特許第6373959号(P6373959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373959
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】医療装置および内視鏡的粘膜切除装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/32 20060101AFI20180806BHJP
   A61B 17/3205 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   A61B17/32 528
   A61B17/3205
【請求項の数】30
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-501293(P2016-501293)
(86)(22)【出願日】2014年3月11日
(65)【公表番号】特表2016-512076(P2016-512076A)
(43)【公表日】2016年4月25日
(86)【国際出願番号】US2014023598
(87)【国際公開番号】WO2014164840
(87)【国際公開日】20141009
【審査請求日】2017年3月3日
(31)【優先権主張番号】61/798,690
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/777,988
(32)【優先日】2013年3月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】レイビン、サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】スミス、ポール
(72)【発明者】
【氏名】スオン、ナローン
(72)【発明者】
【氏名】ラング、ダニエル
【審査官】 中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第03/082121(WO,A2)
【文献】 特開平09−187415(JP,A)
【文献】 特開2003−052713(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0108871(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第2057973(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0009085(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/32
A61B 17/3205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療装置であって、
外壁と、前記外壁から離間された内壁と、前記外壁および内壁によって画定された空洞とを含むハウジングを備え、前記外壁の遠位端は、前記内壁の遠位端より近位側に配置されており、前記ハウジングは該ハウジング内を通る通路をさらに画定し、前記空洞は該空洞内の圧力を調整するように構成されたポートと連通しており、
前記空洞内に配置された複数の深さ制限部をさらに備え、前記複数の深さ制限部は、前記内壁または外壁のうちの一方から延びている、医療装置。
【請求項2】
医療装置であって、
外壁と、前記外壁から離間された内壁と、前記外壁および内壁によって画定された空洞とを含むハウジングを備え、前記外壁の遠位端は、前記内壁の遠位端より近位側に配置されており、前記ハウジングは該ハウジング内を通る通路をさらに画定し、前記空洞は該空洞内の圧力を調整するように構成されたポートと連通しており、
前記内壁の外部に備えられた組織を切除することができる要素をさらに備える、医療装置。
【請求項3】
前記組織を切除することができる要素はスネアである、請求項に記載の医療装置。
【請求項4】
長尺状部材をさらに備えており、前記内壁は、前記長尺状部材の移動を制限するための、前記通路に突出した少なくとも1つの突起部を備える、請求項1または2に記載の医療装置。
【請求項5】
前記ハウジングは、少なくとも1つの直線縁を有する開口を画定する、請求項1または2に記載の医療装置。
【請求項6】
前記ハウジングは、複数の直線縁を有する開口を画定する、請求項1または2に記載の医療装置。
【請求項7】
前記内壁は前記外壁に対して調整可能である、請求項1または2に記載の医療装置。
【請求項8】
長尺状部材をさらに備えており、前記長尺状部材は、少なくとも1つの撮像装置を含む内視鏡を備える、請求項1または2に記載の医療装置。
【請求項9】
前記ハウジングは、該ハウジングから近位へ延びるシースを備え、前記シースは内視鏡的切断装置を受容するように構成された管腔を備える、請求項1または2に記載の医療装置。
【請求項10】
前記外壁の遠位端は前記内壁に向かって曲げられている、請求項1または2に記載の医療装置。
【請求項11】
内視鏡的粘膜切除装置であって、
近位端、遠位端、および前記近位端と遠位端との間に延びる管腔を備える長尺状部材と、
前記長尺状部材の遠位端に対して、作動可能に接続され、かつ、移動可能であるハウジングであって、外壁と、前記外壁から離間された内壁と、前記外壁および内壁によって画定された空洞とを含むハウジングと、
前記内壁の外部に設けられる切断装置と、
を備え、
前記外壁の遠位端は、前記内壁の遠位端より近位側に配置されており、前記ハウジングは該ハウジング内を通る通路をさらに画定し、前記通路の近位部分は前記長尺状部材を内部に受容するように構成されている、内視鏡的粘膜切除装置。
【請求項12】
前記空洞は、該空洞内の圧力を調整するように構成されたポートと連通している、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
内視鏡的粘膜切除装置であって、
近位端、遠位端、および前記近位端と遠位端との間に延びる管腔を備える長尺状部材と、
前記長尺状部材の遠位端に対して、作動可能に接続され、かつ、移動可能であるハウジングであって、外壁と、前記外壁から離間された内壁と、前記外壁および内壁によって画定された空洞とを含むハウジングと、
切断装置と、
を備え、
前記外壁の遠位端は、前記内壁の遠位端より近位側に配置されており、前記ハウジングは該ハウジング内を通る通路をさらに画定し、前記通路の近位部分は前記長尺状部材を内部に受容するように構成されており、
前記内壁は、前記長尺状部材の移動を制限するための、前記通路に突出した少なくとも1つの突起部を備える、内視鏡的粘膜切除装置。
【請求項14】
内視鏡的粘膜切除装置であって、
近位端、遠位端、および前記近位端と遠位端との間に延びる管腔を備える長尺状部材と、
前記長尺状部材の遠位端に対して、作動可能に接続され、かつ、移動可能であるハウジングであって、外壁と、前記外壁から離間された内壁と、前記外壁および内壁によって画定された空洞とを含むハウジングと、
切断装置と、
を備え、
前記外壁の遠位端は、前記内壁の遠位端より近位側に配置されており、前記ハウジングは該ハウジング内を通る通路をさらに画定し、前記通路の近位部分は前記長尺状部材を内部に受容するように構成されており、
前記内壁は外壁に対して調整可能である、内視鏡的粘膜切除装置。
【請求項15】
内視鏡的粘膜切除装置であって、
近位端、遠位端、および前記近位端と遠位端との間に延びる管腔を備える長尺状部材と、
前記長尺状部材の遠位端に対して、作動可能に接続され、かつ、移動可能であるハウジングであって、外壁と、前記外壁から離間された内壁と、前記外壁および内壁によって画定された空洞とを含むハウジングと、
切断装置と、
前記空洞中に配置され、かつ、前記内壁または外壁のうちの一方から延びている、少なくとも1つの深さ制限部と、
を備え、
前記外壁の遠位端は、前記内壁の遠位端より近位側に配置されており、前記ハウジングは該ハウジング内を通る通路をさらに画定し、前記通路の近位部分は前記長尺状部材を内部に受容するように構成されている、内視鏡的粘膜切除装置。
【請求項16】
前記ハウジングは、該ハウジングから近位へ延びるシースを備え、前記シースは前記切断装置の一部を受容するための管腔を備える、請求項11〜15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
医療装置であって、
ハウジングであって、
外壁と、
前記外壁から離間された内壁と、前記外壁は遠位端を備え、前記内壁は遠位端を備え、前記外壁の遠位端は前記内壁の遠位端に対して近位側にあり、
前記外壁と内壁との間に位置する空洞とを含み、前記空洞は、該空洞内の圧力を調整するように構成された管腔と連通する、ハウジングと、
前記ハウジングの外面のまわりに延在する状態から、該ハウジングの空洞に進入する状態へ移行するように構成された切断器具と、
を備える、医療装置。
【請求項18】
前記切断器具はスネアである、請求項17に記載の医療装置。
【請求項19】
前記スネアはハウジングの外面のまわりでループを形成するように構成されている、請求項18に記載の医療装置。
【請求項20】
前記ループは、閉じるにつれて、前記ハウジングの空洞に進入するように構成されている、請求項19に記載の医療装置。
【請求項21】
前記空洞の遠位端は、前記外壁の遠位端と、前記内壁の遠位端との間に延びる、請求項17に記載の医療装置。
【請求項22】
前記内壁の遠位端および外壁の遠位端のうちの少なくとも一方は直線縁を含む、請求項17に記載の医療装置。
【請求項23】
前記内壁の遠位端および外壁の遠位端のうちの少なくとも一方は略矩形である、請求項17に記載の医療装置。
【請求項24】
医療装置であって、
ハウジングであって、
遠位端を有する外壁と、
前記外壁から離間された内壁であって、遠位端を有し、前記外壁の遠位端は、前記内壁の遠位端より近位側に配置されている、内壁と、
前記外壁と内壁との間に位置する空洞であって、前記空洞は、該空洞内の圧力を調整するように構成された管腔と連通している空洞と、を含むハウジングと、
前記ハウジングの外面のまわりに延在する状態から、該ハウジングの内壁に対して半径方向内向きの力を加える状態に移行するように構成された切断器具と、
を備える、医療装置。
【請求項25】
前記切断器具はスネアである、請求項2に記載の医療装置。
【請求項26】
前記スネアはハウジングの外面のまわりでループを形成する、請求項25に記載の医療装置。
【請求項27】
前記半径方向内向きの力は、前記ハウジングの内壁のまわりにおける圧縮力である、請求項2に記載の医療装置。
【請求項28】
前記切断器具は前記ハウジングの内壁と直接接触した状態に移行するように構成されている、請求項2に記載の医療装置。
【請求項29】
前記内壁の遠位端および外壁の遠位端のうちの少なくとも一方は直線縁を含む、請求項2に記載の医療装置。
【請求項30】
前記内壁の遠位端および外壁の遠位端のうちの少なくとも一方は略矩形である、請求項2に記載の医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して医療機器に関し、より具体的には組織切除用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
消化(gastrointestinal:Gl)管のような患者の身体内における診断および/または治療のために、多種多様な医療技術および医療器械が開発されてきた。例えば、内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection:EMR)は、例えば、悪性/非悪性病変および/または他の場合には不要な組織を除去するために用いられる低侵襲性手技である。内視鏡的医療処置、例えばEMRは、解剖学的管腔内の無茎性腺腫(sessile adenomas)(すなわち体表面に付着した腫瘍)を摘出する。そのような処置は、多くの場合、下層の組織平面を傷つけないようにしながら、1つの組織平面を切離することを必要とする。これらの処置を実施するとき、特に試料の病理学的検討が必要とされる場合には、十分な大きさの均一な組織試料をきれいに切断し、回収することが望ましい。加えて、周囲の解剖学的構造のさらなる破壊を最小限にするために、切除では、処置部位にクリーンマージン(clean margins)を残すことが望ましい。
【0003】
しかしながら、腺腫が管腔壁に対して平坦である場合には、腺腫を摘出することが困難なことがある。そのような場合、下層組織層を損なうことなく、腺腫が適切に摘出されるように、いくつかの技法のうちの1つを用いて平坦な腺腫を隆起させてもよい。例えば、鉗子を用いて平坦な腺腫を隆起させることができる。また、例えば、粘膜下または下層組織層への溶液の注入は、組織の下に空間または開口を形成して、緩衝区域を形成することができる。この空間は、平坦な腺腫を下層組織より上に持ち上げて、除去を容易にし、より深い組織層への機械的損傷または電気焼灼の損傷を最小限にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、これらの従来の技法および器械は、多くの不都合および/または制限を有する。例えば、穿孔は患者に深刻な安全上の危険をもたらすため、重要な懸念事項である。本開示は、当業における上記の制限および/または不都合のうちの1つまたは複数を克服するために記載される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、例えば、病変または他の不要な組織の周縁において、粘膜を筋層から持ち上げて分離することによって、下層組織層を穿孔する危険性を低減できる組織切除のための装置および方法の実施形態に関する。
【0006】
本開示の態様によれば、医療装置はハウジングを備える。ハウジングは、外壁と、外壁から離間された内壁と、外壁および内壁によって画定された空洞とを含む。外壁の遠位端は、内壁の遠位端より近位側に配置される。ハウジングはハウジングを通る通路をさらに画定する。空洞は、空洞内の圧力を調整するように構成されたポートと連通する。
【0007】
本開示の態様によれば、内視鏡的粘膜切除装置は長尺状部材を備える。長尺状部材は、近位端と、遠位端と、近位端と遠位端との間に延びる管腔とを備える。この装置はまた、長尺状部材の遠位端に対して、作動可能に接続され、かつ、移動可能であるハウジングも備える。ハウジングは、外壁と、外壁から離間された内壁と、外壁および内壁によって画定された空洞とを含む。外壁の遠位端は、内壁の遠位端より近位側に配置される。ハウジングは、ハウジングを通る通路をさらに画定する。通路の近位部分は長尺状部材を内部に受容するように構成される。上記装置はまた切断装置も備える。
【0008】
本開示の態様によれば、患者の内部から組織を切除する方法は、内視鏡的粘膜切除装置を患者内の標的位置に前進させることを含む。内視鏡的粘膜切除装置は、長尺状部材の遠位端に対して、作動可能に接続されかつ移動可能であるハウジングを備える。ハウジングは、外壁と、外壁から離間された内壁と、外壁および内壁によって画定された空洞とを含む。ハウジングは、ハウジングを通る通路をさらに画定する。通路の近位部分は、長尺状部材を内部に受容するように構成される。この方法はまた、ハウジングの遠位端を組織壁に隣接させて配置することも含む。方法はまた、空洞に吸引力を付与して、組織壁の少なくとも1つの層を空洞内に引き込むことを含む。方法はまた、空洞内に引き込まれた組織の一部を切除することも含む。
【0009】
本開示の態様よれば、医療装置は、外壁と、外壁から離間された内壁と、外壁と内壁との間に位置する空洞とを含むハウジングを備える。空洞は、空洞内の圧力を調整するように構成された管腔と連通可能である。医療装置はまた、ハウジングの外面のまわりに延在する状態から、ハウジングの空洞に進入する状態に移行するように構成された切断器具も備える。
【0010】
これに加えて、またはこれに代わって、切断器具はスネアを備えてもよい。スネアはハウジングの外面のまわりにループを形成するように構成される。ループは、ループが閉じるにつれ、ハウジングの空洞に進入するように構成される。ハウジングの外壁は遠位端を備えてもよく、ハウジングの内壁は遠位端を備えてもよく、外壁の遠位端は、内壁の遠位端に対して近位側にある。空洞の遠位端は、外壁の遠位端と内壁の遠位端との間に延びる。内壁の遠位端および外壁の遠位端のうちの少なくとも一方は、直線縁を備えてもよく、かつ/または、内壁の遠位端および外壁の遠位端のうちの少なくとも一方は、略矩形であってもよい。
【0011】
本開示の態様によれば、医療装置は、遠位端を有する外壁と、外壁から離間された内壁とを含むハウジングを備え、内壁は遠位端を有する。外壁の遠位端は、内壁の遠位端より近位側に配置される。ハウジングは、外壁と内壁との間に空洞を備える。空洞は、空洞内の圧力を調整するように構成された管腔と連通する。医療装置はまた、ハウジングの外面のまわりに延在する状態から、ハウジングの内壁に対して半径方向内向きの力を加える状態に移行するように構成された切断器具も備える。
【0012】
これに加えて、またはこれに代わって、切断器具はスネアを備えてもよい。スネアはハウジングの外面のまわりにループを形成するように構成される。半径方向内向きの力はハウジングの内壁のまわりにおける圧縮力である。切断器具は、ハウジングの内壁と直接接触した状態に移行するように構成される。内壁の遠位端および外壁の遠位端のうちの少なくとも一方は、直線縁を備えてもよく、かつ/または、内壁の遠位端および外壁の遠位端のうちの少なくとも一方は、略矩形である。
【0013】
本開示の態様によれば、患者の内部から組織を切除する方法は、医療装置を患者内の標的位置に前進させることを含む。医療装置は、外壁と、外壁から離間された内壁と、外壁と内壁との間に位置する空洞とを含むハウジングを備える。空洞は、空洞内の圧力を調整するように構成された管腔と連通する。医療装置はまた、ハウジングの少なくとも一部のまわりに延在し、かつ、ハウジングから離間された切断器具を備える。上記方法は、ハウジングの遠位端を組織壁に隣接させて配置することを含む。方法はまた、空洞に吸引力を付与して、組織壁の少なくとも1つの層を空洞内に引き込むことを含む。方法はまた、切断器具をハウジングの空洞内に移動させることにより、空洞に引き込まれた組織の一部を切断器具によって切除することも含む。
【0014】
これに加えて、またはこれに代わって、切断器具をハウジングの空洞に移動させることは、切断器具のループを閉じて、ループをハウジングの空洞内に至らしめることを含む。方法は切断器具をハウジングの内壁と係合させることを含む。組織壁の少なくとも1つの層を空洞内に引き込むことは、組織壁の少なくとも1つの層の少なくとも1つの略直線状部分を空洞内に引き込むことを含み、かつ/または、組織壁の少なくとも1つの層を空洞内に引き込むことは、組織壁の少なくとも1つの層の略矩形部分を空洞内に引き込むことを含む。
【0015】
本開示の他の態様および特徴は、以下の好ましい実施形態の詳細な説明を読むことによって明らかになるであろう。それらの好ましい実施形態は、本開示を説明するものであり、限定するものではない。
【0016】
本開示は、本開示の好ましい実施形態の非限定的な例として、図面に関連して、続く詳細な説明にさらに記載されている。図面において、同一の文字は、図面のいくつかの図を通じて同一の要素を表している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の実施形態に従った、例示的な組織切除装置の斜視図。
図2図1の例示的な組織切除装置の断面図。
図3】本開示の実施形態に従った、内部に内視鏡を備えかつ組織と協働した例示的な組織切除装置の断面図。
図4】本開示の別の実施形態に従った、適当な切断装置と組み合わされた例示的な組織切除装置の概略図。
図5】本開示のさらなる態様に従った例示的な組織切除装置の断面図。
図6A図5の装置の上面図。
図6B図5の装置の下面図。
図7A】本開示のさらなる実施形態に従った装置の代替実施形態を示す図。
図7B】本開示のさらなる実施形態に従った装置の代替実施形態を示す図。
図8】本開示に従った装置のさらなる実施形態を示す図。
図9A】本開示に従った、第1組織層を第2組織層から分離することを容易にするための例示的な構造を示す図。
図9B】本開示に従った、第1組織層を第2組織層から分離することを容易にするための例示的な構造を示す図。
図9C】本開示に従った、第1組織層を第2組織層から分離することを容易にするための例示的な構造を示す図。
図10】本開示の態様に従った装置の側面断面図。
図11】本開示の態様に従ったハウジングの端面図。
図12】本開示の態様に従ったハウジングの端面図。
図13】本開示の態様に従った図10の装置の端部の近接側面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで添付図面に示した本開示の例示的な実施形態について詳細に言及する。同一または同様の部品を参照するためには、図面全体を通じて可能な限り同一の参考番号を用いる。
【0019】
本開示は、例えば切除を意図した組織層を、切除を意図していない下層組織層から持ち上げて分離することによって、下層組織層を穿孔する危険性を低減し得る内視鏡的処置用装置に関する。図1および図2は本開示の実施形態に従った例示的な組織切除装置1を示している。示したように、この装置は、外壁5とハウジング3内に位置する内壁7とを有するハウジング3を備える。内壁7は、外壁5によって包囲され、かつ、外壁5と内壁7との間に形成される空洞11または中空の空隙(以下で「空洞」と称する)が存在するように、特定の距離だけ離間されている。一実施形態において、空洞11は、略環状であってもよいし、または完全にチャンバ13のまわりに延在する完全な環状であってもよい。ハウジング3の遠位端は、ハウジング3が組織の表面に対して位置するように開放されている。ハウジング3は、空洞11において吸引力を付与して組織を空洞11に引き込むための吸引源、例えばポート9への接続部をさらに備える。
【0020】
いくつかの実施形態において、図2に示したように、内壁7によって包囲された空間は、中空室13を形成する中空である。以下でさらに詳細に記載するように、ハウジング3は、中空室13へのアクセスを提供する近位開口15を備えてもよく、それにより長尺状管状部材(図2には示されていない)を中空室13に挿入することができる。
【0021】
図3は、組織層「L」に対して配置されている装置1の断面図を示している。装置が標的組織層「L」の表面に対して配置される場合、吸引源(図示せず)からポート9を介して付与される吸引力は、標的組織「L」を空洞11内に引き込み、それにより図3に示すように組織の隆起部(ridge)を形成する。一実施形態において、ポート9は空洞11と連通し、そのためポート9に付与される真空は空洞11全体で実現される。図1に示すように、例えば、ポート9は、空洞13(以下で検討)が内部に管状部材17を受容するように、ハウジング3の長手軸線に対して偏倚されていてもよい。ポート9の一部は、ハウジング3の近位端から離反して延びるように構成される。空洞11内に引き込まれた組織の隆起部は、スネアリングまたは他の切除方法を容易にする。空洞11は狭いことが好ましく、これは、標的とされていない副組織層(例えば組織層「SL」)が空洞内に引き込まれないようにすることによって、SL組織層を穿孔する危険性を低減する。
【0022】
いくつかの実施形態において、ハウジング3は略円筒形を有する。そのような場合、外壁5と内壁7との間に連続した円形の空洞が形成され、空洞11に引き込まれた組織は、図3に示すように、中央の略平坦な組織表面を取り囲む組織の周囲隆起部を形成する。しかしながら、ハウジング3は内部に組織を引き込むための空洞11を形成するのに適したいかなる形状であってもよい。ハウジング3は、例えば図7A図7B、および図8に示す四角形または矩形の形態を有してもよい。より具体的には、ハウジング3は、平面充填技術(tessellation technique)によって組織の除去を容易にするために、少なくとも1つの直線縁を有する開口を画定する。
【0023】
上に簡潔に説明したように、装置1は長尺状管状部材(例えば管状部材17)を収容するための中空室13を備える。一態様において、装置1は内視鏡キャップとして構成されてもよく、長尺状管状部材17は内視鏡であってもよく、その場合には、視覚化、照明、フラッシング、灌注、吸引などを含み、かつ、そのワーキングチャンネル(図示せず)を介して様々な器具を用いた種々の内視鏡機能を備える。当業者には、管状部材17が当業において既知の任意の適当な導入シースを備えてもよいことが分かるであろう。
【0024】
いくつかの実施形態において、管状部材17の内部には、光学スコープのような内視鏡器械を受容するために、または吸引源に接続された吸引経路として、1本以上の内部ワーキングチャンネルが設けられている。内部ワーキングチャンネルは、非円形の断面形状を有してもよく、また内視鏡器械の種類および/またはワーキングチャンネルの用途に応じて、いかなる形状であってもよい。さらに、管状部材17は、管状部材17を通ってその近位端に配置された様々な制御源(例えば作動ハンドル、ノブ、操縦制御部(steering control)など)から延びる制御ワイヤーを受容するための複数の付加的な管腔を備えてもよい。
【0025】
管状部材17の外形状および寸法は、中空室13と略同一であってもよい。いくつかの実施形態では、管状部材17の寸法(例えば幅)は、管状部材17の中空室13への緊密な嵌合を容易にするために、中空室13の大きさよりも僅かに大きくてもよい。そのような場合、中空室13の近位開口の周囲および/または内壁7は、より大きな管状部材17を中空室13に収容するために、弾性変形可能である可撓性材料で形成される。いくつかの実施形態において、管状部材17は弾性変形可能な可撓性材料で形成されてもよく、そのため管状部材15は中空室13に滑り嵌め(snuggly fitted)される。加えて、管状部材17が中空室13全体を貫通するのを防止するために、1つまたは複数の突起部(ledges)または隆起部19を中空室13の内壁上に形成してもよい。内壁7に沿った突起部または隆起部19の位置は、ハウジング3に対する管状部材17の位置を変更するために所望により変更される。また、他のいくつかの実施形態において、装置1は、長尺状管状部材17が中空室13を完全に貫通することができるように構成されてもよく、これは管状部材17(例えば内視鏡)に対する装置1の伸長および後退を可能にする。従って、そのような実施形態では、突起部または隆起部19は排除される。
【0026】
図4は、スネア21を装備した装置1の例示的な実施形態を示している。当業者には、いかなる適当な切断装置を装置1とともに用いてもよいことが分かるであろう。示したように、スネア21は、組織を引き込む前には、開いており、装置1の外側のまわりに予め配置される。組織層(「L」)が図2に示すように空洞11内に引き込まれると、スネア21は、切除のために、引き上げられた組織の隆起した周囲隆起部の基部のまわりで閉じる。この例では、管状部材17は、少なくとも1本の補助ワーキングチャンネル25を含むシース23によって包囲されていてもよい。シース23は、ハウジング3の近位端から離反して近位に延びる可撓性管状部材を備える。補助ワーキングチャンネル25は、前述のシース23内の管腔またはシース23に作動可能に接続された別の管状部材を含んでいてもよい。例えば、補助ワーキングチャンネル25はスネア21を収容する。当然のことながら、シース23は、様々な他の機能のための複数の補助ワーキングチャンネル25を含んでいてもよい。例えば、ワーキングチャンネルのうちの1つは、ポート9と吸引源(図示せず)との間の吸引経路として機能する。様々な他の器械および機能に適応するために、付加的な補助ワーキングチャンネルがシース23内に備えられてもよい。装置1および管状部材17は、スネアを備えた内視鏡キャップに関連して説明しているが、管状部材17はまた、本願に開示した任意の数の特徴および特性を含むカテーテルまたは誘導チューブのような他の医療装置であってもよい。さらに、組織切除または他の内視鏡的処置のために、装置1とともに、様々な組織切離/切除器具が用いられてもよい。
【0027】
図5は、装置1の付加的な詳細を示している。外壁5の遠位端部分は丸く、内壁7に向かって所定角度で曲げられていてもよい。この角度は、中空室13の下の組織が図3の矢印によって示すようにぴんと張るように、中空室13の下に配置された組織(すなわち内壁7の最遠位端/先端27によって包囲された組織層「L」)の引き込みを促進する。
【0028】
いくつかの実施形態では、内壁7の最遠位端/先端27は、外壁5の最遠位端/先端29と略同一平面上に位置する。しかしながら、他の実施形態では、内壁7の先端27は、図5に示すように、外壁5の先端29に対して、ハウジング3の近位端に向かって凹んでいてもよい。換言すると、外壁5の先端29は、内壁7の先端27よりも組織層(「L」)の表面により接近して延びている。この形態では、中空室13は、内壁7によって、ポート9を介して付与される吸引力から完全に隔離されなくてもよい。従って、吸引源から吸引力が付与されると、外壁5の先端29内に包囲された組織層(「L」)は、先ず内壁7の先端27の高さに引き上げ(すなわち、持ち上げ)られる。組織層(「L」)が凹んだ内壁7の先端27と接触すると、空洞11が中空室13から隔離されるように、シールが形成される。換言すると、凹んだ内壁7は、外壁5の先端29と内壁7の先端27との間の垂直距離(図5において「D1」と示す)に略等しい分だけ組織層(「L」)を上昇させる。
【0029】
ハウジング3内に包囲された組織層「L」が上昇させられ、中空室13がポート9を介して付与される吸引力から隔離されると、組織層「L」は空洞11内にさらに引き込まれて、中空室13の下の略平坦な組織を包囲する組織の隆起部を形成する。ハウジング3内の組織を上昇させることにより、スネア21が、例えば切除処置中に、内壁7に対する引っ掛りを防止する。
【0030】
さらに、いくつかの実施形態において、内壁7の遠位先端27は外壁5の先端29より長くてもよい。例えば、図8を参照すると、装置80は外壁82および内壁84を備える。内壁84は、標的組織上において適切な吸引力が維持されるように、外壁82よりもさらに遠位に延びるように構成される。しかしながら、他の実施形態では、内壁および外壁82,84の双方の遠位端は、互いに同一平面上にあってもよい。
【0031】
いくつかの実施形態において、中空室13は、中空室13内に負圧/陽圧を提供するために、それ自身の吸引ポート31を備えていてもよい。例えば、組織を開示した装置内に引き込むために、負圧が付与されてもよい。陽圧が付与される実施形態では、陽圧を用いて、開示した装置内に詰まった組織、または他の場合には開示した装置と接触した組織を排出してもよい。そのような実施形態において、管状部材15は、中空室13に吸引経路を提供する内部ワーキングチャンネルまたは補助ワーキングチャンネル(図示せず)を備えてもよい。いくつかの実施形態において、ポート9およびポート31の一方または双方を用いて、患者の身体内の位置に、例えば灌注または送気を導入してもよい。
【0032】
いくつかの実施形態において、内壁7の長さ(例えば垂直長さ「D2」)は調整可能であってもよく、その結果、内壁7の先端27は、壁5に対して、遠位方向および近位方向に、伸長および/または後退する。調整可能な内壁7は、(例えば、ポート9から中空室13を隔離する)シールの形成に必要とされる組織の上昇の程度を制御することを可能にし、シールの形成の時点で組織が空洞11内に引き込まれて組織の隆起部を形成する。内壁7の調整はまた、下層組織が切除処置中に穿孔されないように十分に組織層を分離することも可能にする。組織の隆起部を形成する前に組織を上昇させる必要がない場合には、内壁7は、その先端27が外壁5の先端29と略同一平面上に位置するように、遠位方向に延びていてもよく、それによってポート9を介して付与される吸引力からの中空室13の即時の分離をもたらす。当業者は、外壁5もまた、内壁7と略同一の方法で調整可能となるように構成されることを容易に認識するであろう。
【0033】
様々な種類の機構および形態が調整可能な内壁7または外壁5の実現に用いられる。効率化のために、調整可能な機構は内壁7に関してのみ記載されるが、当業者には、同一の原理を外壁5に適用してもよいことが分かるであろう。例示的な実施形態において、内壁7は、図5に示すように、例えば互いに対して内外に、摺動するように配置された複数の入れ子式セグメント33を備える。この例において、長尺状管状部材15は、入れ子式セグメント33を伸長および/または後退させるために必要な力を及ぼすことに用いられる。例えば、長尺状部材15は、隆起部19の1つまたは複数と選択的に結合するか、または内壁7の固定部分に当接する1つまたは複数の溝を備えてもよく、その結果、内壁7の垂直長さ(「D2」)は、管状部材15を押し込むこと、および/または、引き抜くことによって制御される。他のいくつかの実施形態では、内壁7のいくつかの部分が、ねじ山、らせん隆条、らせん溝および/または適当なギア機構として形成されてもよく、その結果、内壁7の先端27と外壁5の先端29との間の距離は、内壁7を外壁5に対して近位方向または遠位方向に移動させるために回転力を加えることによって調整される。例えば、長尺状管状部材15の外壁の一部は、内壁7上のねじ山に対応するねじ山を備えてもよく、そのため管状部材15に加えられる回転力は内壁7の外壁5に対する移動を容易にする。他のいくつかの実施形態では、ワーキングチャンネルおよび/または管腔を介して作動可能である他の制御手段が、調整可能な内壁7の実現に用いられてもよい。他のそのような制御手段としては、例えば管状部材15内の管腔を介して延びる制御線によって制御される、ハウジング3または管状部材15内に配置された電気モータが挙げられる。
【0034】
切除される組織の大きさ(例えば幅または体積)は、空洞11に引き込まれる組織の量によって制御される。従って、いくつかの実施形態において、装置1は、図5図6Aおよび図6Bに示すように、空洞11に引き込まれる組織の量を調整および/または制御するために、空洞11内に配置された複数の深さ制限部35をさらに備える。深さ制限部35は、空洞11内およびそのまわりの特定の深さ(例えば図5に示される「D3」)において外壁5と内壁7との間に延びる、複数のブロック、パネルまたは他の適当な構造を含む。複数の深さ制限部35は、複数の空隙37が2つの隣接した深さ制限部35の間ごとに形成されるように、互いに対して配置される。深さ制限部35の間に形成された各空隙37の大きさは、組織が空隙37を通り抜けるのを防止する一方で、組織を空洞11内に引き込むために必要な空気の流れを維持するのに十分でなければならない。深さ制限部35のそれぞれの間に形成された空隙37の大きさは、組織の種類および/または切除処置の種類に応じて変化する。
【0035】
いくつかの実施形態において、外壁5の先端29に対する深さ制限部の垂直距離(「D3」)の深さは調整可能である。例として、内壁7のいくつかの部分は、深さ制限部35を受容するための1つまたは複数のスロットを備えてもよく、そのため、深さ制限部35は空洞11内において遠位または近位に移動させることができる。同様に、深さ制限部は、外壁5の内表面から延びるか、または内表面に受容されてもよい。内部ワーキングチャンネルまたは補助ワーキングチャンネルのうち1つは、空洞11内において深さ制限部35を移動させるための制御機構を延ばすために用いられてもよい。制御機構は、深さ制限部35を空洞11に沿って押し引きするように構成された回転可能なロッドまたはケーブルである。他のいくつかの実施形態において、深さ制限部35は、ねじ山、らせん隆条、らせん溝および/または深さ制限部35の位置を調整するために構成された他の適当な機構を用いてもよい。制御機構はまた、ハウジング3または管状部材15に配置されて、深さ制限部35を所望のように移動させるのに十分な力を提供する電気モータであってもよい。
【0036】
さらに、複数の深さ制限部35は、深さ制限部35を調整するための制御機構を単純化するために、単一ピース構造として形成されてもよい。これに代わって、各深さ制限部35は、各深さ制限部35に対して独立した制御機構を提供することにより、別々に調整可能であってもよい。この形態は、空洞11のまわりの深さ制限部35の各々が異なる深さになるように調整されるため、空洞11内に引き込まれる組織の量に対するより正確な制御を可能にする。当然のことながら、様々な他の制御機構および形態が調整可能な深さ制限部35の実現に用いられてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態において、開示した装置は、適当な切断および/または結紮器械を備えてもよい。例えば、図7Bに示すように、装置70は、開口7の周縁のまわりに配置された切断器具72を備えてもよい。切断器具72は、当業において既知の任意の適当な器具を含む。例えば、一実施形態において、切断器具72は、電気焼灼器能力を備えていても、備えていなくてもよいスネアを含む。さらに、切断器具72は、いくつかの実施形態では、結紮バンドまたはシャトリングワイヤー(shuttling wire)を含む。さらに、示した実施形態は切断器具72が外壁76に隣接して配置されていることを図示しているが、当業者には、切断器具72は内壁78に隣接して配置されてもよいことが分かるであろう。
【0038】
図9A図9Cは本開示に従った代替装置の実施形態を示している。例えば、図9Aに示すように、内壁90は外壁94より長くてもよい。内壁90および外壁94はともに、それらの間に組織を受容するための溝96を画定する。切断器具98は(上記で検討したように)外壁94に隣接して配置されてもよい。内壁90の遠位端は、外壁94から離反して角度を成していてもよい。さらに、外壁94の外側の遠位端縁は斜面または面取り部を含んでいてもよい。溝96は、略矩形の断面形態を備えてもよい。
【0039】
図9Bを参照すると、例えば、内壁90の遠位端は略平坦である。しかしながら、外壁94は、外壁94を内壁90に向けて曲げた形態を備える。次に図9Cに移ると、内壁96は、第2部分96bに対して移動可能に結合された第1部分96aを備える。第1部分96aは、矢印100の方向に相互に動くように構成される。第2部分96bは、第1形態と第2形態との間を移行するように構成される。第2形態において、第2部分96bは、第2部分96bと外壁94の内表面との間に組織を捕捉するように構成される。
【0040】
図10は本開示の実施形態に従った例示的な組織切除装置を示している。示したように、装置は遠位端229を備えた外壁205と、遠位端227を備えた内壁207とを有するハウジング203を備える(図13参照)。内壁207は外壁205によって包囲される。内壁207と外壁205とは、内壁207と外壁205との間に形成された中空の空隙または空洞211が存在するように、所定距離によって分離される。空洞211の遠位端は、内壁207の遠位端227および外壁205の遠位端229の間に延びる。
【0041】
一実施形態において、空洞211は略環状である。空洞211は、ハウジング203のまわりに完全に延びる完全な環状であってもよい。ハウジング203の遠位端は、ハウジング203を組織の表面に対して配置することができるように開放されていてもよい。いくつかの実施形態において、内壁207によって包囲された空間は、中空室213を形成する中空である。ハウジング203は、中空室213へのアクセスを提供する近位開口215を備えてもよく、よって長尺状管状部材217を中空室213に挿入することができる。長尺状管状部材217は、長尺状管状部材17の特徴を備える。例えば、長尺状管状部材217は、1つまたは複数の医療装置(図示せず)を受容するために、内部を通って延びる1つまたは複数の管腔(図示せず)を備えた内視鏡を含む。ハウジング203はまた、半径方向内側表面上に1つまたは複数の隆起部または突起部219を備えてもよい。隆起部または突起部219は、隆起部または突起部19の特徴を備えてもよく、長尺状管状部材217を中空室213内に配置するのを助ける。
【0042】
ハウジング203は、組織を空洞211内に引き込むために空洞211に吸引力を付与するための吸引源(図示せず)への接続部、例えば管腔209をさらに備えてもよい。一実施形態において、管腔209は、空洞211と連通し、そのため管腔209に付与された負圧または陽圧は空洞211全体に存在する。管腔209は、ハウジング203の遠位部分から近位へ延びてもよい。管腔209は、ハウジング203の側面に沿って、かつ/または、長尺状管状部材217の側面に沿って延びてもよい。
【0043】
装置が標的組織層「L」の表面に対して配置されるとき、吸引源(図示せず)から管腔209を介して付与される負圧または吸引力は、標的組織「L」を空洞211内に引き込むことにより、図3に示すように、組織の隆起部を形成する。空洞211内に引き込まれた組織の隆起部はスネアリング(snaring)または他の切除方法を容易にする。標的とされていない副組織層(例えば組織層「SL」)が空洞内に引き上げられないようにすることによって、SL組織層を穿孔する危険性を低減するように、空洞211は好ましくは狭くてよい。
【0044】
ハウジング203は環状であってもよい。いくつかの実施形態では、ハウジング203は少なくとも1つの直線縁を含む形状を有してもよい。例えば、ハウジング203は、図11に示すハウジング203’の形状を有する。ハウジング203’は、遠位端227’を有する内壁207’と、遠位端229’を有する外壁205’と、内壁207’と外壁205’との間の空洞211’と、それを介して空洞211’内に真空がもたらされる管腔209’とを備える。内壁207’、外壁205’および/または空洞211’は、少なくとも1つの直線縁を有する。そのような実施形態では、組織層Lの略直線部分が空洞211’内に引き込まれる。また、内壁207’、外壁205’、および/または空洞211’は略矩形であってもよい。そのような実施形態では、組織層Lの略矩形部分が空洞211’内に引き込まれる。内壁207’および外壁205’はそれぞれ四辺を有して示されているが、他の辺の数も用いられることが理解されるべきである。さらに、内壁207’、外壁205’、および/または空洞211’の角部は、丸くなっているか、または曲面状であり、これは、ハウジング203’に非外傷性形状を与えて、ハウジング203’によって組織を意図しないで損傷する可能性を低減する。
【0045】
他の実施形態において、ハウジング203は曲面形状(curved shape)を有してもよい。例えば、ハウジング203は図12に示すハウジング203”の形状を有する。ハウジング203”は、遠位端227”を有する内壁207”と、遠位端229”を有する外壁205”と、内側207と外壁205”との間の空洞211”と、それを介して空洞211’内に真空がもたらされる管腔209”とを備える。内壁207”、外壁205”、および/または空洞211”は直線状の辺を有さなくてよい。そのような実施形態では、組織層Lの曲線状部分(curved portion)が空洞211’内に引き込まれる。内壁207”、外壁205”、および/または空洞211”が円形または楕円である。そのような実施形態では、組織層Lの略円形または楕円形部分が空洞211’内に引き込まれる。
【0046】
装置はスネア221のような切断器具を装備していてもよい。スネア221は、組織を引き込む前には開いており、ハウジング203の外面のまわりに予め搭載される。管状部材217は、取り付け部材223によって、少なくとも1本の補助ワーキングチャンネル225に取り付けられる。補助ワーキングチャンネル225は、スネア221を受容するように構成された管腔を備える。組織層Lが空洞211に引き込まれると、スネア221は、切除のために引き上げられた組織の周囲隆起部の基部のまわりで閉じる。スネア221が閉じている間、スネア221の少なくとも一部は、内壁207および外壁205の遠位端227,229の間に延びる空洞211の一部に進入する。スネア221の閉じた方向は図13の矢印222によって示されている。
【0047】
いくつかの実施形態において、内壁207の遠位端227は、外壁205の遠位端229より更に遠位に延びていてもよい。スネア221が引き上げられた組織の周囲隆起部の基部のまわりで閉じるにつれ、スネア221は遠位端227において組織および内壁207の外面に対して力を加える。例えば、スネア221は、遠位端227において組織を内壁207の外面に対して圧迫する。この圧迫は組織の切除を支援する。スネア221は、遠位端227において内壁207の外面と直接接触するようになるまで閉じる。外壁205の遠位端229は、閉じたスネア221を空洞211内に、かつ/または、内壁207に対して、案内するために、半径方向外側の縁において斜めに切断されていてもよい。いくつかの実施形態では、スネア221の代わりに、結紮バンドまたはシャトリングワイヤーを用いてもよい。
【0048】
この開示は、多くの点において単なる実例であることが理解されるべきである。詳細について、特に構成要素の形状、大きさ、長さ、および配置に関して、本開示の範囲を超えることなく、変更がなされてもよい。よって、本開示は、特許請求の範囲によって定義されるような本開示の主旨および範囲内に含まれ得る代替案、変更例、および均等物に及ぶように意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13