特許第6373759号(P6373759)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許63737591,1’−ジフルオロ置換ジアルキルカーボネート、その異性体、及びこれらを含む電解質組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373759
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】1,1’−ジフルオロ置換ジアルキルカーボネート、その異性体、及びこれらを含む電解質組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 68/02 20060101AFI20180806BHJP
   B01J 31/02 20060101ALI20180806BHJP
   C07B 61/00 20060101ALI20180806BHJP
   C07C 69/96 20060101ALI20180806BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20180806BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20180806BHJP
【FI】
   C07C68/02 B
   B01J31/02 102M
   C07B61/00 300
   C07C69/96 Z
   H01M10/0567
   H01M10/0568
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-545165(P2014-545165)
(86)(22)【出願日】2012年11月23日
(65)【公表番号】特表2015-502947(P2015-502947A)
(43)【公表日】2015年1月29日
(86)【国際出願番号】EP2012073485
(87)【国際公開番号】WO2013083418
(87)【国際公開日】20130613
【審査請求日】2015年10月22日
【審判番号】不服2017-9954(P2017-9954/J1)
【審判請求日】2017年7月5日
(31)【優先権主張番号】11192446.0
(32)【優先日】2011年12月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ボムカンプ, マルティン
【合議体】
【審判長】 佐々木 秀次
【審判官】 佐藤 健史
【審判官】 瀬下 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平1−125347(JP,A)
【文献】 米国特許第3213062(US,A)
【文献】 国際公開第2011/006822(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0159382(US,A1)
【文献】 国際公開第2007/043526(WO,A1)
【文献】 Masaru Hasegawa 外3名著、Regioselective Anodic Monofluorination of Ethers Using Ionic Liquid Fluoride Salts、Journal of The Electrochemical Society、The Electrochemical Society、Vol.153(10)、2006年、第D162〜D166頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C68/,69/
REGISTRY/STN
CAPLUS/STN
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)、RCHF−OC(O)−OCHFR(式中、R及びRは、同一又は異なり、且つ、H、又は、1〜3個の炭素原子を有する直鎖型若しくは分岐型のアルキルを表す)の1,1’−ジフルオロジアルキルカーボネートを製造する方法であって、式(II)、RCHFOC(O)F(式中、Rは、前述の意味を有する)の化合物を、式(III)、R−CH(O)(式中、Rは、前述の意味を有する)のアルデヒドと反応させる工程を含み、式(II)の化合物と式(III)のアルデヒドとの反応が、ピリジン又は置換されたピリジンであるアシル化触媒の存在下にて、0℃から45℃までの温度で実施される、方法。
【請求項2】
が、H又はCHである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
が、H又はCHである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
CHF−OC(O)−OCHF又はCHCHF−OC(O)−OCHFCHが生成される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
式(II)の前記化合物と式(III)の前記アルデヒドとの間のモル比が、0.9:1〜5:1である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
式(II)の前記化合物が、フッ化カルボニル及び式(IV)RCH(O)(式中、Rは前述の意味を有する)のアルデヒドから調製される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記1,1’−ジフルオロジアルキルカーボネートが、ワンポット反応においてフッ化カルボニル及び式(IV)の前記アルデヒドから製造される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アシル化触媒が、4−ジメチルアミノピリジンである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2011年12月07日付けで出願された欧州特許出願第11192446.0号明細書の優先権を主張するものであり、あらゆる目的で、当該欧州出願の全ての開示内容は、参照により、本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、1,1’−ジフルオロ置換ジアルキルカーボネート、新規の1,1’−ジフルオロジアルキルカーボネートを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
フルオロメチルメチルカーボネートなどのフルオロアルキルアルキルカーボネートは、イチウムイオン電池用の周知の溶媒添加剤である。後者の化合物は、特開2004−010491号公報に記載のジメチルカーボネートとフッ素元素の反応によって、又は、電気化学的フッ素化(特開2006−001843号公報を参照されたい)によって調製可能である。二フッ素化生成物−ジフルオロメチルメチルカーボネート及びビス−フルオロメチルカーボネート−並びによりフッ素化された生成物は、収率を減少させ、且つ、分離プロセスを必要とする。
【0004】
国際公開第2011006822号パンフレットでは、1−フルオロアルキル(フルオロ)アルキルカーボネートの製造を開示している。
【0005】
M.Hasegawa,H.Ishii,Y.Cao及びT.Fuchigamiは、J.Electrochem.Soc.153(10),D162−D166(2006)にて、場合によりジエチルカーボネートの陽極フッ素化を含むプロセスにおける副生成物である、ビス−(1−フルオロエチル)カーボネートの製造について記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特に、本発明の目的は、1,1’−二フッ素化ジアルキルカーボネートの選択的な製造を可能にする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的及びその他の目的は、本明細書及び本特許請求の範囲において概説されるように本発明によって達成される。
【0008】
本発明による方法は、一般式(I)、RCHF−OC(O)−OCHFR(式中、R及びRは、同一又は異なり、且つ、H、又は、1〜3個の炭素原子を有する直鎖型若しくは分岐型のアルキル基を表す)の1,1’−ジフルオロジアルキルカーボネートの製造を提供し、式(II)、RCHFOC(O)F(式中、Rは、前述の意味を有する)のフルオロギ酸フルオロアルキルを、式(III)、R−CH(O)(式中、Rは、前述の意味を有する)のアルデヒド、又は、それぞれのトリマーと反応させる工程を含む。
【0009】
単純化のため、式(II)の化合物は、単に「フルオロギ酸」として以下に表すものとする。
【0010】
好ましくは、RはH又はCHである。好ましくは、RはH又はCHである。好ましくは、1,1’−ジフルオロジメチルカーボネート、又は1,1’−ジフルオロジエチルカーボネートが生成される。
【0011】
式(II)のフルオロギ酸と式(III)のアルデヒドとの間のモル比は、好ましくは、0.3:1以上であり、より好ましくは、0.9:1以上である。好ましくは、この比は5:1以下であり、より好ましくは、3:1以下である。フルオロギ酸とアルデヒドの比が、0.95:1〜1.05:1の範囲である場合、非常に良好な結果が得られる。
【0012】
フルオロギ酸とアルデヒドとの間の反応の際の温度は、重要ではない。一般的に、冷却は必要ではないが、特定の反応物の場合、反応は発熱となり、反応混合物を冷却することが望ましい場合がある。反応の際の温度は、好ましくは−80℃以上であり、より好ましくは−78℃以上である。好ましくは、この温度は、0℃以上であり、より好ましくは20℃以上である。
【0013】
反応温度の上限は、圧力、及び、アルコールの沸点などの出発物質の沸点に依存する場合がある。多くの場合、温度は、150℃以下であり、より好ましくは85℃以下であり、特に好ましくは50℃以下である。好ましい範囲は、0〜150℃、より好ましくは20〜50℃である。
【0014】
好ましくは、反応は、アシル化触媒の存在下にて実施される。いかなる理論にもとらわれることなく、活性化触媒は、C(O)F基からFアニオンを置換することによって、式(II)のフルオロギ酸1−フルオロアルキルを一種の「活性化エステル」に変換するべく機能すると考えられ、Fアニオンは、式(III)のアルデヒドと反応して、その結果、フルオロアルコラートを形成すると考えられる。「活性化エステル」は、フルオロギ酸1−フルオロアルキル自身より反応性であると考えられ、フルオロアルコラートと反応して、式(I)の1,1’−ジフルオロジアルキルカーボネートが生成すると考えられる。
【0015】
アシル化触媒の好ましい種類は、芳香環に少なくとも1つの窒素原子を有する芳香族化合物である。ピリジン及び置換されたピリジン化合物は、特に触媒として適している。電子供与基によって置換されたピリジン、特に少なくとも1つのアミノ基で置換されたピリジンが、非常に適している。ジアルキルアミノピリジン、及び、特に4−ジアルキルアミノピリジンは、アシル化触媒として特に適している。好ましくは、「アルキル」という用語は、C1〜C4アルキル、特に、メチル、エチル、イソプロピル、及びn−プロピルを表す。4−ジメチルアミノピリジン(「DMAP」)が特に好まれる。以下の反応スキームは、反応を説明することを目的としている。
【0016】
左側の図は、出発物質、即ち、フルオロギ酸1−フルオロアルキル及びDMAP分子を示す。「活性化エステル」は、右側に示される。
【0017】
アニオン及びアルデヒドは、フルオロアルコラートを形成し、これが「活性化エステル」と反応して1,1’−ジフルオロジアルキルカーボネートを形成し、一方で、DMAPは活性化エステルから分離される。
【0018】
前述の通り、前述の反応スキームは、理論を反映させるものに過ぎず、本発明を限定することを意図するものではない。
【0019】
反応は、オートクレーブにおいてなどの任意の適切な反応器において実施可能である。
【0020】
反応は、バッチ毎に又は連続して実施可能である。
【0021】
好ましくは、反応は、更に圧力を加えることなく実施される。このことは、好ましくは、反応が、自らが生み出す圧力下、又は大気圧下で実施されることを意味する。しかし必要に応じて、反応は、減圧下又は大気圧を超える圧力、例えば大気圧以上から30バール(絶対圧)以下、又は更にそれを下回る範囲にある圧力などで実施可能である。
【0022】
反応は、溶媒の不在下、又は存在下にて、実施可能である。反応が溶媒中で実施される場合、好ましくは、少なくとも1つの非プロトン性である極性の溶媒が使用される。適切な溶媒は、例えば、ジエチルエーテルなどのエーテル、酢酸のアルキルエステル又はグリコールジアルキルエステルなどのエステルであり、好ましくは「アルキル」という用語は、本明細書においては、メチル、エチル、又はプロピルを表す。有機カーボネートも適切な溶媒である。直鎖型のジアルキルカーボネートが使用可能であり、アルキル基は、同一でも異なっていてもよく、メチル、エチル、及びプロピルが、好ましいアルキル基である。環式のカーボネートも、溶媒として使用可能であり、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、及び3,4−ジメチルエチレンカーボネートが好ましい。
【0023】
好ましくは、反応は溶媒の不在下にて実施される。
【0024】
得られる反応混合物は、蒸留、沈殿、及び/又は結晶化によるなどの、周知の方法によって分離可能である。必要に応じて、反応混合物は、水と接触させて水溶性成分を除去することができる。式(I)の1,1’−ジフルオロジアルキルカーボネートは、蒸留によるなどの当技術分野において周知の方法で精製されることができる。
【0025】
式(II)のフルオロギ酸1−フルオロアルキルは、市販のものでもよい。これは、容易に入手可能な出発物質から調整してもよい。以下に、式(II)のフルオロギ酸1−フルオロアルキルを生成する方法について、いくつかの方法を詳細に説明する。
【0026】
例えば、式(II)、RCHFOC(O)Fの化合物は、「Halex」型の反応、即ち、LiF、KF、CsF、NaF、NHF又はアミンフッ化水素酸塩、又は、それぞれのHF付加物などのアルカリ又はアルカリ土類金属のフッ化物等のフッ素化反応物を使用するなどの、すでに前述されたように、フッ素化剤による塩素原子のフッ素原子への置換にて、それぞれのクロロギ酸クロロアルキルから調製可能である。クロロギ酸クロロアルキル自体は、米国特許第5,712,407号明細書に記載のホスゲンとアルデヒドとの間の反応を通して入手可能である。
【0027】
フッ化カルボニル、及び式(IV)RCH(O)を有するアルデヒドから、式(II)、RCHFOC(O)Fの中間化合物を生成することが好ましく、Rは、前述の意味を有し、且つ、好ましくはH又はCHである。アルデヒドは、パラホルムアルデヒド又はトリオキサンとして、又は、ポリマーとしてなどの、トリマーの形態で使用可能であり、これらの化合物を、例えば熱によって分解して、モノマーのアルデヒドを形成することが好ましい。
【0028】
フッ化カルボニルとアルデヒドとの間のモル比は、好ましくは0.9:1以上である。この比は、好ましくは5:1以下である。
【0029】
好ましくは、フッ化カルボニルとアルデヒドとの間のモル比は、0.5:1〜1:10の範囲である。より好ましくは、フッ化カルボニルとアルデヒドとの間のモル比は、1:2〜1:2.5の範囲である。
【0030】
好ましくは、フッ化カルボニルとアルデヒドとの間の反応は、触媒作用される。
【0031】
反応は、例えば、Fにより触媒作用され得る。例えば、反応は、そのまま添加される、又は、少量の水の添加によってその場で調製されることができるHFにより触媒作用され得る。
【0032】
好ましい触媒は、CsFなどのアルカリ土類金属フッ化物又はアルカリ金属フッ化物などのフッ化物アニオンを含むもの、又は、フッ化カルボニル及びプレ触媒から形成されるフッ化物イオンを含む触媒である。好ましいプレ触媒は、ジアルキルホルムアミド、特にジメチルホルムアミドである。ホルムアミド及びフッ化カルボニルは、アルデヒドに対して求核反応を開始する「裸の」フッ化物イオンを形成すると考えられる。次いで、フッ化物イオンとアルデヒド分子の形成した付加物の負に帯電した酸素は、フッ化カルボニル分子と反応し、フルオロギ酸フルオロメチル、又は一般的には、フルオロギ酸フルオロアルキルを形成する。
【0033】
代替的に、ピリジン、有利には4−ジアルキルアミノピリジン、特に4−ジメチルアミノピリジンが、適切なプレ触媒として考えられる。
【0034】
COFとアルデヒドとの間の反応は、好ましくは、例えば、オートクレーブにてバッチ単位で実施される。或いは、連続して実施されることができる。
【0035】
COFとアルデヒドの反応の際の温度は、変動可能である。例えば、非常に効果的な触媒を使用する場合、反応は、大気温度にて実施されることさえできる。しかしながら、出発物質であるホルムアルデヒドの場合には、パラホルムアルデヒドを分解することによって、又は、アセトアルデヒドの場合には、1,3,5−トリオキサンを分解することによって、そのモノマー形態が提供されなければならないことを留意されたい。従って、このような反応が、低温で実施されることができる場合が多い一方で、それでもなお、直接トリマーが反応に導入される場合、分解するために熱を使用しなければならない。
【0036】
出発物質であるパラホルムアルデヒドの場合には、反応は、好ましくは100℃以上の温度で実施される。反応は、好ましくは300℃以下の温度で実施される。熱によって分解されてはならない出発物質としてアルデヒドが使用される場合、反応は、0℃以上及び200℃以下の温度で実施されることができる。望まれる変換が起こるような高温及び/又は十分な時間において、反応を実施することが好ましい。
【0037】
COFと式(IV)のアルデヒドとの間の反応は、液相にて又は超臨界条件にて実施される。少なくともフッ化カルボニルの一部が液相で存在するように、圧力を選択する。圧力は、反応温度に依存し、反応温度が高いほど、反応器中の圧力も高くなる。反応は、大気圧(約1バール絶対圧)にて実施可能である。例えば、COFは、液体の反応混合物、又は出発物質に、浸漬管を通して導入されることができる。好ましくは、反応は、5バール(絶対圧)以上の圧力で実施される。好ましくは、反応は、50バール(絶対圧)以下の圧力で実施される。一例にて行われるように、反応温度が十分に高い場合、反応器の中身は超臨界状態にある。反応容器は、必要に応じて、不活性ガス、特に窒素にて加圧されることができる。
【0038】
必要に応じて、フルオロギ酸フルオロメチル又は他のフルオロギ酸フルオロメチルなどのフルオロギ酸が、蒸留によるなどの当技術分野にて周知の方法によって、反応混合物から単離されることができる。次いで、前述の通り、フルオロギ酸は、式(III)のアルデヒドと反応して、1,1’−ジフルオロジアルキルカーボネートを生成する。フルオロギ酸を生成する反応における式(IV)のアルデヒドと、後続の工程において式(II)のフルオロギ酸と反応する式(III)のアルデヒドが異なる場合、異なるRCHF−及びRCHF−基を有する1,1’−ジフルオロジアルキルカーボネートが生成可能であることは、明白である。
【0039】
従って、式(I)の化合物は、
フッ化カルボニル及び式(IV)RCH(O)のアルデヒドから、式(II)、RCHFOC(O)Fのフルオロギ酸を調製する工程(式中、Rは、H、又は、1〜3個の炭素原子を有する直鎖型若しくは分岐型のアルキルを表す)と、
式(III)、RCH(O)(式中、Rは、H、又は、1〜3個の炭素原子を有する直鎖型若しくは分岐型のアルキルを表す)のアルデヒドと、式(II)のフルオロギ酸を反応させる工程と、
を含む2工程プロセスにて製造されることができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
この工程の好ましい実施形態は、第1の工程における好ましいプレ触媒としてホルムアミド、特にジメチルホルムアミドを使用する触媒の好ましい使用、第1及び第2工程における圧力及び温度に特に関して、すでに前述しているものである。
【0041】
前述の2工程法の代わりに、式(I)の化合物は、ワンポット反応にて、COF及びそれぞれのアルデヒドから生成可能である。ワンポットプロセスにおいては、アルデヒドのCOFに対するモル比はより高い。好ましくは、アルデヒドとCOFのモル比は、1.8:1以上である。好ましくは、アルデヒドとCOFのモル比は、10:1以下である。好ましい範囲は、1.8:1〜3:1である。アルデヒドとCOFのモル比の最も好ましい範囲は、2:1〜2.5:1である。ワンポット反応は、R及びRが同一である式(I)の化合物の製造に特に適している。
【0042】
このようなワンポットプロセスにおいては、ジメチルアミノピリジンなどの前述のアシル化触媒を使用することが好ましい。
【0043】
本発明の方法は、1,1’−ジフルオロジアルキルカーボネートを選択的に提供するものである。
【0044】
1,1’−ジフルオロジエチルカーボネートは、2つのジアステレオマーにて存在する。
【0045】
これらの2つのジアステレオマーは、異なる沸点を有し、且つ、蒸留によって分離可能である。上記図の左側のジアステレオマーは、(R)−1−フルオロエチル−(S)−1’−フルオロジエチルカーボネートである。上記図の右側のジアステレオマーは、ビス−(R)−1−フルオロエチルカーボネート及びビス−(S)−1−フルオロジエチルカーボネートの2つのエナンチオマーにて存在する。
【0046】
単離したラセミ体及び単離した(R)−1−(S)−1’−ジフルオロジエチルカーボネートは、新規であり、且つ、本発明の更なる態様である。
【0047】
本発明の方法においては、エナンチオマーの1:1のラセミ体が得られる。
【0048】
式(I)の化合物は、例えば、米国特許出願公開第2009/0253044号明細書に記載されているように、リチウムイオン電池における溶媒として、又は、溶媒の添加剤として使用可能である。
【0049】
単離した(R)−1−フルオロエチル−(S)−1’−フルオロエチルカーボネートを含む電解質溶媒と、ビス−(R)−1−フルオロエチルカーボネートとビス−(S)−1−フルオロエチルカーボネートの2つのエナンチオマーの単離したラセミ体と、を含む電解質溶媒が、本発明の別の態様である。電解質溶媒は、0重量%超の、好ましくは0.1重量%以上の(R)−1−フルオロエチル−(S)−1’−フルオロエチルカーボネートを含み、又は、電解質溶媒は、0重量%超の、好ましくは0.1重量%以上のビス−(R)−1−フルオロエチルカーボネートとビス−(S)−1−フルオロエチルカーボネートのラセミ体を含む。電解質溶媒は、好ましくは5重量%以下の(R)−1−フルオロエチル−(S)−1’−フルオロエチルカーボネートを含み、又は、電解質溶媒は、5重量%以下のビス−(R)−1−フルオロエチルカーボネートとビス−(S)−1−フルオロエチルカーボネートのラセミ体を含む。電解質溶媒が、ビス−(R)−1−フルオロエチルカーボネートとビス−(S)−1−フルオロエチルカーボネートのラセミ体と、化合物(R)−1−フルオロエチル−(S)−1’−フルオロエチルカーボネートの両方を含む場合、ビス−(R)−1−フルオロエチルカーボネートとビス−(S)−1−フルオロエチルカーボネートの(R)−1−フルオロエチル−(S)−1’−フルオロエチルカーボネートに対するモル比は、7:3以上であるか、又は、3:7以下である。
【0050】
好ましくは、0.1〜5重量%の、ビス−(R)−1−フルオロエチルカーボネートとビス−(S)−1−フルオロエチルカーボネートのラセミ体、又は化合物(R)−1−フルオロエチル−(S)−1’−フルオロエチルカーボネート、又はビス−(R)−1−フルオロエチルカーボネートとビス−(S)−1−フルオロエチルカーボネートのラセミ体の混合物、又は化合物(R)−1−フルオロエチル−(S)−1’−フルオロエチルカーボネートを、それぞれ、前述のモル比の条件にて含むそれぞれの電解質溶媒は、リチウムイオン電池用の電解質溶液の分野にて有用である少なくとも1つの更なる溶媒を更に含む。好ましくは、少なくとも1つの溶媒は100重量%になる。
【0051】
適切な溶媒(一般的には、非プロトン性有機溶媒である)は、リチウムイオン電池の分野における専門家に周知である。例えば、有機カーボネートに加えて、ラクトン、ホルムアミド、ピロリジノン、オキサゾリジノン、ニトロアルカン、N,N−置換ウレタン、スルフォラン、ジアルキルスルホキシド、亜硫酸ジアルキル、酢酸塩、ニトリル、アセトアミド、グリコールエーテル、ジオキソラン、ジアルキルオキシエタン、トリフルオロアセトアミドも非常に適切である。
【0052】
好ましくは、非プロトン性有機溶媒は、ジアルキルカーボネート(直鎖型である)及びアルキレンカーボネート(環状である)(この場合、「アルキル」という用語は、好ましくはC1〜C4アルキルを表し、「アルキレン」という用語は、好ましくはビニリデン基を含むC2〜C7アルキレン基を表す(この場合、アルキレン基は、好ましくは−O−C(O)−O−基の酸素原子の間の2つの炭素原子の橋を含む))、ケトン、ニトリル、ホルムアミドの群から選択される。ジメチルホルムアミド、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド及びN,N−ジエチルアセトアミドなどのカルボン酸アミド、アセトン、アセトニトリル、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートなどの直鎖型のジアルキルカーボネート、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、及びビニリデンカーボネートなどの環状のアルキレンカーボネートが、適切な溶媒である。
【0053】
前述の1,1’−ジフルオロジアルキル化合物と異なるフルオロ置換化合物、例えば、フルオロ置換エチレンカーボネート、ポリフルオロ置換ジメチルカーボネート、フルオロ置換エチルメチルカーボネート、及びフルオロ置換ジエチルカーボネートの群から選択されるフッ素化エステルカーボネートも、適切な溶媒である。好ましいフルオロ置換カーボネートは、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(ジフルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(トリフルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−4−フルオロエチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−5−フルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、及び4,4−ジフルオロ−5,5−ジメチルエチレンカーボネートであり、フルオロメチルメチルカーボネート、ジフルオロメチルメチルカーボネート、トリフルオロメチルメチルカーボネート、ビス(ジフルオロ)メチルカーボネート、及びビス(トリフルオロ)メチルカーボネートを含むジメチルカーボネート誘導体、2−フルオロエチルメチルカーボネート、エチルフルオロメチルカーボネート、2,2−ジフルオロエチルメチルカーボネート、2−フルオロエチルフルオロメチルカーボネート、エチルジフルオロメチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート、2,2−ジフルオロエチルフルオロメチルカーボネート、2−フルオロエチルジフルオロメチルカーボネート、及びエチルトリフルオロメチルカーボネートを含むエチルメチルカーボネート誘導体、並びに、エチル(2−フルオロエチル)カーボネート、エチル(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート、ビス(2−フルオロエチル)カーボネート、エチル(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、2,2−ジフルオロエチル2’−フルオロエチルカーボネート、ビス(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート、2,2,2−トリフルオロエチル2’−フルオロエチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチル2’,2’−ジフルオロエチルカーボネート、及びビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、4−フルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−フェニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−フェニルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5−フェニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−フェニルエチレンカーボネート、及び4,5−ジフルオロ−4,5−ジフェニルエチレンカーボネート、フルオロメチルフェニルカーボネート、2−フルオロエチルフェニルカーボネート、2,2−ジフルオロエチルフェニルカーボネート、及び2,2,2−トリフルオロエチルフェニルカーボネート、フルオロメチルビニルカーボネート、2−フルオロエチルビニルカーボネート、2,2−ジフルオロエチルビニルカーボネート、及び2,2,2−トリフルオロエチルビニルカーボネート、フルオロメチルアリルカーボネート、2−フルオロエチルアリルカーボネート、2,2−ジフルオロエチルアリルカーボネート、及び2,2,2−トリフルオロエチルアリルカーボネートを含むジエチルカーボネート誘導体が、本発明の電解質溶液の適切な成分として上げられる。
【0054】
本発明によるその他の適切な溶媒の成分は、1−アセトキシ−2−フルオロベンゼン、1−アセトキシ−3−フルオロベンゼン、1−アセトキシ−4−フルオロベンゼン、2−アセトキシ−5−フルオロベンジルアセテート、4−アセチル−2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール、6−アセチル−2,2,3,3−テトラフルオロベンゾ−1,4−ダイオキシン、1−アセチル−3−トリフルオロメチル−5−フェニルピラゾール、1−アセチル−5−トリフルオロメチル−3−フェニルピラゾール、ベンゾトリフルオリド、ベンゾイルトリフルオロアセトン、1−ベンゾイル−3−トリフルオロメチル−5−メチルピラゾール、1−ベンゾイル−5−トリフルオロメチル−3−メチルピラゾール、1−ベンゾイルオキシ−4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ベンゼン、1−ベンゾイル−4−トリフルオロメチルベンゼン、1,4−ビス(t−ブトキシ)テトラフルオロベンゼン、2,2−ビス(4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(ペンタフルオロフェニル)カーボネート、1,4−ビス(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)ベンゼン、2,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド、2,6−ビス(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、ジフルオロアセトフェノン、2,2−ジフルオロベンゾジオキソール、2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−4−カルバルデヒド、1−[4−(ジフルオロメトキシ)フェニル]エタノン、3−(3,5−ジフルオロフェニル)−1−プロペン、フルオロベンゾフェノン、ジフルオロベンゾフェノン、1−(2’−フルオロ[1,1’−ビフェニル]−4−イル)プロパン−1−オン、6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾチン−4−オン、4−フルオロジフェニルエーテル、5−フルオロ−1−インダノン、1−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)エタノン、フルオロフェニルアセトニトリルからなる芳香族化合物の群、ビス(ペンタフルオロフェニル)ジメチルシラン、1,2−ビス[ジフルオロ(メチル)シリル]エタン、N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、N−(t−ブチルジメチルシリル)−N−メチルトリフルオロアセトアミド、t−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホナート、2−ジメチルアミノ−1,3−ジメチルイミダゾリウムトリメチルジフルオロシリコネート、ジフェニルジフルオロシランからなるSi−C結合を有する化合物の群、ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロプ−2−イル)2−メチレンスクシナート、ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロプ−2−イル)マレアート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)マレアート、ビス(パーフルオロオクチル)フマラート、ビス(パーフルオロイソプロピル)ケトン、2,6−ビス(2,2,2−トリフルオロアセチル)シクロヘキサノン、ブチル2,2−ジフルオロアセテート、シクロプロピル4−フルオロフェニルケトン、ジエチルパーフルオロアジパート、N,N−ジエチル−2,3,3,3−テトラフルオロプロピオンアミドからなるC=O結合を有する化合物の群、アリル1H,1H−ヘプタフルオロブチルエーテル、トランス−1,2−ビス(パーフルオロヘキシル)エチレン、(E)−5,6−ジフルオロオクタ−3,7−ジエン−2−オンからなるC=C結合を有する化合物の群、N,N−ジエチル−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピルアミンからなるアミンの群から選択される、国際公開第2007/042471号パンフレットに記載のものである。
【0055】
これらの化合物は、リチウムイオン電池、リチウム硫黄電池、及びリチウム空気電池における電解質溶媒のための1つ又は複数の添加剤として使用可能である。又、溶媒は、ベンゼン、フルオロベンゼン、トルエン、トリフルオロトルエン、キシレン、又はシクロヘキサンを更に含むことができる。
【0056】
「ジフルオロアセトフェノン」という用語は、芳香環おける2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、及び3,5−位においてフッ素置換された異性体を包含する。
【0057】
「フルオロベンゾフェノン」という用語は、特に異性体、2−フルオロベンゾフェノン及び4−フルオロベンゾフェノンを包含する。
【0058】
「ジフルオロベンゾフェノン」という用語は、2,3’−、2,3−、2,4’−、2,4−、2,5−、2,6−、3,3’−、3,4’−、3,4−、3,5−、及び4,4’−位においてフッ素置換された異性体を包含する。
【0059】
「フルオロフェニルアセトニトリル」という用語は、2−、3−、及び4−位においてフッ素置換された異性体を包含する。
【0060】
これらの化合物は、周知の様式で合成可能であり、例えば、ABCR GmbH&Co.KG,Karlsruhe、独国より市販されている。
【0061】
好ましいフッ素化有機化合物は、フルオロ置換カルボン酸エステル、フルオロ置換カルボン酸アミド、フルオロ置換フッ素化エーテル、フルオロ置換カルバメート、フルオロ置換環状カーボネート、フルオロ置換非環状カーボネート、フルオロ置換亜リン酸塩、フルオロ置換ホスホラン、フルオロ置換リン酸エステル、フルオロ置換ホスホン酸エステル、及び飽和又は不飽和のフルオロ置換ヘテロ環の群から選択される。
【0062】
溶媒又は溶媒の添加剤として使用可能である適切なフッ素化エーテルは、例えば、米国特許第5,916,708号明細書に記載のもの、即ち、式(I)
RO−[(CHO]−CF−CFH−X (I)
(式中、
Rは、1〜10個の炭素原子を有する直鎖型のアルキル基、又は3〜10個の炭素原子を有する分岐型のアルキル基であり、
Xは、フッ素、塩素、又は1〜6個の炭素原子を有するエーテル酸素を含むことができるパーフルオロアルキル基であり、
mは2〜6の整数であり、且つ、
nは1〜8の整数である)、
及び/又は、式(II)
X−CFH−CFO−[(CHO]−CF−CFH−X (II)
(式中、
X、m、及びnは、前述の意味を有する)
の部分フッ素化エーテルである。
【0063】
溶媒の添加剤として適切な部分フッ素化カルバメートは、例えば、米国特許第6,159,640号明細書に記載のもの、即ち、式RN−C(O)OR(式中、R及びRは独立して、同一又は異なり、且つ、直鎖型のC1〜C6−アルキル、分岐型のC3〜C6−アルキル、C3〜C7−シクロアルキルであり、又は、R及びRは、直接、又は、1つ又は複数の更なる窒素及び/又は酸素原子を介して連結され、3〜7員を有する環を形成する)の化合物である。任意選択により、環内の更なる窒素原子は、C1〜C3アルキル基で飽和され、更に、環の炭素原子は、C1〜C3アルキル基によって置換されることができる。R及びR基においては、1つ又は複数の水素原子が、フッ素原子によって置換されることができる。Rは、1〜6個、又はそれぞれ、3〜6個の炭素原子を有する部分フッ素化又はパーフッ素化の、直鎖型若しくは分岐型のアルキル基、又は、3〜7個の炭素原子を有する部分フッ素化若しくはーフッ素化のシクロアルキル基であり、1つ又は複数のC1〜C6アルキル基によって置換されることができる。
【0064】
溶媒の添加剤として適切なフッ素化アセトアミドは、例えば、米国特許第6,489,064号明細書に記載のもの、即ち、式RCO−NR(III)(式中、Rは、直鎖型のC1〜C6−アルキル基(この場合、少なくとも1つの水素原子は、フッ素で置き換えられる)、又は、分岐型のC3〜C6アルキル基(この場合、少なくとも1つの水素原子は、フッ素で置き換えられる)、又は、直鎖型のC1〜C6アルキル基、又は分岐型のC3〜C6アルキル基、又はこの両方によって1回以上任意選択により置換されるC3〜C7シクロアルキル基(この場合、シクロアルキル基の、又は、任意選択による直鎖型若しくは分岐型のアルキル置換基の、又はこの両方の、少なくとも1つの水素原子は、フッ素で置き換えられる)であり、且つ、R及びRは独立して、同一又は異なる、直鎖型のC1〜C6アルキル基、分岐型のC3〜C6アルキル基、又はC3〜C7シクロアルキル基を表し、又は、アミドの窒素とともに、飽和の5又は6員の窒素含有環を形成し、又は、1つ又は複数の更なる窒素及び/又は酸素原子と結合され、4〜7員環を形成する(この場合、環内に存在する更なる窒素原子は、C1〜C3アルキル基で任意選択により飽和され、且つ、環の炭素原子は、又、C1〜C3アルキル基を有することができる))に対応する部分フッ素化アミドである。
【0065】
溶媒又は溶媒の添加剤として適切な部分フッ素化エステルは、例えば、米国特許第6,677,085号明細書に記載のもの、式(IV):RCO−O−[CHR(CH−O]−R(IV)(式中、Rは、(C1〜C8)アルキル基、又は、(C3〜C8)シクロアルキル基であり(この場合、前述の基はそれぞれ、基の少なくとも1つの水素原子がフッ素で置き換えられるように、部分フッ素化又はパーフッ素化される)、Rは、(C1〜C8)アルキルカルボニル基、又は、(C3〜C8)シクロアルキルカルボニル基であり(この場合、前述のアルキルカルボニル基又はシクロアルキルカルボニル基は、任意選択により部分フッ素化又はパーフッ素化されることができる)、Rは、水素原子、又は(C1〜C8)アルキル基、又は(C3〜C8)シクロアルキル基であり、mは0、1、2、又は3であり、且つ、nは1、2、又は3である)に対応するジオール由来の部分フッ素化化合物である。
【0066】
本発明の別の態様は、前述の溶媒と、少なくとも1つの溶解した電解質塩と、を含む電解質組成物である。こうした塩は、一般式Mを有する。Mは金属カチオンであり、且つ、Aはアニオンである。塩Mの全体の電荷は0である。好ましくは、MはLi及びNRから選択される。好ましいアニオンは、PF、PO、AsF、BF、ClO、N(CFSO、及びN(i−CSOであり、その全ては、1つの負の電荷を有する。
【0067】
好ましくは、MはLiである。特に好ましくは、MはLiであり、且つ、溶液は、LiBF、LiClO、LiAsF、LiPF、LiPO、LiN(CFSO、及びLiN(i−CSOからなる群から選択される少なくとも1つの電解質塩を含む。リチウムビス(オキサラト)ホウ酸は、更なる添加剤として使用可能である。好ましくは、電解質塩の濃度は、1±0.1モルである。多くの場合、電解質組成物は、LiPF及びLiPOを含むことができる。
【0068】
LiPOが、唯一の電解質塩である場合、電解質組成物中のその濃度は、言及した通り、好ましくは、1±0.1モルである。LiPOが、別の電解質塩とともに、特にLiPFとともに添加剤として使用される場合、電解質塩、溶媒、及び添加剤を含む電解質組成物全体が100重量%とされるとき、電解質組成物中のLiPOの濃度は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上であり、その濃度は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
【0069】
本明細書に参考として組み込まれる特許、特許出願、及び刊行物のいずれかの開示が、用語に不明瞭さを与える範囲において、本明細書の記載と対立する場合は、本明細書の記載が優先するものとする。
【0070】
本発明は、本明細書を限定することを意図することなく実施例にて更に記載される。
【0071】
略称
DMAP=2−ジメチルアミノピリジン
【実施例】
【0072】
実施例1:1,1’−ジフルオロエチルカーボネートの調製
1.1フルオロギ酸1−フルオロエチルの調製
フルオロギ酸1−フルオロエチルを、国際公開第2011006822号パンフレットの実施例3に記載の通り調製する。
【0073】
アセトアルデヒド(12g、272ミリモル)及びジメチルホルムアミド(200mg、71ミリモル)を、約40mlの内部容積にてオートクレーブの中に入れた。オートクレーブを閉じ、真空にし、乾燥窒素にて約5バール(絶対圧)まで加圧し、再度真空にした。次いで、フッ化カルボニル(18g、272ミリモル)を、30分にわたり、オートクレーブの中に入れた。混合物を30分間、室温で撹拌し、その後、圧力を20バールから0バールに落とした。次いで、オートクレーブを窒素で2回、それぞれの場合とも約5バール(絶対圧)の圧力まで加圧した。
【0074】
必要に応じて、形成したフルオロギ酸1−フルオロエチルを、蒸留にて単離することができる。
【0075】
1.2.1,1’−ジフルオロエチルカーボネートの調製
還流冷却器(冷却媒体を−20℃に保持した)を備えた250mLのPFA−フラスコの中にて、フルオロギ酸1−フルオロエチル50gを、不活性雰囲気下、0℃で、アセトアルデヒド30g及びDMAP0.25gに加えた。室温で8時間撹拌した後、DMAP0.1gを加えた。更に16時間撹拌した後、更なるDMAP0.1gを加えた。更に24時間、混合物を撹拌した。得られた反応混合物に、水25gを加えた。5分間撹拌した後、得られた2つの相を分離した。有機層を水で洗浄し(10mLで2回)、NaSOを通して乾燥させた。88.5%の純度(GC、2つのジアステレオマー)にて、無色の液体(59.5g)として生成物を得た。
【0076】
必要に応じて、蒸留にて生成物を精製することができる。蒸留の際、ジアステレオマーを分離することは可能である。
【0077】
実施例2:1,1’−ジフルオロジエチルカーボネートのラセミ体を含む電解質溶媒
プロピルカーボネート、エチレンカーボネート、及び1,1’−ジフルオロジエチルカーボネートのラセミ体を、48:48:2の容積比にて混合し、リチウムイオン電池に適切な電解質溶媒を得る。
【0078】
実施例3:LiPFを含む電解質組成物
リチウムイオン電池に適切な電解質組成物を得るために、LiPFの濃度が1モルとなるように、グローブボックス中で、不活性ガスの下、実施例1の電解質溶媒にLiPFを加える。
【0079】
実施例4:の混合物を含む電解質溶媒
プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、及び1−フルオロエチル−1’−フルオロジエチルカーボネートのラセミ体を、48:48:2の容積比にて混合し、リチウムイオン電池に適切な電解質溶媒を得る。
【0080】
実施例5:LiPFを含む電解質組成物
リチウムイオン電池に適切な電解質組成物を得るために、LiPFの濃度が1モルとなるように、グローブボックス中で、不活性ガスの下、実施例1の電解質溶媒にLiPFを加える。
【0081】
実施例6:電解質塩としてLiPFを含む電解質組成物
電解質組成物は、(R)−1−フルオロエチル−(S)−1’フルオロエチルカーボネート、ビス−(R)−1−フルオロエチルカーボネート、及びビス−(S)−1−フルオロエチルカーボネートの混合物(異性体を分離することなく製造の際得られる)、又は、ビス−(R)−1−フルオロエチルカーボネート及びビス−(S)−1−フルオロエチルカーボネートの混合物、又は、(R)−1−フルオロエチル−(S)−1’フルオロエチルカーボネートのその他の電解質溶媒との混合物を使用して生成可能である。以下の表に、電解質組成物を、1−フルオロエチル−1’−フルオロエチルカーボネートのラセミ体を用いて示す。
【0082】
【0083】
乾燥し、且つ、酸素を含まない空気を防止するために、前もって乾燥され、且つ、乾燥窒素が通される容器にて使用される場合、電解質組成物は、1,1’−ジフルオロエチルカーボネート、1つ又は複数の溶媒、電解質塩、及び添加剤の適当な量を混合することによって調製される。