特許第6373756号(P6373756)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6373756高分子量ポリエーテルポリオールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373756
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】高分子量ポリエーテルポリオールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/28 20060101AFI20180806BHJP
   C08G 65/12 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   C08G65/28
   C08G65/12
【請求項の数】15
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-517659(P2014-517659)
(86)(22)【出願日】2012年6月26日
(65)【公表番号】特表2014-518302(P2014-518302A)
(43)【公表日】2014年7月28日
(86)【国際出願番号】EP2012062363
(87)【国際公開番号】WO2013000915
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2015年5月13日
【審判番号】不服2017-7677(P2017-7677/J1)
【審判請求日】2017年5月29日
(31)【優先権主張番号】11172174.2
(32)【優先日】2011年6月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512137348
【氏名又は名称】バイエル・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Bayer Intellectual Property GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・ロレンツ
(72)【発明者】
【氏名】イェルク・ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】ホルスト・ツヴィック
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・シュタインライン
(72)【発明者】
【氏名】エドワード・ブラウン
【合議体】
【審判長】 岡崎 美穂
【審判官】 大熊 幸治
【審判官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/043345(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/00-67/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複金属シアン化物(DMC)触媒の存在下において1以上のH官能性スターター化合物および1以上のアルキレンオキシドから、8,000〜20,000g/モルの当量分子量を有するポリエーテルポリオールを製造する方法であって、15〜23時間かけてアルキレンオキシドを反応器に計量添加し、当量分子量の算出は:
当量分子量=56,100/(OH価[mg KOH/g])
であることを特徴とする方法。
【請求項2】
(α)DMC触媒および1以上のH官能性スターター化合物を最初に反応器に導入し、不活性ガスを60〜160℃の温度において通入し、同時に不活性ガスの除去によって反応器において5mbar〜500mbarの減圧(絶対)を達成し(「ストリッピング」)、
(β)次に、15〜23時間かけて以上のアルキレンオキシドを反応器に計量添加する(「重合」)
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(α)(α1)DMC触媒および1以上のH官能性スターター化合物を最初に反応器に導入し、不活性ガスを60〜160℃の温度において通入し、同時に不活性ガスの除去によって反応器において5mbar〜500mbarの減圧(絶対)を達成し(「ストリッピング」)、
(α2)部分量の1以上のアルキレンオキシドを工程(α1)からの混合物に添加し(「活性化」)、
(β)次に、15〜23時間かけて残りの部分量の1以上のアルキレンオキシドを反応器に計量添加する(「重合」)
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(α)DMC触媒および開始媒体を最初に反応器に導入し、
(β)15〜23時間かけて以上のアルキレンオキシドの全量、およびH官能性スターター化合物または部分量のH官能性スターター化合物を次に反応器に計量添加し(「重合」)、
ここで、アルキレンオキシド付加生成物、部分量のH官能性スターター化合物および/または4,000〜20,000g/モルの当量分子量を有するポリエーテルポリオールを開始媒体として用いる
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
(α)(α1)DMC触媒および開始媒体を最初に反応器に導入し、
(α2)部分量の1以上のアルキレンオキシドを工程(α1)からの混合物に添加し(「活性化」)、
(β)15〜23時間かけて残りの部分量の1以上のアルキレンオキシド、およびH官能性スターター化合物または部分量のH官能性スターター化合物を次に反応器に計量添加し(「重合」)、
ここで、アルキレンオキシド付加生成物、部分量のH官能性スターター化合物および/または4,000〜20,000g/モルの当量分子量を有するポリエーテルポリオールを開始媒体として用いる
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程(α1)において、DMC触媒および1以上のH官能性スターター化合物を最初に反応器に導入し、不活性ガスを60〜160℃の温度において通入し、同時に不活性ガスの除去によって反応器において5mbar〜500mbarの減圧(絶対)を達成する(「ストリッピング」)
ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(α)開始媒体および部分量のDMC触媒を最初に反応器系に導入し、
(β)1以上のH官能性スターター化合物を、アルキレンオキシドおよび更なるDMC触媒と一緒に連続的に計量添加し、15〜23時間の平均滞留時間の後に、反応生成物を反応器系から連続的に取り出し、
ここで、アルキレンオキシド付加生成物、部分量のH官能性スターター化合物および/または4,000〜20,000g/モルの当量分子量を有するポリエーテルポリオールを開始媒体として用いる
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程(α2)において、2〜20重量%(工程(α1)において用いられる1以上のH官能性スターター化合物の総量を基準とする)の1以上のアルキレンオキシドを添加し、工程(β)において、残りの部分量の1以上のアルキレンオキシドを添加する
ことを特徴とする請求項3、5または6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(β)におけるアルキレンオキシド計量添加速度は、4,500g[アルキレンオキシド]/(モル[ヒドロキシル基]×時間)と50g[アルキレンオキシド]/(モル[ヒドロキシル基]×時間)との間である、請求項2、3および8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程(β)においてアルキレンオキシド計量添加速度を下げる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
重合を110〜150℃の温度において行うことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
9,000〜20,000g/モルの当量分子量を有するポリエーテルポリオールを製造するための、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程(β)において、15〜23時間にわたるアルキレンオキシドの計量添加が終了する前に、H官能性スターター化合物の計量添加を終了することを特徴とする、請求項4、5、6、8、11および12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
H官能性スターター化合物の計量添加の終了後にアルキレンオキシドの計量添加速度を変え、ここでアルキレンオキシド計量添加速度は、4,500g[アルキレンオキシド]/(モル[ヒドロキシル基]×時間)と50g[アルキレンオキシド]/(モル[ヒドロキシル基]×時間)との間である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
H官能性スターター化合物の計量添加の終了後にアルキレンオキシドの計量添加速度を下げる、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、8,000〜20,000g/モル、好ましくは9,000〜20,000g/モル、特に好ましくは10,000〜16,000g/モルの当量分子量を有するポリエーテルポリオールの製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンの製造に適当であるポリエーテルポリオールは、様々な製造方法によって得ることができる。一方では、H官能性スターター化合物へのアルキレンオキシドの塩基触媒付加、および他方では、H官能性スターター化合物へのアルキレンオキシドの付加のための触媒としての複金属シアン化物化合物(「DMC触媒」)の使用は、大規模な工業として重要である。(ルイス)酸によって触媒される、適当なスターター化合物へのアルキレンオキシドの付加は、重要性が低い。
【0003】
アルカリ金属水酸化物触媒反応下において、ポリマーの分子量が増加するにつれて、望ましくない副反応が著しく増加する。ここで言及すべきであるのは、特にプロピレンオキシドのアリルアルコールへの異性化であるが、これは、高い当量分子量(または低いOH価)において、反応混合物中の一官能性ポリエーテル種の高含有量をもたらし、その結果、官能性の著しい低下をもたらす。従って、一官能性ポリエーテル分子は、ポリウレタン系およびこのポリエーテルから製造できる他の材料、例えばシランに基づくシーリング材等の完全硬化特性および物理的特性のプロファイルに悪影響を与える。
【0004】
DMC触媒の使用によって、上述したプロピレンオキシドのアリルアルコールへの異性化が顕著な程度にまで起こることなく、アルキレンオキシド、特にプロピレンオキシドのH官能性スターター化合物への付加の速度を上げて、非常に低いOH価に下げ、すなわち高い当量分子量にすることが可能となっている。例えばUS-A 5470813、EP-A 700949、EP-A 743093、EP-A 761708、WO-A 97/40086、WO-A 98/16310およびWO-A 00/47649に記載されている高活性DMC触媒は、非常に高活性をさらに有し、非常に低い触媒濃度(100ppm以下)においてポリエーテルポリオールの製造を可能とし、その結果、もはや最終生成物から触媒を除去する必要がない。代表的な例は、EP-A 700949に記載されている高活性DMC触媒であり、これは、複金属シアン化物化合物(例えばヘキサシアノコバルト(III)酸亜鉛)および有機錯化配位子(例えばtert-ブタノール)に加えて、500g/モルより大きい数平均分子量を有するポリエーテルを含む。
【0005】
活性水素原子を含む物質の当量分子量とは、活性水素原子を含む物質の全重量を活性水素原子数で割ったものを意味すると理解される。ヒドロキシル基を含む物質(例えばポリエーテルポリオール等)の場合、これはOH価(ヒドロキシル価)と次のように関係がある:
当量分子量=56,100/(OH価[mg KOH/g]) (I)
【0006】
従って、ポリエーテルポリオールの当量分子量は式(I)に従って決定され、ポリエーテルポリオールのヒドロキシル価はDIN 53240に従って決定される。
【0007】
高い当量分子量を有するアルキレンオキシド付加生成物のDMC触媒による製造およびポリウレタンまたはポリウレアに基づく材料の製造のためのその使用は、当業者に既知である。例えば、DE-A 4117679およびUS-A 5096993には、反応射出成型法(「RIM」技術)によって軟質ポリウレタンまたはポリウレアエラストマーを製造するための、30,000Da以下の分子量を有するポリヒドロキシおよびポリアミン化合物の使用が開示されている。WO-A 9104997には、高性能ポリウレタンシーリング材系において用いられるイソシアネート末端プレポリマーのポリエーテル成分としての、30,000Da以下の分子量を有するポリエーテルトリオールが開示されている。EP-A 1316573には、DMC触媒反応によって製造され、ポリオール成分として用いられる好ましくは5,000〜11,000Daの当量分子量を有するポリエーテルポリオールの製造のために、金型から素早く取り出し可能な良好な長期使用特性を有する軟質フォーム体を得る方法が開示されている。EP-A 0425694には、ポリエーテル成分が15,000Da以下の当量分子量を有する、イソシアネート末端ポリエーテルプレポリマーが開示されている。このようなポリエーテルポリオールはDMC触媒反応によって得られる。DMC触媒反応によって製造される15,000Da以下の当量分子量を有するポリエーテルは、EP-A 0732561において、シラン基を含むポリマーに基づく湿分硬化性シーリング材系の製造のために、開始化合物として用いられている。
【0008】
非常に高い当量分子量(8,000Da以上)を有するポリエーテルポリオールのDMC触媒による製造において、狭い分子量分布および、これと関連して、扱いやすい粘度を達成することは、その当量が増加するにつれて、ますます多くの問題を示す。従来技術の方法では、この問題に対する解決法は提供されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第5470813号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第700949号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第743093号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第761708号明細書
【特許文献5】国際公開第97/40086号
【特許文献6】国際公開第98/16310号
【特許文献7】国際公開第00/47649号
【特許文献8】独国特許出願公開第4117679号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第5096993号明細書
【特許文献10】国際公開第9104997号
【特許文献11】欧州特許出願公開第1316573号明細書
【特許文献12】欧州特許出願公開第0425694号明細書
【特許文献13】欧州特許出願公開第0732651号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、8,000〜20,000g/モル、好ましくは9,000〜20,000g/モル、特に好ましくは10,000〜16,000g/モルの当量分子量を有するポリエーテルポリオールの製造方法であって、可能な限り低い粘度および可能な限り狭い分子量分布を達成するために最適化された方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、複金属シアン化物触媒の存在下において1以上のH官能性スターター化合物および1以上のアルキレンオキシドから、8,000〜20,000g/モル、好ましくは9,000〜20,000g/モル、特に好ましくは10,000〜16,000g/モルの当量分子量を有するポリエーテルポリオールを製造する方法であって、15〜23時間にわたってアルキレンオキシドを反応器に計量添加することを特徴とする方法によって、本発明による上述した目的が達成されることが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0012】
H官能性スターター化合物は、単に「活性水素」とも呼ばれる場合があるツェレビチノフ活性水素原子を少なくとも1つ含むその化合物である。C、N、O、またはSに結合した水素は、ツェレビチノフに発見された方法によってヨウ化メチルマグネシウムとの反応によりメタンを生じる場合、ツェレビチノフ活性水素と呼ばれる。ツェレビチノフ活性水素を有する化合物の代表的な例は、官能性基としてカルボキシル、ヒドロキシルまたはチオール基を含む化合物である。官能価とは、H官能性スターター化合物1分子当たりのツェレビチノフ活性水素原子数を意味すると理解される。適当なH官能性スターター化合物は、通常1〜35、好ましくは1〜8、特に好ましくは2〜3の官能価を有する。その分子量は、18g/モル〜1,200g/モルである。H官能性スターター化合物の混合物を用いる場合、この混合物の官能価はH官能性スターター化合物の数平均官能価である。適当なスターター化合物の代表的な例としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール及び高級脂肪族モノオール、特に脂肪アルコール、フェノール、アルキル置換フェノール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,12-ドデカンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロース、ヒドロキノン、ピロカテコール、レゾルシノール、ビスフェノールF、ビスフェノールA、1,3,5-トリヒドロキシベンゼン、およびホルムアルデヒドとフェノールまたはウレアとのメチロール基含有縮合物が挙げられる。水素化デンプン加水分解生成物に基づく多官能性スターター化合物を用いることもできる。このような化合物は、例えばEP-A 1525244に記載されている。さらに環状カルボン酸無水物とポリオールとからの開環生成物をスターター化合物として用いることもできる。例えば、一方としてフタル酸無水物、コハク酸無水物、マレイン酸無水物と、他方としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,12-ドデカンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールまたはソルビトールとの開環生成物が挙げられる。また、一官能性または多官能性カルボン酸をスターター化合物として直接用いることもできる。
【0013】
本発明による方法において、上述したH官能性スターター化合物の既製のアルキレンオキシド付加生成物、すなわち好ましくは16〜1,000mg KOH/g、特に好ましくは40〜1,000mg KOH/gのOH価を有するポリエーテルポリオールを、本発明による方法のための単一のスターターとして用いてもよく、または上述したスターターに添加してもよい。(コ)スターターとして用いることができるこのアルキレンオキシド付加生成物は、DMCまたは塩基性触媒反応によって同様に製造することができる。ポリエーテルエステル製造の目的で、本発明による方法において、(コ)スターターとして好ましくは20〜800mg KOH/gの範囲のOH価を有するポリエステルポリオールをここで用いることもできる。これに適当なポリエステルポリオールは、例えば2〜12個の炭素原子を有する有機ジカルボン酸および2〜12個の炭素原子、好ましくは2〜6個の炭素原子を有する多価アルコール、好ましくはジオールから既知の方法によって製造することができる。
【0014】
さらに、H官能性スターター物質として、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルカーボネートポリオールまたはポリエーテルカーボネートポリオール、好ましくはポリカーボネートジオール、ポリエステルカーボネートジオールまたはポリエーテルカーボネートジオールを、(コ)スターターとして用いてよく、好ましくはそれぞれ20〜800mg KOH/gの範囲のOH価を有する。これらは例えば、ホスゲン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートまたはジフェニルカーボネートと2官能性以上のアルコールまたはポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールとの反応によって製造される。
【0015】
本発明による方法において、ヒドロキシル基を有するH官能性スターター化合物、例えばメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノールおよび高級脂肪族モノオール、特に脂肪アルコール、フェノール、アルキル置換フェノール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,12-ドデカンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロース、ヒドロキノン、ピロカテコール、レゾルシノール、ビスフェノールF、ビスフェノールA、1,3,5-トリヒドロキシベンゼン、ホルムアルデヒドとメチロール基を含むフェノールとの縮合物および水素化デンプン加水分解生成物、ならびにこれらのスターター化合物のアルキレンオキシド付加生成物等は、好ましくは活性水素のキャリアとして機能する。種々のH官能性スターター化合物の混合物を用いることもできる。H官能性スターター化合物の官能価は、特に好ましくは2〜3である。
【0016】
本発明による方法に適当なDMC触媒は、原理上、従来技術から知られている(例えばUS-A 3404109、US-A 3829505、US-A 3941849およびUS-A 5158922参照)。DMC触媒は、例えばUS-A 5470813、EP-A 700949、EP-A 743093、EP-A 761708、WO 97/40086、WO 98/16310およびWO 00/47649に記載されており、これらはアルキレンオキシドの重合において非常に高い活性を有し、非常に低い触媒濃度(100ppm以下)で最適条件下においてポリエーテルポリオールの製造が可能となり、その結果、一般にもはや最終生成物から触媒を分離する必要はない。代表的な例は、EP-A 700949に記載されている高活性DMC触媒であり、これは、複金属シアン化物化合物(例えばヘキサシアノコバルト(III)酸亜鉛)および有機錯化配位子(例えばtert-ブタノール)に加えて、500g/モルより大きな数平均分子量を有するポリエーテルも含む。EP出願番号10163170.3に開示されているアルカリ性DMC触媒を用いることもできる。
【0017】
複金属シアン化物化合物の調製に適当なシアン化物不含有の金属塩は、好ましくは一般式(II):
M(X) (II)
〔式中、
Mは、金属カチオンZn2+、Fe2+、Ni2+、Mn2+、Co2+、Sr2+、Sn2+、Pb2+およびCu2+から選択され、好ましくは、MはZn2+、Fe2+、Co2+またはNi2+であり、
Xは、1以上の(すなわち異なる)アニオン、好ましくはハロゲン化物イオン(すなわちフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、シアン酸イオン、チオシアン酸イオン、イソシアン酸イオン、イソチオシアン酸イオン、カルボン酸イオン、シュウ酸イオンおよび硝酸イオンの群から選択されるアニオンである;
X=硫酸イオン、炭酸イオンまたはシュウ酸イオンの場合、nは1であり、および
X=ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、シアン酸イオン、チオシアン酸イオン、イソシアン酸イオン、イソチオシアン酸イオンまたは硝酸イオンの場合、nは2である〕
を有し、
または、適当なシアン化物不含有の金属塩は一般式(III):
(X) (III)
〔式中、
Mは、金属カチオンFe3+、Al3+およびCr3+から選択され、
Xは、1以上の(すなわち異なる)アニオン、好ましくはハロゲン化物イオン(すなわちフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、シアン酸イオン、チオシアン酸イオン、イソシアン酸イオン、イソチオシアン酸イオン、カルボン酸イオン、シュウ酸イオンおよび硝酸イオンの群から選択されるアニオンである;
X=硫酸イオン、炭酸イオンまたはシュウ酸イオンの場合、rは2であり、および
X=ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、シアン酸イオン、チオシアン酸イオン、イソシアン酸イオン、イソチオシアン酸イオン、カルボン酸イオンまたは硝酸イオンの場合、rは1である〕
を有し、
または、適当なシアン化物不含有の金属塩は一般式(IV):
M(X) (IV)
〔式中、
Mは、金属カチオンMo4+、V4+およびW4+から選択され、
Xは、1以上の(すなわち異なる)アニオン、好ましくはハロゲン化物イオン(すなわちフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、シアン酸イオン、チオシアン酸イオン、イソシアン酸イオン、イソチオシアン酸イオン、カルボン酸イオン、シュウ酸イオンおよび硝酸イオンの群から選択されるアニオンである;
X=硫酸イオン、炭酸イオンまたはシュウ酸イオンの場合、sは2であり、
X=ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、シアン酸イオン、チオシアン酸イオン、イソシアン酸イオン、イソチオシアン酸イオン、カルボン酸イオンまたは硝酸イオンの場合、sは4である〕
を有し、
または、適当なシアン化物不含有の金属塩は一般式(V):
M(X) (V)
〔式中、
Mは、金属カチオンMo6+およびW6+から選択され、
Xは、1以上の(すなわち異なる)アニオン、好ましくはハロゲン化物イオン(すなわちフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、シアン酸イオン、チオシアン酸イオン、イソシアン酸イオン、イソチオシアン酸イオン、カルボン酸イオン、シュウ酸イオンおよび硝酸イオンの群から選択されるアニオンである;
X=硫酸イオン、炭酸イオンまたはシュウ酸イオンの場合、tは3であり、
X=ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、シアン酸イオン、チオシアン酸イオン、イソシアン酸イオン、イソチオシアン酸イオン、カルボン酸イオンまたは硝酸イオンの場合、tは6である〕
を有する。
【0018】
適当なシアン化物不含有の金属塩として、例えば塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、酢酸亜鉛、アセチルアセトン酸亜鉛、安息香酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸鉄(II)、臭化鉄(II)、塩化鉄(II)、塩化コバルト(II)、チオシアン酸コバルト(II)、塩化ニッケル(II)および硝酸ニッケル(II)が挙げられる。種々の金属塩の混合物を用いることもできる。
【0019】
複金属シアン化物化合物の調製に適当な金属シアン化物塩は、好ましくは一般式(VI):
(Y)M’(CN)(A) (VI)
〔式中、
M’は、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)、Cr(II)、Cr(III)、Mn(II)、Mn(III)、Ir(III)、Ni(II)、Rh(III)、Ru(II)、V(IV)およびV(V)からなる群から選択される1以上の金属カチオンであり、好ましくは、M’はCo(II)、Co(III)、Fe(II)、Fe(III)、Cr(III)、Ir(III)およびNi(II)からなる群の1以上の金属カチオンであり、
Yは、アルカリ金属(すなわちLi、Na、K、Rb、Cs)およびアルカリ土類金属(すなわちBe2+、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+)からなる群から選択される1以上の金属カチオンであり、
Aは、ハロゲン化物イオン(すなわちフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、シアン酸イオン、チオシアン酸イオン、イソシアン酸イオン、イソチオシアン酸イオン、カルボン酸イオン、シュウ酸イオンまたは硝酸イオンからなる群から選択される1以上のアニオンであり、
a、bおよびcは整数であり、ただしa、bおよびcの価数は金属シアン化物塩が電気的中性を有するように選択される;aは好ましくは1、2、3または4である;bは好ましくは4、5または6である;cは好ましくは価数0を有する〕
を有する。
【0020】
適当な金属シアン化物塩として、例えばヘキサシアノコバルト(III)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、ヘキサシアノコバルト(III)酸カルシウムおよびヘキサシアノコバルト(III)酸リチウムが挙げられる。
【0021】
本発明によるDMC触媒に含まれる好ましい複金属シアン化物化合物は、一般式(VII):
[M’x’(CN) (VII)
〔式中、
Mは、式(II)〜(V)において規定され、
M’、は式(VI)において規定され、および
x、x’、yおよびzは、整数であり、ただし複金属シアン化物化合物が電気的中性を有するように選択される〕
の化合物である。
【0022】
好ましくは、
x=3、x’=1、y=6およびz=2、
M=Zn(II)、Fe(II)、Co(II)またはNi(II)および
M’=Co(III)、Fe(III)、Cr(III)またはIr(III)である。
【0023】
適当な複金属シアン化物化合物として、例えばヘキサシアノコバルト(III)酸亜鉛、ヘキサシアノイリジウム(III)酸亜鉛、ヘキサシアノ鉄(III)酸亜鉛およびヘキサシアノコバルト(III)酸コバルト(II)が挙げられる。適当な複金属シアン化物化合物の更なる例は、例えばUS-A 5158922(第8欄、第29〜66行)に見られる。ヘキサシアノコバルト(III)酸亜鉛が特に好ましく用いられる。
【0024】
DMC触媒の調製において添加される有機錯化配位子は、例えばUS-A 5158922(特に第6欄、第9〜65行参照)、US-A 3404109、US-A 3829505、US-A 3941849、EP-A 700949、EP-A 761708、JP-A 4145123、US-A 5470813、EP-A 743093およびWO-A 97/40086に開示されている。例えば、酸素、窒素、リンまたは硫黄等のヘテロ原子を有する水溶性有機化合物は、複金属シアン化物化合物と錯体を形成することができ、有機錯化配位子として用いられる。好ましい有機錯化配位子は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エーテル、エステル、アミド、ウレア、ニトリル、スルフィドおよびその混合物である。特に好ましい有機錯化配位子は、脂肪族エーテル(例えばジメトキシエタン)、水溶性脂肪族アルコール(例えばエタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、2-メチル-3-ブテン-2-オールおよび2-メチル-3-ブチン-2-オール)、および脂肪族または脂環式エーテル基と脂肪族ヒドロキシル基との両方を含む化合物(例えばエチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルおよび3-メチル-3-オキセタン-メタノール)である。非常に好ましい有機錯化配位子は、ジメトキシエタン、tert-ブタノール、2-メチル-3-ブテン-2-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテルおよび3-メチル-3-オキセタン-メタノールからなる群から選択される1以上の化合物である。
【0025】
必要に応じて本発明によるDMC触媒の調製において用いられるのは、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアルキレングリコールソルビタンエステル、ポリアルキレングリコールグリシジルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸)、ポリアクリル酸、ポリ(アクリル酸-co-マレイン酸)、ポリアクリロニトリル、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレート、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリ-N-ビニルピロリドン、ポリ(N-ビニルピロリドン-co-アクリル酸)、ポリビニルメチルケトン、ポリ(4-ビニルフェノール)、ポリ(アクリル酸-co-スチレン)、オキサゾリンポリマー、ポリアルキレンイミン、マレイン酸およびマレイン酸無水物コポリマー、ヒドロキシエチルセルロースおよびポリアセタールの化合物種、またはグリシジルエーテル、グリコシド、多価アルコールのカルボン酸エステル、胆汁酸もしくはそれらの塩、エステルもしくはアミド、シクロデキストリン、リン化合物、α,β-不飽和カルボン酸エステルもしくはイオン界面活性もしくは接合面活性化合物の化合物類からの1以上の錯体成分である。
【0026】
好ましくは、本発明によるDMC触媒の調製における第1工程において、金属シアン化物塩に基づいて化学量論上過剰(少なくとも50モル%)に用いた金属塩(例えば塩化亜鉛)(すなわち少なくともシアン化物不含有の金属塩対金属シアン化物塩のモル比が2.25対1.00)および金属シアン化物塩(例えばヘキサシアノコバルト酸カリウム)の水溶液を有機錯化配位子(例えばtert-ブタノール)の存在下において反応させ、その結果、複金属シアン化物化合物(例えばヘキサシアノコバルト酸亜鉛)、水、過剰のシアン化物不含有の金属塩および有機錯化配位子を含む懸濁液が生成される。これに関して、有機錯化配位子は、シアン化物不含有の金属塩および/もしくは金属シアン化物塩の水溶液に存在してよく、または複金属シアン化物化合物の沈殿後に得られる懸濁液に直接添加される。シアン化物不含有の金属塩および金属シアン化物塩の水溶液および有機錯化配位子を強く攪拌して混合するのが有利であると見出されている。次に、第1工程において生成した懸濁液を更なる錯体成分を用いて必要に応じて処理する。これに関して、錯体成分は、好ましくは水および有機錯化配位子を有する混合物において用いる。第1工程(すなわち懸濁液の生成)を行うための好ましい方法は、混合ノズルを用いて行い、特に好ましくはWO-A 01/39883に記載されているような噴出分散器を用いて行う。
【0027】
第2工程において、遠心分離またはろ過等の既知の技術によって、固体(すなわち本発明による触媒の前駆体)を懸濁液から分離する。
【0028】
触媒の調製のための好ましい実施態様の別例においては、第3工程において、分離した固体を次に有機錯化配位子の水溶液を用いて洗浄する(例えば再懸濁し、次にろ過または遠心分離による再分離によって)。このように、例えば、塩化カリウム等の水溶性副生成物を本発明による触媒から除去することができる。好ましくは、洗浄水溶液中の有機錯化配位子の量は、溶液全体を基準として40〜80重量%である。
【0029】
第3工程において、全溶液を基準として好ましくは0.5〜5重量%の範囲の更なる錯体成分を洗浄水溶液に必要に応じて添加する。
【0030】
分離した固体を1回より多く洗浄することがさらに有利である。このために、例えば第1洗浄操作を繰り返してよい。しかし、更なる洗浄操作のために、非水溶液、例えば有機錯化配位子および更なる錯体成分の混合物等を用いることが好ましい。
【0031】
分離して任意に洗浄した固体を、必要であれば粉状化後に、一般に20〜100℃の温度、一般に0.1mbar〜標準圧(1013mbar)の圧力下において、次に乾燥する。
【0032】
ろ過、ろ過ケーキ洗浄および乾燥によって、懸濁液から本発明によるDMC触媒を分離する好ましい方法は、WO-A 01/80994に記載されている。
【0033】
本発明による方法において、DMC触媒は、それぞれ反応バッチのサイズに基づいて、10〜1,000ppmの量、好ましくは15〜500ppmの量、特に好ましくは20〜300ppmの量、非常に特に好ましくは25〜150ppmの量で用いられる。
【0034】
好ましくは、DMC触媒は最終生成物に残存するが、例えば吸着剤を用いた処理によって分離することもできる。DMC触媒の分離方法は、例えばUS-A 4987271、DE-A 3132258、EP-A 406440、US-A 5391722、US-A 5099075、US-A 4721818、US-A 4877906およびEP-A 385619に記載されている。
【0035】
2〜24個の炭素原子を有するアルキレンオキシド(エポキシド)を、本発明による方法のために用いることができる。2〜24個の炭素原子を有するアルキレンオキシドは、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、1-ブテンオキシド、2,3-ブテンオキシド、2-メチル-1,2-プロペンオキシド(イソブテンオキシド)、1-ペンテンオキシド、2,3-ペンテンオキシド、2-メチル-1,2-ブテンオキシド、3-メチル-1,2-ブテンオキシド、1-ヘキセンオキシド、2,3-ヘキセンオキシド、3,4-ヘキセンオキシド、2-メチル-1,2-ペンテンオキシド、4-メチル-1,2-ペンテンオキシド、2-エチル-1,2-ブテンオキシド、1-ヘプテンオキシド、1-オクテンオキシド、1-ノネンオキシド、1-デセンオキシド、1-ウンデセンオキシド、1-ドデセンオキシド、4-メチル-1,2-ペンテンオキシド、ブタジエンモノオキシド、イソプレンモノオキシド、シクロペンテンオキシド、シクロヘキセンオキシド、シクロヘプテンオキシド、シクロオクテンオキシド、スチレンオキシド、メチルスチレンオキシド、ピネンオキシド、モノ-、ジ-およびトリグリセリドとしてのモノ-またはポリエポキシ化脂肪、エポキシ化脂肪酸、エポキシ化脂肪酸のC1〜C24エステル、エピクロロヒドリン、グリシドール、およびグリシドールの誘導体、例えばメチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレートおよびエポキシド官能性アルキルオキシシラン、例えば3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリプロポキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルエチルジエトキシシランおよび3-グリシジルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン等からなる群から選択される1以上の化合物である。
【0036】
本発明による方法において、好ましくはプロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシドを用いる。純粋なプロピレンオキシドまたは計量添加するアルキレンオキシドの全重量を基準として75重量%以下のエチレンオキシドを有するプロピレンオキシドとエチレンオキシドとの混合物が特に好ましく用いられる。個別の成分として、または混合物として、アルキレンオキシドを反応器に供給することができる。複数のアルキレンオキシドを反応器に連続して供給することが同じく可能であり、これによってブロック構造を有するポリエーテル鎖を実現できる。複数のアルキレンオキシドを計量添加する場合、計量添加されるアルキレンオキシド流の組成を、連続的または瞬間的に変更してよい。
【0037】
DMC触媒反応下において本発明による方法によってアルキレンオキシドと共重合可能な更なるモノマーとして、例えばラクトン、ラクチド、酸無水物、環状カーボネートおよび二酸化炭素が挙げられる。それらの使用は、US-A 3538043、US-A 4500704、US-A 5032671、US-A 6646100、EP-A 222453およびWO-A 2008/013731に記載されている。
【0038】
例えば抗酸化剤等の劣化防止剤を最終生成物に同様に添加してよい。
【0039】
1つの実施態様において、DMC触媒をH官能性スターター化合物に添加し、その混合物を反応器に導入するか、またはH官能性スターター化合物およびDMC触媒を反応器に導入する。例えばWO-A 99/14258等に記載されているように、DMC触媒の添加前に、少量(1〜500ppm)の有機酸または無機酸をH官能性スターター化合物にさらに添加してよい。
【0040】
好ましい手順において、不活性ガス(窒素またはアルゴン等の希ガス)を用いて、60〜160℃、好ましくは100〜155℃、非常に特に好ましくは110〜155℃の温度において、攪拌しながら、まず反応器内容物を好ましくは10〜60分間にわたってストリッピングする。ストリッピングの間、不活性ガスを液相に通入し、同時に5〜500mbarの絶対圧下において減圧しながら、揮発性成分を除去する。次の工程の反応温度がストリッピング温度と同一でなければ、次に、この温度を次の工程の反応温度に調節することができる。しかし、最初に、アルキレンオキシドの計量添加の初期段階において、最後の反応温度を達成することもできる。重合における反応温度は、例えば110〜150℃、好ましくは130〜150℃、特に好ましくは140〜150℃である。従って、本発明は、8,000〜20,000g/モル、好ましくは9,000〜20,000g/モル、特に好ましくは10,000〜16,000g/モルの当量分子量を有するポリエーテルポリオールの製造方法であって、ここで
(α)DMC触媒および1以上のH官能性スターター化合物を最初に反応器に導入し、60〜160℃、好ましくは100〜155℃、非常に特に好ましくは110〜155℃の温度において、好ましくは不活性ガス(窒素またはアルゴン等の希ガス)をDMC触媒と1以上のH官能性スターター化合物との混合物中に通入し、同時に不活性ガスの除去によって反応器において5mbar〜500mbar、好ましくは40mbar〜200mbarの減圧(絶対)を達成し(「ストリッピング」)、
(β)次に、例えば110〜150℃、好ましくは130〜150℃、特に好ましくは140〜150℃の温度において、1以上のアルキレンオキシドを15〜23時間にわたって反応器に計量添加する(「重合」)
方法も提供する。
【0041】
特に好ましい手順において、工程(α)において用いる1以上のH官能性スターター化合物の総量に基づいて通常2〜20重量%を計量添加することによって、重合前の加工工程(先の工程β参照)において、まずDMC触媒を個別に活性化する。ストリッピング温度または反応温度への反応器内容物の加熱前、加熱中または加熱後に、1以上のアルキレンオキシドの添加を行ってよい;好ましくはストリッピング後に行う。アルキレンオキシドの計量添加の中断後に、工程(α)において用いる1以上のH官能性スターター化合物の総量に基づいて通常2〜20重量%のアルキレンオキシドを計量添加した後、DMC触媒の活性化は反応器の圧力降下が促進されることによって現れ、これによってアルキレンオキシドの転化の開始が示される。次に、アルキレンオキシドまたはアルキレンオキシド混合物の残りの量を反応混合物に15〜23時間にわたって連続して供給し、ここで110〜150℃、好ましくは130〜150℃、特に好ましくは140〜150℃の反応温度が選択される。従って、本発明は、8,000〜20,000g/モル、好ましくは9,000〜20,000g/モル、特に好ましくは10,000〜16,000g/モルの当量分子量を有するポリエーテルポリオールの製造方法であって、ここで
(α)(α1)DMC触媒および1以上のH官能性スターター化合物を最初に反応器に導入し、60〜160℃、好ましくは100〜155℃、非常に特に好ましくは110〜155℃の温度において、不活性ガス(窒素またはアルゴン等の希ガス)を反応器に、好ましくはDMC触媒と1以上のH官能性スターター化合物との混合物に通入し、同時に不活性ガスの除去によって反応器において5mbar〜500mbar、好ましくは40mbar〜200mbarの減圧(絶対)を達成し(「ストリッピング」)、
(α2)部分量の、好ましくは2〜20重量%(工程(α1)において用いられる1以上のH官能性スターター化合物の総量に基づく)の1以上のアルキレンオキシドを工程(α1)からの混合物に添加し(「活性化」)、
(β)次に、例えば110〜150℃、好ましくは130〜150℃、特に好ましくは140〜150℃の温度において、15〜23時間にわたって残りの部分量の1以上のアルキレンオキシドを反応器に計量添加する(「重合」)
方法も提供する。
【0042】
記載した全ての実施態様において、重合(工程(β))中の反応温度は、記載した温度限度内において変えることができる。同じく様々な方法で1以上のアルキレンオキシドを反応器に供給することができる。気相への計量添加または液相への直接計量添加が可能であり、例えば反応器底の近傍の完全な混合領域に配置される浸漬管またはディストリビュータ環によって行われる。液相への計量添加が好ましい別例である。液相への計量添加の場合、例えばディストリビュータ環の下部に計量添加孔を設けることによって、計量添加システムを設計において自動流出型とすべきである。用いる反応器系の安全な圧力限界を超えないように、アルキレンオキシドを反応器に連続して供給する。特に、エチレンオキシドを含むアルキレンオキシド混合物または純粋なエチレンオキシドの計量添加の場合、開始および計量添加段階中に十分な不活性ガスの分圧が反応器において維持されることを確保すべきである。これは、例えば希ガス(例えばアルゴン等)または窒素によって達成することができる。重合段階(工程(β))におけるアルキレンオキシドの計量添加速度は、一定に保つことができ、またはその代わりに、段階的もしくは連続的に変えることができる。例えば、重合段階(工程(β))におけるアルキレンオキシド計量添加速度は、4,500g[アルキレンオキシド]/(モル[ヒドロキシル基]×時間)と50g[アルキレンオキシド]/(モル[ヒドロキシル基]×時間)との間、好ましくは2,000g[アルキレンオキシド]/(モル[ヒドロキシル基]×時間)と50g[アルキレンオキシド]/(モル[ヒドロキシル基]×時間)との間、特に好ましくは1,000g[アルキレンオキシド]/(モル[ヒドロキシル基]×時間)と70g[アルキレンオキシド]/(モル[ヒドロキシル基]×時間)との間、非常に特に好ましくは750g[アルキレンオキシド]/(モル[ヒドロキシル基]×時間)と100g[アルキレンオキシド]/(モル[ヒドロキシル基]×時間)との間であってよく、アルキレンオキシド計量添加速度を維持すること、または段階的もしくは連続的に変えることができる。アルキレンオキシド計量添加速度は、反応バッチの間に上げること、および下げること両方が可能である。本発明の好ましい実施態様において、反応バッチの間にアルキレンオキシド計量添加速度を下げる。
【0043】
計量添加システムへの反応媒体の逆流を、装置測定器によって、例えば逆止め弁の設置によって防止することが有利であり得る。
【0044】
重合工程において複数のアルキレンオキシドを計量添加する場合、特定のアルキレンオキシドを個別に反応器に供給することができ、またはアルキレンオキシド混合物として供給することができる。アルキレンオキシドの混合は、例えば通常の計量添加ゾーンに設置される混合システムによって達成することができる(「インライン混合」)。アルキレンオキシドを、個別にまたは予混合もしくは混合物として、例えば熱交換器により導かれるポンプ循環におけるポンプ圧側に計量添加することが適当であることも見出されている。反応媒体との完全な混合のために、その場合、高せん断混合システムをアルキレンオキシド/反応媒体流に組み入れることが有利である。発熱重合(アルキレンオキシド付加反応)の温度を、冷却によって、所望のレベルに保つか、または所望のレベルに調節する。発熱反応用の重合反応器の設計に関する従来技術(例えばUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry、第B4巻、第167頁〜、第5版、1992年)によれば、このような冷却は、反応器壁(例えば二重壁ジャケット、ハーフパイプコイルジャケット)を通じて、反応器の内側および/またはポンプ循環の外側に設置された更なる熱交換器表面、例えば冷却コイル、冷却カートリッジ、プレート、管束または混合熱交換器によって一般に行われる。計量添加段階の開始においても、すなわち低い充填面においても効果的に冷却を行うことができるように、これらを設計すべきである。
【0045】
一般に、商業的に利用可能な攪拌ユニットの設計および使用によって、全反応段階において反応器内容物の完全な混合が確保されるべきであり、この場合、1以上の段階に配置される攪拌機または充填高を通して大きな領域にわたって機能する攪拌機種が特に適当である(例えばHandbuch Apparate;Vulkan-Verlag Essen、第1版(1990年)、第188〜208頁)。この場合に産業的に特に関連があるのは、反応器の全内容物にわたって平均して導入され、一般に0.2〜5W/lの範囲にあり、攪拌ユニット自体の周辺において、および適当な場合には低い充填レベルにおいて、対応するより高い局所エネルギー出力を有する混合エネルギーである。最適な攪拌作用を達成するために、従来技術によれば、バッフル(例えば平面状または管状バッフル)と冷却コイル(または冷却カートリッジ)との組み合わせを反応器に配置することができ、これは容器の底にわたって拡がっていてもよい。臨界反応相において特に高いエネルギー導入を確保するために、計量添加中に充填レベルに応じて、混合システムの攪拌出力を変えることもできる。例えば、反応の開始において存在し得る固体含有分散体を、例えばスクロースを用いる場合、特に強く混合することが有利な場合がある。さらに、特に固体のH官能性スターター化合物を用いる場合、攪拌システムの選択によって、反応混合物における固体の十分な分散を確保することを確かにすべきである。底ざらえ攪拌段階および物質を懸濁するのに特に適当な攪拌ユニットが、この場合好ましく用いられる。攪拌機の配置により、反応生成物の発泡化の減少がさらにもたらされるべきである。反応混合物の発泡化は例えば、計量添加および後反応段階の終了後、1〜500mbarの範囲の絶対圧下において残余アルキレンオキシドをさらに減圧除去する場合に観測されることがある。液体表面の連続混合を達成する攪拌ユニットは、このような場合に適当であることが見出されている。必要に応じて、攪拌機シャフトを底部に取り付け、必要に応じて攪拌機シャフトは更なる支持取付部を容器に備える。この場合、攪拌機シャフトは、上端または底部から(シャフトの中心または偏心配置で)駆動させることができる。
【0046】
または、熱交換器に導かれるポンプ循環のみによって必要な混合を達成することもでき、または攪拌システムに加えて更なる混合部材としてこれを操作することもでき、反応器内容物は必要に応じてポンプ循環される(通常、1時間あたり1〜50回)。
【0047】
非常に多種多様な反応器種が、本発明による方法を行うのに適当である。1:1〜10:1の高さ/直径の比率を有する円筒型容器が好ましく用いられる。あり得る反応器の底部は、例えば球状、皿状、平面状または円錐状の底部である。
【0048】
アルキレンオキシドの計量添加の終了の後に、圧力をモニターすることによって未反応アルキレンオキシドの濃度減少を定量化することができる後反応段階を行ってよい。適切な場合には、後反応段階の終了後に、例えば1〜500mbarの絶対圧下での減圧下において、またはストリッピングによって、反応混合物においては少量の未反応アルキレンオキシドを取り除くことができる。不活性ガスまたは蒸気を液相に通入し、同時に減圧を行いながら(例えば5〜500mbarの絶対圧下で不活性ガスを通入することによって)、ストリッピングによって、例えば(残余)アルキレンオキシド等の揮発性成分が除去される。減圧またはストリッピングのいずれかによる未反応アルキレンオキシド等の揮発性成分の除去は、一般に20〜200℃、好ましくは50〜160℃の温度において、好ましくは反応温度において、攪拌しながら行う。このようなストリッピング操作は、いわゆるストリッピングカラムにおいて行うこともでき、ここでは不活性ガス流または蒸気流を、生成物流に対して逆流に通入する。一定圧力に達した時、または減圧および/もしくはストリッピングによって揮発性成分を除去した時、生成物を反応器から取り出すことができる。
【0049】
DMC触媒は反応混合物、特にH官能性スターター化合物の極性不純物に対して反応性であることが一般に知られている。その場合、反応開始段階中にDMC触媒を重合活性構造に変換できないか、または少なくともあまり効率的に変換することができない。不純物は、例えば水または塩基性基を有する化合物、例えばアミン等であり得る。近接するカルボニル基またはヒドロキシル基に近接するカルボニル基を有する物質は、触媒活性に悪影響も有する。それにも関わらず、触媒毒とみなされる不純物を有するスターターをDMC触媒アルキレンオキシド付加反応に用いることを可能とするために、触媒毒の定常濃度を可能な限り低く維持することが有利である。これは、H官能性スターター化合物の連続計量添加を用いた方法によって達成することができる。この場合、例えば、H官能性スターター化合物の全量を最初に反応器に導入するのではなく、用いるH官能性スターター化合物の全量のうち一部だけ、例えば0.1〜20重量%を導入し、反応(工程(β))中にアルキレンオキシドと一緒にH官能性スターター化合物の残りの量を反応器に連続して供給する。最初に反応器に導入したH官能性スターター化合物は、開始媒体とも呼ばれる。工程(β)において用いられるH官能性スターター化合物と同一または異なるH官能性スターター化合物を開始媒体として用いてよい。それぞれ例えば56〜20,000g/モルの範囲の当量分子量を有する、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルカーボネートポリオール、ポリエーテルカーボネートポリオールからなる群から選択される1以上の成分が、開始媒体として好ましい。4,000〜20,000g/モルの当量分子量を有するポリエーテルポリオール、例えば本発明による方法によって製造されるポリエーテルポリオールは、例えば先行バッチにおいて調製されるが、特に好ましく開始媒体として用いられる。
【0050】
本発明による当量分子量を有するポリエーテルポリオールの製造において、200g/モル未満の当量分子量を有するH官能性スターター化合物を用いる場合、スターター計量添加速度をアルキレンオキシド計量添加速度の2.5%に全く等しく、またはそれ未満に維持することが適切であると見出されている。これは、一定の質を有する、特に常に低粘度を有する最終生成物を製造できるという利点を有する。このため、好ましくは、200g/モル未満の当量分子量を有するH官能性スターター化合物の計量添加は、好ましくは不活性溶媒中の溶液として行われるか、または300g/モルより大きい当量分子量を有する更なるH官能性スターター化合物との混合物として行われる。
【0051】
8,000〜20,000g/モル、好ましくは9,000〜20,000g/モル、特に好ましくは10,000〜16,000g/モルの範囲の当量分子量を有する高分子量ポリエーテルポリオールの製造のための本発明による方法の更なる実施態様において、開始媒体およびDMC触媒を最初に反応器系に導入し、必要に応じて上記のようにDMC触媒を活性化し(工程α2)、H官能性スターター化合物を1以上のアルキレンオキシドと一緒に15〜23時間以内に連続的に供給する。場合によって非常に少量のH官能性スターター化合物を計量添加しなければならないため、不活性溶媒中の溶液として、または300g/モルより大きい当量分子量を有する更なるH官能性スターター化合物との混合物として、H官能性スターター化合物を供給することが有利であると分かる場合がある。本発明によれば、重合工程において添加する1以上のアルキレンオキシドの量のための計量添加時間は、15〜23時間である。それぞれ例えば56〜20,000g/モル、好ましくは190〜20,000g/モルの範囲の当量分子量を有するアルキレンオキシド付加生成物、例えばポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルカーボネートポリオール、ポリエーテルカーボネートポリオール等、部分量のH官能性スターター化合物、および/または4,000〜40,000g/モルの当量分子量を有するポリエーテルポリオール、例えば本発明による方法によって製造される例えば先行バッチにおいて製造されたポリエーテルポリオールが、開始媒体として適当である。好ましくは、部分量のH官能性スターター化合物または本発明による方法によって例えば先行バッチにおいて製造された8,000〜20,000g/モルの当量分子量を有するポリエーテルポリオールを、開始媒体として用いる。本発明による方法によって製造される8,000〜20,000g/モルの当量分子量を有するポリエーテルポリオールは、先行バッチにおいて製造され、開始媒体として特に好ましく用いられる。
【0052】
本発明は、8,000〜20,000g/モル、好ましくは9,000〜20,000g/モル、特に好ましくは10,000〜16,000g/モルの当量分子量を有するポリエーテルポリオールの製造方法であって、ここで
(α)(α1)DMC触媒および開始媒体を最初に反応器に導入し、60〜160℃、好ましくは100〜155℃、非常に特に好ましくは110〜155℃の温度において、不活性ガス(窒素またはアルゴン等の希ガス)を必要に応じて反応器に、好ましくはDMC触媒と開始媒体との混合物に通入し、同時に不活性ガスの除去によって反応器において5mbar〜500mbar、好ましくは40mbar〜200mbarの減圧(絶対)を達成し(「ストリッピング」)、
(α2)部分量の、好ましくは2〜20重量%(工程(α1)において最初に導入した開始媒体の量に基づく)の1以上のアルキレンオキシドを工程(α1)からの混合物に必要に応じて添加し(「活性化」),
(β)1以上のアルキレンオキシドの全量または残りの量およびH官能性スターター化合物(または部分量のH官能性スターター化合物)を次に反応器に計量添加し、例えば110〜150℃、好ましくは130〜150℃、特に好ましくは140〜150℃の温度において、15〜23時間にわたって1以上のアルキレンオキシドをここで供給し(「重合」)、
ここで、アルキレンオキシド付加生成物(例えば、それぞれ例えば56〜20,000g/モル、好ましくは190〜20,000g/モルの範囲の当量分子量を有する、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルカーボネートポリオール、ポリエーテルカーボネートポリオール等)、部分量のH官能性スターター化合物および/または4,000〜20,000g/モルの当量分子量を有するポリエーテルポリオール、例えば本発明による方法によって、例えば先行バッチにおいて製造されるポリエーテルポリオールが、開始媒体として用いられる、
方法も提供する。
【0053】
本発明の別の実施態様において、15〜23時間にわたるアルキレンオキシドの計量添加が終了する前に、H官能性スターター化合物の計量添加を終了する。これは、H官能性スターター化合物のアルキレンオキシドとの完全な転化が達成されるという利点を有する。本発明に関して、「重合工程の最終段階」とは、H官能性スターター化合物の計量添加の終了からアルキレンオキシドの計量添加の終了までの期間を意味すると理解される。この別の実施態様において、H官能性スターター化合物の計量添加の終了後、重合工程の最終段階において、アルキレンオキシドの計量添加速度を段階的または連続的に変えることができる。例えば、アルキレンオキシド計量添加速度は、4,500g[アルキレンオキシド]/(モル[ヒドロキシル基]×時間)と50g[アルキレンオキシド]/(モル[ヒドロキシル基]×時間)との間、好ましくは2,000g[アルキレンオキシド]/(モル[ヒドロキシル基]×時間)と50g[アルキレンオキシド]/(モル[ヒドロキシル基]×時間)との間、特に好ましくは1,000g[アルキレンオキシド]/(モル[ヒドロキシル基]×時間)と70g[アルキレンオキシド]/(モル[ヒドロキシル基]×時間)との間、非常に特に好ましくは750g[アルキレンオキシド]/(モル[ヒドロキシル基]×時間)と100g[アルキレンオキシド]/(モル[ヒドロキシル基]×時間)との間において変えることができ、ここで、パラメーター「モル[ヒドロキシル基]」とは、H官能性スターター化合物の計量添加の終了時における反応混合物に存在するヒドロキシル基の物質量に関する。重合工程の最終段階中に、アルキレンオキシド計量添加速度を上げることも下げることもいずれも可能である。本発明の好ましい実施態様においては、重合工程の最終段階中にアルキレンオキシド計量添加速度を下げる。または、H官能性スターター化合物の計量添加の終了後にアルキレンオキシドを変えることもでき、これにより、マルチブロック構造を有するポリエーテルポリオールをこの手順によって製造することができる。H官能性スターター化合物の計量添加およびアルキレンオキシドの計量添加を同時に終了することもできる。H官能性スターター化合物およびアルキレンオキシドの共通の計量添加中において1以上のH官能性スターター化合物および1以上のアルキレンオキシドの計量添加速度の比率を変えることが同様に可能である。好ましくは、アルキレンオキシド計量添加速度(M)/H官能性スターター化合物計量添加速度(M)の比率は、共通の計量添加段階の全ての段階において次の不等式:
(M × OH価H官能性スターター化合物)/(M + M)≧OH価最終生成物 (VIII)
を満たす。
【0054】
試薬を定量添加した後に後反応段階を行うことができ、ここではアルキレンオキシドの消費は、一般に圧力をモニターすることによって定量化することができる。一定圧力に達した場合、必要に応じて上記のように減圧またはストリッピングを行って未反応アルキレンオキシドを除去した後に、生成物を取り出すことができる。
【0055】
本発明による方法の更なる実施態様において、反応生成物を反応器から連続的に取り出す。この手順において、開始媒体および部分量のDMC触媒を最初に反応器系に導入し、好ましくは18と2,000g/モルとの間、特に好ましくは56〜1,200g/モルの当量分子量を有する1以上のH官能性スターター化合物を1以上のアルキレンオキシドおよびDMC触媒と一緒に連続的に反応器系に供給する。15〜23時間の平均滞留時間後に、反応生成物を反応器系から連続的に取り出す。好ましくは、1以上のアルキレンオキシドの計量添加も行う反応器系の部分から反応生成物を取り出す。150〜2,000g/モルの当量分子量を有するH官能性スターター化合物は、例えば、この完全に連続的なポリエーテルポリオールの製造方法の開始媒体として適当である。アルキレンオキシド付加生成物(例えばポリエーテルポリオール等)および/または本発明による方法によって製造される、例えば先行製造期間(キャンペーン)において製造されたポリエーテルポリオールが、特に開始媒体として適当である。好ましくは、本発明による方法によって製造される、例えば先行製造期間(キャンペーン)において製造されたポリエーテルポリオールが、開始媒体として用いられる。同様に好ましい手順において、部分量の150〜2,000g/モルの当量分子量を有するH官能性スターター化合物および部分量のDMC触媒を最初に反応器系に導入し、150〜2,000g/モルの当量分子量を有する1以上のH官能性スターター化合物の残りの量を1以上のアルキレンオキシドおよびDMC触媒と一緒に連続的に反応器系に供給し、15〜23時間の平均滞留時間後に反応生成物を反応器系から連続的に取り出し、反応生成物の除去は、好ましくは1以上のアルキレンオキシドの計量添加も行う反応器系の部分から行う。従って、本発明は、8,000〜20,000g/モル、好ましくは9,000〜20,000g/モル、特に好ましくは10,000〜16,000g/モルの当量分子量を有するポリエーテルポリオールの製造方法であって、ここで
(α)(α1)開始媒体および部分量のDMC触媒を最初に反応器系に導入し、必要に応じて
(α2)部分量の1以上のアルキレンオキシドを工程(α1)からの混合物に添加し(「活性化」)、
(β)1以上のH官能性スターター化合物をアルキレンオキシドおよび更なるDMC触媒と一緒に連続的に計量添加し、15〜23時間の平均滞留時間後に反応生成物を反応器系から連続的に取り出し、
ここで、アルキレンオキシド付加生成物(例えば、それぞれ例えば56〜20,000g/モル、好ましくは190〜20,000g/モルの範囲の当量分子量を有する、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルカーボネートポリオール、ポリエーテルカーボネートポリオール等)、部分量のH官能性スターター化合物および/または4,000〜20,000g/モルの当量分子量を有するポリエーテルポリオール、例えば本発明による方法によって製造される、例えば先行バッチにおいて製造されたポリエーテルポリオールが、開始媒体として用いられる、
方法も提供する。
【0056】
上記のこの完全に連続的な手順の後に、例えば反応器カスケードまたは管型反応器における連続的な後反応工程を行うことができる。上記のように、減圧および/またはストリッピングによって揮発性成分を除去することができる。DMC触媒反応下におけるアルキレンオキシド付加法によるポリエーテルポリオールの製造における様々な方法の別例が、例えばWO-A 97/29146およびWO-A 98/03571に記載されている。
【0057】
本発明による方法によって製造されるポリエーテルポリオールは、それ自体で、または必要に応じて更なるイソシアネート反応性成分の混合物において、有機ポリイソシアネートと、必要に応じて発泡剤の存在下、触媒および必要に応じて例えばセル安定剤等の更なる添加剤の存在下において反応させることができ、これはこのように固体または発泡ポリウレタン、特に軟質ポリウレタンフォーム、例えば軟質ポリウレタンスラブストックフォームおよび軟質ポリウレタン成形フォーム等の成分として機能できる。本発明による方法によって製造されるポリエーテルポリオールは、例えば接着剤およびシーリング材の材料の成分として用いることもでき、特にシラン末端ポリエーテルの製造のための前駆体ポリオールとして機能し、次にこれは湿気硬化性シーリング材系において用いることができる。
【0058】
本発明は、本発明による方法によって製造されるポリエーテルポリオールを含むポリウレタン、好ましくは固体または発泡ポリウレタン、特に軟質ポリウレタンフォーム、例えば軟質ポリウレタンスラブストックフォームおよび軟質ポリウレタン成形フォーム等を同様に提供する。
【実施例】
【0059】
OH価は、DIN 53240に規定されるように決定した。粘度は、DIN 53018に規定されるように回転粘度計(Physica MCR 51、製造元:Anton Paar)によって決定した。
【0060】
分子量分布は、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によって決定した。Agilent製の装置Agilent 1100シリーズを用いた。分子量分布M/Mとして多分散度PD〔式中、Mは重量平均分子量を表し、Mは数平均分子量を表す〕が規定されている。この分析における更なる情報:
− カラム組み合わせ:1プレカラムPSS、5μl、8 x 50mm;2 PSS SVD、5μl、100Å、8 x 300 mm;2 PSS SVD、5μl、1,000Å、8 x 300 mm、PSSはカラムの製造元である(Polymer Standard Solutions、Mainz)
− 評価ソフト:PSS製のWIN GPC
− 溶媒:THF(Merck LiChrosolv)
− 流速:1ml/分
− 検出器型:RI検出器(屈折率)、Shodex RI 74
− 用いた公正基準:ポリスチレンに基づくPSS製の公正標準。
【0061】
用いた原材料
アルキレンオキシド付加のための触媒(DMC触媒):
ヘキサシアノコバルト酸亜鉛、tert-ブタノールおよび1,000g/モルの数平均分子量を有するポリプロピレングリコールを含む複金属シアン化物触媒;WO-A 01/80994、実施例6に記載。
【0062】
ACCLAIM(登録商標)Polyol 2200N:
DMC触媒反応(30ppmのDMC触媒)によって製造され、Bayer MaterialScience AGから取得可能である、2,000g/モルの分子量を有するポリプロピレングリコール。
【0063】
IRGANOX(登録商標)1076:
オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート。(BASF SE))
【0064】
実施例1ならびに比較例2および3:
471.4gのACCLAIM(登録商標)Polyol 2200Nを、窒素雰囲気下において10lの実験室オートクレーブに導入した。0.487gのDMC触媒の添加後、100〜120mbarの絶対圧下で減圧して350rpmで攪拌(格子型攪拌機)すると同時に、液面の下にあるディストリビュータ環を用いて毎分50mlの窒素を通入しながら、オートクレーブの内容物を130℃でストリッピングした。次に、最初に同じく130℃において、350rpmで攪拌しながら、一定の計量添加速度および350rpmの攪拌機速度で、5,528.7gのプロピレンオキシドの全てを、このディストリビュータ環を用いて、表1に記載される時間計量添加した。50gのプロピレンオキシドを計量添加した後、7分間の間に反応温度を145℃に上げ、プロピレンオキシドの計量添加の終了までこの温度に維持した。21分の後反応時間の後、混合物を反応温度において1mbarの絶対圧下で0.5時間十分に加熱し、その後、80℃まで冷却し、3.0gのIRGANOX(登録商標)1076を添加した。機械特性および更なる反応パラメーターは表1に示される。
【0065】
【表1】
【0066】
実施例4および比較例5:
471.4gのACCLAIM(登録商標)Polyol 2200Nを、窒素雰囲気下において10lの実験室オートクレーブに導入した。0.487gのDMC触媒の添加後、100〜120mbarの絶対圧下で減圧して350rpmで攪拌(格子型攪拌機)すると同時に、液面下にあるディストリビュータ環を用いて毎分50mlの窒素を通入しながら、オートクレーブの内容物を130℃でストリッピングした。次に、最初に同じく130℃において、350rpmで攪拌しながら、一定の計量添加速度および350rpmの攪拌機速度で、5,528.7gのプロピレンオキシドの全てを、このディストリビュータ環を用いて、表1に記載される時間計量添加した。50gのプロピレンオキシドを計量添加した後、7分間の間に反応温度を135℃に上げ、プロピレンオキシドの計量添加の終了までこの温度に維持した。21分の後反応時間の後、混合物を反応温度において1mbarの絶対圧下で0.5時間十分に加熱し、その後、80℃まで冷却し、3.0gのIRGANOX(登録商標)1076を添加した。機械特性および更なる反応パラメーターは表2に示される。
【0067】
【表2】
【0068】
実施例6:
471.4gのACCLAIM(登録商標)Polyol 2200Nを、窒素雰囲気下において10lの実験室オートクレーブに導入した。0.480gのDMC触媒の添加後、100〜120mbarの絶対圧下で減圧して350rpmで攪拌(格子型攪拌機)すると同時に、液面の下にあるディストリビュータ環を用いて毎分50mlの窒素を通入しながら、オートクレーブの内容物を130℃でストリッピングした。次に、最初に同じく130℃において、350rpmで攪拌しながら、5,528.6gのプロピレンオキシドの全てを、このディストリビュータ環を用いて18.25時間の間に計量添加した。50gのプロピレンオキシドを計量添加した後、10分間の間に反応温度を145℃に上げ、プロピレンオキシドの計量添加の終了までこの温度に維持した。
【0069】
次の計量添加勾配に従って、プロピレンオキシドをオートクレーブに供給した:
− 0〜2,462gのプロピレンオキシド:毎時352gのプロピレンオキシド、
− 2,462〜4,028gのプロピレンオキシド:毎時352gのプロピレンオキシドから毎時315gのプロピレンオキシドへの計量添加速度の直線的な減少が、プロピレンオキシドの計量添加重量に応じて起こり、
− 4,028〜5,200gのプロピレンオキシド:毎時315gのプロピレンオキシドから毎時220gのプロピレンオキシドへの計量添加速度の直線的な減少が、プロピレンオキシドの計量添加重量に応じて起こり、
− 5,200〜5,500gのプロピレンオキシド:毎時220gのプロピレンオキシドから毎時130gのプロピレンオキシドへの計量添加速度の直線的な減少が、プロピレンオキシドの計量添加重量に応じて起こり、
− 5,500〜5,528.6gのプロピレンオキシド:毎時130gのプロピレンオキシドから毎時100gのプロピレンオキシドへの計量添加速度の直線的な減少が、プロピレンオキシドの計量添加重量に応じて起こる。
【0070】
26分の後反応時間の後、混合物を反応温度において1mbarの絶対圧下で0.5時間十分に加熱し、その後、80℃まで冷却し、3.021gのIRGANOX(登録商標)1076を添加した。機械特性は表3に示される。
【0071】
比較例7:
471.5gのACCLAIM(登録商標)Polyol 2200Nを、窒素雰囲気下において10lの実験室オートクレーブに導入した。0.486gのDMC触媒の添加後、100〜120mbarの絶対圧下で減圧して350rpmで攪拌(格子型攪拌機)すると同時に、液面の下にあるディストリビュータ環を用いて毎分50mlの窒素を通入しながら、オートクレーブの内容物を130℃でストリッピングした。次に、最初に同じく130℃において、350rpmで攪拌しながら、5,528.7gのプロピレンオキシドの全てを、このディストリビュータ環を用いて、23.5時間の間に計量添加した。55gのプロピレンオキシドを計量添加した後、14分間の間に反応温度を145℃に上げ、プロピレンオキシドの計量添加の終了までこの温度に維持した。
【0072】
次の計量添加勾配に従って、プロピレンオキシドをオートクレーブに供給した:
− 0〜2,462gのプロピレンオキシド:毎時352gのプロピレンオキシドから毎時315gのプロピレンオキシドへの計量添加速度の減少が、プロピレンオキシドの計量添加重量に応じて起こり、
− 2,462〜4,028gのプロピレンオキシド:毎時315gのプロピレンオキシドから毎時220gのプロピレンオキシドへの計量添加速度の減少が、プロピレンオキシドの計量添加重量に応じて起こり、
− 4,028〜5,200gのプロピレンオキシド:毎時220gのプロピレンオキシドから毎時130gのプロピレンオキシドへの計量添加速度の減少が、プロピレンオキシドの計量添加重量に応じて起こり、
− 5,200〜5,528.7gのプロピレンオキシド:毎時130gのプロピレンオキシドから毎時100gのプロピレンオキシドへの計量添加速度の減少が、プロピレンオキシドの計量添加重量に応じて起こる。
【0073】
26分の後反応時間の後、混合物を反応温度において1mbarの絶対圧下で0.5時間十分に加熱し、その後、80℃まで冷却し、3.021gのIRGANOX(登録商標)1076を添加した。機械特性は表3に示される。
【0074】
【表3】