に1つの誘導結合型アンテナ41を設置して、ラングミュアプローブ法を用いて処理空間V1内の水平面に設定した各格子点におけるプラズマイオン密度を計測した結果を示している。プラズマイオン密度は、イオン飽和電流密度(μA/cm2)の測定によって得られている。イオン飽和電流密度はプラズマイオン密度に相当する値である。プラズマイオン密度の分布は、X方向、Y方向のそれぞれにおいて、ガウス分布となっている。図8の例では、計測領域におけるプラズマイオン密度の分布がコンター表示によって示されている。具体的には、プラズマイオン密度(μA/cm2)の分布は、0−0.12、0.12−0.18、0.18−0.24、0.24−0.3、0.3−0.36、0.36−0.42、0.42−0.48、0.48−0.54、0.54−0.6の9段階に分けられて、この並び順に徐々に濃度が高くなるように濃淡表示されている。
【0076】
図8の測定結果から、プラズマイオン密度が同じである各点を結んだ曲線により囲まれた領域は、Y方向(誘導結合型アンテナ41の両端部を結ぶ線分に直交する方向)よりもX方向(誘導結合型アンテナ41の両端部を結ぶ線分の方向)に拡がっていることが判る。すなわち、領域の中心からX方向に沿って遠ざかる方が、Y方向に沿って遠ざかるよりも、プラズマイオン密度の減衰がなだらかであることが判る。この差異は、Y方向に沿って対向している一対のサイドシールド51によって、Y方向へのプラズマの広がりが抑制されていることに起因して生じている。この測定例では、X方向に沿って互いに対向する一対のシールド部材55は、設けられていない。
【0077】
これに対して、X方向、Y方向の何れにも一対のシールド部材55および一対のサイドシールド51が設けられない場合には、図11に示されるように、同じ強さのプラズマイオン密度である各点を結んだ曲線により囲まれた領域は、X方向の最大長さWXよりもY方向の最大長さWYの方が長い。すなわち、当該領域は、図8とは逆に、X方向よりもY方向に拡がっている。
【0078】
このように、誘導結合型アンテナ41によって生じたプラズマイオン密度分布が、誘導結合型アンテナ41の周囲の壁面の影響を受けない場合には、誘導結合型アンテナ41の両端部42、43を結ぶ線分Lの中心点Cを含み誘導結合型アンテナ41の突出方向と直交する直交平面においては、中心点Cから線分Lの延在方向(X方向)に沿ってから遠ざかる場合にプラズマイオン密度は最も急激に減衰する。逆に、中心点Cから線分Lの延在方向と直交する方向(Y方向)に沿って遠ざかる場合にプラズマイオン密度は、最も緩やかに減衰する。
【0079】
従って、予め測定したプラズマイオン密度の分布に基づいて、誘導結合型アンテナ41の向きを、例えば、カットアンドトライで調整することで、プラズマイオン密度の均一性を高めることができる。
【0080】
なお、図9は、チャンバー内圧力以外のプロセス条件を図8と同様に設定し、チャンバー内圧力を変動させて圧力に対するプラズマ密度分布の半値幅の変動を測定した結果である。圧力が変わった場合でも、図8と同様に、同じ強さのプラズマイオン密度となっている領域は、Y方向よりもX方向に拡がっていることが判る。
【0081】
図10は、2つの誘導結合型アンテナ41が点灯(高周波電力を供給)される場合の、プラズマイオン密度分布の測定結果を示している。各誘導結合型アンテナ41にそれぞれ単独に電力供給して、単独に測定した結果は、白丸と黒丸とによってプロットされている。白い菱形でプロットされたグラフは、各誘導結合型アンテナ41単独の測定結果を、単純に加算したものである。黒い菱形でプロットされたグラフは、実際に、2つの誘導結合型アンテナ41に同時に電力供給を行って、測定した密度を示している。
【0082】
このように、複数の誘導結合型アンテナ41を使用する場合には、チャンバー内の反応プロセスが、チャンバー内の圧力、プロセスガスの流量、組成、各アンテナとチャンバー内の壁面との距離などの影響を受けるため、プラズマイオン密度の分布は、各誘導結合型アンテナ41の単体の密度の単純な加算値にならず、プラズマイオン密度の均一性が損なわれる場合がある。
【0083】
しかしながら、プラズマ処理装置100においては、誘導結合型アンテナ41の向きをアンテナ保持部80を用いて変更することによって、コストを抑制しつつ、プラズマイオン密度の均一性を高めることができる。
【0084】
図12は、実施形態に係るプラズマ処理装置の他の構成例としてプラズマ処理装置100Aの概略構成を模式的に示すYZ側面図である。プラズマ処理装置100Aとプラズマ処理装置100と差異は、プラズマ処理装置100が4つの誘導結合型アンテナ41のそれぞれに対して、アンテナ保持部80を設けて、各誘導結合型アンテナ41の向きを調節可能としているのに対して、プラズマ処理装置100Aは、両端の2つの誘導結合型アンテナ41のみに対してアンテナ保持部80を設けていることである。例えば、複数の誘導結合型アンテナ41が一列に配列される場合において、両端の誘導結合型アンテナ41によるプラズマイオン密度のみに起因して、全体のプラズマイオン密度の均一性が損なわれる場合には、図12に示されるように、均一性が損なわれる原因となる誘導結合型アンテナ41に対してのみアンテナ保持部80を設けてもよい。この場合には、対応するアンテナ保持部80がそれぞれ設けられている両端の2つの誘導結合型アンテナ41が、本発明における「少なくとも1つの誘導結合型アンテナ」に相当する。
【0085】
<2.プラズマ処理装置の動作>
続いて、プラズマ処理装置100において実行される処理の流れについて説明する。以下に説明する処理は、制御部8の制御下で実行される。
【0086】
処理チャンバー1の搬出入口を介して、基板9が配設されたキャリア90が処理チャンバー1の内部に搬入されると、保持搬送部2が当該キャリア90を保持する。また、排気部7が処理チャンバー1内の気体を排気して、処理チャンバー1を真空状態とする。また、定められたタイミングで、保持搬送部2がキャリア90の搬送を開始し(搬送ステップ)、加熱部3がキャリア90に配設される基板9の加熱を開始する。
【0087】
処理チャンバー1の内部が真空状態となると、ガス供給部61がノズル615より処理空間V1への原料ガスの供給を開始する。
【0088】
また、これらのガス供給が開始されるのと同時に、高周波電源440から各誘導結合型アンテナ41に、高周波電流(具体的には、例えば、13.56MHzの高周波電流)が流される。すると、誘導結合型アンテナ41の周囲の高周波誘導磁界により電子が加速されて、誘導結合プラズマが発生する。プラズマが発生すると、処理空間V1内の原料ガスがプラズマ化されて、原料ガスのラジカルやイオンなどの活性種が生じ、搬送される基板9上で化学気相成長が行われる。こうして主面にCVD膜が形成された基板9は、電子デバイス用の構造体として太陽電池など種々の電子デバイスに用いることができる。
【0089】
プラズマ処理装置100の成膜処理中には、基板9の搬送処理と、プラズマの発生処理とは、並行して行われる。また、原料ガスの供給処理は、基板9の搬送処理およびプラズマ発生処理と並行して行われる。
【0090】
上記の実施の形態では、本発明に係るプラズマ処理装置を、プラズマCVD装置に適用した場合について説明しているが、本発明に係るプラズマ処理装置は、プラズマ処理を行う各種の装置に適用することができる。例えば、プラズマ雰囲気中のイオンでターゲットをスパッタリングして対象物に薄膜を形成するスパッタリング装置に適用してもよい。また、エッチングガスをプラズマ化して対象物に作用させて、対象物をエッチングするプラズマエッチング装置に適用してもよい。
【0091】
以上のように構成された本実施形態に係るプラズマ処理装置によれば、アンテナ保持部80は、対応する誘導結合型アンテナ41の両端部42、43を結ぶ線分Lの向きを、当該誘導結合型アンテナ41の突出方向と交差する面内で変更可能なように、当該誘導結合型アンテナ41をその両端部42、43において保持する。ところで、巻数が一周未満である誘導結合型アンテナ41によってプラズマ化されたプロセスガスのプラズマイオン密度は、誘導結合型アンテナ41の両端部42、43を結ぶ線分Lを含む面内において当該線分Lに直交する方向における密度が、当該線分L方向における密度よりも高い。従って、アンテナ保持部80によって誘導結合型アンテナ41の向きを変更することによって、プラズマイオン密度の均一性を高めることができる。
【0092】
また、以上のように構成された本実施形態に係るプラズマ処理装置によれば、複数の誘導結合型アンテナ41のそれぞれの両端部42、43を結ぶ線分Lの向きをそれぞれ独立して変更できるので広範囲でプラズマイオン密度の均一性を高めることができる。
【0093】
また、以上のように構成された本実施形態に係るプラズマ処理装置によれば、複数の誘導結合型アンテナ41が、処理チャンバー1の天板11に沿って延在する仮想軸Kに沿って一列に配列されるので、幅の広い範囲でプラズマイオン密度の均一性を高めることができる。
【0094】
また、以上のように構成された本実施形態に係るプラズマ処理装置によれば、板状の一対のシールド部材55が、一列に配列された複数の誘導結合型アンテナ41を挟んで互いに対向するように処理チャンバー1の天板11から立設されている。従って、両端の誘導結合型アンテナ41に起因するプラズマイオン密度をシールド部材55によって高めることによって、当該プラズマイオン密度の落ち込みを抑制できる。
【0095】
また、以上のように構成された本実施形態に係るプラズマ処理装置によれば、一対のシールド部材55の少なくとも一方は、複数の誘導結合型アンテナ41の配列の方向を定める仮想軸K方向における位置と、処理チャンバー1の天板11からの高さとのうち少なくとも一方を変更可能に設けられている。シールド部材55を誘導結合型アンテナ41に近づけることによりプラズマイオン密度を高めることができる。また、シールド部材55の高さを高くすることによってもプラズマイオン密度を高めることができる。従って、両端の誘導結合型アンテナ41に起因するプラズマイオン密度をより細かく調整することによって、プラズマイオン密度の落ち込みをさらに抑制できる。
【0096】
また、以上のように構成された本実施形態に係るプラズマ処理装置によれば、板状部材であるアンテナ保持部80に対応した形状を有して当該アンテナ保持部80により閉鎖されるように処理チャンバー1の天板11にはアンテナ用貫通孔12が設けられている。そして、アンテナ保持部80の周縁部と、当該天板11のうちアンテナ用貫通孔12の周辺部には、アンテナ用貫通孔12の周方向に沿ったアンテナ保持部80の複数の回転角度においてアンテナ保持部80がアンテナ用貫通孔12を塞げるように、アンテナ保持部80の周縁部をアンテナ用貫通孔12の周辺部に着脱可能に取り付けるための取付構造830、130がそれぞれ設けられている。従って、アンテナ保持部80の回転角度を変更することによって、アンテナ保持部80に保持された誘導結合型アンテナ41の向き(両端部42、43を結ぶ線分Lの向き)を容易に変更することができる。
【0097】
また、以上のように構成された本実施形態に係るプラズマ処理装置によれば、ネジ用貫通孔83を貫通した雄ねじ99を、止まり孔13の内周面に形成された雌ねじと螺合させることによって、アンテナ保持部80の周縁部とアンテナ用貫通孔12の周辺部とを強固に固定して処理チャンバー1内の密閉性を高めることができる。
【0098】
また、以上のように構成された本実施形態に係るプラズマ処理装置によれば、複数のネジ用貫通孔83と複数の止まり孔13のうち一方の個数が、他方の個数の倍数である。従って、複数のネジ用貫通孔83と複数の止まり孔13とのうち一方の一部と、他方の全部とを位置合わせできるアンテナ保持部80の回転角度の個数を、ネジ用貫通孔83の個数と止まり孔13の個数とのうち少ない方の個数よりも多くすることができる。これにより、ネジ用貫通孔83と止まり孔13とのうち一方の個数を削減しても、誘導結合型アンテナ41(誘導結合型アンテナ41の両端部42、43を結ぶ線分L)を、多くの向きに設定することができる。
【0099】
また、以上のように構成された本実施形態に係るプラズマ処理装置によれば、複数のネジ用貫通孔83の個数と、複数の止まり孔13の個数とは、それぞれ、4、6、8、12、および24から選ばれる任意の個数である。ネジ用貫通孔83と止まり孔13の個数を増やせば、多くの雄ねじ99を用いてアンテナ保持部80をアンテナ用貫通孔12の周縁部にさらに強固に固定できるので処理チャンバー1内の密閉性をより高められる一方、ネジ用貫通孔83と止まり孔13の製造コストが増加する。従って、ネジ用貫通孔83と止まり孔13のそれぞれの個数をこのように決定すれば、処理チャンバー1内の密閉性能の向上とコストの低減との両立を図ることができる。
【0100】
また、以上のように構成された本実施形態に係るプラズマ処理装置によれば、止まり孔13に比べて製造コストが低いネジ用貫通孔83の個数が、止まり孔13の個数よりも多いので、プラズマ処理装置の製造コストを低減できる。
【0101】
<変形例について>
本発明は詳細に示され記述されたが、上記の記述は全ての態様において例示であって限定的ではない。したがって、本発明は、その発明の範囲内において、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0102】
100,100A プラズマ処理装置
1 処理チャンバー
2 保持搬送部(対象物保持部)
9 基板
11 天板(一壁部)
12 アンテナ用貫通孔
13 止まり孔
4 プラズマ発生部
41 誘導結合型アンテナ
61 ガス供給部
80 アンテナ保持部
83 ネジ用貫通孔
90 キャリア
430 マッチングボックス
440 高周波電源
C 中心点(中点)
K 仮想軸
L 線分
図1
図2
図3
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図5
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図12