(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
GDC−0032の薬学的に許容可能な塩が、塩酸と形成される塩、臭化水素酸と形成される塩、ヨウ化水素酸と形成される塩、硫酸と形成される塩、硝酸と形成される塩、リン酸と形成される塩、メタンスルホン酸と形成される塩、ベンゼンスルホン酸と形成される塩、ギ酸と形成される塩、酢酸と形成される塩、トリフルオロ酢酸と形成される塩、プロピオン酸と形成される塩、シュウ酸と形成される塩、マロン酸と形成される塩、コハク酸と形成される塩、フマル酸と形成される塩、マレイン酸と形成される塩、乳酸と形成される塩、リンゴ酸と形成される塩、酒石酸と形成される塩、クエン酸と形成される塩、エタンスルホン酸と形成される塩、アスパラギン酸と形成される塩及びグルタミン酸と形成される塩から選択される、請求項1から3の何れか一項に記載の医薬。
治療上有効な量のGDC−0032が1日に2回から3週毎に1回の範囲で投与され、治療上有効な量のレトロゾールが1日に2回から3週毎に1回の範囲で投与される投薬レジメンにより治療用組み合わせが投与される、請求項6に記載の医薬。
二酸化ケイ素、粉末化セルロース、微結晶セルロース、金属ステアレート、アルミノケイ酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、コーンスターチ、炭酸マグネシウム、アスベストフリータルク、ステアロウェットC、スターチ、スターチ1500、ラウリル硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム及びそれらの組み合わせから選択される薬学的に許容可能な滑剤を更に含む請求項21に記載の薬学的製剤。
GDC−0032とレトロゾールとの組み合わせの投与後に機能的PI3Kタンパク質レベルを測定することにより生体試料は検査されており、機能的PI3Kタンパク質のレベルの変化は、患者がGDC−0032とレトロゾールとの組み合わせに対して耐性又は反応性であることを示す、請求項34から36の何れか一項に記載の医薬。
(a)GDC−0032とレトロゾールとの組み合わせの少なくとも単回用量の投与後に患者から得られた生体試料におけるPIK3CA変異又はPTEN変異を検出すること、並びに
(b)GDC−0032とレトロゾールとの組み合わせの患者への投与前に患者から得られた生体試料におけるPIK3CAの又はPTENの変異状態を比較すること
を含む、乳癌を患う患者がGDC−0032とレトロゾールとの組み合わせによる処置に反応するかどうかのモニタリング方法であって、
GDC−0032とレトロゾールとの組み合わせの投与後に得られた試料におけるPIK3CAの又はPTENの変異状態の変化又はモジュレーションにより、GDC−0032とレトロゾールとの組み合わせによる処置に反応する患者が同定される、方法。
GDC−0032とレトロゾールとの組み合わせの少なくとも単回用量の投与後に患者から得られた生体試料におけるPIK3CA変異又はPTEN変異を検出するための手段を含む、乳癌を患う患者がGDC−0032とレトロゾールとの組み合わせによる処置に反応するかどうかをモニターするためのキットであって、
GDC−0032とレトロゾールとの組み合わせの患者への投与前に患者から得られた生体試料におけるPIK3CAの又はPTENの変異状態が比較され、GDC−0032とレトロゾールとの組み合わせの投与後に得られた試料におけるPIK3CAの又はPTENの変異状態の変化又はモジュレーションにより、GDC−0032とレトロゾールとの組み合わせによる処置に反応する患者が同定される、キット。
(a)GDC−0032とレトロゾールとの組み合わせの少なくとも単回用量の投与後に患者から得られた生体試料におけるPIK3CA変異又はPTEN変異を検出すること、並びに
(b)GDC−0032とレトロゾールとの組み合わせの患者への投与前に患者から得られた生体試料におけるPIK3CAの又はPTENの状態を比較すること
を含む、乳癌の処置におけるGDC−0032とレトロゾールとの組み合わせの治療効果の最適化方法であって、
GDC−0032とレトロゾールとの組み合わせの投与後に得た試料におけるPIK3CAの又はPTENの変化又はモジュレーションにより、GDC−0032とレトロゾールとの組み合わせによる処置が有効である可能性が増加している患者が同定される、方法。
GDC−0032とレトロゾールとの組み合わせの少なくとも単回用量の投与後に患者から得られた生体試料におけるPIK3CA変異又はPTEN変異を検出するための手段を含む、乳癌の処置におけるGDC−0032とレトロゾールとの組み合わせの治療効果を最適化するためのキットであって、
GDC−0032とレトロゾールとの組み合わせの患者への投与前に患者から得られた生体試料におけるPIK3CAの又はPTENの状態が比較され、GDC−0032とレトロゾールとの組み合わせの投与後に得た試料におけるPIK3CAの又はPTENの変化又はモジュレーションにより、GDC−0032とレトロゾールとの組み合わせによる処置が有効である可能性が増加している患者が同定される、キット。
(a)GDC−0032とレトロゾールとの組み合わせの少なくとも単回用量が投与されている患者から得られた生体試料におけるPIK3CA変異又はPTEN変異から選択されるバイオマーカーの発現、モジュレーション又は活性を検出すること、並びに
(b)バイオマーカーの発現、モジュレーション又は活性と参照試料におけるバイオマーカーの状態とを比較することであって、参照試料がGDC−0032とレトロゾールとの組み合わせの患者への投与前に患者から得られた生体試料であること
を含む、乳癌の処置におけるGDC−0032とレトロゾールとの組み合わせに対する反応性のモニタリング用バイオマーカーの同定方法であって、
参照試料と比較して少なくとも2分の1又は2倍のバイオ−マーカー変化のモジュレーションが、GDC−0032とレトロゾールとの組み合わせに対する反応性のモニタリングに有用なバイオマーカーとして同定され、
バイオマーカーがPIK3CA変異又はPTEN変異である、
方法。
GDC−0032とレトロゾールとの組み合わせの少なくとも単回用量が投与されている患者から得られた生体試料におけるPIK3CA変異又はPTEN変異から選択されるバイオマーカーの発現、モジュレーション又は活性を検出するための手段を含む、乳癌の処置におけるGDC−0032とレトロゾールとの組み合わせに対する反応性のモニタリング用バイオマーカーを同定するためのキットであって、
バイオマーカーの発現、モジュレーション又は活性と参照試料におけるバイオマーカーの状態とが比較され、参照試料はGDC−0032とレトロゾールとの組み合わせの患者への投与前に患者から得られた生体試料であり、
参照試料と比較して少なくとも2分の1又は2倍のバイオ−マーカー変化のモジュレーションが、GDC−0032とレトロゾールとの組み合わせに対する反応性のモニタリングに有用なバイオマーカーとして同定され、
バイオマーカーがPIK3CA変異又はPTEN変異である、キット。
【発明の概要】
【0013】
本出願は、以下に列挙する本発明の態様の任意の組み合わせも含む。
【0014】
インビトロ及びインビボでの癌細胞の増殖の阻害における相加効果又は相乗効果を、ある種の他の特定の化学療法剤と組み合わせて化合物GDC−0032又はその薬学的に許容可能な塩を投与することにより実現することができるとの結論に至っている。本組み合わせ及び本方法は、癌等の過剰増殖性障害の処置において有用であることができる。
GDC-0032
【0015】
一態様では、本発明は、組み合わせ製剤として又は交互に治療用組み合わせを哺乳動物に投与することを含む過剰増殖性障害の処置方法であって、治療用組み合わせが、構造:
を有する治療上有効な量のGDC−0032と、5−FU、ドセタキセル、エリブリン、ゲムシタビン、GDC−0973、GDC−0623、パクリタキセル、タモキシフェン、フルベストラント、デキサメタゾン、ペルツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、トラスツズマブ及びレトロゾールから選択される治療上有効な量の化学療法剤とを含む方法を含む。
【0016】
一態様では、本発明は、過剰増殖性障害の処置方法であって、GDC−0032と、5−FU、ドセタキセル、エリブリン、ゲムシタビン、GDC−0973、GDC−0623、パクリタキセル、タモキシフェン、フルベストラント、デキサメタゾン、ペルツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、トラスツズマブ及びレトロゾールから選択される1種又は複数種の化学療法剤との投与が過剰増殖性障害の処置において相乗効果をもたらす方法を提供する。更なる態様では、相乗効果は約0.8未満の組み合わせ指数値を有する。
【0017】
一態様では、本発明は、カルボプラチンを更に含む治療用組み合わせを提供する。
【0018】
一態様では、本発明は、抗VEGF抗体を更に含む治療用組み合わせを含む。
【0019】
一態様では、本発明は、抗VEGF抗体がベバシズマブであることを含む。
【0020】
一態様では、本発明は、GDC−0032の薬学的に許容可能な塩が、塩酸と形成される塩、臭化水素酸と形成される塩、ヨウ化水素酸と形成される塩、硫酸と形成される塩、硝酸と形成される塩、リン酸と形成される塩、メタンスルホン酸と形成される塩、ベンゼンスルホン酸と形成される塩、ギ酸と形成される塩、酢酸と形成される塩、トリフルオロ酢酸と形成される塩、プロピオン酸と形成される塩、シュウ酸と形成される塩、マロン酸と形成される塩、コハク酸と形成される塩、フマル酸と形成される塩、マレイン酸と形成される塩、乳酸と形成される塩、リンゴ酸と形成される塩、酒石酸と形成される塩、クエン酸と形成される塩、エタンスルホン酸と形成される塩、アスパラギン酸と形成される塩及びグルタミン酸と形成される塩から選択されることを含む。
【0021】
一態様では、本発明は、治療上有効な量のDGC−0032又はDGC−0032と化学療法剤との組み合わせを患者に投与することを含む患者の過剰増殖性障害の処置方法であって、組み合わせの患者への投与前に患者から得られた生体試料はバイオマーカーの状態に関して検査されており、バイオマーカーの状態がGDC−0032又はGDC−0032と化学療法剤との組み合わせに対する患者による治療反応性を示す方法を含む。一実施態様では、生体試料は機能的バイオマーカータンパク質のレベルを測定することにより検査されており、機能的バイオマーカーのレベルの上昇は患者がGDC−0032又は組み合わせに対して耐性であることを示す。別の実施態様では、生体試料は機能的バイオマーカーのレベルを測定することにより検査されており、機能的バイオマーカーのレベルの上昇又は低下は患者がGDC−0032又は組み合わせに対して耐性であることを示す。
【0022】
一態様では、本発明は、GDC−0032と、5−FU、ドセタキセル、エリブリン、ゲムシタビン、GDC−0973、GDC−0623、パクリタキセル、タモキシフェン、フルベストラント、デキサメタゾン、ペルツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、トラスツズマブ及びレトロゾールから選択される化学療法剤とを含む薬学的製剤を含む。
【0023】
一態様では、本発明は、過剰増殖性障害の処置用の医薬の製造における、GDC−0032と、5−FU、ドセタキセル、エリブリン、ゲムシタビン、GDC−0973、GDC−0623、パクリタキセル、タモキシフェン、フルベストラント、デキサメタゾン、ペルツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、トラスツズマブ及びレトロゾールから選択される化学療法剤との治療用組み合わせの使用を含む。
【0024】
一態様では、本発明は、乳房、子宮頸部、結腸、子宮内膜、神経膠腫、肺、メラノーマ、卵巣、膵臓及び前立腺から選択される癌の処置用の医薬の製造における、GDC−0032と、5−FU、ドセタキセル、エリブリン、ゲムシタビン、GDC−0973、GDC−0623、パクリタキセル、タモキシフェン、フルベストラント、デキサメタゾン、ペルツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、トラスツズマブ及びレトロゾールから選択される化学療法剤との治療用組み合わせの使用を含む。
【0025】
一態様では、本発明は、過剰増殖性障害の処置で使用するための、構造:
を有するGDC−0032と、5−FU、ドセタキセル、エリブリン、ゲムシタビン、GDC−0973、GDC−0623、パクリタキセル、タモキシフェン、フルベストラント、デキサメタゾン、ペルツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、トラスツズマブ及びレトロゾールから選択される化学療法剤との治療用組み合わせを含む。
【0026】
一態様では、本発明は、乳房、子宮頸部、結腸、子宮内膜、神経膠腫、肺、メラノーマ、卵巣、膵臓及び前立腺から選択される癌の処置で使用するための、構造:
を有するGDC−0032と、5−FU、ドセタキセル、エリブリン、ゲムシタビン、GDC−0973、GDC−0623、パクリタキセル、タモキシフェン、フルベストラント、デキサメタゾン、ペルツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、トラスツズマブ及びレトロゾールから選択される化学療法剤との治療用組み合わせを含む。
【0027】
一態様では、本発明は、過剰増殖性障害の処置における、構造:
を有するGDC−0032と、5−FU、ドセタキセル、エリブリン、ゲムシタビン、GDC−0973、GDC−0623、パクリタキセル、タモキシフェン、フルベストラント、デキサメタゾン、ペルツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、トラスツズマブ及びレトロゾールから選択される化学療法剤との治療用組み合わせの使用を含む。
【0028】
一態様では、本発明は、乳房、子宮頸部、結腸、子宮内膜、神経膠腫、肺、メラノーマ、卵巣、膵臓及び前立腺から選択される癌の処置における、構造:
を有するGDC−0032と、5−FU、ドセタキセル、エリブリン、ゲムシタビン、GDC−0973、GDC−0623、パクリタキセル、タモキシフェン、フルベストラント、デキサメタゾン、ペルツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、トラスツズマブ及びレトロゾールから選択される化学療法剤との治療用組み合わせの使用を含む。
【0029】
一態様では、本発明は上記に記載の発明を含む。
【0030】
一態様では、本発明は、
a)GDC−0032と、5−FU、ドセタキセル、エリブリン、ゲムシタビン、GDC−0973、GDC−0623、パクリタキセル、タモキシフェン、フルベストラント、デキサメタゾン、ペルツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、トラスツズマブ及びレトロゾールから選択される化学療法剤との治療用組み合わせ、並びに
b)使用説明書
を含む、過剰増殖性障害の処置用製造品を含む。
【0031】
一態様では、本発明は、過剰増殖性障害の処置で別々に、同時に又は順次に使用するための組み合わせ製剤として、GDC−0032と、5−FU、ドセタキセル、エリブリン、ゲムシタビン、GDC−0973、GDC−0623、パクリタキセル、タモキシフェン、フルベストラント、デキサメタゾン、ペルツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、トラスツズマブ及びレトロゾールから選択される化学療法剤とを含む製品を含む。
【0032】
一態様では、本発明は、治療上有効な量のGDC−0032と治療上有効な量の化学療法剤とが組み合わせ製剤として投与される方法を含む。
【0033】
一態様では、本発明は、治療上有効な量のGDC−0032と治療上有効な量の化学療法剤とが交互に哺乳動物に投与されることを含む。
【0034】
一態様では、本発明は、哺乳動物が化学療法剤を投与され、その後にGDC−0032を投与されることを含む。
【0035】
一態様では、本発明は、治療上有効な量のGDC−0032が1日に2回から3週毎に1回の範囲で投与され、治療上有効な量の化学療法剤が1日に2回から3週後に1回の範囲で投与される投薬レジメンにより治療用組み合わせが投与されることを含む。
【0036】
一態様では、本発明は、投薬レジメンを1回又は複数回繰り返すことを含む。
【0037】
一態様では、本発明は、治療用組み合わせの投与により相乗効果が生じることを含む。
【0038】
一態様では、本発明は、治療用組み合わせの投与により約0.7未満の組み合わせ指数値が得られることを含む。
【0039】
一態様では、本発明は、過剰増殖性障害が、乳房、子宮頸部、結腸、子宮内膜、胃、神経膠腫、肺、メラノーマ、卵巣、膵臓及び前立腺から選択される癌であることを含む。
【0040】
一態様では、本発明は、癌が、E542K、E545K、Q546R、H1047L及びH1047Rから選択されるPIK3CA変異体を発現することを含む。
【0041】
一態様では、本発明は、癌がPTEN変異体を発現することを含む。
【0042】
一態様では、本発明は、癌がHER2陽性であることを含む。
【0043】
一態様では、本発明は、哺乳動物が乳癌患者であり、患者がHER2陰性、ER(エストロゲンレセプター)陰性及びPR(プロゲステロンレセプター)陰性であることを含む。
【0044】
一態様では、本発明は、乳癌のサブタイプが基底又はルミナルであることを含む。
【0045】
一態様では、本発明は、患者がGDC−0032及びエリブリンを投与されることを含む。
【0046】
一態様では、本発明は、GDC−0032及び化学療法剤が単位投薬形態当たり約1mgから約1000mgの量でそれぞれ投与されることを含む。
【0047】
一態様では、本発明は、GDC−0032及び化学療法剤が約1:50から約50:1の重量比で投与されることを含む。
【0048】
一態様では、本発明は、GDC−0032と、5−FU、ドセタキセル、エリブリン、ゲムシタビン、GDC−0973、GDC−0623、パクリタキセル、タモキシフェン、フルベストラント、デキサメタゾン、ペルツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、トラスツズマブ及びレトロゾールから選択される化学療法剤とを含む薬学的製剤を含む。
【0049】
一態様では、本発明は、二酸化ケイ素、粉末化セルロース、微結晶セルロース、金属ステアレート、アルミノケイ酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、コーンスターチ、炭酸マグネシウム、アスベストフリータルク、ステアロウェットC、スターチ、スターチ1500、ラウリル硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム及びそれらの組み合わせから選択される薬学的に許容可能な滑剤を更に含む薬学的製剤を含む。
【0050】
一態様では、本発明は、GDC−0032と化学療法剤とが単位投薬形態当たり約1mgから約1000mgの量をそれぞれ占める薬学的製剤を含む。
【0051】
一態様では、本発明は、癌の処置方法で使用するための薬学的製剤を含む。
【0052】
一態様では、本発明は、
a)GDC−0032と、5−FU、ドセタキセル、エリブリン、ゲムシタビン、GDC−0973、GDC−0623、パクリタキセル、タモキシフェン、フルベストラント、デキサメタゾン、ペルツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、トラスツズマブ及びレトロゾールから選択される化学療法剤との治療用組み合わせで、K−ras変異を有する腫瘍細胞株をインビボで処置すること、並びに
b)相乗効果又は非相乗効果を測定すること
を含み、それにより癌の処置用の相乗的な治療用組み合わせを決定する、癌の処置に組み合わせて使用する化合物の決定方法を含む。
【0053】
一態様では、本発明は、
a)GDC−0032と、5−FU、ドセタキセル、エリブリン、ゲムシタビン、GDC−0973、GDC−0623、パクリタキセル、タモキシフェン、フルベストラント、デキサメタゾン、ペルツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、トラスツズマブ及びレトロゾールから選択される化学療法剤との治療用組み合わせを腫瘍細胞に投与すること、
b)pAktレベルの変化を測定すること、並びに
c)pAktレベルの増加を示す相乗的な治療用組み合わせを選択すること
を含む、癌の処置に組み合わせて使用する化合物の選択方法を含む。
【0054】
一態様では、本発明は、治療上有効な量のGDC−0032又はGDC−0032と5−FU、ドセタキセル、エリブリン、ゲムシタビン、GDC−0973、GDC−0623、パクリタキセル、タモキシフェン、フルベストラント、デキサメタゾン、ペルツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、トラスツズマブ及びレトロゾールから選択される化学療法剤との組み合わせを患者に投与することを含む、患者の過剰増殖性障害の処置方法であって、組み合わせの患者への投与前に、患者から得られた生体試料はPIK3CAの又はPTENの変異状態に関して検査されており、PIK3CAの又はPTENの変異状態が組み合わせに対する患者による治療反応性を示す方法を含む。治療上有効な量のGDC−0032が単剤又はGDC−0032と化学療法剤との組み合わせとして患者に投与される。GDC−0032又はGDC−0032と化学療法剤との組み合わせの投与後に機能的PI3Kタンパク質レベルを測定することにより生体試料を検査することができ、機能的PI3Kタンパク質のレベルの変化は、患者がGDC−0032又はGDC−0032と化学療法剤との組み合わせに対して耐性又は反応性であることを示す。
【0055】
一態様では、本発明は、過剰増殖性障害がHER2発現乳癌であることを含む。
【0056】
一態様では、本発明は、生体試料が、GDC−0032又はGDC−0032と化学療法剤との組み合わせの投与後に機能的PIK3タンパク質レベルの測定により検査されており、機能的PI3Kタンパク質のレベルの変化は、患者がGDC−0032又はGDC−0032と化学療法剤との組み合わせに対する耐性又は反応性であることを示すことを含む。
【0057】
一態様では、本発明は、
(a)GDC−0032又はGDC−0032と5−FU、ドセタキセル、エリブリン、ゲムシタビン、GDC−0973、GDC−0623、パクリタキセル、タモキシフェン、フルベストラント、デキサメタゾン、ペルツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、トラスツズマブ及びレトロゾールから選択される化学療法剤との組み合わせの少なくとも単回用量の投与後に患者から得られた生体試料におけるPIK3CA変異又はPTEN変異を検出すること、並びに
(b)GDC−0032又はGDC−0032と化学療法剤との組み合わせの患者への投与前に患者から得られた生体試料におけるPIK3CAの又はPTENの変異状態を比較すること
を含む、過剰増殖性障害を患う患者がGDC−0032又はGDC−0032と化学療法剤との組み合わせによる処置に反応するかどうかのモニタリング方法であって、
GDC−0032又はGDC−0032と化学療法剤との組み合わせの投与後に得られた試料におけるPIK3CAの又はPTENの変異状態の変化又はモジュレーション(変調、modulation)により、GDC−0032又はGDC−0032と化学療法剤との組み合わせによる処置に反応する患者を同定する方法を含む。
【0058】
一態様では、本発明は、過剰増殖性障害がHER2発現乳癌であることを含む。
【0059】
一態様では、本発明は、
(a)GDC−0032又はGDC−0032と5−FU、ドセタキセル、エリブリン、ゲムシタビン、GDC−0973、GDC−0623、パクリタキセル、タモキシフェン、フルベストラント、デキサメタゾン、ペルツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、トラスツズマブ及びレトロゾールから選択される化学療法剤との組み合わせの少なくとも単回用量の投与後に患者から得られた生体試料中においてPIK3CA変異又はPTEN変異を検出すること、並びに
(b)GDC−0032又はGDC−0032と化学療法剤との組み合わせの患者への投与前に患者から得られた生体試料におけるPIK3CAの又はPTENの状態を比較すること
を含む、GDC−0032又はGDC−0032と化学療法剤との組み合わせの治療効果の最適化方法であって、
GDC−0032又はGDC−0032と化学療法剤との組み合わせの投与後に得られた試料におけるPIK3CA又はPTENの変化又はモジュレーションにより、GDC−0032又はGDC−0032と化学療法剤との組み合わせによる処置が有効である可能性が増加している患者を同定する方法を含む。
【0060】
一態様では、本発明は、過剰増殖性障害がHER2発現乳癌であることを含む。
【0061】
一態様では、本発明は、
(a)GDC−0032又はGDC−0032と5−FU、ドセタキセル、エリブリン、ゲムシタビン、GDC−0973、GDC−0623、パクリタキセル、タモキシフェン、フルベストラント、デキサメタゾン、ペルツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、トラスツズマブ及びレトロゾールから選択される化学療法剤との組み合わせの少なくとも単回用量が投与されている患者から得られた生体試料におけるPIK3CA変異又はPTEN変異から選択されるバイオマーカーの発現、モジュレーション又は活性を検出すること、並びに
(b)バイオマーカーの発現、モジュレーション又は活性と参照試料におけるバイオマーカーの状態とを比較することであって、参照試料がGDC−0032又はGDC−0032と化学療法剤との組み合わせの患者への投与前に患者から得られた生体試料であること
を含む、GDC−0032又はGDC−0032と化学療法剤との組み合わせに対する反応性のモニタリング用バイオマーカーの同定方法であって、
参照試料と比較して少なくとも2分の1又は2倍のバイオ−マーカー変化のモジュレーションを、GDC−0032又はGDC−0032と化学療法剤との組み合わせに対する反応性のモニタリングに有用なバイオマーカーとして同定する方法を含む。一実施態様では、バイオマーカーはpAktである。
【0062】
一態様では、本発明は、過剰増殖性障害がHER2発現乳癌であることを含む。
【0063】
一態様では、本発明は、治療上有効な量のGDC−0032又はGDC−0032と5−FU、ドセタキセル、エリブリン、ゲムシタビン、GDC−0973、GDC−0623、パクリタキセル、タモキシフェン、フルベストラント、デキサメタゾン、ペルツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、トラスツズマブ及びレトロゾールから選択される化学療法剤との組み合わせを患者に投与することを含む、患者の過剰増殖性障害の処置方法であって、処置がPIK3CA変異又はPTEN変異を有する患者からの試料に基づく方法を含む。バイオマーカーの変異は、PIK3CAのH1047R変異、H1047L変異、E545K変異又はE542K変異であることができる。
【0064】
一態様では、本発明は、バイオマーカーの変異がPIK3CAのH1047R変異又はH1047L変異であることを含む。
【0065】
一態様では、本発明は、バイオマーカーの変異がPIK3CAのE542K変異、E545K変異又はQ546R変異であることを含む。
【0066】
一態様では、本発明は、過剰増殖性障害がHER2発現乳癌であることを含む。
【0067】
一態様では、本発明は、過剰増殖性障害がエストロゲンレセプター陽性(ER+)乳癌であることを含む。
【0068】
一態様では、本発明は、
治療上有効な量のGDC−0032又はGDC−0032と5−FU、ドセタキセル、エリブリン、ゲムシタビン、GDC−0973、GDC−0623、パクリタキセル、タモキシフェン、フルベストラント、デキサメタゾン、ペルツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、トラスツズマブ及びレトロゾールから選択される化学療法剤との組み合わせを患者に投与することを含む、患者の過剰増殖性障害の処置でのGDC−0032又はGDC−0032と化学療法剤との組み合わせの使用であって、
GDC−0032又はGDC−0032と化学療法剤との組み合わせの患者への投与前に患者から得られた生体試料はPIK3CAの又はPTENの変異状態に関して検査されており、PIK3CAの又はPTENの変異状態がGDC−0032又はGDC−0032と化学療法剤との組み合わせに対する患者による治療反応性を示す使用を含む。
【0069】
一態様では、本発明は、過剰増殖性障害がHER2発現乳癌であることを含む。
【0070】
一態様では、本発明は、過剰増殖性障害がエストロゲンレセプター陽性(ER+)乳癌であることを含む。
【発明を実施するための形態】
【0072】
ここで、本発明のある実施態様を詳細に言及し、その例を添付の構造及び式で例証する。列挙する実施態様と併せて本発明を説明するが、このことが本発明をこれらの実施態様に限定することを意図するものではないことが理解されるだろう。それどころか、本発明は、特許請求の範囲により規定される本発明の範囲内に含まれ得る全ての代替、改変及び等価物を包含することを意図する。当業者は、本発明の実施で使用され得る、本発明に記載のものと類似又は等価の多くの方法及び材料を認識するだろう。本発明は、記載された方法及び材料に限定されるものでは決してない。援用される文献、特許及び類似の資料の内の1つ又は複数が、定義した用語、用語の使用、記載した技術等を含むがこれらに限定されない本願と異なる又は矛盾する場合、本願が優先される。
【0073】
定義
単語「含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(include)」、及び「含んでいる(including)」は本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、述べた特徴、整数、成分又は工程の存在を特定することを意図するが、これらは、1つ又は複数の他の特徴、整数、成分、工程又はそれらの群の存在又は追加を除外しない。
【0074】
用語「処置する(treat)」及び「処置(treatment)」は、治療的処置と予防的(prophylactic)手段又は予防的(preventative)手段との両方を指し、その目的は、癌の増殖、発症若しくは拡散等の望ましくない生理学的変化又は障害を予防する又は遅延させる(緩和する)ことである。本発明の目的のために、有益な又は所望の臨床結果には、検出可能又は検出不能にかかわらず、症状の緩和、疾患の程度の縮小、病態の安定化(即ち悪化させない)、疾患の進行の遅延(delay)又は遅延(slowing)、病態の改善又は緩和、及び寛解(部分的又は全体的)が含まれるがこれらに限定されない。「処置」はまた、処置を受けない場合に予測される生存期間と比較して生存期間が延びることも意味する。処置を必要とするものには、既にその状態若しくは障害を患うものだけでなく、その状態若しくは障害を有する傾向があるもの、又はその状態若しくは障害を予防すべきであるものが含まれる。
【0075】
語句「治療上有効な量」は、本明細書に記載の、(i)特定の疾患、状態若しくは障害を処置する、(ii)特定の疾患、状態若しくは障害の1つ若しくは複数の症状を軽減する、改善する若しくは除去する、又は(iii)特定の疾患、状態若しくは障害の1つ若しくは複数の症状の発症を予防する若しくは遅延させる、本発明の化合物の量を意味する。癌の場合、治療上有効な量の薬剤は、癌細胞の数を減少させることができ;腫瘍サイズを縮小させることができ;癌細胞の末梢器官への浸潤を阻害すること(即ち、ある程度遅延させること、好ましくは停止させること)ができ;腫瘍転移を阻害すること(即ち、ある程度遅延させること、好ましくは停止させること)ができ;ある程度、腫瘍増殖を阻害することができ;及び/又は癌に関連する1つ若しくは複数の症状をある程度緩和することがでる。薬剤が生存する癌細胞の増殖を予防する及び/又は生存する癌細胞を死滅させることができる範囲で、薬剤は、細胞増殖抑制性及び/又は細胞傷害性であることができる。癌治療の場合、例えば疾患の進行時間(TTP)を評価することより、及び/又は反応速度(RR)を決定することにより、有効性を測定することができる。
【0076】
用語「検出」には、直接的検出及び間接的検出を含む任意の検出手段が含まれる。
【0077】
用語「診断」は本明細書において、分子状態若しくは病的状態、疾患又は状態の同定又は分類を指すために使用される。例えば、「診断」は特定の種類の癌の同定、例えば肺癌の同定を指すことができる。「診断」はまた、例えば組織学的による(例えば非小細胞肺癌腫)、分子の特徴による(例えば特定の遺伝子若しくはタンパク質におけるヌクレオチド及び/若しくはアミノ酸の多様性を特徴とする肺癌)又はその両方による、特定の種類の癌の分類を指すこともできる。
【0078】
用語「予後」は本明細書において、癌等の腫瘍性疾患の例えば再発、転移拡散及び薬剤耐性を含む癌に起因する死又は進行の可能性の予測を指すために使用される。
【0079】
用語「予測」(及び予測する等のバリエーション)は本明細書において、患者がある薬剤又は薬剤のセットに対して有利に又は不利に反応するであろう可能性を指すために使用される。一実施態様では、予測は、これらの反応の程度に関する。別の実施態様では、予測は、処置後に、例えば特定の療法剤による処置及び/若しくは原発性腫瘍の外科的切除後に、並びに/又は癌が再発することなくある期間にわたる化学治療後に、患者が生存するであろうかどうか及び/又はその可能性に関する。任意の特定の患者に関しては、本発明の予測方法を臨床的に使用して、最も適切な処置様式を選択することにより処置の決断を行なうことができる。本発明の予測方法は、患者が、例えば所定の療法剤又は組み合わせの投与、外科的介入、化学治療等を含む所定の治療レジメン等の処置レジメンに対して有利に反応する可能性があるかどうか、又は治療レジメン後に患者の長期生存の可能性があるかどうかの予測における価値あるツールである。
【0080】
特定の療法剤又は処置の選択肢に対する用語「耐性の増加」は、本発明に従って使用する場合、薬剤の標準的な用量に対する又は標準的な処置プロトコルに対する反応性の低下を意味する。
【0081】
特定の療法剤又は処置の選択肢に対する用語「感受性の低下」は、本発明に従って使用する場合、薬剤の標準的な用量に対する又は標準的な処置プロトコルに対する反応性の低下を意味し、反応性の低下を薬剤の用量の増加により又は強度5の処置により(少なくとも部分的に)補うことができる。
【0082】
「患者反応」を、(1)遅延若しくは完全な増殖の停止を含む、腫瘍増殖のある程度までの阻害;(2)腫瘍細胞の数の減少;(3)腫瘍サイズの縮小;(4)隣接する末梢器官及び/若しくは末梢組織への腫瘍細胞の浸潤の阻害(例えば減少、遅延若しくは完全な停止);(5)転移の阻害(例えば減少、遅延若しくは完全な停止);(6)腫瘍の退縮若しくは除去をもたらすことができるがもたらさなくてもよい抗腫瘍免疫反応の増強;(7)腫瘍に関連する1つ若しくは複数の症状のある程度までの軽減;(8)処置後の生存期間の長さの増加;並びに/又は(9)処置後の所定の時点での死亡率の減少を含むがこれらに限定されない患者に対する利益を示す任意のエンドポイントを使用して評価することができる。
【0083】
「バイオマーカー」は、正常な生物学的過程、発病過程又は治療介入に対する薬理学的反応の指標として客観的に測定される及び評価されることを特徴とする。バイオマーカーは、いくつかの種類、即ち予測的、予後的又は薬力学的(PD)であることができる。予測的バイオマーカーにより、どの患者が特定の治療に反応する又は該治療の利益を受ける可能性があることが予測される。予後的バイオマーカーにより、患者の疾患の起こりうる経過が予測され、処置が導かれ得る。薬力学的バイオマーカーにより、薬剤活性が確認され、用量及び投与スケジュールの最適化が可能になる。
【0084】
PIK3CA変異又はPIK3CA変異のセットを含む、バイオマーカーの状態の「変化」又は「モジュレーション」は、それがインビトロ又はインビボで起こる場合、(1)生体試料のゲノムDNA又は逆転写PCR産物をシークエンシングすること(これにより1種又は複数種の変異が検出される);(2)メッセージレベルの定量化により又はコピー数の評価により遺伝子発現レベルを評価すること;及び(3)免疫組織化学、免疫細胞化学、ELISA、又は質量分析によるタンパク質の分析(これによりタンパク質の分解、安定化、又はリン酸化若しくはユビキチン化等の翻訳後修飾が検出される)を含む、薬力学(PD)の確立に一般に用いられる1つ又は複数の方法を使用する生体試料の分析により検出される。
【0085】
用語「癌」及び「癌性」は、典型的には未制御の細胞増殖を特徴とする哺乳動物における生理学的状態を指す、又は説明する。「腫瘍」は1つ又は複数の癌細胞を含む。癌の例には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病又はリンパ性悪性疾患が含まれるがこれらに限定されない。そのような癌のより具体的な例には、扁平上皮細胞癌(例えば上皮扁平上皮細胞癌)、小細胞肺癌、非小細胞肺癌(「NSCLC」)、肺腺癌及び肺の扁平上皮癌腫を含む肺癌、腹膜癌、肝細胞癌、消化管癌を含む胃癌(gastric or stomach cancer)、膵臓癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌又は子宮癌腫、唾液腺癌腫、腎臓癌又は腎癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌腫、肛門癌腫、陰茎癌腫、並びに頭頸部癌が含まれる。胃癌(Gastric cancer)は本明細書で使用する場合、胃癌(stomach cancer)を含み、胃の任意の部分で発症する可能性があり、並びに胃の全体にわたって及び他の器官に、特に食道、肺、リンパ節及び肝臓に拡散する可能性がある。
【0086】
用語「造血器腫瘍」は、白血球、リンパ球、ナチュラルキラー細胞、形質細胞、並びに好中球及び単球等の骨髄性細胞等の細胞を含む造血中に生じる癌又は過剰増殖性障害を指す。造血器腫瘍には、非ホジキンリンパ腫、びまん性大型造血リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、慢性のリンパ性白血病、多発性骨髄腫、急性の骨髄性白血病、及び骨髄球性白血病が含まれる。リンパ性(又は「リンパ芽球性」)白血病には、急性のリンパ芽球性白血病(ALL)及び慢性のリンパ性白血病(CLL)が含まれる。骨髄性(又は「骨髄球性」若しくは「非リンパ性」)白血病には、急性の骨髄性(又は骨髄芽球性)白血病(AML)及び慢性の骨髄性白血病(CML)が含まれる。
【0087】
「化学療法剤」は、作用機序にかかわらず、癌の処置に有用である生物学的な(大分子の)又は化学的な(小分子の)化合物である。
【0088】
用語「哺乳動物」にはヒト、マウス、ラット、モルモット、サル、イヌ、ネコ、ウマ、雌ウシ、ブタ、及びヒツジが含まれるがこれらに限定されない。
【0089】
用語「パッケージ挿入物」は、治療用製品の市販のパッケージに習慣的に含まれる説明書を指すために使用され、そのような治療用製品の使用に関する指示、用法、投薬量、投与法、禁忌及び/又は警告についての情報が含有される。
【0090】
用語「薬学的に許容可能な塩」は本明細書で使用する場合、本発明の化合物の薬学的に許容可能な有機塩又は無機塩を指す。例示的な塩には、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩「メシレート」、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩及びパモ酸塩(即ち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸塩))が含まれるがこれらに限定されない。薬学的に許容可能な塩は、酢酸イオン、コハク酸イオン又は他の対イオン等の別の分子の介在を含むことができる。対イオンは、親化合物上の電荷を安定化させる任意の有機部分又は無機部分であることができる。更に、薬学的に許容可能な塩は、その構造中に複数の荷電原子を有することができる。複数の荷電原子が薬学的に許容可能な塩の一部である場合、薬学的に許容可能な塩は複数の対イオンを有することができる。従って、薬学的に許容可能な塩は、1つ若しくは複数の荷電原子及び/又は1つ若しくは複数の対イオンを有することができる。
【0091】
所望の薬学的に許容可能な塩を、当分野で利用可能な任意の適切な方法により調製することができる。例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、リン酸等の無機酸による、又は酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、ピラノシジル酸、例えばグルクロン酸若しくはガラクツロン酸、アルファヒドロキシ酸、例えばクエン酸若しくは酒石酸、アミノ酸、例えばアスパラギン酸若しくはグルタミン酸、芳香族酸、例えば安息香酸若しくはケイ皮酸、スルホン酸、例えばp−トルエンスルホン酸若しくはエタンスルホン酸等の有機酸による、遊離塩基の処理。塩基性の薬学的化合物からの薬学的に有用な又は許容可能な塩の形成に適切であると一般に考えられている酸が、例えばP.Stahl等、Camille G.(編)Handbook of Pharmaceutical Salts.Properties,Selection and Use.(2002)Zurich:Wiley−VCH;S.Berge等、Journal of Pharmaceutical Sciences(1977)66(1)1 19;P.Gould,International J.of Pharmaceutics(1986)33 201 217;Anderson等、The Practice of Medicinal Chemistry(1996),Academic Press,New York;Remington’s Pharmaceutical Sciences,18
thed、(1995)Mack Publishing Co.,Easton PAにより論じられており、及びOrange Book(Food&Drug Administration,Washington,D.C.ウェブサイト上)において論じられている。これらの開示は、出典明示により本明細書に援用される。
【0092】
語句「薬学的に許容可能な」は、物質又は組成物が、製剤を含む他の成分及び/又は該成分により処置される哺乳動物と化学的に及び/又は毒性学的に適合する必要があることを示す。
【0093】
用語「相乗的」は本明細書で使用する場合、2種以上の単剤の相加効果よりも有効である治療用組み合わせを指す。GDC−0032又はその薬学的に許容可能な塩である化合物と1種又は複数種の化学療法剤との間の相乗的相互作用の決定は、本明細書に記載したアッセイから得た結果に基づくことができる。これらのアッセイの結果をChou及びTalaly組み合わせ方法及びCalcuSynソフトウェアによる用量効果分析を使用して分析し、組み合わせ指数を得ることができる(Chou及びTalalay, 1984, Adv. Enzyme Regul. 22:27-55)。本発明により提供される組み合わせがいくつかのアッセイシステムにおいて評価されており、抗癌剤間の相乗作用、相加性、及び拮抗作用の定量化のための標準的なプログラムを利用してデータを分析することができる。例えば
図10で利用するプログラムは、「New Avenues in Developmental Cancer Chemotherapy」、Academic Press,1987,Chapter2においてChou及びTalalayにより説明されている。0.8未満の組み合わせ指数値は相乗作用を示し、1.2よりも高い値は拮抗作用を示し、0.8から1.2の値は相加効果を示す。組み合わせ治療は「相乗作用」をもたらすことができ、及び「相乗的」であることを証明することができ、即ち、その効果は、一緒に使用する活性成分が化合物の別々の使用により得られる結果の合計よりも大きい場合に実現される。相乗効果は、活性成分が(1)共製剤化されて投与される、若しくは組み合わされて同時に送達される単位投薬製剤である場合に;(2)別々の製剤として交互に若しくは並行して送達される場合に;又は(3)いくつかの他のレジメンによって、実現され得る。交互の治療において送達される場合、相乗効果は、化合物が例えば別々のシリンジにおける異なる注射剤、又は別々の丸剤若しくは錠剤により順次に投与される又は送達される場合に実現され得る。一般に、交互の治療中に有効投薬量の各活性成分は、順次に、即ち連続して投与されるが、組み合わせ治療では、有効投薬量の2種以上の活性成分が一緒に投与される。組み合わせ効果を、BLISS独立モデル及び最高単剤(HSA)モデルの両方を用いて評価した(Lehar等、2007, Molecular Systems Biology 3:80)。BLISSスコアは単剤からの増強の程度を定量化し、BLISSスコア>0は、単純な相加よりも大きいことを示唆する。HSAスコア>0は、対応する濃度で単剤応答の最大値よりも大きい組み合わせ効果を示唆する。
【0094】
「ELISA」(酵素連結免疫吸着アッセイ)は、液体試料又はウェット試料中に存在する物質を検出するために不均一固相酵素免疫アッセイ(EIA)の1つのサブタイプを使用する一般的なフォーマットの「ウェットラボ」タイプの分析的生化学アッセイである(Engvall E, Perlman P (1971). "Enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA). Quantitative assay of immunoglobulin G". Immunochemistry 8 (9): 871-4;Van Weemen BK, Schuurs AH (1971). "Immunoassay using antigen-enzyme conjugates". FEBS Letters 15 (3): 232-236)。ELISAは、厳密な「免疫」アッセイの代わりに他の形態のリガンド結合アッセイを実施することができるが、この方法の一般的な使用及び開発の歴史に起因して、その名称には元々の「免疫」が付されている。本技術には、適切に定量化され得るシグナルを生成するために、酵素に特異的に結合して該酵素を使用することができる検出試薬と共に、固相上に固定化され得る任意の結合試薬が本質的に必要である。洗浄の間では、リガンドとその特異的結合対応物のみが抗原−抗体相互作用により固相に特異的に結合し続ける又は「免疫吸着」し続けるが、非特異的な又は非結合の成分は洗い流される。同じ反応ウェル(例えばキュベット)を洗浄後に再利用することができる他の分光光度的なウェットラボアッセイフォーマットとは異なり、ELISAプレートは該プレートの一部である固相上に免疫吸着した反応生成物を有し、そのため、ELISAプレートを容易に再利用することができない。ELISAの実施には、特定の抗原に対する特異性を有する少なくとも1種の抗体が必要である。未知の量の抗原を有する試料を、非特異的に(表面への吸着により)又は特異的に(「サンドイッチ」ELISAにおいて、同じ抗原に特異的な別の抗体による捕捉により)固相支持体(通常はポリスチレンマイクロタイタープレート)上に固定化する。抗原を固定化した後、検出抗体を添加して抗原との複合体を形成する。検出抗体を酵素に対して共有結合的に連結させることができ、又はバイオコンジュゲートを介して酵素に連結される二次抗体で検出抗体自体を検出することができる。各工程の間にプレートを典型的には中性洗剤溶液で洗浄し、特異的に結合していない任意のタンパク質又は抗体を除去する。最終洗浄工程後に、酵素基質を添加することによりプレートを現像して可視的シグナルを作成する、該可視的シグナルは試料中の抗原の量を示す。
【0095】
「免疫組織化学」(IHC)は、生体組織中において抗原に特異的に結合する抗体の原理を利用することによる、組織切片の細胞における抗原(例えばタンパク質)の検出方法を指す。免疫組織化学的染色が、癌性腫瘍で見出されるもの等の異常細胞の診断で広く使用される。特異的分子マーカーは、増殖又は細胞死(アポトーシス)等の特定の細胞的事象を特徴とする。IHCはまた、バイオマーカー及び生体組織の異なる部位で差次的に発現されるタンパク質の分布及び局在化を理解するために広く使用される。抗体−抗原相互作用の可視化を様々な方法で実現することができる。最も一般的な例では、抗体をペルオキシダーゼ等の酵素にコンジュゲートさせ、このことにより発色反応を触媒することができる(免疫組織化学的染色を参照)。あるいは、抗体に、フルオレセイン又はローダミン等の蛍光色素分子を標識付けることもできる(免疫蛍光を参照)。
【0096】
「免疫細胞化学」(ICC)は、特異的エピトープにより細胞における特異的なペプチド抗原又はタンパク質抗原を標的とする抗体を使用する一般的な実験室技術である。特異的なペプチド抗原又はタンパク質抗原が結合した抗体を、次に、いくつかの異なる方法を使用して検出することができる。ICCにより、特定の試料における細胞が問題の抗原を発現するかどかを評価することができる。免疫陽性シグナルが見られる場合、ICCにより、どの細胞内区画が抗原を発現しているかも決定される。
【0097】
例示的実施態様の詳細な説明
GDC−0032の調製
本発明の化合物はGDC−0032(CAS登録番号1282512−48−4)として知られ、2−(4−(2−(1−イソプロピル−3−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)−2−メチルプロパンアミドと命名され、立体異性体、幾何異性体、互変異性体及びそれらの薬学的に許容可能な塩を含む構造:
を有する。
【0098】
GDC−0032を、国際公開第2011/036280号、米国特許8242104号及び米国特許8343955号に記載されているように、又は以下の実施例1に記載されているように、調製する及び特徴付けることができる。
【0099】
化学療法剤
ある種の化学療法剤は、インビトロ及びインビボでの細胞増殖の阻害において、GDC−0032との組み合わせで驚くべき及び予期しない特性を示している。そのような化学療法剤には、5−FU、ドセタキセル、エリブリン、ゲムシタビン、GDC−0973、GDC−0623、パクリタキセル、タモキシフェン、フルベストラント、デキサメタゾン、ペルツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、トラスツズマブ及びレトロゾールが含まれる。
【0100】
5−FU(フルオロウラシル、5−フルオロウラシル、CAS登録番号51−21−8)はチミジル酸合成酵素阻害剤であり、結腸直腸癌及び膵臓癌を含む癌の処置で何10年にもわたり使用されている(米国特許2802005号;米国特許2885396号;Duschinsky等(1957) J. Am. chem. Soc. 79:4559;Hansen, R.M. (1991) Cancer Invest. 9:637-642)。5−FUは5−フルオロ−1H−ピリミジン−2,4−ジオンと命名され、構造:
を有する。
【0101】
ドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Sanofi−Aventis)は、乳癌、卵巣癌及びNSCLC癌の処置に使用される(米国特許4814470号;米国特許5438072号;米国特許5698582号;米国特許5714512号;米国特許5750561号;Mangatal等(1989) Tetrahedron 45:4177;Ringel等(1991) J. Natl. Cancer Inst. 83:288;Bissery等(1991) Cancer Res. 51:4845;Herbst等(2003) Cancer Treat. Rev. 29:407-415;Davies等(2003) Expert. Opin. Pharmacother. 4:553-565)。ドセタキセルは、5,20−エポキシ−1,2,4,7,10,13−ヘキサヒドロキシタキサ−11−エン−9−オン4−アセテート2−ベンゾエート三水和物を有する(2R,3S)−N−カルボキシ−3−フェニルイソセリン,N−tert−ブチルエステル,13−エステル(米国特許4814470号;欧州特許253738号;CAS登録番号114977−28−5)と命名され、構造:
を有する。
【0102】
エリブリン(HALAVEN(登録商標)、Eisai co.、E7389、ER−086526、NSC707389(NS NCI名称))は、末期の乳癌用の少なくとも2種の前化学治療レジメンを受けた転移性乳癌を患う患者の処置用に承認されており、非小細胞肺癌(NSCLC)、前立腺癌及び肉腫を含む他の固形腫瘍の処置用に研究されている。エリブリンは、ハリコンドリア(Halichondria)属の海綿動物(Hirata, Y.及びUemura D. (1986) Pure Appl. Chem. 58(5):701-710;Bai等(1991) J. Biol. Chem. 266(24):15882-15889)由来の海洋性海綿動物の天然物ハリコンドリンB(Towle等 (2001) Cancer Res. 61(3):1013-1021;Yu等(2005) Anticancer agents from natural products. Wash. DC, Taylor & Francis, ISBN 0-8493-1863-7; Kim等(2009) J. Am. Chem. Soc 131(43):15636-15641)の類似体である。エリブリンは、既存の微小管のプラス端における高親和性部位の選択群に主に結合する、微小管の阻害剤であり、長期的で不可逆的な有糸分裂の遮断後に癌細胞のアポトーシスを引き起こすことにより抗癌効果を発揮する(Jordan等(2005) Mol. Cancer Ther. 4(7):1086-1095;Okouneva等(2008) Mol. Cancer Ther. 7(7):2003-2011;Smith等(2010) Biochem. 49(6)1331-1337;Kuznetsov等(2004) Cancer Res. 64(16):5760-5766;Towle等(2011 Cancer Res. 71(2):496-505)。エリブリンは2−(3−アミノ−2−ヒドロキシプロピル)ヘキサコサヒドロ−3−メトキシ−26−メチル−20,27−ビス(メチレン)11,15−18,21−24,28−トリエポキシ−7,9−エタノ−12,15−メタノ−9H,15H−フロ(3,2−i)フロ(2’,3’−5,6)ピラノ(4,3−b)(1,4)ジオキサシクロペンタコシン−5−(4H)−オン(CAS登録番号253128−41−5)と命名され、構造:

を有する。
【0103】
ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標)、Lilly、CAS登録番号95058−81−4)は、膵臓、乳房、NSCLC及びリンパ腫を含む様々な癌腫を処置するために使用される、DNA複製を遮断するヌクレオシド類似体である(米国特許4808614号;米国特許5464826号;Hertel等(1988) J. Org. Chem. 53:2406;Hertel等(1990) Cancer Res. 50:4417;Lund等(1993) Cancer Treat. Rev. 19:45-55)。ゲムシタビンは4−アミノ−1−[3,3−ジフルオロ−4−ヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル]−1H−ピリミジン−2−オンと命名され、構造:
を有する。
【0104】
GDC−0973(XL−518、CAS登録番号:934660−93−2、Genentech Inc.及びExelixis)は、固形腫瘍を含む癌の潜在的処置用の、経口投与される、MEKの強力で高選択的な小分子阻害剤である(米国特許7803839号;米国特許7999006号;米国特許7915250号)。クラスIのPI3K阻害剤であるGDC−0973及びGDC−0941は、単剤として及び組み合わせの両方の初期段階の臨床試験にある(Hoeflich等(2012) Cancer Research, 72(1):210-219;米国特許出願第2011/0086837号)。ERK経路の異常活性がヒト腫瘍において共通している。この経路は、キナーゼRAF、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)キナーゼ(MEK)、並びに経路出力の頑健性及び安定化を付与するためのネガティブフィードバックの増幅器として機能する細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)を含む3段のキナーゼモジュールから成る。ERK経路はヒト癌において調節不全であることが多いことから、抗癌剤としてERK経路の選択的阻害剤を開発するために大きな努力が払われている。GDC−0973とPI3K阻害剤GDC−0941との組み合わせにより、Bcl−2ファミリーのアポトーシス促進性制御因子を含むアポトーシスと関連するバイオマーカーの誘導によりインビトロ及びインビボで組み合わせ効果が生じた。GDC−0973は(S)−(3,4−ジフルオロ−2−((2−フルオロ−4−ヨードフェニル)アミノ)フェニル)(3−ヒドロキシ−3−(ピペリジン−2−イル)アゼチジン−1−イル)メタノンと命名され、構造:
を有する。
【0105】
GDC−0623(CAS登録番号:1168091−68−6、Genentech Inc.)は、固形腫瘍を含む癌の潜在的処置用の経口投与されるMEKの強力で高選択的な小分子阻害剤である(米国特許7923456号;米国特許出願第2011/0158990号)。GDC−0623は5−((2−フルオロ−4−ヨードフェニル)アミノ)−N−(2−ヒドロキシエトキシ)イミダゾ[1,5−a]ピリジン−6−カルボキサミドと命名され、構造:
を有する。
【0106】
パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol−Myers Squibb Oncology、Princeton NJ、CAS登録番号33069−62−4)は、太平洋イチイ、即ちセイヨウイチイ(Taxus brevifolia)の樹皮から単離された化合物であり、肺、卵巣、乳癌、及び進行性カポジ肉腫の処置に使用される(Wani等(1971) J. Am. Chem. Soc. 93:2325;Mekhail等(2002) Expert. Opin. Pharmacother. 3:755-766)。パクリタキセルはβ−(ベンゾイルアミノ)−α−ヒドロキシ−,6,12b−ビス(アセチルオキシ)−12−(ベンゾイルオキシ)−2a,3,4,4a,5,6,9,10,11,12,12a,12b−ドデカヒドロ−4,11−ジヒドロキシ−4a,8,13,13−テトラメチル−5−オキソ−7,11−メタノ−1H−シクロデカ(3,4)ベンズ(1,2−b)オキシエト−9−イルエステル、(2aR−(2a−α,4−β,4a−β,6−β,9−α(α−R
*,β−S
*),11−α,12−α,12a−α,2b−α))−ベンゼンプロパン酸と命名され、構造:
を有する。
【0107】
タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)、ISTUBAL(登録商標)、VALODEX(登録商標)、CAS登録番号10540−29−1)は、その活性代謝物であるヒドロキシタモキシフェンによる、乳房組織におけるエストロゲンレセプターのアンタゴニストである。子宮内膜等の他の組織ではタモキシフェンはアゴニストのように振る舞い、そのため混合アゴニスト/アンタゴニストとして特徴付けられ得る(New Engl. J. Med. (2009) 361:766 Aug. 20, 2009)。タモキシフェンは、閉経前の女性におけるホルモンレセプター陽性乳癌の通常の内分泌(抗エストロゲン)治療であり、閉経後の女性においても標準的ではあるが、この設定ではアロマターゼ阻害剤が使用されることも多い。タモキシフェンは現在、閉経前の女性及び閉経後の女性において早期の及び進行性の両方のER+(エストロゲンレセプター陽性)乳癌の処置に使用される(Jordan, V. (1993) Br J Pharmacol 110(2): 507-17)。タモキシフェンは(Z)−2−[4−(1,2−ジフェニルブト−1−エニル)フェノキシ]−N,N−ジメチルエタンアミンと命名され、構造:
を有する。
【0108】
フルベストラント(FASLODEX(登録商標)、AstraZeneca、CAS登録番号129453−61−8)は、抗エストロゲン治療後に疾患が進行している閉経後の女性におけるホルモンレセプター陽性の転移性乳癌の薬剤処置である(Kansra (2005) Mol Cell Endocrinol 239(1-2):27-36)。フルベストラントは、アゴニスト効果を有しないエストロゲンレセプターアンタゴニストであり、エストロゲンレセプターを下方制御すること及び分解させることの両方によって作用する(Croxtall (2011) Drugs 71(3):363-380)。フルベストラントは、選択的エストロゲンレセプターダウンレギュレーター(SERD)である。フルベストラントは、抗エストロゲン治療後に疾患が進行している閉経後の女性においてホルモンレセプター陽性の転移性乳癌の処置で必要とされる(Flemming等(2009) Breast cancer Res Treat. May;115(2):255-68;Valachis等(2010) Crit Rev Oncol Hematol. Mar;73(3):220-7)。フルベストラントは(7α,17β)−7−{9−[(4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンチル)スルフィニル]ノニル}エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17−ジオールと命名され、構造:
を有する。
【0109】
デキサメタゾンは、抗炎症性及び免疫抑制活性を有する強力なグルココルチコイドステロイドホルモンである。腫瘍学では、デキサメタゾンは化学治療中の癌患者に与えられ、この抗腫瘍処置のある種の副作用が抑えられる。デキサメタゾンは、オンダンセトロンのような5−HT
3レセプターアンタゴニストの鎮吐作用を増大させる可能性がある。デキサメタゾンはまた、デキサメタゾンが単独で又はサリドマイド(thal−dex)若しくはアドリアマイシン(ドキソルビシン)とビンクリスチン(VAD)との組み合わせと一緒に与えられるある種の血液系腫瘍でも使用され、特に多発性骨髄腫の処置でも使用される。脳腫瘍(原発性又は転移性)では、デキサメタゾンは浮腫の発生を抑えるために使用され、浮腫は他の脳構造を最終的には圧迫する可能性がある。デキサメタゾンは(8S,9R,10S,11S,13S,14S,16R,17R)−9−フルオロ−11,17−ジヒドロキシ−17−(2−ヒドロキシアセチル)−10,13,16−トリメチル−6,7,8,11,12,14,15,16−オクタヒドロシクロペンタ[a]フェナントレン3−オン(CAS登録番号50−02−2)と命名され、構造:
を有する。
【0110】
ペルツズマブ(OMNITARG(登録商標)、2C4、rhuHAb 2C4、CAS登録番号380610−27−5、Genentech)は、HER2の二量体化を阻害する組み換え型のヒト化モノクローナル抗体である。(米国特許6054297号;米国特許6407213号;米国特許6800738号;米国特許6627196号、米国特許6949245号;米国特許7041292号)。ペルツズマブ及びトラスツズマブは、HER−2チロシンキナーゼレセプターの様々な細胞外領域を標的にする(Nahta等(2004) Cancer Res. 64:2343-2346)。ハイブリドーマ細胞株発現2C4(ペルツズマブ)は、1999年4月8日にATCC HB−12697としてアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)、10801ユニバーシティブールバード、マナッサス、バージニア州20110−2209、米国に寄託された。ペルツズマブは、他のHERレセプターファミリ−メンバー、即ちHER1/EGFR、HER3及びHER4と協同するHER2レセプターの能力を遮断する(Agus等(2002) Cancer Cell 2:127-37;Jackson等(2004) Cancer Res 64:2601-9:Takai等(2005) Cancer 104:2701-8;米国特許6949245号)。癌細胞では、他のHERファミリーレセプターと協同するHER2の能力を妨げることにより細胞シグナル伝達が遮断され、最終的には癌細胞増殖の阻害及び癌細胞の死滅がもたらされ得る。HDIは、その独特な作用機序により、HER2を過剰発現しないものを含む多種多様な腫瘍で作用する可能性を有する(Mullen等(2007) Molecular Cancer Therapeutics 6:93-100)。ペルツズマブは、転移性のHER2陽性(+)乳癌の処置用に開発されている。
【0111】
トラスツズマブエムタンシン(KADCYLA(商標)、トラスツズマブ−DM1、PR−132365、PRO−132365;R−3502、RG−3502;Tmab−MCC−DM1、トラスツズマブ−メルタンシン トラスツズマブ−MCC−DM1、T−DM1、Genentech Inc.)は、HER2陽性(HER2+)の転移性乳癌の処置用として承認された抗体−薬剤複合体(CAS登録番号139504−50−0)である(Burris等(2011) Clinical Breast cancer, 11(5):275-82;Phillips等(2008) Cancer Res 2008; 68(22):9280-9290)。トラスツズマブエムタンシンは構造:
(ここで、Trは、リンカー部分MCCを介してマイタンシノイド薬剤部分DM1に連結されているトラスツズマブである(米国特許5208020号;米国特許6441163号))を有する。トラスツズマブ−MCC−DM1の上記構造において、薬剤と抗体との比又は薬剤負荷がpで表され、1から約8の整数値の範囲である。薬剤負荷値pは1から8である。トラスツズマブ−MCC−DM1は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個及び8個の薬剤部分が抗体であるトラスツズマブに共有結合的に付加されている、様々に負荷された及び付加された抗体−薬剤複合体の全ての混合物を含む(米国特許7097840号;米国特許出願第2005/0276812号;米国特許出願第2005/0166993号)。
【0112】
トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、huMAb4D5−8、rhuMAb HER2、Genentech)は、ヒト表皮増殖因子レセプター2タンパク質であるHER2(ErbB2)の細胞外ドメインに、細胞ベースアッセイ(Kd=5nM)において高親和性で選択的に結合するマウスHER2抗体の組み換えDNA由来のヒト化IgG1カッパモノクローナル抗体バージョンである(米国特許5821337号;米国特許6054297号;米国特許6407213号;米国特許S6639055;Coussens L等(1985) Science 230:1132-9;Slamon DJ等(1989) Science 244:707-12)。トラスツズマブは、HER2に結合するマウス抗体(4D5)の相補性決定領域を有するヒトフレームワーク領域を含有する。トラスツズマブはHER2抗原に結合し、そのため癌細胞の増殖を阻害する。トラスツズマブはインビトロアッセイ及び動物中の両方において、HER2を過剰発現するヒト腫瘍細胞の増殖を阻害することが示されている(Hudziak RM等(1989) Mol Cell Biol 9:1165-72; Lewis GD等(1993) Cancer Immunol Immunother; 37:255-63;Baselga J等(1998) Cancer Res. 58:2825-2831)。トラスツズマブは、抗体依存性細胞障害であるADCCの媒介物質である(Hotaling TE等(1996) [abstract]. Proc. Annual Meeting Am Assoc Cancer Res; 37:471;Pegram MD等(1997) [abstract]. Proc Am Assoc Cancer Res; 38:602;Sliwkowski等(1999) Seminars in Oncology 26(4), Suppl 12:60-70;Yarden Y.及びSliwkowski, M. (2001) Nature Reviews: Molecular Cell Biology, Macmillan Magazines, Ltd., Vol. 2:127-137)。HERCEPTIN(登録商標)は、ErbB2を過剰発現する転移性乳癌を患う患者の処置用に1998年に承認された(Baselga等(1996) J. Clin. Oncol. 14:737-744)。FDAは、HER2陽性でリンパ節転移陽性の乳癌を患う患者のアジュバント処置用の、ドキソルビシン、シクロホスファミド及びパクリタキセルを含有する処置レジメンの一部として2006年にHERCEPTIN(登録商標)を承認した。HER2を過剰発現する腫瘍、又はHERCEPTIN(登録商標)処置に対して反応しない若しくはほとんど反応しないHER2発現に関連する他の疾患を患う患者のための更なるHER2指向性癌治療を開発することが臨床的に著しく必要とされている。
【0113】
レトロゾール(FEMARA(登録商標)、Novartis Pharm.)は、手術後のホルモン反応性乳癌の治療用の経口非ステロイドアロマターゼ阻害剤である(Bhatnagar等(1990) J. Steroid Biochem. and Mol. Biol. 37:1021;Lipton等(1995) Cancer 75:2132;Goss, P.E.及びSmith, R.E. (2002) Expert Rev. Anticancer Ther. 2:249-260;Lang等(1993) The Journal of Steroid Biochem. and Mol. Biol. 44 (4-6):421-8;欧州特許236940号;米国特許4978672号)。FEMARA(登録商標)は、ホルモンレセプター陽性(HR+)である又は閉経後の女性において未知のレセプターの状態を有する局所の又は転移性の乳癌の処置用にFDAにより承認されている。レトロゾールは4,4’−((1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチレン)ジベンゾニトリル(CAS登録番号112809−51−5)と命名され、構造:
を有する。
【0114】
カルボプラチン(CAS登録番号41575−94−4)は、卵巣癌腫、肺癌、頭頸部癌に対して使用される化学療法剤である(米国特許4140707号)。カルボプラチンはアザニド;シクロブタン−1,1−ジカルボン酸白金と命名され、構造:
を有する。
【0115】
ベバシズマブ(CAS登録番号216974−75−3、AVASTIN(登録商標)、Genentech)は、癌の処置で使用される血管内皮細胞増殖因子に対する抗VEGFモノクローナル抗体であり(米国特許7227004号;米国特許6884879号;米国特許7060269号;米国特許7169901号;米国特許7297334号)、新たな血管の形成を遮断することにより細胞増殖を阻害する。ベバシズマブは、転移性結腸癌及び転移性非小細胞肺癌のほとんどの形態の処置における標準的な化学治療との組み合わせでの使用が2004年にFDAにより承認された米国において初めての臨床的に利用可能な血管新生阻害剤であった。ベバシズマブの安全性、並びにアジュバント/非転移性結腸癌、転移性乳癌、転移性腎細胞癌腫、転移性の多形性膠芽腫、転移性卵巣癌、転移性のホルモン不応性前立腺癌及び転移性の又は切除不能な局所進行性膵臓癌を患う患者に対する有効性を決定するために、いくつかの最終段階の臨床研究が進行中である。
【0116】
抗VEGF抗体は通常、VEGF−B又はVEGF−C等の他のVEGF相同体にもPIGF、PDGF又はbFGF等の他の増殖因子にも結合しないであろう。好ましい抗VEGF抗体には、ハイブリドーマATCC HB 10709により産生されるモノクローナル抗VEGF抗体A4.6.1と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体;ヒトVEGFの該ヒトVEGFレセプターへの結合を遮断するマウス抗hVEGFモノクローナル抗体A.4.6.1由来の変異型ヒトIgG1フレームワーク領域及び抗原結合相補性決定領域を含むベバシズマブを含むがそれに限定されない、Presta等(1997)Cancer Res.57:4593−4599に従って生成された組み換え型のヒト化抗VEGFモノクローナル抗体が含まれる。フレームワーク領域の大部分を含むベバシズマブのアミノ酸配列の約93%はヒトIgG1に由来し、該配列の約7%がマウス抗体A4.6.1に由来する。ベバシズマブは約149,000ダルトンの分子量を有し、グリコシル化されている。ベバシズマブ及び他のヒト化抗VEGF抗体は、米国特許6884879号に更に記載されている。国際公開第2005/012359号の
図27−29の内の何れか1つに記載されているように、更なる抗VEGF抗体にはG6シリーズ又はB20シリーズの抗体(例えばG6−31.B20−4.1)が含まれる。一実施態様では、B20シリーズの抗体は、残基F17、M18、D19、Y21、Y25、Q89、I91、K101、E103及びC104を含むヒトVEGF上の機能的なエピトープに結合する。A4.6.1(ATCC HB 10709)及びB2.6.2(ATCC HB 10710)抗VEGF発現ハイブリドーマ細胞株は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)、10801ユニバーシティブールバード、マナッサス、バージニア州20110−2209米国に寄託されて保存されている。B20−4.1.1はベバシズマブ代用物である(Liang等(2006) Jour. Biol. Chem. 281:951-961)。DNA29101−1276として同定されるATCC寄託物のヌクレオチド配列挿入によりコードされるVEGF−Eポリペプチドを発現するクローン(米国特許6391311号)が、アメリカンタイプカルチャーコレクション、10801ユニバーシティブールバード、マナッサス、バージニア州20110−2209、米国に1998年3月5日に寄託されてATCC209653として保存されている。
【0117】
生物学的評価
GDC−0032の生物活性を、単剤として、並びに小分子及び大分子(タンパク質、抗体)の両方を含む様々な化学療法剤との組み合わせで測定した。単剤としての及び組み合わせでのGDC−0032のそのような生物活性をPI3K阻害剤であるGDC0941及びGDC−0980と比較した、これらは両方とも癌の処置用にGenentechにより開発されている。
【0118】
GDC−0941(ピクトレリシブ、Genentech Inc.、Roche、RG−7321)は、PI3Kアイソフォームの強力な多標的化クラスI(パン)阻害剤である。GDC−0941は現在、進行性固形腫瘍の処置に関する第II相臨床試験中である。GDC−0941は4−(2−(1H−インダゾール−4−イル)−6−((4−(メチルスルホニル)ピペラジン−1−イル)メチル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−4−イル)モルホリン(米国特許7781433号;米国特許7750002号;Folkes等(2008) Jour. of Med. Chem. 51(18):5522-5532)と命名され、立体異性体、幾何異性体、互変異性体及びそれらの薬学的に許容可能な塩を含む構造:
GDC-0941
を有する。
【0119】
GDC−0980(Genentech Inc.、Roche、RG−7422)は、mTOR及びPI3Kの強力な二重阻害剤である(Wallin等(2011) Mol. Can. Ther. 10(12):2426-2436;Sutherlin等(2011) Jour. Med. Chem. 54:7579-7587)。GD−0980は、前臨床の異種移植片癌モデル;乳房、卵巣、肺及び前立腺において広範な活性を示し、固形腫瘍及び非ホジキンリンパ腫を含む癌の潜在的経口処置用に開発されている(Wagner AJ ; Burris III HA; de Bono JS等AACR-NCI-EORTC International Congress (2009), 21st:November 17 (Abs B137) “Pharmacokinetics and Pharmacodynamic biomarkers for the dual PI3K/mTOR inhibitor GDC-0980: initial phase I evaluation”;米国特許7888352号;米国特許出願第2009/0098135号;米国特許出願第2010/0233164号)。GDC−0980は現在、進行性固形腫瘍の処置に関する第II相臨床試験中である。GDC−0980は(S)−1−(4−((2−(2−アミノピリミジン−5−イル)−7−メチル−4−モルホリノチエノ[3,2−d]ピリミジン−6−イル)メチル)ピペラジン−1−イル)−2−ヒドロキシプロパン−1−オンと命名され、立体異性体、幾何異性体、互変異性体及びそれらの薬学的に許容可能な塩を含む構造:
GDC-0980
を有する。
【0120】
細胞の生存、増殖及び代謝に関する重要な媒介物質であるホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3K)シグナル伝達カスケードは、ヒト癌において頻繁に改変される。PI3Kのα−触媒サブユニットをコードする遺伝子であるPIK3CAにおける変異の活性化は乳癌の約30%で起こる。これらの変異により酵素の構成的な活性がもたらされ、これらの変異は癌遺伝子である。管腔乳房上皮における変異体PIK3CA H1047Rの発現により、管腔マーカー及び基底マーカーを発現する及びエストロゲンレセプターに関して陽性である異種腫瘍が誘起される。PIK3CA H1047R癌遺伝子は多能性前駆細胞を標的とし、PIK3CA H1047Rを有するヒト乳房腫瘍の特徴を再現する(Meyer等(2011). Cancer Res; 71(13):4344-51)。PI3Kのp110αサブユニットをコードする遺伝子であるPIK3CAにおける体細胞変異の結果として、PI3Kの過剰活性化が起こる可能性がある。HER2癌遺伝子は全乳癌の25%で増幅され、これらの腫瘍の内の一部はPIK3CA変異も持つ。PI3Kは、形質転換を増強する可能性があり、HER2指向性治療に対する耐性を付与する可能性がある。HER2も過剰発現するMCF10Aヒト乳房上皮細胞中にPI3K変異体E545K及びH1047Rを導入することにより、MCF10A/HER2細胞の機能が増加した。アロマターゼ発現MCF7細胞は、培養液中でアンドロステンジオンをエストロゲンに変換する。E545K PI3KではないH1047R PI3Kの発現により、HER3/HER4リガンドヘレグリン(HRG)が顕著に上方制御された(Chakrabarty等(2010) Oncogene 29(37):5193-5203)。
【0121】
GDC−0032単剤のインビトロ活性
単剤としてのGDC−0032の細胞傷害活性又は細胞増殖抑制活性を、細胞培養培地で増殖する哺乳動物の腫瘍細胞株を確立し、試験化合物を添加し、細胞を約6時間から約5日の期間にわたって培養すること;及び細胞生存率を測定することにより測定した(実施例3)。細胞ベースのインビトロアッセイを使用して生存率を、即ち増殖(IC
50)、細胞傷害性(EC
50)及びアポトーシスの誘導(カスパーゼ活性化)を測定した。
【0122】
GDC−0032のインビトロでの効力を、実施例3の細胞増殖アッセイ;Promega Corp.、マディソン、ウィスコンシン州から商業的に入手可能なCellTiter−Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイによって測定した。この均一アッセイ方法は、鞘翅目(Coleoptera)ルシフェラーゼの組み換え発現に基づいており(米国特許5583024号;米国特許5674713号;米国特許5700670号)、代謝的に活性な細胞の指標であるATPの存在の定量化に基づいて培養液における生細胞の数を決定する(Crouch等(1993) J. Immunol. Meth. 160:81-88;米国特許6602677号)。CellTiter−Glo(登録商標)アッセイを96ウェルフォーマット又は384ウェルフォーマットで実施し、自動化高スループットスクリーニング(HTS)に適応させた(Cree等(1995) AntiCancer Drugs 6:398-404)。均一アッセイの手順は、血清補充培地で培養した細胞に単一試薬(CellTiter−Glo(登録商標)試薬)を直接添加することを含む。細胞の洗浄工程、培地の除去工程及び複数回のピペット操作工程は必要ではない。本システムは、試薬の添加及び混合後10分での384ウェルフォーマットにおいてわずか15個の細胞/ウェルを検出する。
【0123】
均一な「添加混合測定」フォーマットにより、存在するATPの量に比例して細胞溶解及び発光シグナルの生成が得られる。ATPの量は、培養液中に存在する細胞の数に直接的に比例する。CellTiter-Glo(登録商標)アッセイにより、使用する細胞の種類及び培地に応じて一般に5時間よりも長い半減期を有する「グロータイプ」の発光シグナルが生成され、該発光シグナルはルシフェラーゼ反応によって生じる。生細胞は相対発光単位(RLU)に反映される。基質である甲虫ルシフェリンは、ATPからAMPへの転換及び光子の生成を伴って、組み換えホタルルシフェラーゼにより酸化的に脱カルボキシル化される。半減期の延長により、試薬注入器の使用の必要性が排除され、複数のプレートの連続的な又はバッチモードでの処理に柔軟性がもたらされる。この細胞増殖アッセイを、様々なマルチウェルフォーマットと共に使用することができ、例えば96ウェルフォーマット又は384ウェルフォーマットと共に使用することができる。データをルミノメーター又はCCDカメラ撮像装置により記録することができる。発光出力は、経時的に測定される相対光単位(RLU)として示される。
【0124】
比較するために、GDC−0032及びGDC−0941の抗増殖効果を、
図1−4及び表2における腫瘍細胞株に対するCellTiter−Glo(登録商標)アッセイ(実施例3)により測定した。実験のためにEC
50値を確立した。インビトロの細胞効力活性の範囲は約100nMから約10μMであった。
【0125】
表2は、PIK3CA増幅細胞株及びHER2増幅細胞株に対する細胞増殖インビトロアッセイにおいて、単剤活性としてのGDC−0032の著しい効力を示す。
【0126】
図1は、H1047R変異を有するHCC−1954を含む、PIK3CAの野生型(WT)細胞株及び変異体細胞株に対する細胞増殖アッセイにおけるGDC−0032及びGDC−0941(4−(2−(1H−インダゾール−4−イル)−6−((4−(メチルスルホニル)ピペラジン−1−イル)メチル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−4−イル)モルホリン)の有効性(EC
50マイクロモル濃度)についての2つのプロットを示す。
図1の上部のプロットは、GDC−0032がPIK3CA変異体細胞株に対してパン阻害剤GDC−0941(下部のプロット)よりも広い治療ウィンドウを有することを示す。
図2は、PIK3CA野生型(WT)細胞株、PIK3CA変異体細胞株、HER2発現細胞株及びPI3K変異体/HER2発現細胞株に対する細胞増殖アッセイにおけるGDC−0032及びGDC−0941の有効性(EC
50マイクロモル濃度)についての2つのプロットを示す。
図1及び
図2は、GDC−0032がPIK3CA変異体細胞及びHER2+乳癌細胞に対してGDC−0941よりも強力であることを示す。HER2増幅を有する癌細胞株はHER2増幅を有しないものよりも、GDC−0941に対して9倍感受性であるのに比べてGDC−0032に対して約44倍感受性である。
【0127】
図2は、PIK3CA野生型(WT)細胞株、PIK3CA変異体細胞株、HER2発現細胞株及びPIK3CA変異体/HER2発現細胞株に対する細胞増殖アッセイにおけるGDC−0032及びGDC−0941の有効性(EC
50マイクロモル濃度)について2つのプロットを示す。各点は異なる細胞株を表す。
【0128】
図3は、(3a、上部)ヘリカル領域変異体細胞株及びキナーゼ領域変異体細胞株;(3b、中央部)PI3K経路野生型細胞株、PIK3CA変異体細胞株、PTEN欠損細胞株及びPTEN/PIK3CA細胞株;並びに(3c、下部)PI3K経路野生型細胞株、PIK3CA変異体細胞株、Ras変異体細胞株及びRas/PIK3CA変異体細胞株に対するGDC−0032の有効性(EC
50マイクロモル濃度)について3つのプロットを示すグラフである。結果は、PIK3CA変異体腫瘍がRas又はPTEN欠失の共変異を有する場合にGDC−0032の有効性が低下することを示す。
【0129】
図4aは、SW48同質遺伝子細胞株セットにおけるGDC−0032の効力を示す。SW48親と、共通のPI3Kホットスポット変異であるE545K又はH1047Rを持つノックイン変異体サブクローンとをHorizon Discoveryから得て、4日のCell−Titer Glo(Promega)アッセイを使用して、これらの株におけるGDC−0032のEC
50生存率の値を決定した。3種の細胞のサブタイプに関する生存率のEC
50値は、親では0.02μMであり、E545Kでは0.005μMであり、H1047Rでは0.008μMであった。まとめると、PI3K変異を有する同質遺伝子細胞株は、GDC−0032に対する感受性の増加を示す。
【0130】
図4bは、SW同質遺伝子細胞;親及びPI3Kノックイン変異体であるE545K及びH1047Rの投薬後18時間に収集した溶解物のゲル電気泳動のオートラジオグラムを示す。GDC−0032は、非常に低い化合物濃度でPI3K変異を持つ細胞におけるアポトーシスを誘導する。MCF10乳房細胞株及びHCC1954(PI3K H1047R変異体乳癌細胞株)由来のPI3K変異体同質遺伝子細胞で同様の効果を観測した。
【0131】
GDC−0032と化学治療との組み合わせのインビトロ活性
GDC−0032と例示的な化学療法剤との組み合わせの細胞傷害活性又は細胞増殖抑制活性を、細胞培養培地で増殖する哺乳動物の腫瘍細胞株を確立し、試験化合物を添加し、細胞を約6時間から約5日の期間にわたって培養すること;及び細胞生存率を測定することにより測定した(実施例3)。細胞ベースのインビトロアッセイを使用して生存率を、即ち増殖(IC
50)、細胞傷害性(EC
50)及びアポトーシスの誘導(カスパーゼ活性化)を測定した。
【0132】
GDC−0032と化学療法剤との組み合わせのインビトロでの効力を、実施例3の細胞増殖アッセイ;Promega Corp.、マディソン、ウィスコンシン州から商業的に入手可能なCellTiter−Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイによって測定した。この均一アッセイ方法は、鞘翅目ルシフェラーゼの組み換え発現に基づいており(米国特許5583024号;米国特許5674713号;米国特許5700670号)、代謝的に活性な細胞の指標であるATPの存在の定量化に基づいて培養液中の生細胞の数を決定する(Crouch等(1993) J. Immunol. Meth. 160:81-88;米国特許6602677号)。CellTiter−Glo(登録商標)アッセイを96ウェルフォーマット又は384ウェルフォーマットで実施し、自動化高スループットスクリーニング(HTS)に適応させた(Cree等(1995) AntiCancer Drugs 6:398-404)。均一アッセイの手順は、血清補充培地で培養した細胞に単一試薬(CellTiter−Glo(登録商標)試薬)を直接添加することを含む。細胞の洗浄工程、培地の除去工程及び複数回のピペット操作工程は必要ではない。本システムは、試薬の添加及び混合後10分での384ウェルフォーマットにおいてわずか15個の細胞/ウェルを検出する。
【0133】
GDC−0032と化学療法剤との組み合わせの抗増殖効果を、
図5−12における腫瘍細胞株に対するCellTiter−Glo(登録商標)アッセイ(実施例3)により測定した。試験した化合物及び組み合わせのためにEC
50値を確立した。インビトロの細胞効力活性の範囲は約100nMから約10μMであった。
【0134】
特定の細胞に対するGDC−0032及び化学療法剤の個々に測定したEC
50値を組み合わせのEC
50値と比較する。組み合わせ指数(CI)スコアをChou及びTalalayの方法により算出する(Chou, T.及びTalalay, P. (1984) Adv. Enzyme Regul. 22:27-55)。約0.7未満のCIは相乗作用を示す。0.8から1.2のCIは相加性を示す。1.2を超えるCIは拮抗作用を示す。相乗作用の強さをChou及びTalalayに従って評価する。
図4−6におけるある種の治療用組み合わせは、非ホジキンリンパ腫(NHL)、びまん性大型B細胞リンパ腫(DLBCL)及び多発性骨髄腫を含む腫瘍タイプの細胞株によるインビトロ細胞増殖アッセイにおいて驚くべき及び予期しない相乗的な特性を示す。他の組み合わせは相乗作用を示さず、相加性又は拮抗作用のみを示す。ある種の組み合わせは1種又は複数種の腫瘍タイプでは相乗的であるが、他ではそうではない。インビトロ細胞増殖アッセイで示される相乗作用は、ヒト患者での癌の処置において対応する相乗作用を期待する根拠を提供する。
【0135】
図5aは、H1047R変異及びD350N変異を有する乳癌細胞株MFM223に対するGDC−0032、パクリタキセル(PTX)及びGDC−0032とパクリタキセルとの組み合わせの効果を示す。インビトロ細胞生存及び増殖アッセイ(Cell−Titer Glo、Promega)で、GDC−0032、パクリタキセル(PTX)及びGDC−0032とパクリタキセルとの組み合わせの用量漸増により、様々な阻害剤濃度にわたって生細胞を測定した(RLU=相対光単位)。2種の薬剤を組み合わせた場合、細胞生存性の阻害において顕著な改善が観測される。
【0136】
図5bは、基底タイプ及びルミナルタイプの両方についてのPIK3CAの野生型乳癌細胞株及び変異体乳癌細胞株に対するGDC−0032+パクリタキセルの組み合わせ及びGDC−0941+パクリタキセルの組み合わせの組み合わせ指数(CI)を示す。PIK3CA変異にはE545K及びH1047Rが含まれる。約0.7未満のCI値は相乗作用を示す。各点は癌細胞株を表す。結果は、PIK3CAの野生型乳癌細胞株及び変異体乳癌細胞株に対する2種の組み合わせの活性に関して同様の傾向を示す。
【0137】
図6aは、基底サブタイプのE542K PIK3CA変異及びPTENタンパク質発現の欠失を伴う乳癌細胞株Cal51に対するGDC−0032、エリブリン及びGDC−0032とエリブリンとの組み合わせの効果を示す。インビトロ細胞生存及び増殖アッセイ(Cell−Titer Glo、Promega)で、GDC−0032、エリブリン及びGDC−0032とエリブリンとの組み合わせの用量漸増により、様々な阻害剤濃度にわたって生細胞を測定した(RLU=相対光単位)。2種の薬剤を組み合わせた場合、細胞生存性の阻害において顕著な改善が観測される。
【0138】
図6bは、基底タイプ及びルミナルタイプの両方についてのPIK3CA野生型乳癌細胞株、並びにE545K、H1047R、PTEN陰性及びPTEN陰性/E542K変異体乳癌細胞株に対するGDC−0032+エリブリンの組み合わせ、GDC−0032+ドセタキセルの組み合わせ、GDC−0941+エリブリンの組み合わせ及びGDC−0941+ドセタキセルの組み合わせの組み合わせ指数(CI)を示す。約0.7未満のCI値は相乗作用を示す。各点は癌細胞株を表す。評価した細胞株の大部分において、これらの組み合わせに関して相乗作用を観測した。
【0139】
図7は、基底タイプ及びルミナルタイプの両方についてのPIK3CA野生型乳癌細胞株、並びにE545K、H1047R PIK3CA変異体乳癌細胞株に対するGDC−0032+エリブリンの組み合わせ及びGDC−0941+エリブリンの組み合わせの組み合わせ指数(CI)を示す。約0.7未満のCI値は相乗作用を示す。各点は癌細胞株を表す。評価した細胞株の大部分においてこれらの組み合わせに関して相乗作用を観測した。
【0140】
表3は、いくつかの異なる化学療法剤と標的薬剤との組み合わせにおいて、GDC−0032に関して相乗作用が観測されることを示す。
【0141】
GDC−0032は、E545K PIK3CA変異を有するMCF7.1−neo/HER2乳癌細胞に対して、トラスツズマブエムタンシン(T−DM1)との組み合わせにおいてGDC−0941(CI 0.39)よりも優れた相乗作用(CI 0.25)を示した。
【0142】
図8aは、基底サブタイプのE542K変異及びPTENタンパク質発現の欠失を伴う乳癌細胞株Cal51に対するGDC−0032、ドセタキセル及びGDC−0032+ドセタキセルの組み合わせの効果を示す。インビトロ細胞生存及び増殖アッセイ(Cell−Titer Glo(登録商標)、Promega)で、GDC−0032、ドセタキセル及びGDC−0032+ドセタキセルの組み合わせの用量漸増により、様々な阻害剤濃度にわたって生細胞を測定した(RLU=相対光単位)。2種の薬剤を組み合わせた場合、細胞生存性の阻害において顕著な改善が観測される。
【0143】
図8bは、PIK3CAの野生型乳癌細胞株及び変異体乳癌細胞株に対するGDC−0032+ドセタキセルの組み合わせ及びGDC−0941+ドセタキセルの組み合わせの組み合わせ指数(CI)を示す。約0.7未満のCI値は相乗作用を示す。各点は異なる細胞株を表す。評価した細胞株の大部分においてこの組み合わせで相乗作用を観測した。
【0144】
図9aは、高HER2発現を有する乳癌細胞株SKBR3に対するGDC−0032、トラスツズマブ及びGDC−0032+トラスツズマブの組み合わせの効果を示す。インビトロ細胞生存及び増殖アッセイ(Cell−Titer Glo(登録商標)、Promega)で、GDC−0032、トラスツズマブ及びGDC−0032+トラスツズマブの組み合わせの用量漸増により、様々な阻害剤濃度にわたって生細胞を測定した(RLU=相対光単位)。2種の薬剤を組み合わせた場合、細胞生存性の阻害において顕著な改善が観測される。
【0145】
図9bは、HER2+ PIK3CAの野生型乳癌細胞株並びにE545K及びH1047Rを含む変異体乳癌細胞株に対するGDC−0032+ドセタキセルの組み合わせ及びGDC−0941+ドセタキセルの組み合わせの組み合わせ指数(CI)を示す。約0.7未満のCI値は相乗作用を示す。各点は異なる細胞株を表す。評価した細胞株の大部分においてこの組み合わせで相乗作用を観測した。
【0146】
図10aは、H1047R及びD350N PIK3CA変異を有する乳癌細胞株KPL4に対するトラスツズマブ、GDC−0032、パクリタキセル並びにGDC−0032+トラスツズマブの組み合わせ、パクリタキセル+トラスツズマブの組み合わせ、GDC−0032+パクリタキセルの組み合わせ及びGDC−0032+パクリタキセル+トラスツズマブの三重組み合わせの効果を示す。インビトロ細胞生存及び増殖アッセイ(Cell−Titer Glo、Promega)で、用量漸増により、様々な阻害剤濃度にわたって生細胞を測定した(RLU=相対光単位)。パクリタキセル+GDC−0032の組み合わせは細胞生存性を低下させた。この組み合わせにおけるトラスツズマブは、この細胞株における細胞生存性に対する効果を有しなかった。
【0147】
図10bは、高HER2発現を有する乳癌細胞株SKBR3に対するトラスツズマブ、GDC−0032、パクリタキセル並びにGDC−0032+トラスツズマブの組み合わせ、パクリタキセル+トラスツズマブの組み合わせ、GDC−0032+パクリタキセルの組み合わせ及びGDC−0032+パクリタキセル+トラスツズマブの組み合わせの効果を示す。インビトロ細胞生存及び増殖アッセイ(Cell−Titer Glo、Promega)で、用量漸増により、様々な阻害剤濃度にわたって生細胞を測定した(RLU=相対光単位)。この細胞株において二重組み合わせ及び三重組み合わせにより、細胞生存性の低下における顕著な改善を観測した。
【0148】
図11aは、乳癌細胞株HCC1428に対する5−FU、GDC−0032及び5−FUとGDC−0032との組み合わせの効果を示す。インビトロ細胞生存及び増殖アッセイ(Cell−Titer Glo、Promega)で、5−FU、GDC−0032及び5−FU+GDC−0032の組み合わせの用量漸増により、様々な阻害剤濃度にわたって生細胞を測定した(RLU=相対光単位)。この細胞株において2種の薬剤を組み合わせた場合、細胞生存性の阻害において顕著な改善を観測した。
【0149】
図11bは、HER2+ PIK3CAの野生型乳癌細胞株並びに基底サブタイプ及びルミナルサブタイプのE545K及びH1047Rを含む変異体乳癌細胞株に対するGDC−0032+5FUの組み合わせ及びGDC−0941+5−FUの組み合わせの組み合わせ指数(CI)を示す。約0.7未満のCI値は相乗作用を示す。各点は異なる細胞株を表す。評価したいくつかの細胞株において、この組み合わせで相乗作用を観測した。
【0150】
図12aは、癌細胞株に対するGDC−0032+従来の化学療法剤(5−FU、ゲムシタビン、パクリタキセル、ドセタキセル及びエリブリンを含む)の組み合わせの組み合わせ指数(CI)を示す。約0.7未満のCI値は相乗作用を示す。各点は異なる細胞株を表す。評価した細胞株及び化学療法剤の組み合わせの大部分において、相乗作用を示すCI値を観測した。
【0151】
図12bは、癌細胞株に対するGDC−0032+標的とする化学療法剤(トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、トラスツズマブエムタンシン(T−DM1)及びMEKi(GDC−0973)を含む)の組み合わせの組み合わせ指数(CI)を示す。約0.7未満のCI値は相乗作用を示す。各点は異なる細胞株を表す。評価した細胞株の大部分において、標的とする薬剤の組み合わせで相乗作用を観測した。
【0152】
レトロゾール又はフルベストラント等の内分泌治療が転移性のホルモンレセプター陽性(HR+)乳癌の処置の選択肢として一般に使用されるが、患者は最終的には再発する。ホスファチジルイノシトール−3キナーゼ(PI3K)は、乳房腫瘍細胞の増殖、遊走及び生存を制御する。PI3Kのアルファアイソフォームは、HR+乳癌において頻繁に変異し、活性化しており、内分泌治療に対する耐性に関与している。従って、PI3K阻害剤は、内分泌治療との組み合わせにとって魅力的である。GDC−0032は、クラスI PI3Kアルファ、デルタ及びガンマのアイソフォームの経口で生物利用可能な強力で選択的な阻害剤であり、PI3Kベータアイソフォームの阻害はPI3Kアルファアイソフォームに対して30倍低い。前臨床データは、PI3Kアルファアイソフォーム(PIK3CA)変異及びHER2増幅癌細胞株に対するGDC−0032の活性が増加していることを示す。GDC−0032がヒト乳癌モデルにおける内分泌治療の抗腫瘍活性を増強するかどうかを決定するために、単剤及び組み合わせの研究が実施された。
図37は、アロマターゼ発現MCF7細胞におけるレトロゾール及びPI3K阻害剤GDC−0032の活性を示す。培地中のエストロゲン前駆体アンドロステンジオンによるMCF7−ARO細胞増殖において内分泌治療に対する感受性が増加する。アロマターゼ発現MCF7細胞は、培養下でアンドロステンジオンをエストロゲンに変換する。MCF7細胞(エストロゲンレセプター陽性(ER+)、PI3KアルファE545K変異)にアロマターゼ遺伝子を遺伝子導入し、培養下でアンドロステンジオンをエストロゲンに変換することができる安定したクローン(MCF7−ARO)を選択した。アンドロステンジオンの存在下で増殖した場合、MCF7−ARO細胞は増殖のためにエストロゲンにより依存した。培地中のエストロゲン前駆体によるMCF7−ARO細胞増殖においては内分泌治療に対する感受性が増加する。これらの条件下で、細胞を、内分泌治療との組み合わせでGDC−0032により処理し、細胞生存性、PI3K経路マーカー及びER経路マーカーのモジュレーション並びにアポトーシス誘導に関してアッセイした。GDC−0032と内分泌治療との組み合わせにより、MCF7−ARO細胞の細胞生存性が低下し、いずれの単剤と比べてもアポトーシスが増加した。GDC−0032及びレトロゾールの組み合わせにより、応答性細胞におけるアポトーシスが増加する。なぜならば、レトロゾールはmTORでのPI3K経路シグナル伝達を低下させ、レトロゾールはフルベストラントと同様にpAKT及びHER2を上方制御するからである。
【0153】
図38は、細胞生存性、BLISS及びHSAの阻害の定量的な点数付けにより、インビトロでGDC−0032がレトロゾールと良好に組み合わさることを示す。
図39は、PI3K経路とER経路との間のクロストークがGDC−0032とレトロゾールとの組み合わせに関する作用機序を示唆することが観測されたことを示す。レトロゾールによる細胞の24時間処理により、HER2及びpAktが増加するが、pmTOR及びpp70S6Kが低下する。
図40は、内分泌耐性細胞がPI3K経路シグナル伝達を高めており、及びGDC−0032に感受性であることを示す。約4カ月にわたるレトロゾールの用量漸増により、内分泌耐性MCF7−ARO細胞を得た。細胞は、エキセメスタン、フルベストラント、タモキシフェン及びレトロゾールに対して耐性であった。データは、診療所におけるHR+乳癌処置のために内分泌治療との組み合わせでGDC−0032を評価するための理論的根拠を提供する。
【0154】
GDC−0032単剤のインビボでの腫瘍異種移植片活性
乳癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、メラノーマ及び結腸直腸癌を呈する腫瘍細胞の異種移植片を免疫無防備状態のマウスに移植し、担腫瘍動物をGDC−0032で処置することにより、GDC−0032の有効性をインビボで測定した。結果は、細胞株、腫瘍細胞におけるある種の変異の存在又は不在、GDC−0032の投薬レジメン及び他の因子に依存する。対象のマウスを薬剤又はコントロール(ビヒクル)で処置し、数週間又はそれ以上にわたってモニタリングして腫瘍倍加までの期間、死滅細胞の対数値及び腫瘍阻害を測定した(実施例4)。
図13−22は、実施例4のプロトコルに従ってGDC−0032で処置した担腫瘍マウスの処置後の腫瘍体積の経時変化のプロットを示す。
【0155】
図13は、ビヒクル(MCT;0.5%メチセルロース/0.2%Tween80)、GDC−0941及びGDC−0032をPO(経口)及び毎日(QD)の投与により表4のスケジュールに従って投薬した、PI3Kα(H1047R)変異を持つHCC1954.x1乳房腫瘍異種移植片を有する免疫無防備状態の(ヌード)マウスのコホートの21日にわたる近似腫瘍体積変化を示す。GDC−0032の毎日の投薬で腫瘍増殖阻害(TGI)における用量依存的な増加を観測し、21日の最後の投薬で138%の最大TGIを達成した。12.5及び25mg/kgのGDC−0032の用量で腫瘍退縮を観測した。用語uLはマイクロリットルを意味する。
【0156】
図14は、ビヒクル(MCT;0.5%メチセルロース/0.2%Tween80)及びGDC−0032をPO(経口)及び毎日(QD)の投与により投薬した、PI3Kα(H1047R)変異を持つKPL4乳房腫瘍異種移植片を有する免疫無防備状態の(SCIDベージュ)マウスのコホートの21日にわたる近似腫瘍体積変化を示す。21日目の処置終了時にビヒクルコントロール処置マウスと比較して25mg/kgのGDC−0032により腫瘍退縮の増加を観測したKPL4異種移植片モデルにおいて、GDC−0032の毎日の投薬により腫瘍体積が用量依存的に減少した。
【0157】
図15は、ビヒクル(MCT;0.5%メチセルロース/0.2%Tween80)及びGDC−0032をPO(経口)及び毎日(QD)の投与により投薬した、PI3Kα変異(E545K)を持つMCF7−neo/HER2乳房腫瘍異種移植片を有する免疫無防備状態の(ヌード)マウスのコホートの20日わたる近似腫瘍体積変化を示す。処置の10日後にビヒクルコントロール処置マウスと比較して22.5mg/kgのGDC−0032により腫瘍退縮の増加を観測したMCF7−neo/HER2異種移植片モデルにおいて、GDC−0032の毎日の投薬により腫瘍体積が用量依存的に減少した。
【0158】
図16は、ビヒクル(MCT;0.5%メチセルロース/0.2%Tween80)及びGDC−0032をPO(経口)及び毎日(QD)の投与により投薬した、PI3Kα変異(E545K)を持つMCF−7乳房腫瘍異種移植片を有する免疫無防備状態の(ヌード)マウスのコホートの21日にわたる近似腫瘍体積変化を示す。MCF−7異種移植片モデルにおいて、GDC−0032の毎日の投薬により腫瘍体積が用量依存的に減少した。ビヒクルコントロールと比較して、試験したGDC−0032の全ての用量で腫瘍退縮の増加を観測した。
【0159】
図17は、ビヒクル(MCT;0.5%メチセルロース/0.2%Tween80)及びGDC−0032をPO(経口)及び毎日(QD)の投与により投薬した、PI3Kα変異(H1047R)を持つSKOV3卵巣腫瘍異種移植片を有する免疫無防備状態の(ヌード)マウスのコホートの21日にわたる近似腫瘍体積変化を示す。SKOV3異種移植片モデルにおいて、21日の処置期間中にGDC−0032の毎日の投薬により腫瘍体積が用量依存的に減少した。
【0160】
図18は、ビヒクル(MCT;0.5%メチセルロース/0.2%Tween80)及びGDC−0032をPO(経口)及び毎日(QD)の投与により投薬した、PIK3α変異(H1047R)を持つHM−7結腸直腸癌腫瘍異種移植片を有する免疫無防備状態の(ヌード)マウスのコホートの7日にわたる近似腫瘍体積変化を示す。7日目の処置終了時にビヒクルコントロール処置マウスと比較して25mg/kgのGDC−0032により腫瘍退縮の増加を観測したHM−7異種移植片モデルにおいて、GDC−0032の毎日の投薬により腫瘍体積が用量依存的に減少した。
【0161】
図19は、ビヒクル(MCT;0.5%メチセルロース/0.2%Tween80)及びGDC−0032をPO(経口)及び毎日(QD)の投与により投薬した、PTEN陰性(欠損)であるPC3前立腺癌腫瘍異種移植片を有する免疫無防備状態の(ヌード)マウスのコホートの14日にわたる近似腫瘍体積変化を示す。14日にわたるGDC−0032の毎日の投薬後に<12.5mg/kgのGDC−0032の用量は有効ではなかった。しかしながら、最高用量試験(25mg/kg)でのPC3異種移植片モデルにおいて抗腫瘍反応を観測し、該抗腫瘍反応を腫瘍停滞と特徴付けた。
【0162】
図20は、ビヒクル(MCT;0.5%メチセルロース/0.2%Tween80)及びGDC−0032をPO(経口)又は毎日(QD)の投与により投薬した、PTEN陰性(欠損)であった22RV1前立腺癌腫瘍異種移植片を有する免疫無防備状態の(ヌード)マウスのコホートの24日にわたる近似腫瘍体積変化を示す。22RV1異種移植片モデルにおいて、GDC−0032の毎日の投薬により腫瘍体積が用量依存的に減少した。
【0163】
図21は、ビヒクル(MCT;0.5%メチセルロース/0.2%Tween80)、GDC−0941及びGDC−0032をPO(経口)及び毎日(QD)の投与により投薬した、PTEN欠損でありB−Raf増幅を有する537MELメラノーマ癌腫瘍異種移植片を有する免疫無防備状態の(ヌード)マウスのコホートの21日にわたる近似腫瘍体積変化を示す。22RV1異種移植片モデルにおいて、GDC−0032の毎日の投薬により腫瘍体積が用量依存的に減少した。
【0164】
図22は、ビヒクル(MCT;0.5%メチセルロース/0.2%Tween80)及びGDC−0032をPO(経口)及び毎日(QD)の投与により投薬した、EGFR変異(T790M)、PI3K変異(G118D)及びp53変異を持つNCI−H1975非小細胞肺癌(NSCLC)腫瘍異種移植片を有する免疫無防備状態の(ヌード)マウスのコホートの24日にわたる平均腫瘍体積変化を示す。ビヒクルコントロール処置マウスと比較してGDC−0032による24日の処置期間にわたって腫瘍体積の用量依存的減少を観測した。
【0165】
GDC−0032と化学療法剤との組み合わせのインビボ腫瘍異種移植片活性
癌細胞の同種移植片又は異種移植片を齧歯動物に移植し、担腫瘍動物を薬剤の組み合わせで処置することにより、GDC−0032と小分子標的剤及び大分子標的剤を含む様々な化学療法剤との組み合わせの有効性をインビボで測定した。結果は、細胞株、腫瘍細胞におけるある種の変異の存在又は不存在、GDC−0032及び化学療法剤の投与の順序、投薬レジメン及び他の因子に依存する。対象のマウスを薬剤又はコントロール(ビヒクル)で処置し、数週間又はそれ以上にわたってモニタリングして腫瘍倍加までの期間、死滅細胞の対数値及び腫瘍阻害を測定した(実施例4)。
図23−36は、実施例4のプロトコルに従ってGDC−0032と様々な化学療法剤との組み合わせで処置した担腫瘍マウスの処置後の腫瘍体積の経時変化のプロットを示す。
【0166】
図23は、ビヒクル、ドセタキセル(DTX)、GDC−0941、GDC−0032及びドセタキセル+GDC−0941の組み合わせ又はドセタキセル+GDC−0032の組み合わせを投与により表5のスケジュールにしたがって投薬した、MCF−7 neo/HER2乳癌腫瘍異種移植片を持つ免疫無防備状態の(ヌード)マウスのコホートの51日にわたる平均腫瘍体積変化を示す。GDC−0941及びGDC−0032を21日にわたり経口(PO)及び毎日(QD)投薬した。ドセタキセルを3週にわたり静脈内に毎週(QW)投薬した。21日目の投薬終了後に、更に30日にわたって腫瘍の再増殖に関してマウスをモニタリングした。各単剤単独と比較した場合、GDC−0032の組み合わせは、腫瘍退縮を増加させることによりDTXの抗腫瘍活性を増強した。DTXとの組み合わせにおいて最高用量で試験したGDC−0032(20mg/kg)は、DTXとの組み合わせにおけるGDC−00941に対してTGI%に関して同等であった(表5)。
【0167】
図24は、PTEN陰性(欠損)であり、ビヒクル(0.5%メチルセルロース/0.2%Tween−80)、ドセタキセル(DTX)、GDC−0032及びGDC−0032+ドセタキセルの組み合わせを投与により投薬した、MX−1三重陰性(ER
−(エストロゲンレセプター)、PR
−(プロゲステロンレセプター)、neu/HER2
−(HER2レセプター))乳癌腫瘍異種移植片を有する免疫無防備状態のマウスのコホートの25日にわたる平均腫瘍体積変化を示す。GDC−0032を21日にわたり経口(PO)及び毎日(QD)投薬した。DTXを、2.5、5.0及び7.5mg/kgの薬剤で3週にわたり静脈内に毎週(QW)投薬した。21日目の投薬終了後に、更に4日にわたって腫瘍の再増殖に関してマウスをモニタリングした。試験した全用量でGDC−0032はDTXの抗腫瘍活性を増強した。各薬剤単独と比較した場合、5及び10mg/kgのGDC−0032+7.5mg/kgのDTXで最大の組み合わせ活性を観測した。
【0168】
図25は、ビヒクル(0.5%メチルセルロース/0.2%Tween−80)、ドセタキセル(DTX)、GDC−0032及びGDC−0032+ドセタキセルの組み合わせを投与により投薬した、PI3K(H1047R)変異を持つSKOV3卵巣癌腫瘍異種移植片を有する免疫無防備状態のマウスのコホートの25日にわたる平均腫瘍体積変化を示す。GDC−0032を21日にわたり経口(PO)及び毎日(QD)投薬した。DTXを7.5mg/kgの薬剤で3週にわたり静脈内に毎週(QW)投薬した。21日目の投薬終了後に、更に4日にわたって腫瘍の再増殖に関してマウスをモニタリングした。試験したGDC−0032の全用量でGDC−0032はDTXの抗腫瘍活性を増強した。各薬剤単独と比較した場合、15mg/kgのGDC−0032+7.5mg/kgのDTXで最大の組み合わせ活性を観測した。
【0169】
図26は、ビヒクル(0.5%メチルセルロース/0.2%Tween−80)、パクリタキセル、GDC−0032及びGDC−0032+パクリタキセルの組み合わせを投与により投薬した、PI3K変異(E545K)を持つMCF−7乳癌腫瘍異種移植片を有する免疫無防備状態の(ヌード)マウスのコホートの40+日にわたる平均腫瘍体積変化を示す。GDC−0032を21日にわたり経口(PO)及び毎日(QD)投薬した。パクリタキセルを10mg/kgの薬剤で3週にわたり静脈内に毎週(QW)投薬した。各薬剤単独と比較した場合、7.5及び12.5mg/kgのGDC−0032がパクリタキセルの抗腫瘍活性を増強した。
【0170】
図27は、ビヒクル(0.5%メチルセルロース/0.2%Tween−80)、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、GDC−0032及びトラスツズマブ+GDC−0032の組み合わせをPO(経口)投与により投薬した、PI3K変異(K111N)を持つBT474、HER2+乳癌腫瘍異種移植片を有する免疫無防備状態のマウスのコホートの60日にわたる平均腫瘍体積変化を示す。GDC−0032を、5、10及び20mg/kgで21日にわたり経口(PO)及び毎日(QD)投薬した。トラスツズマブを3mg/kgで静脈内に(IV)毎週(QW)投薬した。IV投与前に負荷用量である6mg/kgのトラスツズマブを与えた。GDC−0032は、用量依存的な様式でトラスツズマブの有効性を増強した。
【0171】
図28は、ビヒクル(0.5%メチルセルロース/0.2%Tween−80)、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、トラスツズマブエムタンシン(T−DM1)、GDC−0032、トラスツズマブ+GDC−0032の組み合わせ及びT−DM1とGDC−0032との組み合わせを経口(PO)投与により投薬した、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)によってHER2を過剰発現させるように操作されているFounder5(Fo5)HER2+乳癌同種移植片を有する免疫無防備状態の(ヌード)マウスのコホートの10+日にわたる平均腫瘍体積変化を示す。GDC−0032を、25mg/kgの薬剤で15日にわたり経口(PO)及び毎日(QD)投薬した。トラスツズマブを30mg/kgで静脈内に(IV)及び毎週(QW)投薬し、T−DM1をIVで一回投薬した。各薬剤単独と比較すると、GDC−0032の組み合わせはトラスツズマブ及びT−DM1の抗腫瘍活性を増強して腫瘍停滞を誘発した。GDC−0032及びトラスツズマブ対GDC−0032及びT−DM1による組み合わせ活性の差異を観測しなかった。
【0172】
図29は、ビヒクル(0.5%メチルセルロース/0.2%Tween−80)、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、ドセタキセル、GDC−0032、トラスツズマブとドセタキセルとの組み合わせ又はトラスツズマブとドセタキセルとGDC−0032との三重組み合わせをPO(経口)投与により投薬した、BT474、HER2+乳癌腫瘍異種移植片を有する免疫無防備状態の(ヌード)マウスのコホートの21日にわたる平均腫瘍体積変化を示す。GDC−0032を、5、10及び15mg/kgで21日にわたり経口(PO)及び毎日(QD)投薬した。トラスツズマブを3mg/kgで静脈内に(IV)及び毎週(QW)投薬した。ドセタキセルを、7.5mg/kgの薬剤で3週にわたり静脈内に毎週(QW)投薬した。トラスツズマブ及びドセタキセルの単剤治療と比較すると、両方の薬剤の組み合わせにより腫瘍退縮が増加した。試験した全用量でのGDC−0032のドセタキセルとトラスツズマブとの二重組み合わせへの添加により、処置期間中に腫瘍退縮が更に増加した。
【0173】
図30は、ビヒクル(0.5%メチルセルロース/0.2%Tween−80)、フルベストラント、GDC−0032及びフルベストラントとGDC−0032との組み合わせをPO(経口)投与により投薬した、PI3K変異(E545K)を持つMCF−7乳癌腫瘍異種移植片を有する免疫無防備状態の(ヌード)マウスのコホートの40+日にわたる平均腫瘍体積変化を示す。GDC−0032を、5、10及び15mg/kgで21日にわたり経口(PO)及び毎日(QD)投薬した。フルベストラントを3週にわたり週(QW)に1回5mgの薬剤で皮下に投薬した。単剤治療と比較すると、5及び10mg/kgのGDC−0032が、処置期間中に及び投薬終了後に更に20日にわたり、フルベストラントの抗腫瘍活性を増強した。GDC−0032の単剤活性と比較すると、15mg/kgのGDC−0032とフルベストラントとの組み合わせにより、処置期間後に腫瘍増殖の阻害が持続した。
【0174】
図31は、ビヒクル(MCT;0.5%メチルセルロース/0.2%Tween80)、タモキシフェン、GDC−0032及びタモキシフェンとGDC−0032との組み合わせをPO(経口)投与により投薬した、PI3K変異(E545K)を持つMCF−7 neo/HER2乳癌腫瘍異種移植片を有する免疫無防備状態の(ヌード)マウスのコホートの20+日にわたる平均腫瘍体積変化を示す。GDC−0032を、5、10及び20mg/kgで21日にわたり経口(PO)及び毎日投薬した。タモキシフェンを、マウスの皮下に埋め込んだ5mgの錠剤により投与した。単剤治療と比較すると、20mg/kgのGDC−0032が、タモキシフェンの抗腫瘍活性を増強して腫瘍を退縮させた。
【0175】
図32は、ビヒクル(0.5%メチセルロース/0.2%Tween80)、GDC−0973、GDC−0032及びGDC−0973とGDC−0032との組み合わせをPO(経口)投与により投薬した、A549変異体非小細胞肺癌(NSCLC)腫瘍異種移植片を有する免疫無防備状態の(ヌード)マウスのコホートの40日にわたる平均腫瘍体積変化を示す。GDC−0032及びGDC−0973を、それぞれ7.5及び5.0mg/kgで21日にわたり毎日投薬した。GDC−0032とGDC−0973との組み合わせにより、処置期間中に腫瘍退縮が増加した。処置終了後に更に19日にわたり持続的な抗腫瘍活性を観測したことから、両方の薬剤の組み合わせ効果は永続的であった。
【0176】
図33は、ビヒクル、デキサメタゾン、GDC−0980、GDC−0032、デキサメタゾンとGDC−0980との組み合わせ及びデキサメタゾンとGDC−0032との組み合わせを投与により投薬した、MM.1s多発性骨髄腫腫瘍異種移植片を有する免疫無防備状態の(SCIDベージュ)マウスのコホートの15+日にわたる平均腫瘍体積変化を示す。GDC−0032を、1及び4mg/kgの薬剤で経口(PO)及び毎日投薬した。GDC−0980を1mg/kgの薬剤で経口及び毎日投薬した。単剤治療と比較すると、1及び4mg/kgの薬剤でのGDC−0032の組み合わせが、デキサメタゾン(2.5mg/kg)の抗腫瘍活性を増強した。GDC−0032とデキサメタゾンとで観測した抗腫瘍の組み合わせ効果は、GDC−0980とデキサメタゾンとの組み合わせに対して同等であった。
【0177】
図34は、カペシタビン(Xeloda(登録商標))、GDC−0032及びカペシタビンとGDC−0032との組み合わせをPO(経口)投与により1日に1回投薬した、MCF−7 neo/HER2乳癌腫瘍異種移植片を有する10匹のマウスのコホートの21日にわたる平均腫瘍体積変化を示す。
【0178】
図35は、ビヒクル、ドセタキセル、GDC−0032及びGDC−0032+ドセタキセルの組み合わせを投薬した、A549(KRAS
G12S、PI3K
M772X、N996H)NSCLC(非小細胞肺癌)異種移植片を有する8から10匹の免疫無防備状態のマウスのコホートの20日にわたる近似腫瘍体積変化を示す。GDC−0032を21日にわたり経口(PO)及び毎日(QD)投薬した。DTXを、10mg/kgの薬剤で3週にわたり静脈内に毎週(QW)投薬した。21日目の投薬終了後、更に4日にわたり腫瘍の再増殖に関してマウスをモニタリングした。試験したGDC−0032の全用量でGDC−0032はDTXの抗腫瘍活性を増強した。各薬剤単独と比較した場合、15mg/kgのGDC−0032+10mg/kgのDTXで最大の組み合わせ活性を観測した。
【0179】
図36は、ビヒクル、ドセタキセル、GDC−0032及びGDC−0032+ドセタキセルの組み合わせを投薬した、H520(p53
変異)NSCLC(非小細胞肺癌)異種移植片を有する8から10匹の免疫無防備状態のマウスのコホートの28日にわたる近似腫瘍体積変化を示す。GDC−0032を21日にわたり経口(PO)及び毎日(QD)投薬した。DTXを10mg/kgの薬剤で3週にわたり静脈内に毎週(QW)投薬した。21日目の投薬終了後、更に4日にわたり細胞の再増殖に関してマウスをモニタリングした。2.5mg/kgを除く、試験したGDC−0032の全用量でGDC−0032はDTXの抗腫瘍活性を増強した。各単剤単独と比較した場合、15mg/kgのGDC−0032+10mg/kgのDTXで最大の組み合わせ活性を観測した。
【0180】
図41は、GDC−0032と抗エストロゲン剤であるフルベストラント及びタモキシフェンとを組み合わせる場合に、インビボで抗腫瘍活性が増加することを示す。21日目でのビヒクルコントロールに対する割合としての腫瘍増殖阻害(TGI%)を、フルベストラント及びGDC−0032を単独で投薬したMCF−7/ER+/HER2−マウスで、並びにMCF−7/ER+/HER2−マウスにおける組み合わせで、並びにタモキシフェン及びGDC−0032単独で、並びにMCF−7/ER+/HER2−マウスにおける組み合わせで測定した。GDC−0032とエストロゲンレセプターアンタゴニストであるフルベストラント及びタモキシフェンの両方との組み合わせは単剤と比べてTGIを増加させており、相乗効果を示す。
【0181】
図42は、ビヒクル、パクリタキセル、GDC−0032及びGDC−0032+パクリタキセルの組み合わせを投薬した、MCF−7(PI3K変異体、ER+)乳房異種移植片を有する12匹の免疫無防備状態のマウスのコホートの23日にわたる近似腫瘍体積変化を示す。GDC−0032を経口で(PO)、及び21日わたって毎日(QD、パクリタキセル投薬前日の休薬日を含む)又は5サイクルで4日毎に(Q4D)投薬した。パクリタキセルを7.5mg/kgの薬剤により5サイクルで4日毎に静脈内に投薬した。GDC−0032の両方のレジメン(QD及びQ4D)により、組み合わせの抗腫瘍活性が増強した。各薬剤と比較した場合、40mg/kgのGDC−0032+パクリタキセルで最大の組み合わせ活性を観測した。
【0182】
図43は、ビヒクル、トラスツズマブ、ペルツズマブ、GDC−0032並びにGDC0032+トラスツズマブ及びペルツズマブの三重組み合わせを投薬した、KPL−4(PI3K変異体、Her2+)乳房異種移植片を有する8から10匹の免疫無防備状態のマウスのコホートの21日にわたる近似腫瘍体積変化を示す。GDC−0032を21日にわたり経口(PO)及び毎日(QD)投薬した。トラスツズマブを3mg/kgの薬剤で3週にわたり週に1回腹腔内に投薬し、ペルツズマブを2.5mg/kgの薬剤で3週にわたり週に1回腹腔内に投薬した。GDC−0032により、試験したGDC−0032の全ての用量で組み合わせの抗腫瘍活性が増強した。各薬剤単独又はGDC−0032を含まない組み合わせと比較した場合、1.56−6.25mg/kgのGDC−0032+トラスツズマブ及びペルツズマブで最大の組み合わせ活性を観測した。
【0183】
図44は、ビヒクル、パクリタキセル、カルボプラチン、B20−4.1.1抗マウスVEGF抗体(Bagri等(2010) Clin. Cancer Res. 16:3887;Shrimali等(2010) Cancer Res. 70(15):6171-6180)、GDC−0032並びにGDC−0032+パクリタキセル(PTX)、カルボプラチン+/−B20−4.1.1抗VEGFの三重組み合わせ及び四重組み合わせを投薬した、H292(KRAS変異体)NSCLC(非小細胞肺癌)異種移植片を有する10匹の免疫無防備状態のマウスのコホートの22日にわたる近似腫瘍体積変化を示す。B20−4.1.1は、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)、Genentech Inc.)代用物である(Liang等(2006) Jour. Biol. Chem. 281:951-961)。GDC−0032を21日にわたり経口(PO)及び毎日(QD)投薬した。パクリタキセルを10mg/kgの薬剤で1日目に静脈内に投薬し、カルボプラチンを80mg/kgの薬剤で1日目に腹腔内に投薬し、抗VEGFを5mg/kgの薬剤で3週にわたり週に2回腹腔内に投薬した。GDC−0032により、試験したGDC−0032の全ての用量で組み合わせの抗腫瘍活性が増強した。各薬剤単独又はGDC−0032を含まない組み合わせと比較した場合、5mg/kgのGDC−0032+パクリタキセル(PTX)、カルボプラチン及び抗VEGFで最大の組み合わせ活性を観測した。
【0184】
薬学的組成物及び製剤
本発明の薬学的組成物又は製剤は、GDC−0032と、化学療法剤と、1種又は複数種の薬学的の許容可能な担体、滑剤、希釈剤又は賦形剤との組み合わせを含む。
【0185】
本発明のGDC−0032及び化学療法剤は、例えば水、エタノール等の薬学的に許容可能な溶媒との非溶媒和形態及び溶媒和形態で存在することができ、本発明が溶媒和形態及び非溶媒和形態の両方を包含することが意図される。
【0186】
本発明の化合物はまた様々な互変異性体形態で存在することもでき、そのような形態全てが本発明の範囲内に包含される。用語「互変異性体」又は「互変異性体形態」は、低いエネルギー障壁を介して相互転換可能である、エネルギーが異なる構造異性体を指す。例えば、プロトン互変異性体(プロトン性互変異性体としても知られている)には、プロトンの移動による相互変換、例えばケト−エノール異性化及びイミン−エナミン異性化が含まれる。原子価互変異性体には、結合電子の内のいくつかの再編成による相互変換が含まれる。
【0187】
薬学的組成物は、GDC−0032及び本明細書に記載した追加の薬剤のリストから選択される化学療法剤を含む複数種(例えば2種)の薬学的に活性な薬剤と、任意の薬学的に不活性な賦形剤、希釈剤、担体又は滑剤を含むバルク組成物及び個々の投薬単位の両方を包含する。バルク組成物及びそれぞれ個々の投薬単位は、定量の前述した薬学的に活性な薬剤を含有することができる。バルク組成物とは、個々の投薬単位にまだ形成されていない物質のことである。例示的な投薬単位は、例えば錠剤、丸薬、カプセル剤等の経口投薬単位である。同様に、薬学的組成物を投与することによる患者の処置方法もバルク組成物及び個々の投薬単位の投与を包含することが意図される。
【0188】
薬学的組成物はまた、本明細書に列挙されたものと同一であるが1種又は複数種の原子が天然で通常見出される原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子に置き換えられている本発明の同位体標識化合物も包含する。規定した任意の特定の原子又は元素の全ての同位体が本発明の化合物及びその用途の範囲内であると考えられる。本発明の化合物に組み入れることができる例示的な同位体には、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、塩素及びヨウ素の同位体、例えば
2H、
3H、
11C、
13C、
14C、
13N、
15N、
15O、
17O、
18O、
32P、
33P、
35S、
18F、
36Cl、
123I及び
125Iが含まれる。本発明のある種の同位体標識化合物(例えば
3H及び
14Cで標識したもの)は、化合物及び/又は基質の組織分布アッセイにおいて有用である。トリチウム標識(
3H)同位体及び炭素−14(
14C)同位体は、それらの調製の容易さ及び検出可能性のために有用である。更に、重水素(
2H)等のより重い同位体との置換により、より大きな代謝安定性から生じるある種の治療上の利点(例えば、インビボでの半減期の増加又は必要な投薬量の減少)をもたらすことができ、従って、該置換は、ある環境下では好ましいものであることができる。
15O、
13N、
11C、及び
18F等の陽電子放出同位体は、基質レセプター占有率を調べるための陽電子放出断層撮影(PET)研究に有用である。本発明の同位体標識化合物は一般的に、非同位体標識試薬の代わりに同位体標識試薬を用いることにより、以下の本明細書の実施例で開示したものと類似する手順に従って調製され得る。
【0189】
GDC−0032及び化学療法剤は、ヒトを含む哺乳動物における過剰増殖性障害の治療的処置(予防的処置を含む)のための治療用組み合わせで使用するために、標準的な薬務に従って製剤化される。本発明は、1種又は複数種の薬学的に許容可能な担体、滑剤、希釈剤、添加剤又は賦形剤と共にGDC−0032を含む薬学的組成物を提供する。
【0190】
適切な担体、希釈剤、添加剤及び賦形剤は当業者に公知であり、これらには、炭水化物、ロウ、水溶性ポリマー及び/又は膨潤性ポリマー、親水性の又は疎水性の物質、ゼラチン、油、溶媒、水等の物質が含まれる。使用される具体的な担体、希釈剤又は賦形剤は、本発明の化合物が適用される手段及び目的に依存するだろう。溶媒は一般的に、哺乳動物への投与に安全(GRAS)であると当業者に認識されている溶媒に基づいて選択される。一般的に、安全な溶媒は、水等の無毒な水溶性溶媒、及び水に溶解する又は混和する他の無毒な溶媒である。適切な水性溶媒には、水、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えばPEG400、PEG300)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、クレモフォール(例えばCREMOPHOR EL(登録商標)、BASF)及びこれらの混合物が含まれる。製剤はまた、1種又は複数種の緩衝剤、安定化剤、表面活性剤、湿潤剤、潤滑剤、乳化剤、懸濁剤、防腐剤、抗酸化剤、不透明化剤、滑剤、加工助剤、着色料、甘味料、芳香剤、香料、及び薬剤(即ち、本発明の化合物又はその薬学的組成物)の美しい見栄えをもたらすための又は薬学的製品(即ち医薬)の製造を補助するための他の既知の添加剤を含むこともできる。
【0191】
製剤は、従来の溶解手段及び混合手段を使用して調製され得る。例えば、バルク薬剤物質(即ち、本発明の化合物又は該化合物の安定化形態(例えば、シクロデキストリン誘導体又は他の既知の錯化剤との錯体))を、上述した賦形剤の内の1種又は複数種の存在下で適切な溶媒に溶解させる。本発明の化合物は、典型的には薬学的投薬形態に製剤化され、薬剤の投薬量の制御が容易となり、処方されたレジメンを患者が順守することが可能となる。
【0192】
適用される薬学的組成物(又は製剤)を、薬剤の投与に使用される方法に応じて様々な方法で包装することができる。一般的に、流通用の物品は、適切な形態の薬学的製剤が蓄積されている容器を含む。適切な容器は当業者に公知であり、該容器には瓶(プラスチック及びガラス)、小袋、アンプル、プラスチックバッグ、金属シリンダ等の物質が含まれる。容器はまた、包装の内容物への軽率なアクセスを防止するために、不正開封防止集合体を含むこともできる。加えて、容器には、容器の内容物を説明するラベルが付着されている。ラベルはまた、適切な警告を含むこともできる。
【0193】
本発明の化合物の薬学的製剤を、様々な経路及びタイプの投与用に調製することができる。例えば、所望の程度の純度を有するGDC−0032を、凍結乾燥製剤、粉砕粉末又は水溶液の形態で、薬学的に許容可能な希釈剤、担体、賦形剤又は安定化剤と任意選択的に混合することができる(Remington's Pharmaceutical Sciences (1995) 18th edition, Mack Publ. Co.、イーストン、ペンシルバニア州)。製剤化を、生理学的に許容可能な担体、即ち用いられる投薬量及び濃度でレシピエントに非毒性である担体と適切なpHで、及び所望の程度の純度で、室温にて混合することにより行なうことができる。製剤のpHは特定の用途及び化合物の濃度に主に依存するが、約3から約8の範囲であることができる。
【0194】
薬学的製剤は、好ましくは無菌である。特に、インビボ投与に使用される製剤は無菌でなければならない。そのような無菌化は、無菌ろ過膜を通すろ過により容易に達成される。
【0195】
薬学的製剤を通常、固形組成物、凍結乾燥製剤又は水溶液として保存することができる。
【0196】
本発明の薬学的製剤を、良好な医療行為と一致した様式で、即ち投与の量、濃度、スケジュール、経過、ビヒクル及び経路で投薬する及び投与することができる。これに関連して考慮される因子には、処置される具体的な障害、処置される具体的な哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール及び医師に既知の他の因子が含まれる。そのような考慮が、投与される化合物の「治療上有効な量」に影響を与えることができ、該「治療上有効な量」は、凝固因子媒介障害を予防する、改善する又は処置するのに必要な最小量である。そのような量は好ましくは、ホストに対して毒性である又はホストを有意により出血させ易くさせる量未満である。
【0197】
経口で又は非経口で投与されるGDC−0032の用量当たりの初回の薬学的に有効な量は約0.01−1000mg/kgの範囲であることができ、即ち1日当たり患者の体重の約0.1から20mg/kgであることができ、使用される化合物の典型的な初回の範囲は0.3から15mg/kg/日である。投与されるGDC−0032の用量及び化学療法剤の用量はそれぞれ、単位投薬形態当たり約1mgから約1000mgの範囲であることができ、又は単位投薬形態当たり約10mgから約100mgの範囲であることができる。GDC−0032化合物及び化学療法剤の用量を約1:50から約50:1の重量比で投与することができ、又は約1:10から約10:1の重量比で投与することができる。
【0198】
許容可能な希釈剤、担体、賦形剤及び安定化剤は、用いられる投薬量及び濃度でレシピエント対して非毒性であり、これらには、リン酸、クエン酸及び他の有機酸等の緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えば塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコール若しくはベンジルアルコール;メチルパラベン若しくはプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン若しくは免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン若しくはリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース若しくはデキストリンを含む、単糖類、二糖類及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース若しくはソルビトール等の糖類;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えばZn−タンパク質錯体);及び/又は非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(商標)、CREMOPHOR EL(登録商標)、PLURONICS(商標)、又はポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。活性な薬学的成分を、それぞれコロイド性の薬剤送達系(例えばリポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルションで、例えばコアセルベーション技術により又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えばヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン−マイクロカプセル及びポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に捕捉することもできる。そのような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 18th edition、(1995)Mack Publ.Co.、Easton、PAに開示されている。
【0199】
GDC−0032及び化学療法化合物の徐放性製剤を調製することができる。徐放性製剤の適切な例には、GDC−0032を含有する固形の疎水性ポリマーの半透性マトリクスが含まれ、マトリクスは成形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ハイドロゲル(例えばポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許3773919号)、L−グルタミン酸とガンマ−エチル−L−グルタメートとのコポリマー、非分解性のエチレン−酢酸ビニル、分解性の乳酸−グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマー及び酢酸リュープロリドから構成される注射可能なミクロスフェア)並びにポリ−D(−)3−ヒドロキシ酪酸が含まれる。
【0200】
薬学的製剤には、本明細書で詳述した投与経路に適したものが含まれる。製剤を好都合なことに単位投薬形態で提供することができ、及び薬学の分野で公知の任意の方法により調製することができる。技術及び製剤は一般的に、Remington’s Pharmaceutical Sciences 18
thEd.(1995)Mack Publishing Co.、Easton、PA中に見出される。そのような方法は、活性成分と1種又は複数種の副成分を構成する担体とを会合させる工程を含む。一般的に、製剤は、活性成分と、液状担体若しくは微細に分割された固形担体又は両方とを均一に及び十分に会合させ、次いで必要に応じて生成物を成形することにより調製される。
【0201】
経口投与に適したGDC−0032及び/又は化学療法剤の製剤を別々の単位として調製することができ、例えばそれぞれが所定量のGDC−0032及び/又は化学療法剤を含有する、丸薬、硬カプセル剤若しくは柔カプセル剤、例えばゼラチンカプセル剤、カシェ剤、トローチ、ロゼンジ、水性若しくは油性の懸濁液、分散性の粉末若しくは顆粒、エマルション、シロップ又はエリキシル剤として調製することができる。所定量のGDC−0032及び所定量の化学療法剤を、組み合わせ製剤として丸薬、カプセル剤、溶液又は懸濁液に製剤化することができる。あるいは、GDC−0032及び化学療法剤を、交互投与用の丸薬、カプセル剤、溶液又は懸濁液に別々に製剤化することができる。
【0202】
製剤を、薬学的組成物を製造するための当分野で既知の任意の方法に従って調製することができ、そのような組成物は、口当たりが良い製剤を提供するために、甘味料、香料、着色料及び保存料を含む1種又は複数種の薬剤を含有することができる。任意選択的にバインダー、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、界面活性剤又は分散剤と混合した、粉末又は顆粒等の自由に流動する形態で活性成分を適切な機械で圧縮することにより、圧縮錠剤を調製することができる。不活性な液状希釈剤で湿らせた粉末化活性成分の混合物を適切な機械で成形することにより、湿製錠剤を作ることができる。任意選択的に錠剤を被覆することでき、又は錠剤に割線を入れることができ、及び任意選択的に錠剤からの活性成分の放出を遅延させる又は制御するように錠剤を製剤化することができる。
【0203】
本発明の薬学的製剤の錠剤賦形剤は、錠剤を構成する粉末化薬剤のバルク体積を増加させるためのフィラー(又は希釈剤);摂取される場合に錠剤の小さな断片への、理想的には個々の薬剤粒子への分解を助長し、薬剤の速やかな溶解及び吸収を促進するための崩壊剤;顆粒及び錠剤を必要とされる機械的強度で形成することができ、該顆粒及び錠剤が圧縮された後に共に錠剤を保持することができ、包装、輸送及び通常の取り扱い中における成分粉末への分解が防止され得るようにするためのバインダー;製造中に錠剤を構成する粉末の流動性を改善するための滑剤;製造中に錠剤をプレスするのに使用される装置に錠剤化粉末が付着しないようにするための潤滑剤、潤滑剤は、完成した錠剤が装置から放出される場合に、プレスを通過する粉末化混合物の流れを改善し、並びに摩擦及び破損を最小化する;滑剤と類似の機能を有し、製造中に、錠剤を構成する粉末と錠剤の形状を打ち抜くために使用される機械との間の付着を低減する抗付着剤;錠剤により心地よい味を与えるために又は不快な味をマスクするために錠剤に組み入れられるフレーバー、並びに認識及び患者コンプライアンスを補助するための着色料を含むことができる。
【0204】
錠剤の製造に適している非毒性の薬学的に許容可能な賦形剤との混合物で活性成分を含有する錠剤が許容可能である。これらの賦形剤は、例えば炭酸カルシウム又は炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウム等の不活性希釈剤;トウモロコシデンプン又はアルギン酸等の顆粒化剤及び崩壊剤;デンプン、ゼラチン又はアカシア等の結合剤;及びステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルク等の潤滑剤であることができる。錠剤は非被覆であることができ、又は消化管中での崩壊及び吸着を遅延させるためのマイクロカプセル化を含む既知の技術で錠剤を被覆することができ、これにより長期間にわたる持続作用がもたらされる。例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリル等の時間遅延物質を単独で又はロウと共に用いることができる。
【0205】
目又は他の外部組織、例えば口及び皮膚を処置するために、製剤は、好ましくは例えば0.075から20%w/wの量で活性成分を含有する局所用の軟膏又はクリームとして適用される。軟膏に製剤化される場合、活性成分をパラフィン系の又は水混和性の軟膏基剤と共に用いることができる。あるいは、水中油型クリーム基剤により活性成分をクリームに製剤化することができる。
【0206】
クリーム基剤の水性相は、多価アルコール、即ち2個以上のヒドロキシル基を有するアルコール、例えばプロピレングリコール、ブタノン1,3−ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール及びポリエチレングリコール(PEG400を含む)並びにこれらの混合物を含むことができる。局所用製剤は望ましくは、皮膚又は他の患部を通して活性成分の吸収又は浸透を増強させる化合物を含むことができる。そのような皮膚浸透増強剤の例には、ジメチルスルホキシド及び関連類似体が含まれる。
【0207】
本発明のエマルションの油性相は、少なくとも1種の乳化剤と脂肪若しくは油との又は脂肪及び油の両方との混合物を含む、既知の方法で既知の成分から構成され得る。好ましくは、親水性乳化剤が、安定化剤として作用する親油性乳化剤と一緒に含まれる。併せて、安定化剤を伴う又は伴わない乳化剤は乳化ロウを構成し、ロウは油及び脂肪と一緒に、クリーム製剤の油性分散相を形成する乳化軟膏基剤を構成する。本発明の製剤での使用に適した乳化剤及びエマルション安定化剤には、Tween(登録商標)60、Span(登録商標)80、セトステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ミリスチルアルコール、モノ−ステアリン酸グリセリル及びラウリル硫酸ナトリウムが含まれる。
【0208】
本発明の薬学的製剤の水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤との混合物で活性物質を含有する。そのような賦形剤には、懸濁剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスカルメロース、ポビドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム及びアカシアガム、並びに分散剤又は湿潤剤、例えば天然に生じるリン脂質(例えばレシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合産物(例えばステアリン酸ポリオキシエチレン)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合産物(例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール無水物由来の部分エステルとの縮合産物(例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)が含まれる。水性懸濁液はまた、p−ヒドロキシ安息香酸エチル又はp−ヒドロキシ安息香酸n−プロピル等の1種又は複数種の防腐剤、1種又は複数種の着色料、1種又は複数種の香料、及びスクロース又はサッカリン等の1種又は複数種の甘味料を含有することができる。
【0209】
薬学的組成物は、無菌注射用製剤の形態であることができ、例えば無菌注射用水性懸濁液又は無菌注射用油性懸濁液であることができる。この懸濁液を、上述した好適な分散剤又は湿潤剤と懸濁剤とを使用する既知の技術に従って製剤化することができる。無菌注射用製剤は、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤若しくは溶媒の溶液若しくは懸濁液であることができ、例えば1,3−ブタンジオール溶液であることができ、又は該無菌注射用製剤を凍結乾燥粉末から調製することができる。用いることができる許容可能なビヒクル及び溶媒には、水、リンガー溶液及び等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、無菌固定油を、溶媒又は懸濁媒質として慣習的に用いることができる。この目的のために、合成モノグリセリド又は合成ジグリセリドを含む任意の無刺激の固定油を用いることができる。加えて、オレイン酸等の脂肪酸も同様に、注射剤の調製に使用することができる。
【0210】
単一投薬形態を作るために担体物質と組み合わせることができる活性成分の量は、処置されるホスト及び投与の具体的な態様に応じて変化することができる。例えば、ヒトへの経口投与を目的とするタイムリリース製剤は、全組成物の約5%から約95%(重量:重量)へと変化することができる適切で好都合な量の担体物質と共に調合される約1から1000mgの活性物質を含有することができる。投与のために容易に測定可能な量をもたらように薬学的組成物を調製することができる。例えば、約30mL/hrの速度で適切な体積の点滴を行なうことができるように、静脈内点滴を目的とする水溶液は溶液1ミリリットル当たり約3から500μgの活性成分を含有することができる。
【0211】
非経口投与に適した製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤及び製剤を目的のレシピエントの血液と等張にする溶質を含有することができる水性の及び非水性の無菌注射用溶液;並びに懸濁剤及び増粘剤を含むことができる水性の及び非水性の無菌懸濁液が含まれる。
【0212】
目への局所投与に適した製剤には、活性成分が好適な担体中に、特に活性成分用の水性溶媒中に溶解している又は懸濁されている点眼剤も含まれる。そのような製剤中に、活性成分は好ましくは約0.5から20%w/wの、例えば約0.5から10%w/wの、例えば約1.5%w/wの濃度で存在する。
【0213】
口への局所投与に適した製剤には、香味基剤中に、通常はスクロール及びアカシア又はトラガカント中に活性成分を含むロゼンジ;ゼラチン及びグリセリン、又はスクロール及びアカシア等の不活性基剤中に活性成分を含む香錠;並びに適切な液状担体中に活性成分を含むうがい薬が含まれる。
【0214】
直腸投与用の製剤を、例えばココアバター又はサリチレートを含む適切な基剤を有する坐薬として提供することができる。
【0215】
肺内投与又は経鼻投与に適した製剤は、例えば0.1から500ミクロンの範囲の粒径(例えば0.5、1、30ミクロン、35ミクロン等のミクロン刻みで0.1から500ミクロンの範囲の粒径を含む)を有し、該製剤は、鼻経路を通って速やかに吸入されることにより又は肺胞嚢に達するように口を通って吸入されることにより投与される。適切な製剤には、活性成分の水性溶液又は油性溶液が含まれる。エアゾール又は乾燥粉末投与に適した製剤を従来の方法に従って調製することができ、及び以下に記載するように障害の処置又は予防に従来使用されている化合物等の他の治療薬と共に送達することができる。
【0216】
膣投与に適した製剤を、適切であることが当分野で知られている担体を活性成分に加えて含有する、膣坐薬、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレー製剤として提供することができる。
【0217】
製剤を、単位用量の又は複数用量の容器に、例えば密閉されたアンプル及びバイアルに包装することができ、使用直前に注射用の無菌液状担体の、例えば水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)条件下で保存することができる。即時注射の溶液及び懸濁液は、既に記載した種類の無菌粉末、顆粒及び錠剤から調製される。好ましい単位投薬製剤は、活性成分の本明細書において前述した毎日の投薬若しくは毎日の副投薬単位又はその適切な画分を含有するものである。
【0218】
本発明は、獣医学的担体と一緒に、上記で定義した少なくとも1種の活性成分を含む獣医学的組成物を更に提供する。獣医学的担体は組成物を投与する目的に有用な物質であり、並びに不活性又は獣医学分野で許容可能であり及び活性成分と相溶性である固体物質、液体物質又は気体物質であることができる。これらの獣医学的組成物は、非経口的に、経口的に又は任意の他の所望の経路により投与することができる。
【0219】
組み合わせ治療
GDC−0032を、前悪性の及び非腫瘍性の又は非悪性の過剰増殖性障害と共に、固形腫瘍又は造血器腫瘍を含む過剰増殖性障害の処置用のある種の化学療法剤との組み合わせで用いることができる。ある実施態様では、GDC−0032は単一の錠剤、丸薬、カプセル剤又は溶液としての単一製剤で化学療法剤と組み合わされ、該組み合わせが同時に投与される。他の実施態様では、GDC−0032及び化学療法剤は、GDC−0032と5−FU、ドセタキセル、エリブリン、ゲムシタビン、GDC−0973、GDC−0623、パクリタキセル、タモキシフェン、フルベストラント、デキサメタゾン、ペルツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、トラスツズマブ及びレトロゾールから選択される化学療法剤との順次投与用の別々の錠剤、丸薬、カプセル剤又は溶液としての別々の製剤で投薬レジメン又は治療経過に従って投与される。化学療法剤は抗過剰増殖特性を有し、又は過剰増殖性障害の処置に有用である。GDC−0032と化学療法剤との組み合わせは相乗特性を有することができる。薬学的組み合わせ製剤又は投与レジメンの化学療法剤は、好ましくはGDC−0032に対する補完活性を有し、その結果、化学療法剤及びGDC−0032は互いに悪影響を与えない。治療用組み合わせのそのような化合物を、意図した目的に有効な量で投与することができる。一実施態様では、本発明の薬学的製剤は、GDC−0032及び本明細書に記載されたような化学療法剤を含む。別の実施態様では、治療用組み合わせは投薬レジメンにより投与され、ここで、治療上有効な量のGDC−0032が1日に2回から3週毎に1回(q3wk)の範囲で投与され、治療上有効な量の化学療法剤が1日に2回から3週毎に1回の範囲で別々に、交互に投与される。
【0220】
本発明の治療用組み合わせは、過剰増殖性障害の処置において別々に、同時に又は順次に使用するための、GDC−0032と、5−FU、ドセタキセル、エリブリン、ゲムシタビン、GDC−0973、GDC−0623、パクリタキセル、タモキシフェン、フルベストラント、デキサメタゾン、ペルツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、トラスツズマブ及びレトロゾールから選択される化学療法剤とを含む。
【0221】
組み合わせ治療を、同時レジメン又は順次レジメンとして投与することができる。順次に投与する場合、組み合わせを2回以上の投与で投与することができる。組み合わせ投与には、別々の製剤又は単一の薬学的製剤を使用する同時投与、及び好ましくは両方の(又は全ての)活性な薬剤が同時にそれらの生物学的活性を発揮させる期間がある何れかの順での逐次投与が含まれる。
【0222】
上記の同時投与薬剤の何れかに適切な投薬量は現在使用されているものであり、該投薬量を、新たに同定された薬剤及び他の化学療法剤又は処置の組み合わせ作用(相乗作用)に起因して、例えば治療指数を増加させる又は毒性又は他の副作用若しくは事象を緩和するために低下させることができる。
【0223】
抗腫瘍治療の特定の実施態様では、治療用組み合わせを、アジュバント治療として手術治療及び放射線治療と組み合わせることができる。本発明に係る組み合わせ治療は、GDC−0032の投与と、1種又は複数種の癌処置の方法又は様式とを含む。GDC−0032及び化学療法剤の量と投与の相対的なタイミングとを、所望の組み合わせ治療効果を達成するために選択することができる。
【0224】
薬学的組成物の投与
本発明の治療用組み合わせを、処置する状態に適した任意の経路により投与することができる。適切な経路には、経口、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、吸入、皮内、くも膜下腔内、髄腔外及び注入法を含む)、経皮、直腸、経鼻、局所(頬側及び舌下を含む)、膣、腹腔内、肺内並びに鼻腔内が含まれる。局所投与には、経皮パッチ又はイオン泳動装置等の経皮投与の使用も含まれ得る。薬剤の製剤化がRemington’s Pharmaceutical Sciences,18
thEd.、(1995)Mack Publishing Co.、Easton、PAで論じられている。薬剤の製剤化の他の例を、Liberman,H.A.及びLachman,L.編、Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Decker、Vol3、2
ndEd.、New York、NY中に見出すこともできる。局所的な免疫抑制処置のために、化合物を、移植前に移植片と阻害剤とを灌流する又は接触させることを含む病巣内投与により投与することができる。当然のことながら、好ましい経路を例えばレシピエントの状態によって変更することができる。化合物が経口投与される場合、化合物を、薬学的に許容可能な担体、滑剤又は賦形剤と共に丸薬、カプセル剤、錠剤等として製剤化することができる。化合物が非経口的に投与される場合、以下に詳述するように、化合物を、薬学的に許容可能な非経口のビヒクル又は希釈剤と共に及び単位投薬注射可能な形態で製剤化することができる。
【0225】
ヒト患者を処置するための用量は、約1mgから約1000mgのGDC−0032の範囲であることができ、例えば約5mgから約20mgの化合物の範囲であることができる。用量を、具体的な化合物の吸収、分布、代謝及び排出を含む薬物動態学的(PK)特性及び薬力学的(PD)特性に応じて、1日に1回(QD)、1日当たり2回(BID)又はより頻繁に投与することができる。加えて、毒性要因が投薬量及び投与投薬レジメンに影響を及ぼす可能性がある。経口投与される場合、丸薬、カプセル剤又は錠剤を、特定の期間にわたり1日に2回、毎日又は低い頻度、例えば毎週、2週に1回又は3週に1回、摂取させることができる。レジメンを多くの治療サイクルにわたり繰り返すことができる。
【0226】
処置方法
本発明の方法には:
バイオマーカーの同定に基づく診断方法;
患者がGDC−0032又はGDC−0032と化学療法剤との組み合わせに反応することができるかどうかの決定方法;
GDC−0032又はGDC−0032と化学療法剤との組み合わせのクリアランスをモニタリングすることによる、治療効果の最適化方法;
治療耐性変異の発生をモニタリングすることによる、GDC−0032又はGDC−0032と化学療法剤との組み合わせの治療レジメンの最適化方法;並びに
GDC−0032治療による又はGDC−0032と化学療法剤との組み合わせ治療による処置が最も有効である患者の同定方法、及びGDC−0032治療による又はGDC−0032と化学療法剤との組み合わせ治療による処置に対する患者の感受性及び応答性に関する患者のモニタリング方法
が含まれる。
【0227】
本発明の方法は、哺乳動物(例えばヒト)における異常細胞増殖の阻害に又は癌等の過剰増殖性障害の処置に有用である。例えば、本方法は、哺乳動物(例えばヒト)における多発性骨髄腫、リンパ腫、白血病、前立腺癌、乳癌、肝細胞癌腫、膵臓癌及び/又は大腸癌の診断、モニタリング及び処置に有用である。
【0228】
(1)GDC−0032と(2)化学療法剤との治療用組み合わせは、PI3キナーゼ経路の活性化を特徴とするものを含むがこれに限定されない疾患、状態及び/又は障害の処置に有用である。従って、本発明の別の態様は、PI3を含む脂質キナーゼを阻害することにより処置することができる疾患又は状態の処置方法を含む。一実施態様では、固形腫瘍又は造血器腫瘍の処置方法は、治療用組み合わせを組み合わせ製剤として又は交互に哺乳動物に投与することを含み、治療用組み合わせは、治療上有効な量のGDC−0032と、5−FU、ドセタキセル、エリブリン、ゲムシタビン、GDC−0973、GDC−0623、パクリタキセル、タモキシフェン、フルベストラント、デキサメタゾン、ペルツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、トラスツズマブ及びレトロゾールから選択される治療上有効な量の1種又は複数種の化学療法剤とを含む。(1)GDC−0032と(2)化学療法剤との治療用組み合わせを、前癌性の及び非腫瘍性の又は非悪性の過剰増殖性障害と共に、造血器腫瘍、腫瘍、癌及び腫瘍生組織を含む過剰増殖性の疾患又は障害の処置に用いることができる。一実施態様では、ヒト患者は治療用組み合わせと薬学的に許容可能な担体、アジュバント又はビヒクルとで処置され、前記治療用組み合わせのGDC−0032又はその代謝産物は、PI3キナーゼ活性を検出可能な程度に阻害する量で存在する。
【0229】
造血器腫瘍には、非ホジキンリンパ腫、びまん性大型造血リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ種、慢性のリンパ性白血病、多発性骨髄腫、AML及びMCLが含まれる。
【0230】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の疾患又は状態を罹患している哺乳動物における、例えばヒトにおけるそのような疾患又は状態の処置に使用するための薬学的組成物又は治療用組み合わせを提供する。また、本明細書に記載の障害を罹患している温血動物における、例えばヒト等の哺乳動物における本明細書に記載の疾患及び状態の処置用の医薬の調製での薬学的組成物の使用も提供される。
【0231】
製造品
本発明の別の実施態様では、上述した疾患及び障害の処置に有用なGDC−0032を含有する製造品又は「キット」が提供される。一実施態様では、キットはGDC−0032を含む容器を含む。キットは、容器上に又は容器と関連してラベル又はパッケージ挿入物を更に含むことができる。用語「パッケージ挿入物」は、治療用製品の市販のパッケージに慣習的に含まれる説明書を指すために使用され、そのような治療用製品の使用に関する指示、用法、投薬量、投与法、禁忌及び/又は警告についての情報が含まれる。適切な容器には、例えば瓶、バイアル、シリンジ、ブリスターパック等が含まれる。容器を、ガラス又はプラスチック等の様々な材料から形成することができる。容器は、状態を処置するのに有効なGDC−0032又はその製剤を収容することができ、無菌アクセスポートを有することができる(例えば、容器は、皮下注射針で貫通可能なストッパを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであることができる)。組成物中の少なくとも1種の活性な薬剤はGDC−0032である。ラベル又はパッケージ挿入物は、組成物が癌等の選択した状態の処置に使用されることを示す。一実施態様では、ラベル又はパッケージ挿入物は、異常細胞増殖から生じる障害の処置に式Iの化合物を含む組成物を使用することができることを示す。ラベル又はパッケージ挿入物はまた、他の障害の処置に組成物を使用することができることも示すことができる。あるいは又は加えて、製造品は、薬学的に許容可能な緩衝液、例えば注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンガー溶液及びデキストロース溶液を含む第2の容器を更に含むこともできる。第2の容器は、他の緩衝液、希釈剤、フィルタ、針及びシリンジを含む、商業的な及び使用者の観点から望ましい他の物質を更に含むことができる。
【0232】
キットは、GDC−0032と存在する場合には第2の薬学的製剤との投与に関する説明書を更に含むことができる。例えば、キットがGDC−0032を含む第1の組成物と第2の薬学的製剤とを含む場合、キットは、第1の及び第2の薬学的組成物の、それを必要とする患者への同時の、順次の又は別々の投与に関する説明書を更に含むことができる。
【0233】
別の実施態様では、キットは、錠剤又はカプセル剤等のGDC−0032の固形経口形態の送達に適している。そのようなキットは、多くの単位投薬量を好ましくは含む。そのようなキットは、それらの意図した使用の順に配列された投薬量を有するカードを含むことができる。そのようなキットの一例は「ブリスターパック」である。ブリスターパックは包装産業において公知であり、薬学的単位投薬形態の包装に広く使用されている。必要に応じて、例えば数字、文字又は他のマークの形態で、又は投薬量が投与される処置スケジュールにおける日を指定するカレンダー挿入物により、記憶を補助することができる。
【0234】
一実施態様によれば、キットは、(a)GDC−0032が収容された第1の容器;及び任意選択的に(b)第2の薬学的製剤が収容された第2の容器を含むことができ、第2の薬学的製剤は、抗過剰増殖性活性を有する第2の化合物を含む。あるいは又は加えて、キットは、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液及びデキストロース溶液等の薬学的に許容可能な緩衝液を含む第3の容器を更に含むことができる。第3の容器は、他の緩衝液、希釈液、フィルタ、針及びシリンジを含む、商業的な及び使用者の観点から望ましい他の物質を更に含むことができる。
【0235】
キットがGDC−0032と第2の治療剤、即ち化学療法剤とを含む場合、キットは、分割された瓶又は分割されたホイルパケット等の、別々の組成物を収容するための容器を含むことができるが、別々の組成物を単一の分割されていない容器内に収容することもできる。典型的には、キットは、別々の成分を投与するための説明書を含む。別々の成分が異なる投薬形態(例えば経口及び非経口)で好ましく投与される場合、異なる投薬間隔で投与される場合、又は処方医師による組み合わせの個々の成分の用量設定が望まれる場合、キット形態は特に有利である。
【実施例】
【0236】
実施例1 2−(4−(2−(1−イソプロピル−3−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)−2−メチルプロパンアミド(GDC−0032)
工程1: 2−(4−(2−(1−イソプロピル−3−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)−2−メチルプロパン酸エチル
【0237】
9−ブロモ−2−(1−イソプロピル−3−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン(500mg、0.001mol)と、2−メチル−2−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)プロパン酸エチル(594mg、0.0015mol)とを、マイクロ波(uW)、Pd(dppf)Cl
2及びCs
2CO
3、水並びにジメトキシエタンを含むパラジウム触媒鈴木カップリング条件下で反応させ、対応する酸と一緒に2−(4−(2−(1−イソプロピル−3−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)−2−メチルプロパン酸エチルを得た。LC/MS(ESI+):m/z490(M+H)
【0238】
工程2: 2−(4−(2−(1−イソプロピル−3−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)−2−メチルプロパン酸
【0239】
2−(4−(2−(1−イソプロピル−3−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)−2−メチルプロパン酸エチル(250mg、0.5mmol)を、水(2mL)及びメタノール(1mL)中において1Mの水酸化リチウムで処理した。反応物を12時間にわたり室温で撹拌した。10%クエン酸水によりpH5に酸性化し、EtOAcで2回抽出した。組み合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥させて濃縮した。反応生成物2−(4−(2−(1−イソプロピル−3−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)−2−メチルプロパン酸を、更なる精製工程にかけることなく使用した。LC/MS(ESI+):m/z462(M+H)。
1H NMR (500MHz, DMSO) δ 8.44 (s, 1H), 8.36 (d, J=8.4, 1H), 7.97 (s, 1H), 7.86 (s, 1H), 7.44 (dd, J=8.4, 1.7, 1H), 7.35 (d, J=1.7, 1H), 5.82 (dt, J=13.1, 6.6, 1H), 4.52 (s, 4H), 2.25 (s, 3H), 1.78 (s, 6H), 1.45 (t, J=13.9, 6H)
【0240】
工程3: 2−(4−(2−(1−イソプロピル−3−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)−2−メチルプロパン酸(90mg、0.2mmol)をDMF(2mL)に溶解させ、NH
4Cl(40mg、0.8mmol)、DIPEA(0.3mL、2mmol)、続いてN,N,N’,N’−テトラメチル−O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU、100mg、0.4mmol)で処理した。混合物を2時間にわたり室温で撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウムを添加し、混合物をETOAcで抽出した。組み合わせた有機物を硫酸ナトリウム上で乾燥させて濃縮した。粗物質を、最小のEtOAcによる倍散後に10%MeOH/ETOAcで精製し、74mg(82%収率)の2−(4−(2−(1−イソプロピル−3−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)−2−メチルプロパンアミド(GDC−0032、CAS登録番号1282512−48−4)を生成した。LC/MS(ESI+):m/z463(M+H)。
1H NMR (500MHz, DMSO) δ 8.44-8.26 (m, 2H), 8.01 (s, 1H), 7.86 (s, 1H), 7.44 (dd, J=8.4, 1.8, 1H), 7.35 (d, J=1.7, 1H), 7.15 (s, 1H), 6.79 (s, 1H), 5.82 (dt, J=13.3, 6.6, 1H), 4.52 (s, 4H), 2.25 (s, 3H), 1.75 (s, 6H), 1.47 (d, J=6.6, 6H)
【0241】
実施例2 p110α(アルファ)PI3K結合アッセイ
結合アッセイ: 最初の偏光実験を、Analyst HT96−384(Molecular Devices Corp、サニーベール、カリフォルニア州)で実施した。偏光緩衝液(10mMのトリスpH7.5、50mMのNaCl、4mMのMgCl
2、0.05%のChaps及び1mMのDTT)中20μg/mLの最終濃度で始まるp110アルファPI3Kの1:3段階希釈物(Upstate Cell Signaling Solutions、シャーロッツビル、バージニア州)を最終濃度10mMのPIP
2(Echelon−Inc.、ソルトレイクシティ、ユタ州)に添加することにより、蛍光偏光親和性測定用の試料を調製した。室温での30分のインキュベーション時間後、それぞれ100nM及び5nMの最終濃度のGRP−1及びPIP3−TAMRAプローブ(Echelon−Inc.、ソルトレイクシティ、ユタ州)の添加により反応を停止させた。384ウェルのブラック低容量Proxiplates(登録商標)(PerkinElmer、ウェルズリー、マサチューセッツ州)中のローダミンフルオロフォア(λex=530nm;λem=590nm)用の標準的なカットオフフィルタによる読み取り。蛍光偏光値を、タンパク質濃度の関数としてプロットした。KaleidaGraph(登録商標)ソフトウェア(Synergy software、レディング、ペンシルベニア州)を使用してデータを4パラメータ方程式に当てはめることにより、EC
50値を得た。この実験はまた、後の阻害剤との競合実験において使用する適切なタンパク質濃度も規定する。
【0242】
PIP
2(10mMの最終濃度)と組み合わせた0.04mg/mLのp110アルファPI3K(最終濃度)の、偏光緩衝液中最終濃度25mMのATP(Cell Signaling Technology,Inc.、ダンバーズ、マサチューセッツ州)におけるアンタゴニストの1:3段階希釈物を含有するウェルへの添加により、阻害剤のIC
50値を決定した。室温での30分のインキュベーション時間後、それぞれ100nM及び5nMの最終濃度のGRP−1及びPIP3−TAMRAプローブ(Echelon−Inc.、ソルトレイクシティ、ユタ州)の添加により反応を停止させた。384ウェルのブラック低容量Proxiplates(登録商標)(PerkinElmer、ウェルズリー、マサチューセッツ州)中のローダミンフルオロフォア(λex=530nm;λem=590nm)用の標準的なカットオフフィルタによる読み取り。蛍光偏光値をアンタゴニスト濃度の関数としてプロットし、Assay Explorerソフトウェア(MDL、サンラモン、カリフォルニア州)でデータを4パラメータ方程式に当てはめることにより、IC
50値を得た。
【0243】
あるいは、精製した組み換え酵素及びATPを1μM(マイクロモル濃度)の濃度で使用する放射測定アッセイでPI3Kの阻害を決定した。化合物を100%DMSOで段階希釈した。キナーゼ反応物を室温で1時間にわたりインキュベートし、PBSの添加により反応を終了させた。その後、シグモイド用量反応曲線の当てはめ(可変勾配)を使用してIC
50値を決定した。
【0244】
実施例3 インビトロ細胞増殖アッセイ
以下のプロトコル(Mendoza等(2002) Cancer Res. 62:5485-5488)を用いる細胞増殖アッセイにより、GDC−0032及び化学治療化合物の有効性を評価した。
【0245】
CellTiter−Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイはATPの存在の定量化に基づいて、培養液中の生細胞の数を決定するための均一法であり、ATPの存在は代謝的に活性な細胞の存在を示す。CellTiter−Glo(登録商標)アッセイは、マルチウェルプレートフォーマットと共に使用するように設計されており、自動化高スループットスクリーニング(HTS)アッセイ、細胞増殖アッセイ及び細胞傷害性アッセイに理想的なものになっている。均一アッセイの手順は、血清補充培地で培養した細胞に単一試薬(CellTiter−Glo(登録商標)試薬)を直接添加することを含む。細胞の洗浄工程、培地の除去工程又は複数回のピペット操作工程は必要ではない。試薬及びプロコトルを含むCellTiter−Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイは商業的に入手可能である(Promega Corp.、マディソン、ウィスコンシン州、Technical Bulletin TB288)。
【0246】
本アッセイにより、化合物が細胞に入って細胞増殖を阻害する能力が評価される。本アッセイの原理は、CellTiter−Glo(登録商標)試薬の添加により細胞溶解とルシフェラーゼ反応を介した発光シグナルの生成とがもたらされる均一アッセイにおいてATPの存在を定量化することによる、存在する生細胞の数の決定に基づく。発光シグナルは、存在するATPの量に比例する。
【0247】
手順: 1日目−細胞プレート(Falcon#353962の384ウェル ブラック、透明な底部、マイクロクリア、蓋つきTCプレート)播種、細胞を収集し、3日のアッセイにわたり384ウェル細胞プレート中に1000個の細胞/54μl/ウェルで細胞を播種する。細胞培養培地: RPMI又はDMEM高グルコース、10%ウシ胎仔血清、2mMのL−グルタミン、P/S。5%CO
2、37℃でインキュベートO/N(終夜)。
【0248】
2日目−細胞、化合物希釈液、DMSOプレート(9ポイントについて1:2段階希釈)に薬剤を添加する。96ウェルプレートの2番目のカラム中に10mMで20μlの化合物を添加する。Nuncの精密培地プレート96ウェル円錐底ポリプロピレンプレート(カタログ番号249946)(1:50希釈)を使用して、全9ポイントについてプレート全体で1:2段階希釈を実施する(10μl+20μlの100%DMSO)。147μlの培地を全てのウェルに添加する。Rapidplate(登録商標)(Caliper、a Perkin−Elmer Co.)を使用して、DMSOプレート中の各ウェルから3μlのDMSO+化合物を培地プレート上の各対応するウェルに移す。2種の薬剤の組み合わせを研究するために、DMSOプレート中の各ウェルからの1.5μlのDMSO+化合物である一方の薬剤を、Rapidplateを使用して培地プレート上の各対応するウェルに移す。次いで、別の薬剤1.5μlを培地プレートに移す。
【0249】
細胞、細胞プレート(1:10希釈)への薬剤の添加:6μlの培地+化合物を細胞(既に細胞上に54μlの培地)に直接添加する。頻繁に開けられないであろうインキュベーター中において5%CO
2、37℃で3日間インキュベートする。
【0250】
5日目−プレートを展開し、室温でCell Titer Glo緩衝液を解凍する:細胞プレートを37℃から取り出し、約30分にわたり室温に平衡化する。Cell Titer−Glo(登録商標)緩衝液をCell Titer−Glo(登録商標)基質に添加する(瓶から瓶へ)。30μlのCell Titer−Glo(登録商標)試薬(Promegaカタログ番号G7572)を細胞の各ウェルに添加する。約30分にわたりプレート振盪機上に置く。Analyst HTプレートリーダー上で発光を読み取る(ウェル当たり0.5秒)。
【0251】
細胞生存率アッセイ及び組み合わせアッセイ: 16時間にわたり384ウェルプレート中に1000−2000個の細胞/ウェルで細胞を播種した。2日目に、96ウェルプレート中においてDMSOで9回の段階1:2化合物希釈を行なった。Rapidplate(登録商標)ロボット(Zymark Corp.、ホプキントン、マサチューセッツ州)を使用して、化合物を増殖培地中に更に希釈した。次いで、希釈した化合物を384ウェル細胞プレート中の4組のウェルに添加し、37℃及び5%CO
2でインキュベートした。4日後、生細胞の相対数を、製造者の指示に従ってCell Titer−Glo(登録商標)(Promega)を使用して発光により測定し、Wallac Multilabel Reader(登録商標)(PerkinElmer、フォスターシティ)で読み取った。Prism(登録商標)4.0ソフトウェア(GraphPad、サンディエゴ)を使用してEC
50値を算出した。組み合わせアッセイにおいては、薬剤を4×EC
50濃度で開始して投薬した。薬剤のEC
50が>2.5μMであった場合、使用した最高濃度は10μMであった。全てのアッセイにおいて、GDC−0032及び化学療法剤を同時に又は4時間を空けて(他方の前に一方を)添加した。
【0252】
更なる例示的なインビトロ細胞増殖アッセイは以下の工程を含む:
1.培地中に約10
4個の細胞を含有する100μlの細胞培養物のアリコート(細胞株及び腫瘍タイプに関して表3を参照)を、384ウェルの不透明な壁のプレートの各ウェル中に沈着させた。
2.培地を含有するが細胞を含有しないコントロールウェルを調製した。
3.化合物を実験ウェルに添加し、3−5日にわたりインキュベートした。
4.プレートを約30分にわたり室温に平衡化した。
5.各ウェル中に存在する細胞培養培地の体積と等しい体積のCellTiter−Glo(登録商標)試薬を添加した。
6.内容物を軌道振盪機上で2分にわたり混合して細胞溶解を誘発した。
7.プレートを10分にわたり室温でインキュベートし、発光シグナルを安定化させた。
8.発光を記録し、RLU=相対発光単位としてグラフで報告した。
9.Chou及びTalalayの組み合わせ法及びCalcuSyn(登録商標)ソフトウェア(Biosoft、ケンブリッジ、イギリス)による用量効果解析を使用して分析し、組み合わせ指数を得る。
【0253】
あるいは、細胞を96ウェルプレートに最適密度で播種し、試験化合物の存在下で4日にわたりインキュベートした。その後、Alamar Blue(商標)をアッセイ培地に添加し、細胞を6時間にわたりインキュベートした後に544nmの励起、590nmの発光で読み取った。シグモイド用量反応曲線の当てはめを使用してEC
50値を算出した。
【0254】
あるいは、Cell Titer−Glo(登録商標)試薬(Promega Inc.、マディソン、ウィスコンシン州)を使用して増殖/生存率を薬物処理から48時間後に分析した。全ての生存率アッセイにおいてDMSO処理をコントロールとして使用した。XLフィットソフトウェア(IDBS、アラメダ、カリフォルニア州)を使用してIC
50値を算出した。
【0255】
細胞株を、ATCC(アメリカンタイプカルチャーコレクション、マナッサス、バージニア州)又はDSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、ブラウンシュワイク、ドイツ)から得た。5%CO
2下における37℃で、10%ウシ胎仔血清、100単位/mlのペニシリン、2mMのL−グルタミン及び100mg/mlのストレプトマイシンを補充したRPMI1640培地(Life Technology、グランドアイランド、ニューヨーク州)中で細胞を培養した。
【0256】
実施例4 インビボマウス腫瘍異種移植片の有効性
マウス: 雌の重篤な複合免疫不全マウス(Fox Chase SCID(登録商標)、C.B−17/IcrHsd、Harlan)又はヌードマウス(Taconic Farms、Harlan)は8から9週齢であり、研究の0日目で15.1から21.4グラムのBW範囲を有した。動物に、水(逆浸透、1ppmCl)と18.0%粗タンパク質、5.0%粗脂肪及び5.0%粗繊維から成るNIH31改変及び照射Lab Diet(登録商標)とを適宜与えた。12時間の照明周期、21−22℃(70−72
oF)及び40−60%湿度での静的マイクロアイソレーター中において、照射されたALPHA−Dri(登録商標)bed−o’cobs(登録商標)実験動物床敷上でマウスを飼育した。PRCは、拘束、飼育、手術手順、餌及び液体の調節、並びに獣医学的管理に関する実験動物の管理及び使用に関する指針の推奨を特に順守する。PRCでの動物管理及び使用プログラムは国際実験動物管理公認協会(AAALAC)の認定を受けており、実験動物の管理及び使用に関する承認された標準の順守を保障する。
【0257】
腫瘍移植: 異種移植を癌細胞で開始した。細胞を、10%ウシ胎仔血清、2mMのグルタミン、100単位/mLのペニシリン、100μg/mLの硫酸ストレプトマイシン及び25μg/mLのゲンタマイシンを補充したRPMI1640培地で培養した。細胞を指数的増殖中に収集し、細胞株の倍加時間に応じて5×10
6個又は10×10
6個の細胞/mLの濃度でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に再懸濁させた。腫瘍細胞を右脇腹の皮下に移植し、平均サイズが100から150mm
3の標的範囲に近づいたときに腫瘍増殖をモニタリングした。腫瘍移植後21日目を研究の0日目とし、マウスを、75−172mm
3の範囲の個々の腫瘍体積及び120−121mm
3の群平均腫瘍体積を有する10匹のマウスからそれぞれ成る4つの群に分けた(付録Aを参照)。体積を、式:
腫瘍体積(mm
3)=(w
2×l)/2(式中、W=腫瘍の幅(mm)及びl=腫瘍の長さ(mm))を使用して算出した。腫瘍重量を、1mgが1mm
3の腫瘍体積に相当すると仮定して推定することができる。
【0258】
治療薬剤:GDC−0032を、73%の活性な薬剤を含有した塩形態の乾燥粉末として供給し、光から保護して室温で保存した。薬剤用量を0.5%メチルセルロース:脱イオン水中の0.2%Tween80(「ビヒクル」)で毎週調製し、4℃で保存した。73%の活性な薬剤を含有する塩形態はG−033829用量の製剤に含まれる。無菌生理食塩水(0.9%NaCl)でストックのアリコートを希釈することにより、GDC−0032の用量を各投薬日に調製した。体重20グラム当たり0.2mLの体積(10mL/kg)で所定のmg/kgの投薬量を送達するように全用量を製剤化した。
【0259】
処置: 全用量を個々の動物の体重に合わせて調整し、各図に示した経路で与えた。
【0260】
エンドポイント: 腫瘍体積を、Ultra Cal IVキャリパー(モデル54 10 111;Fred V.Fowler Company)を使用して次のように2次元(長さ及び幅)で測定し:腫瘍体積(mm
3)=(長さ×幅
2)×0.5、Excelバージョン11.2(Microsoft Corporation)を使用して分析した。線形混合効果(LME)モデリングアプローチを使用し、同じ動物の腫瘍体積の反復測定を経時的に分析した(Pinheiro J等nlme: linear and nonlinear mixed effects models. R package version 3.1 92. 2009;Tan N等Navitoclax enhances the efficacy of taxanes in non-small cell lung cancer models. Clin. Cancer Res. 2011;17(6):1394-1404)。このアプローチは、反復測定と研究終了前の動物の任意の非処置関連死に起因する少量のドロップアウトとの両方に対応する。三次回帰スプラインを使用して、非線形プロファイルを各用量レベルでのlog2腫瘍体積の時間経過に適合させた。次いで、これらの非線形プロファイルを混合モデル内の用量に関連づけた。ビヒクルコントロールに対する割合としての腫瘍増殖阻害(TGI%)を、次式:TGI%=100×(1−AUC
用量/AUC
ビヒクル)を使用し、ビヒクルに関する1日当たりのそれぞれの用量群に対する近似曲線下の面積(AUC)の割合として算出した。この式を使用して、100%のTGI値は腫瘍停滞を示し、>1%であるが<100%のTGI値は腫瘍増殖の遅延を示し、>100%のTGI値は腫瘍退縮を示す。動物に関する部分反応(PR)を、開始腫瘍体積の>50%であるが<100%の腫瘍退縮として定義した。完全反応(CR)を、研究中の任意の日における100%腫瘍退縮(即ち測定不可能な腫瘍)として定義した。
【0261】
毒性: 動物の体重を、研究の最初の5日にわたり毎日測定し、その後、週に2回測定した。動物の体重を、Adventurer Pro(登録商標)AV812スケール(Ohaus Corporation)を使用して測定した。パーセント重量変化を次のように算出した:体重変化(%)=[(重量
新規日−重量
0日)/重量
0日]×100。マウスを任意の有害な処置関連の副作用の明白な兆候について頻繁に観察し、観察時に毒性の臨床徴候を記録した。許容可能な毒性を、研究中における20%未満の群平均体重(BW)減少及び10匹の処置動物中で処置関連(TR)死が1匹を超えないものとして定義する。より高い毒性を生じる任意の投薬レジメンは最大耐量(MTD)を超えると考えられる。死を、臨床徴候及び/若しくは部検により証明された処置の副作用に起因する場合にはTRと分類し、又は投薬期間中の若しくは最後の投薬の10日以内の不明の原因に起因する場合にもTRと分類することができる。死が処置の副作用に関連したという証拠がない場合、死をNTRと分類する。
【0262】
前述の本発明は、理解を明確にするために例示及び例としていくらか詳細に説明されているが、説明及び例は本発明の範囲を限定するものとして解釈されてはならない。本明細書に引用される全ての特許及び科学文献の開示は、その全体が出典明示により明示的に援用される。