【実施例】
【0042】
実施例1
Ab327を取得するための抗体発生、改変、およびヒト化
マウス抗ヒトIL−21抗体、15H12を、マウス足蹠免疫化および抗IL−21可変領域のクローン化の後に単離した。Balb/cマウスを、市販品で得られるヒトIL−21で標準免疫化手順を用いて免疫化した。最終非アジュバント増強(non−adjuvant boost)後3から5日間で、リンパ節および/または脾臓を採取し、単個細胞浮遊液を生成した。抗原特異的な細胞を、標準の選別法によってビオチン化(biotinlyated)またはフルオロフォア標識したIL−21を用いて濃縮して、マウス可変ドメインのクローン化に先立って2週間フィーダー細胞と共培養した。抗体を、抗IL−21捕捉ELISAを用いて同定してin vitroアッセイにおいてIL−21を遮断および中和し、ヒトおよびカニクイザルIL−21に関して約5pMのK
Dを有することを示した。Fab抗体フラグメントをヤギ抗ヒトkappa抗体で捕捉し次いでビオチン標識IL−21に結合する能力についてスクリーニングし、これを今度はアルカリホスファターゼ標識ニュートラアビジンによって検出した。
【0043】
抗体を、さらにマウスおよびヒトIL−21の両方に結合するために最適化してマウス抗体15M2を産出した。これを遂行するために単離した15H12のネズミVHおよびVLのCDRを突然変異生成によって無作為化して得られた抗体をELISAを用いてヒトおよびマウスIL−21への結合に関してスクリーニングした。親和力強化突然変異を、次いで15M2を産出するために組み合わせて、これを次いでフレームワークライブラリ手法(framework library approach)を用いてヒト化した。フレームワークライブラリのために、12種のヒトVHフレームワーク生殖系列遺伝子(1−24、1−46、1−69、2−5、3−15、3−23、3−53、3−72、4−04、4−39、5−51、および6−01)および8種のヒトVLフレームワーク遺伝子(A−19、A−26、A−27、B−2、B−3、L−2、L−12、およびO−2)を含有する15M2のCDRを、合成して重鎖および軽鎖ヒトIgG4発現ベクターにクローン化した。全96重鎖および軽鎖の組み合わせの293HEK一過的トランスフェクションの後に、プレート上に直接コートしたヒトIL−21への結合および抗ヒトkappa抗体での上清からヒトIgGの捕捉の後の溶液中のビオチン化IL−21への結合についてELISAによって上清をアッセイした。発症性およびELISA活性を考慮して、抗体15M2から導かれ、1−46重鎖ヒトフレームワークおよびO2ヒト軽鎖フレームワークを利用するCDRを有するヒト化抗体を、さらなる最適化のために選択した。そのヒトIL−21に関するK
Dは、約0.5pMであった。
【0044】
ヒト化抗体の分析は、軽鎖CDR脱アミド部位(Asn92)および重鎖CDR異性化部位(Asp55)を特定した。これらの化学分解ホットスポットを除去するために、重鎖Asp55Gluおよび軽鎖Asn92His突然変異の両方を含む改変抗体を生成した。これらの突然変異は、ヒトおよびカニクイザルIL−21に関して約2pM K
Dまで、幾らかの親和力の損失をもたらした。親和力の損失は、Asp55Glu突然変異に起因することが判定された。結果として、Asp55残基は、軽鎖におけるAsn92His突然変異と共に重鎖において維持された。合理的改変原理(Rational engineering principles)は、重鎖における近接Ser56残基を改変することによる親和力最適化をさらに導いた。このことから、同時にAsp55異性化を減少して親和力を改善したSer56Val突然変異を含有する改変抗体を選択した。最終抗体は、ヒトおよびカニクイザルIL−21の両方に対して約0.5pMの親和力を有する。半抗体形成を防止し(S225P)かつエフェクター機能を減少する(F231A/L232A)ために点突然変異を有する、ヒトIgG4である定常領域を選択した。In silicoでのEpivax解析は、認識できる免疫性ホットスポットは無いことを示した。最終改変されたヒト化抗体(「Ab327」)に関する配列情報を、下表1に示す。
【表1】
【0045】
Ab327の溶解性および安定性
溶解性および安定性に関連するAb327の物理化学的特性を、10mMクエン酸塩、pH6(C6)および10mMクエン酸塩、pH6+150mM NaCl(C6N)調合物の両方において評価した。C6調合物に関して、溶解度は≧122.9mg/mLでありC6N調合物における溶解度は≧130.9mg/mLであった。10mMクエン酸塩、150mM NaCl、0.02% Tween80、pH6調合物(C6NT)中の100mg/mLにおけるAb327の粘度は、5.8cPであると測定された。
【0046】
10mMクエン酸塩、pH6緩衝液中、25℃で4週間後、化学的および物理的不均質性における変化は、Ab327に関しては低く、分析陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)によって観察された主ピーク面積においては5%より少ない変化であった。同条件下で、<0.5%高分子量(HMW)凝集体成長を、分析サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で観察した。クエン酸塩、pH6の安定性試料は、40℃で4週間後の細胞に基づくアッセイにおいて生物活性の損失を示さなかった。
【0047】
抗体を、CDR化学分解ホットスポットの特性評価のためのペプチドマッピングLC−MSによってC6において4℃、25℃、および40℃で4週間後に分析した。LC−MS分析は、4℃の対照試料と比較して40℃における重鎖CDR残基Asp55の有意な異性化は示さなかった。4℃の対照試料と比較して25℃における4週間後の0.5%より大きい他の共通CDR分解成長が特定され、6CDR全てにわたって全体として合計で5%未満であった。
【0048】
Ab327の物理的安定性を、C6における1mg/mLの急速凍結融解調査および50mg/mLの緩慢凍結融解調査で評価した。両方の調査の間、Tween80の存在が、10ミクロンサイズの粒子の形成を減少した。高濃度調査においては、150mMのNaCl塩の存在が、HMW凝集体形成を減少した。低濃度調査に関して、HMW凝集体は、塩およびTween80の存在下で0.7%であった。結論として、これらの試験からAb327は、粘度、溶解度、および安定性を含め、ヒト調査に進むために良好な溶液特性を有すると考えられる。
【0049】
Ab327の機能特性
ELISAによるヒトIL−21および他のヒト共通ガンマ鎖受容体ファミリーメンバーへのAb327の結合
本調査の目的は、共通ガンマ(γc)鎖受容体サイトカインの他のメンバーと比較したAb327のヒトIL−21への結合特異性を測定することであった。サイトカイン受容体γc−鎖ファミリーは、6種のメンバー、IL−2、IL−4、IL−7、IL−9、IL−15、およびIL−21からなる。このファミリーの全てのメンバーは、γcサブユニットを含む受容体複合体を通してシグナルを送る。他のヒトγc鎖サイトカインファミリーメンバーに結合するAb327の特異性を、ELISAを用いて測定した。簡単に言えば、Ab327を、ヤギ抗ヒトkappa IgGでコートしたELISAプレート上に捕捉した。100nM〜780pMから滴定したビオチンで標識したサイトカインを、次いでプレートに37℃で1時間加えて、任意の結合したサイトカインをアルカリホスファターゼで標識したニュートラアビジンを用いて検出した。IL−2に対する市販のマウスモノクローナル抗体ならびにロバ抗ヤギIgGで捕捉されたIL−4、IL−7、IL−9およびIL−15に対するヤギポリクローナル抗体は、ビオチン標識サイトカインの結合およびニュートラアビジンでの検出後に陽性シグナルを与えた。しかしながら、Ab327に関して検出可能なシグナルは、ヒトIL−21を除いて観察されなかった(ELISAによって560nmにおける光学密度(OD)測定値として示されるAb327の結合およびヒト共通ガンマ鎖受容体に結合する他のリガンドの結合を示す、下表2を参照。
図1も参照)。これらの結果は、Ab327が、IL−21に特異的であり他のヒトγc鎖受容体ファミリーサイトカインに結合しないことを示す。
【表2】
【0050】
ヒト、カニクイザル、マウス、ラット、およびウサギIL−21に対するAb327の結合親和力
Ab327は、ヒトIL−21に結合して中和する改変された、ヒト化モノクローナルIgG4抗体である。本調査の目的は、ヒト、カニクイザル、マウス、ラット、およびウサギIL−21に対するAb327の結合親和力を測定することであった(配列を下に示す)。これらの種々のIL−21種へのAb327の見掛けの結合親和力(K
D)を、KinExA3000計器を用いて37℃で測定した。KinExA溶液平衡結合実験を、一定抗体濃度プロトコールおよびIL−21の2倍段階希釈を用いて行った。試料を、分析に先立って37℃で6〜36時間平衡させた。平衡試料中の遊離抗体を、Dylight 649複合抗ヒトIgG Fcポリクローナル抗体を用いて検出した。得られた遊離抗体対抗原濃度パーセントデータを、KinExA Proソフトウェアを用いて「親和力、標準」結合モデルに適合させて、最高適合結合親和力値(K
D)を決定した。
【0051】
標準偏差(ヒト、カニクイザル、マウス、およびラット)を合わせた3回の独立した実験からまたは単一測定(ウサギIL−21)からの平均K
Dを、下表3に概説する(Ab327の見掛け溶液平衡結合親和力(K
D))。
【表3】
【0052】
Ab327は、37℃において、それぞれ、0.8±0.5x10
−12Mおよび0.3±0.1x10
−12Mの平均(n=3)親和力でヒトおよびカニクイザルIL−21に結合した。Ab327は、それぞれ、2.4±1.3x10
−7M、2.3±0.2x10
−7M、および>2x10
−7Mの親和力でマウス、ラット、およびウサギIL−21に結合した。ウサギIL−21への結合は、マウスおよびラットIL−21の同等試料について観察されたものよりも少ない結合シグナルに基づいて概算した。これらの結果に基づいて、Ab327は、ヒトおよびカニクイザルIL−21に対してはおおよそピコモルレベルの親和力を有するが、マウス、ラット、およびウサギIL−21に対しては相対的に弱い親和力を有する。
【0053】
Ab327は、in vitroでのIM9 pan−STAT−ルシフェラーゼレポーターアッセイにおいてヒトおよびカニクイザルIL−21を阻害した。
IL−21は、JAK−ファミリータンパク質チロシンキナーゼを活性化しこれはシグナル伝達性転写因子(STAT)のIL−21依存性活性化を仲介する。STAT経路を活性化するIL−21の能力を、IM9細胞を用いて評価した。多発性骨髄腫を有する患者の血液から導かれたEBV−形質転換されたBリンパ芽球様細胞株でありかつIL−21受容体(IL−21R)およびその共受容体(γc)を自然に発現する、IM9細胞を、pan−STAT−ルシフェラーゼレポーターコンストラクトで安定的にトランスフェクトした。IM9−panSTAT−ルシフェラーゼレポーターアッセイを用いる、本実験の目標は、Ab327がSTATのIL−21依存性活性化を阻害可能であるかどうかを判定することであった。
【0054】
IM9−panSTAT−ルシフェラーゼ細胞(pan−STATルシフェラーゼレポーターを有するIM9細胞サブクローン1B10/3G2)を、フラスコ内の培地(pan−STAT−ルシフェラーゼレポーターの選択のためにRPMI1640、10%FBS、1Xpen/strep、100μg/mLのZeocin)において日常的に培養した。アッセイのために、細胞を、TC処理したプレートに50,000細胞/50μL/ウェルで播種して37℃で一晩インキュベーションした。次いで、細胞を、異なる種からの組み換えIL−21タンパク質の存在下でAb327で処置した。0から6670pMのAb327の用量範囲を評価した(最終濃度は、Ab327のMW=150kDaに基づいた)。異なる種からの組み換えIL−21を、それぞれのウェルに66.67pMの最終濃度(MW=15kDaに基づく)まで加えた。ヒトIL−21R:Fcキメラ(R&D Systems、カタログ#991−R2)を陽性の対照として用いかつヒトIgG4を陰性の対照として用いた。陽性および陰性の対照について用量範囲0から47520pMまでを評価した。試験は、三重に実行した。96ウェルプレートを、組織培養インキュベーター内に4時間置いた(37℃、95%相対湿度、5%CO
2)。100μL/ウェルのOne−Gloルシフェラーゼ溶液を、アッセイに加えて停止させた。ルミノメーター(Perkin Elmer Victor3)を用いてプレートを読んだ。
【0055】
結果を、IC50(半数阻害濃度)として表わしてデータの4−パラメータシグモイド適合(Sigma plot)を用いて計算した。3回の独立した実験および標準偏差からの平均IC50を、下表4において報告する。
【表4】
【0056】
試験した範囲内で、Ab327は、用量依存的方法においてヒトおよびカニクイザルIL−21誘導STAT活性を完全に阻害した。Ab327は46.7±2.4のIC50を有するのに対して陽性の対照については271±15.6であり、Ab327による阻害は、陽性の対照(hIL−21R:Fc)で観察された阻害より大きかった。アイソタイプ対照抗体(hIgG4)は、pan−STAT活性を阻害しなかった(データは示さず)。結論として、Ab327は、in vitroでヒトおよびカニクイザルIL−21活性を有効に中和したが、マウス、ラット、またはウサギIL−21(上に示した配列)はこれらの条件下で中和しなかった(N.N.D.=中和が検出されず)。
【0057】
Ab327は、in vitroで一次ヒトB細胞のヒトIL−21誘導増殖を中和した。
B細胞の主要な機能は、病原体を中和して取り除く抗体を産生することである。抗体産生B細胞は、胚中心(GC)反応中にナイーブB細胞から生成される。GCは、B細胞が特異的な抗原に遭遇して成長、生存、選択、および分化に関する指令的シグナルを濾胞性ヘルパーT細胞から受け取った時に樹立される。これらのシグナルの間で、B細胞は、IL−21が増殖、アイソタイプスイッチング、形質細胞分化、および抗体の分泌を促進することにおいて主要な要因である状態で、CD40および非常に多くのサイトカインによって刺激される。目標は、Ab327が、一次ヒトB細胞のIL−21誘導増殖を阻害可能であるかどうかを判定することであった。
【0058】
5人の健康なドナーからのバフィーコートを、Indiana Blood Centerから得た。PBMCを、Ficoll−Paque勾配分離によってバフィーコートから単離してCD19+B細胞を、抗CD19磁気ビーズ(Miltenyi Biotec)で陽性に選択した。回収した個体群の純度は、典型的には>90%であった。培養した細胞の増殖応答を評価するために、精製したCD19+細胞を、96ウェル平底培養プレートにおいて適切な刺激物質(RPMI−1640/10%FBS含有1mMピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸、10mM HEPES pH7.0、100U/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシン)と共に50万細胞/mL(10万細胞/ウェル)で37℃および5%CO
2で5日間培養した。単離したB細胞を、3.33nMにおけるヒトIL−21(MW=15kDaに基づく)および2μg/mL抗ヒトCD40(BD Pharmingen)の組み合わせでインキュベーションした。Ab327の用量範囲(0.1nMから26.7nM)、ヒトIL−21R:Fcキメラ(0.1nMから213.3nM、R&D Systems)またはヒトIgG4(0.1nMから26.7nM)を評価した。全ての刺激および処置は、培養開始において加えた。培養の5日後、[メチル−3H]チミジン取り込みを、液体シンチレーションカウンターを用いて測定した。
【0059】
結果を、抗体が無い場合のIL−21仲介刺激を100%として、最大増殖のパーセントとして表わした。Ab327によって50%のIL−21誘導応答が阻害された(IC50)濃度を、データの4−パラメータシグモイド適合を用いて計算した。Ab327は、用量依存的方法において一次ヒトB細胞のIL−21誘導増殖を阻害した。この阻害は、陽性の対照、ヒトIL−21R−Fcコンストラクトで観察されたよりもずっと大きく、これは、用いられた最高濃度(26.7nM)において、IL−21誘導増殖を完全には阻害できなかった(
図2参照)。Ab327に関して計算されたIC50は、1.15±0.25nM(5回の独立した実験の平均±SD)であった。陰性の対照抗体(アイソタイプ対照hIgG4)は、一次B細胞のIL−21誘導増殖を阻害しなかった。表5は、Ab327が、in vitroで一次ヒトB細胞のヒトIL−21誘導増殖を中和できることを示す。数値は、増殖性ヒトB細胞±SDEVの割合を示す。結論として、Ab327は、in vitroで一次ヒトB細胞のIL−21誘導増殖を阻害した。
【表5】
【0060】
Ab327は、in vitroでの一次ヒトB細胞のヒトIL−21誘導形質細胞分化を中和した。
形質芽球へのB細胞分化は、抗原およびT細胞によって提供されるシグナルの組込みによって調節される(CD40−CD40L相互作用およびサイトカインの産生)。ヒトB細胞分化のために重要なサイトカインの1つは、活性化されたナイーブおよび記憶B細胞からの形質細胞生成および抗体分泌を誘導する、IL−21である。IL−21が活性化されたB細胞上のCD25(IL−2R)発現を誘導し、IL−2の分化促進効果に対してこれらの細胞を感作し、それによってIL−2とIL−21との間の協同相互作用を可能にして形質芽球生成および抗体分泌を増幅することが明らかになっている。目標は、Ab327が、in vitroで形質細胞への一次ヒトB細胞のIL−21誘導分化を阻害可能であるかどうかを判定することであった。
【0061】
バフィーコートは、上述の通りに得た。精製したB細胞を、96ウェル平底培養プレートにおいて適切な刺激物質(RPMI−1640/10%FBS含有1mMピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸、10mM HEPES pH7.0、100U/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシン)と共に75万細胞/mL(15万細胞/ウェル)で37℃および5%CO
2で6日間培養した。単離したB細胞を、3.33nMヒトIL−21、1μg/mL抗ヒトCD40(BD Pharmingen)、100U/mLのヒトIL−2(Proleukin、Hanna’s Pharmaceutical Supply Co.)および/または26.7nM Ab327もしくは26.7nMのヒトIgG4抗体(陰性の対照)の組み合わせと共にインキュベーションした。培養の6日間後、細胞を染色緩衝液(2%FBS/PBS)で洗ってヒトCD38、IgD、CD19、CD27(全てBD Biosciencesから)に対して特異的な抗体と共に4℃で40分間インキュベーションした。FC−500フローサイトメーター(Beckman Coulter)を用いて5色フローサイトメトリー分析を行った。形質細胞を、高レベルのCD38および低レベルのIgDを発現する細胞として特定した(下表6参照)。
【0062】
ドナー間で大きいばらつきがあるので、下に示す結果は、IL−21の追加によって誘導された形質細胞(CD38高+IgD低細胞)の相対数の増加倍数(fold increase)として表わされ、ここで培地+抗CD40+IL−2においてそれぞれのドナーから導かれた形質細胞の値は、1に等しく設定される。データを、5人の健康なドナーからの一次ヒトB細胞への効果に関する「増加倍数」として示す。
【表6】
【0063】
抗CD40およびIL−2の組み合わせで培養した新鮮なB細胞は、CD38高/IgD低形質細胞をほとんど含まなかった。対照的に、IL−21の存在下での抗CD40およびIL−2を用いた精製B細胞の同時刺激は、形質細胞への実質的な分化をもたらした。陰性の対照抗体(アイソタイプhIgG4)は、IL−21活性を阻害できなかった。Ab327は、一次ヒトB細胞のIL−21誘導形質細胞分化を阻害した(n=5ドナー、p=0.008、不対t検定Ab327対IgG4アイソタイプ抗体)。結論として、Ab327は、in vitroでヒトIL−21誘導形質細胞分化を阻害した。
【0064】
Ab327は、マウスにおけるヒトIL−21活性を中和した。
マウスへのIL−21の注入は、特異的なマーカーを用いて明確に特定された(B細胞およびT細胞の亜集団を含めた)脾臓における幾つかの細胞種の急速かつ一過的膨張に繋がる。本実験の目標は、Ab327が、マウスにおけるヒトIL−21の生物活性を阻害可能であるかどうかを調査することであった。
【0065】
8から10週齢の雌C57Bl6マウス(群当たりn=5)に、Ab327(1mg/マウス)またはアイソタイプ(hIgG4、1mg/マウス)対照抗体のいずれかを1日目に腹腔内に注入(i.p.)した。2および3日目にマウスは、1日当たり1マウス当たり50μgの組み換えヒトIL−21またはPBSのi.p.注入を受けた。4日目に、脾臓細胞の細胞懸濁液を調製して赤血球を溶解させた後に細胞の総数を測定した。IL−21応答性細胞の相対的割合を、細胞表面マーカーGr−1およびSca−1を用いてフローサイトメトリーによって測定した。脾臓当たりのIL−21応答性細胞の総数を、IL−21−応答性細胞(Gr−1lowSca−1+細胞)の割合に脾臓中の細胞の総数を掛けることによって計算した。
【0066】
下表7における結果は、5匹のマウスそれぞれの脾臓中のIL−21応答性細胞の総数(x10
6)として示される。
【表7】
【0067】
ヒトIL−21の注入は、IL−21応答性細胞の増加をもたらした。Ab327の存在は、陰性の対照抗体を受けた動物と比較してそれらの細胞の数を減少させた(p<0.0001、不対t検定Ab327+IL−21対IgG4+IL−21およびIgG4+PBS対IgG4+IL−21)。それぞれの群内のAb327および陰性の対照抗体への暴露を、定量的ELISAによって確認した。Ab327が、in vivoでヒトIL−21の生物活性を有効に中和したと結論づけられる。
【0068】
Ab327は、NGSマウスにおけるヒトT細胞活性化のin vivoモデルにおける有効性を実証した。
ヒトIL−21を中和することが、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)が重度免疫不全状態NSGマウスに移植されたヒトT細胞活性化モデルにおける疾患の進行を妨げることは、以前示されている(NOD−scid IL−2Rγ null;Hippen KLら、Blocking IL−21 signaling ameliorates xenogeneic GVHD induced by human lymphocytes.Blood 2012;119:619)。NSGマウスは、T、BおよびNK細胞が欠乏しかつマクロファージおよび樹状細胞の機能も減少している。ヒトPBMCの移植は、明白なヒトT細胞活性化ならびにマウスの皮膚、肝臓、腸、肺および腎臓へのそれらの浸潤をもたらす。これは、最終的に死に繋がる消耗症候群が伴う(Hippen、2012)。本モデルの利点は、疾患がヒト免疫細胞およびヒトサイトカインによって駆動され、したがってin vivoで他の種への交差反応性が無い抗体の呼びかけ(interrogation)を可能にすることである。本調査の目的は、予防方式(移植時に投与開始)または治療方式(移植後21日で投与開始)で投与した場合のin vivoでの有効性およびヒトT細胞活性化モデルにおけるAb327の疾患変更活性を実証することである。
【0069】
移植に先立って、雌NSGマウスを、体重のベースライン測定に基づく群に分けた(n=10/群)。0日目に、マウスにSan Diego Blood bankから得たバフィーコートから単離した10
7ヒトPBMCを静脈内注入した。予防方式のために(
図3)、マウスに1または10mg/kgのAb327あるいは10mg/kgのhIgG4アイソタイプ対照抗体を移植時およびその後毎週1回皮下投薬した。体重を測定して一般外貌および健康状態を週に2〜3回観測した。19日目に、尾切断によって血液を取得してフローサイトメトリーによりヒトCD45+細胞の移植について分析した。治療方式のために(
図4)、いかなる処置も受けていない動物を、フローサイトメトリーデータおよび体重に基づいて一致したコホート群に再割り当てした。移植後21日目に、マウスに10mg/kgのAb327または10mg/kgのhIgG4アイソタイプ対照抗体を、次いでその後毎週1回皮下投薬した。4匹の非移植マウスが、「非処置対照または非移植」マウスとして含まれた。体重変化を、ベースライン体重の割合として計算した((x)日目体重/0日目体重*100)。結果を、ベースラインからの経時的な体重変化パーセントとして示す。
【0070】
予防方式については、ヒトアイソタイプ対照抗体で処置したマウス(
図3参照、白四角(open square))は、早くも細胞移入後20日で消耗性表現型を発症した。移入後45日目に、ベースラインからのアイソタイプ対照群における平均体重減少は10%より大きくかつマウスの大半が危険状態にあり、したがって調査を終了した。移植の日に開始した10mg/kg/週のAb327での処置(
図3、黒四角(closed square))(予防方式)は、消耗性表現型を完全に消した。マウスは、非移植マウスと同等に体重が増え続けた。それらの体重は、アイソタイプ対照群とは統計的に有意に異なった(p=0.000846およびp<0.001それぞれ、Ab327対アイソタイプおよび非移植マウス対アイソタイプ、二元ANOVA、反復測定)。Ab327の用量1mg/kg/週(
図3、黒三角(closed triangle))は、体重減少の進行が遅く見えることから、部分的な効果を有する。しかしながら、この群におけるマウスの体重は、実質的にアイソタイプ対照と異ならなかった。表8は、IL−21抗体またはアイソタイプ対照抗体で45日間処置したヒト末梢血単核細胞(PBMC)を移植された重度免疫不全状態NSGマウス(NOD−scid IL−2Rγ null)におけるベースラインからの体重変化の平均±SDEVパーセントを示す。処置は、PBMCの移植と同時に開始した。Ab327 10mg/kg群とアイソタイプ対照群との間に有意差が有った。
【表8】
【0071】
上述の通り、ヒトPBMC投与は、移植後約20日で始まる消耗性疾患をもたらした。ヒトIL−21の遮断が進行中の疾患の悪化を停止可能かどうかを調査するために(治療方式)、マウスを、10mg/kg/週のAb327またはhIgG4アイソタイプ対照で移植後21日目開始で処置した。
図4に示すように、ヒトIgG4アイソタイプ対照抗体(白四角)を投薬したマウスは、体重減少し続ける。一方で、疾患の発症後開始した(移植後21日間、
図4、黒四角)、Ab327処置は、消耗性表現型を弱めることにおいて効果的であった。この群における平均体重は、統計的に有意にアイソタイプ対照群と異なった(p=0.042、二元ANOVA、反復測定)。体重減少および疾患の重症度における相違は、マウスへのヒト細胞の移植における相違が原因ではなかった。調査の終わりにおいて末梢性ヒトCD45+細胞数ならび脾臓におけるにヒト細胞は、アイソタイプ対照処置動物と比較してAb327処置マウスにおいてわずかに高かった。要約すれば、Ab327は、in vivoでのT細胞活性化の異種モデルにおける有効性および疾患変更活性を実証した。表9は、IL−21抗体またはアイソタイプ対照抗体で処置したヒト末梢血単核細胞(PBMC)を移植した重度免疫不全状態NSGマウス(NOD−scid IL−2Rγ null)における21日目からの体重変化の平均±SDEVパーセントを示す。処置は、21日目に開始した。Ab327 10mg/kg群とアイソタイプ対照群との間に有意差が有った。
【表9】
【0072】
Ab327の薬物動態
Ab327の薬物動態を、雄カニクイザルにおける3mg/kg用量の単一静脈内または皮下後に特徴付けした。血清試料を、投与1008時間後(6週間)に達するまで収集した。2つのELISA法(総ヒトIgGまたは抗原捕捉)を用いて抗体を定量化した後に濃度−時間プロファイルを生成した。総ヒトIgG法は、抗IL−21抗体の濃度を測定するためにELISA様式を利用する。標準、対照および試験試料を、マイクロタイタープレート上に固定化されたAffiniPure F(ab’)2フラグメントヤギ抗ヒトIgG(コーティングAb)と共にインキュベーションした。インキュベーション後、マウス抗ヒトIgG4−HRP(ホースラディッシュペルオキシダーゼ)を、ウェルに加えた。非結合酵素を洗い流したら、SureBlue(登録商標) TMB(テトラメチルベンジジン)基質溶液を、ウェルに加えた。酸性溶液の添加によって発色を止めて450nmにおいて波長補正を650nmに設定して光学密度を測定した。
【0073】
抗原捕捉法は、抗IL−21抗体の濃度を測定するためにELISA様式を利用する。標準、対照および試験試料を、ストレプトアビジンをコートしたマイクロタイタープレート上に固定化されたヒトIL−21−ビオチンでインキュベーションした。インキュベーション後、マウス抗ヒトIgG4−HRP(ホースラディッシュペルオキシダーゼ)を、ウェルに加えた。非結合酵素を洗い流したら、SureBlue(登録商標) TMB(テトラメチルベンジジン)基質溶液を、ウェルに加えた。酸性溶液の添加によって発色を止めて450nmにおいて波長補正を650nmに設定して光学密度を測定した。アッセイ範囲は、5〜500ng/mLであった。
【0074】
薬物動態学的結果(平均)を、下表10および下表11に示す。各群における動物の数は、2であった。
【表10】
【0075】
略号=t1/2 − 半減期、AUC0−t − 0から最後の測定可能濃度までの曲線の下の領域、AUC0−inf − 0から無限大までの曲線の下の領域、外挿AUC% − 最後の測定可能濃度から無限大までの外挿に起因するAUC0−infの割合、CLss − 全身クリアランスの概算、Vss − 定常状態における分布の大きさの概算。*終末相半減期は、72〜168時間の間で計算した。
【表11】
【0076】
略号=t1/2 − 半減期、Tmax − 最大濃度における時間、Cmax − 最大濃度、AUC0−t − 0から最後の測定可能濃度までの曲線の下の領域、AUC0−inf − 0から無限大までの曲線の下の領域、外挿AUC% − 最後の測定可能濃度から無限大までの外挿に起因するAUC0−INFの割合、CLss/F − クリアランス/生物学的利用能、F% − 平均3mg/kg i.v.用量を参照として用いる生物学的利用能=(AUC0−inf s.c./AUC0−inf i.v.)/(Dose−iv/Dose−s.c.)*100。*終末相半減期は、96〜336時間の間で計算した。
【0077】
雄カニクイザルへのAb327の単一静脈内または皮下投与後、濃度−時間プロファイルは、抗薬剤抗体(ADA)形成の示唆的でありかつADAは、4/4のサルにおいて確認した。平均終末相半減期は105〜249時間でありADAの著しい影響を回避するために72〜168時間の間の傾斜から計算した。平均クリアランスは、0.2〜0.4ml/h/kgの典型的なモノクローナル抗体クリアランス範囲のちょうど外になる0.43〜0.48ml/h/kgであった。
【0078】
皮下投与後、生物学的利用能は、モノクローナル抗体(50〜100%)の典型的範囲に入る72〜74%であった。ADA形成にもかかわらず、サルにおけるAb327の薬物動態は、クリアランスが正常よりわずかに高い状態で可溶性リガンドに結合するモノクローナル抗体について予想されるものと比較的類似していた。
【0079】
これらの調査に基づいて、Ab327は、ヒト化IgG4抗体について予想される範囲内のヒトにおける薬物動態を有するであろうと結論づけられる。予測されたヒトクリアランスは、サルクリアランスの相対成長率に基づいて0.3mL/hr/kg(70kgのヒトにおいて0.02L/h)であり生物学的利用能は、ヒトにおいて50〜75%であると予測された。
【0080】
抗マウスIL−21抗体での処置は、NODマウスの唾液腺におけるリンパ球浸潤を軽減した。
Ab327は、齧歯類IL−21を中和しないので、前臨床疾患モデルにおいて使用するための代用分子を発症させた。抗体Ab728は、マウスIL−21に特異的に結合するネズミIgG1モノクローナル抗体である。Ab728へのネズミIL−21の結合親和力は、1pMである。Ab728は、in vivoおよびin vitroのアッセイにおいてネズミIL−21を完全に中和することが可能であった。
【0081】
非肥満糖尿病(NOD)マウスは、唾液腺におけるリンパ球浸潤を自然発生的に発症するのでシェーグレン症候群のモデルとして広く用いられている。先行研究は、IL−21 shRNAレンチウイルスでのNODマウスの顎下腺におけるIL−21レベルの局所的抑制が、シェーグレン症候群様症状の発症を阻害し得ることを示した(Liu Hら、Local suppression of IL−21 in submandibular glands retards the development of Sjogren’s syndrome in non−obese diabetic mice.J Oral Pathol Med 2012;41:728)。本実験の目標は、Ab327の代理の、Ab728の全身投与が、NODマウスにおけるシェーグレン症候群発症を予防するまたは弱めることが可能であるかどうかを調査することであった。
【0082】
雌NODマウスを、7週齢で開始してAb728またはアイソタイプ対照mIgG1で処置した(20mg/kg/週)。マウスを、18週齢でと殺して唾液腺を採取した。唾液腺の一部分を1.6%PFA20%スクロースで4℃で一晩固定し、OCTに埋め込んで免疫蛍光法による分析まで−80℃で貯蔵した。別の部分を、mRNA調査用に液体窒素中で冷凍した。
【0083】
NODマウスにおいて、顎下唾液腺および涙腺における病巣性炎は、約8週齢から先へ発症する。病巣は、TおよびB細胞の存在と共に、一部のヒト唾液腺において見つかる浸潤物を有する構造および細胞構成と同等に見える。抗IL−21処置がNOD唾液腺におけるリンパ球浸潤を軽減したかどうかを調査するために、免疫蛍光染色を行った。簡単に言えば、8μmの冷凍した唾液腺の断片を、PBSで洗い次いで精製した一次抗体と共に室温で1時間インキュベーションし、その後適切な標識をした二次抗体と共に30分間インキュベーションした。一次抗体は、BD Biosciencesからの抗CD3(T細胞)および抗B220(B細胞)であった。二次抗体は、Jackson ImmunoResearch LaboratoriesからのAlexa Fluor 488ヤギ抗ラットIgGおよびDyLight 594ヤギ抗アルメニアンハムスターであった。DAPIを用いて細胞の核を特定した。
【0084】
mIgG1対照抗体で処置したNODマウスは、シェーグレン症候群患者において見られるリンパ球病巣に似ている高度に組織化されたTおよびBリンパ球(
図6)と共に管周囲の凝集体として配置された典型的なリンパ単球浸潤の存在を示した。Ab728処置は、観察された病巣の数だけでなくサイズも効果的に減少した。
【0085】
シェーグレン症候群におけるリンパ系集合体の発症は、胚中心構造内へのB細胞およびCD4+ T濾胞性ヘルパー(TFH)細胞の再循環および位置決定を調節する、リンパ系ケモカインCXCL13およびその同系の受容体CXCR5の異所性産生によって調節されると考えられる。IL−21は、TFHおよび胚中心構造の維持に関与することが示されている。IL−21は、CD8+ Tリンパ球の活性化も制御し、これはパーフォリンおよびグランザイムによって標的細胞を破壊すると考えられる。抗IL−21処置がこれらのマーカーの発現を減少するかどうかを調査するために、Trizolにおける均質化によって冷凍した唾液腺から全RNAを単離した後RNeasy Miniキット(Qiagen, Inc.)を用いた。RNA濃度を、260nmにおける分光光度吸収から決定した。RNAを、High−Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(PE Applied Biosystems)を用いてcDNAに逆転写した。全ての反応は、アッセイしたmRNAの相対的存在量を決定するために三重に実行した。IL−21(Mm00517640_m1)、CXCR5(Mm00432086_m1)、CXCL13(Mm04214185_s1)、CCR9 (Mm02620030_s1)、Granzyme B(Mm00442834_m1)およびCD8(Mm01182107_g1)用のプライマープローブセットは、PE Applied Biosystemsから取得した。GusB(Mm00446956_m1)は、遺伝子発現レベルにおけるばらつきを正規化するために内因性対照として測定した。発現データを、Delta Ct法を用いて分析した。個々のCt値を、三重測定の平均として計算した。
【0086】
CXCL13、CXCR5、IL−21、CD8およびGranzyme B mRNA転写は、mIgG1対照抗体処置マウスと比較して、Ab728処置マウスにおいて統計的に有意に下向き調節された。
図5は、マウスの唾液腺におけるmRNA分析を示す。処置が、疾患に関与したタンパク質の発現を調節することが分かる。要約すれば、抗マウスIL−21抗体(Ab728)の投与が、唾液腺内へのリンパ球浸潤を減少しかつNODマウスのSS様症状の発症を遅らせた。
【0087】
抗mIL−21(Ab728)処置は、NODマウスにおける糖尿病を予防する。
Ab728は、マウスIL−21に特異的に結合するネズミIgG1モノクローナル抗体である。代用Ab728へのネズミIL−21の結合親和力は、1pMである。Ab728は、in vivoおよびin vitroのアッセイにおいてネズミIL−21を完全に中和することが可能であった。
【0088】
ヒトI型糖尿病は、膵臓のランゲルハンスの島におけるインシュリン産生ベータ細胞の自己反応性の破壊に起因する自己免疫性疾患であり、これは次のインシュリン産生の損失に繋がる。マウスの非肥満糖尿病性(NOD)株は、類似疾患を発症して自己免疫反応の開始および伝播に関与する機序を調査するためのモデル系としても役立つ。組織学的調査は、雄および雌マウスの両方が島を取り囲む単核性浸潤(膵島周囲炎)を実証し始める時、約3から4週齢までに免疫細胞浸潤物が島においてほとんど見られないことを示している。これらの浸潤物は進行して島を侵し(膵島炎)その後約12週齢において高血糖症および末期の糖尿病が始まる。
【0089】
先行研究は、NODマウスにおけるIL−21シグナリングの欠失が、疾患発症のほぼ完全な抑止に繋がることを示した(Spolski Rら、IL−21 signaling is critical for the development of type I diabetes in the NOD mouse.Proc Natl Acad Sci USA 2008;105:14028、2008)。本実験の目的は、Ab728の全身投与は、NODマウスにおける糖尿病発症を予防するまたは弱めることが可能であるかどうかを調査することであった。
【0090】
雌NODマウスを、Ab728またはアイソタイプ対照mIgG1(20mg/kg/週)で疾患のプロセスにおける異なる期間で処置した。マウスの一群は7週齢で処置を開始して(予防調査、
図7A)動物の別の群は13週齢で処置を開始した(後期前臨床段階、
図7B)。両方の状況において、マウスが37週齢になるまで糖尿病発症についてマウスを追跡検査した。糖尿病の発症を追跡するために、血液グルコースレベルを毎週観測して2つの連続した測定において血液グルコースが250mg/dlを超えた場合は動物を糖尿病とみなした。Ab728への暴露は、定量的ELISAによって確認した。
【0091】
mIgG1対照抗体で処置したNODマウスは、それらが13〜15週齢の間の場合に糖尿病を発症し始めて75%のマウスが37週齢までに顕性糖尿病に進行した(予防については12匹中9匹のマウスおよび後期前臨床段階については8匹中6匹のマウス、
図7Aおよび
図7B参照)。対照的に、抗IL−21処置は、糖尿病進行を有意に遅らせた。12匹中1匹のマウスのみ(8%、
図7A、p=0.0007)7週齢で処置を開始した時に糖尿病を発症してかつ11匹中1匹のマウスのみ(9%、
図7B、p=0.002)後期前臨床段階の間に処置を開始した時に顕性糖尿病に進行した。
【0092】
要約すれば、抗マウスIL−21抗体(Ab728)の投与は、NODマウスにおける糖尿病発症を効果的に予防した。
【0093】
配列
【表12】
【0094】
以下の配列を、実施例およびアッセイにおいて用いた。
ヒトIL−21−UniprotKB/Swiss−Protデータベースエントリー#Q9HBE4
QDRHMIRMRQLIDIVDQLKNYVNDLVPEFLPAPEDVETNCEWSAFSCFQKAQLKSANTGNNERIINVSIKKLKRKPPSTNAGRRQKHRLTCPSCDSYEKKPPKEFLERFKSLLQKMIHQHLSSRTHGSEDS(配列番号13)
カニクイザルIL−21−−配列は組織内でクローン化、公開データベースでは利用不可
QDRHMIRMRQLIDIVDQLKNYVNDLDPEFLPAPEDVETNCEWSAISCFQKAQLKSANTGNNERIINLSIKKLKRKSPSTGAERRQKHRLTCPSCDSYEKKPPKEFLERFKSLLQKMIHQHLSSRTHGSEDS(配列番号14)
マウスIL−21−UniprotKB/Swiss−Prot database entry#Q9ES17
HKSSPQGPDRLLIRLRHLIDIVEQLKIYENDLDPELLSAPQDVKGHCEHAAFACFQKAKLKPSNPGNNKTFIIDLVAQLRRRLPARRGGKKQKHIAKCPSCDSYEKRTPKEFLERLKWLLQKMIHQHLS(配列番号15)
ラットIL−21−UniprotKB/Swiss−Prot database entry#A3QPB9
HKSSPQRPDHLLIRLRHLMDIVEQLKIYENDLDPELLTAPQDVKGQCEHEAFACFQKAKLKPSNTGNNKTFINDLLAQLRRRLPAKRTGNKQRHMAKCPSCDLYEKKTPKEFLERLKWLLQKMIHQHLS(配列番号16)
ウサギIL−21−(市販試薬−R&D Systems、カタログ#7274−RB/CF)
HKSSSKGQDRYMIRMHQLLDIVDQLQSDVNDLDPDFLPAPQDVQKGCEQSAFSCFQKAQLKPANAGDNGKRISSLIKQLKRKLPSTKSKKTQKHRPTCPSCYSYEKKNLKEFLERLKSLIQKMIHQHLLEHLR(配列番号17)
【0095】
本発明は以下を提供する。
[1]
重鎖可変領域(HCVR)および軽鎖可変領域(LCVR)を含むヒトIL−21に結合する抗体であって、前記LCVRが、CDRL1において配列番号7、CDRL2において配列番号8およびCDRL3において配列番号9を含みかつ前記HCVRが、CDRH1において配列番号10、CDRH2において配列番号11およびCDRH3において配列番号12を含む、抗体。
[2]
抗体重鎖および抗体軽鎖を含む請求項1に記載の抗体であって、前記重鎖が、配列番号1を有するHCVRを含みかつ前記軽鎖が、配列番号2を有するLCVRを含む、抗体。
[3]
2つの抗体重鎖および2つの抗体軽鎖からなる請求項1または請求項2に記載の抗体であって、それぞれの重鎖は、アミノ酸配列が配列番号1の配列である、重鎖可変ドメインを含み、かつそれぞれの軽鎖は、アミノ酸配列が配列番号2の配列である、軽鎖可変ドメインを含む、抗体。
[4]
それぞれの重鎖のアミノ酸配列が配列番号3の配列でありかつそれぞれの軽鎖のアミノ酸配列が配列番号4の配列である、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗体。
[5]
アミノ酸配列が配列番号3の配列である抗体重鎖をコードするポリヌクレオチドを含むDNA分子。
[6]
前記抗体重鎖をコードするポリヌクレオチドの配列が、配列番号5の配列である、請求項5に記載のDNA分子。
[7]
アミノ酸配列が配列番号4の配列である抗体軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む、DNA分子。
[8]
前記抗体軽鎖をコードするポリヌクレオチドの配列が、配列番号6の配列である、請求項7に記載のDNA分子。
[9]
アミノ酸配列が配列番号3の配列である抗体重鎖をコードするポリヌクレオチドを含みかつアミノ酸配列が配列番号4の配列である抗体軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む、DNA分子。
[10]
前記抗体重鎖をコードするポリヌクレオチドの配列が、配列番号5の配列でありかつ前記抗体軽鎖をコードするポリヌクレオチドの配列が、配列番号6の配列である、請求項9に記載のDNA分子。
[11]
請求項5または請求項6に記載のDNA分子および請求項7または請求項9に記載のDNA分子で形質転換された哺乳動物細胞であって、2つの抗体重鎖および2つの免疫グロブリン軽鎖を含む抗体を発現する能力を有し、前記2つの重鎖のそれぞれのアミノ配列が配列番号3の配列でありかつ前記2つの軽鎖のそれぞれのアミノ酸配列が配列番号4の配列である、形質転換された哺乳動物細胞。
[12]
請求項9または請求項10に記載のDNA分子で形質転換された哺乳動物細胞であって、2つの抗体重鎖および2つの免疫グロブリン軽鎖を含む抗体を発現する能力を有し、前記2つの重鎖のそれぞれのアミノ配列が配列番号3の配列でありかつ前記2つの軽鎖のそれぞれのアミノ酸配列が配列番号4の配列である、形質転換された哺乳動物細胞。
[13]
抗体を産生するためのプロセスであって、抗体が、2つの抗体重鎖および2つの免疫グロブリン軽鎖を含み、前記2つの重鎖のそれぞれのアミノ配列が配列番号3の配列でありかつ前記2つの軽鎖のそれぞれのアミノ酸配列が配列番号4の配列であり、かつ、
a.請求項11に記載の哺乳動物細胞または請求項12に記載の哺乳動物細胞を、前記抗体が発現されるような条件下で培養するステップと、
b.前記発現した抗体を回収するステップと
を含む、プロセス。
[14]
請求項13に記載のプロセスによって取得可能な抗体。
[15]
請求項1から4または14のいずれか一項に記載の抗体の有効量を患者に投与するステップを含む、患者における自己免疫性状態を治療する方法。
[16]
前記自己免疫性状態は、原発性シェーグレン症候群、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、グレーブス病、または1型糖尿病である、請求項15に記載の方法。
[17]
前記自己免疫性状態は、原発性シェーグレン症候群またはシェーグレン症候群である、請求項16に記載の方法。
[18]
前記自己免疫性状態は、全身性エリテマトーデスである、請求項16に記載の方法。
[19]
療法における使用のための、請求項1から4または14のいずれか一項に記載の抗体。
[20]
自己免疫性状態の治療における使用のための、請求項19に記載の抗体。
[21]
原発性シェーグレン症候群、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、グレーブス病、または1型糖尿病の治療における使用のための、請求項19に記載の抗体。
[22]
原発性シェーグレン症候群またはシェーグレン症候群の治療における使用のための、請求項19に記載の抗体。
[23]
全身性エリテマトーデスの治療における使用のための、請求項19に記載の抗体。
[24]
請求項1、2、または12のいずれか一項に記載の抗体および薬学的に許容可能な賦形剤を含む、医薬組成物。