(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373810
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】炊飯器用の水流発生具
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
A47J27/00 103Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-174973(P2015-174973)
(22)【出願日】2015年9月4日
(65)【公開番号】特開2017-47102(P2017-47102A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2016年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】512207629
【氏名又は名称】トリムユニバース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098154
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100092864
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 京子
(72)【発明者】
【氏名】漆原 雄介
【審査官】
土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭18−001187(JP,Y1)
【文献】
実開平04−064317(JP,U)
【文献】
特開平10−113291(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3010468(JP,U)
【文献】
特開2014−217492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯器の内鍋における底壁の内面に配置して炊飯時に前記内鍋内に水流を形成する炊飯器の水流発生具であって、全体が富士山形の円錐台形状である水流発生具本体の外周面に底部から頂部に掛けて配置される円弧状である複数の溝条が同一の向きで且つ互いに所定の間隔を有して形成されていることを特徴とする炊飯器用の水流発生具。
【請求項2】
前記水流発生具本体の少なくとも表面が遠赤外線発生素材により形成されていることを特徴とする請求項1記載の炊飯器用の水流発生具。
【請求項3】
前記炊飯器の内鍋における底壁の内面へ固定するための固定部材が前記水流発生具本体の底部に備えられていることを特徴とする請求項1または2記載の炊飯器用の水流発生具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯器用の水流発生具に関するものであり、内鍋の全体箇所でふっくらとした美味しいご飯を炊くことができるものである。
【背景技術】
【0002】
近頃、炊飯器は内鍋の周囲に配置した磁性体を加熱コイルにより電磁誘導して加熱するなどの手段を用いることにより、更には内鍋として土鍋のような高温性や保温性に優れた素材を用いることによって従来の加熱手段が劣る電気ヒーター式の炊飯器で炊飯する場合に比べて風味よい炊飯ができるようになってきている。
【0003】
ところで、この種の炊飯器は、所定量の米と所定量の水を入れた内鍋を炊飯器本体に収容して加熱し前記収容した水を沸騰させて米を炊きあげるものであり、炊きあげの良し悪しは沸騰初期における加熱ムラが要因であることが知られている。
【0004】
即ち、通常の炊飯器では前述のように、内鍋を加熱することにより内鍋内に静止状態で収容した所定量の水と米を加熱して米を炊飯するものであるが、水が沸騰した際に水に米が浸されているので水の対流が前記米によって阻止されることから内鍋内の温度が均一でなくなり、外部からの輻射熱を受ける部位の温度が高く、内側部分が低くなって内鍋の温度分布が不均一になり、結果として底部を含めた周壁に近い加熱部が配置された箇所では加熱しすぎて柔らかくなり過ぎ、加熱部から離れた中央付近に配置された箇所では硬くなり炊きムラが生じることになる。
【0005】
また、炊飯時に内鍋内の米が最初に投入されたままの状態で炊飯されることから、米層の底部を含めた周壁に近い加熱部が配置された箇所では加熱し過ぎ、加熱部から離れた中央付近に配置された箇所では熱が足りず、炊きムラが生じて全体としてふっくらとしておいしいご飯を炊くことができないという問題があった。
【0006】
そこで、炊きあがりの状態に最も影響があるとされる沸騰時に内鍋内の水を流動させて、内鍋内の加熱ムラをなくす手段を講じた炊飯器が提案されており、例えばモーター等の駆動源による水流発生手段を備え、内鍋内の水を流動させて、内鍋内の加熱ムラをなくすものが特開昭63−127720号公報(特許文献1)、特開2012−110587号公報(特許文献2)などに提示されている。
【0007】
しかしながら、これらの公報に提示されている水流形成手段は例えば
図7に示すように、内鍋1a内に配置した回転子2a(或いは回転羽根)を回転させるモーターや磁石などの駆動源3aを内鍋1aの外部に備えることが必要であり、構造が複雑となり、特に、内鍋1aは炊きあげたご飯をしゃもじで掬い、更には炊飯前後には洗浄も必要であり、取り扱いに不便であるともに保守や修理も困難であるという問題がある。また、これらの水流を発生させる炊飯器によると、米が混入している水が回転の遠心力により内鍋1aの周壁の内面に送られて全体として中央部分が低くなり、均一な層になりにくく均一な加熱が行われないという問題もある。
【0008】
更に、特開2001−95679号公報(特許文献3)には
図8に示すように、内鍋2aの外周に磁性体により形成した切欠部2bを形成することにより、内鍋2a全体の加熱効果を上昇させて内鍋2a内の温度分布を均一にして加熱ムラを抑え、炊きムラの少ないご飯を提供する炊飯器が提示されている。
【0009】
しかしながら、この公報に提示されている炊飯器の内鍋2aは加工が面倒であるばかりか電磁誘導加熱手段を用いる比較的高額な炊飯器が必要であり、更に切欠部2bの部分の洗浄や乾燥などに手間が掛かるという問題がある。
【0010】
更に、特開2006−150042号公報(特許文献4)には、
図9に示したように、内鍋3a内に収容した米の上層部に設置して内鍋内の底部から発生する水蒸気を噴出させて内鍋3a内の水分状態を均一にして炊きあがりを均一にする炊飯改良器3bが提示されているが、内鍋3a内の加熱沸騰時の温度分布を均一にするものでなく実行性に乏しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭63−127720号公報
【特許文献2】特開2012−110587号公報
【特許文献3】特開2001−95679号公報
【特許文献4】特許2006−150042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、炊飯器において炊飯する際に内鍋内の温度を均一として全体としてふっくらとして美味しいご飯が炊けるように沸騰初期に内鍋内で水流を発生させて内鍋内の温度を均一にするばかりか簡単な構造で且つ使い勝手が良く、更に廉価に提供可能な炊飯器用の水流発生具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するためになされた本発明は、炊飯器の内鍋における底壁の内面に配置して炊飯時に前記内鍋内に水流を形成する炊飯器の水流発生具であって、全体が富士山形の円錐台形状である水流発生具本体の外周面に溝条が形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明である炊飯器用の水流発生具を炊飯器の内鍋における底壁の内面の中央に配置して炊飯すると、収容した水が沸騰するに従って、一緒に収容した米とともに富士山形の円錐台形の水流発生具本体の外周面に沿って上昇し上端で外方に放出されて全体として対流が生じ、内鍋内の温度が均一になり、その状態で米が膨らむのでその後に水分が減少して炊けた状態で堆積しても全体としてふっくらとした美味しいご飯が炊ける。
【0015】
加えて、内鍋内に米と水が存在する状態で内壁内に水流を発生させて、内鍋内の水に浸された米同士を擦り合わせると、放出したデンプン質が溶出した水が沸騰して、ツヤと粘りのあるご飯を炊飯できるという効果も併有できる。
【0016】
特に、前記水流発生具本体の外周面に
底部から頂部に掛けて配置される円弧状である複数の溝条が
同一の向きで且つ互いに所定の間隔を有して形成されている場合には水流が渦巻き状に対流するので更に内鍋内の温度が均一化される。
【0017】
加えて、本発明において、前記水流発生具本体の少なくとも表面を遠赤外線発生素材により形成することにより、炊飯時に水流発生具本体も炊飯器の加熱部により加熱されて遠赤外線を発生させて内鍋の中心部分からも水と米を加熱することにより内鍋内に収容された米を均一にふっくらとして炊飯することができる。
【0018】
加えて、前記炊飯器の内鍋における底壁の内面へ固定するための固定部材が前記水流発生具本体の底部に備えられている場合には沸騰時に安定した状態で内鍋内の所定位置に固定することができ、炊飯中に生じる沸騰するお湯や米の流れによって浮遊したりする心配もない。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、炊飯する際に内鍋内の温度を均一として全体としてふっくらとして美味しいご飯が炊けるように沸騰初期に内鍋内で水流を発生させて内鍋内の温度を均一にするばかりか簡単な構造で且つ使い勝手が良く、更に廉価に提供可能な炊飯器用の水流発生具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図4】
図1に示した実施の形態の使用状態を示す正面図。
【
図5】
図1に示した実施の形態の異なる使用状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1乃至
図5は本発明における好ましい実施の形態を示すものであり、本発明である炊飯器用の水流発生具1は、
図1に示すように、例えば底面12の直径が50〜60mm、頂面13の直径が20mm、高さが50mm程度の全体が富士山形の円錐台形状である水流発生具本体11の外周面14に底部から頂部に掛けて連続する
複数の円弧状の溝条15が形成されている。尚、本実施の形態では複数の溝条15を形成したが、渦巻き状の溝条を1条形成することもできる(図示せず)。
【0022】
水流発生具本体11は、例えばアルミナ・クロミナ、アルミナ・シリカ、アルミナ・ジルコニアなどの遠赤外線効果を有するセラミックス材により一体に形成される場合が好ましいが、少なくとも外周面14が前記セラミックス材により形成されると好ましい。
【0023】
本実施の形態は、
図4に示したように、内鍋2の底壁21の内面22の中心に配置するとともに所定量の水3と米4とを収容して炊飯器(図示せず)にセットし、通常の炊飯と同様に通電して炊飯をする。尚、本実施の形態では予め水流発生具1を内鍋2に設置した状態で水3と米4を加えたが、予め水3と米4とを収容した後から水流発生具1を挿入、配置してもよい。
【0024】
そして、
図5に示すように炊飯器(図示せず)からの加熱手段により内鍋2内が加熱されると、内鍋2内に収容された水3と米4とが加熱され、水3が沸騰すると内鍋2内の中央に配置された水流発生具1の外周面14に沿って沸騰した水3が上昇し内鍋2内に対流が生じるので内鍋2の周囲に配置される炊飯器(図示せず)からの熱が内鍋2内を均一に加熱するので全ての米4も対流によって攪拌されることから均一に加熱されて加熱ムラが抑えられるため、炊きムラが生じる心配がない。特に、本実施の形態では水流発生具本体11が富士山形の円錐台形状であることから対流を発生させやすい。
【0025】
加えて、本実施の形態では水流発生具1の外周面14に複数の所定の円弧状により形成される溝条15が形成されているので水流が渦状に上昇することになり、更に内鍋2内の加熱温度を均一にするばかりか、本実施の形態は水流発生具本体11が遠赤外線を生じるセラミックス材により形成されているので炊飯器(図示せず)からの加熱により遠赤外線を内鍋2内に放射して更に高熱により米を炊飯するのでよりふっくらとした美味しいご飯が炊ける。
【0026】
尚、本実施の形態は、全体が比較的比重の大きなセラミックス材により形成されているのでそのままの状態で内鍋2に設置するだけで炊飯時に位置が移動し、或いは転倒しないが、素材は特に限定されるものでなく水が沸騰する温度に耐えるとともに飲食上害がなければ他の各種素材を用いることができ、必要であれば底部に錘を埋設してもよく、磁石や耐熱性の吸盤などの固着部材(図示せず)を備えたものとしてもよい。
【0027】
図6は本発明の異なる実施の形態を示すものであり、全体の構成は前記実施の形態とほぼ同様であるが、水流発生具本体11の外周面14に形成した複数の溝条15が軸線に沿って上下方向に直線状に形成されている点が異なる。
【0028】
本実施の形態も前記実施の形態と同様にして使用するが、対流が渦巻き状でなく上下方向に水流が生じる(図示せず)。本実施の形態は例えば炊飯量が多い場合などで水3や米4の荷重抵抗が大きく前記実施の形態のように渦巻き状の水流が発生しにくい場合などに使用するとよい。
【0029】
以上のように本実施の形態はいずれの場合も内鍋2のいずれの部分をとっても炊きムラのないふっくらとした美味しいご飯を得ることができる。また、本実施の形態は内鍋2の底壁21の内面22に載置しただけなのでそのままにしてご飯を食べた後に取り出すか、或いは炊飯後に予め取り出して通常の食器と同じく洗浄して再使用が可能であり、きわめて便利で経済的にも優れている。
【符号の説明】
【0030】
1 水流発生具、2 内鍋、3 水、4 米、11 水流発生具本体、12 底面、13 頂面、14 外周面、15 溝条、21 底壁、22 内面