特許第6373808号(P6373808)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373808
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】車両用ドア
(51)【国際特許分類】
   E05F 11/38 20060101AFI20180806BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   E05F11/38 G
   B60J1/17 B
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-161076(P2015-161076)
(22)【出願日】2015年8月18日
(65)【公開番号】特開2017-40051(P2017-40051A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2017年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 隆介
(72)【発明者】
【氏名】大西 幸泰
(72)【発明者】
【氏名】玉腰 浩史
【審査官】 秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−161131(JP,A)
【文献】 米国特許第6301834(US,B1)
【文献】 特開2015−206199(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/099956(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 11/38
B60J 1/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に昇降可能な窓部と、
車両の前後方向に並ぶとともに、上下方向に延在し、前記窓部の昇降を案内する前側フレーム部および後側フレーム部と、
車両の幅方向に並び、内側に位置するインナーパネルおよび外側に位置するアウターパネルを含み、前記インナーパネルと前記アウターパネルとの間に前記前側フレーム部の下部および前記後側フレーム部の下部を収容するドアパネルと、を備え、
前記前側フレーム部および前記後側フレーム部のうち一方のフレーム部の下端は、前記前側フレーム部および前記後側フレーム部のうち他方のフレーム部の下端よりも下方に位置し、
前記ドアパネルは、前記一方のフレーム部から見て前記他方のフレーム部が位置する側にて前記一方のフレーム部の下部と前後方向に対向し、前記他方のフレーム部の下端よりも低くなる部分を含むように上下方向に延在するガイド部を含み、
前記窓部は、前記一方のフレーム部側に位置する下方側にて前記幅方向に突出し、前記窓部の下縁部が前記他方のフレーム部よりも下方に位置する状態で前記一方のフレーム部と前記ガイド部との間の隙間に入り込む突出部を含み、
前記突出部は、前記一方のフレーム部の外部において前記ガイド部に摺動可能に設けられている、車両用ドア。
【請求項2】
前記ドアパネルは、前記他方のフレーム部を収容する部分よりも下方の領域に、前記一方のフレーム部の下部が露出しないように設けられた透明部を有する、請求項1に記載の車両用ドア。
【請求項3】
前記窓部は、前記透明部の外側を昇降可能に設けられている、請求項2に記載の車両用ドア。
【請求項4】
前記一方のフレーム部は、下端側に、前記窓部の前記下縁部に当接し、前記窓部の下方に向けての移動を規制する移動規制部を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用ドア。
【請求項5】
前記ガイド部は、前記一方のフレームに対向する対向面を有し、
前記突出部は、前記対向面に摺動可能に設けられている、請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用ドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
上下方向に昇降可能なドアガラスを備える車両用ドアが開示された文献として、たとえば特開2003−148046号公報が挙げられる。
【0003】
特許文献1に開示の車両用ドアは、いわゆるX字アーム方式の昇降機構を備え、電動モータに接続されるリフトアームと、このリフトアームに交差するイコライザアームとでドアガラスを支持する。電動モータを用いてリフトアームを回動させることによって、イコライザアームも回動し、これによりドアガラスが昇降する。この際、ドアガラスは、前縁フレームと後縁フレームとによって上下方向の移動が案内される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−148046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の車両用ドアにあっては、前縁フレームと後縁フレームとは、ドアのウエストラインから上方へ延出するように設けられ、前縁フレームの下端と後縁フレームの下端とは、ほぼ同じ高さ位置にある。また、電動モータや、各アーム部等の昇降機構は、前縁フレームと後縁フレームとの間に設けられている。
【0006】
上記昇降機構および各フレームを内部に収容するようにドアパネルを設ける場合には、ドアパネルの内部に比較的大きなスペースが要求され、車両の幅方向に平行なドアパネルの厚みも大きくなる。このため、車内の空間が狭くなる。
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、車両内の空間を拡げつつ、安定して窓部を昇降させることができる車両用ドアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に基づく車両用ドアは、上下方向に昇降可能な窓部と、車両の前後方向に並ぶとともに、上下方向に延在し、上記窓部の昇降を案内する前側フレーム部および後側フレーム部と、車両の幅方向に並び、内側に位置するインナーパネルおよび外側に位置するアウターパネルを含み、上記インナーパネルと上記アウターパネルとの間に上記前側フレーム部の下部および上記後側フレーム部の下部を収容するドアパネルと、を備え、上記前側フレーム部および上記後側フレーム部のうち一方のフレーム部の下端は、上記前側フレーム部および上記後側フレーム部のうち他方のフレーム部の下端よりも下方に位置し、上記ドアパネルは、上記一方のフレーム部から見て上記他方のフレーム部が位置する側にて上記一方のフレーム部の下部と前後方向に対向し、上記他方のフレーム部の下端よりも低くなる部分を含むように上下方向に延在するガイド部を含み、上記窓部は、上記一方のフレーム部側に位置する下方側にて上記幅方向に突出し、上記窓部の下縁部が上記他方のフレーム部よりも下方に位置する状態で上記一方のフレーム部と上記ガイド部との間の隙間に入り込む突出部を含み、上記突出部は、上記ガイド部に摺動可能に設けられている。
【0009】
ここで、上下方向とは、鉛直方向のみならず、鉛直方向から車両の前後方向に傾斜した方向も含むものとする。たとえば、上下方向には、上方に向かうにつれて後方に傾斜する方向が含まれる。
【0010】
上記本発明に基づく車両用ドアにあっては、上記ドアパネルは、上記他方のフレーム部を収容する部分よりも下方の領域に、上記一方のフレーム部の下部が露出しないように設けられた透明部を有することが好ましい。
【0011】
上記本発明に基づく車両用ドアにあっては、上記窓部は、上記透明部の外側を昇降可能に設けられていることが好ましい。
【0012】
上記本発明に基づく車両用ドアにあっては、上記一方のフレーム部は、下端側に、上記窓部の上記下縁部に当接し、上記窓部の下方に向けての移動を規制する移動規制部を含んでいてもよい。
【0013】
上記本発明に基づく車両用ドアにあっては、上記ガイド部は、上記一方のフレームに対向する対向面を有していてもよい。この場合には、上記突出部は、上記対向面に摺動可能に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車両内の空間を拡げつつ、安定して窓部を昇降させることができる車両用ドアを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態1に係る車両の概略側面図である。
図2】実施の形態1に係る車両用ドアにおいて車両右側に位置する車両用ドアのインナーパネルを外した状態を車両内側から見た場合の概略図である。
図3】実施の形態1に係る車両用ドアにおける前側フレーム部の下端周辺の構成を示す拡大図である。
図4図3に示すIV−IV線に沿った断面図である。
図5】実施の形態1に係る窓部の突出部がガイド部と第1フレーム部との間の隙間における上方側に位置する状態を示す図である。
図6】実施の形態1に係る窓部の突出部がガイド部と第1フレーム部との間の隙間における下方側に位置する状態を示す図である。
図7】実施の形態1に係る車両用ドアに具備される窓部と透明部とインナーパネルとの位置関係を示す断面図である。
図8】実施の形態2に係る車両用ドアにおけるフレーム部、窓部およびガイド部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、車両として、一人乗りないし二人乗りのような小型電気自動車を例示して説明を行なう。以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態に係る車両の概略側面図である。図1を参照して、本実施の形態に係る車両について説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態に係る車両1は、車両1の幅方向(Y軸方向)に並ぶ両側面に開口部11を有する車体10と、開口部11を開閉可能に閉塞する車両用ドア20と、車両1の前後方向(X軸方向)に並ぶ前輪15および後輪16とを備える。
【0019】
前輪15は、車両1の前方側に位置し、車両の幅方向に2つ設けられている。後輪16は、車両1の後方側に位置し、1つ設けられている。後輪16は、前後方向から見た場合に、2つの前輪15の間に位置する。
【0020】
車両用ドア20は、アウターパネル31、インナーパネル32(図4参照)および透明部33を含むドアパネル30と、窓部21,22と、フレーム部23とを備える。透明部33は、車両用ドア20の下部に設けられており、透明部33を介して車両1の内外を見通すことができる。
【0021】
図2は、本実施の形態に係る車両用ドアにおいて車両右側に位置する車両用ドアのインナーパネルを外した状態を車両内側から見た場合の概略図である。図3は、本実施の形態に係る車両用ドアにおける前側フレーム部の下端周辺の構成を示す拡大図である。図3においては、車両用ドアにおいて車両右側に位置する車両用ドアのインナーパネルおよび透明部33を外した状態を示す概略図である。図4は、図3に示すIV−IV線に沿った断面図である。図2から図4を参照して、車両用ドア20の詳細な構成について説明する。
【0022】
図2に示すように、フレーム部23は、前後方向に並ぶ第1フレーム部24(前側フレーム部)、第2フレーム部25(後側フレーム部)、第3フレーム部27および上側フレーム部26を含む。
【0023】
第1フレーム部24、第2フレーム部25および第3フレーム部27は、この順で前方側から前後方向に並ぶ。第1フレーム部24、第2フレーム部25および第3フレーム部27は、上下方向に延在する。
【0024】
ここで、上下方向とは、鉛直方向(Z軸方向)のみならず、鉛直方向から車両の前後方向に傾斜した方向も含むものとする。たとえば、上下方向には、上方に向かうにつれて後方に傾斜する方向が含まれる。
【0025】
第1フレーム部24、第2フレーム部25および第3フレーム部27は、具体的には、上方に向かうにつれて後方側に傾斜するように延在する。
【0026】
上側フレーム部26は、第1フレーム部24、第2フレーム部25および第3フレーム部27の上端を接続するように設けられている。上側フレーム部26は、窓部21の上縁部および窓部22の上縁部を収容可能に設けられた溝部が設けられている。
【0027】
第1フレーム部24および第2フレーム部25は、窓部21の昇降を案内する。第1フレーム部24は、第2フレーム部25よりも上下方向の長さが長くなっている。第1フレーム部24の下端は、第2フレーム部25の下端よりも下方に位置する。本実施の形態においては、第1フレーム部24が一方のフレーム部に相当し、第2フレーム部25が他方のフレーム部に相当する。
【0028】
第1フレーム部24の上端は、第2フレーム部の上端よりも低い位置にある。なお、第1フレーム部24の上端は、第2フレーム部の上端と同じ高さ位置にあってもよく、高い位置にあってもよい。
【0029】
第1フレーム部24は、ドアパネル30から露出する上部24aとドアパネル30の内部に収容される下部24bとを含む。下部24bは、アウターパネル31とインナーパネル32との間に収容される。
【0030】
下部24bは、移動規制部24cを含む。移動規制部24cは、第1フレーム部24の下端側に設けられている。移動規制部24cは、第1フレーム部24の下端部の一部が後方に向けて折り曲がることにより形成されている。
【0031】
第1フレーム部24には、窓部21の前縁部および窓部21の下縁部の前方側の一部を収容可能に設けられた溝部が設けられている。当該溝部は、上下方向に延在する部分と、略前後方向に延在する部分とを含む。
【0032】
第2フレーム部25は、ドアパネル30から露出する上部25aとドアパネル30の内部に収容される下部25bとを含む。下部25bは、アウターパネル31とインナーパネル32との間に収容される。
【0033】
第2フレーム部25の前側には、窓部21の後縁部を収容可能に設けられた溝部が設けられている。当該溝部は、上下方向に延在する。第2フレーム部25の後側には、窓部22の前縁部を収容する溝部が設けられている。
【0034】
第3フレーム部27は、ドアパネル30から露出する上部27aとドアパネル30の内部に収容される下部27bとを含む。第3フレーム部27には、窓部22の後縁部を収容可能に設けられた溝部が設けられている。
【0035】
第1フレーム部24、第2フレーム部25、第3フレーム部27および上側フレーム部26に設けられた溝部内には、ランチャンネル28(図4参照)が設けられている。ランチャンネル28は、フレーム部23と窓部21,22との間をシールする。
【0036】
窓部21,22は、樹脂ガラスや無機ガラス等の透明部材等によって構成されている。窓部21は、第1フレーム部24と第2フレーム部25との間を上下方向に昇降可能に設けられている。窓部22は、第2フレーム部25と第3フレーム部27との間で昇降不能に固定されている。
【0037】
第1フレーム部24に設けられた溝部および第2フレーム部の前側に設けられた溝部内に、窓部21の前縁部および後縁部が嵌め込まれる。窓部21の上方に設けられた引手部29を使用者が引上げたり、引下げたりすることにより、窓部21を第1フレーム部24および第2フレーム部25に沿って上下方向に移動させることができる。
【0038】
ドアパネル30の一部を構成するアウターパネル31およびインナーパネル32は、略L字形状を有する。アウターパネル31およびインナーパネル32は、上下方向に延在する部分と、前後方向に延在する部分とを含む。アウターパネル31およびインナーパネル32は、前方側が上下方向に延在し、前方側の上方側から後方側に向けて延在する。
【0039】
アウターパネル31およびインナーパネル32は、前方側に位置し、上下方向に延在する部分において、それらの間に第1フレーム部24の下部24bを収容する。アウターパネル31およびインナーパネル32は、前後方向に延在する部分において、それらの間に第2フレーム部25の下部25bを収容する。
【0040】
ドアパネル30の他の部分を構成する透明部33は、アウターパネル31およびインナーパネル32のうち前後方向に延在する部分の下方に設けられている。透明部33は、ドアパネル30のうち、第2フレーム部25の下部25bを収容する部分よりも下方の領域に設けられている。透明部33は、第1フレーム部24の下部24bが露出しないように設けられている。透明部33は、インナーパネル32の内表面32a(図4参照)に固定される。透明部33は、板状形状を有する。透明部33は、透明の樹脂部材等によって構成される。
【0041】
ドアパネル30は、内部に設けられたガイド部40をさらに含む。ガイド部40は、第1フレーム部24から見て第2フレーム部25が位置する側にて、第1フレーム部24の下部24bと前後方向に対向する。ガイド部40は、第2フレーム部25の下端よりも低くなる部分を含むように上下方向に延在する。具体的には、ガイド部40は上方に向かうにつれて後方に傾斜する。
【0042】
図3に示すように、ガイド部40と第1フレーム部24との間には隙間が形成されている。この隙間には、窓部21に含まれる突出部211が入り込み可能に設けられている。突出部211は、窓部21の下縁部が第2フレーム部25よりも下方に位置する状態で窓部21が昇降する際に、この隙間内を上下方向に移動する。
【0043】
窓部21の下縁部が第2フレーム部25の下端よりも上方に位置し、窓部21の後縁部の全てが上下方向に亘って第2フレーム部25内に収容されている場合には、突出部211は、ガイド部40と第1フレーム部24との間の隙間よりも上方に位置する。
【0044】
窓部21を下降させていった場合には、窓部21の下縁部の前方側が移動規制部24cに当接することにより、下方側への移動が制限される。移動規制部24cを設けた場合には、移動規制部24cを設けない構成と比較して、窓部21の下縁部が第1フレーム部24の下端部に当接する面積が増加するため、より安定して窓部21の下降を停止させることができる。
【0045】
図4に示すように、突出部211は、第1フレーム部24側に位置する窓部21の下方側にて車両の幅方向外側に突出する。突出部211は、キャップ形状を有する。中空円盤形状を有する平板部212と、平板部212の周縁に接続される環状の側壁部213を有する。突出部211は、平板部212が板状形状を有する窓部21の本体部210に載置された状態で、ボルト214とナット215等の締結部材によって本体部210に固定されている。
【0046】
突出部211は、窓部21の本体部210と別部材によって構成されている。なお、突出部211は、本体部210が樹脂ガラス等で構成される場合には、射出成形等によって本体部210と一体に成形されていてもよい。突出部211の側壁部213は、ガイド部40に摺動可能に設けられている。
【0047】
ガイド部40は、アウターパネル31の内表面31aに設けられている。ガイド部40は、アウターパネル31と別部材によって構成されている。なお、ガイド部40は、射出成形等によってアウターパネル31と一体に成形されていてもよい。
【0048】
図5および図6は、本実施の形態に係る窓部の突出部がガイド部と第1フレーム部との間の隙間における上方側に位置する状態および下方側に位置する状態を示す図である。なお、図5および図6においては、車両右側に位置する車両用ドアにおいて、アウターパネルを外し、車両の外側から見た状態を示している。なお、図5および図6においては便宜上のためガイド部40を残しつつ、アウターパネルの外縁を二点鎖線で示している。図5および図6を参照して、窓部21が昇降する際の突出部211の動作について説明する。
【0049】
図5および図6に示すように、ガイド部40は、対向面40aおよび湾曲面41を有する。対向面40aは、第1フレーム部24に対向する。対向面40aは、平面形状を有する。対向面40aは、第1フレーム部24の延在方向に略平行である。
【0050】
湾曲面41は、対向面40aの上方に位置する。湾曲面41は、対向面40aに連続する。湾曲面41は、前方に向かうにつれて(第1フレーム部24に近づくにつれて)下方に湾曲する。湾曲面41は、窓部21が下降する際に、突出部211を、ガイド部40と第1フレーム部24との間の隙間に誘い込む誘い込み部として機能する。
【0051】
窓部21を下降させ、窓部21の下縁部が第2フレーム部25より下方に位置した状態になった場合には、窓部21の後縁部の下方側が第2フレーム部25によって支持されなくなる。
【0052】
このため、窓部21の下縁部が第2フレーム部25より下方に位置した状態からさらに、窓部21を下降させる場合には、引手を引き下げる際の力加減によっては、窓部21が車の幅方向を回転軸として回動する場合が起こり得る。
【0053】
ここで、本実施の形態においては、窓部21を下降させていく際に、突出部211が誘い込み部としての湾曲面41に当接し、この湾曲面41に沿って下降していく。これにより、窓部21の下縁部が第2フレーム部25より下方に位置した状態では、突出部211が、ガイド部40と第1フレーム部24との間の隙間に入り込む。
【0054】
突出部211が上記隙間に入り込むことにより、窓部21が回動する場合には、突出部211がガイド部40の対向面40aに当接する。これにより、窓部21の回動が防止される。
【0055】
突出部211をガイド部40の対向面40aに摺動させながら、窓部21を下降させることにより、窓部21が回動することを防止しつつ、窓部21を安定して下降させることができる。なお、窓部21を回動させることなく下降させることができる場合には、突出部211は、ガイド部40に摺動しなくてもよい。
【0056】
また、窓部21を上昇させる際には、逆の動作が行われ、突出部211をガイド部40の対向面40aに摺動させながら、窓部21を上昇させることにより、窓部21が回動することを防止しつつ、窓部21を安定して上昇させることができる。
【0057】
図7は、本実施の形態に係る車両用ドアに具備される窓部と透明部とインナーパネルとの位置関係を示す断面図である。図7を参照して、窓部21と透明部33との位置関係について説明する。
【0058】
図7に示すように、窓部21は、透明部33の外側を図中DR1方向に沿って昇降する。透明部33が窓部21の内側に配置されることにより、降雨時に車両1を運転した場合であっても、窓部21の外表面21aを滑り落ちる水滴が、透明部33よりも内側に侵入することを防止できる。
【0059】
透明部33は、上下方向に亘ってインナーパネル32の外側に配置される。透明部33のうちドアパネル30から露出する部分は、インナーパネル32のうち車両内に向けて最も突出する部分の表面32bよりも外側に位置する。これにより、インナーパネル32の下方において、図中R領域に示す部分にて車両内の空間を拡げることができる。
【0060】
以上のように、本実施の形態に係る車両用ドア20は、窓部21の昇降を案内する第1フレーム部24と第2フレーム部25とを設け、第1フレーム部24の下端を第2フレーム部の下端よりも低くすることにより、第1フレーム部24の後方であって、第2フレーム部25の下方に位置する空間をインナーパネルおよびアウターパネルで覆う必要がなくなる。このため、第2フレーム部25の下方の空間を自由に使うことが可能となる。
【0061】
本実施の形態においては、第1フレーム部24の後方であって、第2フレーム部25の下方に位置する部分に、インナーパネル32のうち車両内に向けて突出する部分32bよりも外側に板状の透明部33を設けることにより、車両内の空間を拡げることができる。
【0062】
なお、透明部33を必ずしも設ける必要はなく、透明部33が設けられていた部分を、インナーパネルとアウターパネルとによって覆ってもよい。この場合には、第1フレーム部の後方であって、第2フレーム部25の下方に位置する部分において、フレームの厚み分だけ、ドアパネルの厚みを薄くすることができる。このことによっても、車両内の空間を拡げることができる。
【0063】
透明部33を設ける場合には、透明部33を介して車両内が見えることとなり、ドアパネル30のデザイン性が向上する。また、透明部33が第1フレーム部24の下部24bおよび第2フレーム部25の下部25bを露出させないように設けられることにより、ドアパネル30のデザイン性をさらに向上させることができる。また、透明部33を設けることで、たとえば、車両内の運転車が、路肩などへの幅寄せ時に車両前側タイヤ部付近を目視することが可能になるなど、車両内から外部を見ることができる。
【0064】
さらに、本実施の形態においては、第2フレーム部25の下端よりも低い部分を含むように、第1フレーム部24の下部24bに対向するガイド部40を設けるとともに、窓部21の下縁部が第2フレーム部25の下方に位置する状態で第1フレーム部24とガイド部40との間に入り込む突出部211を設け、突出部211をガイド部40に摺動可能とする。
【0065】
これにより、窓部21の後縁部の一部が第2フレーム部25に支持されない状態において窓部21を昇降させる際に、突出部211がガイド部40に当接することによって窓部21の回動を防止することができ、窓部21を安定して昇降させることができる。
【0066】
(実施の形態2)
図8は、本実施の形態に係る車両用ドアにおけるフレーム部、窓部およびガイド部を示す概略図である。図8を参照して、本実施の形態に係る車両用ドア20Aについて説明する。
【0067】
図8に示すように、本実施の形態に係る車両用ドア20Aは、実施の形態1に係る車両用ドア20と比較した場合に、第1フレーム部24A(前側フレーム部)の下端と第2フレーム部25Aの下端との位置関係、および、突出部211Aおよびガイド部40Aの位置が相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。
【0068】
第1フレーム部24Aおよび第2フレーム部25Aは、窓部21の昇降を案内する。第2フレーム部25Aは、第1フレーム部24Aよりも上下方向の長さが長くなっている。第2フレーム部25Aの下端は、第1フレーム部24の下端よりも下方に位置する。本実施の形態においては、第2フレーム部25Aが一方のフレーム部に相当し、第1フレーム部24Aが他方のフレーム部に相当する。
【0069】
第2フレーム部25Aの下部25bは、移動規制部24c2を含む。移動規制部24c2は、第2フレーム部25Aの下端側に設けられている。移動規制部24c2は、第2フレーム部25Aの下端部の一部が前方に向けて折り曲がることにより形成されている。
【0070】
また、アウターパネルおよびインナーパネルは、略L字形状を有する。アウターパネルおよびインナーパネルは、上下方向に延在する部分と、前後方向に延在する部分とを含む。アウターパネルおよびインナーパネルは、後方側が上下方向に延在し、後方側の上方側から前方側に向けて延在する。
【0071】
アウターパネルおよびインナーパネルは、後方側に位置し、上下方向に延在する部分において、それらの間に第2フレーム部25Aの下部25bを収容する。アウターパネルおよびインナーパネルは、前後方向に延在する部分において、それらの間に第1フレーム部24Aの下部24bを収容する。また、前後方向に延在する部分の下方には、透明部が設けられる。
【0072】
ガイド部40Aは、第2フレーム部25Aから見て第1フレーム部24Aが位置する側にて、第2フレーム部25Aの下部25bと前後方向に対向する。具体的には、ガイド部40Aは上方に向かうにつれて後方に傾斜する。ガイド部40Aは、第2フレーム部25Aに対向する対向面40a1および対向面40a1に連続する湾曲面41Aを有する。
【0073】
突出部211Aは、第2フレーム部25A側に位置する窓部21の下方側にて車両の幅方向に突出する。突出部211Aは、第2フレーム部25Aとガイド部40Aとの間に入り込み可能に設けられている。突出部211Aは、ガイド部40Aに摺動可能に設けられている。
【0074】
ここで、本実施の形態においては、窓部21を下降させていく際に、突出部211Aが誘い込み部としての湾曲面41Aに当接し、この湾曲面41Aに沿って下降していくことにより、窓部21の下縁部が第1フレーム部24Aより下方に位置した状態では、突出部211Aが、ガイド部40Aと第2フレーム部25Aとの間の隙間に入り込む。
【0075】
突出部211Aが上記隙間に入り込むことにより、窓部21が回動する場合には、突出部211Aがガイド部40Aの対向面40a1に当接する。突出部211Aをガイド部40Aの対向面40a1に摺動させながら、窓部21を下降させることにより、窓部21が回動することを防止しつつ、窓部21を安定して下降させることができる。なお、窓部21を回動させることなく下降させることができる場合には、突出部211Aは、ガイド部40Aに摺動しなくてもよい。
【0076】
また、窓部21を上昇させる際には、逆の動作が行われ、突出部211Aをガイド部40Aの対向面40a1に摺動させながら、窓部21を上昇させることにより、窓部21が回動することを防止しつつ、窓部21を安定して上昇させることができる。
【0077】
以上のように、本実施の形態に係る車両用ドア20Aは、窓部21の昇降を案内する第1フレーム部24Aと第2フレーム部25Aとを設け、第2フレーム部25Aの下端を第1フレーム部24Aの下端よりも低くすることにより、第2フレーム部25Aの前方であって、第1フレーム部24Aの下方に位置する空間をインナーパネルおよびアウターパネルで覆う必要がなくなる。このため、第1フレーム部24Aの下方の空間を自由に使うことが可能となり、実施の形態1同様に、車両内の空間を拡げることができる。
【0078】
また、本実施の形態においては、第1フレーム部24Aの下端よりも低い部分を含むように、第2フレーム部25Aの下部25bに対向するガイド部40Aを設けるとともに、窓部21の下縁部が第1フレーム部24Aの下方に位置する状態で第2フレーム部25Aとガイド部40Aとの間に入り込む突出部211Aを設け、突出部211Aをガイド部40Aに摺動可能とする。これにより、実施の形態1同様に、窓部21の回動を防止することができ、窓部21を安定して昇降させることができる。
【0079】
上述した実施の形態1および2においては、車両が、小型電気自動車である場合を例示して説明したが、これに限定されず、フォークリフト等の荷役自動車や、乗用車等の自動車であってもよい。
【0080】
上述した実施の形態1および2においては、使用者が引手部29を引き上げたり、引き下げたりすることにより、窓部21が昇降する場合を例示して説明したが、昇降機構によって窓部21を昇降させてもよい。
【0081】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0082】
1 車両、10 車体、11 開口部、15 前輪、16 後輪、20,20A 車両用ドア、21,22 窓部、21a 外表面、23 フレーム部、24,24A 第1フレーム部、24a,25a,27a 上部、24b,25b,27b 下部、24c,24c2 移動規制部、25,25A 第2フレーム部、26 上側フレーム部、27 第3フレーム部、28 ランチャンネル、29 引手部、30 ドアパネル、31 アウターパネル、31a,32a 内表面、32 インナーパネル、32b 突出する部分、33 透明部、40,40A ガイド部、40a,40a1 対向面、41,41A 湾曲面、210 本体部、211,211A 突出部、212 平板部、213 側壁、214 ボルト、215 ナット。
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