特許第6373875号(P6373875)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6373875車両の挙動を特徴付ける方法及び車両のタイヤの選択における使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373875
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】車両の挙動を特徴付ける方法及び車両のタイヤの選択における使用
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/04 20060101AFI20180806BHJP
   B62D 17/00 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   G01M17/04
   B62D17/00 A
   B62D17/00 C
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-555689(P2015-555689)
(86)(22)【出願日】2014年1月29日
(65)【公表番号】特表2016-513243(P2016-513243A)
(43)【公表日】2016年5月12日
(86)【国際出願番号】EP2014051696
(87)【国際公開番号】WO2014118214
(87)【国際公開日】20140807
【審査請求日】2016年11月4日
(31)【優先権主張番号】1350804
(32)【優先日】2013年1月31日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【弁理士】
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】エゲルセギ クリストフ
【審査官】 福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/121247(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/089664(WO,A1)
【文献】 特開2008−195269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00〜17/10
B62D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所与の車両の挙動を特徴付ける方法であって、前記車両は、車体と、所与のディスク、リム及びタイヤを含む少なくとも1本のホイール(14)と、前記ホイール(14)を前記車体に連結する少なくとも1つのサスペンション装置(80)とを有する、方法において、
(A)前記サスペンション装置及び前記ホイールディスクの所与の形態について、主観的挙動試験を前記車両に対して実施して前記車両の挙動が許容できるかどうかを判定するステップと、
(B)前記サスペンション装置及び前記ホイールディスクの前記形態を改変して、直線走行の際における前記ホイールの横力Fy及び横オフセットDyから成る対のそれぞれの値をスイープし、そして、前記サスペンション装置及び前記ディスクの試験された各形態について、ステップ(A)を再実施するステップと、
(C)前記サスペンション装置及び前記ホイールディスクの試験された各形態について、所与の安定化速度での直線走行の際における前記ホイールの横力Fy及び横オフセットDyの値の対を求めるステップと、
(D)前記車両の許容できる挙動の領域Zを次元Fy,Dy内に定めるステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記ホイールのトーイン/トーアウト、キャンバ、及びオフセットから成る群から選択されたパラメータを変化させることにより、前記サスペンション装置及び前記ホイールディスクの前記形態を改変する、請求項1記載の特徴付け方法。
【請求項3】
前記主観的挙動試験は、低横加速度での挙動試験である、請求項1又は2記載の特徴付け方法。
【請求項4】
前記サスペンション装置及び前記ホイールディスクの試験された各形態について、前記ホイールの横力Fy及び横オフセットDy値の前記対を、前記ステップ(A)で用いた前記サスペンション装置及び前記ホイールディスクの基準形態と比較する、請求項1〜3のうちいずれか一に記載の特徴付け方法。
【請求項5】
前記ホイールディスクと前記サスペンション装置との間にキャンバシムを挿入することによって前記ホイールの前記横オフセットを変化させ、横オフセットの変化を前記挿入されたシムの厚さから推定し、前記トーイン又は前記トーアウトを変更することにより安定化速度での直線走行の際における前記ホイールの前記横力を変化させ、横力の前記変化を前記タイヤのドリフト剛性と前記トーイン又は前記トーアウトの変化量との積から推定する、請求項4記載の特徴付け方法。
【請求項6】
‐前記車両のモデルを用い、前記車両の重心に加えられた加速度と、前記車両ホイールの力、モーメント及び姿勢との関係を見出して、直線走行の際における前記ホイールの前記ホイール中心のところの力、モーメント及び姿勢を求め、
‐前記ホイールの前記横力Fy前記横オフセットDyとの関係を示す前記ホイールの特徴付けを用い
‐前記サスペンション装置の試験された各形態について、所与の安定化速度での直線走行の際における前記ホイールの横力Fy及び横オフセットDyの値の前記対を見出す、請求項1〜3のうちいずれか一に記載の特徴付け方法。
【請求項7】
前記ホイールを特徴付けるため、
(A)前記ホイールを所与の条件で移動転動面上で転動させ、前記ホイール中心のところの力及びモーメントの組並びに転動半径を測定するようになった試験機に前記ホイールを取り付け、
(B)前記ホイールを所与の転動形態で回転させ、特に転動半径Re、半径方向力Fz及び軸方向力Fy並びに長手方向軸線MXに沿うモーメントの測定を行い、
(C)前記ホイールの前記転動条件を変化させ、前記ステップ(B)を繰り返し実施し、
(D)特性式Fy=f(Dy)を定め、この特性式において、Dyは、前記ホイールの横オフセットであり、次式、即ち、
が成り立つ、請求項6記載の特徴付け方法。
【請求項8】
前記方法を前記車両のサスペンション装置及びホイールの各組立体について連続して実施する、請求項1〜7のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項9】
前記車両は、少なくとも2つのアクスルを有し、各アクスルは、2つのサスペンション装置及び2本のホイールを備え、前記方法をアクスルごとに実施する、請求項1〜7のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項10】
車両に取り付けられるタイヤを備えた少なくとも1本のホイールを選択する方法であって、
(A)請求項6又は7に記載の方法によって前記車両を特徴付けて前記車両の許容できる挙動の領域Zを見出すステップと、
(B)前記ホイールの特性式Fy=f(Dy)を求めることによって前記ホイールを特徴付けるステップと、
(C)前記タイヤ及び前記ホイールの選択を行い、前記タイヤ及び前記ホイールを備えた前記車両が、許容できる挙動の領域Z内で直線走行の際に1対の値Fy,Dyを示すように、前記車両の前記サスペンション装置を調節するステップと、を含む方法。
【請求項11】
前記方法を前記車両のサスペンション装置及びホイールの各組立体について連続して実施する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記車両は、少なくとも2つのアクスルを有し、各アクスルは、2つのサスペンション装置及び2本のホイールを備え、前記方法をアクスルごとに実施する、請求項10記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の路上挙動の改良分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の設計にあたり、車両製造業者は、車両の挙動を向上させる目的で多くの試験を行っている。これら試験は、車両挙動の量的説明のための「客観的」と呼ばれる試験及び車両の挙動の質的判定のための「主観的」と呼ばれている試験を含む。主観的試験は、車両を運転し、自分の印象に基づいて車両の挙動を説明する試験者によって行われる。
【0003】
客観的試験は、特に、制動試験、グリップ試験及び安全試験を含む。主観的試験は、特に、直線挙動に関連した試験の部分、全体的挙動及び積極的事故防止を含む。直線挙動は、車両の僅かな横加速度について実施される操作、例えば、ステアリング、直線性、操縦安定性(ドライバビリティ)、センタリング及び他の操作を含む。
【0004】
直線挙動に関連した試験の部分は、特に、例えばステアリングホイールに加わるモーメント又は車両のヨーが例えば100km/hオーダーの安定化速度での走行中にステアリングホイールのところの角度の変化に応答してどのように定性的且つ定量的に変化するかを発見するために試験者によってステアリングホイールに及ぼされる全体として低振幅の角度のある力に基づいて車両の応答を説明するという目的を有している。かくして、例えば、直線応答を示す車両は、一般に試験者によって満足の行くものと評価される挙動を示し、これに対し、応答がステアリングホイールの回転角度が僅かであれば存在しない車両は、一般に試験者にとって許容できないと評価される挙動を示す。
【0005】
試験者が車両の直線挙動を許容できないと見なした場合、車両を改造し、次に試験者によって再試験し、試験者は、車両が改造を施した後に満足の行く挙動を示すかどうかをチェックすることができるようになる。許容できない挙動の原因は、試験者によって知られていないので、改造を行うための要求は、試験者の経験に基づいている。かかる要求は、タイヤ、ホイール、ステアリングシステム、サスペンション装置(サスペンション)の幾何学的形状及び要素に関するが、これらには限定されない。上述のステップを繰り返し実施し、ついには、車両が試験者にとって満足の行く直線挙動を示すようになる。
【0006】
したがって、車両の設計は、時間が比較的長くかかり、したがって、コスト高のプロセスである。
【0007】
以下の説明において、本発明との関連において、「ホイール」は、ホイールがディスク(車輪円板)及びリムから成る特定の場合か、ホイール(ディスク及びリム)及びタイヤで構成された組立体全体(つまり、車輪)に対応した一般的な意味かのいずれかで理解されるべきである。
【0008】
第1の観点によれば、本発明の目的は、所与の車両の挙動を特徴付ける方法を提供することにあり、車両は、車体と、所与のディスク、リム及びタイヤを含む少なくとも1本のホイールと、ホイールを車体に連結する少なくとも1つのサスペンション装置とを有する。
【0009】
この方法は、
(A)サスペンション装置及びホイールディスクの所与の形態について、主観的挙動試験を車両に対して実施して車両の挙動が許容できるかどうかを判定するステップと、
(B)サスペンション装置及びホイールディスクの形態を改変して直線走行の際におけるホイールの横力Fy及び横オフセットDyから成る対のそれぞれの値をスイープし、そして、サスペンション装置及びディスクの試験された各形態について、特徴付けステップ(A)を再実施するステップと、
(C)サスペンション装置及びホイールディスクの試験された各形態について、所与の安定化速度での直線走行の際におけるホイールの横力Fy及び横オフセットDyの値の対を求めるステップと、
(D)車両の許容できる挙動の領域Zを平面Fy,Dy内に定めるステップとを含むことを特徴とする。
【0010】
好ましくは、ホイールのトーイン/トーアウト、キャンバ、及びオフセットから成る群から選択されたパラメータを変化させることにより、サスペンション装置及びホイールディスクの形態を改変する。
【0011】
また、好ましくは、主観的挙動試験は、低横加速度での挙動試験である。
【0012】
本発明の一観点としての特徴付け方法の第1の実施形態によれば、サスペンション装置及びホイールディスクの試験された各形態について、ホイールの横力Fy及び横オフセットDy値の対をサスペンション装置及びホイールディスクの基準形態に対して相対的に求める。
【0013】
好ましくは、ホイールディスクとサスペンション装置との間にキャンバシムを挿入することによってホイールの横オフセットを変化させ、横オフセットの変化を挿入されたシムの厚さから推定する。
【0014】
トーイン又はトーアウトを変更することにより安定化速度での直線走行の際におけるホイールの横力もまた、変化させることができ、横力の変化をタイヤのドリフト剛性とトーイン又はトーアウトの変化量の積から推定することができる。
【0015】
これら評価は、問題の速度で用いられるタイヤの単純な慣例の特徴部付けを必要としているに過ぎない。
【0016】
本発明の一観点による特徴付け方法の第2の実施形態によれば、
‐車両のモデルを用い、車両の重心に加えられた加速度と車両ホイールの力、モーメント及び姿勢との関係を見出して直線走行の際におけるホイールのホイール中心のところの力、モーメント及び姿勢を求め、
‐ホイールの横力Fyを横オフセットDyに関連付けるホイールの特徴付けを用い、
‐サスペンション装置の試験された各形態について、直線走行の際におけるホイールの横力Fy及び横オフセットDyの値の対を求める。
【0017】
本発明の目的のこの第2の実施形態は、非常に正確であるという利点を有している。
【0018】
有利には、タイヤを備えたホイールを特徴付けるため、
(A)ホイールを所与の条件で移動転動面上で転動させ、ホイール中心のところの力及びモーメントの組を測定するようになった試験機にホイールを取り付け、
(B)ホイールを所与の転動形態で回転させ、特に転動半径Re並びにホイール中心での半径方向力Fz及び軸方向力Fy並びに長手方向軸線MXに沿うモーメントの測定を行い、
(C)ホイールの走行条件を変化させ、ステップ(B)を繰り返し実施し、
(D)特性式Fy=f(Dy)を定め、この特性式において、Dyは、ホイールの横オフセットであり、次式、即ち、
が成り立つようにする。
【0019】
第2の観点によれば、本発明は、車両に取り付けられるタイヤを備えた少なくとも1本のホイールを選択する方法であって、
(A)上述の方法によって車両を特徴付けて車両の許容できる挙動の領域Zを定めるステップと、
(B)タイヤを備えたホイールを上述の方法によって特徴付けるステップと、
(C)タイヤ及びホイールの選択を行い、車両のサスペンション装置をタイヤ及びホイールを備えた車両が許容できる挙動の領域Z内で直線走行の際に1対の値Fy,Dyを示すように調節するステップとを含むことを特徴とする方法である。
【0020】
本発明の方法は、車両を特徴付ける目的で、ホイールごとの方式で又はアクスルごとの方式で利用できる。アクスルごとの方式で利用した上での利点は、左右対称性が主観的挙動試験についても保たれるということにある。
【0021】
これら方法の主要な利点は、車両、ホイール及びタイヤが別個独立に特徴付けられること、これら特徴付けが車両に低横加速度で走行する上で良好な挙動を与えるタイヤ及びホイールの選択の直接的な決定及び必要ならば利用可能なタイヤの良好な適応を達成するための車両の調整における指針のための基準として用いられるということにある。
【0022】
所与の特徴付けられた車両に基づいて、当該技術分野におけるタイヤ製造業者は又、これらのタイヤを備えた車両の満足の行く挙動をちょうど達成するのに必要なタイヤアーキテクチャの特徴を定めることができる。
【0023】
本発明は、非限定的な例として提供されているに過ぎず、図面を参照して行われる以下の説明から明確に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】車両ホイールの軸方向断面図である。
図2】サスペンション装置に取り付けられたホイールに及ぼされる力及びモーメントの略図である。
図3】乗用車の特徴付けの結果を示す図である。
図4】ホイールの次元Fy,Dyにおける特徴付けの仕方を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、ディスクD及びリムJを有する上述した特定の意味での車両ホイールを示している。
【0026】
図1は又、ホイールについて一般に識別される幾何学的要素、即ち、ホイールの中間平面M及び軸線A並びに通常ホイール中心と呼ばれているホイールの中心CAを示している。中心CAは、ホイール軸線Aとホイールを支持したハブに当接するようになったディスクDの面の交差によって定められる点である。
【0027】
図1は又、原点がMA、即ち、軸線Aと中間平面Mとの交点である幾何学的基準系を示しており、この幾何学的基準系は、ホイール基準系又は座標系と呼ばれている。この基準系は、互いに直交すると共にそれぞれ車両ホイールの通常の長手方向(X軸)、横方向(Y軸)及び垂直方向(Z軸)に対応した軸線X,Y,Zを含む。横軸Yは、左右軸とも呼ばれる場合がある。
【0028】
注目されるべきこととして、従来通り、Y軸の正の方向は、車両の外側から内側に向かって延び、Y軸の負の方向は、車両の内側から外側に向かって延びる。
【0029】
例えば図1に示されている2本のホイールが同一アクスルの互いに反対側のホイールを形成する場合、これらホイールの各々は、他方の鏡像をなす。したがって、同じことは、ホイールのそれぞれの点MAに関連付けられたホイール基準系について当てはまる。
【0030】
また、注目されるべきこととして、従来通り、実質的に長手方向を有するモーメントは、これがホイールのキャンバを減少させる傾向がある場合、正であると見なされ、これがホイールのキャンバを増大させる傾向がある場合、負であると見なされる。思い起こされるように、ホイールのキャンバは、路面に垂直であり且つホイールの軸線Aを含む平面内において、ホイールの中間平面Mと車両の中間平面とのなす角度である。「カウンターキャンバ」(又は負のキャンバ)という用語は、同一アクスルのホイールの中間平面Mが路面の上方で交差している場合に用いられる。
【0031】
最後に、例えば図1に示されているホイールの幾何学的オフセットDy0は、点CAと点MAとの間の距離であることは、注目されるべきである。
【0032】
図2は、車両のフロントアクスルのサスペンション装置(懸架装置)80に取り付けられたタイヤPを備えたホイールに加わる力及びモーメントを極めて概略的に示している。
【0033】
サスペンション装置80は、ショックアブソーバ82及びサスペンションアーム84の形態で概略的に示されており、ショックアブソーバ82とサスペンションアーム84の両方は、ハブ86に連結されている。
【0034】
ホイール14は、サスペンション装置にX軸回りのモーメントMXを及ぼす。このモーメントは、2つの成分を有し、これら成分のうちの第1の成分MXyは、Y軸に沿って差し向けられた接触状態の力の合力若しくは図心又は横力Fyに関連付けられ、第2の成分MXzは、Z軸に沿って差し向けられた接触領域内の力の合力又は垂直力Fzに関連付けられる。
【0035】
第1の成分MXyは、横力Fyと転動半径又は負荷時の半径Reの積に等しい。第2の成分MXzは、垂直力Fzと保有のオフセットDyの積に等しい。かくして、次式が成り立つ。
且つ
【0036】
ホイールのオフセットDyは、ホイール中心CAと垂直力Fzの加えた作用点との間のオフセットに一致している。このオフセットは、2つの成分、即ち、上述の値Dy0に関連付けられた幾何学的成分(この幾何学的成分は、CAとホイールの中間平面Mとの間の距離である)及びホイールの中間平面と垂直力Fzの図心との間の距離に対応した動的成分を有する。この動的成分は、Dypと呼ばれる。かくして、次式が成り立つ。
【0037】
かくして、ホイールのオフセットを、転動半径又は負荷時半径Reの測定値と共にホイール中心のところでの横力Fy、垂直力Fz及び長手方向軸線に沿うモーメントMXの測定値に基づいて見出すことができる。
【0038】
かくして、本出願人は、特に直線走行の際にホイールによってサスペンション装置に及ぼされる長手方向軸線に沿うモーメントMXを2つの互いに異なる手法で、即ち、横力Fyの変化及びホイールオフセットDyの変更によって変更することができるという知見を得ている。
【0039】
注目されることとして、横力Fyをホイールの中心のところか或いはタイヤの路面接触領域かのいずれかで測定することができる。
【0040】
本発明の一目的による車両の挙動を特徴付ける(車両の挙動の特性を把握する)方法は、既知のタイヤを備えた車両の低横加速度における主観的挙動試験を実施する一方で、車両の少なくとも一方のサスペンション装置及び関連のホイール、好ましくは同一アクスルの2つのサスペンション装置及びこれらと関連したホイールの形態を変化させるステップを含む。
【0041】
問題の車両に応じて、約100km/h以上の所与の安定化速度での直線走行の際に横力Fyを変化させることによってこのスイープを行うのが良い。これは、特に、問題の2つのサスペンション装置のトーイン又はトーアウトを変更することによって行われる。思い起こされるように、トーインは、直線走行の際、車両の中間平面とホイールの中間平面とのなす角度に対応している。この角度は、アクスルの2本のホイールの2つの中間平面が車両の前で互いに交差したときにトーインと呼ばれ、逆の場合はトーアウトと呼ばれる。
【0042】
例えばホイール中心とアクスルのハブとの間にキャンバシムを差し込むことにより(負の変化)又はハブと接触状態にあるディスクの面を研磨することによって(幾何学的オフセットの正の変化)ホイールの幾何学的オフセットDy0を変えることによってもスイープを実施することができる。
【0043】
図3は、乗用車の特徴付けの結果を示している。同一アクスル、即ち車両のフロントアクスルに取り付けられている2つのサスペンション装置及びこれらに関連したホイールの条件のスイープは、基準として2本のタイヤの平行度及び横オフセットの所与の調節を用いて実施された。
【0044】
これら基準条件で始まって、車両の平行度、即ち、トーイン及びトーアウトを次第に変化させることによって力Fyを変化させ、ついには、オフセットの所与の調節について車両の最適挙動を求めることができた。次に、これら試験を1mm厚さのキャンバシムの追加及び次に第2の同一のシムの追加により繰り返し実施して全部で2mmのシム厚さを得た。ホイールの幾何学的オフセットの対応の変化は、かくして、1mmの減少、次に2mmの減少であった。基準形態と2つの試験された形態との間のホイールオフセットの変化をホイールの幾何学的オフセットのこの変化から推定した。
【0045】
これら試験により、横オフセットの各値について、車両の挙動が最適である車両のフロントアクスルの1つのサスペンション装置の調節条件を見出すことができた。
【0046】
2つのサスペンション装置及びこれらと関連したホイールの試験された各形態について、タイヤのドリフト剛性とトーイン又はトーアウトで生じた変化率の積を見出すことによって横力の変化率ΔFyの変化を推定し、横オフセットの変化率ΔDyを除去したキャンバシムの厚さ(1及び2mm)から推定した。
【0047】
これにより、本発明者には、図3に示された結果が与えられる。これら結果の示すところによれば、ΔDyの各値について、互いの挙動が最適である横力ΔFyの領域Zが存在する。この領域Zは、両方向のシムが追加されると(オフセットを減少させる)、力Fyの振幅が大きくならなければならないようなものである。この領域Zの勾配は、問題のアクスルの2つのサスペンション装置の基準形態に応じて、正であり又は負である場合がある。
【0048】
このグラフ図の立証するところによれば、所与の安定化速度で且つ低い横加速度で直線走行の際における車両の挙動は、特に、ホイール及びタイヤによって長手方向軸線回りに及ぼされるモーメントMX及びこれらの2つの成分MXy及びMXzに関連付け、この挙動を次元Fy,Dy内で満足の行くものと説明することができる。
【0049】
図3は、水平軸及び垂直軸上にそれぞれ働く横オフセット及び横力の変化を用いており、これら値の推定は、用いられるタイヤ及びホイールの特性が知られている場合、簡単なことである。
【0050】
また、横力と横オフセットの対の実質的により正確な評価を得ることが可能である。これら評価は、車両モデルに結合されたホイールの実験的に得られた特性式Fy=f(Dy)を用いている。
【0051】
図4は、所与のタイヤ、リム及びディスク並びに所与の幾何学的オフセットを有するホイールの特徴付けの結果を示している。
【0052】
この特徴付けを以下の条件で通常の転動試験者について実施した。
‐タイヤ:ミシュラン・エナジー・セーバー(Michelin Energy Saver )、サイズ205/55R16
‐リム6.5J16
‐垂直荷重:4,200N
‐インフレーション圧力2.4bar
‐速度:100km/h
‐ドリフト角度:−1°〜+1°
‐キャンバ:0°
【0053】
これらの結果は、ホイールオフセットDyと横力Fyとの間の直接的な事実上線形の関係を示している。
【0054】
車両のモデルを特に、ケー・アンド・シー(K&C)テストリグについて静的特徴付けによって得ることができる。このモデルにより、車両の重心のところの加速度を車両ホイールの力、モーメント及び姿勢に関連付けることができ、その目的は、直線走行の際のホイールの中心のところの力、モーメント及び姿勢、特に、横力Fy及び半径方向力Fz並びに長手方向軸線に沿うモーメントMX及び転動半径Reを求めることにある。
【0055】
この種の車両モデルは、車両の当業者には周知であり、特に、ディーパック・パレク(Deepak Parekh ),ブルース・ウィットル(Bruce Whittle ),デヴィッド・スタルネイカー(David Stalnaker )及びエド・ウーリール(Ed Uhlir),「ラボラトリー・タイヤ・ウェア・シミュレーション・プロセス・ユージング・エーディーエーエムエス・ビークル・モデル(Laboratory Tire Wear Simulation Process Using ADAMS Vehicle Model )」,ソサイエティ・オブ・オートモーティブ・エンジニアーズ(エスエーイー)(Society of Automotive Engineers(SAE)),テクニカル・ペーパー・シリーズ(Technical Paper Series)961001,(インターナショナル・コングレス・アンド・エクスポジション(International Congress and Exposition )、ミシガン州デトロイト、1996年2月26日-29日)という論文に記載されている。
【0056】
かくして、このモデルを用いることによって、車両アクスルのサスペンション装置及び関連ホイールの基準形態及び全ての試験された形態に関し、ホイール中心のところでホイールに加えられた力及びモーメントの組、特に、横力Fy、半径方向力Fz及びモーメントMXを知ることができる。
【0057】
かくして、ホイールの特性式Fy=f(Dy)との結合によって、横力Fy及び横オフセットDyを算定する際、ホイールとサスペンション装置の調整との間の相互作用を考慮することが可能である。かくして、算定の精度が優れている。
【0058】
許容できる挙動の領域Zを問題の車両について定めた場合、タイヤ、ホイール及び車両の細かい適応をプライオリ方式で実施することができる。
【0059】
所与の車両に関し、タイヤの当業者は、特に、タイヤの構造的パラメータ、例えば、タイヤのテーパ角及びタイヤのドリフト剛性を調節して横力及びタイヤの動的横オフセットと横力の関係を調節し、それによりこれらタイヤを備えた車両の優れた挙動をプライオリ方式で達成することができる。
図1
図2
図3
図4