(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0009】
本発明に係る態様は、ユーザにフィードバックするための車両分散ネットワークサブシステム、車両ドライバ情報システム、車両浸水走行検知システム、車両エコドライブシステム、車線逸脱警告システム、車両分散ネットワーク、車両、方法、および分散コンピュータプログラム製品に関する。
【0010】
本発明に係る1つの態様によれば、ユーザにフィードバックするための車両分散ネットワークサブシステムが提供され、車両分散ネットワークサブシステムは、
複数の電子制御ユニット(ECU)と、
少なくとも1つのデータソースからデータを受信するように構成されたデータ通信手段であって、これを介して複数の電子制御ユニットが互いに通信できるデータ通信手段とを備え、
データ通信手段から受信したデータから処理済データを生成するための指定電子制御ユニットを定義するように構成され、
ユーザにフィードバックするために、2つ以上の端末に出力するために、処理済データを配信するように構成される。
【0011】
処理済データは、同一または異なるデータ通信手段を介して配信することができる。
【0012】
サブシステムは、2以上の端末を備えることができる。2つ以上の端末は、データ通信手段を介して電子制御ユニット(ECU)と通信するように構成することができる。
【0013】
各電子制御ユニット(ECU)は、少なくとも1つの関連プロセッサまたは他の信号/データ調整装置(たとえばフィルタまたはゲート)を有してもよい。いくつかの電子制御ユニット(ECU)は、プロセッサに加え、信号/データ調整装置を有してもよい。
【0014】
理解されるように、信号およびデータという用語は、本明細書では置換可能に用いられている。また信号またはデータの代わりに、メッセージという用語が使用される。
【0015】
本発明に係る1つの態様のサブシステムのアーキテクチャを用いると、異なる端末を使用してユーザに直接または間接的に通信された同じパラメータの値が異なるという可能性が低減され、最小限に抑えられ、または排除される。
【0016】
1つまたはそれ以上の端末は、所定の数的フォーマットに従って、ユーザに直接的に値を提示または通信するように構成することができる。適当な端末の具体例は、表示部またはラウドスピーカである。1つまたはそれ以上の端末は、その値を直接的に伝達するか、たとえばその値を視覚的な警報(たとえば、点滅赤色光)、聴覚的な警報(たとえば、ブーンという音)、または触覚的なフィードバック(たとえば、ハンドルの振動)のような警告事象に変換することにより間接的にその値を伝達するように構成してもよい。
【0017】
さらに、本発明に係るサブシステムのアーキテクチャによれば、特定の計算が、システム内で重複して行われるのが防止される、すなわち、異なるECUに属する異なるプロセッサによって複数回行われるのが防止される。計算は、単一の指定ECUのみによって行われる。複数回計算を行う必要性が回避されることから、演算リソースが他のアプリケーションに解放される、または演算エネルギー消費が低減されるので、サブシステムのアーキテクチャの演算効率は良い。さらに、計算アルゴリズムを変更する必要がある場合、新しいソフトウェアを用いて、ただ1つのECUを再プログラムするか、または更新する必要がある。さらに、異なる車両に提供する異なる車両分散ネットワーク間の較正ファイル差分は、単一のECU内にあれば足りる。
【0018】
データ通信手段は、1つまたはそれ以上のデータ通信バスを有してもよい。たとえば、データ通信手段は、コントローラエリアネットワーク(CAN)バスを有してもよい。しかし、ローカル相互接続ネットワーク(LIN)バス、メディア・オリエンテッド・システム・トランスポート(MOST)バス、イーサネットバス、ブロードリーチバス、またはフレックスレイバスのような他のタイプのバスも可能である。データ通信手段は、Wi−Fiデータ通信ネットワーク(WLAN)、またはブルートゥースデータ通信ネットワークを有してもよい。データ通信手段は、SAE J1939バスを有してもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、サブシステムは、同時または少なくともほぼ同時にユーザに出力するために、複数の端末それぞれに処理済データを送信するように構成してよい。ユーザは、システムによって提示された値がほぼ同じまたは等しい、または対応する警告イベントが同時に引き起こされることをさらに期待することができる。いくつかの実施形態では、異なる端末および/またはECUは、異なるデータ遅延時間を処理済データに関連付けるようにプログラムしてよい。各データ遅延時間は、所定値未満とすることができる。所定値は、たとえば200ミリ秒または100ミリ秒とすることができる。2つ以上のデータ遅延時間は、同等とすることができる、または言い換えれば、整合性を与えることができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、端末は、ドライバまたは乗客等の車両乗員にフィードバックするように構成してもよい。いくつかの実施形態では、端末は、車両のドライバにフィードバックするように構成してもよい。他の実施形態では、端末は、スマートフォンまたはスマートフォンディスプレイ等の1つまたはそれ以上の遠隔端末であってもよい。いくつかの実施形態では、遠隔端末は、遠隔ユーザにフィードバックするように構成し、および/または車両に搭載された1つまたはそれ以上のテレメトリユニットと通信するように構成してもよい。理解されるように、「遠隔ユーザ」とは、車両から遠く離れた場所にいるユーザを意味する。
【0021】
いくつかの実施形態では、データ通信手段は、車両速度等の車両の動作パラメータに関するデータを受信するように構成してもよい。他の実施形態では、データ通信手段は、外部温度等の車両の外部状況に関するデータを受信するように構成してもよい。これらのデータのいくつかは、車両内にある別の異なる車両分散ネットワークサブシステムを介して、データ通信手段に供給されるか、または車両に搭載された1つまたはそれ以上のセンサによって直接的にデータ通信手段に供給されてもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、各端末は、それぞれのユーザインターフェースのECUの一部とすることができ、この場合、ユーザインターフェースECUという表現は、ヒューマンマシンインターフェースのための少なくとも1つの端末を備えるECUを表すのに使用されている。これらECUのうちの第1のECUは、これらECUのうちの第2のECUにアクセスすることができる。このアクセスは、ECU間で交換されるメッセージが最小限度の遅延時間、すなわち高い優先度を有するように構成することができる。それ以外の場合では、これらECUのうちの第1および第2のECUはそれぞれ、第3のECUにアクセスすることができる。第3のECUは、指定ECUとすることができる。並行してデータを処理するように構成された複数のプロセッサが指定ECU内に設置されるか、または単一のプロセッサ、またはフィルタもしくはゲート等の他のデータ調整装置が指定ECU内に設置されてもよい。理解されるように、「処理済データ」という表現は、本明細書で使用される場合、フィルタ済みデータおよび/または規制されたデータを含んでもよい。
【0023】
本発明に係る別の態様によれば、本明細書に示す車両分散ネットワークサブシステムを備える車両ドライバ情報システムが提供され、
データ通信手段は、
パワートレイン制御モジュール(PCM)、
クルーズ制御モジュール(CCM)、
トランスミッション制御モジュール(TCM)、
トランスファーケース制御モジュール(TCCM)、
アンチロックブレーキシステムモジュール(ABS)、または
駐車支援モジュール(PAM)のうちの少なくとも1つからデータを受信するように構成され、
計器パネルクラスタ(IPC)の電子制御ユニットは、指定電子制御ユニットとしての機能を果たすように構成され、
各端末は表示部である。
車両ドライバ情報システムは、車両速度またはエンジン速度、瞬間的な燃料消費量等に関するデータを提供するように構成してよい。
【0024】
表示部の1つは、IPC−ECU(IPC−ECUは、車両主計器ボード上に配置された画面上でドライバに情報を提供する機能を有するものである。)の表示部とすることができる。表示部の1つは、ヘッドアップディスプレイ(HUD)−ECU(HUD−ECUは、ドライバが道路を見る時にドライバが視認できる位置に配置された画面上でドライバに情報を提供する機能を有するものである。)の一部とすることができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、データ通信手段は、車両またはエンジン速度に関するデータを受信するように構成され、指定電子制御ユニットは、車両またはエンジン速度に関する処理済データを生成するように構成され、各表示部は、処理済データを可視化するように構成される。
【0026】
本発明に係る別の態様によれば、上記説明した車両分散ネットワークサブシステムを備えた車両浸水走行検知システムであって、
複数のデータ通信手段、およびデータ通信手段間でデータを配信するためのゲートウェイ電子制御ユニットを備え、
データ通信手段の少なくとも1つは、
アンチロックブレーキシステム(ABS)の電子制御ユニット、
駐車支援モジュール(PAMB)、
前方または後方駐車支援センサ、
水存在センサ、
水深センサ、または
シャーシ制御モジュール(CHCM)のうちの少なくとも1つからデータを受信するように構成され、
駐車支援モジュール(PAMB)は、指定電子制御ユニットとしての機能を果たすように構成され、
各端末は表示部である。
【0027】
駐車支援モジュールは、水の存在および/または水位を検知するための下向きのセンサを有してもよい。
【0028】
複数の表示部のうちの1つの表示部は、計器パネルクラスタの電子制御ユニット(IPC−ECU)の一部であってもよい。
複数の表示部の別の表示部は、前方制御表示インターフェースモジュールの電子制御ユニット(FCDIM−ECU)の一部とすることができる(FCDIM−ECUは、車両のダッシュボード上に配置されたタッチスクリーン上に情報を表示する機能を有するものである。)。
【0029】
いくつかの実施形態では、データ通信手段のうちの少なくとも1つは、車両の周囲の水位に関するデータを受信するように構成され、指定電子制御ユニットは、水位に関する処理済データを生成するように構成され、各表示部は、処理済データを可視化するように構成される。
【0030】
別の態様によれば、本発明は上記説明した車両分散ネットワークサブシステムを備え、
複数のデータ通信手段と、データ通信手段間でデータを配信させるためのゲートウェイモジュール(GWM)の電子制御ユニットとをさらに備え、
データ通信手段のうちの少なくとも1つは、燃料消費量に関するデータを受信するように構成され、
計器パネルクラスタ(IPC)の電子制御ユニットは、指定電子制御ユニットとしての機能を果たすように構成され、
端末それぞれは表示部である。
【0031】
複数の表示部のうちの1つは、IPC−ECUの一部とすることができる。別の表示部は、前方制御表示インターフェースモジュールの電子制御ユニット(FCDIM−ECU)の一部とすることができる。別の表示部は、スマートフォンまたはリモートコンピュータの一部とすることができる。他のヒューマンマシンインターフェースを、触覚的なフィードバック手段として搭載装置または遠隔装置上で用いてもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、指定電子制御ユニットは、燃料消費量に関する処理済データを生成するように構成され、各表示部は、処理済データに基づいて、エコドライブを促すための信号を可視化するように構成される。
【0033】
本発明に係るさらに別の態様によれば、上記説明した車両分散ネットワークサブシステムを備えた車線逸脱警告システムであって、複数のデータ通信手段と、データ通信手段間でデータを配信するためのゲートウェイモジュール(GWM)の電子制御ユニットとを備え、データ通信手段のうちの少なくとも1つは、車線内の車両の相対位置に関するデータを受信するように構成され、ゲートウェイモジュール(GWM)の電子制御ユニットは、指定電子制御ユニットとしての機能を果たすように構成され、少なくとも1つの端末は表示部である。
【0034】
表示部は、計器パネルクラスタ(IPC)の電子制御ユニットの一部とすることができる。端末のうちの少なくとも1つは、車両ドライバに触覚的にフィードバックするための触覚フィードバック端末とすることができる。いくつかの実施形態では、触覚フィードバック端末は、パワーステアリング制御モジュール(PSCM)の電子制御ユニットの一部である。
【0035】
いくつかの実施形態では、データ通信手段のうちの少なくとも1つは、車両カメラからデータを受信するように構成される。
【0036】
本発明に係るさらに別の態様によれば、上記説明した車両分散ネットワークサブシステム、および/または上記説明した車両ドライバ情報システム、および/または上記説明した車両浸水走行検知システム、および/または上記説明した車両エコドライブシステム、および/または上記説明した車線逸脱警告システムを備えた車両分散ネットワークが提供される。
【0037】
本発明のさらに別の態様によれば、上記説明した車両分散ネットワークを備える車両が提供される。
【0038】
本発明に係るさらに別の態様によれば、車両分散ネットワークに接続された複数の端末を介して車両のユーザにフィードバックする方法が提供され、この方法は、
複数の電子制御ユニット(ECU)に接続されたデータ通信手段にデータを提供するステップと、
一連の処理済データを生成するために、指定電子制御ユニットを使用してデータを処理するステップと、
ユーザに出力するための端末に送信するために、処理済データを配信するステップとを有する。
【0039】
いくつかの実施形態では、この方法はさらに、ユーザに出力するための2つ以上の端末に処理済データを送信するステップを含んでもよい。
【0040】
本発明に係るさらに別の態様によれば、車両分散ネットワークを構成するための分散コンピュータプログラム製品が提供され、この分散コンピュータプログラム製品は、コンピュータ可読プログラムコードを含むコンピュータ可読媒体を備え、コンピュータ可読プログラムコードは、ヒューマンマシンインターフェースのための複数の端末を有する車両分散ネットワークを備える車両システム上で実行されるときに、上記説明した車両分散ネットワークサブシステム、および/または車両ドライバ情報システム、および/または車両浸水走行検知システム、および/または車両エコドライブシステム、および/または車線逸脱警告システムのうちのいずれか1つまたはそれ以上を特定することができるように車両分散ネットワークを構成する。
【0041】
本発明に係るさらに別の態様によれば、コンピュータ可読プログラムコードを含むコンピュータ可読媒体を備える分散コンピュータプログラム製品が提供され、このコンピュータ可読プログラムコードは、ヒューマンマシンインターフェースのための複数の端末を有する車両分散ネットワークを備える車両システム上で実行されるときに、上記説明した方法を実行するように車両分散ネットワークを構成する。
【0042】
指定電子制御ユニット(ECU)は、1つまたはそれ以上の基準に基づいて選択してもよい。いくつかの実施形態では、指定ECUは、最大および/または最速の処理能力を有する電子制御ユニット(ECU)である。いくつかの実施形態では、指定ECUは、予備処理能力を有する電子制御ユニット(ECU)である。いくつかの実施形態では、指定ECUは、共通のデータ通信手段経由で端末から直接的なアクセス可能性に基づいて指定される。または指定ECUは、端末から間接的にアクセスされてもよい。すなわち指定ECUは、複数の端末の1つとそれぞれ直接通信している異なるデータ通信手段および/または別個のデータ通信手段からアクセスされてよい。
【0043】
本出願の範囲内において、前の段落、請求項、および/または以下の説明かつ図面で示されている種々の態様、実施形態、実施例、および代替形態は、特に、これらの個々の特徴は、別個にまたは任意の組み合わせで使用してよいことは明らかである。一実施形態に関連して説明されている特徴は、適合しない場合を除いて、全ての実施形態に適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、
図2、
図3、および
図4を説明するための注釈であり、丸い角を有する水平方向のボックスはソフトウェアモジュールを示し、直角の角を有する水平方向のボックスはセンサまたはアクチュエータを示し、矢印は、さまざまな電子制御ユニット(ECU)がネットワークに出力した、すなわちネットワークがさまざまなECUから供給した信号/データを示し、小さい垂直方向のボックスはECUのネットワークインターフェースによる信号遅延時間(レイテンシ)に関する値を示し、直角の角を有する大きいボックスは電子制御ユニット(ECU)を示し、細長の陰影付きの垂直方向のボックスはデータ通信ネットワークバスを示す。
【0046】
図2は、選択された車両運転パラメータを2つの表示部でドライバに同時に表示することができるネットワークアーキテクチャのドライバ情報サブシステム1の概略図である。このネットワークアーキテクチャは、本発明に係る実施形態ではなく、本明細書では、当業者が以下に説明する本発明の特徴を理解するのを助けるためにのみ示されている。
【0047】
サブシステム1は、パワートレイン制御モジュール(PCM)2、クルーズ制御モジュール(CCM)3、トランスミッション制御モジュール(TCM)4、およびアンチロックブレーキシステム(ABS)5を備える。パワートレイン制御モジュール(PCM)2、クルーズ制御モジュール(CCM)3、トランスミッション制御モジュール(TCM)4、およびアンチロックブレーキシステム(ABS)5は、パワートレイン高速コントローラエリアネットワーク(PT−CAN)バス6に接続される。パワートレイン制御モジュール(PCM)2は、エンジン速度信号7をPT−CAN6に出力するように構成される。クルーズ制御モジュール(CCM)3は、適応クルーズ制御ソフトウェアパッケージ3’を搭載するものであるが、固定速度信号8をPT−CAN6に出力するように構成される。アンチロックブレーキシステム(ABS)5は、車両速度信号9をPT−CANバス6上に出力するように構成される。
【0048】
計器パネルクラスタ(IPC)の電子制御ユニット(IPC−ECU)10およびヘッドアップディスプレイ(HUD)の電子制御ユニット(HUD−ECU)11が、PT−CANバス6に接続され、エンジン速度信号7、固定速度信号8、および車両速度信号9はIPC−ECU10およびHUD−ECU11それぞれに出力される。IPC−ECU10およびHUD−ECU11はそれぞれ、プロセッサおよびネットワークインターフェース(ともに図示せず)を備える。IPC−ECU10およびHUD−ECU11のネットワークインターフェースは、エンジン速度信号7、固定速度信号8、および車両速度信号9に異なる優先度(または「遅延時間(レイテンシ)」)を割り当てるように構成される。また信号遅延時間は、PT−CANバス6の使用レベルに依存するため、確実に予測できない。最悪の状況の遅延時間を信頼性よく推定できるだけである。
【0049】
IPC−ECU10およびHUD−ECU11は、別個のプロセッサを有する。第1の表示部は、車両の主計器パネル(図示せず)上に配設され、IPC−ECU10の一部である。第2の表示部は、ドライバが道路を見ている時にドライバが見ることができる位置のどこかに配設され、HUD−ECU11の一部である。すなわちIPC−ECU10およびHUD−ECU11はそれぞれ独立して、エンジン速度信号7、固定速度信号8、エンジン速度信号、車両速度信号9を処理して、第1の表示部および第2の表示部のそれぞれに信号7,8,9に関する対応する独立した値を表示するようにサブシステム内で構成される。IPC−ECU10およびHUD−ECU11のプロセッサは異なるので、主画面および副画面に表示される値が異なる場合がある。このことにより、ドライバが表示値を信頼できなくなる可能性がある。プロセッサが同一(またはきわめて類似している)場合でも、IPC−ECU10およびHUD−ECU11それぞれが、PT−CANバス6からのデータ入力に際して、PT−CANバスに独立して接続されているので、やはり異なるソースデータの組(セット)が処理され、表示部に出力される危険性がある。メッセージ遅延時間が潜在的に異なるために、IPC−ECU10の表示部は、たとえば、瞬間t−1においてABSモジュール5のセンサが測定したソースデータから計算された車両速度の値を表示し、HUD−ECU11の表示部は、瞬間t−1より後の瞬間t−2において、再度サンプリングされたソースデータから、すなわちABSセンサが測定したデータから計算された車両速度の値を表示している可能性がある。一方、
図3に示されているサブシステムは、IPC表示部およびHUD表示部に同時に表示される値が食い違う危険性を最小限に抑える、または防止するものである。
【0050】
図2の車両ドライバ情報サブシステム1は別のデータ通信バス13をさらに有し、それは快適中速コントローラエリアネットワーク(CO−CAN)バス13である。CO−CAN13は、車体制御モジュール(BCM)14、運転席側ドアコントロールモジュール(DDM)15、および前方制御ディスプレイ・インターフェース・モジュール(FCDIM)16がネットワークに出力した信号を受信するように構成される。すなわちサブシステム1は、異なるデータ通信バス6,13間における信号通信に関与するゲートウェイモジュール(GWM)のECU12を有する。これらのモジュールの機能は、本発明に直接関係しないので、本明細書ではさらに詳細に説明しない。
【0051】
[ドライバ情報システム]
図3は、選択された車両動作パラメータを2つの表示部に同時に表示できるドライバ情報システム20の概略図である。このシステム20は、本発明に係る実施形態によるシステムである。
図2に示す機能または構成部品と同等の機能または構成部品は、同様の参照番号を用いて示す。
【0052】
サブシステム20は、パワートレイン制御モジュール(PCM)2、クルーズ制御モジュール(CCM)3、トランスミッション制御モジュール(TCM)4、アンチロックブレーキシステム(ABS)5、トランスファーケース制御モジュール(TCCM)17、および前方後方駐車支援モジュール(PAM)18を有する。PCM2、CCM3、TCM4、ABS5、TCCM17、およびPAM18は、パワートレイン高速コントローラエリアネットワーク(PT−CAN)バス6上でインターフェース接続する。パワートレイン制御モジュール(PCM)2は、エンジン速度信号7をPT−CANバス6に出力するように構成される。クルーズ制御モジュール(CCM)3は、適応クルーズ制御ソフトウェアパッケージ3’を搭載するものであるが、固定速度信号8をPT−CANバス6に出力するように構成される。
【0053】
計器パネルクラスタ(IPC)のECU10およびヘッドアップディスプレイ(HUD)のECU11は、PT−CANバス6に接続される。この実施形態では、エンジン速度信号7、固定速度信号8、および車両速度信号9は、IPC−ECU10のみに出力される。IPC−ECU10およびHUD−ECU11は、それぞれのプロセッサおよびネットワークインターフェース(ともに図示せず)を有する。IPC−ECU10およびHUD−ECU11のネットワークインターフェースは、エンジン速度信号7、固定速度信号8、および車両速度信号9に異なる優先度(または「信号遅延時間」)を割り当てるように構成される。しかしながら、この実施形態では、IPC−ECU10およびHUD−ECU11は、PT−CANバス6から同一の信号を受信しないので、これらの信号に異なる遅延時間が存在することは問題とはならないことに留意されたい。換言すると、HUD−ECU11は、IPC−ECU10の完全に従属するものである。その結果、HUD−ECU11とIPC−ECU10の主従関係に起因したタイムラグが生じるが、表示部は一致した結果を出力することになる。
【0054】
第1の表示部は、車両計器パネル(図示せず)上に配設され、IPC−ECU10の一部である。第2の表示部は、ドライバが道路を見ている時にドライバが見ることができるように意図された位置のどこかに配設され、HUD−ECU11の一部である。IPC−ECU10は、エンジン速度信号7、固定速度信号8、および車両速度信号9を処理するものである。これらに対応してIPC−ECU10が出力する処理信号(処理済信号)は、HUD車両速度信号21、HUDエンジン速度信号21’である。HUD車両速度信号21およびHUDエンジン速度信号21’は、IPC−ECU10がPT−CANバス6に出力去れるものである。HUD−ECU11は、PT−CANバス6を介して、HUD車両速度信号21およびHUDエンジン速度信号21’を入手する。したがって、第1の表示部および第2の表示部は、エンジン速度信号7、固定速度信号8、および車両速度信号9に関して一致した(矛盾のない)値をドライバに表示することができる。これは、本質的に2つの理由により実現可能である。第1に、サブシステム20は、IPC−ECU10で関連データを中央処理するように構成されていること、第2に、HUD−ECU11がPT−CANネットワークバス6からの信号受信に関連して表示すべき信号の遅延時間は無視できるためで、PT−CANバス6が高レベルで使用されている場合でも、HUD−ECU11の表示部は、表示すべきデータを高い信頼性で受信して、IPC−ECU10の表示部とほぼ同時に出力する。このときのタイムラグは、知覚速度未満、たとえば50ミリ秒未満に維持することができる。
【0055】
IPC−ECU10の表示部およびHUD−ECU11の表示部に、一致した値を表示すると、表示情報に対するドライバの信頼(安心感)に影響を与える。IPC−ECU10およびHUD−ECU11は、PT−CANバス6の入力データに対して独立してアクセス、フィルタリング、および処理しないので、異なる組(セット)のソースデータが別個に処理されて、各ECU10,11から信号が出力されるという危険性がない。これは、
図2に示すネットワークアーキテクチャとは大きく異なる。
【0056】
さらに、快適中速CAN(CO−CAN)バス13は、車体制御モジュール(BCM)14、運転席側ドア制御モジュール(DDM)15、前方制御ディスプレイ・インターフェース・モジュール(FCIMD)16、運転席モジュール(DSM)18、およびカメラモジュール(CMR)19がネットワークに出力した信号を受信するように構成されている。これらのモジュールの機能は、本発明に直接関係しないので、本明細書ではさらに詳細に説明しない。
図2に示すサブシステムと同様、
図3のサブシステム20は、異なるデータ通信バス6、13間でのデータ通信に関与するゲートウェイモジュール(GWM)のECU12をさらに有する。
【0057】
[水中走行検知システム]
図4は、本発明に係る実施形態による水中走行検知システム30のネットワークアーキテクチャの概略図であり、本発明に係る実施形態によれば、選択された車両運転パラメータを2つの表示部でドライバに同時に表示することができる。
図2および/または
図3に示す機能または構成部品と同等の機能または構成部品は、同様の参照番号を用いて示す。
【0058】
サブシステム30は、前方後方駐車支援モジュール(PAM)31、左右駐車支援モジュール(PAMB)32、シャーシ制御モジュール(CHCM)33、およびABSモジュール5を有する。PAMB32は、水の存在を検出し、および/または水深を測定するために下方に向けられた左右の水位センサ32a、32bを有する。PAM31は、駐車支援機能ソフトウェアパッケージ31’および水検出ソフトウェアパッケージ31”を有する。PAM31は、前方および後方の駐車センサ31a,31bから信号を受信できるように構成されている。PAMB32は、水中走行検知ソフトウェアパッケージ32’、および勾配計算ソフトウェアパッケージ32”を有し、左右の水位センサ32a、32bから信号を受信できるように構成されている。PAM31、PAMB32、CHCM33、およびABS5は、シャーシ高速コントローラエリアネットワーク(CH−CAN)バス39に接続される。ABS5は、車両速度信号9をCH−CANバス39に出力するように構成されている。CHCM33は、一連のサスペンション車高信号36をCH−CANバス39に出力するように構成されている。PAM31は、水検出信号37をCH−CANバス39に出力するように構成されている。PAMB32は、CH−CANバス39から車両速度信号9および一連のサスペンション車高信号36を受信するように構成されている。さらにPAMB32は、一連の水中走行処理済データ信号35を生成して、CH−CANバス39に出力するように構成されている。
【0059】
サブシステム30はさらに、パワートレイン高速CAN(PT−CAN)6および快適中速CAN(CO−CAN)13を有する。ゲートウェイモジュール(GWM)のECU12は、CH−CANバス39から水中走行処理済データ信号35を受信し、CO−CAN13に出力する。PT−CANバス6は、PCM2、ABS5、GWM−ECU12が出力した信号を受信し、PCM2、GWM−ECU12、および計器パネルクラスタ(IPC)のECU10がこの信号を利用できるようにする。IPC−ECU10は、CO−CAN13を介して水中走行処理済データ信号35にアクセスする。IPC−ECU10は、簡易式の水中走行検知表示部10’を有する。水中走行処理済データ信号35は、簡易式表示部10’上に表示される。サブシステム30はさらに、前方制御表示インターフェースモジュール(FCDIM)のECU16を有する。FCDIM−ECU16は、ドライバに情報を出力するためのタッチスクリーン16’を有する。FCDIM−ECU16は、CO−CAN13を介して水中走行処理済データ信号35にアクセスする。水中走行処理済データ信号35は、タッチスクリーン16’上にも表示される。この実施形態では、水中走行処理済データ信号35は、単一のECUのみ、つまりPAMB−ECU32のみによって生成され、その後、簡易式の水中走行検知表示部10’およびFDCIM−ECU16のタッチスクリーン16’に同時に表示される。
【0060】
IPC−ECU10およびFCDIM−ECU16のそれぞれのプロセッサが異なる場合でも、簡易式の水中走行検知表示部10’およびFCDIM−ECUタッチスクリーン16’に表示される値は一致する。これは、表示値に対するドライバの信頼(安心感)に影響を与える。IPC−ECU10およびFCDIM−ECU16は、データ処理を行う必要がないので、異なる組のソースデータが処理されて、IPC−ECU10およびFCDIM−ECU16それぞれから出力されるという危険性がない。
【0061】
PAMB−ECU32は、未処理の縦加速度信号40に受信し、これに基づいて、水中走行勾配信号41として計算結果を出力する。PAMB−ECU32は、機能を実行するのに水中走行勾配信号41を必要としないが、PAMB−ECU32は、2つの表示部の整合性を維持するためにこの計算を行う。勾配を確実に計算するために、未処理の加速度データ40に対する重要な処理およびフィルタリングが必要である。PAMB−ECU32は、機能を実行するのに勾配情報を必要としないが、この計算を実行することにより、ドライバに複数の表示部10’,16’で整合性のある情報を示す。
【0062】
[エコドライブシステム]
図5〜
図7を参照しながら、本発明に係る一実施形態によるエコドライブシステム50のネットワークアーキテクチャについて簡単に以下説明する。
図2、
図3および/または
図4に示す機能または構成部品と同等の機能または構成部品は、同様の参照番号を用いて示す。
【0063】
図5は、ゲートウェイモジュール(GWM)のECU12、快適中速データ通信制御エリアネットワーク(CO−CAN)バス13、パワートレイン高速データ通信制御エリアネットワーク(PT−CAN)バス6、前方制御表示インターフェースモジュールのECU(FCDIM−ECU)16、テレメトリ制御ユニット(TCU)のECU51、およびIPC−ECU10を有するエコドライブシステム50を示す。
【0064】
GWM−ECU12は、CO−CANバス13とPT−CANバス6との間でデータ通信させるように構成されている。IPC−ECU10は、CO−CANバス13とPT−CANバス6の両方にアクセスする。
図6に示すように、CO−CANバス13を用いて、IPC−ECU10とFCDIM−ECU16との間でデータが交換される。この構成では、IPC−ECU10は、指定ECUを代表するので、燃料消費量に関するデータをGWM−ECU12から受信するように構成されている。IPC−ECU10が集約して、これらのデータを処理する。
図7は、処理済データがIPC−ECU10から、CO−CANバス13を介してFCDIM−ECU16へ、PT−CANバス6を介してTCU−ECU51へ流れる状態を示す図である。処理済データは、IPC−ECU10の表示部およびFCDIM−ECU16のタッチスクリーンによって可視化される。TCU−ECU51は、スマートフォンのような遠隔受信機に処理済データを送信するための全地球測位システム(GPS)ボックスを有する。携帯電話ネットワーク(図示せず)が利用される。さらに
図5〜
図7の構成では、IPC−ECU10は、燃料消費量の過去(履歴)データの参照テーブルを管理するので、過去(履歴)データは、(現在の)処理済データとともに、TCU−ECU51およびFCDIM−ECU16の両方に出力される。
【0065】
図8および
図9は、
図5〜
図7に示すシステムアーキテクチャの択一的なシステムアーキテクチャ60を示す。システムアーキテクチャ60は、本発明に係る実施形態によるシステムアーキテクチャである。このネットワークアーキテクチャは、本発明に係る実施形態によるものではなく、対比のために、単に当業者が本発明の特徴を理解しやすくするために示すものである。
図8および
図9では、(現在の)処理済データは、IPC−ECU10から、過去(履歴)データの参照テーブルを管理するFCDIM−ECU16に送信される。その後、過去および現在の処理済データとの組み合わせデータ(複合データ)が、FCDIM−ECU16からGWM−ECU12を介してTCU−ECU51に送信される。
図9は、
図5にデータフローを模式的に重ね合わせた図である。GWM−ECU12は、CO−CANバス13からPT−CANバス6へのデータ伝送に関与するものである。IPC−ECU10の表示部およびFCDIM−ECU16のタッチスクリーン上に表示されるデータが異なる可能性はあるが、これは単に、表示部の遅延時間が整合していないためである。表示データは、依然としてIPC−ECU10により中央演算処理される。
【0066】
[車線逸脱警告システム]
ここで
図10および
図13を参照しながら、本発明に係る実施形態による車線逸脱警告システム70、100のネットワークアーキテクチャについて簡単に以下説明する。
図11および
図12に示すネットワークアーキテクチャは、本発明に係るネットワークアーキテクチャではなく、対比のため、単に当業者が本発明の特徴を理解するのを助けるために示すものである。
図2、
図3、
図4、および/または
図5〜
図9に示す機能または構成部品と同等の機能または構成部品は、同様の参照番号を用いて示す。
【0067】
図10は、車両カメラ(HCMB)のECU72、ゲートウェイモジュール(GWM)のECU12、計器パネルクラスタ(IPC)のECU10、およびパワーステアリング制御モジュール(PSCM)のECU71を有する車線逸脱警告システム70を示す。車両ヘッドランプカメラモジュールは、HCMB−ECU72に組み込まれたカメラにより対向車が検出された時に、車両のライトの高さを制御するものである。HCMB−ECU72およびGMW−ECU12は、車体CAN(BO−CAN)バス73を介して通信する。HCMB−ECU72は、指定ECUであり、すなわち表示すべきデータを中央演算処理するためのECUである。GWM−ECU12は、2つのデータ通信バス、すなわちPT−CANバス6およびCH−CANバス39に処理済データを出力する。IPC−ECU10は、PT−CANバス6からデータにアクセスし、PSCM−ECU71は、CH−CANバス39からデータにアクセスする。したがってHCMB−ECU72は、車線に対する車両の相対位置に関する未処理済データを収集して、GWM−ECU12からアクセスできるようにBO−CANバス73に未処理済データを出力する。IPC−ECU10がPT−CANバス6を介してアクセスし、PSCM−ECU71がCH−CANバス39を介してアクセスして、処理済ゲートウェイデータをドライバに表示するために、GWM−ECU12は、処理済ゲートウェイデータをPT−CANバス6およびCH−CANバス39に出力する。IPC−ECU10は、処理済データを視覚的な警告信号の形態で表示部に出力する。さらに、IPC−ECU10は、その一部でもあるスピーカ(図示せず)で同時に警告音を発することができる。PSCM−ECU71は、車両の操舵ハンドル(ステアリングホイール)上で振動を発生させる装置を有するので、PSCM−ECU71は、触覚的なフィードバック信号の形態で処理済データを出力するように構成される。
【0068】
図11は、本発明に係る実施形態による車線逸脱警告システム80を示し、車線逸脱警告システムは、車両カメラ(HCMB)のECU72、ゲートウェイモジュール(GWM)のECU12、計器パネルクラスタ(IPC)のECU10、およびパワーステアリング制御モジュール(PSCM)のECU71を有する。HCMB−ECU72およびGWM−ECU12は、PT−CANバス6を介して通信する。データ処理が任せられたECUは、HCMB−ECU72である。したがって、このシステムアーキテクチャにおいて、単一の指定処理ECUが定義される。GWM−ECU12は、HCMB−ECU72が処理したデータをCH−CANバス39に出力する。IPC−ECU10は、PT−CANバス6からデータにアクセスし、PSCM−ECU71は、CH−CANバス39からデータにアクセスする。したがって、HCMB−ECU72は、車両と車線との相対位置に関する未処理データを収集し、PT−CANバス6に出力し、GWM−ECU12が未処理データにアクセスする。PSCM−ECU71がドライバに表示するために処理済データにアクセスできるように、GWM−ECU12が処理済データをCH−CANバス39に出力する。IPC−ECU10は、処理済データを視覚的な警告信号の形態で表示部に出力する。PSCM−ECU71は、車両の操舵ハンドル上で振動を発生させる装置を有するため、触覚的なフィードバック信号の形態で処理済データを出力するように構成される。
図11は、視覚的および触覚的な警告との遅延時間差を有するシステム80を示す。この点に関して、システム80は、
図12のシステム90と同様のものである。
図10および
図13では、ネットワークに対するECUの入力および手法(ストラテジ)が異なるために、このような遅延時間差はない。しかし、すべての解決手段は、必要な計算を実行する指定ECUを構成することが前提となる。
【0069】
図12は、本発明に係る実施形態による車線逸脱警告システム90を示し、車線逸脱警告システムは、車両カメラ(HCMB)のECU72、ゲートウェイモジュール(GWM)のECU12、計器パネルクラスタ(IPC)のECU10、およびパワーステアリング制御モジュール(PSCM)のECU71を有する。HCMB−ECU72およびGWM−ECU12は、CH−CANバス39を介して通信する。データ処理が任せられたECUは、HCMB−ECU72である。したがって、このシステムアーキテクチャにおいて、単一の指定処理ECUが定義される。GWM−ECU12は、処理済データをPT−CANバス6に出力する。IPC−ECU10は、PT−CANバス6からデータにアクセスし、PSCM−ECU71は、CH−CANバス39からデータにアクセスする。したがって、HCMB−ECU72は、車両と車線との相対位置に関する未処理データを収集し、CH−CANバス39に出力し、GWM−ECU12が未処理データにアクセスする。GWM−ECU12は、処理済データをPT−CANバス6に出力し、IPC−ECU10がアクセスしてドライバに表示する。IPC−ECU10は、処理済データを視覚的な警告信号の形態で表示部に出力する。PSCM−ECU71は、車両の操舵ハンドル上で振動を発生させる装置を有するので、触覚的なフィードバック信号の形態で処理済データを出力するように構成される。
図12に示す構成は、PT−CANバス6とCH−CANバス39のネットワークアーキテクチャ内での相対位置が逆である以外は、
図11に示されている構成ときわめて類似している。
【0070】
図13は、本発明に係る実施形態による車線逸脱警告システム100を示し、車線逸脱警告システムは、車両カメラ(HCMB)のECU72、ゲートウェイモジュール(GWM)のECU12、計器パネルクラスタ(IPC)のECU10、およびパワーステアリング制御モジュール(PSCM)ECU71を有する。HCMB−ECU72およびGWM−ECU12は、インテリジェントハイビーム(IHB)の補助的なCANバス101を介して通信する。GWM−ECU12は、指定ECUであり、すなわち表示すべきデータを中央演算処理するためのECUである。GWM−ECU12は、2つのデータ通信バス、すなわちPT−CANバス6およびCH−CANバス39に処理済データを出力する。IPC−ECU10は、PT−CANバス6からデータにアクセスし、PSCM−ECU71は、CH−CANバス39からデータにアクセスする。すなわちHCMB−ECU72は、車両と車線との相対位置に関する未処理データを収集し、IHB−補助CANバス101に出力し、GWM−ECU12が未処理データにアクセスする。GWM−ECU12は、PT−CANバス6およびCH−CANバス39に処理済データを出力し、IPC−ECU10がPT−CANバス6から、PSCM−ECU71がCH−CANバス39から処理済データにアクセスする。IPC−ECU10は、処理済データを視覚的な警告信号の形態で表示部に出力する。PSCM−ECU71は、車両の操舵ハンドル上で振動を発生させる装置を有するので、触覚的なフィードバック信号の形態で処理済データを出力するように構成される。
【0071】
図10および
図13に示すネットワークアーキテクチャそれぞれにおいて、ドライバは、IPC−ECU10の表示部によって生成された警告信号と、PSCM−ECU71の振動装置によって生成された警告信号との間の整合性を体感することができ、すなわち両者の警告信号は、互いに対して感知できるような遅延時間が生じることなく生成される。
【0072】
本発明に係るさらなる態様が、以下の番号付けされた段落に記載される。
【0073】
段落1:
ユーザにフィードバックするための車両分散ネットワークサブシステムであって、
複数の電子制御ユニット(ECU)と、
少なくとも1つのデータソースからデータを受信するように構成されたデータ通信ネットワークであって、これを介して複数の電子制御ユニットが互いに通信できるデータ通信ネットワークとを備え、
データ通信ネットワークから受信したデータから処理済データを生成するための指定電子制御ユニットを定義するように構成され、
処理済データを分散させて、ユーザにフィードバックするための2つ以上の端末に送信するように構成される、車両分散ネットワークサブシステム。
【0074】
段落2:
ECUと通信する2つ以上の端末をさらに備え、
ユーザにフィードバックするための各端末に処理済データを送信するように構成される、段落1に記載の車両分散ネットワークサブシステム。
【0075】
段落3:
処理済データをユーザに実質的に同時に出力するように、各端末に処理済データを送信するように構成された、段落2に記載の車両分散ネットワークサブシステム。
【0076】
段落4:
2つ以上の端末それぞれは、処理済データにデータ遅延時間を関連付けるようにプログラムされ、各データ遅延時間は所定値未満である、段落3に記載の車両分散ネットワークサブシステム。
【0077】
段落5:
端末は、車両乗員にフィードバックするように構成される、段落1に記載の車両分散ネットワークサブシステム。
【0078】
段落6:
データ通信ネットワークは、車両の動作パラメータに関するデータを受信するように構成される、段落1に記載の車両分散ネットワークサブシステム。
【0079】
段落7:
各端末は、それぞれのユーザインターフェースの電子制御ユニットの一部である、段落1に記載の車両分散ネットワークサブシステム。
【0080】
段落8:
第1のユーザインターフェースの電子制御ユニットは、第2のユーザインターフェースECUにアクセスするように構成される、段落7に記載の車両分散ネットワークサブシステム。
【0081】
段落9:
第1および第2のユーザインターフェースの電子制御ユニットは、指定電子制御ユニットにアクセスするように構成される、段落7に記載の車両分散ネットワークサブシステム。
【0082】
段落10:
段落2に記載の車両分散ネットワークサブシステムを備える車両ドライバ情報システムであって、
データ通信ネットワークは、
パワートレイン制御モジュール(PCM)の電子制御ユニット、
クルーズ制御モジュール(CCM)の電子制御ユニット、
トランスミッション制御モジュール(TCM)の電子制御ユニット、
トランスファーケース制御モジュール(TCCM)の電子制御ユニット、
アンチロックブレーキシステムモジュール(ABS)の電子制御ユニット、または
駐車支援モジュール(PAM)の電子制御ユニット
のうちの少なくとも1つからデータを受信するように構成され、
計器パネルクラスタ(IPC)の電子制御ユニットは、指定電子制御ユニットとしての機能を果たすように構成され、
各端末は表示部である、車両ドライバ情報システム。
【0083】
段落11:
表示部は、計器パネルクラスタ(IPC)の電子制御ユニットの一部である、段落10に記載の車両ドライバ情報システム。
【0084】
段落12:
表示部は、ヘッドアップディスプレイ(HUD)の電子制御ユニットの一部である、段落10に記載の車両ドライバ情報システム。
【0085】
段落13:
データ通信ネットワークは、車両またはエンジン速度に関するデータを受信するように構成され、
指定電子制御ユニットは、車両またはエンジン速度に関する処理済データを生成するように構成され、
各表示部は、処理済データを可視化するように構成される、段落10に記載の車両ドライバ情報システム。
【0086】
段落14:
段落2に記載の車両分散ネットワークサブシステムを備えた車両浸水走行検知システムであって、
複数のデータ通信ネットワーク、およびデータ通信ネットワーク間でデータを分散させるためのゲートウェイモジュール(GWM)の電子制御ユニットを備え、
データ通信ネットワークの少なくとも1つは、
アンチロックブレーキシステム(ABS)の電子制御ユニット、
駐車支援モジュール(PAMB)の電子制御ユニット、
前方または後方駐車支援センサ、
水存在センサ、
水深センサ、または
シャーシ制御モジュール(CHCM)の電子制御ユニットのうちの少なくとも1つからデータを受信するように構成され、
駐車支援モジュール(PAMB)の電子制御ユニットは、指定電子制御ユニットとしての機能を果たすように構成され、
各端末は表示部である、車両浸水走行検知システム。
【0087】
段落15:
複数の表示部のうちの1つの表示部は、計器パネルクラスタ(IPC)の電子制御ユニットの一部である、段落14に記載の車両浸水走行検知システム。
【0088】
段落16:
複数の表示部のうちの別の表示部は、前方制御表示インターフェースモジュール(FCDIM)の電子制御ユニットの一部である、段落15に記載の車両浸水走行検知システム。
【0089】
段落17:
データ通信ネットワークのうちの少なくとも1つは、車両の周囲の水位に関するデータを受信するように構成され、
指定電子制御ユニットは、水位に関する処理済データを生成するように構成され、
各表示部は、処理済データを可視化するように構成される、段落16に記載の車両浸水走行検知システム。
【0090】
段落18:
段落2に記載の車両分散ネットワークサブシステムを備え、
複数のデータ通信ネットワークと、データ通信ネットワーク間でデータを分散させるためのゲートウェイモジュール(GWM)の電子制御ユニットとを備え、
データ通信ネットワークのうちの少なくとも1つは、燃料消費量に関するデータを受信するように構成され、
計器パネルクラスタ(IPC)の電子制御ユニットは、指定電子制御ユニットとしての機能を果たすように構成され、
端末それぞれは表示部である、車両エコドライブシステム。
【0091】
段落19:
複数の表示部のうちの1つは、計器パネルクラスタ(IPC)の電子制御ユニットの一部である、段落18に記載の車両エコドライブシステム。
【0092】
段落20:
複数の表示部のうちの別の表示部は、前方制御表示インターフェースモジュール(FCDIM)の電子制御ユニットの一部である、段落19に記載の車両エコドライブシステム。
【0093】
段落21:
指定電子制御ユニットは、燃料消費量に関する処理済データを生成するように構成され、
各表示部は、処理済データに基づいて、エコドライブを促すための信号を可視化するように構成される、段落18に記載の車両エコドライブシステム。
【0094】
段落22:
段落2に記載の車両分散ネットワークサブシステムを備えた車線逸脱警告システムであって、
複数のデータ通信ネットワークと、データ通信ネットワーク間でデータを分散させるためのゲートウェイモジュール(GWM)の電子制御ユニットとを備え、
データ通信ネットワークのうちの少なくとも1つは、車線内の車両の相対位置に関するデータを受信するように構成され、
車両カメラモジュールの電子制御ユニットは、指定電子制御ユニットとしての機能を果たすように構成され、
少なくとも1つの端末は表示部である、車線逸脱警告システム。
【0095】
段落23:
表示部を含む少なくとも1つの端末は、計器パネルクラスタ(IPC)の電子制御ユニットの一部である、段落22に記載の車線逸脱警告システム。
【0096】
段落24:
複数の端末のうちの少なくとも1つは、車両乗員に触覚的にフィードバックするための触覚フィードバック端末である、段落22に記載の車線逸脱警告システム。
【0097】
段落25:
触覚フィードバック端末は、パワーステアリング制御モジュール(PSCM)の電子制御ユニットの一部である、段落24に記載の車線逸脱警告システム。
【0098】
段落26:
データ通信ネットワークのうちの少なくとも1つは、車両カメラからデータを受信するように構成される、段落22に記載の車線逸脱警告システム。
【0099】
段落27:
段落1に記載の車両分散ネットワークサブシステム、および/または段落10に記載の車両ドライバ情報システム、および/または段落14に記載の車両浸水走行検知システム、および/または段落18に記載の車両エコドライブシステム、および/または段落22に記載の車線逸脱警告システムを備える車両分散ネトワーク。
【0100】
段落28:
段落27に記載の車両分散ネットワークを備える車両。
【0101】
段落29:
車両分散ネットワークに接続された複数の端末上で車両のユーザにフィードバックする方法であって、
複数の電子制御ユニット(ECU)に接続されたデータ通信ネットワークにデータを提供するステップと、
一連の処理済データを生成するために、指定電子制御ユニットを使用してデータを処理するステップと、
ユーザに出力するための端末に送信するために、処理済データを分散するステップと、を有する方法。
【0102】
段落30:
車両分散ネットワークを構成または再構成するための分散コンピュータプログラム製品であって、
コンピュータ可読プログラムコードを含むコンピュータ可読媒体を備え、
コンピュータ可読プログラムコードは、車両分散ネットワークを備える車両システム上で実行されるときに、段落29に記載の方法を実行するように車両分散ネットワークを構成する、分散コンピュータプログラム製品。
【0103】
段落31:
車両分散ネットワークを構成または再構成するための分散コンピュータプログラム製品であって、
コンピュータ可読プログラムコードを含むコンピュータ可読媒体を備え、
コンピュータ可読プログラムコードは、車両分散ネットワークを備える車両システム上で実行されるときに、請求項1に記載の車両分散ネットワークサブシステム、請求項10に記載の車両ドライバ情報システム、請求項14に記載の車両浸水走行検知システム、請求項18に記載の車両エコドライブシステム、および/または請求項22に記載の車線逸脱警告システムのうちのいずれか1つまたはそれ以上を特定することができるように車両分散ネットワークを構成する、分散コンピュータプログラム製品。