特許第6373969号(P6373969)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ メルク パテント ゲーエムベーハーの特許一覧 ▶ ナノ−シー インコーポレイテッドの特許一覧

特許6373969改良されたフラーレン誘導体ならびに関連する材料、方法及びデバイス
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373969
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】改良されたフラーレン誘導体ならびに関連する材料、方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
   C07C 13/64 20060101AFI20180806BHJP
   C07C 2/86 20060101ALI20180806BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20180806BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20180806BHJP
   H01L 51/46 20060101ALI20180806BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20180806BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20180806BHJP
   H01L 51/30 20060101ALI20180806BHJP
   C09K 11/06 20060101ALN20180806BHJP
【FI】
   C07C13/64CSP
   C07C2/86
   H01L29/78 618B
   H05B33/14 B
   H05B33/22 B
   H05B33/22 D
   H01L31/04 154F
   H01L31/10 A
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 250E
   !C09K11/06 610
【請求項の数】29
【全頁数】82
(21)【出願番号】特願2016-509314(P2016-509314)
(86)(22)【出願日】2014年3月24日
(65)【公表番号】特表2016-527181(P2016-527181A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】EP2014000793
(87)【国際公開番号】WO2014173484
(87)【国際公開日】20141030
【審査請求日】2016年12月14日
(31)【優先権主張番号】61/814,709
(32)【優先日】2013年4月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/869,460
(32)【優先日】2013年8月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】308014846
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(73)【特許権者】
【識別番号】512037705
【氏名又は名称】ナノ−シー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NANO−C, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ブルーイン、ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】バーニー、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン、エドワード エイ.
(72)【発明者】
【氏名】リッチャー、ヘニング
【審査官】 村守 宏文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−238847(JP,A)
【文献】 特表2012−516324(JP,A)
【文献】 Chromatographia,1993年,Vol. 37, No. 7/8,pp. 387-391
【文献】 Journal of Organic Chemistry,2002年,Vol. 67,pp. 1247-1252
【文献】 BERNHARD KRAUTLER,CHEMISTRY - A EUROPEAN JOURNAL,2001年,V7 N15,P3223-3235
【文献】 Journal of Physical Chemistry A,2000年,Vol. 104, No. 46,pp. 10688-10694
【文献】 HELVETICA CHIMICA ACTA,2001年,Vol. 84,pp. 2167-2177
【文献】 HIRSCH A,ANGEW. CHEM. INT. ED. ENGL.,1995年,V34 N15,P1607-1609
【文献】 HELVETICA CHIMICA ACTA,2008年,Vol. 91,pp. 1401-1408
【文献】 Journal of Organic Chemistry,2003年,Vol. 68,pp. 6732-6738
【文献】 MICHIHISA MURATA,JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,2008年,V130,P15800-15801
【文献】 Chemistry A European Journal,2002年,Vol. 8, No. 2,pp. 509-524
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
MARPAT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】
(式中、
が、n個の炭素原子と、任意選択的に、内部に捕捉された1つ又は複数の原子とから構成されるフラーレンであり、
付加物が、前記フラーレンCに付加される、第2の付加物、又は第2の付加物の組合せであり、
式I中の「付加物」が、下式
【化2】
(式中、
S1、RS2、RS3、RS4及びRS5が、互いに独立して、H、ハロゲン又はCNを表し、又は請求項1に記載するRの意味のうちの1つを有するか、又は以下に示されるArS1の意味のうちの1つを有し、
ArS1及びArS2が、互いに独立して、単環式又は多環式であり、1つ以上の同一又は異なる置換基Rで置換される、5〜20個の環原子を有するアリール又はヘテロアリール基であり、ここで、Rが、ハロゲン、又は1〜30個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状又は環状アルキル部分を表し、ここで、1つ以上のCH基が、−O−、−S−、−C(O)−、−C(S)−、C(O)−O−、−O−C(O)−、−S(O)−、−NR−、−SiR00−、−CF−で任意選択的に置換され、ここで、R及びR00は互いに独立して、H又は1〜12このC原子を有するアルキルであり、
mが、前記フラーレンCに付加される第2の付加物の数であり、0又は1以上の整数であり、
oが、1以上の整数であり、
が、互いに独立して、H、ハロゲン原子、又は1〜50個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状又は環状アルキル基を表し、ここで、1つ又は複数のCH基が、O原子及び/又はS原子が互いに直接連結されないように、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=S)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−S(O)−、−NR−、−SiR00−、−CF−、−CHR=CR00−、−CY=CY−又は−C≡C−で任意選択的に置換され、又は1つ以上のC基が、カチオン基又はアニオン基で置換され、ここで、1つ又は複数のH原子が、F、Cl、Br、I又はCNで任意選択的に置換され、又は
が、飽和又は不飽和の非芳香族炭素環式又は複素環式基、又はアリール基又はヘテロアリール基を表し、ここで、上記の環式基のそれぞれが、3〜20個の環原子を有し、単環式又は多環式であり、縮合環及び非縮合環のうちの少なくとも一方を含有し、1つ以上の基Rで任意選択的に置換され、ここで、
がLで表される意味を有し、Lが、ハロゲン、−CN、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)NR00、−C(=O)X、−C(=O)R、−NH、−NR00、−SH、−SR、−SOH、−SO、−OH、−NO、−CF、−SF、任意選択的に置換されるシリル、又はRが1〜30個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状又は環状アルキル部分を表し、ここで、1つ又は複数のCH基が、−O−、−S−、−C(O)−、−C(S)−、−C(O)−O−、−O−C(O)−、−S(O)−、−NR−、−SiR00−、−CF−で任意選択的に置換され、R及びR00が、互いに独立してH又は1〜12個のC原子を有するアルキルであり、Y及びYが互いに独立して、H、F、Cl又はCNであり、がハロゲンであり、
及びRのうちの少なくとも一方がHと異なり、かつR及びRのうちの少なくとも一方はHと異なり、及びRの対、及びR及びRの対のうちの少なくとも一方が、共有結合して、任意選択的に置換される、3〜20個の環原子を有する炭素環式基、複素環式基、芳香族基又は複素芳香族基を形成する)の化合物であって、
式I中、R、R、R及びRのうちHと異なる基は、F、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル又はアルキルカルボニルオキシ基を表し、これらの全てが、直鎖状又は分枝鎖状であり、2〜20個のC原子を有し、任意選択的にフッ素化されており、R及びRの対、及びR及びRの対のうちの少なくとも一方が、共有結合して、任意選択的に置換される、3〜20個の環原子を有する炭素環式基、複素環式基、芳香族基又は複素芳香族基を形成することを特徴とする化合物。
【請求項2】
、R、R、及びRのうちの1つ以上が、Hを表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記R、R、R及びRのうちHと異なる基は、F又は1〜50個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状又は環状アルキル基を表し、ここで、O及び/又はS原子が互いに直接連結されないように、1つ又は複数のCH基が、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=S)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−S(O)−、−NR−、−SiR00−、−CF−、−CHR=CR00−、−CY=CY−又は−C≡C−で任意選択的に置換され、1つ又は複数のC基が、カチオン基又はアニオン基で任意選択的に置換され、1つ又は複数のH原子が、F、Cl、Br、I又はCNで任意選択的に置換され、ここで、
及びR00が、互いに独立してH又は1〜12個のC原子を有するアルキルであり、Y及びYが、互いに独立して、H、F、Cl又はCNである、請求項1〜2のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項4】
、R、R及びRのうちの1つ又は複数が、1〜50個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状又は環状アルキル基を表し、ここで、1つ又は複数のC基が、カチオン基又はアニオン基で置換される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
nが、60、70、76、78、82、84、90、94又は96である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
nが60である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
nが70である、請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
mが、0、1、2又は3である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
mが、1、2又は3である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
mが0である、請求項8に記載の化合物。
【請求項11】
22℃でオルト−ジクロロベンゼン中で、少なくとも9mg/cmの溶解性を有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
半導体材料、有機電子デバイス、又は有機電子デバイスの構成要素における電子受容体又はn型半導体としての、請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物を含む組成物。
【請求項14】
電子受容体又はn型半導体構成要素として請求項1〜11のいずれか一項に記載の1つ又は複数の化合物を含み、電子供与体又はp型特性を有する1つ又は複数の半導体化合物をさらに含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の1つ又は複数の化合物と、共役有機ポリマーから選択される1つ又は複数のp型有機半導体化合物とを含む、請求項13又は14に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の1つ又は複数の化合物と、半導体、電荷輸送、正孔輸送、電子輸送、正孔阻止、電子阻止、導電、光伝導及び発光特性のうちの1つ又は複数を含む化合物から選択される1つ又は複数の化合物とを含む、請求項13〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
半導体、電荷輸送、導電、光伝導、熱電材料又は発光材料として、又は光学、電気光学、電子、エレクトロルミネセンスもしくは光輝性デバイス、又はこのようなデバイスの構成要素における又はこのようなデバイスもしくは構成要素を含む組立体における、請求項11のいずれか一項に記載の化合物又は請求項13〜16のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項18】
請求項11のいずれか一項に記載の化合物又は請求項13〜16のいずれか一項に記載の組成物を含む、半導体、電荷輸送、導電、光伝導又は発光材料。
【請求項19】
請求項11のいずれか一項に記載の1つ又は複数の化合物又は請求項13〜16のいずれか一項に記載の組成物を含み、1つ又は複数の有機溶媒をさらに含む配合物。
【請求項20】
請求項19に記載の配合物を用いて作製される、光学、電気光学、電子、エレクトロルミネセンスもしくは光輝性デバイス、又はそれらの構成要素、又はそれを含む組立体。
【請求項21】
請求項11のいずれか一項に記載の化合物又は請求項13〜16のいずれか一項に記載の組成物又は請求項18に記載の材料を含む、光学、電気光学、電子、エレクトロルミネセンスもしくは光輝性デバイス、又は前記光学、電気光学、電子、エレクトロルミネセンスもしくは光輝性デバイスの構成要素、又は前記光学、電気光学、電子、エレクトロルミネセンスもしくは光輝性デバイスを含む組立体。
【請求項22】
有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、有機発光ダイオード(OLED)、有機発光トランジスタ(OLET)、有機光起電デバイス(OPV)、有機光検出器(OPD)、有機太陽電池、熱電デバイス、レーザーダイオード、ショットキーダイオード、光伝導体及び光検出器から選択される、請求項21に記載の光学、電気光学、電子、エレクトロルミネセンス及び光輝性デバイス。
【請求項23】
電荷注入層、電荷輸送層、中間層、平坦化層、帯電防止フィルム、ポリマー電解質膜(PEM)、導電性基板及び導電性パターンから選択される、請求項21に記載の光学、電気光学、電子、エレクトロルミネセンスもしくは光輝性デバイスの構成要素。
【請求項24】
集積回路(IC)、無線自動識別(RFID)タグ又はセキュリティマーキングもしくはそれらを含むセキュリティデバイス、フラットパネルディスプレイ又はそのバックライト、電子写真デバイス、電子写真記録デバイス、有機記憶デバイス、センサデバイス、バイオセンサ及びバイオチップから選択される、請求項21に記載の組立体。
【請求項25】
バルクヘテロ接合(BHJ)OPVデバイス又は逆型BHJ OPVデバイスである、請求項22に記載のデバイス。
【請求項26】
請求項16に記載の組成物を含んでなるバルクヘテロ接合を有する光学、電気光学、電子、エレクトロルミネセンスもしくは光輝性デバイス
【請求項27】
請求項11のいずれか一項に記載の式Iの化合物を作製する方法であって、
1つ又は複数の工程中で、P−1
【化3】
(式中、R〜Rが、請求項1に示される意味を有する)によって表される前駆体P−1を、少なくとも1つのハロゲン化試薬と反応させて、P−2
【化4】
(式中、Halが、ハロゲン原子を表し、R〜Rが、請求項1に示される意味を有する)によって表されるハロゲン化中間体を形成する工程と、
1つ又は複数の工程中で、前記中間体P−2を、F−1又はF−2:
【化5】
によって表されるフラーレン化合物、及び任意選択的に、第2の付加物化合物と反応させて、式1の前記化合物を形成する工程と
を含む方法。
【請求項28】
前記中間体P−2化合物が、前記フラーレン化合物の精製なしで直接反応される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記中間体P−2化合物が、前記フラーレン化合物と反応される前に、非処理シリカゲルと接触されない、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良されたフラーレン誘導体、それらの合成のための方法及びこのような方法に使用される任意の遊離体又は中間体、フラーレン誘導体を含有する組成物及び配合物、例えば、有機光起電(OPV)デバイス又は有機光検出器(OPD)のような有機電子(OE)デバイスの作製における又はそれらの作製のためのフラーレン誘導体、組成物及び配合物の使用、ならびにこれらのフラーレン誘導体、組成物又は配合物を含むか、又はそれらから作製されるOE、OPV及びOPDデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多用途で、より低コストの電子デバイスを製造するために、有機半導体(OSC)材料が発展してきている。このような材料は、いくつか例を挙げると、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機発光ダイオード(OLED)、有機光検出器(OPD)、有機太陽(OPV)電池、センサ、記憶素子及び論理回路を含む、広範囲のデバイス又は装置に応用される。有機半導体材料は、典型的に、例えば、厚さ50〜300nmの薄層の形態で電子デバイス中に存在する。
【0003】
OPV又はOPDデバイスにおける感光性層は、典型的に、少なくとも2つの材料、すなわち、ポリマー、オリゴマー又は所定の分子単位などのp型半導体、及び例えばフラーレン誘導体であるn型半導体から構成される。
【0004】
フラーレン誘導体は、当該技術分野において公知である。例えば(非特許文献1)を参照されたい。例えば非特許文献2、非特許文献3、及び非特許文献4も参照されたい。o−QDM(オルト−キノジメタン)フラーレンを開示している、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、及び特許文献5も参照されたい。
【0005】
しかしながら、近年、多くのp型半導体、主に、ポリマーが、OPVデバイスの性能を高めるために調製されているが、OPVデバイスにおけるn型半導体として使用するのに好適なフラーレン誘導体の開発は、PCBM−C60のようなごくわずかな選択された候補に限定されている。また、溶解性、光安定性、熱安定性などの、当該技術分野において公知のフラーレン誘導体の物理的特性により、それらの使用は、商業的用途に限定されている。
【0006】
このため、特に、大量生産に好適な方法によって合成するのが容易であり、良好な構造機構及び塗膜形成特性を示し、良好な電子特性、特に、高い電荷担体移動度、良好な加工性、特に、有機溶媒への高い溶解性、ならびに高い光安定性及び熱安定性を示すフラーレン誘導体が依然として必要とされている。
【0007】
本発明の目的は、上記の有利な特性の1つ又は複数を提供するフラーレン誘導体を提供することであった。本発明の別の目的は、当業者に入手可能なn型OSC材料のプールを拡張することであった。本発明の他の目的は、以下の詳細な説明から当業者に直ちに明白である。
【0008】
本発明の発明者らは、上記の目的の1つ又は複数が、以下に権利請求されるフラーレン誘導体を提供することによって達成され得ることを見出した。これらのフラーレン誘導体は、ベンゼン環に対する両方のα位において置換されるo−QDMフラーレンをベースとしている。
【0009】
以下に権利請求されるフラーレン誘導体が、特に、OPV/OPD用途に使用するために、上記の改良された特性の1つ又は複数を示し、先行技術に開示されるフラーレン誘導体と比較してOEデバイスにおけるn型半導体として使用するのにより好適であることが分かった。
【0010】
特許文献6及び特許文献7には、下式
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、「F」がフラーレンであり、R〜Rが、H原子又は幅広い意味から選択される置換基を表す)のo−QDMフラーレンが開示されている。しかしながら、フラーレン、及びそれらの合成についての文書による明確な開示はごく少数であり、ここで、R〜Rの全てがHを表す。
【0013】
特許文献8及び特許文献9には、下式
【0014】
【化2】
【0015】
(式中、「FLN」がフラーレンであり、Arがアリール基であり、R〜Rが、H原子又は幅広い意味から選択される置換基を示す)のo−QDMフラーレン誘導体が開示されている。同様に、フラーレン、及びそれらの合成についての文書による明確な開示はごく少数であり、ここで、R〜Rの全てがHを表す0
非特許文献5には、下式
【0016】
【化3】
【0017】
(式中、Rがメチルであり、Rが、例えば、COOCH又はCNである)のo−QDMフラーレン誘導体が開示されている。
非特許文献6には、下式
【0018】
【化4】
【0019】
o−QDMフラーレン誘導体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0132782A1号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2012/0004476A1号明細書
【特許文献3】国際公開第2008/018931A1号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2010/087655A1号パンフレット
【特許文献5】米国特許第8,217,260号明細書
【特許文献6】米国特許第5,763,719号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第4301458A1号明細書
【特許文献8】特開2013−128001A1号公報
【特許文献9】特開2011−238847A1号公報
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】ヒルシュ(Hirsch)、ブレットライヒ(Brettreich)著、フラーレン:化学及び反応(Fllerenes:Chemistry and Reactions)、ワイリー(Wiley)、2005年
【非特許文献2】E.ヴォロシャツィ(E.Voroshazi)ら著、ジャーナル・オブ・マテリアルズ・ケミストリー(J.Mater.Chem.)2011、21、17345〜17352
【非特許文献3】K.−H.キム(K.−H.Kim)ら著、ケミストリー・オブ・マテリアルズ(Chem.Mater.)2011、23、5090〜5095
【非特許文献4】X.モン(X.Meng)著、ACSアプライド・マテリアルズ・アンド・インターフェース(ACS Appl.Mater.Interfaces)2012、4、5966〜5973
【非特許文献5】S.ルー(S.Lu)ら著、オーガニック・レターズ(Org.Letters)2013
【非特許文献6】ヨウチュン・フー(Youjun He)ら著、ジャーナル・オブ・マテリアルズ・ケミストリー(J.Mater.Chem.)2012、22、13391
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしながら、以下に権利請求されるフラーレン誘導体は、先行技術においてこれまで開示も示唆もされていない。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、式I
【0024】
【化5】
【0025】
(式中、
が、n個の炭素原子と、任意選択的に、内部に捕捉された1つ又は複数の原子とから構成されるフラーレンであり、
付加物が、フラーレンCに付加される、第2の付加物、又は第2の付加物の組合せであり、
mが、フラーレンCに付加される第2の付加物の数であり、0、1以上の整数、又は0を超える非整数であり、
oが、1以上の整数であり、
〜Rが、互いに独立して、H、ハロゲン原子、又は1〜50個のC原子を有するカルビルもしくはヒドロカルビル基であり、又はR及びRの対、及び/又はR及びRの対が、共有結合して、任意選択的に置換される、3〜20個の環原子を有する炭素環式基、複素環式基、芳香族基又は複素芳香族基を形成する)の化合物(その異性体を含む)であって、
式I中、R及びRの少なくとも一方が、Hと異なり、R及びRの少なくとも一方が、Hと異なることを特徴とする化合物に関する。
【0026】
本発明は、電子受容体又はn型半導体としての式Iの化合物の使用にさらに関する。
本発明は、半導体材料中の電子受容体又はn型構成要素、有機電子デバイス又は有機電子デバイスの構成要素としての式Iの化合物の使用にさらに関する。
【0027】
本発明は、式Iから選択される1つ又は複数の化合物を含む組成物にさらに関する。
本発明は、2つ以上のフラーレン誘導体(そのうちの1つ又は複数が式Iから選択される)を含む組成物にさらに関する。
【0028】
本発明は、好適には、電子受容体又はn型構成要素としての式Iから選択される1つ又は複数の化合物を含み、好適には、電子供与体又はp型特性を有する、1つ又は複数の半導体化合物をさらに含む組成物にさらに関する。
【0029】
本発明は、式Iから選択される1つ又は複数の化合物を含み、好適には、共役有機ポリマーから選択される、1つ又は複数のp型有機半導体化合物をさらに含む組成物にさらに関する。
【0030】
本発明は、式Iから選択される1つ又は複数の化合物を含み、半導体、電荷輸送、正孔輸送、電子輸送、正孔阻止、電子阻止、導電、光伝導及び発光特性のうちの1つ又は複数を有する化合物から選択される1つ又は複数の化合物をさらに含む組成物にさらに関する。
【0031】
本発明は、半導体、電荷輸送、導電、光伝導もしくは発光材料としての、又は光学、電気光学、電子、エレクトロルミネセンスもしくは光輝性デバイスにおける、又はこのようなデバイスの構成要素における又はこのようなデバイスもしくは構成要素を含む組立体における、式Iから選択される化合物、又はそれを含む組成物の使用にさらに関する。
【0032】
本発明は、上記及び以下に記載される、式Iから選択される化合物又はそれを含む組成物を含む、半導体、電荷輸送、導電、光伝導又は発光材料にさらに関する。
本発明は、上記及び以下に記載される、式Iから選択される1つ又は複数の化合物、又はそれを含む組成物もしくは材料を含み、好適には、有機溶媒から選択される1つ又は複数の溶媒をさらに含む配合物にさらに関する。
【0033】
本発明は、上記及び以下に記載される、配合物を用いて作製される、光学、電気光学、電子、エレクトロルミネセンスもしくは光輝性デバイス、又はそれらの構成要素、又はそれを含む組立体にさらに関する。
【0034】
本発明は、上記及び以下に記載される、式Iから選択される化合物、又はそれを含む組成物もしくは材料を含む、光学、電気光学、電子、エレクトロルミネセンスもしくは光輝性デバイス、又はそれらの構成要素、又はそれを含む組立体にさらに関する。
【0035】
光学、電気光学、電子、エレクトロルミネセンス及び光輝性デバイスとしては、以下に限定はされないが、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、有機発光ダイオード(OLED)、有機発光トランジスタ(OLET)、有機光起電デバイス(OPV)、有機光検出器(OPD)、有機太陽電池、レーザーダイオード、ショットキーダイオード、光伝導体、光検出器及び熱電デバイスが挙げられる。
【0036】
上記のデバイスの構成要素としては、以下に限定はされないが、電荷注入層、電荷輸送層、中間層、平坦化層、帯電防止フィルム、ポリマー電解質膜(PEM)、導電性基板及び導電性パターンが挙げられる。
【0037】
このようなデバイス又は構成要素を含む組立体としては、以下に限定はされないが、集積回路(IC)、無線自動識別(RFID)タグ又はセキュリティマーキングもしくはそれらを含むセキュリティデバイス、フラットパネルディスプレイ又はそのバックライト、電子写真デバイス、電子写真記録デバイス、有機記憶デバイス、センサデバイス、バイオセンサ及びバイオチップが挙げられる。
【0038】
さらに、本発明の化合物、混合物又は材料は、電池中の電極材料として及びDNA配列を検出及び識別するための構成要素又はデバイスにおいて使用され得る。
本発明は、式Iから選択される1つ又は複数の化合物と、共役有機ポリマーから選択される1つ又は複数のp型有機半導体化合物とを含む組成物を含むか、又はそれから形成されるバルクヘテロ接合にさらに関する。本発明は、このようなバルクヘテロ接合を含む、バルクヘテロ接合(BHJ)OPVデバイス、又は逆型BHJ OPVデバイスにさらに関する。
用語及び定義
本明細書において使用される際、「式I」又は「式I及びその部分式」への任意の言及は、以下に限定はされないが、式I1、I2、I1a、I2a、I1a1、I1a2、I2a1及びI2a2を含む、これ以降に示される式Iの任意の特定の部分式を含むことが理解される。
【0039】
本明細書において使用される際、「フラーレン」という用語は、6員環及び5員環、通常、12個の5員環及び残りの6員環と、任意選択的に、内部に捕捉された1つ又は複数の原子とを含む表面を有するかご状の縮合環を形成する、偶数の炭素原子から構成される化合物を意味することが理解される。フラーレンの表面は、B又はNのようなヘテロ原子も含有し得る。
【0040】
本明細書において使用される際、「内包フラーレン」という用語は、内部に捕捉された1つ又は複数の原子を有するフラーレンを意味することが理解される。
本明細書において使用される際、「金属フラーレン」という用語は、内部に捕捉された原子が金属原子から選択される内包フラーレンを意味することが理解される。
【0041】
本明細書において使用される際、「炭素系フラーレン」という用語は、表面が炭素原子のみで構成される、内部に捕捉された原子がないフラーレンを意味することが理解される。
【0042】
本明細書において使用される際、「ポリマー」という用語は、高い相対分子量の分子を意味することが理解され、その構造は、実際に又は概念的に、低い相対分子量の分子から誘導される単位の多重反復を本質的に含む(ピュア・アプライド・ケミストリー(Pure Appl.Chem.)、1996年、68、2291)。「オリゴマー」という用語は、中間の相対分子量の分子を意味することが理解され、その構造は、実際に又は概念的に、より低い相対分子量の分子から誘導される小さい複数の単位を本質的に含む(ピュア・アプライド・ケミストリー(Pure Appl.Chem.)、1996年、68、2291)。本明細書において使用される際の好適な意味では、ポリマーは、1つより多い、すなわち、少なくとも2つの繰返し単位、好適には、5つ以上の繰返し単位を有する化合物を意味することが理解され、オリゴマーは、1つより多く10個未満、好適には、5つ未満の繰返し単位を有する化合物を意味することが理解される。
【0043】
さらに、本明細書において使用される際、「ポリマー」という用語は、1つ又は複数の異なるタイプの繰返し単位(分子の最小構成単位)の骨格(「主鎖」とも呼ばれる)を包含する分子を意味することが理解され、「オリゴマー」、「コポリマー」、「ホモポリマー」などの一般的に知られている用語を含む。さらに、ポリマーという用語は、ポリマー
自体に加えて、このようなポリマーの合成に伴う開始剤、触媒及び他の要素からの残基を含むことが理解され、ここで、このような残基は、それらに共有結合的に組み込まれていないことが理解される。さらに、このような残基及び他の要素は、通常、重合後の精製プロセス中に除去されるが、ポリマーが容器間で又は溶媒もしくは分散媒間で移される場合、それらが、一般に、ポリマーに留まるように、典型的に、ポリマーと混合又は混ぜ合わされる。
【0044】
本明細書において使用される際、ポリマー又は繰返し単位を示す式中、星印()は、ポリマー主鎖中の隣接する単位又は末端基に対する化学結合を意味することが理解される。例えば、ベンゼン環又はチオフェン環のような環では、星印()は、隣接する環に縮合されたC原子を意味することが理解される。
【0045】
本明細書において使用される際、「繰返し単位(repeat unit)」、「繰返し単位」及び「モノマー単位」という用語は、同義的に使用され、構成繰返し単位(CRU)を意味することが理解され、これは、その繰返しが、規則的な高分子、規則的なオリゴマー分子、規則的なブロック又は規則的な鎖を構成する最小構成単位である(ピュア・アプライド・ケミストリー(Pure Appl.Chem.)、1996年、68、2291)。本明細書においてさらに使用される際、「単位」という用語は、それ自体で繰返し単位であり得るか、又は他の単位と一緒に構成繰返し単位を形成し得る構成単位を意味することが理解される。
【0046】
本明細書において使用される際、「末端基」は、ポリマー主鎖を終端させる基を意味することが理解される。「骨格の末端位置に」という表現は、一方の側をこのような末端基に及び他方の側を別の繰返し単位に連結される二価単位又は繰返し単位を意味することが理解される。このような末端基は、エンドキャップ基、又は例えば、以下に定義されるR又はRの意味を有する基のような、重合反応に関与しない、ポリマー主鎖を形成するモノマーに結合される反応基を含む。
【0047】
本明細書において使用される際、「エンドキャップ基」という用語は、ポリマー主鎖の末端基に結合されるか、それを置換する基を意味することが理解される。エンドキャップ基は、末端封鎖(endcapping)プロセスによって、ポリマー中に導入され得る。末端封鎖は、例えば、ポリマー主鎖の末端基を、例えば、ハロゲン化アルキルもしくはハロゲン化アリール、アルキルスタンナンもしくはアリールスタンナン又はボロン酸アルキルもしくはボロン酸アリールのような単官能性化合物(「エンドキャッパー(endcapper)」)と反応させることによって行われ得る。エンドキャッパーは、例えば、重合反応後に加えられ得る。あるいは、エンドキャッパーは、重合反応前又は重合反応中に、反応混合物にその場で加えられ得る。エンドキャッパーのその場での添加を用いて、重合反応を終了させることで、形成ポリマーの分子量を制御することもできる。典型的なエンドキャップ基は、例えば、H、フェニル及び低級アルキルである。
【0048】
本明細書において使用される際、「小分子」という用語は、典型的に、反応基(それによって、モノマー化合物が反応されて、ポリマーが形成され得る)を含有せず、単量体形態で使用されるように規定されるモノマー化合物を意味することが理解される。それに対し、「モノマー」という用語は、特に記載されない限り、1つ又は複数の反応性官能基(それによって、モノマー化合物が反応されて、ポリマーが形成され得る)を有するモノマー化合物を意味することが理解される。
【0049】
本明細書において使用される際、「供与体」又は「供与」及び「受容体」又は「受容」という用語は、それぞれ、電子供与体又は電子受容体を意味することが理解される。「電子供与体」は、別の化合物又は化合物の原子の別の基に電子を供与する化学物質を意味す
ることが理解される。「電子受容体」は、別の化合物又は化合物の原子の別の基からそれに輸送された電子を受容する化学物質を意味することが理解される。国際純正・応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry)、コンペンディウム・オブ・ケミカル・テクノロジー(Compendium of Chemical Technology)、ゴールド・ブック(Gold Book)、第2.3.2版、19.2012年8月、p.477及び480も参照されたい。
【0050】
本明細書において使用される際、「n型」又は「n型半導体」という用語は、伝導電子密度が可動正孔密度を超えている外因性半導体を意味することが理解され、「p型」又は「p型半導体」という用語は、可動正孔密度が伝導電子密度を超えている外因性半導体を意味することが理解される(J.シューリス(J.Thewlis)著、コンサイス・ディクショナリー・オブ・フィジックス(Concise Dictionary of Physics)、ペルガモン・プレス(Pergamon Press)、オックスフォード(Oxford)、1973年も参照されたい)。
【0051】
本明細書において使用される際、「脱離基」という用語は、所定の反応に関与する分子の残基又は主要部分であると考えられるものの中の原子から脱離する(荷電又は非荷電であり得る)原子又は基を意味することが理解される(ピュア・アプライド・ケミストリー(Pure Appl.Chem.)、1994年、66、1134も参照されたい)。
【0052】
本明細書において使用される際、「共役」という用語は、sp−混成を(又は任意選択的に、sp−混成も)有するC原子を主に含有する化合物(例えばポリマー)を意味することが理解され、これらのC原子はまた、ヘテロ原子で置換され得る。最も単純な場合、これは、例えば、交互のC−C単結合及び二重(又は三重)結合を有する化合物であるが、例えば、1,4−フェニレンのような芳香族単位を有する化合物も含む。これに関連する「主に」という用語は、共役の中断をもたらし得る、自然に(自発的に)発生する欠陥、又は設計によって含まれる欠陥を有する化合物が、依然として共役化合物とみなされることを意味することが理解される。
【0053】
本明細書において使用される際、特に記載されない限り、分子量は、数平均分子量M又は重量平均分子量Mとして示され、これは、テトラヒドロフラン、トリクロロメタン(TCM、クロロホルム)、クロロベンゼン又は1,2,4−トリクロロ−ベンゼンなどの溶離剤溶媒中のポリスチレン標準に対して、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。特に記載されない限り、1,2,4−トリクロロベンゼンが、溶媒として使用される。繰返し単位の総数nとしても示される重合度は、n=M/Mとして示される数平均重合度を意味することが理解され、式中、Mが数平均分子量であり、Mが、単一の繰返し単位の分子量である(J.M.G.コウィー(J.M.G.Cowie)著、ポリマー:最新の材料の化学及び物理学(Chemistry & Physics of Modern Materials)、ブラッキー(Blackie)、グラスゴー(Glasgow)、1991年を参照されたい)。
【0054】
本明細書において使用される際、「カルビル基」という用語は、任意の非炭素原子なしで(例えば−C≡C−のような)、又は任意選択的に、B、N、O、S、P、Si、Se、As、Te又はGeなどの少なくとも1つの非炭素原子と組み合わせて(例えばカルボニルなど)、少なくとも1つの炭素原子を含む任意の一価又は多価の有機基部分を意味することが理解される。
【0055】
本明細書において使用される際、「ヒドロカルビル基」という用語は、1つ又は複数のH原子をさらに含有し、例えば、B、N、O、S、P、Si、Se、As、Te又はGe
のような1つ又は複数のヘテロ原子を任意選択的に含有するカルビル基を意味することが理解される。
【0056】
本明細書において使用される際、「ヘテロ原子」という用語は、H原子又はC原子でない有機化合物中の原子を意味することが理解され、好適には、B、N、O、S、P、Si、Se、As、Te又はGeを意味することが理解される。
【0057】
3つ以上のC原子の鎖を含むカルビル又はヒドロカルビル基は、直鎖状、分枝鎖状及び/又は環状であり得、スピロ結合環及び/又は縮合環を含み得る。
好適なカルビル及びヒドロカルビル基としては、それぞれが任意選択的に置換され、1〜40個、好適には、1〜25個、非常に好適には、1〜18個のC原子を有する、アルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ及びアルコキシカルボニルオキシ、さらに、6〜40個、好適には、6〜25個のC原子を有する、任意選択的に置換されるアリール又はアリールオキシ、さらに、それぞれが任意選択的に置換され、6〜40個、好適には、7〜40個のC原子を有する、アルキルアリールオキシ、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールカルボニルオキシ及びアリールオキシカルボニルオキシが挙げられ、全てのこれらの基は、好適には、B、N、O、S、P、Si、Se、As、Te及びGeから選択される1つ又は複数のヘテロ原子を任意選択的に含有する。
【0058】
さらなる好適なカルビル及びヒドロカルビル基としては、例えば、C〜C40アルキル基、C〜C40フルオロアルキル基、C〜C40アルコキシ又はオキサアルキル基、C〜C40アルケニル基、C〜C40アルキニル基、C〜C40アリル基、C〜C40アルキルジエニル基、C〜C40ポリエニル基、C〜C40ケトン基、C〜C40エステル基、C〜C18アリール基、C〜C40アルキルアリール基、C〜C40アリールアルキル基、C〜C40シクロアルキル基、C〜C40シクロアルケニル基などが挙げられる。上記の基の中で好適なのは、それぞれ、C〜C20アルキル基、C〜C20フルオロアルキル基、C〜C20アルケニル基、C〜C20アルキニル基、C〜C20アリル基、C〜C20アルキルジエニル基、C〜C20ケトン基、C〜C20エステル基、C〜C12アリール基、及びC〜C20ポリエニル基である。
【0059】
例えば、シリル基、好適には、トリアルキルシリル基で置換される、アルキニル基、好適には、エチニルのような、炭素原子を有する基とヘテロ原子を有する基との組合せも含まれる。
【0060】
カルビル又はヒドロカルビル基は、非環式基又は環式基であり得る。カルビル又はヒドロカルビル基が非環式基である場合、基は、直鎖状又は分枝鎖状であり得る。カルビル又はヒドロカルビル基が環式基である場合、基は、非芳香族炭素環式もしくは複素環式基、又はアリールもしくはヘテロアリール基であり得る。
【0061】
上記及び以下に示される非芳香族炭素環式基は、飽和又は不飽和であり、好適には、4〜30個の環C原子を有する。上記及び以下に示される非芳香族炭素環式基は、好適には、4〜30個の環C原子を有し、C環原子のうちの1つ又は複数が、好適には、N、O、S、Si及びSeから選択されるヘテロ原子で、又は−S(O)−もしくは−S(O)−基で任意選択的に置換される。非芳香族炭素環式及び複素環式基は、単環式又は多環式であり、縮合環も含有していてもよく、好適には、1、2、3又は4つの縮合又は非縮合環を含有し、1つ又は複数の基Lで任意選択的に置換され、ここで、
Lが、ハロゲン、−CN、−NC、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)NR00、−C(=O)X、−C(=O)R、−NH、−NR00
−SH、−SR、−SOH、−SO、−OH、−NO、−CF、−SF、任意選択的に置換されるシリル、又は任意選択的に置換され、1つ又は複数のヘテロ原子を任意選択的に含む、1〜40個のC原子を有するカルビルもしくはヒドロカルビルから選択され、好適には、任意選択的にフッ素化される、1〜20個のC原子を有する、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル又はアルコキシカルボニルオキシであり、Xが、ハロゲン、好適には、F、Cl又はBrであり、R、R00が、上記及び以下に示される意味を有し、好適には、H又は1〜20個のC原子を有するアルキルを表す。
【0062】
好適な置換基Lは、ハロゲン、最適には、F、又は1〜12個のC原子を有する、アルキル、アルコキシ、オキサアルキル、チオアルキル、フルオロアルキル及びフルオロアルコキシ、又は2〜12個のC原子を有する、アルケニル又はアルキニルから選択される。
【0063】
好適な非芳香族炭素環式又は複素環式基は、テトラヒドロフラン、インダン、ピラン、ピロリジン、ピペリジン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジヒドロ−フラン−2−オン、テトラヒドロ−ピラン−2−オン及びオキセパン−2−オンである。
【0064】
上記及び以下に示されるアリール基は、好適には、4〜30個の環C原子を有し、単環式又は多環式であり、縮合環も含有していてもよく、好適には、1、2、3又は4つの縮合又は非縮合環を含有し、上述される1つ又は複数の基Lで任意選択的に置換される。
【0065】
上記及び以下に示されるヘテロアリール基は、好適には、4〜30個の環C原子を有し、C環原子のうちの1つ又は複数が、好適には、N、O、S、Si及びSeから選択されるヘテロ原子で置換され、単環式又は多環式であり、縮合環も含有していてもよく、好適には、1、2、3又は4つの縮合又は非縮合環を含有し、上述される1つ又は複数の基Lで任意選択的に置換される。
【0066】
本明細書において使用される際、「アリーレン」は、二価アリール基を意味することが理解され、「ヘテロアリーレン」は、上記及び以下に示されるアリール及びヘテロアリールの全ての好適な意味を含む二価ヘテロアリール基を意味することが理解される。
【0067】
好適なアリール及びヘテロアリール基は、フェニルであり、このフェニルにおいて、さらに、1つ又は複数のCH基が、N、ナフタレン、チオフェン、セレノフェン、チエノチオフェン、ジチエノチオフェン、フルオレン及びオキサゾールで置換されてもよく、これらの全てが、上述されるように、非置換であるか、Lで一置換又は多置換され得る。非常に好適な環は、ピロール、好適には、N−ピロール、フラン、ピリジン、好適には、2−又は3−ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、イソチアゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソオキサゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チオフェン、好適には、2−チオフェン、セレノフェン、好適には、2−セレノフェン、チエノ[3,2−b]チオフェン、チエノ[2,3−b]チオフェン、フロ[3,2−b]フラン、フロ[2,3−b]フラン、セレノ[3,2−b]セレノフェン、セレノ[2,3−b]セレノフェン、チエノ[3,2−b]セレノフェン、チエノ[3,2−b]フラン、インドール、イソインドール、ベンゾ[b]フラン、ベンゾ[b]チオフェン、ベンゾ[1,2−b;4,5−b’]ジチオフェン、ベンゾ[2,1−b;3,4−b’]ジチオフェン、キノール、2−メチルキノール、イソキノール、キノキサリン、キナゾリン、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンズイソオキサゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアジアゾール、4H−シクロペンタ[2,1−b;3,4−b’]ジチオフェン、7H−3,4−ジチア−7−シラ−シクロペンタ[
a]ペンタレンから選択され、これらの全てが、上述されるように、非置換であるか、Lで一置換又は多置換され得る。アリール及びヘテロアリール基のさらなる例は、これ以降に示される基から選択されるものである。
【0068】
アルキル基又はアルコキシ基(すなわち、末端CH基が−O−で置換される)は、直鎖状又は分枝鎖状であり得る。それは、好適には直鎖状であり、2、3、4、5、6、7、8、12又は16個の炭素原子を有し、したがって、好適には、例えば、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ドデシル又はヘキサデシル、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、ヘプトキシ、オクトキシ、ドデコキシ又はヘキサデコキシ、さらに、メチル、ノニル、デシル、ウンデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ノノキシ、デコキシ、ウンデコキシ、トリデコキシ又はテトラデコキシである。
【0069】
アルケニル基(すなわち、1つ又は複数のCH基が−CH=CH−で置換される)は、直鎖状又は分枝鎖状であり得る。それは、好適には直鎖状であり、2〜10個のC原子を有し、したがって、好適には、ビニル、プロパ−1−、又はプロパ−2−エニル、ブタ−1−、2−又はブタ−3−エニル、ペンタ−1−、2−、3−又はペンタ−4−エニル、ヘキサ−1−、2−、3−、4−又はヘキサ−5−エニル、ヘプタ−1−、2−、3−、4−、5−又はヘプタ−6−エニル、オクタ−1−、2−、3−、4−、5−、6−又はオクタ−7−エニル、ノナ−1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−又はノナ−8−エニル、デカ−1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−又はデカ−9−エニルである。
【0070】
特に好適なアルケニル基は、C〜C−1E−アルケニル、C〜C−3E−アルケニル、C〜C−4−アルケニル、C〜C−5−アルケニル及びC−6−アルケニル、特に、C〜C−1E−アルケニル、C〜C−3E−アルケニル及びC〜C−4−アルケニルである。特に好適なアルケニル基の例は、ビニル、1E−プロペニル、1E−ブテニル、1E−ペンテニル、1E−ヘキセニル、1E−ヘプテニル、3−ブテニル、3E−ペンテニル、3E−ヘキセニル、3E−ヘプテニル、4−ペンテニル、4Z−ヘキセニル、4E−ヘキセニル、4Z−ヘプテニル、5−ヘキセニル、6−ヘプテニルなどである。5個以下のC原子を有する基が一般に好適である。
【0071】
オキサアルキル基(すなわち、1つのCH基が−O−で置換される)は、好適には、例えば、直鎖状2−オキサプロピル(=メトキシメチル)、2−(=エトキシメチル)もしくは3−オキサブチル(=2−メトキシエチル)、2−、3−、もしくは4−オキサペンチル、2−、3−、4−、もしくは5−オキサヘキシル、2−、3−、4−、5−、もしくは6−オキサヘプチル、2−、3−、4−、5−、6−もしくは7−オキサオクチル、2−、3−、4−、5−、6−、7−もしくは8−オキサノニル又は2−、3−、4−、5−、6−,7−、8−もしくは9−オキサデシルである。
【0072】
1つのCH基が−O−で置換され、1つのCH基が−C(O)−で置換されるアルキル基において、これらの基は、好適には隣接している。したがって、これらの基は、一緒に、カルボニルオキシ基−C(O)−O−又はオキシカルボニル基−O−C(O)−を形成する。好適には、この基は、直鎖状であり、2〜6個のC原子を有する。したがって、それは、好適には、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、アセチルオキシメチル、プロピオニルオキシメチル、ブチリルオキシメチル、ペンタノイルオキシメチル、2−アセチルオキシエチル、2−プロピオニルオキシエチル、2−ブチリルオキシエチル、3−アセチルオキシプロピル、3−プロピオニルオキシプロピル、4−アセチルオキシブチル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル、
メトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルメチル、プロポキシカルボニルメチル、ブトキシカルボニルメチル、2−(メトキシカルボニル)エチル、2−(エトキシカルボニル)エチル、2−(プロポキシカルボニル)エチル、3−(メトキシカルボニル)プロピル、3−(エトキシカルボニル)プロピル、4−(メトキシカルボニル)−ブチルである。
【0073】
2つ以上のCH基が−O−及び/又は−C(O)O−で置換されるアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状であり得る。それは、好適には直鎖状であり、3〜12個のC原子を有する。したがって、それは、好適には、ビス−カルボキシ−メチル、2,2−ビス−カルボキシ−エチル、3,3−ビス−カルボキシ−プロピル、4,4−ビス−カルボキシ−ブチル、5,5−ビス−カルボキシ−ペンチル、6,6−ビス−カルボキシ−ヘキシル、7,7−ビス−カルボキシ−ヘプチル、8,8−ビス−カルボキシ−オクチル、9,9−ビス−カルボキシ−ノニル、10,10−ビス−カルボキシ−デシル、ビス−(メトキシカルボニル)−メチル、2,2−ビス−(メトキシカルボニル)−エチル、3,3−ビス−(メトキシカルボニル)−プロピル、4,4−ビス−(メトキシカルボニル)−ブチル、5,5−ビス−(メトキシカルボニル)−ペンチル、6,6−ビス−(メトキシカルボニル)−ヘキシル、7,7−ビス−(メトキシカルボニル)−ヘプチル、8,8−ビス−(メトキシカルボニル)−オクチル、ビス−(エトキシカルボニル)−メチル、2,2−ビス−(エトキシカルボニル)−エチル、3,3−ビス−(エトキシカルボニル)−プロピル、4,4−ビス−(エトキシカルボニル)−ブチル、5,5−ビス−(エトキシカルボニル)−ヘキシルである。
【0074】
チオアルキル基(すなわち、1つのCH基が−S−で置換される)は、好適には、直鎖状チオメチル(−SCH)、1−チオエチル(−SCHCH)、1−チオプロピル(=−SCHCHCH)、1−(チオブチル)、1−(チオペンチル)、1−(チオヘキシル)、1−(チオヘプチル)、1−(チオオクチル)、1−(チオノニル)、1−(チオデシル)、1−(チオウンデシル)又は1−(チオドデシル)であり、ここで、好適には、sp混成ビニル炭素原子に隣接するCH基が置換される。
【0075】
フルオロアルキル基は、ペルフルオロアルキルC2i+1(式中、iが、1〜15の整数である)、特に、CF、C、C、C、C11、C13、C15又はC17、非常に好適には、C13、又は1〜5個のC原子を有する部分的にフッ素化されたアルキル、特に、1,1−ジフルオロアルキルであり、これらの全てが、直鎖状又は分枝鎖状である。
【0076】
アルキル、アルコキシ、アルケニル、オキサアルキル、チオアルキル、カルボニル及びカルボニルオキシ基は、アキラル又はキラル基であり得る。特に好適なキラル基は、例えば、2−ブチル(=1−メチルプロピル)、2−メチルブチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−ブチルオクチル、2−ヘキシルデシル、2−オクチルドデシル、2−プロピルペンチル、特に、2−メチルブチル、2−メチルブトキシ、2−メチルペントキシ、3−メチル−ペントキシ、2−エチル−ヘキソキシ、2−ブチルオクトキシ、2−ヘキシルデコキシ、2−オクチルドデコキシ、1−メチルヘキソキシ、2−オクチルオキシ、2−オキサ−3−メチルブチル、3−オキサ−4−メチル−ペンチル、4−メチルヘキシル、2−ヘキシル、2−オクチル、2−ノニル、2−デシル、2−ドデシル、6−メトキシ−オクトキシ、6−メチルオクトキシ、6−メチルオクタノイルオキシ、5−メチルヘプチルオキシ−カルボニル、2−メチルブチリルオキシ、3−メチルバレロイルオキシ、4−メチルヘキサノイルオキシ、2−クロロ−プロピオニルオキシ、2−クロロ−3−メチルブチリルオキシ、2−クロロ−4−メチル−バレリル−オキシ、2−クロロ−3−メチルバレリルオキシ、2−メチル−3−オキサペンチル、2−メチル−3−オキサ−ヘキシル、1−メトキシプロピル−2−オキシ、1−エトキシプ
ロピル−2−オキシ、1−プロポキシプロピル−2−オキシ、1−ブトキシプロピル−2−オキシ、2−フルオロオクチルオキシ、2−フルオロデシルオキシ、1,1,1−トリフルオロ−2−オクチルオキシ、1,1,1−トリフルオロ−2−オクチル、2−フルオロメチルオクチルオキシである。非常に好適なのは、2−エチルヘキシル、2−ブチルオクチル、2−ヘキシルデシル、2−オクチルドデシル、2−ヘキシル、2−オクチル、2−オクチルオキシ、1,1,1−トリフルオロ−2−ヘキシル、1,1,1−トリフルオロ−2−オクチル及び1,1,1−トリフルオロ−2−オクチルオキシである。
【0077】
好適なアキラル分枝鎖状基は、イソプロピル、イソブチル(=メチルプロピル)、イソペンチル(=3−メチルブチル)、tert.ブチル、イソプロポキシ、2−メチル−プロポキシ及び3−メチルブトキシである。
【0078】
好適な実施形態において、アルキル基は、互いに独立して、1〜30個のC原子を有する第一級、第二級又は第三級アルキル又はアルコキシから選択され、ここで、1つ又は複数のH原子が、F、又は任意選択的にアルキル化又はアルコキシ化され、4〜30個の環原子を有する、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール又はヘテロアリールオキシで任意選択的に置換される。このタイプの非常に好適な基が、下式
【0079】
【化6】
【0080】
(式中、「ALK」が、1〜20個、好適には、1〜12個のC原子、第三級基の場合、非常に好適には、1〜9個のC原子を有する、任意選択的にフッ素化された、好適には、直鎖状の、アルキル又はアルコキシを表し、破線は、これらの基が結合される環に対する結合を表す)からなる群から選択される。これらの基の中で特に好適なのは、全てのALK部分基(subgroup)が同一であるものである。
【0081】
本明細書において使用される際、「ハロゲン」又は「hal」は、F、Cl、Br又はI、好適には、F、Cl又はBrを含む。
本明細書において使用される際、−CO−、−C(=O)−及び−C(O)−が、カルボニル基、すなわち、構造
【0082】
【化7】
【0083】
を有する基を意味することが理解される。
上記及び以下において、Y及びYが、互いに独立して、H、F、Cl又はCNである。
【0084】
上記及び以下において、R及びR00が、互いに独立して、H又は1〜40個のC原子を有する任意選択的に置換されるカルビル又はヒドロカルビル基であり、好適には、H又は1〜12個のC原子を有するアルキルを表す。
【発明を実施するための形態】
【0085】
式Iの化合物は、特に、大量生産に好適な方法によって合成するのが容易であり、有利な特性、例えば、良好な構造機構よび塗膜形成特性、良好な電子特性、特に、高い電荷担体移動度、良好な加工性、特に、有機溶媒への高い溶解性、ならびに高い光安定性及び熱安定性を示す。
【0086】
式Iの化合物は、電子受容体又はn型半導体として、特に、供与体及び受容体構成要素の両方を含有する半導体材料において、及びBHJ OPVデバイス及びOPDデバイスに使用するのに好適なp型及びn型半導体の混合物を作製するのに特に好適である。
【0087】
OPV及びOPD用途の場合、式Iの化合物、又は2つ以上のフラーレン誘導体(そのうちの1つ又は複数が式Iから選択される)を含む混合物が、ポリマー、オリゴマー又は所定の分子単位などのさらなるp型半導体と混合されて、OPV/OPDデバイス中の活性層(「光活性層」とも呼ばれる)が形成される。
【0088】
OPV/OPDデバイスは、通常、活性層の一方の側の透明又は半透明基板上に典型的に設けられる第1の透明又は半透明電極、及び活性層の他方の側の第2の金属又は半透明電極からさらに構成される。
【0089】
典型的に、金属酸化物(例えば、ZnO、TiO、ZTO、MoO、NiO)、塩(例:LiF、NaF)、共役ポリマー電解質(例えば:PEDOT:PSS又はPFN)、共役ポリマー(例えば:PTAA)又は有機化合物(例えば:NPB、Alq、TPD)を含む、正孔阻止層、正孔輸送層、電子阻止層及び/又は電子輸送層として働くさらなる界面層が、活性層と電極との間に挿入され得る。
【0090】
式Iの化合物は、OPV/OPD用途のための以前に開示されたフラーレン誘導体と比較して以下の改良された特性を示す:
1)本発明のフラーレン誘導体と比較して、先行技術、例えば、米国特許出願公開第2010/0132782A1号明細書、米国特許出願公開第2012/0004476A1号明細書、国際公開第2008/018931A1号パンフレット、国際公開第2010/087655A1号パンフレット及び米国特許第8,217,260号明細書において報告されるフラーレン誘導体は、OPVデバイスを作製するのに一般的に使用される溶媒への低い溶解性を有する。
2)2つ以上の可溶化基をそれぞれ有し得る置換基R〜Rが、増加した数の可溶化基
のため、非ハロゲン化溶媒へのより高いフラーレン溶解性を可能にする。
3)位置R〜Rにおける電子受容及び/又は供与単位の注意深い選択による、電子エネルギー(HOMO/LUMOレベル)のさらなる微調整により、OPV又はOPDデバイスの活性層に使用される場合、フラーレン誘導体とp型材料(例えば、ポリマー、オリゴマー又は所定の分子単位)との間の電子移動プロセス中のエネルギー損失が減少される。
4)R〜Rの位置における電子受容及び/又は供与単位の注意深い選択による、電子エネルギー(HOMO/LUMOレベル)のさらなる微調整により、開路電位(Voc)が増加される。
5)R又はR及びR又はRが、アルキル鎖である場合、フラーレン溶解性は、同等の非置換誘導体(R〜R=H)と同様のHOMO位置を維持しながら大いに高められ、したがって、PCBMを用いて作製される同様のデバイスと比較してデバイスの開路電位(Voc)が増加される。
6)R又はR及びR又はRが、同じ化学物質を表す場合、得られるフラーレン誘導体は、高い対称度を有し、したがって、非ハロゲン化溶媒への十分な溶解性を維持しながら、化合物の固体機構を改善する可能性を高める。
【0091】
後述される式I、及びその部分式の化合物において、R基、R〜Rが、構造的に独特であり、有用な特性を提供するように構成される。さらに、付加物基は、存在する場合、構造的独自性及び有用な特性をさらに提供し得る。精製された化合物の場合、値mは、例えば、0、1、2又はそれ以上であり得る。化合物の混合物が存在する場合、値mはまた、例えば、0.5又は1.5などの非整数であり得る。
【0092】
式I及びその部分式中のフラーレンCは、任意の数nの炭素原子から構成され得る。好適には、フラーレンCを構成する炭素原子の数nは、60、70、76、78、82、84、90、94又は96、非常に好適には、60又は70である。
【0093】
本発明の好適な実施形態において、式I及びその部分式中のnが60である。
本発明の別の好適な実施形態において、式I及びその部分式中のnが70である。
式I及びその部分式中のフラーレンCは、好適には、炭素系フラーレン、内包フラーレン、又はそれらの混合物、非常に好適には、炭素系フラーレンから選択される。
【0094】
好適な炭素系フラーレンとしては、以下に限定はされないが、(C60−1h)[5,6]フラーレン、(C70−D5h)[5,6]フラーレン、(C76−D2*)[5,6]フラーレン、(C84−D2*)[5,6]フラーレン、(C84−D2)[5,6]フラーレン、又は上記の炭素系フラーレンの2つ以上の混合物が挙げられる。
【0095】
内包フラーレンは、好適には、金属フラーレンである。好適な金属フラーレンとしては、以下に限定はされないが、La@C60、La@C82、Y@C82、ScN@C80、YN@C80、Sc@C80又は上記の金属フラーレンの2つ以上の混合物が挙げられる。
【0096】
式I及びその部分式のフラーレン誘導体において、付加物は、任意の結合性で付加され得る。付加物は、好適には、フラーレンにおける2個の異なる炭素原子に;非常に好適には、フラーレンにおける2個の、異なるが隣接した炭素原子に;最適には、フラーレンにおける2個の異なる隣接した、5員環に隣接する炭素原子に付加される。
【0097】
式I及びその部分式中のフラーレンCは、好適には、[6,6]及び/又は[5,6]結合において置換され、好適には、少なくとも1つの[6,6]結合において置換される。
【0098】
式I及びその部分式の化合物は、式I
【0099】
【化8】
【0100】
に示される以下の構造の第1の付加物に加えて、式I及びその部分式中で「付加物」と呼ばれる、フラーレンCに付加される任意の数mの第2の付加物を含有し得る。
第2の付加物は、フラーレンに対する任意の結合性で、o−キノンジメタン類似体を含む、任意の可能な付加物又は付加物の組合せであり得る。付加物の一例は、PCBMに見られる付加物であり、ここで、付加物は、=C(R31)(R32)(式中、Rが、任意選択的に置換されるフェニル基であり、R32が、−(CH)COOCHである。Rがフェニルであり得、nが3であり得る)によって表され得る。
【0101】
式I及びその部分式の化合物において、任意の付加物が、完成した生成物中で又は合成の間に任意の組合せで互いに結合されて、完成した生成物の好適な特性が促進され得る。
式I及びその部分式の化合物において、フラーレンCに付加される第2の付加物の数mは、0、1以上の整数、0.5又は1.5のような0を超える非整数であり、好適には、0、1、2又は3、非常に好適には、0、1又は2である。
【0102】
本発明の好適な実施形態において、式I及びその部分式中のmが0である。
別の好適な実施形態において、式I及びその部分式の化合物は、式Iに示される付加物を含む任意の第2のオルト−キノジメタンフラーレン付加物を含まない。
【0103】
本発明の別の好適な実施形態において、式I及びその部分式中のmが、1、2又は3である。
式I及びそれらの部分式中で「付加物」と呼ばれる第2の付加物は、好適には、下式
【0104】
【化9】
【0105】
(式中、
S1、RS2、RS3、RS4及びRS5が、互いに独立して、H、ハロゲン又はCNを表し、又は上に示されるRの意味のうちの1つ又はArS1の意味のうちの1つを有し、
ArS1及びArS2が、互いに独立して、単環式又は多環式であり、1つ又は複数の同一又は異なる置換基Rで置換される、5〜20個、好適には、5〜15個の環原子を有するアリール又はヘテロアリール基を表し、ここで、
が、ハロゲン、好適には、F、又は1〜30個、好適には、4〜20個、非常に好適には、5〜15個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状又は環状アルキル部分を表し、ここ
で、1つ又は複数のCH基が、−O−、−S−、−C(O)−、−C(S)−、−C(O)−O−、−O−C(O)−、−S(O)−、−NR−、−SiR00−、−CF−で任意選択的に置換され、R及びR00が、上記及び以下に示される意味のうちの1つを有し、好適には、H又は1〜12個のC原子を有するアルキルを表す)から選択される。
【0106】
本発明の別の好適な実施形態において、式I及びその部分式中のmが、1、2又は3であり、付加物が、上述される式S1〜S9から選択される。
式I及びその部分式中のR〜Rが、好適には、H、ハロゲン、又は1〜50個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状又は環状アルキル基を表し、ここで、O及び/又はS原子が互いに直接連結されないように、1つ又は複数のCH基が、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=S)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−S(O)−、−NR−、−SiR00−、−CF−、−CHR=CR00−、−CY=CY−又は−C≡C−で任意選択的に置換され、又は1つ又は複数のCH又はCH基が、カチオン基又はアニオン基で置換され、ここで、1つ又は複数のH原子が、F、Cl、Br、I又はCNで任意選択的に置換され、又はR〜Rが、飽和又は不飽和の非芳香族炭素環式又は複素環式基、又はアリール基又はヘテロアリール基を表し、ここで、上記の環式基のそれぞれが、3〜20個、好適には、5〜15個の環原子を有し、単環式又は多環式であり、縮合環及び/又は非縮合環を含有し、1つ又は複数の基Rで任意選択的に置換され、ここで、
が、上に示されるLの意味のうちの1つを有し、好適には、ハロゲン、非常に好適には、F、又は1〜30個、好適には、4〜20個、非常に好適には、5〜15個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状又は環状アルキル部分を表し、ここで、1つ又は複数のCH基が、−O−、−S−、−C(O)−、−C(S)−、−C(O)−O−、−O−C(O)−、−S(O)−、−NR−、−SiR00−、−CF−で任意選択的に置換され、R及びR00が、上記及び以下に示される意味のうちの1つを有し、好適には、H又は1〜12個のC原子を有するアルキルを表す。
【0107】
式I及びその部分式において、好適には、R、R、R、R、R、R、R及びRのうちの1つ又は複数、非常に好適には、R、R、R、R、R、R、R及びRの全てが、Hを表す。
【0108】
さらに好適には、R、R、R、R、R、R、R及びRのうちの1つ又は複数が、ハロゲン、又は1〜50個、好適には、2〜50個、より好適には、2〜25個、最適には、2〜12個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状又は環状アルキル基を表し、ここで、O及び/又はS原子が互いに直接連結されないように、1つ又は複数のCH基が、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=S)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−S(O)−、−NR−、−SiR00−、−CF−、−CHR=CR00−、−CY=CY−又は−C≡C−で任意選択的に置換され、1つ又は複数のCH又はCH基が、カチオン基又はアニオン基で任意選択的に置換され、1つ又は複数のH原子が、F、Cl、Br、I又はCNで任意選択的に置換され、ここで、R及びR00及びY及びYが、上記及び以下に示される意味のうちの1つを有し、R及びR00が、好適には、H又は1〜12個のC原子を有するアルキルを表す。
【0109】
さらに好適には、R、R、R、R、R、R、R及びRのうちの1つ又は複数が、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル又はアルキルカルボニルオキシ基を表し、これらの全てが、直鎖状又は分枝鎖状であり、2〜20個のC原子、非常に好適には、2〜12個のC原子を有し、任意選択的にフッ素化される。
【0110】
さらに好適には、R、R、R、R、R、R、R及びRのうちの1つ又は複数が、非芳香族炭素環式又は複素環式基又はアリール又はヘテロアリール基を表し、上記の基のそれぞれが、3〜20個、好適には、5〜15個の環原子を有し、単環式又は多環式であり、上述される1つ又は複数の同一又は異なる置換基Rで任意選択的に置換される。
【0111】
式I中、好適には、R及びRが、Hと異なり、R及びRが、Hを表し、又はR及びRが、Hと異なり、R及びRが、Hを表す。
好適には、Hと異なるR、R、R及びRの基が、ハロゲン又は1〜50個、好適には、2〜50個、より好適には、2〜25個、最適には、2〜12個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状又は環状アルキル基を表し、ここで、O及び/又はS原子が互いに直接連結されないように、1つ又は複数のCH基が、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=S)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−S(O)−、−NR−、−SiR00−、−CF−、−CHR=CR00−、−CY=CY−又は−C≡C−で任意選択的に置換され、ここで、1つ又は複数のH原子が、F、Cl、Br、I又はCNで任意選択的に置換され、ここで、R及びR00及びY及びYが、上記及び以下に示される意味のうちの1つを有し、R及びR00が、好適には、H又は1〜12個のC原子を有するアルキルを表す。
【0112】
別の好適な実施形態において、Hと異なるR、R、R及びRの基が、C〜C50の任意選択的に置換されるアルキル基、C〜C25の任意選択的に置換されるアルキル基、及びC〜C16の任意選択的に置換されるアルキル基を含む、好適には、メチルより長いC〜C50の任意選択的に置換されるアルキル基のような脂肪族基から選択される。例としては、直鎖状、分枝鎖状及び異性体アルキル基を含む、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル及びヘキサデシルが挙げられる。
【0113】
別の好適な実施形態において、Hと異なるR、R、R及びRの基が、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル又はアルキルカルボニルオキシ基を表し、これらの全てが、直鎖状又は分枝鎖状であり、2〜20個のC原子、非常に好適には、2〜12個のC原子を有し、任意選択的にフッ素化される。
【0114】
別の好適な実施形態において、R、R、R、R、R、R、R及びRのうちの1つ又は複数が、1〜50個、好適には、2〜50個、より好適には、2〜25個、最適には、2〜12個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状又は環状アルキル基を表し、ここで、1つ又は複数のCH又はCH基が、カチオン基又はアニオン基で置換される。
【0115】
カチオン基は、好適には、ホスホニウム、スルホニウム、アンモニウム、ウロニウム、チオウロニウム、グアニジニウム又はイミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、トリアゾリウム、モルホリニウムもしくはピペリジニウムカチオンなどの複素環カチオンからなる群から選択される。
【0116】
好適なカチオン基は、テトラアルキルアンモニウム、テトラアルキルホスホニウム、N−アルキルピリジニウム、N,N−ジアルキルピロリジニウム、1,3−ジアルキルイミダゾリウムからなる群から選択され、ここで、「アルキル」が、好適には、1〜12個のC原子を有する直鎖状又は分枝鎖状アルキル基を表す。
【0117】
さらなる好適なカチオン基は、下式
【0118】
【化10】
【0119】
【0120】
(式中、R1’、R2’、R3’及びR4’が、互いに独立して、H、1〜12個のC原子を有する直鎖状又は分枝鎖状アルキル基又は非芳香族炭素環式又は複素環式基又はアリール又はヘテロアリール基を表し、上記の基のそれぞれが、3〜20個、好適には、5〜15個の環原子を有し、単環式又は多環式であり、上述される1つ又は複数の同一又は異なる置換基Rで任意選択的に置換され、又は基R、R、R、R、R、R、R又はRのそれぞれに対する結合を表す)からなる群から選択される。
【0121】
上記の式の上記のカチオン基において、基R1’、R2’、R3’及びR4’(それらがCH基を置換する場合)のいずれか1つが、それぞれの基R、R、R、R、R、R、R又はRに対する結合を表すことができ、又は2つの隣接する基R1’、R2’、R3’又はR4’(それらがCH基を置換する場合)が、それぞれの基R、R、R、R、R、R、R又はRに対する結合を表すことができる。
【0122】
アニオン基は、好適には、ボレート、イミド、ホスフェート、スルホネート、スルフェート、スクシネート、ナフテネート又はカルボキシレート、非常に好適には、ホスフェート、スルホネート又はカルボキシレートからなる群から選択される。
【0123】
式Iの好適な化合物は、部分式I1
【0124】
【化11】
【0125】
(式中、C、「付加物」、m、R及びRが、式Iの意味のうちの1つ又は上に示される好適な意味のうちの1つを有し、ここで、R及びRが、Hと異なる)から選択される。
【0126】
部分式I1の好適な化合物は、部分式I1a
【0127】
【化12】
【0128】
(式中、C、R及びRが、式Iの意味のうちの1つ又は上に示される好適な意味のうちの1つを有し、ここで、R及びRが、Hと異なる)から選択される。
本発明の別の好適な実施形態は、式I及びその部分式(式中、R及びRの対及び/又はR及びRの対、好適には、R及びRの対のみが、共有結合して、任意選択的に置換される、3〜20個の環原子を有する炭素環式基、複素環式基、芳香族基又は複素芳香族基を形成する)の化合物に関する。
【0129】
好適には、R及びRの対が、共有結合して、式
【0130】
【化13】
【0131】
(式中、ArS1が、上記の式S3に定義されるとおりである)の環式基を形成する。
非常に好適には、R及びRの対が、共有結合して、式
【0132】
【化14】
【0133】
(式中、R1〜4が、式Iの意味のうちの1つ又は上に示される好適な意味のうちの1つを有する)の環式基を形成する。これらの好適な化合物は、部分式I2
【0134】
【化15】
【0135】
(式中、C、「付加物」、m、R1〜4、R及びRが、式Iの意味のうちの1つ又は上に示される好適な意味のうちの1つを有し、好適には、R及びRが、Hと異なる)から選択される。
【0136】
部分式I2の好適な化合物は、部分式I2a
【0137】
【化16】
【0138】
(式中、C、「付加物」、m、R及びRが、式Iの意味のうちの1つ又は上に示される好適な意味のうちの1つを有し、好適には、R及びRが、Hと異なる)から選択される。
【0139】
さらなる好適な化合物は、以下に示される部分式の化合物である。
【0140】
【化17】
【0141】
式中、R及びRが、互いに独立して、1〜20個、好適には、2〜15個のC原子を有する直鎖状又は分枝鎖状アルキルを表し、好適には、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル又はドデシルを表す。
【0142】
式I及びその部分式の化合物の合成は、個別に、当業者に公知であり得、文献に記載される方法工程に基づいて行われ得るが、これ以降にさらに例示されるように、組み合わせても、新規かつ本発明に係るものと考えられる。
【0143】
式I及びその部分式の化合物の特に好適な合成方法が、これ以降に示される合成スキーム1〜3に例示される。
一実施形態は、例えば、式Iで表される化合物を作製する方法であって、
1つ又は複数の工程中で、P−1
【0144】
【化18】
【0145】
(式中、R〜Rが、上記及び以下に示される意味を有する)によって表される前駆体P−1を、少なくとも1つのハロゲン化試薬と反応させて、P−2
【0146】
【化19】
【0147】
(式中、Halが、ハロゲン原子を表し、R〜Rが、上記及び以下に示される意味を有する)によって表されるハロゲン化中間体を形成する工程と、
1つ又は複数の工程中で、中間体P−2を、F−1又はF−2:
【0148】
【化20】
【0149】
(すなわち、F−1中、mが0である)によって表されるフラーレン化合物、及び任意選択的に、第2の付加物化合物と反応させて、式Iの化合物を形成する工程と
を含む方法を提供する。
【0150】
これらの合成方法は、以下の合成スキーム1〜3にさらに例示され、以下及び上記に例示される作製方法では、R〜R及びR〜R、及びCを含むフラーレン化合物及び(付加物)が、本明細書の他の箇所に定義されるとおりである。実施例は、合成方法及び置換基の性質をさらに例示する。一実施形態において、本明細書の他の箇所に記載されるように、基R及びRが、互いに共有結合して、環式基、例えば、式I2及びI2a中に示されるようなフェニル環を形成し得る。
【0151】
前駆体化合物P−1は、購入されるか、又は当該技術分野において公知の方法によって作製され得る。以下の実施例1.1は、一例を提供する。
ハロゲン化試薬(又はハロゲン化剤)は、当該技術分野において公知であり、フッ素化試薬、塩素化試薬、臭素化試薬、及びヨード試薬を含み得る(例えば、マーチ有機化学(March’s Advanced Organic Chemistry)、第6版、2007年(p.954〜964を含む)を参照されたい)。一実施形態において、ハロゲン化試薬は、臭素化試薬であり得る。一例は、NBS(N−ブロモスクシンイミド)である。ハロゲン化試薬は、選択的にハロゲン化するその能力に基づいて選択され得る。本明細書において使用される際、「hal」が、「ハロゲン」を意味する。以下の実施例1.2を参照されたい。ハロゲン化反応では、溶媒、反応温度、及び精製方法などの適切な反応条件が、当業者によって使用され得る。中間化合物P−2は、当該技術分野において公知の方法によって特性評価され得る。
【0152】
好適な実施形態において、中間体P−2化合物は、精製せずに、フラーレン化合物と直接反応される。例えば、ある実施形態において、精製は、非処理シリカゲルなどのクロマトグラフィー媒体の使用によって試みられ得るが、非処理シリカゲルなどのクロマトグラフィー媒体は、P−2化合物の分解を誘発し得る。当業者は、クロマトグラフィー媒体が分解を誘発するかどうかを判断することができる。例えば、表面の性質、モルフォロジー、粒度、及び細孔径が、検討され得る。分解は、場合によっては、クロマトグラフィー媒体の表面処理に左右され得る。シリカゲル及び他のクロマトグラフィー媒体は、当該技術分野において公知であるように、例えば、疎水性部分により表面官能化され得る。例えば、シリカゲルは、ピリジンで処理され得る。逆相シリカゲルが公知である。非処理シリカゲルは、シリカゲル表面の疎水性を高めるように処理されたシリカと比較して、比較的極性の表面を有し得る。一実施形態において、非処理シリカの使用は、この化合物とフラーレン化合物との反応の前のP−2化合物の精製の際に回避される。特に、一実施形態において、中間体P−2化合物は、精製せずに、フラーレン化合物と直接反応される。この実施形態において、溶媒は、フラーレンとの反応の前に除去され得る。別の特定の実施形態において、中間体P−2化合物は、フラーレン化合物と反応される前に、非処理シリカゲルと接触されない。
【0153】
P−2とフラーレン化合物との反応では、溶媒、反応温度、クラウンエーテルなどの他の試薬、及び精製方法などの適切な反応条件が、当業者によって使用され得る。実施例1.3及び2.1は、好適な実施形態を提供する。フラーレン化合物は、式Iに示される付加物を有してもよく、又は式Iに示される付加物を含まなくてもよい(m=0)。後者の場合、必要に応じてさらなる反応が行われて、フラーレンにおける付加物置換基が形成され得る。これらの2つの反応経路は、スキーム1に例示される。スキーム2及び3は、好適な実施形態を表す。スキーム中、R〜Rが、上記及び以下に示される意味を有し、R、R10、R11、R12が、それぞれR、R、R、Rについて示される意
味を有する。
【0154】
【化21】
【0155】
上記及び以下に記載されるフラーレン誘導体、ならびにそれに使用される遊離体及び/又は中間体を調製する新規な方法が、本発明の別の態様である。
式I及びその部分式の化合物はまた、混合物として、例えば、半導体、電荷輸送、正孔輸送、電子輸送、正孔阻止、電子阻止、導電、光伝導及び発光特性のうちの1つ又は複数を有する、他のモノマー化合物、又はポリマーと一緒に使用され得る。
【0156】
したがって、本発明の別の態様は、式I及びその部分式から又は上記及び以下に記載される好適な実施形態から選択される1つ又は複数のフラーレン誘導体(以後、単に「本発明のフラーレン誘導体」と呼ばれる)と、好適には、半導体、電荷輸送、正孔輸送、電子輸送、正孔阻止、電子阻止、導電、光伝導及び発光特性のうちの1つ又は複数を有する1つ又は複数のさらなる化合物とを含む組成物(以後、「フラーレン組成物」と呼ばれる)
に関する。
【0157】
好適な実施形態において、組成物は、式I及びその部分式の化合物を含む1つ又は複数の構成要素から本質的になるか、又はそれらからなる。
フラーレン組成物中のさらなる化合物は、例えば、本発明のもの以外のフラーレン誘導体から、又は共役有機ポリマーから選択され得る。
【0158】
本発明の好適な実施形態は、1つ又は複数のフラーレン誘導体(そのうちの少なくとも1つが本発明のフラーレン誘導体である)を含み、好適には、電子供与体、又はp型、半導体ポリマーから選択される1つ又は複数の共役有機ポリマーをさらに含むフラーレン組成物に関する。
【0159】
このようなフラーレン組成物は、OPV又はOPDデバイスの光活性層に使用するのに特に好適である。好適には、フラーレン及びポリマーは、フラーレン組成物がバルクヘテロ接合(BHJ)を形成するようい選択される。
【0160】
本発明に係るフラーレン組成物に使用するのに好適な共役有機ポリマー(以後、単に「ポリマー」と呼ばれる)は、先行技術、例えば、国際公開第2010/008672号パンフレット、国際公開第2010/049323号パンフレット、国際公開第2011/131280号パンフレット、国際公開第2011/052709号パンフレット、国際公開第2011/052710号パンフレット、米国特許出願公開第2011/0017956号明細書、国際公開第2012/030942号パンフレット又は米国特許第8334456B2号明細書に記載されるポリマーから選択され得る。
【0161】
好適なポリマーは、ポリ(3−置換チオフェン)及びポリ(3−置換セレノフェン)、例えば、ポリ(3−アルキルチオフェン)又はポリ(3−アルキルセレノフェン)、好適には、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)又はポリ(3−ヘキシルセレノフェン)からなる群から選択される。
【0162】
さらなる好適なポリマーは、式PIIa及びPIIb:
−[(Ar−(D)−(Ar−(Ar]− PIIa
−[(Ar−(Ac)−(Ar−(Ar]− PIIb
(式中、
Acが、1つ又は複数の基Rで任意選択的に置換され、好適には、電子受容体特性を有する、5〜30個の環原子を有するアリーレン又はヘテロアリーレンであり、
Dが、Aと異なり、1つ又は複数の基Rで任意選択的に置換され、好適には、電子供与体特性を有する、5〜30個の環原子を有するアリーレン又はヘテロアリーレンであり、Ar、Ar、Arが、出現するごとに同一に又は異なって、互いに独立して、A及びDと異なり、好適には、5〜30個の環原子を有し、好適には、1つ又は複数の基Rで任意選択的に置換されるアリーレン又はヘテロアリーレンであり、
が、出現するごとに同一に又は異なって、F、Br、Cl、−CN、−NC、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(O)NR00、−C(O)X、−C(O)R、−C(O)OR、−NH、−NR00、−SH、−SR、−SOH、−SO、−OH、−NO、−CF、−SF、任意選択的に置換されるシリル、任意選択的に置換され、1つ又は複数のヘテロ原子を任意選択的に含む、1〜40個のC原子を有するカルビル又はヒドロカルビルであり、
及びR00が、互いに独立して、H又は任意選択的に置換されるC1〜40カルビル又はヒドロカルビルであり、好適には、H又は1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、
が、ハロゲン、好適には、F、Cl又はBrであり、
a、b、cが、出現するごとに同一に又は異なって、0、1又は2であり、
dが、出現するごとに同一に又は異なって、0又は1〜10の整数である)から選択される1つ又は複数の繰返し単位を含む。
【0163】
好適には、ポリマーは、式PIIa(式中、bが少なくとも1である)の少なくとも1つの繰返し単位を含む。さらに好適には、ポリマーは、式PIIa(式中、bが少なくとも1である)の少なくとも1つの繰返し単位、及び式PIIb(式中、bが少なくとも1である)の少なくとも1つの繰返し単位を含む。
【0164】
さらなる好適なポリマーは、式PIIa及び/又はPIIbの単位に加えて、任意選択的に置換される単環式又は多環式アリーレン又はヘテロアリーレン基から選択される1つ又は複数の繰返し単位を含む。
【0165】
これらのさらなる繰返し単位は、好適には、式PIII
−[(Ar−(Ar−(Ar]− PIII
(式中、Ar、Ar、Ar、a、c及びdが、式PIIaに定義されるとおりである)から選択される。
【0166】
が、好適には、出現するごとに同一に又は異なって、H、1〜30個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状又は環状アルキルを表し、ここで、O及び/又はS原子が互いに直接連結されないように、1つ又は複数のCH基が、−O−、−S−、−C(O)−、−C(S)−、−C(O)−O−、−O−C(O)−、−NR−、−SiR00−、−CF−、−CHR=CR00−、−CY=CY−又は−C≡C−で任意選択的に置換され、ここで、1つ又は複数のH原子が、F、Cl、Br、I又はCNで任意選択的に置換され、又は好適には、ハロゲンで、又は上記のアルキル又は環状アルキル基の1つ又は複数で任意選択的に置換される、4〜20個の環原子を有するアリール、ヘテロアリール、アリールオキシ又はヘテロアリールオキシを表し、ここで、R及びR00及びY及びYが、上記及び以下に示される意味のうちの1つを有し、R及びR00が、好適には、H又は1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、Y及びYが、好適には、F、Cl又はBrを表す。
【0167】
さらに好適には、ポリマーは、式PIV:
【0168】
【化22】
【0169】
(式中、
A、B、Cが、互いに独立して、式PIIa、PIIb又はPIIIの異なる単位を表し、
xが、0超かつ1以下であり、
yが、0以上1未満であり、
zが、0以上1未満であり、
x+y+zが1であり、
n1が、1を超える整数である)から選択される。
【0170】
好適には、B又はCの少なくとも一方が、式PIIaの単位を表す。非常に好適には、B及びCの一方が、式PIIaの単位を表し、B及びCの一方が、式PIIbの単位を表す。
【0171】
式PIVの好適なポリマーは、下式
−[(Ar−D−Ar−(Arn1 PIVa
−[(Ar−D−Ar−(Ar−Arn1 PIVb
−[(Ar−D−Ar−(Ar−Ar−Arn1 PIVc−[(Ar−(D)−(Ar−(Arn1 PIVd
−[(Ar−(D)−(Ar−(Ar−[(Ar−(Ac)−(Ar−(Arn1 PIVe
−[(D−Ar−D)−(Ar−Arn1 PIVf
−[(D−Ar−D)−(Ar−Ar−Arn1 PIVg
−([(D)−(Ar−(D)−(Arn1 PIVh
−([(D)−(Ar−(D)−(Ar−[(Ac)−(Ar−(Ac)−(Arn1 PIVi
−[(D−Ar−(D−Ar−(D−Arn1 PIVk
(式中、D、Ar、Ar、Ar、a、b、c及びdが、出現するごとに同一に又は異なって、式PIIaに示される意味のうちの1つを有し、Acが、出現するごとに同一に又は異なって、式PIIbに示される意味のうちの1つを有し、x、y、z及びn1が、式PIVに定義されるとおりであり、ここで、これらのポリマーが、交互又はランダムコポリマーであり得、式PIVd及びPIVe中、繰返し単位[(Ar−(D)−(Ar−(Ar]の少なくとも1つ及び繰返し単位[(Ar−(Ac)−(Ar−(Ar]の少なくとも1つの中で、bが少なくとも1であり、式PIVh及びPIVi中、繰返し単位[(D)−(Ar−(D)−(Ar]の少なくとも1つ及び繰返し単位[(D)−(Ar−(D)−(Ar]の少なくとも1つの中で、bが少なくとも1である)から選択される。
【0172】
ポリマーにおいて、繰返し単位の総数n1が、好適には、2〜10,000である。繰返し単位の総数n1が、好適には、5以上であり、非常に好適には、10以上であり、最も好適には、50以上であり、好適には、500以下であり、非常に好適には、1,000以下であり、最適には、2,000以下であり、n1の上記の下限及び上限の任意の組合せを含む。
【0173】
ポリマーは、ホモポリマー、又は統計もしくはランダムコポリマー、交互コポリマーもしくはブロックコポリマーのようなコポリマー、又は上記のものの組合せであり得る。
特に好適なのは、以下の基:
−単位D又は(Ar−D)又は(Ar−D−Ar)又は(Ar−D−Ar)又は(D−Ar−Ar)又は(Ar−D−Ar−Ar)又は(D−Ar−D)のホモポリマーからなる基A(すなわち、ここで、全ての繰返し単位が同一である)、
−同一の単位(Ar−D−Ar)又は(D−Ar−D)及び同一の単位(Ar)によって形成されるランダム又は交互コポリマーからなる基B、
−同一の単位(Ar−D−Ar)又は(D−Ar−D)及び同一の単位(A)によって形成されるランダム又は交互コポリマーからなる基C、
−同一の単位(Ar−D−Ar)又は(D−Ar−D)及び同一の単位(Ar−Ac−Ar)又は(Ac−Ar−Ac)によって形成されるランダム又は交互コポリマーからなる基D
から選択されるポリマーであり、
ここで、全てのこれらの基D中、Ac、Ar、Ar及びArが、上記及び以下に定義されるとおりであり、基A、B及びC中、Ar、Ar及びArが、単結合と異なり、基D中、Ar及びArの一方が、単結合も表し得る。
【0174】
式PIV及びPIVa〜PIVkの好適なポリマーは、式PV
21−鎖−R22 PV
(式中、「鎖」が、式PIV又はPIVa〜PIVkのポリマー鎖を表し、R21及びR22が、互いに独立して、上に定義されるRの意味のうちの1つを有し、又は互いに独立して、H、F、Br、Cl、I、−CHCl、−CHO、−CR’=CR’’、−SiR’R’’R’’’、−SiR’X’X’’、−SiR’R’’X’、−SnR’R’’R’’’、−BR’R’’、−B(OR’)(OR’’)、−B(OH)、−O−SO−R’、−C≡CH、−C≡C−SiR’、−ZnX’又はエンドキャップ基を表し、X’及びX’’が、ハロゲンを表し、R’、R’’及びR’’’が、互いに独立して、式Iに示されるRの意味のうちの1つを有し、R’、R’’及びR’’’のうちの2つがまた、それらが結合されるヘテロ原子と一緒に環を形成し得る)から選択される。
【0175】
好適なエンドキャップ基R21及びR22が、H、C1〜20アルキル、又は任意選択的に置換されるC6〜12アリールもしくはC2〜10ヘテロアリール、非常に好適には、H又はフェニルである。
【0176】
式PIV、PIVa〜PIVk又はPVによって表されるポリマーにおいて、x、y及びzが、それぞれ単位A、B及びCのモル分率を表し、nが、重合度又は単位A、B及びCの総数を表す。これらの式は、A、B及びCのブロックコポリマー、ランダムもしくは統計コポリマー及び交互コポリマー、ならびにx>0及びy=z=0である場合、Aのホモポリマーを含む。
【0177】
式PIIa、PIIb、PIII、PIV、PIVa〜PIVk及びPVの繰返し単位及びポリマーにおいて、好適には、D、Ar、Ar及びArが、下式
【0178】
【化23】
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
【0190】
【0191】
(式中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18が、互いに独立して、Hを表し、又は上記及び以下に定義されるRの意味のうちの1つを有する)からなる群から選択される。
【0192】
式PIIa、PIIb、PIII、PIV、PIVa〜PIVk及びPVの繰返し単位及びポリマーにおいて、好適には、Ac、Ar、Ar及びArが、下式
【0193】
【化24】
【0194】
【0195】
【0196】
【0197】
【0198】
【0199】
【0200】
(式中、R11、R12、R13、R14、R15及びR16が、互いに独立して、Hを表し、又は上記及び以下に定義されるRの意味のうちの1つを有する)からなる群から選択される。
【0201】
ポリマーは、例えば、下式
23−(Ar−D−(Ar−R24 PVIa
23−D−(Ar−D−R24 PVIb
23−(Ar−Ac−(Ar−R24 PVIc
23−Ac−(Ar−Ac−R24 PVId
23−(Ar−(Ar−R24 PVIe
(式中、Ac、D、Ar、Ar、a及びbが、式PIIa及びPIIbの意味、又は上記及び以下に記載される好適な意味のうちの1つを有し、R23及びR24が、好適には、互いに独立して、H、Cl、Br、I、O−トシレート、O−トリフレート、O−メシレート、O−ノナフレート、−SiMeF、−SiMeF、−O−SO、−B(OZ、−CZ=C(Z、−C≡CH、−C≡CSi(Z、−ZnX及び−Sn(Zからなる群から選択され、ここで、Xが、ハロゲン、好適には、Cl、Br又はIであり、Z1〜4が、それぞれが任意選択的に置換されるアルキル及びアリールからなる群から選択され、2つの基Zがまた、一緒に環式基を形成し得る)から選択されるモノマーから調製され得る。
【0202】
好適なモノマーは、例えば、以下の部分式
23−Ar−D−Ar−R24 PVIa1
23−D−R24 PVIa2
23−Ar−D−R24 PVIa3
23−D−Ar−R24 PVIa4
23−D−Ar−D−R24 PVIb1
23−Ar−Ac−Ar−R24 PVIc1
23−Ac−R24 PVIc2
23−Ar−Ac−R24 PVIc3
23−Ac−Ar−R24 PVIc4
23−Ac−Ar−Ac−R24 PVId1
23−Ar−R24 PVIe1
23−Ar−Ar−R24 PVIe2
(式中、Ac、D、Ar、Ar、a、c、R23及びR24が、式PVIa〜PVIdに定義されるとおりである)から選択される。
【0203】
ポリマーは、文献に記載される、当業者に公知の方法にしたがって、又はその類似の方法で合成され得る。他の調製方法が、実施例から理解され得る。例えば、ポリマーは、山本カップリング、鈴木カップリング、スティルカップリング、薗頭カップリング、C−H活性化カップリング、ヘックカップリング又はブッフバルトカップリングなどのアリール−アリールカップリング反応によって好適に調製され得る。鈴木カップリング、スティルカップリング及び山本カップリングが特に好適である。ポリマーの繰返し単位を形成するように重合されるモノマーは、当業者に公知の方法にしたがって調製され得る。
【0204】
例えば、ポリマーは、アリール−アリールカップリング反応において、式PVIa〜PVId及びそれらの部分式(式中、R23及びR24が、Cl、Br、I、−B(OZ及び−Sn(Zから選択される)から選択される1つ又は複数のモノマーをカップリングすることによって調製され得る。
【0205】
上記及び以下に記載される方法に使用される好適なアリール−アリールカップリング及び重合方法は、山本カップリング、熊田カップリング、根岸カップリング、鈴木カップリング、スティルカップリング、薗頭カップリング、ヘックカップリング、C−H活性化カップリング、ウルマンカップリング又はブッフバルトカップリングである。特に好適なのは、鈴木カップリング、根岸カップリング、スティルカップリング及び山本カップリングである。鈴木カップリングは、例えば、国際公開第00/53656A1号パンフレット
に記載されている。根岸カップリングは、例えば、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイエティ・ケミカル・コミュニケーションズ(J.Chem.Soc,Chem.Commun.)、1977年、683〜684に記載されている。山本カップリングは、例えば、T.山本ら著、プログレス・イン・ポリマー・サイエンス(Prog.Polym.Sci.)、1993年、17、1153〜1205、又は国際公開第2004/022626A1号パンフレットに記載されており、スティルカップリングは、例えば、Z.バオ(Z.Bao)ら著、米国化学会誌(J.Am.Chem.Soc)、1995年、117、12426〜12435に記載されている。例えば、山本カップリングを用いた場合、2つの反応性ハライド基を有するモノマーが、好適には使用される。鈴木カップリングを用いた場合、2つの反応性ボロン酸又はボロン酸エステル基又は2つの反応性ハライド基を有する式PVIa〜PVId及びそれらの部分式のモノマーが、好適には使用される。スティルカップリングを用いた場合、2つの反応性スタンナン基又は2つの反応性ハライド基を有するモノマーが、好適には使用される。根岸カップリングを用いた場合、2つの反応性有機亜鉛基又は2つの反応性ハライド基を有するモノマーが、好適には使用される。
【0206】
特に、鈴木、根岸又はスティルカップリングのための好適な触媒は、Pd(0)錯体又はPd(II)塩から選択される。好適なPd(0)錯体は、Pd(PhP)などの少なくとも1つのホスフィンリガンドを有するものである。別の好適なホスフィンリガンドは、トリス(オルト−トリル)ホスフィン、すなわち、Pd(o−TolP)である。好適なPd(II)塩としては、酢酸パラジウム、すなわち、Pd(OAc)が挙げられる。あるいは、Pd(0)錯体は、Pd(0)ジベンジリデンアセトン錯体、例えばトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、ビス(ジベンジリデンアセトン)−パラジウム(0)、又はPd(II)塩、例えば、酢酸パラジウムを、ホスフィンリガンド、例えば、トリフェニルホスフィン、トリス(オルト−トリル)ホスフィン又はトリ(tert−ブチル)ホスフィンと混合することによって調製され得る。鈴木重合は、塩基、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化リチウム、リン酸カリウム又は炭酸テトラエチルアンモニウムもしくは水酸化テトラエチルアンモニウムなどの有機塩基の存在下で行われる。山本重合は、Ni(0)錯体、例えばビス(1,5−シクロオクタジエニル)ニッケル(0)を用いる。
【0207】
鈴木及びスティル重合が、ホモポリマーならびに統計、交互及びブロックランダムコポリマーを調製するのに使用され得る。統計又はブロックコポリマーが、例えば、式PVI又はその部分式の上記のモノマーから調製され得、ここで、反応基のうちの1つがハロゲンであり、他の反応基が、ボロン酸、ボロン酸誘導体基又は及びアルキルスタンナンである。統計、交互及びブロックコポリマーの合成は、例えば、国際公開第03/048225A2号パンフレット又は国際公開第2005/014688A2号パンフレットに詳細に記載されている。
【0208】
溶媒を含む、本発明に係る配合物中の、本発明のフラーレン誘導体、又はフラーレン組成物の濃度は、好適には、0.1〜10重量%、より好適には、0.5〜5重量%である。本発明に係るフラーレン誘導体及びポリマーを含む組成物中の、本発明のフラーレン誘導体の濃度(すなわち、溶媒を除く)は、好適には、10〜90重量%、非常に好適には、33重量%〜80重量%である。
【0209】
本発明の別の態様は、上述される本発明の1つ又は複数のフラーレン誘導体又はフラーレン組成物を含み、好適には、有機溶媒から選択される1つ又は複数の溶媒をさらに含む配合物に関する。
【0210】
このような配合物は、好適には、OPV又はOPDデバイスのようなOEデバイスの半
導体層の作製のための担体として使用され、フラーレン誘導体又はフラーレン組成物は、例えば、光活性層に使用される。
【0211】
任意選択的に、配合物は、例えば、国際公開第2005/055248A1号パンフレットに記載されるように、レオロジー特性を調整するために1つ又は複数のバインダーをさらに含む。
【0212】
本発明に係る配合物は、好適には、溶液を形成する。
本発明に係るフラーレン化合物の溶解性は、標準として使用される、本発明に係らない標準的な化合物の溶解性と比較して著しく向上され得る(o−QDM−C60が、o−ジクロロベンゼン中で標準として使用された以下の実施例を参照されたい)。例えば、本発明に係る化合物の溶解性は、標準の溶解性の少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、又は25倍であり得る。例えば、o−ジクロロベンゼンなどの有機溶媒などの溶媒への溶解性は、例えば、少なくとも10mg/cm、又は少なくとも20mg/cm、又は少なくとも30mg/cm、又は少なくとも40mg/cm、又は少なくとも50mg/cm、又は少なくとも80mg/cm、又は少なくとも100mg/cm、又は少なくとも150mg/cmであり得る。溶解性に特に上限はないが、溶解性は、例えば、又は1,000mg/cm未満、又は500mg/cm未満、又は250mg/cm未満であり得る。溶解性を測定するための試験が、実施例において提供される。試験温度は、例えば、室温又は周囲温度(例えば、約22℃など)であり得る。他の溶媒及びフラーレン化合物が、例示される試験に使用され得る。
【0213】
本発明は、上記及び以下に記載される、本発明のフラーレン誘導体又はフラーレン組成物、又はそれを含む半導体層を含む電子デバイスをさらに提供する。
特に好適なデバイスは、OFET、TFT、IC、論理回路、コンデンサ、RFIDタグ、OLED、OLET、OPED、OPV、OPD、太陽電池、レーザーダイオード、光伝導体、光検出器、電子写真デバイス、電子写真記録デバイス、有機記憶デバイス、センサデバイス、電荷注入層、ショットキーダイオード、平坦化層、帯電防止フィルム、導電性基板及び導電性パターンである。
【0214】
特に好適な電子デバイスは、OFET、OLED、OPV及びOPDデバイス、特に、バルクヘテロ接合(BHJ)OPVデバイス及びOPDデバイスである。OFETにおいて、例えば、ドレインとソースとの間の能動半導体チャネルは、本発明の層を含み得る。別の例として、OLEDデバイスにおいて、電荷(正孔又は電子)注入又は輸送層は、本発明の層を含み得る。
【0215】
OPV又はOPDデバイスに使用するために、好適には、p型(電子供与体)半導体及びn型(電子受容体)半導体を含有するフラーレン組成物が使用される。p型半導体は、例えば、上に示されるように、式PIIa、PIIb又はPIIIの繰返し単位を有する共役ポリマー、又は式PIV、PV又はそれらの部分式のポリマーである。n型半導体は、本発明のフラーレン誘導体、又は2つ以上のフラーレン(そのうちの少なくとも1つが本発明のフラーレン誘導体である)の混合物である。
【0216】
さらに好適には、OPV又はOPDデバイスは、例えば、ZTO、MoO、NiOのような金属酸化物、例えば、PEDOT:PSSのような共役ポリマー電解質、例えばポリトリアリールアミン(PTAA:polytriarylamine)のような共役ポリマー、例えばN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)(1,1’−ビフェニル)−4,4’ジアミン(NPB:N,N’−diphenyl−N,N’−bis(1−naphthyl)(1,1’−biphenyl)−4,4’diamine)、N,N’−ジフェニル−N,N’−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニ
ル−4,4’−ジアミン(TPD:N,N’−diphenyl−N,N’−(3−methylphenyl)−1,1’−biphenyl−4,4’−diamine)のような有機化合物などの材料を含む、正孔輸送層及び/又は電子阻止層として、あるいはZnO、TiOのような金属酸化物、例えば、LiF、NaF、CsFのような塩、例えば、ポリ[3−(6−トリメチルアンモニウムヘキシル)チオフェン]、ポリ(9,9−ビス(2−エチルヘキシル)−フルオレン]−b−ポリ[3−(6−トリメチルアンモニウムヘキシル)チオフェン]、又はポリ[(9,9−ビス(3’−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル)−2,7−フルオレン)−alt−2,7−(9,9−ジオクチルフルオレン)]のような共役ポリマー電解質又は例えば、トリス(8−キノリノラト)−アルミニウム(III)(Alq)、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンのような有機化合物などの材料を含む、正孔阻止層及び/又は電子輸送層として働く1つ又は複数のさらなるバッファ層を、活性層と第1又は第2の電極との間に含む。
【0217】
本発明に係るフラーレン誘導体及びポリマーを含むフラーレン組成物において、ポリマー:フラーレン誘導体の比率は、好適には、重量基準で5:1〜1:5、より好適には、重量基準で1:1〜1:3、最適には、重量基準で1:1〜1:2である。5〜95重量%のポリマーバインダーも含まれてもよい。バインダーの例としては、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルメタクリレート(PMMA)が挙げられる。
【0218】
BHJ OPVデバイスのようなOEデバイスにおける薄層を生成するために、本発明に係るフラーレン誘導体、フラーレン組成物又は配合物は、任意の好適な方法によって堆積され得る。デバイスの液体コーティングが、真空蒸着技術より望ましい。溶液堆積方法が特に好適である。本発明の配合物は、いくつかの液体コーティング技術の使用を可能にする。好適な堆積技術としては、以下に限定はされないが、浸漬コーティング、スピンコーティング、インクジェット印刷、ノズル印刷、レタープレス印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、ドクターブレードコーティング、ローラ印刷、逆ローラ印刷、オフセットリソグラフィー印刷、ドライオフセットリソグラフィー印刷、フレキソ印刷、ウェブ印刷、スプレーコーティング、カーテンコーティング、はけ塗りコーティング、スロットダイコーティング又はパッド印刷が挙げられる。OPVデバイス及びモジュールの作製のために、可撓性基板に適合する領域印刷(area printing)方法、例えば、スロットダイコーティング、スプレーコーティングなどが好適である。
【0219】
本発明に係るフラーレン誘導体(n型構成要素として)及びポリマー(p型構成要素として)を含む組成物を含有する好適な溶液又は配合物を調製する際、好適な溶媒は、p型及びn型の両方の構成要素の十分な溶解を確保し、選択された印刷方法によって導入される境界条件(例えばレオロジー特性)を考慮に入れるように選択されるべきである。
【0220】
有機溶媒が、一般に、この目的のために使用される。典型的な溶媒は、芳香族溶媒、ハロゲン化溶媒又は塩素化芳香族溶媒を含む塩素化溶媒であり得る。好適な溶媒は、脂肪族炭化水素、塩素化炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン、エーテル及びそれらの混合物である。例としては、以下に限定はされないが、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,2,3,4−テトラ−メチルベンゼン、ペンチルベンゼン、メシチレン、クメン、シメン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリン、デカリン、2,6−ルチジン、2−フルオロ−m−キシレン、3−フルオロ−o−キシレン、2−クロロ−ベンゾトリフルオリド、Ν,Ν−ジメチルホルムアミド、2−クロロ−6−フルオロトルエン、2−フルオロアニソール、アニソール、2,3−ジメチルピラジン、4−フルオロアニソール、3−フルオロ−アニソール、3−トリフルオロ−メチルアニソール、2−メチルアニソール、フェネトール、4−メチル−アニソール、3−メチルアニソール、4−フルオロ−3−メチルアニソール、2−フルオロベンゾニトリル、4−フルオロベラトロール、2,6
−ジメチルアニソール、3−フルオロベンゾ−ニトリル、2,5−ジメチル−アニソール、2,4−ジメチルアニソール、ベンゾニトリル、3,5−ジメチル−アニソール、N,N−ジメチルアニリン、安息香酸エチル、1−フルオロ−3,5−ジメトキシ−ベンゼン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、N−メチルピロリジノン、3−フルオロベンゾ−トリフルオリド、ベンゾトリフルオリド、ジオキサン、トリフルオロメトキシ−ベンゼン、4−フルオロベンゾトリフルオリド、3−フルオロピリジン、トルエン、2−フルオロ−トルエン、2−フルオロベンゾトリフルオリド、3−フルオロトルエン、4−イソプロピルビフェニル、フェニルエーテル、ピリジン、4−フルオロトルエン、2,5−ジフルオロトルエン、1−クロロ−2,4−ジフルオロベンゼン、2−フルオロピリジン、3−クロロフルオロ−ベンゼン、l−クロロ−2,5−ジフルオロベンゼン、4−クロロフルオロベンゼン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,2,4−ジクロロベンゼン、2−クロロフルオロベンゼン、1,8−ジヨードオクタン、1,8−オクタンジチオール、ニトロベンゼン、1−クロロナフタレン、p−キシレン、m−キシレン、o−キシレン又はo−、m−、及びp−異性体の混合物が挙げられる。比較的低い極性を有する溶媒が、一般に好適である。特に好適な溶媒の例としては、以下に限定はされないが、ジクロロメタン、トリクロロメタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,2,4−ジクロロベンゼン、アニソール、2,5−ジ−メチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール、モルホリン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、1−メチルナフタレン、1,8−ジヨードオクタン、1,8−オクタンジチオール、ニトロベンゼン、テトラリン、デカリン、インダン、安息香酸メチル、安息香酸エチル、メシチレン及び/又はそれらの混合物が挙げられる。
【0221】
OPVデバイスは、文献から公知の任意のOPVデバイスタイプのものであり得る(例えば、ウォルドーフ(Waldauf)ら著、アプライド・フィジックス・レターズ(Appl.Phys.Lett.)、2006年、89、233517を参照されたい)。
【0222】
本発明に係る第1の好適なOPVデバイスは、(下から上の順序で)以下の層:
−任意選択的に、基板、
−好適には、例えば、陽極として働くITOのような金属酸化物又は導電性格子(conducting grid)を含む高仕事関数電極、
−例えば、PEDOT:PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレン−スルホネート)、又はTBD(N,N’−ジフェニル−N−N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’ビフェニル−4,4’−ジアミン)又はNBD(N,N’−ジフェニル−N−N’−ビス(1−ナフチル−フェニル)−1,1’ビフェニル−4,4’−ジアミン)の有機ポリマー又はポリマーブレンドを好適には含む、任意選択の導電性ポリマー層又は正孔輸送層、
−BHJを形成する、例えば、p型/n型二重層として、又は別個のp型及びn型層として、又はブレンドもしくはp型及びn型半導体として存在し得る、p型及びn型有機半導体を含む、「光活性層」とも呼ばれる層、
−任意選択的に、例えば、LiF又はPFNを含む、電子輸送特性及び/又は正孔阻止特性を有する層、
−好適には、例えば、陰極として働くアルミニウムのような金属を含む低仕事関数電極
を含み、
ここで、電極、好適には、陽極のうちの少なくとも1つが、可視光に対して少なくとも部分的に透過性であり、
n型半導体が本発明のフラーレン誘導体である。
【0223】
本発明に係る第2の好適なOPVデバイスは、逆型OPVデバイスであり、(下から上の順序で)以下の層:
−任意選択的に、基板、
−例えば、陰極として働くITO、又は導電性格子を含む、高仕事関数金属又は金属酸化物電極、
−好適には、TiO又はZnOのような金属酸化物、及び/又は有機層又はPEI:DEG又はPEIEのようなポリアミンを含む、正孔阻止特性及び/又は電子選択的な接触を有する層、
−BHJを形成する、例えば、p型/n型二重層として、又は別個のp型及びn型層として、又はブレンドもしくはp型及びn型半導体として存在し得る、電極間に位置する、p型及びn型有機半導体を含む光活性層、
−例えば、PEDOT:PSS又はTBD又はNBDの有機小分子及び/又はポリマー及び/又はポリマーブレンドを好適には含む、任意選択の導電性ポリマー層又は正孔輸送層、
−例えば、陽極として働く銀のような高仕事関数金属を含む電極
を含み、
ここで、電極、好適には陰極のうちの少なくとも1つが、可視光に対して少なくとも部分的に透過性であり、
n型半導体が本発明のフラーレン誘導体である。
【0224】
本発明のOPVデバイスにおいて、p型及びn型半導体材料は、好適には、上述されるように、ポリマー/フラーレン系のような材料から選択される。
光活性層が、基板に堆積される場合、それは、ナノスケールレベルで相分離するBHJを形成する。ナノスケール相分離の説明については、デンラー(Dennler)ら著、IEEE議事録(Proceedings of the IEEE)、2005年、93(8)、1429又はホップ(Hoppe)ら著、アドバンスド・ファンクショナル・マテリアルズ(Adv.Func.Mater)、2004年、14(10)、1005を参照されたい。その際、任意選択のアニール工程が、ブレンドのモルフォロジー、その結果としてOPVデバイス性能を最適化するために必要であり得る。
【0225】
デバイス性能を最適化するための別の方法は、相分離を適切な方法で促進するために可変の沸点を有する添加剤を含み得る、OPV(BHJ)デバイスの作製のための配合物を調製することである。1,8−オクタンジチオール、1,8−ジヨードオクタン、ニトロベンゼン、クロロナフタレン、及び他の添加剤が、高効率太陽電池を得るために使用されている。例が、J.ピート(J.Peet)ら著、ネイチャー・マテリアルズ(Nat.Mater.)、2007年、6、497又はフレチェット(Frechet)ら著、米国化学会誌(J.Am.Chem.Soc)、2010年、132、7595〜7597に開示されている。
【0226】
非限定的な実施例にさらに例示されるように、例えば、少なくとも2.5%、又は少なくとも3.0%、又は少なくとも4.0%、又は少なくとも5.0%の電力変換効率(PCE)を有する光起電デバイスが作製され得る。PCEに特に上限はないが、PCEは、例えば、20%未満、又は15%未満、又は10%未満であり得る。
【0227】
本発明のフラーレン誘導体、フラーレン組成物及び半導体層は、他のOEデバイスもしくはデバイス構成要素において、例えば、OFETデバイスの半導体チャネルにおいて、又はOLEDもしくはOPVデバイスのバッファ層、電子輸送層(ETL:electron transport layer)又は正孔阻止層(HBL:hole blocking layer)においてn型半導体として使用するのにも適している。
【0228】
したがって、本発明は、ゲート電極と、絶縁(又はゲート絶縁膜)層と、ソース電極と、ドレイン電極と、ソース及びドレイン電極を接続する有機半導体チャネルとを含むOFETも提供し、ここで、有機半導体チャネルは、n型半導体としての、本発明のフラーレ
ン誘導体、本発明に係るフラーレン組成物又は有機半導体層を含む。OFETの他の特徴は、当業者に周知である。
【0229】
OSC材料がゲート誘電体とドレイン及びソース電極との間に薄膜として配置されるOFETが、一般に公知であり、例えば、米国特許第5,892,244号明細書、米国特許第5,998,804号明細書、米国特許第6,723,394号明細書及び背景技術セクションに引用される参照文献に記載されている。本発明に係る化合物の溶解特性を用いた低コストの製造、ひいては大きな表面の加工性のような利点のため、これらのFETの好適な用途は、集積回路、TFTディスプレイ及びセキュリティ用途などである。
【0230】
OFETデバイス中のゲート、ソース及びドレイン電極ならびに絶縁層及び半導体層は、ソース及びドレイン電極が、絶縁層によってゲート電極から隔てられ、ゲート電極及び半導体層が両方とも絶縁層に接触し、ソース電極及びドレイン電極が両方とも半導体層に接触する限り、任意の順序で配置され得る。
【0231】
本発明に係るOFETデバイスは、好適には、
−ソース電極、
−ドレイン電極、
−ゲート電極、
−半導体層、
−1つ又は複数のゲート絶縁体層、
−任意選択的に、基板
を含み、
ここで、半導体層は、上記及び以下に記載される本発明のフラーレン誘導体又はフラーレン組成物を含む。
【0232】
OFETデバイスは、トップゲート型デバイス又はボトムゲート型デバイスであり得る。OFETデバイスの好適な構造及び製造方法が、当業者に公知であり、文献、例えば、米国特許出願公開第2007/0102696A1号明細書に記載されている。
【0233】
ゲート絶縁体層は、好適には、例えば、市販のサイトップ(Cytop)809M(登録商標)又はサイトップ(Cytop)107M(登録商標)(旭硝子(Asahi Glass)製)のようなフルオロポリマーを含む。好適には、ゲート絶縁体層は、絶縁体材料及び1つ又は複数のフルオロ原子を含む1つ又は複数の溶媒(フルオロ溶媒)、好適には、パーフルオロ溶媒を含む配合物から、例えば、スピンコーティング、ドクターブレーディング(doctor blading)、ワイヤバーコーティング、スプレーもしくは浸漬コーティング又は他の公知の方法によって堆積される。好適なパーフルオロ溶媒は、例えばFC75(登録商標)(アクロス(Acros)から入手可能、カタログ番号12380)である。例えば、パーフルオロポリマーテフロン(Teflon)AF(登録商標)1600もしくは2400(デュポン(DuPont)製)又はフルオロペル(Fluoropel)(登録商標)(サイトニックス(Cytonix)製)又はパーフルオロ溶媒FC 43(登録商標)(アクロス(Acros)、No.12377)のような他の好適なフルオロポリマー及びフルオロ溶媒が、先行技術において公知である。特に好適なのは、例えば、米国特許出願公開第2007/0102696A1号明細書又は米国特許第7,095,044号明細書に開示されるように、1.0〜5.0、非常に好適には、1.8〜4.0の低い絶対誘電率(又は誘電率)を有する有機誘電体材料(「低誘電率材料(low k material)」)である。
【0234】
セキュリティ用途において、トランジスタ又はダイオードのような、本発明に係る半導体材料を含むOFET及び他のデバイスが、紙幣、クレジットカード又はIDカード、国
の身分証明書、免許証又は切手、チケット、株券、小切手などのような金銭的価値を有する任意の製品のような有価証券を証明し、偽造を防止するためのRFIDタグ又はセキュリティマーキングに使用され得る。
【0235】
あるいは、本発明に係るフラーレン誘導体、フラーレン組成物、及び半導体層は、OLEDにおいて、例えば、OLEDのバッファ層、ETL又はHBLにおいて使用され得る。OLEDデバイスは、例えば、フラットパネルディスプレイデバイスにおけるアクティブディスプレイ層として、又は例えば、液晶ディスプレイのようなフラットパネルディスプレイのバックライトとして使用され得る。一般的なOLEDは、多層構造を用いて実現される。発光層は、一般に、1つ又は複数の電子輸送及び/又は正孔輸送層の間に挿入される。電圧を印加することによって、電荷担体としての電子及び正孔が、発光層に向かって移動し、ここで、それらの再結合が、励起、ひいては発光層に含まれるルモフォア(lumophor)単位のルミネセンスをもたらす。
【0236】
本発明に係るフラーレン誘導体、フラーレン組成物又は半導体層は、特に、それらの水溶性の誘導体(例えば、極性又はイオン性側基を有する)又はイオンドーピングされた形態で、ETL、HBL又はバッファ層のうちの1つ又は複数に用いられ得る。OLEDに使用するための、本発明の半導体材料を含むこのような層の処理は、一般に、当業者に公知であり、例えば、ミューラー(Mueller)ら著、シンセティック・メタルズ(Synth.Metals)、2000年、111〜112、31〜34、アルカラ(Alcala)著、応用物理学会誌(J.Appl.Phys.)、2000年、88、7124〜7128、オマリー(O’Malley)ら著、アドバンスト・エナジー・マテリアルズ(Adv.Energy Mater.)2012、2、82〜86及びその中に引用される文献を参照されたい。
【0237】
別の使用によれば、本発明に係るフラーレン誘導体、フラーレン組成物、及び材料、特に、光輝性特性を示す材料が、欧州特許出願公開第0889350A1号明細書又はC.ウェダー(C.Weder)ら著、サイエンス(Science)、1998年、279、835〜837に記載されるように、例えば、ディスプレイデバイスの光源の材料として用いられ得る。
【0238】
本発明のさらなる態様は、本発明に係るフラーレン誘導体の酸化型及び還元型の両方に関する。電子の損失又は獲得のいずれかにより、高い導電性を有する、高度に非局在化されたイオン性形態が形成される。これは、一般的なドーパントに曝露すると起こり得る。好適なドーパント及びドーピングの方法が、例えば、欧州特許第0528662号明細書、米国特許第5,198,153号明細書又は国際公開第96/21659号パンフレットから、当業者に公知である。
【0239】
ドーピング方法は、典型的に、酸化還元反応において半導体材料を酸化剤又は還元剤で処理して、適用されたドーパントに由来する対応する対イオンにより、材料中に非局在化されたイオン性中心部を形成することを意味する。好適なドーピング方法は、例えば、常圧又は減圧下におけるドーピング蒸気への曝露、ドーパントを含有する溶液中での電気化学的ドーピング、ドーパントを熱的に拡散されるべき半導体材料と接触させること、及びドーパントを半導体材料中にイオン注入することを含む。
【0240】
電子が担体として使用される場合、好適なドーパントは、例えばハロゲン(例えば、I、Cl、Br、ICl、ICl、IBr及びIF)、ルイス酸(例えば、PF、AsF、SbF、BF、BCl、SbCl、BBr及びSO)、プロトン酸、有機酸、又はアミノ酸(例えば、HF、HCl、HNO、HSO、HClO、FSOH及びClSOH)、遷移金属化合物(例えば、FeCl、FeOCl
、Fe(ClO、Fe(4−CHSO、TiCl、ZrCl、HfCl、NbF、NbCl、TaCl、MoF、MOCl、WF、WCl、UF及びLnCl(ここで、Lnが、ランタノイドである)、アニオン(例えば、Cl、Br、I、I、HSO、SO2−、NO、ClO、BF、PF、AsF、SbF、FeCl、Fe(CN)3−、及びアリール−SOなどの様々なスルホン酸のアニオン)である。正孔が担体として使用される場合、ドーパントの例は、カチオン(例えば、H、Li、Na、K、Rb及びCs)、アルカリ金属(例えば、Li、Na、K、Rb、及びCs)、アルカリ土類金属(例えば、Ca、Sr、及びBa)、O、XeOF、(NO)(SbF)、(NO)(SbCl)、(NO)(BF)、AgClO、HIrCl、La(NO・6HO、FSOOOSOF、Eu、アセチルコリン、R、(Rがアルキル基である)、R(Rがアルキル基である)、RAs(Rがアルキル基である)、及びR(Rがアルキル基である)である。
【0241】
本発明のフラーレン誘導体の導電性形態は、以下に限定はされないが、OLED用途における電荷注入層及びITO平坦化層、フラットパネルディスプレイ及びタッチスクリーン用のフィルム、帯電防止フィルム、印刷導電性基板、プリント回路板及びコンデンサなどの電子的用途におけるパターン又は区域(tract)を含む用途において、有機「金属」として使用され得る。
【0242】
別の使用によれば、本発明に係るフラーレン誘導体及びフラーレン組成物は、例えば、米国特許出願公開第2003/0021913号明細書に記載されるように、単独で又は他の材料とともに、LCD又はOLEDデバイスにおける配向層において又は配向層として使用され得る。本発明に係る電荷輸送化合物の使用により、配向層の導電性を増大させることができる。LCDにおいて使用される場合、この増大された導電性により、切り換え可能なLCDセルにおける不都合な残留dcの影響を減少させ、画像の固着を抑制し、又は、例えば強誘電性LCDにおいて、強誘電性LCの自発分極電荷の切り換えによって生じる残留電荷を減少させることができる。配向層上に設けられた発光材料を含むOLEDデバイスに使用される場合、この増大された導電性により、発光材料のエレクトロルミネセンスを促進することができる。本発明に係るフラーレン誘導体、フラーレン組成物、及び材料はまた、米国特許出願公開第2003/0021913A1号明細書に記載されるように、光配向層において又は光配向層として使用するための光異性化可能な化合物及び/又は発色団と組み合わされてもよい。
【0243】
別の使用によれば、本発明に係るフラーレン誘導体、フラーレン組成物、及び材料は、特に、それらの水溶性の誘導体(例えば、極性又はイオン性側基を有する)又はイオンドーピングされた形態が、化学センサ又はDNA配列を検出及び識別するための材料として用いられ得る。このような使用は、例えば、L.チェン(L.Chen)、D.W.マクブランチ(D.W.McBranch)、H.ワン(H.Wang)、R.ヘルゲソン(R.Helgeson)、F.ウドゥル(F.Wudl)及びD.G.ウィッテン(D.G.Whitten)著、米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.)、1999年、96、12287;D.ワン(D.Wang)、X.ゴン(X.Gong)、P.S.ヒーガー(P.S.Heeger)、F.リニンスランド(F.Rininsland)、G.C.バザン(G.C.Bazan)及びA.J.ヒーガー(A.J.Heeger)著、米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.)、2002年、99、49;N.ディチェザレ(N.DiCesare)、M.R.ピノット(M.R.Pinot)、K.S.シャンツェ(K.S.Schanze)及びJ.R.ラコウィッツ(J.R.Lakowicz)著、ラングミュア(Langmuir)、2002年、18、7785;D.T.マックエイド(D.T.McQuade)、A.E.プレン(A.E.Pullen)、T.M.
スワガー(T.M.Swager)著、ケミカル・レビューズ(Chem.Rev.)、2000年、100、2537に記載されている。
【0244】
文脈上明白に他の意味に解すべき場合を除き、本明細書において使用される際、本明細書の用語の複数形は、単数形を含むものと解釈されるべきであり、逆もまた同様である。
本明細書の説明及び特許請求の範囲の全体を通して、「〜を含む(comprise)」及び「〜を含有する(contain)」という用語及びこれらの用語の活用形、例えば、「〜を含む(comprising)」及び「〜を含む(comprises)」は、「以下に限定はされないが、〜を含む(including but not limited to)」を意味し、他の構成要素を除外することは意図されない(除外しない)。
【0245】
本発明の上記の実施形態に対する変形が、本発明の範囲内に含まれながら、行われ得ることが理解されるであろう。本明細書に開示される各特徴は、特に記載されない限り、同じ、同等又は同様の目的を果たす代替的な特徴で置き換えられ得る。したがって、特に記載されない限り、開示される各特徴は、一般的な一連の同等又は同様の特徴の一例に過ぎない。
【0246】
本明細書に開示される特徴の全ては、このような特徴及び/又は工程の少なくともいくつかが互いに排他的である組合せを除いて、任意の組合せで組み合わされ得る。特に、本発明の好適な特徴は、本発明の全ての態様に適用可能であり、任意の組合せで使用され得る。同様に、非本質的な組合せで記載される特徴は、別々に(組み合わされずに)使用され得る。
【0247】
上記及び以下において、特に記載されない限り、パーセンテージは、重量パーセントであり、温度は、℃で示される。誘電率ε(「絶対誘電率」)の値は、20℃及び1,000Hzで取られた値を示す。
【0248】
これより、本発明が、以下の実施例を参照してより詳細に説明され、これらの実施例は、あくまでも例示的なものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
(実施例)
A)化合物実施例
実施例1
実施例1.1−1,2−ジヘキシルベンゼン(1.2)
【0249】
【化25】
【0250】
油浴は、40℃に昇温した。撹拌子を備えた清浄な乾燥した250mLの3つ口丸底フラスコに、2.48g(102.0mmol、24.305g/mol、2.5当量)のマグネシウムを加えた。フラスコに凝縮器を取り付け、蓋をして、窒素及び真空で3回パ
ージした。シリンジによって無水エチルエーテル(100mL)を加え、混合物を撹拌し、還流させた。窒素過圧下で微量のヨウ素を加えた(反応物は着色され、その後、再度透明になった)。この混合物に、シリンジ及びシリンジポンプを用いて1時間にわたって、14.32mL(102.0mmol、165.07g/mol、2.5当量、1.176g/mL)の1−ブロモヘキサンを滴下して加えた。添加の間、還流は、より激しくなり、シリンジポンプ速度を調整することによって管理した。添加が完了した後、さらに30分間にわたって混合物を還流状態で撹拌し、次に、反応物を冷却させた。第2の清浄な乾燥した500mLの3つ口丸底フラスコに、撹拌子及び110.6mg(0.204mmol、0.005当量、542.04g/mol)の[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ジクロロ−ニッケル(II)触媒を加えた。この第2のフラスコにも凝縮器を取り付け、アルゴン及び真空で3回パージした。シリンジによって無水エチルエーテル(50mL)及び4.6mL(40.8mmol、147.01g/mol、1当量、1.306g/mL)の1,2−ジクロロ−ベンゼン(1.1)の両方を加え、この第2の混合物を撹拌し、還流させた。1時間にわたってシリンジ及びシリンジポンプを用いて、上記の調製されるグリニャール試薬を滴下して加えた。未ろ過のグリニャールの添加の間、沈殿が開始し、その後停止するのが観察された。添加の後、窒素過圧下でさらなる分量のニッケル触媒を加えて、反応を再開させ、完了させた。元の0.005当量を含め、総計で0.035当量のニッケル触媒を加えた。還流速度を制御するように注意した。反応物は、触媒添加の間に高温浴から除去した。反応がほぼ完了するまでに大量の塩が砕けたのが観察され、余分な粘度を考慮して、撹拌速度を調整した。次に、さらに二晩にわたって反応物を還流状態で撹拌させた。冷却した後、反応物は、氷浴に注ぎ、10%のHClを注意深く加えてクエンチした。混合物は、分液漏斗に移し、エーテル層が、水層から分離され、水層は、エーテルで2回洗浄し、エーテル部分を組み合わせた。次に、エーテル部分は、水、飽和炭酸水素ナトリウム(注意!ガス発生!)、及び塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、回転蒸発によって溶媒を除去した。ヘキサン中のシリカにおけるクロマトグラフィーにより、溶媒の厳密な除去の後、8g(79.5%の収率)の生成物(1.2)が透明の油として得られた。GC−MSによれば、最終生成物は、少量のヘキシルベンゼン及び1−クロロ−2−ヘキシルベンゼンを含有していた。H NMR(500MHz、CDCl(7.26ppmに設定された))δ 7.124(m,4H)、2.596(t,J=8.0Hz、4H)、1.571(m,4H)、1.385(m,4H)、1.323(m,8H)、0.897(t,6H)。
実施例1.2−1,2−ビス(1−ブロモヘキシル)ベンゼン(1.3)
【0251】
【化26】
【0252】
油浴は、80℃に昇温した。清浄な乾燥した250mLの丸底フラスコに、撹拌子、3.03g(17.04mmol、177.98g/mol、2.1当量)のN−ブロモスクシンイミド、スポイト(dropper)を用いて重量基準で2g(8.12mmol、246.43g/mol、1当量)の出発材料(1.2)、及び12.6mgの過酸化ベンゾイルを加えた。フラスコに凝縮器を取り付け、次に、蓋をして、窒素及び真空で3
回パージした。シリンジによって無水四塩化炭素(50mL)を加え、80℃の油浴中に反応物を滴下し、一晩、還流状態で撹拌させた。コハク酸アミドが浮遊するのが観察され、これは、反応が完了したことを示す。四塩化炭素を回転蒸発させ、ヘキサンを加え、混合物を超音波で分解し、ろ過によってコハク酸アミドを除去した。次に、回転蒸発によってヘキサンを除去したところ、2.9g(88%の収率)の所望の生成物(1.3)が油及び異性体の可能な混合物として得られた。この材料は、さらなる精製又は他の操作なしで、次の反応に直接使用した。この化学種がシリカゲル上で急速に分解することが観察されたことが重要である。
実施例1.3−フラーレン1
【0253】
【化27】
【0254】
油浴は、130℃にした。撹拌子を含む清浄な乾燥した500mLの3つ口丸底フラスコに、1.334g(1.85mmol、2当量、720.64g/mol)のC60フラーレン、0.6635g(3.997mmol、4.32当量、166.00g/mol)のヨウ化カリウム、及び3.977g(15.05mmol、16.26当量、264.32g/mol)の[18]クラウン[6]を加えた。丸底フラスコに凝縮器を取り付け、密閉し、窒素及び真空で3回パージした。カニューレによって無水トルエン(約330mL)を加え、混合物が還流に達するようにした。次に、無水トルエン中でシリンジによって、374mg(0.925mmol、1当量、404.22g/mol、1.312g/mL)の二臭化物(1.3)を加え、反応物を還流させ、暗所で一晩撹拌した。冷却した後、反応混合物は、5%の水酸化ナトリウム溶液及び水(350mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、回転蒸発によってトルエンを除去した。溶離剤としてデカリンを用いたシリカゲルクロマトグラフィー、続いて、固定相としてコスモシール・バッキープレップ(Cosmosil Buckyprep)材料(ナカライテスク(Nacalai Tesque)製;ピレニルプロピル基が結合したシリカ)及び移動相としてトルエンを用いたカラムを用いた分取中圧液体クロマトグラフィーを用いて、粗材料を精製した。純粋な生成物を含有する画分は、組み合わせて、回転蒸発を用いて溶媒を除去した。減圧下で、70℃で一晩、試料をオーブンに入れておき、残留溶媒を除去した。生成物(フラーレン1)が、褐色の結晶性固体として単離された(230mg、25.8%)。固定相としてコスモシール・バッキープレップ(Cosmosil Buckyprep)材料(ナカライテスク(Nacalai Tesque)製;ピレニルプロピル基が結合したシリカ)及び移動相としてトルエンを用いたカラムを用いた分析HPLCによって、99.59%の純度が確認された。H NMR(500MHz、トルエン−d(2.09ppmに設定されたメチル))δ 7.527(AA’BB’のAA’、2H)、7.41(AA’BB’のBB’、2H)、脂肪族信号が確実には割り当てられない。
実施例2
実施例2.1−フラーレン2
【0255】
【化28】
【0256】
油浴は、130℃にした。撹拌子を含む清浄な乾燥した500mLの3つ口丸底フラスコに、1g(1.19mmol、1.5当量、840.75g/mol)のC70フラーレン、0.5686g(3.43mmol、4.32当量、166.00g/mol)のヨウ化カリウム、及び3.41g(12.90mmol、16.26当量、264.32g/mol)の[18]クラウン[6]を加えた。丸底フラスコに凝縮器を取り付け、密閉し、窒素及び真空で3回パージした。カニューレによって無水トルエン(約285mL)を加え、混合物が還流に達するようにした。次に、無水トルエン中でシリンジによって、320.5mg(0.793mmol、1当量、404.22g/mol、1.312g/mL)の二臭化物(1.3)を加え、反応物を還流させ、暗所で一晩撹拌した。冷却した後、反応混合物は、5%の水酸化ナトリウム溶液及び水(350mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、回転蒸発によってトルエンを除去した。溶離剤としてデカリンを用いたシリカゲルクロマトグラフィー、続いて、固定相としてコスモシール・バッキープレップ(Cosmosil Buckyprep)材料(ナカライテスク(Nacalai Tesque)製;ピレニルプロピル基が結合したシリカ)及び移動相としてトルエンを用いたカラムを用いた分取中圧液体クロマトグラフィーを用いて、粗材料を精製した。純粋な生成物を含有する画分は、組み合わせて、回転蒸発を用いて溶媒を除去した。減圧下で、70℃で一晩、試料をオーブンに入れておき、残留溶媒を除去した。生成物(フラーレン2)が、暗褐色の結晶性固体として単離された(300.3mg、34.9%)。固定相としてコスモシール・バッキープレップ(Cosmosil Buckyprep)材料(ナカライテスク(Nacalai Tesque)製;ピレニルプロピル基が結合したシリカ)及び移動相としてトルエンを用いたカラムを用いた分析HPLCによって、異性体の混合物の99.61%の純度が確認された。
実施例3
実施例3.1−1,2−ジペンチルベンゼン(3.1)
【0257】
【化29】
【0258】
油浴は、40℃に昇温する。撹拌子を備えた清浄な乾燥した250cmの3つ口丸底フラスコに、1.24g(51.0mmol、2.50当量)のマグネシウムを加える。フラスコに凝縮器を取り付け、蓋をして、窒素及び真空で3回パージする。シリンジによって無水ジエチルエーテル(50cm)を加え、混合物を撹拌し、還流させる。窒素過圧下で微量のヨウ素を加える。この混合物に、シリンジ及びシリンジポンプを用いて1時間にわたって、6.33cm(51.0mmol、2.50当量)の1−ブロモペンタンを滴下して加える。添加の間、還流は、より激しくなり、シリンジポンプ速度を調整することによって管理する。添加が完了した後、さらに30分間にわたって混合物を還流状態で撹拌し、次に、反応物を冷却させる。第2の清浄な乾燥した250cmの3つ口丸底フラスコに、撹拌子及び443mg(0.816mmol、0.0400当量)の[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−プロパン]ジクロロニッケル(II)を加える。この第2のフラスコにも凝縮器を取り付け、窒素及び真空で3回パージする。シリンジによって無水ジエチルエーテル(25cm)及び2.3cm(20.4mmol)の1,2−ジクロロベンゼン(1.1)の両方を加え、この第2の混合物を撹拌し、還流させる。1時間にわたってシリンジ及びシリンジポンプを用いて、上記の調製されるグリニャール試薬を、ろ過せずに滴下して加える。グリニャール試薬を加えた後、窒素過圧下で、さらなる443mg(0.816mmol、0.0400当量)の[1,3−ビス(ジフェニル−ホスフィノ)プロパン]ジクロロ−ニッケル(II)を加える。次に、三晩にわたって反応物を還流状態で撹拌させる。冷却した後、反応物は、撹拌しながら氷浴に注ぎ、10%の塩酸を注意深く加えてクエンチする。混合物は、分液漏斗に移し、ジエチルエーテル層が、水層から分離され、水層は、エーテルで2回洗浄し、エーテル部分を組み合わせる。次に、エーテル部分は、水、飽和炭酸水素ナトリウム、及び塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、回転蒸発によって溶媒を除去する。ヘキサン中のシリカにおけるクロマトグラフィーにより、溶媒の厳密な除去の後、2.15g(48.2%の収率)の表題生成物が透明の油として得られた。H NMR(500MHz、CDCl(7.26ppmに設定された))δ 7.128(m,4H)、2.600(t,J=8.0Hz、4H)、1.582(m,4H)、1.4〜1.3(m,8H)、0.912(t,6H)。
実施例3.2−1,2−ビス(1−ブロモペンチル)ベンゼン(3.2)
【0259】
【化30】
【0260】
油浴は、80℃に昇温する。清浄な乾燥した100cmの丸底フラスコに、撹拌子、1.20g(6.73mmol、2.10当量)のN−ブロモスクシンイミド、スポイトを用いて重量基準で0.700g(3.21mmol、1.00当量)の出発材料(3.1)及び5mgの過酸化ベンゾイルを加える。フラスコに凝縮器を取り付け、次に、蓋をして、窒素及び真空で3回パージする。シリンジによって四塩化炭素(17.5cm)を加え、反応物は、80℃の油浴中に滴下し、一晩、還流状態で撹拌させる。減圧下で四塩化炭素を除去し、ヘキサンを加え、混合物を超音波で分解し、ろ過によってコハク酸アミドを除去する。次に、減圧下でヘキサンを除去したところ、1.21g(定量的)の所望の生成物(3.2)が油及び異性体の可能な混合物として得られる。この材料は、さらなる精製又は他の操作なしで、次の反応に直接使用した。
実施例3.3−フラーレン3
【0261】
【化31】
【0262】
油浴は、130℃にする。撹拌子を含む清浄な乾燥した2dmの丸底フラスコに、約1.3dmのトルエン、2.88g(4.00mmol、2.00当量)のC60フラーレン、1.43g(8.64mmol、4.32当量)のヨウ化カリウム、及び8.60g(32.5mmol、16.3当量)の[18]クラウン[6]を加える。丸底フラスコに凝縮器を取り付け、密閉し、窒素及び真空で3回パージする。混合物は、油浴に入れ、還流に達するようにする。次に、約137cmのトルエン中でシリンジによって、752.4mg(2.00mmol、1当量、376.18g/mol)の1,2−ビス(1−ブロモペンチル)ベンゼン(3.2)を加える。反応物を還流させ、暗所で一晩撹拌する。冷却した後、反応混合物は、250cmの10%の水酸化ナトリウム溶液で2回、及び250cmの水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、回転蒸発によってトルエンを除去する。C60を除去するために溶離剤としてデカリンを用いたシリカゲルクロマトグラフィー(同じカラム上で2回)、続いて、固定相としてコスモシ
ール・バッキープレップ(Cosmosil Buckyprep)材料(ナカライテスク(Nacalai Tesque)製;ピレニルプロピル基が結合したシリカ)及び移動相としてトルエンを用いたカラムを用いた分取中圧液体クロマトグラフィーを用いて、粗材料を精製する。純粋な生成物を含有する画分は、組み合わせて、回転蒸発を用いて溶媒を除去する。減圧下で、70℃で一晩、試料をオーブンに入れておき、残留溶媒を除去する。フラーレン3が、褐色の結晶性固体として単離される(376mg、20%)。
実施例4
実施例4.1−1,2−ジヘプチルベンゼン(4.1)
【0263】
【化32】
【0264】
油浴は、40℃に昇温する。撹拌子を備えた清浄な乾燥した250cmの3つ口丸底フラスコに、2.70g(111mmol、2.50当量)のマグネシウムを加える。フラスコに凝縮器を取り付け、蓋をして、窒素及び真空で3回パージする。シリンジによって無水ジエチルエーテル(125cm)を加え、混合物を撹拌し、還流させる。窒素過圧下で微量のヨウ素を加える。この混合物に、シリンジ及びシリンジポンプを用いて1時間にわたって、17.5cm(111mmol、2.50当量)の1−ブロモヘプタンを滴下して加える。添加が完了した後、さらに30分間にわたって混合物を還流状態で撹拌し、次に、反応物を冷却させる。第2の清浄な乾燥した500cmの3つ口丸底フラスコに、撹拌子及び1.20g(2.21mmol、0.0500当量)の[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ジクロロニッケル(II)を加える。この第2のフラスコにも凝縮器を取り付け、窒素及び真空で3回パージする。シリンジによって無水ジエチルエーテル(62.5cm)及び1,2−ジクロロベンゼン(1.1)(5.00cm、44.4mmol、1.00当量)の両方を加え、この第2の混合物を撹拌し、還流させる。広いPTFEフィルタに通して同時にろ過しながら、45分間にわたってシリンジ及びシリンジポンプを用いて、上記の調製されるグリニャール試薬を滴下して加える。グリニャールを加えた後、窒素過圧下で、さらなる600mg(1.11mmol、0.0250当量)の[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ジクロロニッケル(II)を加える。反応物は、一晩、還流状態で撹拌させる。冷却した後、反応物は、撹拌しながら氷浴に注ぎ、10%の塩酸(92cm、2.5当量)を注意深く加えてクエンチする。混合物は、分液漏斗に移し、ジエーテル層が、水層から分離され、水層は、ジエチルエーテルで2回洗浄し、有機画分を組み合わせる。次に、有機画分は、水、飽和炭酸水素ナトリウム、及び塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、減圧下で溶媒を除去する。ヘキサンが加えられ、沈殿が観察される。小さいシリカプラグに通して沈殿物をろ過し、次に、ガス状のヘキサンでそれをすすぐ。減圧下で溶媒ろ液を除去したところ、9.61gのほぼ無色の油が得られる。次に、150℃及び高真空下で、約30分間にわたってクーゲルロール(Kugelrohr)において、油を蒸留にかけたところ、4.8g(39.3%の収率)の生成物(4.1)が透明なほぼ無色の油として得られる。H NMR(500MHz、CDCl(7.26ppmに設定された))δ 7.147(m,4H)、2.620(t,J=8.0Hz、4H)、1.55〜
1.65(m,4H)、1.45〜1.25(m,16H)、0.915(t,6H)。実施例4.2−1,2−ビス(1−ブロモヘプチル)ベンゼン(4.2)
【0265】
【化33】
【0266】
油浴は、80℃に昇温する。清浄な乾燥した100cmの丸底フラスコに、撹拌子、4.28g(24.1mmol、2.20当量)のN−ブロモスクシンイミド、3.00g(10.9mmol、1.00当量)の1,2−ジヘプチルベンゼン(4.1)及び17.mgの過酸化ベンゾイルを加える。フラスコに凝縮器を取り付け、次に、蓋をして、窒素及び真空で3回パージする。シリンジによって四塩化炭素(60cm)を加え、反応物は、80℃の油浴中に滴下し、一晩、還流状態で撹拌させる。減圧下で四塩化炭素を除去し、ヘキサンを加え、混合物を超音波で分解し、ろ過によってスクシンイミドを除去する。次に、減圧下でヘキサンを除去したところ、4.75g(定量的)の表題生成物(4.2)が油及び異性体の可能な混合物として得られる。この材料は、さらなる精製又は他の操作なしで、次の反応に直接使用する。
実施例4.3−フラーレン4
【0267】
【化34】
【0268】
油浴は、130℃にする。撹拌子を含む清浄な乾燥した2dmの2つ口丸底フラスコに、11.8g(16.4mmol、1.50当量)のC60フラーレン、7.84g(47.2mmol、4.32当量)のヨウ化カリウム、47.0g(177.74mmol、16.3当量)の[18]クラウン[6]及び1.5dmのトルエンを加える。丸底フラスコに凝縮器を取り付け、密閉し、窒素及び真空で3回パージする。混合物は、油浴に入れ、還流に達するようにする。次に、3時間にわたって約40cmのトルエン中でシリンジ及びシリンジポンプを用いて、4.73g(10.9mmol、1.00当量)の二臭化物1,2−ビス(1−ブロモヘプチル)ベンゼン(4.2)を滴下して加える。油浴温度を125℃まで低下させた後、反応物を還流させ、暗所で一晩撹拌する。冷却した後、反応混合物は、840cmの5%の水酸化ナトリウム溶液で2回洗浄する。洗
浄の後、全溶液をろ過したところ、6.44gのほぼ純粋な乾燥C60が得られる。次に、ろ液は、840cmの水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、減圧下でトルエンを除去する。C60を除去するために、溶離剤としてデカリンを用いたシリカゲルクロマトグラフィー、続いて、固定相としてコスモシール・バッキープレップ(Cosmosil Buckyprep)材料(ナカライテスク(Nacalai Tesque)製;ピレニルプロピル基が結合したシリカ)及び移動相としてトルエンを用いたカラムを用いた分取中圧液体クロマトグラフィーを用いて、粗材料を精製する。高純度の生成物を含有する画分は、収集し、組み合わせる。減圧下でトルエンの大部分を除去する。フラーレン付加物の大部分が沈殿し、それをろ過して取り除いて、純度をさらに向上させる。減圧下で、70℃で一晩、試料をオーブンに入れておき、残留溶媒を除去する。フラーレン4が、2つの画分(968.6mg及び584.5mg、14.3%の全収率)中で褐色の結晶性固体として単離された。固定相としてコスモシール・バッキープレップ(Cosmosil Buckyprep)材料(ナカライテスク(Nacalai Tesque)製;ピレニルプロピル基が結合したシリカ)及び移動相としてトルエンを用いたカラムを用いた分析HPLCによって、それぞれ99.78%及び99.41%の純度が確認される。
実施例5
実施例5.1−1,2−ジオクチルベンゼン(5.1)
【0269】
【化35】
【0270】
油浴は、40℃に昇温する。撹拌子を備えた清浄な乾燥した250cmの3つ口丸底フラスコに、2.70g(111mmol、2.50当量)のマグネシウムを加える。フラスコに凝縮器を取り付け、蓋をして、窒素及び真空で3回パージする。シリンジによって無水ジエチルエーテル(40cm)を加え、混合物を撹拌し、還流させる。窒素過圧下で微量のヨウ素を加える。この混合物に、シリンジ及びシリンジポンプを用いて1時間にわたって、19.2cm(111mmol、2.50当量)の1−ブロモオクタンを滴下して加える。添加が完了した後、さらに30分間にわたって混合物を還流状態で撹拌し、次に、反応物を冷却させる。第2の清浄な乾燥した500cmの3つ口丸底フラスコに、撹拌子及び1.20g(2.21mmol、0.0500当量)の[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ジクロロニッケル(II)を加える。この第2のフラスコにも凝縮器を取り付け、窒素及び真空で3回パージする。シリンジによって無水ジエチルエーテル(148cm)及び1,2−ジクロロベンゼン(1.1)(5.00cm、44.4mmol)の両方を加え、この第2の混合物を撹拌し、還流させる。広いPTFEフィルタに通して同時にろ過しながら、45分間にわたってシリンジ及びシリンジポンプを用いて、上記の調製されるグリニャール試薬を滴下して加える。反応物は、4日間にわたって還流状態で撹拌させる。冷却した後、反応物は、撹拌しながら氷浴に注ぎ、10%の塩酸(92cm、2.5当量)を注意深く加えてクエンチする。混合物は、分液漏斗に移し、ジエチルエーテル層が、水層から分離され、水層は、ジエチルエーテル
で2回洗浄し、有機画分を組み合わせる。次に、有機画分は、水、飽和炭酸水素ナトリウム、及び塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、減圧下で溶媒を除去する。ヘキサン(250cm)が加えられ、沈殿が観察される。小さいシリカプラグに通して沈殿物をろ過し、次に、ガス状のヘキサンでそれをすすぐ。減圧下で溶媒ろ液を除去し、次に、150℃及び高真空下で、約30分間にわたってクーゲルロール(Kugelrohr)において得られた油を蒸留にかけたところ、5.53g(41.1%の収率)の表題生成物が透明なほぼ無色の油として得られる。
実施例5.2−1,2−ビス(1−ブロモオクチル)ベンゼン(5.2)
【0271】
【化36】
【0272】
油浴は、80℃に昇温する。清浄な乾燥した100cmの丸底フラスコに、撹拌子、1.37g(7.67mmol、2.30当量)のN−ブロモスクシンイミド、1.01g(3.34mmol、1.00当量)の1,2−ジオクチルベンゼン(5.1)及び5.7mgの過酸化ベンゾイルを加える。フラスコに凝縮器を取り付け、次に、蓋をして、窒素及び真空で3回パージする。シリンジによって四塩化炭素(20cm)を加え、反応物は、80℃の油浴中に滴下し、一晩、還流状態で撹拌させる。四塩化炭素を回転蒸発させ、ヘキサンを加え、混合物を超音波で分解し、ろ過によってスクシンイミドを除去する。次に、回転蒸発によってヘキサンを除去したところ、1.59g(定量的)の表題生成物が油及び異性体の可能な混合物として得られる。この材料は、さらなる精製又は他の操作なしで、次の反応に直接使用する。
実施例5.3−フラーレン5
【0273】
【化37】
【0274】
油浴は、130℃にする。撹拌子を含む清浄な乾燥した2dmの2つ口丸底フラスコに、3.49g(5.02mmol、1.45当量)のC60フラーレン、2.40g(14.45mmol、4.32当量、166.00g/mol)のヨウ化カリウム、14
.38g(54.40mmol、16.26当量)の[18]クラウン[6]及び1.5dmのトルエンを加える。丸底フラスコに凝縮器を取り付け、密閉し、窒素及び真空で3回パージする。混合物は、油浴に入れ、還流に達するようにする。次に、50cmの試薬グレードのトルエン中でシリンジによって一度に1,2−ビス(1−ブロモオクチル)ベンゼン(5.2)(1.54g、3.35mmol、1.00当量)の二臭化物を加える。油浴温度を125℃まで低下させた後、反応物を還流させ、暗所で一晩撹拌する。冷却した後、反応混合物は、250cmの5%の水酸化ナトリウム溶液で2回洗浄する。洗浄の後、全溶液をろ過したところ、454mgのほぼ純粋な乾燥C60が得られる。次に、ろ液は、250cmの水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、回転蒸発によってトルエンを除去する。固定相としてコスモシール・バッキープレップ(Cosmosil Buckyprep)材料(ナカライテスク(Nacalai Tesque)製;ピレニルプロピル基が結合したシリカ)及び移動相としてトルエンを用いたカラムを用いた分取中圧液体クロマトグラフィーによって、精製を完全に行う。高純度の生成物を含有する画分は、収集し、組み合わせて、回転蒸発を用いてトルエンを除去し、減圧下で、70℃で一晩、試料をオーブンに入れておき、残留溶媒を除去する。フラーレン5が、褐色の結晶性固体として単離される(580mg、17.0%)。固定相としてコスモシール・バッキープレップ(Cosmosil Buckyprep)材料(ナカライテスク(Nacalai Tesque)製;ピレニルプロピル基が結合したシリカ)及び移動相としてトルエンを用いたカラムを用いた分析HPLCによって、99.76%の純度が確認される。
B)実施例
実施例B1
フラーレン1及びフラーレン2からのバルクヘテロ接合有機光起電デバイス(OPV)
ルミテック・コーポレーション(LUMTEC Corporation)から購入される予めプレパターニングされたITO−ガラス基板(13Ω/スクエア)上で、有機光起電(OPV)デバイスを作製する。超音波浴中で一般的な溶媒(アセトン、イソ−プロパノール、脱イオン水)を用いて、基板を清浄化する。ポリ(スチレンスルホン酸)[クレビオス(Clevios)VPAI 4083(H.C.スタルク(H.C.Starck))]がドープされた導電性ポリマーポリ(エチレンジオキシチオフェン)は、1:1の比率で脱イオン水と混合する。スピンコーティングの前に、0.45μmのフィルタを用いてこの溶液をろ過したところ、20nmの厚さが得られる。スピンコーティングプロセスの前に、基板をオゾンに暴露して、良好な湿潤特性を確保する。次に、窒素雰囲気中で30分間にわたって140℃で膜をアニールし、プロセスの残りの間、それを保持する。溶質を十分に溶解させるように、活物質溶液(すなわち、ポリマー+フラーレン)を調製する。窒素雰囲気中で、薄膜をスピンコーティング又はブレードコーティングしたところ、プロフィルメータを用いて測定した際に50〜500nmの活性層厚さが得られる。残留溶媒の除去を確実にするために短い乾燥期間が後に続く。
【0275】
典型的に、ブレードコーティングされた膜は、熱板上で、70℃で2分間乾燥させる。デバイス作製の最後の工程では、シャドーマスクを介して、Ca(30nm)/Al(100nm)陰極を熱蒸着して、セルを画定する。ケースレー(Keithley)2400 SMUを用いて電流−電圧特性曲線を測定する一方、太陽電池に、100mW・cm−2の白色光をニューポート・ソーラー・シミュレータ(Newport Solar Simulator)によって照射する。ソーラー・シミュレータに、AM1.5Gフィルタを装着する。Siフォトダイオードを用いて照度を校正する。全てのデバイスの作製及び特性評価は、乾燥窒素雰囲気中で行う。
【0276】
電力変換効率は、以下の数式を用いて計算する。
【0277】
【数1】
【0278】
式中、FFが以下のように定義される。
【0279】
【数2】
【0280】
光活性層が、以下の構造を有するポリマー1と、oQDM−C60又はそれぞれ実施例1もしくは2のフラーレン1もしくはフラーレン2のいずれかとのブレンドを含有するOPVデバイスを作製し、以下の表1に示される全固体濃度でo−ジクロロベンゼン溶液からそれをコーティングする。OPVデバイスの特性が、表1に示される。
【0281】
【化38】
【0282】
oQDM−C60及びその調製が、例えば、アンゲバンテ・ヘミー(Angewandte Chemie)1993、105、95−7に開示されている。
【0283】
【化39】
【0284】
ポリマー1及びその調製が、国際公開第2011/131280号パンフレットに開示されている。
【0285】
【化40】
【0286】
ポリマー2及びその調製が、国際公開第2013/135339号パンフレットに開示されている。
【0287】
【化41】
【0288】
ポリマー3及びその調製が、米国特許第8455606B2号明細書に開示されている。
【0289】
【表1】
【0290】
大幅に良好な性能を示す本発明に係るC60フラーレンフラーレン1、フラーレン3、フラーレン4及びフラーレン5と比較して、一般的な有機溶媒へのより低い溶解性を有するoQDM−C60が、OPVデバイスの良好な性能を得るのに好適なモルフォロジーの形成を妨げることが分かる。
実施例3:溶解性実施例
n相材料として使用されるフラーレン誘導体の溶解性の制御及び向上が、本発明の多くの実施形態の重要な態様であるため、o−ジクロロベンゼンへのフラーレン1及びフラーレン2の溶解性を、oQDM−Cの溶解性と比較して、室温(約22℃)で測定した。溶媒o−ジクロロベンゼンは、本明細書の実施例にも使用される、OPVデバイスの活性層の堆積のための一般的な溶媒である。
【0291】
このために、溶解性の測定のための以下の手順を使用した。
濃度の測定が、360nmにおける吸光度に基づいているため、まず検量線を確立する。0.1mg/cmの濃度のo−ジクロロベンゼン中のフラーレン1、フラーレン2及びoQDM−C60の溶液を調製する。溶液の画分をさらに希釈すると、それぞれ0.02及び0.004mg/cmの濃度のさらなる溶液が得られる。300〜1100nmの紫外・可視(UV−vis)スペクトルが測定され、360nmにおける吸光度を記録した。吸光度対濃度が、それぞれフラーレン1及びフラーレン2に対してプロットされた。(0,0)を通る線形傾向線を加え、応答係数として使用される傾きを記録した。
【0292】
溶解性を評価するために、フラーレン1〜5及び、比較用のoQDM−C60の、飽和
状態を目標とした濃縮溶液を調製した。さらに詳細には:57mgのフラーレン1、85mgのフラーレン2、82.9mgのフラーレン3、78.3mgのフラーレン4、157mgのフラーレン5及び46mgのoQDM−C60は、1cmのo−ジクロロベンゼンに加え、磁気撹拌子を用いて一晩撹拌した。0.2μmのシリンジフィルタに通して溶液をろ過し、紫外・可視(UV−vis)分光計に好適な濃度に達するようにo−ジクロロベンゼンで希釈した。得られた溶液の紫外・可視(UV−vis)スペクトルを測定し、360nmにおける吸光度を記録した。
【0293】
上述される検量線を用いて、かつ希釈係数を考慮に入れて、室温でo−ジクロロベンゼンへの以下の溶解性が得られた。
oQDM−C60:5.8mg/cm
フラーレン1:23mg/cm
フラーレン2:>85mg/cm
フラーレン3:9.3mg/cm
フラーレン4:45mg/cm
フラーレン5:20mg/cm
最初に加えられる全ての材料が溶解され、溶液が飽和されていない可能性があるため、フラーレン2についての値が最小値である。最後に、本明細書に記載される官能化スキームが、OPVデバイス及び他の溶媒及びデバイスの作製に適した溶媒への溶解性の予想外に著しい増加を可能にすることが結論付けられ得る。